説明

屈曲振動片及び電子機器

【課題】駆動モードにおけるエラー検出信号の発生を効果的に抑制し得る圧電振動ジャイロ用の屈曲振動片を提供する。
【解決手段】両側音叉型の屈曲振動片11は、支持部12に接続された1対の駆動用振動腕13及びそれとは逆向きの1対の検出用振動腕14を有する。支持部は、幅方向の両側部に形成した細溝状の凹部17a,17bと、その平面部の略中央にかつ凹部よりも駆動用振動腕側に形成した貫通孔18とを有する。支持部の表面には、支持部の両側部の凹部と平面部の貫通孔とにより長手方向に隔てられて、駆動用振動腕の駆動電極から引き出した駆動用電極パッドが駆動用振動腕側に、検出用振動腕の検出電極から引き出した検出用電極パッドが検出用振動腕側に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屈曲振動片及び屈曲振動片を用いた様々な電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタルスチールカメラ、ビデオカメラ、ナビゲーション装置、車体姿勢検出装置、ポインティングデバイス、ゲームコントローラー、携帯電話、ヘッドマウントディスプレイ等の各種電子機器には、角速度、角加速度、加速度、力等の物理量を検出するセンサーとして、屈曲振動片を用いた圧電振動ジャイロが広く使用されている。圧電振動ジャイロ用の屈曲振動片には、様々な構造のものが開発・提案されている。例えば、被駆動対と検知対である2対の叉状部材をベースによって連結した、角速度センサー用の両側音叉型屈曲振動片が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
また、1対の駆動用励振枝と1対の検出用ピックアップ枝とをフレームの一方の側とその反対側とに結合し、該フレームをその内側に開口を隔てて配置された取付基部にサスペンション装置を介して結合した両側音叉型の回転速度センサーが知られている(例えば、特許文献2を参照)。コリオリの加速度を受けた励振枝の振動は、フレームの時間変化の捻れを生じかつこれが伝達されてピックアップ枝を振動させる。取付基部は、接着剤等でハウジングの取付構造体に固定されるが、フレームとの間のサスペンション装置が、屈曲振動片の圧電材料の熱膨張率とハウジングの材料の熱膨張率との不適合が音叉の振動に及ぼす影響を最小にする。
【0004】
かかる両側音叉型屈曲振動片は、小型化した場合に振動腕の質量が小さくなるため、発生するコリオリ力が減少して、角速度センサーの感度が低下する虞がある。そこで、振動腕の支持部側の端に溝を設けてその剛性を低下させ、駆動モードにおける駆動用振動腕のモーメントを増大させてコリオリ力を大きくすることにより、又は、駆動用振動腕と検出用振動腕とを連結する支持部に穴を設けてその剛性を低下させ、駆動用振動腕の振動を検出用振動腕に効率よく伝播させることにより、角速度センサーの高感度化を図ることが知られている(例えば、特許文献3を参照)。
【0005】
両側音叉型以外の圧電振動ジャイロ用の屈曲振動片として、所謂ダブルT字型の構造が知られている(例えば、特許文献4を参照)。この屈曲振動片は、中央の支持部から逆方向に延出する1対の検出用振動腕からなる検出振動系に関して、それぞれ逆向きに延長する1対の駆動用振動腕を有する略T字型の2つの駆動振動系を左右対称に配置した構造を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭64−31015号公報
【特許文献2】特開平7−55479号公報
【特許文献3】特開2004−251663号公報
【特許文献4】特開2003−166828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図9は、従来の両音叉型屈曲振動片の典型例を概略的に示している。同図において、屈曲振動片1は、中央の支持部2から一方の側に平行に延出する1対の駆動用振動腕3と、それとは反対側に平行に延出する1対の検出用振動腕4とを有する。支持部2には、駆動用振動腕3の駆動電極(図示せず)から引き出した駆動用電極パッド5が、前記各駆動用振動腕の基端近くに1つずつ配置されている。更に前記支持部には、検出用振動腕4の検出電極(図示せず)から引き出した検出用電極パッド6が、前記各検出用振動腕の基端近くに2つずつ配置されている。
