説明

層状組成物ならびに該組成物を調製および使用する方法

【課題】様々な炭化水素変換プロセスに使用可能な層状組成物を提供する。
【解決手段】コーディエライトのコアなどの内部コアと、耐火性無機酸化物、繊維成分、および無機バインダーを含む外層とを含み、場合により金および白金などの触媒金属、さらに他の修飾剤も含有することができる層状組成物。耐火性無機酸化物層は、アルミナ、ジルコニア、チタニア等でよく、一方繊維成分は、チタニア繊維、シリカ繊維、炭素繊維等でよい。無機酸化物バインダーは、アルミナ、シリカ、ジルコニア等でよい。該層状組成物は、耐火性無機酸化物、繊維成分、無機バインダー前駆体、およびポリビニルアルコールなどの有機結合剤を含むスラリーで、内部コアをコーティングすることによって調製される。該組成物は、エチレン、酸素、酢酸からの酢酸ビニルの製造など、様々な炭化水素変換プロセスに使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
触媒を使用して、数々の工業用プロセスが実施されている。これは、特に様々な炭化水素変換プロセスに当てはまる。これらの触媒は、表面積が比較的大きな担体上に堆積した1種または多種の触媒元素を含む。さらに、触媒元素または成分は、担体全体に均一に分散するか、担体の表面上に分散するか、またはその表面下に帯域として存在することができる。
【0002】
当分野では、不活性なコアまたは層、および活性な外層またはシェルを含有する触媒もまた開示されている。例えば、US−A−3,145,183では、不浸透性中心部および多孔質シェルを有する球体を開示している。この文献では、不浸透性中心部を小さくできることを開示しているが、全直径は、3.175mm(1/8インチ)以上である。直径のより小さな球体(3.175mm未満)では、均一性を制御するのが難しいと記載されている。US−A−5,516,740では、触媒不活性な物質である内部コアに結合した、触媒物質の薄い外側シェルを開示している。外層は、その層上に分散した白金などの触媒金属を有することができる。前記‘740の特許はさらに、この触媒の異性化プロセスへの使用を開示している。最後に、外層材には、それを内部コア上にコーティングする前に触媒金属を含有させている。
【0003】
US−A−4,077,912およびUS−A−4,255,253は、基材担体を有し、その上に触媒金属酸化物、または触媒金属酸化物および酸化物担体の組合せからなる層を堆積させた触媒を開示している。US5,935,889は、触媒不活性なコア材を有し、このコア材上に活性点を含有する物質の薄いシェルが堆積し結合している触媒を開示している。最後に、US6,177,381B1では、内部コアと、該内部コアに結合している外層とを含有する層状触媒組成物であって、その外層上に白金族金属、助触媒金属(promoter metal)、および修飾剤金属(modifier metal)が分散している層状触媒組成物を開示している。
【0004】
従来技術による層状組成物に付随する一つの問題とは、強度、あるいは耐摩耗性が、ある種の用途に対し十分ではなかったということである。出願人らは、外層に繊維成分を添加すると強度が大幅に上がることを発見した。繊維成分は、シリカ繊維またはムライト繊維などの無機繊維、または炭素繊維などの有機繊維のいずれかでよい。
【0005】
本発明の層状組成物の構成要素の一つは、内部コアである。内部コアに使用できる材料の一つの特徴は、所望する形状へと成形が可能なことである。使用できる材料の例は、金属、耐火性無機酸化物、および炭化ケイ素を含むが、これらに限らない。好ましい耐火性無機酸化物とは、それらに限定しないが、アルミナ、コーディエライト、ムライト、モンモリロナイト、シリカ、ジルコニア、チタニア、およびこれらの混合物が挙げられる。アルミナは、ガンマ、シータ、デルタ、およびアルファのアルミナを含む。好ましい無機酸化物は、コーディエライトである。内部コアが耐火性無機酸化物である場合は、それは外層の耐火性無機酸化物とは異なるものでなければならない。
【0006】
さらに、例えば金属または金属酸化物などの成分を外層に追加することになる場合、これらの成分は含浸法で外層上に堆積させるが、内部コアの吸着能(adsorptive capacity)は外層と比較して低い方が好ましい。この吸着能とは、触媒成分の化合物を外層に含浸させるために用い得る溶媒に対するものである。内部コアのこの化合物そのものへの吸着能もまた、外層に比べ実質的に低くすべきである。
【0007】
内部コアを形成するこれらの材料は、ペレット、押出し物、球体、中空管、または不規則な形状の粒子など様々な形状に成形することができるが、全ての材料が各形状に成形できるわけではない。内部コアの調製は、当技術分野でも公知である、油滴下、加圧成形、金属成形、ペレット化、粒化、押出成形、圧延方式、球形化などの手段によって行うことができる。球状の内部コアが好ましい。球状であるないに関わらず、内部コアの有効な平均直径は0.05mm〜15mmであり、好ましくは0.5mm〜10mmである。非球状の内部コアに対する有効な直径とは、それを仮に球状に成形した場合、その成形品が有することになる直径と定義する。成形した内部コアが形成された後は、任意選択で、400℃〜1500℃の温度でか焼する。
【0008】
