説明

屋外設置型発電装置

【課題】発電源等に起因する騒音の吸音特性を確保しつつ、粉雪等の侵入防止構造として有利な構造をもつ屋外設置型発電装置を提供する。
【解決手段】屋外設置型発電装置は、エンジン式発電機または燃料電池で形成された発電源2と、換気ファン3と、発電室10内のガスを排気ガスとしてハウジング1外に排出させる排気通路4とを有する。排気通路4は、発電室10に連通すると共に曲走する吸音曲走通路50を形成する吸音ダクト5と、堰61と、堰通路62と、吸音曲走通路50から堰通路62に向けて排気ガスが流れる流れ方向に対して交差する方向(A7方向)に排気ガスを方向変換させる方向変換通路7と、方向変換通路7の先端側に設けられ且つ外気に露出する排気口8とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粉雪等の雪や雨水がハウジング内へ侵入することを防止する構造をもつ屋外設置型発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、外気導入通路を2ヵ所設け、1つはエンジン室の自然対流換気とし、他の1つはエンジン室強制冷却用とし、強制冷却用電動ファンの駆動部を冷却させ、モータの長寿命化を目的とした換気構造をもつコージェネレーション装置を開示する。特許文献2は、大型ファンを有するラジエータ冷却室に通じるようにエンジン室換気通路を設けることでエンジン室換気ファンの稼動条件を緩和し、消費電力の低減を目的とした換気構造をもつコージェネレーション装置を開示する。特許文献3は、内部装置用の収納壁及び外装壁の2重構造にて機器における防音性能を高め、かつ、2重壁の隙間を換気用外気を通す構造とした燃料電池エンクロージャー及び防音パネルを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−200951号公報
【特許文献2】特開2006−9678号公報
【特許文献3】特開2007−172946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
屋外設置型発電装置は屋外に設置される。従って、天候条件が激しいとき、粉雪等の雪や雨水が排気口からハウジング内へ侵入するおそれがあるが、特許文献1〜3に係る技術では、粉雪等の雪や雨水の侵入防止構造としては、必ずしも充分ではない。この場合、ハウジング内の部材や部品の劣化が水分により促進されるおそれがある。
【0005】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、エンジンまたは燃料電池で形成された発電源または換気ファンに起因する騒音の吸音特性を確保しつつ、粉雪等の雪や雨水の侵入防止構造として有利な構造をもつ屋外設置型発電装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る屋外設置型発電装置は、発電室および側壁を有するハウジングと、ハウジングの発電室に設けられたエンジン式発電機または燃料電池で形成された発電源と、ハウジング内に設けられた換気ファンと、ハウジング内に設けられ発電室のガスを排気ガスとしてハウジング外に排出させる排気通路とを具備しており、排気通路は、
発電室に連通すると共に曲走する吸音曲走通路を形成する吸音材料で形成された吸音ダクトと、吸音ダクトの下流に設けられた堰と、堰で形成された堰通路と、堰の下流に設けられ吸音曲走通路の出口開口から堰通路に向けて排気ガスが流れる流れ方向に対して交差する方向に排気ガスを方向変換させる方向変換通路と、方向変換通路の先端側に設けられ且つ外気に露出するようにハウジングの側壁に開口する排気口とを具備する。
【0007】
