屋根材の取付構造
【課題】施工が行いやすい屋根材の取付構造を提供する。
【解決手段】略平板状の屋根材本体1の水上側端部に屋根材本体1の表面側に突出する係止部5を設けると共に屋根材本体1の水下側端部に屋根材本体1の裏面側に突出する被係止部4を設けることによって屋根材Aが形成される。水の流れ方向で隣接する屋根材A、Aのうち、水上側の屋根材Aの被係止部4が水下側の屋根材Aの係止部5に係止される。水の流れ方向と直交する方向で隣接する屋根材A、Aのうち、一方の屋根材本体1の側端部が他方の屋根材本体1に重ねられて接続される。上記係止部5は断面略倒U字状に形成され、係止部5の内側に補強部材40が設けられる。
【解決手段】略平板状の屋根材本体1の水上側端部に屋根材本体1の表面側に突出する係止部5を設けると共に屋根材本体1の水下側端部に屋根材本体1の裏面側に突出する被係止部4を設けることによって屋根材Aが形成される。水の流れ方向で隣接する屋根材A、Aのうち、水上側の屋根材Aの被係止部4が水下側の屋根材Aの係止部5に係止される。水の流れ方向と直交する方向で隣接する屋根材A、Aのうち、一方の屋根材本体1の側端部が他方の屋根材本体1に重ねられて接続される。上記係止部5は断面略倒U字状に形成され、係止部5の内側に補強部材40が設けられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属屋根材などの屋根材の取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数枚の屋根材を屋根下地に縦横に敷設することにより屋根を形成することが行われているが、この場合、横方向(屋根の水流れ方向と直交する方向)で隣接する屋根材はその側端部同士を上下に重ねるようにして屋根の防水性を確保しようとしている。例えば、特許文献1に記載された屋根材Aは、図16に示すように、一方の側端部に略平板状のカバー部20を形成すると共に、他方の側端部に断面略波状の捨板部21を形成したものであり、屋根下地6の上に敷設した屋根材Aの捨板部21の上に、他の屋根材Aのカバー部20を被せるようにして、二枚の屋根材A、Aを横方向に隣接させて敷設するようにしている。しかし、上記の屋根材Aでは、防水上の観点からカバー部20と捨板部21とを一定の長さに形成し、カバー部20と捨板部21とを重ね合わせて屋根材Aを接続しているため、屋根下地6のけらば部分や降り棟部あるいは屋根下地6と二階部分の壁との境界部分(壁立上がり部)において、寸法調整のために屋根材を切断しなければならず、施工現場で屋根材の廃材が生じるおそれがあった。また、カバー部20を必ず捨板部21の上に被せるので、屋根材の敷設していく方向が屋根下地の左から右あるいは右から左のいずれか一方向に限定されてしまい、施工性が低下するおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−159066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本出願人は、両方の側端部に断面略波状の接続部を有する屋根材を提案している(特願2009−3473)。この場合、図17に示すように、横方向(水流れ方向と直交する方向)で隣接する屋根材Aの側端部の重ね合わせ長さを施工現場に応じて適宜調整することによって、寸法調整のために屋根材を切断する必要が無く、また、隣接する屋根材のうち、左右いずれの屋根材を上にし、いずれの屋根材を下にして重ね合わせるかは特に制限されないため、屋根材を敷設していく方向が一方向に限定されないものである。
【0005】
また、縦方向(水流れ方向)で隣接する屋根材Aは、被係止部4と係止部5との係止により接続している。被係止部4は、屋根材本体1の水下側端部(例えば、軒側端部)に形成されるものであって、屋根材本体1の水下側端部に延設される上記金属板の一部を屋根材本体1の水下側端部の裏面側に折り返すように屈曲することにより、屋根材本体1の横方向の略全長にわたって形成されている。また、係止部5は、屋根材本体1の水上側端部(例えば、棟側端部)に形成されるものであって、屋根材本体1の水上側端部に延設される上記金属板の一部を屋根材本体1の水上側端部の表面側に折り返すように屈曲することにより、屋根材本体1の横方向の略全長にわたって、上片5aと下片5bとからなる断面略倒U字状に形成されている。固定片10は、係止部5の水上側端部に突設される上記金属板の一部で形成されている。固定片10は屋根材本体1の横方向の略全長にわたって形成されており、縦方向の断面形状が略逆へ字状に形成されており、係止部5の上片5aから水上側に向かって突設されている。
【0006】
そして、縦方向で隣接する屋根材A、Aを接続するにあたっては、まず、水下側に配設される屋根材Aを屋根下地6に取り付ける。この場合、図18に示すように、吊子Bを用いて屋根材Aの取付強度を補強して固定する。吊子Bは断面略倒U字状の嵌合部30と、嵌合部30の上側端部から水上側に向かって突出する固定部31とで形成されている。このような吊子Bは嵌合部30を係止部5の表面側(外側)に嵌合すると共に固定片10の表面側(上側)に固定部31を配置し、固定部31及び固定片10を貫通するように、固定部31の上側からビス等の固定具32を屋根下地6にまで打入することによって、屋根材A及び吊子Bを屋根下地6に固定する。吊子Bは横方向に約900mmピッチで設けることができる。この後、水上側に配置される屋根材Aの被係止部4を上記の水下側の屋根材Aの係止部5に係止する。この場合、水上側の屋根材Aの被係止部4を水下側の屋根材Aの係止部5と屋根材本体1との間に差し込んで、係止部5の下側に被係止部4を係止する。吊子Bは被係止部4及び屋根材本体1の水下側端部で表面側(外側)が覆われた状態となる。
【0007】
このように吊子Bを設けた箇所は、係止部5がその外形に沿った嵌合部30で覆われて補強されるため、太陽光発電パネルなどの機能性部材を固定するための固定部材Cを取り付けることができる。
【0008】
しかし、上記の吊子Bは厚みが1.2mm程度で屋根材Aよりも厚く、しかも、係止部5の外面に突出して設けられているため、吊子Bで固定した屋根材Aの水上側に配置される複数枚の屋根材Aを横方向に接続する場合に、屋根材Aの側端縁部1aが吊子Bに当たって干渉し、屋根材Aの施工が行いにくいという問題があった。
【0009】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、施工が行いやすい屋根材の取付構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の屋根材の取付構造は、略平板状の屋根材本体1の水上側端部に屋根材本体1の表面側に突出する係止部5を設けると共に屋根材本体1の水下側端部に屋根材本体1の裏面側に突出する被係止部4を設けることによって屋根材Aが形成され、水の流れ方向で隣接する屋根材A、Aのうち、水上側の屋根材Aの被係止部4が水下側の屋根材Aの係止部5に係止され、水の流れ方向と直交する方向で隣接する屋根材A、Aのうち、一方の屋根材本体1の側端部が他方の屋根材本体1に重ねられて接続される屋根材Aの取付構造であって、上記係止部5は断面略倒U字状に形成され、係止部5の内側に補強部材40が設けられて成ることを特徴とするものである。
【0011】
本発明は、上記補強部材40は屋根下地6に固定されるのが好ましい。
【0012】
本発明は、屋根下地6の棟部に最も近い屋根材Aの水上側端部に、屋根材本体1に表面に対して略垂直に立ち上げた防水部41が形成され、防水部41よりも水下側において、屋根材本体1の表面にパッキン42が設けられるのが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、係止部5の外面に補強部材40が突出しないようにすることができ、水の流れ方向と直交する方向で隣接する屋根材A、Aを接続するにあたって、水上側の屋根材Aの被係止部4や側端縁部1aが補強部材40に当たらなくなって、施工が行いやすくなるものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示す一部の断面図である。
【図2】同上の屋根材の一例を示す斜視図である。
【図3】同上の屋根材の接続状態の一例を示す斜視図である。
【図4】同上の屋根材の接続状態の一例を示し、(a)(b)は一部の断面図である。
【図5】同上の施工手順の一例を示し、(a)〜(d)は一部の断面図である。
【図6】同上の屋根材の施工状態の一例を示す概略図である。
【図7】同上の屋根材の施工状態の一例を示し、(a)は断面図、(b)(c)は斜視図である。
【図8】同上の棟部の一例を示す断面図である。
【図9】同上の棟下地部材の一例を示し、(a)(b)は側面図、(c)は接続状態を示す平面図である。
【図10】同上の棟下地部材の他例を示し、(a)(b)は側面図である。
【図11】同上の棟部の他例を示す断面図である。
【図12】同上の屋根材の接続状態の一例を示し、(a)(b)は一部の断面図である。
【図13】同上の屋根材の接続状態の他例を示す一部の断面図である。
【図14】同上の施工手順の他例を示し、(a)〜(d)は一部の断面図である。
【図15】同上の他の実施の形態の一例を示し、(a)は一部の断面図、(b)は補強部材の平面図、(c)は補強部材の側面図である。
【図16】従来例を示す一部の断面図である。
【図17】先行例の屋根材の接続状態を示す斜視図である。
【図18】先行例の固定部材を取り付けた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
【0016】
本発明で用いる屋根材Aは、金属板をロール成形加工などで加工して所望の形状に形成することができる。金属板としては、例えば、厚み0.3〜0.5mmのものを好適に用いることができ、また、金属板の種類としては、塗装鋼板や亜鉛めっき鋼板、ガルバリウム鋼板(登録商標)などの各種のものを用いることができる。尚、製造については、従来ではロール成形機で対応するしかなかったが、本発明で用いる屋根材AはR加工(曲面加工)がほとんどないためベンダー加工機でも対応でき、また、端部加工はヘミング曲げ加工及びプレス加工で対応できる。
【0017】
本発明で用いる屋根材Aは、図2に示すように、左右対称(線対称)に形成されるものであって、屋根材本体1と被係止部4と係止部5及び固定片10などを備えて形成されている。
【0018】