次に、内部コアに耐火性無機酸化物の層をコーティングするが、この耐火性無機酸化物は、内部コアとして使用することができる無機酸化物とは異なるので、外層の耐火性無機酸化物と呼ぶことにする。この外層の耐火性酸化物は、多孔性に優れ、少なくとも2m2/g、好ましくは少なくとも20m2/g、最も好ましくは少なくとも30m2/gの表面積、0.2g/ml〜1.8g/mlの見掛け嵩密度を有する。耐火性無機酸化物の使用可能な非限定的例は、ガンマアルミナ、デルタアルミナ、イータアルミナ、シータアルミナ、シリカ/アルミナ、ゼオライト、非ゼオライトの分子ふるい(NZMS)、チタニア、ジルコニア、およびこれらの混合物である。シリカ/アルミナは、シリカとアルミナとの物理的混合物ではなく、共ゲル化または共沈した酸性で非晶質の物質を意味することを指摘しておきたい。この用語は、当分野では周知であり、例えばUS−A−3,909,450、US−A−3,274,124およびUS−A−4,988,659を参照されたい。ゼオライトの例は、ゼオライトY、ゼオライトX、ゼオライトL、ゼオライトベータ、フェリエライト、MFI、UZM−4(US6,776,975B1参照)、UFI、UZM−8(US6,756,030B1)、UZM−9(US6,713,041B1)、モルデン沸石、および毛沸石を含むが、これらに限らない。非ゼオライト分子ふるい(NZMS)は、アルミニウムおよびケイ素以外の元素を含有する分子ふるいであり、全て参照により本明細書に組み込まれている、US−A−4,440,871に記載の複数のシリコアルミノリン酸塩(silicoaluminophosphates;SAPOs)、US−A−4,793,984に記載の複数のELAPO(ELAPOs)、US−A−4,567,029に記載の複数のMeAPO(MeAPOs)を含む。好ましい耐火性無機酸化物は、ガンマ、イータのアルミナおよびジルコニアである。
【0009】
耐火性無機酸化物は、最初に耐火性無機酸化物を含むスラリーを形成することによって、内部コアに施用される。該スラリーは、溶媒と耐火性無機酸化物とを混合して混合物を形成し、スラリーを形成するのに十分な時間、該混合物を粉砕することにより形成される。有機溶媒も使用できるが、通常使用される溶媒は水である。混合物はまた、これらに限定はされないが、硝酸、塩酸、硫酸、酢酸などのスラリー形成を補助する作用物質を含有することもできる。スラリーは、加熱すると分解して無機酸化物バインダーを形成する、通常は、金属のゾル、ゲル、または化合物である無機バインダー前駆体も含有することになろう。使用できる無機バインダーは、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、リン酸アルミニウム等を含むが、これらに限らない。スラリーに添加することができるバインダー前駆体の非限定的な例は、ZrO(C2322、ZrO(NO32、ZrO(OH)Cl・nH2O、ジルコニアゾル、ZrOCO3、ZrO(OH)2、Zr(C5824、Zr(SO42・4H2O、アルミナゾル、シリカゾル、硝酸アルミニウム、およびベーマイトである。バインダーによっては、外層の酸化物と同じ耐火性酸化物を与えることが好ましいこともあるが、通常いかなる無機バインダーでも、任意の外層耐火性酸化物とともに使用することができる。例えば、外層がゼオライト、チタニア、シリカ、またはアルミナの場合、アルミナバインダーを使用することができる。しかしながら、ジルコニアが外層の耐火性無機層である場合、ジルコニアバインダーを有することが好ましいことが判明した。スラリー中に存在する無機バインダー前駆体の量は、堆積される外層上の無機バインダーが1〜99重量%になる量である。好ましくは、存在するバインダー前駆体の量は、無機バインダーが外層の2〜40重量%となる量であり、最も好ましくは、外層の5〜30重量%となる量である。
【0010】
スラリーの別の必須成分は、繊維成分である。適切な繊維成分は、細長い、糸状の物体もしくは構造体である繊維またはフィラメントからなるものを含む。使用できる繊維の種類は、無機繊維および有機繊維を含み、いずれも天然または人工であってよい。概して、繊維は、ガラス、鉱物、金属酸化物、セラミック、金属、ポリマー、および炭素を含むが、これらに限らない数々の材料を包含することができる。無機繊維の具体例は、チタニア繊維、チタン酸カリウム繊維、ジルコニア繊維、ムライト繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維、グラスウール、ボロン繊維、アルミニウム繊維、シリカ繊維およびコーディエライト繊維を含むが、これらに限らない。好ましい繊維は、大部分がシリカ(60%SiO2、33%CaOおよび6%MgO)であり、Thermal Ceramics社製造、販売のSuperwool(商標)である。有機繊維の非限定な例は、グラファイト繊維、炭素繊維、ならびにポリエチレン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、芳香族ポリアミド(例えばKevlar(商標))、ポリスチレン(例えば、シンジオタクチックポリスチレン)、ポリテトラフルオロエチレン(例えばテフロン(登録商標)などのポリマー繊維である。加えて、材料を組み合わせて繊維中に使用することもできるし、さらには繊維を組み合わせて、繊維成分に使用することもできる。有機繊維を使用する場合は、その後の処理温度および使用するプロセス温度を、有機繊維の燃焼温度より低くしなければならないことを指摘したい。明らかに無機繊維は燃焼しないが、操作温度はその融解温度より低くなければならない。さらに、所望する特性を強化するために(例えば、処理を施して分解または融解温度を上げるために)、繊維にさらなる処理(例えばコーティング)を施すことができる。繊維成分は、織ったり、編んだり、さもなければ不織状態で絡み合うか、繋がっている繊維を含み得るが、繊維は他の繊維と繋がっていなくてもよい。
【0011】
繊維の長さは肝要ではないが、繊維は通常1〜10000マイクロメーター、好ましくは、2〜1000マイクロメーター、最も好ましくは5〜300マイクロメーターの長さを有する。繊維はまた様々な直径を有するが、これもまた肝要ではない。直径が小さな繊維ほど容易に分散するので、好ましい。繊維の長さおよび直径は両方とも、変更可能なので、好ましい長さ/直径(L/D)比は実験的に決定することができる。このL/D比は、それぞれの繊維によって異なる。
【0012】
スラリーに添加できる繊維の量は、かなり変更可能で、通常は最終の層重量の1〜30重量%、好ましくは1〜20重量%、最も好ましくは3〜10重量%が得られる量である。
