説明

層間絶縁用の樹脂フィルムおよびビルドアップ配線基板

【課題】絶縁層全体の特性(バルク特性)と、接着性などの表面特性とを両立させることができる樹脂フィルム、およびこれを用いて得られるビルドアップ配線基板を提供する。
【解決手段】ビルドアップ配線基板の層間絶縁材料として使用されるBステージ化した樹脂フィルムにおいて、熱硬化性の第1樹脂層と、その第1樹脂層の片側表面に積層され、表面粗化していない銅に対する接着強度が優れており、厚みが全体の10%以下である熱硬化性の第2樹脂層と、を有する樹脂フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビルドアップ配線基板の層間絶縁材料として使用されるBステージ化した樹脂フィルムおよびこれを用いて得られるビルドアップ配線基板に関し、特に、セミアディティブ法又はフルアディティブ法等によりビルドアップ配線基板を製造する際に使用する樹脂フィルムとして有用である。
【背景技術】
【0002】
近年、MPU(マイクロプロセッシングユニット)やASIC(特定用途向け集積回路)用のパッケージ基板には、細線化、小径狭パッドピッチ化、多層化に加え、高周波化、高速化に伴う高周波対応の為の低誘電・低誘電正接化が求められている。
【0003】
このため、基板構造的には高密度ビルドアップ配線基板又は高密度一括成形基板が必要であり、細線化対応のためにはサブトラ法からアディティブ法へ、小径狭パッドピッチ化対応のためには小径レーザービア化が必要であり、また信頼性向上、寸法精度、位置精度向上のための低膨張係数化も必要となる。
【0004】
また高周波数化対応のためには、伝送損失低減のための低誘電・低誘電正接化やデスミア面プロファイル、導体処理プロファイルによる表皮効果低減のための表面粗さの低減などが必要となる。こうした特性のいくつかを付与した、層間絶縁材料用のフィルム製品としては、例えば特許文献1〜22に記載のものが知られている。
【0005】
特に、回路基板の製造等に好適に用いることができ、接着性、加工性に優れ、さらに、耐熱性と樹脂流動性とGHz帯域での誘電特性に優れた熱硬化性樹脂組成物として、特許文献23に記載のものが知られている。この熱硬化性樹脂組成物は、(A)ポリイミド樹脂成分と、(B)エポキシ硬化剤成分と、(C)エポキシ樹脂成分と、(D)硬化促進剤成分、とを含み、(B)エポキシ硬化剤成分として、活性エステル基を2個以上含有する活性エステル化合物を使用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−1547号公報
【特許文献2】特開平11−87927号公報
【特許文献3】特開2000−17148号公報
【特許文献4】特開2000−198907号公報
【特許文献5】特開2003−238772号公報
【特許文献6】特開2001−181375号公報
【特許文献7】特開2002−241590号公報
【特許文献8】特開2002−309200号公報
【特許文献9】特開2003−127313号公報
【特許文献10】特開2003−321607号公報
【特許文献11】特開2004−277461号公報
【特許文献12】特開2002−12650号公報
【特許文献13】特開2004−277460号公報
【特許文献14】特開2009−227992号公報
【特許文献15】特開2009−242560号公報
【特許文献16】特開2009−242559号公報
【特許文献17】特開2009−235165号公報
【特許文献18】特開2003−252957号公報
【特許文献19】特開2003−082063号公報
【特許文献20】特開2002−356544号公報
【特許文献21】特開2002−212143号公報
【特許文献22】特開2002−012650号公報
【特許文献23】特開2006−335843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記の要求は年々厳しさを増しており、特にパッケージサブストレート用のビルドアップ配線基板の層間絶縁材料については特に顕著である。すなわち、更なる低伝送損失化と信頼性向上のために、材料特性としては、誘電率・誘電正接、膨張係数において、特に誘電正接0.0060以下(1GHz/円筒空洞共振摂動法)、膨張係数が30ppm/℃(25℃〜150℃)以下であり、(セミ)アディティブ工法に適合した粗化後の表面粗さが小さい場合での引きはがし強さに優れることが求められる。しかも、細線化の回路精度や歩留向上等と表皮効果の低減のために、現在行われている導体表面処理の表面粗度の低粗度化に対応する引きはがし強さ等の改善も求められている。しかし、これら全てに対応できるビルドアップ配線基板用の層間絶縁材料は、現在まで知られていない。
【0008】
また、これらに使用されるエポキシ樹脂系組成物は、特に低誘電・低誘電正接化するために、熱硬化の際等に残存する水酸基等の極性基を低減させることを目指しているが、この場合のデメリットとして、ドリル加工を行った場合にハローイング現象が大きくなることや導体との接着強度が低くなるということが予想される。このハローイング現象はレーザー加工でも同様であることは容易に予想される。
【0009】
更に膨張係数を低減するためには、無機物の併用、特にシリカの併用に効果があるが、多量のシリカ等の無機物を併用するデメリットとして、導体との接着強度の低下やその樹脂溶融粘度の上昇により高密度パターンの埋め込み性が低下することが懸念される。また、(セミ)アディティブ工法においては、粗化面の表面粗さが不均一になり易いことも懸念される。
【0010】
導体の表面処理は、導体との密着強度を粗化によるアンカー効果という物理的な要因で向上するために行われている。また、この粗度を低減するためにシランカップリング剤や各種表面処理剤による化学的密着強度の向上検討も行われているが、導体表面の酸化状態や各種環境変化(耐湿、耐熱、経時)に対して、一定以上の密着強度を保持することが難しく、またハローイング現象を生じることも多い。
