層状ナノ粒子
【課題】層状ナノ粒子の提供。
【解決手段】本発明は、層状ナノ粒子の形成方法であって、第一液体中にコア粒子を含む懸濁液を得ること、第二液体を該懸濁液に添加すること、及び、試薬又は該試薬の前駆体を懸濁液に添加することを含む方法を提供する。第二液体は第一液体と非混和性である。試薬が懸濁液に添加されるならば、試薬は反応してコア粒子上に層を形成して、層状ナノ粒子を形成する。試薬の前駆体が懸濁液に添加されるならば、前駆体は試薬に転換され、そして該試薬が反応してコア粒子上に層を形成して、層状ナノ粒子を形成する。
【解決手段】本発明は、層状ナノ粒子の形成方法であって、第一液体中にコア粒子を含む懸濁液を得ること、第二液体を該懸濁液に添加すること、及び、試薬又は該試薬の前駆体を懸濁液に添加することを含む方法を提供する。第二液体は第一液体と非混和性である。試薬が懸濁液に添加されるならば、試薬は反応してコア粒子上に層を形成して、層状ナノ粒子を形成する。試薬の前駆体が懸濁液に添加されるならば、前駆体は試薬に転換され、そして該試薬が反応してコア粒子上に層を形成して、層状ナノ粒子を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、層状ナノ粒子及びそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
一般に、薬物送達を制御することは、非特異的な毒性のために、通常、危険な副作用をもたらすガン化学療法薬の安全性及び臨床効果を改善することができると考えられている。この問題に対する一つの試みとして、腫瘍への細胞毒性薬の選択的送達がある。適当な物理化学的性質を有する直径50ないし250nmのナノ球状粒子が、静脈注射後、1ないし2日間にわたり、全身循環から腫瘍塊中に選択的に分配され得ることが幾つかの研究グループによって確立されている。これは、多くの腫瘍内の微小血管系の異常構造によって生じる。様々な種類のナノ粒子状物質の送達システムが実験的に使用されてきたが、ほとんどは、医療用途におけるそれらの最終使用を妨げる重大な制限を有する。
【0003】
主な制限は以下の通りである:
1)それらの物理的安定性は、腫瘍中(例えば、リポソーム)への蓄積を確実にするための十分な血液循環を得るためには、あまりにも乏しい。
2)大抵の種類のナノ粒子からの放出速度は、腫瘍への濃縮された薬量を得るためには、あまりにも速い。
3)今まで開発した安定なナノ粒子は、非常に低い薬物負荷及び適当な治療投与量を送達するには不十分な遅い放出速度を有する。
4)多くの種類のナノ粒子状物質系は、免疫系(即ち、細網内皮系)によってすぐに検出され、血流から排出され、結果として、少量の薬剤しか腫瘍に到達しない。
【0004】
薬物送達賦形剤として使用される大抵の材料は、天然の有機物、例えば、ポリマー、リポソーム、デンドリマーである。対照的に、セラミック材料は、有機送達マトリックスに対して多くの利点を与える。例えば、シリカ粒子は生物学的に不活性であり、親水性の表面を有する。それらはまた、非毒性で生体適合性が高く、薬剤の分子構造を保つために低温において合成され得る。更に、それらのサイズ及び多孔性は、広い範囲の化学環境において安定なままである。ゾル−ゲル技術、無機室温重合技術(図1参照)は、酸化物マトリックス内に有機分子を上手くカプセル化するために使用されてきた。
【0005】
ここ数年の間に、本発明者達は、制御された放出用途のためのセラミック粒子の製造技術を発明した(国際公開第01/62332号パンフレット)。この技術は、ゾル−ゲル化学及び油中水(W/O)エマルジョン合成の組み合わせを使用して、活性分子をセラミック粒子中にカプセル化することができる。粒径はエマルジョン液滴のサイズによって制御され、放出速度はゾル−ゲル化学によって制御される。この方法を使用して単分散ナノ粒子を製造するために、安定なマイクロエマルジョンが使用される。このような系において、水滴サイズは、通常、最終粒径を制御するために、数ナノメートルないし数十ナノメートルに制限され、重要なオストワルト熟成下でさえも100nm未満に制限される。大きな粒径は、不安定なエマルジョン系を使用して得られ得るが、結果として生じる粒子は、このような用途において、例えば、粒径の正確な制御が望まれるところの腫瘍の受動的なターゲッティングにおいて望ましくない広い粒径分布を有する。このような粒径の正確な制御は、ストーバー法(Stober process)(希釈媒体中での種成長)を使用して達成され得るとはいえ、この種の方法は、ゲル化中の活性物質のカプセル化を確実にするために必要なエマルジョンにおいて達成される区分化を得ることができない。従
って、ストーバー法は、制御された放出用途の粒子の合成のために不適当である。国際公開第01/62332号パンフレットに概説された該技術の他の制限は、遅延、順次又はパルス放出シーケンスを有する粒子を製造することができないことである。一旦、セラミック粒子が液体中に導入されると、それらはすぐに放出を始する。この欠点は、拡散障壁として作用しかつ活性物質が急速に浸出するのを防止する、からのシェル(shell)によって囲まれたコア中に活性分子を置く、コア−シェル構造をつくることによって解消され得る。
【0006】
特定のマトリックスからの活性分子の複雑かつ調整された放出パターンを達成するために、実質的な作業が、ここ10年間行われている。様々な送達賦形剤からの薬剤の遅延放出、持続放出又は順次放出が研究されている。これらの複雑な放出パターンを達成するために、送達系は、送達材料の物理化学的性質の変性又は多層構造を使用すること等の該系の形態の変性に基づく。これらの系の全ては、様々な形態の有機マトリックスを使用する:ポリマー、ゲル、リポソーム、繊維、マイクロカプセル、錠剤等。粒子、より特にはナノ粒子は、この種の用途において研究されていない。
【0007】
調整された構造、光学及び表面特性を有するコア−シェルコロイド材料は、ここ10年間にわたり非常に研究されている。様々な分野におけるこのようなコロイドの潜在用途によって、この分野の研究は行われている。研究努力のほとんどは、様々な材料のシェルのコーティング又は粒子をカプセル化することによって得られた粒子の表面特性を変化させることに集中している。シェルは、通常、粒子表面の電荷、官能性及び反応性を変化させ、かつコロイドコアの安定性及び分散性も増加させ得るとはいえ、コアは、金属酸化物、半導体、量子ドット、磁性粒子、結晶粒子等である。言い換えれば、コアの材料は、シェル材料とは異なり、一般に報告されたコア−シェル構造のほとんどは、セラミックコアとポリマーシェル又はポリマーコアとセラミックシェルである。カプセル化された活性物質を含み、かつ様々な種類のセラミック材料でコーティングされたセラミックコアも文献で報告されている。
【0008】
W/Oマイクロエマルジョンを介し、ゾル−ゲル合成を使用してセラミック粒子を成長させるための幾つかの方法が文献で報告されている。このような方法の1つは、合成パラメーターを調整することによってより大きな粒径を得ることに基づく。粒径は、前駆体濃度、水濃度、pH、温度、イオン強度、反応時間等のパラメーターを調節することによって調整され得るとはいえ、粒子の成長には制限がある。逆ミセルの固有の特性のために、100nmより大きい単分散粒子を製造するために、この方法を使用することは困難である。文献で報告されている他の方法は、粒子種を抽出し、それらを乾燥させ、その後、これらの種を新たなW/Oマイクロエマルジョン中に再分散させ、多くのアルコキシド前駆体を添加し、粒子を成長させることからなる。この方法には、2つの欠点がある。第一に、抽出及び乾燥工程の間、粒子は、不可逆的に、凝集してミクロンサイズの凝集体になり得、第二に、該方法は、液体から固体粒子を回収するために、全収率を著しく減少させ得る更なる分離工程を導入する。また、粒径を増加させるために使用され得る他の方法は、図2に記載される。しかしながら、この場合には、活性分子はコア中にカプセル化されるだけであり得る。更に、粒子成長は、アルコキシド前駆体が反応のために水を消費する必要があるという事実によって制限される。水の量はW/Oマイクロエマルジョンの形成に影響を及ぼすため、制限された量の水しか利用できない。実際、ある程度の水が界面活性剤と結合するため、系に導入される水の全てがゾル−ゲル反応に利用できるわけではない。より多くのアルコキシドが添加されるほど、より多くの水が消費され、更なる加水分解及び成長に少しの水しか使用できない。
【0009】
それ故、ドーパントがナノ粒子のコア及び/又は該コアを囲む1つ以上の層中に置かれ、かつ制限されるところの層状ナノ粒子及びこのようなナノ粒子の製造方法の必要性があ
る。1つ以上のカプセル化された分子種(ドーパント)を有するか、又は、様々な分離配置において又は層(即ち、シェル)中にカプセル化された活性物質(ドーパント)を有するコア−シェルセラミックナノ粒子を製造することができる方法の必要性もある。このような方法は、上記した薬剤の制御放出に加えて、光学式記憶、データ暗号化又は安全インキ等の様々な新規潜在用途に使用され得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
発明の目的
本発明の目的は、上記欠点の少なくとも1つを解消すること、又は実質的に改善することである。更なる目的は、上記必要性の少なくとも1つを少なくとも部分的に満たすことである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の概要
本発明の広い形態において、コア粒子の存在下で触媒を試薬に曝露することを含み、それによって、試薬が反応してコア粒子上に層を形成して、層状ナノ粒子を形成するところの層状ナノ粒子の形成方法が提供される。触媒、試薬及びコア粒子は流体中で処理され得る。流体は液体であり得る。触媒はコア粒子上及び/又はコア粒子中及び/又はコア粒子の周囲に置かれ得る。触媒は、試薬の反応のための触媒であり得る。触媒は、粒子の表面上に置かれ得る。反応は、加水分解、凝縮、重縮合、架橋、重合、沈殿及びゲル化の1種以上を含み得る。コア粒子の周囲にはドーパントが存在し得、試薬の反応は層中にドーパントをカプセル化し得る。コア粒子は層状ナノ粒子のコアを形成し得る。従って、一旦形成された層状ナノ粒子は、層によって少なくとも部分的に囲まれた又はカプセル化されたコア粒子を含み得る。コア粒子は、層によって完全に囲まれ得るか又はカプセル化され得る。コア粒子は、単一粒子又は2種以上の粒子の凝集体であり得る。コア粒子は層と同一の材料又は異なる材料を含み得る。
【0012】
1つの形態において、本発明は、層状ナノ粒子の形成方法であって、
−第一液体中にコア粒子を含む懸濁液を得ること、及び、
−コア粒子の存在下において、触媒を試薬に曝露すること
を含み、
それによって、該試薬が反応して該コア粒子状に層を形成して、層状ナノ粒子を形成するところの方法を提供する。
【0013】
液体中にコア粒子を得る工程は、第一液体中にコア粒子を形成することを含み得る。1つの態様において、粒子は、曝露工程前に、第一液体から分離されない。第一液体は非極性であり得る。
【0014】
曝露工程を1回以上繰り返すことにより多数の層を形成し得る。
曝露工程は、以下の工程、
−触媒を含む第二液体を懸濁液に添加する工程、及び、
−試薬又は該試薬の前駆体を該懸濁液に添加すること
を含み得、
前記試薬が懸濁液に添加されるならば、該試薬は反応してコア粒子上に層を形成し、また、前記試薬の前駆体が懸濁液に添加されるならば、該前駆体は前記試薬に転換され、そして該試薬が反応してコア粒子上に層を形成する。
触媒は、第二液体中に溶解し得る。第二液体は第一液体と非混和性であり得る。触媒は、試薬への前駆体の転換のための触媒及び/又は試薬からの層の形成のための触媒であり得る。
【0015】
他の形態において、本発明は、層状ナノ粒子の製造方法であって、該方法は、
−第一液体中にコア粒子を含む懸濁液を得ること、
−試薬の反応のための触媒を含む第二液体を該懸濁液に添加すること、及び、
−試薬を反応させてコア粒子上に層を形成するために、試薬又は該試薬の前駆体を該懸濁液に添加すること
を含む方法を提供する。
【0016】
他の形態において、本発明は、層状ナノ粒子の形成方法であって、該方法は、
−第一液体中にコア粒子を含む懸濁液を得ること、
−該第一液体と非混和性の第二液体を該懸濁液に添加すること、及び、
−試薬又は該試薬の前駆体を、該第二液体を含む懸濁液に添加すること
を含み、
前記試薬が前記第二液体を含む懸濁液に添加されるならば、該試薬は反応してコア粒子上に層を形成し、また、前記試薬の前駆体が前記第二液体を含む懸濁液に添加されるならば、該前駆体は前記試薬に転換され、そしてこのようにして形成された試薬が反応してコア粒子上に層を形成して、前記層状ナノ粒子を形成するところの方法を提供する。
第二液体は触媒を含み得る。第二液体が触媒を含まないならば、試薬が触媒なしに層を形成することができるようなものであり得る及び/又は前駆体が触媒なしに試薬を形成することができるものであり得る。例えば、第二液体が水性であるならば、前駆体は触媒の不存在下において加水分解するシランであり得る。
【0017】
他の形態において、本発明の方法は、
−第一液体中にコア粒子を含む懸濁液を得ること、
−試薬の反応のための触媒を含む第二液体を該懸濁液に添加すること、及び、
−前駆体を試薬に転換させ、かつ該試薬を反応させてコア粒子上に層を形成するために、該試薬の前駆体を該懸濁液に添加すること
を含む。
【0018】
第二液体は、第一液体と非混和性であり得る。第二液体を添加する工程は、第二液体をコア粒子上、例えばコア粒子の表面上に付着させることを含み得る。前駆体が懸濁液に添加されるならば、前駆体は第二液体と反応して、試薬を形成することができる、即ち、それは、試薬の前駆体であり得る。試薬は、凝縮性物質、架橋性物質又は重合性物質であり得る。試薬の反応は、コア粒子上に固体層又はゲル層を形成させ得、試薬の凝縮、架橋及び/又は重合を含み得る。コア粒子はナノ粒子であり得、直径約5ないし150nmであり得るか又はサブミクロン粒子であり得、直径約500nm未満であり得る。コア粒子及び/又は層は、固体であり得、かつ、多孔性、例えば微小孔性及び/又はメソ多孔性であり得る。第二液体はドーパントを含み得、それによって層形成は層中にドーパントをカプセル化する。第二液体を添加する工程及び試薬を添加する工程を1回以上繰り返すことにより多数の層を形成する。コア粒子及び各層は、独立して、ドーパントを有するか又は有さず、もしも存在するならば、ドーパントは同一であり得るか又は異なり得る。各ドーパントは放出性物質であり得、ナノ粒子から放出可能であり得る。本発明の方法は多数の層状ナノ粒子を含むナノ粒子状物質をつくり得、そのために、懸濁液を得る工程は第一液体中に多数のコア粒子を含む懸濁液を得ることを含む。コア粒子及び独立してナノ粒子状物質の層状ナノ粒子は、均一な形状であり得るか又は不均一な形状であり得る。それらは、単分散であり得るか、又は、狭い粒径分布を有し得るか、又はそれらは広い粒径分布を有し得る。
【0019】
本発明の1つの観点において、層状ナノ粒子の製造方法であって、該方法は、
a)第一非極性液体中にコア粒子、第一界面活性剤及び所望により第一補助界面活性剤
を含む懸濁液を得ること、
b)凝縮物質の凝縮のための触媒を含みかつ所望によりドーパント又はドーパントの組み合わせも含む水性液体を該懸濁液に添加すること、
c)前記第一非極性液体と非混和性の第二非極性液体、第二界面活性剤及び所望により第二補助界面活性剤を添加すること、及び、
d)凝縮性物質が、触媒の存在下において凝縮してコア粒子を少なくとも部分的に囲む層を形成して、層状ナノ粒子が生じるように、凝縮性物質(試薬)を懸濁液に添加すること
を含む方法を提供する。
【0020】
第二非極性液体は第一非極性液体と同一であり得るか又は異なり得る。第二界面活性剤は、第一界面活性剤と同一であり得るか又は異なり得る。第二補助界面活性剤は、第一補助界面活性剤と同一であり得るか又は異なり得る。第二非極性液体、第二界面活性剤及び第二補助界面活性剤は、第一非極性液体+第二非極性液体と第一界面活性剤+第二界面活性剤及び第一補助界面活性剤+第二補助界面活性剤との比がv/v、v/w、w/w、v/mol又はw/molに基づき一定のままであるように添加され得る。懸濁液は、約1ないし70℃の温度で得られ得るか、又は、本発明の方法は、懸濁液を約1ないし70℃、一般に約15ないし40℃、より一般に20ないし30℃の温度、即ち室温にすることを含み得る。分散相も連続相も凍結しない温度ならば、より低い温度も使用され得る。揮発度及び2相の沸点及び界面活性剤の逆転温度に依存して、より高い温度も使用され得る。工程d)は、水性液体中で加水分解して、凝縮性物質を形成することができる加水分解性物質を懸濁液に添加して層状ナノ粒子を形成することを含み得る。工程d)は、水性液体中で加水分解性物質を加水分解する工程及び水性液体中で凝縮性物質を凝縮して層を形成する工程を含み得る。該方法は、十分な時間(例えば、約6ないし96時間)、十分な温度(例えば、約1ないし70℃)において懸濁液を維持して、加水分解性物質を加水分解する工程、そして、所望により凝縮性物質の凝縮する工程も含み得る。工程b)ないしd)は、少なくとも1回繰り返され得るか、又は2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回又は10回以上繰り返され得る。各繰り返しにおいて、水性液体は、ドーパント又はドーパントの組み合わせを含み得るか又はドーパントを含まず、存在するならば、各繰り返しにおけるドーパントは他の繰り返しにおけるドーパントと同一であり得るか又は異なり得る。各繰り返しは層を形成し得、そして各層はドーパントを含み得るか又はドーパントを含まない。各ドーパントは放出性物質であり得るか又は非放出性物質であり得る。コア粒子は直径約5ないし150nmであり得るか又は直径約500nm未満であり得る。各層は約1ないし100nm、又は約1ないし50nm、5ないし75nm又は5ないし30nmの平均厚さを有し得る。該方法は、各層の厚さを制御することができる。コア粒子は多孔性であり得、微小孔性であり得及び/又はメソ多孔性であり得、約0.5ないし20nmの細孔サイズを有し得る。コア粒子はドーパントを含み得、そしてそれは、ある層中の、又はいくつかの層中の、又は全ての層中のドーパントと同一であり得るか又は異なり得る。各繰り返しにおける加水分解性物質は他の繰り返しにおける加水分解性物質と同一であり得るか又は異なり得る。懸濁液及び水性液体の一方又は両方は、界面活性剤を含み得る。本発明の方法は、多数の層状ナノ粒子を含むナノ粒子状物質を製造し得、そのため、懸濁液を得る工程は第一非極性液体中に多数のコア粒子を含む懸濁液を得ることを含む。
【0021】
本発明の方法は、更に以下の工程
e)第一非極性液体から層状ナノ粒子又はナノ粒子状物質を少なくとも部分的に分離する工程、
f)層状ナノ粒子又はナノ粒子状物質を水性液体で洗浄する工程、
g)層状ナノ粒子又はナノ粒子状物質を有機液体で洗浄する工程、
h)層状ナノ粒子又はナノ粒子状物質を乾燥させる工程
の1つ以上を含み得る。
【0022】
工程f)は、室温において行われ得るか、又は80℃程度の温度(例えば、約20、30、40、50、60、70又は80℃)で行われ得る。工程g)の有機液体は、極性又は非極性であり得る。その極性は有機液体中のドーパントの溶解性に基づき選択され得る。工程g)は、室温で行われ得るか、又は70℃程度の温度(例えば、約20、30、40、50、60又は70℃)で行われ得るが、有機液体の沸点以下の温度において行われるべきである。工程f)及びg)は、あらゆる順序において1回以上行われ得るか、又は、その一方又は両方が省略され得る。例えば、該方法は、工程e)及びh)、又は工程e)、f)及びh)、又は工程e)、g)及びh)、又は工程e)、f)、g)及びh)、又は工程e)、g)、f)及びh)、又は工程e)、g)、f)、g)及びh)を(この順序で)含み得るか、又はあらゆる他の順序の工程を含み得る。工程h)は、凝集を防止又は抑制する方法において行われ得、例えば、工程h)は、国際公開第01/62332号パンフレット(Barbe and Bartlett,‘‘Controlled Release Ceramic Particles,Compositions thereof,Processes of Preparation and Methods of Use’’)に記載された凍結乾燥を含み得る。工程h)は、工程e)の後、直接行われ得る。この場合、該工程において存在する多量の界面活性剤は粒子間の物理的接触を防止し得るため、凝集を抑制する。
【0023】
1つの態様において、その中に又は上にドーパントを有する層状ナノ粒子の製造方法であって、該方法は、
a)非極性液体中にコア粒子、界面活性剤及び所望により補助界面活性剤を含む安定な懸濁液を得ること、
b)ドーパント及び凝縮性物質の凝縮のための触媒を含む水性液体を該懸濁液に添加すること、
c)第二非極性液体、第二界面活性剤及び所望により第二補助界面活性剤を添加すること、及び、
d)水性液体中で加水分解して凝縮性物質を形成することができる加水分解性物質を該懸濁液に添加して、その中に又は上にドーパントを有する層状ナノ粒子を形成すること
を含む方法を提供する。
【0024】
懸濁液及び水性液体の1方又は両方は界面活性剤を含み得る。界面活性剤は、水性液体又は懸濁液又はその両方に溶解し得る。
【0025】
他の態様において、本発明の方法は、
a)非極性液体中に分散された水性液滴を含むエマルジョンであって、前記エマルジョンは更に界面活性剤及び所望により補助界面活性剤を含み、前記液滴は加水分解後の第一凝縮性物質の凝縮のための触媒を含むところのエマルジョンを得ること、
b)前記水性液滴中で加水分解して第一凝縮性物質を形成することができる第一加水分解性物質を該エマルジョンに添加することにより非極性液体中にコア粒子の懸濁液を形成すること、
c)第二凝縮性物質の凝縮のための触媒を含む水性液体を該懸濁液に添加すること、
d)第二界面活性剤及び所望により第二補助界面活性剤の溶液を該懸濁液に添加すること、及び、
e)水性液体中で加水分解して第二凝縮性物質を形成することができる第二加水分解性物質を該懸濁液に添加すること
を含む。
【0026】
エマルジョンは油中水(W/O)エマルジョンであり得る。第一加水分解性物質(工程
b))又は第二加水分解性物質(工程e))の添加後、加水分解性物質を加水分解して、それぞれ第一凝縮性物質又は第二凝縮性物質を形成し、その後、触媒の作用のために凝縮してコア粒子を少なくとも部分的に囲む層を形成し得る。第一加水分解性物質及び第二加水分解性物質は、同一であり得るか又は異なり得る。工程c)ないしe)は、少なくとも1回繰り返され得るか、又は2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回又は10回以上繰り返され得、それによって各繰り返しはコア粒子を少なくとも部分的に囲む層を形成する。各繰り返しにおいて、水性液体は、ドーパントを含み得るか又はドーパントを含まず、各繰り返しにおけるドーパントは他の繰り返しにおけるドーパントと同一であり得るか又は異なり得る。エマルジョン及び/又は水性液体はドーパントを含み得、コア粒子及び層からなる群から選択された少なくとも1つの領域は少なくとも1種のドーパントを含み得る。
【0027】
他の態様において、層状ナノ粒子の製造方法であって、該方法は、
a)界面活性剤及び非極性液体及び所望により補助界面活性剤を含む界面活性剤溶液を得ること、
b)第一凝縮性物質の凝縮のための触媒を含み、かつ所望により第一ドーパント(コアドーパント)も含む水性溶液を該界面活性剤溶液に添加すること、
c)該界面活性剤溶液及び水性溶液からエマルジョンを形成すること、
d)水性溶液中で加水分解して第一凝縮性物質を形成することができる第一加水分解性物質を該エマルジョンに添加すること、
e)該第一加水分解性物質からのコア粒子の懸濁液の形成のために十分な時間、十分な温度において該エマルジョンを維持すること、
f)第二凝縮性物質の凝縮のための触媒及び所望により第二ドーパント(層ドーパント)を含む水性液体を該懸濁液に添加すること、
g)第二界面活性剤及び所望により第二補助界面活性剤の溶液を該懸濁液に添加すること、及び
h)水性液体中で加水分解して第二凝縮性物質を形成することができる第二加水分解性物質を該懸濁液に添加して層状ナノ粒子を形成すること
を含む方法を提供する。
【0028】
第一加水分解性物質又は第二加水分解性物質の添加後、加水分解性物質を加水分解して、それぞれ第一凝縮性物質又は第二凝縮性物質を形成し得、そしてそれは、その後、触媒作用のために凝縮し得る。
【0029】
エマルジョンはマイクロエマルジョンであり得る。
他の態様において、層状ナノ粒子の製造方法であって、該方法は、
a)界面活性剤及び非極性液体及び所望により補助界面活性剤を含む界面活性剤溶液を得ること、
b)第一凝縮性物質の凝縮のための触媒を含み、かつ所望により第一ドーパントも含む水性溶液を該界面活性剤溶液に添加すること、
c)界面活性剤溶液及び水性溶液からエマルジョンを形成すること、
d)水性溶液を加水分解して第一凝縮性物質を形成することができる第一加水分解性物質を該エマルジョンに添加すること、
e)該第一加水分解性物質からのコア粒子の懸濁液の形成のために十分な時間、十分な温度において該エマルジョンを維持すること、
f)第二凝縮性物質の凝縮のための触媒及び所望により第二ドーパントを含む水性液体を該懸濁液に添加すること、
g)第二界面活性剤及び所望により第二補助界面活性剤の溶液を該懸濁液に添加すること、
h)水性液体中で加水分解して第二凝縮性物質を形成することができる第二加水分解性
物質を該懸濁液に添加して層状ナノ粒子を形成すること、
i)非極性液体から層状ナノ粒子を少なくとも部分的に分離すること、
j)層状ナノ粒子を有機液体で洗浄すること、
k)層状ナノ粒子を水性液体で洗浄すること、
l)層状ナノ粒子を有機液体(工程j)の有機液体と同一であり得るか又は異なり得る)で洗浄すること、及び、
m)層状ナノ粒子を乾燥させること
を含む方法を提供する。
【0030】
本発明の他の観点において、コア粒子(即ち、コア)及び前記コア粒子を少なくとも部分的に囲む1つ以上の層を含む層状ナノ粒子を提供する。層状ナノ粒子は球状であり得る。コア粒子は固体であり得、多孔性の固体、例えば微小孔性又はメソ多孔性の固体であり得、球状又は非球状であり得る。コアの平均径は約5ないし500nmであり得る。各層は、独立して、固体層又はゲル層であり得る。コア及び1つ以上の層からなる群から選択される層状ナノ粒子の少なくとも1つの領域は1つのドーパント又は多数(例えば、2、3、4、5又は5つ以上)のドーパントを含み得る。従って、コアドーパント及び/又は1つ以上の層ドーパントが存在し得る。各ドーパントは、前記ドーパントを含む領域に実質的に均一に分布され得る。従って、例えばナノ粒子がコア及び単層を含むならば、該コアはコアドーパントを含み、かつ該層は層ドーパントを含み、その後、該コアドーパントは該コア中に実質的に均一に分布され得、かつ該層ドーパントは該層中に実質的に均一に分布され得る。層状ナノ粒子は微小孔性又はメソ多孔性のセラミックナノ粒子であり得る。コア及び1つ以上の層は、互いに独立して、微小孔性又はメソ多孔性であり得る。各層及び所望によりコア粒子は、独立して、加水分解されたシラン、例えば加水分解されたアルコキシシランを含み得、シリカ及び/又はポリシルセスキオキサンを含み得る。各層及び所望によりコア粒子は、独立して、セラミック又は酸化物、例えば金属酸化物を含み得る。1つ以上のコア及び1つ以上の層がドーパントを含むならば、その後、これらの各々のドーパントは、同一であり得るか又は異なり得る。各ドーパントは、独立して、放出性又は非放出性であり得る。層状ナノ粒子は、1つ以上の放出性ドーパントの順次放出及び/又は遅延放出が可能であり得る。層状ナノ粒子は約10ないし500nmの平均径を有し得る。コア及び各層は、独立して、微小孔性又はメソ多孔性であり得、約0.5ないし10nmの細孔サイズを有し得る。各層は、独立して、約1ないし50nmの平均厚さを有し得る。ドーパントは無機物質又は有機物質であり得る。それは、塩又は染料、触媒、活性材料又は活性物質、例えば生物学的に活性な物質(例えば、タンパク質、多糖類、酵素、薬剤、ペプチド等)、磁性物質、放射性物質、放射性トレーサー又は特定の他の種類のドーパントであり得る。
【0031】
1つの態様において、第一ドーパントを含む多孔性コア粒子及び前記コア粒子を少なくとも部分的に囲む第二ドーパントを含む多孔性層を含む層状ナノ粒子を提供する。第一ドーパント及び第二ドーパントの少なくとも1方は、層状ナノ粒子から放出可能であり得る。従って、ナノ粒子は、第一放出性ドーパントを含む多孔性コア粒子及び前記コア粒子を少なくとも部分的に囲む第二放出性ドーパントを含む多孔性層を含み得る。ナノ粒子は、第二放出性ドーパント及び第一放出性ドーパントを、順次放出可能であり得る。
【0032】
他の態様において、第一放出性ドーパントを含む多孔性コア粒子、前記コア粒子を囲み、放出性ドーパントを含まない第一多孔性層及び該第一多孔性層を少なくとも部分的に囲む第二放出性ドーパントを含む第二多孔性層を含む層状ナノ粒子を提供する。ナノ粒子は、第二ドーパントと第一ドーパントの放出間の遅延時間を用いて、第二放出性ドーパント及び第一放出性ドーパントを順次放出することができる。遅延時間の長さは、第一層の厚さ及び多孔率に依存し得る。
【0033】
他の態様において、放出性ドーパントを含まないコア粒子及び前記コア粒子を少なくとも部分的に囲む放出性ドーパントを含む多孔性層を含む層状ナノ粒子を提供する。コア粒子は、非放出性ドーパント、例えばナノ粒子を着色するための非放出性顔料を含み得る。コアは、多孔性又は非多孔性であり得る。コアは、層状ナノ粒子を磁性にするために、磁性物質を含み得る。
【0034】
他の態様において、
放出性ドーパントを含む又は所望により放出性ドーパントからなる非多孔性コア粒子及び放出性ドーパントを含まず、前記コア粒子を少なくとも部分的に囲む多孔性層を含む層状ナノ粒子を提供する。ナノ粒子は、遅延時間の後、ドーパントを放出することができる。遅延時間の長さは、多孔性層の厚さ及び多孔率に依存し得る。層は、非放出性のドーパント、例えばナノ粒子を着色するための非放出性顔料を有し得る。
【0035】
本発明に従った層状ナノ粒子を多数含むナノ粒子状物質も提供する。ナノ粒子状物質は、単分散であり得るか又は狭い粒径分布を有し得る。
【0036】
本発明の方法によってつくられた層状ナノ粒子も提供する。本発明に従った又は本発明の方法によってつくられた層状ナノ粒子を多数含むナノ粒子状物質も提供する。
【0037】
本発明の他の観点において、本発明に従った層状ナノ粒子又は本発明に従った多数の層状ナノ粒子を流体に曝露することを含む、該流体に放出性物質を送達するための方法であって、該層状ナノ粒子はその中及び/又は上に(例えば、少なくとも1つの層又はコア粒子に)放出性物質を有し、かつ該流体は前記層状ナノ粒子から前記放出性物質を少なくとも部分的に放出することができるところの方法を提供する。
【0038】
流体は、水性流体、例えば体液であり得るか、又は非水性液体、例えば有機溶媒であり得る。曝露は、かき混ぜ、振盪、攪拌、超音波処理又は別の手段を用いて層状ナノ粒子と流体を攪拌することを含み得る。方法は、流体中に放出性物質を放出することを含み得、かつ制御された方法において放出性物質を放出することを含み得る。放出性物質の放出は、制御された様々な放出であり得、放出性物質の放出速度は、制御された方法及び/又は予め決められた方法によって変化する。
【0039】
1つの態様において、放出性物質は薬剤であり、流体は体液、例えば患者の血液である。この態様は、患者に薬剤を投与するための方法であって、前記方法は、本発明に従った層状ナノ粒子又は多数の本発明に従った層状ナノ粒子を患者、例えば患者の血液に送達することを含み、該層状ナノ粒子はその中又は上に前記薬剤を有するところの方法を含む。薬剤は、例えば抗癌剤であり得る。層状ナノ粒子は約10ないし500nm又は約50ないし300nmの粒径を有し得る。送達は静脈(IV)送達であり得、ナノ粒子を含む懸濁液を患者に注射することを含み得る。懸濁液は、懸濁流体を含み得る。注射のために適当な懸濁流体は、よく知られており、生理食塩水、リンガー溶液、グルコース溶液、フルクトース溶液、デキストロース溶液、アミノ酸溶液、タンパク質加水分解物、乳酸ナトリウム溶液又は特定の他の水性液体を含み得る。患者に薬剤を投与するための本発明に従った層状ナノ粒子の使用であって、前記層状ナノ粒子がその中及び/又は上に薬剤を有するところの使用もまた提供する。
【0040】
本発明の他の観点において、流体に放出性物質を送達するために使用される本発明に従った層状ナノ粒子又は多数の本発明に従った層状ナノ粒子を提供する。
【0041】
本発明はまた、混合物の少なくとも1つの成分の選択的収着のための、本発明に従った層状ナノ粒子の使用も提供する。本発明は、更に、混合物の少なくとも1つの成分の選択
的収着のために使用される層状ナノ粒子も提供する。
【0042】
図面の簡単な説明
本発明の好ましい形態を、添付した図面を参照して一例として説明する:
図1は、塩基の存在下におけるゾル−ゲル反応順序を示す。
図2は、ドーパントがコアのみに含まれるところの多層ナノ粒子の製造方法のフローチャートを示す。
図3は、多数のドーパントを有する多層ナノ粒子の製造方法のフローチャートを示す。
図4は、NP−9/1−ペンタノール/シクロヘキサン/NH4OH/TEOS系中で製造した粒子のTEM顕微鏡写真を示す(平均径:55±5nm)。
図5は、コア−シェル構造を有する不均一なシリカ粒子のTEM像を示す。
図6は、シリカ粒子上の界面活性剤残渣のTGA/DTA測定のグラフを示す。
図7は、以下のマイクロエマルジョン系中で製造したシリカ粒子のTEM顕微鏡写真を示す:a)NP−5/シクロヘキサン/NH4OH/TMOS、b)NP−9/1−ペンタノール/シクロヘキサン/NH4OH/TMOS及びc)トリトン X−100/トルエン/NH4OH/TMOS。
図8は、TMOSの逐次添加による粒子成長を説明するTEM顕微鏡写真を示す:a)コア(22nm)、b)1.2mmolのTMOS(27nm)の第1添加、c)第2添加(31nm)、d)第3添加(33nm)、e)第4添加(36nm)。
図9は、TEOSの逐次添加による粒子成長を説明するTEM顕微鏡写真を示す:a)コア(50nm)、b)1.2mmolのTEOS(83−92nm)の第1添加、c)第2添加(91−106nm)、d)第3添加(102−120nm)、e)第4添加(108−129nm)、f)第5添加(128−146nm)。
図10は、新規成長プロセスの原理を説明する概略図を示す。
図11は、コア−シェル構造のTEM顕微鏡写真を示す:a)明視野像(暗い領域は重元素を示す。)、b)暗視野像(明るい領域は重元素を示す。)。
図12は、ビーム像を示すコア−シェル構造のTEM顕微鏡写真を示す:a)明視野像、b)EDX線形後の暗視野像。
図13は、コア−シェル粒径上に添加する方法の影響を説明する顕微鏡写真を示す。
図14は、以下のものを使用して合成した粒子のTEM顕微鏡写真を示す:a)4サイクル(コア+4つのシェル)及びb)5サイクル(コア+5つのシェル)。
図15は、希釈度(新しいエマルジョンの体積/種エマルジョンの体積)がA)2、B)3、C)4、D)5のところの様々な希釈度を使用した粒子成長のTEM顕微鏡写真を示す。
a)サンプル1、銅をドープしたシリカコア、追加添加した水性相:Cu(NH3)42+の形態でCu10.14mg/mLを有するNH4OH 1.333mol/L。
b)サンプル2、銅をドープしたシリカコア、追加添加した水性相:銅なしのNH4OH 1.333mol/L。
図16は、種エマルジョンと新たなエマルジョンの混合において様々な方法を使用して製造した粒子のTEM顕微鏡写真を示す。
図17は、TEOSを使用して形成した粒子コア及びTMOSを使用して形成したシェルのTEM顕微鏡写真を示す(図5において使用したものと同一の合成条件)。
図18は、OrmosilシェルでコーティングしたシリカコアのTEM顕微鏡写真を示す。
図19は、表2に列挙した組成を有するサンプルのTEM顕微鏡写真を示す。
図20は、表1に列挙した組成を有し、かつアセトン中に懸濁させたサンプルの写真を示す。
図21は、表3に列挙した組成を有するサンプルのTEM顕微鏡写真を示す。
図22は、表3に列挙した組成を有し、かつアセトン中に懸濁させたサンプルの写真を示す。
図23は、表4に列挙した組成を有するサンプルの写真を示す:a)凍結乾燥(SiO2/NaCl 質量比:15%)、b)ミリ−Q(Milli−Q)水中に懸濁。
図24は、懸濁液中のIn2O3ナノ結晶及びシリカシェルでコーティングしたIn2O3ナノ結晶の顕微鏡写真を示す。
図25は、中性水中のCuPC(黒色の線、λmax:556nm)及びRubpy(灰色の線,λmax:390nm)のUV−可視スペクトルを示す。
図26は、32日後のSBF中のサンプルLNK−822(黒色の線、λmax:615nm)及びLNK−824(灰色の線、λmax:450nm)のUV−可視スペクトルを示す。
図27は、以下のものの放出速度曲線を示す:a)サンプルLNK−822(37℃のSBF 20mL中に凍結乾燥粉末 1.022g、λmax=615nm)、b)サンプルLNK−824(37℃において、SBF 20mL中に凍結乾燥粉末 0.6055g、λmax=450nm)、ここで、凍結乾燥粉末は、SiO2 15質量%及びNaCl
85質量%を含む。
図28のaないしfは、本発明に従った様々な層状ナノ粒子の図表示を示す。
図29は、UV/可視吸収を使用して測定した以下のものの放出速度曲線を示す;
サンプル:(A)LNK−879及び(B)LNK−880。
凍結乾燥粉末2gを37℃においてSBF 20mL中に懸濁させた(ここで、凍結乾燥粉末は、SiO2 15質量%及びNaCl 85質量%を含む。)。
▲CuPC、λmax=615nm、■Rubpy、λmax=450nm。
図30は、より多くのエマルジョン成分の添加によりORMOSIL表面を有する染料カプセル化シリカナノ粒子の合成フローチャートを示す。
図31は、より多くのエマルジョン成分を添加することにより製造したORMOSIL表面を有するシリカナノ粒子のTEM像を示す:(a)TEOSによる種、(b)混合前駆体による種、(c)TEOSによるコア−シェル粒子、(d)及び(e)ORMOSILシェルを有するシリカコア、(f)表6に詳述したORMOSILコア及びシェル。
図32は、様々な界面活性剤濃度におけるシリカ粒子のTEM像を示す:(a)、(b)NP−9 0.2mol/L及び1−ペンタノール 0.2mol/Lによってつくられた種粒子、74−86nm、(c)1−ペンタノールなしでNP−9 0.4mol/Lによってつくられたコア+2−層粒子、109−123nm、(d)1−ペンタノールなしでNP−9 0.4mol/Lによってつくられたコア+3−層粒子、132−152+20nm、(e)1−ペンタノールなしでNP−9 0.6mol/Lによってつくられたコア+2−層粒子、106−126nm、(f)1−ペンタノールなしでNP−9