【0008】
駆動用振動腕3は、前記駆動電極に所定の交流電圧を印加すると、その主面と同じXY面内で互いに逆向きに屈曲振動する。この駆動モードの状態で屈曲振動片1が長手方向のY軸周りに回転すると、その角速度に応じたコリオリ力が働き、駆動用振動腕3は主面に垂直なZ軸方向に互いに逆向きに屈曲振動し、これに共振して検出用振動腕4は同じくZ軸方向に互いに逆向きに屈曲振動する。このとき検出用振動腕4の前記検出電極間に発生する電位差を検出用電極パッド6から取り出すことによって、屈曲振動片1の前記回転及びその角速度等が求められる。
【0009】
図10は、図9の両音叉型屈曲振動片の変形例を概略的に示している。同図の屈曲振動片1´は、上記特許文献2,3記載のように、支持部2の略中央に矩形の貫通孔7が形成されている。これにより、検出モードにおいて駆動用振動腕3の面外振動が効率良く伝搬して検出用振動腕4を振動させるので、センサーの検出感度が向上する。
【0010】
駆動用振動腕3が面内振動する駆動モードの状態では、検出用電極パッド6から出力される検出信号は0のはずであり、またそうであることが望ましい。ところが、図9及び図10のいずれの場合も、屈曲振動片1を小型化すると、該屈曲振動片がY軸周りに回転していないにも拘わらず、検出用電極パッド6からエラー信号が出力される場合があることが分かった。かかる駆動モードにおけるエラー検出信号の出力は、角速度センサーの検出感度及び精度を劣化させる虞がある。
【0011】
特に屈曲振動片を小型化すると、それに対応して支持部も小型化するが、その表面に形成される電極パッドには、外部配線との接続上或る程度の面積が必要である。そのため、支持部の平面寸法が小さくなるほど、駆動用電極パッドと検出用電極パッド間の距離が小さくなり、それらの間に大きな静電結合容量が発生する。しかも、駆動モードで駆動用振動腕に印加される駆動電流は、検出モードで検出用電極パッドから出力される検出電流よりも桁違いで大きい。この大きな静電結合容量がエラー検出信号発生の1つの原因と考えられる。
【0012】
また、支持部は、小型化によって剛性も小さくなるので、駆動モードにおける駆動用振動腕の振動が検出用振動腕に伝わり易くなる。かかる駆動用振動腕からの機械的な振動漏れが、検出用振動腕を不必要に振動させたことも、エラー検出信号発生の別の原因と考えられる。
【0013】
そこで本発明は、上述した従来の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、小型化しても、駆動モードにおけるエラー検出信号の発生を有効に抑制し得る、圧電振動ジャイロ等の高感度・高精度なセンサー素子に適した屈曲振動片を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の屈曲振動片は、上記目的を達成するために、少なくとも1対の駆動用振動腕と、1対の検出用振動腕と、駆動用振動腕及び検出用振動腕を支持するための支持部と、駆動用振動腕に配置されている駆動電極と、検出用振動腕に配置されている検出電極と、駆動電極に接続されている支持部上の駆動用電極パッドと、検出電極に接続されている支持部上の検出用電極パッドとを備え、
支持部が幅方向の少なくとも一方の側部に凹部を有し、駆動用電極パッドが凹部よりも駆動用振動腕側に配置され、かつ、検出用電極パッドが凹部よりも検出用振動腕側に配置されていることを特徴とする。
【0015】
このように支持部の幅方向の側部に設けた凹部によって、駆動用振動腕から検出用振動腕へ、及び駆動用電極パッドから検出用電極パッドへ直線的に到達し得る支持部の部分が制限されるので、駆動モードにおいて駆動用電極パッドと検出用電極パッド間に発生する静電結合容量を小さくなる。また、駆動用振動腕から検出用振動腕に伝搬する振動漏れを少なくなる。従って、かかる比較的簡単な構成によって、支持部が小型化しても、駆動モードにおける静電結合容量の発生及び駆動用振動腕からの振動漏れによるエラー検出信号の発生を有効に抑制することができる。
【0016】
或る実施例では、前記1対の検出用振動腕が、支持部から平行に延出する2本の振動腕からなり、前記少なくとも1対の駆動用振動腕が、支持部から検出用振動腕とは反対側に平行に延出する2本の振動腕からなる両側音叉型の屈曲振動片を実現することができる。
