説明

展開式アンテナ

【課題】四辺リンクを複数段有することにより口径サイズを大きくした展開式アンテナの提供。
【解決手段】フレキシブル反射鏡面の外縁部を支持するべく、中心軸の周りに放射状に配置された6本の展開リンク機構20と、6本の展開リンク機構20の中央下部に配置され、6本の展開リンク機構20の展開を行うための一つの展開駆動機構30とを有する展開式アンテナであって、6本の展開リンク機構20の各々は、6本の展開リンク機構20の前記中心軸の位置から外側に向かって第1、第2、及び第3の四辺リンク5,6,7を有し、3段に折り畳む構造であることを特徴とする展開式アンテナ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、展開式アンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
展開式アンテナは、地上から宇宙空間への運搬時の収容容積の制約の為に折り畳んだ状態で運搬する。そして、展開式アンテナは、宇宙空間に運搬後、宇宙空間でアンテナとして展開する。
【0003】
図1、図2、及び図3を参照すると、関連技術としての展開式アンテナA0が示されている。図1は展開式アンテナA0のおもて面を斜めから見た図である。図2は展開式アンテナA0の裏面を斜めから見た図である。図3は展開式アンテナA0の裏面を示す図である。
【0004】
展開式アンテナA0は、10mを越える口径サイズの大型展開式アンテナである。図示の展開式アンテナA0においては、複数個の展開式アンテナモジュールA1(図1)を結合部材40(図3)で結合および連動することにより、大口径の展開式アンテナを実現している。図示の展開式アンテナA0においては、各展開式アンテナモジュールA1に展開駆動機構30(図2及び図3)を設けており、この結果、軽量化が困難な展開駆動機構30の使用個数が増えるので、展開式アンテナA0の質量が重くなるという欠点があった。
【0005】
このように、展開式アンテナモジュールA1のモジュール径サイズが展開式アンテナA0の口径サイズに比べて小さいため、大口径の展開式アンテナA0を得るには複数の展開式アンテナモジュールA1を結合してアンテナの面積を大きくする必要があった。しかしながら、複数の展開式アンテナモジュールA1を結合して展開式アンテナA0を実現する方法では、展開式アンテナA0に使用する展開駆動機構30の個数が増え、アンテナ全体としての質量が大きくなるという欠点があった。
【0006】
特許文献1(特開2006−80577号公報)は、図3及び段落[0024]及び[0025]に、各フレーム2は5つの平面リンク3によって構成されること、及び、隣り合う平面リンク3同士は互いに鏡像体となるように連結されていることを開示している。
【0007】
更に、特許文献1(特開2006−80577号公報)は、図4及び段落[0026]、[0028]〜[0031]、及び[0033]に、ワイヤ駆動装置(伸展手段)11(前述の展開駆動機構に相当する)により各平面リンク3のスライドヒンジ7を移動させることにより、フレーム2を展開、収納することを開示している。
【0008】
しかし、図4に図示のとおり、各平面リンク3のリンク4cはスライドヒンジ7を備えているが、リンク4cに対向するリンク4aは、隣接する2つの平面リンクの展開同期を取るためのスライダーを備えていない。
【0009】
特許文献2(WO2005/027186号公報)は、図2及び第7頁第21−24行に、各フレーム2は5つの平面リンク3によって構成されること、及び、隣り合う平面リンク3同士は互いに鏡像体となるように連結されていることを開示している。
【0010】
更に、特許文献2(WO2005/027186号公報)は、図3、第7頁第31−42行、及び第7頁第48−50行に、ワイヤ駆動装置(伸展手段)11(前述の展開駆動機構に相当する)により各平面リンク3のスライドヒンジ7を移動させることにより、フレーム2を展開、収納することを開示している。
【0011】
しかし、図3に図示のとおり、各平面リンク3のリンク4cはスライドヒンジ7を備えているが、リンク4cに対向するリンク4aには、隣接する2つの平面リンクの展開同期を取るためのスライダーを備えていない。
