説明

層間接着剤および防水構造、ならびに防水工法

【課題】防水層と無機質材層とを確実に接着させることができ、長期間にわたって漏水等の問題を抑止できる層間接着剤を提供する。
【解決手段】樹脂塗膜からなる防水層20と、モルタルまたはコンクリートを用いた無機質材層40との間に層間接着剤層30として介在してこれらを互いに接着する層間接着剤。この層間接着剤は、(a)アクリル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂、およびエポキシ系樹脂から選ばれた1または2種以上からなる主樹脂のエマルションからなる主剤と、(b)イソシアネート基を有するイソシアネート化合物と、を反応させて得られた樹脂組成物が含有されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、樹脂塗膜からなる防水層と、前記防水層上に打設されるモルタルまたはコンクリートからなる無機質材層との間に塗布され、これら防水層と無機質材層とを互いに接着する層間接着剤および防水構造、ならびに防水工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、たとえば、地下道、地下鉄駅舎、地下駐車場、地下街等に代表される地下構造物、または、構造物の屋上にあっては、ポリウレタン系樹脂、ポリウレア系樹脂、繊維強化プラスチック(以下、FRP(Fiber Reinforced Plastics)と称する。)等からなる防水層と、この防水層上に打設されたモルタルまたはコンクリート等からなる無機質材層とからなる構造体が設けられている。
【0003】
この種の構造体にあっては、まず、ポリウレタン系樹脂等からなる防水層が形成され、この防水層上に無機質材層を形成していた。
防水層上に無機質材を打設するにあたっては、これら防水層と無機質材層との接着強度を高めるために、防水層上にゴムアスファルトシートを貼り付けたり、樹脂モルタルや適宜のプライマーを塗布したりしていた(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−364297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、防水層と無機質材層とは性質が大きく異なるため、互いの接着力は十分とはいえず、無機質材層が防水層から剥離するのを確実に防止することが要望されていた。
なお、無機質材層が防水層から剥離した場合には、防水層と無機質材層との間に地下水や雨水等が浸水してしまい、構造物内部の漏水や、構造物自体の劣化の要因となるおそれがある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされ、防水層と無機質材層とを確実に接着させることができ、長期間にわたって漏水等の問題を抑止できる層間接着剤および防水構造、ならびに防水工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の層間接着剤は、樹脂塗膜からなる防水層と、モルタルまたはコンクリートを用いた無機質材層との間に介在してこれらを互いに接着する層間接着剤であって、(a)アクリル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂、およびエポキシ系樹脂から選ばれた1または2種以上からなる主樹脂のエマルションからなる主剤と、(b)イソシアネート基を有するイソシアネート化合物と、を反応させて得られた樹脂組成物が含有されている層間接着剤である。
前記主樹脂は、活性水素を有する官能基を分子内にもつアクリル系樹脂を1種以上含むことが好ましい。
前記主樹脂は、Tg(ガラス転移温度)が−60〜−10℃であるアクリル系樹脂を1種以上含んでいてよい。
前記主剤は、前記主樹脂としてアクリル系樹脂を用いた水中油滴型エマルションであることが好ましい。
前記イソシアネート化合物は、水分散型または水溶性ポリイソシアネート化合物であることが好ましい。
前記水分散型または水溶性ポリイソシアネート化合物は、HDIのトリマー(三量体)、ビュレット変性体、アロファネート変性体、アダクト変性体のうち1種以上を含むことが好ましい。
本発明の層間接着剤は、前記主樹脂が、アクリル系樹脂であり、固形分で100質量部の前記アクリル系樹脂を含む主剤と、固形分で0.05〜20質量部のイソシアネート化合物とを使用直前に混合して得られた液状樹脂組成物からなる層間接着剤であってよい。
本発明の層間接着剤は、前記主樹脂が、アクリル系樹脂であり、固形分で100質量部の前記アクリル系樹脂を含む主剤と、固形分で0.05〜5質量部のイソシアネート化合物とを予め混合反応して得られた液状樹脂組成物からなる層間接着剤であってよい。
前記樹脂塗膜は、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂からなることが好ましい。
前記樹脂塗膜は、ポリウレタン系樹脂、ポリウレア系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、アクリル系樹脂、および繊維強化プラスチックのうち1または2種以上からなることが好ましい。
【0008】
本発明の防水工法は、下地表面に、樹脂塗膜からなる防水層を形成する防水層形成工程と、この防水層形成工程にて形成した前記防水層の表面に、前記層間接着剤を塗布し硬化させて層間接着剤層とする接着剤層形成工程と、この接着剤層形成工程にて形成した層間接着剤層の表面に、モルタルまたはコンクリートを含むスラリー状材料を用いて無機質材層を形成する無機質材層形成工程と、を含む防水工法である。
前記防水層形成工程は、前記下地の表面に沿って、フレキシブルシートを敷設するシート敷設工程と、このフレキシブルシートに、液状樹脂材料を塗布し硬化させて樹脂塗膜からなる前記防水層を形成する樹脂成膜工程と、を含むことが好ましい。
前記層間接着剤としては、前記主樹脂がアクリル系樹脂であり、固形分で100質量部の前記アクリル系樹脂を含む主剤と、固形分で0.05〜20質量部のイソシアネート化合物とを使用直前に混合して得られた液状樹脂組成物からなる層間接着剤を用いることができる。
前記層間接着剤としては、前記主樹脂が、アクリル系樹脂であり、固形分で100質量部の前記アクリル系樹脂を含む主剤と、固形分で0.05〜5質量部のイソシアネート化合物とを予め混合反応して得られた液状樹脂組成物からなる層間接着剤を用いることができる。
【0009】
本発明の防水構造は、下地の表面に形成され、樹脂塗膜からなる防水層と、モルタルまたはコンクリートを用いた無機質材層と、前記防水層と前記無機質材層との間に介在してこれらを互いに接着する層間接着剤層とを有する多層防水構造体を備え、前記層間接着剤層が、前記層間接着剤の硬化物からなる防水構造である。
前記下地と前記防水層との間には、フレキシブルシートを介在配置することができる。
本発明の層間接着剤層は、前記層間接着剤の硬化物からなる層間接着剤層であって、下地の表面に形成され、樹脂塗膜からなる防水層と、モルタルまたはコンクリートが用いられ、硬化した無機質材層との間に介在してこれらを互いに接着している層間接着剤層である。
【0010】
