説明

屋根架構の耐震補強構造

【課題】各種構造物の屋根架構に対する有効適切な耐震補強構造を提供する。
【解決手段】構造体6の上部に屋根架構1を架設してなる構造物に、屋根架構に対する上下振動に対して制震効果を得る上下制震機構Aを設置して耐震補強効果を得る。上下制震機構は、構造体の上部に設置された回転支承13に、一端を屋根架構に連結し他端には錘体12を連結した索状体15を巻回して、錘体を回転支承より直下に懸垂して吊り支持する構成であり、錘体の自重を屋根架構に対して斜め上方への吊り上げ荷重として作用せしめて屋根架構に作用する鉛直方向下向きの荷重の一部を相殺する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物における屋根架構を対象とする耐震補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
大規模構造物の屋根架構の構造は鉄骨造トラスとされることが一般的であるが、そのような屋根架構に対する補強対策として特許文献1や特許文献2に示されるものが知られている。前者は原子力発電所の建屋における鉄骨造の屋根架構に対して制振ダンパを設置するものであり、後者は鉄骨造の屋根版を縦横2方向のケーブルによりプレストレスを導入するものである。
【特許文献1】特開平9−101388号公報
【特許文献2】特開平8−226172号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、最近改定された「原子力関連施設に対する耐震設計審査指針」によれば、耐震重要度分類の最も高い構造物(Asクラス)についてはこれまで静的地震力で設計されてきた上下地震動を動的に評価することが新たに要求され、サイトによっては設計用の地震力もこれまでより大きくなることも考えられる。
また、指針の改定に伴い、既存の原子力関連施設に対して新指針に基づく耐震性の再評価が求められていることから、Asクラスの構造物に相当する既存の原子炉建屋に対して新指針に基づく上下地震動で動的に耐震性を再評価した場合、屋根架構を構成しているトラス部材のうち屋根荷重を常時受ける軸圧縮部材(斜材、束材)で鉛直下向きの地震力に対して座屈耐力を超える部材が現れることが予想され、その場合には既存の屋根架構に対する耐震補強が必要となることも想定される。
【0004】
その場合、屋根架構におけるトラス部材の軸圧縮部材のうち座屈が懸念される部材に対して座屈を回避するための補強対策としては、既設部材に鋼材や鋼管コンクリート等の補強材を付加して座屈強度を高める方法が最も一般的である。
しかし、そのような補強手法では補強対象の屋根架構に対して補強材の自重が新たに付加されるので上下応答のさらなる増加が懸念され、それによって補強の必要な個所が新たに増えるという悪循環にもなり、好ましくない。
しかも、鋼材により補強する場合には既設部材との溶接が必要になるし、鋼管コンクリートにより補強する場合においては2つ割にした鋼管を部材に装着して溶接したうえでその内部にコンクリートを充填するという手間のかかる作業が必要であり、それらの作業は屋根面レベルでの高所作業となるから、いずれにしても簡易にかつ容易に実施できるものではない。
【0005】
なお、既存の屋根架構の耐震補強を目的として特許文献1〜2に示されるような構造に改修することも考えられるが、そのような構造に改修するためには屋根架構のみならず構造物全体に対する大がかりな工事が必要となり、現実的ではない。以上のことから、既存の原子力発電所における鉄骨トラス等の屋根架構を対象とする有効適切な耐震補強手法の確立が急務とされている。
なお、このことは既存の原子力発電所の屋根架構の場合のみならず、各種用途の構造物の屋根架構に対する耐震補強を行う場合全般に共通する課題でもある。
【0006】
上記事情に鑑み、本発明は特に既存の原子力発電所の屋根架構に対する耐震補強手法として好適であり、併せて、構造物の用途や屋根架構の構造の如何を問わず、さらには構造物が既存であるか新設であるかも問わず、耐震補強が必要とされる屋根架構全般を対象として広く一般に適用可能な合理的な耐震補強構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、構造体の上部に屋根架構を架設してなる構造物に適用され、前記屋根架構に生じる上下方向の振動によって作動する上下制震機構により該屋根架構に対する耐震補強効果を得る耐震補強構造であって、前記上下制震機構は、前記構造体の上部に設置した回転支承にPC鋼線等の索状体を巻回し、該索状体の一端を前記屋根架構に連結するとともに、該索状体の他端に連結した錘体を前記回転支承より直下に懸垂して吊り支持してなり、前記上下制震機構における前記錘体の自重を前記索状体および前記回転支承を介して前記屋根架構を斜め上方に引き上げる吊り上げ荷重として作用せしめることにより、該吊り上げ荷重により前記屋根架構に作用する鉛直方向下向きの荷重の一部を相殺してなることを特徴とする。