屋根材本体1は横方向(屋根の水流れ方向と直交する方向)に長く形成されており、横方向の長さ寸法L1は、例えば、2000mm程度の定尺とすることができ、また、屋根材本体1の縦方向(屋根の水流れ方向)の働き幅L2は、例えば、200〜280mmとすることができ、好ましくは250mm程度とすることができる。屋根材本体1の両方の側端部には複数の突起部2が略平行に形成されている。突起部2はリブ加工などにより屋根材本体1の表面で開口する断面略V字状の溝で形成することができ、屋根材本体1の裏面に突出して屋根材本体1の縦方向の略全長にわたって形成されている。突起部2は、例えば、幅4〜10mm、表面からの深さ0.5〜1.5mm、長さ180〜280mmとすることができる。突起部2は屋根材本体1の側端縁部1aから幅寸法L3=100〜200mmの範囲に形成するのが好ましい。尚、突起部2は屋根材本体1の表面に突出して形成されていてもよく、また、屋根材本体1の表面に突出する突起部2と裏面に突出する突起部2の両方を形成しても良い。屋根材本体1の側端縁部1aは折り曲げ加工し、防錆・剛性を向上させるためにエッジを外部から見えにくくするようにしている。
【0019】
また、屋根材本体1には位置決め部3が形成されている。位置決め部3は、リブ加工などにより屋根材本体1の裏面で開口する断面略逆V字状に形成されており、屋根材本体1の表面に突出して屋根材本体1の縦方向の略全長にわたって形成されている。また、位置決め部3は屋根材本体1の両側部に一個ずつあるいは複数個ずつ設けることができる。位置決め部3を屋根材本体1の両側部に一個ずつ設ける場合は、屋根材本体1の側端縁部1aから所定の寸法の位置に形成することができ、例えば、屋根材本体1の側端縁部1aから100mmの位置に位置決め部3を形成することができる。また、位置決め部3を屋根材本体1の両側部に複数個ずつ設ける場合は、屋根材本体1の側端縁部1aから一定の間隔で形成することができ、例えば、屋根材本体1の側端縁部1aから100mmの間隔で位置決め部3を形成することができる。尚、位置決め部3は視認できるものであればどのような形状や位置に形成されていても良い。
【0020】
被係止部4は、屋根材本体1の水下側端部(例えば、軒側端部)に形成されるものであって、屋根材本体1の水下側端部に延設される上記金属板の一部を屋根材本体1の水下側端部の裏面側に折り返すように屈曲することにより、屋根材本体1の横方向の略全長にわたって形成することができる。
【0021】
係止部5は、屋根材本体1の水上側端部(例えば、棟側端部)に形成されるものであって、屋根材本体1の水上側端部に延設される上記金属板の一部を屋根材本体1の水上側端部の表面側に折り返すように屈曲することにより、屋根材本体1の横方向の略全長にわたって、上片5aと下片5bとからなる断面略倒U字状に形成することができる。従って、係止部5は屋根材本体1の上方において、屋根材本体1の水上側端部から水下側に向かって突出して形成され、係止部5の水下側端部が閉塞され、係止部5の水上側が開放されるような断面略倒U字状に形成されている。
【0022】
固定片10は、係止部5の水上側端部に突設される上記金属板の一部で形成することができる。固定片10は屋根材本体1の横方向の略全長にわたって形成されており、縦方向の断面形状が略逆へ字状に形成されており、係止部5の上片5aから水上側に向かって突設されている。
【0023】
そして、上記の屋根材Aはその複数枚を野地板などの屋根下地6の上に縦横に敷設するものであり、これにより、屋根を形成することができる。この場合、隣接して敷設されて屋根材A、Aは取り付け強度の確保や防水性の向上のために接続されている。
【0024】
図3に示すように、横方向で隣接する屋根材A、Aは屋根材本体1の側端部同士を上下に重ね合わせたり、あるいは一方の屋根材Aの屋根材本体1の側端部を他方の屋根材Aの屋根材本体1と上下に重ね合わせたりすることにより接続する。ここで、屋根材Aの縦方向の断面形状は横方向の全長にわたって略一定であるため、重ね合わせ寸法は任意に設定可能であり、防水性能を確保するために、屋根材本体1の側端縁部1aから100mm以上重ね合わせることが好ましいが、屋根の各部分の納めの寸法調整に応じて重ね合わせ寸法を変えることができる。尚、重ね合わせる寸法の上限は特に設定されないが、あまりに大きいと屋根材Aに無駄な部分が増加してしまうので、重ね合わせる寸法は屋根材本体1の側端縁部1aから横寸法の半分以下とするのが好ましく、より好ましくは200mm以下にするのがよい。また、屋根材Aは左右対称であるために、横方向で隣接する屋根材A、Aの左右のどちらも上に重ねることが可能であり、屋根下地6の横方向の左右何れの方向からでも順次敷設していくことができる。
【0025】
そして、上下に重なった屋根材A、Aの間には突起部2により隙間Sを設けることができる。すなわち、図4(a)に示すように、下側の屋根材Aの屋根材本体1の表面の平坦部分に、上側の屋根材Aに設けた突起部2が載置することにより、下側の屋根材Aの屋根材本体1の表面と上側の屋根材Aの屋根材本体1の裏面との間に隙間Sを形成することができる。通常、雨水は屋根材Aの表面を流れ、隙間Sには雨水は浸入しないが、万が一、横方向で隣接する屋根材A、Aの重ね合わせ部分において、上側の屋根材Aの下に雨水が浸入した場合でも、隙間Sを通じて雨水の排水を行うことができる。従って、確実な隙間Sの形成のため、上下に重なった屋根材A、Aの突起部2同士は重ならない方が好ましい。尚、突起部2が屋根材本体1の表面に突出している場合は、下側の屋根材Aの屋根材本体1に設けた突起部2の上端に、上側の屋根材Aの屋根材本体1の裏面の平坦部分が載置することにより、上記と同様の隙間Sを形成することができる。また、縦方向で隣接する屋根材A、Aはその一部を上下に重ね合わせることにより接続する。この場合、水下側(例えば、軒側)に敷設された屋根材Aの係止部5に水上側(例えば、棟側)に敷設された屋根材Aの被係止部4を係止する。
【0026】
ここで、横方向及び縦方向の屋根材A、Aの接続について詳述する。まず、係止部5を上方に伸長した状態で屋根材Aを屋根下地6に載置し、ビスなどの固定具11を固定片10及び屋根下地6に打ち込んで固定片10を固定する。このように固定片10を固定することにより、係止部5を上下に収縮して上下寸法(厚み)を小さくした状態で形状を固定(確定)することができる。ここで、補強部材40も屋根下地6に固定される。補強部材40は金属等で形成され、平板状の固定部40aと、固定部40aの水下側端部から上方へ略垂直に突出する断面略逆L字状の上片支持部40bと、上片支持部40bの水下側端部から斜め上方に突出する下片補強部40cとを備えてピース状に形成されている。そして、補強部材40は、係止部5の内側、すなわち、係止部5の水上側から上片5aと下片5bとの間に、上片支持部40bと下片補強部40cとを挿入し、固定部40aを屋根材Aの固定片10の下側に配置するようにして配設される。ここで、下片補強部40cは下片5bの上面に沿わせて配置されており、これにより、下片5bを下片補強部40cで補強することができる。また、上片支持部40bは上片5aの直下に位置しており、上片5aが下方へ変形した場合に当たって支持するものである。固定部40aは固定片10と共に固定具11が打入されて屋根下地6に固定される。補強部材40は屋根材Aの横方向に例えば900mmピッチで設けることができる。
【0027】
次に、固定した屋根材Aに別の屋根材Aを横方向に並べて載置する。このとき、上記のように、隣接する屋根材A、Aは横方向にずらした状態で上下に重ね合わせることにより接続する。また、固定した屋根材Aの係止部5が新たに配置する屋根材Aの係止部5の上片5aと下片5bとの間に水上側から差し込まれることにより、図5(a)に示すように、固定した屋根材Aの係止部5の表面に新たに配置する方の屋根材Aの係止部5を被せるようにし、また、固定した屋根材Aの固定片10の表面に新たに配置する方の屋根材Aの固定片10を被せるようにする。次に、図5(b)に示すように、新たに配置した屋根材Aの固定片10と、固定した屋根材Aの固定片10とに固定具11を打ち込むことによって、新たに配置した屋根材Aの固定片10を固定する。そして、固定した屋根材Aの係止部5の表面に新たに配置する方の屋根材Aの係止部5を被せる際に、補強部材40が係止部5の表面に突出していないため、被せやすくなるものである。
【0028】
このようにして横一列に複数枚の屋根材A、A…を敷設した後、これら敷設した屋根材Aの水上側に他の複数枚の屋根材A、A…を横一列に順次敷設していく。このとき、図5(c)に示すように、水上側の屋根材Aの被係止部4を水下側の屋根材(上側に被せた屋根材)Aの屋根材本体1と係止部5との間に挿入し、挿入した被係止部4を係止部5の下面に係止する。このとき、補強部材40が係止部5の表面に突出していないため、被係止部4が屋根材本体1と係止部5との間に挿入しやすくなるものである。この後、図5(d)に示すように、さらに他の水上側の屋根材Aの被係止部4を上記水上側の屋根材Aの被係止部4と水下側の屋根材Aの屋根材本体1との間に挿入することによって水下側の屋根材Aの係止部5に係止する。このように、縦方向と横方向に四枚の屋根材Aが隣接する箇所では、最終的に二つの被係止部4、4と二つの係止部5、5とが重なった状態となる。このようにして複数枚の屋根材Aを縦横に敷設することによって、屋根を形成することができる。
【0029】
そして、本発明の屋根材Aの取付構造では、横方向に隣接する屋根材A、Aを上下に重ねるにあたって、位置決め部3をガイド(目安)にする。例えば、図4(a)に示すように、横方向に隣接する屋根材A、Aのうち、一方の屋根材Aに設けた位置決め部3と、他方の屋根材Aの側端縁部1aとを重ね合わせるようにする。このように位置決め部3を目安にして横方向に隣接する屋根材A、Aの重ね合わせ位置を調整することができ、これにより、横方向に隣接する屋根材A、Aにおいて、上に重ねた屋根材Aの屋根材本体1の側端縁部1aと下に位置する屋根材1の屋根材本体1の表面との境界線(目地)Lを屋根全体で規則的に揃えやすくなる。従って、例えば、図6に示すように、縦方向に隣接する屋根材A、Aの上記境界線Lが一直線に並ぶように、横方向に隣接する屋根材A、Aを重ね合わせて接続することにより、屋根に不規則な目地が形成されにくくなって、屋根の外観が低下しにくくなるものである。
【0030】
