説明

履き物

【課題】あらゆる種類の履き物に適用しながら、また、美しい外観としながら、歩行時に靴底が地面や床面に引っかかってつまずくのを有効に防止する。
【解決手段】履き物は、靴底1の外周縁部であって、少なくともつま先側の先端部に、靴底本体3よりも変形しやすい軟質衝撃吸収材からなる衝撃吸収部4を設けており、この衝撃吸収部4で地面や床面との接触による衝撃を吸収する。
【効果】履き物は、靴底の衝撃吸収部が地面や床面に接触すると、衝撃吸収部が変形して衝撃を吸収すると共に、この衝撃吸収部が変形することによって、スムーズに足を前方に送り出すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行時に足元の凹凸や段差等でつまずくのを防止できる履き物に関する。
【背景技術】
【0002】
履き物には種々のものがあり、用途に応じて多種多様なものが開発されて使用されている。一般に、多くの履き物は、靴底のつま先側の先端部をやや上方向に反る形状としている。靴底をこの形状とするのは、歩行時の足の変形にフィットさせて歩きやすくすると共に、歩行時につまずき難くするためである。
【0003】
歩行時につまずくのは、図1に示すように、足を前方に送り出すときにつま先側の先端が地面や床面の段差10に接触し、あるいは地面や床面に直接接触して、体重移動のバランスが崩れるからである。履き物の先端部では、足のつま先よりも前方に突出する部分の感覚はなく、この部分が地面や床面に接触しやすくなる。とくに、足の弱い高齢者や足が不自由な障害者等は、足を上げたつもりでも足の引き上げが足りず、つま先が下がった状態で足を前方に送り出してしまい、地面や床面に履き物の先端が引っかかってつまずくことがある。したがって、高齢者や障害者は、わずか数mmの凹凸や段差であっても、つまずいてしまうことがある。しかも、高齢者や障害者は運動能力も低下しているので、このようにつまずくと例外なく転んでしまい、極めて危険である。
【0004】
以上のような実状を鑑みて、つまずきを防止する靴は開発されている(特許文献1及び2参照)。
【特許文献1】特開平11−221103号公報
【特許文献2】特開2003−245104号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載される靴は、靴底を、接地面から足裏部にかけて収縮率の異なるゴムや合成樹脂を使用して成形しており、体重がかからない状態では靴底の先端部が上向く姿勢となるようにしている。この靴は、着地時には体重の重みで靴底が足裏面と平行になるが、歩行開始で足を上げて踏み出すときには、靴底の先端部分が足裏平行面より上方に上がり、地面に対して角度を持つようになるので、先端部分が地面に接触するのを有効に防止してつまずきを防止できる。
【0006】
しかしながら、この靴は、靴底を所定の収縮率で変形できるように設計するので、靴底を硬くて丈夫な構造にできない欠点がある。したがって、この靴は、用途が限定されて、全ての種類の靴には適用できない。また、靴底の変形量は、靴の甲皮部分の材質や形状等にも影響を受けるので、靴の種類やデザインによって靴底の変形量を調整する必要があり、安価に多量生産できない。また、この靴は、歩行時において、足を上げ下げする度に靴底が変形を繰り返すので、使用者に違和感を与えると共に、経時的に劣化しやすい欠点もある。靴底が劣化して所定の形状に変形できなくなると、先端部分が地面に接触するのを有効に防止できなくなる。
【0007】
また、特許文献2に記載される靴は、靴底の親指付根付近から先端のつま先部分に上方に傾斜する傾斜面を設けている。この靴は、先端の傾斜面によって、つま先が地面に接触する確率を低くできる。このため、歩行時において、つま先部分が地面等に引っかかってつまずくのを有効に防止できる。しかしながら、この靴は、靴底の先端部に傾斜面を設けるので、この部分の外観が悪くなる欠点がある。一般に靴底は経時的にすり切れてちびてくるが、この靴は、予め傾斜面を設けているので、新品にも関わらず消耗品のような印象を与えてしまう。
【0008】
