屋根構造及び植栽屋根形成方法
【課題】屋根の下方からでも植栽部を観賞でき、植栽部の美しさをより生かし易くすると共に、土が流下しにくい植栽部を効率よく形成できるようにする。
【解決手段】傾斜した屋根B2上に植栽部Sを設け、植栽部Sの中に、植栽部Sの土1を担持してズレ落ち難くする土支持用ネット5が設けてあり、屋根B2の傾斜下手部10に、植栽部Sの土1を受け止める受止部11を設けてある屋根構造において、受止部11は、屋根B2下方から植栽部Sを観賞自在な貫通穴13aが形成されている網体11Aを、植栽部Sの傾斜下手縁部を覆った状態に設けて構成してあり、その網体11Aの貫通穴13aは、土支持用ネット5の貫通穴より小さく形成してある。
【解決手段】傾斜した屋根B2上に植栽部Sを設け、植栽部Sの中に、植栽部Sの土1を担持してズレ落ち難くする土支持用ネット5が設けてあり、屋根B2の傾斜下手部10に、植栽部Sの土1を受け止める受止部11を設けてある屋根構造において、受止部11は、屋根B2下方から植栽部Sを観賞自在な貫通穴13aが形成されている網体11Aを、植栽部Sの傾斜下手縁部を覆った状態に設けて構成してあり、その網体11Aの貫通穴13aは、土支持用ネット5の貫通穴より小さく形成してある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾斜した屋根上に植栽部を設け、前記植栽部の土を受け止める受止部を、前記屋根の傾斜下手部に設けてある屋根構造、及び、傾斜した屋根上に沿って土を積層させて植栽部を形成する植栽屋根形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の屋根構造としては、図11に示すように、所定の角度に傾斜した屋根B2上に土1を積層させて形成した植栽部Sを設け、前記受止部11としては、前記屋根B2の傾斜下手縁部にコンクリートを打設して、屋根上面に張り出し状態の立ち上がり壁部20を形成したものがあり、この立ち上がり壁部20によって土1を堰き止めるように構成してあった。
また、この種の植栽屋根形成方法としては、図11に示すように、屋根B2の傾斜下手縁部に、屋根上面に張り出し状態に立ち上がり壁部20を一体的に形成した後、屋根B2上に土1を積層させて植栽部Sを形成していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した従来の屋根構造によれば、前記立ち上がり壁部の高さ寸法は、土の流下を防止するために植栽部の厚み寸法と同じか、それより大きく設定する必要があり、建物に近い位置から前記屋根を見上げた場合に、前記立ち上がり壁部ばかりが目について肝心の植栽部が見え難く、せっかく設けられた植栽部の美しさを生かし難い問題点がある。
また、上述した従来の植栽屋根形成方法によれば、前記立ち上がり壁部によって土の流下を防止するわけであるから、立ち上がり壁部、及び、その立ち上がり壁部の屋根への取付部分、及び、屋根の被取付部分に土圧や水圧が作用することとなり、その力を受け止められるように、立ち上がり壁部や各取付部分を頑丈に形成しておく必要があり、立ち上がり壁部の形成手間が掛かり、植栽屋根形成効率が低くなり易いと言った問題点がある。
【0004】
従って、本発明の目的は、上記問題点を解消し、屋根の下方からでも植栽部を観賞でき、植栽部の美しさをより生かし易い屋根構造を提供する点、及び、効率よく植栽部を形成することが可能な植栽屋根形成方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の特徴構成は、図2・9・10に例示するごとく、傾斜した屋根B2上に植栽部Sを設け、前記植栽部Sの土1を受け止める受止部11を、前記屋根B2の傾斜下手部に設けてある屋根構造において、前記受止部11は、前記植栽部Sの傾斜下手縁部を覆った状態で、屋根下方から前記植栽部Sを観賞自在な透視可能部13を設けてあるところにある。
【0006】
本発明の第1の特徴構成によれば、前記受止部は、前記植栽部の傾斜下手縁部を覆った状態で、屋根下方から前記植栽部を観賞自在な透視可能部を設けてあるから、前記受止部によって植栽部の土を受け止めながらも、植栽部の傾斜下手縁部は、前記透視可能部を通して植栽部を見ることが可能となる。
従って、建物に近い位置から屋根を見上げた場合でも、植栽部を直に見ることが可能となり、植栽部の美しさを生かした建物外観を構成することが可能となる。
【0007】
本発明の第2の特徴構成は、図1〜3に例示するごとく、前記受止部11は、網体11Aで構成してあるところにある。
【0008】
本発明の第2の特徴構成によれば、請求項1の発明による作用効果を叶えるにあたり、網体は、例えば、植栽部の傾斜下手縁部を覆う状態に設置する等して、構成部材の引張強度で植栽部の流下を受け止めるように配置すれば、前記構成部材を細くできるから目立ち難くすることが可能で、建物に近い位置から屋根を見上げた際の植栽部を、網体の隙間(透視可能部に相当)を通して、より自然に美しく観賞することが可能となる。
一方、植栽部の草木の生育に関しては、前記網体の隙間を通して表面側へ伸びることが許容されるから、草木の生長につれて前記網体がより目立ち難くなり、屋根の傾斜下手縁部を、植栽部として、より自然に美しく見せることが可能となる。
また、受止部の屋根への取り付けに関しても、従来のように、立ち上がり壁部を屋根と一体に形成するといった手間を掛けずに、簡単に取り付けることが可能となり、植栽屋根の形成作業効率を向上させることが可能となる。
更には、網体は設置する前には、折り畳んだり、巻き取ったりといったコンパクトな姿にしておくことが可能で、取扱性を高くできるから、材料の保管や搬入の作業性を向上させることが可能となる。また、この取扱性の良さによれば、網体の敷設作業に関しても同様である。
【0009】
