説明

屋上点検ハッチ

【課題】屋上点検口の閉鎖時に、笛吹き音等の空力騒音の発生を防止することができると共に、雨水の侵入を防止することができる、屋上点検ハッチを提供する。
【解決手段】屋上点検ハッチ1の蓋体23が屋上点検口6を閉鎖すると、蓋体23の側壁部25の内面29と、立ち上げスラブ3の外側面7の間に画成され、かつ、蓋体23の天板部24の下面27を天井面とし、建築物の屋根面側を開口部201とする、空間200と、蓋体23の天板部24の下面27と、立ち上げスラブ3の上端面9の間に画成され、かつ、屋上点検口6の開口部5を空間200に連通させる、空隙100とが形成される。これにより、屋上点検口6の閉鎖時に蓋体23の外部と屋上点検口6の間に生じる空気流の空力騒音を低減させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンションや団地等の建築物の屋上点検口に設置される屋上点検ハッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
マンションの屋上には、空調機器や給水塔等の種々の機器が設置される場合がある。これらの機器を点検するため、マンションの最上階の共用廊下の天井部に、共用廊下から屋上に至る屋上点検口が形成される場合がある。この屋上点検口は、共用廊下の天井部とマンションの屋上に開口するから、マンションの屋上から共用廊下に雨水が落下することを防止し、また、マンションの屋上にみだりに人が立ち入ることを防止するため、従来、屋上点検口の屋上側の開口部に、施錠可能な屋上点検ハッチが取り付けられる。
【0003】
実開昭61―069395号(実願昭59―155381号)公報は、建築物の最上階室又は階段室の天井部に開口した屋上点検口に固定される受枠と、この受枠に開閉自在に取付けられた蓋体を有し、この蓋体又は受枠に外部に連通する排煙口部を設け、火災発生等時に煙を最上階室又は階段室に充満させることなく速やかに建物外屋上に逃がすようにした屋上点検口用ハッチを開示する。
【0004】
ここで、従来の屋上点検ハッチは、蓋体の閉鎖時に蓋体と受枠の間を密封することにより、蓋体と受枠の間から雨水が侵入することを防止するように構成されている。例えば、前述の実願昭59―155381号明細書第4頁第11行乃至第13行を参照すると、屋上点検用ハッチの閉成時に雨水の侵入を防止するため、屋上点検用ハッチの蓋体は、点検口の開口周縁立上り部全体に略密閉状態で覆い被さる形態を有する。また、同明細書第6頁第20行乃至第7頁第3行を参照すると、屋上点検用ハッチの蓋体は、受枠の立上り周側壁の上端縁部に、ゴム等の弾性緩衝材を介して閉成される。
【0005】
他方において、マンション等に設置される屋上点検ハッチは、作業者が種々の工具や器具を持って出入りできるように、間口の広い開口部を具備することが望まれている。しかし、大きな開口部を有する屋上点検口に設置される屋上点検用ハッチは、蓋体も大型になるため、蓋体に歪みを生じ易い。この結果、蓋体の閉鎖時に、蓋体と受枠の間に不規則な隙間を生じる場合がある。蓋体又は受枠に弾性緩衝材やシール材を取付けた場合には、この隙間は、蓋体又は受枠と弾性緩衝材又はシール材との間に生じる。屋上点検ハッチは高所に設置されるから、この隙間を通過する空気の流量によっては、空気流に伴う空力騒音、所謂、笛吹き音を発生する場合がある。特に、マンションには多数の住人が居住しているから、このような騒音の発生はマンションの価値を大きく低下させる要因になる。
【0006】
更に、屋上点検ハッチの蓋体を大型化すると、蓋体の重量が増加するから、蓋体の開放に大きな力を要する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開昭61―069395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、屋上点検口の閉鎖時に、笛吹き音等の空力騒音の発生を防止することができると共に、雨水の侵入を防止することができる、屋上点検ハッチを提供することにある。
