説明

屋内外共用無線ネットワークシステムおよび屋内外共用無線中継器

【課題】屋内外共用無線ネットワークシステムにおいて、通信チャネルにおける干渉を抑制しつつ、汎用性を低下させない技術を提供する。
【解決手段】屋内端末装置および屋外端末装置との間で無線通信を行う屋内外共用無線中継器2に、屋外端末装置との間で第1通信方式による無線通信を行う第1通信モジュール20と、屋内端末装置との間で無線通信を行う第2通信モジュール21とを設ける。第2通信モジュール21には、屋内端末装置との間で第1通信方式による無線通信を行う第1通信部210と、屋内端末装置との間で、第1通信方式と異なる第2通信方式による無線通信を行う第2通信部211と、第1通信部210と第2通信部211とを切り替える切替部212とを設ける。第1通信方式としては第2通信方式に比べて多数の装置に準拠されている方式を採用し、切替部212は第2通信部211よりも第1通信部210を優先して切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋内に配置された通信機器と屋外に配置された通信機器とを備えるネットワークにおいて、無線通信を実現する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、子局と親局との間で無線通信を行うネットワークを構築する技術(例えば、無線LAN技術)が知られている。このような技術が例えば特許文献1に記載されている。無線LAN技術を採用したネットワークは、ケーブルを敷設する必要がなく構築が比較的簡単であるため、昨今、その利用形態は多様化しており、屋内外を問わず、大いに普及している。例えば、屋内外の各所に配置された計測装置から共通のサーバ(主には屋内に配置される。)に計測データを送信することにより、サーバに情報を収集し分析するシステムなども考えられる。すなわち、屋内に配置された装置間のみならず、屋外に配置された装置と屋内に配置された装置との間で無線通信を行う屋内外共用無線ネットワークシステムも登場してきている。
【0003】
一方、無線LAN技術において、子局と親局との間の無線通信はIEEE802.11に定められた規格に従った通信として規格化されている。このように無線通信ネットワークにおいて、標準化された規格を採用することにより、当該ネットワークを構成する装置の制約を減らすことができる。したがって、当該ネットワークを構成する装置の互換性を高めることができ、汎用性の高いネットワークシステムを構築することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−180038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1にも指摘されているように、IEEE802.11に規定される通信規格では、子局の数が増加すると、親局(中継器)において混信(干渉)を生じるという問題がある。上記のような屋内外共用無線ネットワークシステムでは、屋外に配置される装置と屋内に配置される装置とが混在している。したがって、屋外と屋内との間の無線通信において比較的電波強度を上げる必要があり、特に、干渉を生じやすいという特徴がある。
【0006】
これを緩和するために、例えば、親局に同時に通信可能な複数の無線通信モジュールを設けて、それぞれを屋内用の通信と屋外用の通信とに使い分けることも考えられる。しかし、そのように構成したとしても、昨今のように、無線通信ネットワークを利用する端末数(子局数)が増大している状況では、隣接する通信チャネルからの干渉の発生を有効に防止できない場合がある。また、複数の無線通信モジュールを設けることは、1つの筐体に複数のアンテナを設けることになり、互いのアンテナ間に充分な距離を確保することが困難であり、混信の原因となる。
【0007】
したがって、この問題を解決するために、屋内用の無線通信と屋外用の無線通信とに、互いに混信を生じない、異なる通信規格を採用することも考えられる。例えば、IEEE802.11には、異なるいくつかの通信規格が標準化されているため、屋内用の無線通信モジュールにおいて802.11a(5GHz)を採用し、屋外用の無線通信モジュールにおいて802.11b/g(2.4GHz)を採用することが考えられる。
【0008】
しかし、例え標準化された規格を採用したとしても、市場に流通する装置(子局)に準拠されている数には偏りがあり、準拠する装置が比較的少ない通信規格を採用することによる互換性(汎用性)の低下が問題となる。すなわち、IEEE802.11の例では、ほとんどの装置が802.11b/gに準拠しており、これを通信規格として採用することに問題はない。その一方で、802.11aに準拠している装置は少ないので、ネットワーク内の一部の通信といえども、これを通信規格として採用すると、接続可能な装置が減少しシステムの汎用性が低下する。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、屋内外共用無線ネットワークシステムにおいて、通信チャネルにおける干渉を抑制しつつ、汎用性を低下させない技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、請求項1の発明は、屋内と屋外との間で無線通信を行う屋内外共用無線ネットワークシステムであって、屋内に配置される屋内端末装置と、屋外に配置される屋外端末装置と、前記屋内端末装置および前記屋外端末装置との間で無線通信を行う屋内外共用無線中継器とを備え、前記屋内外共用無線中継器は、前記屋外端末装置との間で第1通信方式による無線通信を行う第1通信モジュールと、前記屋内端末装置との間で無線通信を行う第2通信モジュールとを備え、前記第2通信モジュールは、前記屋内端末装置との間で前記第1通信方式による無線通信を行う第1通信手段と、前記屋内端末装置との間で、前記第1通信方式と異なる第2通信方式による無線通信を行う第2通信手段と、前記第1通信手段と前記第2通信手段とを切り替える通信切替手段とを備え、前記第1通信方式は、前記第2通信方式に比べて、多数の装置に準拠されており、前記通信切替手段は、前記第2通信手段よりも前記第1通信手段を優先して切り替える。