本発明によれば、防水層と無機質材層とを互いを強力に接着させることができる。従って、無機質材層は、長期間にわたって防水層から剥離され難くなる。
【0011】
本発明にあっては、地下構造物の先防水工法に適用する場合には、地下構内への地下水等の浸水を好適に防止しつつ、その上にコンクリート等からなる無機質材層を形成することができる。
また、屋上防水工法に適用する場合には、屋上の外部に露出された床等に、構造物内への雨水等の浸水を防止しつつ、その上にコンクリート等からなる無機質材層を形成することができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明に係る層間接着剤によれば、防水層と無機質材層とを、互いに強固に接着させることができ、長期間にわたって漏水等の問題を抑止可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の防水工法の一例によって防水施工された地下構造物の壁の断面図である。
【図2】防水施工の工程を示す図である。
【図3】防水施工の工程を示す図である。
【図4】水密性等の試験に供する検体を作製するための型枠の底板(防水層付き底板)の構成を示す分解斜視図である。
【図5】図4の防水層付き底板の構成を説明する図であって、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は(a)のA−A線断面矢視図である。
【図6】図4の防水層付き底板上に4枚の側板を設置して組み立てた型枠を示す正断面図である。
【図7】水密性試験の試験装置を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明に係る層間接着剤についての実施形態について、地下構造物の先防水工法を例として説明する。
図1は地下構造物の先防水工法によって得られた地下構造物の壁の断面図である。図2(a)、図2(b)、図3(a)および図3(b)は、図1に示す地下構造物の壁面を構成する際の工程を示す図である。
【0015】
図1は地下構造物の壁の断面を示す図であり、符号1は本発明に係る層間接着剤層30を用いる先防水工法によって構成された地下構造物の防水構造である。
この地下構造物の壁面には、山留壁とされる連続壁W(下地)の表面W1に敷設されたフレキシブルシート10と、フレキシブルシート10上に形成された防水層20と、防水層20の表面(連続壁Wとは反対の面)に形成された層間接着剤層30と、層間接着剤層30に接着されて形成されたコンクリート層(無機質材層)40とを有する多層防水構造体50が設けられている。
なお、符号15は、前記フレキシブルシート10を、連続壁Wに固定するタッカーである。
【0016】
次に、この防水構造1が構成される先防水工法について、図2(a)、図2(b)、図3(a)および図3(b)を参照しながら説明する。この先防水工法は、図2(a)、図2(b)、図3(a)、図3(b)の順で各工程が進む。図2(b)は防水層形成工程の一部であるシート敷設工程を示し、図3(a)は防水層形成工程の一部とされる樹脂成膜工程を示し、図3(b)は接着剤層形成工程を示す。
【0017】
図2(a)に示すように、例えば掘削工具や機械を用いた掘削によって、山留壁とされる連続壁Wが形成される。この連続壁Wの表面W1に、次に示す防水層形成工程によって、防水層20を形成する。
この防水層形成工程は、連続壁W上にフレキシブルシート10を敷設するシート敷設工程と、フレキシブルシート10の上に防水層20を形成する樹脂成膜工程とから構成される。
【0018】
シート敷設工程について説明する。
図2(b)に示すように、連続壁Wの表面W1にフレキシブルシート10が敷設される。このシート敷設工程では、可撓性を有するフレキシブルシート10が、連続壁Wの面を被覆するように広げられて敷設される。フレキシブルシート10は、固定具であるステーブル状のタッカー15によって連続壁Wに固定される。フレキシブルシート10は、張力がかかった状態で敷設される(張設される)のが好ましい。
なお、固定具には特に限定はなく、タッカーだけでなく、例えばワッシャ付釘、傘釘、ピン等を使用することができる。
【0019】
フレキシブルシート10は、可撓性を有し、連続壁Wを平滑化する目的に適えば特に限定されず、例えば、合成樹脂フィルム、合成樹脂シート、布材(不織布または織布)等であってもよいし、布材(不織布または織布)と合成樹脂シートとの積層シート等を使用してもよい。特に、防水層20に好適に用いられるポリウレタン系樹脂と強力に接着し、優れた防水性を有するといった利点から、非透水性(遮水性)を有する合成樹脂フィルムの両面に布材(不織布等)を積層したシートがフレキシブルシート10として好ましい。
例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等からなるフィルムの両面に、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン等からなる不織布を積層してなる積層シートが使用可能である。
【0020】
前記シート敷設工程の後に、樹脂成膜工程を行う。
図3(a)に示すように、この樹脂成膜工程では、フレキシブルシート10の上に、防水層20が形成される。
具体的には、例えば、高圧スプレーガンを備えた2液型衝突混合方式のスプレー塗装装置(2液衝突混合機)を用いて、例えばポリウレタン系樹脂などの熱硬化性樹脂等を吹付け塗布することにより、樹脂塗膜を形成する。形成された樹脂塗膜は硬化によって防水層20となる。
ポリウレタン系樹脂としては、例えば、無溶剤型ポリイソシアネートプレポリマーと、無溶剤型ポリオール(場合によって無溶剤型ポリアミンを含有)との2液からなる無溶剤型超速硬化2液型ポリウレタン系樹脂が、速やかに反応して防水層20を形成する点で好ましい。
また、形成される防水層20の厚みは、防水性能や成膜コストの観点から1〜3mmが好ましい。
【0021】
図示例の防水層20にあっては、吹付け塗布されたポリウレタン系樹脂のうちの一部分が、フレキシブルシート20に含侵されて防水材含浸層20aが形成されている。このため、防水層20はフレキシブルシート10に強固に接着し一体化する。
フレキシブルシート10に布材(不織布等)を使用すると、防水材含浸層20aによりフレキシブルシート10と防水層20との一体化を図ることができる。
なお、防水層20の厚みは、防水材含浸層20aを除く部分の厚みをいう。
【0022】
前記方法では、防水層形成工程は、連続壁Wにフレキシブルシート10を敷設するシート敷設工程と、フレキシブルシート10の上に防水層20を形成する樹脂成膜工程とからなるが、本発明において、防水層形成工程はこれに限らず、シート敷設工程を省き、樹脂成膜工程のみで構成してもよい。
この場合にあっては、連続壁Wの表面W1の、防水層を形成する個所に適宜のプライマーを塗布し、その後に樹脂成膜工程を行い、防水層を形成すればよい。
【0023】