【0011】
なお、特許文献23に記載の熱硬化性樹脂組成物は、誘電特性、加工性及び一部耐熱性に対する改善効果が高いものの、単層の樹脂フィルムとして使用することを前提としており、その場合には、低誘電・低誘電正接、低膨張係数などの絶縁層全体の特性(バルク特性)と、接着性(引きはがし強さ)やハローイング特性などの表面特性とを両立させるのが困難になるという問題があった。
【0012】
そこで本発明の課題は、主目的の低誘電・低誘電正接、低膨張係数を達成し、しかも(セミ)アディティブ工法に適合した粗化後の表面粗さが小さいところでの引きはがし強さに優れ、かつドリル加工やレーザー加工を行った場合のハローイング現象が小さく、高密度パターンの埋め込み性に優れる層間絶縁材料用の樹脂フィルムを提供することにある。加えて、細線化の回路精度や歩留向上等と更なる表皮効果の低減のために、現在行われている導体表面粗化処理を行なわなくても導体との接着強度を確保できる層間絶縁材料用の樹脂フィルムを提供することを課題とする。
【0013】
また、本発明の課題は、この樹脂フィルムを層間絶縁材料として用いて製造されたビルドアップ配線基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意検討した結果、上記課題を一つの樹脂組成物で解決することは非常に難しいという結論に達した。特に、導体表面粗化処理なしの導体との接着強度と他の要求特性との両立が難しい。しかし、脱脂処理、ソフトエッチング等のみを行なった銅箔、電解銅メッキ或いはそのパターンに接する樹脂層と、その上層の樹脂層の樹脂組成を分けて、それぞれに要求されるキー特性に優れた樹脂組成を開発して組み合わせることにより、この課題を解決できることを見出した。
【0015】
すなわち、本発明の樹脂フィルムは、ビルドアップ配線基板の層間絶縁材料として使用されるBステージ化した樹脂フィルムにおいて、熱硬化性の第1樹脂層と、その第1樹脂層の片側表面に積層され、表面粗化していない銅に対する接着強度が優れており、厚みが全体の10%以下である熱硬化性の第2樹脂層と、を有することを特徴とする。
【0016】
ただし、この構成で上記課題を解決するためには、特に片側表層に位置する第2樹脂層の樹脂組成物に差別化された特性を付与しなければならない。それは、ソフトエッチング程度の表面クリーリング後においても、導体表面の酸化は確実に進むことから、このようなコア基板前処理工程及びその乾燥工程及び工程滞留程度の酸化状態でも、密着強度を保持できること、またコア基板への接着硬化後においても、その雰囲気(空気)や温度・湿度の影響や樹脂自体の酸化作用により、化学的密着強度が劣化することがあるため、このような影響を受けにくくすること等の樹脂特性を付与することである。ここで言うソフトエッチング液とは、一般的に使用されている、硫酸/過酸化水素系、過硫酸アンモニウム系、過硫酸ソーダ系等を指す。
【0017】
このような観点から、前記第2樹脂層を構成する樹脂組成物としては、(a)エポキシ樹脂、(b)活性エステル型硬化剤、及び(c)高分子型アクリル樹脂を含有し、前記(a)エポキシ樹脂及び前記(b)活性エステル型硬化剤の合計量を100重量部としたとき、前記(c)高分子型アクリル樹脂が40重量部以上であることが好ましい。
【0018】
更に、この組成物を使用することにより、耐アルカリ性、耐酸性が向上し、かつ界面密着強度が向上するために、ハローイング現象も大幅に改善されることも見出した。
【0019】
一方、本来のキー特性である、低誘電・低誘電正接、低膨張係数を達成し、(セミ)アディティブ工法に適合した粗化後の表面粗さが小さいところでの引きはがし強さに優れ、高密度パターンの埋め込み性に優れる層間絶縁材料を提供するためには、上層である第1樹脂層の樹脂組成も重要となる。
【0020】
このような観点から、前記第1樹脂層を構成する樹脂組成物としては、(e)エポキシ樹脂、(f)活性エステル型硬化剤、(g)溶剤可溶性ポリイミド樹脂、及び(h)シリカを含有し、前記(e)エポキシ樹脂及び前記(f)活性エステル型硬化剤の合計量を100重量部としたときの前記(g)溶剤可溶性ポリイミド樹脂の含有量が2重量部以上であり、前記(e)エポキシ樹脂、前記(f)活性エステル型硬化剤、及び前記(g)溶剤可溶性ポリイミド樹脂の合計量を100重量部としたときの前記(h)シリカの含有量が100重量部以上であることが好ましい。ただし、この第1樹脂層には、この組成物だけではなく、要求特性に応じて種々のエポキシ樹脂組成物を使用することができる。
【0021】
一方、本発明のビルドアップ配線基板は、上記の何れかに記載の樹脂フィルムにより配線層間の絶縁層を形成してあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、脱脂処理、ソフトエッチング等のみを行なった銅箔、電解銅メッキ或いはそのパターンに接する第2樹脂層と、その上層の第1樹脂層を分けることにより、即ち特性の役割分担を行うことにより、前記課題を達成することができた。
【0023】
すなわち、表面粗化なしの銅箔或いは電解銅めっきに対して高い引きはがし強さを有するためには、高い(粘)接着強度を有する樹脂化合物と特に熱による酸化作用を生じにくいエポキシ樹脂組成物と最終的な複合樹脂組成物としての耐湿性を有することがキーとなる。
【0024】
この点については、高い(粘)接着強度を有する樹脂化合物として二重結合濃度の低い低吸湿性の高分子アクリル樹脂、熱による酸化作用を生じにくく低吸湿のエポキシ樹脂組成物としては、硬化剤として活性エステルを採用することにより実現できた。
【0025】
