説明

屋根構造

【課題】本発明は、断熱パネルに複雑な加工を施すことなく、断熱効果を高めるようにした屋根構造を提供する。
【解決手段】屋根構造における母屋2には、母屋2の表面で長手方向(水平方向)に延在すると共に、矩形の断熱パネル4の端部4aが収容される断熱パネル用端部収容凹部10と、端部収容凹部10の長手方向の略全長に渡って延在すると共に、端部収容凹部10を形成する壁面12から突出して断熱パネル4の端部4aに押し当てられる突起部11と、が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根断熱が適用された屋根構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、特開2002−285683号公報があり、この公報には、屋根用断熱パネルが記載されている。この断熱パネルは、プラスチック発泡体からなり、断熱パネルの上面には、垂木に嵌合する断面コ字状の垂木嵌合溝部が形成され、断熱パネルの下面の中央には、母屋に嵌合する母屋嵌合溝部が形成され、断熱パネルの下面の両端には、母屋に係止させる係止切欠き部が形成されている。このような断熱パネルは、母屋に対して上から載せるように施工され、断熱パネルを施工した後に、垂木が母屋に固定される。この断熱パネルは、垂木に干渉されることなく、厚くすることができるので、屋根断熱効果を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−285683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した断熱パネルは、プラスチック発泡体からなっているので、垂木嵌合溝部や母屋嵌合溝部で割れ易く、取り扱いに注意が必要となり、作業性を悪くする虞がある。また、寸法のバラ付きや反りが発生した断熱パネルを母屋や垂木に無理に嵌め込むと、変形し易い断熱パネルの垂木嵌合溝部や母屋嵌合溝部で、断熱パネルと母屋及び垂木との間に隙間が発生し、その結果、垂木嵌合溝部と母屋嵌合溝部との交差部分の開口を通って空気が流動することになり、このことが断熱効果を低下させる要因になる。また、冬季にあっては、室内で暖められた温流がその隙間を通って漏れることで野地板の裏面で結露が発生する虞がある。
【0005】
本発明は、断熱パネルに複雑な加工を施すことなく、断熱効果を高めるようにした屋根構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、柱に固定されて互いに平行に配置された母屋と、母屋と母屋との間に架け渡された垂木と、垂木に沿って配置されたプラスチック発泡体からなる断熱パネルと、を備えた屋根構造において、
母屋は、
垂木の下方に位置し、母屋の表面で長手方向に延在すると共に、断熱パネルの端部が収容される断熱パネル用端部収容凹部と、
端部収容凹部の長手方向の略全長に渡って延在すると共に、端部収容凹部を形成する壁面から突出して断熱パネルの端部に押し当てられる突起部と、を有することを特徴とする。
【0007】
このような屋根構造を適用させることで、断熱パネルは、複雑な加工を必要としないので、断熱パネル本来の強度が維持され、従来のような、割れ易くなったり、取り扱いに注意が必要になったり、作業性を悪くするような欠点が解消されている。更に、母屋の端部収容凹部を形成する壁面に突起部が設けられているので、端部収容凹部内において、母屋と断熱パネルの端部との間に隙間が発生しても、突起部が断熱パネルの端部に押し当てられることで、端部収容凹部内での空気の流動を阻止することができ、これによって、冬季にあっては、室内で暖められた温流が母屋と断熱パネルとの間の隙間を伝って漏れてしまって野地板の裏面で結露を発生させることがなくなり、防湿気密を図ることができる。
【0008】
また、母屋の上部側に位置する端部収容凹部は、垂木に対して直交して延在する第1の壁面と、第1の壁面に対して略直角に延在する第2の壁面とからなり、断面矩形の母屋は、上面と内側側面と外側側面と下面とを有し、母屋には、上面と内側側面とに渡って形成された第1の端部収容凹部と、外側側面に形成された第2の端部収容凹部と、が設けられ、突起部は、第2の壁面に形成されていると好適である。
このような構成を採用すると、垂木で断熱パネルを押さえ付けることができるので、端部収容凹部の第2の壁面に断熱パネルの端部を確実に押し当てることが可能になる。しかも、この第2の壁面には突起部が形成されているので、突起部と断熱パネルとの密着度を更に高めることができる。
【0009】
また、突起部は、断面三角形状をなすと好適である。
このような構成を採用すると、突起部を断熱パネルに突き刺すことができ、断熱パネルと突起部との気密度を更に向上させることができる。また、このような突起部は、断熱パネルのズレ防止にも寄与する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、断熱パネルに複雑な加工を施すことなく、断熱効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る屋根構造の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】母屋に断熱パネル及び垂木を組み付ける前の状態を示す断面図である。
【図3】母屋に断熱パネル及び垂木を組み付けた後の状態を示す断面図である。
【図4】母屋に断熱パネルを組み付ける前の状態を示す斜視図である。
【図5】母屋と断熱パネルとの間に隙間がある状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る屋根構造の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、棟側を「内側」、軒先側を「外側」と言う。
【0013】
