説明

屎尿用消臭剤及びそれを使用した消臭方法

【課題】
トイレの屎尿の収集容器などに貯蔵される屎尿を簡便な方法で持続的に消臭できる消臭剤を提供する。
【解決手段】
容器に貯蔵される屎尿を上から浮遊して覆うことによって屎尿の臭気成分を封じ込めるために使用する消臭剤。前記消臭剤が炭素数4〜18個の炭化水素系化合物50〜90重量%、水10〜50重量%、及びHLB6〜17の非イオン性界面活性剤0.1〜5重量%を含み、前記消臭剤の比重が0.8以上1.0未満である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレの屎尿収集容器などから発生する臭気を封じ込めることができる屎尿用消臭剤、及びそれを使用した消臭方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トイレの屎尿収集容器などから発生する不快な臭気は、屎尿に含まれるタンパク質等の窒素含有化合物や硫黄含有化合物が分解することによって発生する。これらの臭気を抑える従来方法としては、化学薬剤を使用する方法が一般的に使用され、そのほとんどは薬剤と臭気成分の化学反応により消臭するか、または薬剤によって臭気を官能的にマスキングする方法であった。
【0003】
しかしながら、これらの化学薬剤は、使用後時間経過とともにその機能を低下させるため、臭気成分が存在している間は消臭効果を維持するために絶えず薬剤を散布または投入する必要があった。また、化学薬剤は、屎尿の特定の臭気成分に対してしか消臭機能はなく、一つの薬剤で異なる全ての臭気成分に対応することは困難であった。
【0004】
従って、トイレ等の屎尿貯蔵場所において使い方が簡便で屎尿の消臭効果が永続的に持続する消臭剤、及びそれを使用した経済的な消臭方法が求められている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる従来技術の現状に鑑み創案されたものであり、その目的は、トイレの屎尿収集容器などに貯蔵される屎尿を簡便な方法で持続的に消臭できる消臭剤、及びそれを使用した経済的な消臭方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、かかる目的を達成するために、屎尿の臭気を持続的に抑制するための方法及びそれを使用する消臭剤について鋭意検討した結果、屎尿の収集容器または槽において、特定の消臭剤を上層に形成させ、屎尿を下層に形成させることによって屎尿の臭気成分を効果的に封じ込めることができることを見出し、本発明の完成に至った。
【0007】
即ち、本発明は、容器に貯蔵される屎尿を上から浮遊して覆うことによって屎尿の臭気成分を封じ込めるために使用する消臭剤であって、前記消臭剤が炭素数4〜18個の炭化水素系化合物(好ましくは50〜90重量%)、水(好ましくは10〜50重量%)、及びHLB6〜17の非イオン性界面活性剤(好ましくは0.1〜5重量%)を含み、前記消臭剤の比重が0.8以上1.0未満であることを特徴とする消臭剤である。
【0008】
本発明の消臭剤の好ましい態様では、炭化水素系化合物が鉱物油、潤滑油、スピンドル油、動物性または植物性の変性脂肪酸、飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸からなる群から選択され、さらに消臭剤が0.002〜5重量%の抗菌剤を含む。
【0009】
また、本発明は、容器に貯蔵される屎尿の臭気成分を封じ込めるための方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする方法である:
(i)屎尿が貯蔵されていない容器に本発明の消臭剤を添加する;
(ii)消臭剤を添加された容器に屎尿を入れて貯蔵する;そして
(iii)容器中で屎尿を下層に形成させ、消臭剤を乳化状態で上層に形成させることによって、屎尿の臭気成分を封じ込める。
【0010】
また、本発明は、容器に貯蔵される屎尿の臭気成分を封じ込めるための方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする方法である:
(i)屎尿が貯蔵されている容器に本発明の消臭剤を添加する;
(ii)容器中で屎尿を下層に形成させ、消臭剤を乳化状態で上層に形成させることによって、屎尿の臭気成分を封じ込める。
【0011】
