説明

履物用ゴム組成物

本発明は、成分(1)ゴム状重合体:100重量部;及び成分(2)共役ジエン系重合体又は共役ジエン系単量体とビニル芳香族炭化水素からなる共重合体又はそれらの水添物に官能基含有原子団が少なくとも1個結合している変性重合体から選ばれる少なくとも1種の変性重合体100重量部に無機充填剤5〜300重量部を混練して得られるマスターバッチ:1〜150重量部を含む履物用ゴム組成物を提供する。本発明の履物用ゴム組成物は、優れた引き裂き強度と耐摩耗性を有し、更に靴の材料であるナイロン、レザー、EVAとの接着性に極めて優れる。本発明の組成物は、これらの特徴を生かして各種シューズのソール材として極めて有効な材料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、ゴム状重合体成分及び官能基含有原子団が結合した変性重合体と無機充填剤を予め混合したマスターバッチ成分とからなるゴム状重合体組成物であって、特に引き裂き強度、耐摩耗性、接着性に優れる新規な履物用ゴム組成物に関する。
【背景技術】
従来、履物用の原料としてゴム状重合体が種々の履物用途で使用されている。その用途に応じて要求される特性を付与するために、ゴム状重合体を主成分とし、さらに各種の無機充填剤、添加剤、着色剤等を配合したゴム組成物が原料として用いられている。履物等の各種ゴム製品においては、製品の外観性を向上させるためにシリカ等の白色系充填剤が補強剤として広く使用されている。しかし、シリカを補強充填剤として用いた場合、従来のカーボンブラックと比較してゴムとの親和性が低いため、シリカのゴム中への分散性が必ずしも良くなく、この分散性不良によって耐摩耗性の低下、機械強度の低下がおこりがちである。そこで、カーボンブラックのような高い補強性を得るために、ゴム組成物へのシリカ配合にはビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドに代表されるシランカップリング剤を使用してシリカの分散を改良することがおこなわれており、製品コストの上昇を余儀なくされている。
靴底材料として求められる特性して、耐摩耗性や耐ウエットスキッド性が良好であること、ミッドソールやアッパーとの接着性が良好であることが挙げられる。
また、シリカ粉体の使用は、靴の製造工程において粉体が舞い上がり作業性が劣るという問題があり、また、更に、近年、靴工場の作業環境改善の観点から、靴の製造に使用する接着剤を有機溶剤系から水性接着剤へと変える動きが活発化している。しかしながら、満足のゆく接着強度が得られていないのが現状である。
ゴム組成物を改良する方法として、特許文献1には、シリカとシランカップリング剤を限定しゴムに熱可塑性樹脂を混合することにより着色性と耐摩耗性が優れる靴底に関するものが開示されているが、水性接着剤を使用した時の接着強度に優れたゴム組成物は得られていない。 特許文献2にははハイシスポリブタジエンとスチレンレジンとシリカからなる、軽量化、耐摩耗性靴底材が開示されている。特許文献3には、特定のポリシロキサン化合物を用いて耐摩耗性を改良する履物用ゴム組成物が開示されている。また、特許文献4には、特定構造の変性重合体とシリカの組み合わせによって、耐摩耗性や耐ウエットスキッド性に優れる履物用ゴム組成物が開示されているが、いずれも水性接着剤を使用した時の接着強度に優れたゴム組成物は得られていない。
特許文献5及び特許文献6には、変性重合体と補強性充填剤からなるマスターバッチを用いたゴム組成物が開示されているが、履物用ゴム組成物として重要な特性である接着強度の記載が全くない。
【特許文献1】特開昭62−137002号公報
【特許文献2】特開2000−236905号公報
【特許文献3】特開2002−191401号公報
【特許文献4】特開2002−284931号公報
【特許文献5】特開平8−231766号公報
【特許文献6】特開2000−136269号公報
【発明の開示】
本発明は、ゴム状重合体と無機充填剤から得られるゴム組成物において、官能基含有原子団が結合している変性重合体と無機充填剤のマスターバッチを作製し、該マスターバッチとゴム状重合体を含むゴム組成物とすることで、引き裂き強度、耐摩耗性、接着性に優れ、また靴工場の作業環境を改善できる履物用ゴム組成物を提供することにある。
本発明者らは、共役ジエン系重合体又はビニル芳香族炭化水素と共役ジエン系単量体からなる共重合体、或いはこれらの水添物と無機充填剤とのゴム組成物の特性改良について鋭意検討した結果、ゴム状重合体と無機充填剤を含むゴム組成物を製造する際に、特定の官能基を付与した変性重合体と無機充填剤を予め混練したマスターバッチを使用することで、引き裂き強度、耐摩耗性、接着性に優れた履物用ゴム組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記の通りである。
1.成分(1)ゴム状重合体:100重量部;及び成分(2)共役ジエン系重合体又は共役ジエン系単量体とビニル芳香族炭化水素からなる共重合体又はそれらの水添物に官能基含有原子団が少なくとも1個結合している変性重合体から選ばれる少なくとも1種の変性重合体100重量部に無機充填剤5〜300重量部を混練して得られるマスターバッチ:1〜150重量部を含む履物用ゴム組成物。
2.成分(2)が無機充填剤5〜300重量部の全量を予め混練機に投入して混練し、次いで変性重合体を加えて混練して得られるマスターバッチである前項1に記載の履物用ゴム組成物。
3.成分(2)が無機充填剤5〜300重量部を2回以上分割して混練機に投入して順次混練して得られるマスターバッチである前項1に記載の履物用ゴム組成物。
4.成分(2)が無機充填剤の20〜80重量%を予め混練機に投入して混練し、次いで変性重合体を加え、更に当該無機充填剤の残量を加えて混練したマスターバッチである前項1に記載の履物用ゴム組成物。
5.成分(3)として、更に無機充填剤を0.1〜150重量部含む前項1に記載の履物用ゴム組成物。
6.変性重合体の官能基含有原子団が、水酸基、エポキシ基、アミノ基、イミノ基、シラノール基、アルコキシシラン基から選ばれる官能基を少なくとも1個有する原子団である前項1に記載の履物用ゴム組成物。
7.変性重合体が、下記式(1)〜(14)から選ばれる原子団が少なくとも1個結合している変性重合体である前項1に記載の履物用ゴム組成物。

(上記式(1)〜(14)において、 Nは窒素原子、Siは珪素原子、Oは酸素原子、Cは炭素原子、Hは水素原子を表し、R,Rは各々独立に水素原子又は炭素数1〜24の炭化水素基を表し、且つ、該炭化水素基は、所望により、各々独立に、水酸基、エポキシ基、アミノ基、炭素数1〜24の炭化水素基を有するイミノ基、シラノール基及び炭素数1〜24のアルコキシシラン基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有してもよく、各Rは各々独立に炭素数1〜48の2価の炭化水素基を表し、且つ、所望により、各々独立に、水酸基、エポキシ基、アミノ基、炭素数1〜24の炭化水素基を有するイミノ基、シラノール基及び炭素数1〜24のアルコキシシラン基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有してもよく、各Rは各々独立に水素原子又は炭素数1〜24の炭化水素基を表す。)
8.成分(2)が、当該変性重合体と無機充填剤の混練の際に、更に当該変性重合体に結合している官能基と反応性を有する化合物(4)を当該変性重合体100重量部に対して0.01〜20重量部添加して得られたマスターバッチである前項1に記載の履物用ゴム組成物。