防水層20を形成するにあたっては、ポリウレタン系樹脂に限らず、優れた防水性能を発揮可能な材料、例えばポリウレア系樹脂、アクリルウレタン系樹脂等の熱硬化性樹脂を用いてもよい。また、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、アクリル系樹脂等の熱可塑性樹脂を用いてもよい。すなわち、防水層20には、ポリウレタン系樹脂、ポリウレア系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、アクリル系樹脂のうち1または2種以上を使用できる。
防水層20には、前記熱硬化性樹脂(ポリウレタン系樹脂、ポリウレア系樹脂、アクリルウレタン系樹脂のうち1または2種以上)または熱可塑性樹脂(ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、アクリル系樹脂)を基材樹脂とするFRP(繊維強化プラスチック)を用いてもよい。FRPに用いる繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維等の無機繊維;アラミド繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維等の有機繊維等がある。
防水層20には、ポリウレタン系樹脂、ポリウレア系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、アクリル系樹脂、およびFRP等を使用できる。
防水層20には、ポリウレタン系樹脂、ポリウレア系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、アクリル系樹脂、およびFRPのうち1または2種以上を使用することが好ましい。
なお、防水層20に使用する樹脂材料は熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂に限定されない。
【0024】
施工方法としては、高圧スプレーガンを備えた2液型衝突混合方式のスプレー塗装装置を用いて、2液(2種類の液状樹脂材料)を混合すること(2液混合型)によって防水層20を形成する方法を例示したが、これに限定されることなく、1液型のポリウレタン系樹脂、ポリウレア系樹脂等によって防水層20を形成してもよい。
施工方法としては、手塗り施工を採用してもよいし、スプレー塗装装置を用いた施工も可能である。手塗り施工を採用する場合には、初期硬化時間が5分〜24時間である材料が好ましい。
【0025】
防水層20は、発泡のない中実構造であってもよいし、発泡樹脂(例えば2液型発泡ポリウレタン系樹脂、1液型発泡ポリウレタン系樹脂)で構成されていてもよい。発泡樹脂は、防水性の確保の点で、独立気泡型の発泡樹脂であることが好ましい。
【0026】
さらに、湿度の影響が少なく硬化時間が制御しやすい点からポリウレタン系樹脂およびポリウレア系樹脂は2液混合型が好ましく、イソシアネート成分を含む液状の主剤(液状樹脂材料)と液状の硬化剤(液状樹脂材料)とを混合して得られる材料が好ましい。
ポリイソシアネート成分としては特に限定されないが、例えばジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート(液状MDI)、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート(粗製MDI)、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート等の低分子量イソシアネート化合物が挙げられる。また前記イソシアネート化合物を変性した、イソシアネート基末端プレポリマー、ビュレット化変性体等も挙げられる。なお、これらポリイソシアネート成分は単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0027】
なお、2液混合吹付け型のポリウレタン系樹脂で防水層20を形成する場合には、ポリイソシアネート成分がMDIまたは液状MDIもしくはこれらの変性体、イソシアネート基末端プレポリマー等であることが好ましい。
前記樹脂には、必要に応じて、可塑剤、硬化触媒、充填材、酸化防止剤、難燃剤、安定剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、着色顔料等の添加剤が添加してもよい。
【0028】
硬化剤としては、活性水素含有化合物が挙げられ、例えばポリオール、ポリアミン、および水から選ばれる少なくとも1つを用いることが好ましいが、ポリアミンのみ、または、ポリアミンとポリオールとの混合物を用いることが特に好ましい。
前記ポリオールとしては、水酸基を2個以上持っていれば特に限定されないが、例えばポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリテトラメチレングリコール等の一般ポリオール、含燐ポリオール等の難燃性ポリオール等が挙げられる。これらポリオールは単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
前記ポリアミンとしては特に限定されないが、芳香族ポリアミン、脂肪族ポリアミン等が挙げられる。具体的には、ジエチルトルエンジアミン、ジアルキル−4,4’−メチレンジアニリン、テトラアルキル−4,4’−メチレンジアニリン、4,4’−メチレンビス(2−クロロアニリン)、ビスメチルチオトルエンジアミン、ポリオキシアルキレンジアミン、メタキシリレンジアミン、エチレンジアミン、イソホロンジアミン等が挙げられる。これらポリアミンは単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0029】
次いで、図3(b)に示すように、層間接着剤層30を形成する接着剤層形成工程に移る。この接着剤層形成工程においては、防水層20の表面に層間接着剤を塗布し、塗膜を乾燥し硬化させることによって、層間接着剤層30を形成する。
【0030】
層間接着剤は、(a)アクリル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂、およびエポキシ系樹脂から選ばれた1または2種以上からなる主樹脂のエマルションからなる主剤と、(b)イソシアネート基を有するイソシアネート化合物と、を反応させて得られた樹脂組成物が含有されている。
【0031】
アクリル系樹脂は、アクリル酸、メタクリル酸、またはそれらの誘導体を重合して得られる樹脂またはその誘導体の総称であり、例えばアクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルの重合体である。
アクリル系樹脂としては、硬質のポリマーを与える硬質成分モノマーと、軟質のポリマーを与える軟質成分モノマー(内部可塑化コモノマー)とを含む共重合体が好適である。また、硬質成分および軟質成分モノマーに加えて、官能基含有モノマーを含む共重合体を用いることによって、安定性や接着性の改良を図ることができる。
硬質成分モノマーとしては、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、スチレン、およびアセトニトリル等が挙げられる。硬質成分モノマーとして特に好ましいものとしては、メタクリル酸メチル、スチレン、およびアセトニトリルが挙げられる。