本発明の方法の好ましい態様では、消臭剤の添加量は消臭剤の上層形成時に5mm〜25cmの層厚さになるような量である。本発明の方法の好ましい態様では、容器中の上層の消臭剤の一部を吸い上げて、吸い上げた消臭剤を便器から容器へ屎尿を流すためまたは便宜の洗浄のために使用し、この場合において消臭剤の添加量は消臭剤の上層形成時に10cm〜25cmの層厚さになるような量である。また、本発明の方法の好ましい態様では、容器中の下層の屎尿を容器から排出する。また、前記容器は、トイレの屎尿収集容器、屎尿収集槽または屎瓶であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の消臭剤は、容器に貯蔵される屎尿を上から浮遊して乳化状態で覆うことによって屎尿の臭気成分を封じ込めるようにしているので、極めて簡便な方法で屎尿の臭気を持続的に抑制することができる。また、本発明の方法では、屎尿が上から容器に随時投入されても屎尿が上層の消臭剤の下へ容易に移動するので、常に屎尿が消臭剤によって覆われた状態になり、屎尿貯蔵型のトイレの消臭において極めて効果的である。さらに、本発明の消臭剤は、繰り返しの使用で劣化(分離)しないので再利用が可能であり、極めて経済的である。さらに、本発明の方法は、消臭剤を上層に形成することにより水分の蒸発が防止されるため、容器内で糞便が乾燥固着したりすることなく取り出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の消臭剤及びそれを使用した消臭方法を具体的に説明する。
【0014】
本発明の消臭剤は、トイレ等の屎尿収集のための容器に貯蔵される屎尿を上から覆って屎尿を外気に触れさせないように封じ込めることによって屎尿の臭気成分の揮発や蒸発を防止しようとするものである。ここで屎尿とは糞便及び/または尿を言う。
【0015】
本発明の消臭剤は、必須成分として炭化水素系化合物と水と界面活性剤を含み、それぞれの量は50〜90重量%(好ましくは60〜85重量%)、10〜50重量%(好ましくは10〜40重量%)、0.1〜5重量%(好ましくは0.2〜2重量%)である。炭化水素系化合物は、屎尿と混合されても互いに相溶せずに分離した状態を保ち、屎尿を上から浮遊して覆うものであり、界面活性剤は、炭化水素系化合物を屎尿の上で分散させ、炭化水素系化合物と水の乳化状態を保つためのものである。
【0016】
本発明の消臭剤に使用する炭化水素系化合物は、炭素数4〜18個のものであり、例えば鉱物油、潤滑油、スピンドル油、動物性または植物性の変性脂肪酸、飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸からなる群から単独でまたは適宜組み合わせて選択される。炭化水素系化合物の比重は、0.6以上1.0未満であることが好ましい。
【0017】
本発明の消臭剤に使用する界面活性剤は、HLB6〜17の非イオン性界面活性剤である。HLBは、界面活性剤の親水性部分と親油性部分の比率を示す指数であり、HLB値が高いほど親水性が高くなる。界面活性剤の好ましいHLBは、8〜16である。HLBが上記範囲未満であれば乳化が不安定な状態になり油の状態となり、上記範囲を越えると炭化水素系化合物と水が分離しなくなる乳化状態となるため、好ましくない。界面活性剤は、従来公知のものから適宜選択して使用することができ、例えばRO(CHCHO)H(エーテル型)、RCOO(CHCHO)H(エステル型)が挙げられる(式中、Rは炭化水素基、nは1以上の整数である)。
【0018】
本発明の消臭剤は、上記の必須成分以外に、従来公知の抗菌剤、抗カビ剤、忌避剤、殺虫剤、香料、本発明の消臭剤とは異なるメカニズムの従来公知の消臭剤、屎尿を分解するバクテリアや酵素等の任意成分を0.05〜50重量%の範囲で適宜含有することができる。本発明の消臭剤は、全体として比重が0.8以上1.0未満であることが必要である。比重が1.0を越えると本発明の消臭剤が上層を形成しない場合があり、0.8未満では屎尿と混濁したときに分離する力が弱くなる場合がある。
【0019】
次に、本発明の消臭剤を使用してトイレ等の屎尿収集のための容器に貯蔵される屎尿を消臭するための方法を説明する。本発明の方法が対象とする容器は、屎尿貯蔵型のトイレにおける屎尿収集容器、屎尿収集槽、または屎瓶である。これらの容器は、いずれも上部に開放された屎尿投入口があり、1〜5000l容量のプラスチック製、金属製、ガラス製、陶器製、グラスファイバー製、またはコンクリート製のものである。また、これらの容器は固定式のものであっても可動式のものであってもよい。