本発明は、以上のような問題点を解消することを目的に開発されたものである。本発明の重要な目的は、あらゆる種類の履き物に適用しながら、また、美しい外観としながら、歩行時に靴底が地面や床面に引っかかってつまずくのを有効に防止できる履き物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1の履き物は、靴底1の外周縁部であって、少なくともつま先側の先端部に、靴底本体3よりも変形しやすい軟質衝撃吸収材からなる衝撃吸収部4を設けており、この衝撃吸収部4で地面や床面との接触による衝撃を吸収する。
【0010】
本発明の請求項2の履き物は、靴底1の底面であって、少なくともつま先側の外周縁に沿う部分に、靴底本体3よりも変形しやすい軟質衝撃吸収材からなる衝撃吸収部4を下方に突出して設けており、この衝撃吸収部4で地面や床面との接触による衝撃を吸収する。
【0011】
本明細書において、履き物とは、屋外や室内を問わず、歩くときに足に履いて使用するもの全般を意味するものとする。したがって、本明細書において、履き物とは、一般に使用される靴だけでなく、長靴や作業靴のような特殊な靴や、スリッパやサンダル等のような簡易な履き物をも含む広い意味で使用する。
【0012】
本発明の履き物は、靴底1のつま先側に設けた衝撃吸収部4を、靴底1の外周に沿う山形ないし馬蹄形とすることができる。さらに、本発明の履き物は、靴底1の外周縁部であって、踵側の後端部に衝撃吸収部4を設けることができる。さらに、本発明の履き物は、衝撃吸収部4の内側に、靴底本体3より変形しにくい硬質支持材からなる荷重支持部5を設けて、この荷重支持部5で使用者の体重を支持することができる。
【0013】
さらに、本発明の履き物は、スリッパまたはサンダルとし、靴底1のつま先側の上面に足の先端部を挿入する挿入保持部6を設けると共に、足の踵を引っかけて足を定位置に保持する保持バンド8を備えることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の履き物は、あらゆる種類の履き物に適用しながら、また、美しい外観としながら、歩行時に靴底が地面や床面に引っかかってつまずくのを有効に防止できる特長がある。それは、本発明の履き物が、靴底の外周縁部のつま先側の先端部、あるいは靴底の底面のつま先側に、靴底本体よりも変形しやすい軟質衝撃吸収材からなる衝撃吸収部を設けており、この衝撃吸収部で地面や床面との接触による衝撃を吸収するようにしているからである。この構造の履き物は、靴底の衝撃吸収部が地面や床面に接触すると、衝撃吸収部が変形して衝撃を吸収すると共に、この衝撃吸収部が変形することによって、スムーズに足を前方に送り出すことができる。したがって、本発明の履き物は、靴底に設けた衝撃吸収部によって、地面や床面との接触によるつまずきを有効に防止できる。とくに、本発明の履き物は、従来のように靴底を大きく変形させることなく、また、靴底に傾斜面を設けることなくつまずきを防止するので、あらゆる種類の履き物に適用できると共に、美しい外観としながら、歩行時につまずくのを有効に防止できる特長が実現できる。
【0015】
さらに、本発明の請求項3の履き物は、靴底のつま先側に設けた衝撃吸収部を、靴底の外周に沿う山形ないし馬蹄形としているので、美しい外観としながら、違和感なく靴底に衝撃吸収部を設けて、理想的につまずきを防止できる。
【0016】
さらに、本発明の請求項4の履き物は、靴底の外周縁部であって、踵側の後端部に衝撃吸収部を設けているので、歩行時に足を前方に送り出したときに踵部分でスリップするのを有効に防止できる特長がある。この履き物は、踵部の後端部に設けた衝撃吸収部が接地した瞬間に変形して広い面積で接地面を押圧するので、後端部が水の膜等でスリップするのを有効に防止できる。
【0017】
さらに、本発明の請求項5の履き物は、衝撃吸収部の内側に、靴底本体より変形しにくい硬質支持材からなる荷重支持部を設けているので、この荷重支持部で使用者の体重を安定して支持しながら、衝撃吸収部でつまずきを有効に防止して安全に歩行できる特徴が実現できる。
【0018】
さらに、本発明の請求項6の履き物は、スリッパまたはサンダルとして、つま先側の上面に挿入保持部を設けると共に、足の踵を引っかけて足を定位置に保持する保持バンドを設けているので、歩行時において、不意に履き物の位置がずれるのを阻止して、この位置ずれに起因するつまずきを有効に防止できる特長がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための靴を例示するものであって、本発明は靴を下記のものに特定しない。
