説明

屋内設置変圧器用冷却装置のファン制御方法

【課題】屋内設置変圧器用冷却装置の複数台のファンを変圧器の温度または負荷電流の値に応じて台数制御する際に、各ファンの運転時間を均一化し、ファンの利用効率を最大にするとともにファンの長寿命化を図る。
【解決手段】屋内設置変圧器用冷却装置の複数台のファンを台数制御する際に、各ファンの累積運転時間をカウントしておいて、各ファンの累積運転時間に応じて、運転台数を増やすときには累積運転時間の短いファンから運転し、運転台数を減らすときには累積運転時間の長いファンから停止するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はオフィスビルやマンションなどの建物の内部に設けられた電気室内に設置される変圧器を冷却する冷却装置のファンの制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図3は、オフィスビルやマンションなどの建物の内部に設けられる電気室内の受配電設備の構成例を概略的に示したもので、同図において1は電気室、2は電気室の扉である。この例では、電気室のほぼ中央に2台の変圧器3,3’が設置され、変圧器3,3’の側方にそれぞれ低圧盤4,4’が配置されている。また電気室1の入口から離れた位置に設置された変圧器3の近傍に、低圧盤4と反対側に位置させた状態で受電盤5が配置され、受電盤5の近傍の電気室のコーナ部に電気室の外部からも点検、操作が可能な消火設備6が配置されている。
【0003】
電気室1のコーナ部のうち、扉2を間にして消火設備6と反対側に位置するコーナ部には、給気用換気装置7が配置され、給気用換気装置7が配置されたコーナ部の対角位置にある他のコーナ部には排気用換気装置8が配置されている。
【0004】
この受配電設備では、変圧器3,3’から発生する熱により温度が上昇した電気室内の空気を排気用換気装置8を通して排気するとともに、給気用換気装置7から電気室内に外気を取り入れて電気室内の温度の上昇を抑制するようにしている。通常、給気用換気装置および排気用換気装置の両方またはいづれか一方には複数台のファンが取り付けられ、電気室内の温度が一定値以上になるとファンを一斉に運転し、一定値以下になると全台停止している。室温の上昇がわずかでもファンを一斉運転することになり多くの電力を消費していた。また、このように電気室内の換気を行うことにより変圧器の冷却を図る場合には、電気室内の温度を低く抑えるために、室内温度と給気温度との差を大きくするか、または給気用換気装置及び排気用換気装置により行われる換気の量を多くする必要がある。
【0005】
そのため、給気用換気装置7及び排気用換気装置8が非常に大形で不経済な装置となり、受配電設備のコストが高くなるという問題があった。また給気用換気装置7及び排気用換気装置8が大形化することにより、これらが電気室内で占めるスペースが大きくなるため、面積が広い電気室を確保することが必要になり、不経済であった。また、変圧器3,3’の冷却をするために電気室全体の換気をしているため、使用するファンの能力を必要以上に大きくしなければならず不経済であった。
【0006】
そこで特許文献1に示すように、電気室内に設置される変圧器を変圧器収納箱内に収納して、変圧器収納箱内の下部に室外の空気を供給する給気通路と、変圧器収納箱の上部に一端が連結され、他端が室外に開口させられた排気ダクトと、変圧器収納箱内の空気を排気ダクトを通して室外に送出する複数台のファンを具備した屋内設置変圧器用冷却装置が提案された。このようにすると大形の給気用、排気用換気装置を設ける必要がなく、ファンは電気室に比べて容積が小さい変圧器収納箱内の空気を排出する能力を有するものであればよく比較的小形のものでよいので無駄なエネルギーを消費することもない。
【0007】
図4は特許文献1に示された屋内設置変圧器用冷却装置の一例の要部を示したもので、11は電気室、13は変圧器、20は変圧器収納箱、20aは変圧器収納箱20の下部に設けられた空気取り入れ口、22は変圧器収納箱20の上部に一端が連結され、他端が室外に開口させられた排気ダクト、21aは変圧器収納箱20内の空気を排気ダクト22を通して室外に送出する複数台のファン、21はファンを設置した風洞、12は給気用消音箱である。この例では、給気用消音箱12と電気室11内の空間と空気取り入れ口20aにより給気通路が構成されている。
【0008】
特許文献1では、変圧器の温度または変圧器収納箱内の温度を検出して、必要時にのみファンの運転を行わせるようにファンの電源のオン/オフを制御する例が示されているが、この際、大形のファンを1台だけ設置してオン/オフするのでは、変圧器の温度上昇がわずかでもファンを運転することになり、エネルギーの無駄が生じる。従って、比較的小容量のファンを複数台設置し、そのオン/オフを一斉に行うのではなく変圧器の負荷または温度に応じていわゆる台数制御を行うのが一般的である。また、変圧器の容量によっては、大形のファンが複数台必要な場合もあり、この場合も台数制御を行う。
