屈曲振動片、その製造方法、及び電子機器
【課題】屈曲振動片の振動腕の側面に厚さ方向に分離した電極を高精度にパターニングする。
【解決手段】屈曲振動片21は、基部22から延出する断面矩形の振動腕24が下面24b及び上面24aと左側面24c及び右側面24dとの間に、それぞれ左側面及び右側面に交わる段差面27a,28aと上面及び下面に交わる段差側面27b,28bとからなる第1、第2段差部27,28を有し、左右側面の第1、第4検出電極29a,29dと段差側面の第2、第3検出電極29b,29cとが、電極膜を形成していない段差面27a,28aの部分によりそれぞれ振動腕の厚さ方向に分離されている。第1〜第4検出電極は、従来のフォトエッチングにより、一般的な露光機を用いた上下面からの露光によって高精度にパターニングされる。
【解決手段】屈曲振動片21は、基部22から延出する断面矩形の振動腕24が下面24b及び上面24aと左側面24c及び右側面24dとの間に、それぞれ左側面及び右側面に交わる段差面27a,28aと上面及び下面に交わる段差側面27b,28bとからなる第1、第2段差部27,28を有し、左右側面の第1、第4検出電極29a,29dと段差側面の第2、第3検出電極29b,29cとが、電極膜を形成していない段差面27a,28aの部分によりそれぞれ振動腕の厚さ方向に分離されている。第1〜第4検出電極は、従来のフォトエッチングにより、一般的な露光機を用いた上下面からの露光によって高精度にパターニングされる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は屈曲振動片及びその製造方法に関する。更に本発明は、この屈曲振動片を用いた様々な電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタルスチールカメラ、ビデオカメラ、ナビゲーション装置、車体姿勢検出装置、ポインティングデバイス、ゲームコントローラー、携帯電話、ヘッドマウントディスプレイ等の各種電子機器には、角速度、角加速度、加速度、力等の物理量を検出するために、屈曲振動片を用いた圧電振動ジャイロ等のセンサーが広く使用されている。圧電振動ジャイロ用の屈曲振動片として、互いに平行な駆動用振動腕と検出用振動腕とを備える音叉型屈曲振動片が知られている(例えば、特許文献1,2を参照)。
【0003】
一般に音叉型屈曲振動片において、駆動用振動腕の励振電極に交流電圧を印加すると、両振動腕は振動片の平面内で屈曲振動する。この状態で屈曲振動片が前記振動腕の延長方向の周りに回転運動すると、コリオリ力が発生して、両振動腕は振動片の平面に垂直な方向に屈曲振動する。これにより検出用振動腕の検出電極間に発生する電圧を、屈曲振動片の前記回転運動の角加速度等に対応した電気信号として検出する。
【0004】
検出用振動腕は、その上下面ではなく、左右側面に検出電極を設けることによって、屈曲振動片の前記回転運動により発生する電圧を高感度に検出できることが知られている(例えば、特許文献2,3を参照)。図11は、このような従来の音叉型屈曲振動片の典型例を示している。音叉型屈曲振動片1は、矩形の基部2から平行に延長する駆動用振動腕3と検出用振動腕4とを備える。駆動用振動腕3は上下面及び左右側面にそれぞれ駆動電極5a〜5dを有し、交流電圧を印加して、隣接する前記駆動電極間で電界を交互に逆向きに発生させると、前記両振動腕はX軸方向に互いに逆向きに屈曲振動する。検出用振動腕4は左右側面にそれぞれ2つの検出電極6a,7a及び6b,7bを、その厚さ方向に分離して互いに異極となるように配置する。両振動腕3、4がX軸方向に屈曲振動している状態で、屈曲振動片1がY軸方向の周りに回転運動すると、前記両振動腕はZ軸方向に互いに逆向きに屈曲振動する。これにより検出用振動腕4内に発生する電界は、左右側面で対向する検出電極6aと6b、7aと7b間で効率良く、より大きな電圧として検出できるので、高感度が得られる。
【0005】
一般に屈曲振動片の前記電極は、フォトリソグラフィー技術を利用したウエットエッチングにより電極膜をパターニングすることによって形成される。図12は、図11の屈曲振動片1において、検出用振動腕4の側面に検出電極6a,6b,7a,7bを形成する過程を例示している。先ず、水晶等のウエハをフォトエッチングして屈曲振動片1の外形を加工して素子片を形成し、その表面に電極膜8を被着させ、その上にフォトレジスト膜9を塗布する。この素子片の上面にフォトマスク10を直接接触させるコンタクト方式で配置する(図12(A))。
【0006】
フォトマスク10には、フォトレジスト膜9の露光したい領域に対応する開口部11a〜11cが設けられている。フォトレジスト膜9の上面略全面の領域9aは、紫外光を開口部11aを通して上方から垂直に照射し、左右側面の厚み方向中央付近の領域9b,9cは、開口部11b,11cを通して斜め上方から照射する。次に前記素子片の下面にフォトマスク10を同じくコンタクト方式で配置し、同様にフォトレジスト膜9の下面略全面の領域9dと左右側面の領域9b,9cとを露光する。
【0007】
次に、フォトレジスト膜9を現像し、露光した前記領域を除去してレジストパターン12を形成し、電極膜8を露出させる(図12(B))。露出した電極膜部分をウエットエッチングにより除去し、水晶面を露出させる(図12(C))。最後に、残存するレジストパターン12を完全に除去すると、検出用振動腕4の側面に厚さ方向に分離した検出電極6a,6b,7a,7bが形成される(図12(D))。
【0008】
また、厚み方向のエッチングレートが幅方向よりも高い圧電材料のウエハを用いることにより、検出用振動腕の側面に厚み方向に分割した検出電極を形成する圧電振動片の製造方法が知られている(例えば、特許文献4を参照)。この方法では、振動用振動腕の側面中央に長手方向の突条が残るように、圧電振動片をウエットエッチングで外形加工しかつ電極膜を被着し、その上に形成したフォトレジスト膜を上方及び下方から垂直に同時に露光しかつ現像して、振動用振動腕上下面及び突条先端に電極膜が露出するようにパターニングし、露出した電極膜部分をエッチングすることによって、検出用振動腕の側面に厚み方向に分割した検出電極を形成する。
【0009】
更に、水晶板に振動子の外形を両面から、その厚みを一部残すようにエッチングして溝を形成しかつその側面に電極膜を形成した後、該溝のエッチング残りの部分を機械的に折って、個々の振動子を分離させると同時に、その際に溝に残存する突起によって厚み方向に分離させた電極を形成する方法が知られている(例えば、特許文献5を参照)。また、前記溝のエッチング残りの部分を再エッチングで除去することにより、同様に電極を厚み方向に分割させる方法が知られている(例えば、特許文献6を参照)。
【0010】
圧電振動ジャイロ用の屈曲振動片としては、前記音叉型以外に、様々な構造のものが提案されている。例えば、基部から平行に延長する1対の駆動用振動腕と、該基部から平行に駆動用振動腕とは逆向きに延長する1対の検出用振動腕とを備える所謂H型即ち両側音叉型の屈曲振動片が知られている(例えば、特許文献2,3,7を参照)。また、基部から平行に延長する3本又はそれ以上の振動腕を備える多脚型の屈曲振動片が知られている(例えば、特許文献8を参照)。
【0011】
また、上述したように検出用振動腕の左右側面にそれぞれ配置した検出電極に加えて、検出用振動腕の上下面にその長手方向に沿ってそれぞれ溝を形成し、各溝の左右内側面にそれぞれ検出電極を配置した屈曲振動片が知られている(例えば、特許文献7を参照)。このように検出電極を配置することによって、振動片の左右方向に対向する検出電極間の距離が小さくなるので、対向電極間に発生する電圧をより効率良く検出でき、更に感度が向上する。
【0012】
屈曲振動片の駆動用振動腕も、その上下面にその長手方向に沿ってそれぞれ溝を形成し、その内面に上面側及び下面側の駆動電極を配置することによって、対向する左右側面の駆動電極との間で電界を上下面に対して平行に発生させ、電界効率を向上させてQ値を高め、CI値を低く抑制することができる(例えば、特許文献9を参照)。特許文献9によれば、駆動用振動腕の長手方向溝は、その上面又は下面に、段差部(上面又は下面の内側面)と中面部とを有する段差として形成することができる。溝内に配置される上面側及び下面側の駆動電極は、段差の段差部と中面部とに連なるように形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平9−14973号公報
【特許文献2】特開2002−340559号公報
【特許文献3】特開2007−93400号公報
【特許文献4】特許第4010218号公報
【特許文献5】特開平8−18371号公報
【特許文献6】特開平8−162874号公報
【特許文献7】特開2004−125458号公報
【特許文献8】特開2006−262289号公報
【特許文献9】特開2009−189039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、図12に関連して上述したように、検出腕の側面に検出電極を厚さ方向に分割するために、紫外光をフォトレジスト膜に斜めに照射してパターニングする従来の方法は、フォトマスクの開口部とフォトレジスト膜の露光領域間の距離が大きくなるので、露光光に回折が生じる。そのため、解像度が低く、パターン精度が悪くなる虞がある。その結果、電極膜のウエットエッチングはサイドエッチング量が大きくなり易く、検出電極を高精度にパターニングすることが困難で、製造上不良率が高くなる。特に微細な電極パターンの形成が困難なため、屈曲振動片の小型化が妨げられる。更に、コンタクト方式の露光は、屈曲振動片を上下片面ずつ露光しなければならないので、製造工程が複雑になり、フォトマスクの寿命も短くなる。また、露光光を斜めに照射するためには、特殊な露光機が必要である。これらの結果、製造コストが高くなるという問題がある。
【0015】
また、厚み方向のエッチングレートが幅方向よりも高い圧電材料のウエハを用いる上記特許文献4記載の従来方法は、フォトレジスト膜の露光がコンタクト方式ではなく、振動腕の上方及び下方から垂直に同時に露光できるので、製造工程がより簡単であり、一般的な露光機を使用できるので有利である。しかしながら、使用可能な圧電材料や結晶配向が制限されるという問題がある。
【0016】
上記特許文献5記載の従来方法は、溝のエッチング残りの部分を折るために追加の工程や特殊な治具が必要である。そのために作業が複雑化し、製造コストを増大させるという問題がある。また、エッチング残りの部分を折る際に、水晶の破片が水晶振動子に付着して振動特性を変化させたり、隣接する他の水晶振動子や治具と接触して電極膜を損傷し、不良品の発生及び歩留まりの低下を招く虞がある。更に、折る位置を正確に制御できないので、振動腕の側面に残存する突起の大きさが不均一になり、振動腕のバランスが損なわれて不要な振動を発生させ、振動特性を低下させる虞がある。
【0017】
上記特許文献6の従来方法も、エッチング残りの部分を再エッチングで完全に除去するために追加の工程が必要で、同様に作業が複雑化し、製造コストを増大させるという問題がある。また、エッチング残りの部分を再エッチングする際に、水晶の結晶異方性で振動腕の側面にオーバエッチングによる凹みが形成されたり、エッチング残りの部分の上に形成したレジスト膜及び電極膜を除去する際に発生する電極材料が電極に再付着する虞がある。
【0018】
そこで本発明は、上述した従来の問題点に鑑みてなされたもので、その少なくとも1つの問題点を解決することを目的としている。本発明の目的は、使用する材料やその結晶配向性に制限されることなく、振動腕の側面に厚さ方向に分離される電極を、一般的な露光機を用いてパターニングする従来のフォトエッチングを利用して高精度に形成することができる屈曲振動片を提供することにある。また、本発明の目的は、そのように振動腕の側面に厚さ方向に分離された電極を有する屈曲振動片において、小型化の要求にも容易に対応できるようにすることにある。特に本発明の屈曲振動片は、圧電振動ジャイロ等のセンサー素子に適用した場合に、小型化しても、検出用振動腕に発生する電荷を効率良く検出して高感度を達成し得ることを目的とする。
【0019】
本発明の別の目的は、このような屈曲振動片を簡単にかつ低コストで実現し得る屈曲振動片の製造方法を提供することにある。
【0020】
本発明の更に別の目的は、このような屈曲振動片を備えたセンサー素子等のデバイス、特にこのような高感度なセンサー素子を搭載することにより、高性能で製造コストの低減及び小型化が可能な電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の屈曲振動片は、上記目的を達成するために、基部と、該基部から延出し、上面、下面及び左右側面を有する断面多角形の振動腕と、該振動腕の左右側面にそれぞれ設けられている電極とを備え、
振動腕の少なくとも一方の側面の電極が、その厚さ方向に分離されている第1電極と第2電極とからなり、
振動腕がその上下面に垂直な方向に沿って屈曲振動する際に、第1電極とそれに対応する該振動腕の他方の側面の電極との間に発生する電界の向きと、第2電極とそれに対応する該他方の側面の電極との間に発生する電界の向きとが互いに逆向きになるように、前記各電極が設けられ、
振動腕が、一方の側面と上面又は下面との間に形成されている段差部を有し、該段差部が、一方の側面に交わる段差面と、上面又は下面に交わる段差側面とからなり、第1電極と第2電極とが、段差面の電極膜が形成されていない部分により分離して、一方の側面と段差側面とに形成されていることを特徴とする。
【0022】
このように振動腕の段差部を形成しかつ少なくとも部分的に電極膜の無い段差面を設けるという比較的簡単な構成によって、振動腕の側面にその厚さ方向に分離している電極を容易に形成することができる。全面的に又は部分的に電極膜の無い段差面は、従来のフォトエッチングを利用し、一般的な露光機を用いた露光により比較的簡単に、高精度にパターニングすることができる。
【0023】
更に、段差側面の電極とこれに対応する側面の電極間の距離が、従来の左右側面間の距離よりも小さくなるので、電極間の静電容量が従来よりも増大する。従って、本発明の屈曲振動片を、例えば圧電振動ジャイロ等のセンサー素子に適用した場合、電極間で発生する電荷を効率良く検出できるので、高い感度が得られる。また、本発明の振動腕を駆動用振動腕に適用した場合には、機械電気変換効率が良く、高いQ値かつ低いCI値の優れた屈曲振動片が得られる。従って、高性能かつ高品質で小型化可能な屈曲振動片を実現することができる。