【0013】
スラリーはまた、層材料が内部コアに付着(結合)するのを補助する有機結合剤を含有しなければならない。この有機結合剤の例として、ポリビニルアルコール(PVA)、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースが挙げられるが、これらに限らない。スラリーに添加する有機結合剤の量は、スラリーの0.1重量%〜5重量%とかなり変動するであろう。
【0014】
前述の通り、スラリーは、ボールミル、インパクトミル等、当分野では公知の多様な粉砕機のいずれかを使用して粉砕する。粉砕を行うことによって、様々な成分を確実に十分混合し、任意選択で、耐火性無機酸化物の粉末および/または繊維の粒径を小さくする。粉砕は通常、2〜8時間行う。
【0015】
内部コアへのスラリーのコーティングは、ロール塗布、浸漬、吹付け等の手段によって行うことができる。好ましい一技術は、内部コア粒子の固定流動床を使用し、スラリーを流動床に吹き付け、粒子を均一にコーティングすることを含む。層の厚さは、かなり様々であるが、通常40〜400マイクロメーター、好ましくは40〜300マイクロメーター、最も好ましくは50〜200マイクロメーターである。最適な層の厚さは、触媒の用途および外層の耐火性酸化物の選択に依存することを指摘したい。内部コアを外層の耐火性無機酸化物の層でコーティングした後、生成した層状組成物は、100℃〜150℃の温度で1〜24時間乾燥させ、次いで少なくとも200℃で0.5〜10時間か焼することにより、外層を内部コアに効果的に結合させ、層状組成物を得る。か焼条件は、外層を内部コアに効果的に結合させるためだけでなく、例えば層の表面積、繊維の完全性(integrity)、無機酸化物の細孔面積等の外層の特性を最適化するように選ぶ。前述の通り、有機繊維を使用する場合には、か焼温度はそれらの燃焼温度より低くなければならない。よって、好ましいか焼温度は、200℃〜1500℃であり、最も好ましくは400℃〜1100℃である。最後に、乾燥およびか焼の工程は一工程にまとめられる。所望する層の厚さを得るためには、場合によっては層状化プロセスを2回以上行う必要があることも指摘しておきたい。中間のか焼工程は、乾燥工程が十分であり、第1の層が次の層状化工程中に溶解しないことが確実であれば必要でない。
【0016】
本発明の一実施形態において、層状組成物は、2層以上の層を含む。後続の層は、第1の層(またはその後の層)をか焼した後で、被覆組成物上に積層する。第1の層として、層状コアのコーティングを上記の通り行う。耐火性無機酸化物の第2の層は、第1の層と異なり、さらに(もしあるならば)第3の層と異なることになるが、第1および第3の層は同一の無機酸化物であってよい。よって、隣り合う層が異なる耐火性無機酸化物でできていることのみが必要である。各層の厚さは、第1の層に関して記述した通りであり、追加の層の数は、1〜5層またはそれ以上にまで変更できる。
【0017】
前述の通り、外層に繊維を使用することによって、生成した層状組成物の強度、あるいは耐摩耗性は大幅に向上する。層状組成物の強度は、その衝撃破壊(impact breakage;IB)を測定することによって決定した。衝撃破壊は、か焼後の層状組成物をある量(約50cc)取り分け、平坦なドラム内に置き、ドラムを25rpmで10分間回転させることによって測定した。細粒を収集し、重さを計り、以下の式からIBを決定した。
IB=(細粒の重量/層状組成物の総重量)×100%
【0018】
本発明の層状組成物は、好ましくは10重量%未満、より好ましくは5重量%未満、最も好ましくは3重量%未満のIBを有することになる。上記範囲内にある範囲もまた含まれる。
【0019】
上記の層状組成物は、様々な反応に触媒作用を起こすために、そのまま使用できるが、通常は、様々な触媒成分の担体として使用される。これらの触媒成分は、各族を付番するIUPACによる方式を用い、http://pearl1.lanl.gov/periodic/default.htm.に示されている、元素周期表の3〜12族からなる群から選択される。好ましい触媒の元素または金属は、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、オスミウム、イリジウムを含む貴金属類または白金族金属類である。金および銀もまた好ましい触媒金属である。パラジウムを金および/またはロジウムと組み合わせて使用するなど、触媒成分の組合せもまた好ましい。
【0020】
これらの触媒金属成分は、当分野で周知の任意の適切な方法で、積層担体上に堆積することができる。一つの方法は、1種または複数の触媒金属の分解性化合物の溶液(有機溶媒を使用することもできるが、通常は水溶液)を、層状組成物または担体に含浸させることを含む。ここで、分解性とは、金属化合物を加熱すると、副生成物の放出を伴い、金属または金属酸化物へと変換されることを意味する。使用可能な化合物の例は、塩化物、他のハロゲン化物、硝酸塩、亜硝酸塩、水酸化物、酸化物、シュウ酸塩、酢酸塩、硫酸塩、アミンを含むが、これらに限らない。白金族金属の分解性化合物の具体例としては、塩化白金酸、塩化白金酸アンモニウム、臭化白金酸、ジニトロジアミノ白金、テトラニトロ白金酸ナトリウム、三塩化ロジウム、ヘキサアミンロジウム塩化物、ロジウムカルボニルクロライド、ヘキサニトロロジウム酸ナトリウム、塩化パラジウム酸、塩化パラジウム、硝酸パラジウム、水酸化ジアンミンパラジウム、塩化テトラアミンパラジウム、ヘキサクロロイリジウム(IV)酸、ヘキサクロロイリジウム(III)酸、ヘキサクロロイリジウム(III)酸アンモニウム、アクアヘキサクロロイリジウム(IV)酸アンモニウム、四塩化ルテニウム、ヘキサクロロルテニウム酸塩、ヘキサアンミンルテニウム塩化物、三塩化オスミウム、および塩化オスミウムアンモニウムである。