図1に示されるように、木造住宅の屋根構造にあっては、柱1に固定された母屋2に対して直交する方向に垂木3が釘によって固定されている。垂木3の間を塞ぐようにして断熱パネル4が敷設されている。そして、垂木3の上には野地板が張られ、野地板の上に防水工事として防水シートが貼られ、その上に瓦が敷かれている。なお、この断熱パネル4は、例えば、フェノールフォームなどのプラスチック発泡体からなる。
【0014】
図2〜図4に示されるように、垂木3の下方に位置する母屋2は、上面2aと内側側面2bと外側側面2cと下面2dとを有する。そして、母屋2には、母屋2の表面で長手方向(水平方向)に延在すると共に、矩形の断熱パネル4の端部4aが収容される断熱パネル用端部収容凹部10と、端部収容凹部10の長手方向の略全長に渡って延在すると共に、端部収容凹部10を形成する壁面12から突出して断熱パネル4の端部4aに押し当てられる突起部11と、が形成されている。
【0015】
母屋2の上部側に位置する端部収容凹部10は、母屋2の上面2aと内側側面2bとに渡って形成された第1の端部収容凹部10Aと、外側側面2cに形成された第2の端部収容凹部10Bと、からなる。そして、第1及び第2の端部収容凹部10A,10Bは、垂木3に対して直交して延在する第1の壁面12aと、第1の壁面12aに対して略直角に延在する第2の壁面12bとからなる。
【0016】
第2の壁面12bに形成された突起部11は、上方に向かって突出する断面三角形状をなしている。このような形状の突起部11は、断熱パネル4の端部4aの下面に突き刺すことができ、断熱パネル4と突起部11との気密度を更に向上させることができる。そして、この突起部11は、断熱パネル4のズレ防止にも寄与する。
【0017】
また、母屋2の上側の角は、切欠き面2eになるように斜めに切り落とされている。そして、垂木3の下面を母屋2の切欠き面2eに当接させるように、母屋2に垂木3を押し当て、釘やビスによって、垂木3を母屋2に固定させる。なお、垂木3の下面側に、母屋2の上側の角が入り込むための断面直角三角形状の切欠き部を形成してもよい。
【0018】
図2及び図3に示されるように、母屋2の第1及び第2の端部収容凹部10A,10Bに断熱パネル4の端部4aを嵌め込んだ後に、垂木3を母屋2に釘やビスで固定させるので、垂木3で断熱パネル4が上から押さえ付けられることになり、第1及び第2の端部収容凹部10A,10Bの第2の壁面12bに断熱パネル4の端部4aを確実に押し当てることが可能になる。しかも、この第2の壁面12bには突起部11が形成されているので、突起部11と断熱パネル4との密着度を高めることができる。
【0019】
特に、突起部11が断面三角形状になっている場合、突起部11が断熱パネル4の端部4aの下面に確実にめり込ませることができる。
【0020】
母屋2には前述した構造が適用されているので、断熱パネル4は、複雑な加工を必要としないので、断熱パネル4本来の強度が維持され、従来のような、割れ易くなったり、取り扱いに注意が必要になったり、作業性を悪くするような欠点が解消されている。
【0021】
更に、第1及び第2の端部収容凹部10A,10Bの第2の壁面12bに突起部11が設けられているので、端部収容凹部10A,10B内において、母屋2と断熱パネル4の端部4aとの間に隙間S(図5参照)が発生しても、突起部11が断熱パネル4の端部4aに押し当てられることで、端部収容凹部10A,10B内での空気の流動を阻止することができ、これによって、冬季にあっては、室内で暖められた温流が母屋2と断熱パネル4との間の隙間Sを伝って漏れてしまって野地板の裏面で結露を発生させることがなくなり、防湿気密を図ることができる。
【0022】
本発明は、前述した実施形態に限定されないことは言うまでもない。例えば、突起部11は、断面三角形状に限定されることなく、断面矩形、断面台形、断面半円形であってもよい。
【符号の説明】
【0023】
1…柱、2…母屋、2a…母屋の上面、2b…母屋の内側側面、2c…母屋の外側側面、2d…下面、3…垂木、4…断熱パネル、10A…第1の端部収容凹部、10B…第2の端部収容凹部、11…突起部、12a…第1の壁面、12b…第2の壁面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱に固定されて互いに平行に配置された母屋と、前記母屋と前記母屋との間に架け渡された垂木と、前記垂木に沿って配置されたプラスチック発泡体からなる断熱パネルと、を備えた屋根構造において、
前記母屋は、
前記垂木の下方に位置し、前記母屋の表面で長手方向に延在すると共に、前記断熱パネルの端部が収容される断熱パネル用端部収容凹部と、
前記端部収容凹部の長手方向の略全長に渡って延在すると共に、前記端部収容凹部を形成する壁面から突出して前記断熱パネルの前記端部に押し当てられる突起部と、を有することを特徴とする屋根構造。
【請求項2】
前記母屋の上部側に位置する前記端部収容凹部は、前記垂木に対して直交して延在する第1の壁面と、前記第1の壁面に対して略直角に延在する第2の壁面とからなり、
断面矩形の前記母屋は、上面と内側側面と外側側面と下面とを有し、前記母屋には、前記上面と前記内側側面とに渡って形成された第1の端部収容凹部と、前記外側側面に形成された第2の端部収容凹部と、が設けられ、
前記突起部は、前記第2の壁面に形成されていることを特徴とする請求項1記載の屋根構造。
【請求項3】
前記突起部は、断面三角形状をなすことを特徴とする請求項1又は2記載の屋根構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−87541(P2013−87541A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230550(P2011−230550)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(390018717)旭化成建材株式会社 (249)
【Fターム(参考)】