【0024】
或る実施例では、振動腕の他方の側面の電極が、その厚さ方向に分離されている第3電極と第4電極とからなり、
振動腕がその上下面に垂直な方向に沿って屈曲振動する際に、第1電極とそれに対応する第3電極との間に発生する電界の向きと、第2電極とそれに対応する第4電極との間に発生する電界の向きとが互いに逆向きになるように、前記各電極が設けられ、
振動腕が、他方の側面と上面又は下面との間に形成されている第2の段差部を更に有し、第2の段差部が、他方の側面に交わる第2の段差面と、上面又は下面に交わる第2の段差側面とからなり、第3電極と第4電極とが、第2の段差面の電極膜が形成されていない部分により分離して、他方の側面と第2の段差側面とに形成されている。
【0025】
このように振動腕の左右両側面に段差部を設けることによって、振動腕は、面外方向にバランス良く屈曲振動を行うことができる。更に、第1電極とそれに対応する第3電極間の距離、及び第2電極とそれに対応する第4電極間の距離が、従来の左右側面間の距離よりも小さくなり、電極間の静電容量が従来よりも更に増大する。従って、この屈曲振動片を圧電振動ジャイロ等のセンサー素子に適用した場合には、振動腕の屈曲振動により発生する電荷をより効率良く検出できるので、より高感度が得られる。
【0026】
別の実施例では、振動腕が、その上面又は下面に凹設されている長手方向の溝を有し、該長手方向溝の一方の内側面に形成されている第5電極と他方の内側面に形成されている第6電極とを有し、第5電極と第6電極とが、長手方向溝の底面の電極膜が形成されていない部分で分離され、
振動腕がその上下面に垂直な方向に沿って屈曲振動する際に、第5電極とそれに対応する振動腕の左側面の電極との間に発生する電界の向きが、第6電極とそれに対応する振動腕の右側面の電極との間に発生する電界の向きとは互いに同じ向きになり、長手方向溝を設けていない下面側又は上面側において左側面の電極と右側面の電極との間に発生する電界の向きとは逆向きになるように、前記各電極が設けられている。
【0027】
このように左右側面間の長手方向溝の各内側面に電極を追加することによって、対応する電極間の距離をいずれも小さくすることができ、電極間の静電容量が従来よりも更に増大する。従って、振動腕の屈曲振動により発生する電荷を更に効率良く検出でき、より一層高感度なセンサー素子が得られる。
【0028】
更に別の実施例によれば、振動腕の段差部が複数の段差から構成されるので、それら複数の段差の段差側面を選択して電極を形成することによって、それに対応する側面の電極との距離及び静電容量を使用条件に応じて調整することができる。更に、振動腕がよりバランス良く屈曲振動し得るように、その断面形状を設計することができる。
【0029】
また別の実施例では、振動腕が、その上下面に垂直な方向に沿う屈曲振動を、該振動腕に設けられている電極から出力される電気信号として検出するための検出用振動腕であり、基部から検出用振動腕の延出方向に沿って延長する駆動用振動腕と、該駆動用振動腕をその上下面に平行な方向に沿って屈曲振動させるように駆動用振動腕に設けられている駆動電極とを更に有することにより、音叉型の屈曲振動片が得られる。
【0030】
本発明の別の側面によれば、上述した本発明の屈曲振動片を製造する方法であって、
ウエハから屈曲振動片の外形を有する振動素子片を加工する過程と、
振動素子片の表面に電極膜を被着させ、その上にフォトレジスト膜を形成する過程と、
振動素子片の上面、下面及び段差面のフォトレジスト膜を上面側及び下面側から露光してパターニングする過程と、
該パターニングにより露出した電極膜の部分をエッチングにより除去して、振動腕の側面にその厚さ方向に分離した電極を形成する過程と、
残存するフォトレジスト膜を除去する過程とを含む方法が提供される。
【0031】
このように従来のフォトエッチング技術を利用し、一般的な露光機を用いた上面及び下面からの露光によって高精度にパターニングすることによって、検出用振動腕の側面に厚さ方向に分離した電極を形成することができる。従来技術のような斜め露光による電極膜のパターニングを必要としないので、本発明の屈曲振動片を比較的簡単にかつ低コストで製造することができる。
【0032】
本発明の更に別の側面によれば、上述した本発明の屈曲振動片を備えることによって、高性能で小型化可能な電子機器を低コストで提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】(A)図は本発明の第1実施例による屈曲振動片の概略平面図、(B)図はそのI−I線における駆動用振動腕の断面図、(C)図は同じく検出腕の断面図。
【図2】(A)図は本発明の第2実施例による屈曲振動片の概略平面図、(B)図はそのII−II線における検出用振動腕の断面図。
【図3】(A)図は本発明の第3実施例による屈曲振動片の概略平面図、(B)図はそのIII−III線における検出用振動腕の断面図。
【図4】(A)図は本発明の第4実施例による屈曲振動片の概略平面図、(B)図はそのIV−IV線における検出用振動腕の断面図。
【図5】(A)図は本発明の第5実施例による屈曲振動片の概略平面図、(B)図はそのV−V線における検出用振動腕の断面図。
【図6】(A)図は本発明の第6実施例による屈曲振動片の概略平面図、(B)図はそのVI−VI線における検出用振動腕の断面図。
【図7】(A)〜(D)図は第3実施例の屈曲振動片の検出用振動腕に検出電極をパターニングする過程を順に示す工程図。
【図8】本発明を適用した別の音叉型屈曲振動片を示す概略平面図。
【図9】本発明を適用した両側音叉型屈曲振動片を示す概略平面図。
【図10】本発明を適用した三脚型屈曲振動片を示す概略平面図。
【図11】(A)図は従来の音叉型屈曲振動片の概略平面図、(B)図はそのXI−XI線における駆動用振動腕の断面図、(C)図は同じく検出用振動腕の断面図。
【図12】(A)〜(D)図は図11の従来の屈曲振動片の検出用振動腕に検出電極をパターニングする過程を順に示す工程図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に、添付図面を参照しつつ、本発明の好適な実施例を詳細に説明する。尚、添付図面において、同一又は類似の構成要素には同一又は類似の参照符号を付して示す。
【0035】
図1は、例えば角速度センサーに使用される圧電振動ジャイロ用の、本発明の第1実施例による音叉型屈曲振動片を概略的に示している。音叉型屈曲振動片21は、矩形の基部22と、該基部から延長する駆動用振動腕23と、該駆動用振動腕に沿って前記基部から延長する検出用振動腕24とを備える。駆動用振動腕23及び検出用振動腕24は、それぞれ上面、下面及び左右側面を有する断面多角形をなし、互いに平行に配置されている。音叉型屈曲振動片21は、水晶又は他の圧電材料から一体に加工される。
【0036】
駆動用振動腕23は、図1(B)に示すように、その上下各面に形成された長手方向の溝25を有する。各長手方向溝25の内面にはそれぞれ第1駆動電極26aが設けられ、駆動用振動腕23の左右各側面にはそれぞれ第2駆動電極26bが設けられ、これらが互いに電気的に接続されて駆動用振動腕3を屈曲振動させる駆動電極を構成している。
【0037】
検出用振動腕24には、図1(C)に示すように、上向きの第1段差部27が上面24aと右側面24dとの間に、下向きの第2段差部28が下面24bと左側面24cとの間に設けられている。第1段差部27は、右側面24dに交わる上向きの段差面27aと、前記上面に交わる右向きの段差側面27bとを有する。第2段差部28は、左側面に交わる下向きの段差面28aと、前記下面に交わる左向きの段差側面28bとを有する。第1及び第2段差部27,28は、振動腕断面においてその中心軸に関して対称に、同じ寸法に形成される。
【0038】
検出用振動腕24の左右側面24c,24d及び段差側面27b,28bには、第1〜第4検出電極29a〜29dが設けられ、その面外方向の屈曲振動を検出するための検出電極を構成している。左側面24cの第1検出電極29aと段差側面28bの第2検出電極29bとは、電極膜を形成していない段差面28aにより、振動腕の厚さ方向に分離して互いに異極となるように配置される。同様に、段差側面27bの第3検出電極29cと右側面24dの第4検出電極29dとは、電極膜を形成していない段差面27aにより、振動腕の厚さ方向に分離して互いに異極となるように配置される。尚、図中段差面27a,28aは、全面的に電極膜が形成されていないが、部分的にのみ電極膜が形成されていない場合も、同様に前記第1、第2検出電極、及び第3、第4検出電極を分離させることができる。
【0039】
前記第1及び第2段差部の電極膜を形成していない段差面27a,28aは、振動腕表面に形成した電極膜をフォトエッチングによりパターニングする際に、垂直に露光光を照射できるので、特殊な装置や手法を用いることなく、一般的な露光機を用いた両面露光が可能である。そのため、微細なパターンであっても比較的容易にかつ高精度に転写することができる。従って、製造上不良率を小さくして歩留まりを向上させ、製造コストを低減できると共に、屈曲振動片の小型化にも十分に対応することができる。
【0040】
前記駆動電極に所定の交流電圧を印加すると、隣接する第1、第2駆動電極26a、26b間で電界が、図1(B)に実線及び破線の矢印で示すようにX軸方向に交互に逆向きに発生する。これにより、駆動用振動腕23は上下面と同じXY面内で屈曲振動する。検出用振動腕24は、駆動用振動腕23とのバランスを取るように、同じくXY面内で駆動用振動腕23と互いに逆向きに屈曲振動する。
【0041】
この状態で、屈曲振動片21がY軸周りに即ち前記振動腕の延長方向の周りに回転すると、駆動用振動腕23の振動方向と直交する向きに即ち上下面に対して垂直なZ軸方向にコリオリ力が作用する。これにより、駆動用振動腕23と検出用振動腕24は、Z軸方向に互いに逆向きに屈曲振動する。このとき、検出用振動腕24には、X軸方向の電界が、図1(C)に実線及び破線の矢印で示すように、左側面24cの第1検出電極29aと対応する段差側面27bの第3検出電極29cとの間に、段差側面28bの第2検出電極29bと対応する右側面24dの第4検出電極29dとの間に、それぞれ交互に逆向きにかつ互いに逆向きに発生する。これによりX軸方向に発生する電荷を前記検出電極から電圧信号として取り出すことによって、屈曲振動片21の前記回転の角速度が検出される。
【0042】
このように一方の側面の検出電極に対応する検出電極を前記段差側面に設けることにより、左右に即ちX軸方向に対応する前記検出電極間の距離が従来よりも小さくなるので、その静電容量が増大する。従って、検出用振動腕24の面外方向の屈曲振動により前記検出電極間に発生した電荷を効率良く検出でき、高感度が得られる。
【0043】
本実施例では、第1及び第2段差27,28が同じ寸法にかつ対称に形成されているので、屈曲振動片21が面外方向にバランス良く屈曲振動を行う。更に、X軸方向に対応する2組の前記検出電極同士の間隔が一致する。即ち、上面側の第1検出電極29aと第3検出電極29cとの間隔と、下面側の第2検出電極29bと第4検出電極29dとの間隔が同じである。そのため、屈曲振動片21の上面側と下面側とで検出した電圧信号がバランスよく出力される。
【0044】
また、屈曲振動片21の上面側の第1、第3検出電極29a,29c間の出力と下面側の第2、第4検出電極29b,29d間の出力との差動を取ることによって、不要なノイズをキャンセルすることができる。例えば、検出用振動腕24が軸線方向即ちY軸方向に伸縮した場合、それにより発生し得る不要な信号を除去することができる。これにより、より高精度な発生電荷の検出が可能になる。
【0045】
別の実施例では、一方の側面側、例えば左側面側の第1検出電極29aと第2検出電極29bを接地電極にすることができる。この場合、反対側の第3検出電極29cと第4検出電極29dとから、互いに異極の電圧信号が出力される。このように構成することによって、検出用振動腕24の上面側と下面側間で出力の差動を容易に取ることができ、また前記検出電極から引き出される配線構造を簡略化できる。
【0046】
図2は、本発明の第2実施例による音叉型屈曲振動片を概略的に示している。第2実施例の音叉型屈曲振動片31は、第1実施例と同様に、矩形の基部32と、該基部から互いに平行に延長しかつそれぞれ上面、下面及び左右側面を有する断面多角形の駆動用振動腕33及び検出用振動腕34とを備える。駆動用振動腕33は、第1実施例の駆動用振動腕23と同じ構成を有するので、説明を省略する。
【0047】
検出用振動腕34には、図2(B)に示すように、上向きの第1段差部35が上面34aと左側面34cとの間に、下向きの第2段差部36が下面34bと右側面34dとの間に設けられている。第1段差部35は、左側面34cに交わる上向きの段差面35aと、上面34aに交わる左向きの段差側面35bとを有する。第2段差部36は、右側面34dに交わる下向きの段差面36aと、下面34bに交わる右向きの段差側面36bとを有する。
【0048】
第1及び第2段差部35,36は、第1実施例と同様に、振動腕断面においてその中心軸に関して対称に、同じ寸法に形成される。本実施例では、第1及び第2段差部35,36が第1実施例よりも浅くかつ幅広に形成される。従って、各段差側面35b,36bとそれぞれ対向する左右側面34c,34d間の距離が第1実施例よりも小さく、各段差側面35b,36bの高さが第1実施例よりも低い。
【0049】
検出用振動腕34の左右側面34c,34d及び段差側面35b,36bには、第1〜第4検出電極37a〜37dが設けられ、その面外方向の屈曲振動を検出するための検出電極を構成している。段差側面35bの第1検出電極37aと左側面34cの第2検出電極37bとは、電極膜を形成していない段差面35aにより、振動腕の厚さ方向に分離して互いに異極となるように配置される。同様に、右側面34dの第3検出電極37cと段差側面36bの第4検出電極37dとは、電極膜を形成していない段差面36aにより、振動腕の厚さ方向に分離して互いに異極となるように配置される。尚、図中段差面35a,36aは、全面的に電極膜が形成されていないが、部分的にのみ電極膜が形成されていない場合も、同様に前記第1、第2検出電極、及び第3、第4検出電極を分離させることができる。
【0050】