他のパラジウム化合物の例は、Na2PdCl4、Pd(NH34(NO22、Pd(NH34(OH)2、Pd(NH34(NO32、Pd(NH34(OAc)2、Pd(NH32(OAc)2、KOHおよび/またはNMe4OHおよび/またはNaOH中のPd(OAc)2、Pd(NH34(HCO32、およびシュウ酸パラジウムを含むが、これらに限らない。金および銀の化合物の例は、AuCl3、HAuCl4、NaAuCl4、KAuO2、NaAuO2、NMe4AuO2、Au(OAc)3、HAu(NO34、AgNO3、AgC232、およびAgClO3を含むが、これらに限らない。溶解調節剤を利用して、1種または複数の触媒金属の分解性化合物の可溶化を促進することもできる。例えば、酸または塩基を使用して、触媒化合物を溶解しやすくすることもできる。一実施形態においては、KOHおよび/またはNMe4OHをAu(OAc)3と組み合わせて使用したり、硝酸をHAu(NO34と一緒に使用したりする。
【0021】
触媒化合物を含む複数の溶液を、層状組成物または担体に、同時(例えば、共含浸法)または逐次含浸させたり、1種または複数の溶液を使用して含浸させたりすることもできる。
【0022】
一つまたは複数のか焼工程を使用することができ、例えば、少なくとも1種の触媒成分化合物が層状組成物または耐火性無機酸化物と接触した後の任意の時点で、それをか焼してもよい。例えば、か焼工程は、非還元性雰囲気下で、100℃〜700℃の範囲、好ましくは200℃〜500℃間の温度で行われる。か焼時間は様々であるが、1〜5時間が好ましい。触媒成分化合物の分解度は、使用する温度、および含浸触媒のか焼時間の長さで決まり、揮発性の分解生成物を監視することにより確認できる。
【0023】
最後のか焼工程は、金の触媒成分がジルコニア含有層状組成物に接触する前に行うことが好ましい。あるいは、金を含有するジルコニア含有担体組成物のか焼は、300℃未満の温度で行う。か焼工程を含む例示的な手順は以下を含む:a)パラジウムを含浸させ、か焼し、金を含浸させる;b)パラジウムおよびロジウムを共含浸させ、か焼し、金を含浸させる;c)パラジウムを含浸させ、か焼し、ロジウムを含浸させ、か焼し、金を含浸させる;またはd)パラジウムおよびロジウムを含浸させ、金を含浸させ、か焼する。
【0024】
一つの含浸手順では、蒸気ジャケット付き回転乾燥器を使用する。乾燥器内に入れられた、所望する金属化合物(単数または複数)を含有する含浸溶液に層状組成物を浸し、担体はその中で乾燥器の回転運動によって回転する。回転する担体と接触している溶液の蒸発は、乾燥器のジャケットへ蒸気を入れることによって促進する。生成した複合体は、周囲温度条件下で乾燥させるか、または80〜110℃の温度で乾燥し、その後か焼することによって、その金属化合物を金属または金属酸化物へ変換する。
【0025】
別の含浸手順は、当分野では周知である吹付け含浸で、本明細書では完全を期すためにのみ紹介する。層状組成物をドラムに入れ、ドラムの開口部へ噴射ノズルを挿入する。担体は回転し、金属含有溶液は噴射ノズルを介して15〜30分間送達される。溶液の量を変えて担体への浸透の深さを決めることができる。担体は、110℃〜150℃で乾燥し、上記の手順を繰り返すことにより、さらなる金属を追加し、または担体をか焼し、金属化合物を金属または金属酸化物に変換することができる。
【0026】
触媒金属の分散は、上記の通り耐火性無機酸化物を内部コアに施用した後で行うか、または耐火性無機酸化物にまず所望の溶液を含浸させ、乾燥、か焼、スラリー化し、それから内部コアに施用するか、のいずれかにより行うことができる。層状組成物が2層以上の層を含む場合は、全ての層上に触媒金属を分散させる必要はない。例えば、第2の層上には触媒金属が存在しないが、第1の層はその上に分散した1種または複数の触媒金属を有することができるし、その逆もまた可能である。あるいは、第1の層が1種または複数の触媒金属を有する一方、第2の層が異なる触媒金属(単数または複数)を有することもできる。
【0027】
触媒成分に加えて、様々な助触媒(promoters)および修飾剤(modifiers)を層状組成物上に分散することもできる。助触媒および修飾剤は、アルカリ金属、アルカリ土金属、スズ、ゲルマニウム、レニウム、ガリウム、ビスマス、鉛、インジウム、セリウム、亜鉛、ホウ素、およびこれらの混合物からなる群から選択される任意の元素であってよい。酢酸ビニルの製造に使用する一つの好ましい助触媒は、アルカリ金属であり、KOAcなどの酢酸塩の形で提供してもよい。アルカリ金属の添加は、触媒の活性化と言い換えることができる。
【0028】
助触媒および修飾剤の成分は、触媒成分に関して記述した方法と同一の方法で、積層担体上に分散することができる。全ての成分は、一つの共通する溶液を使用して含浸させることもできるし、任意の順序で逐次含浸させることもできるが、この場合必ずしも同等な結果が得られるとは限らない。さらに、これらの助触媒および修飾剤は、一つの層に存在させ、別の層には存在させないようにすることもできる。これらはまた、触媒金属のない一つの層に存在させるか、または、触媒金属のある複数の層のみに存在させることもできる。
【0029】
触媒成分、助触媒、修飾剤が外層に「分散または堆積している」と記述する場合、これは、それらが層の表面上、層全体、または外表面下の密着した帯域中にも分散できることを意味している。内部コアが吸着性を多少有する材料を含む場合には、小さい分率の該触媒成分、助触媒、および/または修飾剤をコア上またはコア全体に見出すことができることを指摘したい。
【0030】