9.成分(2)が、当該変性重合体と無機充填剤の混練物に、更に当該変性重合体に結合している官能基と反応性を有する化合物(4)を当該変性重合体100重量部に対して0.01〜20重量部混練して得られたマスターバッチである前項1に記載の履物用ゴム組成物。
10.成分(2)に使用する変性重合体が、当該変性重合体に結合している官能基と反応性を有する化合物(4)を当該変性重合体に結合している官能基1当量あたり0.3〜10モルを用いて反応させた変性重合体である前項1に記載の履物用ゴム組成物。
11.化合物(4)がカルボキシル基、酸無水物基、イソシアネート基、エポキシ基、シラノール基、アルコキシシラン基から選ばれる官能基を有する化合物である前項8または9に記載の履物用ゴム組成物。
12.成分(1)ゴム状重合体:100重量部;及び成分(2)共役ジエン系重合体又は共役ジエン系単量体とビニル芳香族炭化水素からなる共重合体又はそれらの水添物に官能基含有原子団が少なくとも1個結合している変性重合体から選ばれる少なくとも1種の変性重合体100重量部に無機充填剤5〜300重量部を混練して得られるマスターバッチ:1〜150重量部を混練する工程を含む履物用ゴム組成物の製造方法。
13.成分(2)が無機充填剤5〜300重量部の全量を混練機に投入して混練し、次いで変性重合体を加えて混練して得られるマスターバッチである前項12に記載の履物用ゴム組成物の製造方法。
14.成分(2)が無機充填剤5〜300重量部を2回以上分割して混練機に投入して順次混練して得られるマスターバッチである前項12に記載の履物用ゴム組成物の製造方法。
15.無機充填剤5〜300重量部の全量を混練機に投入して混練し、次いで変性重合体を加えて混練する前項1に記載のマスターバッチの製造方法。
16.無機充填剤の20〜80重量%を予め混練機に投入して混練し、次いで変性重合体を加え混練し、更に当該無機充填剤の残量を加えて混練する前項1に記載のマスターバッチの製造方法。
特定の官能基含有原子団が結合している変性重合体と無機充填剤のマスターバッチを用いて製造した本発明の履物用ゴム組成物は、引き裂き強度、耐摩耗性、水性接着を用いた時の接着性に優れ、また、靴工場の作業環境を改善できるゴム組成物である。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明について、以下具体的説明する。
本発明の履物用ゴム組成物を構成する成分(1)であるゴム状重合体の種類は特に限定されないが、共役ジエン系重合体またはその水添物、共役ジエン系単量体とビニル芳香族炭化水素からなるランダム共重合体またはその水添物、共役ジエン系単量体とビニル芳香族炭化水素からなるブロック共重合体またはその水添物、非ジエン系重合体、天然ゴム等があげられる。具体的には、ブタジエンゴム又はその水素添加物、イソプレンゴム又はその水素添加物、スチレン−ブタジエンゴム又はその水素添加物、スチレン−ブタジエンブロック共重合体又はその水素添加物、スチレン−イソプレンブロック共重合体又はその水素添加物等のスチレン系エラストマー、アクリロニトリル−ブタジエンゴム又はその水素添加物等であり、また、非ジエン系重合体としては、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、エチレン−ブテン−ジエンゴム、エチレン−ブテンゴム、エチエン−ヘキセンゴム、エチレン−オクテンゴム等のオレフィン系エラストマー、ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、α、β−不飽和ニトリル−アクリル酸エステル−共役ジエン共重合ゴム、ウレタンゴム等などがあげられる。これらのゴム状重合体は、官能基を付与した変性ゴムであっても良い。上記ゴム状重合体を単独で、或いは、2種類以上のゴム状重合体を混合した混合物として使用することがでる。
本発明の履物用ゴム組成物を構成する成分(2)は、共役ジエン系重合体又は共役ジエン系単量体とビニル芳香族炭化水素からなる共重合体又はそれらの水添物に官能基含有原子団が少なくとも1個結合している変性重合体から選ばれる少なくとも1種の変性重合体と無機充填剤を予め混練してマスターバッチ化したゴム組成物である。
本発明の成分(2)において用いられる変性共役ジエン系重合体又は共役ジエン系単量体とビニル芳香族炭化水素からなる変性共重合体は、少なくとも1種類の共役ジエン系単量体及び少なくとも1種類のビニル芳香族芳香族炭化水素とを有機リチウム触媒の存在下で溶液重合させることにより製造することができる。本発明の変性重合体の製造方法は、本発明の構造を有する重合体を得ることができれば、如何なる製造方法も採用することができる。
本発明における共役ジエン系単量体とは一対の共役二重結合を有するジオレフィンであり、例えば1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどが挙げられるが、特に一般的なものとしては1,3−ブタジエン、イソプレンが挙げられる。これらは重合体の製造において一種のみならず二種以上を使用してもよい。
また、ビニル芳香族炭化水素としては、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセンなどが挙げられるが、特に一般的なものとしてはスチレン、α−メチルスチレンが挙げられる。これらは重合体の製造において一種のみならず二種以上を使用してもよい。
変性重合体の製造に用いられる溶媒としては、ブタン、ペンタン、ヘキサン、イソペンタン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、或いはベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素などの炭化水素系溶媒が使用できる。これらは一種のみならず二種以上を混合して使用してもよい。
また、変性重合体の製造に用いられる有機リチウム化合物は、分子中に1個以上のリチウム原子を結合した化合物であり、例えばエチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、ヘキサメチレンジリチウム、ブタジエニルジリチウム、イソプレニルジリチウムなどが挙げられる。さらに、米国特許第5,708,092号明細書、英国特許第2,241,239号明細書、米国特許第5,527,753号明細書等に開示されているアミドリチウムなどの有機アルカリ金属化合物も使用することができる。これらは一種のみならず二種以上を混合して使用してもよい。又、有機リチウム化合物は、重合体の製造において重合途中で1回以上分割添加してもよい。
本発明において、重合体を製造している時の重合速度の調整、重合体中の共役ジエン部分のミクロ構造の変更、共役ジエン系単量体とビニル芳香族炭化水素との反応性比の調整などの目的で極性化合物やランダム化剤を使用することができる。極性化合物やランダム化剤としては、エーテル類、アミン類、チオエーテル類、ホスホルアミド、アルキルベンゼンスルホン酸のカリウム塩又はナトリウム塩、カリウムまたはナトリウムのアルコキシドなどが挙げられる。
エーテル類の例としてはジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等が挙げられる。アミン類としては第三級アミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、その他環状第三級アミン等が挙げられる。ホスフィン及びホスホルアミドとしては、トリフェニルホスフィン、ヘキサメチルホスホルアミドなどが挙げられる。