所定の交流電圧を印加して駆動用振動腕33と検出用振動腕34とをXY面内で互いに逆向きに屈曲振動させた状態で、屈曲振動片31がY軸周りに回転すると、コリオリ力の作用により、前記両振動腕はZ軸方向に互いに逆向きに屈曲振動する。このとき、検出用振動腕34には、X軸方向の電界が、図2(B)に実線及び破線の矢印で示すように、段差側面35bの第1検出電極37aと対応する右側面34dの第3検出電極37cとの間に、段差側面36bの第4検出電極37dと対応する左側面34cの第2検出電極37bとの間に、それぞれ交互に逆向きにかつ互いに逆向きに発生する。これによりX軸方向に発生する電荷が、前記検出電極から電圧信号として取り出される。
【0051】
別の実施例では、一方の側面側、例えば左側面側の第1検出電極37aと第2検出電極37bを接地電極にすることができる。この場合、反対側の第3検出電極37cと第4検出電極37dとから、互いに異極の電圧信号が出力される。このように構成することによって、検出用振動腕34の上面側と下面側間で出力の差動を容易に取ることができ、また前記検出電極から引き出される配線構造を簡略化できる。
【0052】
本実施例は、第1実施例よりも、左右に即ちX軸方向に対応する前記検出電極間の距離が小さくなるので、その静電容量が更に増大する。従って、検出用振動腕34の面外方向の屈曲振動により前記検出電極間に発生した電荷をより効率良く検出でき、より高感度が得られる。その他の利点は、第1実施例と同じであるので、説明を省略する。
【0053】
図3は、本発明の第3実施例による音叉型屈曲振動片を概略的に示している。第3実施例の音叉型屈曲振動片41は、第1実施例と同様に、矩形の基部42と、該基部から互いに平行に延長しかつそれぞれ上面、下面及び左右側面を有する断面多角形の駆動用振動腕43及び検出用振動腕44とを備える。駆動用振動腕43は、第1実施例の駆動用振動腕23と同じ構成を有するので、説明を省略する。
【0054】
検出用振動腕44には、図3(B)に示すように、下向きの第1段差部45が下面44bと左側面44cとの間に、下向きの第2段差部46が前記下面と右側面44dとの間に設けられている。第1段差部45は、左側面44cに交わる下向きの段差面45aと、下面44bに交わる左向きの段差側面45bとを有する。第2段差部46は、右側面44dに交わる下向きの段差面46aと、前記下面に交わる右向きの段差側面46bとを有する。検出用振動腕44は更に、上面44aに形成された長手方向の溝47を有する。長手方向溝47は、前記上面にそれぞれ交わる左右の溝内側面47a,47bと、前記溝内側面間の底面47cとを有する。
【0055】
第1、第2段差部45,46及び長手方向溝47は、振動腕断面において上下方向の中心軸に関して対称に配置される。従って、屈曲振動片41は、バランス良く面外方向に屈曲振動し、不要な振動を発生し難い利点がある。
【0056】
検出用振動腕44の左右側面44c,44d及び段差側面45b,46bには、第1〜第4検出電極48a〜48dが設けられ、長手方向溝47の溝内側面47a,47bには、第5,第6検出電極48e,48fが設けられ、その面外方向の屈曲振動を検出するための検出電極を構成している。左側面44cの第1検出電極48aと段差側面45bの第2検出電極48bとは、電極膜を形成していない段差面45aにより、振動腕の厚さ方向に分離して互いに異極となるように配置される。同様に、右側面44dの第3検出電極48cと段差側面46bの第4検出電極48dとは、電極膜を形成していない段差面46aにより、振動腕の厚さ方向に分離して互いに異極となるように配置される。長手方向溝47内の第5検出電極48eと第6検出電極48fとは、電極膜を形成していない前記溝の底面47cにより、振動腕の幅方向に分離して互いに異極となるように配置される。尚、図中段差面45a,46aは、全面的に電極膜が形成されていないが、部分的にのみ電極膜が形成されていない場合も、同様に前記第1、第2検出電極、及び第3、第4検出電極を分離させることができる。
【0057】
所定の交流電圧を印加して駆動用振動腕43と検出用振動腕44とをXY面内で互いに逆向きに屈曲振動させた状態で、屈曲振動片41がY軸周りに回転すると、コリオリ力の作用により、前記両振動腕はZ軸方向に互いに逆向きに屈曲振動する。このとき、検出用振動腕44の上面側には、X軸方向の電界が、図3(B)に実線及び破線の矢印で示すように、左側面44cの第1検出電極48aと対応する左内側面47aの第5検出電極48eとの間に、右内側面47bの第6検出電極48fと対応する右側面44dの第3検出電極48cとの間に、それぞれ交互に逆向きにかつ互いに同じ向きに発生する。検出用振動腕44の下面側では、X軸方向の電界が、段差側面45bの第2検出電極48bと対応する段差側面46bの第4検出電極48dとの間に、それぞれ交互に逆向きにかつ前記上面側のX軸方向の電界とは逆向きに発生する。これによりX軸方向に発生する電荷が、前記検出電極から電圧信号として取り出される。
【0058】
別の実施例では、一方の側面側、例えば左側面側の第1検出電極48aと第2検出電極48b、及び前記長手方向溝の右内側面47bの第6検出電極48fを接地電極にすることができる。この場合、第3検出電極48c及び第5検出電極48eと第4検出電極48dとから、互いに異極の電圧信号が出力される。このように構成することによって、検出用振動腕44の上面側と下面側間で出力の差動を容易に取ることができる。
【0059】
本実施例は、検出用振動腕44の上面側において、前記検出電極間の静電容量が第2実施例の略2倍になるので、発生した電荷をより効率良く検出でき、より一層高い感度が得られる。その他の利点は、第1実施例と同じであるので、説明を省略する。
【0060】
図4は、本発明の第4実施例による音叉型屈曲振動片を概略的に示している。第4実施例の音叉型屈曲振動片51は、第1実施例と同様に、矩形の基部52と、該基部から互いに平行に延長しかつそれぞれ上面、下面及び左右側面を有する断面多角形の駆動用振動腕53及び検出用振動腕54とを備える。駆動用振動腕53は、第1実施例の駆動用振動腕23と同じ構成を有するので、説明を省略する。
【0061】
検出用振動腕54には、図4(B)に示すように、上向きの第1段差部55が上面54aと左側面54cとの間に、下向きの第2段差部56が下面54bと右側面54dとの間に設けられている。第1段差部55は、上下に連続する2つの段差から構成される。前記2つの段差は、それぞれ上向きの段差面55a1,55a2と右向きの段差側面55b1,55b2とを有する。上側の段差側面55b1は上面54aと交わり、下側の段差面55a2は右側面54dと交わり、上側の段差面55a1は下側の段差側面55b2と交わっている。第2段差部56は、左側面54cに交わる下向きの段差面56aと、前記下面に交わる左向きの段差側面56bとを有する。これにより、前記検出用振動腕がよりバランス良く屈曲振動し得るように、その断面形状を設計することができる。
【0062】
検出用振動腕54の左右側面54c,54d及び段差側面55b1,56bには、第1〜第4検出電極57a〜57dが設けられ、その面外方向の屈曲振動を検出するための検出電極を構成している。左側面54cの第1検出電極57aと段差側面56bの第2検出電極37bとは、電極膜を形成していない段差面56aにより、振動腕の厚さ方向に分離して互いに異極となるように配置される。同様に、段差側面55b1の第3検出電極57cと右側面34dの第4検出電極57dとは、電極膜を形成していない段差面55a1,55a2により、振動腕の厚さ方向に分離して互いに異極となるように配置される。尚、図中段差面55a1,55a2,56aは、全面的に電極膜が形成されていないが、部分的にのみ電極膜が形成されていない場合も、同様に前記第1、第2検出電極、及び第3、第4検出電極を分離させることができる。
【0063】
所定の交流電圧を印加して駆動用振動腕53と検出用振動腕54とをXY面内で互いに逆向きに屈曲振動させた状態で、屈曲振動片51がY軸周りに回転すると、コリオリ力の作用により、前記両振動腕はZ軸方向に互いに逆向きに屈曲振動する。このとき、検出用振動腕54には、X軸方向の電界が、図4(B)に実線及び破線の矢印で示すように、左側面54cの第1検出電極57aと対応する段差側面55b1の第3検出電極57cとの間に、段差側面56bの第2検出電極57bと対応する右側面54dの第4検出電極57dとの間に、それぞれ交互に逆向きにかつ互いに逆向きに発生する。これによりX軸方向に発生する電荷が、前記検出電極から電圧信号として取り出される。
【0064】
別の実施例では、第3検出電極57cを、上側の段差側面55b1でなく、下側の段差側面55b2に設けることができる。また、第1段差部55の上側及び下側の段差側面55b1,55b2双方に検出電極を設けることができる。このようにして、左側面の第1検出電極57aと対応する検出電極間の距離及び静電容量を使用条件に応じて調整することができる。
【0065】
また、別の実施例では、一方の側面側、例えば左側面側の第1検出電極57aと第2検出電極57bを接地電極にすることができる。この場合、反対側の第3検出電極57cと第4検出電極57dとから、互いに異極の電圧信号が出力される。このように構成することによって、検出用振動腕54の上面側と下面側間で出力の差動を容易に取ることができ、また前記検出電極から引き出される配線構造を簡略化できる。
【0066】
前記第1段差部の上側の段差と下側の段差とは、必ずしも連続して設ける必要が無い。例えば、別の実施例では、上側の段差と下側の段差とを傾斜面で繋ぐことができる。更に別の実施例では、前記第1段差部を3つ以上の段差で構成することもできる。
【0067】
本実施例は、上面側において、左右に即ちX軸方向に対応する前記検出電極間の距離が第1実施例よりも小さくなるので、その静電容量が更に増大する。従って、検出用振動腕54の面外方向の屈曲振動により前記検出電極間に発生した電荷をより効率良く検出でき、より高感度が得られる。その他の利点は、第1実施例と同じであるので、説明を省略する。
【0068】
図5は、本発明の第5実施例による音叉型屈曲振動片を概略的に示している。第5実施例の音叉型屈曲振動片61は、第1実施例と同様に、矩形の基部62と、該基部から互いに平行に延長しかつそれぞれ上面、下面及び左右側面を有する断面多角形の駆動用振動腕63及び検出用振動腕64とを備える。駆動用振動腕63は、第1実施例の駆動用振動腕23と同じ構成を有するので、説明を省略する。
【0069】
検出用振動腕64には、図5(B)に示すように、上向きの第1段差部65及び第2段差部66が上面64aと左側面64cとの間及び右側面64dとの間にそれぞれ設けられている。第1及び第2段差部65,66は、それぞれ左右側面64c,64dに交わる上向きの段差面65a,66aと、前記上面にそれぞれ交わる左右の段差側面65b,66bとを有する。前記第1、第2段差部は、振動腕断面において上下方向の中心軸に関して対称に配置される。従って、屈曲振動片61は、バランス良く面外方向に屈曲振動し、不要な振動を発生し難い利点がある。
【0070】
検出用振動腕64の左右側面64c,64d及び段差側面65b,66bには、第1〜第4検出電極67a〜67dが設けられ、その面外方向の屈曲振動を検出するための検出電極を構成している。段差側面65bの第1検出電極67aと左側面64cの第2検出電極67bとは、電極膜を形成していない段差面65aにより、振動腕の厚さ方向に分離して互いに異極となるように配置される。同様に、段差側面66bの第3検出電極67cと右側面64dの第4検出電極67dとは、電極膜を形成していない段差面66aにより、振動腕の厚さ方向に分離して互いに異極となるように配置される。尚、図中段差面65a,66aは、全面的に電極膜が形成されていないが、部分的にのみ電極膜が形成されていない場合も、同様に前記第1、第2検出電極、及び第3、第4検出電極を分離させることができる。
【0071】
所定の交流電圧を印加して駆動用振動腕63と検出用振動腕64とをXY面内で互いに逆向きに屈曲振動させた状態で、屈曲振動片61がY軸周りに回転すると、コリオリ力の作用により、前記両振動腕はZ軸方向に互いに逆向きに屈曲振動する。このとき、検出用振動腕64には、X軸方向の電界が、図5(B)に実線及び破線の矢印で示すように、段差側面65bの第1検出電極67aと対応する段差側面66bの第3検出電極67cとの間に、左側面64cの第2検出電極67bと対応する右側面64dの第4検出電極67dとの間に、それぞれ交互に逆向きにかつ互いに逆向きに発生する。これによりX軸方向に発生する電荷が、前記検出電極から電圧信号として取り出される。
【0072】
別の実施例では、一方の側面側、例えば左側面側の第1検出電極67aと第2検出電極67bを接地電極にすることができる。この場合、反対側の第3検出電極67cと第4検出電極67dとから、互いに異極の電圧信号が出力される。このように構成することによって、検出用振動腕64の上面側と下面側間で出力の差動を容易に取ることができ、また前記検出電極から引き出される配線構造を簡略化できる。
【0073】
本実施例は、上記第1実施例の利点に加えて、第1及び第2段差部65,66が検出用振動腕64の上面にのみ形成されるので、屈曲振動片61の外形加工が、工数を少なくでき、容易になる。更に、厚さ方向に分離した前記検出電極を検出用振動腕64にパターニングする際に、上面側からの露光のみで済むので、製造上有利である。
【0074】
図6は、本発明の第6実施例による音叉型屈曲振動片を概略的に示している。第6実施例の音叉型屈曲振動片71は、第1実施例と同様に、矩形の基部72と、該基部から互いに平行に延長しかつそれぞれ上面、下面及び左右側面を有する断面多角形の駆動用振動腕73及び検出用振動腕74とを備える。駆動用振動腕73は、第1実施例の駆動用振動腕23と同じ構成を有するので、説明を省略する。
【0075】
検出用振動腕74には、図6(B)に示すように、上向きの段差部75が上面74aと右側面74dとの間に設けられている。段差部75は、右側面74dに交わる上向きの段差面75aと、前記上面に交わる右向きの段差側面75bとを有する。
【0076】
前記検出用振動腕の左右側面74c,74d及び段差側面75bには、第1〜第3検出電極76a〜76cが設けられ、その面外方向の屈曲振動を検出するための検出電極を構成している。段差側面75bの第2検出電極76bと右側面74dの第3検出電極76cとは、電極膜を形成していない段差面75aにより、振動腕の厚さ方向に分離して互いに異極となるように配置される。尚、図中段差面75aは、全面的に電極膜が形成されていないが、部分的にのみ電極膜が形成されていない場合も、同様に前記第2、第3検出電極を分離させることができる。
【0077】