【0011】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明に係る屋内外共用無線ネットワークシステムであって、前記屋内外共用無線中継器は、前記第1通信モジュールにより使用される無線電波を送受信する第1アンテナと、前記第2通信モジュールにより使用される無線電波を送受信する第2アンテナと、前記第1アンテナと前記第2アンテナとの間で電波を遮蔽する有効位置に配置される遮蔽板とをさらに備える。
【0012】
また、請求項3の発明は、請求項2の発明に係る屋内外共用無線ネットワークシステムであって、前記遮蔽板は、前記第1アンテナと前記第2アンテナとの間で電波を遮蔽しない無効位置に配置変更可能である。
【0013】
また、請求項4の発明は、請求項2または3の発明に係る屋内外共用無線ネットワークシステムであって、前記通信切替手段は、前記遮蔽板の位置に応じて切り替える。
【0014】
また、請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれかの発明に係る屋内外共用無線ネットワークシステムであって、前記通信切替手段は、前記第1通信手段による無線通信が前記第1通信モジュールによる無線通信と干渉するおそれがある場合に前記第1通信手段を前記第2通信手段に切り替える。
【0015】
また、請求項6の発明は、請求項5の発明に係る屋内外共用無線ネットワークシステムであって、前記通信切替手段は、前記第1通信モジュールと前記第2通信モジュールとの間の無線通信における干渉の有無に応じて切り替える。
【0016】
また、請求項7の発明は、請求項1ないし6のいずれかの発明に係る屋内外共用無線ネットワークシステムであって、前記第1アンテナは、無線通信用の電波を特定の方向に偏って放射する指向性アンテナである。
【0017】
また、請求項8の発明は、請求項1ないし7のいずれかの発明に係る屋内外共用無線ネットワークシステムであって、前記屋外端末装置と前記屋内外共用無線中継器との間の無線通信を中継する中継器をさらに備える。
【0018】
また、請求項9の発明は、屋内に配置される屋内端末装置および屋外に配置される屋外端末装置との間で無線通信を行う屋内外共用無線中継器であって、前記屋外端末装置との間で第1通信方式による無線通信を行う第1通信モジュールと、前記屋内端末装置との間で無線通信を行う第2通信モジュールとを備え、前記第2通信モジュールは、前記屋内端末装置との間で前記第1通信方式による無線通信を行う第1通信手段と、前記屋内端末装置との間で、前記第1通信方式と異なる第2通信方式による無線通信を行う第2通信手段と、前記第1通信手段と前記第2通信手段とを切り替える通信切替手段とを備え、前記通信切替手段は、前記第2通信手段よりも前記第1通信手段を優先して切り替える。
【発明の効果】
【0019】
屋内端末装置との間で無線通信を行う第2通信モジュールは、屋内端末装置との間で第1通信方式による無線通信を行う第1通信手段と、屋内端末装置との間で、第1通信方式と異なる第2通信方式による無線通信を行う第2通信手段と、第1通信手段と第2通信手段とを切り替える通信切替手段とを備えている。そして、第1通信方式は、第2通信方式に比べて、多数の装置に準拠されており、当該通信切替手段は、第2通信手段よりも第1通信手段を優先して切り替える。これにより、多数の装置に準拠されている第1通信方式を屋内端末装置との間の無線通信にも優先的に使用するので、互換性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る屋内外共用無線ネットワークシステムを示す図である。
【図2】中継器の外観図である。
【図3】中継器の構成を示すブロック図である。
【図4】主に中継器を設置する際の手順を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施の形態について、添付の図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0022】
<1. 実施の形態>
図1は、本発明に係る屋内外共用無線ネットワークシステム1を示す図である。屋内外共用無線ネットワークシステム1は、屋内に配置される屋内端末装置10,11と、屋外に配置される屋外端末装置12,13,14と、屋内端末装置10,11および屋外端末装置12,13,14との間で無線通信を行う屋内外共用無線中継器2と、屋外端末装置12,13,14と屋内外共用無線中継器2との間の無線通信を中継する中継器3とを備えている。
【0023】
本実施の形態では、屋内外共用無線ネットワークシステム1は、家庭における電化製品の消費電力量を計測し、計測したデータ(計測データ)を収集・分析するシステムを例に説明する。ただし、計測データは消費電力に限定されるものではなく、ガス消費量や水道消費量等であってもよいし、その他のデータであってもよい。あるいは、これらのデータが総合的に収集されるシステムであってもよい。
【0024】
屋内端末装置10,11および屋内外共用無線中継器2は、屋内に配置される屋内無線ネットワークを構成している。すなわち、屋内端末装置10,11は屋内で使用される電化製品である。本実施の形態では、図1に示すように、屋内端末装置10はノート型のパーソナルコンピュータであり、屋内端末装置11は液晶のデジタルテレビである。屋内でノート型のパーソナルコンピュータやスマートホンを利用する場合、屋内外共用無線中継器2経由で専用ネットワークに接続される外部サーバへのアクセスが可能となる。したがって、屋内に設置されているセンサの計測データをノート型のパーソナルコンピュータやスマートホンにより一旦収集し、屋内外共用無線中継器2を経由して専用サーバに情報をアップロードできる。またこの場合も、安価で入手性のよい802.11b/gに準拠した装置を利用できる。さらに、ノート型のパーソナルコンピュータやスマートホンは、単に、屋内端末装置10,11は消費電力の計測データを送信するためだけでなく、インターネットを利用するためのアクセスポイントとして屋内外共用無線中継器2を利用することもできる。
【0025】
なお、屋内端末装置10,11は、ノート型のパーソナルコンピュータやデジタルテレビのような電化製品に限定されるものではない。また、電力を消費する電化製品そのものが屋内端末装置10,11を構成している必要はない。例えば、電化製品である冷蔵庫に取り付けられた、当該冷蔵庫の消費電力を計測する電力センサが屋内端末装置10,11を構成していてもよい。すなわち、本発明に係る屋内端末装置は、主に屋内で利用される、無線通信機能を備えた装置であればよい。