【0008】
本発明においては、前記上下制震機構を前記構造物の外部に設置して、前記索状体の一端を前記屋根架構の上部に対して連結するとともに、前記回転支承を該連結点よりも上方かつ前記屋根架構の上部に設けられる屋根面よりも上方位置に設置し、前記錘体を前記構造体の外部において吊り支持することが考えられる。
あるいは、前記上下制震機構を前記構造物の内部に設置して、前記索状体の一端を前記屋根架構の下部に対して連結するとともに、前記回転支承を該連結点よりも上方かつ前記屋根架構の上部に設けられる屋根面よりも下方位置に設置し、前記錘体を前記構造体の内部において吊り支持することも考えられる。
【0009】
本発明においては、前記上下制震機構を前記屋根架構の中心を挟んでその両側に対称配置することにより、、各上下制震機構により前記屋根架構に作用する斜め上方への吊り上げ荷重の合力を前記屋根架構の中央位置に対して鉛直方向上向きの荷重として作用せしめることが望ましい。
また、前記上下制震機構における前記回転支承に回転抵抗力を持たせることにより、該回転支承を地震時に前記錘体に生じる上下振動を減衰せしめるロータリーダンパーとして機能せしめるように構成することが考えられる。
また、前記上下制震機構における前記錘体を、水平振れ止めとしてのガイド機構を介して前記構造体に対して上下方向に振動可能に支持する構成とすることが考えられる。
さらに、前記上下制震機構に前記錘体の上方への過大変位を拘束するストッパーを備えることにより、該上下制震機構を前記屋根架構の崩落の際には該屋根架構を吊り支持してその崩落を防止するためのフェールセーフ機構として機能させることも考えられる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、既存あるいは新設の構造物に対して屋根架構の上下振動に対する制震機能を有する上下制震機構を設置することによって優れた耐震補強効果が得られることはもとより、上下制震機構は錘体の自重を屋根架構に対して上向きの荷重として作用させて下向きの荷重の一部を相殺するものであるから、屋根架構に作用させる上向きの荷重を錘体の自重と索状体の方向の調節のみで容易にかつ適正に設定することが可能であり、したがって相殺すべき荷重の大きさを自由にかつ幅広く設定できるものである。
そして、上下制震機構は回転支承と索状体と錘体のみにより構成される極めて単純にして簡易なものであるのでこれを設置するために何ら面倒な工事や複雑な機構を必要とせず、したがって従来の各種補強手法に比べて工費や工期においても有利であるし、特に上下制震機構の全体を構造物の外部に設置する場合には構造物の内部での作業は不要であるので既存構造物を供用しつつ耐震補強を実施することも可能であり、以上のことから各種構造物の屋根架構に対する耐震補強手法として極めて合理的であり有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の耐震補強構造の一実施形態を図1〜図3を参照して説明する。本実施形態は既存の原子力発電所の建屋における屋根架構を対象としてそれを耐震補強する場合の適用例であり、図1〜図3は耐震補強後の状態を示すものである。
【0012】
補強対象の屋根架構1は上弦材2、下弦材3、斜材4、束材5により構成された鉄骨トラスであって、この屋根架構1はその両端部が柱7や梁8および壁9により構成されている構造体6の上端部に支持されることによって両側の構造体6相互間に架設されており、その上面に屋根材10が取り付けられてこの建屋の屋根面を構成するものである。符号11は屋根架構1の直下に設置されている天井クレーンである。
【0013】
この屋根架構1は新設当時の基準に適合した性能を有するものではあるが、上述した新指針(原子力関連施設に対する耐震設計審査指針)による評価では、屋根荷重を常時受ける軸圧縮部材としての斜材4および束材5は座屈強度が必ずしも充分ではないことから、本実施形態ではそれら斜材4および束材5の座屈を回避することを目的として、屋根架構1の両側にそれぞれ上下制震機構Aを対称配置した状態で付加することにより屋根架構1に対する耐震補強を行うものである。
【0014】
本実施形態の耐震補強構造は、上下制震機構Aにより屋根架構1に上向きの吊り上げ荷重を作用せしめることにより、その吊り上げ荷重によって屋根架構1に作用する下向きの荷重の一部を相殺し、以て斜材4および束材5に作用する軸圧縮力を座屈耐力を超えないように軽減させてそれらの座屈を防止することを主眼としている。
そして、本実施形態における上下制震機構Aは、屋根架構1に対する上方への吊り上げ荷重を錘体12の自重(吊り下げ荷重)を利用して作用させるべく、上下制震機構Aを構造物の外部に設置している。
