説明

履物の中敷

【課題】靴内への挿入が簡単に行え、靴を履いたり脱ぐときの動作が円滑となり、しかも、吸湿効果の向上を図ることができる履物の中敷を提供する。
【解決手段】中敷1が、弾性シートを用いた中敷本体2と、前記中敷本体2の上面に重ねて周縁を中敷本体2と結合した表層材3と、前記中敷本体2と表層材3の重なり面間に配置した粉粒状の吸湿剤4とからなり、前記表層材3は、畳表3bを用い、この畳表3bをい草3aの長さ方向が中敷本体2の前後長さ方向に沿う配置になるよう裁断して形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、畳表を表層材に用いた靴やスリッパ等の履物の中敷に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、表層材に畳表を用い、天然い草の吸湿性を生かすようにした履物の中敷は、可撓性のシート材からなる中敷本体と、この中敷本体と平面形状が同じになるよう裁断され、前記中敷本体の表面に重ねて接着固定した畳表で形成され、表層材となる畳表が肌触りを良くし、履き心地を向上させた構造になっている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−215913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来の履物の中敷は、表層材となる畳表が、多数本の密に並べたい草と連結糸を用いて織りあげられ、この畳表をい草の長さ方向が中敷本体の幅方向に沿う配置になるよう裁断して形成されているため、中敷の幅方向に沿う湾曲性が悪く、中敷を靴に履き口から挿入するときに、中敷をフラットな状態で挿入させなければならず、挿入作業が行いにくいと共に、無理に湾曲させるとい草が折れて中敷に折り癖がつき、肌触りを悪くするという問題がある。
【0005】
また、畳表におけるい草の長さ方向が中敷本体の幅方向に沿う配置になっていると、靴を履くときに足を挿入したとき、い草が足に対して挿入や引抜き方向に対して引っかかり易く抵抗となり、靴を履くときに足の挿入が行いにくいと共に、靴を脱ぐときには中敷が引き出されるという問題がある。
【0006】
更に、天然のい草を用いた畳表は、それ自身通気性と適度の吸湿性があるが、シート材からなる中敷本体の上面に畳表を接着固定した構造では、吸湿効果は畳表のみに依存するため、吸湿効果を多く又は長く望めないものである。
【0007】
そこで、この発明の課題は、靴内への挿入が簡単に行え、靴を履いたり脱ぐときの動作が円滑となり、しかも、吸湿効果の向上を図ることができる履物の中敷を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記のような課題を解決するため、この発明は、弾性シートを用いて形成した中敷本体と、前記中敷本体と同様の平面形状に形成され、前記中敷本体の上面に重ねて周縁を中敷本体と結合した表層材と、前記中敷本体と表層材の重なり面間に配置した粉粒状の吸湿剤とからなり、前記表層材は、密に並ぶよう並列させた多数のい草と連結糸を用いて織り上げた畳表を用い、この畳表をい草の長さ方向が中敷本体の前後長さ方向に沿う配置になるよう裁断して形成されているようにしたものである。
【0009】
上記表層材を形成する畳表は、縁なし畳に用いる目積表である構造とすることができる。
【0010】
ここで、上記中敷本体となる弾性シートは、適度な厚みと可撓性のある合成樹脂シートを用い、その上面全体に比較的小さな粉粒状の吸湿剤をランダムな配置で接着固定し、前記吸湿剤を中敷本体の上面に重ねた表層材とで挟み込み、吸湿剤が必要以上に表層材を押上げることのないよう、弾性シートの弾性で吸収している。
【0011】
上記中敷本体の上面には、吸湿剤と混合した状態で粉粒状の活性炭を配置し、吸湿性と同時に消臭機能を付加するようにしてもよい。
【0012】
