説明

屈曲性が改善されたイミダゾールブロックポリウレタン樹脂の製造方法、この製造方法により製造されたイミダゾールブロックポリウレタン樹脂およびこれを含有するプレコーテッド自動車鋼板用塗料

【課題】屈曲性が改善されたイミダゾールブロックポリウレタン樹脂およびこれを含有するプレコーテッド自動車鋼板用塗料を提供する。
【解決手段】ポリエステル樹脂にイソシアネート化合物を加えて付加反応中に、イミダゾール化合物を添加して一部のイソシアネート化合物をイミダゾール化合物によりブロッキング化したイミダゾールブロックポリウレタン樹脂。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリエステル樹脂にイソシアネート化合物を加えて付加反応中に、イミダゾール化合物とエポキシ化合物を添加して一部のイソシアネート化合物をイミダゾール化合物によりブロッキング化したイミダゾールブロックポリウレタン樹脂を製造することにより、これを含有する塗料が金属素地の鋼板に対して改善された付着性を有し、かつ、既存のイミダゾール類化合物とエポキシ化合物の硬化メカニズムの短所であった脆弱な屈曲性と加工性が改善されたことを特徴とする屈曲性が改善されたイミダゾールブロックポリウレタン樹脂の製造方法、この製造方法により製造されたイミダゾールブロックポリウレタン樹脂およびこれを含有するプレコーテッド自動車鋼板用塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、自動車鋼板の製造工程のうち新規な塗装工程として採用するために導入推進中のプレコーテッド方式の塗装法は、既存のプレコーテッドメタル(PCM:PreCoated Metal)鋼板の塗装技術とは、金属鋼板の製造後に、コイルコーターにおいて塗料を塗装して乾燥ダクトを通過しつつ乾燥される方式であるという点でやや類似点があるが、究極的に、PCM鋼板の製造工程は、クロメート処理されたGI(Galvanized Iron)またはガルバリウム素地に1回または2回に亘って塗装処理を施して塗装作業を完了するのに対し、自動車用プレコーテッド鋼板の場合、冷間圧延鋼板(CRS)または電気亜鉛めっき鋼板(EGI)などの自動車用鋼板の製造段階において1回ロールコートして自動車業者に出庫された後、さらに切断、加工、溶接などの段階を経た後に中塗り・上塗りの塗装工程が行われるという点で大きな相違点がある。
【0003】
このため、プレコーテッド自動車鋼板用塗料の場合、既存のPCM用ポリエステル樹脂と塗料が実現しているレベルの機械的、化学的物性だけでは、その適用に限界があるのが事実である。そこで、これらの短所を克服するために、本出願人による先出願である下記の特許文献1においては、高度の加工性、素地との密着性、防錆性、耐食性および耐寒チッピング性などに優れた自動車鋼板用プレコーテッド樹脂組成物とこれを用いた塗料の製造方法を提案している。しかしながら、自動車の静電塗装工程において確保可能なレベルの層間付着力と防錆性および耐食性を確保するためには、既存のPCM用樹脂を用いて、弾性変性とウレタン変性などに加えて、さらに静電塗装工程において主として実現される金属素材と有機塗膜との間の高い層間付着力を確保することが必要である。同種業界において知られている通常の静電塗装の樹脂組成物は、2価ないしそれ以上の多価グリコール類に含まれている水酸基に低分子直鎖状2官能性または多官能性イソシアネートを反応させてグリコールブロッキングされた架橋結合剤を製造し、このようにして製造された架橋結合剤をビスフェノールA型化合物から誘導されたビスフェノールA型ポリオール化合物と一緒に水分散して製造することが一般的である。このようにして製造された静電塗装の樹脂組成物により行われる静電塗装は、自動車塗装工程のうち最初の塗装工程であり、自動車ボディに塗装されて、後続する下塗りと中塗りおよび上塗りの塗装工程において塗装されるそれぞれの塗料と自動車鋼板との層間付着を強固化させる機能を行う。
【0004】