本発明の他の目的は、屋上点検ハッチの蓋体や枠体を大型化した場合でも、屋上点検口の閉鎖時に、笛吹き音等の空力騒音の発生を防止することができると共に、雨水の侵入を防止することができる、屋上点検ハッチを提供することにある。
本発明の更に他の目的は、蓋体を容易に開閉することができる、屋上点検ハッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の屋上点検ハッチは、建築物の屋上点検口を開閉する蓋体と、前記屋上点検口の屋根面側の開口部付近に設置される枠体と、前記蓋体を前記枠体に連結し、かつ、前記蓋体を前記屋上点検口の開閉方向に回転可能に支持する、ヒンジを有する、屋上点検ハッチであって、前記屋根面に連続する外側面と、前記開口部を画成する内側面と、前記開口部を囲繞する上端面を有し、かつ、前記建築物の屋根面から上方に向かって突出する、立ち上げスラブに固定される、前記屋上点検ハッチにおいて、前記蓋体は、前記屋上点検口を開閉する天板部と、前記天板部に連続し、かつ、前記屋上点検口の閉鎖時に前記立ち上げスラブの前記外側面を囲繞する、側壁部を有し、前記屋上点検口の閉鎖時に前記蓋体の外部と前記屋上点検口の間に生じる空気流の空力騒音を低減させるために、前記蓋体が前記屋上点検口を閉鎖すると、前記立ち上げスラブの前記外側面と前記上端面に沿って空気流路が形成されることを特徴とする。
【0010】
屋上点検ハッチの蓋体が屋上点検口を閉鎖すると、立ち上げスラブの外側面と上端面に沿って空気流路が形成され、この空気流路を介して蓋体の外部と屋上点検口の間に空気が流通する。この空気流路の形状及び寸法は、空気流路を通過する空気流が空力騒音を生じないように決定される。この空気流路は、蓋体の閉鎖時に、蓋体の側壁部の内面と立ち上げスラブの外側面の間に画成され、かつ、蓋体の天板部の下面を天井面とし、建築物の屋根面側を開口部とする、空間と、蓋体の天板部の下面と立ち上げスラブの上端面の間に画成され、かつ、屋上点検口の開口部を前記空間に連通させる、空隙を含むことができる。これにより、空気流は、建築物の屋根面側の開口部から前記空間に流入し、前記空間内を立ち上げスラブの外側面に沿って上昇して蓋体の天板部の下面に至り、次いで、前記空隙に流入して屋上点検口の屋上側の開口部に至り、屋上点検口を通過して、屋上点検口の廊下側の開口部から流出することができる。屋上点検口の廊下側の開口部から流入した空気流は、逆の経路を辿って、前記空間の開口部から蓋体の外部に流出することができる。
【0011】
建築物の屋根面にコンクリート等で形成された立ち上げスラブは大きな質量を有するから、空気流路を流れる空気流によって振動することはない。したがって、立ち上げスラブに沿って空気流路を形成することにより、空気流路を流れる空気流の空力騒音を効果的に低減させることができる。また、この空気流路を、蓋体の側壁部の内面と蓋体の天板部の下面とに沿って形成すれば、蓋体を立ち上げスラブの至近距離に配置することができる。ここで、蓋体の天板部の上面と蓋体の側壁部の外面を連続した平面によって構成すれば、建築物の屋根面からの大きな突起を生じることなく、建築物の屋根面にできる限り沿った形態の屋上点検ハッチを提供することができる。更に、蓋体の天板部の上面と蓋体の側壁部の外面を連続した平面によって構成すれば、蓋体の天板部の上面や側壁部の外面に沿う空気流によって空力騒音が発生することを効果的に防止することができる。
【0012】
屋上点検ハッチの蓋体は天板部と側壁部を有し、屋上点検口の閉鎖時に、天板部に連続する側壁部が立ち上げスラブの外側面を囲繞するから、雨水が屋上点検口に侵入することを防止することができる。蓋体の側壁部は、屋上点検口の閉鎖時に雨水が前記空間を経て前記空隙に侵入することを確実に阻止するため、天板部の縁から屋根面に向かって、ほぼ鉛直方向に、所定の長さだけ延在させることができる。
【0013】