吸音ダクトは、複数回曲走する吸音曲走通路を形成する吸音材料で形成されている。このため換気ファンや屋外設置型発電装置等に起因する騒音の吸音特性が確保される。吸音材料としては、多孔質体、布および繊維集合体のうちの少なくとも1種が例示される。方向変換通路は、吸音曲走通路の出口開口から堰通路に向けて排気ガスが流れる流れ方向に対して交差する方向に排気ガスを方向変換させる。排気口は、方向変換通路の先端側に設けられており、外気に露出するようにハウジングの側壁に開口する。このため、激しい天候条件の影響により、外気の粉雪等の雪や雨水がハウジングの側壁の排気口から方向変換通路に侵入したときであっても、外気の粉雪等の雪や雨水は方向変換しなければ、堰通路に到達できない。このため粉雪等の雪や雨水が発電室に侵入することが抑制される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、発電装置に起因する騒音の吸音特性を確保しつつ、粉雪等の雪や雨水がハウジング内に侵入することを抑制する侵入防止構造として有利な構造をもつ屋外設置型発電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態1に係り、屋外設置型発電装置のハウジング内の構造を概念的に示す正面図である。
【図2】実施形態1に係り、屋外設置型発電装置の排気通路の構造を示す分解斜視図である。
【図3】実施形態1に係り、屋外設置型発電装置の吸音ダクトを示す分解斜視図である。
【図4】実施形態1に係り、屋外設置型発電装置の排気通路の構造を示す断面図である。
【図5】実施形態1に係り、屋外設置型発電装置の排気通路の構造を拡大して示す断面図である。
【図6】他の実施形態に係り、屋外設置型発電装置の排気通路の構造を拡大して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
好ましくは、吸音ダクトを形成する吸音材料は、吸音曲走通路に露出する表面において親水性または撥水性を有する。排気通路のうち発電室に相対的に近い領域は親水性とされ、排気通路のうち排気口に相対的に近い領域は疎水性とされている形態を採用できる。また、排気通路のうち発電室に相対的に近い領域は疎水性とされ、排気通路のうち排気口に相対的に近い領域は親水性とされている形態を採用できる。
【0011】
吸音曲走通路は2次元的または3次元的に曲走されていることが好ましい。曲走形態としては、Sの字状、Mの字状、Wの字状、Lの字状等が例示される。また、吸音ダクトを形成する吸音材料は、特に、親水性または撥水性を有していなくても良い。好ましくは、方向変換通路は、排気ガスを重力方向の下方に流すように、ハウジングの側壁の内壁面を用いて形成されている。好ましくは、方向変換通路は、ハウジングの排気口からハウジングの側壁の内壁面に沿って重力方向の上方に向けて延設されている。好ましくは、方向変換通路には、吸音材料で形成された吸音体が設けられており、吸音体は、方向変換通路に露出する表面において親水性または撥水性を有する。
【0012】
好ましくは、方向変換通路は、ハウジングの側壁と、側壁に対面する方向変換部材とで形成されている。この場合、方向変換部材の重力方向の長さ寸法をLAとし、方向変換部材のうち側壁に直交する方向の長さ寸法(方向変換部材のうち重力方向と直交する方向の寸法)をDAとするとき、LA/DAは5〜100の範囲内に設定されていることが好ましい。この場合、排気口から方向変換通路に侵入した粉雪等の雪、雨水は、方向変換通路を通過しにくくなる。
【0013】
(実施形態1)
以下、本発明の実施形態を図1〜図5を参照して説明する。この屋外設置型発電装置は屋外に設置されるものであり、エンジンで発電機を駆動させると共に、エンジンからの排熱を利用するコージェネシステムに使用される。この屋外設置型発電装置は、図1に示すように、エンジンルームである発電室10を有する角箱形状をなすハウジング1と、ハウジング1の発電室10に設けられた発電源2と、ハウジング1内に設けられた換気ファン3(図3参照)と、ハウジング1内に設けられ発電室10内の熱およびガス(主として空気)を排気ガスとしてハウジング1外に排出させる排気通路4とを有する。図1に示すように、ハウジング1は、鉛直方向に沿っている外装パネル12(側壁)と、外装パネル12に対向するように鉛直方向に沿っている外装パネル14(側壁)とを有する。外装パネル14の上部には外気導入口120が形成されている。発電源2は、ハウジング1の発電室10に配置されており、ガス燃料または液体燃料を空気で燃焼させて駆動するエンジン20と、ハウジング1の発電室10に配置されエンジン20の駆動軸で回転駆動される発電機22とで形成されている。エンジン20が駆動して発電機22が駆動すると、電気エネルギが生成される。