重合体を製造する際の重合温度は、好ましくは−10〜150℃、より好ましくは30〜120℃である。重合に要する時間は条件によって異なるが、好ましくは48時間以内であり、特に好適には0.5〜10時間である。又、重合系の雰囲気は窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気にすることが好ましい。重合系の圧力は、上記の重合温度範囲でモノマー及び溶媒を液相に維持するのに充分な圧力の範囲にすればよく、特に限定されるものではないが、通常0.2〜2MPaであり、好ましくは0.3〜1.5MPaである。反応温度は、0〜150℃の範囲が好ましく、より好ましくは20〜120℃、更に好ましくは50〜100℃の範囲である。更に、重合系内は触媒及びリビングポリマーを不活性化させるような不純物、例えば水、酸素、炭酸ガスなどが混入しないようにすることが好ましい。
本発明の成分(2)で使用する共役ジエン系重合体又はその水添物の変性重合体は、共役ジエン系単量体単独重合体またはビニル芳香族炭化水素含有量が5wt%未満の共役ジエン系重合体の変性重合体である。共役ジエン系重合体又はその水添物の構造は直鎖状であっても分岐状であっても、また、これらの任意の混合物であっても良い。また、共役ジエン系単量体とビニル芳香族炭化水素からなる共重合体又はその水添物は、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であっても良い。また、変性共重合体又はその水添物の構造は、直鎖状であっても分岐状であっても、これらの任意の混合物であっても良い。
本発明の成分(2)で使用する共役ジエン系単量体とビニル芳香族炭化水素からなるランダム共重合体又はその水添物のビニル芳香族炭化水素含有量は通常5〜95wt%の範囲であり、好ましくは10〜90wt%、更に好ましくは15〜85wt%の範囲である。またランダム共重合体又はその水添物の重合体鎖には、ビニル芳香族炭化水素含有量の異なるランダム共重合体ブロックが2個以上存在しても、更には共役ジエン重合体ブロック又はその水添物が1個以上存在しても良い。
共役ジエン系重合体の変性重合体やランダム共重合体の変性重合体は、共役ジエン系重合体やランダム共重合体のリビング末端に後述する変性剤を付加反応することにより得られる。
本発明の成分(2)で使用する共役ジエン系単量体とビニル芳香族炭化水素からなるブロック共重合体又はその水添物のビニル芳香族炭化水素含有量は、通常5〜95wt%の範囲であり、より好ましくは10〜90wt%、更に好ましくは15〜85wt%の範囲である。ブロック共重合体又はその水添物のビニル芳香族炭化水素含有量が60wt%以上、好ましくは65wt%以上の場合は樹脂的な特性を有し、60wt%未満、好ましくは55wt%以下の場合は弾性的な特性を有する。
ブロック共重合体の製造方法としては、例えば特公昭36−19286号公報、特公昭43−17979号公報、特公昭46−32415号公報、特公昭49−36957号公報、特公昭48−2423号公報、特公昭48−4106号公報、特公昭56−28925号公報、特公昭51−49567号公報、特開昭59−166518号公報、特開昭60−186577号公報などに記載された方法が挙げられる。
これらの方法で得られるブロック共重合体のリビング末端に後述する変性剤を付加反応することにより本発明で使用するブロック共重合体の変性重合体が得られ、例えば下記一般式で表される構造を有する。
(A−B)n−X、 A−(B−A)n−X、
B−(A−B)n−X、 X−(A−B)n、
X−(A−B)n−X、 X−A−(B−A)n−X、
X−B−(A−B)n−X、 [(B−A)n]m−X、
[(A−B)n]m−X、 [(B−A)n−B]m−X、
[(A−B)n−A]m−X
(上式において、Aはビニル芳香族炭化水素を主体とする重合体ブロックであり、Bは共役ジエン系単量体を主体とする重合体ブロックである。AブロックとBブロックとの境界は必ずしも明瞭に区別される必要はない。又、nは1以上の整数、好ましくは1〜5の整数である。mは2以上の整数、好ましくは2〜11の整数である。Xは、後述する官能基を有する原子団が結合している変性剤の残基を示す。Xを後述するメタレーション反応で付加させる場合は、Aブロック及び/又はBブロックの側鎖に結合している)
尚、上記の一般式で示した構造において、ビニル芳香族炭化水素を主体とする重合体ブロックAはビニル芳香族炭化水素を好ましくは50wt%以上、より好ましくは70wt%以上含有するビニル芳香族炭化水素と共役ジエン系単量体との共重合体ブロック又はビニル芳香族炭化水素の単独重合体ブロックであり、ビニル芳香族炭化水素は均一に分布していても、又テーパー状に分布していてもよい。共役ジエン系単量体を主体とする重合体ブロックBは共役ジエン系単量体を好ましくは50wt%を超える量で、より好ましくは60wt%以上含有する共役ジエン系単量体とビニル芳香族炭化水素との共重合体ブロック又は共役ジエン系単量体の単独重合体ブロックである。
また、該変性ブロック共重合体中には、ビニル芳香族炭化水素が均一に分布している部分及び/又はテーパー状に分布している部分がそれぞれ複数個共存していてもよい。本発明で使用する変性ブロック共重合体は、上記一般式で表される変性ブロック共重合体の任意の混合物でもよい。
変性ブロック共重合体に組み込まれているビニル芳香族炭化水素重合体ブロックの割合(ビニル芳香族炭化水素のブロック率という)は、耐摩耗性を重視する場合50wt%未満、好ましくは5〜45wt%、更に好ましくは10〜40wt%にすることが、また成形品の剛性保持の点から50wt%以上、好ましくは50〜97wt%、更に好ましくは60〜95wt%、とりわけ好ましくは70〜92wt%に調整することが推奨される。
ブロック共重合体に組み込まれているビニル芳香族炭化水素のブロック率の測定は、四酸化オスミウムを触媒としてターシャリーブチルハイドロパーオキサイドによりブロック共重合体を酸化分解する方法(I.M.KOLTHOFF,etal.,J.Polym.Sci.1,429(1946)に記載の方法)により得たビニル芳香族炭化水素重合体ブロック成分(但し平均重合度が約10以下のビニル芳香族炭化水素重合体成分は除かれている)を用いて、次の式から求めることができる。
ビニル芳香族炭化水素のブロック率(wt%)
=(ブロック共重合体中のビニル芳香族炭化水素重合体ブロックの重量)
/ブロック共重合体中の全ビニル芳香族炭化水素の重量)×100
本発明において、変性共役ジエン系重合体又は共役ジエン系単量体とビニル芳香族炭化水素からなる変性共重合体中の共役ジエン部分のミクロ構造(シス、トランス、ビニルの比率)は、後述する極性化合物等の使用により任意に変えることができる。ビニル結合含有量は特に限定されないが、共役ジエン系単量体として1,3−ブタジエンを使用した場合には、ビニル結合量は好ましくは5〜90%、より好ましくは10〜80%、共役ジエン系単量体としてイソプレンを使用した場合又は1,3−ブタジエンとイソプレンを併用した場合には、1,2−ビニル結合と3,4−ビニル結合の合計であるビニル結合量は好ましくは3〜80%、より好ましくは5〜70%である。ここで、ビニル結合含有量とは,重合体中に1,2−結合、3,4−結合及び1,4−結合の結合様式で組み込まれている共役ジエン系単量体のうち,1,2−結合及び3,4−結合で組み込まれているものの割合である。変性重合体中のビニル結合は重合体鎖中に均一に分布していても、テーパー状に分布していても、或いはビニル結合の異なる重合体ブロックが2個以上存在しても良い。ビニル結合含有量は後述する極性化合物等の使用により任意に変えることができる。
但し、変性ブロック共重合体の水添物を使用する場合、そのミクロ構造は共役ジエン系単量体として1,3−ブタジエンを使用した場合には、ビニル結合量は好ましくは10〜80%、更に好ましくは25〜75%であり、共役ジエン系単量体としてイソプレンを使用した場合又は1,3−ブタジエンとイソプレンを併用した場合には、1,2−ビニル結合と3,4−ビニル結合の合計であるビニル結合量は好ましくは5〜70%であることが推奨される。変性重合体中の共役ジエン系単量体に基づくビニル結合含有量は、核磁気共鳴装置(NMR)を用いて知ることができる。