軟質成分モノマーとしては、例えばアクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸s−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ヒドロキシエチル等が挙げられる。軟質成分モノマーとして特に好ましいものとしては、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルが挙げられる。
官能基含有モノマーとしては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸半エステル、マレイン酸、マレイン酸半エステル、無水マレイン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。官能基含有モノマーとして特に好ましいものとしては、アクリル酸、メタクリル酸が挙げられる。
【0032】
エチレン−酢酸ビニル系樹脂とは、エチレンおよび酢酸ビニルを含む共重合体であり、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−アクリル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−長鎖ビニルエステル共重合体等である。
【0033】
エポキシ系樹脂とは、1分子中に2個以上のエポキシ基を持つ樹脂であり、具体的には、水素化エポキシ系樹脂、脂環式エポキシ系樹脂、脂肪族エポキシ系樹脂などが例示できる。
アクリル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂、およびエポキシ系樹脂は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0034】
主樹脂は、活性水素を有する官能基を分子内にもつアクリル系樹脂を1種以上含むことが好ましい。活性水素を有する官能基としては、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基などがある。主樹脂は、Tg(ガラス転移温度)が−60〜−10℃(好ましくは−60〜−30℃)であるアクリル系樹脂を1種以上含むことが好ましい。Tgを−60℃以上とすることによって、十分な強度の層間接着剤層30を形成できる。Tgを−10℃以下とすることによって、コンクリート層40に対する接着強度を高めることができる。このため、Tgを前記範囲とすることによって、コンクリート層40に対する接着強度が高く、かつ機械的強度に優れた層間接着剤層30を形成できる。
【0035】
前記主樹脂のエマルションは、主樹脂を水系分散媒(例えば水)、溶剤系分散媒などの分散媒に分散させて得られる。
主剤は、主樹脂の水中油滴型エマルションであっても油中水滴型エマルションであってもよいが、水中油滴型エマルションが好ましい。特に、アクリル系樹脂を主樹脂として用いた水中油滴型エマルションが好ましい。
前記主樹脂のエマルション化によって、層間接着剤の塗布を容易にし、かつ前記地下構造物内においても層間接着剤層30を短時間で硬化させることができる。
【0036】
イソシアネート化合物は、特に限定されないが、例えばジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート(粗製MDI)、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PPDI)等の芳香族系イソシアネート化合物;1,3−または1,4−キシリレンジイソシアネート(XDI)等の芳香脂肪族系イソシアネート化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート等の脂肪族系イソシアネート化合物;イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、水添キシリレンジイソシアネート等の脂環族イソシアネート化合物、および、前記イソシアネート化合物を使用した二量体、三量体、カルボジイミド変性体、ビュレット変性体、アロファネート変性体、アダクト変性体、イソシアネート基末端プレポリマーが使用できる。
また、フェノール系化合物(フェノール、クレゾール、キシロール、p−ニトロフェノール、アルキルフェノールなど)や活性メチレン化合物等(マロン酸メチル、マロン酸エチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセチルアセトンなど)でイソシアネート基をマスキングしたブロック化イソシアネート化合物、並びに、前記イソシアネート化合物を使用した水分散型または水溶性イソシアネート化合物なども使用できる。
なお、これらイソシアネート化合物は単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0037】
イソシアネート化合物は、水分散型または水溶性ポリイソシアネート化合物を用いると、前記エマルションからなる主剤との均一な混合が可能となり、しかも硬化物の強度を高めることができる。
イソシアネート化合物は、トリマー(三量体)、ビュレット変性体、アロファネート変性体、アダクト変性体のうち1種以上であってよい。例えば、トリマー、ビュレット変性体、アロファネート変性体、アダクト変性体のうち1種以上と、親水性基および疎水性基を有する成分とを含む水分散型または水溶性ポリイソシアネート化合物を使用できる。
前記トリマーはHDIのトリマーが好ましい。変性体(ビュレット変性体、アロファネート変性体、アダクト変性体)も、HDIの変性体が好ましい。
親水性基および疎水性基を有する成分は、例えば界面活性剤である。
前記トリマーまたは変性体の使用によって、イソシアネート化合物の安全性を高めることができる。
【0038】
層間接着剤は、主樹脂がアクリル系樹脂であり、固形分で100質量部の前記アクリル系樹脂を含む主剤と、固形分で0.05〜20質量部のイソシアネート化合物とを使用直前に混合して得られた液状樹脂組成物が好ましい。この液状樹脂組成物は、2液型衝突混合方式のスプレー塗装装置(2液衝突混合機)や、外壁塗装で用いられるような一般的なスプレー塗装装置などを用いて吹付け塗布することにより層間接着剤層30を形成することができる。
層間接着剤層30の形成には、吹付け施工に限らず、刷毛、ローラ等の手工具を用いた手塗り施工を採用することもできる。
【0039】
層間接着剤は、主樹脂がアクリル系樹脂であり、固形分で100質量部の前記アクリル系樹脂を含む主剤と、固形分で0.05〜5質量部のイソシアネート化合物とを予め混合反応して得られた液状樹脂組成物であってもよい。
前記予め混合反応して得られた液状樹脂組成物を使用する場合も、外壁塗装で用いられるようなスプレー塗装装置などを用いた吹付け施工を採用してもよいし、刷毛、ローラ等の手工具を用いた手塗り施工を採用してもよい。
前記樹脂には、必要に応じて、可塑剤、硬化触媒、充填材、酸化防止剤、難燃剤、安定剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、着色顔料等の添加剤が添加してもよい。
【0040】
層間接着剤層30の表面(防水層20とは反対の面)に、コンクリート層40が形成されることによって、図1に示す多層防水構造体50が形成される。