従来のPCM用塗料の場合、塗料の素地への付着力を与えるために、リン酸のカルボン酸とエポキシ基が反応して製造されたリン酸エポキシ樹脂を塗料に添加して非鉄金属素材への塗膜の付着力を確保しているが、リン酸エポキシ樹脂の製造特性から、水が一部含まれており、水と樹脂との間の溶解度差に起因して発生する非相溶性を改善するために、多量の有機アルコール類溶剤を造成して樹脂を製造する。しかしながら、このようにして含まれた有機アルコール類溶剤は、PCM用塗料において一般的に使用するブロッキングイソシアネート硬化剤が高温の焼付過程において解離される場合に発生するイソシアネートのNCO基と反応可能な活性水素基を含んでいるため、PCM用塗料の場合、自動車用鋼板のプレコーテッド塗料に使用するには、塗料自体物性の再現反復性と自動車用塗料として求められる諸基礎物性において不満足なものであるのが事実であり、既存のPCM用塗料にリン酸エポキシ樹脂を添加して金属素地への付着性を改善する方法は上記の如き技術的な限界があった。
【0005】
さらに、イミダゾールブロッキングポリイソシアネート化合物を用いて製造された樹脂組成物(例えば、下記の特許文献2参照)の場合、硬化後にきわめて硬い硬化物と層間接着層を形成して接着剤、封止剤、充電材料、絶縁材料、導電材料、異方導電材料、シール材料、プリプレグなどの永久接着型接着素材にのみその使用が制限されるのが現状であり、このため、本発明が達成しようとするプレコーテッド自動車鋼板用塗料の塗装後に、切断、加工、溶接などの再加工に必要とされる加工性および屈曲性を達成することが事実上不可能である。
【0006】
このため、このような技術的限界を克服し、1回ロールコート方法により自動車用鋼板に改善された付着性を確保可能な方法について多角的な研究を行い、その結果、エポキシ化合物の硬化剤として用いられるイミダゾール類化合物をイソシアネートまたはポリイソシアネートのブロッキング剤として使用することにより、常温下においてエポキシ樹脂との反応性を制御する従来の技術に着目し、さらに既存の技術の限界を改善して本発明を完成するに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】大韓民国特許出願第10−2010−0099108号明細書
【特許文献2】大韓民国公開特許第10−2006−0085668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ポリエステル樹脂にイソシアネート化合物を加えて付加反応中に、イミダゾール化合物とエポキシ化合物を添加して一部のイソシアネート化合物をイミダゾール化合物によりブロッキング化したイミダゾールブロックポリウレタン樹脂を製造することにより屈曲性が改善されたことを特徴とするイミダゾールブロックポリウレタン樹脂の製造方法を提供することを課題とする。
【0009】
また、本発明は、上記の方法により製造されて、付着性および耐食性に優れており、既存のイミダゾール類化合物とエポキシ硬化剤の短所であった脆弱な柔軟性が改善されたことを特徴とするイミダゾールブロックポリウレタン樹脂を提供することを他の課題とする。
【0010】
さらに、本発明は、上記の物性が改善されたイミダゾールブロックポリウレタン樹脂を含有するプレコーテッド自動車鋼板用塗料であって、柔軟性と加工性および付着性が改善されたことを特徴とするプレコーテッド自動車鋼板用塗料を提供することをさらに他の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記の課題を達成するために、グリコール成分とカルボン酸との縮合反応により製造したポリエステル樹脂に、イソシアネート化合物を加えて40〜70℃の温度において付加反応中に、一部のイソシアネート化合物はイミダゾール化合物を添加してブロッキングさせることを特徴とする屈曲性が改善されたイミダゾールブロックポリウレタン樹脂の製造方法を課題の解決手段とする。
【0012】
また、本発明は、上記の方法により製造された最終的なイミダゾールブロックポリウレタン樹脂の水酸基値が10〜50mgKOH/gであり、最終的な重量平均分子量が20,000〜30,000であることを特徴とするイミダゾールブロックポリウレタン樹脂を課題の他の解決手段とする。
【0013】
さらに、本発明は、上記のイミダゾールブロックポリウレタン樹脂を含有することを特徴とするプレコーテッド自動車鋼板用塗料を課題のさらに他の手段とする。
【0014】
上記において、ポリエステル樹脂は水酸基値が10〜50mgKOH/gであり、重量平均分子量が5,000〜10,000であることを特徴とし、
【0015】
前記イソシアネート化合物は、ポリエステル樹脂に対する水酸基の当量比(イソシアネート化合物水酸基当量/ポリエステル樹脂水酸基当量)が0.2〜0.8になるように付加し、
【0016】