0.6mol/Lによってつくられたコア+3−層粒子、132−145+20nm、(g)NP−9 0.4mol/L、1−ペンタノール 0.4mol/Lによってつくられたコア+2−層粒子、100−131nm、(h)NP−9 0.4mol/L、1−ペンタノール 0.4mol/Lによってつくられたコア+3−層粒子、128−179nm。
図33は、本発明に従った2つの成長技術を組み合わせることによる層状シリカナノ粒子の製造フローチャートを示す。
図34は、[H2O]/[界面活性剤]=6のモル比において2つの成長技術を組み合わせることにより製造したシリカ粒子のTEM像を示す:(a)種:50−60nm、TEOS 1.2mmol、H2O 36mmol、[H2O]/[TEOS]=30、(b)コア+1−層:61−76nm、TEOS 4.8mmol、H2O 36mmol、[H2O]/[TEOS]=7.5、(c)コア+2−層:95−113nm、TEOS
9.6mmol、H2O 72mmol、[H2O]/[TEOS]=7.5、(d)コア+3−層:100−135nm、TEOS 14.4mmol、H2O 72mmol、[H2O]/[TEOS]=5、(e)コア+4−層:136−166nm、TEOS
24mmol、H2O 144mmol、[H2O]/[TEOS]=6、(f)コア+5−層:146−172nm、TEOS 33.6mmol、H2O 144mmol、
[H2O]/[TEOS]=4.3、(g)コア+7−層:200−240nm、TEOS 52.8mmol、H2O 216mmol、[H2O]/[TEOS]=4.1。
図35は、[H2O]/[界面活性剤]=9のモル比において2つの成長技術を組み合わせることにより製造したシリカ粒子のTEM像を示す:(a)種:50−61nm、TEOS 1.2mmol、H2O 54mmol、[H2O]/[TEOS]=45、(b)コア+1−層:70−87nm、TEOS 4.8mmol、H2O 54mmol、[H2O]/[TEOS]=11.3、(c)コア+2−層:95−117nm、TEOS 9.6mmol、H2O 162mmol、[H2O]/[TEOS]=16.9、(d)コア+3−層:158−172nm、TEOS 14.4mmol、H2O 162mmol、[H2O]/[TEOS]=11.3、(e)コア+4−層:2つのサイズのナノ粒子、TEOS 24mmol、H2O 378mmol、[H2O]/[TEOS]=15.8、(f)コア+5−層:広範囲のサイズのナノ粒子、TEOS 33.6mmol、H2O 378mmol、[H2O]/[TEOS]=11.3。
図36は、[H2O]/[界面活性剤]=6のモル比において高温で合成したシリカナノ粒子のTEM像を示す:(a)35−50nm、35±2℃において20時間老化、(b)48−62nm、35±2℃において48時間老化、(c)37−52nm、50±2℃において20時間老化、(d)48−70nm、50±2℃において48時間老化。
図37は、[H2O]/[界面活性剤]=8のモル比において高温で合成したシリカナノ粒子のTEM像を示す:(a)種:35−68nm、室温、35±2℃において48時間老化:コア−シェル粒子、(b)75−100nm、35±2℃において20時間老化、(c)78−113nm、35±2℃において28時間老化、(d)81−117nm、35±2℃において48時間老化、(e)78−105nm、50±2℃において20時間老化、(f)80−107nm、50±2℃において28時間老化、(g)86−120nm、50±2℃において48時間老化。
図38は、様々な定温放置段階におけるシリカ粒子のTEM像を示す:(a)定温放置前(76−88nm)、(b)追加の水を添加する前に、1時間、55±5℃で定温放置(82−96nm)、(c)追加の水を添加した後に、6時間、55±5℃で定温放置(74−100nm)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
好ましい態様の詳細な説明
本発明は、無機/有機粒子、コアシェル粒子、及び、特定の態様において、セラミックコア及び1つ以上のセラミック層又はシェルを有する、セラミック材料からつくられた粒子に関する。本発明は、様々な多孔性金属酸化物シェル及び非多孔性又は多孔性(酸化物又は非酸化物)コア、例えばシリカに適用可能である。
シリカコア−シェル粒子は以下のものに分類され得る:
・染料を組み込まれたシリカ粒子。
・金属クラスターをコーティングされたシリカ。
・染料を組み込まれたコア−シェル有機シリコン。
【0044】
第一及び第三分類は、カプセル化及びコア−シェル粒子からの放出において特に興味深いものである。本発明の粒子は、ドーパントが如何なる層にもドープされ得るという点で、従来技術のものとは異なる。従って、態様の多くにおいて、本発明の粒子は、層の至るところに均一に分布され、かつ放出可能な1種以上のドーパントを含むシェル及び層を少なくとも1つ有する多層ナノ粒子であると考えられ得る。
【0045】
多層粒子の各層の各々の組成を調整することを可能にするために、ミセルに貯蔵した組成物を変化させる能力を利用することができる。これは、ここに記載されるように、界面活性剤/水及び試薬前駆体を順次添加することによって達成され得る。同一のコア−シェル構造を有する均一な多層粒子の製造をもたらし、異なる組成を有する粒子の発生をもた
らさないエマルジョン組成物(即ち、三元状態図:界面活性剤−油−水において同一のスポット)を維持することは重要であり得る。従って、本発明は、多層状粒子の製造を容易にするエマルジョン及び前駆体の周期的な添加を提供する。
【0046】
本願明細書は、油中水マイクロエマルジョン(W/O)系を通した層状ナノ粒子の製造のためのゾル−ゲルプロセスを開示する。ナノ粒子は多層であり得る。結果として生じるナノ粒子は、ナノ粒子内の様々な場所にカプセル化される1種以上の活性分子、封入剤及び/又はドーパントを含み得、そしてそれは制御された方式において放出され得る。ナノ粒子は、セラミックナノ粒子であり得る。それらは、(様々な)活性分子(ドーパント)及び(様々な)前駆体(又は有機的に変性された前駆体)並びに新たなW/Oエマルジョンを順次添加することによって合成され得る。粒径並びにコア径及び各層の厚さの全ては前駆体の添加量を制御することによって調整され得る。各層の厚さは、約1ないし50nmに制御され得る。前駆体は加水分解性物質、例えば加水分解性シランであり得る。それは、加水分解して試薬を形成することが可能であり得る。前駆体は、シリコンアルコキシドから他の金属アルコキシド又は金属アルコキシドの混合物に変化し得る。多層状粒子中のそれらの位置に依存して、活性分子は順次又は分割方式(例えば、放出−放出なし−放出)において放出され得る。従って、例えば、ナノ粒子がコア内及び外層中に放出性物質を有し、外層及びコア間の内層が放出性物質を有さないように構成されるならば、その後の放出性物質の放出は、放出−放出なし−放出工程を順次生じ、段階的に進められ得る。
【0047】
本発明の方法において、コア粒子はその場で形成され得るか、又はそれらは予め形成された粒子として添加され得る。コア粒子はあらゆる種の粉末、例えばシリカ粒子(例えば、ヒュームド・シリカ、コロイドシリカ又はシリカ・フューム)、金属酸化物粒子(例えば、酸化インジウム)、混合金属酸化物粒子(例えば、酸化インジウムをドープしたシリカ粒子)、半導体粒子、量子ドット、磁性粒子、結晶粒子又は特定の他の種類の粒子であり得る。コア粒子は、球状又は立方体であり得るか、又は三角柱、四面体、多面体(例えば、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20又は20以上の面を有する)、フレークの形状又は不規則形状であり得る。コア粒子は、結晶質又は非晶質であり得るか、又は一部結晶質であり得る。それは、多孔性又は無孔性であり得る。コア粒子は、約5ないし500nm、又は約5ないし450nm、5ないし400nm、5ないし300nm、5ないし200nm、5ないし100nm、5ないし50nm、5ないし20nm、10ないし500nm、10ないし400nm、10ないし200nm、10ないし100nm、50ないし500nm、50ないし400nm、50ないし200nm、50ないし100nm、100ないし500nm、100ないし400nm、100ないし200nm、200ないし500nm又は300ないし500nmの直径、例えば、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450又は500nmの直径又は特定の他の直径を有し得る。非極性液体(又は、2種以上が異なる工程において使用されるならば、独立した各々の非極性液体)は、5ないし16個の炭素原子、又は5ないし12個の、5ないし8個の、6ないし12個の又は6ないし10個の、又は、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15又は16個の炭素原子を有し得る炭化水素であり得る。それは、直鎖の、枝分かれした又は環状の脂肪族又は芳香族であり得る。それは、炭化水素の混合物であり得る。さもなくば、それは、特定の他の非極性液体、例えば、ハロアルカン又はハロ芳香族の液体又は低粘度シリコン、例えば、低粘度ジメチルシリコン又は低粘度フルオロシリコンであり得る。低粘度シリコンは線状シリコン又は環状シリコンであり得る。シリコンの粘度は、約100cS以下、又は約50、20、10、5、2又は1cS以下であり得、約0.5、1、2、3、4、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90又は100cSであり得る。線状シリコンはトリメチルシロキシ末端シリコンであり得る。環状シリコンは、D3、D4、D5、D6、D7又はD8環状シリコンであり得るか、又は
これらの2種以上のあらゆる混合物であり得る。使用され得る典型的な炭化水素はシクロヘキサンである。非極性液体は再利用可能であり得る。触媒は、ゾル−ゲルプロセスのための触媒であり得る。それは、縮合性物質の縮合のための触媒であり得、例えば、強酸(例えば、硫酸、塩酸)、有機酸(例えば、酢酸、トリフルオロ酢酸)、塩基(例えば、KOH、NaOH、水性アンモニア等の水酸化物)、アミン(例えば、APTES(アミノプロピルトリエトキシシラン)等のアミンで官能化されたORMOSIL)、フッ化物(例えば、HF、NaF、KF、NH4F)又は遷移金属アルコキシド(例えば、チタンアルコキシド、バナジウムアルコキシド)であり得る。水性液体中の触媒の濃度は、約0.1ないし5Mであり得、約0.1ないし2、0.1ないし1、0.1ないし0.5、0.5ないし5、1ないし5、3ないし5、0.5ないし2又は1ないし2Mであり得、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5又は5Mであり得る。水性液体のpHは、約8ないし14、又は約8ないし13、8ないし12、8ないし11、8ないし10、9ないし13、10ないし13、11ないし13、9ないし12、10ないし12、又は11ないし12であり得、約8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5又は14であり得る。v/vに基づく水性液体とコア粒子の懸濁液の比は、約0.1ないし10%、又は約0.1ないし5、0.1ないし2、0.1ないし1、0.5ないし10、1ないし10、5ないし10、0.5ないし5、0.5ないし2又は1ないし2%であり得、約0.1、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5又は10%であり得る。加水分解性物質と水性液体の比は、w/w、w/v、v/v又はモルに基づき約0.5ないし10%であり得、w/w、w/v、v/v又はモルに基づき約0.5ないし5、0.5ないし2、0.5ないし1、1ないし10、5ないし10又は2ないし5%であり得、w/w、w/v、v/v又はモルに基づき約0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5又は10%であり得る。加水分解性物質は、加水分解性の金属物質、例えば加水分解性シリコン、アルミニウム又はチタン物質であり得る。加水分解性物質は、アルコキシド、例えば金属アルコキシド(例えば、シリコンアルコキシド、チタンアルコキシド又はアルミニウムアルコキシド)であり得る。アルコキシドは炭素原子数1ないし6の直鎖又は枝分かれ鎖のアルコキシドであり得るか、又はこのようなアルコキシドの混合物であり得る。さもなくば、加水分解性物質は、アリールオキシド、例えばフェノキシド、シリコアルカノエート、例えばシリコンプロピオネート及びアミノシラン、アミドシラン又は特定の他の加水分解性シランであり得る。金属は、1分子当り平均して2ないし4個の加水分解性基を有し得、1分子当り平均して約2、2.5、3、3.5又は4個の加水分解性基を有し得る。適当な加水分解性物質は、トリ−及びテトラ−アルコキシシラン、例えばテトラメトキシシラン(TMOS)、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラブトキシシラン(TBOS)、テトラプロポキシシラン(TPOS)、メチルトリメトキシシラン(MTMS)、メチルトリエトキシシラン(MTES)、エチルトリエトキシシラン(ETES)、エチルトリメトキシシラン(ETMS)、オクチルトリエトキシシラン(OTES)、オクチルトリメトキシシラン(OTMS)、ヘキサデシルトリメトキシシラン(HDTMS)、ヘキサデシルトリエトキシシラン(HDTES)、オクタデシルトリメトキシシラン(ODTMS)、オクタデシルトリエトキシシラン(ODTES)並びにメチルポリシリケート(MPS)、エチルポリシリケート(EPS)、ポリジエトキシシラン(PDES)、ヘキサメチルジシリケート、ヘキサエチルジシリケート又は官能トリアルコキシシラン、例えばメタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン(PTES)、フェニルトリメトキシシラン(PTMS)、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GLYMO)、グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(GLYEO)、メルカプトプロピルトリエトキシシラン(MPTES)、メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPTMS)、アミノプロピルトリメトキシシラン(APTMS)、アミノプロピルトリエトキシシラン(
APTES)、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン(DATMS)、3−[2−(2−アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピルトリメトキシシラン(TATMS)、[2−(シクロヘキシル)エチル]トリエトキシシラン(CHEETES)、ビニルトリメトキシシラン(VTMS)、ビニルトリエトキシシラン(VTES)及びこれらの混合物を含むが、これらに制限されない。加水分解性物質は、加水分解して縮合性物質を生成することができる。縮合性物質は、上記加水分解性物質の一部加水分解物又は完全な加水分解物のいずれかであり得る。それは、シラノール種であり得、1分子当り1、2、3又は4個の、又は1分子当り4個より多くのシラノール基を有し得る。それは、1分子当り1個以上のシラノール基を有する、少なくとも部分的に縮合した物質であり得る。それは、シラノール種の混合物であり得る。従って、コア及び1つ以上の層は、独立してシリカ、ポリシルセスキオキサン、アルミナ、チタニア又は特定の他の金属酸化物を含み得る。加水分解性物質が有機官能であるならば、これは、同様に有機官能である縮合性物質をもたらし得、最終的に、コア及び層の1つ以上において同様に有機官能、所望により選択的有機官能であるナノ粒子をもたらし得る。これは、有機官能コア及び/又は層におけるドーパント又は他の物質に対する選択的親和性を与え得る。さもなくば、それは、所望の化合物の前駆体を有するコア及び該前駆体を所望の化合物に転換するための触媒及び/又は試薬を有する該コアを囲む層を1つ以上有する粒子をもたらすことを可能にし得る。使用において、前駆体はコアから放出され、粒子から放出するための触媒及び/又は試薬によって所望の化合物に転換され得る。これは、所望の化合物が安定性を制限される場合、及び/又は、前駆体が所望の化合物より安定である場合の特定の使用であり得る。
【0048】
加水分解するための十分な温度は、約1ないし70℃、又は約1ないし50℃、1ないし30℃、1ないし20℃、1ないし10℃、1ないし5℃、10ないし50℃、10ないし40℃、10ないし30℃、10ないし20℃、15ないし40℃、20ないし50℃、50ないし70℃、30ないし50℃、20ないし40℃又は20ないし30℃であり得、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65又は70℃であり得る。十分な時間は、約6ないし96時間、又は約6ないし72時間、6ないし48時間、6ないし24時間、12ないし96時間、24ないし96時間、36ないし96時間、48ないし96時間、60ないし96時間、12ないし72時間、24ないし60時間、36ないし60時間又は36ないし48時間であり得、約6、12、18、24、36、48、60、72、84又は96時間であり得るか、又は96時間以上であり得る。コア粒子は約1ないし70℃の温度で得ることができるか、又は約1ないし70℃、約10ないし70℃、又は約1ないし10℃、又は約1ないし50℃、又は約1ないし20℃、又は約10ないし50℃、又は約10ないし40℃、10ないし30℃、10ないし20℃、20ないし50℃、50ないし70℃、30ないし60℃、30ないし50℃、20ないし40℃又は20ないし30℃の温度で得ることができ、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65又は70℃であり得る。
【0049】
ドーパントは、塩(例えば、テトラアミン銅等の金属錯イオンを含む)、染料、触媒、生物学的に活性な物質(例えば、タンパク質、多糖類、酵素、薬剤、ペプチド等)、磁性物質、放射性トレーサー又は他の放射性物質又は特定の他の種類のドーパントであり得る。ナノ粒子内の様々な位置において様々なドーパントが存在し得る(例えば、コア及び1種以上の層の各々は異なるドーパントを含み得る)。同一のドーパントがナノ粒子内の様々な位置に配置され得る(例えば、コア及び1種以上の層の1つは同一のドーパントを含み得る)。各ドーパントは放出性又は非放出性であり得る。1種以上のドーパントが存在するならば、少なくとも1種のドーパントが放出性であり得、かつ少なくとも1種のドーパントが非放出性であり得るか又は全てのドーパントが放出性であり得るか又は全てのドーパントが非放出性であり得る。コア又は層中のドーパントは、前記コア又は層の至ると
ころに分布され得、かつ前記コア又は層の至るところに均一に又は不均一に分布され得る。ドーパントについて言及すると、多数のドーパント(例えば、2、3、4、5又は5種以上のドーパント)を含み得ると理解され得る。コア粒子又はいずれかの層が多数のドーパントを含むならば、それらは全て放出性であり得るか、又は、少なくとも1種は放出性であり得、かつ少なくとも1種は非放出性であり得るか、又は、それらは全て非放出性であり得る。例えば、層は、同時に放出される放出性ドーパントの混合物を含み得るか、又は、層に多数の性質又は複合材料特性(例えば、2種の異なる染料が単層中に配合される場合のような)を付与する非放出性ドーパントの混合物(例えば、染料と磁性ドーパント)を含み得るか、又は、非放出性ドーパント(例えば、染料)と共に、粒子を囲む周囲へ放出するための放出性ドーパントを含み得る。
【0050】
コア粒子中にドーパントが存在するならば、ドーパントはコア粒子の至るところに実質的に均一に分布され得る。層中又はいずれかの層中(層が1つ以上存在する場合)において、ドーパントは、該層の至るところに実質的に均一に分布され得る。
【0051】
例えば、層状ナノ粒子は、非放出性染料(例えば、赤色)を有するコア粒子を含み得、かつ該コア粒子は、異なる色(例えば、緑色)の放出性染料を含む多孔性層によって囲まれ得る。従って、層状ナノ粒子は、放出性染料の色(例えば、緑色)又は放出性染料と非放出性染料の合成色(例えば、褐色)を選択し得る。層状ナノ粒子が非放出性染料の色(例えば、赤色)を選択する場合、その後、使用者に放出性染料が放出されたという事実を警告し得る。特定の例において、多孔性層は、放出性染料に加えて、第二放出性ドーパント(例えば、化学反応のための試薬)を含む。層状ナノ粒子が非放出性染料の色を選択する場合、使用者に、放出性ドーパントの継続的な放出を確実にするために、更なるナノ粒子を添加する必要があるという事実を警告し得る。
【0052】
コア粒子は、例えば、非放出性染料として作用し得る量子ドットを含み得る。コア粒子は、あらゆる適当な粒子、例えば多孔性又は無孔性の粒子であり得る。それはナノ粒子であり得る。
【0053】
ドーパントは、固定化試薬又は触媒を含み得る。例えば、ナノ粒子はコア粒子及び該コア粒子を囲む層を含み得る。コア粒子は、ナノ粒子の周囲に放出される化合物(例えば、薬剤)の前駆体であるドーパント(例えば、プロドラッグ)を含み得、層は、該ドーパントを該化合物に転換するための触媒を含み得る。ナノ粒子が適当な環境に曝露される場合、ドーパントは、層を経てコア粒子から出て、ここで、それは触媒の影響下において化合物に転換され得、その後、該化合物はナノ粒子から放出され得る。これは、長期の安定性が制限される化合物の場合において有用であり得る。
【0054】
層は、非放出性ドーパントの形態において又は層それ自体の物質形態において放出速度調節剤を含み得る。放出速度調節剤は、層中に又はコア粒子に近い層中に又はコア粒子中に配合された放出性ドーパントの放出速度を調節することができる。放出速度調節剤は、放出性ドーパントの放出を加速又は減速することができる。例えば、コアは酸性基を有する放出性ドーパントを含み得る。コアを囲む層は、放出性ドーパントの放出を遅らせるアミン基を含み得る。
【0055】
コア又は1つ以上の層は、非放出性ドーパントの形態において又は層それ自体の物質形態において吸着剤を含み得る。例えば、コア粒子又は層は、酸性物質の吸着のために、非放出性アミンドーパントを含み得るか、又は、コア粒子又は層の材料がアミン基(例えば、コア粒子又は層をつくるために使用したアミノプロピルトリエトキシシランから誘導された)を含み得る。このような材料の使用例は、高分子量酸の存在下における低分子量酸の選択的吸着であり得る。従って、例えば、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノ
プロピルトリエトキシシラン又はアミノエチルアミノプロピルトリメトキシ−又はトリエトキシ−シランから誘導されたアミン基を有する多孔性コア粒子は、本発明に従ったナノ粒子を形成するために適用される中性の多孔性層を有し得る。低分子量酸及び高分子量酸を含む液体への曝露において、高分子量酸は、コア粒子に近づくことを防止し得るのに対し、低分子量酸は吸着されるべき層をコア粒子に浸透させることを可能にし得る。高分子量酸はコア粒子中のアミン基から保護され得、ナノ粒子と高分子量酸間の相互作用のため、液体の凝固を防止する。このように、低分子量酸は、液体の凝固なしに混合物から選択的に除去され得る。このような材料の他の使用例は、毒性の高い物質の収着であり得る。従って、例えば、中性の多孔性層によって囲まれた、アミン基を有する多孔性コア粒子を有するナノ粒子は毒性の高い酸性物質を安全に収着するために使用され得る。毒性の酸性物質を含む液体への暴露において、ナノ粒子は、毒性の酸性物質を該液体からアミノ官能コア粒子に収着させ得、毒性の酸性物質が基本的に存在しない中性の多孔性層にする。結果として生じる、吸着した毒性の酸性物質を有するナノ粒子は、ナノ粒子の外層に毒性の酸性物質が存在し得ないため、取扱いが安全であり得る。
【0056】
より一般に、層状ナノ粒子は、化学種又は化学種類の選択的収着を得るために、特定の化学種又は化学種類と特異的に相互作用し得るキレート基及び/又は錯化基(complexing group)を(コアにおいて及び/又は1つ以上の層において)含み得る。キレート基及び/又は錯化基は、非放出性ドーパントの形態又は層それ自体の物質形態又はその両方の形態であり得る。このような層状ナノ粒子は、例えば、毒性化学物質、例えば重金属の収着のために使用され得る。従って、鉛をキレートすることができる基(例えば、結合したEDTA基)を含む非放出性ドーパントを有する層状ナノ粒子は、溶液から鉛を除去するために使用され得る。
【0057】
平均ナノ粒子かさ密度は、0.075g/cm3ないし2.2g/cm3、又は約0.15ないし1.5、0.18ないし1.0、0.5ないし1.0、0.5ないし0.75又は0.25ないし0.5g/cm3の範囲内であり得、約0.075、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、0.95、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1又は2.2g/cm3であり得る。
【0058】
ナノ粒子状物質は、単分散され得るか、又は狭い粒径分布を有し得る。粒径分布は、粒子の50%以上が平均粒径の10%以内、又は45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%又は10%以上であるような分布であり得、粒子の約10、20、30、40、50、60、70又は80%が平均粒径の10%内であるような分布であり得る。
【0059】
ナノ粒子状物質は、約10ないし500nm、又は約10ないし100、50ないし500、50ないし300、50ないし100、100ないし500、250ないし500、100ないし300又は200ないし300nmの平均粒径を有し得、約10、20、30、40、50、100、150、200、250、300、350、400、450又は500nmの平均粒径を有し得るか、又はより大きな平均粒径を有し得る。ナノ粒子状物質の粒子は、コア及び約1ないし10の層、又はコアを少なくとも部分的に囲む層を含み得る。1ないし8、1ないし5、1ないし3、2ないし10、5ないし10、2ないし8又は2ないし5の層があり得、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10の層があり得るか、又は10を超える層があり得る。コアの平均径は、約5ないし500nm、約5ないし150、100ないし500、100ないし400、100ないし300、100ないし200、100ないし150、5ないし125、5ないし100、5ないし80、5ないし50、5ないし30、10ないし100、30ないし100、50ないし1
00、100ないし150、100ないし130、130ないし150、10ないし80、20ないし70又は30ないし70nmであり得、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、200、250、300、350、400、450又は500nmであり得る。各層又は層の平均厚さは、独立して、約1ないし50nm、又は約1ないし30、1ないし20、1ないし10、5ないし30、5ないし10、10ないし50、10ないし40、10ないし30、10ないし20、20ないし50、30ないし50、40ないし50、20ないし40又は20ないし30nmであり得、約1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45又は50nmであり得る。1つ以上の層又はシェルが存在するならば、それらは異なる厚さ又は同一の厚さであり得る。コア及び/又は層は、多孔性であり得、微小孔性又はメソ多孔性であり得、かつ、約0.5ないし20nm、又は約0.5ないし10、0.5ないし5、0.5ないし4、0.5ないし3、0.5ないし2、0.5ないし1.7、0.5ないし1、1ないし5、2ないし5、3ないし5、4ないし5、5ないし10、7ないし10、10ないし20、5ないし15、5ないし7、1ないし3又は1ないし2nmの平均細孔サイズを有し得、約0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20nmの細孔サイズを有し得る。従って、例えば、コア及び全ての層の両方が多孔性であり得るか、又はコアが無孔性であり得、かつ層が多孔性であり得るか、又はコア及び内層が無孔性であり得、かつ外層が多孔性であり得る。コア粒子及び各層は、独立して、約0ないし80%、又は約0ないし70、0ないし60、0ないし50、0ないし40、0ないし30、0ないし20、0ないし10、2ないし80、10ないし80、30ないし80、50ないし80、10ないし50、30ないし50、20ないし60又は20ないし40%の多孔率を有し得、約0、10、20、30、40、50、60、70又は80%の多孔率を有し得る。ドーパントはコアの約0ないし100質量%を示し得る(即ち、コアは、ドーパントを有さないか、又は活性物質であり得るが、1つ以上の層中のドーパントであり得るか又は該ドーパントでもない:コアは、In2O3ナノ結晶の例において見られるように、例えば微粉末化薬剤粒子又はマーカー又は量子ドットを含み得る。)。ドーパントは、コアの約0ないし50、0ないし25、0ないし10、0ないし5、10ないし100、50ないし100、5ないし95、10ないし50又は25ないし50質量%を示し得、コアの約0、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、96、97、98、99又は100質量%を示し得る。ドーパントは、コアを囲むあらゆる特定の層の約0ないし25質量%、又は約0ないし20、0ないし15、0ないし10、0ないし5、5ないし25、10ないし25、15ないし25、20ないし25、5ないし20又は10ないし20質量%を示し得、コアを囲むあらゆる特定の層の約0、0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24又は25質量%を示し得る。
【0060】
層状ナノ粒子を少なくとも部分的に分離する工程は、濾過、マイクロ濾過、遠心分離、超遠心分離、沈殿、デカンテーション又はこれらの組み合わせを含み得る。それらは、懸濁液の不安定化工程も含み得、該不安定化は、前記濾過、マイクロ濾過、遠心分離、超遠心分離又は沈殿の前に行われ得る。
【0061】
不安定化工程は、不安定化する液体を懸濁液に添加することを含み得る。不安定化する液体は、極性であり得、かつ非極性液体と混和性であり得る。不安定化する液体は水と混和性であり得る。それは、例えば、アセトン、エタノール、メタノール又は特定の他の液体であり得る。不安定化する工程は、温度を、例えば懸濁液が安定ではないところの温度
まで変えることを含み得る。相平衡状態図に依存して、該変化は加熱であり得るか、又は冷却であり得る。
【0062】
洗浄工程は、層状ナノ粒子を洗浄液(水性又は有機)と接触させ、洗浄液から層状ナノ粒子を分離することを含み得る。例えば、洗浄工程のいくつか又は全ては、洗浄液中で層状ナノ粒子を懸濁させること、所望により洗浄液と層状ナノ粒子を組み合わせて攪拌すること、及び、例えば、上記した分離方法のいずれかを使用して洗浄液から層状ナノ粒子を分離することを含み得る。さもなくば、洗浄工程のいくつか又は全ては、洗浄液を、層状ナノ粒子を通して及び/又は層状ナノ粒子を経て通過させることを含み得、そして、層状ナノ粒子は、例えばフィルター中に保持され得る。洗浄は、相分離によってデカンテーション漏斗内で行われ得る。水性洗浄液は水又は水性液体、例えば塩溶液であり得る。有機洗浄液は、溶媒であり得、極性又は非極性溶媒、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、ジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチル、トルエン又は特定の他の溶媒であり得、溶媒の混合物であり得る。洗浄工程は、懸濁液を約10ないし70℃、又は約10ないし50、10ないし30、10ないし20、20ないし70、50ないし70、20ないし50又は30ないし50℃まで加熱又は冷却することも含み得、懸濁液を約10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65又は70℃まで加熱又は冷却することを含み得る。加熱又は冷却は、系の相平衡状態図を変化させることによって系が単一安定相を形成することを防止するところの温度まで行われ得る。系はまた、相平衡状態図を変化させる溶媒の混合物を使用することによって、単一安定相を形成することを防止され得る。
【0063】
乾燥工程は、層状ナノ粒子を加熱することを含み得る。加熱は、ドーパントが存在するならば、ドーパントが分解又は劣化する温度より低い温度で行われ得、例えば約30ないし80℃、又は約30ないし60、30ないし40、40ないし80、60ないし80又は40ないし60℃で行われ得、約30、35、40、45、50、55、60、65、70、75又は80℃で行われ得る。さもなくば又は更に、乾燥工程は、例えば国際公開第01/62332号パンフレット(Barbe and Bartlett,‘‘Controlled Release Ceramic Particles,Compositions thereof,Processes of Preparation
and Methods of Use’’)に記載された凍結乾燥を含み得る。乾燥工程は、付加的に又は二者択一的に、ガス流を、層状ナノ粒子を越えて及び/又は層状ナノ粒子を通して通過させることを含み得る。ガスは、層状ナノ粒子、及び、その中及び/又は上のあらゆるドーパントに対して不活性なガスであり得、例えば、空気、窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素又はこれらの混合物であり得、乾燥させ得る。乾燥工程は、付加的に又は二者択一的に、層状ナノ粒子に部分的減圧を適用することを含み得る。部分的減圧は、例えば、約0.01ないし0.5気圧、又は約0.01ないし0.1、0.01ないし0.05、0.1ないし0.5、0.25ないし0.5、0.05ないし0.1又は0.1ないし0.25気圧の絶対圧力を有し得、約0.01、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4又は0.5気圧の絶対圧力を有し得る。
【0064】
本発明の方法の態様において、非極性液体中にコア粒子を含む懸濁液を得る工程は、以下の工程:
−非極性液体中に分散された水滴を含むエマルジョンであって、該水滴は第一加水分解性物質の加水分解のための触媒を含み、前記第一加水分解性物質は加水分解により第一凝縮性物質を生成することができるところのエマルジョンを得る工程、及び、
−該水滴中で第一加水分解性物質を加水分解して非極性液体中にコア粒子の懸濁液を形成するために、第一加水分解性物質を該エマルジョンに添加する工程、
を含む。
【0065】
水滴は、約5ないし150nm、又は約5ないし125、5ないし100、100ないし130、120ないし150、5ないし80、5ないし50、5ないし30、10ないし100、30ないし100、50ないし100、10ないし80、20ないし70又は30ないし70nmの直径を有し得、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140又は150nmの直径を有し得る。
【0066】
エマルジョンを得る工程は、以下の工程:
−界面活性剤及び非極性液体及び所望により補助界面活性剤を含む界面活性剤溶液を得る工程、
−第一凝縮性物質の凝縮のための触媒及び所望により第一ドーパントも含む水性溶液を該界面活性剤溶液に添加する工程、
−該界面活性剤溶液及び該水性溶液からエマルジョンを形成する工程
を含み得る。
【0067】
界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、非イオン性又は両性イオン性界面活性剤であり得、かつモノマー状又はポリマー状界面活性剤であり得る。適当な界面活性剤は、ノニルフェノキシポリエトキシエタノール、C9H19C6H4(OCH2CH2)nOH(NP系)又はオクチルフェノキシポリエトキシエタノール、C8H17C6H4(OCH2CH2)nOH(トリトン系)(ここで、nは4ないし15、又は4ないし9、又は9ないし15、又は7ないし12であり、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15であり得る。)を含む。適当な補助界面活性剤は、炭素原子数5ないし10のn−アルコール(1−ペンタノール、1−ヘキサノール、1−へプタノール、1−オクタノール、1−ノナノール、1−デカノール)を含む。界面活性剤溶液中の界面活性剤の濃度は、適量の水及び補助界面活性剤との組み合わせにおいて安定なマイクロエマルジョンを形成するのに十分な濃度であり得、約0.05ないし1M、又は約0.05ないし0.5、0.05ないし0.2、0.05ないし0.1、0.1ないし1、0.5ないし1、0.1ないし0.5又は0.1ないし0.2Mの濃度であり得、約0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9又は1Mの濃度であり得るか、又は特定の他の適当な濃度であり得る。界面活性剤溶液中の補助界面活性剤の濃度は、約0ないし1M、又は約0.05ないし1、0.05ないし0.5、0.05ないし0.2、0.05ないし0.1、0.1ないし1、0.5ないし1、0.1ないし0.5又は0.1ないし0.2Mの濃度であり得、約0、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9又は1Mの濃度であり得る。補助界面活性剤と界面活性剤のモル比は、0ないし10、又は0ないし5、0ないし2、0ないし1.5、0ないし1、0ないし0.5、0ないし0.2、0ないし0.1、0.5ないし2、1ないし2、1.5ないし2、0.5ないし1.5又は0.8ないし1.2、0.5ないし10、1ないし10、2ないし10、5ないし10、0.5ないし5又は1ないし5であり得、約0、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、6、7、8、9又は10であり得る。水性液体中の水と界面活性剤の比はw/w、w/v、v/v又はモル比に基づき約2:1ないし10:1、又は約2:1ないし5:1、3:1ないし10:1、4:1ないし10:1、5:1ないし10:1、3:1ないし8:1又は4:1ないし6:1であり得、約2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1又は10:1であり得る。
【0068】
ナノ粒子の合成
図3は、本発明に従った方法を要約する。該方法は、以下のように説明され得る:
1.シクロヘキサン等の非極性溶媒中に界面活性剤及び補助界面活性剤を溶解することによって、界面活性剤溶液を形成する。
2.カプセル化される活性分子(ドーパント)(例えば、染料又は薬剤)とゾル−ゲル反応のための触媒(例えば、塩基)を混合することによって、水性溶液を形成する。