本発明の第3の特徴構成は、図2に例示するごとく、前記網体11Aは、下縁部を前記屋根B2に固定すると共に上縁部を前記植栽部Sに固定してあるところにある。
【0010】
本発明の第3の特徴構成によれば、請求項2の発明による作用効果を叶えることができるのに加えて、網体下縁部を屋根に固定してあることでズレ落ちを防止できると共に、網体上縁部を植栽部に固定してあるから、植栽部の傾斜下手縁部を網体で覆う状態に安定設置することが可能となる。
【0011】
本発明の第4の特徴構成は、図8に例示するごとく、傾斜した屋根B2上に沿って土1を積層させて植栽部Sを形成する植栽屋根形成方法において、前記屋根B2の傾斜下手部に、網体11Aを巻回状態にして配置すると共に、その端部を前記屋根B2に固定した後、前記屋根B2上に植栽部Sを形成し、前記網体11Aを巻き戻しながら前記植栽部S上に被せて固定するところにある。
【0012】
本発明の第4の特徴構成によれば、巻回状態の網体は、広げた状態のものに比べて断面係数が大きくなるから、姿勢が安定しやすくなる。従って、屋根の傾斜下手部に網体を巻回状態にして配置してあることによって、土を入れて植栽部を形成する際に、土こぼれ防止の堤防としての機能や、芝や草等を張る際の定規としての機能を果たすことが可能となる。従って、植栽部の形成作業効率を向上させることが可能となる。
また、形成した植栽部上に網体を巻き戻しながら被せることで、植栽部傾斜下手部を、網体で覆う状態に簡単に施工することが可能となり、植栽部の土の流下防止を図れると共に、植栽部の傾斜下手縁部を、網体の隙間を通して観賞することが可能となり、植栽部の美しさを生かした建物外観を構成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。尚、図面において従来例と同一の符号で表示した部分は、同一又は相当の部分を示している。
【0014】
図1は、当該発明の屋根構造の一つの実施形態を備えた建物Bを示すものである。
本実施形態の建物Bは、建物本体部B1と、その上に形成した屋根B2とを一体的に構成した鉄筋コンクリート造の建物である。
【0015】
前記屋根B2は、図1・2に示すように、建物Bから離れた位置から見て上面部(後述する植栽部)が見える程度に傾斜させて構成してある。
また、前記屋根B2上には、土1を入れた植栽部Sを設けてあり、この植栽部Sに生育する草木を、建物Bから離れた位置で観賞できるように構成してある。
【0016】
そして、前記屋根B2上面には、図2・3・5に示すように、塩化ビニル製の防水シート4を接着固定してあり、更にその上には、前記植栽部S内に水を保水可能な保水マット2を、前記防水層上に重なる状態に設けてある。
また、前記保水マット2の上方には、防水シート4上面に突出した状態に固定された複数の支持部材3で土支持用ネット5が支持してあり、このネット5が、植栽部Sの土1を担持してズレ落ち難くすることが可能となる。
【0017】
因みに、前記防水シート4は、屋根B2に固定された防水シート固定金具6に接着によって取り付け固定してある。また、隣接するシートどうしは溶着によって確実に一体化を図ってある。
防水シート4の素材に関しては、塩化ビニルを使用してあることによって、適度な強度を確保することが可能となり、土1のズレ止め効果の強化と、植栽部Sの根の貫通防止をも図ることが可能となる。
尚、防水シート固定金具6に関しては、例えば、図4に示すように、直径50mm程度のステンレス鋼製円板の上面にポリエステル樹脂等の溶けて接着性を発揮する熱可塑性合成樹脂からなるホットメルト接着層Hを被覆したワッシャ本体6Aによって構成してある。そして、ワッシャ本体6Aは、屋根B2上に、縦横に所定の間隔をあけた各位置に配置され、ビス止めしてある。
そして、屋根B2への防水シート4の固定は、ワッシャ本体6Aの上に被さった防水シート4部分上方に電磁誘導加熱装置をセットして、ワッシャ本体6Aを電磁誘導加熱することによって、前記ホットメルト接着層Hを溶かし、ワッシャ本体6Aと防水シート4とを接着することができる(図5参照)。
【0018】
前記保水マット2は、吸水ポリマー製の繊維を絡ませてマット状に成形したマット本体(保水本体に相当)2Aと、前記防水シート4への接着部2Bとを一体化して構成してある。
前記マット本体2Aを構成する繊維材は、例えば、デンプン系、セルロース系、合成ポリマー系等の吸水ポリマーによって構成することができる。
尚、前記デンプン系及び前記セルロース系には、それぞれグラフト重合系とカルボキシメチル化系とがあり、前記合成ポリマー系には、ポリアクリル酸塩系、ポリビニルアルコール系、ポリアクリルアミド系、ポリオキシエチレン系など種々の種類がある。
また、前記接着部2Bは、塩化ビニルを主成分とした接着シートで構成してあり、溶剤を塗布して防水シート4に当接させて押圧することで保水マット2を防水シート4に接着することができる。そして、前記接着部2Bも防水シート4も共に塩化ビニルが主成分であるから、前記溶剤によって溶着する際に、両者のなじみがよく、強力に接着することができる。
但し、防水シート4への前記支持部材3の取付部分に関しては、支持部材3のベース部分3aに被さるように配置してある。そして、支持部材3の本体部分3bが保水マット2を貫通して上方に突出している。
当該保水マット2を防水シート4上に沿わせて接着してあることによって、植栽部Sに浸入した水は、屋根勾配に沿って防水シート4上を勾配下手側に流され、その際に、前記保水マット2において充分に保水される。従って、土1が乾いてきた場合、保水マット2中に保水された水分が植栽部Sの草木に供給され、渇水状態となるのを緩和することが可能となる。
【0019】
前記支持部材3は、塩化ビニルによって形成してあり、図6に示すように、ベース部分3aと本体部分3bとを備えて構成してある。
前記ベース部分3aは、円板で構成してあり、前記本体部分3bは、前記円板の中央部分に一体的に且つ立設状態に設けられた樹脂ボルトによって構成してある。