上記中敷本体と畳表は、周縁を接着により固定化したり、上下に重ね合わせた状態でその周縁全周を縁飾りテープで挟み、この挟み部分を縫着することで一体化されている。
【発明の効果】
【0013】
この発明によると、中敷本体の上面に重ねた表層材に畳表を用い、この畳表をい草の長さ方向が中敷本体の前後長さ方向に沿う配置になるよう裁断して形成したので、中敷の幅方向に沿う湾曲性が良くなり、中敷を靴に履き口から挿入するときに、中敷を幅方向に湾曲させて幅を狭くした状態で挿入させることができ、挿入作業が容易になると同時に、い草が折れて中敷に折り癖がつくようなことがなく、肌触りを低下させることがない。
【0014】
また、表層材である畳表をい草の長さ方向が中敷本体の前後長さ方向に沿う配置になるよう裁断して形成したので、履物を履いたり脱ぐときの足の移動方向とい草の長さ方向が沿うことになり、このため、履物を履いたり脱ぐときの足の動きに対して抵抗の発生が少なくなり、履物を履いたり脱ぐ動作が円滑に行え、履物を脱ぐときに中敷が引き出されるようなこともなくなる。
【0015】
更に、中敷本体と表層材の重なり面間に粉粒状の吸湿剤を設けたので、畳表の持つ通気性によって吸湿剤が効果的に履物内の湿気を吸収することができ、畳表の持つ吸湿性によって吸湿効果の向上を図り、履物を長時間履いていても快適である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a)はこの発明に係る中敷の表層材を示す平面図、(b)は中敷の中敷本体を示す平面図、(c)は完成した中敷の斜視図
【図2】この発明に係る中敷の表層材と中敷本体の一部を拡大して示す分解斜視図
【図3】(a)はこの発明に係る中敷の拡大した幅方向に沿う縦断面図、(b)は中敷を湾曲させた状態の幅方向に沿う縦断面図、(c)は中敷本体の素材となる合成樹脂シートの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施の形態を図示例と共に説明する。
【0018】
図示のように、この発明にかかる履物の中敷1は、弾性シートを用いて形成した中敷本体2と、前記中敷本体2と同様の平面形状に形成され、前記中敷本体2の上面に重ねて周縁を中敷本体2と結合した表層材3と、前記中敷本体2と表層材3の重なり面間に配置した粉粒状の吸湿剤4とによって形成されている。
【0019】
上記中敷本体2となる弾性シートは、適度な厚みと弾力性、可撓性及び強度のある合成樹脂シートを用い、例えば靴の中に挿入することができるよう、靴のサイズに合わせた足形に形成され、上記表層材3も中敷本体と平面的に同じ大きさに裁断されている。上記弾性シートとして、例えば、図3(c)に示すように、積水ポリマテック(株)製の置き敷き畳裏打ち材である、下面に縦横の溝2aをエンボス加工し、上面に接着剤層2bを設けた合成樹脂製の弾性シートを素材として用いることができ、底面に滑り止め効果が得られると共に、上面への吸湿剤4の取付けが容易に行えることになる。
【0020】
上記吸湿剤4は、例えば、シリカゲルのような二酸化ケイ素(SiO)を主成分とし、粉状や比較的小さな粒状に粉砕したものを用い、中敷本体2の上面全体にランダムな配置で接着固定され、この吸湿剤4を中敷本体2の上面に重ねた表層材3とで挟み込み、吸湿剤4が必要以上に表層材3を押上げることのないよう、クッション材である中敷本体2の弾性で吸収している。従って、表層材3に体重が加わっても、足裏に異物感を感じることがないようになっている。なお、吸湿剤4の配置は、中敷本体2の土踏まずに該当する部分の配置量を他の部分よりも多くしてもよく、このようにすると、表層材3の土踏まずに該当する部分が少し盛り上がって土踏まずに刺激を与えることもでき、しかも、吸湿剤4の全体的な配置量を多くして吸湿機能を向上させることができることになる。
【0021】