【特許文献1】特開平11−283843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ファンの台数制御を行う場合、ファンの運転順序が固定されていると、常に運転されるファンとあまり運転されないファンができるためにファンの運転時間に差異が生じファンの利用効率が悪いだけでなく、最も運転時間の長いファンが最も早く故障する確率が高いため、ファンの故障による取替えの周期が短くなり不便である。また、休止しているファンであっても、変圧器の振動、他のファンの運転時の振動等によって機械部分たとえば軸受け部等に機械的疲労が発生しやすい欠点も有している。
【0010】
本発明の目的は、電気室内に設置された変圧器収納箱内の空気を排気ダクトを通して室外に送出するための複数台のファンの運転時間を均一化して、ファンの利用効率を最大にするとともにファンの長寿命化を図ったファン制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の発明は、屋内に設けられた電気室内に設置されて内部に変圧器を収納する変圧器収納箱と、前記変圧器収納箱内の下部に室外の空気を供給する給気通路と、前記変圧器収納箱の上部に一端が連結され、他端が室外に開口させられた排気ダクトと、前記変圧器収納箱内の空気を前記排気ダクトを通して室外に送出する複数台のファンを具備した屋内設置変圧器用冷却装置のファン制御方法であって、
前記変圧器の温度または前記変圧器収納箱内の温度または前記変圧器の負荷電流の少なくともいずれか一つを検出して、前記複数台のファンの台数制御をする際に、前記複数台のファンの運転台数を増加させる場合には運転していないファンの中で累積運転時間の最も少ないファンから順に運転し、前記複数台のファンの運転台数を減少させる場合には運転中のファンの中で累積運転時間の最も多いファンから順に運転を停止するようにしたことを特徴とするファン制御方法である。
【0012】
第2の発明は、前記複数台のファンの台数制御が、前記累積運転時間のカウントを保持したまま一定時間経過毎にリセットされ再スタートすることを特徴とする第1の発明に記載のファン制御方法である。
【発明の効果】
【0013】
第1の発明によれば、変圧器収納箱内の空気を排気ダクトを通して室外に送出するための複数台のファンの台数制御において、各ファンの累積運転時間に応じて運転台数を増やすときには累積運転時間の短いファンから運転し、運転台数を減らすときには累積運転時間の長いファンから停止するようにしたので、各ファンの運転時間を均一化でき、ファンの利用効率を最大にするとともにファンの長寿命化を図ることができる。
【0014】
第2の発明によれば、上記のファンの台数制御が、一定時間経過毎に、ファンの累積運転時間のカウントを保持したままリセットされ再スタートされるので、再スタートの際に全台のファンの累積運転時間が比較されることになり、あるファン台数での運転状態が変化せずに長期に継続された場合でも、特定のファンの累積運転時間だけが増加することを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図2は本発明にかかわる屋内設置変圧器用冷却装置のファン制御方法を適用した屋内設置変圧器用冷却装置の一部説明図で、図示しない電気室内に、内部に図示しない変圧器を備えた変圧器収納箱20が設置されている。変圧器収納箱20の上部に内部にファン21aを設置した風洞21が取り付けられ、その上部に排気ダクト22の一端が取り付けられている。この例ではファンは3本の排気ダクトに各一個ずつ計3個取り付けられている。なおファンの位置は、変圧器収納箱20内の空気を排気ダクト22を通して室外に送出するように設ければよく、排気ダクト22の図示しない他端側や、変圧器収納箱20の下部の空気取り入れ口20aに取り付けてもよい。電気室内には電気室の室温を測定する温度センサ30が設けられ、変圧器収納箱20内の変圧器に変圧器の巻線温度を測定する巻線温度センサ31が取り付けられている。巻線温度の代わりに、変圧器負荷によって変化するその他の変圧器温度、変圧器収納箱内の温度、変圧器の負荷電流を測定してもよい。
【0016】
本発明の実施の形態を図1のフローチャートにより説明する。本例ではファンは3台設置されている。電気室内の温度が40℃以上ならファンを全台運転する。35℃以下になると巻線温度での台数制御に戻る(フローチャート上には図示されていない)。
【0017】
巻線温度があらかじめ設定された上限温度(この例では100℃)以上なら(101)、累積運転時間の一番少ないファンを選択し1台目のファンを運転するとともに1台目のファンの累積運転時間のカウントを始める(102)。
【0018】
この例では、累積運転時間のカウントにはシーケンサのメモリ機能を使用し、シーケンサから、巻線温度と累積運転時間の大小とに応じてファンの運転・停止の指令が出される。
【0019】
さらに巻線温度が上限温度以上で(103)、冷却時限(この例では60秒に設定)が経過しても上限温度以上である場合には(103、104)、運転していないファンの中で累積運転時間の最も少ないファンを選択して運転するとともに(2台目のファン運転)、このファンの累積運転時間のカウントを始める(107)。さらに冷却時限が経過しても巻線温度が上限温度以上である場合には(108,109)、3台目のファンを運転しこのファンの累積運転時間のカウントを始める(112)。逆に巻線温度があらかじめ設定された下限温度(この例では80℃)を下回ると累積運転時間の一番多いファンを選択して1台目のファンを停止するとともにこのファンの累積運転時間のカウントを停止しカウントした値を保持する(113,114)。冷却時限が経過しても巻線温度が下限温度を下回っている場合は(115,116)、運転中のファンの中で累積運転時間の最も多いファンを選択して運転を停止するとともに(2台目のファン停止)、そのファンの累積運転時間のカウントを停止しカウントした値を保持する(117)。さらに冷却時限経過後も巻線温度が下限温度を下回っている場合(118,119)は3台目のファンも停止するとともに累積運転時間のカウントを停止しカウントした値を保持する(120)。なお冷却時限はファンの頻繁な運転/停止の切り替えを抑制するための待機時間である。