【0026】
詳細は後述するが、屋内外共用無線中継器2は、屋内端末装置10,11との間で無線による通信を行い、屋内端末装置10,11において計測されたデータを収集する。また、屋内外共用無線中継器2は、中継器3を介して屋外端末装置12,13,14との間で無線による通信を行い、屋外端末装置12,13,14において計測されたデータを収集する。
【0027】
さらに、屋内外共用無線中継器2は、収集したデータを、例えばインターネット等を介して図示しない外部のサーバに向けて送信する。ただし、情報の収集・分析を行うサーバが屋内端末装置10,11を構成していてもよい。
【0028】
屋外端末装置12,13,14および中継器3は屋外無線ネットワークを構成している。すなわち、屋外端末装置12,13,14は屋外で使用される電化製品である。このような電化製品としては、例えば、門柱に設置される外灯、防犯カメラ、ドアホンなどが想定されるがもちろんこれらに限定されるものではない。例えば、逆に家庭における消費電力を補う太陽電池パネルなどでもよい。本発明に係る屋外端末装置は、主に屋外で利用される、無線通信機能を備えた装置であればよい。
【0029】
本発明における第2中継器として構成される中継器3は、屋外端末装置12,13,14との間で無線による通信を行い、屋外端末装置12,13,14において計測されたデータを収集し、屋内外共用無線中継器2に向けて無線により送信する。中継器3の機能を備える装置としては、例えば、電力メータ等が好ましいが、もちろん無線通信に専用の装置であってもよい。
【0030】
中継器3における無線の通信方式は、IEEE802.11委員会において標準化されている802.11b/g(第1通信方式)を採用する。すなわち、中継器3は、屋外端末装置12,13,14との間の無線通信のみならず、屋内外共用無線中継器2との間の無線通信についても802.11b/gを採用する。
【0031】
なお、802.11b/gは、屋外での利用が制限されていない規格であるため、無線通信用の電波を屋外に放射することとなる中継器3において採用することに問題はない。また、802.11b/gは、一般的な無線通信機器に最も広く採用されている規格であるため、これを採用することにより、屋内外共用無線ネットワークシステム1は、屋外端末装置12,13,14および中継器3については、互換性を最大限維持することができる。ただし、第1通信方式として採用される規格は、802.11b/gに限定されるものではなく、屋外での利用が制限されていない通信方式のうち、現状の市場において最も多くの端末装置によって準拠(支持)されている通信方式を採用することが好ましい。
【0032】
このように屋内外共用無線ネットワークシステム1では、屋内無線ネットワークと屋外無線ネットワークとが屋内外共用無線中継器2と中継器3との間の無線通信により接続される。言い換えれば、このような構成により、屋内と屋外との間で無線通信を行う屋内外共用無線ネットワークシステム1が構築されている。屋内外共用無線ネットワークシステム1では、すでに説明したように、各電化製品における消費電力が計測データとして屋内外共用無線中継器2に集められる。
【0033】
なお、屋内外共用無線ネットワークシステム1を構成する屋内端末装置10,11や屋外端末装置12,13,14、屋内外共用無線中継器2および中継器3の数は、図1に示す例に限定されるものではない。また、屋内外共用無線ネットワークシステム1におけるすべての通信が無線通信である必要はなく、ネットワークの一部に有線通信を含んでいてもよい。あるいは、ネットワークの一部において、無線通信と有線通信とが二重化されていてもよい。すなわち、無線による通信と有線による通信とが混在していてもよい。
【0034】
図2は、屋内外共用無線中継器2の外観図である。なお、図2において、図2に示すように(+Y)方向、(+X)方向、および、(+Z)方向を定義する。ただし、これらは説明の便宜上定義するものであって、これらの向きに限定されるものではない。
【0035】
屋内外共用無線中継器2は、無指向性アンテナ24、指向性アンテナ25、複数のディップスイッチ26、液晶パネル27を備えている。
【0036】
無指向性アンテナ24は、周囲に対して偏りなく、ほぼ均一に無線通信用の電波を放射するアンテナである。屋内端末装置10,11は、比較的頻繁に移動することが想定されるが、屋内外共用無線中継器2が屋内との無線通信用に無指向性アンテナ24を採用することによって、屋内端末装置10,11の利用場所に制約ができることを抑制できる。すなわち、屋内外共用無線中継器2を自由度の高いアクセスポイントとすることができる。
【0037】
指向性アンテナ25は、無線通信用の電波を特定の方向(以下、「指向方向」と呼ぶ場合がある。)に偏って放射するアンテナである。屋内外共用無線ネットワークシステム1において、中継器3の位置は固定的であり、かつ、屋内外共用無線中継器2と中継器3との間では建物の壁を越えて無線通信を確立する必要がある。したがって、屋内外共用無線中継器2が屋外との無線通信用に指向性アンテナ25を採用することによって、屋内外共用無線中継器2と中継器3との間の通信性能を向上することができる。
【0038】
ディップスイッチ26は、屋内外共用無線中継器2に指示を与えるための操作部としての機能を有している。したがって、屋内外共用無線中継器2を設置する際において、作業員は必要に応じてディップスイッチ26を操作することにより、屋内外共用無線中継器2に指示を入力することが可能となっている。なお、詳細は図示しないが、屋内外共用無線中継器2は、操作部として、各種のボタンやテンキー等を備えていてもよい。
【0039】
液晶パネル27は、屋内外共用無線中継器2の表示部としての機能を有しており、屋内外共用無線中継器2の状態等を表示する。したがって、作業員は、液晶パネル27に表示される情報を視認することにより、様々な状況を確認することができる。確認可能な情報としては、例えば、電波の受信状態、混信状態、遮蔽板29の要否等であるが、詳細は後述する。なお、詳細は図示しないが、屋内外共用無線中継器2は、表示部として、LEDやランプ等を備えていてもよい。