そして、支持部材3は、円板形状のベース部分3aを、防水シート4上に面接着することによって、本体部分3bが、屋根面上に突出する状態に設置されている。また、前記本体部分3bには、外周部の雄ネジ部に係止自在な一対の係止リング部材3cを着脱自在に設けてあり、これら係止リング部材3c間に、前記支持用ネット5を挟んで挟持固定することができる。従って、一方の係止リング部材3cを本体部分3bに係止させた状態で、前記ネット5の貫通穴(前記土1が植栽部Sの厚み方向に通過自在に構成してある)5bに本体部分3bを挿通させて前記一方の係止リング部材3c上にネット5を載置し、引き続き他方の係止リング部材3cを本体部分3bに係止させながら、ネット5を両係止リング部材3cで挟持することで、ネット5を支持部材3で支持固定することができる。
また、係止リング部材3cについて説明すると、前記ベース部分3a・本体部分3bと同様に、合成樹脂によって構成してあり、図7に示すように、リング本体7の内周部に薄肉の複数の係止片7aを一体的に設けて構成してある。
前記各係止片7aは、リング軸芯に対して一方側へ傾斜する姿勢に形成してあり、前記樹脂ボルトからなる前記本体部分3bの一端側から当該係止リング部材3cをボルト軸芯に沿って嵌合操作する際には、前記各係止片7aが撓み易い係止状態となり、容易に嵌合させることが出来ながら、一度、嵌合させると、逆方向には、前記係止片7aが突っ張って抜け難くなるように構成してある。
因みに、本体部分3bへの係止リング部材3cの係止作用は、本体部分3bの外周雄ネジ部に係止片7aの先端部が係合することによって有効となる。また、本体部分3bから係止リング部材3cを取り外すには、ボルトからナットを外すのと同じ操作(前記雄ネジ部にそってボルト軸芯周りに係止リング部材3cを回転操作)することによって実施される。
また、本体部分3bに対する係止リング部材3cの係止位置は、変更することが可能であるから、ネット5の支持高さをも変更することが可能となり、例えば、植栽部Sの土層の設定厚み寸法や、生育させる草木の種類に応じて、前記ネット5の支持高さを好ましい値に調整することが容易に実施することができるようになる。前記本体部分3bと係止リング部材3cとを高さ変更手段8という。
【0020】
前記ネット5について説明すると、図3に示すように、並設された多数の縦線部と、並設された多数の横線部とが交差する状態に一体的に成形された樹脂製ネットであり、隣接する縦線部と隣接する横線部とで囲まれた空間が、前記貫通穴5bとして確保されている。この貫通穴5bは、植栽部Sの土1を貫通させることができる大きさに設定してあり、上述のようにネット5を各支持部材3で屋根B2上に支持した状態で、上から土1を被せた場合、前記貫通穴5bを通過してネット5の下側へも土1がまわるように考慮してある。
従って、ネット5を設置した後、植栽部Sに土1を充填しても、保水マット2上まで土が行き渡り、所定厚みまで土1を盛ることによって、ネット5を土中に埋設することが可能となる。その結果、このネット5が、植栽部Sの土1を担持して屋根傾斜に沿って土がズレ落ちるのを防止することが可能となる。
【0021】
また、植栽部Sのズレ落ち防止に関しては、上述のネット5と土1との担持作用を利用する点に加えて、屋根B2の傾斜下手部10に網体11Aからなる受止部11によって期待される土の受止作用をも利用して成されている。
【0022】
具体的には、図2に示すように、前記ネット5より目の細かい網体11Aが、前記支持部材3の内の最も屋根傾斜下手側に設置してあるものによって、下縁部を屋根B2に固定してある。
そして、前記網体11Aは、植栽部Sの傾斜下縁部を包み込む状態に配置されていると共に、その上縁部を、植栽部Sの表面に沿わせてフック状止め具Fによって固定されている。
前記網体11Aは、前記ネット5と同様に、並設された多数の縦線部11aと、並設された多数の横線部11bとが交差する状態に一体的に成形された樹脂製網体であり(図3参照)、隣接する縦線部11aと隣接する横線部11bとで囲まれた空間が、前記貫通穴(透視可能部13に相当)13aとして確保されている。この貫通穴11cは、前記ネット5の貫通穴5bより小さく形成されている。従って、この網体11Aで覆われた傾斜下縁部から、植栽部Sの土1が流下するのを受け止めやすい。但し、前記植栽部Sの草木が成長するに伴って、前記貫通穴11cを通して表面側に伸びることは許容できるものである。
更には、植栽部Sは、前記貫通穴13aを通して透けて見えるから、屋根に近づいても植栽部の下縁部を観賞することが可能となり、植栽屋根の美観性を向上させることが可能となる。
【0023】
次に、当該建物の屋根上植栽の形成方法について、その一例を挙げて説明する。
[1] 屋根B2上の所定の箇所に防水シート固定金具6を固定し、その上に、防水シート4を接着固定する。
[2] 防水シート4上面の所定の箇所に支持部材3を接着固定する。
[3] 保水マット2を、前記防水シート4の上に接着する。但し、前記支持部材3の設置個所については、支持部材3の本体部分3bが上方に突出する状態に貫通させる。
[4] 各支持部材3にわたって前記ネット5を配置すると共に、屋根傾斜下手側の支持部材3には、前記網体11Aも配置し、係止リング部材3cで固定する。但し、網体11Aは、図8に示すように、巻回状態にして配置しておく。
[5] 前記ネット5の上から土1を敷き詰めて、ネット5が充分、土中に納まる所定高さまで盛り上げる(図8(ロ)参照)。
[6] 前記土1の上に芝を張り、目砂を被せる(図8(ハ)参照)。
その際、前記巻回状態に網体11Aを配置してあることによって、芝張りの位置決めを簡単に実施することができる。