【0017】
別の実施例では、支持部から両側に1本ずつ互いに逆向きに延出する2本1対の連結腕を更に備え、前記1対の検出用振動腕が、支持部から連結腕の延長方向の直交方向両側に1本ずつ互いに逆向きに延出する2本の振動腕からなり、前記少なくとも1対の駆動用振動腕が、各連結腕の先端部からそれぞれ該連結腕の延長方向の直交方向両側に1本ずつ互いに逆向きに延出する4本2対の振動腕からなる所謂ダブルT字型の屈曲振動片を実現することができる。
【0018】
或る実施例では、凹部が支持部の幅方向の両側部に設けられていることにより、駆動モードにおいて駆動用電極パッドと検出用電極パッド間に発生する静電結合容量及び駆動用振動腕からの振動漏れによるエラー検出信号の発生を、左右バランス良く抑制することができる。
【0019】
別の実施例では、支持部の幅方向両側部の凹部が、その幅方向において重複するように設けられていることにより、駆動用振動腕から検出用振動腕へ、及び駆動用電極パッドから検出用電極パッドへ直線的に到達し得る支持部の部分が無くなり又は大幅に制限されるので、駆動モードにおいて静電結合容量の発生及び駆動用振動腕からの振動漏れによるエラー検出信号の発生をより有効に抑制することができる。
【0020】
また別の実施例では、支持部の側部の凹部が該支持部を厚さ方向に貫通するように形成されていることにより、駆動モードにおいて静電結合容量の発生及び駆動用振動腕からの振動漏れによるエラー検出信号の発生をより確実に抑制することができる。
【0021】
更に別の実施例によれば、支持部の側部の凹部が該支持部を厚さ方向に貫通しないように形成されていることにより、支持部の剛性を大きく低下させることなく、駆動モードにおける静電結合容量の発生及び駆動用振動腕からの振動漏れによるエラー検出信号の発生を抑制することができる。
【0022】
或る実施例では、支持部がその平面部に形成した孔部を更に有することにより、その幅方向両側部に凹部のみを設ける場合よりも、駆動用振動腕から検出用振動腕へ、及び駆動用電極パッドから検出用電極パッドへ直線的に到達し得る支持部の部分を制限できるので、駆動モードにおける静電結合容量の発生及び駆動用振動腕からの振動漏れによるエラー検出信号の発生を抑制することができる。
【0023】
或る実施例では、支持部の平面部の孔部を側部の凹部よりも駆動用振動腕側に配置することができる。別の実施例では、支持部の平面部の孔部を側部の凹部よりも検出用振動腕側に配置することができる。このように側部の凹部と平面部の孔部とは、屈曲振動片の設計条件や駆動用及び検出用電極パッドの配置等に応じて、エラー検出信号の発生を最適に抑制できるように配設することができる。
【0024】
或る実施例によれば、支持部の平面部の孔部が支持部を厚さ方向に貫通するように形成されていることにより、駆動モードにおける静電結合容量の発生及び駆動用振動腕からの振動漏れによるエラー検出信号の発生をより確実に抑制することができる。
【0025】
別の実施例によれば、支持部の平面部の孔部が該支持部を厚さ方向に貫通しないように形成されていることにより、支持部の剛性を大きく低下させることなく、駆動モードにおける静電結合容量の発生及び駆動用振動腕からの振動漏れによるエラー検出信号の発生を抑制することができる。
【0026】
本発明の別の側面によれば、上述した本発明の屈曲振動片を備えることによって、高感度・高精度なセンサー性能を備えかつ小型化可能な電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施例の屈曲振動片を示す概略平面図。
【図2】第2実施例の変形例を示す概略平面図。
【図3】第3実施例の別の変形例を示す概略平面図。
【図4】第1〜第3実施例の駆動モードでのエラー検出電流の大きさを従来例と比較して示す線図。
【図5】凹部の変形例を示す支持部の部分拡大平面図。
【図6】凹部の別の変形例を示す支持部の部分拡大平面図。
【図7】第1実施例の屈曲振動片を実装した角速度センサーの概略断面図。
【図8】本発明の第4実施例の屈曲振動片を示す概略平面図。
【図9】第1実施例に対応する従来の屈曲振動片を示す概略平面図。