共役ジエン系重合体や共役ジエン系単量体とビニル芳香族炭化水素からなる共重合体の製造において、共役ジエン系単量体としてイソプレンと1,3−ブタジエンを併用する場合、イソプレンと1,3−ブタジエンの重量比は好ましくは95/5〜5/95、より好ましくは90/10〜10/90、更に好ましくは85/15〜15/85である。特に、低温特性に優れたゴム組成物を得る場合には、イソプレンと1,3−ブタジエンの重量比は好ましくは49/51〜5/95、より好ましくは45/55〜10/90、更に好ましくは40/60〜15/85であることが推奨される。イソプレンと1,3−ブタジエンを併用すると高温での成形加工においても機械的特性の良好なゴム組成物が得られる。
次に、本発明の成分(2)で使用する変性重合体について説明する。変性重合体は、有機リチウム化合物を重合触媒として得た重合体のリビング末端に官能基含有変性剤を反応させて、官能基含有原子団を付加することで製造することができる。該官能基含有原子団は重合体の少なくとも1つの重合体鎖末端に結合している。
変性重合体に結合している官能基含有原子団の官能基の例として、水酸基、カルボニル基、チオカルボニル基、酸ハロゲン化物基、酸無水物基、カルボキシル基、チオカルボキシル酸基、アルデヒド基、チオアルデヒド基、カルボン酸エステル基、アミド基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、リン酸基、リン酸エステル基、アミノ基、イミノ基、シアノ基、ピリジル基、キノリン基、エポキシ基、チオエポキシ基、スルフィド基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、ハロゲン化ケイ素基、シラノール基、アルコキシシラン基、ハロゲン化スズ基、アルコキシスズ基、フェニルスズ基等からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基が挙げられる。上記の官能基のうち、水酸基、エポキシ基、アミノ基、イミノ基、シラノール基、アルコキシシラン基が特に好ましい。
水酸基、エポキシ基、アミノ基、イミノ基、シラノール基、アルコキシシラン基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する原子団の好ましい例として、下記式(1)〜(14)からなる群より選ばれる式で表される少なくとも1種のものが挙げられる。

上記式(1)〜(14)において、 Nは窒素原子、Siは珪素原子、Oは酸素原子、Cは炭素原子、Hは水素原子を表し、R,Rは各々独立に水素原子又は炭素数1〜24の炭化水素基を表し、且つ、該炭化水素基は、所望により、各々独立に、水酸基、エポキシ基、アミノ基、炭素数1〜24の炭化水素基を有するイミノ基、シラノール基及び炭素数1〜24のアルコキシシラン基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有してもよく、各Rは各々独立に炭素数1〜48の2価の炭化水素基を表し、且つ、所望により、各々独立に、水酸基、エポキシ基、アミノ基、炭素数1〜24の炭化水素基を有するイミノ基、シラノール基及び炭素数1〜24のアルコキシシラン基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有してもよく、各Rは各々独立に水素原子又は炭素数1〜24の炭化水素基を表す。
本発明において、変性重合体に結合している上記の官能基含有原子団を形成するために用いることができる変性剤としては、上記の官能基を有する公知の化合物及び/又は形成し得る公知の化合物を用いることができる。例えば特公平4−39495号公報(米国特許第5,115,035号に対応)に記載された末端変性処理剤を用いることができる、具体的には、下記のものが挙げられる。
上記式(1)〜(6)の官能基を有する変性剤の例としては、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、テトラグリシジル−p−フェニレンジアミン、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルオルソトルイジン、N−(1,3−ジブチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、4−ジ(β−トリメトキシシリルエチル)アミノスチレン、4−ジ(β−トリエトキシシリルエチル)アミノスチレン、4−ジ(γ−トリメトキシシリルプロピル)アミノスチレン、4−ジ(γ−トリエトキシシリルプロピル)アミノスチレンが挙げられる。
上記式(7)の官能基を有する変性剤の例としては、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、ブチロラクトン、γ−カプロラクトン、γ−バレロラクトンなどの環状ラクトンが挙げられる。
上記式(8)の官能基を有する変性剤の例としては、4−メトキシベンゾフェノン、4−エトキシベンゾフェノン、4,4’−ビス(メトキシ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(エトキシ)ベンゾフェノン、γ−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
上記式(9)及び(10)の官能基を有する変性剤の例としては、γ−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリブトキシシランが挙げられる。
上記式(11)の官能基を有する変性剤の例としては、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノンが挙げられる。
上記式(12)の官能基を有する変性剤の例としては、N,N’−ジメチルプロピレンウレア、N−メチルピロリドンなどが挙げられる。
また、上記式(13)及び(14)の官能基を有する原子団を有する変性重合体は、それぞれ、上記式(11)及び(12)の官能基含有原子団を有する非水添変性重合体を水添することによって得られる。
本発明の成分(2)で使用する変性重合体の水添物は、重合体を変性してから水添することによっても製造できるし、重合体を水添した後、変性することによっても製造できる。たとえば、重合体を変性してから水添する場合、有機リチウム化合物を重合触媒として用いて得られた重合体のリビング末端に、上記の変性剤と反応させることにより変性重合体を得、得られた変性重合体を水添することにより、水添物の変性重合体が得られる。
また、本発明の成分(2)で使用する変性重合体を得る他の方法として、重合体に有機リチウム化合物等の有機アルカリ金属化合物を反応(メタレーション反応)させ、有機アルカリ金属化合物が付加した重合体を得、これに上記の変性剤を付加反応させる方法が挙げられる。この場合は、重合体の水添物を得た後にメタレーション反応させ、上記の変性剤を反応させて水添物の変性重合体を得ることもできる。
なお、変性剤の種類により、変性剤を反応させた段階で水酸基やアミノ基等は有機金属塩となっていることもあるが、その場合には水やアルコールなどの活性水素を有する化合物で処理することにより、水酸基やアミノ基等にすることができる。
本発明において、変性反応をおこなう際の反応圧力は特に限定されるものではないが、通常0.2〜2MPaであり、好ましくは0.3〜1MPaである。反応温度は、0〜150℃の範囲が好ましく、より好ましくは20〜120℃、更に好ましくは50〜100℃の範囲である。変性反応に要する時間は、一般に調整する際の反応温度に左右されるが1秒から10時間の範囲であり、好ましくは1秒〜3時間の範囲である。