また、屋根材本体1の両方の側端部に複数個ずつ位置決め部3を形成した場合は、図4(b)に示すように、横方向に隣接する屋根材A、Aのうち、一方の屋根材Aに設けた位置決め部3と、他方の屋根材Aの側端縁部1aとを重ね合わせると共にその他の残りの位置決め部3同士を重ね合わせるようにすることができる。尚、屋根材本体1の側端縁部1aは、平面視において、突起部2とは近似した外観とするために、斜め下方に向かって傾斜するように屈曲されている。従って、上記境界線Lと同様の外観が突起部2で発現されて境界線Lが目立たないようにすることができる。
【0031】
本発明の屋根材Aは被係止部4や係止部5に屋根材本体1の表面に対して垂直となる部位がないため、屋根材Aをその側端部が上方に突出するように略直角に容易に折り曲げることができる。従って、屋根下地6と立ち上がり壁との境界部分の納め構造において、屋根材Aの側端部を上方へ略直角に折り曲げて立ち上がり壁の表面に沿わせると共に隣接する屋根材A、Aの重ね合わせ寸法を調整することにより、屋根材Aを切断することが無くなり、施工現場での廃材の発生を極力少なくすることができる。また、本発明は上記のように折り曲げやすい形状であるので、切断することなく、屋根下地6の表面に沿わせて降り棟に敷設することができる。すなわち、屋根下地6の長面6aと短面6bとが降り棟6cを介して隣接する場合、まず、図7(b)に示すように、長面6aに複数枚の屋根材A、A…を横方向及び軒側から棟側に向かって敷設していくが、最も短面6bに近い部分に敷設した屋根材Aの短面6b側の側端部を折り曲げて短面6bの表面に沿わせて配置するようにする。次に、図7(c)に示すように、短面6bに複数枚の屋根材A、A…を横方向及び軒側から棟側に向かって敷設していくが、最も長面6aに近い部分に敷設した屋根材Aの長面6a側の側端部を折り曲げて、長面6aに敷設した屋根材Aの表面に沿わせて配置するようにする。この後、図7(a)に示すように、断面略へ字状のカバー材13を降り棟6c及び棟6dに取り付けることにより、屋根材Aを施工することができる。そして、図7(a)に示すように、屋根下地と立ち上がり壁との境界部分に施工する場合と同様に、屋根材Aを切断することなく、重ね合わせ寸法を調整して納めることができ、施工現場での廃材の発生を極力少なくすることができる。また、図7(c)に示すように、本発明の屋根材Aは短面6bに施工する場合、軒側から棟側に葺き上げていくにつれて、重ね合わせ部分K(点々模様で示す)の寸法が長くなっていくが、長面6aに施工する場合は重ね合わせ部分Kの寸法が一定で切断もすることなく納めることができる。
【0032】
屋根材Aは、施工現場ではなく工場等で予め屋根の形状に合わせて折り曲げ加工しておくことができる。屋根材Aを施工する屋根下地6は、図面等に記載された設計寸法と、施工現場で実際に測定した実寸法とに誤差があり、従来では、実寸法に合わせて施工現場で屋根材Aを加工しなければならないため、工場等で予め屋根材Aを加工しておくことは難しい。しかし、本発明では、横方向で隣接する屋根材A、Aを重ね合わせて施工するので、重ね合わせ寸法を調整することによって、上記の誤差を吸収することができる。従って、設計寸法に合わせて工場等で予め屋根材Aを加工してプレカット品とすることができ、施工時間の大幅な短縮を図ることができると共に施工者の技術に頼ることなく精度良く屋根材Aを仕上げることができる。
【0033】
そして、上記の屋根材Aでは、隣接する屋根材A、Aの重ね合わせ寸法(葺き足)を自由自在に調整できるため、平面部からけらば部、降り棟部、壁立ち上げ部において、寸法調整のため屋根材本体1を切断することなく施工できる。従って、現場において、寸法合わせにこだわることなく端部曲げ加工した後、重ね合わせ寸法を調整することで、大幅な施工性向上が図れるものである。また、本発明では、切断作業がなくなるので、現場で廃材を極力出さない工法となるものである。短尺品の屋根材Aの場合、切断が必要となるが、これも工場で長さ調整しておけば現場では切断の必要がなくなり、廃材無しを可能とできるものである。また、けらば部、降り棟部、壁立ち上げ部で使用される屋根材Aは、事前に加工し現地納入することで現地作業の手間を省き、更に施工性向上を図ることができる。また、本発明の屋根材Aはシンプルでフラットに近い形状のため、棟部において、屋根材Aを棟ラインを支点に曲げることで、切断することなく施工できる。また、本発明の屋根材Aの形状はシンプルなので、板金作業(不要部切り落とし)後に加工する必要がなくなり作業性の向上を図ることができるものである。また、本発明の屋根材Aの長さを一定としても、現場採寸が必要なく屋根面積と重ね合わせ代分を考慮した数量を発注することで対応することができ、見積もり積算作業も容易となる。また、本発明の屋根材Aは左右対称であり、左右どちらからでも葺くことができ、しかも、半分に切断した場合でもけらば部や降り棟部に納めることで、切断面を表面に出すことなく納めることができ、重ね代を余分に取ることなく、効率よく葺くことができるものである。また、降り棟部や棟部の納め部材(カバー材)もへの字のシンプルな形状となり、交差部や継ぎ部の納めもそのまま重ね、屋根材Aと同じく長さ調整できるため、現場加工を極力少なくすることができるものである。
【0034】
また、図1に示すように、補強部材40を設けた箇所では、太陽光発電パネルなどの機能性部材を固定するための固定部材Cを取り付けることができる。固定部材Cは、ベース部60と挟持片61とを備えて断面略C字状に形成されており、ベース部60と挟持片61とを上下に貫くボルトなどの締結具62を設けると共に締結具62には挟持片61の上側においてナット等の螺着具63が螺着されている。そして、被係止部4が差し込まれた屋根材本体1と係止部5との間に、さらにベース部60の先端を差し込むと共に上記被係止部4を差し込んだ水上側の屋根材Aの屋根材本体1の上面に挟持片61を当接し、螺着具63を締結具62に螺合していくことにより、ベース部60と挟持片61で被係止部4と係止部5及び補強部材40とを挟持する。これにより、固定部材Cを屋根材Aに取り付けることができる。そして、係止部5の内側に補強部材40が設けられているために、係止部5や被係止部4の変形や破損が生じにくくなり、固定部材Cを安定して取り付けることができると共に防水性が低下しにくくなるものである。従って、機能性部材の取付強度が向上するものである。
【0035】
図8は、屋根の棟部の断面図を示す。符号50は棟木、符号51は垂木であって、垂木51の上に野地板等の屋根下地6が設けられている。棟部の頂部の両側には、屋根の最も水上側(棟側)に位置する屋根材A、Aが配置されている。この屋根材A、Aの水上側端部には、屋根材本体1の表面(上面)に対して略垂直に上方に向いて突出する防水部41が横方向の全長にわたって設けられている。この防水部41は、屋根材Aの係止部5よりも水上側部分を除去し、この後、屋根材本体1の水上側端部を屈曲することにより形成することができる。また、この屋根材Aの防水部41の水下側において屋根材本体1の表面には防水用のパッキン42が設けられている。パッキン42はEPDMなどのゴム製や樹脂製で形成され、屋根材Aの横方向の全長にわたって設けられている。このようにパッキン42と防水部41により二重の防水ラインを簡単に形成することができる。
【0036】
棟部の頂部の両側には棟下地部材52が設けられている。棟下地部材52は鋼材等の金属製であって、図9(a)に示すように、押さえ片52aと、押さえ片52aの上端から水上側に向かって突出する包み支持片52bと、包み支持片52bの水上側端部から下方に向かって突出する断面略L字状の固着部52cとを備えて形成されている。押さえ片52aは上記パッキン42を上から押さえて圧縮するものであり、これにより、パッキン42を屋根材Aの表面の形状に合わせて変形させて密着させ、隙間が生じないようにすることができる。また、包み支持片52bはこの上に棟包み53を載置して支持するものである。固着部52cは棟部の頂部近傍で屋根下地6に固着されるものである。ここで、屋根材Aの防水部41は押さえ片52aと固着部52cの間に位置するように配置される。また、棟下地部材52は、棟部の長手方向と平行に、屋根下地6の横方向の全長にわたって設けられるが、複数の棟下地部材52を横方向に連結することができる。この場合、図9(b)に示すように、棟下地部材52と略同形の断面形状を有する連結部材54を用いる。連結部材54は棟下地部材52の下側に嵌め込んで、図9(c)に示すように、隣り合う棟下地部材52、52間にわたって配置され、各棟下地部材52に固着される。そして、棟下地部材52と連結部材54との重ね代を調整することにより、連結される棟下地部材52の全体の長さを調整することができ、施工現場で切断などの加工をすることなく施工することができる。また、防水部41と固着部52cとの間に20mm程度の間隔を設けることにより、屋根材Aの棟部側(水上側)の施工精度が低くても、防水部41と固着部52cとの間で寸法調整することができて納めることが可能となる。
【0037】
棟部にはその頂部を跨るように配置して上方を覆う棟包み53が配設される。棟包み53はその頂部から水下側に向かって下り傾斜する一対の傾斜片53aと、各傾斜片53aの先端に裏面側に向かって略垂直に突出する取付片53bと、取付片53bの下端から水下側に向かって突出する水切り片53cとを備えて形成されている。傾斜片53aは両方の棟下地部材52の包み支持片52bに載置され、取付片53bは押さえ片52aの外面にビス等の固定具で取り付けられている。また、水切り片53cの先端はパッキン42よりも水下側に突出してパッキン42の上方に配置されており、防水性を高くすることができる。
【0038】
図10に棟下地部材52の他例を示す。図10(a)に示す棟下地部材52は、押さえ片52aと、押さえ片52aの上端から水上側に向かって突出する包み支持片52bと、包み支持片52bの水上側端部から下方に向かって突出する支え片52dとを備えることによって、下面が開口する断面略コ字状に形成されている。図10(b)に示す棟下地部材52は、図10(a)において押さえ片52aの下端から支え片52dの方に向かって突出するパッキン取付片52eが設けられている。図10(a)に示す棟下地部材52は、パッキン42と別体に形成されているが(パッキン分割型)、図10(b)に示す棟下地部材52は、パッキン取付片52eの下面にパッキン42が施工前に取り付けられているもの(パッキン一体型)である。パッキン分割型よりパッキン一体型の方が施工が簡単に行えるものである。