主目的である低誘電・低誘電正接、低膨張係数は、第1樹脂層の樹脂組成を限定することにより実現できる。低誘電・低誘電正接、低膨張係数は、ベース樹脂を従来のビスフェノールA型エポキシ系からジシクロペンタジエン型、ビフェニル型、ナフタレン型などの剛直構造のエポキシ樹脂に変更し、硬化剤として活性エステルを採用しかつ無機フィラーを高充填することにより実現できた。
【0026】
しかし、この硬化物はまだ特性的に満足できないものがあることが分かった。無機フィラーを高充填すると、その分散性が低下することにより見かけのRaが大きくなってしまうことも判明した。更にフィルムとしてのフィルム物性も十分でないことも判明した。しかし、十分なフィルム物性を付与し、低Raでの高ピール強度を実現するための一手段として、特定の溶剤可溶性ポリイミド樹脂を併用することで、上記問題を解決できた。これらの樹脂フィルム構成と樹脂組成物により、低誘電・低誘電正接、低膨張係数で(セミ)アディティブ工法に適合した、粗化後の表面粗さが小さいところでの引きはがし強さに優れ、表面粗化なしの銅箔或いは電解銅めっきに対しても高い引きはがし強さを有し、かつハローイング現象も大幅に改善できる層間絶縁材料を提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(樹脂フィルムの構造)
本発明の樹脂フィルムは、ビルドアップ配線基板の層間絶縁材料として使用されるBステージ化した樹脂フィルムにおいて、熱硬化性の第1樹脂層と、その第1樹脂層の片側表面に積層され、表面粗化していない銅に対する接着強度が優れており、厚みが全体の10%以下である熱硬化性の第2樹脂層と、を有するものである。
【0028】
本発明では、第2樹脂層の表面粗化していない銅に対する接着強度が、第1樹脂層より優れていることが特徴である。ここで、表面粗化していない銅に対する接着強度は、18μmの表面処理なし銅箔を両面に重ねあわせ(仮ラミネートで転写する)、真空プレスに仕込み180℃×90分、1Mpaで加熱・加圧(真空度5torr)成形した成形物から、第2樹脂層と銅箔との界面で両者を剥離(ピール角度90°、ピール速度50mm/分)する場合の接着強度である。
本発明において、第1樹脂層の接着強度が優れるとは、上記方法で測定される接着強度が0.60kN/m以上であることを指し、0.65kN/m以上であることが好ましく、0.70kN/m以上であることがより好ましい。
【0029】
第2樹脂層の厚みは、接着強度等の表面特性を向上させる観点から、全体の10%以下であり、1.5〜5%の厚さが好ましい。具体的な厚みとしては、第2樹脂層の硬化後の厚さは、総厚約40μmの場合は2μm以下が好ましく、0.8〜1.6μmがより好ましい。
【0030】
第1樹脂層の厚みは、低誘電・低誘電正接、低膨張係数などのバルク特性を向上させる観点から、全体の90%を超え、95〜98.5%の厚さが好ましい。具体的な厚みとしては、第1樹脂層の厚さは、総厚約40μmの場合は、38〜39.4μmが好ましく、38.4〜39.2μmがより好ましい。
【0031】
本発明では、第1樹脂層と第2樹脂層との間に、例えば両者の接着性を改善するための中間層等を設けてもよい。
【0032】
(第2樹脂層を構成する樹脂組成物)
前記第2樹脂層を構成する樹脂組成物としては、(a)エポキシ樹脂、(b)活性エステル型硬化剤、及び(c)高分子型アクリル樹脂を含有することが好ましい。
【0033】
(a)エポキシ樹脂は、2個以上のグリシジル基を持つエポキシ樹脂であれば用いることができるが、25℃での粘度が1.0〜120Pa・sの液状エポキシ樹脂又は軟化点が85℃以下の固形エポキシ樹脂を用いることが好適である。25℃での粘度が1.0〜120Pa・sの液状エポキシ樹脂としては、ビスA型エポキシ樹脂、ビスF型エポキシ樹脂、水添ビスA型エポキシ樹脂、ノボラックフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ターシャリーブチルカテコール型エポキシ樹脂などがあり、単独、又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0034】
(b)活性エステル型硬化剤としては、上記の(a)エポキシ樹脂を硬化させる活性エステル基を有する化合物が挙げられ、また、活性エステル基を有する化合物は、硬化後の誘電特性、特に誘電正接を低下させることができる。通常、エステル結合は、エポキシ基に対して高い反応活性を有するとともに、併用する硬化促進剤にも関係するが、極性の高いヒドロキシ基を生じる割合を極端に減少させることができ、低い誘電正接を実現することができる。かつ、これにより吸水率も低減することができる。
【0035】
また、活性エステル基を有する化合物の分子鎖を形成する全てのエステル結合が架橋点となり得るため、硬化物は、架橋密度が高くなり、高いガラス転移温度を有することもできる。
【0036】
活性エステル基を有する化合物は、分子内に2個以上のエステル結合を有するものであれば、特に限定されるものではない。活性エステル当量としては150〜300、特に180〜270のものが好ましい。ただし、エステル型硬化剤を硬化剤としてエポキシ樹脂と反応させる場合には、反応が進行しにくいことから、硬化促進剤を用いることが好ましい。硬化促進剤としては、イミダゾール系やアミノピリジン系等からの選択が好ましい。
【0037】
エステル基は、カルボン酸化合物とフェノールとの縮合反応により得られるが、特に本発明で用いられる活性エステル基を有する化合物は、硬化時に架橋できるように、多価芳香族カルボン酸と多価フェノールの縮合反応からなる芳香族系エステル化合物が耐熱性を高くすることができるため好ましい。
【0038】