本発明においては、重合体に変性剤を反応させた後に変性されていない重合体が変性重合体に混在していてもよい。変性重合体に混在する未変性の重合体の量は、変性重合体の重量に対して好ましくは70重量%以下、より好ましくは60重量%以下、更に好ましくは50重量%以下である。
本発明において、変性重合体の水添物は、上記で得られた変性重合体を水素添加することにより得られる。水添触媒としては、特に制限されず、従来から公知である(1)Ni、Pt、Pd、Ru等の金属をカーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等に担持させた担持型不均一系水添触媒、(2)Ni、Co、Fe、Cr等の有機酸塩又はアセチルアセトン塩などの遷移金属塩と有機アルミニウム等の還元剤とを用いる、いわゆるチーグラー型水添触媒、(3)Ti、Ru、Rh、Zr等の有機金属化合物等のいわゆる有機金属錯体等の均一系水添触媒が用いられる。
具体的な水添触媒としては、特公昭42−8704号公報、特公昭43−6636号公報、特公昭63−4841号公報、特公平1−37970号公報、特公平1−53851号公報、特公平2−9041号公報に記載された水添触媒を使用することができる。好ましい水添触媒としてはチタノセン化合物および/または還元性有機金属化合物との混合物があげられる。チタノセン化合物としては、特開平8−109219号公報に記載された化合物が使用できるが、具体例としては、ビスシクロペンタジエニルチタンジクロライド、モノペンタメチルシクロペンタジエニルチタントリクロライド等の(置換)シクロペンタジエニル骨格、インデニル骨格あるいはフルオレニル骨格を有する配位子を少なくとも1つ以上もつ化合物があげられる。また、還元性有機金属化合物としては、有機リチウム等の有機アルカリ金属化合物、有機マグネシウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機ホウ素化合物あるいは有機亜鉛化合物等があげられる。
水添反応は好ましくは0〜200℃、より好ましくは30〜150℃の温度範囲で実施される。水添反応に使用される水素の圧力は、好ましくは0.1〜15MPa、より好ましくは0.2〜10MPa、更に好ましくは0.3〜5MPaが推奨される。また、水添反応時間は好ましくは3分〜10時間、より好ましくは10分〜5時間である。水添反応は、バッチプロセス、連続プロセス、或いはそれらの組み合わせのいずれでも用いることができる。
本発明に使用される変性重合体の水添物において、共役ジエン系単量体単位に基づく不飽和二重結合のトータル水素添加率は目的に合わせて任意に選択でき、特に限定されない。熱安定性及び耐候性の良好な変性重合体の水添物を得る場合、変性重合体中の共役ジエン系単量体単位に基づく不飽和二重結合の70%以上、好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上が水添されていていることが推奨される。また、一部のみが水添されていても良い。一部のみを水添する場合には、水添率が10%以上70%未満、或いは15%以上65%未満、所望によっては20%以上60%未満にすることが好ましい。更に、水素添加前の共役ジエン系単量体に基づくビニル結合の水素添加率は、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上であることが、熱安定性に優れたゴム組成物を得る上で推奨される。ここで、ビニル結合の水素添加率とは、変性重合体中に組み込まれている水素添加前の共役ジエン系単量体に基づくビニル結合のうち水素添加されたビニル結合の割合をいう。なお、変性ランダム共重合体や変性ブロック共重合体中のビニル芳香族炭化水素に基づく芳香族二重結合の水添率については特に制限はないが、好ましくは50%以下、より好ましくは30%以下、更に好ましくは20%以下が推奨される。水添率は、核磁気共鳴装置(NMR)により知ることができる。
次に、本発明において、マスターバッチの調整で使用する変性重合体に結合している官能基と反応性を有する化合物(4)を反応させた二次変性重合体を用いることもできる。二次変性重合体とは、化合物(4)である二次変性剤を本発明の変性重合体と反応させることによって得られるものであって、該二次変性剤は該変性重合体の官能基と反応性を有する官能基を有する化合物である。
化合物(4)である二次変性剤の官能基の好ましい例として、カルボキシル基、酸無水物基、イソシアネート基、エポキシ基、シラノール基及びアルコキシシラン基から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。上記の官能基を少なくとも2個以上有している二次変性剤が特に好ましい。但し、官能基が酸無水物基である場合は、酸無水物基を1個のみ有する二次変性剤も特に好ましい。変性重合体に二次変性剤を反応させる場合の二次変性剤の量は、変性重合体に結合されている官能基1当量あたり、通常0.3〜10モル、好ましくは0.4〜5モル、更に好ましくは0.5〜4モルの範囲である。
変性重合体に二次変性剤を反応させる方法は、特に制限されるものではないが公知の方法が利用できる。例えば、後述する溶融混練方法や各成分を溶媒等に溶解又は分散混合して反応させる方法などが挙げられる。各成分を溶媒等に溶解又は分散混合して反応させる方法において、溶媒としては各成分を溶解又は分散するものであれば特に限定はなく、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素などの炭化水素溶媒の他、含ハロゲン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒などが使用できる。かかる方法において変性重合体に二次変性剤を反応させる温度は、通常−10〜150℃、好ましくは30〜120℃である。反応に要する時間は一般に調整する際の反応温度に左右されるが、通常3時間以内であり、好ましくは数秒〜1時間である。特に好ましい方法は、製造した変性重合体の溶液中に二次変性剤を添加して反応させることにより二次変性重合体を得る方法である。
次に二次変性剤の具体例について説明する。カルボキシル基を有する二次変性剤の例としては、マレイン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、カルバリル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸等の脂肪族カルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、トリメシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族カルボン酸が挙げられる。
酸無水物基を有する二次変性剤の例としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水ピロメリット酸、シス−4−シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキシテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物が挙げられる。
イソシアナート基を有する二次変性剤の例としては、トルイレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、多官能芳香族イソシアナート(即ちイソシアナート基が3個以上芳香族環に結合した化合物)等が挙げられる。