【0040】
また、屋内外共用無線中継器2の筐体の上面部には遮蔽板保持部28が設けられている。図2に示すように、遮蔽板保持部28は、無指向性アンテナ24と指向性アンテナ25との間に配置されている。
【0041】
遮蔽板保持部28は、遮蔽板29の遮蔽面290(図2においてXZ平面に略平行に配置されている面)の下部を保持し、遮蔽板29の姿勢を調整する機能を有している。図2に示す状態において、遮蔽板保持部28は、遮蔽板29を、無指向性アンテナ24と指向性アンテナ25との間で電波を遮蔽する位置(有効位置)に配置している。
【0042】
また、遮蔽板保持部28は、図示しない駆動部を備えており、Z方向に平行な軸を中心にして遮蔽板29を回動させる機能を有している。これにより、遮蔽板保持部28は、遮蔽板29の方向を有効位置において微調整することも可能とされている。
【0043】
また、遮蔽板保持部28は、X方向に平行な軸を中心にして遮蔽板29を略90°だけ回動させる機能も有している。これにより、遮蔽板保持部28は、遮蔽板29の遮蔽面290をXY平面に略平行の向きに変更することができ、遮蔽板29を無指向性アンテナ24と指向性アンテナ25との間で電波を遮蔽しない位置(無効位置)に配置変更可能である。
【0044】
遮蔽板29は、先述のように、遮蔽板保持部28に保持されている。また、遮蔽板29は、有効位置に配置されることにより、無指向性アンテナ24と指向性アンテナ25との間で電波を遮蔽する機能を有している。
【0045】
なお、図2では、遮蔽板29を透明部材として図示しているが、これに限定されるものではない。また、遮蔽板29の形状は、図2に示す形状に限定されるものではない。例えば、遮蔽板29は、略平板形状(主に遮蔽面290のみの形状)として形成されてもよい。厳密に言えば、遮蔽板29は板状体である必要もない。例えば、有効位置に配置する際に広げられ、無効位置に配置する際には巻き取られる(あるいは折りたたまれる)シート状の物体であってもよい。
【0046】
図3は、屋内外共用無線中継器2の構成を示すブロック図である。屋内外共用無線中継器2の内部には、第1通信モジュール20、第2通信モジュール21、アンテナ駆動部22および制御部23が設けられている。
【0047】
第1通信モジュール20は、屋内外共用無線中継器2が主に中継器3との間で無線通信を行う機能を提供する。第1通信モジュール20から送信される信号は、電波として指向性アンテナ25から放射される。また、第1通信モジュール20は、指向性アンテナ25が受信した電波から信号を取り出す機能を有している。すなわち、詳細は図示しないが、第1通信モジュール20は、バンドパスフィルターや、RF回路、エンコーダやデコーダといった回路から構成されている。
【0048】
先述のように、本実施の形態における中継器3は802.11b/g(第1通信方式)により無線通信を行う。したがって、中継器3との間で無線通信を行う第1通信モジュール20も、中継器3と同様に802.11b/gに準拠した無線通信を行う。すなわち、第1通信モジュール20は、屋外端末装置12,13,14との間で802.11b/gによる無線通信を行う。
【0049】
第2通信モジュール21は、第1通信部210、第2通信部211および切替部212を備えている。第2通信モジュール21は、屋内外共用無線中継器2が屋内端末装置10,11との間で無線通信を行う機能を提供する。
【0050】
第2通信モジュール21から送信される信号は、電波として無指向性アンテナ24から放射される。また、第2通信モジュール21は、無指向性アンテナ24が受信した電波から信号を取り出す機能を有している。すなわち、詳細は図示しないが、第2通信モジュール21は、バンドパスフィルターや、RF回路、エンコーダやデコーダといった回路から構成されている。
【0051】
第1通信部210は、802.11b/gに準拠した無線通信を提供する。第1通信部210は、後述する第1モードにおいて動作する。
【0052】
第2通信部211は、802.11a(第2通信方式)に準拠した無線通信を提供する。第2通信部211は、後述する第2モードにおいて動作する。
【0053】
切替部212は、制御部23からの制御信号に応じて、第2通信モジュール21が屋内端末装置10,11との間で無線通信を行う場合の動作モードを切り替える。すなわち、802.11b/g(第1通信方式)による無線通信を行う第1モードと、802.11a(第2通信方式)による無線通信を行う第2モードとを切り替える。具体的には、第1モードのときには第1通信部210を能動化させる一方で第2通信部211を停止させ、第1通信部210にのみ無線通信を行わせる。逆に、第2モードのときには第1通信部210を停止させる一方で第2通信部211を能動化させ、第2通信部211にのみ無線通信を行わせる。
【0054】
なお、説明の都合上、図3においては、第1通信部210および第2通信部211が別途の構成であるかのように図示している。しかし、これらの構成は、互いに独立したハードウェアである必要はなく、切替部212から伝達される動作モード(切替信号)に応じて、通信方式を切り替えて無線通信を行うことが可能な構成であればよい。すなわち、第1通信部210および第2通信部211を構成するハードウェアの一部または全部が共用されていてもよい。
【0055】
アンテナ駆動部22は、制御部23からの制御に従って、図2におけるZ軸と平行な軸を中心として、指向性アンテナ25を回転させる機能を有している。すなわち、アンテナ駆動部22が指向性アンテナ25を回転させることにより、屋内外共用無線中継器2は、中継器3との間で最適な方向を選択して無線通信することができる。
【0056】
詳細は図示しないが、制御部23は、各種データの演算を行い、屋内外共用無線中継器2が備える各構成を制御するCPUと、各種データを記憶しておく記憶装置とから主に構成されている。すなわち、制御部23はマイクロコンピュータとしての機能を有している。なお、説明の都合上、制御部23を一つの構成として図示するが、第1通信モジュール20や第2通信モジュール21等に別途のマイクロコンピュータを設けて制御部23の機能を分担してもよい。
【0057】
制御部23は、第1通信モジュール20に中継器3を介した屋外端末装置12,13,14との間の無線通信を行わせるとともに、第2通信モジュール21に屋内端末装置10,11との間の無線通信を行わせる。