例えば、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸などの多価芳香族カルボン酸と、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、臭素化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールA、フェノールフタレンなどの多価フェノール類とからなる芳香族系エステル化合物などを挙げることができる。
【0039】
また、多価フェノール類や多価ナフトール類として、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、ビスフェノールA、カテコール、ハイドロキノン等のフェノール類、またはα−ナフトール、β−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン等ナフトール類と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド類と反応させて得られるフェノール樹脂類またはナフトール樹脂類やポリビニルフェノール等を使用しても良い。
【0040】
活性エステル化合物は市販のものを用いても、特開2004−427761号公報に開示されているような方法で合成したものを用いても良い。市販されている活性エステル化合物としては、例えば、HPC−8000(DIC(株)製)、DC808、YLH1030(三菱化学(株)製)などが挙げられる。
【0041】
前記(b)活性エステル型硬化剤の含有量は、残存水酸基をできるだけ少なくするという観点から、活性エステル当量/エポキシ当量比で0.9〜1.1が好ましく、0.95〜1.05であることがより好ましい。
【0042】
(c)高分子型アクリル樹脂は、懸濁重合により得られるアクリル酸エステル共重合体等の超高分子型アクリル系樹脂が好適であり、超高分子のために耐熱性、接着性に優れている。また懸濁重合法であるため、イオン性不純物も少なく電気特性も良好である。本発明における接着強度を高めるための要素は、主に分子量に依存するところが大きい。その観点から重量平均分子量Mwは、30万以上であることが好ましく、40万〜90万であることがより好ましい。
【0043】
また、(c)高分子型アクリル樹脂は、主にエポキシ樹脂との相溶性等の観点から、活性基として、−OH基、−NH基、−NH基、−COOH基、エポキシ基等を有することが望ましい。
【0044】
このような市販品としては、SG−P3、SG−80H、SG−70L、SG−708−6、WS−023、SG−700AS(ナガセケムテックス(株)製)やKH−LT、KH−CT−865(日立化成工業(株)製)などが挙げられる。
【0045】
この高分子型アクリル樹脂の変性量は、初期ピール強度の絶対値やピール強度の劣化率にも関係する。前記(a)エポキシ樹脂及び前記(b)活性エステル型硬化剤の合計量を100重量部としたとき、前記(c)高分子型アクリル樹脂が40重量部以上であることが好ましく、45〜65重量部であることがより好ましい。
【0046】
本発明においては、(d)無機系フィラーを添加することができる。これは各種劣化率の向上を図ることができる。ただし、過度の添加は初期ピール強度の絶対値を低下させるため、前記(a)エポキシ樹脂、前記(b)活性エステル型硬化剤、前記(c)高分子型アクリル樹脂の合計量を100重量部としたときの含有量が10重量部以上の添加が好ましく、12〜50重量部の添加がより好ましい。この無機系フィラーとしては、シリカ(ナノサイズのものを含む)或いはアルミナが好適である。
【0047】
(第1樹脂層を構成する樹脂組成物)
主目的である低誘電・低誘電正接、低膨張係数を実現するには、第1樹脂層を構成する樹脂組成物としては、次に示すものが好ましい。即ち、第1樹脂層を構成する樹脂組成物としては、(e)エポキシ樹脂、(f)活性エステル型硬化剤、(g)溶剤可溶性ポリイミド樹脂、及び(h)シリカを含有するものが好ましい。
【0048】
(e)エポキシ樹脂は、2個以上のグリシジル基を持つ剛直構造のエポキシ樹脂があり、好適には、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂などであり、単独、又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0049】
(f)活性エステル型硬化剤は、第1樹脂層を構成する前記(b)活性エステル型硬化剤と同様のものを同じ含有量で用いることができる。また、第1樹脂層と同じ硬化系を用いることにより、その樹脂界面での樹脂の相溶性を良好にすることもできる。
【0050】
(g)溶剤可溶性ポリイミド樹脂は、NMP、DMF、DMACなどの溶剤に可溶であり、高Tg、低誘電率・低誘電正接の特性を持つものが好適であり、例えばジアミノトリメチルフェニルインダンとベンゾフェノンテトラカルボン酸2無水物或いはテトラカルボン酸2無水物(1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸2無水物)を反応させて得られる完全イミド化した可溶性ポリイミド樹脂などがある。このような溶剤可溶性ポリイミド樹脂としては、Q−VR−X0163((株)ピーアイ技術研究所製)等が挙げられる。
【0051】
(e)エポキシ樹脂および(f)硬化剤の合計量を100重量部としたときの(g)溶剤可溶性ポリイミド樹脂の量は、2重量部以上が好ましく、2〜100重量部の範囲がより好ましく、5〜50重量部の範囲が更に好ましい。これが2重量部未満では接着強度と可とう性に効果が少ない傾向がある。また、これが100重量部を超えると、フィルムとしての破断強度が低下する傾向がある。
【0052】
(h)シリカは、表面粗化工程で、前記の(e)、(f)および(g)各成分の硬化物でのアンカー形成の起点となる。低誘電正接の観点からのフィラーとしては、シリカの他にPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、メチルシリコーンやポリフェニレンエーテルなどの低誘電化合物フィラーなども考えられる。