[7] 軒側端部で巻き取ってあった網体11Aを巻き広げて、土1の上部へ折り戻し、フック状止め具F等で端部を固定する(図8(ニ)参照)。こうすることによって、植栽部Sの軒側端縁部の土1及び芝をネット5で包み込むことができ、落下を防止できると共に、草木は網体11Aの貫通穴13aを通して軒側端縁部側に顔を出すことができ、建物斜め下方から植栽部Sを見上げた際に、端縁部まで草木が生育している状況を見ることができる美観性の高い屋根仕上がりとすることが可能となる。
【0024】
当該実施形態で説明した屋根構造によれば、前記網体11によって植栽部Sの下縁部を透視性を確保しながら包み込んで支持することができ、植栽部での土の流下抑制効果と、植栽屋根の美しさをより向上させる効果とを共に叶えることが可能となる。
【0025】
〔別実施形態〕
以下に他の実施の形態を説明する。
【0026】
〈1〉 建物の構造は、先の実施形態で説明した鉄筋コンクリート造に限るものではなく、例えば、鉄骨造や、鉄骨鉄筋コンクリート造、又は、木造、及び、それらの複合構造等、公知の建築構造を採用することが可能である。
〈2〉 前記ネット5に替えて、例えば、パンチングシートや、不織布等をずれ止め部材として設ける構成であってもよく、更には、それらを設けない構成であってもよい。
〈3〉 前記受止部11は、先の実施形態で説明した網体11Aで構成してあるものに限るものではなく、例えば、図9に示すように、従来の立ち上がり壁部20に替えて、ガラス板や合成樹脂板等の透明体によって立ち上がり壁部11Bを構成するものであってもよい。この場合、立ち上がり壁部11B(受止部11)全域が前記透視可能部13となり、植栽傾斜下手縁部の透視性をより向上させることが可能となる。
また、透明体・不透明体に係わらず、図10に示すように、複数のスリット14を形成した立ち上がり壁部11Cで受止部11を構成するものであってもよい。この場合は、前記スリット14が透視可能部13となる。
このように、受止部11としては、種々の形態で実施することが可能で、要するに、前記植栽部Sの傾斜下手縁部を覆った状態で、屋根下方から前記植栽部Sを観賞自在な透視可能部13を設けてあるものであればよく、それらを総称して受止部という。
従って、前記透視可能部13は、必ずしも、前記貫通穴13aで構成する必要はない。
〈4〉 また、前記受止部11を網体11Aで構成する場合であっても、前記網体11Aそのものの実施形態は種々あり、例えば、多数の貫通穴13aを備えた合成樹脂シートで構成したり、繊維材を網状に編んで構成したり、繊維材を交差配置した状態でそれぞれを接着して網状に形成したりするものであってもよい。
また、網体11Aの構成材料を、無色や透明色にすることも可能で、この場合は、受止部の透視性をより向上させて植栽部の美観性を向上させることが可能となる。
また、網体11Aの構成材料を、植栽部に生育させる草木の色に合わせた色彩(例えば、緑色や黄色等の草木色)となるように構成することも可能で、この場合は、網体そのものを目立ち難くして植栽部の美観性を向上させることが可能となる。
〈5〉 植栽部に生育させる植物は、先の実施形態で説明したように芝に限るものではなく、他の草木であってもよい。
〈6〉 前記防水層4は、先の実施形態で説明した塩化ビニル製の防水シートを使用して構成してあるものに限るものではなく、ゴムやTPE(サーモ・プラスチック・エラストマ)製のシート、又は、その他の素材からなる防水シートであってもよい。更には、成形シートに限るものではなく、防水材の塗布によって防水層を構成するものであってもよく、それらを総称して防水層という。
また、防水層4の屋根B2への固定は、先の実施形態で説明した防水シート固定金具6によって行われる以外に、例えば、屋根B2に全面接着によって実施するものであってもよい。
〈7〉 先の実施形態で説明に用いた『接着』とは、被接合物同士を、接着材を介在させて接合するものに限らず、例えば、被接合物同士を溶かして(融かして)一体接合するものも含むものである。従って、接着材接着や、溶剤溶着や、熱融着等を総称して接着と言う。
【0027】
尚、上述のように、図面との対照を便利にするために符号を記したが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】建物を示す一部切欠き斜視図
【図2】屋根の詳細を示す要部断面図
【図3】網体の取付状況を示す一部切欠き斜視図
【図4】防水シート固定金具を示す斜視図
【図5】防水シートの固定状況を示す要部断面図
【図6】支持部材を示す分解斜視図
【図7】支持部材の取付状況を示す断面図
【図8】植栽の形成手順を示す斜視図
【図9】別実施形態の屋根構造を示す斜視図
【図10】別実施形態の屋根構造を示す斜視図
【図11】従来の屋根構造を示す断面図
【符号の説明】
【0029】
1 土
11 受止部
11A 網体
13 透視可能部
B2 屋根
S 植栽部
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾斜した屋根上に植栽部を設け、前記植栽部の土を受け止める受止部を、前記屋根の傾斜下手部に設けてある屋根構造、及び、傾斜した屋根上に沿って土を積層させて植栽部を形成する植栽屋根形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の屋根構造としては、図11に示すように、所定の角度に傾斜した屋根B2上に土1を積層させて形成した植栽部Sを設け、前記受止部11としては、前記屋根B2の傾斜下手縁部にコンクリートを打設して、屋根上面に張り出し状態の立ち上がり壁部20を形成したものがあり、この立ち上がり壁部20によって土1を堰き止めるように構成してあった。