コンクリート層40は、コンクリートを含むスラリー状材料を層間接着剤層30の表面に打設することで形成される。
なお、本発明で使用できる無機質材はコンクリートを含む材料に限らず、モルタルを含む材料であってもよい。
【0041】
本発明に係る層間接着剤によれば、防水層と無機質材層とを互いに強固に接着させることができ、長期間にわたって漏水等の問題を抑止可能である。
【0042】
以下、実施例を説明し、各実施例に関して、防水層20とコンクリート層40との接着強度についての試験結果について説明する。
(実施例1)
離型紙を貼付したフレキシブル平板(300mm×300mm)の表面に、高圧スプレーガンを備えた2液型衝突混合方式のスプレー塗装装置を用いて、2液混合型ポリウレタン系樹脂(CVスプレー:ダイフレックス社製)を吹付けて1日間養生し、防水層を形成した(防水層形成工程)。
次いで、防水層の表面に層間接着剤を刷毛またはローラーを用いて0.2kg/m塗布して14日間養生し、層間接着剤層を形成した(層間接着剤層形成工程)。
次いで、前記層間接着剤層の表面に、モルタル(普通ポルトランドセメントと硅砂を質量比1対3で含む)を厚さ40mm打設して7日間養生し硬化させて無機質材層を形成した(無機質材層形成工程)。
最後に、前記防水層、層間接着剤層、および無機質材層からなる試験体をフレキシブル平板から剥がして後述の試験に供した。
【0043】
層間接着剤は次のように調製した。
アクリル酸n−ブチル89質量部、アセトニトリル9質量部、アクリル酸1質量部、メタクリル酸1質量部により調製したTg(計算値)−40℃のアクリル系共重合体エマルション(X−109−404E、サイデン化学株式会社製)100質量部(固形分換算)、フィラー分としてカーボンブラック(スペシャルブラック100、デグサ社製)0.5質量部を混合させ、防水層表面に塗布する直前に、HDIトリマーを含む水分散型ポリイソシアネート化合物(ステップコートEU−700硬化剤、亜細亜工業株式会社製)を固形分で0.05質量部添加し、撹拌機により2〜5分撹拌し、これを層間接着剤として用いた。
【0044】
(実施例2)
層間接着剤を次の通りとすること以外は実施例1と同様にして試験体を得た。
アクリル酸n−ブチル89質量部、アセトニトリル9質量部、アクリル酸1質量部、メタクリル酸1質量部により調製したTg(計算値)−40℃のアクリル系共重合体エマルション(X−109−404E、サイデン化学株式会社製)100質量部(固形分換算)、フィラー分としてカーボンブラック(スペシャルブラック100、デグサ社製)0.5質量部を混合させ、防水層表面に塗布する直前に、HDIトリマーを含む水分散型ポリイソシアネート化合物(ステップコートEU−700硬化剤、亜細亜工業株式会社製)を固形分で10質量部添加し、撹拌機により2〜5分撹拌し、これを層間接着剤として用いた。
【0045】
(実施例3)
層間接着剤を次の通りとすること以外は実施例1と同様にして試験体を得た。
アクリル酸n−ブチル89質量部、アセトニトリル9質量部、アクリル酸1質量部、メタクリル酸1質量部により調製したTg(計算値)−40℃のアクリル系共重合体エマルション(X−109−404E、サイデン化学株式会社製)100質量部(固形分換算)、フィラー分としてカーボンブラック(スペシャルブラック100、デグサ社製)0.5質量部を混合させ、防水層表面に塗布する直前に、HDIトリマーを含む水分散型ポリイソシアネート化合物(ステップコートEU−700硬化剤、亜細亜工業株式会社製)を固形分で20質量部添加し、撹拌機により2〜5分撹拌し、これを層間接着剤として用いた。
【0046】
(実施例4)
層間接着剤を次の通りとすること以外は実施例1と同様にして試験体を得た。
アクリル酸n−ブチル89質量部、アセトニトリル9質量部、アクリル酸1質量部、メタクリル酸1質量部により調製したTg(計算値)−40℃のアクリル系共重合体エマルション(X−109−404E、サイデン化学株式会社製)100質量部(固形分換算)、フィラー分としてカーボンブラック(スペシャルブラック100、デグサ社製)0.5質量部を混合させ、防水層表面に塗布する直前に、HDIトリマーを含む水分散型ポリイソシアネート化合物(ステップコートEU−700硬化剤、亜細亜工業株式会社製)を固形分で22質量部を添加し、撹拌機により2〜5分撹拌し、これを層間接着剤として用いた。
【0047】
(実施例5)
層間接着剤を次の通りとすること以外は実施例1と同様にして試験体を得た。
アクリル酸n−ブチル89質量部、アセトニトリル9質量部、アクリル酸1質量部、メタクリル酸1質量部により調製したTg(計算値)−40℃のアクリル系共重合体エマルション(X−109−404E、サイデン化学株式会社製)100質量部(固形分換算)、フィラー分としてカーボンブラック(スペシャルブラック100、デグサ社製)0.5質量部を混合させ、防水層表面に塗布する直前に、非水分散型ポリイソシアネート化合物(ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート)(コスモネートM200、三井化学ポリウレタン株式会社製)を固形分で2質量部を添加し、撹拌機により2〜5分撹拌し、これを層間接着剤として用いた。
【0048】
(実施例6)
層間接着剤を次の通りとすること以外は実施例1と同様にして試験体を得た。
アクリル酸2−エチルヘキシル89質量部、アセトニトリル9質量部、アクリル酸1質量部、メタクリル酸1質量部により調製したTg(計算値)−59℃のアクリル系共重合体エマルション(X−109−428E、サイデン化学株式会社製)100質量部(固形分換算)、フィラー分としてカーボンブラック(スペシャルブラック100、デグサ社製)0.5質量部を混合させ、防水層表面に塗布する直前に、HDIトリマーを含む水分散型ポリイソシアネート化合物(ステップコートEU−700硬化剤、亜細亜工業株式会社製)を固形分で10質量部を添加し、撹拌機により2〜5分撹拌し、これを層間接着剤として用いた。
【0049】
(実施例7)
層間接着剤を次の通りとすること以外は実施例1と同様にして試験体を得た。
アクリル酸2−エチルヘキシル64質量部、メタクリル酸メチル30質量部、アセトニトリル4質量部、アクリル酸1質量部、メタクリル酸1質量部により調製したコアシェル型のアクリル系共重合体エマルション(X−209−047E−3、コアTg(計算値)−10℃/シェルTg(計算値)−40℃、サイデン化学株式会社製)100質量部(固形分換算)、フィラー分としてカーボンブラック(スペシャルブラック100、デグサ社製)0.5質量部を混合させ、防水層表面に塗布する直前に、HDIトリマーを含む水分散型ポリイソシアネート化合物(ステップコートEU−700硬化剤、亜細亜工業株式会社製)を固形分で10質量部を添加し、撹拌機により2〜5分撹拌し、これを層間接着剤として用いた。
【0050】
(実施例8)
層間接着剤を次の通りとすること以外は実施例1と同様にして試験体を得た。