【0020】
さらに、この明細書は、特許請求の範囲を理解し易いように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲の欄」、および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0021】
本発明の履き物は、足に履いて歩くときに、靴底の一部が、地面や床面、あるいは、これらの表面の段差や凹凸に接触して、つまずくのを有効に防止するものである。とくに、本発明の履き物は、靴底の構造を特徴とするものであって、靴底以外の部分、たとえば、甲皮部分の構造は、現在既に使用され、あるいは今後開発される全ての構造とすることができる。したがって、本発明の履き物は、形状や用途、デザイン等を問わず、スポーツシューズから一般に使用される靴全般、さらには長靴や安全靴等の特殊な作業用の靴、さらにまた、スリッパやサンダル等の簡易な履き物にも適用することができる。
【0022】
図2ないし図6に示す履き物は、一般に使用される靴としての実施例を示し、図7と図8はスリッパ、図9はサンダルとしての実施例をそれぞれ示している。これらの図に示す履き物は、足を挿通して保持する被覆部2と、この被覆部2の底面に設けている靴底1とを備える。
【0023】
被覆部2は、履き物の種類や用途によって種々のものとすることができる。たとえば、図2ないし図6に示す靴においては、被覆部2は、足の甲部から踵部に掛けての全体を被覆する形状としている。さらに、図7に示すスリッパと図9に示すサンダルは、被覆部2として、足の先端部を挿入する挿入保持部6を設けている。図7に示すスリッパは、挿入保持部6を、足のつま先側の先端部を挿入する袋状としており、図9に示すサンダルは、挿入保持部6を、甲の一部を被覆する帯状としている。スリッパの挿入保持部は、図示しないが、先端部を開口することもできる。サンダルの挿入保持部は、図示しないが、足の指の間に挿入する鼻緒を有する形状とすることもできる。以上の被覆部2は、たとえば、皮革、人工皮革、布材、紐材を編んだもの、合成樹脂、ゴム等で足の甲部から踵部にかけての全体または一部を被覆できる形状に製作される。
【0024】
靴底1は、履き物の底面に配設される板状に成形される。図2ないし図6に示す履き物は、靴底1の中央部に段差を設けて、足先部と踵部との間に凹部7を設けている。この凹部7は、足の裏の土踏まずに対向する位置に配置している。図7ないし図9に示す靴底1は、全体をほぼフラットな板状としている。さらに、以上の図に示す靴底1は、つま先側の先端部を、上向きに反る形状としている。この形状の靴底1は、歩行時において、先端部が地面や床面に接触する確率を低くすることができる。ただ、靴底は、必ずしも先端部を反らせることなく、完全な平面状とすることもできる。
【0025】
靴底1は、履き物の種類や用途に応じて、靴底本体3を種々の材料で製作することができる。靴底1は、一般に、歩行時の足の動きに応じて多少は変形できる弾力性と、地面上の凹凸や異物等を踏んだときに破損しない強度と、雨水等の浸入を防止できる耐水性と、高温や低温に対する耐熱性と、長時間の使用に対する消耗を低減できる耐摩耗性等の特性が要求される。したがって、靴底本体3は、これらの条件を踏まえて、皮革、人工皮革、布材、合成樹脂、ゴム等の材料を使用して製作される。靴底本体3を製作する合成樹脂には、たとえば、ポリブタジエン、EVA樹脂(エチレン酢酸ビニル共重合樹脂)、ポリエチレン、軟質ポリ塩化ビニルが使用できる。靴底本体3を製作するゴムには、天然ゴムや合成ゴムが使用できる。合成ゴムには、たとえば、イソプレンゴムやスチレンブタジエンゴム等が使用できる。靴底本体3は、これらの材料を単独で使用して、あるいはこれらを積層して、前述の特性を満たす構造に成形される。ただ、本発明は、靴底本体に使用する合成樹脂やゴムを以上のものに特定しない。
【0026】