3.その後、上記で調製した界面活性剤溶液と水性溶液を混合することによって、安定なマイクロエマルジョンを調製する。その後、アルコキシド前駆体(例えば、TEOS)を該マイクロエマルジョンに添加し、その後、それが加水分解されるところの水プール(即ち、エマルジョン液滴のコア)にゆっくりと拡散させる。
4.加水分解及び少なくとも48時間の金属アルコキシドの凝縮後、反応の完了を確実にするために、反応温度を1時間で55±5℃まで上げる。この段階でコア(又は種)粒子の生成がもたらされる。
5.その後、更なる水性溶液(他の活性分子を含み得る)を添加する。該混合物を55±5℃で6時間攪拌して添加した水をコア粒子の表面に移動させる。これは、第二核形成の供給源であり得る空のミセル形成を防止するために重要である。その後、界面活性剤、補助界面活性剤及び非極性溶媒を含む界面活性剤溶液が添加される。該系を室温まで冷却した後、最初のコア粒子の周りに層を形成することによって粒子を成長させるために、更なる前駆体(例えば、TEOS)を添加する。水と界面活性剤のモル比、界面活性剤濃度等の合成パラメーターは、これらの工程の間、一定に維持される。
6.工程4及び5を1回以上繰り返して層状ナノ粒子において必要数の層を生成する。このプロセスの使用によって、様々なドーパントが層状ナノ粒子の様々な位置(例えば、層)に配合され得ることを言及する。
7.層状ナノ粒子を形成した後、極性溶媒(例えば、アセトン)を該混合物に添加してエマルジョン系を不安定化し、沈殿又は遠心分離によって粒子を抽出する。必要に応じて、より多量の溶媒が残りの界面活性剤を除去するために使用される。
8.塩溶液を添加し、その後、更に、粒子をクロロホルムで洗浄し、分離漏斗中に収集し、国際公開第01/62332号パンフレット(Barbe and Bartlett,‘‘Controlled Release Ceramic Particles,Compositions thereof,Processes of Preparation and Methods of Use’’)に記載された方法を使用して凍結乾燥する。粒子は、懸濁液中でも加工され得る。極性溶媒(例えば、アセトン)を混合物に添加してエマルジョン系を不安定化し、粒子を沈殿又は遠心分離によって抽出する。必要に応じて、より多量の溶媒が界面活性剤残渣を更に除去するために使用され得る。
【0069】
最終粒径及び粒径分布を制御する因子は、エマルジョンパラメーター(例えば、界面活性剤濃度、界面活性剤/水の比、前駆体/水の比)、金属前駆体の性質及び量、及び工程4及び5のサイクル時間を含む。層の数は、工程4及び5を何回繰り返したかに依存する。活性分子(ドーパント)の種類及び濃度は、各サイクルにおいて変えられ得る。各活性分子の位置は、該活性分子が該方法においていつ導入されたかに依存し、各層の厚さは、前駆体の添加量によって制御され得る。
【0070】
文献で報告される他の成長方法との比較
文献において報告される実験とは対照的に、本発明に従った方法は、種成長技術を使用して、同一の油−水−界面活性剤(所望により、補助界面活性剤)相平衡状態図を維持するコア−シェル層状ナノ粒子を生成する。これは、各層の成長の間、新たなW/Oマイクロエマルジョン又は新たな界面活性剤及び非極性溶媒を反応系に添加することによって達成され得る。従って、第二非極性溶媒の添加は、油−水−界面活性剤の相平衡状態図を顕著に変えないはずであり、第二非極性溶媒は最初に使用した非極性溶媒と混和性であるべきである。該方法は、種を抽出することなく継続的に進められ得る。本発明の他の独特な特徴は、新たなマイクロエマルジョンの添加の間、新たな活性分子を導入することができ
ることである。それ故、新規試みは、1つ以上のドーパントがコア又は選択されたシェル(層)中にカプセル化され得るところのコア−シェル層状ナノ粒子を形成することを生み出し得る。その後、カプセル化された分子は、多層構造内のそれらの位置に依存して、予め決められた放出順序で放出され得る。この各層のペイロードを制御する能力は、遅延放出系(空の層+充填したコア)並びにパルス放出系(空の層と充填した層を交互にする)及び順次放出系(様々なペイロードで充填した層)の設計を可能にする。更に、全粒径を制御するだけではなく、コア及び各層の厚さも調整することができるため、放出サイクルの長さを潜在的に制御し得る。粒子又はフィルムにおける多数の活性分子のカプセル化は広く研究されていないとはいえ、本発明者達は、この進歩した制御放出技術は、食品、化学物質、殺生物剤、農薬、医薬品及び化粧品等の制御放出系における慣用の適用においてだけではなく、光センサー、バイオセンサー、暗号化技術及び情報技術等の他の分野においても適用され得ると考えている。
【実施例】
【0071】
実施例
材料
NP−9[ノニルフェノキシポリエトキシエタノール、C9H19C6H4(OCH2CH2)nOH、n=9](フルカ社製:MW 630、HLB13.0)をそのまま使用した(即ち、0.08質量%未満の水を含む(カール・フィッシャー滴定により決定))。シグマ−アルドリッチ社製のテトラエチルオルトシリケート(TEOS)(98%)もそのまま使用した。有機溶媒(シクロヘキサン、1−ペンタノール、アセトン、クロロホルム)(シグマ−アルドリッチ社製)はACS分光光度等級(99+%)であった。使用した全ての他の化学試薬は、A.R.等級であった。高純度ミリ−Q水(ミリポア社製)を全水性溶液の調製のために使用した;その低効率は18.2MΩcm以上であった。全サンプルを暗い場所に貯蔵した。
【0072】
封入剤(ドーパント)溶液の調製:
テトラアミン硝酸銅(II)の調製
紺色の溶液が形成されるまで、25質量% アンモニアを既知量の硝酸銅(II)水和物に滴下添加することによって、テトラアミン硝酸銅(II)溶液を調製した。該溶液を100mLフラスコに移し、その容量を、希釈した25容量%の濃アンモニア(即ち、25質量% NH3)を添加することによって100mLに調整した。調製した溶液は銅を16.69mg/mL含み、そのpHを、測定したところ11.86であった。
【0073】
ヘキサミン硝酸コバルト(III)の調製:濃アンモニア(25質量% NH3)による硝酸コバルト水和物の溶解の間、溶解性のヘキサミンコバルト(III)錯体の形成をもたらすために、溶液を20分間、沸点で加熱したこと以外は、テトラアミン硝酸銅(II)溶液において上記したのと同様の方法によって、ヘキサミン硝酸コバルト(III)溶液を調製した。最終溶液は、コバルトを16.69mg/mL含み、pHは11.82であった。
【0074】
Rubpyの調製:一定量のルテニウム錯体を一定容量の希釈アンモニア(10容量%の25質量% 濃NH3)に溶解し、Rubpyの濃度が2.5mg/mLの溶液をつくることによって、Rubpy[トリス(2,2’−ビピリジル)ジクロロルテニウム(II)六水和物]溶液を調製した。
【0075】
CuPCの調製:一定量の銅錯体を一定容量の希釈アンモニア(10容量%の25質量% 濃NH3)に溶解し、CuPCの濃度が5mg/mLの溶液をつくることによって、CuPC[銅(II)フタロシアニン−テトラスルホン酸四ナトリウム塩]溶液を調製した。
【0076】
FITCの調製:一定量のフルオレセインを一定容量の希釈アンモニア(10容量%の25質量% 濃NH3)に溶解し、フルオレセインの濃度が5mg/mLの溶液をつくることによって、フルオレセインイソチオシアネート溶液を調製した。
【0077】
In−DTPA又はGa−DTPA溶液の調製:既知量のInCl3又はGaCl3を100mLビーカーで計量し、ミリ−Q水 10gを添加して塩を溶解した。一定量のジエチレントリアミン5酢酸(DTPA)を添加し、DTPAと金属元素のモル比を1.1:1に維持した。該混合物を磁気攪拌しながら、濃アンモニア(25質量% NH3)を滴下添加した。DTPAが全て溶解した後、式[Me−DTPA]2-で表わされ、以下の構造
【化1】
を有する金属−DTPAキレートが形成した。
溶液のpHが11.50以上となり、かつ総量が100mLよりわずかに少ない量となるまで、濃アンモニアを継続的に添加した。溶液を定量的に100mLフラスコに移し、水を添加し最終容量を100mLとした。
【0078】
50nmシリカコアを生成するための典型的な調製
NP−9 7.56g(12mmol)を250mLスクリューキャップ付き容器中でシクロヘキサン 60mLに溶解した。その後、1−ペンタノール 1.304mL(12mmol)を添加した。該混合物を約1分間、強く振盪し、界面活性剤溶液を調製した。その後、アンモニア溶液 1.333mol/L(染料等の活性分子を含むNH4OH(pH〜11.86)1.296mL(即ち、水 72mmol))を添加した。混合物を、約30分間、強攪拌し、マイクロエマルジョン系を生成した。TEOS 0.546mL(2.4mmol)を、この磁気攪拌したマイクロエマルジョンに添加し、その後、室温、22±2℃において一定時間(48−72時間)攪拌したままにした。乾燥アセトン 50mLを添加して該マイクロエマルジョンを不安定化した。系を、更に、約10分間、強攪拌した。シリカ粒子は、通常、凝集し、デカンテーションによって分離され得る;もしも、顕著な沈殿が観察されないならば、混合物を約10分間、4000rpmにおいて遠心分離する。沈殿又は遠心分離後、粒子を有機相から分離し、乾燥アセトン 50mL(各回)で3回洗浄して界面活性剤を除去した。アセトンのデカンテーション後、NaCl水溶液 約20mLを粒子と混合し、デカンテーション漏斗に入れた。結果として生じた懸濁液を、更に、クロロホルムを使用して6回洗浄し(各回 50mL)、残りの界面活性剤を除去し、超音波処理し、フレキシ−ドライ−84D凍結乾燥機(FTSシステムズインコーポレーテッド、ニューヨーク州、ストーン リッジ)を使用して凍結乾燥した。この方法を使用して、NaClマトリックス内に均一に分布したナノ粒子の形態でシリカ 144mgを生成した。TEMは、粒径が55±5nmの範囲であることを示した(図4及び図5−A参照)。塩化ナトリウムを保護マトリックスとして使用してナノ粒子が凝集することを防止し、かつシリカと塩化ナトリウムの質量比を約15%に維持した。
【0079】
100nm、150nm及び200nmのシリカナノ粒子を調製するための典型的な実験方法
調製2:100nm(コア+1シェル):
・上記した方法を使用して50nmの種を生成した。
・アセトンを添加してマイクロエマルジョンを不安定化する代わりに、温度を55±5℃まで上げ、かつ1時間攪拌した。
・その後、1.333mol/L NH4OH(pH〜11.86) 2.952mL(即ち、水144mmolと同等)を添加し、55±5℃において6時間攪拌し、その後、室温まで冷却した。
・1−ペンタノール 2.608mL(24mmol)及びシクロヘキサン 120mLと混合したNP−9 15.12g(24mmol)を添加し、20分間攪拌した。
・TEOS 2.184mL(9.6mmol)を混合物に添加した。
・48−72時間攪拌した。
・上記の50nmシリカコアを生成するための典型的な調製で説明したように、粒子を洗浄し、抽出し、乾燥させた。
この方法により、単分散の100nmシリカナノ粒子 720mgが生成した。対応するTEM顕微鏡写真を図5−Bに示す。
【0080】
調製3:150nm(コア+2シェル):
・上記したように100nmの粒子を調製した。
・アセトンを添加してマイクロエマルジョンを不安定化する代わりに、エマルジョンを2つのアルコートに分けた。
・1つのアリコートにおいて、温度を55±5℃に上げ、1時間攪拌した。その後、1.333mol/L NH4OH(pH〜11.86) 2.952mL(即ち、水144mmolと同等)を添加し、55±5℃において6時間攪拌した。
・1−ペンタノール 2.608mL(24mmol)及びシクロヘキサン 120mLと混合したNP−9 15.12g(24mmol)を添加し、20分間攪拌した。
・TEOS 2.184mL(9.6mmol)を混合物に添加した。
・48−72時間攪拌した。
・上記の50nmシリカコアを生成するための典型的な調製で説明したように、粒子を洗浄し、抽出し、乾燥させた。
この方法により、相対的に単分散の150nmシリカナノ粒子 936mgが生成した。対応するTEM顕微鏡写真を図5−Cに示す。
【0081】
調製4:200nm(コア+3シェル):
・上記したように150nmの粒子を調製した。
・アセトンを添加してマイクロエマルジョンを不安定化する代わりに、エマルジョンを2つのアルコートに分けた。
・1つのアリコートにおいて、温度を55±5℃まで上げ、1時間攪拌し、1.333mol/L NH4OH(pH〜11.86) 2.952mL(即ち、水144mmolと同等)を添加し、55±5℃において更に6時間攪拌した。
・シクロヘキサン 120mL中で1−ペンタノール 2.608mL(24mmol)と混合したNP−9 15.12g(24mmol)を添加し、20分間攪拌した。
・TEOS 2.184mL(9.6mmol)を系に添加した。
・48−72時間攪拌した。
・上記の50nmシリカコアを生成するための典型的な調製で説明したように、粒子を洗浄し、抽出し、乾燥させた。
この方法により、相対的に単分散の200nmシリカナノ粒子 1044mgが生成した。対応するTEM顕微鏡写真を図5−Dに示す。
【0082】
粒子特性
シリカ粒子の粒径及び形態を透過型電子顕微鏡(JEOL 2000 FXII又はJEOL 2010 F)を使用して測定した。
残りの界面活性剤の量を測定するために、TGA/DTA実験を、セタラムTGA 24を使用して行った。非ドープサンプルを10℃/分の速度で900℃まで加熱した。典型的な図を図6に示す。2つの異なる分解反応がDTAによって観察された:約100−200℃における吸熱反応は水及び他の揮発性成分の蒸発に関係し、約400℃における発熱反応は界面活性剤の燃焼に関係する。結合界面活性剤の量は、約450℃における質量損失と約250℃における質量損失の差として計算される。クロロホルムで5回洗浄した後のシリカ粒子と結合した界面活性剤残渣は、シリカ乾燥質量の約3.0質量%であった。これは、50nmの1粒子当りNP−9 約1.65分子に相当する。
【0083】
染料の放出速度
遠心分離によって水相からシリカ粒子を分離した後、粒子を擬似体液(SBF、pH7.4/25℃) 20mLに再懸濁した。SBFの組成は、P.Kortesuo;M.Ahola;S.Karlsson;I.Kangasniemi;A.Yli−Urpo;J.Kiesvaara,‘‘Silica xerogel as an implantable carrier for controlled drug delivery−evaluation of drug distribution and tissue effects after implanation’’,Biomater.,21,193−198(2000)から分かり得る。放出は、懸濁液を30分間、3000rpmにおいて遠心分離し、UV−可視分光法を使用して上澄み中に放出されたドーパントの濃度を測定することによって測定した。放出研究の間、サンプルは、暗い場所において、37℃の水浴中に貯蔵した。
【0084】
結果及び討論
種サイズに対するエマルジョンパラメーターの影響
以下の3つの系では、コアのサイズに対して水とアルコキシドの比が影響を及ぼすことを示した。対応するTEM顕微鏡写真を図7に示す。
・系1:NP−5:0.2mol/L:シクロヘキサン 50mL:触媒:1.333mol/L NH4OH(pH〜11.86):TMOS:3mmol:[H2O]/[TMOS]=20、[H2O]/[NP−5]=6:老化 24時間:粒径:〜7.6nm。
・系2:NP−9:0.2mol/L:シクロヘキサン 30mL:触媒:1.333mol/L NH4OH(pH〜11.86):[NP−9]/[1−ペンタノール]=1、TMOS:1.2mmol:[H2O]/[TMOS]=30、[H2O]/[NP−9]=6:老化 24時間、粒径:〜20nm。
・系3:トリトン X−100:23.9質量%:トルエン:71.4質量%:水:4.7質量%(5g):触媒:1.333mol/L NH4OH:TMOS:8mmol:[H2O]/[TMOS]=34.7、粒径:〜25nm。
【0085】
前駆体の順次添加による粒子成長(エマルジョンの追加なし)
シリコン前駆体としてTMOS及びTEOSを使用して2つの実験を行った。
・実験1:NP−9:0.2mol/L:シクロヘキサン 50mL:触媒:1.333mol/L NH4OH:[NP−9]/[1−ペンタノール]=1、[H2O]/[NP−9]=6。粒径は、追加のシリコン前駆体を順次添加することによって徐々に増加した。その成長プロセスは図2に示す通りである。結果を、図8に連続して示す。
・実験2:NP−9:0.2mol/L:シクロヘキサン 30mL:触媒:1.333mol/L NH4OH:[NP−9]/[1−ペンタノール]=1、[H2O]/[NP−9]=6。TMOSを使用する代わりに、TEOSをシリコン前駆体として使用した
。TEM像を図9に示す。
【0086】
TEM顕微鏡写真から、TEOSが、TMOSよりも有意により重要な粒子成長をもたらすことは明らかであるが、両方の場合における添加量並びに最初のコアの粒径を考慮する必要がある。TMOSの場合において、最初のコアは22nmであり、1サイクル当りの平均添加量は1.2mmolであり、4回の添加後、平均粒径が36nmに達した。これは、1サイクル当り3nmの成長又は添加したTMOS 1mmol当り2.5nmの成長を示す。対照的に、TEOSにおける最初のコアは、50nmであり、5回の添加後(総量15.6mmol)の平均粒径は137nmであった。これは、添加したTEOS
1mmol当り5.6nmの成長を示す。この成長速度の差は、両方の場合において存在する核(即ち、コア粒子)の数の差によって説明され得る。シリコンアルコキシド全てがシリカに転換されるならば、当量のシリカにおいて、TMOS合成中に観察されたより小さなコアの数は、TEOS合成中に観察されたより大きなコアの数よりも多いべきである。実際に、シリカの総量が一定であるため、コア粒子集団の差はそれらのサイズに反比例するはずである。更に、シリコンアルコキシドの当量添加において、コーティングされるコア粒子の数が2倍多いのであれば、コア−シェルサイズの増加は約2倍小さいことが予期され得る。それ故、より小さな成長がTMOSにおいて観察された。
【0087】
マイクロエマルジョン系の選択の重要性
NP−9は、全粒子成長プロセス間にマイクロエマルジョンを生成するために選択された。マイクロエマルジョン相平衡状態図がアルコール含量に敏感であるため、一般に、アルコール濃度の増加が粒子の多分散性の段階的な増加をもたらすと考えられている。アルコキシド前駆体は加水分解中にアルコールを生成するため、これは、添加した全アルコキシド前駆体の最大濃度を制限する。界面活性剤としてNP−9を有するマイクロエマルジョンはアルコール含量にあまり敏感ではなく、そのため、より高濃度のアルコキシド前駆体が、粒子成長プロセスの間、利用され得る。補助界面活性剤としての1−ペンタノールの存在は、逆ミセルをより硬くし、それによりマイクロエマルジョンを不安定から安定に変化させ、及びまた、ミセルサイズの均一性を改善し、それにより固体粒径の均一性も改善する。更に、NP−9マイクロエマルジョンは、より高い[水]/[界面活性剤]値を許容し、それにより、マイクロエマルジョンの安定性及び粒径の均一性を維持しながら、より大きな粒子の生成を可能にする。
【0088】
マイクロエマルジョン及びシリコンアルコキシドの順次添加による粒子成長
アルコキシド前駆体の順次添加によって粒子を成長させることができるとはいえ、粒子成長は、ミセルコアにおける自由水の供給制限によって、ある程度までに制限される。更に、この方法では、活性分子は粒子のコア中にしか充填できない。
【0089】
本願明細書に記載した代わりの方法は、更なるマイクロエマルジョンの形態において水を更に供給し、アルコキシドの加水分解及び凝縮を維持することにより粒子を成長させることからなる。該方法の略図を図10に示す。一旦、種(コア)粒子が生成されたならば、新たなマイクロエマルジョンを種(コア粒子)の懸濁液に添加する。混合の間、新たなマイクロエマルジョンからの新たな添加水滴が種粒子を含む親水性の液滴と融合し、該水は存在するコア粒子の表面に吸着する。アルコキシド前駆体の添加において、それは、粒子表面において吸着した水と反応し、加水分解し、その後、粒子表面において存在するヒドロキシル基と凝縮する。アルコキシド濃度が特定のレベル以下に維持されるならば、シリコン前駆体の濃度は過飽和レベル以下のままであり、更なる核は形成されない。粒子は、核に典型的なモノマーを添加することによって徐々に成長する。この方法を使用した粒子成長の例を図5に示す。
【0090】
各サイクルにおけるマイクロエマルジョン形態での水の添加は、様々な濃度で様々な段
階において活性分子を導入することを可能にする。これは、セラミックナノ粒子内の様々な位置に1種類以上の活性分子をカプセル化することを可能にする。外側のシェル内の物質は、その後、コア又は内側のシェル内に位置する分子よりも早く放出され得る。これらのコア−シェル構造のいくつかの典型的なTEM像を図11に示す。EDX線形を使用した各シェルの正確な組成分析は、電子線がサンプルを損傷し、かつ粒子内の金属の再分布をもたらすため行うことができなかった(図12参照)。
【0091】
この合成法を使用して、粒径50−500nm、通常10−300nmの、単分散のセラミック粒子を生成し得た。セラミック粒子の最終粒径は
(a)界面活性剤、補助界面活性剤、溶媒の種類、水と界面活性剤のモル比、界面活性剤と補助界面活性剤のモル比及び水プールのpHを含むマイクロエマルジョンの性質。
(b)アルコキシド前駆体の種類及びその濃度。
(c)サイクルの回数。
(d)各層に添加した前駆体の量。
(e)温度、pH等の他のゾル−ゲル反応条件。
に依存する。
【0092】
塩基の存在下(11より高いpH)におけるシリカ粒子の生成において上記で討論したように、本発明の方法を使用すると、層状ナノ粒子を生成できる。シリカより他のセラミック材料を使用する場合により、条件及び試薬を適切に選択して、合成条件を、中性、弱酸、中酸ないし強酸環境にさえも転換することができる。
【0093】
粒子の多分散性に対する様々な実験パラメーターの影響
添加方法の影響
図13は、新たなマイクロエマルジョン組成物の添加における異なる方法を示す。種は、以下の系を使用して調製した(NP−9 3mmol、シクロヘキサン 15mL、1−ペンタノール 3mmol、1.33M NH4OH 0.324mL、水 18mmol、TEOS 0.6mmol、老化 48時間)。その後、更なるマイクロエマルジョン(種のために最初に使用したものの2倍の量)及びTEOSを以下のように添加した:
・マイクロエマルジョンを添加し、55℃において6時間攪拌した後、TEOSを添加し、68時間老化した。
・界面活性剤を添加した後、まず、1−ペンタノール及びシクロヘキサンを添加し、10分後、アンモニア溶液を添加した。55℃において6時間攪拌し、TEOSを添加した後、68時間老化した。
・まず、アンモニア溶液を添加し、10分後、界面活性剤、1−ペンタノール及びシクロヘキサンを添加した。55℃において6時間攪拌し、TEOSを添加した後、68時間老化した。
・まず、アンモニア溶液を添加し、55℃において6時間攪拌した。その後、界面活性剤、1−ペンタノール及びシクロヘキサンを添加し、TEOSを添加した後、懸濁液を68時間老化した。
様々な方法は全て、同一の粒径を有する粒子を生成した。その後の全てのプロセスにおいて、最終方法を使用した。
【0094】
シェルの数の影響
多分散性に対する粒径制限を研究するために、200nm粒子の懸濁液(即ち、コア+3つのシェル)を2つのアリコートに分けた。1方のアリコートを、1時間攪拌しながら、55±5℃まで加熱した。その後、1.333mol/L NH4OH(pH〜11.86) 2.952mL(即ち、水144mmolと同等)を添加し、結果として生じた混合物を55±5℃において6時間攪拌した。その後、NP−9(24mmol) 15
.12g、1−ペンタノール 2.608mL(24mmol)及びシクロヘキサン 120mLを懸濁液に添加した。20分間攪拌した後、TEOS(9.6mmol)2.184mLを該系に添加し、更に、48−72時間攪拌した。その後、粒子を、上記の50nmシリカコアを生成するための典型的な調製で説明したように、洗浄し、抽出し、乾燥させた。結果として生じた粒子(即ち、コア+4つのシェル)のTEM顕微鏡写真を図14−aに示す。同様の方法を使用して、追加のシェルを有する粒子(即ち、コア+5つのシェル)生成した(図14−b参照)。図14は、200nmを越えた連続的な成長が多分散性粒子の生成をもたらすことを証明した。図14−aは、目的の230nmの粒子に加えて、約150nmの粒径を有する、少数のより小さな粒子を有する二峰性分布を示す。1回以上の繰り返しは、100nmないし325nmの範囲の多分散性の粒径分布をもたらす。このより小さな粒子の段階的な出現は粒子を含む液滴を有する添加したマイクロエマルジョンの不完全な融合によって生じる新たなシリカ核の形成を示唆する。より一般に、ナノ粒子が大きいほど、粒径分布は広くなる。大きな(>250nm)の粒子の単分散性を維持するための方法は、沈殿による分割及びそれによる第二世代の(より小さな)粒子の除去であり得る。
【0095】
大きな粒子の連続的な成長が抱える他の粒径制限は、全サイクルを完了するまでに必要な時間である。典型的に、3つのシェル(即ち、粒径200nm)を構成するまでに、8ないし10日間かかり得る。加工時間を減少させるための1つの方法は、反応温度を増加させることであり得る。さもなくば、より加水分解性の高いアルコキシド前駆体を使用して、粒子成長を速め得る。
【0096】
新たなエマルジョン/種エマルジョン体積比の影響
実験結果(図15a及びb)は、新たなマイクロエマルジョンを用いた種エマルジョンの希釈が、常に、均一な粒子をもたらすわけではないことを示す。希釈(新たなエマルジョンの体積/種エマルジョンの体積)が3より高い場合、多分散性粒子が生成する。これは、存在する粒子に組み込まれ得る水の量が特定値を超えないことを示唆する。もしも、より多量の水が添加されるならば、その後、新たな油中水逆ミセルが形成され、新たなシリカ粒子の形成のための核形成中心として作用し、結果として多分散性粒子の生成がもたらされる。
【0097】
混合方法の影響
図16は、種粒子及び新たなマイクロエマルジョンを含むエマルジョンの混合のために使用する方法の重要性を示す。新たなエマルジョン液滴と存在する種を含む液滴の融合を誘導することにより単分散粒子の生成を確実にするために、2、3の異なる方法を使用し得る。第一の試みは、結果として生じたエマルジョン混合物を非常に高いせん断速度(8000rpm)においてせん断混合し、液滴の衝突及び融合を促進することにある。第二の試みは、混合エマルジョンの温度を増加させることによって、液滴の衝突速度を増加させることに基づく。理論的に、室温において十分な融合が達成され得るとはいえ、室温における18時間の攪拌後に、多分散性のサンプルが得られることから明らかなように、これは、達成するために必要な時間のために実用的ではないことに注目することが重要である。超音波処理(長時間においてでさえも)は、図16−bに観察される二峰性分布によって証明されるように、液滴融合を誘導しない。
【0098】
シリコン前駆体の反応性の影響
上記で討論したように、TEOS等の反応性の低いシリカ前駆体はTMOS等のより反応性の高い前駆体より大きなコアを生成する。TMOSを、TEOSと同一のモル比で50nmの予めつくられたコア粒子に添加した場合、75nmのコア−シェル粒子及びより小さな21nmの二次粒子を有する二峰性分布が得られた(図17参照)。21nmの粒子はTMOSを使用して生成したコアに正確に対応する(図7−b参照)。これは、第二
核形成段階の存在を示唆し、そしてそれは、加水分解されたTMOSの濃度が急速に過飽和に達することをもたらし、存在するコアとの凝縮よりむしろ、第二核形成によって軽減させられる。対照的に、より低い反応性のTEOSにおいて、加水分解されるモノマーの濃度はよりゆっくりと上昇するため、それらは、濃度が過飽和に達し、核形成を誘導する前に、コア表面との反応によって消費され得る。
【0099】
有機変性シリカ(ORMOSIL)コア−シェル構造ナノ粒子
塩基中でのゾル−ゲル合成は、メソ多孔性粒子(即ち、大きい細穴サイズ:約4nm)の生成をもたらし、そして、メソ多孔性粒子は、それらのペイロード(典型的には、有機染料又は小さな薬剤分子<2nm)の急速かつ非制御な放出を一般に示す。セラミックナノ粒子内にカプセル化された分子を維持し、かつ洗浄工程の間、浸出することを避けるために、セラミックマトリックスは、カプセル化された分子と化学結合を形成し得る活性基(例えば、−NH2、−SH、−COOH等)で官能化され得る。このような方法を使用して、蛍光染料(フルオレセインイソチオシアネート(FITC))がアミン基で官能化されたシリカ粒子(APTES)中に上手くカプセル化される。その後、染料の放出は、活性分子−マトリックス相互作用のスクリーニング又は分断によってもたらされ得る。
【0100】
層状ナノ粒子は、上記した実験条件に従って合成された。ORMOSILは、粒子コア内又は第二シェル内に配合した。TEOSの割合は、75mol%又は25mol%である。これらの実験において使用したORMOSIL前駆体は、アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)である。対応するTEM像を図18に示し、ORMOSILコア−シェル粒子の組成を表1に示す。
表1:ORMOSILコア−シェル粒子の組成
【表1】
【0101】
異なる位置に2種の活性分子をカプセル化したコア−シェル構造ナノ粒子
本発明の方法の他の利点は、コア粒子内又はどのシェル内にもドーパントを1種以上カプセル化できることにある。各分子は、ナノ粒子の様々な位置に選択的にカプセル化され得、かつその濃度も各成長サイクルにおいて制御され得る。この方法により全粒径を制御することができるだけではなく、コアサイズ及び各シェルの厚さの両方も調整できるため、放出サイクルの長さ並びに様々な放出速度も潜在的に制御することができる。以下の実施例は、この技術の多用途性並びにカプセル化方法の柔軟性及び制御を説明することを目的とする。
【0102】
表2はナノ粒子の様々な位置にCu(NH3)42+及びRu(bPy)32+をドープした様々なサンプルの組成を列挙する。対応するTEM像を図19に示し、アセトン中に懸濁した粒子の写真を図20に示す。表3は、ナノ粒子の様々な位置にCu(NH3)42+及びCo(NH3)63+をドープした様々なサンプルの組成を列挙する。対応するTEM像を図21に示し、アセトン中に懸濁した粒子の写真を図22に示す。表4は、ナノ粒子の様々
な位置にCuPC2-及びRu(bPy)32+をドープした様々なサンプルの組成を列挙する。図23は対応する凍結乾燥した粉末(SiO2/NaCl質量比:15%)及び水中に再懸濁した粒子を示す。
表2:ドーパントとしてCu(NH3)42+及びRu(bPy)32+を用いた生成物1の組成
【表2】
表3:ドーパントとしてCu(NH3)42+及びCo(NH3)63+を用いた生成物2の組成及び粒径
【表3】
表4:ドーパントとしてCuPC2-及びRu(bPy)32+を用いた生成物3の組成
【表4】
【0103】
上記で言及したが、元素分析及びプロービングは、電子線が損傷を与えるために行うことができず、いくつかの明確なコアシェル構造は、TEMによって証明され得る。‘‘タマネギ’’型構造(図21−b、d、e、f、g参照)の存在は、特定のドーパントでの特定のシェルの選択的ドープの可能性を裏付ける。ドーパントをナノ粒子の様々な層に配置した図20、22及び23で観察された変色は、光学用途における該技術の可能性を更に説明する。
【0104】
固体コアのカプセル化
本発明の更なる特徴は、金属酸化物のシェル内に固体粒子をカプセル化する能力である。コアは、金属酸化物、半導体、量子ドット、磁性粒子又は結晶粒子等のあらゆる粉末種であり得る。
【0105】
シェルは、1種類の金属酸化物又は1種類より多くの異なる金属酸化物、複合金属酸化物又はドーパントを含む金属酸化物を含み得る。シリカシェル内における結晶質In2O3ナノ結晶の調製及びカプセル化の例を以下に詳述する。
【0106】
In2O3ナノ結晶を以下のように調製した:InCl3 1.017gを純水10mL中に溶解した。10M NH4OH 10mLを攪拌しながら該溶液に滴下添加し、沈殿物を形成させた。アンモニア臭が検出されなくなるまで、連続して洗浄すること(各回、50mLの水で5ないし10回)によって、Cl-イオン及びNH4+イオンを除去した。その後、HNO3(1M) 0.92mLを添加して沈殿物を解膠させ、懸濁液を55±5℃において一晩攪拌した。更に、1mol/LのHNO3 0.45mLを添加し、該懸濁液を、再度、55±5℃において一晩攪拌した。最終pHを測定すると2.284であり、TEMは、明確な面を有する5nm*10nmの晶子を示した。
その後、結晶を、以下の方法を使用してコーティングした。NP−9 6mmol、1−ペンタノール 6mmol、シクロヘキサン 30mL、6.667 mol/L NH4OH 0.972mLを含む溶液Aを、透明になるまで攪拌した。
【0107】
懸濁液中にNP−9 6mmol、1−ペンタノール 6mmol、シクロヘキサン 30mL、In2O3ナノ結晶 0.324mLを含む溶液Bを、透明になるまで攪拌した。2つの溶液A及びBを一緒に混合し、該混合物にTEOS 2.4mmolを添加した。該溶液を72時間老化した。その後、乾燥アセトン 50mLを結果として生じた懸濁液に添加してマイクロエマルジョンを不安定化し、粒子を回収した。粒子をアセトンで数
回洗浄し、TEMで測定した(図24参照)。TEM顕微鏡写真は、シリカナノ粒子内における50nmの棒のカプセル化を明らかに示した。
【0108】
コア又はシェル内における放射性トレーサーのカプセル化
シリカ粒子のあらゆる選択された位置(コア又は選択されたシェル)におけるIn−DTPA及びGa−DTPA等のキレート物質のカプセル化が上手く達成できた。EDSによって分析された金属含量は典型的には、シリカの1ないし2質量%であった。ドーパントの存在又は不存在と関係なく、粒径及び粒径分布が見られた。これは、本発明の方法によって、粒径及び内部構造を独立して制御することができることを裏付ける。
【0109】
67Ga−DTPA等の放射性トレーサーはまた、シリカナノ粒子内に容易にドープされ得るため、生体内にトレース可能な粒子を生成する。このような粒子は、以下の方法によって調製され得る。0.1mol/L HCL溶液中で2GBq/mL活性を有する67GaCl(t1/2:3.261日)をアンスト−サイクロトロン社から入手した。溶液を、水で10分の1に希釈した。DTPA 3.9mg/Lを含む濃アンモニア(25質量%
NH3) 0.428mLを、pH約2において、67GaCl3溶液 0.22mLに添加した。
【0110】
結果として生じた溶液は、コア中に、外側のシェル中に又は全粒子の至るところに活性ガリウムを有する粒子を生成するために、上記方法において水性溶液として使用され得る。これらの粒子は、検出法としてγ計数を使用してネズミ中のシリカ粒子の位置を研究する生体内分布研究において使用され得る。このようなナノ粒子の潜在用途として、放射線治療及び放射線イメージングが予期され得る。
【0111】
コア−シェル粒子からの放出
上記で言及したように、塩基触媒を使用したゾル−ゲル合成は、メソ多孔性粒子(即ち、約4nm)の生成をもたらし、そして該メソ多孔性粒子は、一般に、それらのペイロードの急速かつ非制御な放出を示す。このことに関する注目すべき例外は、金属カチオン及びシリカ表面間である程度の相互作用を示し得る有機金属錯体のカプセル化である。この場合、表面と錯体の相互作用は、カプセル化及びシリカナノ粒子構造内の分子の一時的な保持を確実にする。粒子は水相中に懸濁されるため、水に対するシリカ表面の強い親和性は、徐々に、活性有機金属錯体との吸着平衡を移動させ、それによりシリカマトリックスから分子を放出させ得る。大抵の場合、該放出は、シリカマトリックスの段階的な溶解によって為され得る。
【0112】
順次放出が可能であることを証明するために、コア及び外側のシェル中に異なるドーパントを有する2組のナノ粒子を合成した:a)外側のシェル中にCuPCを有し、かつコア中にRubpyを有するサンプル LNK−822、及びb)外側のシェル中にRubpyを有し、かつコア中にCuPCを有するサンプル LNK−824。これらの2つのサンプルからの放出をUV−可視分光法を使用して観察した。水中における2つの染料のUV可視スペクトルを図25に示し、かつSBF中における32日の浸出後の2つのサンプル(LNK−822及びLNK−824)のスペクトルを図26に示す。CuPCの最大吸収は556nmであり、Rubpyの最大吸収は390nmであった。2つのピーク間の重なりは小さいため、一次近似において無視され得る。1ないし12のpH範囲(粒子合成範囲に対応)において、pHによる(CuPC及びRubpyの)最大吸収波長の移動は観察されなかった。媒体をSBFに変えた場合、約60nmのレッドシフト(Rubpyにおいて390nmから450nm及びCuPCにおいて556nmから615nm)が両方の染料において観察された(図26参照)。サンプル LNK−824において、該領域においてRubpyの吸収がないことから、わずかな量のCuPCの放出を示唆するわずかな吸収が約615nmにおいて見られ得る。しかしながら、450nmにお
いてCuPCのわずかな吸収があるため、特にこのような少量のRubpy放出を定量化することは困難である。
【0113】
2つのコアシェル粒子の対応する放出曲線を図27に示す。CuPCが外側のシェル内にカプセル化された場合、それは、10日間かけて徐々に放出される。該時間後、多くの染料が放出されたことを示唆する、一定濃度のCuPCが、2、3日間にわたり観察された。正確な量は容易に定量化できないが、非常に少量のRubpyもコアから放出された。興味深いことに、LNK−822の色が、最初は緑色であったが(図23参照)、外側のシェルからのCuPCの放出後、オレンジ色に変化した(即ち、Rubpyでドープされたナノ粒子の色)ことにより、CuPCの順次放出が視覚により確認できた。他方、Rubpyが外側のシェルにドープされ、かつCuPCがコア中に存在する場合(LNK−824)、放出曲線は、5日間の間に殆どのRubpyが浸出したことを示す。コアからのCuPCの検出可能な浸出は観察されなかった。浸出の間、粒子の色は黄色から緑/青色に変化した(CuPCのみを含む粒子の元来の色)。これらの実験は、順次放出用途においてこれら多層状粒子を使用できることを裏付けた。
【0114】
分子及びシリカ細孔表面間に強い相互作用が存在しない場合、セラミックマトリックスは、カプセル化された分子と化学結合を形成し得る活性基(例えば、−NH2、−SH、−COOH等)で官能化され得る。このような方法を使用して、蛍光染料(フルオレセインイソチオシアネート(FITC)がアミン基で官能化されたシリカ粒子(APTES)中にカプセル化される。その後、活性分子−マトリックス相互作用のスクリーニング又は分断によって、放出がもたらされ得る。メソ多孔性粒子内に小さな分子をカプセル化するための他の方法は、カプセル化前に、それらをデキストラン又はデンドリマー等のより大きな粒子と結合させることである。