所定の交流電圧を印加して駆動用振動腕73と検出用振動腕74とをXY面内で互いに逆向きに屈曲振動させた状態で、屈曲振動片71がY軸周りに回転すると、コリオリ力の作用により、前記両振動腕はZ軸方向に互いに逆向きに屈曲振動する。このとき、検出用振動腕74には、X軸方向の電界が、図6(B)に実線及び破線の矢印で示すように、左側面74cの第1検出電極76aと対応する段差側面75bの第2検出電極76bとの間に、前記第1検出電極と対応する右側面74dの第3検出電極76cとの間に、それぞれ交互に逆向きにかつ互いに逆向きに発生する。これによりX軸方向に発生する電荷が、前記検出電極から電圧信号として取り出される。
【0078】
別の実施例では、前記左側面の第1検出電極76aを接地電極にすることができる。この場合、反対側の第2検出電極76bと第3検出電極76cとから、互いに異極の電圧信号が出力される。このように構成することによって、検出用振動腕74の上面側と下面側間で出力の差動を容易に取ることができる。
【0079】
本実施例は、上記第5実施例の利点に加えて、形成される段差部が1つだけであり、屈曲振動片71の外形加工が工数を少なくでき、容易になる。更に検出電極の数が3つだけであるので、その配線構造を簡素化することができる。
【0080】
上記各実施例の屈曲振動片は、従来のフォトエッチングにより、一般的な露光機を用いた上面及び下面からの同時露光によって高精度にパターニングすることによって、検出用振動腕の側面に厚さ方向に分離した電極を形成することができる。図7は、かかる従来のフォトエッチング技術を用いて、第3実施例の音叉型屈曲振動片41の検出用振動腕43に前記検出電極をパターニングする工程の好適な実施例を示している。
【0081】
先ず、水晶等のウエハをフォトエッチングして、屈曲振動片41の外形を有する振動素子片を形成する。図7(A)に示すように、第1,第2段差部45,46及び長手方向溝47を加工した前記振動素子片の検出用振動腕81の全面に電極膜82を被着しかつその上にフォトレジスト膜83を塗布する。検出用振動腕81の上方及び下方にそれぞれ投影レンズ84a,84bを配置し、その更に上方及び下方にそれぞれフォトマスク85a,85bを配置する。各フォトマスク85a,85bには、露光したいフォトレジスト膜83の領域83a〜83fに対応する開口部86a〜86fが設けられている。次に、一般的な露光機を用いて、上面側及び下面側から同時に紫外光を前記投影レンズを通して垂直に照射する。別の実施例では、紫外光を同時ではなく、上面側及び下面側の片側ずつから照射して、前記露光を行うことができる。
【0082】
次に、フォトレジスト膜83を現像し、露光した領域83a〜83fを除去してレジストパターン87を形成し、電極膜82を露出させる(図7(B))。電極膜82の露出部分をウエットエッチングにより除去し、水晶面を露出させる(図7(C))。最後に、残存するレジストパターン87を完全に除去すると、電極膜の無い段差面45aにより厚さ方向に分離した左側面44cの第1検出電極48aと段差側面45bの第2検出電極48b、電極膜の無い段差面46aにより厚さ方向に分離した右側面44dの第3検出電極48cと段差側面46bの第4検出電極48d、及び、長手方向溝47内に電極膜の無い底面47cにより幅方向に分離した第5検出電極48eと第6検出電極48fが形成される(図7(D))。
【0083】
尚、添付図面において、上記各実施例の前記段差面及び段差側面は、それぞれ前記上下面又は左右側面に対して平行又は垂直に記載されている。しかしながら、本実施例のように水晶等の単結晶材料から屈曲振動片を形成した場合にはその結晶異方性によって、又は他の理由によって、前記段差面及び段差側面が必ずしも前記上下面又は左右側面に対して平行又は垂直に形成されないことに注意すべきである。
【0084】
本発明の屈曲振動片は、上記各実施例の音叉型以外の様々な構造の屈曲振動片について、同様に適用することができる。図8は、本発明を適用した別の音叉型屈曲振動片を概略的に示している。この音叉型屈曲振動片91は、矩形の基部92と、該基部から平行に延長しかつ上面、下面及び左右側面を有する断面多角形の1対の振動腕93,94とを備える。
【0085】
各振動腕93,94は、その延長方向に分割された先端側の駆動部93a,94aと、基端側の検出部93b,94bとを有する。前記各駆動部は、第1実施例の屈曲振動片21の駆動用振動腕23と同様に構成され、同様の駆動電極を有する。前記各検出部は、上述した第1〜第6実施例の検出用振動腕のいずれかと同様に構成され、同様の検出電極を有する。
【0086】
両振動腕93,94は、駆動部93a,94aの駆動電極に所定の交流電圧を印加することによって、その上下面と同じXY面内で互いに接近離反する向きに屈曲振動する。この状態で屈曲振動片91がY軸周りに回転すると、コリオリ力の作用により、前記両振動腕は、その上下面に垂直なZ軸方向に互いに逆向きに屈曲振動する。このとき、両検出部93b,94bの検出電極から出力される電圧信号を検出することによって、屈曲振動片91の前記回転の角速度を高感度に得ることができる。
【0087】
図9は、本発明を適用した双音叉型屈曲振動片を概略的に示している。双音叉型屈曲振動片101は、矩形の基部102と、該基部から平行に延長しかつ上面、下面及び左右側面を有する断面多角形の1対の駆動用振動腕103,103と、前記基部から前記検出用振動腕とは反対向きに平行に延長しかつ上面、下面及び左右側面を有する断面多角形の1対の検出用振動腕104,104とを有する。
【0088】
駆動用振動腕103,103は、第1実施例の屈曲振動片21の駆動用振動腕23と同様に構成され、同様の駆動電極を有する。検出用振動腕104,104は、上述した第1〜第6実施例の検出用振動腕のいずれかと同様に構成され、同様の検出電極を有する。
【0089】
駆動用振動腕103,103は、その駆動電極に所定の交流電圧を印加することによって、その上下面と同じXY面内で互いに接近離反する向きに屈曲振動する。この状態で屈曲振動片101がY軸周りに回転すると、コリオリ力の作用により、駆動用振動腕103,103及び検出用振動腕104,104は、それぞれ上下面に垂直なZ軸方向に互いに逆向きに屈曲振動する。このとき、前記両検出用振動腕の検出電極から出力される電圧信号を検出することによって、屈曲振動片101の前記回転の角速度を高感度に得ることができる。
【0090】
図10は、本発明を適用した三脚型屈曲振動片を概略的に示している。三脚型屈曲振動片111は、矩形の基部112と、該基部から平行に延長しかつ上面、下面及び左右側面を有する断面多角形の3本の振動腕113〜115とを備える。
【0091】
本実施例では、左右両端の振動腕113,115が駆動用振動腕であり、上述した第1〜第6実施例の駆動用振動腕のいずれかと同様に構成され、同様の駆動電極を有する。中央の振動腕114は検出用振動腕であり、上述した第1〜第6実施例の検出用振動腕のいずれかと同様に構成され、同様の検出電極を有する。別の実施例では、左右いずれかの振動腕113,115を検出用振動腕とし、残りの2本の振動腕を駆動用振動腕にすることもできる。
【0092】
駆動用振動腕113,115は、その駆動電極に所定の交流電圧を印加することによって、その上下面と同じXY面内で互いに接近離反する向きに屈曲振動する。この状態で屈曲振動片111がY軸周りに回転すると、コリオリ力の作用により、全部の振動腕113〜115は、それぞれ上下面に垂直なZ軸方向に互いに逆向きに屈曲振動する。このとき、検出用振動腕114の検出電極から出力される電圧信号を検出することによって、屈曲振動片111の前記回転の角速度を高感度に得ることができる。
【0093】
また、本実施例は、4本以上の振動腕を有する多脚型屈曲振動片についても、同様に適用することができる。
【0094】
また、本発明によれば、上記各実施例の検出用振動腕の断面形状及び電極構造を駆動用振動腕に適用することができる。この場合、機械電気変換効率が良く、高いQ値かつ低いCI値の優れた屈曲振動片が得られる。
【0095】
本発明は、上記実施例に限定されるものでなく、その技術的範囲内で様々な変形又は変更を加えて実施することができる。例えば、本発明の屈曲振動片は、角速度以外に、角加速度、加速度、力等の物理量を検出するためのセンサー素子に適用することができる。また、本発明の屈曲振動片は、水晶以外に、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム等の圧電単結晶や、ジルコン酸チタン酸鉛等の圧電セラミックス等の圧電材料、又はシリコン半導体材料から形成することができる。更に本発明の屈曲振動片は、これをセンサー素子として搭載することにより、デジタルスチールカメラ、ビデオカメラ、ナビゲーション装置、車体姿勢検出装置、ポインティングデバイス、ゲームコントローラー、携帯電話、ヘッドマウントディスプレイ等の電子機器に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0096】
1,21,31,41,51,61,71,91…音叉型屈曲振動片、2,22,32,42,52,62,72,92,102,112…基部、3,23,33,43,53,63,73,103,113,115…駆動用振動腕、4,24,34,44,54,64,74,81,104,114…検出用振動腕、5a〜5d…駆動電極、6a,6b,7a,7b…検出電極、8,82…電極膜、9,83…フォトレジスト膜、9a〜9d,83a〜83f…領域、10,85a,85b…フォトマスク、11a〜11c,86a〜86f…開口部、12…レジストパターン、24a,34a,44a,54a,64a,74a…上面、24b,34b,44b,54b,64b,74b…下面、24c,34c,44c,54c,64c,74c…左側面、24d,34d,44d,54d,64d,74d…右側面、25…長手方向溝、26a…第1駆動電極、26b…第2駆動電極、27,35,45,55,65,75…第1段差部、28,36,46,56,66,76…第2段差部、27a,28a,35a,36a,45a,46a,55a1,55a2,65a,66a,75a…段差面、27b,28b,35b,36b,45b,46b,55b1,55b2,65b,66b,75b…段差側面、29a〜29d,37a〜37d,57a〜57d,67a〜67d…第1〜第4検出電極、47…長手方向溝、47a,47b…溝内側面、48a〜48f…第1〜第6検出電極、75…段差部、76a〜76c…第1〜第3検出電極、84a,84b…投影レンズ、93,94…振動腕、93a,94a…駆動部、93b,94b…検出部、101…双音叉型屈曲振動片、111…三脚型屈曲振動片。
【技術分野】
【0001】
本発明は屈曲振動片及びその製造方法に関する。更に本発明は、この屈曲振動片を用いた様々な電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタルスチールカメラ、ビデオカメラ、ナビゲーション装置、車体姿勢検出装置、ポインティングデバイス、ゲームコントローラー、携帯電話、ヘッドマウントディスプレイ等の各種電子機器には、角速度、角加速度、加速度、力等の物理量を検出するために、屈曲振動片を用いた圧電振動ジャイロ等のセンサーが広く使用されている。圧電振動ジャイロ用の屈曲振動片として、互いに平行な駆動用振動腕と検出用振動腕とを備える音叉型屈曲振動片が知られている(例えば、特許文献1,2を参照)。
【0003】
一般に音叉型屈曲振動片において、駆動用振動腕の励振電極に交流電圧を印加すると、両振動腕は振動片の平面内で屈曲振動する。この状態で屈曲振動片が前記振動腕の延長方向の周りに回転運動すると、コリオリ力が発生して、両振動腕は振動片の平面に垂直な方向に屈曲振動する。これにより検出用振動腕の検出電極間に発生する電圧を、屈曲振動片の前記回転運動の角加速度等に対応した電気信号として検出する。
【0004】
検出用振動腕は、その上下面ではなく、左右側面に検出電極を設けることによって、屈曲振動片の前記回転運動により発生する電圧を高感度に検出できることが知られている(例えば、特許文献2,3を参照)。図11は、このような従来の音叉型屈曲振動片の典型例を示している。音叉型屈曲振動片1は、矩形の基部2から平行に延長する駆動用振動腕3と検出用振動腕4とを備える。駆動用振動腕3は上下面及び左右側面にそれぞれ駆動電極5a〜5dを有し、交流電圧を印加して、隣接する前記駆動電極間で電界を交互に逆向きに発生させると、前記両振動腕はX軸方向に互いに逆向きに屈曲振動する。検出用振動腕4は左右側面にそれぞれ2つの検出電極6a,7a及び6b,7bを、その厚さ方向に分離して互いに異極となるように配置する。両振動腕3、4がX軸方向に屈曲振動している状態で、屈曲振動片1がY軸方向の周りに回転運動すると、前記両振動腕はZ軸方向に互いに逆向きに屈曲振動する。これにより検出用振動腕4内に発生する電界は、左右側面で対向する検出電極6aと6b、7aと7b間で効率良く、より大きな電圧として検出できるので、高感度が得られる。
【0005】
一般に屈曲振動片の前記電極は、フォトリソグラフィー技術を利用したウエットエッチングにより電極膜をパターニングすることによって形成される。図12は、図11の屈曲振動片1において、検出用振動腕4の側面に検出電極6a,6b,7a,7bを形成する過程を例示している。先ず、水晶等のウエハをフォトエッチングして屈曲振動片1の外形を加工して素子片を形成し、その表面に電極膜8を被着させ、その上にフォトレジスト膜9を塗布する。この素子片の上面にフォトマスク10を直接接触させるコンタクト方式で配置する(図12(A))。
【0006】
フォトマスク10には、フォトレジスト膜9の露光したい領域に対応する開口部11a〜11cが設けられている。フォトレジスト膜9の上面略全面の領域9aは、紫外光を開口部11aを通して上方から垂直に照射し、左右側面の厚み方向中央付近の領域9b,9cは、開口部11b,11cを通して斜め上方から照射する。次に前記素子片の下面にフォトマスク10を同じくコンタクト方式で配置し、同様にフォトレジスト膜9の下面略全面の領域9dと左右側面の領域9b,9cとを露光する。
【0007】
次に、フォトレジスト膜9を現像し、露光した前記領域を除去してレジストパターン12を形成し、電極膜8を露出させる(図12(B))。露出した電極膜部分をウエットエッチングにより除去し、水晶面を露出させる(図12(C))。最後に、残存するレジストパターン12を完全に除去すると、検出用振動腕4の側面に厚さ方向に分離した検出電極6a,6b,7a,7bが形成される(図12(D))。
【0008】