【0012】
特許文献3(特開平11−112228号公報)は、図1、図2、及び段落[0025]に、四角形状に展開した状態の平面トラス1を開示している。
【0013】
しかし、図2に図示のとおり、平面トラス1の中心部材21はスライダ27を備えているが、中心部材21に対向する周部材22は、特許文献1(特開2006−80577号公報)及び特許文献2(WO2005/027186号公報)と同様に、スライダを備えていない。
【0014】
特許文献4(特開2003−95199号公報)は、図1(a)及び(b)、図2、及び段落[0019]に、2つの四節リンク12及び13を連接した骨部材14を中央縦梁部材11の周囲に配設した展開アンテナであって、図4に図示のとおり、中央縦梁部材11には、展開同期手段を構成する同期機構19が軸方向に移動自在に設けられた展開アンテナを開示している。この同期機構19には、同期ケーブル20の一端が取り付けられ、同期ケーブル20の他端部は、ガイドプーリ201に巻掛けられた後、骨組み部材14の四節リンク12の斜部材123のヒンジ近傍に取り付けられている。
【0015】
しかし、中央縦梁部材11に対向する縦梁部材122及び縦梁部材122に対向する縦梁部材132は、いずれも、特許文献1(特開2006−80577号公報)及び特許文献2(WO2005/027186号公報)と同様に、スライダを備えていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2006−80577号公報
【特許文献2】WO2005/027186号公報
【特許文献3】特開平11−112228号公報
【特許文献4】特開2003−95199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、四辺リンクを複数段有することにより口径サイズを大きくした展開式アンテナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明によれば、
フレキシブル反射鏡面の外縁部を支持するべく、中心軸の周りに放射状に配置された6本の展開リンク機構と、前記6本の展開リンク機構の中央下部に配置され、前記6本の展開リンク機構の展開を行うための一つの展開駆動機構とを有する展開式アンテナであって、
前記6本の展開リンク機構の各々は、前記6本の展開リンク機構の前記中心軸の位置から外側に向かって第1、第2、及び第3の四辺リンクを有し、3段に折り畳む構造であり、
前記第1の四辺リンクの前記中心軸を構成する中央縦リンクは、第1のスライダーを備え、
前記第1及び前記第2の四辺リンク間の共通縦リンクは、第2のスライダーを備え、
前記第3及び前記第4の四辺リンク間の別の共通縦リンクは、第3のスライダーを備え、
前記展開駆動機構が前記第1のスライダーを、前記中央縦リンク上を上方にスライドさせることによって、前記第1の四辺リンクを展開させ、
該第1の四辺リンクが展開することによって、前記第2のスライダーを、前記共通縦リンク上を上方にスライドさせ、これによって前記第2の四辺リンクを展開させ、
該第2の四辺リンクが展開することによって、前記第3のスライダーを、前記別の共通縦リンク上を上方にスライドさせ、これによって、前記第3の四辺リンクを展開させることを特徴とする展開式アンテナが得られる。
【0019】
更に本発明によれば、
フレキシブル反射鏡面の外縁部を支持するべく、中心軸の周りに放射状に配置された8本の展開リンク機構と、前記8本の展開リンク機構の中央下部に配置され、前記8本の展開リンク機構の展開を行うための一つの展開駆動機構とを有する展開式アンテナであって、
前記8本の展開リンク機構の各々は、前記8本の展開リンク機構の前記中心軸の位置から外側に向かって第1、第2、及び第3の四辺リンクを有し、3段に折り畳む構造であり、
前記第1の四辺リンクの前記中心軸を構成する中央縦リンクは、第1のスライダーを備え、
前記第1及び前記第2の四辺リンク間の共通縦リンクは、第2のスライダーを備え、
前記第3及び前記第4の四辺リンク間の別の共通縦リンクは、第3のスライダーを備え、