前記イミダゾール化合物は、イソシアネート化合物100重量部に対して5〜30重量部を添加し、
【0017】
前記イミダゾールブロックポリウレタン樹脂は、合成中にNCOの含量が0.5%以下になるまで反応させた後、イミダゾール類化合物100重量部に対して、100〜1,000重量部を付加することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、上述した課題の解決手段によれば、プレコーテッド自動車鋼板用塗料の層間付着のためにイミダゾール類化合物とエポキシ化合物との硬化反応を利用するが、既存のイミダゾール類化合物とエポキシ化合物の硬化組成物の特徴であると共に短所であった過度な接着力により塗料用、特に、塗装後に再加工が求められるプレコーテッドメタル方式の塗装工程に必要な柔軟性と加工性が脆弱であるということを理由にこれまで塗料、特に、プレコーテッドメタル方式の塗料に使用できなかった従来の短所を改善するように、ポリエステル樹脂を製造した後、イソシアネート化合物を付加重合させ、同時にイミダゾール化合物の活性水素をイソシアネートのNCO基を用いて潜材化させるブロッキング製造工程を通じてポリエステル樹脂の主鎖にイミダゾール化合物を付加重合させることによりイミダゾールブロックポリウレタン樹脂を製造し、このようにして製造されたイミダゾールブロックポリウレタン樹脂は、既存のイミダゾール化合物とエポキシ化合物の硬化組成物の短所であった脆弱な屈曲性と加工性の問題点を改善することができた。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明による好適な実施例を詳述するが、下記の説明においては、本発明を理解するのに必要な部分のみが説明され、それ以外の部分の説明は本発明の要旨を曖昧にしないために省略されるという点に留意すべきである。
【0020】
本発明は、グリコール成分とカルボン酸との縮合反応により製造したポリエステル樹脂に、イソシアネート化合物を加えて40〜70℃の温度において付加反応中に、一部のイソシアネート化合物はイミダゾール化合物を添加してブロッキングさせることを特徴とする屈曲性が改善されたイミダゾールブロックポリウレタン樹脂の製造方法に関する。
【0021】
本発明において、前記ポリエステル樹脂は、水酸基値が10〜50mgKOH/gであり、重量平均分子量が5,000〜10,000であることを特徴とする。
【0022】
上記において、ポリエステルの水酸基が10mgKOH/g未満であれば、硬化塗膜の架橋結合度が緻密ではないことに起因して塗膜の機械的、化学的特性が劣化してしまうため好ましくなく、ポリエステルの水酸基が50mgKOH/gを超えると、ウレタン変性およびイミダゾールブロッキングの製造工程中に樹脂の分子量が極めて大きくなってゲル化が進むおそれがあるため好ましくない。
【0023】
重量平均分子量が5,000未満である場合には、イソシアネート化合物とイミダゾール化合物の付加重合を経て製造された最終的なイミダゾールブロックポリウレタン樹脂が、本発明の本来の目的である塗装後の切断と加工などの再加工時に必要とされる硬化塗膜の適切な延伸と屈曲などの物理的応力に対応するのに必要十分な分子量を有していないため好ましくない。これに対し、重量平均分子量が10,000を超える場合には、本発明が提案しているイミダゾールブロックポリウレタン樹脂の製造過程において段階的に行われるイソシアネート付加重合とイミダゾールブロッキング後の最終粘度が適切な変性範囲から外れてしまい、これを用いて製造された最終的な塗膜表面の平滑性と垂直塗装面の上部と下部の塗膜の膜厚が異なってくるといういわゆる塗膜流れの不具合が発生してしまう。
【0024】
本発明によるポリエステル樹脂の製造方法に用いられるグリコール成分は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキシレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ヘキシレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2,2−ジメチル、1,3−ヘキサンジオール、トリエチレングリコール、ビスフェノールA、ネオペンチルグリコールなどの2つの水酸基を有するグリコール類と、トリメチロールエタン、ソルビトール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの3以上の水酸基を有する多価アルコール類からなる群より選ばれた少なくとも一種を含む第2グリコール成分が総グリコール成分に対して50〜80%にて含まれる。