【0020】
本発明の消臭剤は、まず屎尿が貯蔵または投入されていない容器に深さが5mm〜25cm(好ましくは1cm〜25cm、本発明の消臭剤を屎尿を流すためまたは便器の洗浄のために再利用する場合は10cm〜25cm、再利用しない場合は1cm〜10cm)になるような量で添加されて使用される。図1(a)、図2(a)はそれぞれ、本発明の消臭剤が屎尿収集容器及び屎瓶に添加された状態を示す。このとき容器には糞便が最初に投入されても糞便が液面下に存在するように適量の水を予め添加してから使用することが望ましい。本発明の消臭剤は屎尿が既に貯蔵されている容器に対しても添加することができ、この場合も消臭剤揮発成分を封じ込めることにより添加後から効果を発揮する。
【0021】
次いで、予め本発明の消臭剤が添加された容器を屎尿貯蔵可能状態にし、屎尿を収集して貯蔵する。例えば、容器が可動式の屎尿収集容器の場合は、容器を仮設トイレに設置して不特定多数の人の糞尿を収集・貯蔵できるようにし、屎瓶の場合は、尿を直接入れて貯蔵できる状態にする。図1(b)、図2(b)はそれぞれ、本発明の消臭剤が添加された屎尿収集容器及び屎瓶に屎尿が入れられた状態を示す。
【0022】
屎尿が容器中に貯蔵されると、容器中で屎尿は下層を形成し、本発明の消臭剤は浮遊して上層を形成する。図1(c)、図2(c)はそれぞれ、屎尿が下層を形成し、本発明の消臭剤が上層を形成した状態の屎尿収集容器及び屎瓶を示す。本発明の消臭剤は、上層で乳化状態になっており、下層の屎尿を完全に覆って封じ込めている。従って、屎尿の臭気成分が揮発または蒸発して容器の外に出ようとしても本発明の消臭剤によって完全に封じ込められているため、屎尿の臭いが外に出ることがない。また、本発明の消臭剤は、乳化状態であるため、屎尿が随時上から投入されても屎尿が容易に下層へ移動でき、多数の使用者が糞尿を排出して容器に投入されても消臭状態が保たれたままである。例えば、仮設トイレに設置された屎尿収集容器では、図3に示すように、屎尿を本発明の消臭剤が覆って封じ込められているため、屎尿の臭気が容器から常に上がってトイレ内に充満することがない。
【0023】
容器中の上層の消臭剤は、劣化することがないので、下層の屎尿の封じ込め効果を低減させない範囲で一部を吸い上げ、吸い上げた消臭剤を便器から容器へ屎尿を流すためまたは便宜の洗浄のために使用することができる。このようにすることにより、屎尿を流すための水や洗浄水を使用する必要がなくなるため、経済的である。また、容器中の下層の屎尿は、ある程度貯蔵されたら、容器の下部または側部に設けた穴から排出するか、または上から吸い上げて排出することができる。このようにすることにより、消臭剤の量を減らさずに消臭状態のままで屎尿のみを排出できるため、環境上優れているとともに経済的である。
【実施例】
【0024】
本発明の消臭剤の優れた効果を実施例によって以下に示す。
【0025】
実施例1〜3
表1に記載の組成に従って各成分を混合して実施例1〜3の消臭剤を作製した。これらの消臭剤の比重はいずれも0.86であった。これらの消臭剤を上層形成時に層厚さが2cmになるように400lの直方体の屎尿収集容器内に入れた。消臭剤を入れた屎尿収集容器を男子小便用トイレ、男子大便用トイレ、女子用トイレの3種のトイレにそれぞれ設置した。各トイレは並列させて屋外に設置され、それぞれ設置後30人目、100人目の使用者が糞便または尿を排泄した後に臭気を測定した。
【0026】
臭気は、測定器としてポータブル型ニオイセンサ(新コスモス電気(株)製)を使用して各屎尿収集容器内の上部開放部中央で測定した。測定器で測定された数値は、一般外気(無臭)ブランクを0とし、数値が大きいほど臭気が強く、特に2以上である場合は屎尿として臭いを感知する数値を示す。
【0027】
実施例1〜3の消臭剤の臭気の測定結果を表2に示す。なお、参考のため、市販消臭剤(消臭液ブルートップ)を同様に使用した結果(参考例1)及び消臭剤を全く使用しない結果(参考例2)を表2に示す。
【0028】

【0029】

【0030】