前記展開駆動機構が前記第1のスライダーを、前記中央縦リンク上を上方にスライドさせることによって、前記第1の四辺リンクを展開させ、
該第1の四辺リンクが展開することによって、前記第2のスライダーを、前記共通縦リンク上を上方にスライドさせ、これによって前記第2の四辺リンクを展開させ、
該第2の四辺リンクが展開することによって、前記第3のスライダーを、前記別の共通縦リンク上を上方にスライドさせ、これによって、前記第3の四辺リンクを展開させることを特徴とする展開式アンテナが得られる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、四辺リンクを複数段有することにより口径サイズを大きくした展開式アンテナを得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】関連技術としての展開式アンテナA0のおもて面を斜めから見た図である。
【図2】図1に示された展開式アンテナA0の裏面を斜めから見た図である。
【図3】図1に示された展開式アンテナA0の裏面を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態による展開式アンテナA1’の斜視図である。
【図5】図4に示された展開式アンテナA1’におけるアンテナ展開機構1の斜視図である。
【図6】図5に示されたアンテナ展開機構1における展開リンク機構20を示した図である。
【図7】図6に示された展開リンク機構20における左端の四辺リンク5を示した図である。
【図8】図6に示された展開リンク機構20における、左端の四辺リンク5の右端部及び中央の四辺リンク6の左端部を示した図である。
【図9】図6に示された展開リンク機構20における、左端の四辺リンク5の左端部を示した図である。
【図10】図6に示された展開リンク機構20における、右端の四辺リンク7の右端部を示した図である。
【図11】図6に示された展開リンク機構20における展開駆動機構30を示した図である。
【図12】本発明の第2の実施形態による展開式アンテナに用いられる展開リンク機構20’を示した図である。
【図13】本発明の第3の実施形態による展開式アンテナA1”の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0023】
図4を参照すると、本発明の第1の実施形態による展開式アンテナA1’が示されている。この展開式アンテナA1’は、単一で、図1〜図3に示された大型展開式アンテナA0に値する大型展開アンテナを構成することができるものである。
【0024】
展開式アンテナA1’は、折り畳んだ状態でロケットのフェアリング内に収納され、宇宙空間において展開し、柔軟な膜面から形成されるアンテナ反射鏡面(フレキシブル反射鏡面4)を所定のパラボラ形状に形成するものである。
【0025】
展開式アンテナA1’は、フレキシブル反射鏡面4と、フレキシブル反射鏡面4の外縁部を支持するアンテナ展開機構1と、バンド(band)3とを有する。フレキシブル反射鏡面4は、展開式アンテナA1’のおもて面を構成する。
【0026】
図5を参照すると、図4に示された展開式アンテナA1’におけるアンテナ展開機構1が示されている。
【0027】
アンテナ展開機構1は、フレキシブル反射鏡面4の外縁部を6箇所にて支持するべく、中心軸の周りに放射状に配置された6本の展開リンク機構20と、6本の展開リンク機構20の中央下部に配置された一つの展開駆動機構30とを有する。展開駆動機構30は、6本の展開リンク機構20の展開を行う為のアクチュエータ機構部である。
【0028】
図4におけるバンド3は、展開リンク機構20の位相角度を調整するものである。
【0029】
図6を参照すると、図5に示されたアンテナ展開機構1の6本の展開リンク機構20の各々を構成する一本の展開リンク機構20が示されている。
【0030】
一本の展開リンク機構20は、6本の展開リンク機構20の前記中心軸の位置から外側に向かって3つの四辺リンク5、6、及び7を有し、3段に折り畳む構造である。図6において、黒丸はヒンジ機構である。
【0031】