具体的には、屋根架構1が架設されている両側の構造体6の上部にそれぞれ回転支承13を架台14を介して屋根架構1よりも上方(屋根架構1の上部に設けられる屋根面よりもさらに上方)に位置せしめた状態で設置するとともに、屋根架構1の中央上部には連結治具16を上弦材2に対して固定し、回転支承13に巻回したPC鋼線等の索状体15の一端を連結治具16に対して連結するとともに、索状体15の他端に連結した所定質量の錘体12を回転支承13より直下に懸垂させた状態で吊り支持している。
すなわち、索状体15の一端を屋根架構1の上部に対して連結して、その連結点よりもさらに上方位置(したがって屋根面よりもさらに上方の外部となる)に回転支承13を設置し、そこから錘体12を構造体6の外部において吊り支持するようにしている。
【0015】
これにより、錘体12の自重により索状体15には引張力が作用し、その引張力は屋根架構1を斜め上方に吊り上げるような吊り上げ荷重として作用する。しかも、図示しているように同様に構成された上下制震機構Aが屋根架構1の中心を挟んでその両側に対称配置されていて、双方の索状体15の一端がそれぞれ屋根架構1の中央位置に連結されていることから、各錘体12による斜め上方への吊り上げ荷重の合力は屋根架構1の中央位置に対して鉛直方向上方への吊り上げ荷重として作用することになり、これにより屋根架構1に作用する下向きの荷重の一部が相殺され、したがって斜材4および束材5に作用する軸圧縮力も自ずと軽減される。
この場合、屋根架構1に作用する上向きの合力は、錘体12の自重と索状体15の方向(水平に対する斜め上方への傾斜角)の調節のみで設定でき、したがって錘体12の自重と屋根架構1に対する索状体15の連結位置と回転支承13の設置高さを適正に設定することによって、軽減すべき荷重の大きさを自由にかつ幅広く設定できるから、斜材4および束材5に作用する軸圧縮力が座屈強度を超えないように設定することは容易であり、それらの座屈を防止するという所期の目的を容易に達成することができる。
【0016】
また、斜材4および束材5には屋根架構1の自重のみならず地震時に作用する下向きの地震力によっても大きな軸圧縮力が作用するが、その際には同時に錘体12にも下向きの地震力が作用し、それは索状体15および回転支承13を介して屋根架構1に対しては上向きの力として作用するから、それらが相殺されて地震時にも斜材4および束材5に大きな軸圧縮力が作用することを回避することができ、優れた耐震補強効果が得られる。
【0017】
本実施形態の耐震補強構造によれば、上記構成の上下制震機構Aを設置することで屋根架構1に対して上述したような優れた耐震耐震補強が得られることはもとより、上下制震機構Aは既存の屋根架構1に対して単に索状体15を連結し、その索状体15を構造体6の上部に設置した回転支承13に巻回して錘体12を単に吊り下げるだけの極めて簡単な構成であって屋根架構1自体に対する改修は不要であるから、それを設置するために何ら面倒な工事や複雑な機構を必要とせず、したがって従来の各種補強手法に比べて工費や工期においても有利である。しかも、上下制震機構Aの全体を建屋の外部(屋根架構1の上方かつ構造体6の外側)に設置するだけであるから建屋内での作業は不要であり、したがって施設を供用しつつ外部からの作業のみで実施することも可能であって極めて合理的であり有効である。
【0018】
なお、上記のように上下制震機構Aの全体を建屋(構造物)の外部に設置することから、必要に応じて上下制震機構Aを屋外仕様としたり、索状体15の屋根面への連結点に適宜の雨仕舞を施せば良い。
また、回転支承13は単なる滑車(シーブ)からなるものでも良いが、その回転支承13に適度の粘性抵抗や摩擦抵抗を与えて適度の回転抵抗力を持たせることにより、地震時に錘体12に生じる上下振動を減衰せしめるロータリーダンパーとして機能させることも考えられ、それにより地震時における錘体12および屋根架構1の上下振動を速やかに減衰させ得て、より優れた制震効果を得ることができる。
【0019】
また、錘体12は単に懸垂した状態で吊り支持することでも良いが、図示しているように水平振れ止めとして機能する適宜のガイド機構17を介して構造体6に対して支持することが望ましく、それによれば錘体12の不用意な水平振動が拘束されて構造体6に衝突してしまうようなことを防止することができる。
ガイド機構17としては、錘体12の上下方向の変位や振動を拘束することなく水平方向の振れ止め機能のみを有するリニアベアリング形式のものが好適に採用可能であるが、上述したように回転支承13をロータリーダンパーとすることに代えて、あるいはそれに加えて、そのガイド機構17にも適度の抵抗を持たせてこれを錘体12の上下振動を減衰させるためのダンパーとして機能させることも可能である。
【0020】