【図10】別の従来の屈曲振動片を示す概略平面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、添付図面を参照しつつ、本発明の好適な実施例を詳細に説明する。尚、添付図面において、同一又は類似の構成要素には同一又は類似の参照符号を付して示す。
【0029】
図1は、本発明の第1実施例の両側音叉型屈曲振動片11を概略的に示している。屈曲振動片11は、中央の概ね矩形の支持部12と、該支持部に支持される1対の駆動用振動腕13と1対の検出用振動腕14とを有する。支持部12から一方の側に駆動用振動腕13が平行に延出し、それとは反対側に検出用振動腕14が平行に延出している。駆動用振動腕13には、駆動モードにおいて該駆動用振動腕をその主面と同じXY面内で互いに接近離反する向きに屈曲振動させるために、駆動電極(図示せず)が形成されている。検出用振動腕14には、検出モードにおいて該検出用振動腕がその主面に垂直なZ軸方向に互いに逆向きに屈曲振動する際に発生する電位差を検出するために、検出電極(図示せず)が形成されている。
【0030】
支持部12には、その幅方向の両側部に凹部15a,15bが設けられている。凹部15a,15bは、前記支持部の各側部から幅方向に延長しかつ該支持部を厚さ方向に貫通する細長い溝状に左右対称に形成され、検出用振動腕14寄りに配置されている。更に前記支持部には、その平面部の略中央に貫通孔16が設けられている。貫通孔16は、前記支持部の幅方向に細長い矩形に形成され、凹部15a,15bよりも前記駆動用振動腕側に配置されている。凹部15a,15b及び貫通孔16は、互いに前記支持部の幅方向に部分的に重複するように寸法が設定されかつ配置されている。
【0031】
支持部12の表面には、駆動用振動腕13の前記駆動電極から引き出した2つの駆動用電極パッド17が、貫通孔16よりも前記駆動用振動腕側に、それぞれの基端近くに1つずつ配置されている。更に前記支持部の表面には、検出用振動腕14の前記検出電極から引き出した4つの検出用電極パッド18が、凹部15a,15bよりも前記検出用振動腕側に、それぞれの基端近くに2つずつ配置されている。駆動用電極パッド17と検出用電極パッド18とは、前記支持部上で凹部15a,15bと貫通孔16とにより長手方向に隔てられている。
【0032】
駆動モードにおいて、駆動用電極パッド17から前記駆動電極に所定の交流電圧を印加すると、駆動用振動腕13は、その主面と同じXY面内で互いに逆向きに屈曲振動する。この状態で屈曲振動片11が長手方向のY軸周りに回転すると、その角速度に応じて発生するコリオリ力の作用により、駆動用振動腕13は前記主面に垂直なZ軸方向に互いに逆向きに屈曲振動する。これに共振して、検出用振動腕14は同じくZ軸方向に互いに逆向きに屈曲振動し、前記検出電極間に発生する電位差を検出用電極パッド17から取り出すことによって、屈曲振動片11の前記回転及びその角速度等が求められる。
【0033】
上述したように駆動用電極パッド17と検出用電極パッド18とは、支持部12上で前記凹部と貫通孔とにより長手方向に隔てられている。これにより、支持部12を小型化しても、前記駆動用電極パッドと検出用電極パッド間に発生する静電結合容量を有効に小さく抑制することができる。
【0034】
また、駆動モードにおいて駆動用振動腕13の面内振動から生じる振動漏れは、支持部12の中央領域を伝搬する成分が貫通孔16により遮断され、貫通孔16の左右両側を伝搬する成分が両凹部15a,15bに遮られて左右方向から内側に回り込む際に相殺されることによって緩和される。従って、支持部12の小型化によりその剛性が小さくなっても、駆動モードにおける駆動用振動腕13からの振動漏れによるエラー検出信号の発生を有効に抑制することができる。
【0035】
特に本実施例では、凹部15a,15b及び貫通孔16を前記支持部の幅方向に部分的に重複するように設けたことによって、支持部12には、駆動用振動腕13から検出用振動腕14へ、及び駆動用電極パッド17から検出用電極パッド18へ直線的に到達し得る部分が無い。これによって、上述した静電結合容量及び振動漏れによるエラー検出信号の発生がより効果的に抑制される。
【0036】
図2は、本発明の第2実施例の両側音叉型屈曲振動片21を概略的に示している。本実施例の屈曲振動片21は、その支持部22が第1実施例の支持部12から貫通孔16を省略した点において、第1実施例と異なる。従って、支持部22は、第1実施例よりも構成及び加工が簡単で、高い剛性を有する。