さらに、靴底1は、外周縁部あるいは底面に、靴底本体3よりも変形しやすい衝撃吸収部4を設けている。衝撃吸収部4は、地面や床面に接触すると、速やかに変形してこれらの衝撃を吸収する部分である。したがって、衝撃吸収部4は、地面や床面に接触した衝撃で速やかに変形して衝撃を吸収できる軟質衝撃吸収材で成形される。衝撃吸収部4は、変形によって単に衝撃を吸収する緩衝作用を備えるだけではなく、変形することによって、足の送り出しを邪魔することなく、スムーズに足を前方に移動できる構造としている。いいかえると、衝撃吸収部4は、地面や床面に接触したときに、スムーズに足を前方に移動できるように変形する。ここで、スムーズに足を前方に移動するとは、地面や床面との接触によって多少の抵抗感はあっても、足の移動が阻害されることなく、前方に送り出しできる状態を意味している。すなわち、靴底1は、衝撃吸収部4が地面や床面に接触することによって、多少の抵抗感は感じても、衝撃吸収部4が変形することによって、つまずくことなく足を前方に送り出しできる構造としている。本発明の履き物は、靴底1に衝撃吸収部4を設けて、この衝撃吸収部4を変形させることによって、地面や床面との接触によるつまずきを有効に防止している。
【0027】
衝撃吸収部4は、軟質衝撃吸収材で成形される。軟質衝撃吸収材には、軟質合成樹脂や軟質ゴム、あるいは発泡合成樹脂や発泡ゴム等が使用できる。軟質合成樹脂や軟質ゴムには、たとえば、軟質ウレタンフォームやウレタンゴム、シリコンゴム等が使用できる。発泡合成樹脂や発泡ゴムには、ポリウレタンやクロロプレンゴムを発泡成形してなるスポンジ材やクッション材が使用できる。ただ、本発明は、軟質衝撃吸収材に使用する合成樹脂やゴムを以上のものに特定しない。
【0028】
図2に示す靴底1は、図3の底面図と図4の断面図に示すように、外周縁部であって、つま先側の先端部に衝撃吸収部4を設けている。図の靴底1は、先端部の衝撃吸収部4を靴底1の外周縁に沿う山形ないし馬蹄形としている。この構造の靴底1は、図10に示すように、足を前方に送り出す状態で、靴底1の先端部に設けた衝撃吸収部4が地面や床面の段差10に接触すると、この部分が速やかに変形して衝撃を吸収する。さらに、地面や床面との接触で変形する衝撃吸収部4は、足の送り出しが接触部分で阻害されるのを防止する。衝撃吸収部4が速やかに変形することによって、靴底1の前方向への移動に対する抵抗が小さくなるからである。
【0029】
さらに、図5と図6に示す靴底1は、底面であって、つま先側の外周縁に沿う部分に、下方に突出する衝撃吸収部4を設けている。図の靴底1は、先端部の衝撃吸収部4を靴底1の外周縁に沿う山形ないし馬蹄形としている。ただ、衝撃吸収部は、靴底の外周縁に沿う部分を有する形状、たとえば、半円形とし、あるいは楕円形や長円形を分割した形状として、底面のつま先側に部分的に設けることもできる。この構造の靴底1は、図11に示すように、足を前方に送り出す状態で、靴底1の底面に設けた衝撃吸収部4の先端部が地面や床面の段差10に接触すると、この部分が速やかに変形して衝撃を吸収する。この形状の衝撃吸収部4も、地面や床面との接触で変形することによって、靴底1の前方向への移動に対する抵抗が小さくなるので、足の送り出しが接触部分で阻害されるのが防止される。
【0030】
以上のように、靴底1のつま先側に設けられる衝撃吸収部4は、地面や床面に接触した状態で、靴底1をスムーズに前方に送り出しするために、摩擦抵抗の小さい軟質衝撃吸収材を使用し、あるいは、表面に摩擦抵抗が小さくなる加工を施すことができる。このように、本発明の履き物は、地面や床面との接触による衝撃を速やかに吸収し、かつ接触部分に対して低抵抗な状態で移動できる衝撃吸収部4を靴底1に設けることによって、地面や床面との接触によるつまずきを有効に防止できる。
【0031】
さらに、図2ないし図4に示す靴底1は、踵部の後端部にもU字形の衝撃吸収部4を設けている。この履き物は、歩行時に足を前方に送り出したときに踵部分でスリップするのを有効に防止できる特長がある。一般に、美しい歩き方は、踵から地面に着いて、その後、体重をつま先へ移動させながら歩く歩き方といわれている。ただ、この歩き方をする場合、地面や床面が濡れていると、踵を着いたときに踵の接地部分である後端部がスリップして滑ることがある。これに対して、この構造の履き物は、踵部の後端部に衝撃吸収部4を設けているので、図12に示すように、靴底1の踵部の後端部が接地した瞬間に、衝撃吸収部4が変形して広い面積で接地して、後端部が水の膜11等でスリップするのを有効に防止できる。とくに、この衝撃吸収部4は、摩擦抵抗の大きい軟質衝撃吸収材を使用し、あるいは、表面に摩擦抵抗が大きくなる加工を施すことによって、地面や床面との接触部分における摩擦抵抗を大きくして、スリップを有効に防止できる。