また、この種の植栽屋根形成方法としては、図11に示すように、屋根B2の傾斜下手縁部に、屋根上面に張り出し状態に立ち上がり壁部20を一体的に形成した後、屋根B2上に土1を積層させて植栽部Sを形成していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した従来の屋根構造によれば、前記立ち上がり壁部の高さ寸法は、土の流下を防止するために植栽部の厚み寸法と同じか、それより大きく設定する必要があり、建物に近い位置から前記屋根を見上げた場合に、前記立ち上がり壁部ばかりが目について肝心の植栽部が見え難く、せっかく設けられた植栽部の美しさを生かし難い問題点がある。
また、上述した従来の植栽屋根形成方法によれば、前記立ち上がり壁部によって土の流下を防止するわけであるから、立ち上がり壁部、及び、その立ち上がり壁部の屋根への取付部分、及び、屋根の被取付部分に土圧や水圧が作用することとなり、その力を受け止められるように、立ち上がり壁部や各取付部分を頑丈に形成しておく必要があり、立ち上がり壁部の形成手間が掛かり、植栽屋根形成効率が低くなり易いと言った問題点がある。
【0004】
従って、本発明の目的は、上記問題点を解消し、屋根の下方からでも植栽部を観賞でき、植栽部の美しさをより生かし易い屋根構造を提供する点、及び、効率よく植栽部を形成することが可能な植栽屋根形成方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の特徴構成は、図2・9・10に例示するごとく、傾斜した屋根B2上に植栽部Sを設け、前記植栽部Sの土1を受け止める受止部11を、前記屋根B2の傾斜下手部に設けてある屋根構造において、前記受止部11は、前記植栽部Sの傾斜下手縁部を覆った状態で、屋根下方から前記植栽部Sを観賞自在な透視可能部13を設けてあるところにある。
【0006】
本発明の第1の特徴構成によれば、前記受止部は、前記植栽部の傾斜下手縁部を覆った状態で、屋根下方から前記植栽部を観賞自在な透視可能部を設けてあるから、前記受止部によって植栽部の土を受け止めながらも、植栽部の傾斜下手縁部は、前記透視可能部を通して植栽部を見ることが可能となる。
従って、建物に近い位置から屋根を見上げた場合でも、植栽部を直に見ることが可能となり、植栽部の美しさを生かした建物外観を構成することが可能となる。
【0007】
本発明の第2の特徴構成は、図1〜3に例示するごとく、前記受止部11は、網体11Aで構成してあるところにある。
【0008】
本発明の第2の特徴構成によれば、請求項1の発明による作用効果を叶えるにあたり、網体は、例えば、植栽部の傾斜下手縁部を覆う状態に設置する等して、構成部材の引張強度で植栽部の流下を受け止めるように配置すれば、前記構成部材を細くできるから目立ち難くすることが可能で、建物に近い位置から屋根を見上げた際の植栽部を、網体の隙間(透視可能部に相当)を通して、より自然に美しく観賞することが可能となる。
一方、植栽部の草木の生育に関しては、前記網体の隙間を通して表面側へ伸びることが許容されるから、草木の生長につれて前記網体がより目立ち難くなり、屋根の傾斜下手縁部を、植栽部として、より自然に美しく見せることが可能となる。
また、受止部の屋根への取り付けに関しても、従来のように、立ち上がり壁部を屋根と一体に形成するといった手間を掛けずに、簡単に取り付けることが可能となり、植栽屋根の形成作業効率を向上させることが可能となる。
更には、網体は設置する前には、折り畳んだり、巻き取ったりといったコンパクトな姿にしておくことが可能で、取扱性を高くできるから、材料の保管や搬入の作業性を向上させることが可能となる。また、この取扱性の良さによれば、網体の敷設作業に関しても同様である。
【0009】
本発明の第3の特徴構成は、図2に例示するごとく、前記網体11Aは、下縁部を前記屋根B2に固定すると共に上縁部を前記植栽部Sに固定してあるところにある。
【0010】
本発明の第3の特徴構成によれば、請求項2の発明による作用効果を叶えることができるのに加えて、網体下縁部を屋根に固定してあることでズレ落ちを防止できると共に、網体上縁部を植栽部に固定してあるから、植栽部の傾斜下手縁部を網体で覆う状態に安定設置することが可能となる。
【0011】
本発明の第4の特徴構成は、図8に例示するごとく、傾斜した屋根B2上に沿って土1を積層させて植栽部Sを形成する植栽屋根形成方法において、前記屋根B2の傾斜下手部に、網体11Aを巻回状態にして配置すると共に、その端部を前記屋根B2に固定した後、前記屋根B2上に植栽部Sを形成し、前記網体11Aを巻き戻しながら前記植栽部S上に被せて固定するところにある。
【0012】
本発明の第4の特徴構成によれば、巻回状態の網体は、広げた状態のものに比べて断面係数が大きくなるから、姿勢が安定しやすくなる。従って、屋根の傾斜下手部に網体を巻回状態にして配置してあることによって、土を入れて植栽部を形成する際に、土こぼれ防止の堤防としての機能や、芝や草等を張る際の定規としての機能を果たすことが可能となる。従って、植栽部の形成作業効率を向上させることが可能となる。
また、形成した植栽部上に網体を巻き戻しながら被せることで、植栽部傾斜下手部を、網体で覆う状態に簡単に施工することが可能となり、植栽部の土の流下防止を図れると共に、植栽部の傾斜下手縁部を、網体の隙間を通して観賞することが可能となり、植栽部の美しさを生かした建物外観を構成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。尚、図面において従来例と同一の符号で表示した部分は、同一又は相当の部分を示している。
【0014】
図1は、当該発明の屋根構造の一つの実施形態を備えた建物Bを示すものである。
本実施形態の建物Bは、建物本体部B1と、その上に形成した屋根B2とを一体的に構成した鉄筋コンクリート造の建物である。
【0015】
前記屋根B2は、図1・2に示すように、建物Bから離れた位置から見て上面部(後述する植栽部)が見える程度に傾斜させて構成してある。