【0037】
駆動用電極パッド17と検出用電極パッド18とは、支持部22上で長手方向に凹部15a,15bにより隔てられている。これにより、支持部12を小型化しても、前記駆動用電極パッドと検出用電極パッド間に発生する静電結合容量を有効に小さく抑制することができる。
【0038】
また、駆動モードにおいて駆動用振動腕13の面内振動から生じる振動漏れは、両凹部15a,15bに遮られて左右方向から内側に回り込む際に相殺されることによって緩和される。支持部12の中央領域を伝搬する成分は、そのまま検出用振動腕14側に伝搬するが、駆動モードにおける駆動用振動腕からの振動漏れによるエラー検出信号の発生を従来より抑制することができる。
【0039】
特に本実施例では、凹部15a,15bが、長手方向に見てその背後に検出用電極パッド18及び検出用振動腕14が位置するように設けられている。これにより、支持部12は、駆動用振動腕13から検出用振動腕14へ、及び駆動用電極パッド17から検出用電極パッド18へ直線的に到達し得る部分が大幅に制限されている。従って、上述した静電結合容量及び振動漏れによるエラー検出信号の発生がより効果的に抑制される。
【0040】
図3は、本発明の第3実施例の両側音叉型屈曲振動片31を概略的に示している。本実施例の屈曲振動片31は、その支持部32において、第1実施例の凹部15a,15bに対応する凹部33a,33bが駆動用振動腕13側に配置され、第1実施例の貫通孔16に対応する貫通孔34が検出用振動腕14寄りに配置されている。凹部33a,33b及び貫通孔34は、互いに前記支持部の幅方向に部分的に重複するように寸法が設定されかつ配置されている。
【0041】
このように駆動用電極パッド17と検出用電極パッド18とは、第1実施例と同様に、前記支持部上で凹部33a,33bと貫通孔34とにより長手方向に隔てられている。これにより、支持部12を小型化しても、前記駆動用電極パッドと検出用電極パッド間に発生する静電結合容量を有効に小さく抑制することができる。
【0042】
また、駆動モードにおいて駆動用振動腕13の面内振動から生じる振動漏れは、両凹部33a,33bに遮られて左右方向から内側に回り込む際に相殺され、その後支持部32の中央領域から貫通孔34により遮断されてその左右両側を回るように伝搬することによって緩和される。これにより、駆動モードにおける駆動用振動腕からの振動漏れによるエラー検出信号の発生を従来より抑制することができる。
【0043】
特に本実施例では、凹部33a,33b及び貫通孔34を前記支持部の幅方向に部分的に重複するように設けたことによって、支持部32には、駆動用振動腕13から検出用振動腕14へ、及び駆動用電極パッド17から検出用電極パッド18へ直線的に到達し得る部分が無い。これによって、上述した静電結合容量及び振動漏れによるエラー検出信号の発生がより効果的に抑制される。
【0044】
第1〜第3実施例の両側音叉型屈曲振動片11〜31について、駆動用振動腕13が面内振動している駆動モードで前記屈曲振動片がY軸周りに回転していないときに、検出用電極パッド18から出力されるエラーの検出電流をシミュレーションした。比較のため、図9及び図10の従来例について、同様に駆動モードで屈曲振動片1,1´がY軸周りに回転していないときに、検出用電極パッド6から出力されるエラーの検出電流をシミュレーションした。
【0045】
図4は、第1〜第3実施例における上記シミュレーションの結果を従来例と比較して示している。同図において、縦軸は、エラー検出信号として、駆動用電極パッド17に印加される駆動電流に対して検出用電極パッド18から出力される検出電流の割合をppm換算して表している。S1は一方の検出用振動腕からのエラー検出信号の大きさを、S2は他方の検出用振動腕からのエラー検出信号の大きさをそれぞれ表している。
【0046】
同図に示すように、エラー検出信号は第1実施例が最も小さい。第2,第3実施例のエラー検出信号は第1実施例よりも大きいが、実用上十分に小さい値を示している。また、第1実施例のエラー検出信号がS1、S2共に負値であったのに対し、第2,第3実施例のエラー検出信号はS1、S2共に正値を示した。いずれの場合も、S1とS2とが概ね同じ値を示した。