【0058】
また、制御部23は、後述する様々な状況に応じて、第2通信モジュール21の切替部212を制御する。言い換えれば、制御部23は、第2通信モジュール21の動作モードを設定する機能を有している。
【0059】
また、制御部23は、遮蔽板保持部28を制御して、遮蔽板29の姿勢を決定する機能を有している。すなわち、遮蔽板29を図3に示す位置に配置させることにより、遮蔽板29を有効位置に配置することができる。このように制御部23が遮蔽板保持部28を制御して遮蔽板29の姿勢を制御することは、制御部23が遮蔽板29の姿勢を把握していることを意味し、言い換えれば制御部23が有効位置にある遮蔽板29を検出する機能を実質的に有していることを意味する。ただし、屋内外共用無線中継器2は、有効位置にある遮蔽板29を検出する構成(対物センサや接触センサ等)を備えていてもよい。
【0060】
また、制御部23は、アンテナ駆動部22を制御して、指向性アンテナ25の向きを決定する機能も有している。このように制御部23がアンテナ駆動部22を制御して指向性アンテナ25の指向方向を制御することは、制御部23が指向性アンテナ25の向きを把握していることを意味し、言い換えれば制御部23が指向性アンテナ25の向きを検出する機能を実質的に有していることを意味する。ただし、屋内外共用無線中継器2は、指向性アンテナ25の向きを検出する構成を別途備えていてもよい。
【0061】
さらに、制御部23は、第1通信モジュール20および第2通信モジュール21による無線通信の通信状態(通信レベルや混信状態等)を監視し、当該通信状態に応じて様々な制御を実行する。
【0062】
以上が、本実施の形態における屋内外共用無線ネットワークシステム1の構成および機能の説明である。次に、屋内外共用無線ネットワークシステム1において通信方式を決定する手法について説明する。
【0063】
図4は、主に屋内外共用無線中継器2を設置する際の手順を示す流れ図である。図4に示す状態では、中継器3はすでに設置済みであるものとする。
【0064】
まず、作業員は屋内外共用無線中継器2を設置して電源を投入する。このとき、+Y方向に中継器3が存在し、−Y方向に屋内端末装置10,11が存在するように、屋内外共用無線中継器2の向きを決めて設置することが好ましい。なお、屋内端末装置10,11は、室内において移動することが想定されるため、−Y方向が室内を向くように屋内外共用無線中継器2を設置することが好ましい。
【0065】
電源が投入されると、屋内外共用無線中継器2は初期設定を実行した後、制御部23は、第2通信モジュール21の動作モードを第1モードに設定する。これにより、第2通信モジュール21の切替部212が、動作モードを第1モードに切り替える(ステップS11)。
【0066】
ステップS11が実行されると、第2通信モジュール21の第1通信部210が能動化され、第2通信モジュール21は第1通信方式(802.11b/g)により無線通信を行う状態となる。このように、屋内外共用無線中継器2は、設置されると、屋内端末装置10,11との間で第1通信方式による無線通信を優先して開始する。
【0067】
次に、遮蔽板保持部28が遮蔽板29を有効位置に配置させる(ステップS12)。すなわち、初期状態において、制御部23は、遮蔽板29を有効位置に配置するように遮蔽板保持部28を制御する。
【0068】
先述のように、第1通信モジュール20における通信方式は、第1通信方式に固定されている。したがって、第1通信モジュール20および第2通信モジュール21において共通して第1通信方式が用いられる場合(第1モードの場合)、現実の干渉の有無にかかわらず、無指向性アンテナ24と指向性アンテナ25との間で電波を遮蔽することが好ましい。すなわち、本実施の形態における屋内外共用無線中継器2は、初期状態において第1モードが選択され、第1モードでは干渉のおそれがあるとして、遮蔽板29を有効位置に配置する。ただし、制御部23が第1通信モジュール20における無線通信と第2通信モジュール21における無線通信との間に現実の干渉を検出したか否かに応じて、ステップS12を実行するように構成してもよい。
【0069】
ステップS12が実行されると、制御部23は、アンテナ駆動部22を制御して指向性アンテナ25を一周させつつ、第1通信モジュール20における中継器3との無線通信の通信状態を監視し、中継器3との間で無線通信が可能な向きが存在したか否かを判定する(ステップS13)。
【0070】
中継器3との間で無線通信が可能であった場合(ステップS13においてYes)、制御部23は、第1通信モジュール20と中継器3との間の無線通信の通信状態が最も良好であった向きを、指向性アンテナ25の指向方向の最適方向として決定する(ステップS14)。
【0071】
このようにして指向性アンテナ25の最適方向が決定されると、作業員は、屋内端末装置10,11と屋内外共用無線中継器2との間の第1通信方式による無線通信が可能な状態となっているか否かを確認する(ステップS15)。
【0072】
通常、屋内外共用無線中継器2は、動作開始時(設置時)に、周囲に存在する屋内端末装置10,11をすべて把握することはできない。したがって、ステップS14を実行した後、制御部23は、無線通信を確立できた屋内端末装置10,11を液晶パネル27に表示することにより、逆に、無線通信を確立できていない屋内端末装置10,11が存在しないか、作業員に対して確認を促す。
【0073】
通信不能の屋内端末装置10,11が存在しない場合(ステップS15においてYes)、作業員はその旨をディップスイッチ26を操作して入力する。これにより屋内外共用無線ネットワークシステム1は通常運用を開始する。すなわち、屋内外共用無線中継器2は、屋内端末装置10,11との間で、比較的多くの装置によって準拠されている第1通信方式(802.11b/g)を用いて無線通信を行うように運用が開始される。
【0074】
このように、屋内外で同一の通信規格を利用する場合、遮蔽板29を有効位置に配置することにより、屋内(屋内端末装置10,11)用の無線通信と屋外(中継器3)用の無線通信との間の干渉を抑制できる。すなわち、遮蔽板29により干渉が抑制されるため、屋外で第1通信方式(802.11b)を利用する場合でも、一般的に利用される第1通信方式(802.11b/g)を屋内でも利用できる。したがって、無線機器の利用に制約が少なく、市場に流通する多くの装置を屋内端末装置10,11として採用することが可能となる。