【0039】
図11に示すように、図10(a)(b)に示す棟下地部材52も上記と同様に棟部の頂部の両側に、棟部の長手方向と平行に、屋根下地6の横方向の全長にわたって設けられて施工されるが、この場合、包み支持片52bを厚み方向(上下方向)で貫通するビスなどの固定具55で屋根下地6に棟下地部材52を固定することができる(固定具55で屋根材Aを貫通することも可能)。図8に示す棟下地部材52では、固着部52cが断面略L字状に形成されているため、防水部41と固着部52cとの間で寸法調整が最大でも40mm程度であるが、図10(a)(b)のものでは、固着部52が形成されていないため、防水部41と支え片52dとの間で寸法調整が最大で約100mm程度確保することができ、屋根材Aの棟部側(水上側)の施工精度が低くても容易に納めることが可能となる。
【0040】
本発明において、図12(a)に示すように、被係止部4に複数の接触部4a、4bを設けることができる。一つの接触部4aは被係止部4の先端で形成することができる。また、もう一つの接触部4bは被係止部4の略中央部を横方向の全長にわたって下方に向かって凸曲するように屈曲し、この屈曲部分の先端で形成することができる。また、係止部5の下片5bの基部(屋根材本体1に近い方の端部)には横方向の全長にわたって、下面に開口する断面略逆V字状の係止溝5cが形成されている。
【0041】
そして、上記と同様に、屋根材本体1と係止部5の下片5bとの間に被係止部4を上下に少し弾性変形させながら差し込んで係止部5と被係止部4とを係止するが、被係止部4の先端側の接触部4aは下片5bの係止溝5cに嵌め込まれて係止させ、被係止部4の略中央部の接触部4bは屋根材本体1の表面に接触させる。このように接触部4aの下片5bへの接触部分と、接触部4bの屋根材本体1への接触部分により、縦方向で隣接する屋根材A、Aの接続部分に、複数の横方向に長い防水ラインを形成することができ、防水性を高めることができるものである。また、被係止部4は断面略逆く字状に屈曲しているので、バネ性を有するものであり、下片5bへの接触部4aの接触と屋根材本体1への接触部4bの接触とを被係止部4の弾性力により強くすることができ、防水ラインを確実に形成することができると共に係止部5と被係止部4の係止を強固にすることができる。
【0042】
また、図12(b)に示すように、屋根材本体1と係止部5の下片5bとの間に被係止部4を差し込んだ後、被係止部4をさらに奥に深く差し込むことができる。この場合、被係止部4の先端側の接触部4aは係止溝5cとの係止から外れるが、その接触部4aは係止溝5cの奥側で下片5bに当接し、防水ラインを形成することができ、防水性を低下させないようにすることができる。本発明では、図5(d)に示すように、二つの係止部5と二つの被係止部4とが重なり合う部分が存在するが、上記のように屋根材本体1と係止部5の下片5bとの間に被係止部4を差し込んだ後、この被係止部4をさらに奥に深く差し込むことができるので、一つの被係止部4を最初に奥深く差し込んだ後に、次の被係止部4を屋根材本体1と上記差し込み後の被係止部4との間に差し込むようにすることができ、二つの被係止部4を重ね合わせて施工しやすくなるものである。尚、二つの被係止部4を重ね合わせる部分では、二つの被係止部4とも係止溝5cには係止されない。
【0043】
また、本発明において、図13に示すように、図12のものとは形状の異なる被係止部4を形成することができる。この被係止部4に複数の接触部4a、4bを設けることができる。一つの接触部4aは被係止部4の先端で形成することができる。また、もう一つの接触部4bは被係止部4の基部で形成することができる。被係止部4は接触部4bから少し斜め下方に下り傾斜するように形成されている。そして、上記と同様に、屋根材本体1と係止部5の下片5bとの間に被係止部4を上下に少し弾性変形させながら差し込んで係止部5と被係止部4とを係止するが、被係止部4の先端側の接触部4aは屋根材本体1の表面に接触させ、被係止部4の基部の接触部4bはその上面を係止部5の下片5bの先端部の下面に接触させる。このように接触部4aの屋根材本体1への接触部分と、接触部4bの下片5bへの接触部分により、縦方向で隣接する屋根材A、Aの接続部分に、複数の横方向に長い防水ラインを形成することができ、防水性を高めることができるものである。また、被係止部4は断面略倒く字状に屈曲しているので、バネ性を有するものであり、屋根材本体1への接触部4aの接触と下片5bへの接触部4bの接触とを被係止部4の弾性力により強くすることができ、防水ラインを確実に形成することができると共に係止部5と被係止部4の係止を強固にすることができる。
【0044】
図13に示す係止部5と被係止部4とを有する屋根材A、Aも上記の図5と同様にして縦横に接続することができる。まず、係止部5を上方に伸長した状態で屋根材Aを屋根下地6に載置し、ビスなどの固定具11を固定片10及び屋根下地6に打ち込んで固定片10を固定する。このように固定片10を固定することにより、係止部5を上下に収縮して上下寸法(厚み)を小さくした状態で形状を固定(確定)することができる。次に、固定した屋根材Aに別の屋根材Aを横方向に並べて載置する。このとき、上記のように、隣接する屋根材A、Aは横方向にずらした状態で上下に重ね合わせることにより接続する。また、図14(a)に示すように、固定した屋根材Aの係止部5の表面に新たに配置する方の屋根材Aの係止部5を被せるようにし、また、固定した屋根材Aの固定片10の表面に新たに配置する方の屋根材Aの固定片10を被せるようにする。次に、図14(b)に示すように、新たに配置した屋根材Aの固定片10と、固定した屋根材Aの固定片10とに固定具11を打ち込むことによって、新たに配置した屋根材Aの固定片10を屋根下地6に固定する。
【0045】
このようにして横一列に複数枚の屋根材A、A…を敷設した後、これら敷設した屋根材Aの水上側に他の複数枚の屋根材A、A…を横一列に順次敷設していく。このとき、図14(c)に示すように、水上側の屋根材Aの被係止部4を水下側の屋根材(上側に被せた屋根材)Aの屋根材本体1と係止部5との間に挿入し、挿入した被係止部4を係止部5の下面に係止する。この後、図14(d)に示すように、さらに他の水上側の屋根材Aの被係止部4を上記水上側の屋根材Aの被係止部4と水下側の屋根材Aの屋根材本体1との間に挿入することによって水下側の屋根材Aの係止部5に係止する。このように、縦方向と横方向に四枚の屋根材Aが隣接する箇所では、最終的に二つの被係止部4、4と二つの係止部5、5とが重なった状態となる。このようにして複数枚の屋根材Aを縦横に敷設することによって、屋根を形成することができる。
【0046】
図15に他の実施の形態を示す。この屋根材の取付構造では、図1に示す補強部材40にスペーサ片70を設けたものであり、その他の構成は上記と同様である。図15(b)(c)に示すように、スペーサ片70は補強部材40の上片支持部40bの両側端部に一体的に屈曲形成されている。また、スペーサ片70は、固定部40aよりも前側に突出して下片補強部40cの下方に位置して形成されている。また、スペーサ片70の先端部は下片補強部40cの先端よりも前側に突出しており、そのスペーサ片70の先端部の上面には、高さ3mm程度のスペーサ突起71が設けられている。
【0047】
そして、このような補強部材40を用いて屋根材Aを施工する場合も上記図1と同様に行うことができるが、スペーサ片70は補強部材40よりも水下側に配設される屋根材Aの屋根材本体1の下面と屋根下地6の上面との間に位置するものである。ここで、屋根下地6の表面はルーフィング材72で覆われており、スペーサ片70は屋根材本体1の下面とルーフィング材72の上面との間に位置しするものである。従って、屋根材Aは、スペーサ片70の厚み(例えば、1.2mm)とスペーサ突起71の高さとの合計分だけルーフィング材72の上面から持ち上がることになり、屋根材本体1の下面とルーフィング材72の上面との間には、スペーサ片70の厚み(例えば、1.2mm)とスペーサ突起71の高さとの合計分のスペース(隙間)SPが生じることになる。よって、万が一、屋根材Aの下側に漏水したとしても、ルーフィング材72の表面を伝ってスペースSPを通じて軒先に排水されることになる。従来の横葺き屋根材では、屋根材とルーフィング面は密着し、そこで水を堰きとめる形となっており、軒先へスムーズに排水できず屋根内部に水が溜まることになる。長期的に見れば、湿気状態が続くと野地板や屋根材が劣化するおそれがある。しかし、図15に示す構造であれば、屋根内部に水が溜まりにくく、劣化の軽減につながるものである。
【0048】
また、スペーサ突起71がその上側に被せられる屋根材Aの屋根材本体1に押しつけられることにより、この屋根材本体1がスペーサ突起71の形状に応じて表面に突出するように凸状に変形されることになる。そして、この凸状の変形部分を目印として補強部材40の位置を容易に認識することができる。従って、固定部材Cを補強部材40の挿入位置に精度良く配設することが可能となるものである。特に、屋根材Aの施工後に、ある程度時期がずれて固定部材Cを取り付ける場合にも、固定部材Cの取り付け位置が判りやすくて有効である。
【符号の説明】
【0049】
A 屋根材
1 屋根材本体
4 被係止部
5 係止部
6 屋根下地
40 補強部材
41 防水部
42 パッキン