【0047】
これに対し、従来例のエラー検出信号は、いずれの場合も本発明の各実施例より2.5倍以上大きい値を示した。また、従来例では、いずれの場合も一方のエラー検出信号(S1)が負値で、他方のエラー検出信号(S2)が正値であり、その絶対値は一方(S1)が他方(S2)より大きく表れた。このシミュレーション結果から、本発明によれば、駆動モードにおけるエラー検出信号の発生を非常に有効に抑制し得ることが分かる。
【0048】
前記支持部の凹部は、長手方向の中心に関して左右非対称に設けることもできる。図5は、そのような変形例の支持部の要部を概略的に示している。本実施例の支持部41は、上記各実施例よりも長い溝状の2つの凹部42a,42bが、該支持部の各側部から1つずつ長手方向に互い違いに、かつ幅方向に互いに重複するように形成されている。これにより、支持部41には駆動用振動腕13側から検出用振動腕14側へ直線的に到達し得る部分が無く、駆動用電極パッドと検出用電極パッドとが長手方向に隔てられる。
【0049】
図6は、凹部を左右非対称に設けた別の変形例の支持部の要部を概略的に示している。本実施例の支持部43は、第1〜第3実施例よりも長い溝状の3つの凹部44a〜44cが、該支持部の各側部から1つずつ長手方向に互い違いに、かつ幅方向に互いに重複するように形成されている。これにより、駆動用電極パッドと検出用電極パッドとは、支持部43上で長手方向により確実に隔てられる。また、別の実施例では、前記支持部の側部に4つ以上の凹部を設けることもでき、それらの寸法も様々に変化させることができる。
【0050】
図7は、第1実施例の両側音叉型屈曲振動片11を搭載した角速度センサー51を概略的に示している。角速度センサー51は、パッケージ52の内部に圧電振動ジャイロ素子として屈曲振動片11と、これを駆動制御するICチップ53とを備える。パッケージ52は、矩形箱型のべース54と、その上端に気密に接合された金属製のリッド55とを有する。ICチップ53は、べース54内に画定される空所の底部に固定される。
【0051】
屈曲振動片11は、ICチップ53の上方に水平に配置したポリイミド樹脂基板56の上方に金属タブテープ57で水平に固定支持されている。屈曲振動片11は、支持部12の電極パッド17,18にバンプが設けられ、前記電極パッドの形成面を下側にして配置する。タブテープ57は、図示するようにポリイミド樹脂基板56から折曲されて斜め上方へ延長し、その先端に前記バンプを溶着させて前記支持部の各電極パッド17,18と電気的に接続される。
【0052】
前記ポリイミド樹脂基板は、パッケージ52の内部配線を介してICチップ53及びパッケージ外面の外部電極と接続されている。この外部電極を介して接続された外部回路及び電源から一定の駆動電圧を印加することによって、屈曲振動片11は所定の周波数で正確に振動する。
【0053】
別の実施例において、屈曲振動片11は、支持部12の下面をICチップ53の上面に直接、例えば絶縁性を有するエボキシ系樹脂接着剤で接着することにより固定することができる。
【0054】
本発明は、両側音叉型以外の屈曲振動片にも適用することができる。図8は、上述したダブルT字型の構造を有する本発明の第4実施例の屈曲振動片を概略的に示している。屈曲振動片61は、中央の支持部62と、該支持部に支持される1対の検出用振動腕63と1対の連結腕64a,64bと左右各1対の駆動用振動腕66a,66bとを有する。検出用振動腕63は、支持部62から図中上下両側へ延出している。駆動用振動腕66a,66bは、前記支持部から前記検出用振動腕と直交する向きに図中左右両側へ延出する各連結腕64a,64bの先端部を基部65a,65bとして、それから前記検出用振動腕と平行に図中上下両側へ延出している。前記各検出用振動腕にはその表面に検出電極(図示せず)が、前記各駆動用振動腕にはその表面に駆動電極(図示せず)がそれぞれ設けられている。
【0055】
支持部62の左右両側部には、各検出用振動腕63と左右両側の連結腕64a,64bとの間にそれぞれ凹部67a,67bが左右対称に設けられている。凹部67a,67bは、前記支持部の各側部から幅方向に延長しかつ該支持部を厚さ方向に貫通する細長い溝状に左右対称に形成され、前記連結腕寄りに配置されている。更に前記支持部の平面部には、各検出用振動腕63とそれに近い方の凹部67a,67bとの間略中央に、それぞれ左右方向に細長い矩形の貫通孔68が設けられている。凹部67a,67b及び貫通孔68は、互いに前記支持部の幅方向に部分的に重複するように寸法が設定されかつ配置されている。