また、前記屋根B2上には、土1を入れた植栽部Sを設けてあり、この植栽部Sに生育する草木を、建物Bから離れた位置で観賞できるように構成してある。
【0016】
そして、前記屋根B2上面には、図2・3・5に示すように、塩化ビニル製の防水シート4を接着固定してあり、更にその上には、前記植栽部S内に水を保水可能な保水マット2を、前記防水層上に重なる状態に設けてある。
また、前記保水マット2の上方には、防水シート4上面に突出した状態に固定された複数の支持部材3で土支持用ネット5が支持してあり、このネット5が、植栽部Sの土1を担持してズレ落ち難くすることが可能となる。
【0017】
因みに、前記防水シート4は、屋根B2に固定された防水シート固定金具6に接着によって取り付け固定してある。また、隣接するシートどうしは溶着によって確実に一体化を図ってある。
防水シート4の素材に関しては、塩化ビニルを使用してあることによって、適度な強度を確保することが可能となり、土1のズレ止め効果の強化と、植栽部Sの根の貫通防止をも図ることが可能となる。
尚、防水シート固定金具6に関しては、例えば、図4に示すように、直径50mm程度のステンレス鋼製円板の上面にポリエステル樹脂等の溶けて接着性を発揮する熱可塑性合成樹脂からなるホットメルト接着層Hを被覆したワッシャ本体6Aによって構成してある。そして、ワッシャ本体6Aは、屋根B2上に、縦横に所定の間隔をあけた各位置に配置され、ビス止めしてある。
そして、屋根B2への防水シート4の固定は、ワッシャ本体6Aの上に被さった防水シート4部分上方に電磁誘導加熱装置をセットして、ワッシャ本体6Aを電磁誘導加熱することによって、前記ホットメルト接着層Hを溶かし、ワッシャ本体6Aと防水シート4とを接着することができる(図5参照)。
【0018】
前記保水マット2は、吸水ポリマー製の繊維を絡ませてマット状に成形したマット本体(保水本体に相当)2Aと、前記防水シート4への接着部2Bとを一体化して構成してある。
前記マット本体2Aを構成する繊維材は、例えば、デンプン系、セルロース系、合成ポリマー系等の吸水ポリマーによって構成することができる。
尚、前記デンプン系及び前記セルロース系には、それぞれグラフト重合系とカルボキシメチル化系とがあり、前記合成ポリマー系には、ポリアクリル酸塩系、ポリビニルアルコール系、ポリアクリルアミド系、ポリオキシエチレン系など種々の種類がある。
また、前記接着部2Bは、塩化ビニルを主成分とした接着シートで構成してあり、溶剤を塗布して防水シート4に当接させて押圧することで保水マット2を防水シート4に接着することができる。そして、前記接着部2Bも防水シート4も共に塩化ビニルが主成分であるから、前記溶剤によって溶着する際に、両者のなじみがよく、強力に接着することができる。
但し、防水シート4への前記支持部材3の取付部分に関しては、支持部材3のベース部分3aに被さるように配置してある。そして、支持部材3の本体部分3bが保水マット2を貫通して上方に突出している。
当該保水マット2を防水シート4上に沿わせて接着してあることによって、植栽部Sに浸入した水は、屋根勾配に沿って防水シート4上を勾配下手側に流され、その際に、前記保水マット2において充分に保水される。従って、土1が乾いてきた場合、保水マット2中に保水された水分が植栽部Sの草木に供給され、渇水状態となるのを緩和することが可能となる。
【0019】
前記支持部材3は、塩化ビニルによって形成してあり、図6に示すように、ベース部分3aと本体部分3bとを備えて構成してある。
前記ベース部分3aは、円板で構成してあり、前記本体部分3bは、前記円板の中央部分に一体的に且つ立設状態に設けられた樹脂ボルトによって構成してある。
そして、支持部材3は、円板形状のベース部分3aを、防水シート4上に面接着することによって、本体部分3bが、屋根面上に突出する状態に設置されている。また、前記本体部分3bには、外周部の雄ネジ部に係止自在な一対の係止リング部材3cを着脱自在に設けてあり、これら係止リング部材3c間に、前記支持用ネット5を挟んで挟持固定することができる。従って、一方の係止リング部材3cを本体部分3bに係止させた状態で、前記ネット5の貫通穴(前記土1が植栽部Sの厚み方向に通過自在に構成してある)5bに本体部分3bを挿通させて前記一方の係止リング部材3c上にネット5を載置し、引き続き他方の係止リング部材3cを本体部分3bに係止させながら、ネット5を両係止リング部材3cで挟持することで、ネット5を支持部材3で支持固定することができる。
また、係止リング部材3cについて説明すると、前記ベース部分3a・本体部分3bと同様に、合成樹脂によって構成してあり、図7に示すように、リング本体7の内周部に薄肉の複数の係止片7aを一体的に設けて構成してある。
前記各係止片7aは、リング軸芯に対して一方側へ傾斜する姿勢に形成してあり、前記樹脂ボルトからなる前記本体部分3bの一端側から当該係止リング部材3cをボルト軸芯に沿って嵌合操作する際には、前記各係止片7aが撓み易い係止状態となり、容易に嵌合させることが出来ながら、一度、嵌合させると、逆方向には、前記係止片7aが突っ張って抜け難くなるように構成してある。
因みに、本体部分3bへの係止リング部材3cの係止作用は、本体部分3bの外周雄ネジ部に係止片7aの先端部が係合することによって有効となる。また、本体部分3bから係止リング部材3cを取り外すには、ボルトからナットを外すのと同じ操作(前記雄ネジ部にそってボルト軸芯周りに係止リング部材3cを回転操作)することによって実施される。
また、本体部分3bに対する係止リング部材3cの係止位置は、変更することが可能であるから、ネット5の支持高さをも変更することが可能となり、例えば、植栽部Sの土層の設定厚み寸法や、生育させる草木の種類に応じて、前記ネット5の支持高さを好ましい値に調整することが容易に実施することができるようになる。前記本体部分3bと係止リング部材3cとを高さ変更手段8という。