【0075】
一方、通信不能の屋内端末装置10,11が存在する場合(ステップS15においてNo)、作業員はその旨をディップスイッチ26を操作して入力する。この場合、制御部23は、遮蔽板29を無効位置に配置するように、遮蔽板保持部28を制御する。これにより、遮蔽板29の配置が変更され、遮蔽板29が無効位置に配置される(ステップS16)。
【0076】
遮蔽板29が無効位置に変更されると、再度、指向性アンテナ25の最適方向が決定される(ステップS17)。このとき、アンテナ駆動部22は、再び、指向性アンテナ25を一周させる。そして、制御部23は、その間の通信状態を監視し、最も通信状態が良好であった方向に指向性アンテナ25を向けるようにアンテナ駆動部22を制御する。これにより、ステップS17における最適方向が決定される。このように再度最適方向を決定する意味は、遮蔽板29が有効位置にあるときと無効位置にあるときとでは、最適方向が異なる場合があるからである。
【0077】
そして、ステップS16,S17と並行して、制御部23は、第2通信モジュール21の動作モードを第2モードに設定する。これにより、第2通信モジュール21の切替部212が、動作モードを第2モードに切り替える(ステップS18)。
【0078】
ステップS18が実行されると、第2通信モジュール21の第2通信部211が能動化され、第2通信モジュール21は第2通信方式(802.11a)により無線通信を行う状態となる。したがって、屋内外共用無線中継器2は、屋内端末装置10,11との間で、第2通信方式(802.11a)を用いて無線通信を行うように運用が開始される。この場合、作業員は、屋内端末装置10,11の通信方式を第2通信方式に切り替える(屋内端末装置10,11側で自動的に切り替わるように構成してもよい。)。
【0079】
ステップS13においてNoの場合(すなわち、遮蔽板29が有効位置に配置されている場合に、第1通信モジュール20が中継器3との間で無線通信が不能である場合)、制御部23は、遮蔽板29を無効位置に配置するように、遮蔽板保持部28を制御する。これにより、遮蔽板29の配置が変更され、遮蔽板29が無効位置に配置され(ステップS19)、第1通信モジュール20の通信可能範囲が拡大する。
【0080】
遮蔽板29の位置が無効位置に変更されると、制御部23は、遮蔽板29を無効位置に配置変更したことにより、第1通信モジュール20と中継器3との間で無線通信が可能となったか否かを、ステップS13と同様にして判定する(ステップS20)。
【0081】
遮蔽板29が無効位置に配置されているにもかかわらず、中継器3との間で無線通信が不能である場合(ステップS20においてNo)、制御部23は屋内外共用無線中継器2の設置位置が不適合であると判断し、異常終了する。
【0082】
一方、遮蔽板29が無効位置に配置されたことにより、中継器3との間で無線通信が確立できた場合(ステップS20においてYes)、ステップS14と同様に、指向性アンテナ25の最適方向を決定する(ステップS21)。
【0083】
そして、制御部23は、第2通信モジュール21の動作モードを第2モードに設定する。これにより、第2通信モジュール21の切替部212が、動作モードを第2モードに切り替える(ステップS18)。
【0084】
遮蔽板29が無効位置に配置されていない限り、中継器3との間で無線通信が確立できないのであれば、通常、屋内外共用無線中継器2は屋内端末装置10,11との間で第1通信方式による無線通信を行うことはできない(遮蔽板29を有効位置に配置しないと混信が生じる可能性が高いため)。したがって、この場合は、屋内外共用無線ネットワークシステム1は、ステップS18を実行して、運用を開始する。
【0085】
なお、屋内外共用無線ネットワークシステム1において、新たな装置を屋内端末装置10,11として増設する場合(屋内端末装置10,11が移動した場合を含む。)、ステップS15からの処理を行えばよい。また、屋外端末装置12,13,14を増設する場合は、中継器3との間の無線通信を確立できればよく、通常は屋内外共用無線中継器2との間の通信状態は変更不要である。さらに、通常、屋内外共用無線ネットワークシステム1において、中継器3の位置は頻繁に変更されることを想定する必要はないが、その場合は最初から作業を行うことが好ましい。
【0086】
以上のように、屋内と屋外との間で無線通信を行う屋内外共用無線ネットワークシステム1は、屋内に配置される屋内端末装置10,11と、屋外に配置される屋外端末装置12,13,14と、屋内端末装置10,11および屋外端末装置12,13,14との間で無線通信を行う屋内外共用無線中継器2とを備え、屋内外共用無線中継器2は、屋外端末装置12,13,14との間で第1通信方式による無線通信を行う第1通信モジュール20と、屋内端末装置10,11との間で無線通信を行う第2通信モジュール21とを備え、第2通信モジュール21は、屋内端末装置10,11との間で第1通信方式による無線通信を行う第1通信部210と、屋内端末装置10,11との間で、第1通信方式と異なる第2通信方式による無線通信を行う第2通信部211と、第1通信部210と第2通信部211とを切り替える切替部212とを備え、第1通信方式は、前記第2通信方式に比べて、多数の装置に準拠されており、切替部212は、第2通信部211よりも第1通信部210を優先して切り替える。これにより、多数の装置に準拠されている第1通信方式を屋内端末装置との間の無線通信にも優先的に使用するので、例えば、混信(干渉)を回避できる環境において互換性の低下を抑制することができる。
【0087】
また、屋内外共用無線中継器2は、第1通信モジュール20により使用される無線電波を送受信する指向性アンテナ25と、第2通信モジュール21により使用される無線電波を送受信する無指向性アンテナと、指向性アンテナ25と無指向性アンテナ24との間で電波を遮蔽する有効位置に配置される遮蔽板29とをさらに備えることにより、共通の通信方式を使用する場合の干渉を抑制することができる。
【0088】