本発明の触媒を利用して、触媒の存在下において、アルケン、アルカン酸、および酸素含有ガスからアルカン酸アルケニルを生成することができる。好ましいアルケン出発物質は、2〜4個の炭素原子(例えば、エチレン、プロピレン、およびn−ブテン)を含有する。アルカン酸アルケニルを製造するための本発明のプロセスに使用する、好ましいアルカン酸出発物質は、2〜4個の炭素原子(酢酸、プロピオン酸、酪酸)を含有する。本プロセスの好ましい生成物は、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、および酢酸アリルである。最も好ましい出発物質は、エチレンおよび酢酸であり、酢酸ビニルが最も好ましい生成物である。よって、本発明は、触媒の存在下において、オレフィン性不飽和化合物、カルボン酸、および酸素から、オレフィン性不飽和カルボン酸エステル類を生成するのに有用である。アルカン酸アルケニルを生成する他の方法は、US2005/0181940A1に記載されている。
【0031】
本発明の触媒を使用して酢酸ビニルを生成する場合、エチレン、酸素または空気、および酢酸を含むガス流が触媒上を通過する。ガス流の組成は、流出物の燃焼領域を考慮に入れて、広い範囲内で変更することができる。例えば、エチレンと酸素のモル比は、80:20〜98:2で、酢酸とエチレンのモル比は、100:1〜1:100、好ましくは10:1〜1:10、最も好ましくは1:1〜1:8であってよい。ガス流はまた、気体状アルカリ金属酢酸塩、および/または不活性ガス(窒素、二酸化炭素および/または飽和炭化水素など)を含んでもよい。使用できる反応温度は、より高温で、好ましくは125〜220℃の範囲である。使用する圧力は、やや減圧、常圧、または高圧で、好ましくは2026kPa(ゲージ圧で20気圧)までである。
【0032】
本発明による酢酸ビニル触媒は、触媒1リットルにつき1〜10gのパラジウム、および0.5〜10gの金を含むことが好ましい。金の量は、パラジウムの重量に基づき、10〜125重量%が好ましい。さらに触媒が、触媒1リットルにつき、10〜70g、好ましくは20〜60gの助触媒(promoter;例えば、KOAc)を含有することが好ましい。
【0033】
一つの用途において、層状触媒複合体を使用してエチレンと酢酸および酸素との反応から酢酸ビニルを生成する。この特定のケースでは、内部コアは、コーディエライトを含むことが好ましく、耐火性酸化物層は、ムライト、SuperwoolまたはTiO2などの繊維を有するジルコニア層である。層状組成物の上には、パラジウム、金、およびカリウムが、任意選択でロジウムと一緒に、分散している。担体上に金属を分散する好ましい方法は、まずPd(NH34(OH)2などのパラジウム化合物を含む水溶液を積層担体に含浸させ、その後含浸させた層状組成物をか焼することである。次に、か焼した組成物に、KAuO2などの金化合物を含む溶液を含浸させ、乾燥し、か焼し、および最後に、1〜5時間かけて、周囲温度から550℃の温度で触媒を還元する。還元は、水素または他の還元雰囲気下で行う。助触媒(promoter)の添加は、この還元工程の前または後に行ってもよい。
【0034】
触媒金属をその上に有する本発明の層状組成物はまた、水素化分解、クラッキング、異性化、水素添加、脱水素、酸化、ならびに芳香族およびイソパラフィン炭化水素のアルキル化など、その他の炭化水素変換プロセスにも使用することができる。これらの反応に所望される触媒金属は、前述の白金族金属である。Sn、Ge、Re、Ga、Bi、Pb、In、Ce、Znおよびこれらの混合物からなる群から選択される助触媒金属(promoter metals)を含めることもできるし、アルカリ金属、アルカリ土金属およびこれらの混合物からなる群から選択される修飾剤金属(modifier metals)を積層担体上に分散させることもできる。これらの様々な成分を積層担体上に分散させる方法は、上記に示される通りである。US6,280,608B1に記載の通り、ハロゲン成分も層状触媒成分上に存在することができる。
【0035】
上記実施形態において、3種の金属は全て、耐火性酸化物の外層中に均一に分散し、外層中のみに実質的に存在するが、修飾剤金属は外層および内部コアの両方の中に存在することができることも本発明の範囲内である。これは、コアが金属コア以外の場合、修飾剤金属が内部コアへ移動できるという事実による。
【0036】
各金属成分の濃度は実質的に変更できるが、白金族金属は、触媒組成物総重量の元素ベースで0.01〜5重量%、好ましくは0.05〜2.0重量%の濃度で含まれることが望ましい。助触媒金属は、触媒組成物全体の0.05〜10重量%の量が含まれる一方、修飾剤金属は、触媒組成物全体の0.1〜5重量%、好ましくは2〜4重量%の量が含まれる。
【0037】
芳香族化合物のアルキル化を行うための必要条件は周知であり、例えば参照により組み込まれるUS−A−3,965,043およびUS−A−3,979,331に開示されている。通常プロセスは、バッチ式または連続式運転により実施することができる。バッチ式プロセスにおいて、触媒、芳香族化合物およびアルキル化剤はオートクレーブ(加圧釜)に入れ、必要に応じて圧力を上げて、液相での反応を実施する。アルキル化剤1モル当たり、芳香族化合物が好ましくは2:1〜20:1モルの範囲で、芳香族化合物の過剰量が含まれるべきである。室温でのアルキル化速度は低く、望ましくないので、反応はより高温で行う。温度は40℃〜200℃の範囲が好ましい。プロセスは、0.5〜4時間行い、その後生成物を従来の方法で出発物質から分離する。
【0038】
連続的な方法でプロセスを実行することを望む場合には、望ましい運転温度に加熱し、必要に応じて圧力を大気圧より上げた反応器内に触媒を入れる。芳香族化合物およびアルキル化剤を、アルキル化を起こすのに十分な所定の液空間速度(liquid hourly space velocities;LHSV)で、触媒床上に流す。流出物は連続して回収し、従来の分離法を用いて、所望する生成物を分離する。
【0039】