【0053】
また、(e)エポキシ樹脂、(f)活性エステル型硬化剤、および(g)溶剤可溶性ポリイミド樹脂の合計量を100重量部としたときに、(h)シリカの量を100重量部以上とすることが好ましい。
【0054】
低誘電率・低誘電正接の観点からは、どのフィラーの選択も可能だが、低膨張係数を加味する場合にはシリカが好ましい。この場合シリカは表面処理(エポキシシラン処理、アミノシラン処理、ビニルシラン処理など)されたシリカを用いても良い。また、粒径としては狭ピッチ対応(L/S≦20/20μm)と表面粗さの低減(Ra≦0.3μm)の観点から平均粒径が0.5μm以下のものが望ましい。
【0055】
また、低膨張率化の観点からは、(e)エポキシ樹脂、(f)活性エステル型硬化剤、および(g)溶剤可溶性ポリイミド樹脂の合計量を100重量部としたときに、(h)シリカの量を150重量部以上とすることが更に好ましい。
【0056】
第1樹脂層を構成する樹脂組成物には、必要に応じて硬化促進剤を併用することができる。硬化促進剤としては各種イミダゾール類などの一般的なものを使用することができる。主に反応速度、ポットライフの観点から選択する。
【0057】
さらに本発明の成分には、難燃性の付与のために難燃剤を添加することができる。ハロゲンフリーの難燃剤としては、縮合型リン酸エステル類、ホスファゼン類、ポリリン酸塩類、HCA(9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド)誘導体等がある。
【0058】
本発明の熱硬化性樹脂組成物に使用可能な溶媒は特に限定されないが、NMPやジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどの高沸点溶剤とシクロヘキサノンやMEKなどの中、低沸点溶剤を組み合わせることが好ましい。
【0059】
(樹脂フィルムの製造)
本発明の熱硬化性樹脂組成物をBステージ化することにより、樹脂フィルムを得ることができる。すなわち、以上述べてきた第1および第2樹脂層を構成する樹脂組成物は、これをNMP(ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート)/MEK(シクロヘキサノン)等の好適な混合有機溶剤等で希釈してワニスとなし、これを必要に応じて離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)上に下塗り層(第2樹脂層)はグラビアコーターで、上塗り層(第1樹脂層)はダイコーターで塗布し、加熱乾燥するという通常の2回塗工方式によりBステージの熱硬化性樹脂フィルムを製造する事が出来る。
【0060】
このため、本発明の樹脂フィルムは、塗布基材が仮着されていてもよい。また、表面保護などのために、表面保護フィルムが仮着されていてもよい。これらのフィルムは、使用時に剥離される。
【0061】
本発明のBステージの熱硬化性樹脂フィルムは、ビルドアップ配線基板のHDI材料としてレーザービアなどの非貫通ビアホールを持つビルドアップ配線基板に使用することができる。特に、本発明のような諸特性を付与したビルドアップ配線基板は、半導体プラスチックパッケージ用などに使用することができる。
【0062】
(ビルドアップ配線基板)
本発明のビルドアップ配線基板は、以上のような樹脂フィルムにより配線層間の絶縁層を形成してあるものである。ビルドアップ配線基板は、一般的に、2層又はそれ以上の偶数層の配線層を有するコア基板の両面に、絶縁層と配線層とが交互に形成された構造を有する。
【0063】
コア基板としては、例えば、サブトラ法により配線パターンを形成した両面銅張積層板や多層銅張積層板などが挙げられる。配線層間の導電接続には、スルーホールメッキなどが使用される。
【0064】
本発明の樹脂フィルムは、第1樹脂層の片側表面に、表面粗化していない銅に対する接着強度が優れる第2樹脂層が積層されているため、片側表面が銅等の配線パターン等に接着され、他方表面に対してデスミア溶液等で表面粗化された後に、メッキにより金属が形成される用途に適している。このため、本発明のビルドアップ配線基板は、セミアディティブ法又はフルアディティブ法により製造されていることが好ましい。
【0065】
ビルドアップ配線基板がフルアディティブ法により製造される場合、コア基板の両面に絶縁層を形成した後、銅等による配線パターンを形成したくない部分にレジスト(めっきレジスト)を形成し、レジストのない部分に無電解めっきを施すことでパターンを形成する。
【0066】
セミアディティブ法により製造される場合、コア基板の両面に絶縁層を形成した後、その全面に無電解めっきを施し、配線パターンを形成したくない部分にレジスト(めっきレジスト)を形成してから、レジストのない部分に電解めっきを施すことでパターンを形成し、その後、レジストの剥離と無電解めっきのエッチングとを行う。
【0067】
本発明の樹脂フィルムは、上記のビルドアップにより絶縁層を形成する際に、使用されるものである。絶縁層の形成は、例えば、仮ラミネートを行った後、これを真空ラミネーター、平坦化プレスによる回路埋め込み、表面平坦化などによって行なうことができる。この際の樹脂フィルムのラミネート条件は、例えば80〜120℃で1〜3分程度である。
【0068】
また、ビルドアップ配線基板には、ビルドアップ形成した配線層間の導電接続を行うために、レーザービア、フィルドビアなどが形成される。更に、表層にソルダーレジスト層などを形成してもよい。
【実施例】
【0069】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。これら実施例は、本発明における最良の実施形態の一例ではあるものの、本発明はこれら実施例により限定を受けるものではない。