図1〜図3に関連技術として示された展開式アンテナA0における展開式アンテナモジュールA1も、図5に示されたアンテナ展開機構1と同様のアンテナ展開機構を有する。即ち、展開式アンテナモジュールA1(図1〜図3)のアンテナ展開機構も、放射状に配置された6本の展開リンク機構20と、一つの展開駆動機構30とを有する。しかし、展開式アンテナモジュールA1(図1〜図3)の展開リンク機構20は、四辺リンク7のみ(一段)で構成されている。
【0032】
これに対して、図6に示された、上記第1の本実施形態では、図6に示したように、展開リンク機構20は、四辺リンク5、6、及び7(三段:三つ折り)で構成される。
【0033】
図6において、四辺リンク20の前記中心軸を構成するリンク(中央縦リンク)8は、スライダー9を備えている。四辺リンク5及び6間のリンク(共通縦リンク)15は、スライダー16を備えている。四辺リンク6及び7間のリンク(別の共通縦リンク)8は、スライダー9を備えている。
【0034】
図6に示された一本の展開リンク機構20においては、展開式アンテナA1’の支持構造となる四辺リンク5に対し線対称形状である四辺リンク6が四辺リンク5に連結されている。更に、四辺リンク6に対し線対称形状となる四辺リンク7が四辺リンク5に連結されている。このように、3段に折り畳む構造を採用することにより一つの展開式アンテナA1’の口径サイズを大型化する。即ち、一つの展開式アンテナA1’の口径サイズを、一つの展開式アンテナモジュールA1(図1〜図3)のモジュール口径サイズのほぼ3倍に大型化する。この展開式アンテナA1’は、単一で、図1〜図3に示された大型展開式アンテナA0に値する大型展開アンテナを構成することができるものである。
【0035】
図4に示した単一の展開式アンテナA1’を用いて、図1〜図3に示された大型展開式アンテナA0を構成した場合、大型展開式アンテナA0に必要な展開駆動機構30も1個で済み、軽量な大型展開式アンテナが実現される。
【0036】
図7を参照すると、図6に示された展開リンク機構20を構成する左端の四辺リンク5が示されている。
【0037】
四辺リンク5は、リンク8、13、14、及び15から構成される四辺リンクである。その四辺リンク5に対してスライダー9、リンク10、11、及び12、スライダー16、及びリンク17がヒンジ機構hgによって結合されている。
【0038】
図6および図7において、展開駆動機構30によって、スライダー9を、前記中心軸を構成する中央縦リンク8上を上方にスライドさせることによって、リンク10がリンク11及び12を伸展状態とし、それによって四辺リンク5を展開させる。四辺リンク5が展開することによって、スライダー16を共通縦リンク15上を上方にスライドさせ、リンク17により四辺リンク6を展開させる。これにより四辺リンク6の展開形状が四辺リンク5の展開形状に同期される。四辺リンク6及び四辺リンク7間においては、四辺リンク6が展開することによって、スライダー9を別の共通縦リンク8上を上方にスライドさせ、リンク10がリンク11及び12を伸展状態とし、それによって四辺リンク7を展開させる。これにより四辺リンク7の展開形状が四辺リンク6の展開形状に同期される。
【0039】
図8を参照すると、図6における、左端の四辺リンク5の右端部及び中央の四辺リンク6の左端部が示されている。スライダー16は、共通縦リンク15上を上下するものである。リンク17の一端は、リンク14に回転自在に固定され、リンクの17の他端はスライダー16に回転自在に固定されている。
【0040】
図9を参照すると、図6及び図7における、左端の四辺リンク5の左端部が示されている。
【0041】
図10を参照すると、図6における、右端の四辺リンク7の右端部が示されている。
【0042】
図11を参照すると、図6における展開駆動機構30が示されている。展開駆動機構30は、スライダー9を展開方向へ(即ち、中央縦リンク8上を上方に)押し上げるアクチュエータ31(例えば、ばね)と、スライダー9の展開を制御する制動装置32(例えば、モータで駆動されるワイヤ)とを有する。また、制動装置32を逆転することにより、収納することが可能となる。
【0043】
ここで上記第1の実施形態の動作を説明する。
【0044】