【0014】
図2は、エンジン20の排ガスを外気に放出させるための排気通路4を分解して示す。図2に示すように、排気通路4は、発電室10に連通すると共に曲走する吸音曲走通路50を形成する多孔質性の吸音材料(例えば発泡ウレタン樹脂等の多孔質体)で形成された吸音ダクト5と、吸音ダクト5の下流に設けられた堰61をもつ堰部材6と、堰部材6の堰61で形成された堰通路62と、堰61の下流に設けられ吸音曲走通路50の出口開口50pから堰通路62に向けて排気ガスが流れる流れ方向(矢印A5,A6方向)に対して交差する方向(矢印A7方向,重力方向の下方)に沿って排気ガスを方向変換させる方向変換通路7と、方向変換通路7の先端側(下端側)に設けられ且つ外気に露出するようにハウジング1の外装パネル12(側壁)に開口する排気口8とを有する。排気口8は、外装パネル12の下部12dにおいて開口しており、横方向(水平方向)に沿って並行に延びる複数の横長孔80と、各横長孔80の上方を覆うカバー部81とを有する。なお、横長孔80からハウジング1の内部に雪や雨水が侵入することを抑制するように、カバー部81は、外方に向かうにつれて下降傾斜する。排気口8の構造はこれに限定されず、縦長孔としても良いし、円形状としても良い。
【0015】
図3は吸音ダクト5を分解して示す。図3に示すように、吸音ダクト5は、筐体である金属又は樹脂製のダクトカバー51と、ダクトカバー51の内壁面に内張される多孔質の吸音材料(例えば発泡ウレタン等の多孔質体)で形成されたダクト側壁52と、多孔質の吸音材料(例えば発泡ウレタン等の多孔質体)で形成された傾斜面状の整風ガイド53をもつダクト天井部54とを有する。ダクト天井部54は、ダクト側壁52の上面開口52uに嵌合されて着脱可能に取り付けられる。ダクト天井部54を取り外せば、ダクト側壁52の上面開口52uが露出するため、ダクト側壁52の清掃やメンテナンス等に有利である。整風ガイド53は矢印A3の水平方向に対して上向きに傾斜する傾斜面を持っており、ガスの流れを円滑にする役割を有する。図3に示すように、ダクトカバー51は、カバー壁51a〜51d,底壁51eをもつ。ダクトカバー51は、換気ファン3に対面するように下方に開口するファン開口51iと、横側方に開口する出口開口51pとをもつ。ダクト側壁52は多孔質体である吸音材料で形成されている。ダクト側壁52は、複数の方向に曲走された吸音曲走通路50と、吸音曲走通路50に向けて突出する第1堰壁部55と、第1堰壁部55に対面しつつ吸音曲走通路50に向けて突出する第2堰壁部56と、堰壁部55,56に対面しつつ吸音曲走通路50に向けて突出する第3堰壁部57とを有する。吸音曲走通路50は、平面視でSの字形状に曲走するS字通路50sと、S字通路50sの入口側において換気ファン3に向けて下方に開口するようにダクトカバー51の入口開口50iに対面する下向きの入口開口50iと、S字通路50sの出口側において側方に開口するようにダクトカバー51の出口開口51pに対面する横向きの出口開口50pとを有する。
【0016】
従って、換気ファン3が回転駆動すると、熱気を有する発電室10のガスは、矢印A1方向,矢印A2方向に沿って入口開口50i,51iを上向きに流れ、傾斜面を持つ整風ガイドにより流路損失を最小限度に抑え、S字通路50s内を矢印A3方向,矢印A4方向,矢印A5方向に沿って曲走しつつ流れ、出口開口50pから排出される。このようにダクト側壁52内において排気ガスは複数回曲走されつつ三次元的に流れるため、ダクト側壁52のコンパクト化を図りつつもダクト側壁52における流れ距離を長く確保でき、吸音(減音も含む)に有利である。
【0017】
図3に示すように、第1堰壁部55、第2堰壁部56および第3堰壁部57は、吸音曲走通路50を形成しつつ、吸音曲走通路50において互いに対面するように異なる箇所に形成されている。従って、排気通路4を流れる排気ガスを複数回曲走でき、吸音ダクト5のコンパクト化を図りつつも、排気ガスの流れ距離を確保でき、吸音(減音を含む)に貢献できる。なお、図2から理解できるように、第1堰壁部55、第2堰壁部56および第3堰壁部57は、厚肉化されつつ、高さ方向(重力方向,矢印G方向)に沿って延設されており、この結果、吸音曲走通路50を流れる排気ガスの向きを強制的に変える作用と、多孔質性をもつダクト側壁52を補強する作用と吸音性を高める作用を併有する。