【0025】
第2グリコール成分の含量が総グリコール成分に対して50%未満であれば、グリコールと酸との縮合反応により製造されるポリエステル樹脂の製造特性から、柔軟な高分子鎖を形成し難く、その結果、このようにして製造された塗膜は加工性が悪くなる。第2グリコール成分の含量が総グリコール成分に対して80%を超えると、3つの水酸基を有する多価アルコール類の使用量が相対的に低くなるが、これは塗膜の架橋密度を低下させて、結果的に硬化塗膜の機械的、化学的物性が低下してしまう。
【0026】
本発明の製造方法に用いられる多価酸は、芳香族系としては、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、トリメタル酸無水物などが挙げられ、脂肪族系としては、アジピン酸、アゼライン酸、コハク酸、ジグリコール酸などが挙げられる。好ましくは、この脂肪族酸の使用量は、総酸当量に対して40〜80%である。脂肪族酸の使用量が40%未満であれば、相対的に多量の芳香族酸の使用により、これを含有してなる塗膜の耐候性が脆弱化してしまうという欠点がある。なお、脂肪族酸の使用量が80%を超えると、ポリエステル樹脂が高価となり、本発明品の製造コストが嵩んでしまう原因となる。
【0027】
さらに、前記イソシアネート化合物は、ポリエステル樹脂に対する水酸基当量比(イソシアネート化合物水酸基当量/ポリエステル樹脂水酸基当量)が0.2〜0.8になるように付加する。イソシアネート化合物の使用量が0.2水酸基当量比未満であれば、ポリエステル樹脂のウレタン変性とイミダゾール類化合物のブロックのための十分な量のイソシアネートの確保が困難であり、0.8水酸基当量比を超えると、イミダゾールブロックポリウレタンの分子量が極めて大きくなって最終塗膜の加工性が悪化するため好ましくない。
【0028】
前記ポリエステル樹脂に付加重合反応するイソシアネート化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチル−HDI(TMDI)、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート(MPDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,3−および1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(HXDI)、ビス(イソシアネートメチル)ノルボルナン(NBDI)、3(4)−イソシアネートメチル−1−メチル−シクロヘキシルイソシアネート(IMCI)および(または)4,4’−ビス(イソシアネートシクロヘキシル)メタン(H12MDI)またはこれらのイソシアネートの混合物を使用することが好ましい。
【0029】
また、前記イミダゾール化合物は、イソシアネート化合物100重量部に対して5〜30重量部を添加する。イミダゾール類化合物の使用量がイソシアネート化合物100重量部に対して5重量部未満であれば、本発明において提案する反応性希釈剤であるエポキシ樹脂と十分な硬化を引き起こすにはその量が十分ではないため、塗膜の付着性と耐食性などの耐久性が低下するという短所が発生し、30重量部を超えると、エポキシ樹脂との硬化組成物の色合いが黄色に変色してしまうという短所が発生する。
【0030】
さらに、本発明は、前記ポリエステル樹脂にイソシアネート化合物を付加するウレタン変性重合と同時に、イミダゾール類化合物である2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−アミノエチル−2−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル)−2−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロピル)−2−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロピル)−2−エチル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール類からなる群より選ばれた少なくとも一種または2種を用いてウレタン変性のために付加されたイソシアネート化合物100重量部に対して5〜30重量部のイミダゾール類化合物を付加してイミダゾール類化合物の活性水素をイソシアネートのNCO基にてブロッキングするイミダゾールブロッキングの製造工程を追加的に提供する。