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属屋根材などの屋根材の取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数枚の屋根材を屋根下地に縦横に敷設することにより屋根を形成することが行われているが、この場合、横方向(屋根の水流れ方向と直交する方向)で隣接する屋根材はその側端部同士を上下に重ねるようにして屋根の防水性を確保しようとしている。例えば、特許文献1に記載された屋根材Aは、図16に示すように、一方の側端部に略平板状のカバー部20を形成すると共に、他方の側端部に断面略波状の捨板部21を形成したものであり、屋根下地6の上に敷設した屋根材Aの捨板部21の上に、他の屋根材Aのカバー部20を被せるようにして、二枚の屋根材A、Aを横方向に隣接させて敷設するようにしている。しかし、上記の屋根材Aでは、防水上の観点からカバー部20と捨板部21とを一定の長さに形成し、カバー部20と捨板部21とを重ね合わせて屋根材Aを接続しているため、屋根下地6のけらば部分や降り棟部あるいは屋根下地6と二階部分の壁との境界部分(壁立上がり部)において、寸法調整のために屋根材を切断しなければならず、施工現場で屋根材の廃材が生じるおそれがあった。また、カバー部20を必ず捨板部21の上に被せるので、屋根材の敷設していく方向が屋根下地の左から右あるいは右から左のいずれか一方向に限定されてしまい、施工性が低下するおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−159066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本出願人は、両方の側端部に断面略波状の接続部を有する屋根材を提案している(特願2009−3473)。この場合、図17に示すように、横方向(水流れ方向と直交する方向)で隣接する屋根材Aの側端部の重ね合わせ長さを施工現場に応じて適宜調整することによって、寸法調整のために屋根材を切断する必要が無く、また、隣接する屋根材のうち、左右いずれの屋根材を上にし、いずれの屋根材を下にして重ね合わせるかは特に制限されないため、屋根材を敷設していく方向が一方向に限定されないものである。
【0005】
また、縦方向(水流れ方向)で隣接する屋根材Aは、被係止部4と係止部5との係止により接続している。被係止部4は、屋根材本体1の水下側端部(例えば、軒側端部)に形成されるものであって、屋根材本体1の水下側端部に延設される上記金属板の一部を屋根材本体1の水下側端部の裏面側に折り返すように屈曲することにより、屋根材本体1の横方向の略全長にわたって形成されている。また、係止部5は、屋根材本体1の水上側端部(例えば、棟側端部)に形成されるものであって、屋根材本体1の水上側端部に延設される上記金属板の一部を屋根材本体1の水上側端部の表面側に折り返すように屈曲することにより、屋根材本体1の横方向の略全長にわたって、上片5aと下片5bとからなる断面略倒U字状に形成されている。固定片10は、係止部5の水上側端部に突設される上記金属板の一部で形成されている。固定片10は屋根材本体1の横方向の略全長にわたって形成されており、縦方向の断面形状が略逆へ字状に形成されており、係止部5の上片5aから水上側に向かって突設されている。
【0006】
そして、縦方向で隣接する屋根材A、Aを接続するにあたっては、まず、水下側に配設される屋根材Aを屋根下地6に取り付ける。この場合、図18に示すように、吊子Bを用いて屋根材Aの取付強度を補強して固定する。吊子Bは断面略倒U字状の嵌合部30と、嵌合部30の上側端部から水上側に向かって突出する固定部31とで形成されている。このような吊子Bは嵌合部30を係止部5の表面側(外側)に嵌合すると共に固定片10の表面側(上側)に固定部31を配置し、固定部31及び固定片10を貫通するように、固定部31の上側からビス等の固定具32を屋根下地6にまで打入することによって、屋根材A及び吊子Bを屋根下地6に固定する。吊子Bは横方向に約900mmピッチで設けることができる。この後、水上側に配置される屋根材Aの被係止部4を上記の水下側の屋根材Aの係止部5に係止する。この場合、水上側の屋根材Aの被係止部4を水下側の屋根材Aの係止部5と屋根材本体1との間に差し込んで、係止部5の下側に被係止部4を係止する。吊子Bは被係止部4及び屋根材本体1の水下側端部で表面側(外側)が覆われた状態となる。
【0007】
このように吊子Bを設けた箇所は、係止部5がその外形に沿った嵌合部30で覆われて補強されるため、太陽光発電パネルなどの機能性部材を固定するための固定部材Cを取り付けることができる。
【0008】
しかし、上記の吊子Bは厚みが1.2mm程度で屋根材Aよりも厚く、しかも、係止部5の外面に突出して設けられているため、吊子Bで固定した屋根材Aの水上側に配置される複数枚の屋根材Aを横方向に接続する場合に、屋根材Aの側端縁部1aが吊子Bに当たって干渉し、屋根材Aの施工が行いにくいという問題があった。
【0009】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、施工が行いやすい屋根材の取付構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の屋根材の取付構造は、略平板状の屋根材本体1の水上側端部に屋根材本体1の表面側に突出する係止部5を設けると共に屋根材本体1の水下側端部に屋根材本体1の裏面側に突出する被係止部4を設けることによって屋根材Aが形成され、水の流れ方向で隣接する屋根材A、Aのうち、水上側の屋根材Aの被係止部4が水下側の屋根材Aの係止部5に係止され、水の流れ方向と直交する方向で隣接する屋根材A、Aのうち、一方の屋根材本体1の側端部が他方の屋根材本体1に重ねられて接続される屋根材Aの取付構造であって、上記係止部5は断面略倒U字状に形成され、係止部5の内側に補強部材40が設けられて成ることを特徴とするものである。
【0011】
本発明は、上記補強部材40は屋根下地6に固定されるのが好ましい。
【0012】
本発明は、屋根下地6の棟部に最も近い屋根材Aの水上側端部に、屋根材本体1に表面に対して略垂直に立ち上げた防水部41が形成され、防水部41よりも水下側において、屋根材本体1の表面にパッキン42が設けられるのが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、係止部5の外面に補強部材40が突出しないようにすることができ、水の流れ方向と直交する方向で隣接する屋根材A、Aを接続するにあたって、水上側の屋根材Aの被係止部4や側端縁部1aが補強部材40に当たらなくなって、施工が行いやすくなるものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示す一部の断面図である。
【図2】同上の屋根材の一例を示す斜視図である。
【図3】同上の屋根材の接続状態の一例を示す斜視図である。
【図4】同上の屋根材の接続状態の一例を示し、(a)(b)は一部の断面図である。
【図5】同上の施工手順の一例を示し、(a)〜(d)は一部の断面図である。
【図6】同上の屋根材の施工状態の一例を示す概略図である。
【図7】同上の屋根材の施工状態の一例を示し、(a)は断面図、(b)(c)は斜視図である。
【図8】同上の棟部の一例を示す断面図である。
【図9】同上の棟下地部材の一例を示し、(a)(b)は側面図、(c)は接続状態を示す平面図である。
【図10】同上の棟下地部材の他例を示し、(a)(b)は側面図である。
【図11】同上の棟部の他例を示す断面図である。
【図12】同上の屋根材の接続状態の一例を示し、(a)(b)は一部の断面図である。
【図13】同上の屋根材の接続状態の他例を示す一部の断面図である。
【図14】同上の施工手順の他例を示し、(a)〜(d)は一部の断面図である。
【図15】同上の他の実施の形態の一例を示し、(a)は一部の断面図、(b)は補強部材の平面図、(c)は補強部材の側面図である。
【図16】従来例を示す一部の断面図である。
【図17】先行例の屋根材の接続状態を示す斜視図である。
【図18】先行例の固定部材を取り付けた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
【0016】
本発明で用いる屋根材Aは、金属板をロール成形加工などで加工して所望の形状に形成することができる。金属板としては、例えば、厚み0.3〜0.5mmのものを好適に用いることができ、また、金属板の種類としては、塗装鋼板や亜鉛めっき鋼板、ガルバリウム鋼板(登録商標)などの各種のものを用いることができる。尚、製造については、従来ではロール成形機で対応するしかなかったが、本発明で用いる屋根材AはR加工(曲面加工)がほとんどないためベンダー加工機でも対応でき、また、端部加工はヘミング曲げ加工及びプレス加工で対応できる。
【0017】
本発明で用いる屋根材Aは、図2に示すように、左右対称(線対称)に形成されるものであって、屋根材本体1と被係止部4と係止部5及び固定片10などを備えて形成されている。
【0018】
屋根材本体1は横方向(屋根の水流れ方向と直交する方向)に長く形成されており、横方向の長さ寸法L1は、例えば、2000mm程度の定尺とすることができ、また、屋根材本体1の縦方向(屋根の水流れ方向)の働き幅L2は、例えば、200〜280mmとすることができ、好ましくは250mm程度とすることができる。屋根材本体1の両方の側端部には複数の突起部2が略平行に形成されている。突起部2はリブ加工などにより屋根材本体1の表面で開口する断面略V字状の溝で形成することができ、屋根材本体1の裏面に突出して屋根材本体1の縦方向の略全長にわたって形成されている。突起部2は、例えば、幅4〜10mm、表面からの深さ0.5〜1.5mm、長さ180〜280mmとすることができる。突起部2は屋根材本体1の側端縁部1aから幅寸法L3=100〜200mmの範囲に形成するのが好ましい。尚、突起部2は屋根材本体1の表面に突出して形成されていてもよく、また、屋根材本体1の表面に突出する突起部2と裏面に突出する突起部2の両方を形成しても良い。屋根材本体1の側端縁部1aは折り曲げ加工し、防錆・剛性を向上させるためにエッジを外部から見えにくくするようにしている。
【0019】
また、屋根材本体1には位置決め部3が形成されている。位置決め部3は、リブ加工などにより屋根材本体1の裏面で開口する断面略逆V字状に形成されており、屋根材本体1の表面に突出して屋根材本体1の縦方向の略全長にわたって形成されている。また、位置決め部3は屋根材本体1の両側部に一個ずつあるいは複数個ずつ設けることができる。位置決め部3を屋根材本体1の両側部に一個ずつ設ける場合は、屋根材本体1の側端縁部1aから所定の寸法の位置に形成することができ、例えば、屋根材本体1の側端縁部1aから100mmの位置に位置決め部3を形成することができる。また、位置決め部3を屋根材本体1の両側部に複数個ずつ設ける場合は、屋根材本体1の側端縁部1aから一定の間隔で形成することができ、例えば、屋根材本体1の側端縁部1aから100mmの間隔で位置決め部3を形成することができる。尚、位置決め部3は視認できるものであればどのような形状や位置に形成されていても良い。
【0020】
被係止部4は、屋根材本体1の水下側端部(例えば、軒側端部)に形成されるものであって、屋根材本体1の水下側端部に延設される上記金属板の一部を屋根材本体1の水下側端部の裏面側に折り返すように屈曲することにより、屋根材本体1の横方向の略全長にわたって形成することができる。