水素化分解の条件は、一般的に240℃〜649℃(400°F〜1200°F)、好ましくは316℃〜510℃(600〜950°F)の範囲の温度を含む。反応圧力は、大気圧〜24132kPa(G)(3500psig)の範囲、好ましくは1379と20685kPa(G)(200〜3000psig)との間の範囲である。接触時間は、通常、0.1hr-1〜15hr-1の範囲、好ましくは0.2と3hr-1の間の液空間速度(LHSV)に相当する。水素循環速度は、装填量1立方メートルにつき178〜8888標準立方メートル(装填量1バレル当たり1000〜50000標準立方フィート(scf))の範囲、好ましくは355〜5333標準m3/m3(装填量1バレル当たり2000〜30000scf)の間である。
【0040】
反応ゾーンの流出物は、通常触媒床から取り除かれ、部分的凝縮および気液分離を行った後、分留して、その様々な成分を回収する。水素および、必要に応じて、未反応の様々な重質物質の数種または全部を、反応器に再循環する。代わりに、2段階の流れを利用して、未反応物質を第2の反応器に通すこともできる。主題となる本発明の触媒は、そのようなプロセスの1段階のみに使用してもよいし、または両反応器段階に使用してもよい。
【0041】
接触分解プロセスは、ガス油、重ナフサ、脱歴した原油残留物等の原料油を使用して触媒組成物とともに行うことが好ましく、この場合ガソリンが所望する主要生成物となる。454℃〜593℃(850°〜1100°F)の温度条件、LHSV値0.5〜10hr-1、および圧力条件0〜345kPa(G)(50psig)が適切である。
【0042】
異性化反応は、371℃〜538℃(700〜1000°F)の温度範囲で行う。オレフィンは260℃〜482℃(500°F〜900°F)の温度で異性化するのが好ましく、パラフィン、ナフテン、およびアルキル芳香族は、371℃〜538℃(700°F〜1000°F)の温度で異性化する。水素圧力は689〜3445kPa(G)(100〜500psig)の範囲である。接触時間は通常、0.1hr-1〜10hr-1の範囲の液空間速度(LHSV)に相当する。水素と炭化水素のモル比は、1〜20の範囲、好ましくは4と12との間である。
【0043】
脱水素プロセスにおいては、脱水素可能な炭化水素は、脱水素条件に維持した脱水素ゾーンにおいて、本発明の触媒と接触させられる。この接触は、固定式触媒床装置、移動触媒床装置、流動床装置等、またはバッチ式運転で実行することができる。固定式触媒床装置が好ましい。この固定式触媒床装置において、炭化水素の供給流は、所望する反応温度に予熱され、次いで触媒の固定床を含む脱水素ゾーンへと送られる。脱水素ゾーンはそれ自体が、一つまたは複数の別個の反応ゾーンを含み、各反応ゾーンの入口で所望の反応温度が確実に維持できるよう、各ゾーンの間に加熱手段を設置してもよい。炭化水素は、上昇流、下降流、または半径流方式で触媒床と接触させることができる。炭化水素の半径流を触媒床に流すのが好ましい。炭化水素は、触媒と接触する時には、液相中、気液混合相中または気相中に存在することができる。好ましくは気相がよい。
【0044】
脱水素化することのできる炭化水素には、パラフィン、イソパラフィン、アルキル芳香族、ナフテンおよびオレフィンを含む2〜30以上の炭素原子を有する炭化水素が含まれる。好ましい炭化水素の群は、2〜30の炭素原子を有するノルマルパラフィンの群である。特に好ましいノルマルパラフィンは、2〜15の炭素原子を有するものである。
【0045】
脱水素化条件は、温度400℃〜900℃、圧力1〜1013kPaおよび液空間速度(LHSV)0.1〜100hr-1を含む。一般的に、ノルマルパラフィンについては、分子量が低くなるほど、同程度の変換を行うためには、温度を上げなければならない。脱水素ゾーンでの圧力は、実行可能な程度で、装置限界に基づき、化学平衡の利点を最大限に生かすために低圧に維持される。
【0046】
脱水素ゾーンからの流出流は通常、未反応の脱水素可能な炭化水素、水素、および脱水素反応の生成物を含有することになろう。この流出流を普通冷却し、水素分離ゾーンに通すことにより、炭化水素を多く含む液相から、水素を多く含む気相を分離する。通常、炭化水素を多く含む液相は、適当な選択的吸着剤、選択的溶媒、または選択的反応(単数または複数)によって、あるいは適当な分留方式によって、さらに分離される。未反応の脱水素可能な炭化水素は回収され、脱水素ゾーンに再循環されてもよい。脱水素反応の生成物は、最終生成物、または他の化合物の調製における中間生成物として回収される。
【0047】
脱水素可能な炭化水素は、脱水素ゾーンへ送る前に、送る途中で、または送った後で、希釈剤と混合してもよい。希釈剤は、水素、蒸気、メタン、エタン、二酸化炭素、窒素、アルゴン等、またはこれらの混合物であってよい。水素は好ましい希釈剤である。通常、水素を希釈剤として使用する場合、水素と炭化水素のモル比が確実に0.1:1〜40:1となるよう、十分な量を使用する。モル比の範囲が1:1〜10:1の場合、最も良い結果が得られる。脱水素ゾーンに送られる希釈用水素流は、通常水素分離ゾーンで、脱水素ゾーンからの流出流から分離した、再循環水素となるであろう。
【0048】
水、あるいは脱水素化条件下で分解し水となる、例えばアルコール、アルデヒド、エーテル、またはケトンなどの物質を、連続的にまたは断続的に、当量の水を基準に計算して、炭化水素供給流の1〜20000重量ppmを供給するだけの量で、脱水素ゾーンに添加してもよい。2〜30以上の炭素原子を有するパラフィンを脱水素化する場合、1〜10000重量ppmの水の添加によって、最善の結果が得られる。
【0049】
ジエンおよびトリエンの選択的水素化を含む水素添加プロセスは、上記の脱水素プロセスと同様の反応器および水素化ゾーンを使用して行うことができる。具体的には、水素化条件とは、圧力0kPa(G)〜13789kPa(G)、温度30℃〜280℃、H2と水素化可能な炭化水素とのモル比5:1〜0.1:1およびLHSV0.1〜20hr-1を含む。
【0050】
本発明の層状触媒はまた、酸化反応にも使用することができる。これらの酸化反応とは以下を含む:
1)合成ガス(CO+H2)生成のための、ナフサまたはメタンなどの炭化水素流の部分的酸化;