上記表層材3は、密に並ぶよう並列させた多数の天然い草3aと連結糸を用いて織り上げた畳表3bを用い、この畳表3bをい草3aの長さ方向が中敷本体2の前後長さ方向に沿う配置になるよう裁断して形成され、例えば、この畳表3bは、縁なし畳に用いる目積表を用いることができ、目積表は細い天然い草を用い、このい草を密に並列させた状態で織り上げたものであり、従って、畳の目が細かく緻密であり、肌触りの感触がよく強度的にも優れたものになっている。
【0022】
また、畳表3bをい草3aの長さ方向が中敷本体2の前後長さ方向に沿う配置にすることで、図3(b)に示すように、中敷1は幅方向に沿って湾曲性が良くなるという特徴があり、図3(a)のように、前記中敷本体2と畳表3bは、上下に重ね合わせた状態でその周縁全周を縁飾りテープ5で挟み、この挟み部分を縫着や接着で固定することで周縁部分が一体化されている。
【0023】
上記畳表3bは、通気性と吸湿性及びクッション性を有し、この畳表3bと中敷本体2は、周縁部分が一体化されているが中間は遊離し、遊離部分に吸湿剤4が介在しているので、遊離部分に空気層を確保でき、畳表3bの通気性によって吸湿剤4の吸湿機能を確実に働かせることができ、畳表3bと吸湿剤4の吸湿機能が有効に機能することになる。
【0024】
上記畳表3bは、足形に裁断した状態で、周縁部に樹脂や接着剤等を塗布して乾燥固化させ、周縁においてい草3aのほつれが生じないように処理しておくのが好ましい。
【0025】
なお、中敷本体2の上面には、吸湿剤4と混合した状態で粉粒状の活性炭を配置し、吸湿性と同時に消臭機能を付加するようにすることができる。
【0026】
この発明の中敷1は、上記のような構成であり、靴やスリッパの中敷として使用するが、例えば、靴の中敷として使用するときに靴内に履き口から挿入する場合、図3(b)のように、中敷1を幅方向に沿って湾曲させた状態とすれば、靴の履き口が狭くても中敷の幅を狭くして挿入できるので、挿入作業が容易となり、畳表3bのい草3aを折ることもないので、折り目が生じて足裏に違和感を与えるようなことがない。
【0027】
上記中敷1は、中敷本体2が弾性シートを用いて形成され、表層材3が畳表3bで形成されているので、全体的にクッション性に優れ、歩行時に足が疲れないようにすることができ、また、中敷本体2と畳表3bの間に吸湿剤4が配置してあるので、畳表3bと吸湿剤4の吸湿機能により、発汗による湿気を吸収することで靴内を蒸れないようにし、靴内の快適な環境を維持することができる。
【0028】
また、畳表3bは、い草3aの長さ方向が中敷1の前後方向に沿う配置になっているので、靴を履いたり脱ぐ場合、い草3aの長さ方向に沿って足が移動することになり、足に対してい草の引っかかり発生がなく、中敷1を必要以上に押し込んだり引き出すようなことがなくなり、靴を履いたり脱ぐ動作が円滑に行えることになる。
【符号の説明】
【0029】
1 中敷
2 中敷本体
3 表層材
3a い草
3b 畳表
4 吸湿剤
5 縁飾りテープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性シートを用いて形成した中敷本体と、前記中敷本体と同様の平面形状に形成され、前記中敷本体の上面に重ねて周縁を中敷本体と結合した表層材と、前記中敷本体と表層材の重なり面間に配置した粉粒状の吸湿剤とからなり、
前記表層材は、密に並ぶよう並列させた多数のい草と連結糸を用いて織り上げた畳表を用い、この畳表をい草の長さ方向が中敷本体の前後長さ方向に沿う配置になるよう裁断して形成されている靴の中敷。
【請求項2】
上記表層材を形成する畳表は、縁なし畳に用いる目積表である請求項1に記載の靴の中敷。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−152494(P2012−152494A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16170(P2011−16170)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(599027910)
【Fターム(参考)】