説明

屋外用発光建材パネル及びその製造方法

【課題】屋外の厳しい環境下における長期的な使用を保証し、且つ良好な生産性を有する屋外用発光建材パネル及びその製造方法を提供する。
【解決手段】建材パネルと、複数の発光素子を有し、前記建材パネルの一方の面側に形成された、全体として均一色に発光する面発光パネルと、前記面発光パネルに対し、前記建材パネルとは反対側の最表面に形成された汚れ防止層と、を有すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面発光機能を有した建築材料である屋外用発光建材パネル、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建物に使用する建築材料(建材)に発光体を埋め込む技術が、従来から知られている。例えば、特許文献1には、基板内に点発光する発光装置を収納することによって形成された照明機能を有する建材が開示されている。このような発光体が埋め込まれた建材は、建材自体に発光機能を持たせることによって照明器具を別途備える必要が無くなり、デザイン的に優れ、更に当該建材においてはコストの削減が期待される。
【0003】
また、近年においては、面発光照明機器がそのソフトな印象の光や省エネルギー性能などの理由から次世代照明として注目を浴びており、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL(Electro Luminescence)、OEL:Organic Electro Luminescence)、或いは発光ダイオードと導光板とを組合せたものが開発されている。特に、有機EL素子は、機器の小型軽量化が可能であり、更には発熱も小さいといった点で注目されている。ここで、有機ELとは、有機物質からなる発光材料に電圧を印可してエネルギーを付与し、励起された当該発光材料が元の状態に戻る際に、光としてエネルギーを放出する現象のことをいう。有機EL技術を用いた発光素子である有機EL素子には、有機物質からなる発光材料を含む有機層と、当該有機層を挟むように対向した2つの電極(陰極及び陽極)と、を基板上に順次積層した構造が一般的に用いられている。例えば、特許文献2には、有機EL素子を照明に用いる技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献3には、建造物内の照明用の技術として、有機EL素子からなる面発光パネルを筐体に組み込んだ発光モジュールをシリコーンゴム等の透明弾性体で保護することにより、荷重を分散させて破損を防止する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−180563号公報
【特許文献2】特開2009−218094号公報
【特許文献3】特開2009−076781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、屋外照明としては、街灯や建物の外壁に取り付けた照明などが用いられている。しかしながら、シリコーンゴムは、埃や雨水などの付着を防止することができないため、特許文献3の屋内用照明を屋外照明に用いることはできない。また、シリコーンゴムは一般的に非常に柔らかい(ショアAで90以下のものが大部分である)ため、屋外使用では傷つきやすいという問題点もある。更に、シリコーンゴムはシリコーンゴムシートを接着するか、シリコーンゴム原液を塗布して熱などで重合させて形成するため、生産性が悪いという問題もある。特に有機EL素子を屋外照明に用いた場合、太陽光の紫外線により有機EL素子が劣化する可能性もある。
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、屋外の厳しい環境下における長期的な使用を保証し、且つ良好な生産性を有する屋外用発光建材パネル及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の屋外用発光建材パネルは、建材パネルと、複数の発光素子を有し、前記建材パネルの一方の面側に形成され、面全体として均一色に発光する面発光パネルと、前記面発光パネルに対し、前記建材パネルとは反対側の最表面に形成された、汚れ防止層と、を有することを特徴とする。なお、本発明の屋外用発光建材パネルが有する面発光パネルの数は、1つに限定されることなく、1つの建材パネルの一方の面側に複数の面発光パネルがあってもよい。
【0009】
上述した屋外用発光建材パネルにおいて、前記汚れ防止層はフッ素系樹脂を含有していることが好ましい。また、前記汚れ防止層は光触媒を含有していることが好ましい。
【0010】
上述した屋外用発光建材パネルは、前記面発光パネルに対し、前記汚れ防止層側に、紫外線吸収層を有していることが好ましい。また、上述した屋外用発光建材パネルは、前記面発光パネルに対し、前記汚れ防止層側に、調光層を有していることが好ましい。
【0011】
上述した屋外用発光建材パネルは、前記建材パネルと前記面発光パネルとの間に樹脂層(以下、「第1樹脂層」とする場合がある)を有していることが好ましい。また、上述した屋外用発光建材パネルは、前記面発光パネルと前記汚れ防止層との間に樹脂層(以下、「第2樹脂層」とする場合がある)を有していることが好ましい。更に、上述した屋外用発光建材パネルは、前記面発光パネルの端部に樹脂層(以下、「第3樹脂層」とする場合がある)を有していることが好ましい。
【0012】
上述した屋外用発光建材パネルにおいて、前記発光素子が有機エレクトロルミネッセンス素子であることが好ましい。
【0013】
上述した屋外用発光建材パネルにおいて、前記面発光パネルの発光色が可変であることが好ましい。
【0014】
上記目的を達成するため、本発明の屋外用発光建材パネルの製造方法は、建材パネルと、複数の発光素子を有し、前記建材パネルの一方の面側に形成され、面全体として均一色に発光する面発光パネルと、前記面発光パネルに対し、前記建材パネルとは反対側の最表面に形成された、汚れ防止層とを有し、前記建材パネル、前記面発光パネル及び前記汚れ防止層を樹脂層を用いた真空加熱ラミネート法により一体成形することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
上述した構造を用いることにより、本発明の屋外用発光建材パネルは、屋外の厳しい環境下における長期的な使用を保証し、且つ良好な生産性を有することになる。
【0016】
また、上述した汚れ防止層がフッ素系樹脂を含有する場合には、汚れ防止層に高い防汚性を備えつつ、低コスト化及び生産性の向上を図ることができる。
【0017】
上述した汚れ防止層が光触媒を含有する場合には、紫外線を用いた触媒反応により、汚れ防止層の表面に付いた汚れ物質を分解することが可能になる。
【0018】
本発明の屋外用発光建材パネルが面発光パネルに対し、汚れ防止層側に、紫外線吸収層を有する場合には、屋外用発光建材パネルに照射される紫外線を該紫外線吸収層が吸収し、該紫外線の面発光パネルへの到達を抑制し、紫外線による面発光パネルの劣化を防止することができる。
【0019】
本発明の屋外用発光建材パネルが面発光パネルに対し、汚れ防止層側に、調光層を有する場合には、面発光パネルへの紫外線の遮蔽、及び面発光パネルから放射される光の透過を自在に調整することができる。
【0020】
本発明の屋外用発光建材パネルの製造方法によれば、建材パネル、面発光パネル、汚れ防止層を、樹脂層を用いた真空加熱ラミネート法により一体成形するため、面発光パネルに対する水分の浸透等を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1実施例に係る屋外用発光建材パネルの斜視図である。
【図2】第1実施例に係る屋外用発光建材パネルの底面図である。
【図3】図2の線III-IIIにおける発光建材パネルの断面図である。
【図4】第1実施例に係る屋外用発光建材パネルを構成する面発光パネルの斜視図である。
【図5】第1実施例に係る屋外用発光建材パネルを構成する面発光パネルの上面図である。
【図6】図5における線VI−VIに沿った断面図である。
【図7】第1実施例に係る屋外用発光建材パネルを構成する面発光パネルの電気構成回路図である。
【図8】第1実施例に係る屋外用発光建材パネルの各製造工程における断面図である。
【図9】第1実施例に係る屋外用発光建材パネルの各製造工程における断面図である。
【図10】第1実施例に係る屋外用発光建材パネルの各製造工程における断面図である。