さらに、上下制震機構Aに地震時における屋根架構1の万一の崩落を防止するためのフェールセーフ機能を持たせることも可能である。
すなわち、回転支承13から吊り支持されている錘体12の直上位置に、錘体12の上方への過大変位を拘束するためのストッパー18を設置して構造体6に固定しておき、その内側に索状体15を挿通させておくことにより、仮に大地震時に屋根架構1が崩落する事態となった際には索状体15に引き摺られて上昇する錘体12をストッパー18に係止してそれ以上の上昇を拘束することができ、それにより崩落しようとする屋根架構1を索状体15により吊り支持してそれ以上の崩落を防止できる。したがって、この上下制震機構Aがフェールセーフ機構としても機能して屋根架構1が建屋内に完全に崩落してしまうという重大事態に至ることを未然に防止することができ、施設に対する安全性と信頼性をさらに向上させることができる。
【0021】
以上で本発明の一実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、要は錘体の自重を屋根架構に対する上方への吊り上げ荷重として作用させれば良いのであって、その限りにおいて各部の具体的な構成は任意であり、たとえば以下に列挙するような様々な設計的変更や応用が可能である。
【0022】
索状体15としてはPC鋼線を用いることが現実的であるが、所望の引張強度と回転支承13に巻回し得る程度の柔軟性を有するものであれば適宜の索状体が使用可能である。勿論、回転支承13も索状体15を巻回し得るものであれば適宜の構成のものが採用可能である。
また、上記実施形態のように上下制震機構Aを屋根架構1の両側に対称配置すれば、両側から作用する斜め上方への吊り上げ荷重の合力を鉛直方向上方への吊り上げ荷重として作用させることができるし、構造物の両側に作用する水平荷重が自ずと相殺されるので通常はそのようにすることが現実的ではあるが、上下制震機構Aを片側に設けることのみでも斜め上方への吊り上げ荷重の鉛直成分は鉛直方向上方への吊り上げ荷重として作用するから、それで充分な場合は上下制震機構Aは必ずしも両側に対称配置することはない。ただし、その場合は屋根架構および構造体に対して一方向への水平荷重が作用するからそれに対する考慮が必要である。
あるいは、上下制震機構Aを屋根架構1の両側に対称配置するのみならず、屋根架構が2方向トラスや立体トラスのようにそれ自体で平面的な構造であるような場合には、屋根架構の全周囲に4基ないしそれ以上の多数の上下制震機構Aを放射状に配置して各方向から斜め上向きの吊り上げ荷重を作用させることにより、それらの全体としての合力を鉛直方向上方に向けて作用させることも考えられる。
【0023】
上記実施形態では上下制震機構Aの全体を建屋(構造物)の外部に設置するようにしたが、それに代えて、上下制震機構Aの全体を建屋の内部に設置することも可能であり、その一例を図4〜図6に示す(上記実施形態と同一構成要素には同一符号を付してある)。
本例では、図5〜図6に示すように鉄骨トラスの両側にそれぞれ索状体15を配置し、それらの一端を連結治具16を介して下弦材3の中央部に対して連結するとともに、その連結点よりも上方ではあるが屋根面よりは下方の屋内に各索状体15を巻回する回転支承13を設置して、それら回転支承13から錘体12を構造体6の内部において懸垂して吊り支持するようにしたものである。
これによれば、上記実施形態と同様に錘体12の自重を屋根架構に対して鉛直方向上方への吊り上げ荷重として作用させて優れた耐震補強効果が得られることはもとより、上下制震機構Aを屋内仕様とできるし、屋根面に対する雨仕舞も不要である。また、屋根架構1としての鉄骨トラスの梁成の範囲内を上下制震機構Aの設置スペースとして有効に活用することができるし、索状体15を鉄骨トラスの両側に配置しているので鉄骨トラスと干渉することはなく、下弦材3のレベルに設けられる水平ブレースや天井クレーン11との干渉も支障なく回避し得る。
ただし、この場合には上下制震機構Aを設置するために若干の建屋内ので作業も必要となるから、それが許容される場合に限定される。
また、屋根架構1には上下制震機構Aによる上方への吊り上げ荷重に相当する軸圧縮力も加わることになるので、必要であればたとえば図示しているように連結治具16の直上位置に補強用束材19を追加したり、その周囲の束材5や斜材6に対して適宜の補強を行えば良い。勿論、その場合に必要とされる補強は上下制震機構Aのない場合に較べて遙かに簡易で済む。
【0024】
なお、本発明は上記実施形態のように原子力発電施設における建屋の屋根架構としての鉄骨トラスに適用することが最適であるが、本発明はそれに限らず、構造物の用途や、屋根架構の構造形式やその形態の如何を問わず、耐震補強が必要とされる屋根架構全般を対象として広く一般に適用可能であることは言うまでもない。