また、遮蔽板29は、指向性アンテナ25と無指向性アンテナ24との間で電波を遮蔽しない無効位置に配置変更可能であることにより、電波を遮蔽すると不都合を生じる場合(例えば、中継器3との間の無線通信が遮蔽される場合など。)に対応することができる。また、屋外に設置されている無線機器(屋外端末装置12,13,14)、屋内で利用したい無線機器(屋内端末装置10,11)および屋内外共用無線中継器2の配置は、個々の家で異なる。しかし、屋内外共用無線中継器2が配置変更可能な遮蔽板29を備えていることにより、遮蔽板29を最も効率のよい位置に配置可能である。
【0089】
また、切替部212は、遮蔽板29の位置に応じて切り替えることにより、設置時等の作業を軽減できる。
【0090】
切替部212は、遮蔽板29が無効位置に配置されている場合に、第1通信部210による無線通信が第1通信モジュール20による無線通信と干渉するおそれがあるとみなして、第1通信部210を第2通信部211に切り替える。このような場合に、第2通信部211が第1通信方式と異なる第2通信方式で無線通信を行うことにより、干渉を抑制することができる。
【0091】
また、切替部212は、制御部23から伝達される、第1通信モジュール20と第2通信モジュール21との間の無線通信における干渉の有無に応じて切り替えるように構成することも可能であり、その場合は設置時等の作業を軽減できる。
【0092】
また、無線通信用の電波を特定の方向に偏って放射する指向性アンテナ25を採用することにより、屋内無線ネットワーク(屋内外共用無線中継器2)と屋外無線ネットワーク(中継器3)との間の無線通信の通信性能を向上できる。
【0093】
屋外端末装置12,13,14と屋内外共用無線中継器2との間の無線通信を中継する中継器3をさらに備えることにより、屋内外共用無線中継器2の通信相手および通信方向を固定することができ、通信性能が向上する。
【0094】
<2. 変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく様々な変形が可能である。
【0095】
例えば、遮蔽板保持部28は、遮蔽板29をZ方向に進退させることによって、遮蔽板29を筐体内に収容し、遮蔽板29を無効位置に配置変更するように構成してもよい。
【0096】
また、上記実施の形態では、指向性アンテナ25をアンテナ駆動部22によって最適方向に向けると説明したが、これを作業員の手動で行うようにすることもできる。屋内外共用無線ネットワークシステム1では、先述のように、中継器3の位置は固定的であるため、作業員にとって指向性アンテナ25の最適方向は予測しやすいという特徴があり手動で行っても作業負担は比較的軽いものである。その場合は、作業員がディップスイッチ26を操作して指向性アンテナ25の向きを屋内外共用無線中継器2に対して入力してもよいし、指向性アンテナ25の向きを検出する角度検出センサを屋内外共用無線中継器2に設けてもよい。
【0097】
また、指向性アンテナ25は、屋内外共用無線中継器2の筐体に対して固定されていてもよい。その場合は、指向性アンテナ25の指向方向が最適な向きになるように、作業員が屋内外共用無線中継器2の向きを決定して屋内外共用無線中継器2を設置すればよい。指向性アンテナ25が固定されている場合、制御部23は、指向性アンテナ25の向きを検出する必要はない。
【0098】
また、互いに異なる方向に指向性を持つ複数の指向性アンテナ25を設け、制御部23が最も通信状態のよいものを運用の際に使用する指向性アンテナ25として選択してもよい。この場合、最適方向を探索する必要がなくなるので、アンテナ駆動部22を設ける必要がない。
【0099】
また、上記実施の形態では、遮蔽板保持部28の駆動部によって遮蔽板29を、有効位置と無効位置との間で位置を変更すると説明した。しかし、これを作業員の手動で行ってもよい。すなわち、遮蔽板29が必要な場合には作業員が遮蔽板29を屋内外共用無線中継器2に装着する一方で、遮蔽板29が必要ない場合には作業員が遮蔽板29を取り外せばよい。遮蔽板29の要否は、液晶パネル27に表示されてもよいし、作業員が判断してもよい。また、遮蔽板29の存否は、作業員がディップスイッチ26を操作して入力してもよいし、遮蔽板29を検出する各種センサを設けてもよい。
【0100】
また、上記実施の形態では、設置時や子局増設時のメンテナンス等においても屋内外共用無線中継器2のディップスイッチ26および液晶パネル27を用いて作業が行われる。しかしながら、これらは比較的簡易なハードウェアであるため、作業効率が低下するおそれがある。そこで、屋内外共用無線中継器2にメンテナンス用のパソコン(操作性の優れた入出力装置)を接続する端子(USB端子等)を設けて、メンテナンス時には当該端子に接続したパソコンを用いて作業を行うようにしてもよい。
【0101】
また、上記実施の形態に示した各工程は、あくまでも例示であって、同様の効果が得られるならば、その内容や順序が適宜変更されてもよい。例えば、まず、ステップS12が実行されてから、遮蔽板29が有効位置に配置されたことを検出(確認)して、ステップS11が実行されるように構成してもよい。
【0102】
なお、屋内外共用無線中継器2と屋内端末装置10,11との間の無線通信において、第1通信方式を用いることができるための条件は、以下の3つであるといえる。第1条件は、遮蔽板29が有効位置に配置されていること(第1通信モジュール20と第2通信モジュールとの間で干渉の生じるおそれがないこと)である。第2条件は、屋内外共用無線中継器2と中継器3との間の無線通信が可能なことである(遮蔽板29が有効位置に配置されても当該通信が妨げられないこと)。第3条件は、屋内外共用無線中継器2と屋内端末装置10,11との間の無線通信が可能なことである(遮蔽板29が有効位置に配置されても当該通信が妨げられないこと)。
【0103】
ただし、屋内外共用無線中継器2と屋内端末装置10,11との間の無線通信において、第1通信方式による運用を開始するにあたって、上記の3つの条件をどのような順序で判断してもよい。また、このような判断を屋内外共用無線中継器2(制御部23)が行ってもよいし、作業員が行って屋内外共用無線中継器2に入力してもよい。さらには、このような判断は、現実に検出される状態に基づいて直接判断してもよいし、装置の配置や電波強度等の状況から予測してもよい。
【0104】