【図11】第1実施例に係る屋外用発光建材パネルの各製造工程における断面図である。
【図12】第1実施例に係る屋外用発光建材パネルの各製造工程における断面図である。
【図13】第1変形例に係る屋外用発光建材パネルを図3と同様にして示した断面図である。
【図14】第2変形例に係る屋外用発光建材パネルを図3と同様にして示した断面図である。
【図15】第3変形例に係る屋外用発光建材パネルを図3と同様にして示した断面図である。
【図16】第4変形例に係る屋外用発光建材パネルを図3と同様にして示した断面図である。
【図17】第5変形例に係る屋外用発光建材パネルの各製造工程における断面図である。
【図18】第5変形例に係る屋外用発光建材パネルの各製造工程における断面図である。
【図19】第5変形例に係る屋外用発光建材パネルの各製造工程における断面図である。
【図20】第5変形例に係る屋外用発光建材パネルの各製造工程における断面図である。
【図21】第5変形例に係る屋外用発光建材パネルの各製造工程における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態について、実施例及び変形例に基づき詳細に説明する。なお、本発明は以下に説明する内容に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において任意に変更して実施することが可能である。また、各実施例の説明に用いる図面は、いずれも本発明による屋外用発光建材パネルを模式的に示すものであって、理解を深めるべく部分的な強調、拡大、縮小、または省略などを行っており、各構成部材の縮尺や形状等を正確に表すものとはなっていない場合がある。更に、実施例及び変形例で用いる様々な数値は、いずれも一例を示すものであり、必要に応じて様々に変更することが可能である。
【0023】
<第1実施例>
(屋外用発光建材パネルの構成)
先ず、図1乃至図3を参照しつつ、本実施例の屋外用発光建材パネル1の構成を詳細に説明する。図1は、本実施例に係る屋外用発光建材パネル1の斜視図である。また、図2は、本実施例に係る屋外用発光建材パネル1の底面図(すなわち、後述する建材パネル側の平面図)である。図3は、図2の線III-IIIにおける発光建材パネル1の断面図である。なお、本発明の屋外用発光建材パネルにおいて、図1及び図3の第1樹脂層3は、必須の層ではなく、建材パネル2上に面発光パネル4が固定されていればよい。また、本発明の屋外用発光建材パネルにおいて、図2及び3の貫通孔6及び複合ケーブル7は、必須では無いがこれらを有していることが好ましい。
【0024】
図1及び図3に示すように、屋外用発光建材パネル1は、建材パネル(建築材料パネル)2、樹脂層(他の部位の樹脂層と区別するため、以下、「第1樹脂層3」とする場合がある)、面発光パネル4及び汚れ防止層5を有している。具体的には、建材パネル2の上に第1樹脂層3を介して面発光パネル4が貼り付けられ、面発光パネル4の上に汚れ防止層5が設けられている。なお、図1においては、1つの建材パネル2の上に1つの面発光パネル4が第1樹脂層3を介して貼り付けられているが、面発光パネル4の数量は1つに限定されることなく、1つの建材パネル2の上に複数の面発光パネル4が貼り付けられてもよい。
【0025】
また、図2及び図3に示すように、屋外用発光建材パネル1には、建材パネル2及び第1樹脂層3を貫通して面発光パネル4の建材パネル2側の面(以下、「第2の面4b」とする場合がある)に到達する貫通孔6が形成されている。貫通孔6の全体的な形状は円柱状であり、建材パネル2における貫通孔6の開口形状は円状である。ここで、貫通孔6は、面発光パネル4のコネクタ(図示せず)まで到達し、該コネクタが露出している。貫通孔6の内部には複合ケーブル7が設けられ、複合ケーブル7は面発光パネル4の該露出したコネクタに接続に接続されている。ここで、複合ケーブル7は、電力ケーブルと制御信号ケーブルから構成され、電力ケーブルは後述する電力供給部25に接続され、制御信号ケーブルは後述する制御部26に接続されている。このような構成により、面発光パネル4に外部から駆動電力を供給することができ、面発光パネル4を発光させることができる。
【0026】
なお、図2及び図3において、貫通孔6の開口径は、複合ケーブル7の直径よりも大きく、貫通孔6と複合ケーブル7との間に空隙が存在しているが、貫通孔6と複合ケーブル7との間の空隙にエポキシ樹脂又はシリコーン樹脂等の絶縁部材を注入し、貫通孔6を封止してもよい。また、複合ケーブル7の直径を貫通孔6の開口径と同一にして、隙間なく複合ケーブル7を貫通孔6内に設けてもよい。
【0027】
(建材パネル)
建材パネル2は、従来から一般的な建物に用いられているパネル部材であって、使用用途により様々な材料から構成されている。一般的な建材パネル2としては、例えば、アルミニウムなどの金属パネル、軽量気泡コンクリート(ALC:autoclaved lightweight aerated concrete)等のコンクリートパネル、樹脂製の芯材にアルミニウム板を積層したアルミ複合パネル、及びケイ酸カルシウムパネル等が挙げられる。また、建材パネル2は、陶器などによるタイルであってもよい。
【0028】
(第1樹脂層)
第1樹脂層3は、建材パネル2と面発光パネル4の間にある樹脂層である。第1樹脂層3は、接着性を備えていることが好ましい。接着性を備える材料としては、アクリル樹脂系接着剤、エポキシ系接着剤、又はシリコーン系接着剤等が好ましい。また、第1樹脂層3は両面テープのような積層体であってもよい。該両面テープには、シリコーン系粘着材若しくはアクリル系粘着材を用いたポリエステル基材、ポリイミド基材、又は金属箔基材を用いることができる。すなわち、本実施例においては、容易に建材パネル2と面発光パネル4とを貼り合わせることができるものが使用されているが、上述した以外のものであっても、建材パネル2及び面発光パネル4に対する接着強度を考慮して、様々なものを使用することができる。
【0029】
第1樹脂層3には、より良好な接着特性(すなわち、より大きな接着強度)及び難燃性を第1樹脂層3に備えさせるために、ガラス繊維等のフィラーが含有されていてもよい。また、第1樹脂層3と面発光パネル4との間にガラス不織布又は織布を設けることによっても、第1樹脂層3及び当該ガラス不織布又は当該織布を介して建材パネル2と面発光パネル4とを強固に貼り合わせることができる。
【0030】
なお、建材パネル2と面発光パネル4とを貼り合わせる方法は、上述したような接着層を用いる方法に限定されることはない。例えば、建材パネル2と面発光パネル4とをネジ止めする方法、建材パネル2と面発光パネル4とをバネの力で止める方法、面発光パネル4を建材パネル2に嵌合させて一体化させるような嵌合固定する方法など、建材パネル2と面発光パネル4とを機械的に固定する方法を用いることもできる。また、該機械的な固定方法と上述した接着層を用いる方法を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
(汚れ防止層)
汚れ防止層5は、透明で防汚性を有している。ここでいう「透明」とは、無色透明である必要は無く、本発明の屋外用発光建材パネルにおける面発光パネルからの照明光が十分に外部に透過されていれば、若干の光吸収、或いは光散乱性を有していてもよい。また、「防汚性」とは、汚れ難いことをいい、より具体的には、表面エネルギーが小さい及び/又は汚れを分解できる性質を有することが挙げられる。
【0032】
汚れ防止層5の表面エネルギーは、面発光パネル4の表面エネルギーよりも小さいことが好ましい。具体的には、汚れ防止層5は、JIS R3257で定めた方法に従って測定した水との接触角が80度以上であることが好ましく、90度以上であることが更に好ましく、また、一方、同上限は、飽和フルオロアルキルなどの所謂超撥水材料を用いることで150度超としてもよいが、150度以下が好ましい。これにより、汚れ防止層5が撥水性を有することになるため、屋外用発光建材パネル1を外壁に使用する場合に、雨や埃等の付着を妨げ、屋外用発光建材パネル1が汚れるのを防止することができる。汚れ防止層5に好適な材料としては、具体的に、ポリエチレン、ポリプロピレン、若しくはポリシクロオレフィン等のポリオレフィン樹脂、又は4−フッ化エチレン−パークロロアルコキシ共重合体(PFA)、2−エチレン−4−フッ化エチレン共重合体(ETFE)、若しくはポリ3−フッ化塩化エチレン(PCTFE)等のフッ素系樹脂を用いることができる。