図7において、展開駆動機構30がスライダー9を中央縦リンク8上を上方にスライドさせることにより、リンク10がリンク11とリンク12を伸展状態とし、それによりリンク8、13、14、及び15から構成される四辺リンク5を展開させる。
【0045】
リンク11とリンク12が伸展状態になることにより、四辺リンク5の展開状態における形状を安定に保つ構造となっている。
【0046】
図7において、スライダー16による展開力は、スライダー9による展開力を助けて、展開リンク機構20全体の展開力を助長する。
【0047】
図6において、四辺リンク6は四辺リンク5と線対称となっている為、四辺リンク5と線対称に展開し、同様に四辺リンク7は四辺リンク6と線対象に展開する。従って、四辺リンク5、6、7から構成される展開リンク機構2は、スライダー9及び16のスライドに伴い展開・収納する。
【0048】
上記第1の実施形態は、3段に折り畳むことができる展開リンク機構20を用いて、大口径サイズの展開式アンテナA1’の展開・収納を可能とする機構である。
【0049】
上記第1の実施形態により、単一の展開式アンテナA1’で大型展開アンテナを構成でき、大型展開アンテナの軽量化を図ることができる。
【0050】
なお、上記第1の実施形態による単一の展開式アンテナA1’では達成できない程の大口径サイズの展開アンテナを得るには、図1〜図3の展開アンテナA0と同様に、複数の展開式アンテナA1’の最外周部(四辺リンク7の最外周部)を複数の結合部材40(図3)により結合して大口径サイズの結合型展開アンテナを構成すればよい。
【0051】
図12を参照すると、本発明の第2の実施形態による展開式アンテナに用いられる展開リンク機構20’が示されている。この展開リンク機構20’は、5つの四辺リンク5、6、5、6、及び7から構成し、5段折りの展開リンク機構としたものである。この展開リンク機構20’は、図6の展開リンク機構20の四辺リンク6及び7間に、2つの四辺リンク5及び6を追加したものである。追加された2つの四辺リンク5及び6は、図6の展開リンク機構20の四辺リンク5及び6と実質的に同じ構成を有する。
【0052】
このように、5段に折り畳む構造を採用することにより、展開式アンテナの口径サイズを大型化する。即ち、展開式アンテナの口径サイズを、展開式アンテナモジュールA1(図1〜図3)のモジュール口径サイズのほぼ5倍に大型化する。この展開式アンテナも、単一で、図1〜図3に示された大型展開式アンテナA0に値する大型展開アンテナを構成することができるものである。
【0053】
なお、上記第2の実施形態による単一の展開式アンテナでも達成できない程の大口径サイズの展開アンテナを得るには、図1〜図3の展開アンテナA0と同様に、複数の展開式アンテナの最外周部(四辺リンク7の最外周部)を複数の結合部材40(図3)により結合して大口径サイズの結合型展開アンテナを構成すればよい。
【0054】
ここで、図4〜図7及び図12を参照して、上記第1及び上記第2の実施形態による展開式アンテナの種々の構成を(1)乃至(7)として以下にまとめておく。
【0055】
(1) フレキシブル反射鏡面4の外縁部を支持するべく、中心軸の周りに放射状に配置された6本の展開リンク機構20と、前記6本の展開リンク機構20の中央下部に配置され、前記6本の展開リンク機構20の展開を行うための一つの展開駆動機構30とを有する展開式アンテナであって、
前記6本の展開リンク機構20の各々は、前記6本の展開リンク機構20の前記中心軸の位置から外側に向かって第1、第2、及び第3の四辺リンク5、6、及び7を有し、3段に折り畳む構造であり、
前記第1の四辺リンク20の前記中心軸を構成する中央縦リンク8は、第1のスライダー9を備え、
前記第1及び前記第2の四辺リンク5及び6間の共通縦リンク15は、第2のスライダー16を備え、
前記第3及び前記第4の四辺リンク6及び7間の別の共通縦リンク8は、第3のスライダー9を備え、
前記展開駆動機構30が前記第1のスライダー9を、前記中央縦リンク8上を上方にスライドさせることによって、前記第1の四辺リンク5を展開させ、