エポキシ基を有する二次変性剤の例としてはテトラグリジジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、エチレングリコールジグリシジル、プロピレングリコールジグリシジル、テレフタル酸ジグリシジルエステルアクリレート等が挙げられる。
シラノール基を有する二次変性剤の例としては、変性重合体を得るために使用される変性剤として記載した上記のアルコキシシラン化合物の加水分解物等が挙げられる。
アルコキシシラン基を有する二次変性剤の例としては、ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)−テトラスルファン、ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)−ジスルファン、エトキシシロキサンオリゴマーが挙げられる。
また、反応性を有する官能性オリゴマーも二次変性剤として使用することもできる。官能性オリゴマーの官能基は、変性重合体に結合している官能基と反応性を有する官能基であれば、特に限定はない。官能性オリゴマーの好ましい例として、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、酸無水物基、イソシアネート基、エポキシ基、シラノール基、アルコキシシラン基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基を有する官能性オリゴマーが挙げられる。これらの官能性オリゴマーの数平均分子量は、通常300以上で3,0000未満、好ましくは500以上で15,000未満、更に好ましくは1,000以上で20,000未満である。官能性オリゴマーの具体例としては、上記官能基を少なくとも1個有するブタジエンオリゴマーまたはその水添物、上記官能基を少なくとも1個有するイソプレンオリゴマーまたはその水添物、上記官能基を少なくとも1個有するエチレンオリゴマー、上記官能基を少なくとも1個有するプロピレンオリゴマー、エチレンオキサイドオリゴマー、プロピレンオキサイドオリゴマー、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合オリゴマー、スチレン−無水マレイン酸共重合体オリゴマー、エチレン−酢酸ビニル共重合オリゴマーのケン化物等が挙げられる。
本発明において特に好ましい二次変性剤の例として、カルボキシル基を2個以上有するカルボン酸又はその酸無水物、或いは酸無水物基、イソシアネート基、エポキシ基、シラノール基、アルコキシシラン基を2個以上有す変性剤であり、具体例として、無水マレイン酸、無水ピロメリット酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、トルイレンジイソシアナート、テトラグリジジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)−テトラスルファン、スチレン−無水マレイン酸共重合体オリゴマー等が挙げられる。
また、成分(2)のマスターバッチを調整する際に、変性重合体と無機充填剤の他に上記の化合物(4)である二次変性剤を添加することができる。二次変性剤の量は、当該変性重合体100重量部に対して0.01〜20重量部、好ましくは0.02〜10重量部、更に好ましくは0.05〜7重量部の範囲である。
本発明の成分(2)で使用する変性重合体又は二次変性重合体の重量平均分子量は、ゴム組成物の機械的強度及び耐摩耗性の点から3万以上、加工性の点から120万以下であることが好ましく、より好ましくは5万〜100万、更に好ましくは10〜80万の範囲である。変性重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定を行い、クロマトグラムのピークの分子量を、市販の標準ポリスチレンの測定から求めた検量線(標準ポリスチレンのピーク分子量を使用して作成)を使用して求めることができる。
上記のようにして得られた変性重合体の溶液は、必要に応じて触媒残渣を除去し、変性重合体を溶液から分離することができる。溶媒の分離の方法としては、例えば重合後又は水添後の溶液にアセトンまたはアルコール等の重合体に対する貧溶媒となる極性溶媒を加えて重合体を沈澱させて回収する方法、変性重合体の溶液を撹拌下熱湯中に投入し、スチームストリッピングにより溶媒を除去して回収する方法、または直接重合体溶液を加熱して溶媒を留去する方法等を挙げることができる。尚、本発明で使用する変性重合体又はその水添物には、各種フェノール系安定剤、リン系安定剤、イオウ系安定剤、アミン系安定剤等の安定剤を添加することができる。
本発明において、成分(2)のマスターバッチの原料として用いられる無機充填剤又は成分(3)の無機充填剤は、公知の補強性充填剤、例えば、天然シリカ、湿式法又は乾式法で製造した合成シリカ、カオリン、マイカ、タルク、クレイ、モンモリロナイト、ゼオライト、天然ケイ酸塩、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等の合成ケイ酸塩、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等の金属水酸化物、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛等の金属酸化物、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、種々の表面処理炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの金属炭酸化物、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム等の金属硫酸化物、アルミニウム、ブロンズ等の金属粉、カーボンブラック等の少なくとも1種の成分である。好ましい無機充填剤として、シリカ系無機充填剤、金属酸化物、金属水酸化物、カーボンが挙げられる。上記の無機充填剤を単独で使用しても良いし、2種類以上を組み合わせて使用することもできる。
シリカ系無機充填剤とは化学式SiO2を構成単位の主成分とする固体粒子のことをいい、例えばシリカ、クレイ、タルク、マイカ、珪藻土、ウォラストナイト、モンモリロナイト、ゼオライト、ガラス繊維等の無機繊維状物質などを用いることができる。また表面を疎水化したシリカ系無機充填剤や、シリカ系無機充填剤とシリカ系以外の無機充填剤の混合物も使用できる。本発明においてはシリカが好ましい。シリカとしては乾式法ホワイトカーボン、湿式法ホワイトカーボン、合成ケイ酸塩系ホワイトカーボン、コロイダルシリカと呼ばれているもの等が使用できる。これらは粒径が0.01〜150μmのものが好ましい。また本発明の組成物において、シリカが組成物中に分散し、シリカの添加効果を十分に発揮するためには、平均分散粒子径0.05〜1μmが好ましく、より好ましくは0.05〜0.5μmである。
次に金属酸化物とは、化学式MxOy(Mは金属原子、x、yは各々1〜6の整数)を構成単位の主成分とする固体粒子のことをいい、例えばアルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛等を用いることができる。また金属酸化物と金属酸化物以外の無機充填剤の混合物も使用できる。また本発明で用いる金属水酸化物は、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム、水和珪酸アルミニウム、水和珪酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、酸化錫の水和物、硼砂等の無機金属化合物の水和物等、水和系無機充填材であり、中でも水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムが好ましい。