【0033】
また、上述した樹脂上に、ガラス、ポリメチルメタクリレート、若しくは架橋アクリレート等のアクリル樹脂、ピスフェノールAポリカーボネート等の芳香族ポリカーボネート樹脂、又はポリエチレンテレフタレート若しくはポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂等にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やシランカップリング剤などの表面コーティングを施し、防汚性を向上させてもよい。
【0034】
汚れ防止層5が汚れを分解できる性質をもっている場合も、屋外用発光建材パネル1が汚れるのを防止することができる。汚れを分解できる性質は、具体的には、例えば、上述した樹脂の(面発光パネル4とは反対側の)表面に、酸化チタンなどの光触媒をコーティングして、汚れ防止層5を形成することなどが挙げられる。光触媒は、紫外線を用いた触媒反応により汚れ物質を分解する「セルフクリーニング」機能を奏するため、汚れ防止層5の表面に光触媒が露出することにより、汚れ防止層5はより優れた防汚性を有することになる。すなわち、光触媒は、屋外用発光建材パネル1を紫外線の強い屋外で使用した場合に特に有効となる。
【0035】
また、光触媒は、上述した樹脂中に含有させてもよい。ここで、粒状の光触媒を用いる場合、その粒径は、通常1〜100μm程度である。
【0036】
上述したように、汚れ防止層5は、透明で防汚性を備えていれば、様々な材料から構成され、更には様々な構造を取ることができるが、コスト及び生産性を考慮すると、フッ素系の樹脂を用いることが好ましい。特に、屋外での使用を想定した場合、汚れ防止層5は、屋内よりも大きい機械的強度、及び長期間に亘る風雨や温度変化に耐えうる耐環境性能が要求されるため、このような条件を満たすものとして、例えば、テトラフルオロエチレンとエチレン共重合体(4フッ化エチレン・エチレン共重合樹脂)によって得られるフッ素樹脂であるETFEを用いることが好ましい。ETFEは、ショアDで70程度と特許文献3のシリコーンゴムと比較して高い硬度を持っている。
【0037】
汚れ防止層5は、その厚さが防汚性である保護特性が持続し易い点では厚い方が好ましいが、また、一方、屋外用発光建材パネル1全体の重量及び厚さが小さく、その光透過性が劣化し難い点では薄い方が好ましい。従って、これらを考慮して、汚れ防止層5の厚さを20〜2000μmとすることが好ましい。
【0038】
汚れ防止層5は、液状の原料を面発光パネル4上に塗布し、該液状の原料を熱又は紫外線等により硬化させることにより作製することできる。また、汚れ防止層5の生産性を考慮して、シート状に形成された汚れ防止層5を面発光パネル4上に、第2樹脂層(図示せず)として上述の第1樹脂層3と同様の材料を介して貼り付けてもよい。
【0039】
ここで、上述したような表面エネルギーの小さい樹脂、特にフッ素系の樹脂は、一般的に上述した接着剤に対して良好な接着特性を有していない。このため、汚れ防止層5の面発光パネル4と接する面には、表面活性化処理が施されることが好ましい。表面活性化処理としては、例えば、金属ナトリウム処理などが挙げられる。汚れ防止層5の表面に金属ナトリウム処理を施すと、汚れ防止層5の面発光パネル4と接する面のフッ素原子が飛ばされ、炭素骨格が構築されて接着性が向上することになる。そして、金属ナトリウム処理された汚れ防止層5の表面に、更にトルエン等を用いた脱脂処理を施すことが好ましい。なお、表面活性化処理は金属ナトリウム処理に限定されることなく、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、又はスパッタリング処理などであってもよい。
【0040】
また、汚れ防止層5には、例えば、フィルムの加工性、耐熱性、耐候性、機械的特性、寸法安定性、抗酸化性、滑り性、離形性、難燃性、抗カビ性、電気的特性、及びその他の特性等を改良及び/又は改質する目的等で、種々のプラスチック配合剤などの成分が含有されていてもよい。該成分としては、例えば、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、強化剤、補強剤、帯電防止剤、難燃剤、耐炎剤、発泡剤、防カビ剤、及び顔料などが挙げられる。なお、本発明の優れた効果を著しく妨げなければ、これら以外の様々な公知の添加剤等を使用してもよい。
【0041】
上述した成分の中で、屋外用発光建材パネル1を屋外で長期使用した場合における面発光パネル4の紫外線による劣化等を軽減できることから、特に紫外線吸収剤を汚れ防止層5に添加することが好ましい。また、一般的に、有機物は紫外線による影響を受け易いことから、特に面発光パネル4が有機EL素子のような有機物から構成されている場合において、有機物紫外線吸収剤が汚れ防止層5に含まれていることが好ましい。
【0042】
紫外線吸収剤は、通常、太陽光中の有害な紫外線を吸収して分子内で無害な熱エネルギーへと変換し、高分子中の光劣化開始の活性種の励起を防止する。従って、本実施例において使用される紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サルチレート系、アクリルニトリル系、金属錯塩系、ヒンダードアミン系、超微粒子酸化チタン(粒子径、0.01〜0.06μm)、若しくは超微粒子酸化亜鉛(0.01〜0.04μm)等の無機系等の紫外線吸収剤、又はこれらの組合せを使用することができる。更に、ポリマーを構成する主鎖又は側鎖に、上述したベンゾフェノン系等の紫外線吸収剤又は上述したフェノール系等の酸化防止剤を化学結合させてなるポリマー型のものを使用することもできる。紫外線吸収剤の含有量としては、その粒子形状、密度等によって異なるが、0.1〜10重量%が好ましい。
【0043】
紫外線吸収剤は、面発光パネル4の発光面側に存在していれば、上述の効果を奏することができることから、後述する面発光パネル4と汚れ防止層5との間に設けた第2樹脂層等に含まれていても、汚れ防止層5及び第2樹脂層の両方に含まれていてもよい。また、面発光パネル4の発光面側に汚れ防止層5及び第1樹脂層3以外の層が存在する場合において、該汚れ防止層5及び第1樹脂層3以外の層に含まれていてもよい。すなわち、本発明において、紫外線吸収層とは、紫外線吸収剤を含有する層をいい、これが汚れ防止層5であっても、第2樹脂層であっても、これら以外の層であってもよい。また、紫外線吸収層を汚れ防止層5とは別に設ける場合、紫外線吸収層は、汚れ防止層5と面発光パネル4との間にあれば、その他の積層順は問わない。
【0044】
また、日中などの明るく、屋外用発光建材パネル1の発光が不要な場合、上述した紫外線吸収剤として、紫外線を照射すると可視光領域の吸収が増加するフォトクロミック材料を用いてもよい。これにより、紫外線が照射している間は可視光領域の光も遮断され、面発光パネル4の劣化の防止をより有効に図ることができる。そして、紫外線照射されない夜間等においては、フォトクロミック材料は透明となり、屋外用発光建材パネル1から外部に向けて発光させることができる。
【0045】
(面発光パネル)
次に、図4乃至図6を参照しつつ、本実施例における面発光パネル4の構造を詳細に説明する。図4は、本実施例の屋外用発光建材パネルを構成する面発光パネル4の斜視図である。また、図5は、面発光パネル4の上面図である。更に、図6は、図5における線VI−VIに沿った断面図である。
【0046】
本実施例において、面発光パネル4は複数の有機エレクトロルミネッセンス(有機EL(Electro Luminescence))素子からなる有機EL面発光体であるが、本発明に係る面発光パネル4はこれに限られるものではなく、無機EL又は無機LEDと導光板を組み合わせたものであってもよい。
【0047】
図4乃至図6に示すように、本実施例における面発光パネル4は、透明基板11、有機EL素子12、光拡散層13、及び封止層14から構成されている。また、有機EL素子12は、発光色が赤色である有機EL素子12R、発光色が緑色である有機EL素子12G、発光色が青色である有機EL素子12Bの3種類に分類される。かかる構成を有する面発光パネル4を用いて図1乃至図3に示された屋外用発光建材パネルを形成する場合、面発光パネル4を構成する透明基板11側に汚れ防止層5が存在し、面発光パネル4を構成する封止層14側に建材パネル2が存在することになる。
【0048】