【0031】
また、本発明は、イミダゾールブロックポリウレタン樹脂の合成中にNCOの含量が0.5%以下になるまで反応させた後、イミダゾール類化合物100重量部に対して、100〜1,000重量部を付加する。
【0032】
エポキシ化合物を反応性希釈剤として添加する主な理由は、本発明によるイミダゾールブロックポリウレタン樹脂を含有するプレコーテッド自動車鋼板用塗料の硬化過程において活性水素がイソシアネート化合物のNCO基にてブロッキングされたイミダゾールブロック化合物が一定温度以上に再び活性水素を有するイミダゾール類化合物と活性NCO基にそれぞれ還元される熱解離反応をする。このとき、反応性希釈剤として一緒に造成されたエポキシ化合物とイミダゾールが典型的なエポキシ硬化組成物を形成しつつ自動車鋼板に強い付着性を有するのである。エポキシ化合物の使用量は、イミダゾールブロックポリウレタン樹脂の製造に用いられたイミダゾール類化合物100重量部に対して、100〜1,000重量部であることが好ましい。エポキシ化合物の使用量が100重量部未満であれば、エポキシ化合物とイミダゾール化合物の硬化組成物中のエポキシ含量が十分ではなく、自動車鋼板の耐食性と防錆性が悪化してしまうため好ましくない。エポキシ化合物の使用量が1,000重量部を超えると、プレコーテッド自動車鋼板用塗料の乾燥条件である230℃および100m/1分において十分な硬化塗膜を形成するにはエポキシ化合物の含量が高過ぎて十分な硬化塗膜を得ることが困難であるだけではなく、硬化後に塗膜の硬度が高くなって加工性が低下する。
【0033】
前記製造方法により製造されたイミダゾールブロックポリウレタン樹脂組成物にさらに付加されるエポキシ化合物は、多価エポキシ化合物としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールAD、テトラメチルビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA、テトラクロロビスフェノールA、テトラフルオロビスフェノールAなどのビスフェノール類をグリシジル化させたビスフェノール型エポキシ樹脂のうちいずれか一種またはこれらの混合物が挙げられる。
【0034】
本発明の製造工程に含まれるイソシアネート化合物のウレタン変性とイミダゾール類化合物のブロッキング製造工程は、40〜70℃においてFT−IR分光器による分析を通じてイソシアネート化合物のNCO含量を確認しつつ行うことが好ましい。40℃未満であれば、ウレタン変性とイミダゾールブロック反応を完結させるまでの時間がきわめて長引いてしまい、製造工程が遅延するという欠点がある。これに対し、70℃以上であれば、一般的に、ウレタン反応の方が強く発生するため、イミダゾール類化合物の活性水素をブロッキングさせるのに十分なNCO基を確保することが困難になり、本発明の本来の目的であるイミダゾールブロックポリウレタンを製造することが困難になる。
【0035】
本発明は、前記製造方法により製造されたプレコーテッド自動車鋼板塗料用イミダゾールブロックポリウレタン樹脂を提供する。すなわち、前記製造方法により製造されるが、前記ポリエステル樹脂組成物にイソシアネート化合物の付加重合とイミダゾール類化合物のブロック化重合を同時に行うことで製造された最終的なイミダゾールブロックポリウレタン樹脂の水酸基値が10〜50mgKOH/gであり、最終的な重量平均分子量が20,000〜30,000であるイミダゾールブロックポリウレタン樹脂を提供する。
【0036】
さらに、本発明は、屈曲性が改善されたイミダゾールブロックポリウレタン樹脂を含有することにより、改善された屈曲性と層間付着性を有するプレコーテッド自動車鋼板用塗料を提供する。
【0037】
以下、実施例を挙げて本発明を詳述する。しかしながら、これらの実施例は本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲が実施例に限定されることはない。
【0038】
1.ポリエステル樹脂の製造
<製造例1>