【0115】
本発明は、コア−シェル構造を有し、かつナノ粒子の様々な位置(即ち、シェル又は層)にカプセル化された活性分子又はドーパントを1種以上含む層状ナノ粒子の製造方法を提供する。該技術の利点は、全粒径、コアサイズ、シェルの厚さ、各シェル中の活性物質の濃度、並びに各カプセル化ドーパントの放出順序及び放出速度を正確に制御できることを含む。
【0116】
本発明者達は、小さな有機金属分子が粒子内にカプセル化され得ることを証明した。これらの分子は、金属錯体化合物(例えば、テトラアミン銅、ヘキサミンコバルト、インジウム−DTPA、ガリウム−DTPA)、無機染料、例えばRubpy[トリス(2,2’−ビピリジル)ジクロロルテニウム(II)六水和物]、CuPC[銅(II)フタロシアニン−テトラスルホン酸四ナトリウム塩]及び蛍光染料、FITC(フルオレセインイソチオシアネート)を含む。In2O3ナノ結晶等の錯体物さえもカプセル化できる。より重要なことには、本発明者達は異なる装填値を有するナノ粒子内の様々な位置にドーパントを1種以上カプセル化できることを示した。ナノ粒子構造、即ち、コアサイズ及び層の厚さは添加する前駆体の性質及び量等の加工パラメーターによって正確に制御され得る。粒子の単分散性は、各サイクルにおいて添加した水全てが、存在する粒子の表面に移動することを確実にすることによって、成長プロセスの間中、維持され得る。残りの空の水滴(即ち、粒子を含まないもの)は、第二核形成中心として作用し得る。成長速度は、前駆体の量の増加、触媒の添加又は少しの種材料の使用によって速められ得るが、多分散性が第4サイクル以降にもたらされる。種エマルジョンの極度の希釈もまた、多分散性ナノ粒子の生成をもたらす。
【0117】
本発明の方法によって生成されるナノ粒子は静注薬剤送達のために適当であるが、それらは、高密度光記憶装置、特定の光センサー又はバイオセンサー等の情報技術、及び腐食/酸化、焼結及び融合からのナノ粒子の保護/表面変性、表面特性の変化(表面、電荷、
ゼータ電位、懸濁性)等にも適用され得る。長期的には、該技術は、活性薬剤標的用の抗体又はペプチドによって容易に官能化され得る、−NH2、−SH、−COOH等の官能基を有する有機変性セラミック前駆体を含むシェルによってコーティングされたカプセル化活性分子を含むコア粒子を含むナノ粒子をつくるために使用され得る。
【0118】
図27aないし28fは、本発明に従ったいくつかの異なる層状ナノ粒子の図を示す。これらの図は、本発明に従ってつくられ得る多種多様なナノ粒子の内の2、3しか示していないこと、及び、該ナノ粒子の特定の使用方法のみが実施例に示されていることに注意すべきである。他の種類の粒子及びそれらの使用方法も可能であり、それらは、本願明細書から予期される。それ故、以下の記載は実施例のみとして解釈されるものであり、如何なる方法においても本発明の範囲を制限するものとしては解釈されない。
【0119】
図28aを参照すると、層状ナノ粒子10は、第一放出性ドーパントAを含む多孔性コア粒子15及びコア粒子15を囲む、第二放出性ドーパントBを含む多孔性層20を含む。ナノ粒子10が適当な液体環境中に置かれる場合、放出性ドーパントBが、まず、ナノ粒子10から放出され、その後、放出性ドーパントAが放出される。ドーパントBが放出されるところの時間期間は、層20の厚さに依存し得、ドーパントAが放出されるところの時間期間は、層20の厚さ並びにコア粒子15のサイズに依存し得る。放出速度は、ドーパントの性質並びにコア粒子15及び層20の性質及び細孔のサイズに依存し得る。さもなくば、ドーパントAが非放出性染料であるならば、ナノ粒子10は、ドーパントAによって着色を示し得、かつ放出性ドーパントBを放出し得る。更なる代替法として、ドーパントBが非放出性染料であり、かつドーパントAが放出性ドーパントである場合、ナノ粒子10はドーパントBによって着色を示し得、かつ放出性ドーパントAを放出し得る。
【0120】
図28bを参照すると、層状ナノ粒子30は、放出性ドーパントAを含む多孔性コア粒子35及び放出性ドーパントを含まない多孔性層40を含む。多孔性層40は、コア粒子35を囲む。ナノ粒子30が適当な液体環境中に置かれる場合、遅延時間後、放出性ドーパントAがナノ粒子10から放出される。遅延時間の長さは、多孔性層40の厚さ及び多孔率に依存する。
【0121】
図28cを参照すると、層状ナノ粒子50は、第一放出性ドーパントAを含む多孔性コア粒子55、コア粒子55を囲む第一多孔性層60及び第一多孔性層60を囲む第二多孔性層65を含む。第一層60は放出性ドーパントを含まず、第二多孔性層65は第二放出性ドーパントBを含む。ナノ粒子50が適当な液体環境中に置かれる場合、第二放出性ドーパントB及び第一放出性ドーパントAが、ドーパントB及びAの放出遅延時間後に順次放出される。遅延時間の長さは、第一層60の厚さ及び多孔率に依存する。
【0122】
図28dを参照すると、層状ナノ粒子70は、第一放出性ドーパントAを含む多孔性コア粒子75、コア粒子75を囲む、第二放出性ドーパントBを含む第一多孔性層80及び第一層80を囲む、第三放出性ドーパントCを含む第二多孔性層85を含む。ナノ粒子70が適当な液体環境中に置かれる場合、まず、放出性ドーパントCがナノ粒子70から放出され、その後、放出性ドーパントBが放出され、最後に、放出性ドーパントAが放出される。ナノ粒子70からのドーパントA、B及びCの放出時期は、層80及び85の厚さ及び多孔率及びコア粒子75のサイズに依存する。
【0123】
図28eを参照すると、ナノ粒子90は、多孔性コア粒子95とコア粒子95を囲む同心の多孔性層100、105、110及び115を含む。コア粒子95及び同心の層105及び115は、それぞれ、放出性ドーパントA、B及びCを含み、層100及び110は放出性ドーパントを含まない。ナノ粒子90が適当な液体環境中に置かれる場合、まず、放出性ドーパントCがナノ粒子90から放出され、その後、放出性ドーパントBが放出
され、最後に、放出性ドーパントAが放出される。ドーパントCとドーパントBの放出間には遅延時間があり、かつドーパントBとドーパントAの放出間には他の遅延時間がある。遅延時間は、それぞれ、層110及び100の厚さ及び多孔率によって制御され得る。
【0124】
図28fを参照すると、ナノ粒子120は、放出性ドーパントAを含む多孔性コア粒子125及びコア粒子125を囲む多孔性層130を含む。多孔性層130は、放出性ドーパントB及びCを含む。ナノ粒子120が適当な液体環境中に置かれる場合、まず、ドーパントB及びCがナノ粒子120から放出され、その後、ドーパントAが放出される。さもなくば、ドーパントAが非放出性染料である場合、ナノ粒子120はドーパントAによって着色を示し得、かつ放出性ドーパントB及びCが放出され得る。更なる代替法として、ドーパントBが非放出性染料であり、かつドーパントA及びCが放出性ドーパントである場合、ナノ粒子120はドーパントBによって着色を示し得、かつ放出性ドーパントC及びAを順次放出し得る。
【0125】
多数の染料のカプセル化
上記実験において、コア中にCuPC2-を、外側のシェル中にRu(bPy)32+をカプセル化することにより、CuPC2-及びRu(bPy)32+をシリカナノ粒子中にカプセル化した(逆の場合も同じ)。サンプル−Iのコア中及びサンプル−IIの外側の層中の各染料の量は異なる。従って、これらの2つのサンプルは、視覚的に異なる色を示す(図23、サンプル LNK−822及びLNK−824)。以下の実験において、表5に示すように、同量の各染料を異なるサンプル中にドープした。粒子は、合成及び凍結乾燥後、視覚的に同一の色を示し、そしてこれは、ナノ粒子の色が、ナノ粒子中の染料の位置よりむしろ染料成分及びそれらの濃度に依存することを示唆する。
表5:ナノ粒子にドープした染料成分
【表5】
【0126】
図29は、37℃におけるPBS(リン酸塩緩衝溶液)中での各サンプルの染料放出を示す。多層状粒子から放出される染料のほとんどは、外側のシェル中にカプセル化されたものである、即ち、LNK879(図29−A)及びLNK880(図29−B)においては、それぞれ、CuPC2-及びRu(bPy)32+である。LNK879において、CuPCの濃度は、18日目及び40日の間で、おおよそ一定に保たれた。その後、CuPCの濃度は実質的に減少した。本発明者達は、これは、CuPCの分解のため、又は、CuPCと容器壁との会合により起こり得ると仮定した。放出特性の初期段階において、CuPCの濃度は増加するか又は実質的に一定のままであった。本発明者達は、これは染料の放出速度が分解速度よりも高いことを示し得ると仮定した。図29−Aは、コア中の染料(Ru(bPy)32+)が約30日後に放出し始めたことを示し、これは、多層粒子の含有物の順次放出が起こったことを示唆する。図29−Bにおいて、わずかな量のCuPCが同時に浸出し、その後、50日後に分解されたとはいえ、シェル中の染料(Ru(bPy)32+)は、64日目まで連続放出された。これらの結果から、放出速度特性は、粒子中の様々な位置の様々なドーパントの性質に基づき調節可能であり得ると考えられる。図29Aは、最初の2週間にシェルから最初の染料の放出があり、30日後にコアから他の染料の放出があるところの順次放出を示す。シェルからの染料の強度の減少は、図Bか
らも明らかなCuPC(コア中のCuPC)の時間による分解によって説明され得る。図29−Bは、順次放出を示さないが、シェルからのルテニウム染料の段階的放出及びコアからの小規模なバースト放出を示す。
【0127】
有機染料のカプセル化を増強するORMOSILシェルの形成
上記実験において、イソチオシアネート(−N=C=S)基とアミン基間の化学結合のため、蛍光染料、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)をAPTES等のカップリング剤の存在下においてシリカマトリックス内にカプセル化した。今回の実験において、ORMOSILシェルでコーティングしたシリカナノ粒子内に有機染料をカプセル化することを試みた。これは、細孔サイズを縮小するため、染料放出速度を減少させ得ることが予期される。実験フローチャートを図30に示し、対応するTEM像を図31に示す。合成は、上記した典型的な方法を用いて行った。粒子表面を変性するために、いくつかの選択肢を研究した。各サンプルの成分及び対応する最終生成物の粒径を表6に示す。粒子aは、TEOSのみでつくられた最初のコアを示す。粒子bは、TEOS 75%及びAPTES 25%の前駆体混合物を使用してつくられたコアである。粒子cは、TEOSのみを使用してつくられたコア−シェル粒子である。粒子d及びeは、dがAPTES
30mol%、eがAPTES 50mol%を有するORMOSIL変性シェルを有する。粒子fは、ORMOSILコア及びORMOSILシェルを有する。全ての粒子は、ほぼ同一の粒径を有するが、ORMOSIL変性粒子はわずかに広い粒径範囲を示した。
【0128】
合成中の有機相を合わせ、洗浄した後、オレンジ−IIのカプセル化効率をUV/Vis吸着によって測定した。オレンジ−IIは有機染料であるため、それが純粋な有機物であり、かつシリカ表面と強い相互作用を有さないという点で、前実施例のRuBpy及びCuPCとは顕著に異なる。外側のシェル中にAPTESを有さないか又は外側のシェル中にAPTES 30mol%を有する3つのサンプル(LNK 1120、LNK 1121及びLNK1123)のカプセル化効率の値は平均約5ないし14質量%であったが、外側のシェル中にAPTES 50mol%を有するサンプル(LNK 1122)のカプセル化効率は約45質量%であった。有機染料のカプセル化効率は、他の因子の内で、染料の性質、その量、染料とシリカの質量比、層を含むORMOSILのモル百分率及びORMOSILの厚さに基づくと考えられる。これは、ORMOSIL前駆体の有機基が合成及び洗浄中にシリカマトリックスから染料が浸出するのを防止する役割を果し得ることを示す。更に、この効果は、各ORMOSIL前駆体の官能基に基づくと考えられる。染料が非常に急速に浸出することを防止するために、GLYMO(エポキシ官能シラン)が大抵のORMOSILよりも効果的であることが分かった。
表6:ORMOSILシェル粒子の成分及び粒径
【表6】
【0129】
粒子単分散性を維持しながら粒径を増加させるための他の方法
高い界面活性剤濃度
粒径が100nm以上である場合、エマルジョン系が濁り、粒子が水滴の外に沈殿し始め、最終的に、攪拌なしで2つの物理相を形成することが観察された。補助界面活性剤がその機能を損失し、より高濃度の界面活性剤が懸濁液中に粒子を維持し得ると仮定できる。図32は、様々な界面活性剤条件を使用して生成したシリカ粒子のTEM像を示す。[水]/[NP−9]モル比=6で、NP−9 0.2mol/L、1−ペンタノール 0.2mol/Lを用い典型的な合成方法を使用して、最初の種(図32、a及びbに示した74nmないし86nmの粒径を有するコア−シェル粒子)を生成した。
【0130】
コア+2−層及びコア+3−層粒子は、上記で生成した種から形成した。補助界面活性剤(1−ペンタノール)を追加添加することなく、界面活性剤濃度を0.4mol/L(その後の[水]/[NP−9]モル比=3)及び0.6mol/L([水]/[NP−9]モル比=2)まで増加させた。図32c及びeは、補助界面活性剤を追加することなく、最初のシェルへの添加だけで、単分散の粒子を生成することを示す。しかしながら、他の層が成長するにつれ(図32d及びf)、直径約20nmのより小さな粒子が生成した。これらの結果は、補助界面活性剤の存在は、粒子が約100nmより大きく、かつ安定し始める場合でさえ、単分散粒子の形成には必要不可欠であることを示唆する。
【0131】
界面活性剤及び補助界面活性剤の双方を、0.2mol/Lから0.4mol/Lに増加させた場合、2又は3つのシェルを有する粒子は狭い粒径分布を保持するが(図32g及びh)、0.2mol/Lの界面活性剤を用いて合成したものと比べて、顕著に大きな成長はない。
【0132】
2つの成長プロセスの組み合わせ
上記で討論したように、粒径は、エマルジョン中に導入されるシリコン前駆体の増加に伴い、徐々に増加する(図2)。しかしながら、アルコキシドのみの添加(更なる水なし)は、空のシェルに囲まれた活性ドーパントを含むコアを有する粒子の生成をもたらす。
更に、一定量のアルコキシドの添加後、水プール中の全ての水が消費され、更なる成長ができない。これは、水プール中に存在する水の少量しか自由にならず、アルコキシドの凝縮に加わることができないため、マイクロエマルジョンに更なる悪影響を及ぼす。多くの水は、界面活性剤の極性頭部基の溶媒和水としてミセルの壁と結合している。
【0133】
本発明の1つの実施形態において、より多くのエマルジョンが添加され、より高い温度(約55℃)において数時間、定温放置する工程によって、更なる水が存在する粒子表面上に移される(図3)。それでもなお、数回の成長サイクル後、シリカ粒子は多分散される。これは、各定温放置プロセスの間、水は存在する粒子表面上に分布されるだけではなく、新たな空の水滴を形成するという事実によって説明され得る。考えられる他の因子は、粒径の増加に伴い、エマルジョン系がもはや均一及び熱力学的に安定ではなく、粒子が沈殿することにある。結果として、定温放置プロセスの回数は、単分散性を維持するために又はできるだけ多分散性を狭くするために、最少にすべきである。
【0134】
図33は、上記した2つの成長技術を組み合わせること(即ち、エマルジョン成分の添加と併せた散在させるTEOSの複合添加)による層状ナノ粒子の生成方法を説明する。各定温放置サイクルの間、シリコン前駆体を典型的な方法における1回よりむしろ2回添加した。図34は、全プロセスを通じて水と界面活性剤のモル比が6であるところの、各成長段階における粒子のTEM像を示す。最初の種は約55nmであった。3回の定温放置サイクルの後、約200ないし240nmの範囲の粒径を有する最初の種を7層でコーティングした。この時点において、水とシリコンアルコキシドのモル比はわずかに4より大きかった。この新規方法の結果は、より少数の定温放置工程を使用して、粒径を200nm以上に増加させ得ることを示した。
【0135】
全成長方法において、より高い水の界面活性剤に対するモル比を使用し、それによってより多くの水を系に与えるべきであるといえる。図35は、成長プロセスにおいて、水と界面活性剤のモル比=9で合成した粒子のTEM像を示す。[水]/[界面活性剤]=6の系と比べて、[水]/[界面活性剤]=9の系の最初の種は、大きくない。しかしながら、粒径は、同一の成長方法下で、[水]/[界面活性剤]=9の系の方がより速く増加した。コア+3−層粒子において、粒径は、約158−172nmまで増加したが、添加後、小さな粒子が発生した。これは、単分散性粒子がこの高い水と界面活性剤の比を使用しても良好に成長し得ないことを示す。
【0136】
高温における合成
上記したように、層状ナノ粒子を生成するには数日間かかり得る。反応時間を短縮するために、より高い温度において実験を行った。図36は、35℃又は50℃において合成したナノ粒子のTEM像を示す。35℃、20時間の老化時間において、30−50nmの粒子が生成した。同じ温度において、48時間の老化時間を使用すると、粒径は約48−62nmに増加した。老化時間を20時間から48時間に増加すると、50℃において、粒径は37−52nmから48−70nmに増加した。相対的に、室温において、ナノ粒子の粒径範囲は、48時間の老化で約50−60nmであった(図34−a)。この結果は、粒径は時間と共に増加するが、反応温度とはあまり関係がないことを示す。高温反応は、ゾル−ゲル反応の急速な完了をもたらさないが、広い粒径分布を有する粒子を生成する。
【0137】
図37は、水と界面活性剤のモル比=8で、より高い反応温度において生成したコア−シェル粒子を示す。反応温度(35又は50℃)に関わらず、反応時間が20時間から48時間に増加すると、平均粒径は約10−15nm増加した。
【0138】
粒径に対する定温放置効果
上記したように、層状ナノ粒子を生成するために、種を室温において作成し、その後、大部分のTEOSが完全に反応することを確実にするために、55±5℃において1時間、定温放置工程を行った。その後、新たなエマルジョン成分を懸濁液に添加し、55±5℃において6時間、該混合物の定温放置工程を行い、新たに添加した水全てを存在する粒子の表面上に吸着させた。図38は、様々な定温放置工程におけるシリカ粒子の粒径を示す。定温放置前、粒子は、約76−88nmの粒径範囲であった。55±5℃における1時間の定温放置後、粒径は、約82−96nmにわずかに増加した。しかしながら、水を追加添加し、その後、55±5℃において6時間、系を定温放置した後、平均粒径はほとんど変化せず、わずかに広い粒径分布を示した。より長い定温放置時間においても、粒径の増加は観察されず、これは、1時間後、ほぼ全てのシリコンアルコキシドが反応したことを示唆する。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】図1は、塩基の存在下におけるゾル−ゲル反応順序を示す。
【図2】図2は、ドーパントがコアのみに含まれるところの多層ナノ粒子の製造方法のフローチャートを示す。
【図3】図3は、多数のドーパントを有する多層ナノ粒子の製造方法のフローチャートを示す。
【図4】図4は、NP−9/1−ペンタノール/シクロヘキサン/NH4OH/TEOS系中で製造した粒子のTEM顕微鏡写真を示す(平均径:55±5nm)。
【図5】図5は、コア−シェル構造を有する不均一なシリカ粒子のTEM像を示す。
【図6】図6は、シリカ粒子上の界面活性剤残渣のTGA/DTA測定のグラフを示す。
【図7】図7は、以下のマイクロエマルジョン系中で製造したシリカ粒子のTEM顕微鏡写真を示す:a)NP−5/シクロヘキサン/NH4OH/TMOS、b)NP−9/1−ペンタノール/シクロヘキサン/NH4OH/TMOS及びc)トリトン X−100/トルエン/NH4OH/TMOS。
【図8】図8は、TMOSの逐次添加による粒子成長を説明するTEM顕微鏡写真を示す:a)コア(22nm)、b)1.2mmolのTMOS(27nm)の第1添加、c)第2添加(31nm)、d)第3添加(33nm)、e)第4添加(36nm)。
【図9】図9は、TEOSの逐次添加による粒子成長を説明するTEM顕微鏡写真を示す:a)コア(50nm)、b)1.2mmolのTEOS(83−92nm)の第1添加、c)第2添加(91−106nm)、d)第3添加(102−120nm)、e)第4添加(108−129nm)、f)第5添加(128−146nm)。
【図10】図10は、新規成長プロセスの原理を説明する概略図を示す。
【図11】図11は、コア−シェル構造のTEM顕微鏡写真を示す:a)明視野像(暗い領域は重元素を示す。)、b)暗視野像(明るい領域は重元素を示す。)。
【図12】図12は、ビーム像を示すコア−シェル構造のTEM顕微鏡写真を示す:a)明視野像、b)EDX線形後の暗視野像。
【図13】図13は、コア−シェル粒径上に添加する方法の影響を説明する顕微鏡写真を示す。
【図14】図14は、以下のものを使用して合成した粒子のTEM顕微鏡写真を示す:a)4サイクル(コア+4つのシェル)及びb)5サイクル(コア+5つのシェル)。
【図15】図15は、希釈度(新しいエマルジョンの体積/種エマルジョンの体積)がA)2、B)3、C)4、D)5のところの様々な希釈度を使用した粒子成長のTEM顕微鏡写真を示す。 a)サンプル1、銅をドープしたシリカコア、追加添加した水性相:Cu(NH3)42+の形態でCu10.14mg/mLを有するNH4OH 1.333mol/L。 b)サンプル2、銅をドープしたシリカコア、追加添加した水性相:銅なしのNH4OH 1.333mol/L。
【図16】図16は、種エマルジョンと新たなエマルジョンの混合において様々な方法を使用して製造した粒子のTEM顕微鏡写真を示す。
【図17】図17は、TEOSを使用して形成した粒子コア及びTMOSを使用して形成したシェルのTEM顕微鏡写真を示す(図5において使用したものと同一の合成条件)。
【図18】図18は、OrmosilシェルでコーティングしたシリカコアのTEM顕微鏡写真を示す。
【図19】図19は、表2に列挙した組成を有するサンプルのTEM顕微鏡写真を示す。
【図20】図20は、表1に列挙した組成を有し、かつアセトン中に懸濁させたサンプルの写真を示す。
【図21】図21は、表3に列挙した組成を有するサンプルのTEM顕微鏡写真を示す。
【図22】図22は、表3に列挙した組成を有し、かつアセトン中に懸濁させたサンプルの写真を示す。
【図23】図23は、表4に列挙した組成を有するサンプルの写真を示す:a)凍結乾燥(SiO2/NaCl 質量比:15%)、b)ミリ−Q水中に懸濁。
【図24】図24は、懸濁液中のIn2O3ナノ結晶及びシリカシェルでコーティングしたIn2O3ナノ結晶の顕微鏡写真を示す。
【図25】図25は、中性水中のCuPC(黒色の線、λmax:556nm)及びRubpy(灰色の線,λmax:390nm)のUV−可視スペクトルを示す。
【図26】図26は、32日後のSBF中のサンプルLNK−822(黒色の線、λmax:615nm)及びLNK−824(灰色の線、λmax:450nm)のUV−可視スペクトルを示す。
【図27】図27は、以下のものの放出速度曲線を示す:a)サンプルLNK−822(37℃のSBF 20mL中に凍結乾燥粉末 1.022g、λmax=615nm)、b)サンプルLNK−824(37℃において、SBF 20mL中に凍結乾燥粉末 0.6055g、λmax=450nm)、ここで、凍結乾燥粉末は、SiO2 15質量%及びNaCl 85質量%を含む。
【図28】図28のaないしfは、本発明に従った様々な層状ナノ粒子の図表示を示す。
【図29】図29は、UV/可視吸収を使用して測定した以下のものの放出速度曲線を示す; サンプル:(A)LNK−879及び(B)LNK−880。 凍結乾燥粉末2gを37℃においてSBF 20mL中に懸濁させた(ここで、凍結乾燥粉末は、SiO2 15質量%及びNaCl 85質量%を含む。)。 ▲CuPC、λmax=615nm、■Rubpy、λmax=450nm。
【図30】図30は、より多くのエマルジョン成分の添加によりORMOSIL表面を有する染料カプセル化シリカナノ粒子の合成フローチャートを示す。
【図31】図31は、より多くのエマルジョン成分を添加することにより製造したORMOSIL表面を有するシリカナノ粒子のTEM像を示す:(a)TEOSによる種、(b)混合前駆体による種、(c)TEOSによるコア−シェル粒子、(d)及び(e)ORMOSILシェルを有するシリカコア、(f)表6に詳述したORMOSILコア及びシェル。
【図32】図32は、様々な界面活性剤濃度におけるシリカ粒子のTEM像を示す:(a)、(b)NP−9 0.2mol/L及び1−ペンタノール 0.2mol/Lによってつくられた種粒子、74−86nm、(c)1−ペンタノールなしでNP−9 0.4mol/Lによってつくられたコア+2−層粒子、109−123nm、(d)1−ペンタノールなしでNP−9 0.4mol/Lによってつくられたコア+3−層粒子、132−152+20nm、(e)1−ペンタノールなしでNP−9 0.6mol/Lによってつくられたコア+2−層粒子、106−126nm、(f)1−ペンタノールなしでNP−9 0.6mol/Lによってつくられたコア+3−層粒子、132−145+20nm、(g)NP−9 0.4mol/L、1−ペンタノール 0.4mol/Lによってつくられたコア+2−層粒子、100−131nm、(h)NP−9 0.4mol/L、1−ペンタノール 0.4mol/Lによってつくられたコア+3−層粒子、128−179nm。
【図33】図33は、本発明に従った2つの成長技術を組み合わせることによる層状シリカナノ粒子の製造フローチャートを示す。
【図34】図34は、[H2O]/[界面活性剤]=6のモル比において2つの成長技術を組み合わせることにより製造したシリカ粒子のTEM像を示す:(a)種:50−60nm、TEOS 1.2mmol、H2O 36mmol、[H2O]/[TEOS]=30、(b)コア+1−層:61−76nm、TEOS 4.8mmol、H2O 36mmol、[H2O]/[TEOS]=7.5、(c)コア+2−層:95−113nm、TEOS 9.6mmol、H2O 72mmol、[H2O]/[TEOS]=7.5、(d)コア+3−層:100−135nm、TEOS 14.4mmol、H2O 72mmol、[H2O]/[TEOS]=5、(e)コア+4−層:136−166nm、TEOS 24mmol、H2O 144mmol、[H2O]/[TEOS]=6、(f)コア+5−層:146−172nm、TEOS 33.6mmol、H2O 144mmol、[H2O]/[TEOS]=4.3、(g)コア+7−層:200−240nm、TEOS 52.8mmol、H2O 216mmol、[H2O]/[TEOS]=4.1。
【図35】図35は、[H2O]/[界面活性剤]=9のモル比において2つの成長技術を組み合わせることにより製造したシリカ粒子のTEM像を示す:(a)種:50−61nm、TEOS 1.2mmol、H2O 54mmol、[H2O]/[TEOS]=45、(b)コア+1−層:70−87nm、TEOS 4.8mmol、H2O 54mmol、[H2O]/[TEOS]=11.3、(c)コア+2−層:95−117nm、TEOS 9.6mmol、H2O 162mmol、[H2O]/[TEOS]=16.9、(d)コア+3−層:158−172nm、TEOS 14.4mmol、H2O 162mmol、[H2O]/[TEOS]=11.3、(e)コア+4−層:2つのサイズのナノ粒子、TEOS 24mmol、H2O 378mmol、[H2O]/[TEOS]=15.8、(f)コア+5−層:広範囲のサイズのナノ粒子、TEOS 33.6mmol、H2O 378mmol、[H2O]/[TEOS]=11.3。
【図36】図36は、[H2O]/[界面活性剤]=6のモル比において高温で合成したシリカナノ粒子のTEM像を示す:(a)35−50nm、35±2℃において20時間老化、(b)48−62nm、35±2℃において48時間老化、(c)37−52nm、50±2℃において20時間老化、(d)48−70nm、50±2℃において48時間老化。
【図37】図37は、[H2O]/[界面活性剤]=8のモル比において高温で合成したシリカナノ粒子のTEM像を示す:(a)種:35−68nm、室温、35±2℃において48時間老化:コア−シェル粒子、(b)75−100nm、35±2℃において20時間老化、(c)78−113nm、35±2℃において28時間老化、(d)81−117nm、35±2℃において48時間老化、(e)78−105nm、50±2℃において20時間老化、(f)80−107nm、50±2℃において28時間老化、(g)86−120nm、50±2℃において48時間老化。
【図38】図38は、様々な定温放置段階におけるシリカ粒子のTEM像を示す:(a)定温放置前(76−88nm)、(b)追加の水を添加する前に、1時間、55±5℃で定温放置(82−96nm)、(c)追加の水を添加した後に、6時間、55±5℃で定温放置(74−100nm)。
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、層状ナノ粒子及びそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
一般に、薬物送達を制御することは、非特異的な毒性のために、通常、危険な副作用をもたらすガン化学療法薬の安全性及び臨床効果を改善することができると考えられている。この問題に対する一つの試みとして、腫瘍への細胞毒性薬の選択的送達がある。適当な物理化学的性質を有する直径50ないし250nmのナノ球状粒子が、静脈注射後、1ないし2日間にわたり、全身循環から腫瘍塊中に選択的に分配され得ることが幾つかの研究グループによって確立されている。これは、多くの腫瘍内の微小血管系の異常構造によって生じる。様々な種類のナノ粒子状物質の送達システムが実験的に使用されてきたが、ほとんどは、医療用途におけるそれらの最終使用を妨げる重大な制限を有する。
【0003】
主な制限は以下の通りである:
1)それらの物理的安定性は、腫瘍中(例えば、リポソーム)への蓄積を確実にするための十分な血液循環を得るためには、あまりにも乏しい。
2)大抵の種類のナノ粒子からの放出速度は、腫瘍への濃縮された薬量を得るためには、あまりにも速い。
3)今まで開発した安定なナノ粒子は、非常に低い薬物負荷及び適当な治療投与量を送達するには不十分な遅い放出速度を有する。
4)多くの種類のナノ粒子状物質系は、免疫系(即ち、細網内皮系)によってすぐに検出され、血流から排出され、結果として、少量の薬剤しか腫瘍に到達しない。
【0004】
薬物送達賦形剤として使用される大抵の材料は、天然の有機物、例えば、ポリマー、リポソーム、デンドリマーである。対照的に、セラミック材料は、有機送達マトリックスに対して多くの利点を与える。例えば、シリカ粒子は生物学的に不活性であり、親水性の表面を有する。それらはまた、非毒性で生体適合性が高く、薬剤の分子構造を保つために低温において合成され得る。更に、それらのサイズ及び多孔性は、広い範囲の化学環境において安定なままである。ゾル−ゲル技術、無機室温重合技術(図1参照)は、酸化物マトリックス内に有機分子を上手くカプセル化するために使用されてきた。
【0005】
ここ数年の間に、本発明者達は、制御された放出用途のためのセラミック粒子の製造技術を発明した(国際公開第01/62332号パンフレット)。この技術は、ゾル−ゲル化学及び油中水(W/O)エマルジョン合成の組み合わせを使用して、活性分子をセラミック粒子中にカプセル化することができる。粒径はエマルジョン液滴のサイズによって制御され、放出速度はゾル−ゲル化学によって制御される。この方法を使用して単分散ナノ粒子を製造するために、安定なマイクロエマルジョンが使用される。このような系において、水滴サイズは、通常、最終粒径を制御するために、数ナノメートルないし数十ナノメートルに制限され、重要なオストワルト熟成下でさえも100nm未満に制限される。大きな粒径は、不安定なエマルジョン系を使用して得られ得るが、結果として生じる粒子は、このような用途において、例えば、粒径の正確な制御が望まれるところの腫瘍の受動的なターゲッティングにおいて望ましくない広い粒径分布を有する。このような粒径の正確な制御は、ストーバー法(Stober process)(希釈媒体中での種成長)を使用して達成され得るとはいえ、この種の方法は、ゲル化中の活性物質のカプセル化を確実にするために必要なエマルジョンにおいて達成される区分化を得ることができない。従
って、ストーバー法は、制御された放出用途の粒子の合成のために不適当である。国際公開第01/62332号パンフレットに概説された該技術の他の制限は、遅延、順次又はパルス放出シーケンスを有する粒子を製造することができないことである。一旦、セラミック粒子が液体中に導入されると、それらはすぐに放出を始する。この欠点は、拡散障壁として作用しかつ活性物質が急速に浸出するのを防止する、からのシェル(shell)によって囲まれたコア中に活性分子を置く、コア−シェル構造をつくることによって解消され得る。
【0006】
特定のマトリックスからの活性分子の複雑かつ調整された放出パターンを達成するために、実質的な作業が、ここ10年間行われている。様々な送達賦形剤からの薬剤の遅延放出、持続放出又は順次放出が研究されている。これらの複雑な放出パターンを達成するために、送達系は、送達材料の物理化学的性質の変性又は多層構造を使用すること等の該系の形態の変性に基づく。これらの系の全ては、様々な形態の有機マトリックスを使用する:ポリマー、ゲル、リポソーム、繊維、マイクロカプセル、錠剤等。粒子、より特にはナノ粒子は、この種の用途において研究されていない。
【0007】
調整された構造、光学及び表面特性を有するコア−シェルコロイド材料は、ここ10年間にわたり非常に研究されている。様々な分野におけるこのようなコロイドの潜在用途によって、この分野の研究は行われている。研究努力のほとんどは、様々な材料のシェルのコーティング又は粒子をカプセル化することによって得られた粒子の表面特性を変化させることに集中している。シェルは、通常、粒子表面の電荷、官能性及び反応性を変化させ、かつコロイドコアの安定性及び分散性も増加させ得るとはいえ、コアは、金属酸化物、半導体、量子ドット、磁性粒子、結晶粒子等である。言い換えれば、コアの材料は、シェル材料とは異なり、一般に報告されたコア−シェル構造のほとんどは、セラミックコアとポリマーシェル又はポリマーコアとセラミックシェルである。カプセル化された活性物質を含み、かつ様々な種類のセラミック材料でコーティングされたセラミックコアも文献で報告されている。
【0008】
W/Oマイクロエマルジョンを介し、ゾル−ゲル合成を使用してセラミック粒子を成長させるための幾つかの方法が文献で報告されている。このような方法の1つは、合成パラメーターを調整することによってより大きな粒径を得ることに基づく。粒径は、前駆体濃度、水濃度、pH、温度、イオン強度、反応時間等のパラメーターを調節することによって調整され得るとはいえ、粒子の成長には制限がある。逆ミセルの固有の特性のために、100nmより大きい単分散粒子を製造するために、この方法を使用することは困難である。文献で報告されている他の方法は、粒子種を抽出し、それらを乾燥させ、その後、これらの種を新たなW/Oマイクロエマルジョン中に再分散させ、多くのアルコキシド前駆体を添加し、粒子を成長させることからなる。この方法には、2つの欠点がある。第一に、抽出及び乾燥工程の間、粒子は、不可逆的に、凝集してミクロンサイズの凝集体になり得、第二に、該方法は、液体から固体粒子を回収するために、全収率を著しく減少させ得る更なる分離工程を導入する。また、粒径を増加させるために使用され得る他の方法は、図2に記載される。しかしながら、この場合には、活性分子はコア中にカプセル化されるだけであり得る。更に、粒子成長は、アルコキシド前駆体が反応のために水を消費する必要があるという事実によって制限される。水の量はW/Oマイクロエマルジョンの形成に影響を及ぼすため、制限された量の水しか利用できない。実際、ある程度の水が界面活性剤と結合するため、系に導入される水の全てがゾル−ゲル反応に利用できるわけではない。より多くのアルコキシドが添加されるほど、より多くの水が消費され、更なる加水分解及び成長に少しの水しか使用できない。
【0009】
それ故、ドーパントがナノ粒子のコア及び/又は該コアを囲む1つ以上の層中に置かれ、かつ制限されるところの層状ナノ粒子及びこのようなナノ粒子の製造方法の必要性があ
る。1つ以上のカプセル化された分子種(ドーパント)を有するか、又は、様々な分離配置において又は層(即ち、シェル)中にカプセル化された活性物質(ドーパント)を有するコア−シェルセラミックナノ粒子を製造することができる方法の必要性もある。このような方法は、上記した薬剤の制御放出に加えて、光学式記憶、データ暗号化又は安全インキ等の様々な新規潜在用途に使用され得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
発明の目的
本発明の目的は、上記欠点の少なくとも1つを解消すること、又は実質的に改善することである。更なる目的は、上記必要性の少なくとも1つを少なくとも部分的に満たすことである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の概要
本発明の広い形態において、コア粒子の存在下で触媒を試薬に曝露することを含み、それによって、試薬が反応してコア粒子上に層を形成して、層状ナノ粒子を形成するところの層状ナノ粒子の形成方法が提供される。触媒、試薬及びコア粒子は流体中で処理され得る。流体は液体であり得る。触媒はコア粒子上及び/又はコア粒子中及び/又はコア粒子の周囲に置かれ得る。触媒は、試薬の反応のための触媒であり得る。触媒は、粒子の表面上に置かれ得る。反応は、加水分解、凝縮、重縮合、架橋、重合、沈殿及びゲル化の1種以上を含み得る。コア粒子の周囲にはドーパントが存在し得、試薬の反応は層中にドーパントをカプセル化し得る。コア粒子は層状ナノ粒子のコアを形成し得る。従って、一旦形成された層状ナノ粒子は、層によって少なくとも部分的に囲まれた又はカプセル化されたコア粒子を含み得る。コア粒子は、層によって完全に囲まれ得るか又はカプセル化され得る。コア粒子は、単一粒子又は2種以上の粒子の凝集体であり得る。コア粒子は層と同一の材料又は異なる材料を含み得る。
【0012】
1つの形態において、本発明は、層状ナノ粒子の形成方法であって、
−第一液体中にコア粒子を含む懸濁液を得ること、及び、
−コア粒子の存在下において、触媒を試薬に曝露すること
を含み、
それによって、該試薬が反応して該コア粒子状に層を形成して、層状ナノ粒子を形成するところの方法を提供する。
【0013】
液体中にコア粒子を得る工程は、第一液体中にコア粒子を形成することを含み得る。1つの態様において、粒子は、曝露工程前に、第一液体から分離されない。第一液体は非極性であり得る。