【0070】
(第2樹脂層用の下塗り樹脂)
実施例1−1
138重量部のビスフェノールA型エポキシ樹脂850S(DIC社製、エポキシ当量185、樹脂固形分100重量%)、255重量部の活性エステル型硬化剤HPC−8000−65T(DIC社製、活性エステル当量223、樹脂固形分65重量%)、845重量部の高分子型アクリル樹脂KH−CT−865(日立化成工業社製、樹脂固形分36重量%、重量平均分子量約550,000、活性基はエポキシ基)、0.7重量部の2−エチル−4−メチルイミダゾールからなる混合物に、溶媒としてアノン/MEK混合溶剤を加えて樹脂固形分15重量%の樹脂ワニスを調製した。
【0071】
実施例1−2
150重量部のノボラックフェノール型エポキシ樹脂N−730A(DIC社製、エポキシ当量180、樹脂固形分100重量%)、286重量部の活性エステル型硬化剤HPC−8000−65T(DIC社製、活性エステル当量223、樹脂固形分65重量%)、933重量部の高分子型アクリル樹脂KH−CT−865(日立化成工業社製、樹脂固形分36重量%、重量平均分子量約550,000、活性基はエポキシ基)、0.7重量部の2−エチル−4−メチルイミダゾールからなる混合物に溶媒としてアノン/MEK混合溶剤を加えて樹脂固形分15重量%の樹脂ワニスを調製した。
【0072】
実施例1−3
220重量部のジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂HP−7200(DIC社製、エポキシ当量264、樹脂固形分100重量%)、286重量部の活性エステル型硬化剤HPC−8000−65T(DIC社製、活性エステル当量223、樹脂固形分65重量%)、1128重量部の高分子型アクリル樹脂KH−CT−865(日立化成工業社製、樹脂固形分36重量%、重量平均分子量約550,000、活性基はエポキシ基)、0.7重量部の2−エチル−4−メチルイミダゾールからなる混合物に溶媒としてアノン/MEK混合溶剤を加えて樹脂固形分15重量%の樹脂ワニスを調製した。
【0073】
実施例1−4
138重量部のビスフェノールA型エポキシ樹脂850S(DIC社製、エポキシ当量185、樹脂固形分100重量%)、255重量部の活性エステル型硬化剤HPC−8000−65T(DIC社製、活性エステル当量223、樹脂固形分65重量%)、2028重量部の高分子型アクリル樹脂SG−P3(ナガセケムテックス(株)製)、樹脂固形分15重量%、重量平均分子量約850,000、活性基はエポキシ基)、0.7重量部の2−エチル−4−メチルイミダゾールからなる混合物に溶媒としてアノン/MEK混合溶剤を加えて樹脂固形分15重量%の樹脂ワニスを調製した。
【0074】
実施例1−5
138重量部のビスフェノールA型エポキシ樹脂850S(DIC社製、エポキシ当量185、樹脂固形分100重量%)、255重量部の活性エステル型硬化剤HPC−8000−65T(DIC社製、活性エステル当量223、樹脂固形分65重量%)、845重量部の高分子型アクリル樹脂KH−CT−865(日立化成工業社製、樹脂固形分36重量%、重量平均分子量約550,000、活性基はエポキシ基)、91重量部のエポキシシラン処理シリカ(平均粒径0.3μm)、0.7重量部の2−エチル−4−メチルイミダゾールからなる混合物に溶媒としてアノン/MEK混合溶剤を加えて樹脂固形分15重量%の樹脂ワニスを調製した。
【0075】
(第1樹脂層用の上塗り樹脂)
実施例2−1
354重量部のジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂HP−7200H(DIC社製、エポキシ当量283、樹脂固形分80重量%)、343重量部の活性エステル型硬化剤HPC−8000−65T(DIC社製、活性エステル当量223、樹脂固形分65重量%)、420重量部の可溶性ポリイミド樹脂Q−VR−X0163(ピーアイ技術研究所社製、樹脂固形分20重量%、ジアミノトリメチルフェニルインダンとベンゾフェノンテトラカルボン酸2無水物とが重合した完全イミド化物)、84重量部のHCA(三光社製)、0.7重量部の2−エチル−4−メチルイミダゾール、1012重量部のエポキシシラン処理シリカ(平均粒径0.3μm)からなる混合物に溶媒としてNMP/アノン混合溶剤を加えて樹脂固形分55重量%の樹脂ワニスを調製した。
【0076】
(第2樹脂層用の下塗り樹脂)
比較例1−1
185重量部のビスフェノールA型エポキシ樹脂850S(DIC社製、エポキシ当量185、樹脂固形分100重量%)、160重量部のフェノールノボラック樹脂TD−2131(DIC社製、水酸基当量104、樹脂固形分65重量%)、803重量部の高分子型アクリル樹脂KH−CT−865(日立化成工業社製、樹脂固形分36重量%、重量平均分子量約550,000)、0.7重量部の2−エチル−4−メチルイミダゾールからなる混合物に溶媒としてアノン/MEK混合溶剤を加えて樹脂固形分15重量%の樹脂ワニスを調製した。
【0077】
比較例1−2
200重量部のビスフェノールA型エポキシ樹脂850S(DIC社製、エポキシ当量185、樹脂固形分100重量%)、556重量部の高分子型アクリル樹脂KH−CT−865(日立化成工業社製、樹脂固形分36重量%、重量平均分子量約550,000)、4.0重量部の2−エチル−4−メチルイミダゾールからなる混合物に溶媒としてアノン/MEK混合溶剤を加えて樹脂固形分15重量%の樹脂ワニスを調製した。
【0078】
比較例1−3