【0020】
ファン全台停止の運転状態において、巻線温度が上限温度以上でなければそのままの運転状態を維持する(101)。また、ファン全台運転状態において、巻線温度が下限温度未満でなければそのままの運転状態を維持する(113)が、このとき巻線温度が上限温度以上である場合には、フローチャート上には図示されていないが別に警報を発する。また、ファン1台または2台の各運転状態において、巻線温度が下限温度以上でかつ上限温度以上でない場合にはそのままの運転状態を続け(105,106,110,111)、その温度範囲を脱したとき、巻線温度が上限温度以上であるならば運転していないファンの中で累積運転時間の最も少ないファンの運転を開始し(107,112)、巻線温度が下限温度未満なら運転中のファンのうちで累積運転時間の最も多いファンを停止するように制御を進める(115,118)。
【0021】
なおこの例では、あるファン台数での運転状態が長期に継続される場合(たとえばファン1台運転状態のまま長期に負荷が変動せず変圧器温度が変わらない場合)、特定のファンの累積運転時間が増加してその状態が変化しないことになるので、図1では図示していないが、一定時間が経過する毎に、ファンの累積運転時間のカウントを保持したまま、ファンの台数制御がリセットされ再スタートするように、すなわち、一定時間が経過する毎にファンの累積運転時間のカウントを保持したままファン全台がいったん停止し、「START」から再度制御が始まるようになっている。
【0022】
以上のように本例においては、巻線温度を用いて複数台のファンの台数制御をする際に、ファンの運転台数を増やすときには、累積運転時間の少ないファンから運転し、ファンの運転台数を減らすときには累積運転台数の多いファンから停止するようにしたので、各ファンの運転時間を均一化でき、ファンの利用効率を最大にするとともにファンの長寿命化を図ることができる。また、一定時間が経過する毎に、ファンの累積運転時間のカウントを保持したまま、ファンの台数制御がリセットされ再スタートするようにしたので、再スタートの際に全台のファンの累積運転時間が比較されることになり、あるファン台数での運転状態が変化せずに長期に継続された場合でも、特定のファンの累積運転時間だけが増加することを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態を説明するフローチャートである。
【図2】本発明にかかわる屋内設置変圧器用冷却装置のファン制御方法を適用した屋内設置変圧器用冷却装置の一部説明図である。
【図3】従来の電気室内の受配電設備の構成例を概略的に示した図である。
【図4】従来の屋内設置変圧器用冷却装置の一例の要部を示した図である。
【符号の説明】
【0024】
1, 11 電気室
2 電気室の扉
3, 3’,13 変圧器
4, 4’ 低圧盤
5 受電盤
6 消火設備
7 給気用換気装置
8 排気用換気装置
12 給気用消音箱
20 変圧器収納箱
20a 空気取り入れ口
21 風洞
21a ファン
22 排気ダクト
30 温度センサ
31 巻線温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋内に設けられた電気室内に設置されて内部に変圧器を収納する変圧器収納箱と、前記変圧器収納箱内の下部に室外の空気を供給する給気通路と、前記変圧器収納箱の上部に一端が連結され、他端が室外に開口させられた排気ダクトと、前記変圧器収納箱内の空気を前記排気ダクトを通して室外に送出する複数台のファンを具備した屋内設置変圧器用冷却装置のファン制御方法であって、
前記変圧器の温度または前記変圧器収納箱内の温度または前記変圧器の負荷電流の少なくともいずれか一つを検出して、前記複数台のファンの台数制御をする際に、前記複数台のファンの運転台数を増加させる場合には運転していないファンの中で累積運転時間の最も少ないファンから順に運転し、前記複数台のファンの運転台数を減少させる場合には運転中のファンの中で累積運転時間の最も多いファンから順に運転を停止するようにしたことを特徴とするファン制御方法。
【請求項2】
前記複数台のファンの台数制御が、前記累積運転時間のカウントを保持したまま一定時間経過毎にリセットされ再スタートすることを特徴とする請求項1に記載のファン制御方法

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−19349(P2006−19349A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−193137(P2004−193137)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】