蓋体の天板部の下面若しくは枠体に、弾性を有する複数個のスペーサ部材を互いに間隔を空けて取り付け、これらのスペーサ部材が、蓋体の閉鎖時に枠体若しくは蓋体の天板部の下面に当接して、天板部を枠体から離隔させるように構成することができる。これにより、蓋体の天板部の下面と立ち上げスラブの上端面の間に、空気流路の前記空隙を形成することができる。
【0014】
蓋体の天板部の下面に、蓋体のヒンジの回転軸を含む平面に交差する方向に延在するように、取手部材を取り付け、この取手部材を蓋体の中央部よりも蓋体の開放端側に偏倚させて配置することにより、蓋体の開閉力を軽減することができる。すなわち、取手部材を、蓋体の開放端の近傍から蓋体の中央部付近まで延在させることによって、作業者が取手を掴む位置をヒンジの回転軸から離隔させることができるから、蓋体を押し上げる際の回転モーメントを増大させることができる。更に、作業者は、蓋体の開閉時に、取手を掴む位置を、蓋体の開放端に向かって、又は、蓋体のヒンジに向かって、徐々に移動させることができるから、作業者は、屋上点検口のステップに掛けられた梯子を昇降しながら、蓋体を滑らかに開閉することができる。
【0015】
蓋体と枠体の間にガススプリングを介装し、ガススプリングが蓋体を開放させる方向に付勢力を付与する領域と、蓋体を閉鎖させる方向に付勢力を付与する領域の反転点を適当位置に設定すれば、蓋体の開放時にこの反転点を過ぎると、蓋体はガススプリングの付勢力によって開放方向に付勢され、蓋体の閉鎖時にこの反転点を過ぎると、蓋体はガススプリングの付勢力によって閉鎖方向に付勢されるから、前述の取手の作用と相俟って、蓋体を安全にかつ容易に開閉することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の屋上点検ハッチの蓋体を閉鎖したときの外観を表す斜視図である。(実施例1、2)
【図2】図2は、図1の屋上点検ハッチの蓋体を開放したときの外観を表す斜視図である。(実施例2)
【図3】図3は、図1の屋上点検ハッチを廊下の天井側から見た平面図である。(実施例1、2)
【図4】図4は、本発明の屋上点検ハッチの構成を表す一部切り欠き断面図である。(実施例1)
【図5】図5(A)は、本発明の屋上点検ハッチの蓋体の下面の一部切り欠き平面図であり、図5(B)は、図5(A)のIII−III方向矢視図であり、図5(C)は、蓋体のヒンジ取付け部を表す図5(A)のIV方向矢視図であり、図5(D)は、蓋体のヒンジ取付け部を表す図5(A)のV方向矢視図である。(実施例1、2)
【図6】図6(A)は、本発明の屋上点検ハッチの枠体の平面図であり、図6(B)は、図6(A)のVI−VI線に沿う断面図であり、図6(C)は、図6(A)のVII方向矢視図である。(実施例1、2)
【図7】図7(A)、(B)は、本発明の屋上点検ハッチの枠体の側面図であり、このうち、図7(A)は、図6(A)のVIII方向矢視図であり、図7(B)は、図6(A)のIX方向矢視図である。(実施例1、2)
【図8】図8(A)、(B)は、本発明の屋上点検ハッチの要部断面図であり、図8(A)は、図4の枠Iで囲んだ部分の拡大図を示し、図8(B)は、図4の枠IIで囲んだ部分の拡大図を示す。(実施例1)
【図9】図9(A)、(B)は、本発明の屋上点検ハッチの他の実施例の要部断面図であり、図9(A)は、図8(A)に対応する部分を示し、図9(B)は、図8(B)に対応する部分を示す。(実施例2)
【図10】図10は、本発明の屋上点検ハッチの施錠部の一部切り欠き斜視図である。(実施例1、2)
【図11】図11は、図10の施錠部の正面図である。(実施例1、2)
【図12】図12は、本発明の屋上点検ハッチをマンションの屋上点検口に取付けた状態の断面図である。(実施例1、2)
【図13】図13は、図12の屋上点検ハッチの蓋体を開放し、梯子を掛けた状態の断面図である。(実施例1、2)
【発明を実施するための形態】
【0017】
屋上点検口の開口部を拡大するため、屋上点検ハッチの蓋体や枠体を大型化した場合でも、笛吹き音等の空力騒音の発生と雨水の侵入を防止し、蓋体の開閉を容易化するという目的を、簡単な構成で実現した。