また、厚み方向のエッチングレートが幅方向よりも高い圧電材料のウエハを用いることにより、検出用振動腕の側面に厚み方向に分割した検出電極を形成する圧電振動片の製造方法が知られている(例えば、特許文献4を参照)。この方法では、振動用振動腕の側面中央に長手方向の突条が残るように、圧電振動片をウエットエッチングで外形加工しかつ電極膜を被着し、その上に形成したフォトレジスト膜を上方及び下方から垂直に同時に露光しかつ現像して、振動用振動腕上下面及び突条先端に電極膜が露出するようにパターニングし、露出した電極膜部分をエッチングすることによって、検出用振動腕の側面に厚み方向に分割した検出電極を形成する。
【0009】
更に、水晶板に振動子の外形を両面から、その厚みを一部残すようにエッチングして溝を形成しかつその側面に電極膜を形成した後、該溝のエッチング残りの部分を機械的に折って、個々の振動子を分離させると同時に、その際に溝に残存する突起によって厚み方向に分離させた電極を形成する方法が知られている(例えば、特許文献5を参照)。また、前記溝のエッチング残りの部分を再エッチングで除去することにより、同様に電極を厚み方向に分割させる方法が知られている(例えば、特許文献6を参照)。
【0010】
圧電振動ジャイロ用の屈曲振動片としては、前記音叉型以外に、様々な構造のものが提案されている。例えば、基部から平行に延長する1対の駆動用振動腕と、該基部から平行に駆動用振動腕とは逆向きに延長する1対の検出用振動腕とを備える所謂H型即ち両側音叉型の屈曲振動片が知られている(例えば、特許文献2,3,7を参照)。また、基部から平行に延長する3本又はそれ以上の振動腕を備える多脚型の屈曲振動片が知られている(例えば、特許文献8を参照)。
【0011】
また、上述したように検出用振動腕の左右側面にそれぞれ配置した検出電極に加えて、検出用振動腕の上下面にその長手方向に沿ってそれぞれ溝を形成し、各溝の左右内側面にそれぞれ検出電極を配置した屈曲振動片が知られている(例えば、特許文献7を参照)。このように検出電極を配置することによって、振動片の左右方向に対向する検出電極間の距離が小さくなるので、対向電極間に発生する電圧をより効率良く検出でき、更に感度が向上する。
【0012】
屈曲振動片の駆動用振動腕も、その上下面にその長手方向に沿ってそれぞれ溝を形成し、その内面に上面側及び下面側の駆動電極を配置することによって、対向する左右側面の駆動電極との間で電界を上下面に対して平行に発生させ、電界効率を向上させてQ値を高め、CI値を低く抑制することができる(例えば、特許文献9を参照)。特許文献9によれば、駆動用振動腕の長手方向溝は、その上面又は下面に、段差部(上面又は下面の内側面)と中面部とを有する段差として形成することができる。溝内に配置される上面側及び下面側の駆動電極は、段差の段差部と中面部とに連なるように形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平9−14973号公報
【特許文献2】特開2002−340559号公報
【特許文献3】特開2007−93400号公報
【特許文献4】特許第4010218号公報
【特許文献5】特開平8−18371号公報
【特許文献6】特開平8−162874号公報
【特許文献7】特開2004−125458号公報
【特許文献8】特開2006−262289号公報
【特許文献9】特開2009−189039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、図12に関連して上述したように、検出腕の側面に検出電極を厚さ方向に分割するために、紫外光をフォトレジスト膜に斜めに照射してパターニングする従来の方法は、フォトマスクの開口部とフォトレジスト膜の露光領域間の距離が大きくなるので、露光光に回折が生じる。そのため、解像度が低く、パターン精度が悪くなる虞がある。その結果、電極膜のウエットエッチングはサイドエッチング量が大きくなり易く、検出電極を高精度にパターニングすることが困難で、製造上不良率が高くなる。特に微細な電極パターンの形成が困難なため、屈曲振動片の小型化が妨げられる。更に、コンタクト方式の露光は、屈曲振動片を上下片面ずつ露光しなければならないので、製造工程が複雑になり、フォトマスクの寿命も短くなる。また、露光光を斜めに照射するためには、特殊な露光機が必要である。これらの結果、製造コストが高くなるという問題がある。
【0015】
また、厚み方向のエッチングレートが幅方向よりも高い圧電材料のウエハを用いる上記特許文献4記載の従来方法は、フォトレジスト膜の露光がコンタクト方式ではなく、振動腕の上方及び下方から垂直に同時に露光できるので、製造工程がより簡単であり、一般的な露光機を使用できるので有利である。しかしながら、使用可能な圧電材料や結晶配向が制限されるという問題がある。
【0016】
上記特許文献5記載の従来方法は、溝のエッチング残りの部分を折るために追加の工程や特殊な治具が必要である。そのために作業が複雑化し、製造コストを増大させるという問題がある。また、エッチング残りの部分を折る際に、水晶の破片が水晶振動子に付着して振動特性を変化させたり、隣接する他の水晶振動子や治具と接触して電極膜を損傷し、不良品の発生及び歩留まりの低下を招く虞がある。更に、折る位置を正確に制御できないので、振動腕の側面に残存する突起の大きさが不均一になり、振動腕のバランスが損なわれて不要な振動を発生させ、振動特性を低下させる虞がある。
【0017】
上記特許文献6の従来方法も、エッチング残りの部分を再エッチングで完全に除去するために追加の工程が必要で、同様に作業が複雑化し、製造コストを増大させるという問題がある。また、エッチング残りの部分を再エッチングする際に、水晶の結晶異方性で振動腕の側面にオーバエッチングによる凹みが形成されたり、エッチング残りの部分の上に形成したレジスト膜及び電極膜を除去する際に発生する電極材料が電極に再付着する虞がある。
【0018】
そこで本発明は、上述した従来の問題点に鑑みてなされたもので、その少なくとも1つの問題点を解決することを目的としている。本発明の目的は、使用する材料やその結晶配向性に制限されることなく、振動腕の側面に厚さ方向に分離される電極を、一般的な露光機を用いてパターニングする従来のフォトエッチングを利用して高精度に形成することができる屈曲振動片を提供することにある。また、本発明の目的は、そのように振動腕の側面に厚さ方向に分離された電極を有する屈曲振動片において、小型化の要求にも容易に対応できるようにすることにある。特に本発明の屈曲振動片は、圧電振動ジャイロ等のセンサー素子に適用した場合に、小型化しても、検出用振動腕に発生する電荷を効率良く検出して高感度を達成し得ることを目的とする。
【0019】
本発明の別の目的は、このような屈曲振動片を簡単にかつ低コストで実現し得る屈曲振動片の製造方法を提供することにある。
【0020】
本発明の更に別の目的は、このような屈曲振動片を備えたセンサー素子等のデバイス、特にこのような高感度なセンサー素子を搭載することにより、高性能で製造コストの低減及び小型化が可能な電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の屈曲振動片は、上記目的を達成するために、基部と、該基部から延出し、上面、下面及び左右側面を有する断面多角形の振動腕と、該振動腕の左右側面にそれぞれ設けられている電極とを備え、
振動腕の少なくとも一方の側面の電極が、その厚さ方向に分離されている第1電極と第2電極とからなり、
振動腕がその上下面に垂直な方向に沿って屈曲振動する際に、第1電極とそれに対応する該振動腕の他方の側面の電極との間に発生する電界の向きと、第2電極とそれに対応する該他方の側面の電極との間に発生する電界の向きとが互いに逆向きになるように、前記各電極が設けられ、
振動腕が、一方の側面と上面又は下面との間に形成されている段差部を有し、該段差部が、一方の側面に交わる段差面と、上面又は下面に交わる段差側面とからなり、第1電極と第2電極とが、段差面の電極膜が形成されていない部分により分離して、一方の側面と段差側面とに形成されていることを特徴とする。
【0022】
このように振動腕の段差部を形成しかつ少なくとも部分的に電極膜の無い段差面を設けるという比較的簡単な構成によって、振動腕の側面にその厚さ方向に分離している電極を容易に形成することができる。全面的に又は部分的に電極膜の無い段差面は、従来のフォトエッチングを利用し、一般的な露光機を用いた露光により比較的簡単に、高精度にパターニングすることができる。
【0023】
更に、段差側面の電極とこれに対応する側面の電極間の距離が、従来の左右側面間の距離よりも小さくなるので、電極間の静電容量が従来よりも増大する。従って、本発明の屈曲振動片を、例えば圧電振動ジャイロ等のセンサー素子に適用した場合、電極間で発生する電荷を効率良く検出できるので、高い感度が得られる。また、本発明の振動腕を駆動用振動腕に適用した場合には、機械電気変換効率が良く、高いQ値かつ低いCI値の優れた屈曲振動片が得られる。従って、高性能かつ高品質で小型化可能な屈曲振動片を実現することができる。
【0024】
或る実施例では、振動腕の他方の側面の電極が、その厚さ方向に分離されている第3電極と第4電極とからなり、
振動腕がその上下面に垂直な方向に沿って屈曲振動する際に、第1電極とそれに対応する第3電極との間に発生する電界の向きと、第2電極とそれに対応する第4電極との間に発生する電界の向きとが互いに逆向きになるように、前記各電極が設けられ、
振動腕が、他方の側面と上面又は下面との間に形成されている第2の段差部を更に有し、第2の段差部が、他方の側面に交わる第2の段差面と、上面又は下面に交わる第2の段差側面とからなり、第3電極と第4電極とが、第2の段差面の電極膜が形成されていない部分により分離して、他方の側面と第2の段差側面とに形成されている。
【0025】
このように振動腕の左右両側面に段差部を設けることによって、振動腕は、面外方向にバランス良く屈曲振動を行うことができる。更に、第1電極とそれに対応する第3電極間の距離、及び第2電極とそれに対応する第4電極間の距離が、従来の左右側面間の距離よりも小さくなり、電極間の静電容量が従来よりも更に増大する。従って、この屈曲振動片を圧電振動ジャイロ等のセンサー素子に適用した場合には、振動腕の屈曲振動により発生する電荷をより効率良く検出できるので、より高感度が得られる。
【0026】
別の実施例では、振動腕が、その上面又は下面に凹設されている長手方向の溝を有し、該長手方向溝の一方の内側面に形成されている第5電極と他方の内側面に形成されている第6電極とを有し、第5電極と第6電極とが、長手方向溝の底面の電極膜が形成されていない部分で分離され、
振動腕がその上下面に垂直な方向に沿って屈曲振動する際に、第5電極とそれに対応する振動腕の左側面の電極との間に発生する電界の向きが、第6電極とそれに対応する振動腕の右側面の電極との間に発生する電界の向きとは互いに同じ向きになり、長手方向溝を設けていない下面側又は上面側において左側面の電極と右側面の電極との間に発生する電界の向きとは逆向きになるように、前記各電極が設けられている。
【0027】
このように左右側面間の長手方向溝の各内側面に電極を追加することによって、対応する電極間の距離をいずれも小さくすることができ、電極間の静電容量が従来よりも更に増大する。従って、振動腕の屈曲振動により発生する電荷を更に効率良く検出でき、より一層高感度なセンサー素子が得られる。
【0028】
更に別の実施例によれば、振動腕の段差部が複数の段差から構成されるので、それら複数の段差の段差側面を選択して電極を形成することによって、それに対応する側面の電極との距離及び静電容量を使用条件に応じて調整することができる。更に、振動腕がよりバランス良く屈曲振動し得るように、その断面形状を設計することができる。
【0029】
また別の実施例では、振動腕が、その上下面に垂直な方向に沿う屈曲振動を、該振動腕に設けられている電極から出力される電気信号として検出するための検出用振動腕であり、基部から検出用振動腕の延出方向に沿って延長する駆動用振動腕と、該駆動用振動腕をその上下面に平行な方向に沿って屈曲振動させるように駆動用振動腕に設けられている駆動電極とを更に有することにより、音叉型の屈曲振動片が得られる。
【0030】
本発明の別の側面によれば、上述した本発明の屈曲振動片を製造する方法であって、
ウエハから屈曲振動片の外形を有する振動素子片を加工する過程と、
振動素子片の表面に電極膜を被着させ、その上にフォトレジスト膜を形成する過程と、
振動素子片の上面、下面及び段差面のフォトレジスト膜を上面側及び下面側から露光してパターニングする過程と、
該パターニングにより露出した電極膜の部分をエッチングにより除去して、振動腕の側面にその厚さ方向に分離した電極を形成する過程と、
残存するフォトレジスト膜を除去する過程とを含む方法が提供される。
【0031】
このように従来のフォトエッチング技術を利用し、一般的な露光機を用いた上面及び下面からの露光によって高精度にパターニングすることによって、検出用振動腕の側面に厚さ方向に分離した電極を形成することができる。従来技術のような斜め露光による電極膜のパターニングを必要としないので、本発明の屈曲振動片を比較的簡単にかつ低コストで製造することができる。
【0032】
本発明の更に別の側面によれば、上述した本発明の屈曲振動片を備えることによって、高性能で小型化可能な電子機器を低コストで提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】(A)図は本発明の第1実施例による屈曲振動片の概略平面図、(B)図はそのI−I線における駆動用振動腕の断面図、(C)図は同じく検出腕の断面図。
【図2】(A)図は本発明の第2実施例による屈曲振動片の概略平面図、(B)図はそのII−II線における検出用振動腕の断面図。
【図3】(A)図は本発明の第3実施例による屈曲振動片の概略平面図、(B)図はそのIII−III線における検出用振動腕の断面図。
【図4】(A)図は本発明の第4実施例による屈曲振動片の概略平面図、(B)図はそのIV−IV線における検出用振動腕の断面図。
【図5】(A)図は本発明の第5実施例による屈曲振動片の概略平面図、(B)図はそのV−V線における検出用振動腕の断面図。
【図6】(A)図は本発明の第6実施例による屈曲振動片の概略平面図、(B)図はそのVI−VI線における検出用振動腕の断面図。
【図7】(A)〜(D)図は第3実施例の屈曲振動片の検出用振動腕に検出電極をパターニングする過程を順に示す工程図。
【図8】本発明を適用した別の音叉型屈曲振動片を示す概略平面図。
【図9】本発明を適用した両側音叉型屈曲振動片を示す概略平面図。