本実施例において、透明基板11は、ガラス製の基板である。なお、透明基板11は可視光を透過する特性を有する基板であればよく、例えばセラミックス、更にはポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート又はポリエーテルスルフォン等の透明な樹脂フィルムから構成されてもよい。また、建材パネル2上に有機EL素子12を形成する場合は、透明基板11は、無くても構わない。
【0049】
より具体的な面発光パネル4の構成として、透明基板11の建材パネル2側の面(以下、「第1の面11a」とする場合がある)には、複数の有機EL素子12R、複数の有機EL素子12G、及び複数の有機EL素子12Bがストライプ状に並設されている。これらの有機EL素子は、有機EL素子12R、12G、12Bの順序で繰り返して並置されている。このような構成により、複数の有機EL素子12Rから放射される赤色の光、複数の有機EL素子12Gから放射される緑色の光、及び複数の有機EL素子12Bから放射される青色の光が合成され、1つの面発光パネル2から全体的に均一色の合成光が放射されることになる。なお、各色の光を放射する有機EL素子12R、12G、12Bのそれぞれの個数は1個ずつであってもよいが、発光面の拡大化及び面発光パネル4の高輝度化及び良好な光の混合を図る場合には、多くの有機EL素子12R、12G、12Bを並置することが好ましい。
【0050】
図5及び図6に示すように、発光色が赤色である有機EL素子12Rは、透明基板11の第1の面11a上に形成された陽極(透明電極)15R、陽極15R上に形成された有機層16R、及び陽極15Rと対をなして有機層16Rを挟む陰極(金属電極)17Rから構成されている。同様に、発光色が緑色である有機EL素子12Gは、透明基板11の第1の面11a上に形成された陽極(透明電極)15G、陽極15G上に形成された有機層16G、及び陽極15Gと対をなして有機層16Gを挟む陰極(金属電極)17Gから構成され、発光色が青色である有機EL素子12Bは、透明基板11の第1の面11a上に形成された陽極(透明電極)15B、陽極15B上に形成された有機層16B、及び陽極15Bと対をなして有機層16Bを挟む陰極(金属電極)17Bから構成されている。なお、陽極15R、15G、15Bのいずれかを特定しない場合には単に陽極15とも称し、有機層16R、16G、16Bのいずれかを特定しない場合には単に有機層16とも称し、陰極17R、17G、17Bのいずれかを特定しない場合には単に陰極17とも称する。すなわち、本実施例において、透明基板11の第1の面11a上には、各有機EL素子12を構成する陽極15、有機層16及び陰極17が順次積層されている。
【0051】
本実施例においては、陽極15は、インジウム錫酸化物(ITO)から構成されている。陽極15は、有機層16に正孔を注入する機能を有し、且つ有機層16における各色の発光に対して透明である。すなわち、陽極15は透明電極として機能する。陽極15の形成はスパッタリング法や真空蒸着法等により行われる。陽極15を形成した後に陽極15に付着した不純物を除去し、イオン化ポテンシャルを調整して正孔注入性を向上させるために紫外線照射やオゾン処理をすることが好ましい。
【0052】
なお、陽極15は、インジウム錫酸化物から構成されていることに限定されることなく、有機層16に正孔を注入する機能を有し、且つ有機層16における各色の発光に対して透明であれば、例えば、インジウム亜鉛酸化物等の金属酸化物、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリピロール等の導電性高分子等から構成されてもよい。また、陽極15は、有機EL素子12R、12B、12Gごとに異なる材料から構成されてもよい。
【0053】
図5において図示されていないが、有機層16は、陽極15側から順に正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層及び電子注入層が積層された構造を有していることが好ましい。正孔注入層及び正孔輸送層は、正孔輸送性の材料から形成されることが好ましく、正孔輸送性の材料としては、例えば、芳香族アミン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ベンジルフェニル誘導体、フルオレン基で3級アミンを連結した化合物、ヒドラゾン誘導体、シラザン誘導体、シラナミン誘導体、ホスファミン誘導体、キナクリドン誘導体、ポリアニリン誘導体、ポリピロール誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリチエニレンビニレン誘導体、ポリキノリン誘導体、ポリキノキサリン誘導体、カーボン等が挙げられる。また、電子輸送層は、電子輸送性の材料から形成されることが好ましく、電子輸送性の材料としては、例えば、8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体、10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリンの金属錯体、オキサジアゾール誘導体、ジスチリルビフェニル誘導体、シロール誘導体、3−ヒドロキシフラボン金属錯体、5−ヒドロキシフラボン金属錯体、ベンズオキサゾール金属錯体、ベンゾチアゾール金属錯体、トリスベンズイミダゾリルベンゼン、キノキサリン化合物、フェナントロリン誘導体、2−t−ブチル−9,10−N,N’−ジシアノアントラキノンジイミン、n型水素化非晶質炭化シリコン、n型硫化亜鉛、n型セレン化亜鉛などが挙げられる。電子注入層は、仕事関数の低い金属からなることが好ましい。仕事関数の低い金属としては、例えば、ナトリウムやセシウム等のアルカリ金属、バリウムやカルシウムなどのアルカリ土類金属などが挙げられる。
【0054】
上記発光層に用いられる発光材料としては、以下のものが挙げられる。赤色発光を与える発光材料としては、例えば、DCM(4−(dicyanomethylene)−2−methyl−6−(p−dimethylaminostyryl)−4H−pyran)系化合物、ベンゾピラン誘導体、ローダミン誘導体、ベンゾチオキサンテン誘導体、アザベンゾチオキサンテン等が挙げられる。また、緑色発光を与える発光材料としては、例えば、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体、Al(C96NO)3等のアルミニウム錯体等が挙げられる。更に、青色発光を与える発光材料としては、例えば、ナフタレン、ペリレン、ピレン、アントラセン、クマリン、p−ビス(2−フェニルエテニル)ベンゼン及びそれらの誘導体等が挙げられる。なお、上述した発光材料は、いずれか1種類のみを用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0055】
本実施例においては、陰極17は、透明である必要がないため、アルミニウムから構成されている。すなわち、陰極17は金属電極である。陰極17の形成は、通常スパッタリング法や真空蒸着法等により行われる。なお、陰極17は、アルミニウムから構成されていることに限定されること無く、例えば、スズ、マグネシウム、インジウム、カルシウム、銀等の適当な金属又はそれらの合金から構成されていてもよい。具体的には、例えば、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、アルミニウム−リチウム合金等の低仕事関数の合金等が挙げられる。
【0056】
このように有機EL素子12を並置することにより、各有機EL素子12R、12G、12Bから赤、緑、青の光が放射される。ここで、例えば、赤色光、緑色光、青色光の発光量を調整することにより、面発光パネル4から白色光が放射されたように見えるようにすることが可能となる。なお、赤色光、緑色光、青色光の発光量を調整することで、白色光以外の色の光が放射されたように見えるようにすることも可能であり、このような結果として、発光色が可変な面発光パネル4を得ることができる。
【0057】
本実施例においては、図4乃至図6に示すように、封止層14は、各有機EL素子12を覆い、各有機EL素子12の有機層の大気による酸化劣化等を防止する機能を奏している。本実施例において、封止層14はエポキシ樹脂である。なお、封止層14は、エポキシ樹脂以外にもシリコーン樹脂等の樹脂であってもよい。
【0058】