該第1の四辺リンク5が展開することによって、前記第2のスライダー16を、前記共通縦リンク15上を上方にスライドさせ、これによって前記第2の四辺リンク6を展開させ、
該第2の四辺リンク6が展開することによって、前記第3のスライダー9を、前記別の共通縦リンク8上を上方にスライドさせ、これによって、前記第3の四辺リンク7を展開させることを特徴とする展開式アンテナ。
【0056】
(2) 前記第1の四辺リンク5は、前記展開駆動機構30が前記第1のスライダー9を、前記中央縦リンク8上を上方にスライドさせたとき、前記第1のスライダー9のスライドに伴って伸展状態になり、前記第1の四辺リンク5を展開させるリンク機構10、11、及び12を更に有することを特徴とする上記(1)に記載の展開式アンテナ。
【0057】
(3) 前記第1及び前記第2の四辺リンク5及び6は、更に、前記第1の四辺リンク5が展開することによって、前記第2のスライダー16を、前記共通縦リンク15上を上方にスライドさせたとき、前記第2のスライダー16のスライドに伴って前記第1及び前記第2の四辺リンク5及び6の展開を助長する第1及び第2の助長リンク17をそれぞれ有することを特徴とする上記(1)及び(2)のいずれかに記載の展開式アンテナ。
【0058】
(4) 前記第3の四辺リンク7は、前記第2の四辺リンク6が展開することによって、前記第3のスライダー9を、前記別の共通縦リンク8上を上方にスライドさせたとき、前記第3のスライダー9のスライドに伴って伸展状態になり、前記第3の四辺リンク7を展開させるリンク機構10、11、及び12を更に有することを特徴とする上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の展開式アンテナ。
【0059】
(5) 上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の展開式アンテナA1’を複数個備え、これら複数の展開式アンテナの最外周部を複数の結合部材40(図3)により結合して構成したことを特徴とする結合型展開アンテナ。
【0060】
(6) 前記6本の展開リンク機構20’の各々は、前記第2及び前記第3の四辺リンク6及び7の間に第4及び第5の四辺リンク5及び6を更に有し、5段に折り畳む構造であり、
前記第4及び前記第5の四辺リンク5及び6は、前記第1及び前記第2の四辺リンク5及び6と実質同じ構造を有することを特徴とする上記(1)に記載の展開式アンテナ。
【0061】
(7) 上記(6)に記載の展開式アンテナを複数個備え、これら複数の展開式アンテナの最外周部を複数の結合部材40(図3)により結合して構成したことを特徴とする結合型展開アンテナ。
【0062】
図13を参照すると、本発明の第3の実施形態による展開式アンテナA1”が示されている。この展開式アンテナA1”は、フレキシブル反射鏡面4の外縁周部を8箇所にて支持するべく、展開リンク機構20を放射状8箇所に設けて、八角形状の展開式アンテナを得たものである。この八角形状の展開式アンテナA1”は、フレキシブル反射鏡面4のパラボラ軸方向投影形状を円開口とする様な、楕円開口形状のアンテナを構成したものである。8箇所の展開リンク機構20の各々は、図6及び図7に図示のものと同様の構成を有する。
【0063】
なお、図13に示した展開式アンテナA1”において、前記8本の展開リンク機構20の各々として、図12に図示の展開リンク機構20’を用いても良い。この展開リンク機構20’は、上述したように、5つの四辺リンク5、6、5、6、及び7から構成し、5段折りの展開リンク機構としたものである。この展開リンク機構20’は、図6の展開リンク機構20の四辺リンク6及び7間に、2つの四辺リンク5及び6を追加したものである。追加された2つの四辺リンク5及び6は、図6の展開リンク機構20の四辺リンク5及び6と実質的に同じ構成を有する。
【0064】
ここで、図13、図6、図7、及び図12を参照して、上記第3の実施形態による展開式アンテナA1”の種々の構成を(8)及び(9)として以下にまとめておく。
【0065】
(8) フレキシブル反射鏡面4の外縁部を支持するべく、中心軸の周りに放射状に配置された8本の展開リンク機構20と、前記8本の展開リンク機構20の中央下部に配置され、前記8本の展開リンク機構20の展開を行うための一つの展開駆動機構30とを有する展開式アンテナA1”であって、