【図10】本発明を適用した三脚型屈曲振動片を示す概略平面図。
【図11】(A)図は従来の音叉型屈曲振動片の概略平面図、(B)図はそのXI−XI線における駆動用振動腕の断面図、(C)図は同じく検出用振動腕の断面図。
【図12】(A)〜(D)図は図11の従来の屈曲振動片の検出用振動腕に検出電極をパターニングする過程を順に示す工程図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に、添付図面を参照しつつ、本発明の好適な実施例を詳細に説明する。尚、添付図面において、同一又は類似の構成要素には同一又は類似の参照符号を付して示す。
【0035】
図1は、例えば角速度センサーに使用される圧電振動ジャイロ用の、本発明の第1実施例による音叉型屈曲振動片を概略的に示している。音叉型屈曲振動片21は、矩形の基部22と、該基部から延長する駆動用振動腕23と、該駆動用振動腕に沿って前記基部から延長する検出用振動腕24とを備える。駆動用振動腕23及び検出用振動腕24は、それぞれ上面、下面及び左右側面を有する断面多角形をなし、互いに平行に配置されている。音叉型屈曲振動片21は、水晶又は他の圧電材料から一体に加工される。
【0036】
駆動用振動腕23は、図1(B)に示すように、その上下各面に形成された長手方向の溝25を有する。各長手方向溝25の内面にはそれぞれ第1駆動電極26aが設けられ、駆動用振動腕23の左右各側面にはそれぞれ第2駆動電極26bが設けられ、これらが互いに電気的に接続されて駆動用振動腕3を屈曲振動させる駆動電極を構成している。
【0037】
検出用振動腕24には、図1(C)に示すように、上向きの第1段差部27が上面24aと右側面24dとの間に、下向きの第2段差部28が下面24bと左側面24cとの間に設けられている。第1段差部27は、右側面24dに交わる上向きの段差面27aと、前記上面に交わる右向きの段差側面27bとを有する。第2段差部28は、左側面に交わる下向きの段差面28aと、前記下面に交わる左向きの段差側面28bとを有する。第1及び第2段差部27,28は、振動腕断面においてその中心軸に関して対称に、同じ寸法に形成される。
【0038】
検出用振動腕24の左右側面24c,24d及び段差側面27b,28bには、第1〜第4検出電極29a〜29dが設けられ、その面外方向の屈曲振動を検出するための検出電極を構成している。左側面24cの第1検出電極29aと段差側面28bの第2検出電極29bとは、電極膜を形成していない段差面28aにより、振動腕の厚さ方向に分離して互いに異極となるように配置される。同様に、段差側面27bの第3検出電極29cと右側面24dの第4検出電極29dとは、電極膜を形成していない段差面27aにより、振動腕の厚さ方向に分離して互いに異極となるように配置される。尚、図中段差面27a,28aは、全面的に電極膜が形成されていないが、部分的にのみ電極膜が形成されていない場合も、同様に前記第1、第2検出電極、及び第3、第4検出電極を分離させることができる。
【0039】
前記第1及び第2段差部の電極膜を形成していない段差面27a,28aは、振動腕表面に形成した電極膜をフォトエッチングによりパターニングする際に、垂直に露光光を照射できるので、特殊な装置や手法を用いることなく、一般的な露光機を用いた両面露光が可能である。そのため、微細なパターンであっても比較的容易にかつ高精度に転写することができる。従って、製造上不良率を小さくして歩留まりを向上させ、製造コストを低減できると共に、屈曲振動片の小型化にも十分に対応することができる。
【0040】
前記駆動電極に所定の交流電圧を印加すると、隣接する第1、第2駆動電極26a、26b間で電界が、図1(B)に実線及び破線の矢印で示すようにX軸方向に交互に逆向きに発生する。これにより、駆動用振動腕23は上下面と同じXY面内で屈曲振動する。検出用振動腕24は、駆動用振動腕23とのバランスを取るように、同じくXY面内で駆動用振動腕23と互いに逆向きに屈曲振動する。
【0041】
この状態で、屈曲振動片21がY軸周りに即ち前記振動腕の延長方向の周りに回転すると、駆動用振動腕23の振動方向と直交する向きに即ち上下面に対して垂直なZ軸方向にコリオリ力が作用する。これにより、駆動用振動腕23と検出用振動腕24は、Z軸方向に互いに逆向きに屈曲振動する。このとき、検出用振動腕24には、X軸方向の電界が、図1(C)に実線及び破線の矢印で示すように、左側面24cの第1検出電極29aと対応する段差側面27bの第3検出電極29cとの間に、段差側面28bの第2検出電極29bと対応する右側面24dの第4検出電極29dとの間に、それぞれ交互に逆向きにかつ互いに逆向きに発生する。これによりX軸方向に発生する電荷を前記検出電極から電圧信号として取り出すことによって、屈曲振動片21の前記回転の角速度が検出される。
【0042】
このように一方の側面の検出電極に対応する検出電極を前記段差側面に設けることにより、左右に即ちX軸方向に対応する前記検出電極間の距離が従来よりも小さくなるので、その静電容量が増大する。従って、検出用振動腕24の面外方向の屈曲振動により前記検出電極間に発生した電荷を効率良く検出でき、高感度が得られる。
【0043】
本実施例では、第1及び第2段差27,28が同じ寸法にかつ対称に形成されているので、屈曲振動片21が面外方向にバランス良く屈曲振動を行う。更に、X軸方向に対応する2組の前記検出電極同士の間隔が一致する。即ち、上面側の第1検出電極29aと第3検出電極29cとの間隔と、下面側の第2検出電極29bと第4検出電極29dとの間隔が同じである。そのため、屈曲振動片21の上面側と下面側とで検出した電圧信号がバランスよく出力される。
【0044】
また、屈曲振動片21の上面側の第1、第3検出電極29a,29c間の出力と下面側の第2、第4検出電極29b,29d間の出力との差動を取ることによって、不要なノイズをキャンセルすることができる。例えば、検出用振動腕24が軸線方向即ちY軸方向に伸縮した場合、それにより発生し得る不要な信号を除去することができる。これにより、より高精度な発生電荷の検出が可能になる。
【0045】
別の実施例では、一方の側面側、例えば左側面側の第1検出電極29aと第2検出電極29bを接地電極にすることができる。この場合、反対側の第3検出電極29cと第4検出電極29dとから、互いに異極の電圧信号が出力される。このように構成することによって、検出用振動腕24の上面側と下面側間で出力の差動を容易に取ることができ、また前記検出電極から引き出される配線構造を簡略化できる。
【0046】
図2は、本発明の第2実施例による音叉型屈曲振動片を概略的に示している。第2実施例の音叉型屈曲振動片31は、第1実施例と同様に、矩形の基部32と、該基部から互いに平行に延長しかつそれぞれ上面、下面及び左右側面を有する断面多角形の駆動用振動腕33及び検出用振動腕34とを備える。駆動用振動腕33は、第1実施例の駆動用振動腕23と同じ構成を有するので、説明を省略する。
【0047】
検出用振動腕34には、図2(B)に示すように、上向きの第1段差部35が上面34aと左側面34cとの間に、下向きの第2段差部36が下面34bと右側面34dとの間に設けられている。第1段差部35は、左側面34cに交わる上向きの段差面35aと、上面34aに交わる左向きの段差側面35bとを有する。第2段差部36は、右側面34dに交わる下向きの段差面36aと、下面34bに交わる右向きの段差側面36bとを有する。
【0048】
第1及び第2段差部35,36は、第1実施例と同様に、振動腕断面においてその中心軸に関して対称に、同じ寸法に形成される。本実施例では、第1及び第2段差部35,36が第1実施例よりも浅くかつ幅広に形成される。従って、各段差側面35b,36bとそれぞれ対向する左右側面34c,34d間の距離が第1実施例よりも小さく、各段差側面35b,36bの高さが第1実施例よりも低い。
【0049】
検出用振動腕34の左右側面34c,34d及び段差側面35b,36bには、第1〜第4検出電極37a〜37dが設けられ、その面外方向の屈曲振動を検出するための検出電極を構成している。段差側面35bの第1検出電極37aと左側面34cの第2検出電極37bとは、電極膜を形成していない段差面35aにより、振動腕の厚さ方向に分離して互いに異極となるように配置される。同様に、右側面34dの第3検出電極37cと段差側面36bの第4検出電極37dとは、電極膜を形成していない段差面36aにより、振動腕の厚さ方向に分離して互いに異極となるように配置される。尚、図中段差面35a,36aは、全面的に電極膜が形成されていないが、部分的にのみ電極膜が形成されていない場合も、同様に前記第1、第2検出電極、及び第3、第4検出電極を分離させることができる。
【0050】
所定の交流電圧を印加して駆動用振動腕33と検出用振動腕34とをXY面内で互いに逆向きに屈曲振動させた状態で、屈曲振動片31がY軸周りに回転すると、コリオリ力の作用により、前記両振動腕はZ軸方向に互いに逆向きに屈曲振動する。このとき、検出用振動腕34には、X軸方向の電界が、図2(B)に実線及び破線の矢印で示すように、段差側面35bの第1検出電極37aと対応する右側面34dの第3検出電極37cとの間に、段差側面36bの第4検出電極37dと対応する左側面34cの第2検出電極37bとの間に、それぞれ交互に逆向きにかつ互いに逆向きに発生する。これによりX軸方向に発生する電荷が、前記検出電極から電圧信号として取り出される。
【0051】
別の実施例では、一方の側面側、例えば左側面側の第1検出電極37aと第2検出電極37bを接地電極にすることができる。この場合、反対側の第3検出電極37cと第4検出電極37dとから、互いに異極の電圧信号が出力される。このように構成することによって、検出用振動腕34の上面側と下面側間で出力の差動を容易に取ることができ、また前記検出電極から引き出される配線構造を簡略化できる。
【0052】
本実施例は、第1実施例よりも、左右に即ちX軸方向に対応する前記検出電極間の距離が小さくなるので、その静電容量が更に増大する。従って、検出用振動腕34の面外方向の屈曲振動により前記検出電極間に発生した電荷をより効率良く検出でき、より高感度が得られる。その他の利点は、第1実施例と同じであるので、説明を省略する。
【0053】
図3は、本発明の第3実施例による音叉型屈曲振動片を概略的に示している。第3実施例の音叉型屈曲振動片41は、第1実施例と同様に、矩形の基部42と、該基部から互いに平行に延長しかつそれぞれ上面、下面及び左右側面を有する断面多角形の駆動用振動腕43及び検出用振動腕44とを備える。駆動用振動腕43は、第1実施例の駆動用振動腕23と同じ構成を有するので、説明を省略する。
【0054】
検出用振動腕44には、図3(B)に示すように、下向きの第1段差部45が下面44bと左側面44cとの間に、下向きの第2段差部46が前記下面と右側面44dとの間に設けられている。第1段差部45は、左側面44cに交わる下向きの段差面45aと、下面44bに交わる左向きの段差側面45bとを有する。第2段差部46は、右側面44dに交わる下向きの段差面46aと、前記下面に交わる右向きの段差側面46bとを有する。検出用振動腕44は更に、上面44aに形成された長手方向の溝47を有する。長手方向溝47は、前記上面にそれぞれ交わる左右の溝内側面47a,47bと、前記溝内側面間の底面47cとを有する。
【0055】
第1、第2段差部45,46及び長手方向溝47は、振動腕断面において上下方向の中心軸に関して対称に配置される。従って、屈曲振動片41は、バランス良く面外方向に屈曲振動し、不要な振動を発生し難い利点がある。
【0056】
検出用振動腕44の左右側面44c,44d及び段差側面45b,46bには、第1〜第4検出電極48a〜48dが設けられ、長手方向溝47の溝内側面47a,47bには、第5,第6検出電極48e,48fが設けられ、その面外方向の屈曲振動を検出するための検出電極を構成している。左側面44cの第1検出電極48aと段差側面45bの第2検出電極48bとは、電極膜を形成していない段差面45aにより、振動腕の厚さ方向に分離して互いに異極となるように配置される。同様に、右側面44dの第3検出電極48cと段差側面46bの第4検出電極48dとは、電極膜を形成していない段差面46aにより、振動腕の厚さ方向に分離して互いに異極となるように配置される。長手方向溝47内の第5検出電極48eと第6検出電極48fとは、電極膜を形成していない前記溝の底面47cにより、振動腕の幅方向に分離して互いに異極となるように配置される。尚、図中段差面45a,46aは、全面的に電極膜が形成されていないが、部分的にのみ電極膜が形成されていない場合も、同様に前記第1、第2検出電極、及び第3、第4検出電極を分離させることができる。
【0057】
所定の交流電圧を印加して駆動用振動腕43と検出用振動腕44とをXY面内で互いに逆向きに屈曲振動させた状態で、屈曲振動片41がY軸周りに回転すると、コリオリ力の作用により、前記両振動腕はZ軸方向に互いに逆向きに屈曲振動する。このとき、検出用振動腕44の上面側には、X軸方向の電界が、図3(B)に実線及び破線の矢印で示すように、左側面44cの第1検出電極48aと対応する左内側面47aの第5検出電極48eとの間に、右内側面47bの第6検出電極48fと対応する右側面44dの第3検出電極48cとの間に、それぞれ交互に逆向きにかつ互いに同じ向きに発生する。検出用振動腕44の下面側では、X軸方向の電界が、段差側面45bの第2検出電極48bと対応する段差側面46bの第4検出電極48dとの間に、それぞれ交互に逆向きにかつ前記上面側のX軸方向の電界とは逆向きに発生する。これによりX軸方向に発生する電荷が、前記検出電極から電圧信号として取り出される。
【0058】
別の実施例では、一方の側面側、例えば左側面側の第1検出電極48aと第2検出電極48b、及び前記長手方向溝の右内側面47bの第6検出電極48fを接地電極にすることができる。この場合、第3検出電極48c及び第5検出電極48eと第4検出電極48dとから、互いに異極の電圧信号が出力される。このように構成することによって、検出用振動腕44の上面側と下面側間で出力の差動を容易に取ることができる。
【0059】
本実施例は、検出用振動腕44の上面側において、前記検出電極間の静電容量が第2実施例の略2倍になるので、発生した電荷をより効率良く検出でき、より一層高い感度が得られる。その他の利点は、第1実施例と同じであるので、説明を省略する。
【0060】