【0014】
曝露工程を1回以上繰り返すことにより多数の層を形成し得る。
曝露工程は、以下の工程、
−触媒を含む第二液体を懸濁液に添加する工程、及び、
−試薬又は該試薬の前駆体を該懸濁液に添加すること
を含み得、
前記試薬が懸濁液に添加されるならば、該試薬は反応してコア粒子上に層を形成し、また、前記試薬の前駆体が懸濁液に添加されるならば、該前駆体は前記試薬に転換され、そして該試薬が反応してコア粒子上に層を形成する。
触媒は、第二液体中に溶解し得る。第二液体は第一液体と非混和性であり得る。触媒は、試薬への前駆体の転換のための触媒及び/又は試薬からの層の形成のための触媒であり得る。
【0015】
他の形態において、本発明は、層状ナノ粒子の製造方法であって、該方法は、
−第一液体中にコア粒子を含む懸濁液を得ること、
−試薬の反応のための触媒を含む第二液体を該懸濁液に添加すること、及び、
−試薬を反応させてコア粒子上に層を形成するために、試薬又は該試薬の前駆体を該懸濁液に添加すること
を含む方法を提供する。
【0016】
他の形態において、本発明は、層状ナノ粒子の形成方法であって、該方法は、
−第一液体中にコア粒子を含む懸濁液を得ること、
−該第一液体と非混和性の第二液体を該懸濁液に添加すること、及び、
−試薬又は該試薬の前駆体を、該第二液体を含む懸濁液に添加すること
を含み、
前記試薬が前記第二液体を含む懸濁液に添加されるならば、該試薬は反応してコア粒子上に層を形成し、また、前記試薬の前駆体が前記第二液体を含む懸濁液に添加されるならば、該前駆体は前記試薬に転換され、そしてこのようにして形成された試薬が反応してコア粒子上に層を形成して、前記層状ナノ粒子を形成するところの方法を提供する。
第二液体は触媒を含み得る。第二液体が触媒を含まないならば、試薬が触媒なしに層を形成することができるようなものであり得る及び/又は前駆体が触媒なしに試薬を形成することができるものであり得る。例えば、第二液体が水性であるならば、前駆体は触媒の不存在下において加水分解するシランであり得る。
【0017】
他の形態において、本発明の方法は、
−第一液体中にコア粒子を含む懸濁液を得ること、
−試薬の反応のための触媒を含む第二液体を該懸濁液に添加すること、及び、
−前駆体を試薬に転換させ、かつ該試薬を反応させてコア粒子上に層を形成するために、該試薬の前駆体を該懸濁液に添加すること
を含む。
【0018】
第二液体は、第一液体と非混和性であり得る。第二液体を添加する工程は、第二液体をコア粒子上、例えばコア粒子の表面上に付着させることを含み得る。前駆体が懸濁液に添加されるならば、前駆体は第二液体と反応して、試薬を形成することができる、即ち、それは、試薬の前駆体であり得る。試薬は、凝縮性物質、架橋性物質又は重合性物質であり得る。試薬の反応は、コア粒子上に固体層又はゲル層を形成させ得、試薬の凝縮、架橋及び/又は重合を含み得る。コア粒子はナノ粒子であり得、直径約5ないし150nmであり得るか又はサブミクロン粒子であり得、直径約500nm未満であり得る。コア粒子及び/又は層は、固体であり得、かつ、多孔性、例えば微小孔性及び/又はメソ多孔性であり得る。第二液体はドーパントを含み得、それによって層形成は層中にドーパントをカプセル化する。第二液体を添加する工程及び試薬を添加する工程を1回以上繰り返すことにより多数の層を形成する。コア粒子及び各層は、独立して、ドーパントを有するか又は有さず、もしも存在するならば、ドーパントは同一であり得るか又は異なり得る。各ドーパントは放出性物質であり得、ナノ粒子から放出可能であり得る。本発明の方法は多数の層状ナノ粒子を含むナノ粒子状物質をつくり得、そのために、懸濁液を得る工程は第一液体中に多数のコア粒子を含む懸濁液を得ることを含む。コア粒子及び独立してナノ粒子状物質の層状ナノ粒子は、均一な形状であり得るか又は不均一な形状であり得る。それらは、単分散であり得るか、又は、狭い粒径分布を有し得るか、又はそれらは広い粒径分布を有し得る。
【0019】
本発明の1つの観点において、層状ナノ粒子の製造方法であって、該方法は、
a)第一非極性液体中にコア粒子、第一界面活性剤及び所望により第一補助界面活性剤
を含む懸濁液を得ること、
b)凝縮物質の凝縮のための触媒を含みかつ所望によりドーパント又はドーパントの組み合わせも含む水性液体を該懸濁液に添加すること、
c)前記第一非極性液体と非混和性の第二非極性液体、第二界面活性剤及び所望により第二補助界面活性剤を添加すること、及び、
d)凝縮性物質が、触媒の存在下において凝縮してコア粒子を少なくとも部分的に囲む層を形成して、層状ナノ粒子が生じるように、凝縮性物質(試薬)を懸濁液に添加すること
を含む方法を提供する。
【0020】
第二非極性液体は第一非極性液体と同一であり得るか又は異なり得る。第二界面活性剤は、第一界面活性剤と同一であり得るか又は異なり得る。第二補助界面活性剤は、第一補助界面活性剤と同一であり得るか又は異なり得る。第二非極性液体、第二界面活性剤及び第二補助界面活性剤は、第一非極性液体+第二非極性液体と第一界面活性剤+第二界面活性剤及び第一補助界面活性剤+第二補助界面活性剤との比がv/v、v/w、w/w、v/mol又はw/molに基づき一定のままであるように添加され得る。懸濁液は、約1ないし70℃の温度で得られ得るか、又は、本発明の方法は、懸濁液を約1ないし70℃、一般に約15ないし40℃、より一般に20ないし30℃の温度、即ち室温にすることを含み得る。分散相も連続相も凍結しない温度ならば、より低い温度も使用され得る。揮発度及び2相の沸点及び界面活性剤の逆転温度に依存して、より高い温度も使用され得る。工程d)は、水性液体中で加水分解して、凝縮性物質を形成することができる加水分解性物質を懸濁液に添加して層状ナノ粒子を形成することを含み得る。工程d)は、水性液体中で加水分解性物質を加水分解する工程及び水性液体中で凝縮性物質を凝縮して層を形成する工程を含み得る。該方法は、十分な時間(例えば、約6ないし96時間)、十分な温度(例えば、約1ないし70℃)において懸濁液を維持して、加水分解性物質を加水分解する工程、そして、所望により凝縮性物質の凝縮する工程も含み得る。工程b)ないしd)は、少なくとも1回繰り返され得るか、又は2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回又は10回以上繰り返され得る。各繰り返しにおいて、水性液体は、ドーパント又はドーパントの組み合わせを含み得るか又はドーパントを含まず、存在するならば、各繰り返しにおけるドーパントは他の繰り返しにおけるドーパントと同一であり得るか又は異なり得る。各繰り返しは層を形成し得、そして各層はドーパントを含み得るか又はドーパントを含まない。各ドーパントは放出性物質であり得るか又は非放出性物質であり得る。コア粒子は直径約5ないし150nmであり得るか又は直径約500nm未満であり得る。各層は約1ないし100nm、又は約1ないし50nm、5ないし75nm又は5ないし30nmの平均厚さを有し得る。該方法は、各層の厚さを制御することができる。コア粒子は多孔性であり得、微小孔性であり得及び/又はメソ多孔性であり得、約0.5ないし20nmの細孔サイズを有し得る。コア粒子はドーパントを含み得、そしてそれは、ある層中の、又はいくつかの層中の、又は全ての層中のドーパントと同一であり得るか又は異なり得る。各繰り返しにおける加水分解性物質は他の繰り返しにおける加水分解性物質と同一であり得るか又は異なり得る。懸濁液及び水性液体の一方又は両方は、界面活性剤を含み得る。本発明の方法は、多数の層状ナノ粒子を含むナノ粒子状物質を製造し得、そのため、懸濁液を得る工程は第一非極性液体中に多数のコア粒子を含む懸濁液を得ることを含む。
【0021】
本発明の方法は、更に以下の工程
e)第一非極性液体から層状ナノ粒子又はナノ粒子状物質を少なくとも部分的に分離する工程、
f)層状ナノ粒子又はナノ粒子状物質を水性液体で洗浄する工程、
g)層状ナノ粒子又はナノ粒子状物質を有機液体で洗浄する工程、
h)層状ナノ粒子又はナノ粒子状物質を乾燥させる工程
の1つ以上を含み得る。
【0022】
工程f)は、室温において行われ得るか、又は80℃程度の温度(例えば、約20、30、40、50、60、70又は80℃)で行われ得る。工程g)の有機液体は、極性又は非極性であり得る。その極性は有機液体中のドーパントの溶解性に基づき選択され得る。工程g)は、室温で行われ得るか、又は70℃程度の温度(例えば、約20、30、40、50、60又は70℃)で行われ得るが、有機液体の沸点以下の温度において行われるべきである。工程f)及びg)は、あらゆる順序において1回以上行われ得るか、又は、その一方又は両方が省略され得る。例えば、該方法は、工程e)及びh)、又は工程e)、f)及びh)、又は工程e)、g)及びh)、又は工程e)、f)、g)及びh)、又は工程e)、g)、f)及びh)、又は工程e)、g)、f)、g)及びh)を(この順序で)含み得るか、又はあらゆる他の順序の工程を含み得る。工程h)は、凝集を防止又は抑制する方法において行われ得、例えば、工程h)は、国際公開第01/62332号パンフレット(Barbe and Bartlett,‘‘Controlled Release Ceramic Particles,Compositions thereof,Processes of Preparation and Methods of Use’’)に記載された凍結乾燥を含み得る。工程h)は、工程e)の後、直接行われ得る。この場合、該工程において存在する多量の界面活性剤は粒子間の物理的接触を防止し得るため、凝集を抑制する。
【0023】
1つの態様において、その中に又は上にドーパントを有する層状ナノ粒子の製造方法であって、該方法は、
a)非極性液体中にコア粒子、界面活性剤及び所望により補助界面活性剤を含む安定な懸濁液を得ること、
b)ドーパント及び凝縮性物質の凝縮のための触媒を含む水性液体を該懸濁液に添加すること、
c)第二非極性液体、第二界面活性剤及び所望により第二補助界面活性剤を添加すること、及び、
d)水性液体中で加水分解して凝縮性物質を形成することができる加水分解性物質を該懸濁液に添加して、その中に又は上にドーパントを有する層状ナノ粒子を形成すること
を含む方法を提供する。
【0024】
懸濁液及び水性液体の1方又は両方は界面活性剤を含み得る。界面活性剤は、水性液体又は懸濁液又はその両方に溶解し得る。
【0025】
他の態様において、本発明の方法は、
a)非極性液体中に分散された水性液滴を含むエマルジョンであって、前記エマルジョンは更に界面活性剤及び所望により補助界面活性剤を含み、前記液滴は加水分解後の第一凝縮性物質の凝縮のための触媒を含むところのエマルジョンを得ること、
b)前記水性液滴中で加水分解して第一凝縮性物質を形成することができる第一加水分解性物質を該エマルジョンに添加することにより非極性液体中にコア粒子の懸濁液を形成すること、
c)第二凝縮性物質の凝縮のための触媒を含む水性液体を該懸濁液に添加すること、
d)第二界面活性剤及び所望により第二補助界面活性剤の溶液を該懸濁液に添加すること、及び、
e)水性液体中で加水分解して第二凝縮性物質を形成することができる第二加水分解性物質を該懸濁液に添加すること
を含む。
【0026】
エマルジョンは油中水(W/O)エマルジョンであり得る。第一加水分解性物質(工程
b))又は第二加水分解性物質(工程e))の添加後、加水分解性物質を加水分解して、それぞれ第一凝縮性物質又は第二凝縮性物質を形成し、その後、触媒の作用のために凝縮してコア粒子を少なくとも部分的に囲む層を形成し得る。第一加水分解性物質及び第二加水分解性物質は、同一であり得るか又は異なり得る。工程c)ないしe)は、少なくとも1回繰り返され得るか、又は2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回又は10回以上繰り返され得、それによって各繰り返しはコア粒子を少なくとも部分的に囲む層を形成する。各繰り返しにおいて、水性液体は、ドーパントを含み得るか又はドーパントを含まず、各繰り返しにおけるドーパントは他の繰り返しにおけるドーパントと同一であり得るか又は異なり得る。エマルジョン及び/又は水性液体はドーパントを含み得、コア粒子及び層からなる群から選択された少なくとも1つの領域は少なくとも1種のドーパントを含み得る。
【0027】
他の態様において、層状ナノ粒子の製造方法であって、該方法は、
a)界面活性剤及び非極性液体及び所望により補助界面活性剤を含む界面活性剤溶液を得ること、
b)第一凝縮性物質の凝縮のための触媒を含み、かつ所望により第一ドーパント(コアドーパント)も含む水性溶液を該界面活性剤溶液に添加すること、
c)該界面活性剤溶液及び水性溶液からエマルジョンを形成すること、
d)水性溶液中で加水分解して第一凝縮性物質を形成することができる第一加水分解性物質を該エマルジョンに添加すること、
e)該第一加水分解性物質からのコア粒子の懸濁液の形成のために十分な時間、十分な温度において該エマルジョンを維持すること、
f)第二凝縮性物質の凝縮のための触媒及び所望により第二ドーパント(層ドーパント)を含む水性液体を該懸濁液に添加すること、
g)第二界面活性剤及び所望により第二補助界面活性剤の溶液を該懸濁液に添加すること、及び
h)水性液体中で加水分解して第二凝縮性物質を形成することができる第二加水分解性物質を該懸濁液に添加して層状ナノ粒子を形成すること
を含む方法を提供する。
【0028】
第一加水分解性物質又は第二加水分解性物質の添加後、加水分解性物質を加水分解して、それぞれ第一凝縮性物質又は第二凝縮性物質を形成し得、そしてそれは、その後、触媒作用のために凝縮し得る。
【0029】
エマルジョンはマイクロエマルジョンであり得る。
他の態様において、層状ナノ粒子の製造方法であって、該方法は、
a)界面活性剤及び非極性液体及び所望により補助界面活性剤を含む界面活性剤溶液を得ること、
b)第一凝縮性物質の凝縮のための触媒を含み、かつ所望により第一ドーパントも含む水性溶液を該界面活性剤溶液に添加すること、
c)界面活性剤溶液及び水性溶液からエマルジョンを形成すること、
d)水性溶液を加水分解して第一凝縮性物質を形成することができる第一加水分解性物質を該エマルジョンに添加すること、
e)該第一加水分解性物質からのコア粒子の懸濁液の形成のために十分な時間、十分な温度において該エマルジョンを維持すること、
f)第二凝縮性物質の凝縮のための触媒及び所望により第二ドーパントを含む水性液体を該懸濁液に添加すること、
g)第二界面活性剤及び所望により第二補助界面活性剤の溶液を該懸濁液に添加すること、
h)水性液体中で加水分解して第二凝縮性物質を形成することができる第二加水分解性
物質を該懸濁液に添加して層状ナノ粒子を形成すること、
i)非極性液体から層状ナノ粒子を少なくとも部分的に分離すること、
j)層状ナノ粒子を有機液体で洗浄すること、
k)層状ナノ粒子を水性液体で洗浄すること、
l)層状ナノ粒子を有機液体(工程j)の有機液体と同一であり得るか又は異なり得る)で洗浄すること、及び、
m)層状ナノ粒子を乾燥させること
を含む方法を提供する。
【0030】
本発明の他の観点において、コア粒子(即ち、コア)及び前記コア粒子を少なくとも部分的に囲む1つ以上の層を含む層状ナノ粒子を提供する。層状ナノ粒子は球状であり得る。コア粒子は固体であり得、多孔性の固体、例えば微小孔性又はメソ多孔性の固体であり得、球状又は非球状であり得る。コアの平均径は約5ないし500nmであり得る。各層は、独立して、固体層又はゲル層であり得る。コア及び1つ以上の層からなる群から選択される層状ナノ粒子の少なくとも1つの領域は1つのドーパント又は多数(例えば、2、3、4、5又は5つ以上)のドーパントを含み得る。従って、コアドーパント及び/又は1つ以上の層ドーパントが存在し得る。各ドーパントは、前記ドーパントを含む領域に実質的に均一に分布され得る。従って、例えばナノ粒子がコア及び単層を含むならば、該コアはコアドーパントを含み、かつ該層は層ドーパントを含み、その後、該コアドーパントは該コア中に実質的に均一に分布され得、かつ該層ドーパントは該層中に実質的に均一に分布され得る。層状ナノ粒子は微小孔性又はメソ多孔性のセラミックナノ粒子であり得る。コア及び1つ以上の層は、互いに独立して、微小孔性又はメソ多孔性であり得る。各層及び所望によりコア粒子は、独立して、加水分解されたシラン、例えば加水分解されたアルコキシシランを含み得、シリカ及び/又はポリシルセスキオキサンを含み得る。各層及び所望によりコア粒子は、独立して、セラミック又は酸化物、例えば金属酸化物を含み得る。1つ以上のコア及び1つ以上の層がドーパントを含むならば、その後、これらの各々のドーパントは、同一であり得るか又は異なり得る。各ドーパントは、独立して、放出性又は非放出性であり得る。層状ナノ粒子は、1つ以上の放出性ドーパントの順次放出及び/又は遅延放出が可能であり得る。層状ナノ粒子は約10ないし500nmの平均径を有し得る。コア及び各層は、独立して、微小孔性又はメソ多孔性であり得、約0.5ないし10nmの細孔サイズを有し得る。各層は、独立して、約1ないし50nmの平均厚さを有し得る。ドーパントは無機物質又は有機物質であり得る。それは、塩又は染料、触媒、活性材料又は活性物質、例えば生物学的に活性な物質(例えば、タンパク質、多糖類、酵素、薬剤、ペプチド等)、磁性物質、放射性物質、放射性トレーサー又は特定の他の種類のドーパントであり得る。
【0031】
1つの態様において、第一ドーパントを含む多孔性コア粒子及び前記コア粒子を少なくとも部分的に囲む第二ドーパントを含む多孔性層を含む層状ナノ粒子を提供する。第一ドーパント及び第二ドーパントの少なくとも1方は、層状ナノ粒子から放出可能であり得る。従って、ナノ粒子は、第一放出性ドーパントを含む多孔性コア粒子及び前記コア粒子を少なくとも部分的に囲む第二放出性ドーパントを含む多孔性層を含み得る。ナノ粒子は、第二放出性ドーパント及び第一放出性ドーパントを、順次放出可能であり得る。
【0032】
他の態様において、第一放出性ドーパントを含む多孔性コア粒子、前記コア粒子を囲み、放出性ドーパントを含まない第一多孔性層及び該第一多孔性層を少なくとも部分的に囲む第二放出性ドーパントを含む第二多孔性層を含む層状ナノ粒子を提供する。ナノ粒子は、第二ドーパントと第一ドーパントの放出間の遅延時間を用いて、第二放出性ドーパント及び第一放出性ドーパントを順次放出することができる。遅延時間の長さは、第一層の厚さ及び多孔率に依存し得る。
【0033】
他の態様において、放出性ドーパントを含まないコア粒子及び前記コア粒子を少なくとも部分的に囲む放出性ドーパントを含む多孔性層を含む層状ナノ粒子を提供する。コア粒子は、非放出性ドーパント、例えばナノ粒子を着色するための非放出性顔料を含み得る。コアは、多孔性又は非多孔性であり得る。コアは、層状ナノ粒子を磁性にするために、磁性物質を含み得る。
【0034】
他の態様において、
放出性ドーパントを含む又は所望により放出性ドーパントからなる非多孔性コア粒子及び放出性ドーパントを含まず、前記コア粒子を少なくとも部分的に囲む多孔性層を含む層状ナノ粒子を提供する。ナノ粒子は、遅延時間の後、ドーパントを放出することができる。遅延時間の長さは、多孔性層の厚さ及び多孔率に依存し得る。層は、非放出性のドーパント、例えばナノ粒子を着色するための非放出性顔料を有し得る。
【0035】
本発明に従った層状ナノ粒子を多数含むナノ粒子状物質も提供する。ナノ粒子状物質は、単分散であり得るか又は狭い粒径分布を有し得る。
【0036】
本発明の方法によってつくられた層状ナノ粒子も提供する。本発明に従った又は本発明の方法によってつくられた層状ナノ粒子を多数含むナノ粒子状物質も提供する。
【0037】
本発明の他の観点において、本発明に従った層状ナノ粒子又は本発明に従った多数の層状ナノ粒子を流体に曝露することを含む、該流体に放出性物質を送達するための方法であって、該層状ナノ粒子はその中及び/又は上に(例えば、少なくとも1つの層又はコア粒子に)放出性物質を有し、かつ該流体は前記層状ナノ粒子から前記放出性物質を少なくとも部分的に放出することができるところの方法を提供する。
【0038】
流体は、水性流体、例えば体液であり得るか、又は非水性液体、例えば有機溶媒であり得る。曝露は、かき混ぜ、振盪、攪拌、超音波処理又は別の手段を用いて層状ナノ粒子と流体を攪拌することを含み得る。方法は、流体中に放出性物質を放出することを含み得、かつ制御された方法において放出性物質を放出することを含み得る。放出性物質の放出は、制御された様々な放出であり得、放出性物質の放出速度は、制御された方法及び/又は予め決められた方法によって変化する。
【0039】
1つの態様において、放出性物質は薬剤であり、流体は体液、例えば患者の血液である。この態様は、患者に薬剤を投与するための方法であって、前記方法は、本発明に従った層状ナノ粒子又は多数の本発明に従った層状ナノ粒子を患者、例えば患者の血液に送達することを含み、該層状ナノ粒子はその中又は上に前記薬剤を有するところの方法を含む。薬剤は、例えば抗癌剤であり得る。層状ナノ粒子は約10ないし500nm又は約50ないし300nmの粒径を有し得る。送達は静脈(IV)送達であり得、ナノ粒子を含む懸濁液を患者に注射することを含み得る。懸濁液は、懸濁流体を含み得る。注射のために適当な懸濁流体は、よく知られており、生理食塩水、リンガー溶液、グルコース溶液、フルクトース溶液、デキストロース溶液、アミノ酸溶液、タンパク質加水分解物、乳酸ナトリウム溶液又は特定の他の水性液体を含み得る。患者に薬剤を投与するための本発明に従った層状ナノ粒子の使用であって、前記層状ナノ粒子がその中及び/又は上に薬剤を有するところの使用もまた提供する。
【0040】
本発明の他の観点において、流体に放出性物質を送達するために使用される本発明に従った層状ナノ粒子又は多数の本発明に従った層状ナノ粒子を提供する。
【0041】
本発明はまた、混合物の少なくとも1つの成分の選択的収着のための、本発明に従った層状ナノ粒子の使用も提供する。本発明は、更に、混合物の少なくとも1つの成分の選択
的収着のために使用される層状ナノ粒子も提供する。
【0042】
図面の簡単な説明
本発明の好ましい形態を、添付した図面を参照して一例として説明する:
図1は、塩基の存在下におけるゾル−ゲル反応順序を示す。
図2は、ドーパントがコアのみに含まれるところの多層ナノ粒子の製造方法のフローチャートを示す。
図3は、多数のドーパントを有する多層ナノ粒子の製造方法のフローチャートを示す。
図4は、NP−9/1−ペンタノール/シクロヘキサン/NH4OH/TEOS系中で製造した粒子のTEM顕微鏡写真を示す(平均径:55±5nm)。
図5は、コア−シェル構造を有する不均一なシリカ粒子のTEM像を示す。
図6は、シリカ粒子上の界面活性剤残渣のTGA/DTA測定のグラフを示す。
図7は、以下のマイクロエマルジョン系中で製造したシリカ粒子のTEM顕微鏡写真を示す:a)NP−5/シクロヘキサン/NH4OH/TMOS、b)NP−9/1−ペンタノール/シクロヘキサン/NH4OH/TMOS及びc)トリトン X−100/トルエン/NH4OH/TMOS。
図8は、TMOSの逐次添加による粒子成長を説明するTEM顕微鏡写真を示す:a)コア(22nm)、b)1.2mmolのTMOS(27nm)の第1添加、c)第2添加(31nm)、d)第3添加(33nm)、e)第4添加(36nm)。
図9は、TEOSの逐次添加による粒子成長を説明するTEM顕微鏡写真を示す:a)コア(50nm)、b)1.2mmolのTEOS(83−92nm)の第1添加、c)第2添加(91−106nm)、d)第3添加(102−120nm)、e)第4添加(108−129nm)、f)第5添加(128−146nm)。
図10は、新規成長プロセスの原理を説明する概略図を示す。
図11は、コア−シェル構造のTEM顕微鏡写真を示す:a)明視野像(暗い領域は重元素を示す。)、b)暗視野像(明るい領域は重元素を示す。)。
図12は、ビーム像を示すコア−シェル構造のTEM顕微鏡写真を示す:a)明視野像、b)EDX線形後の暗視野像。
図13は、コア−シェル粒径上に添加する方法の影響を説明する顕微鏡写真を示す。
図14は、以下のものを使用して合成した粒子のTEM顕微鏡写真を示す:a)4サイクル(コア+4つのシェル)及びb)5サイクル(コア+5つのシェル)。
図15は、希釈度(新しいエマルジョンの体積/種エマルジョンの体積)がA)2、B)3、C)4、D)5のところの様々な希釈度を使用した粒子成長のTEM顕微鏡写真を示す。
a)サンプル1、銅をドープしたシリカコア、追加添加した水性相:Cu(NH3)42+の形態でCu10.14mg/mLを有するNH4OH 1.333mol/L。
b)サンプル2、銅をドープしたシリカコア、追加添加した水性相:銅なしのNH4OH 1.333mol/L。
図16は、種エマルジョンと新たなエマルジョンの混合において様々な方法を使用して製造した粒子のTEM顕微鏡写真を示す。
図17は、TEOSを使用して形成した粒子コア及びTMOSを使用して形成したシェルのTEM顕微鏡写真を示す(図5において使用したものと同一の合成条件)。
図18は、OrmosilシェルでコーティングしたシリカコアのTEM顕微鏡写真を示す。
図19は、表2に列挙した組成を有するサンプルのTEM顕微鏡写真を示す。
図20は、表1に列挙した組成を有し、かつアセトン中に懸濁させたサンプルの写真を示す。
図21は、表3に列挙した組成を有するサンプルのTEM顕微鏡写真を示す。
図22は、表3に列挙した組成を有し、かつアセトン中に懸濁させたサンプルの写真を示す。
図23は、表4に列挙した組成を有するサンプルの写真を示す:a)凍結乾燥(SiO2/NaCl 質量比:15%)、b)ミリ−Q(Milli−Q)水中に懸濁。
図24は、懸濁液中のIn2O3ナノ結晶及びシリカシェルでコーティングしたIn2O3ナノ結晶の顕微鏡写真を示す。
図25は、中性水中のCuPC(黒色の線、λmax:556nm)及びRubpy(灰色の線,λmax:390nm)のUV−可視スペクトルを示す。
図26は、32日後のSBF中のサンプルLNK−822(黒色の線、λmax:615nm)及びLNK−824(灰色の線、λmax:450nm)のUV−可視スペクトルを示す。
図27は、以下のものの放出速度曲線を示す:a)サンプルLNK−822(37℃のSBF 20mL中に凍結乾燥粉末 1.022g、λmax=615nm)、b)サンプルLNK−824(37℃において、SBF 20mL中に凍結乾燥粉末 0.6055g、λmax=450nm)、ここで、凍結乾燥粉末は、SiO2 15質量%及びNaCl
85質量%を含む。
図28のaないしfは、本発明に従った様々な層状ナノ粒子の図表示を示す。
図29は、UV/可視吸収を使用して測定した以下のものの放出速度曲線を示す;
サンプル:(A)LNK−879及び(B)LNK−880。
凍結乾燥粉末2gを37℃においてSBF 20mL中に懸濁させた(ここで、凍結乾燥粉末は、SiO2 15質量%及びNaCl 85質量%を含む。)。
▲CuPC、λmax=615nm、■Rubpy、λmax=450nm。
図30は、より多くのエマルジョン成分の添加によりORMOSIL表面を有する染料カプセル化シリカナノ粒子の合成フローチャートを示す。
図31は、より多くのエマルジョン成分を添加することにより製造したORMOSIL表面を有するシリカナノ粒子のTEM像を示す:(a)TEOSによる種、(b)混合前駆体による種、(c)TEOSによるコア−シェル粒子、(d)及び(e)ORMOSILシェルを有するシリカコア、(f)表6に詳述したORMOSILコア及びシェル。
図32は、様々な界面活性剤濃度におけるシリカ粒子のTEM像を示す:(a)、(b)NP−9 0.2mol/L及び1−ペンタノール 0.2mol/Lによってつくられた種粒子、74−86nm、(c)1−ペンタノールなしでNP−9 0.4mol/Lによってつくられたコア+2−層粒子、109−123nm、(d)1−ペンタノールなしでNP−9 0.4mol/Lによってつくられたコア+3−層粒子、132−152+20nm、(e)1−ペンタノールなしでNP−9 0.6mol/Lによってつくられたコア+2−層粒子、106−126nm、(f)1−ペンタノールなしでNP−9
0.6mol/Lによってつくられたコア+3−層粒子、132−145+20nm、(g)NP−9 0.4mol/L、1−ペンタノール 0.4mol/Lによってつくられたコア+2−層粒子、100−131nm、(h)NP−9 0.4mol/L、1−ペンタノール 0.4mol/Lによってつくられたコア+3−層粒子、128−179nm。
図33は、本発明に従った2つの成長技術を組み合わせることによる層状シリカナノ粒子の製造フローチャートを示す。
図34は、[H2O]/[界面活性剤]=6のモル比において2つの成長技術を組み合わせることにより製造したシリカ粒子のTEM像を示す:(a)種:50−60nm、TEOS 1.2mmol、H2O 36mmol、[H2O]/[TEOS]=30、(b)コア+1−層:61−76nm、TEOS 4.8mmol、H2O 36mmol、[H2O]/[TEOS]=7.5、(c)コア+2−層:95−113nm、TEOS
9.6mmol、H2O 72mmol、[H2O]/[TEOS]=7.5、(d)コア+3−層:100−135nm、TEOS 14.4mmol、H2O 72mmol、[H2O]/[TEOS]=5、(e)コア+4−層:136−166nm、TEOS
24mmol、H2O 144mmol、[H2O]/[TEOS]=6、(f)コア+5−層:146−172nm、TEOS 33.6mmol、H2O 144mmol、
[H2O]/[TEOS]=4.3、(g)コア+7−層:200−240nm、TEOS 52.8mmol、H2O 216mmol、[H2O]/[TEOS]=4.1。
図35は、[H2O]/[界面活性剤]=9のモル比において2つの成長技術を組み合わせることにより製造したシリカ粒子のTEM像を示す:(a)種:50−61nm、TEOS 1.2mmol、H2O 54mmol、[H2O]/[TEOS]=45、(b)コア+1−層:70−87nm、TEOS 4.8mmol、H2O 54mmol、[H2O]/[TEOS]=11.3、(c)コア+2−層:95−117nm、TEOS 9.6mmol、H2O 162mmol、[H2O]/[TEOS]=16.9、(d)コア+3−層:158−172nm、TEOS 14.4mmol、H2O 162mmol、[H2O]/[TEOS]=11.3、(e)コア+4−層:2つのサイズのナノ粒子、TEOS 24mmol、H2O 378mmol、[H2O]/[TEOS]=15.8、(f)コア+5−層:広範囲のサイズのナノ粒子、TEOS 33.6mmol、H2O 378mmol、[H2O]/[TEOS]=11.3。
図36は、[H2O]/[界面活性剤]=6のモル比において高温で合成したシリカナノ粒子のTEM像を示す:(a)35−50nm、35±2℃において20時間老化、(b)48−62nm、35±2℃において48時間老化、(c)37−52nm、50±2℃において20時間老化、(d)48−70nm、50±2℃において48時間老化。
図37は、[H2O]/[界面活性剤]=8のモル比において高温で合成したシリカナノ粒子のTEM像を示す:(a)種:35−68nm、室温、35±2℃において48時間老化:コア−シェル粒子、(b)75−100nm、35±2℃において20時間老化、(c)78−113nm、35±2℃において28時間老化、(d)81−117nm、35±2℃において48時間老化、(e)78−105nm、50±2℃において20時間老化、(f)80−107nm、50±2℃において28時間老化、(g)86−120nm、50±2℃において48時間老化。
図38は、様々な定温放置段階におけるシリカ粒子のTEM像を示す:(a)定温放置前(76−88nm)、(b)追加の水を添加する前に、1時間、55±5℃で定温放置(82−96nm)、(c)追加の水を添加した後に、6時間、55±5℃で定温放置(74−100nm)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
好ましい態様の詳細な説明
本発明は、無機/有機粒子、コアシェル粒子、及び、特定の態様において、セラミックコア及び1つ以上のセラミック層又はシェルを有する、セラミック材料からつくられた粒子に関する。本発明は、様々な多孔性金属酸化物シェル及び非多孔性又は多孔性(酸化物又は非酸化物)コア、例えばシリカに適用可能である。
シリカコア−シェル粒子は以下のものに分類され得る:
・染料を組み込まれたシリカ粒子。
・金属クラスターをコーティングされたシリカ。
・染料を組み込まれたコア−シェル有機シリコン。
【0044】
第一及び第三分類は、カプセル化及びコア−シェル粒子からの放出において特に興味深いものである。本発明の粒子は、ドーパントが如何なる層にもドープされ得るという点で、従来技術のものとは異なる。従って、態様の多くにおいて、本発明の粒子は、層の至るところに均一に分布され、かつ放出可能な1種以上のドーパントを含むシェル及び層を少なくとも1つ有する多層ナノ粒子であると考えられ得る。
【0045】
多層粒子の各層の各々の組成を調整することを可能にするために、ミセルに貯蔵した組成物を変化させる能力を利用することができる。これは、ここに記載されるように、界面活性剤/水及び試薬前駆体を順次添加することによって達成され得る。同一のコア−シェル構造を有する均一な多層粒子の製造をもたらし、異なる組成を有する粒子の発生をもた
らさないエマルジョン組成物(即ち、三元状態図:界面活性剤−油−水において同一のスポット)を維持することは重要であり得る。従って、本発明は、多層状粒子の製造を容易にするエマルジョン及び前駆体の周期的な添加を提供する。
【0046】
本願明細書は、油中水マイクロエマルジョン(W/O)系を通した層状ナノ粒子の製造のためのゾル−ゲルプロセスを開示する。ナノ粒子は多層であり得る。結果として生じるナノ粒子は、ナノ粒子内の様々な場所にカプセル化される1種以上の活性分子、封入剤及び/又はドーパントを含み得、そしてそれは制御された方式において放出され得る。ナノ粒子は、セラミックナノ粒子であり得る。それらは、(様々な)活性分子(ドーパント)及び(様々な)前駆体(又は有機的に変性された前駆体)並びに新たなW/Oエマルジョンを順次添加することによって合成され得る。粒径並びにコア径及び各層の厚さの全ては前駆体の添加量を制御することによって調整され得る。各層の厚さは、約1ないし50nmに制御され得る。前駆体は加水分解性物質、例えば加水分解性シランであり得る。それは、加水分解して試薬を形成することが可能であり得る。前駆体は、シリコンアルコキシドから他の金属アルコキシド又は金属アルコキシドの混合物に変化し得る。多層状粒子中のそれらの位置に依存して、活性分子は順次又は分割方式(例えば、放出−放出なし−放出)において放出され得る。従って、例えば、ナノ粒子がコア内及び外層中に放出性物質を有し、外層及びコア間の内層が放出性物質を有さないように構成されるならば、その後の放出性物質の放出は、放出−放出なし−放出工程を順次生じ、段階的に進められ得る。
【0047】
本発明の方法において、コア粒子はその場で形成され得るか、又はそれらは予め形成された粒子として添加され得る。コア粒子はあらゆる種の粉末、例えばシリカ粒子(例えば、ヒュームド・シリカ、コロイドシリカ又はシリカ・フューム)、金属酸化物粒子(例えば、酸化インジウム)、混合金属酸化物粒子(例えば、酸化インジウムをドープしたシリカ粒子)、半導体粒子、量子ドット、磁性粒子、結晶粒子又は特定の他の種類の粒子であり得る。コア粒子は、球状又は立方体であり得るか、又は三角柱、四面体、多面体(例えば、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20又は20以上の面を有する)、フレークの形状又は不規則形状であり得る。コア粒子は、結晶質又は非晶質であり得るか、又は一部結晶質であり得る。それは、多孔性又は無孔性であり得る。コア粒子は、約5ないし500nm、又は約5ないし450nm、5ないし400nm、5ないし300nm、5ないし200nm、5ないし100nm、5ないし50nm、5ないし20nm、10ないし500nm、10ないし400nm、10ないし200nm、10ないし100nm、50ないし500nm、50ないし400nm、50ないし200nm、50ないし100nm、100ないし500nm、100ないし400nm、100ないし200nm、200ないし500nm又は300ないし500nmの直径、例えば、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450又は500nmの直径又は特定の他の直径を有し得る。非極性液体(又は、2種以上が異なる工程において使用されるならば、独立した各々の非極性液体)は、5ないし16個の炭素原子、又は5ないし12個の、5ないし8個の、6ないし12個の又は6ないし10個の、又は、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15又は16個の炭素原子を有し得る炭化水素であり得る。それは、直鎖の、枝分かれした又は環状の脂肪族又は芳香族であり得る。それは、炭化水素の混合物であり得る。さもなくば、それは、特定の他の非極性液体、例えば、ハロアルカン又はハロ芳香族の液体又は低粘度シリコン、例えば、低粘度ジメチルシリコン又は低粘度フルオロシリコンであり得る。低粘度シリコンは線状シリコン又は環状シリコンであり得る。シリコンの粘度は、約100cS以下、又は約50、20、10、5、2又は1cS以下であり得、約0.5、1、2、3、4、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90又は100cSであり得る。線状シリコンはトリメチルシロキシ末端シリコンであり得る。環状シリコンは、D3、D4、D5、D6、D7又はD8環状シリコンであり得るか、又は