前記8本の展開リンク機構20の各々は、前記8本の展開リンク機構20の前記中心軸の位置から外側に向かって第1、第2、及び第3の四辺リンク5、6、及び7を有し、3段に折り畳む構造であり、
前記第1の四辺リンク20の前記中心軸を構成する中央縦リンク8は、第1のスライダー9を備え、
前記第1及び前記第2の四辺リンク5及び6間の共通縦リンク15は、第2のスライダー16を備え、
前記第3及び前記第4の四辺リンク6及び7間の別の共通縦リンク8は、第3のスライダー9を備え、
前記展開駆動機構30が前記第1のスライダー9を、前記中央縦リンク8上を上方にスライドさせることによって、前記第1の四辺リンク5を展開させ、
該第1の四辺リンク5が展開することによって、前記第2のスライダー16を、前記共通縦リンク15上を上方にスライドさせ、これによって前記第2の四辺リンク6を展開させ、
該第2の四辺リンク6が展開することによって、前記第3のスライダー9を、前記別の共通縦リンク8上を上方にスライドさせ、これによって、前記第3の四辺リンク7を展開させることを特徴とする展開式アンテナ。
【0066】
(9) 前記8本の展開リンク機構20の各々は、前記第2及び前記第3の四辺リンク6及び7の間に第4及び第5の四辺リンク5及び6を更に有し、5段に折り畳む構造であり、
前記第4及び前記第5の四辺リンク5及び6は、前記第1及び前記第2の四辺リンク5及び6と実質同じ構造を有することを特徴とする上記(8)に記載の展開式アンテナ。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、人工衛星等に搭載されるパラボラアンテナのうち、展開式アンテナの折り畳み機構に利用することができる。
【0068】
以上、実施形態を参照して本願発明を詳細に説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解できる様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0069】
A0 展開式アンテナ
A1 展開式アンテナモジュール
A1’ 展開式アンテナ
1 アンテナ展開機構
3 バンド
4 フレキシブル反射鏡面
5 四辺リンク
6 四辺リンク
7 四辺リンク
8 リンク
9 スライダー
10 リンク
11 リンク
12 リンク
13 リンク
14 リンク
15 リンク
16 スライダー
17 リンク
20 展開リンク機構
20’ 展開リンク機構
30 展開駆動機構
31 アクチュエータ
32 制動装置
40 結合部材
hg ヒンジ機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブル反射鏡面の外縁部を支持するべく、中心軸の周りに放射状に配置された6本の展開リンク機構と、前記6本の展開リンク機構の中央下部に配置され、前記6本の展開リンク機構の展開を行うための一つの展開駆動機構とを有する展開式アンテナであって、
前記6本の展開リンク機構の各々は、前記6本の展開リンク機構の前記中心軸の位置から外側に向かって第1、第2、及び第3の四辺リンクを有し、3段に折り畳む構造であり、
前記第1の四辺リンクの前記中心軸を構成する中央縦リンクは、第1のスライダーを備え、
前記第1及び前記第2の四辺リンク間の共通縦リンクは、第2のスライダーを備え、
前記第3及び前記第4の四辺リンク間の別の共通縦リンクは、第3のスライダーを備え、
前記展開駆動機構が前記第1のスライダーを、前記中央縦リンク上を上方にスライドさせることによって、前記第1の四辺リンクを展開させ、
該第1の四辺リンクが展開することによって、前記第2のスライダーを、前記共通縦リンク上を上方にスライドさせ、これによって前記第2の四辺リンクを展開させ、
該第2の四辺リンクが展開することによって、前記第3のスライダーを、前記別の共通縦リンク上を上方にスライドさせ、これによって、前記第3の四辺リンクを展開させることを特徴とする展開式アンテナ。
【請求項2】