【0020】
前記ネット5について説明すると、図3に示すように、並設された多数の縦線部と、並設された多数の横線部とが交差する状態に一体的に成形された樹脂製ネットであり、隣接する縦線部と隣接する横線部とで囲まれた空間が、前記貫通穴5bとして確保されている。この貫通穴5bは、植栽部Sの土1を貫通させることができる大きさに設定してあり、上述のようにネット5を各支持部材3で屋根B2上に支持した状態で、上から土1を被せた場合、前記貫通穴5bを通過してネット5の下側へも土1がまわるように考慮してある。
従って、ネット5を設置した後、植栽部Sに土1を充填しても、保水マット2上まで土が行き渡り、所定厚みまで土1を盛ることによって、ネット5を土中に埋設することが可能となる。その結果、このネット5が、植栽部Sの土1を担持して屋根傾斜に沿って土がズレ落ちるのを防止することが可能となる。
【0021】
また、植栽部Sのズレ落ち防止に関しては、上述のネット5と土1との担持作用を利用する点に加えて、屋根B2の傾斜下手部10に網体11Aからなる受止部11によって期待される土の受止作用をも利用して成されている。
【0022】
具体的には、図2に示すように、前記ネット5より目の細かい網体11Aが、前記支持部材3の内の最も屋根傾斜下手側に設置してあるものによって、下縁部を屋根B2に固定してある。
そして、前記網体11Aは、植栽部Sの傾斜下縁部を包み込む状態に配置されていると共に、その上縁部を、植栽部Sの表面に沿わせてフック状止め具Fによって固定されている。
前記網体11Aは、前記ネット5と同様に、並設された多数の縦線部11aと、並設された多数の横線部11bとが交差する状態に一体的に成形された樹脂製網体であり(図3参照)、隣接する縦線部11aと隣接する横線部11bとで囲まれた空間が、前記貫通穴(透視可能部13に相当)13aとして確保されている。この貫通穴11cは、前記ネット5の貫通穴5bより小さく形成されている。従って、この網体11Aで覆われた傾斜下縁部から、植栽部Sの土1が流下するのを受け止めやすい。但し、前記植栽部Sの草木が成長するに伴って、前記貫通穴11cを通して表面側に伸びることは許容できるものである。
更には、植栽部Sは、前記貫通穴13aを通して透けて見えるから、屋根に近づいても植栽部の下縁部を観賞することが可能となり、植栽屋根の美観性を向上させることが可能となる。
【0023】
次に、当該建物の屋根上植栽の形成方法について、その一例を挙げて説明する。
[1] 屋根B2上の所定の箇所に防水シート固定金具6を固定し、その上に、防水シート4を接着固定する。
[2] 防水シート4上面の所定の箇所に支持部材3を接着固定する。
[3] 保水マット2を、前記防水シート4の上に接着する。但し、前記支持部材3の設置個所については、支持部材3の本体部分3bが上方に突出する状態に貫通させる。
[4] 各支持部材3にわたって前記ネット5を配置すると共に、屋根傾斜下手側の支持部材3には、前記網体11Aも配置し、係止リング部材3cで固定する。但し、網体11Aは、図8に示すように、巻回状態にして配置しておく。
[5] 前記ネット5の上から土1を敷き詰めて、ネット5が充分、土中に納まる所定高さまで盛り上げる(図8(ロ)参照)。
[6] 前記土1の上に芝を張り、目砂を被せる(図8(ハ)参照)。
その際、前記巻回状態に網体11Aを配置してあることによって、芝張りの位置決めを簡単に実施することができる。
[7] 軒側端部で巻き取ってあった網体11Aを巻き広げて、土1の上部へ折り戻し、フック状止め具F等で端部を固定する(図8(ニ)参照)。こうすることによって、植栽部Sの軒側端縁部の土1及び芝をネット5で包み込むことができ、落下を防止できると共に、草木は網体11Aの貫通穴13aを通して軒側端縁部側に顔を出すことができ、建物斜め下方から植栽部Sを見上げた際に、端縁部まで草木が生育している状況を見ることができる美観性の高い屋根仕上がりとすることが可能となる。
【0024】
当該実施形態で説明した屋根構造によれば、前記網体11によって植栽部Sの下縁部を透視性を確保しながら包み込んで支持することができ、植栽部での土の流下抑制効果と、植栽屋根の美しさをより向上させる効果とを共に叶えることが可能となる。
【0025】
〔別実施形態〕
以下に他の実施の形態を説明する。
【0026】
〈1〉 建物の構造は、先の実施形態で説明した鉄筋コンクリート造に限るものではなく、例えば、鉄骨造や、鉄骨鉄筋コンクリート造、又は、木造、及び、それらの複合構造等、公知の建築構造を採用することが可能である。
〈2〉 前記ネット5に替えて、例えば、パンチングシートや、不織布等をずれ止め部材として設ける構成であってもよく、更には、それらを設けない構成であってもよい。
〈3〉 前記受止部11は、先の実施形態で説明した網体11Aで構成してあるものに限るものではなく、例えば、図9に示すように、従来の立ち上がり壁部20に替えて、ガラス板や合成樹脂板等の透明体によって立ち上がり壁部11Bを構成するものであってもよい。この場合、立ち上がり壁部11B(受止部11)全域が前記透視可能部13となり、植栽傾斜下手縁部の透視性をより向上させることが可能となる。
また、透明体・不透明体に係わらず、図10に示すように、複数のスリット14を形成した立ち上がり壁部11Cで受止部11を構成するものであってもよい。この場合は、前記スリット14が透視可能部13となる。
このように、受止部11としては、種々の形態で実施することが可能で、要するに、前記植栽部Sの傾斜下手縁部を覆った状態で、屋根下方から前記植栽部Sを観賞自在な透視可能部13を設けてあるものであればよく、それらを総称して受止部という。
従って、前記透視可能部13は、必ずしも、前記貫通穴13aで構成する必要はない。