これらの2種以上のあらゆる混合物であり得る。使用され得る典型的な炭化水素はシクロヘキサンである。非極性液体は再利用可能であり得る。触媒は、ゾル−ゲルプロセスのための触媒であり得る。それは、縮合性物質の縮合のための触媒であり得、例えば、強酸(例えば、硫酸、塩酸)、有機酸(例えば、酢酸、トリフルオロ酢酸)、塩基(例えば、KOH、NaOH、水性アンモニア等の水酸化物)、アミン(例えば、APTES(アミノプロピルトリエトキシシラン)等のアミンで官能化されたORMOSIL)、フッ化物(例えば、HF、NaF、KF、NH4F)又は遷移金属アルコキシド(例えば、チタンアルコキシド、バナジウムアルコキシド)であり得る。水性液体中の触媒の濃度は、約0.1ないし5Mであり得、約0.1ないし2、0.1ないし1、0.1ないし0.5、0.5ないし5、1ないし5、3ないし5、0.5ないし2又は1ないし2Mであり得、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5又は5Mであり得る。水性液体のpHは、約8ないし14、又は約8ないし13、8ないし12、8ないし11、8ないし10、9ないし13、10ないし13、11ないし13、9ないし12、10ないし12、又は11ないし12であり得、約8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5又は14であり得る。v/vに基づく水性液体とコア粒子の懸濁液の比は、約0.1ないし10%、又は約0.1ないし5、0.1ないし2、0.1ないし1、0.5ないし10、1ないし10、5ないし10、0.5ないし5、0.5ないし2又は1ないし2%であり得、約0.1、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5又は10%であり得る。加水分解性物質と水性液体の比は、w/w、w/v、v/v又はモルに基づき約0.5ないし10%であり得、w/w、w/v、v/v又はモルに基づき約0.5ないし5、0.5ないし2、0.5ないし1、1ないし10、5ないし10又は2ないし5%であり得、w/w、w/v、v/v又はモルに基づき約0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5又は10%であり得る。加水分解性物質は、加水分解性の金属物質、例えば加水分解性シリコン、アルミニウム又はチタン物質であり得る。加水分解性物質は、アルコキシド、例えば金属アルコキシド(例えば、シリコンアルコキシド、チタンアルコキシド又はアルミニウムアルコキシド)であり得る。アルコキシドは炭素原子数1ないし6の直鎖又は枝分かれ鎖のアルコキシドであり得るか、又はこのようなアルコキシドの混合物であり得る。さもなくば、加水分解性物質は、アリールオキシド、例えばフェノキシド、シリコアルカノエート、例えばシリコンプロピオネート及びアミノシラン、アミドシラン又は特定の他の加水分解性シランであり得る。金属は、1分子当り平均して2ないし4個の加水分解性基を有し得、1分子当り平均して約2、2.5、3、3.5又は4個の加水分解性基を有し得る。適当な加水分解性物質は、トリ−及びテトラ−アルコキシシラン、例えばテトラメトキシシラン(TMOS)、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラブトキシシラン(TBOS)、テトラプロポキシシラン(TPOS)、メチルトリメトキシシラン(MTMS)、メチルトリエトキシシラン(MTES)、エチルトリエトキシシラン(ETES)、エチルトリメトキシシラン(ETMS)、オクチルトリエトキシシラン(OTES)、オクチルトリメトキシシラン(OTMS)、ヘキサデシルトリメトキシシラン(HDTMS)、ヘキサデシルトリエトキシシラン(HDTES)、オクタデシルトリメトキシシラン(ODTMS)、オクタデシルトリエトキシシラン(ODTES)並びにメチルポリシリケート(MPS)、エチルポリシリケート(EPS)、ポリジエトキシシラン(PDES)、ヘキサメチルジシリケート、ヘキサエチルジシリケート又は官能トリアルコキシシラン、例えばメタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン(PTES)、フェニルトリメトキシシラン(PTMS)、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GLYMO)、グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(GLYEO)、メルカプトプロピルトリエトキシシラン(MPTES)、メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPTMS)、アミノプロピルトリメトキシシラン(APTMS)、アミノプロピルトリエトキシシラン(
APTES)、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン(DATMS)、3−[2−(2−アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピルトリメトキシシラン(TATMS)、[2−(シクロヘキシル)エチル]トリエトキシシラン(CHEETES)、ビニルトリメトキシシラン(VTMS)、ビニルトリエトキシシラン(VTES)及びこれらの混合物を含むが、これらに制限されない。加水分解性物質は、加水分解して縮合性物質を生成することができる。縮合性物質は、上記加水分解性物質の一部加水分解物又は完全な加水分解物のいずれかであり得る。それは、シラノール種であり得、1分子当り1、2、3又は4個の、又は1分子当り4個より多くのシラノール基を有し得る。それは、1分子当り1個以上のシラノール基を有する、少なくとも部分的に縮合した物質であり得る。それは、シラノール種の混合物であり得る。従って、コア及び1つ以上の層は、独立してシリカ、ポリシルセスキオキサン、アルミナ、チタニア又は特定の他の金属酸化物を含み得る。加水分解性物質が有機官能であるならば、これは、同様に有機官能である縮合性物質をもたらし得、最終的に、コア及び層の1つ以上において同様に有機官能、所望により選択的有機官能であるナノ粒子をもたらし得る。これは、有機官能コア及び/又は層におけるドーパント又は他の物質に対する選択的親和性を与え得る。さもなくば、それは、所望の化合物の前駆体を有するコア及び該前駆体を所望の化合物に転換するための触媒及び/又は試薬を有する該コアを囲む層を1つ以上有する粒子をもたらすことを可能にし得る。使用において、前駆体はコアから放出され、粒子から放出するための触媒及び/又は試薬によって所望の化合物に転換され得る。これは、所望の化合物が安定性を制限される場合、及び/又は、前駆体が所望の化合物より安定である場合の特定の使用であり得る。
【0048】
加水分解するための十分な温度は、約1ないし70℃、又は約1ないし50℃、1ないし30℃、1ないし20℃、1ないし10℃、1ないし5℃、10ないし50℃、10ないし40℃、10ないし30℃、10ないし20℃、15ないし40℃、20ないし50℃、50ないし70℃、30ないし50℃、20ないし40℃又は20ないし30℃であり得、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65又は70℃であり得る。十分な時間は、約6ないし96時間、又は約6ないし72時間、6ないし48時間、6ないし24時間、12ないし96時間、24ないし96時間、36ないし96時間、48ないし96時間、60ないし96時間、12ないし72時間、24ないし60時間、36ないし60時間又は36ないし48時間であり得、約6、12、18、24、36、48、60、72、84又は96時間であり得るか、又は96時間以上であり得る。コア粒子は約1ないし70℃の温度で得ることができるか、又は約1ないし70℃、約10ないし70℃、又は約1ないし10℃、又は約1ないし50℃、又は約1ないし20℃、又は約10ないし50℃、又は約10ないし40℃、10ないし30℃、10ないし20℃、20ないし50℃、50ないし70℃、30ないし60℃、30ないし50℃、20ないし40℃又は20ないし30℃の温度で得ることができ、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65又は70℃であり得る。
【0049】
ドーパントは、塩(例えば、テトラアミン銅等の金属錯イオンを含む)、染料、触媒、生物学的に活性な物質(例えば、タンパク質、多糖類、酵素、薬剤、ペプチド等)、磁性物質、放射性トレーサー又は他の放射性物質又は特定の他の種類のドーパントであり得る。ナノ粒子内の様々な位置において様々なドーパントが存在し得る(例えば、コア及び1種以上の層の各々は異なるドーパントを含み得る)。同一のドーパントがナノ粒子内の様々な位置に配置され得る(例えば、コア及び1種以上の層の1つは同一のドーパントを含み得る)。各ドーパントは放出性又は非放出性であり得る。1種以上のドーパントが存在するならば、少なくとも1種のドーパントが放出性であり得、かつ少なくとも1種のドーパントが非放出性であり得るか又は全てのドーパントが放出性であり得るか又は全てのドーパントが非放出性であり得る。コア又は層中のドーパントは、前記コア又は層の至ると
ころに分布され得、かつ前記コア又は層の至るところに均一に又は不均一に分布され得る。ドーパントについて言及すると、多数のドーパント(例えば、2、3、4、5又は5種以上のドーパント)を含み得ると理解され得る。コア粒子又はいずれかの層が多数のドーパントを含むならば、それらは全て放出性であり得るか、又は、少なくとも1種は放出性であり得、かつ少なくとも1種は非放出性であり得るか、又は、それらは全て非放出性であり得る。例えば、層は、同時に放出される放出性ドーパントの混合物を含み得るか、又は、層に多数の性質又は複合材料特性(例えば、2種の異なる染料が単層中に配合される場合のような)を付与する非放出性ドーパントの混合物(例えば、染料と磁性ドーパント)を含み得るか、又は、非放出性ドーパント(例えば、染料)と共に、粒子を囲む周囲へ放出するための放出性ドーパントを含み得る。
【0050】
コア粒子中にドーパントが存在するならば、ドーパントはコア粒子の至るところに実質的に均一に分布され得る。層中又はいずれかの層中(層が1つ以上存在する場合)において、ドーパントは、該層の至るところに実質的に均一に分布され得る。
【0051】
例えば、層状ナノ粒子は、非放出性染料(例えば、赤色)を有するコア粒子を含み得、かつ該コア粒子は、異なる色(例えば、緑色)の放出性染料を含む多孔性層によって囲まれ得る。従って、層状ナノ粒子は、放出性染料の色(例えば、緑色)又は放出性染料と非放出性染料の合成色(例えば、褐色)を選択し得る。層状ナノ粒子が非放出性染料の色(例えば、赤色)を選択する場合、その後、使用者に放出性染料が放出されたという事実を警告し得る。特定の例において、多孔性層は、放出性染料に加えて、第二放出性ドーパント(例えば、化学反応のための試薬)を含む。層状ナノ粒子が非放出性染料の色を選択する場合、使用者に、放出性ドーパントの継続的な放出を確実にするために、更なるナノ粒子を添加する必要があるという事実を警告し得る。
【0052】
コア粒子は、例えば、非放出性染料として作用し得る量子ドットを含み得る。コア粒子は、あらゆる適当な粒子、例えば多孔性又は無孔性の粒子であり得る。それはナノ粒子であり得る。
【0053】
ドーパントは、固定化試薬又は触媒を含み得る。例えば、ナノ粒子はコア粒子及び該コア粒子を囲む層を含み得る。コア粒子は、ナノ粒子の周囲に放出される化合物(例えば、薬剤)の前駆体であるドーパント(例えば、プロドラッグ)を含み得、層は、該ドーパントを該化合物に転換するための触媒を含み得る。ナノ粒子が適当な環境に曝露される場合、ドーパントは、層を経てコア粒子から出て、ここで、それは触媒の影響下において化合物に転換され得、その後、該化合物はナノ粒子から放出され得る。これは、長期の安定性が制限される化合物の場合において有用であり得る。
【0054】
層は、非放出性ドーパントの形態において又は層それ自体の物質形態において放出速度調節剤を含み得る。放出速度調節剤は、層中に又はコア粒子に近い層中に又はコア粒子中に配合された放出性ドーパントの放出速度を調節することができる。放出速度調節剤は、放出性ドーパントの放出を加速又は減速することができる。例えば、コアは酸性基を有する放出性ドーパントを含み得る。コアを囲む層は、放出性ドーパントの放出を遅らせるアミン基を含み得る。
【0055】
コア又は1つ以上の層は、非放出性ドーパントの形態において又は層それ自体の物質形態において吸着剤を含み得る。例えば、コア粒子又は層は、酸性物質の吸着のために、非放出性アミンドーパントを含み得るか、又は、コア粒子又は層の材料がアミン基(例えば、コア粒子又は層をつくるために使用したアミノプロピルトリエトキシシランから誘導された)を含み得る。このような材料の使用例は、高分子量酸の存在下における低分子量酸の選択的吸着であり得る。従って、例えば、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノ
プロピルトリエトキシシラン又はアミノエチルアミノプロピルトリメトキシ−又はトリエトキシ−シランから誘導されたアミン基を有する多孔性コア粒子は、本発明に従ったナノ粒子を形成するために適用される中性の多孔性層を有し得る。低分子量酸及び高分子量酸を含む液体への曝露において、高分子量酸は、コア粒子に近づくことを防止し得るのに対し、低分子量酸は吸着されるべき層をコア粒子に浸透させることを可能にし得る。高分子量酸はコア粒子中のアミン基から保護され得、ナノ粒子と高分子量酸間の相互作用のため、液体の凝固を防止する。このように、低分子量酸は、液体の凝固なしに混合物から選択的に除去され得る。このような材料の他の使用例は、毒性の高い物質の収着であり得る。従って、例えば、中性の多孔性層によって囲まれた、アミン基を有する多孔性コア粒子を有するナノ粒子は毒性の高い酸性物質を安全に収着するために使用され得る。毒性の酸性物質を含む液体への暴露において、ナノ粒子は、毒性の酸性物質を該液体からアミノ官能コア粒子に収着させ得、毒性の酸性物質が基本的に存在しない中性の多孔性層にする。結果として生じる、吸着した毒性の酸性物質を有するナノ粒子は、ナノ粒子の外層に毒性の酸性物質が存在し得ないため、取扱いが安全であり得る。
【0056】
より一般に、層状ナノ粒子は、化学種又は化学種類の選択的収着を得るために、特定の化学種又は化学種類と特異的に相互作用し得るキレート基及び/又は錯化基(complexing group)を(コアにおいて及び/又は1つ以上の層において)含み得る。キレート基及び/又は錯化基は、非放出性ドーパントの形態又は層それ自体の物質形態又はその両方の形態であり得る。このような層状ナノ粒子は、例えば、毒性化学物質、例えば重金属の収着のために使用され得る。従って、鉛をキレートすることができる基(例えば、結合したEDTA基)を含む非放出性ドーパントを有する層状ナノ粒子は、溶液から鉛を除去するために使用され得る。
【0057】
平均ナノ粒子かさ密度は、0.075g/cm3ないし2.2g/cm3、又は約0.15ないし1.5、0.18ないし1.0、0.5ないし1.0、0.5ないし0.75又は0.25ないし0.5g/cm3の範囲内であり得、約0.075、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、0.95、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1又は2.2g/cm3であり得る。
【0058】
ナノ粒子状物質は、単分散され得るか、又は狭い粒径分布を有し得る。粒径分布は、粒子の50%以上が平均粒径の10%以内、又は45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%又は10%以上であるような分布であり得、粒子の約10、20、30、40、50、60、70又は80%が平均粒径の10%内であるような分布であり得る。
【0059】
ナノ粒子状物質は、約10ないし500nm、又は約10ないし100、50ないし500、50ないし300、50ないし100、100ないし500、250ないし500、100ないし300又は200ないし300nmの平均粒径を有し得、約10、20、30、40、50、100、150、200、250、300、350、400、450又は500nmの平均粒径を有し得るか、又はより大きな平均粒径を有し得る。ナノ粒子状物質の粒子は、コア及び約1ないし10の層、又はコアを少なくとも部分的に囲む層を含み得る。1ないし8、1ないし5、1ないし3、2ないし10、5ないし10、2ないし8又は2ないし5の層があり得、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10の層があり得るか、又は10を超える層があり得る。コアの平均径は、約5ないし500nm、約5ないし150、100ないし500、100ないし400、100ないし300、100ないし200、100ないし150、5ないし125、5ないし100、5ないし80、5ないし50、5ないし30、10ないし100、30ないし100、50ないし1
00、100ないし150、100ないし130、130ないし150、10ないし80、20ないし70又は30ないし70nmであり得、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、200、250、300、350、400、450又は500nmであり得る。各層又は層の平均厚さは、独立して、約1ないし50nm、又は約1ないし30、1ないし20、1ないし10、5ないし30、5ないし10、10ないし50、10ないし40、10ないし30、10ないし20、20ないし50、30ないし50、40ないし50、20ないし40又は20ないし30nmであり得、約1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45又は50nmであり得る。1つ以上の層又はシェルが存在するならば、それらは異なる厚さ又は同一の厚さであり得る。コア及び/又は層は、多孔性であり得、微小孔性又はメソ多孔性であり得、かつ、約0.5ないし20nm、又は約0.5ないし10、0.5ないし5、0.5ないし4、0.5ないし3、0.5ないし2、0.5ないし1.7、0.5ないし1、1ないし5、2ないし5、3ないし5、4ないし5、5ないし10、7ないし10、10ないし20、5ないし15、5ないし7、1ないし3又は1ないし2nmの平均細孔サイズを有し得、約0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20nmの細孔サイズを有し得る。従って、例えば、コア及び全ての層の両方が多孔性であり得るか、又はコアが無孔性であり得、かつ層が多孔性であり得るか、又はコア及び内層が無孔性であり得、かつ外層が多孔性であり得る。コア粒子及び各層は、独立して、約0ないし80%、又は約0ないし70、0ないし60、0ないし50、0ないし40、0ないし30、0ないし20、0ないし10、2ないし80、10ないし80、30ないし80、50ないし80、10ないし50、30ないし50、20ないし60又は20ないし40%の多孔率を有し得、約0、10、20、30、40、50、60、70又は80%の多孔率を有し得る。ドーパントはコアの約0ないし100質量%を示し得る(即ち、コアは、ドーパントを有さないか、又は活性物質であり得るが、1つ以上の層中のドーパントであり得るか又は該ドーパントでもない:コアは、In2O3ナノ結晶の例において見られるように、例えば微粉末化薬剤粒子又はマーカー又は量子ドットを含み得る。)。ドーパントは、コアの約0ないし50、0ないし25、0ないし10、0ないし5、10ないし100、50ないし100、5ないし95、10ないし50又は25ないし50質量%を示し得、コアの約0、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、96、97、98、99又は100質量%を示し得る。ドーパントは、コアを囲むあらゆる特定の層の約0ないし25質量%、又は約0ないし20、0ないし15、0ないし10、0ないし5、5ないし25、10ないし25、15ないし25、20ないし25、5ないし20又は10ないし20質量%を示し得、コアを囲むあらゆる特定の層の約0、0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24又は25質量%を示し得る。
【0060】
層状ナノ粒子を少なくとも部分的に分離する工程は、濾過、マイクロ濾過、遠心分離、超遠心分離、沈殿、デカンテーション又はこれらの組み合わせを含み得る。それらは、懸濁液の不安定化工程も含み得、該不安定化は、前記濾過、マイクロ濾過、遠心分離、超遠心分離又は沈殿の前に行われ得る。
【0061】
不安定化工程は、不安定化する液体を懸濁液に添加することを含み得る。不安定化する液体は、極性であり得、かつ非極性液体と混和性であり得る。不安定化する液体は水と混和性であり得る。それは、例えば、アセトン、エタノール、メタノール又は特定の他の液体であり得る。不安定化する工程は、温度を、例えば懸濁液が安定ではないところの温度
まで変えることを含み得る。相平衡状態図に依存して、該変化は加熱であり得るか、又は冷却であり得る。
【0062】
洗浄工程は、層状ナノ粒子を洗浄液(水性又は有機)と接触させ、洗浄液から層状ナノ粒子を分離することを含み得る。例えば、洗浄工程のいくつか又は全ては、洗浄液中で層状ナノ粒子を懸濁させること、所望により洗浄液と層状ナノ粒子を組み合わせて攪拌すること、及び、例えば、上記した分離方法のいずれかを使用して洗浄液から層状ナノ粒子を分離することを含み得る。さもなくば、洗浄工程のいくつか又は全ては、洗浄液を、層状ナノ粒子を通して及び/又は層状ナノ粒子を経て通過させることを含み得、そして、層状ナノ粒子は、例えばフィルター中に保持され得る。洗浄は、相分離によってデカンテーション漏斗内で行われ得る。水性洗浄液は水又は水性液体、例えば塩溶液であり得る。有機洗浄液は、溶媒であり得、極性又は非極性溶媒、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、ジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチル、トルエン又は特定の他の溶媒であり得、溶媒の混合物であり得る。洗浄工程は、懸濁液を約10ないし70℃、又は約10ないし50、10ないし30、10ないし20、20ないし70、50ないし70、20ないし50又は30ないし50℃まで加熱又は冷却することも含み得、懸濁液を約10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65又は70℃まで加熱又は冷却することを含み得る。加熱又は冷却は、系の相平衡状態図を変化させることによって系が単一安定相を形成することを防止するところの温度まで行われ得る。系はまた、相平衡状態図を変化させる溶媒の混合物を使用することによって、単一安定相を形成することを防止され得る。
【0063】
乾燥工程は、層状ナノ粒子を加熱することを含み得る。加熱は、ドーパントが存在するならば、ドーパントが分解又は劣化する温度より低い温度で行われ得、例えば約30ないし80℃、又は約30ないし60、30ないし40、40ないし80、60ないし80又は40ないし60℃で行われ得、約30、35、40、45、50、55、60、65、70、75又は80℃で行われ得る。さもなくば又は更に、乾燥工程は、例えば国際公開第01/62332号パンフレット(Barbe and Bartlett,‘‘Controlled Release Ceramic Particles,Compositions thereof,Processes of Preparation
and Methods of Use’’)に記載された凍結乾燥を含み得る。乾燥工程は、付加的に又は二者択一的に、ガス流を、層状ナノ粒子を越えて及び/又は層状ナノ粒子を通して通過させることを含み得る。ガスは、層状ナノ粒子、及び、その中及び/又は上のあらゆるドーパントに対して不活性なガスであり得、例えば、空気、窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素又はこれらの混合物であり得、乾燥させ得る。乾燥工程は、付加的に又は二者択一的に、層状ナノ粒子に部分的減圧を適用することを含み得る。部分的減圧は、例えば、約0.01ないし0.5気圧、又は約0.01ないし0.1、0.01ないし0.05、0.1ないし0.5、0.25ないし0.5、0.05ないし0.1又は0.1ないし0.25気圧の絶対圧力を有し得、約0.01、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4又は0.5気圧の絶対圧力を有し得る。
【0064】
本発明の方法の態様において、非極性液体中にコア粒子を含む懸濁液を得る工程は、以下の工程:
−非極性液体中に分散された水滴を含むエマルジョンであって、該水滴は第一加水分解性物質の加水分解のための触媒を含み、前記第一加水分解性物質は加水分解により第一凝縮性物質を生成することができるところのエマルジョンを得る工程、及び、
−該水滴中で第一加水分解性物質を加水分解して非極性液体中にコア粒子の懸濁液を形成するために、第一加水分解性物質を該エマルジョンに添加する工程、
を含む。
【0065】
水滴は、約5ないし150nm、又は約5ないし125、5ないし100、100ないし130、120ないし150、5ないし80、5ないし50、5ないし30、10ないし100、30ないし100、50ないし100、10ないし80、20ないし70又は30ないし70nmの直径を有し得、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140又は150nmの直径を有し得る。
【0066】
エマルジョンを得る工程は、以下の工程:
−界面活性剤及び非極性液体及び所望により補助界面活性剤を含む界面活性剤溶液を得る工程、
−第一凝縮性物質の凝縮のための触媒及び所望により第一ドーパントも含む水性溶液を該界面活性剤溶液に添加する工程、
−該界面活性剤溶液及び該水性溶液からエマルジョンを形成する工程
を含み得る。
【0067】
界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、非イオン性又は両性イオン性界面活性剤であり得、かつモノマー状又はポリマー状界面活性剤であり得る。適当な界面活性剤は、ノニルフェノキシポリエトキシエタノール、C9H19C6H4(OCH2CH2)nOH(NP系)又はオクチルフェノキシポリエトキシエタノール、C8H17C6H4(OCH2CH2)nOH(トリトン系)(ここで、nは4ないし15、又は4ないし9、又は9ないし15、又は7ないし12であり、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15であり得る。)を含む。適当な補助界面活性剤は、炭素原子数5ないし10のn−アルコール(1−ペンタノール、1−ヘキサノール、1−へプタノール、1−オクタノール、1−ノナノール、1−デカノール)を含む。界面活性剤溶液中の界面活性剤の濃度は、適量の水及び補助界面活性剤との組み合わせにおいて安定なマイクロエマルジョンを形成するのに十分な濃度であり得、約0.05ないし1M、又は約0.05ないし0.5、0.05ないし0.2、0.05ないし0.1、0.1ないし1、0.5ないし1、0.1ないし0.5又は0.1ないし0.2Mの濃度であり得、約0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9又は1Mの濃度であり得るか、又は特定の他の適当な濃度であり得る。界面活性剤溶液中の補助界面活性剤の濃度は、約0ないし1M、又は約0.05ないし1、0.05ないし0.5、0.05ないし0.2、0.05ないし0.1、0.1ないし1、0.5ないし1、0.1ないし0.5又は0.1ないし0.2Mの濃度であり得、約0、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9又は1Mの濃度であり得る。補助界面活性剤と界面活性剤のモル比は、0ないし10、又は0ないし5、0ないし2、0ないし1.5、0ないし1、0ないし0.5、0ないし0.2、0ないし0.1、0.5ないし2、1ないし2、1.5ないし2、0.5ないし1.5又は0.8ないし1.2、0.5ないし10、1ないし10、2ないし10、5ないし10、0.5ないし5又は1ないし5であり得、約0、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、6、7、8、9又は10であり得る。水性液体中の水と界面活性剤の比はw/w、w/v、v/v又はモル比に基づき約2:1ないし10:1、又は約2:1ないし5:1、3:1ないし10:1、4:1ないし10:1、5:1ないし10:1、3:1ないし8:1又は4:1ないし6:1であり得、約2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1又は10:1であり得る。
【0068】
ナノ粒子の合成
図3は、本発明に従った方法を要約する。該方法は、以下のように説明され得る:
1.シクロヘキサン等の非極性溶媒中に界面活性剤及び補助界面活性剤を溶解することによって、界面活性剤溶液を形成する。
2.カプセル化される活性分子(ドーパント)(例えば、染料又は薬剤)とゾル−ゲル反応のための触媒(例えば、塩基)を混合することによって、水性溶液を形成する。
3.その後、上記で調製した界面活性剤溶液と水性溶液を混合することによって、安定なマイクロエマルジョンを調製する。その後、アルコキシド前駆体(例えば、TEOS)を該マイクロエマルジョンに添加し、その後、それが加水分解されるところの水プール(即ち、エマルジョン液滴のコア)にゆっくりと拡散させる。
4.加水分解及び少なくとも48時間の金属アルコキシドの凝縮後、反応の完了を確実にするために、反応温度を1時間で55±5℃まで上げる。この段階でコア(又は種)粒子の生成がもたらされる。
5.その後、更なる水性溶液(他の活性分子を含み得る)を添加する。該混合物を55±5℃で6時間攪拌して添加した水をコア粒子の表面に移動させる。これは、第二核形成の供給源であり得る空のミセル形成を防止するために重要である。その後、界面活性剤、補助界面活性剤及び非極性溶媒を含む界面活性剤溶液が添加される。該系を室温まで冷却した後、最初のコア粒子の周りに層を形成することによって粒子を成長させるために、更なる前駆体(例えば、TEOS)を添加する。水と界面活性剤のモル比、界面活性剤濃度等の合成パラメーターは、これらの工程の間、一定に維持される。
6.工程4及び5を1回以上繰り返して層状ナノ粒子において必要数の層を生成する。このプロセスの使用によって、様々なドーパントが層状ナノ粒子の様々な位置(例えば、層)に配合され得ることを言及する。
7.層状ナノ粒子を形成した後、極性溶媒(例えば、アセトン)を該混合物に添加してエマルジョン系を不安定化し、沈殿又は遠心分離によって粒子を抽出する。必要に応じて、より多量の溶媒が残りの界面活性剤を除去するために使用される。
8.塩溶液を添加し、その後、更に、粒子をクロロホルムで洗浄し、分離漏斗中に収集し、国際公開第01/62332号パンフレット(Barbe and Bartlett,‘‘Controlled Release Ceramic Particles,Compositions thereof,Processes of Preparation and Methods of Use’’)に記載された方法を使用して凍結乾燥する。粒子は、懸濁液中でも加工され得る。極性溶媒(例えば、アセトン)を混合物に添加してエマルジョン系を不安定化し、粒子を沈殿又は遠心分離によって抽出する。必要に応じて、より多量の溶媒が界面活性剤残渣を更に除去するために使用され得る。
【0069】
最終粒径及び粒径分布を制御する因子は、エマルジョンパラメーター(例えば、界面活性剤濃度、界面活性剤/水の比、前駆体/水の比)、金属前駆体の性質及び量、及び工程4及び5のサイクル時間を含む。層の数は、工程4及び5を何回繰り返したかに依存する。活性分子(ドーパント)の種類及び濃度は、各サイクルにおいて変えられ得る。各活性分子の位置は、該活性分子が該方法においていつ導入されたかに依存し、各層の厚さは、前駆体の添加量によって制御され得る。
【0070】
文献で報告される他の成長方法との比較
文献において報告される実験とは対照的に、本発明に従った方法は、種成長技術を使用して、同一の油−水−界面活性剤(所望により、補助界面活性剤)相平衡状態図を維持するコア−シェル層状ナノ粒子を生成する。これは、各層の成長の間、新たなW/Oマイクロエマルジョン又は新たな界面活性剤及び非極性溶媒を反応系に添加することによって達成され得る。従って、第二非極性溶媒の添加は、油−水−界面活性剤の相平衡状態図を顕著に変えないはずであり、第二非極性溶媒は最初に使用した非極性溶媒と混和性であるべきである。該方法は、種を抽出することなく継続的に進められ得る。本発明の他の独特な特徴は、新たなマイクロエマルジョンの添加の間、新たな活性分子を導入することができ
ることである。それ故、新規試みは、1つ以上のドーパントがコア又は選択されたシェル(層)中にカプセル化され得るところのコア−シェル層状ナノ粒子を形成することを生み出し得る。その後、カプセル化された分子は、多層構造内のそれらの位置に依存して、予め決められた放出順序で放出され得る。この各層のペイロードを制御する能力は、遅延放出系(空の層+充填したコア)並びにパルス放出系(空の層と充填した層を交互にする)及び順次放出系(様々なペイロードで充填した層)の設計を可能にする。更に、全粒径を制御するだけではなく、コア及び各層の厚さも調整することができるため、放出サイクルの長さを潜在的に制御し得る。粒子又はフィルムにおける多数の活性分子のカプセル化は広く研究されていないとはいえ、本発明者達は、この進歩した制御放出技術は、食品、化学物質、殺生物剤、農薬、医薬品及び化粧品等の制御放出系における慣用の適用においてだけではなく、光センサー、バイオセンサー、暗号化技術及び情報技術等の他の分野においても適用され得ると考えている。
【実施例】
【0071】
実施例
材料
NP−9[ノニルフェノキシポリエトキシエタノール、C9H19C6H4(OCH2CH2)nOH、n=9](フルカ社製:MW 630、HLB13.0)をそのまま使用した(即ち、0.08質量%未満の水を含む(カール・フィッシャー滴定により決定))。シグマ−アルドリッチ社製のテトラエチルオルトシリケート(TEOS)(98%)もそのまま使用した。有機溶媒(シクロヘキサン、1−ペンタノール、アセトン、クロロホルム)(シグマ−アルドリッチ社製)はACS分光光度等級(99+%)であった。使用した全ての他の化学試薬は、A.R.等級であった。高純度ミリ−Q水(ミリポア社製)を全水性溶液の調製のために使用した;その低効率は18.2MΩcm以上であった。全サンプルを暗い場所に貯蔵した。
【0072】
封入剤(ドーパント)溶液の調製:
テトラアミン硝酸銅(II)の調製
紺色の溶液が形成されるまで、25質量% アンモニアを既知量の硝酸銅(II)水和物に滴下添加することによって、テトラアミン硝酸銅(II)溶液を調製した。該溶液を100mLフラスコに移し、その容量を、希釈した25容量%の濃アンモニア(即ち、25質量% NH3)を添加することによって100mLに調整した。調製した溶液は銅を16.69mg/mL含み、そのpHを、測定したところ11.86であった。
【0073】
ヘキサミン硝酸コバルト(III)の調製:濃アンモニア(25質量% NH3)による硝酸コバルト水和物の溶解の間、溶解性のヘキサミンコバルト(III)錯体の形成をもたらすために、溶液を20分間、沸点で加熱したこと以外は、テトラアミン硝酸銅(II)溶液において上記したのと同様の方法によって、ヘキサミン硝酸コバルト(III)溶液を調製した。最終溶液は、コバルトを16.69mg/mL含み、pHは11.82であった。
【0074】
Rubpyの調製:一定量のルテニウム錯体を一定容量の希釈アンモニア(10容量%の25質量% 濃NH3)に溶解し、Rubpyの濃度が2.5mg/mLの溶液をつくることによって、Rubpy[トリス(2,2’−ビピリジル)ジクロロルテニウム(II)六水和物]溶液を調製した。
【0075】
CuPCの調製:一定量の銅錯体を一定容量の希釈アンモニア(10容量%の25質量% 濃NH3)に溶解し、CuPCの濃度が5mg/mLの溶液をつくることによって、CuPC[銅(II)フタロシアニン−テトラスルホン酸四ナトリウム塩]溶液を調製した。
【0076】
FITCの調製:一定量のフルオレセインを一定容量の希釈アンモニア(10容量%の25質量% 濃NH3)に溶解し、フルオレセインの濃度が5mg/mLの溶液をつくることによって、フルオレセインイソチオシアネート溶液を調製した。
【0077】
In−DTPA又はGa−DTPA溶液の調製:既知量のInCl3又はGaCl3を100mLビーカーで計量し、ミリ−Q水 10gを添加して塩を溶解した。一定量のジエチレントリアミン5酢酸(DTPA)を添加し、DTPAと金属元素のモル比を1.1:1に維持した。該混合物を磁気攪拌しながら、濃アンモニア(25質量% NH3)を滴下添加した。DTPAが全て溶解した後、式[Me−DTPA]2-で表わされ、以下の構造
【化1】
を有する金属−DTPAキレートが形成した。
溶液のpHが11.50以上となり、かつ総量が100mLよりわずかに少ない量となるまで、濃アンモニアを継続的に添加した。溶液を定量的に100mLフラスコに移し、水を添加し最終容量を100mLとした。
【0078】
50nmシリカコアを生成するための典型的な調製
NP−9 7.56g(12mmol)を250mLスクリューキャップ付き容器中でシクロヘキサン 60mLに溶解した。その後、1−ペンタノール 1.304mL(12mmol)を添加した。該混合物を約1分間、強く振盪し、界面活性剤溶液を調製した。その後、アンモニア溶液 1.333mol/L(染料等の活性分子を含むNH4OH(pH〜11.86)1.296mL(即ち、水 72mmol))を添加した。混合物を、約30分間、強攪拌し、マイクロエマルジョン系を生成した。TEOS 0.546mL(2.4mmol)を、この磁気攪拌したマイクロエマルジョンに添加し、その後、室温、22±2℃において一定時間(48−72時間)攪拌したままにした。乾燥アセトン 50mLを添加して該マイクロエマルジョンを不安定化した。系を、更に、約10分間、強攪拌した。シリカ粒子は、通常、凝集し、デカンテーションによって分離され得る;もしも、顕著な沈殿が観察されないならば、混合物を約10分間、4000rpmにおいて遠心分離する。沈殿又は遠心分離後、粒子を有機相から分離し、乾燥アセトン 50mL(各回)で3回洗浄して界面活性剤を除去した。アセトンのデカンテーション後、NaCl水溶液 約20mLを粒子と混合し、デカンテーション漏斗に入れた。結果として生じた懸濁液を、更に、クロロホルムを使用して6回洗浄し(各回 50mL)、残りの界面活性剤を除去し、超音波処理し、フレキシ−ドライ−84D凍結乾燥機(FTSシステムズインコーポレーテッド、ニューヨーク州、ストーン リッジ)を使用して凍結乾燥した。この方法を使用して、NaClマトリックス内に均一に分布したナノ粒子の形態でシリカ 144mgを生成した。TEMは、粒径が55±5nmの範囲であることを示した(図4及び図5−A参照)。塩化ナトリウムを保護マトリックスとして使用してナノ粒子が凝集することを防止し、かつシリカと塩化ナトリウムの質量比を約15%に維持した。
【0079】
100nm、150nm及び200nmのシリカナノ粒子を調製するための典型的な実験方法
調製2:100nm(コア+1シェル):
・上記した方法を使用して50nmの種を生成した。
・アセトンを添加してマイクロエマルジョンを不安定化する代わりに、温度を55±5℃まで上げ、かつ1時間攪拌した。
・その後、1.333mol/L NH4OH(pH〜11.86) 2.952mL(即ち、水144mmolと同等)を添加し、55±5℃において6時間攪拌し、その後、室温まで冷却した。
・1−ペンタノール 2.608mL(24mmol)及びシクロヘキサン 120mLと混合したNP−9 15.12g(24mmol)を添加し、20分間攪拌した。
・TEOS 2.184mL(9.6mmol)を混合物に添加した。
・48−72時間攪拌した。