【0032】
さらに、図7と図8に示す靴底1は、外周縁部の全体にわたって衝撃吸収部4を設けている。このように、全体にわたって衝撃吸収部4を設けている靴底1は、前方だけでなく、前後左右あらゆる方向へ移動するときにおけるつまずきを有効に防止できる特長がある。
【0033】
衝撃吸収部4の厚さと幅は、履き物の種類や用途、さらには、サイズによって種々に変更され、また、軟質衝撃吸収材の材質によっても種々に変更される。図2ないし図9に示す履き物は、衝撃吸収部4の厚さを靴底1の厚さとほぼ等しくしている。ただ、衝撃吸収部4の厚さは、靴底全体の厚さの10%以上、好ましくは、40%以上、さらに好ましくは、60%以上とすることができる。衝撃吸収部4を厚くする靴底1は、衝撃を吸収する領域を広くして、つまずき防止の効果が大きくなる。
【0034】
また、衝撃吸収部4の幅は、図3と図8に示すように、靴底1の外周縁部に設けられる衝撃吸収部4については、2〜30mm、好ましくは3〜20mm、さらに好ましくは、5〜15mmとすることができる。靴底1の外周縁部に設ける衝撃吸収部4、その幅を狭くすると靴底1でバランスよく体重を支持しやすくなるが、衝撃を吸収する領域が狭くなる。反対に、衝撃吸収部4の幅を広くすると衝撃を吸収する領域が広くなるが、靴底1でバランスよく体重を支持し難くなる。したがって、衝撃吸収部4の幅は、これらのことを考慮して前述の範囲とすることができる。
【0035】
また、図6に示すように、靴底の底面に設けられる衝撃吸収部4は、その幅を狭くすると靴底1でバランスよく体重を支持できなくなる。したがって、衝撃吸収部4の幅は、5mm以上、好ましくは、10mm以上としてバランスよく安定して体重を支持できる。なお、衝撃吸収部4の幅を示す以上の数値は、一般的な成人男性用の履き物における衝撃吸収部4の幅を示している。ただ、衝撃吸収部の幅は、靴底全体の大きさ(幅と全長)に対して相対的に決定することができるので、女性用や子供用の履き物については、前述の数値を相対的に小さくした範囲とすることができる。
【0036】
さらに、図3と図4に示す靴底1は、衝撃吸収部4の内側に、靴底本体3より変形しにくい荷重支持部5を設けている。荷重支持部5は、足裏から作用する荷重を安定して支持できるように、硬質支持材で成形される。硬質支持材には、靴底本体よりも硬質な材料であって、たとえば、合成樹脂や合成ゴム等が使用できる。図に示す靴底1は、荷重支持部5を、衝撃吸収部4に沿う山形ないし馬蹄形としている。ただ、荷重支持部5は、図示しないが、この部分に働く荷重を支持できる種々の形状とすることもできる。さらに、図に示す靴底1は、荷重支持部5を、靴底本体3に埋設する状態で設けている。ただ、荷重支持部は、靴底の底面から突出して設けることもできる。このように、靴底本体の中央部分であって、体重がかかる部分に荷重支持部5を設ける構造は、この部分で安定して体重を支持して、バランス良く起立または歩行できる特長がある。この図に示す履き物は、靴底1のつま先側と踵側の両方に荷重支持部5を設けているが、荷重支持部は、靴底のつま先側と踵側のいずれか一方にのみ設けることもできる。
【0037】
ところで、サンダルやスリッパ等の履き物は、靴のように足先から踵にかけての全体を覆うことなく、足先部分のみを挿入して履くので、図13に示すように、歩行時において、矢印Aで示すように、足からずれやすい欠点がある。図の矢印Aで示すように、歩行時に履き物がずれて下がると、靴底1の先端が地面や床面に接触しやすくなり、つまずきやすくなる。このことを有効に防止するために、図7に示す履き物は、足の甲部から踵部に掛けて、足の踵を引っかけて足を定位置に保持する保持バンド8を備えている。
【0038】