【0056】
支持部12の表面には、左右各対の駆動用振動腕66a,66bの前記駆動電極からそれぞれ引き出した2つの駆動用電極パッド69が、前記各連結腕の基端近くに1つずつ配置されている。更に前記支持部の表面には、検出用振動腕63の前記検出電極から引き出した4つの検出用電極パッド70が、前記各検出用振動腕の基端近くに2つずつ配置されている。駆動用電極パッド69と検出用電極パッド70とは、前記支持部上で凹部67a,67bと貫通孔68とにより上下方向に隔てられている。
【0057】
駆動モードにおいて、駆動用電極パッド69から前記駆動電極に所定の交流電圧を印加すると、駆動用振動腕66a,66bは、その主面と同じXY面内で矢印Aで示すように屈曲振動する。この状態で屈曲振動片61がXY平面内でZ軸周りに回転すると、前記駆動用振動腕の長手方向に沿ってコリオリ力が交互に逆向きに発生し、その作用によって連結腕64a,64bが同じくXY平面内で矢印Bで示すように屈曲振動する。これが支持部62を介して伝達され、検出用振動腕63を同じくXY平面内で矢印Cで示すように屈曲振動させる。この検出用振動腕の屈曲振動により前記検出電極間に発生する電位差を検出用電極パッド70から取り出すことによって、屈曲振動片61のZ軸周りの前記回転及びその角速度等が求められる。
【0058】
本実施例でも、上述したように駆動用電極パッド69と検出用電極パッド70とが、支持部62上で凹部67a,67bと貫通孔68とにより上下方向に隔てられている。これにより、支持部62を小型化しても、前記駆動用電極パッドと検出用電極パッド間に発生する静電結合容量を有効に小さく抑制することができる。
【0059】
また、駆動モードにおいて駆動用振動腕66a,66bの面内振動から生じる振動漏れは、左右両凹部67a,67bに遮られて左右方向から内側に回り込む際に相殺され、その後支持部62の中央領域を通過する成分が貫通孔68により遮断され、その左右両側を回るように伝搬することによって緩和される。これにより、駆動モードにおける前記駆動用振動腕からの振動漏れによるエラー検出信号の発生を抑制することができる。
【0060】
本実施例においても、凹部67a,67b及び貫通孔68を前記支持部の幅方向に部分的に重複するように設けたことによって、支持部62には、駆動用振動腕66a,66bから連結腕64a,64bを介して検出用振動腕63へ、及び駆動用電極パッド69から検出用電極パッド70へ直線的に到達し得る部分が無い。これによって、上述した静電結合容量及び振動漏れによるエラー検出信号の発生がより効果的に抑制される。
【0061】
別の実施例では、支持部の側部に設けられる凹部をその厚さ方向に貫通しない有底状に形成することができる。また、支持部の平面部に設けられる貫通孔も、有底孔に変更することができる。これにより、支持部の剛性を大きく低下させることなく、駆動モードにおける静電結合容量の発生及び駆動用振動腕からの振動漏れによるエラー検出信号の発生を抑制することができる。
【0062】
また、別の実施例では、支持部の側部に設けられる凹部と平面部に設けられる貫通孔又は有底孔とを、支持部の幅方向に重複しないような寸法に設定することができる。更に、前記凹部及び貫通孔又は有底孔は、上記各実施例以外の様々な形状に形成することができる。
【0063】
本発明は、上記実施例に限定されるものでなく、その技術的範囲内で様々な変形又は変更を加えて実施することができる。例えば、本発明の屈曲振動片は、角速度以外に、角加速度、加速度、力等の物理量を検出するためのセンサー素子に適用することができる。また、本発明の屈曲振動片は、水晶以外に、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム等の圧電単結晶や、ジルコン酸チタン酸鉛等の圧電セラミックス等の圧電材料、又はシリコン半導体材料から形成することができる。