さらに、本発明は既存の構造物の屋根架構に対する耐震補強策としてのみならず、新設構造物の屋根架構の構造としても適用可能であり、その場合は上下制震機構の設置を前提として屋根架構の構造を軽減した設計とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の耐震補強構造の一実施形態を示す要部正面図である。
【図2】同、要部断面図(図1におけるII−II線視図)である。
【図3】同、要部側面図(図1におけるIII−III線視図)である。
【図4】同、他の構成例を示す要部正面図である。
【図5】同、要部断面図(図4におけるV−V線視図)である。
【図6】同、要部側面図(図4におけるVI−VI線視図)である。
【符号の説明】
【0026】
A 上下制震機構
1 屋根架構
2 上弦材
3 下弦材
4 斜材
5 束材
6 構造体
7 柱
8 梁
9 壁
10 屋根材
11 天井クレーン
12 錘体
13 回転支承
14 架台
15 索状体(PC鋼線)
16 連結治具
17 ガイド機構
18 ストッパー
19 補強用束材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造体の上部に屋根架構を架設してなる構造物に適用され、前記屋根架構に生じる上下方向の振動によって作動する上下制震機構により該屋根架構に対する耐震補強効果を得る耐震補強構造であって、
前記上下制震機構は、前記構造体の上部に設置した回転支承にPC鋼線等の索状体を巻回し、該索状体の一端を前記屋根架構に連結するとともに、該索状体の他端に連結した錘体を前記回転支承より直下に懸垂して吊り支持してなり、
前記上下制震機構における前記錘体の自重を前記索状体および前記回転支承を介して前記屋根架構を斜め上方に引き上げる吊り上げ荷重として作用せしめることにより、該吊り上げ荷重により前記屋根架構に作用する鉛直方向下向きの荷重の一部を相殺してなることを特徴とする屋根架構の耐震補強構造。
【請求項2】
請求項1記載の屋根架構の耐震補強構造であって、
前記上下制震機構を前記構造物の外部に設置して、前記索状体の一端を前記屋根架構の上部に対して連結するとともに、前記回転支承を該連結点よりも上方かつ前記屋根架構の上部に設けられる屋根面よりも上方位置に設置し、前記錘体を前記構造体の外部において吊り支持してなることを特徴とする屋根架構の耐震補強構造。
【請求項3】
請求項1記載の屋根架構の耐震補強構造であって、
前記上下制震機構を前記構造物の内部に設置して、前記索状体の一端を前記屋根架構の下部に対して連結するとともに、前記回転支承を該連結点よりも上方かつ前記屋根架構の上部に設けられる屋根面よりも下方位置に設置し、前記錘体を前記構造体の内部において吊り支持してなることを特徴とする屋根架構の耐震補強構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の屋根架構の耐震補強構造であって、
前記上下制震機構を前記屋根架構の中心を挟んでその両側に対称配置することにより、、各上下制震機構により前記屋根架構に作用する斜め上方への吊り上げ荷重の合力を前記屋根架構の中央位置に対して鉛直方向上向きの荷重として作用せしめることを特徴とする屋根架構の耐震補強構造。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の屋根架構の耐震補強構造であって、
前記上下制震機構における前記回転支承に回転抵抗力を持たせることにより、該回転支承を地震時に前記錘体に生じる上下振動を減衰せしめるロータリーダンパーとして機能せしめることを特徴とする屋根架構の耐震補強構造。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の屋根架構の耐震補強構造であって、
前記上下制震機構における前記錘体を、水平振れ止めとしてのガイド機構を介して前記構造体に対して上下方向に振動可能に支持してなることを特徴とする屋根架構の耐震補強構造。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の屋根架構の耐震補強構造であって、
前記上下制震機構に前記錘体の上方への過大変位を拘束するストッパーを備えることにより、該上下制震機構を前記屋根架構の崩落の際には該屋根架構を吊り支持してその崩落を防止するためのフェールセーフ機構として機能させることを特徴とする屋根架構の耐震補強構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−191601(P2009−191601A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−223314(P2008−223314)
【出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】