2)エチルベンゼンからのスチレンの生成などの、吸熱性脱水素反応により生成される水素の選択的酸化;および
3)燃焼プロセスによる煙道ガスの排気をきれいにするための、メタン、エタン、または一酸化炭素の酸化。
【0051】
層状の球状触媒は、触媒の活性または選択性が、生成物または反応物の粒子内耐拡散性により制限されてしまうプロセスに最も有利であろう。
【0052】
酸化プロセスの条件は、個々のプロセスの用途にもよるが、通常350℃〜800℃、40kPa〜2030kPaであり、反応制御のための、N2、CO2、HOなどの希釈剤が供給流内に存在する。水素はまた、希釈剤または反応物としても存在できる。水素の選択的酸化のために、酸素とH2とのモル比は0.05〜0.5に変更できる。希釈濃度は、通常、炭化水素1モル当たり、希釈剤0.1〜10モルである。例えば、エチルベンゼンの脱水素化中の、蒸気とエチルベンゼンとのモル比は、5:1〜7:1であってよい。酸化の典型的な空間速度は、0.5から50hr-1LHSVの間である。
【0053】
本発明を例示するために以下の実施例を提示するが、これらの実施例は、添付の請求項で提示する、本発明の一般的な広い範囲に対し過度な制限を課すものではない。
【0054】
実施例1
脱イオン化した水634.2g、15%のポリビニルアルコール(PVA)溶液110g、および酢酸11.1gを容器に添加することによって、スラリーを調製した。その結果生じた混合物を撹拌し、ジルコニア粉末221.8g、その後ジルコニアゾルバインダー272.8gを添加した。生成した混合物を8時間粉砕した。
【0055】
この生成したスラリーを使用して、直径7mmの複数のコーディエライト球体にコーティング装置で吹付けを行い、平均の厚さが200マイクロメーターの層を生成した。被覆された球体は、コーティングチャンバーから取り除き、空気中で600℃まで加熱し、乾燥空気中で、4時間か焼した。か焼した球体は、か焼した球体50ccを取り分け、平坦なドラムの中に置き、ドラムを25rpmで10分間回転させることにより、耐摩耗性試験を行った。衝撃破壊(IB)は、球体の総重量に対し、生成した細粒の重量%として決定した。この試料のIBは17.5重量%であることが判明した。
【0056】
実施例2
脱イオン化した水1021.6g、15%のPVA溶液205.9g、および酢酸21.2gを容器に添加した。混合物を撹拌し、平均繊維長200マイクロメーターおよび平均直径3マクロメーターを有する、80%のAl23、20%のSiO2からなるムライト繊維27.3gをそれに添加した。次にジルコニア粉末426.2g、その後にジルコニアゾルバインダー469.8gを添加した。その後6時間混合物をボールミルで処理した。
【0057】
上記から生成したスラリーを、スラリーコーティング装置を使用して、711gの直径7mmの複数のコーディエライト球体上に吹き付け、厚さ200マクロメーターの外層を有する、湿った球体を得た。この湿った球体を空気中で600℃まで加熱し、乾燥空気中、600℃で4時間か焼した。か焼した球体は、衝撃破壊試験を行った結果、IBが3.3重量%と判明した。
【0058】
実施例3
脱イオン化した水1121.7g、15%のPVA溶液225.5g、および酢酸23.2gを容器に添加することによって、スラリーを生成した。生成した混合物を撹拌し、実施例2に記述のムライト繊維29.9g、それからジルコニア粉末463.9g、その後ジルコニアゾルバインダー514.5gを添加した。生成したスラリーは、6時間ボールミルで処理した。
【0059】
生成したスラリーを使用して、800gの直径7mmの複数のコーディエライト球体上にスラリーコーティング装置で層を堆積し、平均厚さ100マクロメーターの層を有する、湿った球体を生成した。この湿った球体を、乾燥空気中、600℃で4時間か焼した。IBは3.0重量%と判明した。
【0060】
実施例4
脱イオン化した水602.8g、15%のPVA溶液122.5g、および酢酸12.6gを混合容器に添加した。該混合物を撹拌し、平均繊維長3マイクロメーターおよび平均直径0.3マイクロメーターを有するチタニア繊維15.3gをそれに添加した。次にジルコニア粉末253.7g、それからジルコニアゾルバインダー279.6gを添加した。生成したスラリーは、6時間ボールミルで処理した。
【0061】
前述のスラリーを使用して730gの直径7mmの複数のコーディエライト球体上に層を堆積するため、スラリーをスラリーコーティング装置で球体上に吹き付けることによって、平均厚さ200マイクロメーターの外層を有する、湿った球体を得た。湿った球体は、乾燥空気中、600℃で4時間か焼した。か焼した球体に試験を行い、IBが2.0重量%と判明した。
【0062】
実施例5
脱イオン化した水622.1g、15%のPVA溶液129g、および酢酸13.1gを混合容器に添加した。該混合物を撹拌し、実施例4に記述のチタニア繊維35.8gをそれに添加し、その後ジルコニア粉末263.8g、最後にジルコニアゾルバインダー310.4gを添加した。生成したスラリーは、6時間ボールミルで処理した。スラリーは、約10重量%のチタニア繊維を含有していた。
【0063】
スラリーコーティング装置を使用して、該スラリーの一部を730gの直径7mmの複数のコーディエライト球体上に堆積することによって、200マイクロメーターの平均厚さを有する層を得た。湿った球体は、乾燥空気中、600℃で4時間か焼し、IBが1.4重量%と判明した。
【0064】