〈4〉 また、前記受止部11を網体11Aで構成する場合であっても、前記網体11Aそのものの実施形態は種々あり、例えば、多数の貫通穴13aを備えた合成樹脂シートで構成したり、繊維材を網状に編んで構成したり、繊維材を交差配置した状態でそれぞれを接着して網状に形成したりするものであってもよい。
また、網体11Aの構成材料を、無色や透明色にすることも可能で、この場合は、受止部の透視性をより向上させて植栽部の美観性を向上させることが可能となる。
また、網体11Aの構成材料を、植栽部に生育させる草木の色に合わせた色彩(例えば、緑色や黄色等の草木色)となるように構成することも可能で、この場合は、網体そのものを目立ち難くして植栽部の美観性を向上させることが可能となる。
〈5〉 植栽部に生育させる植物は、先の実施形態で説明したように芝に限るものではなく、他の草木であってもよい。
〈6〉 前記防水層4は、先の実施形態で説明した塩化ビニル製の防水シートを使用して構成してあるものに限るものではなく、ゴムやTPE(サーモ・プラスチック・エラストマ)製のシート、又は、その他の素材からなる防水シートであってもよい。更には、成形シートに限るものではなく、防水材の塗布によって防水層を構成するものであってもよく、それらを総称して防水層という。
また、防水層4の屋根B2への固定は、先の実施形態で説明した防水シート固定金具6によって行われる以外に、例えば、屋根B2に全面接着によって実施するものであってもよい。
〈7〉 先の実施形態で説明に用いた『接着』とは、被接合物同士を、接着材を介在させて接合するものに限らず、例えば、被接合物同士を溶かして(融かして)一体接合するものも含むものである。従って、接着材接着や、溶剤溶着や、熱融着等を総称して接着と言う。
【0027】
尚、上述のように、図面との対照を便利にするために符号を記したが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】建物を示す一部切欠き斜視図
【図2】屋根の詳細を示す要部断面図
【図3】網体の取付状況を示す一部切欠き斜視図
【図4】防水シート固定金具を示す斜視図
【図5】防水シートの固定状況を示す要部断面図
【図6】支持部材を示す分解斜視図
【図7】支持部材の取付状況を示す断面図
【図8】植栽の形成手順を示す斜視図
【図9】別実施形態の屋根構造を示す斜視図
【図10】別実施形態の屋根構造を示す斜視図
【図11】従来の屋根構造を示す断面図
【符号の説明】
【0029】
1 土
11 受止部
11A 網体
13 透視可能部
B2 屋根
S 植栽部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾斜した屋根上に植栽部を設け、
前記植栽部の中に、植栽部の土を担持してズレ落ち難くする土支持用ネットが設けてあり、前記屋根の傾斜下手部に、前記植栽部の土を受け止める受止部を設けてある屋根構造であって、
前記受止部は、屋根下方から前記植栽部を観賞自在な貫通穴が形成されている網体を、前記植栽部の傾斜下手縁部を覆った状態に設けて構成してあり、
その網体の貫通穴は、前記土支持用ネットの貫通穴より小径に形成してある屋根構造。
【請求項2】
傾斜した屋根上に沿って土と、その土を担持してズレ落ち難くする土支持用ネットとを積層させて植栽部を形成する植栽屋根形成方法であって、
前記屋根の傾斜下手部に、前記土支持用ネットの貫通穴より小径の貫通穴を備えた網体を巻回状態にして配置すると共に、
その端部を前記屋根に固定した後、
前記屋根上に植栽部を形成し、
前記網体を巻き戻しながら前記植栽部上に被せて固定する植栽屋根形成方法。
【請求項1】
傾斜した屋根上に植栽部を設け、
前記植栽部の中に、植栽部の土を担持してズレ落ち難くする土支持用ネットが設けてあり、前記屋根の傾斜下手部に、前記植栽部の土を受け止める受止部を設けてある屋根構造であって、
前記受止部は、屋根下方から前記植栽部を観賞自在な貫通穴が形成されている網体を、前記植栽部の傾斜下手縁部を覆った状態に設けて構成してあり、
その網体の貫通穴は、前記土支持用ネットの貫通穴より小径に形成してある屋根構造。
【請求項2】
傾斜した屋根上に沿って土と、その土を担持してズレ落ち難くする土支持用ネットとを積層させて植栽部を形成する植栽屋根形成方法であって、
前記屋根の傾斜下手部に、前記土支持用ネットの貫通穴より小径の貫通穴を備えた網体を巻回状態にして配置すると共に、
その端部を前記屋根に固定した後、
前記屋根上に植栽部を形成し、
前記網体を巻き戻しながら前記植栽部上に被せて固定する植栽屋根形成方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−245661(P2008−245661A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−179301(P2008−179301)
【出願日】平成20年7月9日(2008.7.9)
【分割の表示】特願2000−372709(P2000−372709)の分割
【原出願日】平成12年12月7日(2000.12.7)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【出願人】(000178619)アーキヤマデ株式会社 (39)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月9日(2008.7.9)
【分割の表示】特願2000−372709(P2000−372709)の分割
【原出願日】平成12年12月7日(2000.12.7)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【出願人】(000178619)アーキヤマデ株式会社 (39)
【Fターム(参考)】
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