また、封止層14は、上述したような樹脂から構成されていることに限定されることはない。例えば、封止層14は、複数の有機EL素子12を全体的に覆うようなガラス等の部材から構成されてもよい。
【0059】
本実施例において、図4及び図6に示すように、光拡散層13は、透明基板11の汚れ防止層5側の面(以下、「第2の面11b」とする場合がある)の全面を覆うように形成されている。光拡散層13は、有機EL素子12から放射される各色の光を拡散させ、均一に混色させる効果がある。このような効果により、透明基板11と光拡散層13とからなる部材は、全体が単一の光源として機能する。本実施例において、光拡散層13は、透明樹脂に微粒子を分散したフィルムから構成されている。
【0060】
なお、光拡散層13は、このようなフィルムに限定されることなく、例えば、透明基板11の表面を粗面化することでも形成できる。また、図1乃至図3における汚れ防止層5に光拡散性の微粒子を含有させ、汚れ防止層5に光拡散機能を備えさせてもよい。また、例えば、汚れ防止層5に酸化チタン等の光触媒粒子が含有されている場合、該粒子に光拡散機能を兼ね備えさせてもよい。このような場合、該粒子の粒径は、通常、上述した場合と同様に、1〜100μm程度である。
【0061】
本実施例において、面発光パネル4は、各々3種類の有機EL素子12(赤色を発光する有機EL素子12R、緑色を発光する有機EL素子12G、青色を発光する有機EL素子12B)を備えていたが、これに限定されることはない。例えば、上述した3種類の有機EL素子12R、12G、12Bの内から選択した2種類の有機EL素子12から面発光パネル4を構成してもよいし、4種類以上の有機EL素子12から面発光パネル4を構成してもよい。
【0062】
また、本実施例における面発光パネル4においては、発光色の異なる複数の有機EL素子12を並べることにより発光色を可変にしているが、発光色の異なる複数の層を積層することにより面発光パネル4を構成することにより発光色を可変にすることもできる。
【0063】
また、各面発光パネル4からの発光色を可変にする必要が無い場合には、透明基板11上に同一色の発光素子12を設けてもよい。すなわち、例えば、赤色のみに発光する屋外用発光建材パネル、緑色のみに発光する屋外用発光建材パネル、及び青色のみに発光する屋外用発光建材パネルをそれぞれ上述したような構成により別々に形成してもよい。なお、このように単一色で発光させる場合、各面発光パネル4において、光拡散層13による光拡散が不要となる場合もある。
【0064】
本実施例において、面発光パネル4は、各有機EL素子12から放射される光を合成して様々な色及び輝度を有する合成光を放射させるために、各有機EL素子12に供給する電力量を調整するための後述する電力供給回路21を有している。電力供給回路21は、有機EL素子12が設けられた透明基板11の第1の面11a上に設けられてもよく、透明基板11の第2の面11b上に設けられてもよい。また、電力供給回路21は、面発光パネル4の外部に設けられていてもよい。
【0065】
(面発光パネルの電気構成回路)
図7は、本実施例における面発光パネル4の電気構成回路図である。図7に示すように、面発光パネル4は、複数の有機EL素子から構成される有機EL素子群20、及び有機EL素子群20に供給する電力量を制御する電力供給回路21から構成されている。具体的に、有機EL素子群20は、色光を発する複数の有機EL素子12Rから構成される赤色発光素子群22と、緑色光を発する複数の有機EL素子12Gから構成される緑色発光素子群23と、青色光を発する複数の有機EL素子12Bから構成される青色発光素子群24と、から構成されている。また、電力供給回路21は、有機EL素子群20に接続された電力供給部25及び電力供給部25を制御する制御部26から構成されている。
【0066】
なお、図7においては、回路構成を容易に示すために有機EL素子12R同士、有機EL素子12G同士、有機EL素子12B同士が並置されているが、本実施例においては、実際には図4乃至図6に示されているように、有機EL素子12R、有機EL素子12G、有機EL素子12Bの順序で並置されている。
【0067】
また、有機EL素子12のアノードである陽極15(図7には示されていない)は、電力供給部25に接続され、有機EL素子12のカソードである陰極17は、接地されている(すなわち、グランド電位に接続されている)。また、有機EL素子12Rのアノード(陽極15)同士は、電気的に接続されている。すなわち、有機EL素子12R同士は、並列に接続されている。同様に、有機EL素子12Gのアノード(陽極15)同士は、電気的に接続され、有機EL素子12G同士は、並列に接続されている。また、有機EL素子12Bのアノード(陽極15)同士は、電気的に接続され、有機EL素子12B同士は並列に接続されている。
【0068】
電力供給部25は、複数のnチャネルMOSトランジスタ27(以下、nMOS27と称する)から構成されている。本実施例においては、1つの面発光パネル4に対して3つのnMOS27が接続されている。具体的には、複数の有機EL素子12R(すなわち、赤色発光素子群22)に1つのnMOS27が接続され、複数の有機EL素子12G(すなわち、緑色発光素子群23)に1つのnMOS27が接続され、複数の有機EL素子12B(すなわち、青色発光素子群24)に1つのnMOS27が接続されている。以下において、有機EL素子12Rに接続されたnMOS27をnMOS27Rとも称し、有機EL素子12Gに接続されたnMOS27をnMOS27Gとも称し、有機EL素子12Bに接続されたnMOS27をnMOS27Bとも称する。
【0069】
より具体的な接続関係として、nMOS27のそれぞれのゲートは制御部26に接続され、nMOS27のそれぞれのソースは有機EL素子12の各アノードに接続され、nMOS27のドレインは外部電源電圧Vcc(すなわち、上述した電力ケーブル)に接続されている。
【0070】
制御部26は、一般的な半導体集積回路から構成され、面発光パネル4から放射される光の色及び輝度等の特性を制御している。制御部26には、上述した制御信号ケーブルが接続され、外部から電力供給量を制御するための制御信号が供給される。また、制御部26は、その内部に電圧源を有しているか、或いは外部電源電圧Vccから入力される電圧を所望の電圧に変換する機能を有している。このような構成により、制御部26は、上述した制御信号に応じて、各nMOS27に独立して異なるゲート電圧を印可し、更には印可するゲート電圧をnMOS27毎に変更することができる。これにより、有機EL素子12R、12G、12B毎に供給される電力を調整し、有機EL素子12R、12G、12B毎に放射される光の量を調整することにより、面発光パネル4から放射される光の色及び輝度等の特性を自在に変化させることができる。すなわち、例えば、各nMOS27のゲートに印可されるゲート電圧を調整することにより、面発光パネル4から放射される光の色を白色光のみならず、様々な色に調整することができる。
【0071】
更に、具体的には、nMOS27Rのみにゲート電圧を印可する場合、赤色発光素子群22を構成する有機EL素子12Rのみに電力が供給され、面発光パネル4から放射される光は赤色となる。同様に、nMOS27Gのみにゲート電圧を印可する場合、緑色発光素子群23を構成する有機EL素子12Gのみに電力が供給され、面発光パネル4から放射される光は緑色となり、nMOS27Bのみにゲート電圧を印可する場合、青色発光素子群24を構成する有機EL素子12Bのみに電力が供給され、面発光パネル4から放射される光は青色となる。すなわち、面発光パネル4からは、有機EL素子12R、12G、12Bの各発光色の光を単独で放射することもできる。また、上述した3つの発光素子群のうちから2つを選択して電力を供給することで、面発光パネル4から選択した2色のみを放射することも可能である。
【0072】
(屋外用発光建材パネルの製造方法)
次に、図8乃至図12を参照しつつ、屋外用発光建材パネル1の製造方法の一例について説明する。図8乃至図12には、各製造工程における断面図が図3と同様にして示されている。
【0073】
先ず、上述した各種材料から構成される建材パネル2を準備する。建材パネル2は、従来から知られている一般的な製造技術によって適宜製造されるため、ここではその詳細な説明は省略する。続いて、錐等の穴開け工具を用い、準備した建材パネル2を貫通する貫通孔6を形成する(図8)。なお、貫通孔6の形成方法は、錐等を用いた機械的な方法に限定されず、エッチング等による化学的な方法であってもよい。