複数の構成要素または工程の機能または構造を組み合わせて、単一の構成要素または工程にすることもできるし、あるいは単一の工程または構成要素の機能または構造を分割して、複数の工程または構成要素とすることもできることがさらに理解されよう。本発明はこれら組合せ全てを企図する。特に明記しない限り、本明細書に記述されている様々な構成要素の量、寸法、および形状は、本発明を制限することは意図しておらず、他の量、寸法、または形状も可能である。上記から、本発明における独自の触媒の作製およびその使用も、本発明による方法を構成することも理解されよう。本発明はまた、本発明における方法を実行した結果得られる中間体(例えば触媒前駆体等)および最終生成物も包含する。「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含有する(containing)」または「包含する(including)」を使用した場合、列挙した特徴「から本質的になる(consist essentially of)」または「からなる(consist of)」実施形態であることを意図する。
【0065】
本明細書に提示した説明および例は、他の当業者に対し、本発明、その原理、および実際の応用を伝えるためのものである。当業者は、特定用途の要求に一番適するように、本発明を数々の形で適応および適用してもよい。したがって、規定する本発明の特定の実施形態は、本発明を包括または限定することを意図しない。よって、本発明の範囲は、上記記述を参照して決定されるべきではなく、添付の請求項と、さらにそのような請求の権利が認められている同等の記載の全範囲とを参照して決定されるべきである。特許、特許出願書、および特許公報を含む、全ての文献および参考資料の開示は、あらゆる目的のために参照により組み込まれている。
[1]内部コアと、前記内部コアを覆い、耐火性無機酸化物、繊維成分、および無機バインダーを含んだ外層とを含む、層状組成物、
[2]前記層状組成物が、10重量%未満の衝撃破壊を有する、[1]に記載の組成物、
[3]前記外層上に分散し、元素周期表(IUPACによる)の3〜12族元素、およびそれらの混合物からなる群から選択される触媒成分をさらに含む、[1]に記載の組成物、
[4]前記外層上に分散し、アルカリ金属、アルカリ土類金属、スズ、ゲルマニウム、レニウム、ガリウム、ビスマス、鉛、インジウム、セリウム、亜鉛、ホウ素、およびこれらの混合物からなる群から選択される修飾剤成分をさらに含む、[3]に記載の組成物、
[5]前記外層が、その上に1〜5層の追加の層を堆積しており、隣接し合う層は、異なる無機酸化物を含む、[1]または[3]に記載の組成物、
[6]前記追加の層の少なくとも1層が、その上に分散する触媒成分を有し、前記触媒成分は、元素周期表(IUPACによる)の3〜12族元素、およびそれらの混合物からなる群から選択される、[5]に記載の組成物、
[7]内部コアと、前記内部コアを覆い、耐火性無機酸化物、繊維成分、および無機バインダーを含んだ外層とを含む、層状組成物を調製する方法であって、
外層の耐火性無機酸化物、繊維成分、無機バインダー前駆体、有機結合剤および溶媒を含むスラリーで、内部コアをコーティングし、被覆されたコアを得ること;および、
外層を内部コアに結合するために十分な時間、少なくとも200℃の温度で前記被覆されたコアをか焼し、層状組成物を得ること;
を含む方法、
[8]触媒金属化合物を含む溶液を前記層状組成物に含浸させ、含浸した層状組成物を得ること;および、外層の耐火性無機酸化物層上に触媒金属成分を与えるために十分な時間、200℃〜700℃の温度で前記含浸した層状組成物をか焼すること;をさらに含み、ここで、前記触媒金属が、元素周期表(IUPACによる)の3〜12族元素からなる群から選択される、[7]に記載の方法、
[9]前記溶液がさらに修飾成分化合物を含み、この修飾成分が、アルカリ金属、アルカリ土類金属、スズ、ゲルマニウム、レニウム、ガリウム、ビスマス、鉛、インジウム、セリウム、亜鉛、ホウ素およびこれらの混合物からなる群から選択される、[8]に記載の方法、
[10]前記コーティングおよびか焼のステップを1〜5回繰り返すことによって、多層膜を得る、[7]に記載の方法、
[11]炭化水素流を、炭化水素変換条件下で、[1]〜[6]のいずれか一つに記載の層状組成物と接触させることによって、変換生成物を得ることを含む炭化水素変換法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素流を、炭化水素変換条件下で層状組成物と接触させることによって、変換生成物を得ることを含む炭化水素変換方法であって、
該炭化水素変換方法は、芳香族化合物のアルキル化、パラフィンのアルキル化、水素化分解、触媒クラッキング、異性化、脱水素、水素添加、及び酸化からなる群から選択され、
該層状組成物が、実質的に無孔性の成分を含む内部コアと、少なくとも30m/gの表面積を有する耐火性無機酸化物及び約2〜約1000マイクロメーターの長さを有する繊維成分を含む外層と、を含み、該繊維成分が該外層中に分散している、
方法。
【請求項2】
前記層状組成物がさらに、
前記外層上に分散し、元素周期表(IUPACによる)の3〜12族元素、及びそれらの混合物からなる群から選択される触媒成分と、
前記外層上に分散し、アルカリ金属、アルカリ土類金属、スズ、ゲルマニウム、レニウム、ガリウム、ビスマス、鉛、インジウム、セリウム、亜鉛、ホウ素およびこれらの混合物からなる群から選択される修飾剤成分と、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記触媒成分が、Pd、Rh、Pt、Ru、Ir、Os、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。

【公開番号】特開2013−49696(P2013−49696A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−237997(P2012−237997)
【出願日】平成24年10月29日(2012.10.29)
【分割の表示】特願2008−513609(P2008−513609)の分割
【原出願日】平成18年5月23日(2006.5.23)
【出願人】(598055242)ユーオーピー エルエルシー (182)
【Fターム(参考)】