【0018】
図4および図5に示すように、方向変換通路7は、ハウジング1の側壁である外装パネル12の内壁面12iと、薄型の枠形状の方向変換部材70とで形成されている。図2に示すように、方向変換部材70は、外向きの鍔部71aを有する縦方向に延びる縦長の四角形状をなす枠体71と、枠体71を覆うように縦方向(重力方向,矢印G方向)に延びる縦長の縦長壁部72と、縦長壁部72の上側に形成された開口窓73とを有する。開口窓73は堰通路62に対面する。ここで、図4および図5に示すように、方向変換部材70の縦方向(重力方向)の長さをLAとし、方向変換部材70のうち外装パネル12(側壁)の高さ方向に直交する方向の長さ(方向変換部材70の幅寸法)をDAとするとき、LAはDAよりも遙かには長く設定されている。DAは、方向変換部材70のうち重力方向と直交する方向の寸法に相当する。方向変換部材70は高さ方向(重力方向)に沿って長く延びていることが好ましい。LA/DAとしては5〜100の範囲内、殊に5〜50の範囲内、6〜20の範囲内に設定されていることが好ましい。このように方向変換部材70で形成される方向変換通路7は、縦型の薄型通路とされていることが好ましい。排気口8から方向変換通路7に侵入した粉雪等の雪、雨水は、方向変換通路7を上向きに通過しにくくなるためである。
【0019】
ここで、排気口8から方向変換通路7に侵入した粉雪等の雪、雨水は、外装パネル12のうち最下段の横長孔80から外気に排出できるようになっている。ここで、方向変換部材70が縦長である理由は、外気の天候条件が激しい吹雪状態であっても、排気口8から侵入した外気の粉雪等の雪や雨水がハウジング1内の開口窓73および堰通路62に、ひいては吸音曲走通路50、更には、エンジンルームである発電室10に収容されているエンジン20および発電機22側に到達しにくくするようにすべく、流路距離を確保するためである。図4および図5に示すように、排気口8の下端8dから堰通路62の下端(堰61の上端の頂部61m)までの高さ寸法は、H1(LA>H1>DA)とされている。図4に示すように、方向変換部材70の開口窓73は堰通路62に対面する。なお、H1/DAは基本的にはLA/DAと同様の値にできる。
【0020】
図2から理解できるように、堰部材6は、エンジン20から排出された排気ガスが流れる方向(矢印A5,A6方向)において吸音ダクト5の下流に位置し、且つ、方向変換部材70の上流に位置して設けられている。堰部材6は、四角形状の堰枠60と、堰枠60の下辺部60dから頂部61mに向けて上向きに突出された堰61と、堰61の上方に位置すると共に横側方に連通するように開口する堰通路62とをもつ。堰61は、多孔質性をもつ吸音材料(例えば発泡樹脂または発泡金属等の発泡体、あるいは、布等の繊維集積体に代表される多孔質体)で形成されていることが好ましい。堰部材6は、吸音ダクト5の出口開口50p側に設けられており、出口開口50pに対面する。
【0021】
図4に示すように、方向変換通路7には、吸音材料(例えば発泡樹脂または発泡金属等の発泡体に代表される多孔質体)で形成された吸音体9が設けられている。吸音材料が多孔質体で形成されている場合には、多孔質体の気孔は連続気孔でも良いし独立気孔でも良い。多孔質体の表面が多孔性であれば、吸音性を高め得る。図4および図5に示すように、吸音体9は、方向変換通路7に露出するように、外装パネル12のうち外気に背向する内壁面12iに内張された第1吸音体9fと、方向変換部材70の縦長壁部72の内壁面72iに内張された第2吸音体9sと、第1吸音体9fと第2吸音体9sとの間に設けられた第3吸音体9tとを有する。このように方向変換部材70の内壁面70iは、開口窓73を除いて、吸音材料で被覆されている。ここで図4および図5に示すように、方向変換通路7は、ハウジング1の排気口8と堰通路62とを高さ方向(重力方向,矢印G方向)に沿って縦長に連通させている。よって方向変換通路7は、ハウジング1の外装パネル12(側壁)の内壁面12iと方向変換部材70の縦長壁部72の内壁面72iとに沿って、重力方向(矢印G方向)の上方に堰通路62に向けて延設されている。