【0021】
係止部5は、屋根材本体1の水上側端部(例えば、棟側端部)に形成されるものであって、屋根材本体1の水上側端部に延設される上記金属板の一部を屋根材本体1の水上側端部の表面側に折り返すように屈曲することにより、屋根材本体1の横方向の略全長にわたって、上片5aと下片5bとからなる断面略倒U字状に形成することができる。従って、係止部5は屋根材本体1の上方において、屋根材本体1の水上側端部から水下側に向かって突出して形成され、係止部5の水下側端部が閉塞され、係止部5の水上側が開放されるような断面略倒U字状に形成されている。
【0022】
固定片10は、係止部5の水上側端部に突設される上記金属板の一部で形成することができる。固定片10は屋根材本体1の横方向の略全長にわたって形成されており、縦方向の断面形状が略逆へ字状に形成されており、係止部5の上片5aから水上側に向かって突設されている。
【0023】
そして、上記の屋根材Aはその複数枚を野地板などの屋根下地6の上に縦横に敷設するものであり、これにより、屋根を形成することができる。この場合、隣接して敷設されて屋根材A、Aは取り付け強度の確保や防水性の向上のために接続されている。
【0024】
図3に示すように、横方向で隣接する屋根材A、Aは屋根材本体1の側端部同士を上下に重ね合わせたり、あるいは一方の屋根材Aの屋根材本体1の側端部を他方の屋根材Aの屋根材本体1と上下に重ね合わせたりすることにより接続する。ここで、屋根材Aの縦方向の断面形状は横方向の全長にわたって略一定であるため、重ね合わせ寸法は任意に設定可能であり、防水性能を確保するために、屋根材本体1の側端縁部1aから100mm以上重ね合わせることが好ましいが、屋根の各部分の納めの寸法調整に応じて重ね合わせ寸法を変えることができる。尚、重ね合わせる寸法の上限は特に設定されないが、あまりに大きいと屋根材Aに無駄な部分が増加してしまうので、重ね合わせる寸法は屋根材本体1の側端縁部1aから横寸法の半分以下とするのが好ましく、より好ましくは200mm以下にするのがよい。また、屋根材Aは左右対称であるために、横方向で隣接する屋根材A、Aの左右のどちらも上に重ねることが可能であり、屋根下地6の横方向の左右何れの方向からでも順次敷設していくことができる。
【0025】
そして、上下に重なった屋根材A、Aの間には突起部2により隙間Sを設けることができる。すなわち、図4(a)に示すように、下側の屋根材Aの屋根材本体1の表面の平坦部分に、上側の屋根材Aに設けた突起部2が載置することにより、下側の屋根材Aの屋根材本体1の表面と上側の屋根材Aの屋根材本体1の裏面との間に隙間Sを形成することができる。通常、雨水は屋根材Aの表面を流れ、隙間Sには雨水は浸入しないが、万が一、横方向で隣接する屋根材A、Aの重ね合わせ部分において、上側の屋根材Aの下に雨水が浸入した場合でも、隙間Sを通じて雨水の排水を行うことができる。従って、確実な隙間Sの形成のため、上下に重なった屋根材A、Aの突起部2同士は重ならない方が好ましい。尚、突起部2が屋根材本体1の表面に突出している場合は、下側の屋根材Aの屋根材本体1に設けた突起部2の上端に、上側の屋根材Aの屋根材本体1の裏面の平坦部分が載置することにより、上記と同様の隙間Sを形成することができる。また、縦方向で隣接する屋根材A、Aはその一部を上下に重ね合わせることにより接続する。この場合、水下側(例えば、軒側)に敷設された屋根材Aの係止部5に水上側(例えば、棟側)に敷設された屋根材Aの被係止部4を係止する。
【0026】
ここで、横方向及び縦方向の屋根材A、Aの接続について詳述する。まず、係止部5を上方に伸長した状態で屋根材Aを屋根下地6に載置し、ビスなどの固定具11を固定片10及び屋根下地6に打ち込んで固定片10を固定する。このように固定片10を固定することにより、係止部5を上下に収縮して上下寸法(厚み)を小さくした状態で形状を固定(確定)することができる。ここで、補強部材40も屋根下地6に固定される。補強部材40は金属等で形成され、平板状の固定部40aと、固定部40aの水下側端部から上方へ略垂直に突出する断面略逆L字状の上片支持部40bと、上片支持部40bの水下側端部から斜め上方に突出する下片補強部40cとを備えてピース状に形成されている。そして、補強部材40は、係止部5の内側、すなわち、係止部5の水上側から上片5aと下片5bとの間に、上片支持部40bと下片補強部40cとを挿入し、固定部40aを屋根材Aの固定片10の下側に配置するようにして配設される。ここで、下片補強部40cは下片5bの上面に沿わせて配置されており、これにより、下片5bを下片補強部40cで補強することができる。また、上片支持部40bは上片5aの直下に位置しており、上片5aが下方へ変形した場合に当たって支持するものである。固定部40aは固定片10と共に固定具11が打入されて屋根下地6に固定される。補強部材40は屋根材Aの横方向に例えば900mmピッチで設けることができる。
【0027】
次に、固定した屋根材Aに別の屋根材Aを横方向に並べて載置する。このとき、上記のように、隣接する屋根材A、Aは横方向にずらした状態で上下に重ね合わせることにより接続する。また、固定した屋根材Aの係止部5が新たに配置する屋根材Aの係止部5の上片5aと下片5bとの間に水上側から差し込まれることにより、図5(a)に示すように、固定した屋根材Aの係止部5の表面に新たに配置する方の屋根材Aの係止部5を被せるようにし、また、固定した屋根材Aの固定片10の表面に新たに配置する方の屋根材Aの固定片10を被せるようにする。次に、図5(b)に示すように、新たに配置した屋根材Aの固定片10と、固定した屋根材Aの固定片10とに固定具11を打ち込むことによって、新たに配置した屋根材Aの固定片10を固定する。そして、固定した屋根材Aの係止部5の表面に新たに配置する方の屋根材Aの係止部5を被せる際に、補強部材40が係止部5の表面に突出していないため、被せやすくなるものである。
【0028】
このようにして横一列に複数枚の屋根材A、A…を敷設した後、これら敷設した屋根材Aの水上側に他の複数枚の屋根材A、A…を横一列に順次敷設していく。このとき、図5(c)に示すように、水上側の屋根材Aの被係止部4を水下側の屋根材(上側に被せた屋根材)Aの屋根材本体1と係止部5との間に挿入し、挿入した被係止部4を係止部5の下面に係止する。このとき、補強部材40が係止部5の表面に突出していないため、被係止部4が屋根材本体1と係止部5との間に挿入しやすくなるものである。この後、図5(d)に示すように、さらに他の水上側の屋根材Aの被係止部4を上記水上側の屋根材Aの被係止部4と水下側の屋根材Aの屋根材本体1との間に挿入することによって水下側の屋根材Aの係止部5に係止する。このように、縦方向と横方向に四枚の屋根材Aが隣接する箇所では、最終的に二つの被係止部4、4と二つの係止部5、5とが重なった状態となる。このようにして複数枚の屋根材Aを縦横に敷設することによって、屋根を形成することができる。
【0029】
そして、本発明の屋根材Aの取付構造では、横方向に隣接する屋根材A、Aを上下に重ねるにあたって、位置決め部3をガイド(目安)にする。例えば、図4(a)に示すように、横方向に隣接する屋根材A、Aのうち、一方の屋根材Aに設けた位置決め部3と、他方の屋根材Aの側端縁部1aとを重ね合わせるようにする。このように位置決め部3を目安にして横方向に隣接する屋根材A、Aの重ね合わせ位置を調整することができ、これにより、横方向に隣接する屋根材A、Aにおいて、上に重ねた屋根材Aの屋根材本体1の側端縁部1aと下に位置する屋根材1の屋根材本体1の表面との境界線(目地)Lを屋根全体で規則的に揃えやすくなる。従って、例えば、図6に示すように、縦方向に隣接する屋根材A、Aの上記境界線Lが一直線に並ぶように、横方向に隣接する屋根材A、Aを重ね合わせて接続することにより、屋根に不規則な目地が形成されにくくなって、屋根の外観が低下しにくくなるものである。
【0030】
また、屋根材本体1の両方の側端部に複数個ずつ位置決め部3を形成した場合は、図4(b)に示すように、横方向に隣接する屋根材A、Aのうち、一方の屋根材Aに設けた位置決め部3と、他方の屋根材Aの側端縁部1aとを重ね合わせると共にその他の残りの位置決め部3同士を重ね合わせるようにすることができる。尚、屋根材本体1の側端縁部1aは、平面視において、突起部2とは近似した外観とするために、斜め下方に向かって傾斜するように屈曲されている。従って、上記境界線Lと同様の外観が突起部2で発現されて境界線Lが目立たないようにすることができる。
【0031】
本発明の屋根材Aは被係止部4や係止部5に屋根材本体1の表面に対して垂直となる部位がないため、屋根材Aをその側端部が上方に突出するように略直角に容易に折り曲げることができる。従って、屋根下地6と立ち上がり壁との境界部分の納め構造において、屋根材Aの側端部を上方へ略直角に折り曲げて立ち上がり壁の表面に沿わせると共に隣接する屋根材A、Aの重ね合わせ寸法を調整することにより、屋根材Aを切断することが無くなり、施工現場での廃材の発生を極力少なくすることができる。また、本発明は上記のように折り曲げやすい形状であるので、切断することなく、屋根下地6の表面に沿わせて降り棟に敷設することができる。すなわち、屋根下地6の長面6aと短面6bとが降り棟6cを介して隣接する場合、まず、図7(b)に示すように、長面6aに複数枚の屋根材A、A…を横方向及び軒側から棟側に向かって敷設していくが、最も短面6bに近い部分に敷設した屋根材Aの短面6b側の側端部を折り曲げて短面6bの表面に沿わせて配置するようにする。次に、図7(c)に示すように、短面6bに複数枚の屋根材A、A…を横方向及び軒側から棟側に向かって敷設していくが、最も長面6aに近い部分に敷設した屋根材Aの長面6a側の側端部を折り曲げて、長面6aに敷設した屋根材Aの表面に沿わせて配置するようにする。この後、図7(a)に示すように、断面略へ字状のカバー材13を降り棟6c及び棟6dに取り付けることにより、屋根材Aを施工することができる。そして、図7(a)に示すように、屋根下地と立ち上がり壁との境界部分に施工する場合と同様に、屋根材Aを切断することなく、重ね合わせ寸法を調整して納めることができ、施工現場での廃材の発生を極力少なくすることができる。また、図7(c)に示すように、本発明の屋根材Aは短面6bに施工する場合、軒側から棟側に葺き上げていくにつれて、重ね合わせ部分K(点々模様で示す)の寸法が長くなっていくが、長面6aに施工する場合は重ね合わせ部分Kの寸法が一定で切断もすることなく納めることができる。