【実施例1】
【0018】
図1乃至8及び図10乃至13は、本発明の第一実施例の屋上点検ハッチ1とその構成部品を示す。屋上点検ハッチ1は、図1、2、12、13に示されているように、建築物の屋上の屋根面2から上方に向かって突出形成された立ち上げスラブ3に取付けられる。立ち上げスラブ3は、建築物の屋上スラブ4に一体化され、図12及び13の屋上スラブ4は、建築物の廊下の天井部分の躯体を構成している。立ち上げスラブ3は、ほぼ正方形の開口部5を囲繞する方形の枠体であり、開口部5は、屋上点検口6の屋上側の開口部を構成する。屋上点検口6は、屋上スラブ4に形成された方形断面の通路であり、屋上側の開口部5と、廊下の天井面に開口した廊下側の開口部(図示せず。)の間に垂直方向に延在する。図中、参照番号Sは、屋上点検口6に固定された昇降用ステップである。
【0019】
立ち上げスラブ3は、少なくとも、屋根面2に落下した雨水が開口部5に流入しない高さだけ、屋根面2から突出し、屋根面2に連続する4つの外側面7と、開口部5を画成する4つの内側面8と、ほぼ正方形の形状を成して開口部5を囲繞する上端面9を有する。
【0020】
屋上点検ハッチ1は、立ち上げスラブ3の開口部5に固定される枠体10を有する。枠体10は、図6(A)に示すように、4本の内枠アングル11を方形に連結することによって構成される。各内枠アングル11は、ステンレス鋼板を成形することによって、立ち上げスラブ3の内側面8と上端面9に係合するように成形される。これらの内枠アングル11のうちの1本には、一対のブラケット12が間隔を空けて溶接されている。ブラケット12はステンレス鋼板によって構成され、図6(B)に示すように、枠体10の外方へ向かって延在し、その先端部に屈曲部13を有する。屈曲部13にはヒンジ14が取付けられ、ヒンジ14の回転軸15は、ブラケット12が溶接された内枠アングル11に平行に延在する。枠体10と屈曲部13の間の間隙Gは、少なくとも、立ち上げスラブ3の上端面9を収容できる大きさを有する。
【0021】
枠体10の内枠アングル11のうち、ブラケット12を溶接した内枠アングル11に対向する内枠アングル11には、施錠用のブラケット16が溶接されている。ブラケット16は、コ字状に屈曲成形された鋼板によって構成され、互いに平行に延在する一対の突起片17、18を有する。突起片17、18には、貫通孔19、20が形成される。図6(A)に示すように、突起片17は、枠体10の中央線CEに合致する位置に配置され、突起片18は、枠体10の中央線CEから側方に偏倚した位置に配置される。枠体10の内枠アングル11のうち、ブラケット12が溶接された内枠アングル11と、ブラケット16が溶接された内枠ブラケット11には、それぞれ、枠体10の内方に突出した一対のアンカー取付けねじ21が固定されている。また、アンカー取付けねじ21が固定されていない内枠アングル11には、ガススプリング取付けねじ22が固定されている。
【0022】
屋上点検ハッチ1は、また、屋上点検口6の屋上側の開口部5を開閉するための蓋体23を有する。蓋体23は、ステンレス鋼板によって形成され、ほぼ正方形の天板部24と、天板部24の四辺に沿って折り曲げられた側壁部25とを有する。天板部24は、連続した平坦な上面26と、上面26の裏面側の下面27を有する。側壁部25は、天板部24の下面27の側にほぼ90度の角度で折り曲げられて形成され、天板部24の上面26に連続する外面28と、天板部24の下面27に連続する内面29を有する。
【0023】
蓋体23の天板部24の下面27には、取手部材30と、施錠部材31と、ガススプリング取付けブラケット32、33と、弾性スペーサ部材34、35が取付けられている。取手部材30は、図5に示すように、蓋体23の中央軸線CNに沿って配置され、蓋体23の開放端OEの側に偏倚した位置に固定されている。蓋体23の開放端OEは、蓋体23のヒンジ端HEの反対側に位置する。取手部材30は、蓋体23の中央軸線CNに沿って延在する長孔36を有する。取手部材30と開放端OEの間には施錠部材31が配置される。施錠部材31は、中央軸線CNを挟んで対向する一対の有孔ブラケット37、38からなり、有孔ブラケット37、38に形成された貫通孔39、40は、施錠用のブラケット16の突起片17に形成された貫通孔19と整合可能である。