表2の結果から明らかなように、実施例1〜3の消臭剤は、いずれのタイプのトイレでも使用人数にかかわらず、消臭効果が高いことがわかる。これに対して参考例の消臭剤は、男子小便用トイレにおける臭気が特に強く、使用人数が増加すると臭気が増大することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の消臭剤は、容器に貯蔵される屎尿を上から浮遊して覆うことによって屎尿の臭気成分を封じ込めるようにしているので、簡便な方法で屎尿の臭気を持続的に抑制することができ、特に屎尿貯蔵型のトイレにおける消臭に極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、屎尿収集容器における消臭方法の工程を示し、(a)は消臭剤添加状態、(b)は屎尿添加状態、(c)は消臭剤と屎尿が分離した状態を示す。
【図2】図2は、屎瓶における消臭方法の工程を示し、(a)は消臭剤添加状態、(b)は屎尿添加状態、(c)は消臭剤と屎尿が分離した状態を示す。
【図3】図3は、仮設トイレにおける本発明の消臭剤による消臭状態を概略的に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に貯蔵される屎尿を上から浮遊して覆うことによって屎尿の臭気成分を封じ込めるために使用する消臭剤であって、前記消臭剤が炭素数4〜18個の炭化水素系化合物、水、及びHLB6〜17の非イオン性界面活性剤を含み、前記消臭剤の比重が0.8以上1.0未満であることを特徴とする消臭剤。
【請求項2】
前記消臭剤が炭素数4〜18個の炭化水素系化合物50〜90重量%、水10〜50重量%、及びHLB6〜17の非イオン性界面活性剤0.1〜5重量%を含むことを特徴とする請求項1に記載の消臭剤。
【請求項3】
炭化水素系化合物が鉱物油、潤滑油、スピンドル油、動物性又は植物性の変性脂肪酸、飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸からなる群から選択されることを特徴とする請求項1または2に記載の消臭剤。
【請求項4】
0.002〜5重量%の抗菌剤をさらに含むことを特徴とする請求項2または3に記載の消臭剤。
【請求項5】
容器に貯蔵される屎尿の臭気成分を封じ込めるための方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする方法:
(i)屎尿が貯蔵されていない容器に請求項1〜4のいずれかに記載の消臭剤を添加する;
(ii)消臭剤を添加された容器に屎尿を入れて貯蔵する;そして
(iii)容器中で屎尿を下層に形成させ、消臭剤を乳化状態で上層に形成させることによって、屎尿の臭気成分を封じ込める。
【請求項6】
容器に貯蔵される屎尿の臭気成分を封じ込めるための方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする方法:
(i)屎尿が貯蔵されている容器に請求項1〜4のいずれかに記載の消臭剤を添加する;
(ii)容器中で屎尿を下層に形成させ、消臭剤を乳化状態で上層に形成させることによって、屎尿の臭気成分を封じ込める。
【請求項7】
消臭剤の添加量が消臭剤の上層形成時に5mm〜25cmの層厚さになるような量であることを特徴とする請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
容器中の上層の消臭剤の一部を吸い上げて、吸い上げた消臭剤を便器から容器へ屎尿を流すためまたは便器の洗浄のために使用し、この場合において消臭剤の添加量が消臭剤の上層形成時に10cm〜25cmの層厚さになるような量であることを特徴とする請求項5または6に記載の方法。
【請求項9】
容器中の下層の屎尿を容器から排出することを特徴とする請求項5または6に記載の方法。
【請求項10】
前記容器が、トイレの屎尿収集容器、屎尿収集槽または屎瓶であることを特徴とする請求項5または6に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−125384(P2010−125384A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−302449(P2008−302449)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(508351761)有限会社オガワテクノ (1)
【Fターム(参考)】