図4は、本発明の第4実施例による音叉型屈曲振動片を概略的に示している。第4実施例の音叉型屈曲振動片51は、第1実施例と同様に、矩形の基部52と、該基部から互いに平行に延長しかつそれぞれ上面、下面及び左右側面を有する断面多角形の駆動用振動腕53及び検出用振動腕54とを備える。駆動用振動腕53は、第1実施例の駆動用振動腕23と同じ構成を有するので、説明を省略する。
【0061】
検出用振動腕54には、図4(B)に示すように、上向きの第1段差部55が上面54aと左側面54cとの間に、下向きの第2段差部56が下面54bと右側面54dとの間に設けられている。第1段差部55は、上下に連続する2つの段差から構成される。前記2つの段差は、それぞれ上向きの段差面55a1,55a2と右向きの段差側面55b1,55b2とを有する。上側の段差側面55b1は上面54aと交わり、下側の段差面55a2は右側面54dと交わり、上側の段差面55a1は下側の段差側面55b2と交わっている。第2段差部56は、左側面54cに交わる下向きの段差面56aと、前記下面に交わる左向きの段差側面56bとを有する。これにより、前記検出用振動腕がよりバランス良く屈曲振動し得るように、その断面形状を設計することができる。
【0062】
検出用振動腕54の左右側面54c,54d及び段差側面55b1,56bには、第1〜第4検出電極57a〜57dが設けられ、その面外方向の屈曲振動を検出するための検出電極を構成している。左側面54cの第1検出電極57aと段差側面56bの第2検出電極37bとは、電極膜を形成していない段差面56aにより、振動腕の厚さ方向に分離して互いに異極となるように配置される。同様に、段差側面55b1の第3検出電極57cと右側面34dの第4検出電極57dとは、電極膜を形成していない段差面55a1,55a2により、振動腕の厚さ方向に分離して互いに異極となるように配置される。尚、図中段差面55a1,55a2,56aは、全面的に電極膜が形成されていないが、部分的にのみ電極膜が形成されていない場合も、同様に前記第1、第2検出電極、及び第3、第4検出電極を分離させることができる。
【0063】
所定の交流電圧を印加して駆動用振動腕53と検出用振動腕54とをXY面内で互いに逆向きに屈曲振動させた状態で、屈曲振動片51がY軸周りに回転すると、コリオリ力の作用により、前記両振動腕はZ軸方向に互いに逆向きに屈曲振動する。このとき、検出用振動腕54には、X軸方向の電界が、図4(B)に実線及び破線の矢印で示すように、左側面54cの第1検出電極57aと対応する段差側面55b1の第3検出電極57cとの間に、段差側面56bの第2検出電極57bと対応する右側面54dの第4検出電極57dとの間に、それぞれ交互に逆向きにかつ互いに逆向きに発生する。これによりX軸方向に発生する電荷が、前記検出電極から電圧信号として取り出される。
【0064】
別の実施例では、第3検出電極57cを、上側の段差側面55b1でなく、下側の段差側面55b2に設けることができる。また、第1段差部55の上側及び下側の段差側面55b1,55b2双方に検出電極を設けることができる。このようにして、左側面の第1検出電極57aと対応する検出電極間の距離及び静電容量を使用条件に応じて調整することができる。
【0065】
また、別の実施例では、一方の側面側、例えば左側面側の第1検出電極57aと第2検出電極57bを接地電極にすることができる。この場合、反対側の第3検出電極57cと第4検出電極57dとから、互いに異極の電圧信号が出力される。このように構成することによって、検出用振動腕54の上面側と下面側間で出力の差動を容易に取ることができ、また前記検出電極から引き出される配線構造を簡略化できる。
【0066】
前記第1段差部の上側の段差と下側の段差とは、必ずしも連続して設ける必要が無い。例えば、別の実施例では、上側の段差と下側の段差とを傾斜面で繋ぐことができる。更に別の実施例では、前記第1段差部を3つ以上の段差で構成することもできる。
【0067】
本実施例は、上面側において、左右に即ちX軸方向に対応する前記検出電極間の距離が第1実施例よりも小さくなるので、その静電容量が更に増大する。従って、検出用振動腕54の面外方向の屈曲振動により前記検出電極間に発生した電荷をより効率良く検出でき、より高感度が得られる。その他の利点は、第1実施例と同じであるので、説明を省略する。
【0068】
図5は、本発明の第5実施例による音叉型屈曲振動片を概略的に示している。第5実施例の音叉型屈曲振動片61は、第1実施例と同様に、矩形の基部62と、該基部から互いに平行に延長しかつそれぞれ上面、下面及び左右側面を有する断面多角形の駆動用振動腕63及び検出用振動腕64とを備える。駆動用振動腕63は、第1実施例の駆動用振動腕23と同じ構成を有するので、説明を省略する。
【0069】
検出用振動腕64には、図5(B)に示すように、上向きの第1段差部65及び第2段差部66が上面64aと左側面64cとの間及び右側面64dとの間にそれぞれ設けられている。第1及び第2段差部65,66は、それぞれ左右側面64c,64dに交わる上向きの段差面65a,66aと、前記上面にそれぞれ交わる左右の段差側面65b,66bとを有する。前記第1、第2段差部は、振動腕断面において上下方向の中心軸に関して対称に配置される。従って、屈曲振動片61は、バランス良く面外方向に屈曲振動し、不要な振動を発生し難い利点がある。
【0070】
検出用振動腕64の左右側面64c,64d及び段差側面65b,66bには、第1〜第4検出電極67a〜67dが設けられ、その面外方向の屈曲振動を検出するための検出電極を構成している。段差側面65bの第1検出電極67aと左側面64cの第2検出電極67bとは、電極膜を形成していない段差面65aにより、振動腕の厚さ方向に分離して互いに異極となるように配置される。同様に、段差側面66bの第3検出電極67cと右側面64dの第4検出電極67dとは、電極膜を形成していない段差面66aにより、振動腕の厚さ方向に分離して互いに異極となるように配置される。尚、図中段差面65a,66aは、全面的に電極膜が形成されていないが、部分的にのみ電極膜が形成されていない場合も、同様に前記第1、第2検出電極、及び第3、第4検出電極を分離させることができる。
【0071】
所定の交流電圧を印加して駆動用振動腕63と検出用振動腕64とをXY面内で互いに逆向きに屈曲振動させた状態で、屈曲振動片61がY軸周りに回転すると、コリオリ力の作用により、前記両振動腕はZ軸方向に互いに逆向きに屈曲振動する。このとき、検出用振動腕64には、X軸方向の電界が、図5(B)に実線及び破線の矢印で示すように、段差側面65bの第1検出電極67aと対応する段差側面66bの第3検出電極67cとの間に、左側面64cの第2検出電極67bと対応する右側面64dの第4検出電極67dとの間に、それぞれ交互に逆向きにかつ互いに逆向きに発生する。これによりX軸方向に発生する電荷が、前記検出電極から電圧信号として取り出される。
【0072】
別の実施例では、一方の側面側、例えば左側面側の第1検出電極67aと第2検出電極67bを接地電極にすることができる。この場合、反対側の第3検出電極67cと第4検出電極67dとから、互いに異極の電圧信号が出力される。このように構成することによって、検出用振動腕64の上面側と下面側間で出力の差動を容易に取ることができ、また前記検出電極から引き出される配線構造を簡略化できる。
【0073】
本実施例は、上記第1実施例の利点に加えて、第1及び第2段差部65,66が検出用振動腕64の上面にのみ形成されるので、屈曲振動片61の外形加工が、工数を少なくでき、容易になる。更に、厚さ方向に分離した前記検出電極を検出用振動腕64にパターニングする際に、上面側からの露光のみで済むので、製造上有利である。
【0074】
図6は、本発明の第6実施例による音叉型屈曲振動片を概略的に示している。第6実施例の音叉型屈曲振動片71は、第1実施例と同様に、矩形の基部72と、該基部から互いに平行に延長しかつそれぞれ上面、下面及び左右側面を有する断面多角形の駆動用振動腕73及び検出用振動腕74とを備える。駆動用振動腕73は、第1実施例の駆動用振動腕23と同じ構成を有するので、説明を省略する。
【0075】
検出用振動腕74には、図6(B)に示すように、上向きの段差部75が上面74aと右側面74dとの間に設けられている。段差部75は、右側面74dに交わる上向きの段差面75aと、前記上面に交わる右向きの段差側面75bとを有する。
【0076】
前記検出用振動腕の左右側面74c,74d及び段差側面75bには、第1〜第3検出電極76a〜76cが設けられ、その面外方向の屈曲振動を検出するための検出電極を構成している。段差側面75bの第2検出電極76bと右側面74dの第3検出電極76cとは、電極膜を形成していない段差面75aにより、振動腕の厚さ方向に分離して互いに異極となるように配置される。尚、図中段差面75aは、全面的に電極膜が形成されていないが、部分的にのみ電極膜が形成されていない場合も、同様に前記第2、第3検出電極を分離させることができる。
【0077】
所定の交流電圧を印加して駆動用振動腕73と検出用振動腕74とをXY面内で互いに逆向きに屈曲振動させた状態で、屈曲振動片71がY軸周りに回転すると、コリオリ力の作用により、前記両振動腕はZ軸方向に互いに逆向きに屈曲振動する。このとき、検出用振動腕74には、X軸方向の電界が、図6(B)に実線及び破線の矢印で示すように、左側面74cの第1検出電極76aと対応する段差側面75bの第2検出電極76bとの間に、前記第1検出電極と対応する右側面74dの第3検出電極76cとの間に、それぞれ交互に逆向きにかつ互いに逆向きに発生する。これによりX軸方向に発生する電荷が、前記検出電極から電圧信号として取り出される。
【0078】
別の実施例では、前記左側面の第1検出電極76aを接地電極にすることができる。この場合、反対側の第2検出電極76bと第3検出電極76cとから、互いに異極の電圧信号が出力される。このように構成することによって、検出用振動腕74の上面側と下面側間で出力の差動を容易に取ることができる。
【0079】
本実施例は、上記第5実施例の利点に加えて、形成される段差部が1つだけであり、屈曲振動片71の外形加工が工数を少なくでき、容易になる。更に検出電極の数が3つだけであるので、その配線構造を簡素化することができる。
【0080】
上記各実施例の屈曲振動片は、従来のフォトエッチングにより、一般的な露光機を用いた上面及び下面からの同時露光によって高精度にパターニングすることによって、検出用振動腕の側面に厚さ方向に分離した電極を形成することができる。図7は、かかる従来のフォトエッチング技術を用いて、第3実施例の音叉型屈曲振動片41の検出用振動腕43に前記検出電極をパターニングする工程の好適な実施例を示している。
【0081】
先ず、水晶等のウエハをフォトエッチングして、屈曲振動片41の外形を有する振動素子片を形成する。図7(A)に示すように、第1,第2段差部45,46及び長手方向溝47を加工した前記振動素子片の検出用振動腕81の全面に電極膜82を被着しかつその上にフォトレジスト膜83を塗布する。検出用振動腕81の上方及び下方にそれぞれ投影レンズ84a,84bを配置し、その更に上方及び下方にそれぞれフォトマスク85a,85bを配置する。各フォトマスク85a,85bには、露光したいフォトレジスト膜83の領域83a〜83fに対応する開口部86a〜86fが設けられている。次に、一般的な露光機を用いて、上面側及び下面側から同時に紫外光を前記投影レンズを通して垂直に照射する。別の実施例では、紫外光を同時ではなく、上面側及び下面側の片側ずつから照射して、前記露光を行うことができる。
【0082】
次に、フォトレジスト膜83を現像し、露光した領域83a〜83fを除去してレジストパターン87を形成し、電極膜82を露出させる(図7(B))。電極膜82の露出部分をウエットエッチングにより除去し、水晶面を露出させる(図7(C))。最後に、残存するレジストパターン87を完全に除去すると、電極膜の無い段差面45aにより厚さ方向に分離した左側面44cの第1検出電極48aと段差側面45bの第2検出電極48b、電極膜の無い段差面46aにより厚さ方向に分離した右側面44dの第3検出電極48cと段差側面46bの第4検出電極48d、及び、長手方向溝47内に電極膜の無い底面47cにより幅方向に分離した第5検出電極48eと第6検出電極48fが形成される(図7(D))。
【0083】
尚、添付図面において、上記各実施例の前記段差面及び段差側面は、それぞれ前記上下面又は左右側面に対して平行又は垂直に記載されている。しかしながら、本実施例のように水晶等の単結晶材料から屈曲振動片を形成した場合にはその結晶異方性によって、又は他の理由によって、前記段差面及び段差側面が必ずしも前記上下面又は左右側面に対して平行又は垂直に形成されないことに注意すべきである。
【0084】
本発明の屈曲振動片は、上記各実施例の音叉型以外の様々な構造の屈曲振動片について、同様に適用することができる。図8は、本発明を適用した別の音叉型屈曲振動片を概略的に示している。この音叉型屈曲振動片91は、矩形の基部92と、該基部から平行に延長しかつ上面、下面及び左右側面を有する断面多角形の1対の振動腕93,94とを備える。
【0085】
各振動腕93,94は、その延長方向に分割された先端側の駆動部93a,94aと、基端側の検出部93b,94bとを有する。前記各駆動部は、第1実施例の屈曲振動片21の駆動用振動腕23と同様に構成され、同様の駆動電極を有する。前記各検出部は、上述した第1〜第6実施例の検出用振動腕のいずれかと同様に構成され、同様の検出電極を有する。
【0086】
両振動腕93,94は、駆動部93a,94aの駆動電極に所定の交流電圧を印加することによって、その上下面と同じXY面内で互いに接近離反する向きに屈曲振動する。この状態で屈曲振動片91がY軸周りに回転すると、コリオリ力の作用により、前記両振動腕は、その上下面に垂直なZ軸方向に互いに逆向きに屈曲振動する。このとき、両検出部93b,94bの検出電極から出力される電圧信号を検出することによって、屈曲振動片91の前記回転の角速度を高感度に得ることができる。
【0087】
図9は、本発明を適用した双音叉型屈曲振動片を概略的に示している。双音叉型屈曲振動片101は、矩形の基部102と、該基部から平行に延長しかつ上面、下面及び左右側面を有する断面多角形の1対の駆動用振動腕103,103と、前記基部から前記検出用振動腕とは反対向きに平行に延長しかつ上面、下面及び左右側面を有する断面多角形の1対の検出用振動腕104,104とを有する。
【0088】
駆動用振動腕103,103は、第1実施例の屈曲振動片21の駆動用振動腕23と同様に構成され、同様の駆動電極を有する。検出用振動腕104,104は、上述した第1〜第6実施例の検出用振動腕のいずれかと同様に構成され、同様の検出電極を有する。