Tg(計算値)−40℃のアクリル系共重合体エマルション(X−109−404E、サイデン化学株式会社製)50質量部(固形分換算)、Tg(計算値)−15℃のアクリル系共重合体エマルション(X−509−447E、サイデン化学株式会社製)50質量部(固形分換算)、フィラー分としてカーボンブラック(スペシャルブラック100、デグサ社製)0.5質量部を混合させ、防水層表面に塗布する直前に、HDIトリマーを含む水分散型ポリイソシアネート化合物(ステップコートEU−700硬化剤、亜細亜工業株式会社製)を固形分で10質量部を添加し、撹拌機により2〜5分撹拌し、これを層間接着剤として用いた。
前記Tg−40℃のアクリル系共重合体エマルションは、アクリル酸n−ブチル89質量部、アセトニトリル9質量部、アクリル酸1質量部、メタクリル酸1質量部により調製した。Tg−15℃のアクリル系共重合体エマルションは、スチレン33質量部、アクリル酸2−エチルヘキシル65質量部、アクリル酸1質量部、メタクリル酸1質量部により調製した。
【0051】
(実施例9)
層間接着剤を次の通りとすること以外は実施例1と同様にして試験体を得た。
アクリル酸n−ブチル89質量部、アセトニトリル9質量部、アクリル酸1質量部、メタクリル酸1質量部により調製したTg(計算値)−40℃のアクリル系共重合体エマルション(X−109−404E、サイデン化学株式会社製)50質量部(固形分換算)、エチレン酢酸−ビニル共重合体エマルション(ポリゾールP−38EN、昭和高分子株式会社製)50質量部(固形分換算)、フィラー分としてカーボンブラック(スペシャルブラック100、デグサ社製)0.5質量部を混合させ、防水層表面に塗布する直前に、HDIトリマーを含む水分散型ポリイソシアネート化合物(ステップコートEU−700硬化剤、亜細亜工業株式会社製)を固形分で10質量部を添加し、撹拌機により2〜5分撹拌し、これを層間接着剤として用いた。
【0052】
(実施例10)
層間接着剤を次の通りとすること以外は実施例1と同様にして試験体を得た。
アクリル酸n−ブチル89質量部、アセトニトリル9質量部、アクリル酸1質量部、メタクリル酸1質量部により調製したTg(計算値)−40℃のアクリル系共重合体エマルション(X−109−404E、サイデン化学株式会社製)50質量部(固形分換算)とエポキシ樹脂エマルション(ダブルテックスA剤、株式会社ダイフレックス製)50質量部(固形分換算)、フィラー分としてカーボンブラック(スペシャルブラック100、デグサ社製)0.5質量部を混合させ、防水層表面に塗布する直前に、HDIトリマーを含む水分散型ポリイソシアネート化合物(ステップコートEU−700硬化剤、亜細亜工業株式会社製)を固形分で10質量部を添加し、撹拌機により2〜5分撹拌し、これを層間接着剤として用いた。
【0053】
(実施例11)
層間接着剤を次の通りとすること以外は実施例1と同様にして試験体を得た。
アクリル酸n−ブチル89質量部、アセトニトリル9質量部、アクリル酸1質量部、メタクリル酸1質量部により調製したTg(計算値)−40℃のアクリル系共重合体エマルション(X−109−404E、サイデン化学株式会社製)100質量部(固形分換算)に、フィラー分としてカーボンブラック(スペシャルブラック100、デグサ社製)0.5質量部を混合し、更に、HDIトリマーを含む水分散型ポリイソシアネート化合物(ステップコートEU−700硬化剤、亜細亜工業株式会社製)を固形分で0.05質量部を混合して、撹拌機でかき混ぜながら60℃で4時間処理して予め反応を完結させ、これを層間接着剤として用いた。
【0054】
(実施例12)
層間接着剤を次の通りとすること以外は実施例1と同様にして試験体を得た。
アクリル酸n−ブチル89質量部、アセトニトリル9質量部、アクリル酸1質量部、メタクリル酸1質量部により調製したTg(計算値)−40℃のアクリル系共重合体エマルション(X−109−404E、サイデン化学株式会社製)100質量部(固形分換算)に、フィラー分としてカーボンブラック(スペシャルブラック100、デグサ社製)0.5質量部を混合し、更に、HDIトリマーを含む水分散型ポリイソシアネート化合物(ステップコートEU−700硬化剤、亜細亜工業株式会社製)を固形分で1質量部を混合して、撹拌機でかき混ぜながら60℃で4時間処理して予め反応を完結させ、これを層間接着剤として用いた。
【0055】
(実施例13)
層間接着剤を次の通りとすること以外は実施例1と同様にして試験体を得た。
アクリル酸n−ブチル89質量部、アセトニトリル9質量部、アクリル酸1質量部、メタクリル酸1質量部により調製したTg(計算値)−40℃のアクリル系共重合体エマルション(X−109−404E、サイデン化学株式会社製)100質量部(固形分換算)に、フィラー分としてカーボンブラック(スペシャルブラック100、デグサ社製)0.5質量部を混合し、更に、HDIトリマーを含む水分散型ポリイソシアネート化合物(ステップコートEU−700硬化剤、亜細亜工業株式会社製)を固形分で1質量部を添加し、撹拌機により室温で2時間混合後、7日静置し、これを層間接着剤として用いた。
【0056】
(実施例14)
層間接着剤を次の通りとすること以外は実施例1と同様にして試験体を得た。
アクリル酸n−ブチル89質量部、アセトニトリル9質量部、アクリル酸1質量部、メタクリル酸1質量部により調製したTg(計算値)−40℃のアクリル系共重合体エマルション(X−109−404E、サイデン化学株式会社製)100質量部(固形分換算)に、フィラー分としてカーボンブラック(スペシャルブラック100、デグサ社製)0.5質量部を混合し、更に、HDIトリマーを含む水分散型ポリイソシアネート化合物(ステップコートEU−700硬化剤、亜細亜工業株式会社製)を固形分で5質量部を混合して、撹拌機でかき混ぜながら60℃で4時間処理して予め反応を完結させ、これを層間接着剤として用いた。
【0057】
(実施例15)
層間接着剤を次の通りとすること以外は実施例1と同様にして試験体を得た。
アクリル酸n−ブチル89質量部、アセトニトリル9質量部、アクリル酸1質量部、メタクリル酸1質量部により調製したTg(計算値)−40℃のアクリル系共重合体エマルション(X−109−404E、サイデン化学株式会社製)100質量部(固形分換算)に、フィラー分としてカーボンブラック(スペシャルブラック100、デグサ社製)0.5質量部を混合し、更に、HDIトリマーを含む水分散型ポリイソシアネート化合物(ステップコートEU−700硬化剤、亜細亜工業株式会社製)を固形分で10質量部を混合して、撹拌機でかき混ぜながら60℃で4時間処理して予め反応を完結させ、これを層間接着剤として用いた。
【0058】
(実施例16)
スレート板上にポリ塩化ビニル系樹脂シート(Sikaplan WP1120−20HL:Sika社製)を載せ、当該表面に実施例1に示す層間接着剤を0.2kg/m塗布して14日間養生し、層間接着剤層を形成した。次いで、前記層間接着剤層の表面に、モルタルを厚さ40mm打設して7日間養生し硬化させて無機質材層を形成した。前記防水層、層間接着剤層、および無機質材層からなるものを試験体として用いた。
【0059】
(実施例17)
層間接着剤を実施例3の通りとする以外は、実施例16と同様にして試験体を得た。
【0060】
(実施例18)