【0024】
図5(A)及び(B)に示すように、蓋体23のヒンジ端HEの側の側壁部25には、側壁部25のコーナー部の内面29に補強板41が溶接されている。補強板41は、ヒンジ端HEの側の側壁部25と、この側壁部25に隣接する他の側壁部25との間に延在するように、屈曲成形された板材から成り、ヒンジ端HEの側の板材には、図5(C)及び(D)に示すように、ヒンジ14に連結するための連結孔42が穿孔されている。連結孔42は、補強板41と、ヒンジ端HEの側の側壁部25を貫通する。
【0025】
蓋体23は、連結孔42に挿入したボルトによって、ヒンジ端HEの側の側壁部25の内面29に、枠体10に装着したヒンジ14、14を固定することにより、枠体10に連結される。これにより、蓋体23は、枠体10に対し、ヒンジ14、14の回転軸15を中心にして、回動可能となる。次いで、蓋体23のガススプリング取付けブラケット32、33と、枠体10のガススプリング取付けねじ22、22の間に、それぞれ、ガススプリング43、44が取付けられる。ガススプリング43、44は、図4に示すように、蓋体23を矢印方向に回転させるとき、蓋体23に矢印方向への付勢力を作用させる。これにより、枠体10、蓋体23、ガススプリング43、44は一体化され、屋上点検ハッチ1が完成する。図3は、完成した屋上点検ハッチ1を枠体10の側から見た底面図である。
【0026】
屋上点検ハッチ1は、図2、4、10に示すように、枠体10の内枠アングル11を立ち上げスラブ3の内側面8と上端面9に係合させて、屋上点検口6の屋上側の開口部5に嵌合され、アンカー取付け部材45によって立ち上げスラブ3の内側面8に固定される。アンカー取付け部材45の上部は、枠体10のアンカー取付けねじ21に係合し、このねじ21に螺合するナイロンインサートロックナット46によって枠体10に固定される。アンカー取付け部材45の下部は、立ち上げスラブ3の内側面8に打ち込まれたアンカー47に係合し、アンカー47に螺合するナイロンインサートロックナット48によって立ち上げスラブ3に固定される。
【0027】
図8(A)は、図4の枠Iで囲まれた部分を拡大した図であり、図8(B)は、図4の枠IIで囲まれた部分を拡大した図である。蓋体23の開放端OEの側では、図8(A)に示すように、天板部24の下面27に取り付けられた弾性スペーサ部材34が内枠アングル11に当接し、天板部24を内枠アングル11から離隔させる結果、天板部24の下面27と立ち上げスラブ3の上端面9の間に空隙100が形成される。蓋体23のヒンジ端HEの側では、図8(B)に示すように、天板部24の下面27が、内枠アングル11に固定された一対のブラケット12に当接する結果、これらのブラケット12の間に空隙100が形成される。これらの空隙100は、屋上点検口6の屋上側の開口部5に連通する。
【0028】
蓋体23の開放端OEの側では、また、図8(A)に示すように、蓋体23の側壁部25の内面29と立ち上げスラブ3の外側面7の間に空間200が形成される。蓋体23のヒンジ端HEの側では、図8(B)に示すように、蓋体23の側壁部25の内面29と立ち上げスラブ3の外側面7の間に空間200が形成される。これらの空間200は、天板部24の下面27を天井面とし、建築物の屋根面2側を開口部201とする。空隙100は空間200に連通し、空間200は開口部201を介して蓋体23の外部に連通するから、屋上点検ハッチ1の蓋体23を閉鎖した状態で、蓋体23と立ち上げスラブ3の間には空気流路が形成される。この空気流路は、蓋体23の開放端OEの側と、蓋体23のヒンジ端HEの側とに形成されるのみでなく、立ち上げスラブ3の左右の外側面7の側にも形成されるから、空気は立ち上げスラブ3の四方から屋上点検口6に出入りすることができる。このように、屋上点検ハッチ1は、蓋体23が屋上点検口6を閉鎖すると、立ち上げスラブ3の外側面7と上端面9に沿って空気流路が形成されるから、屋上点検口6の閉鎖時に蓋体23の外部と屋上点検口6の間に生じる空気流の空力騒音を低減させることができる。