・上記の50nmシリカコアを生成するための典型的な調製で説明したように、粒子を洗浄し、抽出し、乾燥させた。
この方法により、単分散の100nmシリカナノ粒子 720mgが生成した。対応するTEM顕微鏡写真を図5−Bに示す。
【0080】
調製3:150nm(コア+2シェル):
・上記したように100nmの粒子を調製した。
・アセトンを添加してマイクロエマルジョンを不安定化する代わりに、エマルジョンを2つのアルコートに分けた。
・1つのアリコートにおいて、温度を55±5℃に上げ、1時間攪拌した。その後、1.333mol/L NH4OH(pH〜11.86) 2.952mL(即ち、水144mmolと同等)を添加し、55±5℃において6時間攪拌した。
・1−ペンタノール 2.608mL(24mmol)及びシクロヘキサン 120mLと混合したNP−9 15.12g(24mmol)を添加し、20分間攪拌した。
・TEOS 2.184mL(9.6mmol)を混合物に添加した。
・48−72時間攪拌した。
・上記の50nmシリカコアを生成するための典型的な調製で説明したように、粒子を洗浄し、抽出し、乾燥させた。
この方法により、相対的に単分散の150nmシリカナノ粒子 936mgが生成した。対応するTEM顕微鏡写真を図5−Cに示す。
【0081】
調製4:200nm(コア+3シェル):
・上記したように150nmの粒子を調製した。
・アセトンを添加してマイクロエマルジョンを不安定化する代わりに、エマルジョンを2つのアルコートに分けた。
・1つのアリコートにおいて、温度を55±5℃まで上げ、1時間攪拌し、1.333mol/L NH4OH(pH〜11.86) 2.952mL(即ち、水144mmolと同等)を添加し、55±5℃において更に6時間攪拌した。
・シクロヘキサン 120mL中で1−ペンタノール 2.608mL(24mmol)と混合したNP−9 15.12g(24mmol)を添加し、20分間攪拌した。
・TEOS 2.184mL(9.6mmol)を系に添加した。
・48−72時間攪拌した。
・上記の50nmシリカコアを生成するための典型的な調製で説明したように、粒子を洗浄し、抽出し、乾燥させた。
この方法により、相対的に単分散の200nmシリカナノ粒子 1044mgが生成した。対応するTEM顕微鏡写真を図5−Dに示す。
【0082】
粒子特性
シリカ粒子の粒径及び形態を透過型電子顕微鏡(JEOL 2000 FXII又はJEOL 2010 F)を使用して測定した。
残りの界面活性剤の量を測定するために、TGA/DTA実験を、セタラムTGA 24を使用して行った。非ドープサンプルを10℃/分の速度で900℃まで加熱した。典型的な図を図6に示す。2つの異なる分解反応がDTAによって観察された:約100−200℃における吸熱反応は水及び他の揮発性成分の蒸発に関係し、約400℃における発熱反応は界面活性剤の燃焼に関係する。結合界面活性剤の量は、約450℃における質量損失と約250℃における質量損失の差として計算される。クロロホルムで5回洗浄した後のシリカ粒子と結合した界面活性剤残渣は、シリカ乾燥質量の約3.0質量%であった。これは、50nmの1粒子当りNP−9 約1.65分子に相当する。
【0083】
染料の放出速度
遠心分離によって水相からシリカ粒子を分離した後、粒子を擬似体液(SBF、pH7.4/25℃) 20mLに再懸濁した。SBFの組成は、P.Kortesuo;M.Ahola;S.Karlsson;I.Kangasniemi;A.Yli−Urpo;J.Kiesvaara,‘‘Silica xerogel as an implantable carrier for controlled drug delivery−evaluation of drug distribution and tissue effects after implanation’’,Biomater.,21,193−198(2000)から分かり得る。放出は、懸濁液を30分間、3000rpmにおいて遠心分離し、UV−可視分光法を使用して上澄み中に放出されたドーパントの濃度を測定することによって測定した。放出研究の間、サンプルは、暗い場所において、37℃の水浴中に貯蔵した。
【0084】
結果及び討論
種サイズに対するエマルジョンパラメーターの影響
以下の3つの系では、コアのサイズに対して水とアルコキシドの比が影響を及ぼすことを示した。対応するTEM顕微鏡写真を図7に示す。
・系1:NP−5:0.2mol/L:シクロヘキサン 50mL:触媒:1.333mol/L NH4OH(pH〜11.86):TMOS:3mmol:[H2O]/[TMOS]=20、[H2O]/[NP−5]=6:老化 24時間:粒径:〜7.6nm。
・系2:NP−9:0.2mol/L:シクロヘキサン 30mL:触媒:1.333mol/L NH4OH(pH〜11.86):[NP−9]/[1−ペンタノール]=1、TMOS:1.2mmol:[H2O]/[TMOS]=30、[H2O]/[NP−9]=6:老化 24時間、粒径:〜20nm。
・系3:トリトン X−100:23.9質量%:トルエン:71.4質量%:水:4.7質量%(5g):触媒:1.333mol/L NH4OH:TMOS:8mmol:[H2O]/[TMOS]=34.7、粒径:〜25nm。
【0085】
前駆体の順次添加による粒子成長(エマルジョンの追加なし)
シリコン前駆体としてTMOS及びTEOSを使用して2つの実験を行った。
・実験1:NP−9:0.2mol/L:シクロヘキサン 50mL:触媒:1.333mol/L NH4OH:[NP−9]/[1−ペンタノール]=1、[H2O]/[NP−9]=6。粒径は、追加のシリコン前駆体を順次添加することによって徐々に増加した。その成長プロセスは図2に示す通りである。結果を、図8に連続して示す。
・実験2:NP−9:0.2mol/L:シクロヘキサン 30mL:触媒:1.333mol/L NH4OH:[NP−9]/[1−ペンタノール]=1、[H2O]/[NP−9]=6。TMOSを使用する代わりに、TEOSをシリコン前駆体として使用した
。TEM像を図9に示す。
【0086】
TEM顕微鏡写真から、TEOSが、TMOSよりも有意により重要な粒子成長をもたらすことは明らかであるが、両方の場合における添加量並びに最初のコアの粒径を考慮する必要がある。TMOSの場合において、最初のコアは22nmであり、1サイクル当りの平均添加量は1.2mmolであり、4回の添加後、平均粒径が36nmに達した。これは、1サイクル当り3nmの成長又は添加したTMOS 1mmol当り2.5nmの成長を示す。対照的に、TEOSにおける最初のコアは、50nmであり、5回の添加後(総量15.6mmol)の平均粒径は137nmであった。これは、添加したTEOS
1mmol当り5.6nmの成長を示す。この成長速度の差は、両方の場合において存在する核(即ち、コア粒子)の数の差によって説明され得る。シリコンアルコキシド全てがシリカに転換されるならば、当量のシリカにおいて、TMOS合成中に観察されたより小さなコアの数は、TEOS合成中に観察されたより大きなコアの数よりも多いべきである。実際に、シリカの総量が一定であるため、コア粒子集団の差はそれらのサイズに反比例するはずである。更に、シリコンアルコキシドの当量添加において、コーティングされるコア粒子の数が2倍多いのであれば、コア−シェルサイズの増加は約2倍小さいことが予期され得る。それ故、より小さな成長がTMOSにおいて観察された。
【0087】
マイクロエマルジョン系の選択の重要性
NP−9は、全粒子成長プロセス間にマイクロエマルジョンを生成するために選択された。マイクロエマルジョン相平衡状態図がアルコール含量に敏感であるため、一般に、アルコール濃度の増加が粒子の多分散性の段階的な増加をもたらすと考えられている。アルコキシド前駆体は加水分解中にアルコールを生成するため、これは、添加した全アルコキシド前駆体の最大濃度を制限する。界面活性剤としてNP−9を有するマイクロエマルジョンはアルコール含量にあまり敏感ではなく、そのため、より高濃度のアルコキシド前駆体が、粒子成長プロセスの間、利用され得る。補助界面活性剤としての1−ペンタノールの存在は、逆ミセルをより硬くし、それによりマイクロエマルジョンを不安定から安定に変化させ、及びまた、ミセルサイズの均一性を改善し、それにより固体粒径の均一性も改善する。更に、NP−9マイクロエマルジョンは、より高い[水]/[界面活性剤]値を許容し、それにより、マイクロエマルジョンの安定性及び粒径の均一性を維持しながら、より大きな粒子の生成を可能にする。
【0088】
マイクロエマルジョン及びシリコンアルコキシドの順次添加による粒子成長
アルコキシド前駆体の順次添加によって粒子を成長させることができるとはいえ、粒子成長は、ミセルコアにおける自由水の供給制限によって、ある程度までに制限される。更に、この方法では、活性分子は粒子のコア中にしか充填できない。
【0089】
本願明細書に記載した代わりの方法は、更なるマイクロエマルジョンの形態において水を更に供給し、アルコキシドの加水分解及び凝縮を維持することにより粒子を成長させることからなる。該方法の略図を図10に示す。一旦、種(コア)粒子が生成されたならば、新たなマイクロエマルジョンを種(コア粒子)の懸濁液に添加する。混合の間、新たなマイクロエマルジョンからの新たな添加水滴が種粒子を含む親水性の液滴と融合し、該水は存在するコア粒子の表面に吸着する。アルコキシド前駆体の添加において、それは、粒子表面において吸着した水と反応し、加水分解し、その後、粒子表面において存在するヒドロキシル基と凝縮する。アルコキシド濃度が特定のレベル以下に維持されるならば、シリコン前駆体の濃度は過飽和レベル以下のままであり、更なる核は形成されない。粒子は、核に典型的なモノマーを添加することによって徐々に成長する。この方法を使用した粒子成長の例を図5に示す。
【0090】
各サイクルにおけるマイクロエマルジョン形態での水の添加は、様々な濃度で様々な段
階において活性分子を導入することを可能にする。これは、セラミックナノ粒子内の様々な位置に1種類以上の活性分子をカプセル化することを可能にする。外側のシェル内の物質は、その後、コア又は内側のシェル内に位置する分子よりも早く放出され得る。これらのコア−シェル構造のいくつかの典型的なTEM像を図11に示す。EDX線形を使用した各シェルの正確な組成分析は、電子線がサンプルを損傷し、かつ粒子内の金属の再分布をもたらすため行うことができなかった(図12参照)。
【0091】
この合成法を使用して、粒径50−500nm、通常10−300nmの、単分散のセラミック粒子を生成し得た。セラミック粒子の最終粒径は
(a)界面活性剤、補助界面活性剤、溶媒の種類、水と界面活性剤のモル比、界面活性剤と補助界面活性剤のモル比及び水プールのpHを含むマイクロエマルジョンの性質。
(b)アルコキシド前駆体の種類及びその濃度。
(c)サイクルの回数。
(d)各層に添加した前駆体の量。
(e)温度、pH等の他のゾル−ゲル反応条件。
に依存する。
【0092】
塩基の存在下(11より高いpH)におけるシリカ粒子の生成において上記で討論したように、本発明の方法を使用すると、層状ナノ粒子を生成できる。シリカより他のセラミック材料を使用する場合により、条件及び試薬を適切に選択して、合成条件を、中性、弱酸、中酸ないし強酸環境にさえも転換することができる。
【0093】
粒子の多分散性に対する様々な実験パラメーターの影響
添加方法の影響
図13は、新たなマイクロエマルジョン組成物の添加における異なる方法を示す。種は、以下の系を使用して調製した(NP−9 3mmol、シクロヘキサン 15mL、1−ペンタノール 3mmol、1.33M NH4OH 0.324mL、水 18mmol、TEOS 0.6mmol、老化 48時間)。その後、更なるマイクロエマルジョン(種のために最初に使用したものの2倍の量)及びTEOSを以下のように添加した:
・マイクロエマルジョンを添加し、55℃において6時間攪拌した後、TEOSを添加し、68時間老化した。
・界面活性剤を添加した後、まず、1−ペンタノール及びシクロヘキサンを添加し、10分後、アンモニア溶液を添加した。55℃において6時間攪拌し、TEOSを添加した後、68時間老化した。
・まず、アンモニア溶液を添加し、10分後、界面活性剤、1−ペンタノール及びシクロヘキサンを添加した。55℃において6時間攪拌し、TEOSを添加した後、68時間老化した。
・まず、アンモニア溶液を添加し、55℃において6時間攪拌した。その後、界面活性剤、1−ペンタノール及びシクロヘキサンを添加し、TEOSを添加した後、懸濁液を68時間老化した。
様々な方法は全て、同一の粒径を有する粒子を生成した。その後の全てのプロセスにおいて、最終方法を使用した。
【0094】
シェルの数の影響
多分散性に対する粒径制限を研究するために、200nm粒子の懸濁液(即ち、コア+3つのシェル)を2つのアリコートに分けた。1方のアリコートを、1時間攪拌しながら、55±5℃まで加熱した。その後、1.333mol/L NH4OH(pH〜11.86) 2.952mL(即ち、水144mmolと同等)を添加し、結果として生じた混合物を55±5℃において6時間攪拌した。その後、NP−9(24mmol) 15
.12g、1−ペンタノール 2.608mL(24mmol)及びシクロヘキサン 120mLを懸濁液に添加した。20分間攪拌した後、TEOS(9.6mmol)2.184mLを該系に添加し、更に、48−72時間攪拌した。その後、粒子を、上記の50nmシリカコアを生成するための典型的な調製で説明したように、洗浄し、抽出し、乾燥させた。結果として生じた粒子(即ち、コア+4つのシェル)のTEM顕微鏡写真を図14−aに示す。同様の方法を使用して、追加のシェルを有する粒子(即ち、コア+5つのシェル)生成した(図14−b参照)。図14は、200nmを越えた連続的な成長が多分散性粒子の生成をもたらすことを証明した。図14−aは、目的の230nmの粒子に加えて、約150nmの粒径を有する、少数のより小さな粒子を有する二峰性分布を示す。1回以上の繰り返しは、100nmないし325nmの範囲の多分散性の粒径分布をもたらす。このより小さな粒子の段階的な出現は粒子を含む液滴を有する添加したマイクロエマルジョンの不完全な融合によって生じる新たなシリカ核の形成を示唆する。より一般に、ナノ粒子が大きいほど、粒径分布は広くなる。大きな(>250nm)の粒子の単分散性を維持するための方法は、沈殿による分割及びそれによる第二世代の(より小さな)粒子の除去であり得る。
【0095】
大きな粒子の連続的な成長が抱える他の粒径制限は、全サイクルを完了するまでに必要な時間である。典型的に、3つのシェル(即ち、粒径200nm)を構成するまでに、8ないし10日間かかり得る。加工時間を減少させるための1つの方法は、反応温度を増加させることであり得る。さもなくば、より加水分解性の高いアルコキシド前駆体を使用して、粒子成長を速め得る。
【0096】
新たなエマルジョン/種エマルジョン体積比の影響
実験結果(図15a及びb)は、新たなマイクロエマルジョンを用いた種エマルジョンの希釈が、常に、均一な粒子をもたらすわけではないことを示す。希釈(新たなエマルジョンの体積/種エマルジョンの体積)が3より高い場合、多分散性粒子が生成する。これは、存在する粒子に組み込まれ得る水の量が特定値を超えないことを示唆する。もしも、より多量の水が添加されるならば、その後、新たな油中水逆ミセルが形成され、新たなシリカ粒子の形成のための核形成中心として作用し、結果として多分散性粒子の生成がもたらされる。
【0097】
混合方法の影響
図16は、種粒子及び新たなマイクロエマルジョンを含むエマルジョンの混合のために使用する方法の重要性を示す。新たなエマルジョン液滴と存在する種を含む液滴の融合を誘導することにより単分散粒子の生成を確実にするために、2、3の異なる方法を使用し得る。第一の試みは、結果として生じたエマルジョン混合物を非常に高いせん断速度(8000rpm)においてせん断混合し、液滴の衝突及び融合を促進することにある。第二の試みは、混合エマルジョンの温度を増加させることによって、液滴の衝突速度を増加させることに基づく。理論的に、室温において十分な融合が達成され得るとはいえ、室温における18時間の攪拌後に、多分散性のサンプルが得られることから明らかなように、これは、達成するために必要な時間のために実用的ではないことに注目することが重要である。超音波処理(長時間においてでさえも)は、図16−bに観察される二峰性分布によって証明されるように、液滴融合を誘導しない。
【0098】
シリコン前駆体の反応性の影響
上記で討論したように、TEOS等の反応性の低いシリカ前駆体はTMOS等のより反応性の高い前駆体より大きなコアを生成する。TMOSを、TEOSと同一のモル比で50nmの予めつくられたコア粒子に添加した場合、75nmのコア−シェル粒子及びより小さな21nmの二次粒子を有する二峰性分布が得られた(図17参照)。21nmの粒子はTMOSを使用して生成したコアに正確に対応する(図7−b参照)。これは、第二
核形成段階の存在を示唆し、そしてそれは、加水分解されたTMOSの濃度が急速に過飽和に達することをもたらし、存在するコアとの凝縮よりむしろ、第二核形成によって軽減させられる。対照的に、より低い反応性のTEOSにおいて、加水分解されるモノマーの濃度はよりゆっくりと上昇するため、それらは、濃度が過飽和に達し、核形成を誘導する前に、コア表面との反応によって消費され得る。
【0099】
有機変性シリカ(ORMOSIL)コア−シェル構造ナノ粒子
塩基中でのゾル−ゲル合成は、メソ多孔性粒子(即ち、大きい細穴サイズ:約4nm)の生成をもたらし、そして、メソ多孔性粒子は、それらのペイロード(典型的には、有機染料又は小さな薬剤分子<2nm)の急速かつ非制御な放出を一般に示す。セラミックナノ粒子内にカプセル化された分子を維持し、かつ洗浄工程の間、浸出することを避けるために、セラミックマトリックスは、カプセル化された分子と化学結合を形成し得る活性基(例えば、−NH2、−SH、−COOH等)で官能化され得る。このような方法を使用して、蛍光染料(フルオレセインイソチオシアネート(FITC))がアミン基で官能化されたシリカ粒子(APTES)中に上手くカプセル化される。その後、染料の放出は、活性分子−マトリックス相互作用のスクリーニング又は分断によってもたらされ得る。
【0100】
層状ナノ粒子は、上記した実験条件に従って合成された。ORMOSILは、粒子コア内又は第二シェル内に配合した。TEOSの割合は、75mol%又は25mol%である。これらの実験において使用したORMOSIL前駆体は、アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)である。対応するTEM像を図18に示し、ORMOSILコア−シェル粒子の組成を表1に示す。
表1:ORMOSILコア−シェル粒子の組成
【表1】
【0101】
異なる位置に2種の活性分子をカプセル化したコア−シェル構造ナノ粒子
本発明の方法の他の利点は、コア粒子内又はどのシェル内にもドーパントを1種以上カプセル化できることにある。各分子は、ナノ粒子の様々な位置に選択的にカプセル化され得、かつその濃度も各成長サイクルにおいて制御され得る。この方法により全粒径を制御することができるだけではなく、コアサイズ及び各シェルの厚さの両方も調整できるため、放出サイクルの長さ並びに様々な放出速度も潜在的に制御することができる。以下の実施例は、この技術の多用途性並びにカプセル化方法の柔軟性及び制御を説明することを目的とする。
【0102】
表2はナノ粒子の様々な位置にCu(NH3)42+及びRu(bPy)32+をドープした様々なサンプルの組成を列挙する。対応するTEM像を図19に示し、アセトン中に懸濁した粒子の写真を図20に示す。表3は、ナノ粒子の様々な位置にCu(NH3)42+及びCo(NH3)63+をドープした様々なサンプルの組成を列挙する。対応するTEM像を図21に示し、アセトン中に懸濁した粒子の写真を図22に示す。表4は、ナノ粒子の様々
な位置にCuPC2-及びRu(bPy)32+をドープした様々なサンプルの組成を列挙する。図23は対応する凍結乾燥した粉末(SiO2/NaCl質量比:15%)及び水中に再懸濁した粒子を示す。
表2:ドーパントとしてCu(NH3)42+及びRu(bPy)32+を用いた生成物1の組成
【表2】
表3:ドーパントとしてCu(NH3)42+及びCo(NH3)63+を用いた生成物2の組成及び粒径
【表3】
表4:ドーパントとしてCuPC2-及びRu(bPy)32+を用いた生成物3の組成
【表4】
【0103】
上記で言及したが、元素分析及びプロービングは、電子線が損傷を与えるために行うことができず、いくつかの明確なコアシェル構造は、TEMによって証明され得る。‘‘タマネギ’’型構造(図21−b、d、e、f、g参照)の存在は、特定のドーパントでの特定のシェルの選択的ドープの可能性を裏付ける。ドーパントをナノ粒子の様々な層に配置した図20、22及び23で観察された変色は、光学用途における該技術の可能性を更に説明する。
【0104】
固体コアのカプセル化
本発明の更なる特徴は、金属酸化物のシェル内に固体粒子をカプセル化する能力である。コアは、金属酸化物、半導体、量子ドット、磁性粒子又は結晶粒子等のあらゆる粉末種であり得る。
【0105】
シェルは、1種類の金属酸化物又は1種類より多くの異なる金属酸化物、複合金属酸化物又はドーパントを含む金属酸化物を含み得る。シリカシェル内における結晶質In2O3ナノ結晶の調製及びカプセル化の例を以下に詳述する。
【0106】
In2O3ナノ結晶を以下のように調製した:InCl3 1.017gを純水10mL中に溶解した。10M NH4OH 10mLを攪拌しながら該溶液に滴下添加し、沈殿物を形成させた。アンモニア臭が検出されなくなるまで、連続して洗浄すること(各回、50mLの水で5ないし10回)によって、Cl-イオン及びNH4+イオンを除去した。その後、HNO3(1M) 0.92mLを添加して沈殿物を解膠させ、懸濁液を55±5℃において一晩攪拌した。更に、1mol/LのHNO3 0.45mLを添加し、該懸濁液を、再度、55±5℃において一晩攪拌した。最終pHを測定すると2.284であり、TEMは、明確な面を有する5nm*10nmの晶子を示した。
その後、結晶を、以下の方法を使用してコーティングした。NP−9 6mmol、1−ペンタノール 6mmol、シクロヘキサン 30mL、6.667 mol/L NH4OH 0.972mLを含む溶液Aを、透明になるまで攪拌した。
【0107】
懸濁液中にNP−9 6mmol、1−ペンタノール 6mmol、シクロヘキサン 30mL、In2O3ナノ結晶 0.324mLを含む溶液Bを、透明になるまで攪拌した。2つの溶液A及びBを一緒に混合し、該混合物にTEOS 2.4mmolを添加した。該溶液を72時間老化した。その後、乾燥アセトン 50mLを結果として生じた懸濁液に添加してマイクロエマルジョンを不安定化し、粒子を回収した。粒子をアセトンで数
回洗浄し、TEMで測定した(図24参照)。TEM顕微鏡写真は、シリカナノ粒子内における50nmの棒のカプセル化を明らかに示した。
【0108】
コア又はシェル内における放射性トレーサーのカプセル化
シリカ粒子のあらゆる選択された位置(コア又は選択されたシェル)におけるIn−DTPA及びGa−DTPA等のキレート物質のカプセル化が上手く達成できた。EDSによって分析された金属含量は典型的には、シリカの1ないし2質量%であった。ドーパントの存在又は不存在と関係なく、粒径及び粒径分布が見られた。これは、本発明の方法によって、粒径及び内部構造を独立して制御することができることを裏付ける。
【0109】
67Ga−DTPA等の放射性トレーサーはまた、シリカナノ粒子内に容易にドープされ得るため、生体内にトレース可能な粒子を生成する。このような粒子は、以下の方法によって調製され得る。0.1mol/L HCL溶液中で2GBq/mL活性を有する67GaCl(t1/2:3.261日)をアンスト−サイクロトロン社から入手した。溶液を、水で10分の1に希釈した。DTPA 3.9mg/Lを含む濃アンモニア(25質量%
NH3) 0.428mLを、pH約2において、67GaCl3溶液 0.22mLに添加した。
【0110】
結果として生じた溶液は、コア中に、外側のシェル中に又は全粒子の至るところに活性ガリウムを有する粒子を生成するために、上記方法において水性溶液として使用され得る。これらの粒子は、検出法としてγ計数を使用してネズミ中のシリカ粒子の位置を研究する生体内分布研究において使用され得る。このようなナノ粒子の潜在用途として、放射線治療及び放射線イメージングが予期され得る。
【0111】
コア−シェル粒子からの放出
上記で言及したように、塩基触媒を使用したゾル−ゲル合成は、メソ多孔性粒子(即ち、約4nm)の生成をもたらし、そして該メソ多孔性粒子は、一般に、それらのペイロードの急速かつ非制御な放出を示す。このことに関する注目すべき例外は、金属カチオン及びシリカ表面間である程度の相互作用を示し得る有機金属錯体のカプセル化である。この場合、表面と錯体の相互作用は、カプセル化及びシリカナノ粒子構造内の分子の一時的な保持を確実にする。粒子は水相中に懸濁されるため、水に対するシリカ表面の強い親和性は、徐々に、活性有機金属錯体との吸着平衡を移動させ、それによりシリカマトリックスから分子を放出させ得る。大抵の場合、該放出は、シリカマトリックスの段階的な溶解によって為され得る。
【0112】
順次放出が可能であることを証明するために、コア及び外側のシェル中に異なるドーパントを有する2組のナノ粒子を合成した:a)外側のシェル中にCuPCを有し、かつコア中にRubpyを有するサンプル LNK−822、及びb)外側のシェル中にRubpyを有し、かつコア中にCuPCを有するサンプル LNK−824。これらの2つのサンプルからの放出をUV−可視分光法を使用して観察した。水中における2つの染料のUV可視スペクトルを図25に示し、かつSBF中における32日の浸出後の2つのサンプル(LNK−822及びLNK−824)のスペクトルを図26に示す。CuPCの最大吸収は556nmであり、Rubpyの最大吸収は390nmであった。2つのピーク間の重なりは小さいため、一次近似において無視され得る。1ないし12のpH範囲(粒子合成範囲に対応)において、pHによる(CuPC及びRubpyの)最大吸収波長の移動は観察されなかった。媒体をSBFに変えた場合、約60nmのレッドシフト(Rubpyにおいて390nmから450nm及びCuPCにおいて556nmから615nm)が両方の染料において観察された(図26参照)。サンプル LNK−824において、該領域においてRubpyの吸収がないことから、わずかな量のCuPCの放出を示唆するわずかな吸収が約615nmにおいて見られ得る。しかしながら、450nmにお
いてCuPCのわずかな吸収があるため、特にこのような少量のRubpy放出を定量化することは困難である。
【0113】
2つのコアシェル粒子の対応する放出曲線を図27に示す。CuPCが外側のシェル内にカプセル化された場合、それは、10日間かけて徐々に放出される。該時間後、多くの染料が放出されたことを示唆する、一定濃度のCuPCが、2、3日間にわたり観察された。正確な量は容易に定量化できないが、非常に少量のRubpyもコアから放出された。興味深いことに、LNK−822の色が、最初は緑色であったが(図23参照)、外側のシェルからのCuPCの放出後、オレンジ色に変化した(即ち、Rubpyでドープされたナノ粒子の色)ことにより、CuPCの順次放出が視覚により確認できた。他方、Rubpyが外側のシェルにドープされ、かつCuPCがコア中に存在する場合(LNK−824)、放出曲線は、5日間の間に殆どのRubpyが浸出したことを示す。コアからのCuPCの検出可能な浸出は観察されなかった。浸出の間、粒子の色は黄色から緑/青色に変化した(CuPCのみを含む粒子の元来の色)。これらの実験は、順次放出用途においてこれら多層状粒子を使用できることを裏付けた。
【0114】
分子及びシリカ細孔表面間に強い相互作用が存在しない場合、セラミックマトリックスは、カプセル化された分子と化学結合を形成し得る活性基(例えば、−NH2、−SH、−COOH等)で官能化され得る。このような方法を使用して、蛍光染料(フルオレセインイソチオシアネート(FITC)がアミン基で官能化されたシリカ粒子(APTES)中にカプセル化される。その後、活性分子−マトリックス相互作用のスクリーニング又は分断によって、放出がもたらされ得る。メソ多孔性粒子内に小さな分子をカプセル化するための他の方法は、カプセル化前に、それらをデキストラン又はデンドリマー等のより大きな粒子と結合させることである。
【0115】
本発明は、コア−シェル構造を有し、かつナノ粒子の様々な位置(即ち、シェル又は層)にカプセル化された活性分子又はドーパントを1種以上含む層状ナノ粒子の製造方法を提供する。該技術の利点は、全粒径、コアサイズ、シェルの厚さ、各シェル中の活性物質の濃度、並びに各カプセル化ドーパントの放出順序及び放出速度を正確に制御できることを含む。
【0116】
本発明者達は、小さな有機金属分子が粒子内にカプセル化され得ることを証明した。これらの分子は、金属錯体化合物(例えば、テトラアミン銅、ヘキサミンコバルト、インジウム−DTPA、ガリウム−DTPA)、無機染料、例えばRubpy[トリス(2,2’−ビピリジル)ジクロロルテニウム(II)六水和物]、CuPC[銅(II)フタロシアニン−テトラスルホン酸四ナトリウム塩]及び蛍光染料、FITC(フルオレセインイソチオシアネート)を含む。In2O3ナノ結晶等の錯体物さえもカプセル化できる。より重要なことには、本発明者達は異なる装填値を有するナノ粒子内の様々な位置にドーパントを1種以上カプセル化できることを示した。ナノ粒子構造、即ち、コアサイズ及び層の厚さは添加する前駆体の性質及び量等の加工パラメーターによって正確に制御され得る。粒子の単分散性は、各サイクルにおいて添加した水全てが、存在する粒子の表面に移動することを確実にすることによって、成長プロセスの間中、維持され得る。残りの空の水滴(即ち、粒子を含まないもの)は、第二核形成中心として作用し得る。成長速度は、前駆体の量の増加、触媒の添加又は少しの種材料の使用によって速められ得るが、多分散性が第4サイクル以降にもたらされる。種エマルジョンの極度の希釈もまた、多分散性ナノ粒子の生成をもたらす。
【0117】
本発明の方法によって生成されるナノ粒子は静注薬剤送達のために適当であるが、それらは、高密度光記憶装置、特定の光センサー又はバイオセンサー等の情報技術、及び腐食/酸化、焼結及び融合からのナノ粒子の保護/表面変性、表面特性の変化(表面、電荷、
ゼータ電位、懸濁性)等にも適用され得る。長期的には、該技術は、活性薬剤標的用の抗体又はペプチドによって容易に官能化され得る、−NH2、−SH、−COOH等の官能基を有する有機変性セラミック前駆体を含むシェルによってコーティングされたカプセル化活性分子を含むコア粒子を含むナノ粒子をつくるために使用され得る。
【0118】
図27aないし28fは、本発明に従ったいくつかの異なる層状ナノ粒子の図を示す。これらの図は、本発明に従ってつくられ得る多種多様なナノ粒子の内の2、3しか示していないこと、及び、該ナノ粒子の特定の使用方法のみが実施例に示されていることに注意すべきである。他の種類の粒子及びそれらの使用方法も可能であり、それらは、本願明細書から予期される。それ故、以下の記載は実施例のみとして解釈されるものであり、如何なる方法においても本発明の範囲を制限するものとしては解釈されない。
【0119】
図28aを参照すると、層状ナノ粒子10は、第一放出性ドーパントAを含む多孔性コア粒子15及びコア粒子15を囲む、第二放出性ドーパントBを含む多孔性層20を含む。ナノ粒子10が適当な液体環境中に置かれる場合、放出性ドーパントBが、まず、ナノ粒子10から放出され、その後、放出性ドーパントAが放出される。ドーパントBが放出されるところの時間期間は、層20の厚さに依存し得、ドーパントAが放出されるところの時間期間は、層20の厚さ並びにコア粒子15のサイズに依存し得る。放出速度は、ドーパントの性質並びにコア粒子15及び層20の性質及び細孔のサイズに依存し得る。さもなくば、ドーパントAが非放出性染料であるならば、ナノ粒子10は、ドーパントAによって着色を示し得、かつ放出性ドーパントBを放出し得る。更なる代替法として、ドーパントBが非放出性染料であり、かつドーパントAが放出性ドーパントである場合、ナノ粒子10はドーパントBによって着色を示し得、かつ放出性ドーパントAを放出し得る。
【0120】
図28bを参照すると、層状ナノ粒子30は、放出性ドーパントAを含む多孔性コア粒子35及び放出性ドーパントを含まない多孔性層40を含む。多孔性層40は、コア粒子35を囲む。ナノ粒子30が適当な液体環境中に置かれる場合、遅延時間後、放出性ドーパントAがナノ粒子10から放出される。遅延時間の長さは、多孔性層40の厚さ及び多孔率に依存する。
【0121】
図28cを参照すると、層状ナノ粒子50は、第一放出性ドーパントAを含む多孔性コア粒子55、コア粒子55を囲む第一多孔性層60及び第一多孔性層60を囲む第二多孔性層65を含む。第一層60は放出性ドーパントを含まず、第二多孔性層65は第二放出性ドーパントBを含む。ナノ粒子50が適当な液体環境中に置かれる場合、第二放出性ドーパントB及び第一放出性ドーパントAが、ドーパントB及びAの放出遅延時間後に順次放出される。遅延時間の長さは、第一層60の厚さ及び多孔率に依存する。
【0122】
図28dを参照すると、層状ナノ粒子70は、第一放出性ドーパントAを含む多孔性コア粒子75、コア粒子75を囲む、第二放出性ドーパントBを含む第一多孔性層80及び第一層80を囲む、第三放出性ドーパントCを含む第二多孔性層85を含む。ナノ粒子70が適当な液体環境中に置かれる場合、まず、放出性ドーパントCがナノ粒子70から放出され、その後、放出性ドーパントBが放出され、最後に、放出性ドーパントAが放出される。ナノ粒子70からのドーパントA、B及びCの放出時期は、層80及び85の厚さ及び多孔率及びコア粒子75のサイズに依存する。
【0123】
図28eを参照すると、ナノ粒子90は、多孔性コア粒子95とコア粒子95を囲む同心の多孔性層100、105、110及び115を含む。コア粒子95及び同心の層105及び115は、それぞれ、放出性ドーパントA、B及びCを含み、層100及び110は放出性ドーパントを含まない。ナノ粒子90が適当な液体環境中に置かれる場合、まず、放出性ドーパントCがナノ粒子90から放出され、その後、放出性ドーパントBが放出
され、最後に、放出性ドーパントAが放出される。ドーパントCとドーパントBの放出間には遅延時間があり、かつドーパントBとドーパントAの放出間には他の遅延時間がある。遅延時間は、それぞれ、層110及び100の厚さ及び多孔率によって制御され得る。
【0124】
図28fを参照すると、ナノ粒子120は、放出性ドーパントAを含む多孔性コア粒子125及びコア粒子125を囲む多孔性層130を含む。多孔性層130は、放出性ドーパントB及びCを含む。ナノ粒子120が適当な液体環境中に置かれる場合、まず、ドーパントB及びCがナノ粒子120から放出され、その後、ドーパントAが放出される。さもなくば、ドーパントAが非放出性染料である場合、ナノ粒子120はドーパントAによって着色を示し得、かつ放出性ドーパントB及びCが放出され得る。更なる代替法として、ドーパントBが非放出性染料であり、かつドーパントA及びCが放出性ドーパントである場合、ナノ粒子120はドーパントBによって着色を示し得、かつ放出性ドーパントC及びAを順次放出し得る。
【0125】
多数の染料のカプセル化
上記実験において、コア中にCuPC2-を、外側のシェル中にRu(bPy)32+をカプセル化することにより、CuPC2-及びRu(bPy)32+をシリカナノ粒子中にカプセル化した(逆の場合も同じ)。サンプル−Iのコア中及びサンプル−IIの外側の層中の各染料の量は異なる。従って、これらの2つのサンプルは、視覚的に異なる色を示す(図23、サンプル LNK−822及びLNK−824)。以下の実験において、表5に示すように、同量の各染料を異なるサンプル中にドープした。粒子は、合成及び凍結乾燥後、視覚的に同一の色を示し、そしてこれは、ナノ粒子の色が、ナノ粒子中の染料の位置よりむしろ染料成分及びそれらの濃度に依存することを示唆する。
表5:ナノ粒子にドープした染料成分
【表5】
【0126】
図29は、37℃におけるPBS(リン酸塩緩衝溶液)中での各サンプルの染料放出を示す。多層状粒子から放出される染料のほとんどは、外側のシェル中にカプセル化されたものである、即ち、LNK879(図29−A)及びLNK880(図29−B)においては、それぞれ、CuPC2-及びRu(bPy)32+である。LNK879において、CuPCの濃度は、18日目及び40日の間で、おおよそ一定に保たれた。その後、CuPCの濃度は実質的に減少した。本発明者達は、これは、CuPCの分解のため、又は、CuPCと容器壁との会合により起こり得ると仮定した。放出特性の初期段階において、CuPCの濃度は増加するか又は実質的に一定のままであった。本発明者達は、これは染料の放出速度が分解速度よりも高いことを示し得ると仮定した。図29−Aは、コア中の染料(Ru(bPy)32+)が約30日後に放出し始めたことを示し、これは、多層粒子の含有物の順次放出が起こったことを示唆する。図29−Bにおいて、わずかな量のCuPCが同時に浸出し、その後、50日後に分解されたとはいえ、シェル中の染料(Ru(bPy)32+)は、64日目まで連続放出された。これらの結果から、放出速度特性は、粒子中の様々な位置の様々なドーパントの性質に基づき調節可能であり得ると考えられる。図29Aは、最初の2週間にシェルから最初の染料の放出があり、30日後にコアから他の染料の放出があるところの順次放出を示す。シェルからの染料の強度の減少は、図Bか
らも明らかなCuPC(コア中のCuPC)の時間による分解によって説明され得る。図29−Bは、順次放出を示さないが、シェルからのルテニウム染料の段階的放出及びコアからの小規模なバースト放出を示す。
【0127】
有機染料のカプセル化を増強するORMOSILシェルの形成
上記実験において、イソチオシアネート(−N=C=S)基とアミン基間の化学結合のため、蛍光染料、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)をAPTES等のカップリング剤の存在下においてシリカマトリックス内にカプセル化した。今回の実験において、ORMOSILシェルでコーティングしたシリカナノ粒子内に有機染料をカプセル化することを試みた。これは、細孔サイズを縮小するため、染料放出速度を減少させ得ることが予期される。実験フローチャートを図30に示し、対応するTEM像を図31に示す。合成は、上記した典型的な方法を用いて行った。粒子表面を変性するために、いくつかの選択肢を研究した。各サンプルの成分及び対応する最終生成物の粒径を表6に示す。粒子aは、TEOSのみでつくられた最初のコアを示す。粒子bは、TEOS 75%及びAPTES 25%の前駆体混合物を使用してつくられたコアである。粒子cは、TEOSのみを使用してつくられたコア−シェル粒子である。粒子d及びeは、dがAPTES