スレート板上にポリ塩化ビニル系樹脂シート(Sikaplan WP1120−20HL:Sika社製)を載せ、当該表面にウレタン系プライマー(EBプライマー:ダイフレックス社製)を0.1〜0.2kg/m塗布し、所定時間養生した。プライマー養生後、実施例1に示す層間接着剤0.2kg/m塗布して14日間養生し、層間接着剤層を形成した。次いで、前記層間接着剤層の表面に、モルタルを厚さ40mm打設して7日間養生し硬化させて無機質材層を形成した。前記防水層、層間接着剤層、および無機質材層からなるものを試験体として用いた。
【0061】
(実施例19)
層間接着剤を実施例3の通りとする以外は、実施例18と同様にして試験体を得た。
【0062】
(比較例1)
次に示すように、層間接着剤を形成しないで試験体を作製した。実施例1と同様にして防水層を形成した。次いで、防水層の表面に、実施例1と同様にして無機質材層を形成した。最後に、防水層、無機質材層からなる試験体を、離型紙を貼り付けたフレキシブル平板から剥がして後述の試験に供した。
【0063】
(比較例2)
層間接着剤を次の通りとすること以外は実施例1と同様にして試験体を得た。
エポキシ樹脂エマルション(ダブルテックスA剤、株式会社ダイフレックス製)100質量部と、ポリアミド樹脂エマルション(ダブルテックスB剤、株式会社ダイフレックス製)100質量部と、セメント・硅砂混合粉体500質量部を混合した二液反応硬化型水性エポキシ樹脂セメントモルタルに、更に水210質量部混合し、これを層間接着剤として用いた。塗布量は0.3kg/mとした。
【0064】
(比較例3)
溶剤型液状ブチルゴム粘着剤(北斗金属社製)を層間接着剤として用いること以外は実施例1と同様にして試験体を得た。
【0065】
(比較例4)
ブチル系ゴム(SR6000、埼玉ゴム工業株式会社製)100質量部をトルエン100質量部に溶解させた粘着剤を層間接着剤として用いること以外は実施例1と同様にして試験体を得た。
【0066】
次に、前記試験体について行った水密性試験及び接着強度試験について説明する。
図4は試験体を作製するためのコンクリート打設用の型枠64(図6参照)の底板(防水層付き底板641)の構成を示す分解斜視図、図5(a)〜図5(c)は前記防水層付き底板641の構成を説明する図であって、図5(a)は平面図、図5(b)は正面図、図5(c)は図5(a)のA−A線断面矢視図、図6は前記防水層付き底板641上に4枚の側板642を四角枠状に設置して組み立てた型枠64を示す正断面図である。
【0067】
防水層付き底板641は、防水層シート21と底板材61とが積層された積層体22に、枠状透水材62(図4、図5(a)参照)が両面粘着テープで貼付されている。
図5(a)〜図5(c)に示すように、防水層シート21は、防水層20の一方の面に層間接着剤層30が形成された構成であり、底板材61は防水層20の他方の面に設けられている。枠状透水材62は、透水シート(具体的には紙厚204.8g/mの画用紙)を四角枠状に切り出して形成され、防水層シート21の底板材61とは反対側に設けられている。
【0068】
積層体22としては、前記各実施例および比較例の試験体を使用する。
防水層20の外周に、枠状透水材62を両面粘着テープを用いて貼付するとともに、防水層シート21の中央部の5箇所にポンチ等の工具を用いてφ12mmの貫通穴63(図5(a)〜図5(c)参照)を形成した。枠状透水材62は、その外周が防水層シート21の外周と同等、内周の1辺が150mmの四角枠状(正方形枠状)に形成し、その外周の4辺を防水層シート21の外周の4辺に揃えるようにして防水層シート21に貼付した。
【0069】
次いで、貫通穴63に貫通穴63の内径と同等の外径の円板状のスペーサ(貫通穴用スペーサ63a)を嵌め込んで貫通穴63(図5(a)、図5(c)参照)を塞ぐとともに、枠状透水材62上に四角枠状に4枚の側板642を設置して型枠64を組み立て、この型枠64内にコンクリート65(図6参照)を打設(無機質材層形成工程)した。そして、養生及び脱型を行うとともに、底板材61および貫通穴用スペーサ63aを除去して、ブロック状の検体を得た。
【0070】
この検体は、型枠64内に打設して得たコンクリート65に枠状透水材62及び防水層シート21が被着されている。型枠64内に打設して得たコンクリート65(無機質材層)は200mm×200mm×80mmのサイズのブロック状である。枠状透水材62及び防水層シート21は、コンクリート65の200mm×200mmの面に被着されている。
コンクリート65の打設後の養生は、まず、コンクリート65表面を水で濡らしたウエスで覆って湿潤状態を維持したまま室温(23℃)下で7日の湿潤養生を行った後、脱型し、次いで、空気中にて室温(23℃)下で21日の気中養生を行い、コンクリート65の打設から計28日の養生期間(後述の水密性試験、建研式接着強度試験、ピール試験を行うまでの期間)を確保した。
建研式接着強度試験およびピール試験の場合は、貫通穴63を形成しない防水層シート21を用いて行った。
【0071】
次に示すように、前記検体について水密性試験を行った。
図7に示すように、検体を防水層20が上面となる向きでベースプレート66上に設置し、四角枠状のシール材67(スペーサ。以下、枠状シール材とも言う)を枠状透水材62上となるように位置合わせして防水層20上に設置し、枠状シール材67の外周寸法よりも外周寸法が大きい四角板状の上板68の片面に突設されている四角枠部68aを枠状シール材67の全周に位置合わせして、上板68を枠状シール材67の内側空間全体を覆うようにして枠状シール材67上に設置し、上板68とベースプレート66とをボルト69で締結して、上板68とベースプレート66とによって試験体を上下から挟み込んだ。
次いで、この状態にて、試験体の防水層シート21の防水層20(図7中、図示略)と枠状シール材67と上板68とによって取り囲まれる内側の注水空間72内に、バルブ75から注水空間72内に水を送り込みバルブを閉めた後、圧縮空気をバルブ71および管路73を通して注水空間72に送り込むことによって、0.5MPaの水圧を作用させた。
バルブ71は一方弁であるため、注水空間72内の圧力は維持される。管路73には圧力計74が取り付けられている。図7において符号75は注水空間72からのエア排出用のエア抜きバルブである。
漏水の目視確認を容易にするために、注水空間72に導入する水として、蛍光試薬(具体的にはウラニン)を混入した水を用いた。0.5MPaの水圧を24時間維持した後、枠状透水材62の外周部を観察して漏水の有無を調べた。漏水が全くなかった場合を「○」とし、漏水が確認された場合を「×」とした。漏水が起きたものの、その程度がごくわずかである場合は「△」と評価し、表1の「水密性」欄に示した。
【0072】
【表1】

【0073】
表1に示すように、一部の比較例では漏水が確認されたのに対し、実施例では漏水が全く見られなかった。
【0074】
各検体について、防水層20を剥がす際に、コンクリート65の防水層20に対する接着強度を計測した。この接着強度の計測は、建研式接着強度試験機を用いて日本塗り床工業会試験方法に準拠して行った建研式接着強度試験と、JIS K6854に準拠したピール試験(180°剥離接着強度試験)の2通りを行った。その結果を表1に示した。表中「建研式接着強度」が建研式接着強度試験によって計測した接着強度(N/mm)、「180°剥離接着強度」が前記ピール試験によって計測した接着強度(N/25mm)を示す。