【0029】
更に、屋上点検ハッチ1の蓋体23が屋上点検口6を閉鎖すると、天板部24に連続する側壁部25が立ち上げスラブ3の外側面7を囲繞すると共に、天板部24の縁から屋根面2に向かって、ほぼ鉛直方向に、所定の長さだけ延在することにより、雨水が空間200を経て空隙100に侵入することを確実に阻止する。
【0030】
蓋体23を閉鎖すると、図11に示すように、蓋体23の下面27に固定された施錠部材31の一対の有孔ブラケット37、38の間に、枠体10に固定されたブラケット16の突起片17が挿入される。この状態で、有孔ブラケット37、38の貫通孔39、40と突起片17の貫通孔19に施錠装置49のシャックルを挿入すれば、蓋体23を施錠することができる。蓋体23の施錠を解除したときには、図10及び11に示すように、取り外した施錠装置49のシャックルをブラケット16の突起片18の貫通孔20に掛け止めしておけば、施錠装置49の紛失を防止することができると共に、蓋体23を閉鎖したときに蓋体23を直ちに施錠することができる。
【0031】
図12に示すように、蓋体23を閉鎖した状態から、図13に示すように、蓋体23を開放するには、梯子50を利用してステップSに上った作業者が、施錠装置49を解除した後、蓋体23の取手部材30を持って、蓋体23を矢印方向に回転させる。取手部材30は蓋体23の開放端OEの側に偏倚して取り付けられ、作業者はヒンジ14の回転軸15から離隔した位置で蓋体23を押し上げることになる。よって、作業者は小さい力で蓋体23を開放させることができる。また、取手部材30には、ヒンジ14の回転軸15の方向へ伸びる長孔36が形成されているから、作業者は、蓋体23が開放するにつれて、取手部材30の握持位置を滑らかに変更しながら、蓋体23を開放させることができる。また、作業者は、蓋体23を閉鎖するときにも、取手部材30の握持位置を滑らかに変更しながら、蓋体23を閉鎖することができる。
【実施例2】
【0032】
図9(A)、(B)は、本発明の第二実施例の屋上点検ハッチ51を示し、図9(A)は、図8(A)に対応する図であり、図9(B)は、図8(B)に対応する図である。図9(A)、(B)中で使用した参照番号のうち、図8(A)、(B)で使用した参照番号と同一の番号は、同一の構成部材を示す。本発明の第二実施例の特徴は、図8(A)、(B)中の空隙100に相当する空隙1000を拡大したことにある。すなわち、この実施例では、第一実施例の弾性スペーサ部材34の代わりに、より嵩の大きな弾性スペーサ部材340を使用すると共に、枠体10の内枠アングル11と立ち上げスラブ3の上端面9の間に、弾性パッキン341を介在させてある。弾性パッキン341は、立ち上げスラブ3の上端面9に不陸がある場合に、立ち上げスラブ3の上端面9と内枠アングル11の間に不規則な空隙が生じるのを防止し、この空隙を空気流が通過して空力騒音が発生するのを防止する。本発明の第二実施例では、嵩の大きな弾性スペーサ部材340を使用するのに伴い、図9(B)に示すように、蓋体23の閉鎖時に、蓋体23の天板部24の下面27がブラケット12に当接することなく、離隔している。これにより、ブラケット12の上方にも空隙1000が生じ、空気流の流量を更に増加させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の実施例では、横断面形状が正方形の屋上点検口に設置する、正方形の蓋体と正方形の枠体を有する屋上点検ハッチを示したが、蓋体及び枠体の形状は正方形に限定されることなく、円形、長方形等の他の形状にすることもできる。
【符号の説明】
【0034】