2l容量の4口フラスコに温度計、凝縮器、撹拌器、水分除去用コンデンサーおよび昇温装置を取り付けた。ここに、アジピン酸154g、アゼライン酸252g、無水フタル酸98g、エチレングリコール98g、1,6−ヘキシレングリコール250g、トリメチロールエタン150gを混合して徐々に撹拌しつつ240℃まで昇温しかつ縮合反応させて、水酸基値が10mgKOH/gであり、重量平均分子量が9,500であるポリエステル樹脂を得た。
【0039】
<製造例2>
2l容量の4口フラスコに温度計、凝縮器、撹拌器、水分除去用コンデンサーおよび昇温装置を取り付けた。ここに、アジピン酸150g、アゼライン酸252g、無水フタル酸98g、エチレングリコール98g、1,6−ヘキシレングリコール272g、トリメチロールエタン150gを混合して徐々に撹拌しつつ240℃まで昇温しかつ縮合反応させて、水酸基値が20mgKOH/gであり、重量平均分子量が8,000であるポリエステル樹脂を得た。
【0040】
<製造例3>
2l容量の4口フラスコに温度計、凝縮器、撹拌器、水分除去用コンデンサーおよび昇温装置を取り付けた。ここに、アジピン酸150g、アゼライン酸220g、無水フタル酸100g、エチレングリコール98g、1,6−ヘキシレングリコール272g、トリメチロールエタン150gを混合して徐々に撹拌しつつ240℃まで昇温しかつ縮合反応させて、水酸基値が35mgKOH/gであり、重量平均分子量が7,200であるポリエステル樹脂を得た。
【0041】
<製造例4>
2l容量の4口フラスコに温度計、凝縮器、撹拌器、水分除去用コンデンサーおよび昇温装置を取り付けた。ここに、アジピン酸145g、アゼライン酸220g、無水フタル酸100g、エチレングリコール98g、1,6−ヘキシレングリコール272g、トリメチロールエタン170gを混合して徐々に撹拌しつつ240℃まで昇温しかつ縮合反応させて、水酸基値が45mgKOH/gであり、重量平均分子量が5,600であるポリエステル樹脂を得た。
【0042】
2.イミダゾールブロックポリウレタン樹脂の製造
(実施例1)
2l容量の4口フラスコに温度計、凝縮器、撹拌器、単量体フィードパネルを取り付けた。ここに前記製造例1に従い製造されたポリエステル樹脂500gを投入し、フィードパネルにイソシアネート化合物であるヘキサメチレンジイソシアネート6gとイミダゾール類化合物である2−エチル−4−メチルイミダゾール1.8gを投入して1時間かけて撹拌した後、60℃において順次にフラスコに滴下し、30分おきにFT−IR分光器による分析を通じてNCOの含量が0.5%以下になるまで反応した後、韓国のKUKDO化学社製のエポキシ化合物YD−128を18g投入し、キシレン300gにより希釈して最終的な重量平均分子量が12,000であるイミダゾールブロックポリウレタン樹脂を得た。
【0043】
(実施例2)
2l容量の4口フラスコに温度計、凝縮器、撹拌器、単量体フィードパネルを取り付けた。ここに前記製造例2に従い製造されたポリエステル樹脂500gを投入し、フィードパネルにイソシアネート化合物であるヘキサメチレンジイソシアネート12gとイミダゾール類化合物である2−エチル−4−メチルイミダゾール3.6gを投入して1時間かけて撹拌した後、60℃において順次にフラスコに滴下し、30分おきにFT−IR分光器による分析を通じてNCOの含量が0.5%以下になるまで反応した後、韓国のKUKDO化学社製のエポキシ化合物YD−128を36g投入し、キシレン300gにより希釈して最終的な重量平均分子量が16,000であるイミダゾールブロックポリウレタン樹脂を得た。
【0044】
(実施例3)
2l容量の4口フラスコに温度計、凝縮器、撹拌器、単量体フィードパネルを取り付けた。ここに前記製造例3に従い製造されたポリエステル樹脂500gを投入し、フィードパネルにイソシアネート化合物であるヘキサメチレンジイソシアネート21gとイミダゾール類化合物である2−エチル−4−メチルイミダゾール6.3gを投入して1時間かけて撹拌した後、60℃において順次にフラスコに滴下し、30分おきにFT−IR分光器による分析を通じてNCOの含量が0.5%以下になるまで反応した後、韓国のKUKDO化学社製のエポキシ化合物YD−128を63g投入し、キシレン300gにより希釈して最終的な重量平均分子量が22,000であるイミダゾールブロックポリウレタン樹脂を得た。
【0045】
(実施例4)