【0089】
駆動用振動腕103,103は、その駆動電極に所定の交流電圧を印加することによって、その上下面と同じXY面内で互いに接近離反する向きに屈曲振動する。この状態で屈曲振動片101がY軸周りに回転すると、コリオリ力の作用により、駆動用振動腕103,103及び検出用振動腕104,104は、それぞれ上下面に垂直なZ軸方向に互いに逆向きに屈曲振動する。このとき、前記両検出用振動腕の検出電極から出力される電圧信号を検出することによって、屈曲振動片101の前記回転の角速度を高感度に得ることができる。
【0090】
図10は、本発明を適用した三脚型屈曲振動片を概略的に示している。三脚型屈曲振動片111は、矩形の基部112と、該基部から平行に延長しかつ上面、下面及び左右側面を有する断面多角形の3本の振動腕113〜115とを備える。
【0091】
本実施例では、左右両端の振動腕113,115が駆動用振動腕であり、上述した第1〜第6実施例の駆動用振動腕のいずれかと同様に構成され、同様の駆動電極を有する。中央の振動腕114は検出用振動腕であり、上述した第1〜第6実施例の検出用振動腕のいずれかと同様に構成され、同様の検出電極を有する。別の実施例では、左右いずれかの振動腕113,115を検出用振動腕とし、残りの2本の振動腕を駆動用振動腕にすることもできる。
【0092】
駆動用振動腕113,115は、その駆動電極に所定の交流電圧を印加することによって、その上下面と同じXY面内で互いに接近離反する向きに屈曲振動する。この状態で屈曲振動片111がY軸周りに回転すると、コリオリ力の作用により、全部の振動腕113〜115は、それぞれ上下面に垂直なZ軸方向に互いに逆向きに屈曲振動する。このとき、検出用振動腕114の検出電極から出力される電圧信号を検出することによって、屈曲振動片111の前記回転の角速度を高感度に得ることができる。
【0093】
また、本実施例は、4本以上の振動腕を有する多脚型屈曲振動片についても、同様に適用することができる。
【0094】
また、本発明によれば、上記各実施例の検出用振動腕の断面形状及び電極構造を駆動用振動腕に適用することができる。この場合、機械電気変換効率が良く、高いQ値かつ低いCI値の優れた屈曲振動片が得られる。
【0095】
本発明は、上記実施例に限定されるものでなく、その技術的範囲内で様々な変形又は変更を加えて実施することができる。例えば、本発明の屈曲振動片は、角速度以外に、角加速度、加速度、力等の物理量を検出するためのセンサー素子に適用することができる。また、本発明の屈曲振動片は、水晶以外に、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム等の圧電単結晶や、ジルコン酸チタン酸鉛等の圧電セラミックス等の圧電材料、又はシリコン半導体材料から形成することができる。更に本発明の屈曲振動片は、これをセンサー素子として搭載することにより、デジタルスチールカメラ、ビデオカメラ、ナビゲーション装置、車体姿勢検出装置、ポインティングデバイス、ゲームコントローラー、携帯電話、ヘッドマウントディスプレイ等の電子機器に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0096】
1,21,31,41,51,61,71,91…音叉型屈曲振動片、2,22,32,42,52,62,72,92,102,112…基部、3,23,33,43,53,63,73,103,113,115…駆動用振動腕、4,24,34,44,54,64,74,81,104,114…検出用振動腕、5a〜5d…駆動電極、6a,6b,7a,7b…検出電極、8,82…電極膜、9,83…フォトレジスト膜、9a〜9d,83a〜83f…領域、10,85a,85b…フォトマスク、11a〜11c,86a〜86f…開口部、12…レジストパターン、24a,34a,44a,54a,64a,74a…上面、24b,34b,44b,54b,64b,74b…下面、24c,34c,44c,54c,64c,74c…左側面、24d,34d,44d,54d,64d,74d…右側面、25…長手方向溝、26a…第1駆動電極、26b…第2駆動電極、27,35,45,55,65,75…第1段差部、28,36,46,56,66,76…第2段差部、27a,28a,35a,36a,45a,46a,55a1,55a2,65a,66a,75a…段差面、27b,28b,35b,36b,45b,46b,55b1,55b2,65b,66b,75b…段差側面、29a〜29d,37a〜37d,57a〜57d,67a〜67d…第1〜第4検出電極、47…長手方向溝、47a,47b…溝内側面、48a〜48f…第1〜第6検出電極、75…段差部、76a〜76c…第1〜第3検出電極、84a,84b…投影レンズ、93,94…振動腕、93a,94a…駆動部、93b,94b…検出部、101…双音叉型屈曲振動片、111…三脚型屈曲振動片。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部と、
前記基部から延出し、上面、下面及び左右側面を有する断面多角形の振動腕と、
前記振動腕の前記左右側面にそれぞれ設けられている電極とを備え、
前記振動腕の少なくとも一方の前記側面の前記電極が、その厚さ方向に分離されている第1電極と第2電極とからなり、
前記振動腕がその上下面に垂直な方向に沿って屈曲振動する際に、前記第1電極とそれに対応する前記振動腕の他方の前記側面の前記電極との間に発生する電界の向きと、前記第2電極とそれに対応する前記振動腕の他方の前記側面の前記電極との間に発生する電界の向きとが互いに逆向きになるように、前記各電極が設けられ、
前記振動腕が、前記一方の側面と前記上面又は下面との間に形成されている段差部を有し、前記段差部が、前記一方の側面に交わる段差面と、前記上面又は下面に交わる段差側面とからなり、前記第1電極と第2電極とが、前記段差面の電極膜が形成されていない部分により分離して、前記一方の側面と前記段差側面とに形成されていることを特徴とする屈曲振動片。
【請求項2】
前記振動腕の前記他方の側面の前記電極が、その厚さ方向に分離されている第3電極と第4電極とからなり、
前記振動腕がその上下面に垂直な方向に沿って屈曲振動する際に、前記第1電極とそれに対応する前記第3電極との間に発生する電界の向きと、前記第2電極とそれに対応する前記第4電極との間に発生する電界の向きとが互いに逆向きになるように、前記各電極が設けられ、
前記振動腕が、前記他方の側面と前記上面又は下面との間に形成されている第2の段差部を更に有し、前記第2の段差部が、前記他方の側面に交わる第2の段差面と、前記上面又は下面に交わる第2の段差側面とからなり、前記第3電極と第4電極とが、前記第2の段差面の電極膜が形成されていない部分により分離して、前記他方の側面と前記第2の段差側面とに形成されていることを特徴とする請求項1記載の屈曲振動片。
【請求項3】
前記振動腕が、前記上面又は下面に凹設されている長手方向の溝を有し、前記長手方向溝の一方の内側面に形成されている第5電極と他方の内側面に形成されている第6電極とを有し、前記第5電極と前記第6電極とが、前記長手方向溝の底面の電極膜が形成されていない部分により分離され、
前記振動腕がその上下面に垂直な方向に沿って屈曲振動する際に、前記第5電極とそれに対応する前記振動腕の左側面の前記電極との間に発生する電界の向きが、前記第6電極とそれに対応する前記振動腕の右側面の前記電極との間に発生する電界の向きとは互いに同じ向きになり、前記長手方向溝を設けていない前記下面側又は上面側において前記左側面の前記電極と前記右側面の前記電極との間に発生する電界の向きとは逆向きになるように、前記各電極が設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の屈曲振動片。
【請求項4】
前記段差部が複数の段差からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の屈曲振動片。
【請求項5】
前記振動腕が、その上下面に垂直な方向に沿う前記屈曲振動を、該振動腕に設けられている前記電極から出力される電気信号として検出するための検出用振動腕であり、
前記基部から前記検出用振動腕の延出方向に沿って延長する駆動用振動腕と、前記駆動用振動腕をその上下面に平行な方向に沿って屈曲振動させるように、前記駆動用振動腕に設けられている駆動電極とを更に有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の屈曲振動片。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の屈曲振動片を製造する方法であって、
ウエハから前記屈曲振動片の外形を有する振動素子片を加工する過程と、
前記振動素子片の表面に電極膜を被着させかつその上にフォトレジスト膜を形成する過程と、
振動素子片の前記上面、下面及び段差面の前記フォトレジスト膜を上面側及び下面側から露光してパターニングする過程と、
前記パターニングにより露出した前記電極膜の部分をエッチングにより除去して、前記振動腕の側面にその厚さ方向に分離している前記電極を形成する過程と、
残存する前記フォトレジスト膜を除去する過程とを含むことを特徴とする屈曲振動片の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の屈曲振動片を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項1】
基部と、
前記基部から延出し、上面、下面及び左右側面を有する断面多角形の振動腕と、
前記振動腕の前記左右側面にそれぞれ設けられている電極とを備え、
前記振動腕の少なくとも一方の前記側面の前記電極が、その厚さ方向に分離されている第1電極と第2電極とからなり、
前記振動腕がその上下面に垂直な方向に沿って屈曲振動する際に、前記第1電極とそれに対応する前記振動腕の他方の前記側面の前記電極との間に発生する電界の向きと、前記第2電極とそれに対応する前記振動腕の他方の前記側面の前記電極との間に発生する電界の向きとが互いに逆向きになるように、前記各電極が設けられ、
前記振動腕が、前記一方の側面と前記上面又は下面との間に形成されている段差部を有し、前記段差部が、前記一方の側面に交わる段差面と、前記上面又は下面に交わる段差側面とからなり、前記第1電極と第2電極とが、前記段差面の電極膜が形成されていない部分により分離して、前記一方の側面と前記段差側面とに形成されていることを特徴とする屈曲振動片。
【請求項2】
前記振動腕の前記他方の側面の前記電極が、その厚さ方向に分離されている第3電極と第4電極とからなり、
前記振動腕がその上下面に垂直な方向に沿って屈曲振動する際に、前記第1電極とそれに対応する前記第3電極との間に発生する電界の向きと、前記第2電極とそれに対応する前記第4電極との間に発生する電界の向きとが互いに逆向きになるように、前記各電極が設けられ、
前記振動腕が、前記他方の側面と前記上面又は下面との間に形成されている第2の段差部を更に有し、前記第2の段差部が、前記他方の側面に交わる第2の段差面と、前記上面又は下面に交わる第2の段差側面とからなり、前記第3電極と第4電極とが、前記第2の段差面の電極膜が形成されていない部分により分離して、前記他方の側面と前記第2の段差側面とに形成されていることを特徴とする請求項1記載の屈曲振動片。
【請求項3】
前記振動腕が、前記上面又は下面に凹設されている長手方向の溝を有し、前記長手方向溝の一方の内側面に形成されている第5電極と他方の内側面に形成されている第6電極とを有し、前記第5電極と前記第6電極とが、前記長手方向溝の底面の電極膜が形成されていない部分により分離され、
前記振動腕がその上下面に垂直な方向に沿って屈曲振動する際に、前記第5電極とそれに対応する前記振動腕の左側面の前記電極との間に発生する電界の向きが、前記第6電極とそれに対応する前記振動腕の右側面の前記電極との間に発生する電界の向きとは互いに同じ向きになり、前記長手方向溝を設けていない前記下面側又は上面側において前記左側面の前記電極と前記右側面の前記電極との間に発生する電界の向きとは逆向きになるように、前記各電極が設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の屈曲振動片。
【請求項4】
前記段差部が複数の段差からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の屈曲振動片。
【請求項5】
前記振動腕が、その上下面に垂直な方向に沿う前記屈曲振動を、該振動腕に設けられている前記電極から出力される電気信号として検出するための検出用振動腕であり、
前記基部から前記検出用振動腕の延出方向に沿って延長する駆動用振動腕と、前記駆動用振動腕をその上下面に平行な方向に沿って屈曲振動させるように、前記駆動用振動腕に設けられている駆動電極とを更に有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の屈曲振動片。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の屈曲振動片を製造する方法であって、
ウエハから前記屈曲振動片の外形を有する振動素子片を加工する過程と、
前記振動素子片の表面に電極膜を被着させかつその上にフォトレジスト膜を形成する過程と、
振動素子片の前記上面、下面及び段差面の前記フォトレジスト膜を上面側及び下面側から露光してパターニングする過程と、
前記パターニングにより露出した前記電極膜の部分をエッチングにより除去して、前記振動腕の側面にその厚さ方向に分離している前記電極を形成する過程と、
残存する前記フォトレジスト膜を除去する過程とを含むことを特徴とする屈曲振動片の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の屈曲振動片を備えることを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−9166(P2013−9166A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140618(P2011−140618)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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