30mol%、eがAPTES 50mol%を有するORMOSIL変性シェルを有する。粒子fは、ORMOSILコア及びORMOSILシェルを有する。全ての粒子は、ほぼ同一の粒径を有するが、ORMOSIL変性粒子はわずかに広い粒径範囲を示した。
【0128】
合成中の有機相を合わせ、洗浄した後、オレンジ−IIのカプセル化効率をUV/Vis吸着によって測定した。オレンジ−IIは有機染料であるため、それが純粋な有機物であり、かつシリカ表面と強い相互作用を有さないという点で、前実施例のRuBpy及びCuPCとは顕著に異なる。外側のシェル中にAPTESを有さないか又は外側のシェル中にAPTES 30mol%を有する3つのサンプル(LNK 1120、LNK 1121及びLNK1123)のカプセル化効率の値は平均約5ないし14質量%であったが、外側のシェル中にAPTES 50mol%を有するサンプル(LNK 1122)のカプセル化効率は約45質量%であった。有機染料のカプセル化効率は、他の因子の内で、染料の性質、その量、染料とシリカの質量比、層を含むORMOSILのモル百分率及びORMOSILの厚さに基づくと考えられる。これは、ORMOSIL前駆体の有機基が合成及び洗浄中にシリカマトリックスから染料が浸出するのを防止する役割を果し得ることを示す。更に、この効果は、各ORMOSIL前駆体の官能基に基づくと考えられる。染料が非常に急速に浸出することを防止するために、GLYMO(エポキシ官能シラン)が大抵のORMOSILよりも効果的であることが分かった。
表6:ORMOSILシェル粒子の成分及び粒径
【表6】
【0129】
粒子単分散性を維持しながら粒径を増加させるための他の方法
高い界面活性剤濃度
粒径が100nm以上である場合、エマルジョン系が濁り、粒子が水滴の外に沈殿し始め、最終的に、攪拌なしで2つの物理相を形成することが観察された。補助界面活性剤がその機能を損失し、より高濃度の界面活性剤が懸濁液中に粒子を維持し得ると仮定できる。図32は、様々な界面活性剤条件を使用して生成したシリカ粒子のTEM像を示す。[水]/[NP−9]モル比=6で、NP−9 0.2mol/L、1−ペンタノール 0.2mol/Lを用い典型的な合成方法を使用して、最初の種(図32、a及びbに示した74nmないし86nmの粒径を有するコア−シェル粒子)を生成した。
【0130】
コア+2−層及びコア+3−層粒子は、上記で生成した種から形成した。補助界面活性剤(1−ペンタノール)を追加添加することなく、界面活性剤濃度を0.4mol/L(その後の[水]/[NP−9]モル比=3)及び0.6mol/L([水]/[NP−9]モル比=2)まで増加させた。図32c及びeは、補助界面活性剤を追加することなく、最初のシェルへの添加だけで、単分散の粒子を生成することを示す。しかしながら、他の層が成長するにつれ(図32d及びf)、直径約20nmのより小さな粒子が生成した。これらの結果は、補助界面活性剤の存在は、粒子が約100nmより大きく、かつ安定し始める場合でさえ、単分散粒子の形成には必要不可欠であることを示唆する。
【0131】
界面活性剤及び補助界面活性剤の双方を、0.2mol/Lから0.4mol/Lに増加させた場合、2又は3つのシェルを有する粒子は狭い粒径分布を保持するが(図32g及びh)、0.2mol/Lの界面活性剤を用いて合成したものと比べて、顕著に大きな成長はない。
【0132】
2つの成長プロセスの組み合わせ
上記で討論したように、粒径は、エマルジョン中に導入されるシリコン前駆体の増加に伴い、徐々に増加する(図2)。しかしながら、アルコキシドのみの添加(更なる水なし)は、空のシェルに囲まれた活性ドーパントを含むコアを有する粒子の生成をもたらす。
更に、一定量のアルコキシドの添加後、水プール中の全ての水が消費され、更なる成長ができない。これは、水プール中に存在する水の少量しか自由にならず、アルコキシドの凝縮に加わることができないため、マイクロエマルジョンに更なる悪影響を及ぼす。多くの水は、界面活性剤の極性頭部基の溶媒和水としてミセルの壁と結合している。
【0133】
本発明の1つの実施形態において、より多くのエマルジョンが添加され、より高い温度(約55℃)において数時間、定温放置する工程によって、更なる水が存在する粒子表面上に移される(図3)。それでもなお、数回の成長サイクル後、シリカ粒子は多分散される。これは、各定温放置プロセスの間、水は存在する粒子表面上に分布されるだけではなく、新たな空の水滴を形成するという事実によって説明され得る。考えられる他の因子は、粒径の増加に伴い、エマルジョン系がもはや均一及び熱力学的に安定ではなく、粒子が沈殿することにある。結果として、定温放置プロセスの回数は、単分散性を維持するために又はできるだけ多分散性を狭くするために、最少にすべきである。
【0134】
図33は、上記した2つの成長技術を組み合わせること(即ち、エマルジョン成分の添加と併せた散在させるTEOSの複合添加)による層状ナノ粒子の生成方法を説明する。各定温放置サイクルの間、シリコン前駆体を典型的な方法における1回よりむしろ2回添加した。図34は、全プロセスを通じて水と界面活性剤のモル比が6であるところの、各成長段階における粒子のTEM像を示す。最初の種は約55nmであった。3回の定温放置サイクルの後、約200ないし240nmの範囲の粒径を有する最初の種を7層でコーティングした。この時点において、水とシリコンアルコキシドのモル比はわずかに4より大きかった。この新規方法の結果は、より少数の定温放置工程を使用して、粒径を200nm以上に増加させ得ることを示した。
【0135】
全成長方法において、より高い水の界面活性剤に対するモル比を使用し、それによってより多くの水を系に与えるべきであるといえる。図35は、成長プロセスにおいて、水と界面活性剤のモル比=9で合成した粒子のTEM像を示す。[水]/[界面活性剤]=6の系と比べて、[水]/[界面活性剤]=9の系の最初の種は、大きくない。しかしながら、粒径は、同一の成長方法下で、[水]/[界面活性剤]=9の系の方がより速く増加した。コア+3−層粒子において、粒径は、約158−172nmまで増加したが、添加後、小さな粒子が発生した。これは、単分散性粒子がこの高い水と界面活性剤の比を使用しても良好に成長し得ないことを示す。
【0136】
高温における合成
上記したように、層状ナノ粒子を生成するには数日間かかり得る。反応時間を短縮するために、より高い温度において実験を行った。図36は、35℃又は50℃において合成したナノ粒子のTEM像を示す。35℃、20時間の老化時間において、30−50nmの粒子が生成した。同じ温度において、48時間の老化時間を使用すると、粒径は約48−62nmに増加した。老化時間を20時間から48時間に増加すると、50℃において、粒径は37−52nmから48−70nmに増加した。相対的に、室温において、ナノ粒子の粒径範囲は、48時間の老化で約50−60nmであった(図34−a)。この結果は、粒径は時間と共に増加するが、反応温度とはあまり関係がないことを示す。高温反応は、ゾル−ゲル反応の急速な完了をもたらさないが、広い粒径分布を有する粒子を生成する。
【0137】
図37は、水と界面活性剤のモル比=8で、より高い反応温度において生成したコア−シェル粒子を示す。反応温度(35又は50℃)に関わらず、反応時間が20時間から48時間に増加すると、平均粒径は約10−15nm増加した。
【0138】
粒径に対する定温放置効果
上記したように、層状ナノ粒子を生成するために、種を室温において作成し、その後、大部分のTEOSが完全に反応することを確実にするために、55±5℃において1時間、定温放置工程を行った。その後、新たなエマルジョン成分を懸濁液に添加し、55±5℃において6時間、該混合物の定温放置工程を行い、新たに添加した水全てを存在する粒子の表面上に吸着させた。図38は、様々な定温放置工程におけるシリカ粒子の粒径を示す。定温放置前、粒子は、約76−88nmの粒径範囲であった。55±5℃における1時間の定温放置後、粒径は、約82−96nmにわずかに増加した。しかしながら、水を追加添加し、その後、55±5℃において6時間、系を定温放置した後、平均粒径はほとんど変化せず、わずかに広い粒径分布を示した。より長い定温放置時間においても、粒径の増加は観察されず、これは、1時間後、ほぼ全てのシリコンアルコキシドが反応したことを示唆する。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】図1は、塩基の存在下におけるゾル−ゲル反応順序を示す。
【図2】図2は、ドーパントがコアのみに含まれるところの多層ナノ粒子の製造方法のフローチャートを示す。
【図3】図3は、多数のドーパントを有する多層ナノ粒子の製造方法のフローチャートを示す。
【図4】図4は、NP−9/1−ペンタノール/シクロヘキサン/NH4OH/TEOS系中で製造した粒子のTEM顕微鏡写真を示す(平均径:55±5nm)。
【図5】図5は、コア−シェル構造を有する不均一なシリカ粒子のTEM像を示す。
【図6】図6は、シリカ粒子上の界面活性剤残渣のTGA/DTA測定のグラフを示す。
【図7】図7は、以下のマイクロエマルジョン系中で製造したシリカ粒子のTEM顕微鏡写真を示す:a)NP−5/シクロヘキサン/NH4OH/TMOS、b)NP−9/1−ペンタノール/シクロヘキサン/NH4OH/TMOS及びc)トリトン X−100/トルエン/NH4OH/TMOS。
【図8】図8は、TMOSの逐次添加による粒子成長を説明するTEM顕微鏡写真を示す:a)コア(22nm)、b)1.2mmolのTMOS(27nm)の第1添加、c)第2添加(31nm)、d)第3添加(33nm)、e)第4添加(36nm)。
【図9】図9は、TEOSの逐次添加による粒子成長を説明するTEM顕微鏡写真を示す:a)コア(50nm)、b)1.2mmolのTEOS(83−92nm)の第1添加、c)第2添加(91−106nm)、d)第3添加(102−120nm)、e)第4添加(108−129nm)、f)第5添加(128−146nm)。
【図10】図10は、新規成長プロセスの原理を説明する概略図を示す。
【図11】図11は、コア−シェル構造のTEM顕微鏡写真を示す:a)明視野像(暗い領域は重元素を示す。)、b)暗視野像(明るい領域は重元素を示す。)。
【図12】図12は、ビーム像を示すコア−シェル構造のTEM顕微鏡写真を示す:a)明視野像、b)EDX線形後の暗視野像。
【図13】図13は、コア−シェル粒径上に添加する方法の影響を説明する顕微鏡写真を示す。
【図14】図14は、以下のものを使用して合成した粒子のTEM顕微鏡写真を示す:a)4サイクル(コア+4つのシェル)及びb)5サイクル(コア+5つのシェル)。
【図15】図15は、希釈度(新しいエマルジョンの体積/種エマルジョンの体積)がA)2、B)3、C)4、D)5のところの様々な希釈度を使用した粒子成長のTEM顕微鏡写真を示す。 a)サンプル1、銅をドープしたシリカコア、追加添加した水性相:Cu(NH3)42+の形態でCu10.14mg/mLを有するNH4OH 1.333mol/L。 b)サンプル2、銅をドープしたシリカコア、追加添加した水性相:銅なしのNH4OH 1.333mol/L。
【図16】図16は、種エマルジョンと新たなエマルジョンの混合において様々な方法を使用して製造した粒子のTEM顕微鏡写真を示す。
【図17】図17は、TEOSを使用して形成した粒子コア及びTMOSを使用して形成したシェルのTEM顕微鏡写真を示す(図5において使用したものと同一の合成条件)。
【図18】図18は、OrmosilシェルでコーティングしたシリカコアのTEM顕微鏡写真を示す。
【図19】図19は、表2に列挙した組成を有するサンプルのTEM顕微鏡写真を示す。
【図20】図20は、表1に列挙した組成を有し、かつアセトン中に懸濁させたサンプルの写真を示す。
【図21】図21は、表3に列挙した組成を有するサンプルのTEM顕微鏡写真を示す。
【図22】図22は、表3に列挙した組成を有し、かつアセトン中に懸濁させたサンプルの写真を示す。
【図23】図23は、表4に列挙した組成を有するサンプルの写真を示す:a)凍結乾燥(SiO2/NaCl 質量比:15%)、b)ミリ−Q水中に懸濁。
【図24】図24は、懸濁液中のIn2O3ナノ結晶及びシリカシェルでコーティングしたIn2O3ナノ結晶の顕微鏡写真を示す。
【図25】図25は、中性水中のCuPC(黒色の線、λmax:556nm)及びRubpy(灰色の線,λmax:390nm)のUV−可視スペクトルを示す。
【図26】図26は、32日後のSBF中のサンプルLNK−822(黒色の線、λmax:615nm)及びLNK−824(灰色の線、λmax:450nm)のUV−可視スペクトルを示す。
【図27】図27は、以下のものの放出速度曲線を示す:a)サンプルLNK−822(37℃のSBF 20mL中に凍結乾燥粉末 1.022g、λmax=615nm)、b)サンプルLNK−824(37℃において、SBF 20mL中に凍結乾燥粉末 0.6055g、λmax=450nm)、ここで、凍結乾燥粉末は、SiO2 15質量%及びNaCl 85質量%を含む。
【図28】図28のaないしfは、本発明に従った様々な層状ナノ粒子の図表示を示す。
【図29】図29は、UV/可視吸収を使用して測定した以下のものの放出速度曲線を示す; サンプル:(A)LNK−879及び(B)LNK−880。 凍結乾燥粉末2gを37℃においてSBF 20mL中に懸濁させた(ここで、凍結乾燥粉末は、SiO2 15質量%及びNaCl 85質量%を含む。)。 ▲CuPC、λmax=615nm、■Rubpy、λmax=450nm。
【図30】図30は、より多くのエマルジョン成分の添加によりORMOSIL表面を有する染料カプセル化シリカナノ粒子の合成フローチャートを示す。
【図31】図31は、より多くのエマルジョン成分を添加することにより製造したORMOSIL表面を有するシリカナノ粒子のTEM像を示す:(a)TEOSによる種、(b)混合前駆体による種、(c)TEOSによるコア−シェル粒子、(d)及び(e)ORMOSILシェルを有するシリカコア、(f)表6に詳述したORMOSILコア及びシェル。
【図32】図32は、様々な界面活性剤濃度におけるシリカ粒子のTEM像を示す:(a)、(b)NP−9 0.2mol/L及び1−ペンタノール 0.2mol/Lによってつくられた種粒子、74−86nm、(c)1−ペンタノールなしでNP−9 0.4mol/Lによってつくられたコア+2−層粒子、109−123nm、(d)1−ペンタノールなしでNP−9 0.4mol/Lによってつくられたコア+3−層粒子、132−152+20nm、(e)1−ペンタノールなしでNP−9 0.6mol/Lによってつくられたコア+2−層粒子、106−126nm、(f)1−ペンタノールなしでNP−9 0.6mol/Lによってつくられたコア+3−層粒子、132−145+20nm、(g)NP−9 0.4mol/L、1−ペンタノール 0.4mol/Lによってつくられたコア+2−層粒子、100−131nm、(h)NP−9 0.4mol/L、1−ペンタノール 0.4mol/Lによってつくられたコア+3−層粒子、128−179nm。
【図33】図33は、本発明に従った2つの成長技術を組み合わせることによる層状シリカナノ粒子の製造フローチャートを示す。
【図34】図34は、[H2O]/[界面活性剤]=6のモル比において2つの成長技術を組み合わせることにより製造したシリカ粒子のTEM像を示す:(a)種:50−60nm、TEOS 1.2mmol、H2O 36mmol、[H2O]/[TEOS]=30、(b)コア+1−層:61−76nm、TEOS 4.8mmol、H2O 36mmol、[H2O]/[TEOS]=7.5、(c)コア+2−層:95−113nm、TEOS 9.6mmol、H2O 72mmol、[H2O]/[TEOS]=7.5、(d)コア+3−層:100−135nm、TEOS 14.4mmol、H2O 72mmol、[H2O]/[TEOS]=5、(e)コア+4−層:136−166nm、TEOS 24mmol、H2O 144mmol、[H2O]/[TEOS]=6、(f)コア+5−層:146−172nm、TEOS 33.6mmol、H2O 144mmol、[H2O]/[TEOS]=4.3、(g)コア+7−層:200−240nm、TEOS 52.8mmol、H2O 216mmol、[H2O]/[TEOS]=4.1。
【図35】図35は、[H2O]/[界面活性剤]=9のモル比において2つの成長技術を組み合わせることにより製造したシリカ粒子のTEM像を示す:(a)種:50−61nm、TEOS 1.2mmol、H2O 54mmol、[H2O]/[TEOS]=45、(b)コア+1−層:70−87nm、TEOS 4.8mmol、H2O 54mmol、[H2O]/[TEOS]=11.3、(c)コア+2−層:95−117nm、TEOS 9.6mmol、H2O 162mmol、[H2O]/[TEOS]=16.9、(d)コア+3−層:158−172nm、TEOS 14.4mmol、H2O 162mmol、[H2O]/[TEOS]=11.3、(e)コア+4−層:2つのサイズのナノ粒子、TEOS 24mmol、H2O 378mmol、[H2O]/[TEOS]=15.8、(f)コア+5−層:広範囲のサイズのナノ粒子、TEOS 33.6mmol、H2O 378mmol、[H2O]/[TEOS]=11.3。
【図36】図36は、[H2O]/[界面活性剤]=6のモル比において高温で合成したシリカナノ粒子のTEM像を示す:(a)35−50nm、35±2℃において20時間老化、(b)48−62nm、35±2℃において48時間老化、(c)37−52nm、50±2℃において20時間老化、(d)48−70nm、50±2℃において48時間老化。
【図37】図37は、[H2O]/[界面活性剤]=8のモル比において高温で合成したシリカナノ粒子のTEM像を示す:(a)種:35−68nm、室温、35±2℃において48時間老化:コア−シェル粒子、(b)75−100nm、35±2℃において20時間老化、(c)78−113nm、35±2℃において28時間老化、(d)81−117nm、35±2℃において48時間老化、(e)78−105nm、50±2℃において20時間老化、(f)80−107nm、50±2℃において28時間老化、(g)86−120nm、50±2℃において48時間老化。
【図38】図38は、様々な定温放置段階におけるシリカ粒子のTEM像を示す:(a)定温放置前(76−88nm)、(b)追加の水を添加する前に、1時間、55±5℃で定温放置(82−96nm)、(c)追加の水を添加した後に、6時間、55±5℃で定温放置(74−100nm)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
層状ナノ粒子の形成方法であって、
−第一液体中にコア粒子を含む懸濁液を得ること、
−該第一液体と非混和性の第二液体を該懸濁液に添加すること、及び、
−試薬又は該試薬の前駆体を、該第二液体を含む懸濁液に添加すること
を含み、
前記試薬が前記第二液体を含む懸濁液に添加されるならば、該試薬は反応してコア粒子上に層を形成し、また、前記試薬の前駆体が前記第二液体を含む懸濁液に添加されるならば、該前駆体は前記試薬に転換され、そしてこのようにして形成された試薬が反応してコア粒子上に層を形成して、前記層状ナノ粒子を形成するところの方法。
【請求項2】
前記第一液体が非極性液体である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記懸濁液が第一界面活性剤を含み、かつ前記試薬又は前記試薬の前駆体の添加工程前に、第二非極性液体及び第二界面活性剤を添加する工程を含むところの請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第二非極性液体が前記第一液体と同一のものである請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第二非極性液体及び前記第二界面活性剤が、前記第一液体+前記第二非極性液体と第一界面活性剤+第二界面活性剤との比がv/v、v/w、w/w、v/mol又はw/molに基づき一定のままであるように添加される請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記液体中で前記コア粒子を得る工程が、前記第一液体中で前記コア粒子を形成することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記コア粒子が、実質的に均一に分布したコアドーパントを有する請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第二液体が、前記層が層ドーパントを含むように該層ドーパントを含む請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記層ドーパントが放出性物質である請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記試薬の反応が、前記層ドーパントが前記層の至るところに実質的に均一に分布されるように行われる請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記コア粒子がナノ粒子又はサブミクロン粒子である請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記コア粒子及び前記層の少なくとも一方が多孔性である請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記第二液体を添加する工程及び前記試薬又は前記前駆体を添加する工程を1回以上繰り返すことにより多数の層を形成する請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記第二液体が水性である請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前駆体が前記懸濁液に添加される場合、該前駆体は前記第二液体と反応して試薬を形成することができる請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記試薬が、凝縮性物質、架橋性物質又は重合性物質を含む請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記前駆体が加水分解性物質であり、かつ前記第二液体が水性であって、該前駆体が加水分解して前記試薬を形成することができる請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記前駆体が加水分解性シランである請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記前駆体が加水分解性物質であり、かつ前記第二液体が水性液体であるところの請求項1に記載の方法であって、該方法は、以下の工程
−該水性液体中で該加水分解性物質を加水分解して、凝縮性物質を形成する工程、及び、−該水性液体中で該凝縮性物質を凝縮し、前記層を形成する工程
を含むところの方法。
【請求項20】
前記加水分解性物質を加水分解する工程が、該加水分解性物質を加水分解するために十分な時間、十分な温度において前記懸濁液を維持することを含む請求項19に記載の方法。
【請求項21】
更に以下の工程
−前記第一液体から前記層状ナノ粒子を少なくとも部分的に分離する工程、
−前記層状ナノ粒子を水性液体で洗浄する工程、
−前記層状ナノ粒子を有機液体で洗浄する工程、
−前記層状ナノ粒子を乾燥又は凍結乾燥する工程
の1つ以上を含む請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記懸濁液を得る工程が
−前記第一液体中に分散された水性液滴を含むエマルジョンであって、前記エマルジョンは更に界面活性剤を含み、前記液滴は加水分解後の凝縮性物質の凝縮のための触媒を含むところのエマルジョンを得ること、及び、
−該エマルジョンに、前記水性液滴中で加水分解して前記凝縮性物質を形成することができる加水分解性物質を添加することを含み、
それによって、前記凝縮性物質は前記触媒の存在下において凝縮して前記第一液体中にコア粒子の懸濁液を形成するところの請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記エマルジョンがマイクロエマルジョンである請求項22に記載の方法。
【請求項24】
多孔性コア粒子及び前記コア粒子を少なくとも部分的に囲む1つ以上の層を含む層状ナノ粒子であって、該コア及び該1つ以上の層から選択されるナノ粒子の少なくとも1つの領域は実質的に均一に分布されたドーパントを含む層状ナノ粒子。
【請求項25】
−コアドーパントを含む前記多孔性コア粒子、及び、
−前記コア粒子を少なくとも部分的に囲む、層ドーパントを含む多孔性層
を含む請求項24に記載の層状ナノ粒子。
【請求項26】
前記コアドーパント及び前記層ドーパントの少なくとも1方が層状ナノ粒子から放出可能である請求項25に記載の層状ナノ粒子。
【請求項27】
前記ナノ粒子が、層の放出性ドーパント及びコアの放出性ドーパントを、順に放出することができる請求項26に記載の層状ナノ粒子。
【請求項28】
以下の工程
−第一液体中にコア粒子を含む懸濁液を得ること、
−該第一液体と非混和性の第二液体を該懸濁液に添加すること、及び、
−試薬又は該試薬の前駆体を、該第二液体を含む懸濁液に添加すること
を含み、
前記試薬が前記第二液体を含む懸濁液に添加されるならば、該試薬は反応してコア粒子上に層を形成し、また、前記試薬の前駆体が前記第二液体を含む懸濁液に添加されるならば、該前駆体は前記試薬に転換され、そしてこのようにして形成された試薬が反応してコア粒子上に層を形成して、前記層状ナノ粒子を形成するところの方法によって製造された層状ナノ粒子。
【請求項29】
多数の層状ナノ粒子を含み、該粒子の各々が多孔性コア粒子及び前記コアを少なくとも部分的に囲む1つ以上の層を含むナノ粒子状物質であって、狭い粒子径分布を有するナノ粒子状物質。
【請求項30】
前記コア及び前記1つ以上の層から選択された、前記ナノ粒子の少なくとも1つの領域が、実質的に均一に分布されたドーパントを含む請求項29に記載のナノ粒子状物質。
【請求項31】
多孔性コア粒子及び前記コア粒子を少なくとも部分的に囲む1つ以上の層を含む層状ナノ粒子を流体に曝露することを含む、該流体に放出性物質を送達するための方法であって、該層状ナノ粒子は前記層の少なくとも1つ又は前記コア粒子に実質的に均一に分布された放出性物質を有し、かつ該流体は前記層状ナノ粒子から前記放出性物質を少なくとも部分的に放出することができるところの方法。
【請求項32】
患者に薬剤を投与するための方法であって、前記方法は、多孔性コア粒子及び前記コア粒子を少なくとも部分的に囲む1つ以上の層を含む層状ナノ粒子を患者に送達することを含み、該層状ナノ粒子は前記層の少なくとも1つ又は前記コア粒子に実質的に均一に分布された前記薬剤を有するところの方法。
【請求項33】
患者に薬剤を投与するための多孔性コア粒子及び前記コア粒子を少なくとも部分的に囲む1つ以上の層を含む層状ナノ粒子の使用であって、前記層状ナノ粒子は、前記層の少なくとも1つ又は前記コア粒子に実質的に均一に分布された薬剤を有するところの使用。
【請求項34】
混合物の少なくとも1つの成分の選択的な収着(selective sorption)のための、多孔性コア粒子及び前記コア粒子を少なくとも部分的に囲む1つ以上の層を含む層状ナノ粒子の使用。
【請求項1】
層状ナノ粒子の形成方法であって、
−第一液体中にコア粒子を含む懸濁液を得ること、
−該第一液体と非混和性の第二液体を該懸濁液に添加すること、及び、
−試薬又は該試薬の前駆体を、該第二液体を含む懸濁液に添加すること
を含み、
前記試薬が前記第二液体を含む懸濁液に添加されるならば、該試薬は反応してコア粒子上に層を形成し、また、前記試薬の前駆体が前記第二液体を含む懸濁液に添加されるならば、該前駆体は前記試薬に転換され、そしてこのようにして形成された試薬が反応してコア粒子上に層を形成して、前記層状ナノ粒子を形成するところの方法。
【請求項2】
前記第一液体が非極性液体である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記懸濁液が第一界面活性剤を含み、かつ前記試薬又は前記試薬の前駆体の添加工程前に、第二非極性液体及び第二界面活性剤を添加する工程を含むところの請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第二非極性液体が前記第一液体と同一のものである請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第二非極性液体及び前記第二界面活性剤が、前記第一液体+前記第二非極性液体と第一界面活性剤+第二界面活性剤との比がv/v、v/w、w/w、v/mol又はw/molに基づき一定のままであるように添加される請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記液体中で前記コア粒子を得る工程が、前記第一液体中で前記コア粒子を形成することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記コア粒子が、実質的に均一に分布したコアドーパントを有する請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第二液体が、前記層が層ドーパントを含むように該層ドーパントを含む請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記層ドーパントが放出性物質である請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記試薬の反応が、前記層ドーパントが前記層の至るところに実質的に均一に分布されるように行われる請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記コア粒子がナノ粒子又はサブミクロン粒子である請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記コア粒子及び前記層の少なくとも一方が多孔性である請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記第二液体を添加する工程及び前記試薬又は前記前駆体を添加する工程を1回以上繰り返すことにより多数の層を形成する請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記第二液体が水性である請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前駆体が前記懸濁液に添加される場合、該前駆体は前記第二液体と反応して試薬を形成することができる請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記試薬が、凝縮性物質、架橋性物質又は重合性物質を含む請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記前駆体が加水分解性物質であり、かつ前記第二液体が水性であって、該前駆体が加水分解して前記試薬を形成することができる請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記前駆体が加水分解性シランである請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記前駆体が加水分解性物質であり、かつ前記第二液体が水性液体であるところの請求項1に記載の方法であって、該方法は、以下の工程
−該水性液体中で該加水分解性物質を加水分解して、凝縮性物質を形成する工程、及び、−該水性液体中で該凝縮性物質を凝縮し、前記層を形成する工程
を含むところの方法。
【請求項20】
前記加水分解性物質を加水分解する工程が、該加水分解性物質を加水分解するために十分な時間、十分な温度において前記懸濁液を維持することを含む請求項19に記載の方法。
【請求項21】
更に以下の工程
−前記第一液体から前記層状ナノ粒子を少なくとも部分的に分離する工程、
−前記層状ナノ粒子を水性液体で洗浄する工程、
−前記層状ナノ粒子を有機液体で洗浄する工程、
−前記層状ナノ粒子を乾燥又は凍結乾燥する工程
の1つ以上を含む請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記懸濁液を得る工程が
−前記第一液体中に分散された水性液滴を含むエマルジョンであって、前記エマルジョンは更に界面活性剤を含み、前記液滴は加水分解後の凝縮性物質の凝縮のための触媒を含むところのエマルジョンを得ること、及び、
−該エマルジョンに、前記水性液滴中で加水分解して前記凝縮性物質を形成することができる加水分解性物質を添加することを含み、
それによって、前記凝縮性物質は前記触媒の存在下において凝縮して前記第一液体中にコア粒子の懸濁液を形成するところの請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記エマルジョンがマイクロエマルジョンである請求項22に記載の方法。
【請求項24】
多孔性コア粒子及び前記コア粒子を少なくとも部分的に囲む1つ以上の層を含む層状ナノ粒子であって、該コア及び該1つ以上の層から選択されるナノ粒子の少なくとも1つの領域は実質的に均一に分布されたドーパントを含む層状ナノ粒子。
【請求項25】
−コアドーパントを含む前記多孔性コア粒子、及び、
−前記コア粒子を少なくとも部分的に囲む、層ドーパントを含む多孔性層
を含む請求項24に記載の層状ナノ粒子。
【請求項26】
前記コアドーパント及び前記層ドーパントの少なくとも1方が層状ナノ粒子から放出可能である請求項25に記載の層状ナノ粒子。
【請求項27】
前記ナノ粒子が、層の放出性ドーパント及びコアの放出性ドーパントを、順に放出することができる請求項26に記載の層状ナノ粒子。
【請求項28】
以下の工程
−第一液体中にコア粒子を含む懸濁液を得ること、
−該第一液体と非混和性の第二液体を該懸濁液に添加すること、及び、
−試薬又は該試薬の前駆体を、該第二液体を含む懸濁液に添加すること
を含み、
前記試薬が前記第二液体を含む懸濁液に添加されるならば、該試薬は反応してコア粒子上に層を形成し、また、前記試薬の前駆体が前記第二液体を含む懸濁液に添加されるならば、該前駆体は前記試薬に転換され、そしてこのようにして形成された試薬が反応してコア粒子上に層を形成して、前記層状ナノ粒子を形成するところの方法によって製造された層状ナノ粒子。
【請求項29】
多数の層状ナノ粒子を含み、該粒子の各々が多孔性コア粒子及び前記コアを少なくとも部分的に囲む1つ以上の層を含むナノ粒子状物質であって、狭い粒子径分布を有するナノ粒子状物質。
【請求項30】
前記コア及び前記1つ以上の層から選択された、前記ナノ粒子の少なくとも1つの領域が、実質的に均一に分布されたドーパントを含む請求項29に記載のナノ粒子状物質。
【請求項31】
多孔性コア粒子及び前記コア粒子を少なくとも部分的に囲む1つ以上の層を含む層状ナノ粒子を流体に曝露することを含む、該流体に放出性物質を送達するための方法であって、該層状ナノ粒子は前記層の少なくとも1つ又は前記コア粒子に実質的に均一に分布された放出性物質を有し、かつ該流体は前記層状ナノ粒子から前記放出性物質を少なくとも部分的に放出することができるところの方法。
【請求項32】
患者に薬剤を投与するための方法であって、前記方法は、多孔性コア粒子及び前記コア粒子を少なくとも部分的に囲む1つ以上の層を含む層状ナノ粒子を患者に送達することを含み、該層状ナノ粒子は前記層の少なくとも1つ又は前記コア粒子に実質的に均一に分布された前記薬剤を有するところの方法。
【請求項33】
患者に薬剤を投与するための多孔性コア粒子及び前記コア粒子を少なくとも部分的に囲む1つ以上の層を含む層状ナノ粒子の使用であって、前記層状ナノ粒子は、前記層の少なくとも1つ又は前記コア粒子に実質的に均一に分布された薬剤を有するところの使用。
【請求項34】
混合物の少なくとも1つの成分の選択的な収着(selective sorption)のための、多孔性コア粒子及び前記コア粒子を少なくとも部分的に囲む1つ以上の層を含む層状ナノ粒子の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7−a】
【図7−b】
【図7−c】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11−a】
【図11−b】
【図12−a】
【図12−b】
【図13】
【図14】
【図15−a】
【図15−b】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図21】
【図22】
【図23−a】
【図23−b】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28a】
【図28b】
【図28c】
【図28d】
【図28e】
【図28f】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7−a】
【図7−b】
【図7−c】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11−a】
【図11−b】
【図12−a】
【図12−b】
【図13】
【図14】
【図15−a】
【図15−b】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図21】
【図22】
【図23−a】
【図23−b】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28a】
【図28b】
【図28c】
【図28d】
【図28e】
【図28f】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【公表番号】特表2008−530031(P2008−530031A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−554395(P2007−554395)
【出願日】平成18年2月14日(2006.2.14)
【国際出願番号】PCT/AU2006/000193
【国際公開番号】WO2006/084339
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(500461941)オーストラリアン ニュークリア サイエンス アンド テクノロジー オーガニゼーション (11)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月14日(2006.2.14)
【国際出願番号】PCT/AU2006/000193
【国際公開番号】WO2006/084339
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(500461941)オーストラリアン ニュークリア サイエンス アンド テクノロジー オーガニゼーション (11)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]