2l容量の4口フラスコに温度計、凝縮器、撹拌器、単量体フィードパネルを取り付けた。ここに前記製造例4に従い製造されたポリエステル樹脂500gを投入し、フィードパネルにイソシアネート化合物であるヘキサメチレンジイソシアネート27gとイミダゾール類化合物である2−エチル−4−メチルイミダゾール8.1gを投入して1時間かけて撹拌した後、60℃において順次にフラスコに滴下し、30分おきにFT−IR分光器による分析を通じてNCOの含量が0.5%以下になるまで反応した後、韓国のKUKDO化学社製のエポキシ化合物YD−128を81g投入し、キシレン300gにより希釈して最終的な重量平均分子量が25,000であるイミダゾールブロックポリウレタン樹脂を得た。
【0046】
(比較例1)
実施例4においてポリエステル樹脂を除いては、前記実施例4の方法と同様にして、イミダゾールブロックポリウレタン樹脂を得た。
【0047】
3.塗料の製造
前記実施例1〜4に従い製造されたプレコーテッド自動車鋼板用イミダゾールブロックポリウレタン樹脂を含有する塗料を製造し、塗膜特性を測定した。
【0048】
下記表1は、実施例1〜4、および比較例1に従い製造された樹脂組成物のうち、実施例1のイミダゾールブロックポリウレタン樹脂とメラミン硬化剤を含有して製造されたプレコーテッド自動車鋼板用塗料の組成比を示す。
【0049】
【表1】

(単位:重量%)
1)DA0857(PPGコリア社製の品名)
2)DM2211(PPGコリア社製の品名)
3)AP4615(PPGコリア社製の品名)
4)キシレン/ココゾール150を配合比50/50にて配合して使用
5)BYK−350(BYK社の商品名)
6)SAMBO精密化学社製の商品名
7)SAMBO精密化学社製の商品名
8)Nacure−1052(KING社の商品名)
【0050】
4.塗膜の形成
実施例1〜4および比較例1の方法に従い製造した塗料をそれぞれ自動車用鋼板であるCRSまたはEGI鋼板素地に乾燥塗膜30〜50μm、乾燥温度241〜249℃、焼付温度40〜60秒の条件で塗装して物性試験を実施した。
【0051】
5.試験方法
a.光沢
ASTM−D−523(米国材料試験協会規格(American Society for Testing and Materials)において定めた非金属物質が反射する光沢を測定する基準)に従い測定した。
【0052】
b.耐溶剤性試験
キシレン溶剤を塗膜の表面に繰り返し擦り付けて塗膜が素地から引き剥がされるまでの回数を測定した。
【0053】
c.加工性(T−Bend)試験
T−曲げ試験は、作成された試片を常温において180°折り曲げ、折り曲げられた個所にテーピングして塗膜剥離および損傷の有無を点数化した。
【0054】
d.付着性試験
塗膜が形成された試片に碁盤の目状に合計100目のクロスカットを実施した後、PE粘着テープを貼着した後、再剥離するときに試片から引き剥がされずに試片に残留する塗膜の碁盤の目の総数を目視にて判別した。
【0055】
e.鉛筆硬度
NCCA−II−12(National Coil Coaters Associationにおいて定めた相対的な鉛筆硬度の評価仕様)により測定した。
【0056】
f.耐食性試験
KSD9502の試験法のうち純粋塩水噴霧試験を適用して、錆の発生の度合いを観察しつつ最大2,000時間かけて試験した。塩水噴霧試験の終了後、塗膜に付けた傷の両側3mm以外の外側部分に対して錆発生の有無、錆発生の度合い、膨らみ、外観変化を測定した。
【0057】
g.耐寒チッピング性試験
耐寒チッピング性試験は、車両の運行中に塗膜にぶつかる石、砂、融雪塩などによる塗膜の損傷の度合いを評価するための試験であり、普通、常温(25℃)もしくは耐寒(−20℃)において試片を据え置きした後、規定の圧力によりチップストーンを4.2kgf/cmの圧力にて噴射して塗膜表面の損傷の度合いを評価した。
【0058】
h.耐寒チッピング性の評価方法
試験した試片表面の損傷の度合いを基準版(3級)を基準として比較評価するが、剥離されたチップサイズが2mm以上もしくはチッピング試験を施した試片を耐塩水試験した後、発錆状態を点数にて評価した。
【0059】
6.試験結果
上記の試験方法に従い実施例1〜4と比較例1を試験した結果を下記表2に示す。
【0060】
【表2】

【0061】
前記表2における加工性および耐寒チッピング性の評価において、5点は最も良好、0点は不良を意味する。
【0062】