【0075】
また、層間接着剤層30を形成する際の作業性(作業のしやすさ)および層間接着剤の臭気についても評価した。
【0076】
表1より、実施例では、比較例に比べて接着強度が高く、剥離が起こりにくかったことがわかった。
また、実施例では、一部(実施例4、15)において層間接着剤が高粘度となり作業の容易性がやや低くなったが、作業性は概ね良好であり、臭気も問題なかった。さらに、実施例では、水密性の点では問題がなかった。
これらの結果より、実施例では、コンクリート65に対する防水層20の接着強度を高くでき、しかも高い水密性を確保できたことがわかった。
【0077】
なお、この発明は上記の実施の形態に限定されず、この発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜の選択が可能である。
例えば、上述の実施例においては、2液混合型ポリウレタン系樹脂を吹付けることによって防水層20を形成したが、これに限定されず、ポリウレア系樹脂によって防水層20を形成してもよい。
【0078】
また、上述の実施の形態にあっては、地下構造物の先防水工法を例に挙げ、この発明に係る層間接着剤についての実施形態について説明したが、これに限定されることなく、例えば、屋上防水工法を用いて形成される構造物の屋上の外部に露出された床に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0079】
1 地下構造物
20 防水層
30 層間接着剤(層間接着剤層)
40 コンクリート層(無機質材層)
50 多層防水構造体
W 山留壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂塗膜からなる防水層と、モルタルまたはコンクリートを用いた無機質材層との間に介在してこれらを互いに接着する層間接着剤であって、
(a)アクリル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂、およびエポキシ系樹脂から選ばれた1または2種以上からなる主樹脂のエマルションからなる主剤と、
(b)イソシアネート基を有するイソシアネート化合物と、
を反応させて得られた樹脂組成物が含有されていることを特徴とする層間接着剤。
【請求項2】
請求項1に記載の層間接着剤において、
前記主樹脂は、活性水素を有する官能基を分子内にもつアクリル系樹脂を1種以上含むことを特徴とする層間接着剤。
【請求項3】
請求項1に記載の層間接着剤において、
前記主樹脂は、Tg(ガラス転移温度)が−60〜−10℃であるアクリル系樹脂を1種以上含むことを特徴とする層間接着剤。
【請求項4】
請求項1に記載の層間接着剤において、
前記主剤は、前記主樹脂としてアクリル系樹脂を用いた水中油滴型エマルションであることを特徴とする層間接着剤。
【請求項5】
請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の層間接着剤において、
前記イソシアネート化合物は、水分散型または水溶性ポリイソシアネート化合物であることを特徴とする層間接着剤。
【請求項6】
請求項5に記載の層間接着剤において、
前記水分散型または水溶性ポリイソシアネート化合物は、HDIのトリマー(三量体)、ビュレット変性体、アロファネート変性体、アダクト変性体のうち1種以上を含むことを特徴とする層間接着剤。
【請求項7】
請求項1〜6のうちいずれか1項に記載の層間接着剤において、
前記主樹脂が、アクリル系樹脂であり、
固形分で100質量部の前記アクリル系樹脂を含む主剤と、固形分で0.05〜20質量部のイソシアネート化合物とを使用直前に混合して得られた液状樹脂組成物からなることを特徴とする層間接着剤。
【請求項8】
請求項1〜6のうちいずれか1項に記載の層間接着剤において、
前記主樹脂が、アクリル系樹脂であり、
固形分で100質量部の前記アクリル系樹脂を含む主剤と、固形分で0.05〜5質量部のイソシアネート化合物とを予め混合反応して得られた液状樹脂組成物からなることを特徴とする層間接着剤。
【請求項9】
前記樹脂塗膜は、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂からなることを特徴とする請求項1〜8のうちいずれか1項に記載の層間接着剤。
【請求項10】
前記樹脂塗膜は、ポリウレタン系樹脂、ポリウレア系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、アクリル系樹脂、および繊維強化プラスチックのうち1または2種以上からなることを特徴とする請求項9に記載の層間接着剤。
【請求項11】
下地表面に、樹脂塗膜からなる防水層を形成する防水層形成工程と、
この防水層形成工程にて形成した前記防水層の表面に、請求項1〜10のうちいずれか1項に記載の層間接着剤を塗布し硬化させて層間接着剤層とする接着剤層形成工程と、
この接着剤層形成工程にて形成した層間接着剤層の表面に、モルタルまたはコンクリートを含むスラリー状材料を用いて無機質材層を形成する無機質材層形成工程と、を含むことを特徴とする防水工法。
【請求項12】
前記防水層形成工程は、前記下地の表面に沿って、フレキシブルシートを敷設するシート敷設工程と、
このフレキシブルシートに、液状樹脂材料を塗布し硬化させて樹脂塗膜からなる前記防水層を形成する樹脂成膜工程と、を含むことを特徴とする請求項11に記載の防水工法。
【請求項13】
前記層間接着剤として、請求項7に記載の層間接着剤を用いることを特徴とする請求項11または12に記載の防水工法。
【請求項14】
前記層間接着剤として、請求項8に記載の層間接着剤を用いることを特徴とする請求項11または12に記載の防水工法。
【請求項15】
下地の表面に形成され、樹脂塗膜からなる防水層と、
モルタルまたはコンクリートを用いた無機質材層と、
前記防水層と前記無機質材層との間に介在してこれらを互いに接着する層間接着剤層とを有する多層防水構造体を備え、
前記層間接着剤層は、請求項1〜10のうちいずれか1項に記載の層間接着剤の硬化物からなることを特徴とする防水構造。
【請求項16】
前記下地と前記防水層との間に、フレキシブルシートが介在配置されていることを特徴とする請求項15に記載の防水構造。
【請求項17】
請求項1〜10のうちいずれか1項に記載の層間接着剤の硬化物からなる層間接着剤層であって、
下地の表面に形成され、樹脂塗膜からなる防水層と、モルタルまたはコンクリートが用いられ、硬化した無機質材層との間に介在してこれらを互いに接着していることを特徴とする層間接着剤層。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−31719(P2012−31719A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144138(P2011−144138)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000133342)株式会社ダイフレックス (24)
【Fターム(参考)】