【0032】
屋根材Aは、施工現場ではなく工場等で予め屋根の形状に合わせて折り曲げ加工しておくことができる。屋根材Aを施工する屋根下地6は、図面等に記載された設計寸法と、施工現場で実際に測定した実寸法とに誤差があり、従来では、実寸法に合わせて施工現場で屋根材Aを加工しなければならないため、工場等で予め屋根材Aを加工しておくことは難しい。しかし、本発明では、横方向で隣接する屋根材A、Aを重ね合わせて施工するので、重ね合わせ寸法を調整することによって、上記の誤差を吸収することができる。従って、設計寸法に合わせて工場等で予め屋根材Aを加工してプレカット品とすることができ、施工時間の大幅な短縮を図ることができると共に施工者の技術に頼ることなく精度良く屋根材Aを仕上げることができる。
【0033】
そして、上記の屋根材Aでは、隣接する屋根材A、Aの重ね合わせ寸法(葺き足)を自由自在に調整できるため、平面部からけらば部、降り棟部、壁立ち上げ部において、寸法調整のため屋根材本体1を切断することなく施工できる。従って、現場において、寸法合わせにこだわることなく端部曲げ加工した後、重ね合わせ寸法を調整することで、大幅な施工性向上が図れるものである。また、本発明では、切断作業がなくなるので、現場で廃材を極力出さない工法となるものである。短尺品の屋根材Aの場合、切断が必要となるが、これも工場で長さ調整しておけば現場では切断の必要がなくなり、廃材無しを可能とできるものである。また、けらば部、降り棟部、壁立ち上げ部で使用される屋根材Aは、事前に加工し現地納入することで現地作業の手間を省き、更に施工性向上を図ることができる。また、本発明の屋根材Aはシンプルでフラットに近い形状のため、棟部において、屋根材Aを棟ラインを支点に曲げることで、切断することなく施工できる。また、本発明の屋根材Aの形状はシンプルなので、板金作業(不要部切り落とし)後に加工する必要がなくなり作業性の向上を図ることができるものである。また、本発明の屋根材Aの長さを一定としても、現場採寸が必要なく屋根面積と重ね合わせ代分を考慮した数量を発注することで対応することができ、見積もり積算作業も容易となる。また、本発明の屋根材Aは左右対称であり、左右どちらからでも葺くことができ、しかも、半分に切断した場合でもけらば部や降り棟部に納めることで、切断面を表面に出すことなく納めることができ、重ね代を余分に取ることなく、効率よく葺くことができるものである。また、降り棟部や棟部の納め部材(カバー材)もへの字のシンプルな形状となり、交差部や継ぎ部の納めもそのまま重ね、屋根材Aと同じく長さ調整できるため、現場加工を極力少なくすることができるものである。
【0034】
また、図1に示すように、補強部材40を設けた箇所では、太陽光発電パネルなどの機能性部材を固定するための固定部材Cを取り付けることができる。固定部材Cは、ベース部60と挟持片61とを備えて断面略C字状に形成されており、ベース部60と挟持片61とを上下に貫くボルトなどの締結具62を設けると共に締結具62には挟持片61の上側においてナット等の螺着具63が螺着されている。そして、被係止部4が差し込まれた屋根材本体1と係止部5との間に、さらにベース部60の先端を差し込むと共に上記被係止部4を差し込んだ水上側の屋根材Aの屋根材本体1の上面に挟持片61を当接し、螺着具63を締結具62に螺合していくことにより、ベース部60と挟持片61で被係止部4と係止部5及び補強部材40とを挟持する。これにより、固定部材Cを屋根材Aに取り付けることができる。そして、係止部5の内側に補強部材40が設けられているために、係止部5や被係止部4の変形や破損が生じにくくなり、固定部材Cを安定して取り付けることができると共に防水性が低下しにくくなるものである。従って、機能性部材の取付強度が向上するものである。
【0035】
図8は、屋根の棟部の断面図を示す。符号50は棟木、符号51は垂木であって、垂木51の上に野地板等の屋根下地6が設けられている。棟部の頂部の両側には、屋根の最も水上側(棟側)に位置する屋根材A、Aが配置されている。この屋根材A、Aの水上側端部には、屋根材本体1の表面(上面)に対して略垂直に上方に向いて突出する防水部41が横方向の全長にわたって設けられている。この防水部41は、屋根材Aの係止部5よりも水上側部分を除去し、この後、屋根材本体1の水上側端部を屈曲することにより形成することができる。また、この屋根材Aの防水部41の水下側において屋根材本体1の表面には防水用のパッキン42が設けられている。パッキン42はEPDMなどのゴム製や樹脂製で形成され、屋根材Aの横方向の全長にわたって設けられている。このようにパッキン42と防水部41により二重の防水ラインを簡単に形成することができる。
【0036】
棟部の頂部の両側には棟下地部材52が設けられている。棟下地部材52は鋼材等の金属製であって、図9(a)に示すように、押さえ片52aと、押さえ片52aの上端から水上側に向かって突出する包み支持片52bと、包み支持片52bの水上側端部から下方に向かって突出する断面略L字状の固着部52cとを備えて形成されている。押さえ片52aは上記パッキン42を上から押さえて圧縮するものであり、これにより、パッキン42を屋根材Aの表面の形状に合わせて変形させて密着させ、隙間が生じないようにすることができる。また、包み支持片52bはこの上に棟包み53を載置して支持するものである。固着部52cは棟部の頂部近傍で屋根下地6に固着されるものである。ここで、屋根材Aの防水部41は押さえ片52aと固着部52cの間に位置するように配置される。また、棟下地部材52は、棟部の長手方向と平行に、屋根下地6の横方向の全長にわたって設けられるが、複数の棟下地部材52を横方向に連結することができる。この場合、図9(b)に示すように、棟下地部材52と略同形の断面形状を有する連結部材54を用いる。連結部材54は棟下地部材52の下側に嵌め込んで、図9(c)に示すように、隣り合う棟下地部材52、52間にわたって配置され、各棟下地部材52に固着される。そして、棟下地部材52と連結部材54との重ね代を調整することにより、連結される棟下地部材52の全体の長さを調整することができ、施工現場で切断などの加工をすることなく施工することができる。また、防水部41と固着部52cとの間に20mm程度の間隔を設けることにより、屋根材Aの棟部側(水上側)の施工精度が低くても、防水部41と固着部52cとの間で寸法調整することができて納めることが可能となる。
【0037】
棟部にはその頂部を跨るように配置して上方を覆う棟包み53が配設される。棟包み53はその頂部から水下側に向かって下り傾斜する一対の傾斜片53aと、各傾斜片53aの先端に裏面側に向かって略垂直に突出する取付片53bと、取付片53bの下端から水下側に向かって突出する水切り片53cとを備えて形成されている。傾斜片53aは両方の棟下地部材52の包み支持片52bに載置され、取付片53bは押さえ片52aの外面にビス等の固定具で取り付けられている。また、水切り片53cの先端はパッキン42よりも水下側に突出してパッキン42の上方に配置されており、防水性を高くすることができる。
【0038】
図10に棟下地部材52の他例を示す。図10(a)に示す棟下地部材52は、押さえ片52aと、押さえ片52aの上端から水上側に向かって突出する包み支持片52bと、包み支持片52bの水上側端部から下方に向かって突出する支え片52dとを備えることによって、下面が開口する断面略コ字状に形成されている。図10(b)に示す棟下地部材52は、図10(a)において押さえ片52aの下端から支え片52dの方に向かって突出するパッキン取付片52eが設けられている。図10(a)に示す棟下地部材52は、パッキン42と別体に形成されているが(パッキン分割型)、図10(b)に示す棟下地部材52は、パッキン取付片52eの下面にパッキン42が施工前に取り付けられているもの(パッキン一体型)である。パッキン分割型よりパッキン一体型の方が施工が簡単に行えるものである。
【0039】
図11に示すように、図10(a)(b)に示す棟下地部材52も上記と同様に棟部の頂部の両側に、棟部の長手方向と平行に、屋根下地6の横方向の全長にわたって設けられて施工されるが、この場合、包み支持片52bを厚み方向(上下方向)で貫通するビスなどの固定具55で屋根下地6に棟下地部材52を固定することができる(固定具55で屋根材Aを貫通することも可能)。図8に示す棟下地部材52では、固着部52cが断面略L字状に形成されているため、防水部41と固着部52cとの間で寸法調整が最大でも40mm程度であるが、図10(a)(b)のものでは、固着部52が形成されていないため、防水部41と支え片52dとの間で寸法調整が最大で約100mm程度確保することができ、屋根材Aの棟部側(水上側)の施工精度が低くても容易に納めることが可能となる。
【0040】
本発明において、図12(a)に示すように、被係止部4に複数の接触部4a、4bを設けることができる。一つの接触部4aは被係止部4の先端で形成することができる。また、もう一つの接触部4bは被係止部4の略中央部を横方向の全長にわたって下方に向かって凸曲するように屈曲し、この屈曲部分の先端で形成することができる。また、係止部5の下片5bの基部(屋根材本体1に近い方の端部)には横方向の全長にわたって、下面に開口する断面略逆V字状の係止溝5cが形成されている。
【0041】
そして、上記と同様に、屋根材本体1と係止部5の下片5bとの間に被係止部4を上下に少し弾性変形させながら差し込んで係止部5と被係止部4とを係止するが、被係止部4の先端側の接触部4aは下片5bの係止溝5cに嵌め込まれて係止させ、被係止部4の略中央部の接触部4bは屋根材本体1の表面に接触させる。このように接触部4aの下片5bへの接触部分と、接触部4bの屋根材本体1への接触部分により、縦方向で隣接する屋根材A、Aの接続部分に、複数の横方向に長い防水ラインを形成することができ、防水性を高めることができるものである。また、被係止部4は断面略逆く字状に屈曲しているので、バネ性を有するものであり、下片5bへの接触部4aの接触と屋根材本体1への接触部4bの接触とを被係止部4の弾性力により強くすることができ、防水ラインを確実に形成することができると共に係止部5と被係止部4の係止を強固にすることができる。