【0022】
さて使用時には、燃料および燃焼用空気がエンジン20の燃焼室に供給され、エンジン20が駆動する。エンジン20の駆動により発電機22が駆動して発電が行われる。エンジン20から放出される熱気をもつ発電室10内の空気は、排気ガスとして、換気ファン3の作動により排気通路4を流れる。つまり、排気ガスは、入口開口50i、吸音曲走通路50、出口開口50p、堰通路62、開口窓73を流れ、更に、方向変換通路7を重力方向(矢印G方向)の下方に向けて流れ、ハウジング1の外装パネル12の排気口8から外気に放出される。この場合、矢印A1方向、矢印A2方向、矢印A3方向、矢印A4方向、矢印A5方向、矢印A6方向、矢印A7方向、矢印A8方向の順に流れる。堰通路62の出口断面積(最小流路横断面積)は吸音曲走通路50の最小流路横断面積と略同一とされていることが好ましい。堰通路62は方向変換通路7を介して外部に通じているため、流路抵抗を抑制しつつ音の漏れを抑制するためである。但しこれに限定されるものではなく、排気ガスが流れる流れ方向の上流から下流に向けて流路横断面積を適宜変化させても良い。
【0023】
本実施形態によれば、前述したように、吸音体9または吸音材料が排気通路4には設けられている。更に、吸音材料で形成された吸音ダクト5が設けられている。更に堰61は吸音材料で形成されている。このため、エンジン20、発電機22の作動音、換気ファン3の作動音を低減させるのに貢献できる。吸音曲走通路50は平面視でSの字形状に曲走されているため、コンパクト化を図りつつ、音の伝搬距離が確保され、上記した作動音を低減させるのに貢献できる。
【0024】
更に本実施形態によれば、図4から理解できるように、堰61の下流に設けられた方向変換通路7は、吸音曲走通路50の出口開口50pから堰通路62に向けて排気ガスが流れる流れ方向(矢印A5,A6方向)に対して交差する方向に沿って、重力方向(矢印G方向)の下方に向けて排気ガスを方向変換させる。更に、方向変換通路7の先端である下端側には排気口8が設けられている。ここで、天候条件が激しいときにおける使用時であっても、エンジン20が駆動しているときには、エンジン20からの排気ガスが排気通路4を流れ、ハウジング1の排気口8から放出されているため、外気に存在する粉雪等の雪や雨水が排気口8から排気通路4に侵入することが抑制される。
【0025】
しかしながら発電運転されておらず、エンジン20の駆動が停止している場合には、エンジン20からの排気ガスがハウジング1の排気口8から外気に放出されない。このため、外気天候条件が激しい吹雪や豪雨等のときには、激しい粉雪等の雪や雨水が排気口8からハウジング1内の方向変換通路7に侵入するおそれがある。エンジン20のアイドリング運転時においても、外気天候条件が激しい吹雪や豪雨等のときには、場合によっては、粉雪等の雪や雨水が排気口8からハウジング1内の方向変換通路7に侵入するおそれがある。このようなときであっても本実施形態によれば、排気口8から方向変換通路7に侵入した粉雪等の雪や雨水は、方向変換通路7において重力に抗して上方に(矢印A7方向と反対方向に)移動しない限り、堰通路62にまで侵入できない。これにより吸音曲走通路50ひいては発電室10のエンジン20側への粉雪等の雪や雨水の侵入が抑制される。更に前述したように方向変換通路7は薄型通路とされているため、粉雪等の雪や雨水は、排気口8から方向変換通路7に侵入したとしても、方向変換通路7おいて重力に抗して上方に移動しにくい。
【0026】
更に図4および図5に示すように、堰61は、方向変換通路7側に設けられた立設壁面61aと、吸音曲走通路50側に設けられた傾斜壁面61cとを備えている。立設壁面61aは、堰枠60の下辺部60dから重力方向(矢印G方向)に沿って上方に向けて、つまり鉛直方向の上向きに頂部61mまで突設されている。図4に示すように、傾斜壁面61cは、排気ガスの流れが進行する方向(矢印A5,A6方向)に沿って頂部61mまで昇り坂となるような傾斜とされている。このため、吸音曲走通路50側から排気口8へ流れる排気ガスの排出性が確保され、エンジン20から排出される排気ガスの換気性能が確保される。しかしながら、図5に示すように、堰61を構成する立設壁面61aは、堰枠60の下辺部60dから重力方向の上方に突設されており、鉛直方向に沿っているため、排気口8から排気通路4に侵入する粉雪等の雪や雨水、更には塵埃等の微小な侵入物に対して高い障害特性をもつ。このため、排気口8から吸音曲走通路50側へ向かう粉雪等の雪や雨水や塵埃等の侵入が効率よく抑制される。この場合、屋外設置型発電装置の耐久性の向上および長寿命化に貢献できる。なお立設壁面61aとしては、鉛直方向に限らず、図5における部位W1として示すように、傾斜壁面61cと同じ向きに傾斜していても良い。