更に本発明の屈曲振動片は、これをセンサー素子として搭載することにより、デジタルスチールカメラ、ビデオカメラ、ナビゲーション装置、車体姿勢検出装置、ポインティングデバイス、ゲームコントローラー、携帯電話、ヘッドマウントディスプレイ等の電子機器に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1,1´,11,21,31,61…屈曲振動片、2,12,22,32,41,43,62…支持部、3,13,66a,66b…駆動用振動腕、4,14,63…検出用振動腕、5,15,69…駆動用電極パッド、6,16,70…検出用電極パッド、7,18,68…貫通孔、17a,17b,67a,67b…凹部、51…角速度センサー、52…パッケージ、53…ICチップ、54…べース、55…リッド、56…ポリイミド樹脂基板、57…タブテープ、64a,64b…連結腕、65a,65b…基部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1対の駆動用振動腕と、
1対の検出用振動腕と、
前記駆動用振動腕及び前記検出用振動腕を支持するための支持部と、
前記駆動用振動腕に配置されている駆動電極と、
前記検出用振動腕に配置されている検出電極と、
前記駆動電極に接続されている前記支持部上の駆動用電極パッドと、
前記検出電極に接続されている前記支持部上の検出用電極パッドとを備え、
前記支持部が幅方向の少なくとも一方の側部に凹部を有し、
前記駆動用電極パッドが前記凹部よりも前記駆動用振動腕側に配置され、かつ
前記検出用電極パッドが前記凹部よりも前記検出用振動腕側に配置されていることを特徴とする屈曲振動片。
【請求項2】
前記1対の検出用振動腕が、前記支持部から平行に延出する2本の振動腕からなり、前記少なくとも1対の駆動用振動腕が、前記支持部から前記検出用振動腕とは反対側に平行に延出する2本の振動腕からなることを特徴とする請求項1記載の屈曲振動片。
【請求項3】
前記支持部から両側に1本ずつ互いに逆向きに延出する2本1対の連結腕を更に備え、前記1対の検出用振動腕が、前記支持部から前記連結腕の延長方向の直交方向両側に1本ずつ互いに逆向きに延出する2本の振動腕からなり、前記少なくとも1対の駆動用振動腕が、前記各連結腕の先端部からそれぞれ該連結腕の延長方向の直交方向両側に1本ずつ互いに逆向きに延出する4本2対の振動腕からなることを特徴とする請求項1記載の屈曲振動片。
【請求項4】
前記凹部が前記支持部の幅方向の両側部に設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の屈曲振動片。
【請求項5】
前記支持部の幅方向両側部の前記凹部が、前記幅方向において重複するように設けられていることを特徴とする請求項4記載の屈曲振動片。
【請求項6】
前記凹部が前記支持部を厚さ方向に貫通するように形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の屈曲振動片。
【請求項7】
前記凹部が前記支持部を厚さ方向に貫通しないように形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の屈曲振動片。
【請求項8】
前記支持部がその平面部に形成した孔部を更に有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の屈曲振動片。
【請求項9】
前記支持部の前記孔部が前記凹部よりも前記駆動用振動腕側に配置されていることを特徴とする請求項8記載の屈曲振動片。
【請求項10】
前記支持部の前記孔部が前記凹部よりも前記検出用振動腕側に配置されていることを特徴とする請求項8記載の屈曲振動片。
【請求項11】
前記孔部が前記支持部を厚さ方向に貫通するように形成されていることを特徴とする請求項8乃至10のいずれか一項に記載の屈曲振動片。
【請求項12】
前記孔部が前記支持部を厚さ方向に貫通しないように形成されていることを特徴とする請求項8乃至10のいずれか一項に記載の屈曲振動片。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の屈曲振動片を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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