【0074】
次に、建材パネル2の一方の面(以下、「第1の面2a」とする場合がある)上にエポキシ系接着剤を塗布し、該面が全体的に覆われるように広げ、第1樹脂層3を形成する(図9)。この際、貫通孔6を覆わないように第1樹脂層3を形成させ、貫通孔6が第1樹脂層3をも貫通するようにする。
【0075】
次に、面発光パネル4及び複合ケーブル7を準備し、複合ケーブル7を面発光パネル4のコネクタ(図示せず)に接続する。これにより、面発光パネル4に対して外部から電力を供給できるようになる。続いて、第1樹脂層3と面発光パネル4を対向させ、面発光パネル4を第1樹脂層3上に載置する(図10)。この際、複合ケーブル7を貫通孔6に通し、建材パネル2の第1の面2aとは反対側の面(以下、「第2の面2b」とする場合がある)から引き出す。
【0076】
次に、第1樹脂層3を加熱により硬化させ、第1樹脂層3を介した建材パネル2と面発光パネル4との貼り合わせを完成させる(図11)。これにより、建材パネル2と面発光パネル4とは、強固に貼り合わせられることになる。
【0077】
なお、建材パネル2と面発光パネル4との貼り合わせは、上述したような他の接着剤、又は両面テープ若しくはネジ等の固定部材を用いることによって施されてもよい。また、本工程後に、貫通孔6内部にエポキシ樹脂等を充填させ、封止を施してもよい。
【0078】
次に、面発光パネル4の建材パネル2とは反対側の面(以下、「第1の面4a」とする場合がある)上に液状のフッ素系樹脂を塗布する。その後、加熱又は紫外線の照射により、該液状のフッ素系樹脂を熱硬化又は紫外線硬化させる。これにより、面発光パネル4の第1の面4a上に汚れ防止層5を形成させる(図12)。なお、汚れ防止層5の形成は、シート状に形成した汚れ防止層5をエポキシ系接着剤等の接着層又は両面テープ等を介して面発光パネル4の第1の面4a上に貼り付けてもよい。
【0079】
以上の製造工程を経て、屋外用発光建材パネル1が完成する。
【0080】
なお、屋外用発光建材パネル1を屋外で使用する場合には、外気温や直射日光等により面発光パネル4の温度が上昇し、面発光パネル4がより劣化しやすくなるため、面発光パネル4の建材パネル側に冷却部材を設けることによって当該劣化を軽減することが好ましい。冷却部材としては、例えば、水、フッ素系ガス等を用いた冷媒循環装置、又はペルチェ素子等を用いることができる。
【0081】
以上のように、本実施例に係る屋外用発光建材パネル1は、屋外の厳しい環境下における長期的な使用を保証し、且つ良好な生産性を有することになる。また、特に、汚れ防止層5がフッ素系樹脂を含有する場合には、汚れ防止層5により高い防汚性を備えさせつつ、低コスト化及び生産性の向上を図ることができる。
【0082】
<第1変形例>
上述した第1実施例の屋外用発光建材パネル1においては、汚れ防止層5に紫外線吸収剤を含有させることができることが説明されていたが、面発光パネル4の汚れ防止層5側(発光面側)に別途紫外線吸収層を設けてもよく、このような屋外用発光建材パネルを第1変形例として図13を参照しつつ説明する。図13は、本変形例に係る屋外用発光建材パネル31の断面を図3と同様にして示した図である。なお、第1実施例の屋外用発光建材パネル1と同一構成については、同一符号を付し、その説明は省略する。
【0083】
図13に示すように、第1変形例に係る屋外用発光建材パネル31は、建材パネル2、第1樹脂層3、面発光パネル4、汚れ防止層5、及び紫外線吸収層32を有している。具体的には、建材パネル2の上に第1樹脂層3を介して面発光パネル4が貼り付けられ、面発光パネル4を覆うように紫外線吸収層32が設けられ、紫外線吸収層32を覆うように汚れ防止層5が設けられている。また、屋外用発光建材パネル31には、建材パネル2及び第1樹脂層3を貫通して面発光パネル4の第2の面4bに到達する貫通孔6が形成されている。貫通孔6の内部には複合ケーブル7が設けられ、複合ケーブル7は露出した面発光パネル4のコネクタに接続されている。
【0084】
紫外線吸収層32は、例えば、樹脂に紫外線吸収剤を含有させたものから構成されている。樹脂としては、フッ素系の樹脂等の第1実施例の汚れ防止層5と同一の材料が挙げられ、紫外線吸収剤としては、第1実施例の汚れ防止層5に含有される紫外線吸収剤と同一の材料が挙げられる。なお、紫外線吸収層32を構成する樹脂は、フッ素系の樹脂に限定されることなく、透明な樹脂であれば公知の樹脂を用いることができる。
【0085】
以上のように、紫外線吸収層32を別途設けることにより、紫外線の照射量が多い屋外において屋外用発光建材パネル31を使用した場合に、該紫外線を紫外線吸収層32によって吸収することにより、該紫外線の面発光パネル4への到達を抑制し、該紫外線による面発光パネル4の劣化を防止することができる。
【0086】
<第2変形例>
上述した第1実施例の屋外用発光建材パネル1には、更に光の透過率を可変することができる調光層を設けてもよく、このような屋外用発光建材パネルを第2変形例として図14を参照しつつ説明する。図14は、本変形例に係る屋外用発光建材パネル41の断面を図3と同様にして示した図である。なお、第1実施例の屋外用発光建材パネル1と同一構成については、同一符号を付し、その説明は省略する。
【0087】
図14に示すように、第2変形例に係る屋外用発光建材パネル41は、建材パネル2、第1樹脂層3、面発光パネル4、汚れ防止層5、及び調光層42を有している。具体的には、建材パネル2の上に第1樹脂層3を介して面発光パネル4が貼り付けられ、面発光パネル4を覆うように調光層42が設けられ、調光層42を覆うように汚れ防止層5が設けられている。また、屋外用発光建材パネル41には、建材パネル2及び第1樹脂層3を貫通して面発光パネル4の第2の面4bに到達する貫通孔6が形成されている。貫通孔6の内部には複合ケーブル7が設けられ、複合ケーブル7は露出した面発光パネル4のコネクタに接続されている。なお、本発明において調光層42を設ける場合、調光層42は、面発光パネル4と汚れ防止層5の間にあればよく、これ以外の層との積層順は問わない。
【0088】
調光層42には、いわゆる調光シャッターとして機能するポリマーネットワーク型液晶などを用いることができる。当該ポリマーネットワーク型液晶は、電界を加えられない状態おいては、ポリマーがランダムとなって光を乱反射することにより不透明となるが、一方、電界を加えられた状態においては、ポリマーが整列することにより、透明となる。従って、昼間等の明るい状況において、調光層42に電界をかけずに、調光層42を不透明状態として外光を遮蔽し、夜間等の暗い状況において、調光層42に電界をかけて調光層42を透明状態とし、面発光パネル4からの発光を外部に放射させるといった使用方法をとることが可能となる。
【0089】
なお、調光層42に電界をかけるために用いられる専用のケーブル(図示せず)が調光層42のコネクタに接続されている。該ケーブルは、複合ケーブル7と同様に、建材パネル2、第1樹脂層3、及び面発光パネル4を貫通する貫通孔に沿って延設されている。
【0090】
調光層42は、上述したポリマーネットワーク型液晶に限定されることなく、例えば、酸化タングステンなどの無機材料、又はポリアニリン若しくはプルシアンブルー等の有機材料によるエレクトロクロミック材料であってもよい。特に、エレクトロクロミック材料からなる調光層42を用いた場合、電圧の印可により、色及び透明度を可逆的に制御することが可能となる。また、メモリー性を有するエレクトロクロミック材料を用いることにより、電圧の印可を停止した場合であっても、電圧印加状態と同じ色及び透明度を維持することが可能となり、遮光効果(調光効果)に加えて面発光パネル4の非発光状態においても屋外用発光建材パネル41の表面から様々な色が発色するようにさせることができる。これにより、屋外用発光建材パネル41は、優れたデザイン性を備えることが可能となる。なお、面発光パネル4からの発光を外部へ放出する場合には、調光層42に電圧を印可し、調光層42を透明にすればよい。
【0091】
以上のように、調光層42を面発光パネル4と汚れ防止層5との間に設けることにより、屋外用発光建材パネル41は、汚れ防止層5の防汚性及び調光層42の遮光性(調光性)を備えることになる。すなわち、調光層42により、面発光パネル4への紫外線の遮蔽、及び面発光パネル4から放射される光の透過を自在に行うことができる。
【0092】