【0027】
(実施形態2)
本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有するため、図1〜図5を準用する。以下、相違する部分を中心として説明する。排気通路4に設けられているダクト側壁52,吸音体9、堰61を構成する吸音材料は、水分を弾く撥水性を有する撥水性構造とされている。この場合、ダクト側壁52,吸音体9、堰61を構成する吸音材料自体が撥水性を有することにしても良い。あるいは、ダクト側壁52,吸音体9、堰61を構成する吸音材料の各表面に撥水皮膜が積層されている構造でも良い。一例として、フッ素系材料をコーティングした撥水皮膜を、ダクト側壁52,吸音体9、堰61のうちの表面に形成できる。このようにダクト側壁52,吸音体9、堰61を構成する吸音材料は、水を弾く撥水性を有する。撥水性は、水による濡れにくさであり、物体と水滴との接触角が大きいことをいう。一般的には、固体表面における水滴の接触角θが撥水性の指標になっており、一般的には接触角θが90°以上の場合は撥水性(疎水性)とされ、接触角が110°から150°であると高撥水性とされ、接触角が150°以上だと超撥水性とされる。本明細書における撥水性は高撥水性および超撥水性を含む。
【0028】
ところで、激しい天候条件のため、万一、屋外に対面する外装パネル12の排気口8から排気通路4に粉雪等の雪、雨水が侵入したとしても、排気通路4に侵入した粉雪等の雪や雨水は、水分として、ダクト側壁52,吸音体9、堰61を構成する吸音材料に吸収されず、排気通路4に水滴として滞留する可能性がある。撥水面における水滴は弾かれて転がり易く、移動し易い性質をもつ。このため、排気通路4の撥水面に水分が水滴として滞留した状態で、屋外設置型発電装置の使用時において、ハウジング1の発電室10から、熱をもつ排気ガスが排気通路4から排気口8へ排出されると、排気通路4に滞留する水分(水滴等)を排気通路4を介して外装パネル12の排気口8から外気に強制的に且つ簡単に放出させることができる。殊に、上記したように撥水性とされているため 、排気ガスの流れに沿って水滴を排気通路4に沿って移動させて排気口8から外気に放出させ易い。従って、ハウジング1内に搭載されている部材や機器が水分に起因する腐食等で損傷するおそれが軽減される。
【0029】
(実施形態3)
本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有するため、図1〜図5を準用する。以下、相違する部分を中心として説明する。吸音ダクト5のダクト側壁52を形成する吸音材料のうち少なくとも表面は、親水性構造とされており、吸音曲走通路50に露出する表面において親水性を有する。親水性とは、表面における水の接触角θが小さく、水がなじみ易いことをいう。一般的には、親水性は、水の接触角θが90°未満をいう。本実施形態によれば、排気通路4に設けられているダクト側壁52,吸音体9、吸音材料は、親水性を有するため、これらの表面には水滴が生成され難い。
【0030】
すなわち本実施形態によれば、排気通路4に設けられているダクト側壁52,吸音体9、堰61を形成する吸音材料は、親水性の多孔質体で形成されている。これらにおける吸水性を高めるためには、吸水可能なスポンジ状であることが好ましく、独立気孔よりも連続気孔の割合が高いことが好ましい。吸音材料のうちの少なくとも表面は多孔質であることが好ましい。
【0031】