前記第1の四辺リンクは、前記展開駆動機構が前記第1のスライダーを、前記中央縦リンク上を上方にスライドさせたとき、前記第1のスライダーのスライドに伴って伸展状態になり、前記第1の四辺リンクを展開させるリンク機構を更に有することを特徴とする請求項1に記載の展開式アンテナ。
【請求項3】
前記第1及び前記第2の四辺リンクは、更に、前記第1の四辺リンクが展開することによって、前記第2のスライダーを、前記共通縦リンク上を上方にスライドさせたとき、前記第2のスライダーのスライドに伴って前記第1及び前記第2の四辺リンクの展開を助長する第1及び第2の助長リンクをそれぞれ有することを特徴とする請求項1及び2のいずれかに記載の展開式アンテナ。
【請求項4】
前記第3の四辺リンクは、前記第2の四辺リンクが展開することによって、前記第3のスライダーを、前記別の共通縦リンク上を上方にスライドさせたとき、前記第3のスライダーのスライドに伴って伸展状態になり、前記第3の四辺リンクを展開させるリンク機構を更に有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の展開式アンテナ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の展開式アンテナを複数個備え、これら複数の展開式アンテナの最外周部を複数の結合部材により結合して構成したことを特徴とする結合型展開アンテナ。
【請求項6】
前記6本の展開リンク機構の各々は、前記第2及び前記第3の四辺リンクの間に第4及び第5の四辺リンクを更に有し、5段に折り畳む構造であり、
前記第4及び前記第5の四辺リンクは、前記第1及び前記第2の四辺リンクと実質同じ構造を有することを特徴とする請求項1に記載の展開式アンテナ。
【請求項7】
請求項6に記載の展開式アンテナを複数個備え、これら複数の展開式アンテナの最外周部を複数の結合部材により結合して構成したことを特徴とする結合型展開アンテナ。
【請求項8】
フレキシブル反射鏡面の外縁部を支持するべく、中心軸の周りに放射状に配置された8本の展開リンク機構と、前記8本の展開リンク機構の中央下部に配置され、前記8本の展開リンク機構の展開を行うための一つの展開駆動機構とを有する展開式アンテナであって、
前記8本の展開リンク機構の各々は、前記8本の展開リンク機構の前記中心軸の位置から外側に向かって第1、第2、及び第3の四辺リンクを有し、3段に折り畳む構造であり、
前記第1の四辺リンクの前記中心軸を構成する中央縦リンクは、第1のスライダーを備え、
前記第1及び前記第2の四辺リンク間の共通縦リンクは、第2のスライダーを備え、
前記第3及び前記第4の四辺リンク間の別の共通縦リンクは、第3のスライダーを備え、
前記展開駆動機構が前記第1のスライダーを、前記中央縦リンク上を上方にスライドさせることによって、前記第1の四辺リンクを展開させ、
該第1の四辺リンクが展開することによって、前記第2のスライダーを、前記共通縦リンク上を上方にスライドさせ、これによって前記第2の四辺リンクを展開させ、
該第2の四辺リンクが展開することによって、前記第3のスライダーを、前記別の共通縦リンク上を上方にスライドさせ、これによって、前記第3の四辺リンクを展開させることを特徴とする展開式アンテナ。
【請求項9】
前記8本の展開リンク機構の各々は、前記第2及び前記第3の四辺リンクの間に第4及び第5の四辺リンクを更に有し、5段に折り畳む構造であり、
前記第4及び前記第5の四辺リンクは、前記第1及び前記第2の四辺リンクと実質同じ構造を有することを特徴とする請求項8に記載の展開式アンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−160809(P2012−160809A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17529(P2011−17529)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(301072650)NEC東芝スペースシステム株式会社 (62)
【出願人】(503361400)独立行政法人 宇宙航空研究開発機構 (453)
【Fターム(参考)】