なお、上述したような調光層42を設ける代わりに、第1実施例のように紫外線吸収剤としてフォトクロミック材料を用いて遮光を行なってもよいが、上述したような調光層42を設けた方が、日中のような紫外線が照射している間においても、調光層42に電圧を印可することによって面発光パネル4からの発光を外部へ放射することができる。すなわち、調光層42により、面発光パネル4への紫外線の遮蔽、及び面発光パネル4から放射される光の透過を自在に行うことができる。
【0093】
<第3変形例>
上述した第1実施例、第1変形例、及び第2変形例においては、面発光パネル4及び汚れ防止層5の側面が露出していたが、面発光パネル4及び汚れ防止層5の側面を覆うように樹脂層(他の部位の樹脂層と区別するため、以下、「第3樹脂層52」とする)を設けてもよい。このような屋外用発光建材パネルを第3変形例として図15を参照しつつ説明する。図15は、本変形例に係る屋外用発光建材パネル51の断面を図3と同様にして示した図である。なお、第1実施例の屋外用発光建材パネル1と同一構成については、同一符号を付し、その説明は省略する。
【0094】
図15に示すように、第3変形例に係る屋外用発光建材パネル51は、建材パネル2、第1樹脂層3、面発光パネル4、汚れ防止層5、及び第3樹脂層52を有している。具体的には、建材パネル2の上に第1樹脂層3を介して面発光パネル4が貼り付けられ、面発光パネル4を覆うように汚れ防止層5が設けられ、第1樹脂層3、面発光パネル4、及び汚れ防止層5の側面を覆うように第3樹脂層52が設けられている。また、屋外用発光建材パネル51には、建材パネル2及び第1樹脂層3を貫通して面発光パネル4の第2の面4bに到達する貫通孔6が形成されている。貫通孔6の内部には複合ケーブル7が設けられ、複合ケーブル7は露出した面発光パネル4のコネクタに接続されている。なお、本発明の屋外用発光建材パネルにおいては、図15のように、第1樹脂層3、面発光パネル4、及び汚れ防止層5の側面を覆うように第3樹脂層52が設けられていることが好ましいが、第3樹脂層52により面発光パネル4の側面が覆われていれば、第1樹脂層3及び面発光パネル4の側面は覆われていなくてもよい。
【0095】
第3樹脂層52は、エポキシ樹脂又はシリコーン樹脂等の樹脂部材、又は両面テープから構成されている。第3樹脂層52としては、上述の第1樹脂層3で用いた樹脂と同様な樹脂を用いることもできる。第3変形例に係る屋外用発光建材パネル51においては、面発光パネル4の側面が第3樹脂層52によって被覆されることにより、面発光パネル4の外部からの吸湿等を抑制することが可能になる。また、第1樹脂層3及び汚れ防止層5の側面も第3樹脂層52によって被覆されることにより、面発光パネル4と汚れ防止層5との界面の外縁部分における剥離や吸湿を抑制することが可能になる。
【0096】
<第4変形例>
上述した第3変形例においては、第1樹脂層3、面発光パネル4、及び汚れ防止層5の側面を第3樹脂層52にて被覆していたが、このような構造に限定されることはなく、建材パネルに凹部を設け、該凹部内に第1樹脂層3、面発光パネル4、及び汚れ防止層5を設けてもよい。このような屋外用発光建材パネルを第4変形例として図16を参照しつつ説明する。図16は、本変形例に係る屋外用発光建材パネル61の断面を図3と同様にして示した図である。なお、第1実施例の屋外用発光建材パネル1と同一構成については、同一符号を付し、その説明は省略する。
【0097】
図16に示すように、第4変形例に係る屋外用発光建材パネル61は、建材パネル62、第1樹脂層3、面発光パネル4、及び汚れ防止層5を有している。建材パネル62は、一方の面62a側に凹部62bを有している。そして、建材パネル62の凹部62b内には、第1樹脂層3、面発光パネル4、及び汚れ防止層5が配置されている。具体的には、建材パネル62の凹部62bの底面上に第1樹脂層3を介して面発光パネル4が貼り付けられ、面発光パネル4を覆うように汚れ防止層5が設けられている。そして、第1樹脂層3、面発光パネル4、及び汚れ防止層5の側面は、建材パネル62の凹部62bの側面と接触している。すなわち、第1樹脂層3、面発光パネル4、及び汚れ防止層5の側面は露出することなく、第1樹脂層3、面発光パネル4、及び汚れ防止層5が凹部62b内に嵌挿されている構造となっている。
【0098】
また、屋外用発光建材パネル61には、建材パネル62及び第1樹脂層3を貫通して面発光パネル4の第2の面4bに到達する貫通孔6が形成されている。貫通孔6の内部には複合ケーブル7が設けられ、複合ケーブル7は露出した面発光パネル4のコネクタに接続されている。
【0099】
上述した構造とすることにより、屋外用発光建材パネル61において、上述した屋外用発光建材パネル51において第3樹脂層52を設けた場合と同様の効果を得ることが可能になる。なお、本発明の屋外用発光建材パネルにおいては、図16のように、第1樹脂層3、面発光パネル4、及び汚れ防止層5が建材パネル62の凹部62b内に嵌挿されている構造であることが好ましいが、面発光パネル4の側面が建材パネル62の凹部62b内に嵌挿されることにより露出しない構造となっていれば、第1樹脂層3及び面発光パネル4は建材パネル62の凹部62b内に嵌挿されていなくてもよい。
【0100】
また、上述した構造においては、面発光パネル4と建材パネル62との接着性が向上する。更に、図16に示したように、汚れ防止層5の面発光パネル4とは反対側の表面と建材パネル62の第1の面62aを同一平面上に揃えることにより、屋外用発光建材パネル61としてのデザイン性が向上することになる。
【0101】
<第5変形例>
上述した実施例及び変形例においては、建材パネル2又は建材パネル62と面発光パネル4との貼り合わせと、面発光パネル4と汚れ防止層5との貼り合わせとを各々別工程で行っていたが、これらの貼り合わせ工程を真空加熱ラミネート法によって一括して行ってもよい。このような製造方法を用いて形成された屋外用発光建材パネルを第5実施例として図17を参照しつつ説明するとともに、図18乃至図21を参照しつつ真空加熱ラミネート法を用いた屋外用発光建材パネルの製造方法を説明する。図17は、本変形例に係る屋外用発光建材パネル71の断面を図3と同様にして示した図である。また、図18乃至図21は、本変形例に係る屋外用発光建材パネル71の各製造工程における断面図である。なお、第1実施例の屋外用発光建材パネル1と同一構成については、同一符号を付し、その説明は省略する。
【0102】
図17に示すように、第5変形例に係る屋外用発光建材パネル71は、建材パネル2、樹脂層(他の部位の樹脂層と区別するため、以下、「第4樹脂層72」とする)、面発光パネル4、及び汚れ防止層5を有している。具体的には、建材パネル2に、第4樹脂層72によって全ての面が被覆された面発光パネル4が第4樹脂層72を介して貼り付けられている。また、第4樹脂層72の建材パネル2と接触した面とは反対側の面上に、汚れ防止層5が貼り付けられている。すなわち、屋外用発光建材パネル71においては、第4樹脂層72によって建材パネル2及び面発光パネル4が貼り合わされるとともに、第4樹脂層72によって面発光パネル4及び汚れ防止層5も貼り合わされている。なお、ここで、第4樹脂層72は、上述した第1樹脂層3及び第3樹脂層52を兼ね備えた状態となっている。また、更に、面発光パネル4と汚れ防止層5との間にある樹脂層にもなっている。
【0103】
屋外用発光建材パネル71には、建材パネル2及び第4樹脂層72を貫通して面発光パネル4の第2の面4bに到達する貫通孔6が形成されている。貫通孔6の内部には複合ケーブル7が設けられ、複合ケーブル7は露出した面発光パネル4のコネクタに接続されている。
【0104】
第4樹脂層72は、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、又はポリビニルブチラール(PVB)樹脂から構成されている。なお、第4樹脂層72の材料は、EVA又はPVB樹脂以外にも、真空加熱ラミネート法により建材パネル2と面発光パネル4、及び面発光パネル4と汚れ防止層5を貼り合わせることができれば、他の公知の材料を用いることができる。
【0105】
次に、屋外用発光建材パネル71の製造方法の一例について説明する。
【0106】
先ず、上述した各種材料から構成される建材パネル2を準備する(図18)。なお、建材パネル2は、従来から知られている一般的な製造技術によって適宜製造されるため、ここではその詳細な説明は省略する。
【0107】