激しい天候条件の関係で、万一、外装パネル12の排気口8から排気通路4に粉雪等の雪、雨水が侵入したとしても、排気通路4に侵入した粉雪等や雨水を、水分として、ダクト側壁52,吸音体9、堰61を構成する吸水可能な多質体で形成された吸音材料に吸収することができる。この場合、発電室10への水分の過剰侵入が抑制される。このため、屋外設置型発電装置の使用時には、粉雪等の雪、雨水を、水分として、ダクト側壁52,吸音体9、堰61を構成する吸音材料に吸収した状態で、ハウジング1の発電室10から、熱をもつ排気ガスが排気通路4を通過し、外装パネル12の排気口8から外気に放出される。このとき、ダクト側壁52,吸音体9、堰61を構成する吸音材料に吸収した水分を、排気通路4に流れる排気ガスの熱により良好に乾燥させることができる。乾燥させた水分を排気ガスと共に排気口8から外気に放出させる。このため水分が発電室10のエンジン20側に過剰に侵入することが抑制される。更に、ハウジング1に搭載されている部材や機器の腐食等による損傷を抑制することができる。加えて、吸水された水分の乾燥は気化潜熱(吸熱)を伴うため、排気通路4や発電室10付近の冷却性を高め、排気通路4および発電室10の過熱を抑制できる効果を期待できる。
【0032】
(実施形態4)
本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有するため、図1〜図5を準用する。以下、相違する部分を中心として説明する。排気通路4のうち発電室10に相対的に近い領域(排気通路4のうち下流領域)は、親水性とされている。排気通路4のうち排気口8に相対的に近い領域(排気通路4のうち上流領域)は、疎水性とされている。排気通路4のうち発電室10に相対的に近い領域は、排気通路4の全流路の長さを100と相対表示するとき、発電室10側から0から50の長さの領域、0から40の長さの領域が例示される。但し、これに限定されるものではない。
【0033】
本実施形態においては、吸音体9および堰61を構成する吸音材料自体(排気通路4のうち排気口8に相対的に近い領域)が撥水性を有することにしても良い。あるいは、吸音体9および堰61を構成する吸音材料の各表面に撥水皮膜が積層されていることにしても良い。但し、ダクト側壁52(排気通路4のうち発電室10に相対的に近い領域)の吸音材料については、親水性とし、吸水性をもたせるような多孔質体で形成しても良い。ダクト側壁52は方向変換通路7および堰通路62よりも発電室10に近い側に位置する。このため、水滴などの水分が発電室10に落下することを抑制すべく、発電室10に向かう水分をダクト側壁52によって吸水させた方が好ましいと考えられる。また、発電室10から排気口8に向かう排気ガスの温度については、発電室10に相対的に近い位置に存在するダクト側壁52の領域では相対的に高いため、高い乾燥力を有するためである。更に、水分の乾燥は気化潜熱(吸熱)を伴うため、発電室10付近の冷却性を高め、発電室10の過熱を抑制できる効果を期待できる。
【0034】
(実施形態5)
図6は実施形態5を示す。本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有する。以下、相違する部分を中心として説明する。ハウジング1の発電室10には、発電源として燃料電池28が配置されている。燃料電池28は、固体高分子型燃料電池でも良いし、酸化物型燃料電池でも良いし、リン塩型燃料電池でも良い。燃料電池28は低温型でも良いし、中温型でも良いし、高温型でも良い。燃料電池28のアノードにアノード流体供給通路28fからアノード流体(水素ガス、水素含有ガス等)が供給され、燃料電池28のカソードにカソード流体供給通路28cからカソード流体(酸素ガス、酸素含有ガス)が供給されると、燃料電池28は発電運転する。発電運転時に換気ファン3が駆動する。このため、ハウジング1の発電室10における熱および空気は、排気ガスとして、発電室10から吸音ダクト5の吸音曲走通路50に放出される。更に排気ガスは堰通路62、方向変換通路7を流れ、排気口8から外気に放出される。本実施形態によれば、排気通路4に設けられているダクト側壁52,吸音体9、堰61を形成する吸音材料としては、前述したように、親水性を有する構造でも良いし、吸水性を有する構造でも良いし、撥水性を有する構造でも良い。また本実施形態においても、吸音体9および堰61を構成する吸音材料自体の少なくとも表面が撥水性を有することにしても良いし、あるいは、吸音体9および堰61を構成する吸音材料の各表面に撥水皮膜が積層されていることにしてもよい。但し、発電室10に近いダクト側壁52の吸音材料のうちの少なくとも表面については、親水性とし、これらに吸水性をもたせるような多孔質体で形成しても良い。