前記表2によれば、本発明の実施例1〜4の方法により製造した塗料組成物を用いて形成した塗膜が、加工性、耐溶剤性、付着性、耐食性、耐寒チッピング性などの項目において、比較例1の方法により製造した塗料を用いて形成した塗膜よりも優れた性能を示している。本発明の製造例1〜4に従い製造されたイミダゾールブロックポリウレタン樹脂の水酸基の含量が増加するに伴い、付着性の改善が確認され、既存のイミダゾール類化合物とエポキシ化合物を例示した比較例1の結果から明らかなように、既存のイミダゾール類化合物とエポキシ化合物の硬化結果物の優れた付着力にも関わらず、プレコーテッド自動車鋼板用塗料に使用できなかった根本的な問題点である脆弱な加工性が顕著に改善される効果を達成した。本発明の目的である自動車塗装工程のうち静電塗装工程をプレコーテッド自動車鋼板の製造方式に転換する上で欠かせない要求条件である金属に対する強い付着力と柔軟な加工性を達成することにより、世界的な傾向である自動車塗料のモジュールプロセスを可能にしただけではなく、自動車の製造工程のうち塗装工程の清浄・生産の源泉技術を確保したという次元において極めて重要な意味があり、工程の単純化により自動車生産力の増大およびエネルギー節減に寄与する効果が極めて多大であると認められる。
【0063】
以上述べたように、本発明の好適な実施例によるイミダゾールブロックポリウレタン樹脂組成物とこれを用いたプレコーテッド自動車鋼板用の塗料は、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内において様々な変形および変更が可能であるということがこの分野における通常の技術者であれば十分に理解できるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリコール成分とカルボン酸との縮合反応により製造したポリエステル樹脂に、イソシアネート化合物を加えて40〜70℃の温度において付加反応中に、一部のイソシアネート化合物はイミダゾール化合物を添加してブロッキングさせることを特徴とする屈曲性が改善されたイミダゾールブロックポリウレタン樹脂の製造方法。
【請求項2】
ポリエステル樹脂は水酸基値が10〜50mgKOH/gであり、重量平均分子量が5,000〜10,000であることを特徴とする請求項1に記載の 屈曲性が改善されたイミダゾールブロックポリウレタン樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記イソシアネート化合物は、ポリエステル樹脂に対する水酸基の当量比(イソシアネート化合物水酸基当量/ポリエステル樹脂水酸基当量)が0.2〜0.8になるように付加することを特徴とする請求項1に記載の屈曲性が改善されたイミダゾールブロックポリウレタン樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記イミダゾール化合物は、イソシアネート化合物100重量部に対して5〜30重量部を添加することを特徴とする請求項1に記載の屈曲性が改善されたイミダゾールブロックポリウレタン樹脂の製造方法。
【請求項5】
前記イミダゾールブロックポリウレタン樹脂は、合成中にNCOの含量が0.5%以下になるまで反応させた後、イミダゾール類化合物100重量部に対して、100〜1,000重量部を付加することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の屈曲性が改善されたイミダゾールブロックポリウレタン樹脂の製造方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の製造方法により製造されるが、製造された最終的なイミダゾールブロックポリウレタン樹脂の水酸基値が10〜50mgKOH/gであり、最終的な重量平均分子量が20,000〜30,000であることを特徴とするイミダゾールブロックポリウレタン樹脂。
【請求項7】
請求項6に記載のイミダゾールブロックポリウレタン樹脂を含有することを特徴とするプレコーテッド自動車鋼板用塗料。

【公開番号】特開2012−107172(P2012−107172A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27633(P2011−27633)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(511037115)ピーピージー インダストリーズ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】