185重量部のビスフェノールA型エポキシ樹脂850S(DIC社製、エポキシ当量185、樹脂固形分100重量%)、160重量部のフェノールノボラック樹脂TD−2131(DIC社製、水酸基当量104、樹脂固形分65重量%)、723重量部の高分子エポキシ樹脂1256B40(三菱化学社製、樹脂固形分40重量%、重量平均分子量約48,000)、0.7重量部の2−エチル−4−メチルイミダゾールからなる混合物に溶媒としてアノン/MEK混合溶剤を加えて樹脂固形分15重量%の樹脂ワニスを調製した。
【0079】
比較例1−4
138重量部のビスフェノールA型エポキシ樹脂850S(DIC社製、エポキシ当量185、樹脂固形分100重量%)、255重量部の活性エステル型硬化剤HPC−8000−65T(DIC社製、活性エステル当量223、樹脂固形分65重量%)、761重量部の高分子エポキシ樹脂1256B40(三菱化学社製、樹脂固形分40重量%、重量平均分子量約48,000)、0.7重量部の2−エチル−4−メチルイミダゾールからなる混合物に溶媒としてアノン/MEK混合溶剤を加えて樹脂固形分15重量%の樹脂ワニスを調製した。
【0080】
(第1樹脂層用の上塗り樹脂)
比較例2−1
344重量部のビフェニル型エポキシ樹脂NC−3000H(日本化薬社製、エポキシ当量275、樹脂固形分80重量%)、208重量部のメラミン変性フェノールノボラック樹脂LA−7054(大日本インキ化学工業社製、水酸基価125、樹脂固形分60重量%)、334重量部の可溶性ポリイミド樹脂Q−VR−X0163(ピーアイ技術研究所社製、樹脂固形分20重量%)、67重量部のHCA(三光社製)、1.0重量部の1−シアノ−2−ウンデシルイミダゾール、800重量部のエポキシシラン処理シリカ(平均粒径0.3μm)からなる混合物に溶媒としてNMP/アノン混合溶剤を加えて樹脂固形分55重量%の樹脂ワニスを調製した。
【0081】
(樹脂フィルムの製造例)
前記各例の下塗り樹脂ワニスと上塗り樹脂ワニスを、離型処理した25μmポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)上に、グラビアコーターにて下塗り層1.5μm、ダイコーターにて上塗り層で計42μmの2層塗布し、各々120℃の温度で乾燥してBステージの熱硬化性の樹脂フィルム(A)を製造した。揮発分は2.0wt%に調製した。また保護フィルムとして自己粘着型延伸ポリプロピレンフィルム(OPPフィルム)をラミネートした。
【0082】
また比較として、前記各例の下塗り樹脂ワニスと上塗り樹脂ワニスを、離型処理した25μmポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)上に、グラビアコーターにて下塗り層5μm、ダイコーターにて上塗り層で計42μmの2層塗布し、各々120℃の温度で乾燥してBステージの熱硬化性の樹脂フィルム(A)を製造した。揮発分は2.0wt%に調製した。また保護フィルムとして自己粘着型延伸ポリプロピレンフィルム(OPPフィルム)をラミネートした。
【0083】
(積層成形物の製造例)
樹脂フィルム(A)に18μmの表面処理なし銅箔を両面に重ねあわせ(仮ラミネートで転写する)、真空プレスに仕込み180℃×90分、1Mpaで加熱・加圧(真空度5torr)成形した。これを成形物(1)とする。
【0084】
また、厚さ0.2mmの高TgハロゲンフリーFR−4両面銅張積層板(銅箔18μm)[商品名TLC−W−552Y、京セラケミカル社製]を130℃×2時間乾燥し、銅箔表面をソフトエッチング(硫酸−過酸化水素系)した後に、この面に上記フィルム(A)の離型処理PETフィルムを剥離して仮ラミネートを両面に行った。自己粘着型OPPフィルムを剥離した後に、これを真空プレスに仕込み180℃×90分、1Mpaで加熱・加圧(真空度5torr)成形した。これを成形物(2)とする。
【0085】
(ビルドアップ配線基板の製造例)
一方、厚さ0.2mmの高TgハロゲンフリーFR−4両面銅張積層板(銅箔18μm)[商品名TLC−W−552Y、京セラケミカル社製]に回路を形成し、導体をソフトエッチング(硫酸−過酸化水素系)後に、この面に上記樹脂フィルム(A)の離型処理PETフィルムを剥離して仮ラミネートを両側の回路形成面に行った。これを真空ラミネーター−平坦化プレスで回路埋め込み及び表面平坦化を行なった。自己粘着型OPPフィルムを剥離して乾燥機で180℃×30分硬化した後、COレーザで所定孔径のブラインドビアを形成した。
【0086】
過マンガン酸デスミア溶液で表面粗化を行い、同時に孔内底部の残存樹脂も溶解除去した。これに無電解銅メッキ0.8μm、電解銅メッキ20μmを付け、180℃×60分のアフターベーキングを行った。これを繰り返しビルドアップ層が片側2層の6層ビルドアップ配線基板PWB(I)を作製した。
【0087】
(評価方法および評価結果)
(1)無処理銅箔との引きはがし強さ
(1−1)下塗り樹脂面
成形物(1)を用いて、第2樹脂層と銅箔との界面で両者を剥離(ピール角度90°、ピール速度50mm/分)する際のピール強度を測定した。
(1−2)内層ピール
成形物(2)を用いて、第2樹脂層と両面銅張積層板との界面で両者を剥離(ピール角度 90°、ピール速度50mm/分)する際のピール強度を測定した。なお、A(コア材E−2/130)は、両面銅張積層板を予め130℃×2時間熱処理した後に成形物(2)を作製した場合であり、E−240/177は成形物(2)を177℃×240時間熱処理した場合であり、HAST(130℃,85%RH,200H)は、成形物(2)を130℃,85%RH,200時間熱処理した場合であり、鉛フリーはんだ(SAC305)リフロー3cycleは、鉛フリーはんだ(SAC305)のリフローはんだ付け条件を、3回繰り返した場合である。
(2)ハローイング長
PWB(I)をZ方向に研磨し光学顕微鏡でビア底部周りのハローイング長さを測定した。実施例1の上塗り樹脂のみの絶縁フィルムを用い、導体処理をCZ8101処理(メック社処理)した場合のハローイング長さは150μmであり、比較例1の上塗り樹脂のみの絶縁フィルムを用い、導体処理をCZ8101処理(メック社処理)した場合のハローイング長さは20μmである。