【0035】
(その他)
本発明は上記し且つ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。堰61は多孔質の吸音材料で形成されているが、これに限らず、非孔質の金属、セラミックス、硬質樹脂で形成されていても良い。堰61は直立状でも良い。方向変換通路7には吸音体9f,9s,9tが設けられているが、場合によっては、方向変換通路7における吸音体9f,9s,9tは廃止されていても良い。吸音曲走通路はSの字状を含むように3次元的に曲走されているが、これに限らず、Mの字状、Nの字状、Wの字状、Vの字状、Lの字状、Zの字状等としても良い。多孔質体は吸音性を有するものの吸水性を有しないものでも良い。
【符号の説明】
【0036】
1はハウジング、12は外装パネル(側壁)、10は発電室、2は発電源、20はエンジン、22は発電機、28は燃料電池、3は換気ファン、4は排気通路、5は吸音ダクト、50は吸音曲走通路、51はダクトカバー、52はダクト側壁、53は整風ガイド、54はダクト天井部、55は第1堰壁部、56は第2堰壁部、6は堰部材、60は堰枠、61は堰、61aは立設壁面、61cは傾斜壁面、62は堰通路、7は方向変換通路、70は方向変換部材、72は縦長壁部、73は開口窓、8は排気口、9は吸音体、9fは第1吸音体、9sは第2吸音体を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電室および側壁を有するハウジングと、前記ハウジングの前記発電室に設けられたエンジン式発電機または燃料電池で形成された発電源と、前記ハウジング内に設けられた換気ファンと、前記ハウジング内に設けられ前記発電室のガスを排気ガスとして前記ハウジング外に排出させる排気通路とを具備しており、
前記排気通路は、
前記発電室に連通すると共に曲走する吸音曲走通路を形成する吸音材料で形成された吸音ダクトと、前記吸音ダクトの下流に設けられた堰と、前記堰で形成された堰通路と、前記堰の下流に設けられ前記吸音曲走通路の出口開口から前記堰通路に向けて排気ガスが流れる流れ方向に対して交差する方向に排気ガスを方向変換させる方向変換通路と、前記方向変換通路の先端側に設けられ且つ外気に露出するように前記ハウジングの前記側壁に開口する排気口とを具備する屋外設置型発電装置。
【請求項2】
請求項1において、前記吸音ダクトを形成する吸音材料は、前記吸音曲走通路に露出する表面において親水性または撥水性を有する屋外設置型発電装置。
【請求項3】
請求項1または2において、前記方向変換通路は、前記排気ガスを重力方向の下方に流すように前記ハウジングの前記側壁の内壁面を用いて形成されている屋外設置型発電装置。
【請求項4】
請求項1〜3のうちの一項において、前記方向変換通路には、前記吸音材料で形成された吸音体が設けられており、前記吸音体は、前記方向変換通路に露出する表面において親水性または撥水性を有する屋外設置型発電装置。
【請求項5】
請求項1または3において、前記排気通路のうち前記発電室に相対的に近い領域は親水性とされ、前記排気通路のうち前記排気口に相対的に近い領域は疎水性とされている屋外設置型発電装置。
【請求項6】
請求項1〜5のうちの一項において、前記方向変換通路は、前記ハウジングの前記側壁と、前記側壁に対面する方向変換部材とで形成されており、前記方向変換部材の重力方向の長さをLAとし、前記方向変換部材のうち前記側壁に直交する方向の長さをDAとするとき、LA/DAは5〜100の範囲内に設定されている屋外設置型発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−2097(P2012−2097A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−136092(P2010−136092)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)