【0042】
また、図12(b)に示すように、屋根材本体1と係止部5の下片5bとの間に被係止部4を差し込んだ後、被係止部4をさらに奥に深く差し込むことができる。この場合、被係止部4の先端側の接触部4aは係止溝5cとの係止から外れるが、その接触部4aは係止溝5cの奥側で下片5bに当接し、防水ラインを形成することができ、防水性を低下させないようにすることができる。本発明では、図5(d)に示すように、二つの係止部5と二つの被係止部4とが重なり合う部分が存在するが、上記のように屋根材本体1と係止部5の下片5bとの間に被係止部4を差し込んだ後、この被係止部4をさらに奥に深く差し込むことができるので、一つの被係止部4を最初に奥深く差し込んだ後に、次の被係止部4を屋根材本体1と上記差し込み後の被係止部4との間に差し込むようにすることができ、二つの被係止部4を重ね合わせて施工しやすくなるものである。尚、二つの被係止部4を重ね合わせる部分では、二つの被係止部4とも係止溝5cには係止されない。
【0043】
また、本発明において、図13に示すように、図12のものとは形状の異なる被係止部4を形成することができる。この被係止部4に複数の接触部4a、4bを設けることができる。一つの接触部4aは被係止部4の先端で形成することができる。また、もう一つの接触部4bは被係止部4の基部で形成することができる。被係止部4は接触部4bから少し斜め下方に下り傾斜するように形成されている。そして、上記と同様に、屋根材本体1と係止部5の下片5bとの間に被係止部4を上下に少し弾性変形させながら差し込んで係止部5と被係止部4とを係止するが、被係止部4の先端側の接触部4aは屋根材本体1の表面に接触させ、被係止部4の基部の接触部4bはその上面を係止部5の下片5bの先端部の下面に接触させる。このように接触部4aの屋根材本体1への接触部分と、接触部4bの下片5bへの接触部分により、縦方向で隣接する屋根材A、Aの接続部分に、複数の横方向に長い防水ラインを形成することができ、防水性を高めることができるものである。また、被係止部4は断面略倒く字状に屈曲しているので、バネ性を有するものであり、屋根材本体1への接触部4aの接触と下片5bへの接触部4bの接触とを被係止部4の弾性力により強くすることができ、防水ラインを確実に形成することができると共に係止部5と被係止部4の係止を強固にすることができる。
【0044】
図13に示す係止部5と被係止部4とを有する屋根材A、Aも上記の図5と同様にして縦横に接続することができる。まず、係止部5を上方に伸長した状態で屋根材Aを屋根下地6に載置し、ビスなどの固定具11を固定片10及び屋根下地6に打ち込んで固定片10を固定する。このように固定片10を固定することにより、係止部5を上下に収縮して上下寸法(厚み)を小さくした状態で形状を固定(確定)することができる。次に、固定した屋根材Aに別の屋根材Aを横方向に並べて載置する。このとき、上記のように、隣接する屋根材A、Aは横方向にずらした状態で上下に重ね合わせることにより接続する。また、図14(a)に示すように、固定した屋根材Aの係止部5の表面に新たに配置する方の屋根材Aの係止部5を被せるようにし、また、固定した屋根材Aの固定片10の表面に新たに配置する方の屋根材Aの固定片10を被せるようにする。次に、図14(b)に示すように、新たに配置した屋根材Aの固定片10と、固定した屋根材Aの固定片10とに固定具11を打ち込むことによって、新たに配置した屋根材Aの固定片10を屋根下地6に固定する。
【0045】
このようにして横一列に複数枚の屋根材A、A…を敷設した後、これら敷設した屋根材Aの水上側に他の複数枚の屋根材A、A…を横一列に順次敷設していく。このとき、図14(c)に示すように、水上側の屋根材Aの被係止部4を水下側の屋根材(上側に被せた屋根材)Aの屋根材本体1と係止部5との間に挿入し、挿入した被係止部4を係止部5の下面に係止する。この後、図14(d)に示すように、さらに他の水上側の屋根材Aの被係止部4を上記水上側の屋根材Aの被係止部4と水下側の屋根材Aの屋根材本体1との間に挿入することによって水下側の屋根材Aの係止部5に係止する。このように、縦方向と横方向に四枚の屋根材Aが隣接する箇所では、最終的に二つの被係止部4、4と二つの係止部5、5とが重なった状態となる。このようにして複数枚の屋根材Aを縦横に敷設することによって、屋根を形成することができる。
【0046】
図15に他の実施の形態を示す。この屋根材の取付構造では、図1に示す補強部材40にスペーサ片70を設けたものであり、その他の構成は上記と同様である。図15(b)(c)に示すように、スペーサ片70は補強部材40の上片支持部40bの両側端部に一体的に屈曲形成されている。また、スペーサ片70は、固定部40aよりも前側に突出して下片補強部40cの下方に位置して形成されている。また、スペーサ片70の先端部は下片補強部40cの先端よりも前側に突出しており、そのスペーサ片70の先端部の上面には、高さ3mm程度のスペーサ突起71が設けられている。
【0047】
そして、このような補強部材40を用いて屋根材Aを施工する場合も上記図1と同様に行うことができるが、スペーサ片70は補強部材40よりも水下側に配設される屋根材Aの屋根材本体1の下面と屋根下地6の上面との間に位置するものである。ここで、屋根下地6の表面はルーフィング材72で覆われており、スペーサ片70は屋根材本体1の下面とルーフィング材72の上面との間に位置しするものである。従って、屋根材Aは、スペーサ片70の厚み(例えば、1.2mm)とスペーサ突起71の高さとの合計分だけルーフィング材72の上面から持ち上がることになり、屋根材本体1の下面とルーフィング材72の上面との間には、スペーサ片70の厚み(例えば、1.2mm)とスペーサ突起71の高さとの合計分のスペース(隙間)SPが生じることになる。よって、万が一、屋根材Aの下側に漏水したとしても、ルーフィング材72の表面を伝ってスペースSPを通じて軒先に排水されることになる。従来の横葺き屋根材では、屋根材とルーフィング面は密着し、そこで水を堰きとめる形となっており、軒先へスムーズに排水できず屋根内部に水が溜まることになる。長期的に見れば、湿気状態が続くと野地板や屋根材が劣化するおそれがある。しかし、図15に示す構造であれば、屋根内部に水が溜まりにくく、劣化の軽減につながるものである。
【0048】
また、スペーサ突起71がその上側に被せられる屋根材Aの屋根材本体1に押しつけられることにより、この屋根材本体1がスペーサ突起71の形状に応じて表面に突出するように凸状に変形されることになる。そして、この凸状の変形部分を目印として補強部材40の位置を容易に認識することができる。従って、固定部材Cを補強部材40の挿入位置に精度良く配設することが可能となるものである。特に、屋根材Aの施工後に、ある程度時期がずれて固定部材Cを取り付ける場合にも、固定部材Cの取り付け位置が判りやすくて有効である。
【符号の説明】
【0049】
A 屋根材
1 屋根材本体
4 被係止部
5 係止部
6 屋根下地
40 補強部材
41 防水部
42 パッキン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略平板状の屋根材本体の水上側端部に屋根材本体の表面側に突出する係止部を設けると共に屋根材本体の水下側端部に屋根材本体の裏面側に突出する被係止部を設けることによって屋根材が形成され、水の流れ方向で隣接する屋根材のうち、水上側の屋根材の被係止部が水下側の屋根材の係止部に係止され、水の流れ方向と直交する方向で隣接する屋根材のうち、一方の屋根材本体の側端部が他方の屋根材本体に重ねられて接続される屋根材の取付構造であって、上記係止部は断面略倒U字状に形成され、係止部の内側に補強部材が設けられて成ることを特徴とする屋根材の取付構造。
【請求項2】
上記補強部材は屋根下地に固定されて成ることを特徴とする請求項1に記載の屋根材の取付構造。
【請求項3】
屋根下地の棟部に最も近い屋根材の水上側端部に、屋根材本体に表面に対して略垂直に立ち上げた防水部が形成され、防水部よりも水下側において、屋根材本体の表面にパッキンが設けられて成ることを特徴とする請求項1又は2に記載の屋根材の取付構造。
【請求項1】
略平板状の屋根材本体の水上側端部に屋根材本体の表面側に突出する係止部を設けると共に屋根材本体の水下側端部に屋根材本体の裏面側に突出する被係止部を設けることによって屋根材が形成され、水の流れ方向で隣接する屋根材のうち、水上側の屋根材の被係止部が水下側の屋根材の係止部に係止され、水の流れ方向と直交する方向で隣接する屋根材のうち、一方の屋根材本体の側端部が他方の屋根材本体に重ねられて接続される屋根材の取付構造であって、上記係止部は断面略倒U字状に形成され、係止部の内側に補強部材が設けられて成ることを特徴とする屋根材の取付構造。
【請求項2】
上記補強部材は屋根下地に固定されて成ることを特徴とする請求項1に記載の屋根材の取付構造。
【請求項3】
屋根下地の棟部に最も近い屋根材の水上側端部に、屋根材本体に表面に対して略垂直に立ち上げた防水部が形成され、防水部よりも水下側において、屋根材本体の表面にパッキンが設けられて成ることを特徴とする請求項1又は2に記載の屋根材の取付構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
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【図12】
【図13】
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【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−12909(P2012−12909A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−153141(P2010−153141)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【出願人】(000207436)日鉄住金鋼板株式会社 (178)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【出願人】(000207436)日鉄住金鋼板株式会社 (178)
【Fターム(参考)】
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