図の保持バンド8は、一端を挿入保持部6の片側の側面に、他端を挿入保持部6の反対側の側面に連結して、足の踵部を保持バンド8を介して挿入保持部6に連結している。この構造は、足が挿入保持部6から外れるのを有効に防止できる特長がある。保持バンド8は、たとえば、帯状の布材、あるいは紐材とすることができる。帯状の保持バンド8は、連結具(図示せず)を介して挿入保持部6に脱着自在に連結することができる。この連結具には、面ファスナーが最適である。ただ、連結具には、ホックやフック、ボタン等も使用できる。紐材である保持バンドは、結束して踵部に連結することができる。さらに、保持バンドは、ゴムバンドとすることもできる。この保持バンドは、引っ張って伸長させた状態で踵を挿入し、ゴムの弾性力で踵に連結される。以上のように。保持バンド8は、踵を外れないように挿入保持部6に連結して、履き物を所定の位置に固定できる。この構造の履き物は、歩行時において、不意に位置がずれるのを有効に防止できるので、この位置ずれに起因するつまずきを有効に防止できる。
【0039】
以上の実施例の履き物は、被覆部2の底面に靴底1を接着して固定している。被覆部2は、たとえば、足の裏面に配置される足裏マット9の周縁に沿って、皮革や布材である甲皮部材を逢着して成形される。この構造の被覆部2は、足裏マット9の下面に靴底1を接着あるいは縫着して固定される。ただ、履き物は、プラスチック製の靴底に甲皮部材の下端縁を埋設して固定することもできる。さらに、甲皮部材をプラスチックとする履き物は、靴底と被覆部の全体をプラスチックで一体的に成形することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】従来の履き物の使用時におけるつまずく状態を示す概略側面図である。
【図2】本発明の一実施例にかかる履き物の側面図である。
【図3】図2に示す履き物の底面図である。
【図4】図3に示す履き物のA−A線断面図である。
【図5】本発明の他の実施例にかかる履き物の側面図である。
【図6】図5に示す履き物の底面図である。
【図7】本発明の他の実施例にかかる履き物の側面図である。
【図8】図7に示す履き物の底面図である。
【図9】本発明の他の実施例にかかる履き物の側面図である。
【図10】図2に示す履き物の衝撃吸収部が段差に接触する状態を示す概略側面図である。
【図11】図5に示す履き物の衝撃吸収部が段差に接触する状態を示す概略側面図である。
【図12】図2に示す履き物の踵部が着地する状態を示す概略断面図である。
【図13】従来のスリッパを履いて歩行する状態を示す概略側面図である。
【符号の説明】
【0041】
1…靴底
2…被覆部
3…靴底本体
4…衝撃吸収部
5…荷重支持部
6…挿入保持部
7…凹部
8…保持バンド
9…足裏マット
10…段差
11…水の膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴底(1)の外周縁部であって、少なくともつま先側の先端部に、靴底本体(3)よりも変形しやすい軟質衝撃吸収材からなる衝撃吸収部(4)を設けており、この衝撃吸収部(4)で地面や床面との接触による衝撃を吸収するようにしてなる履き物。
【請求項2】
靴底(1)の底面であって、少なくともつま先側の外周縁に沿う部分に、靴底本体(3)よりも変形しやすい軟質衝撃吸収材からなる衝撃吸収部(4)を下方に突出して設けており、この衝撃吸収部(4)で地面や床面との接触による衝撃を吸収するようにしてなる履き物。
【請求項3】
靴底(1)のつま先側に設けた衝撃吸収部(4)が靴底(1)の外周に沿う山形ないし馬蹄形である請求項1または2に記載される履き物。
【請求項4】
靴底(1)の外周縁部であって、踵側の後端部に衝撃吸収部(4)を設けている請求項1または2に記載される履き物。
【請求項5】
衝撃吸収部(4)の内側に、硬質支持材からなる荷重支持部(5)を設けており、この荷重支持部(5)で使用者の体重を支持するようにしてなる請求項1ないし4のいずれかに記載される履き物。
【請求項6】
履き物がスリッパまたはサンダルであって、靴底(1)のつま先側の上面に足の先端部を挿入する挿入保持部(6)を備えると共に、足の踵を引っかけて足を定位置に保持する保持バンド(8)を備えることを特徴とする請求項1または2に記載される履き物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−101983(P2006−101983A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−290138(P2004−290138)
【出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【出願人】(501363383)
【Fターム(参考)】