上記実施の形態では、ステップS11により、一旦、第1通信方式による無線通信を開始した上で、第1条件を満たすようにステップS12を実行してから、第2条件および第3条件を順次判定する手順で説明した。そして、第2条件は制御部23が判断し、第3条件は作業員が判断するとして説明した。しかし、例えば、作業員が、第2条件および第3条件が満たされるか否かをネットワーク内の装置配置等により判断した上で、遮蔽板29を有効位置に配置するようにしてもよい(第2条件または第3条件が満たされないと判断した場合は遮蔽板29を無効位置に配置する。)。このような操作がされる場合には、屋内外共用無線中継器2の制御部23は、遮蔽板29が有効位置に配置されているか否かのみを検出して、有効位置に配置されている場合には第1モードとし、無効位置に配置されている場合には第2モードとすることができる。すなわち、屋内で利用する無線通信方式を第2通信方式(802.11a)とする場合には、干渉を気にせず(干渉判定不要)に利用でき、遮蔽板29を有効にしない(無効にする)だけで、動作モードの切替も容易にできる。
【符号の説明】
【0105】
1 屋内外共用無線ネットワークシステム
10,11 屋内端末装置
12,13,14 屋外端末装置
2 屋内外共用無線中継器
20 第1通信モジュール
21 第2通信モジュール
210 第1通信部
211 第2通信部
212 切替部
22 アンテナ駆動部
23 制御部
24 無指向性アンテナ
25 指向性アンテナ
26 ディップスイッチ
27 液晶パネル
28 遮蔽板保持部
29 遮蔽板
290 遮蔽面
3 中継器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋内と屋外との間で無線通信を行う屋内外共用無線ネットワークシステムであって、
屋内に配置される屋内端末装置と、
屋外に配置される屋外端末装置と、
前記屋内端末装置および前記屋外端末装置との間で無線通信を行う屋内外共用無線中継器と、
を備え、
前記屋内外共用無線中継器は、
前記屋外端末装置との間で第1通信方式による無線通信を行う第1通信モジュールと、
前記屋内端末装置との間で無線通信を行う第2通信モジュールと、
を備え、
前記第2通信モジュールは、
前記屋内端末装置との間で前記第1通信方式による無線通信を行う第1通信手段と、
前記屋内端末装置との間で、前記第1通信方式と異なる第2通信方式による無線通信を行う第2通信手段と、
前記第1通信手段と前記第2通信手段とを切り替える通信切替手段と、
を備え、
前記第1通信方式は、前記第2通信方式に比べて、多数の装置に準拠されており、
前記通信切替手段は、前記第2通信手段よりも前記第1通信手段を優先して切り替える屋内外共用無線ネットワークシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の屋内外共用無線ネットワークシステムであって、
前記屋内外共用無線中継器は、
前記第1通信モジュールにより使用される無線電波を送受信する第1アンテナと、
前記第2通信モジュールにより使用される無線電波を送受信する第2アンテナと、
前記第1アンテナと前記第2アンテナとの間で電波を遮蔽する有効位置に配置される遮蔽板と、
をさらに備える屋内外共用無線ネットワークシステム。
【請求項3】
請求項2に記載の屋内外共用無線ネットワークシステムであって、
前記遮蔽板は、前記第1アンテナと前記第2アンテナとの間で電波を遮蔽しない無効位置に配置変更可能である屋内外共用無線ネットワークシステム。
【請求項4】
請求項2または3に記載の屋内外共用無線ネットワークシステムであって、
前記通信切替手段は、前記遮蔽板の位置に応じて切り替える屋内外共用無線ネットワークシステム。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の屋内外共用無線ネットワークシステムであって、
前記通信切替手段は、前記第1通信手段による無線通信が前記第1通信モジュールによる無線通信と干渉するおそれがある場合に前記第1通信手段を前記第2通信手段に切り替える屋内外共用無線ネットワークシステム。
【請求項6】
請求項5に記載の屋内外共用無線ネットワークシステムであって、
前記通信切替手段は、前記第1通信モジュールと前記第2通信モジュールとの間の無線通信における干渉の有無に応じて切り替える屋内外共用無線ネットワークシステム。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の屋内外共用無線ネットワークシステムであって、
前記第1アンテナは、無線通信用の電波を特定の方向に偏って放射する指向性アンテナである屋内外共用無線ネットワークシステム。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の屋内外共用無線ネットワークシステムであって、
前記屋外端末装置と前記屋内外共用無線中継器との間の無線通信を中継する中継器をさらに備える屋内外共用無線ネットワークシステム。
【請求項9】
屋内に配置される屋内端末装置および屋外に配置される屋外端末装置との間で無線通信を行う屋内外共用無線中継器であって、
前記屋外端末装置との間で第1通信方式による無線通信を行う第1通信モジュールと、
前記屋内端末装置との間で無線通信を行う第2通信モジュールと、
を備え、
前記第2通信モジュールは、
前記屋内端末装置との間で前記第1通信方式による無線通信を行う第1通信手段と、
前記屋内端末装置との間で、前記第1通信方式と異なる第2通信方式による無線通信を行う第2通信手段と、
前記第1通信手段と前記第2通信手段とを切り替える通信切替手段と、
を備え、
前記通信切替手段は、前記第2通信手段よりも前記第1通信手段を優先して切り替える屋内外共用無線中継器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−12798(P2013−12798A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142436(P2011−142436)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(591128453)株式会社メガチップス (322)
【Fターム(参考)】