カーボンブラックとしては、FT、SRF、FEF、HAF、ISAF、SAF等の各クラスのカーボンブラックが使用でき、窒素吸着比表面積が50mg/g以上、DBP吸油量が80ml/100gのカーボンブラックが好ましい。
本発明において、成分(2)のマスターバッチの調整に使用する無機充填剤の量は、変性重合体100重量部に対して5〜300重量部、好ましくは5〜200重量部、更に好ましくは10〜150重量部の範囲である。無機充填剤の量が300重量部を超えると、無機充填剤の分散性が劣りマスターバッチの加工性が悪くなる。また、5重量部未満では本発明の効果である接着性が劣る。
また、本発明において成分(3)の無機充填剤の配合量は、成分(1)のゴム状重合体100重量部に対し0.1〜150量部、好ましくは5〜100重量部、更に好ましくは5〜50量部である。無機充填剤の配合量が150重量部を超えると無機充填剤の分散性が劣り、加工性及び機械強度が劣るため好ましくない。
本発明の履物用ゴム組成物の製造にシリカ系無機充填剤を用いた場合、シランカップリング剤を使用することができる。シランカップリング剤は、ゴム状重合体と無機充填剤の相互作用を緊密にするためのものであり、ゴム状重合体と無機充填剤とにそれぞれ親和性あるいは結合性の基を有しているものである。具体的には、ビス−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−テトラスルフィド、ビス−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−ジスルフィド、ビス−[2−(トリエトキシシリル)−エチル]−テトラスルフィド、3−メルカプトプロピル−トリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等があげられる。
好ましいシランカップリング剤は、アルコキシシランを有すると同時に硫黄が2個以上連結したポリスルフィド結合を有するものであり、その例としてはビス−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−テトラスルフィド、ビス−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−ジスルフィドなどがあげられる。シランカップリング剤の配合量は、補強性充填剤に対して、0.1〜30重量%、好ましくは0.5〜20重量%、更に好ましくは1〜15重量%である。
本発明の成分(2)のマスターバッチにおいて、無機充填剤と親和性が高い官能基が結合している変性重合体を使用することで、無機充填剤の表面に存在する官能基と変性重合体との間で、化学的な結合や水素結合等の物理的な相互作用が効果的に発現され、引き裂き強度、耐摩耗性、接着性に優れた履物用ゴム組成物を得ることができる。
本発明の成分(2)であるマスターバッチの製造方法は、特に制限されるものではなく公知の方法が利用できる。例えば、バンバリ−ミキサ−、単軸スクリュー押出機、2軸スクリュ−押出機、コニ−ダ、多軸スクリュー押出機、ロール等の一般的な混合機を用いた混練方法、各成分を溶解、混合した後、溶剤を加熱除去する方法等が用いられる。好ましい方法はバンバリーミキサー、コニーダーで各成分を混練する方法である。
マスターバッチを製造するにあたり、変性重合体及び無機充填剤の添加順序には制限が無く、全成分を一度に混練機に入れて混合する方法、各成分を2回以上分割して混合機に入れて順次混練する方法、変性重合体を混練機に入れて混練し、その後無機充填剤を加えて混練する方法、無機充填剤を混練機に入れて混練し、その後変性重合体を加えて混練する方法、無機充填剤を連続的に混練機に入れて混練する方法等が採用できる。
マスターバッチを製造する際の混練温度は、変性重合体の劣化や変性重合体と無機充填剤の相互作用を促進し無機充填剤の分散性の良いマスターバッチを得る為に、一般に80〜300℃が好ましく、より好ましくは130〜250℃、更に好ましくは150〜220℃の範囲である。また、混練時間は、無機充填剤の分散性、マスターバッチの生産性、変性重合体の劣化等の点から、一般に0.2〜60分が好ましく、より好ましくは0.5〜30分、更に好ましくは1〜20分の範囲である。
特に好ましい方法は、無機充填剤の全量を予め混練機に入れて混練し、次いで変性重合体を加えて混練して製造する方法、無機充填剤を2回以上分割して混練機に投入して変性重合体と無機充填剤を混練して製造する方法である。
無機充填剤を2回以上分割して混練機に入れる方法としては、マスターバッチを製造する工程の煩雑さを考慮すると、無機充填剤を2〜10回に分割して添加することが好ましく、特に2〜5回に分割して添加する方法が好ましい。具体的には、無機充填剤の20〜80重量%、好ましくは30〜80重量%、更に好ましくは40〜80重量%を予め混練機に投入し、混練時間を1秒〜60分、好ましくは0.5分〜30分、更に好ましくは1分〜20分の範囲で混練した後、変性重合体を入れて混練時間を1秒〜60分、好ましくは20秒〜30分、更に好ましくは1分〜20分の範囲で混練し、次いで残りの無機充填剤を加えて、混練時間を1秒〜60分、好ましくは0.5分〜30分、更に好ましくは1分〜20分の範囲で混練して製造する方法である。もう一つの好ましい方法として、無機充填剤の全量を予め混練機に投入し、混練時間を1秒〜60分、好ましくは0.5分〜30分、更に好ましくは1分〜20分の範囲で混練した後、変性重合体を入れて混練時間を1秒〜60分、好ましくは0.5分〜30分、更に好ましくは1分〜20分の範囲で混練して製造する方法がある。
特に好ましい形態のマスターバッチを調整する為に最も重要なことは、無機充填剤5〜300重量部の少なくとも20重量%以上を予め混練機に入れ、温度を50〜300℃、好ましくは70〜250℃、更に好ましくは100〜200℃の範囲で混練し、その後残りの成分を入れて混練することでマスターバッチを調整することである。
本発明の履物用ゴム組成物は、ゴム状重合体(成分1)及びマスターバッチ(成分2)、又はゴム状重合体(成分1)及びマスターバッチ(成分2)及び無機充填剤(成分3)を含むゴム組成物である。マスターバッチの量は、ゴム状重合体(成分1)100重量部に対して1〜150重量部、好ましくは5〜100重量部、更に好ましくは10〜70重量部の範囲である。
本発明の履物用ゴム組成物の製造方法は、特に制限されるものではなく、公知の方法が利用できる。例えば、バンバリ−ミキサ−、単軸スクリュー押出機、2軸スクリュ−押出機、コニ−ダ、多軸スクリュー押出機等の一般的な混和機を用いた混練方法等が用いられる。
また本発明の履物用ゴム組成物を製造するにあたり、各成分の添加順序には制限が無く、成分(1)、成分(2)、成分(3)を一度に混練機に入れて混練する方法、任意の成分を予備混合した後、残りの成分を添加する等の方法が採用できる。混練温度は、ゴム状重合体や変性重合体の熱劣化の点から、50〜300℃が好ましく、より好ましくは70〜250℃、更に好ましくは100〜200℃である。また、混練時間は、無機充填剤の分散性やゴム組成物の生産性、変性重合体やゴム状重合体の劣化等の点から、一般に0.2〜60分が好ましく、より好ましくは0.5〜30分、更に好ましくは1〜20分の範囲である。
本発明の履物用ゴム組成物は、変性重合体と無機充填剤を上記に示した特定の製造方法で混練して得られる無機フィラーの分散性に優れるマスターバッチを用いることに特徴がある。従来から行われているゴム状重合体又は変性重合体と無機充填剤とを混練して得られる履物用ゴム組成物と比較して、無機充填剤の分散性が向上したことによって耐摩耗性と接着性に優れる履物用ゴム組成物を得ることができる。ゴム組成物中の無機充填剤の分散性は、透過型電子顕微鏡や走査型プローブ顕微鏡装置等を用いることによって確認することができる。