次に、建材パネル2の上に、EVAからなる樹脂シート(他の樹脂シートと区別するため、以下、「第1樹脂シート72a」とする)、面発光パネル4、EVAからなる樹脂シート(他の樹脂シートと区別するため、以下、「第2樹脂シート72b」とする)、及び汚れ防止層5を順次積層する(図19)。この際、面発光パネル4のコネクタ(図示せず)に第1樹脂シート72bが接触しないように、該コネクタ上に保護マスク部材(図示せず)を形成する。第1樹脂シート72a及び第2樹脂シート72bは、各々、面発光パネル4よりも大面積で、0.4〜1mmの厚みのシートを用いる。また、積層するときは、面発光パネル4が第1樹脂シート72a及び第2樹脂シート72bによって挟まれ、これらのシートから外部に露出しないようにしておく。
【0108】
次に、真空加熱ラミネート装置を用いて、第1樹脂シート72a、面発光パネル4、第2樹脂シート72b、及び汚れ防止層5が積層された状態の建材パネル2を減圧下において加熱及び加圧処理を施すことによりラミネートする。これにより、第1樹脂シート72a及び第2樹脂シート72bが溶融し、第1樹脂シート72aによって建材パネル2と面発光パネル4とが貼り合わせられ、第2樹脂シート72bによって面発光パネル4と汚れ防止層5とが貼り合わせられ、第1樹脂シート72aと第2樹脂シート72bとが融着して一体化された第4樹脂層72となる(図20)。この真空加熱ラミネート法により、建材パネル2、面発光パネル4、及び汚れ防止層5を一体成形することができるため、高い生産性で屋外用発光建材パネル71を得ることが可能になる。
【0109】
次に、錐等の穴開け工具を用いて、建材パネル2及び建材パネル2側の第4樹脂層72を貫通する貫通孔6を形成する。この際、上述した保護マスク部材も錐等で除去し、面発光パネル2のコネクタを露出させる。なお、貫通孔6の形成方法は、錐等を用いた機械的な方法に限定されず、エッチング等による化学的な方法等であってもよい。続いて、貫通孔6によって露出した面発光パネル4のコネクタに複合ケーブル7を接続し、面発光パネル4に対して外部から電力を供給できるようにする(図21)。なお、複合ケーブル7を貫通孔6内に設けた後に、貫通孔6内部にエポキシ樹脂等を充填し、封止を施してもよい。
【0110】
以上の製造工程を経て、屋外用発光建材パネル71が完成する。
【0111】
このような工程を製造される屋外用発光建材パネル71においては、面発光パネル4が第4樹脂層72によって全ての面を覆われている、すなわち真空加熱ラミネート法を用いることにより、面発光パネル4が第4樹脂層72によって密閉されているため、面発光パネル4に外部から水分等が浸透するのを防止することができる。このように耐水性に優れた屋外用発光建材パネル71は、屋外のような雨や埃等にさらされる環境においても、有効に使用されることになる。
【0112】
なお、本変形例の屋外用発光建材パネル71における第4樹脂層は、上述の第1〜3樹脂層を兼ね備えている。すなわち、上述の第1樹脂シート72aが第1樹脂層になり、第2樹脂シート72bが第2樹脂層になり、第1樹脂シート72a及び第2樹脂シート72bの端部が第3樹脂層となる。
【0113】
なお、上述した第1実施例、及び第1変形例〜第5変形例における屋外用発光建材パネルの構造は、適宜組み合わせることができる。
【0114】
<本発明の発光建材パネルの用途>
本発明の屋外用発光建材パネルは、建物の壁、天井及び床等の屋外の構造物として好適に使用することができる。また、夜間用照明の他、非常口や非常用経路の表示等としても使用することができる。本発明の屋外用発光建材パネルを複数並べることによって、デザイン或いは模様を表現することもできる。また、このような模様を時間的に変化させることも可能であり、例えば簡単な時計を表示することもできる。特に、発光色が可変な屋外用発光建材パネルを使用することでデザイン或いは模様の表現の幅が格段に広がる。
【0115】
本発明の屋外用発光建材パネルは、太陽電池パネルと組み合わせて使用することができる。また、本発明の発光建材パネルに太陽電池を組み込んでもよい。このような場合には、太陽電池を面発光パネルとともに真空加熱ラミネート法により建材パネルに貼り付けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明に係る発光システムは、建物の壁、天井及び床等の屋外の構造物に好適に使用することができる。また、本発明に係る発光システムは、夜間用照明の他、非常口や非常用経路の表示等としても使用することができる。本発明の屋外用発光建材パネルを複数並べることによって、デザイン或いは模様を表現することもできる。
【符号の説明】
【0117】
1,31,41,51,61,71 屋外用発光建材パネル
2,62 建材パネル
3 第1樹脂層
4 面発光パネル
5 汚れ防止層
6 貫通孔
7 複合ケーブル
11 透明基板
12,12R,12G,12B 有機EL素子
13 光拡散層
14 封止層
15,15R,15G,15B 陽極
16,16R,16G,16B 有機層
17,17R,17G,17B 陰極
20 有機EL素子群
21 電力供給回路
22 赤色発光素子群
23 緑色発光素子群
24 青色発光素子群
25 電力供給部
26 制御部
27,27R,27G,27B nチャネルMOSトランジスタ
32 紫外線吸収層
42 調光層
52 第3樹脂層
72 第4樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建材パネルと、
複数の発光素子を有し、前記建材パネルの一方の面側に形成され、面全体として均一色に発光する面発光パネルと、
前記面発光パネルに対し、前記建材パネルとは反対側の最表面に形成された、汚れ防止層と、を有することを特徴とする屋外用発光建材パネル。
【請求項2】
前記汚れ防止層がフッ素系樹脂を含有することを特徴とする請求項1に記載の屋外用発光建材パネル。
【請求項3】
前記汚れ防止層が光触媒を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の屋外用発光建材パネル。
【請求項4】
前記面発光パネルに対し、前記汚れ防止層側に、紫外線吸収層を有することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の屋外用発光建材パネル。
【請求項5】
前記面発光パネルに対し、前記汚れ防止層側に、調光層を有することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の屋外用発光建材パネル。
【請求項6】
前記建材パネルと前記面発光パネルとの間に第1樹脂層を有することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の屋外用発光建材パネル。
【請求項7】
前記面発光パネルと前記汚れ防止層との間に第2樹脂層を有することを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の屋外用発光建材パネル。
【請求項8】
前記面発光パネルの端部に第3樹脂層を有することを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の屋外用発光建材パネル。
【請求項9】
前記発光素子が有機エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の屋外用発光建材パネル。
【請求項10】
前記面発光パネルの発光色が可変であることを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項に記載の屋外用発光建材パネル。
【請求項11】
建材パネルと、
複数の発光素子を有し、前記建材パネルの一方の面側に形成され、面全体として均一色に発光する面発光パネルと、
前記面発光パネルに対し、前記建材パネルとは反対側の最表面に形成された、汚れ防止層とを有し、
前記建材パネル、前記面発光パネル及び前記汚れ防止層を樹脂層を用いた真空加熱ラミネート法により一体成形することを特徴とする屋外用発光建材パネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2013−112940(P2013−112940A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257623(P2011−257623)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】