(3)誘電率・誘電正接
成形物(1)の銅箔をエッチングしたものを用いて、円筒空洞共振摂動法により、1GHzでの誘電率・誘電正接測定した。
(4)ガラス転移点(Tg)
成形物(1)の銅箔をエッチングしたものを用いて、TMA法により測定した。
(5)熱膨張率(CTE)
成形物(1)の銅箔をエッチングしたものを用いて、TMA法により、25℃から150℃の熱膨張率を測定した。
(6)デスミア面表面粗さ(Ra)
PWB(I)を作製する際に、デスミア溶液で表面粗化を行った後の絶縁層表面の表面粗さ(Ra)を測定した。また、銅メッキ後におけるピール強度(kN/m)を
ピール角度90°、ピール速度50mm/分で測定した。
(7)信頼性
JPCA−BU01によって、下記のようにしてPWB(II)を用いて、熱衝撃試験と高温高湿バイアス試験を実施した。
【0088】
a)熱衝撃試験:150℃で30分間保持し、次いで−65℃で30分間保持することを1サイクルとする。そして、表1には熱サイクル数を示した。
【0089】
b)高温高湿バイアス試験:85℃、85%RH、DC=30V(ただし、槽内測定)
(8)耐燃性(UL−94)
PWB(I)*を用いて、耐燃性(UL−94)を測定した。
【0090】
以上の特性評価の結果を表1に示す。
【0091】
【表1】

【0092】
表1において、PWB(II)は、PWB(I)の製造方法に準拠して作製したJPCA−HD01のテストパターン基板である。PWB(I)*は、PWB(I)の製造方法に準拠して、コア基板にフィルムAのみを片側2層ずつ積層しただけのものである。特性評価の方法は以下の通りである。
【0093】
表1の結果が示すように、本発明の各実施例によれば、低誘電率、低誘電正接、低膨張係数で、高接着強度、高耐熱、高信頼性の高密度ビルドアップ配線基板用の絶縁層を形成することができる。これに対して、エポキシ樹脂の硬化剤として多く使用されてきたノボラックフェノール樹脂を用いた比較例1−1の樹脂を第2樹脂層に使用する場合、又はイミダゾール比較例1−2の樹脂を第2樹脂層に使用する場合、加熱エージングした場合の熱劣化率が大きいことがわかった。また、高分子型アクリル樹脂を含まない比較例1−3〜1−4の樹脂を第2樹脂層に使用する場合、表面粗化していない銅に対する接着強度が大幅に低下することがわかった。また、メラミン変性フェノールノボラック樹脂を硬化剤として用いた比較例2−1の樹脂を第1樹脂層に使用する場合、誘電正接などのバルク特性が低下することがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビルドアップ配線基板の層間絶縁材料として使用されるBステージ化した樹脂フィルムにおいて、熱硬化性の第1樹脂層と、その第1樹脂層の片側表面に積層され、表面粗化していない銅に対する接着強度が優れており、厚みが全体の10%以下である熱硬化性の第2樹脂層と、を有する樹脂フィルム。
【請求項2】
前記第2樹脂層を構成する樹脂組成物が、(a)エポキシ樹脂、(b)活性エステル型硬化剤、及び(c)高分子型アクリル樹脂を含有し、前記(a)エポキシ樹脂及び前記(b)活性エステル型硬化剤の合計量を100重量部としたとき、前記(c)高分子型アクリル樹脂が40重量部以上である請求項1記載の樹脂フィルム。
【請求項3】
前記(b)活性エステル型硬化剤が、活性エステル当量150〜300の活性エステル基を有する芳香族系エステル化合物である請求項1又は2に記載の樹脂フィルム。
【請求項4】
前記(c)高分子型アクリル樹脂が、重量平均分子量30万以上であり、活性基として、−OH基、−NH基、−NH基、−COOH基、及びエポキシ基の1種類以上を有する請求項1〜3の何れか1項に記載の樹脂フィルム。
【請求項5】
(d)無機系フィラーを含有し、前記(a)エポキシ樹脂、前記(b)活性エステル型硬化剤、及び前記(c)高分子型アクリル樹脂の合計量を100重量部としたときの(d)無機系フィラーの含有量が10重量部以上である請求項1〜4の何れか1項に記載の樹脂フィルム。
【請求項6】
前記第1樹脂層を構成する樹脂組成物が、(e)エポキシ樹脂、(f)活性エステル型硬化剤、(g)溶剤可溶性ポリイミド樹脂、及び(h)シリカを含有し、前記(e)エポキシ樹脂及び前記(f)活性エステル型硬化剤の合計量を100重量部としたときの前記(g)溶剤可溶性ポリイミド樹脂の含有量が2重量部以上であり、前記(e)エポキシ樹脂、前記(f)活性エステル型硬化剤、及び前記(g)溶剤可溶性ポリイミド樹脂の合計量を100重量部としたときの前記(h)シリカの含有量が100重量部以上である請求項1〜5の何れか1項に記載の樹脂フィルム。
【請求項7】
前記(g)溶剤可溶性ポリイミド樹脂が、ジアミノトリメチルフェニルインダンとベンゾフェノンテトラカルボン酸2無水物或いはテトラカルボン酸2無水物とを反応させて得られる完全イミド化した可溶性ポリイミド樹脂である請求項6記載の樹脂フィルム。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか1項に記載の樹脂フィルムにより配線層間の絶縁層を形成してあるビルドアップ配線基板。
【請求項9】
セミアディティブ法又はフルアディティブ法により製造されている請求項8記載のビルドアップ配線基板。


【公開番号】特開2013−77590(P2013−77590A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214874(P2011−214874)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(390005223)株式会社タムラ製作所 (526)
【Fターム(参考)】