1 屋上点検ハッチ
2 屋根面
3 立ち上げスラブ
4 屋上スラブ
5 屋上点検口の屋上側の開口部
6 屋上点検口
7 立ち上げスラブの外側面
8 立ち上げスラブの内側面
9 立ち上げスラブの上端面
10 枠体
14 ヒンジ
23 蓋体
51 屋上点検ハッチ
100 空隙
200 空間
1000 空隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の屋上点検口を開閉する蓋体と、前記屋上点検口の屋根面側の開口部付近に設置される枠体と、前記蓋体を前記枠体に連結し、かつ、前記蓋体を前記屋上点検口の開閉方向に回転可能に支持する、ヒンジを有する、屋上点検ハッチであって、前記屋根面に連続する外側面と、前記開口部を画成する内側面と、前記開口部を囲繞する上端面を有し、かつ、前記建築物の屋根面から上方に向かって突出する、立ち上げスラブに固定される、前記屋上点検ハッチにおいて、前記蓋体は、前記屋上点検口を開閉する天板部と、前記天板部に連続し、かつ、前記屋上点検口の閉鎖時に前記立ち上げスラブの前記外側面を囲繞する、側壁部を有し、前記屋上点検口の閉鎖時に前記蓋体の外部と前記屋上点検口の間に生じる空気流の空力騒音を低減させるために、前記蓋体が前記屋上点検口を閉鎖すると、前記立ち上げスラブの前記外側面と前記上端面に沿って空気流路が形成されることを特徴とする、屋上点検ハッチ。
【請求項2】
請求項1に記載された屋上点検ハッチにおいて、前記空気流路は、前記蓋体の前記側壁部の内面と前記立ち上げスラブの前記外側面の間に画成され、かつ、前記蓋体の前記天板部の下面を天井面とし、前記建築物の前記屋根面側を開口部とする、空間と、前記蓋体の前記天板部の前記下面と前記立ち上げスラブの前記上端面の間に画成され、かつ、前記屋上点検口の前記開口部を前記空間に連通させる、空隙を含むことを特徴とする、前記屋上点検ハッチ。
【請求項3】
請求項2に記載された屋上点検ハッチにおいて、前記蓋体の前記側壁部は、前記屋上点検口の閉鎖時に雨水が前記空間を経て前記空隙に侵入することを阻止するために、前記屋上点検口の閉鎖時に、前記立ち上げスラブの外側面を囲繞し、かつ、前記天板部の縁から前記屋根面に向かってほぼ鉛直方向に所定の長さだけ延在することを特徴とする、前記屋上点検ハッチ。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちのいずれか一項に記載された屋上点検ハッチにおいて、前記蓋体の前記天板部の下面若しくは前記枠体に、弾性を有する複数個のスペーサ部材を互いに間隔を空けて取り付け、前記スペーサ部材は、前記蓋体の閉鎖時に前記枠体若しくは前記天板部の下面に当接して、前記天板部を前記枠体から離隔させることを特徴とする、前記屋上点検ハッチ。
【請求項5】
請求項1乃至4のうちのいずれか一項に記載された屋上点検ハッチにおいて、前記蓋体の前記天板部の前記下面に、前記ヒンジの回転軸を含む平面に交差する方向に延在する取手部材を取り付け、前記取手部材を前記蓋体の中央部よりも前記蓋体の開放端側に偏倚させて配置したことを特徴とする、前記屋上点検ハッチ。
【請求項6】
請求項1乃至5のうちのいずれか一項に記載された屋上点検ハッチにおいて、前記蓋体と前記枠体の間に、前記蓋体を開放させる方向に付勢力を生じるガススプリングを介装したことを特徴とする、前記屋上点検ハッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−7375(P2012−7375A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143925(P2010−143925)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(000150615)株式会社長谷工コーポレーション (94)
【出願人】(510176776)株式会社伊勢興 (2)
【出願人】(000110479)ナカ工業株式会社 (125)