本発明において、その他必要に応じて任意の添加剤を配合することができる。添加剤の種類は、ゴム状重合体の配合に一般的に用いられるものであれば特に制限はない。亜鉛華、ステアリン酸、加硫助剤、老化防止剤、加工助剤、ベヘニン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、エチレンビスステアロアミド等の滑剤、離型剤、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル、パラフィン、有機ポリシロキサン、ミネラルオイル等の軟化剤・可塑剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系熱安定剤等の酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、難燃剤、帯電防止剤、有機繊維、ガラス繊維、炭素繊維、金属ウィスカー等の補強剤、着色剤、その他添加剤或いはこれらの混合物、「ゴム・プラスチック配合薬品」(ラバーダイジェスト社編)などに記載されたものが挙げられる。
【実施例】
本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
[スチレン・ブタジエンゴムの分析方法]
(1)結合スチレン量
紫外分光光度計(日本分光社製 V−520 UV)で、標準ポリスチレンのUV吸収強度と比較して求めた。
(2)ブタジエン中の1,2ビニル結合量
赤外分光光度計(日本分光社製 V−520 UV)で測定しハンプトン法で求めた。
(3)分子量
GPC(装置:島津製作所社製LC10、カラム:島津製作所社製Shimpac GPC805+GPC804+GPC804+GPC803)で測定した。溶媒にはテトラヒドロフランを用い、測定条件は、温度35℃で行った。分子量は、クロマトグラムのピークの分子量を、市販の標準ポリスチレンの測定から求めた検量線(標準ポリスチレンのピーク分子量を使用して作成)を使用して求めた重量平均分子量である。
(4)未変性重合体の割合
テトラヒロドロフラン20mlに変性重合体10mgと重量平均分子量8000の低分子量内部標準ポリスチレン10mgを溶解して試料溶液とした。試料溶液について、上記(3)と同様の方法でGPC測定を行い、得られたクロマトグラムから標準ポリスチレンに対する変性重合体の比(i)を求めた。また、上記試料溶液について、米国デュポン社製のカラムであるZorbax(シリカ系ゲル充填剤)のカラムを用いた以外、上記(3)と同様の方法でGPC測定を行い、クロマトグラムを得た。変性した重合体はシリカ系ゲルを充填剤としたGPCカラムに吸着するが、未変性の重合体は該GPCカラムには吸着しないので、得られたクロマトグラムからは、標準ポリスチレンに対する未変性重合体の比(ii)を求めることができる。上記の比(i)及び比(ii)から、変性反応後の共重合体中の変性重合体の割合(%)を式:(1−比(ii)/比(i))X100によって計算した。
[ゴム状重合体組成物の物性測定]
(1)引張試験
JIS K6251に準拠し、23℃恒温室で測定した。
(2)引き裂き試験
JIS K6252に準拠し、23℃恒温室で測定した。
(3)硬度の測定
高分子計器(株)製 ASKER硬度計 型式Cを使用して、23℃恒温室で測定した。
(4)透明性
日本電色工業(株)製HAZEメーター、NDH−1001DP型を使用し、厚さ5mmの板サンプルのHAZE値と全光線透過率を測定した。
(5)耐摩耗性指数
アクロン型試験機で、サンプルの摩耗減量を測定し、下記式で求められる指数を耐摩耗性の指標として求めた。
指数=〔(サンプルの摩耗減量)/(標準サンプルの摩耗減量)〕×100
(6)接着性試験
水性プライマー(AQUACE PR−503)及び水性接着剤(AQUACE W−06)を用いて、ゴム組成物と被着体(レザー、ナイロン、EVA)を接着させた後の剥離強度を測定した。
[ジエン系重合体の調製]
(SBR−Aの製造)
窒素置換した攪拌機付き10Lオートクレーブに精製したシクロヘキサン5.5kgとスチレンモノマー0.40kg及び1,3−ブタジエン0.45kgを入れ、攪拌しながら温度を60℃まで昇温してテトラヒドロフラン32gとn−ブチルリチウム0.83g(15%シクロヘキサン溶液)を添加して重合反応を開始した。重合の途中から最高温度の92℃になるまでの5分間1,3−ブタジエン0.15kgを重合系中に連続して添加した。 重合の最高温度から1分後に、重合開始剤として使用したn−ブチルリチウムに対して、0.38モルのテトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンを添加して反応させてSBR−Aを得た。その後、重合体溶液に安定剤として2,6−ジ−tertブチル−4−メチルフェノールをゴム100重量部当たり0.5重量部添加し、ドラムドライヤーで脱溶媒、乾燥して仕上げた。得られたポリマーを分析したところ,スチレン含有量は40重量%、ブタジエン部のビニル結合含量は33重量%であった。ブロックスチレン量の分析値よりスチレンのブロックは存在していなかった。また、重量平均分子量は49.3万、変性率は71%であった。
(SBR−Bの製造)
窒素置換した攪拌機付き10Lオートクレーブに精製したシクロヘキサン5.5kgとスチレンモノマー0.40kg及び1,3−ブタジエン0.45kgを入れ、攪拌しながら温度を60℃まで昇温してテトラヒドロフラン32gとn−ブチルリチウム0.83g(15%シクロヘキサン溶液)を添加して重合反応を開始した。重合の途中から最高温度の92℃になるまでの5分間1,3−ブタジエン0.15kgを重合系中に連続して添加した。 重合の最高温度から1分後に、重合開始剤として使用したn−ブチルリチウムに対して、1モルの1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを添加して反応させてSBR−Bを得た。その後、重合体溶液に安定剤として2,6−ジ−tertブチル−4−メチルフェノールをゴム100重量部当たり0.5重量部添加し、ドラムドライヤーで脱溶媒、乾燥して仕上げた。得られたポリマーを分析したところ,スチレン含有量は40重量%、ブタジエン部のビニル結合含量は33重量%であった。ブロックスチレン量の分析値よりスチレンのブロックは存在していなかった。また、重量平均分子量は49.1万、変性率は80%であった。
(SBR−Cの製造)
上記で得られたSBR−B:180gに2次変性剤である無水マレイン酸をO.1gブレンドし、温度制御装置を付属した密閉混練機(内容量0.3リットル)を使用し、混練温度100℃、混練時間3分の条件で混練することで二次変性重合体を得た。
(SBR−Dの製造)
窒素置換した攪拌機付き10Lオートクレーブに精製したシクロヘキサン5.5kgとスチレンモノマー0.40kg及び1,3−ブタジエン0.45kgを入れ、攪拌しながら温度を60℃まで昇温してテトラヒドロフラン32gとn−ブチルリチウム0.83g(15%シクロヘキサン溶液)を添加して重合反応を開始した。重合の途中から最高温度の89℃になるまでの5分間1,3−ブタジエン0.15kgを重合系中に連続して添加した。 最高温度が89℃になり3分後に重合体溶液を抜き出しn−ブチルリチウムの10倍モルの水で失活してSBR−Cを得た。その後、重合体溶液に安定剤として2,6−ジ−tertブチル−4−メチルフェノールをゴム100重量部当たり0.5重量部添加し、ドラムドライヤーで脱溶媒、乾燥して仕上げた。得られたポリマーを分析したところ,スチレン含有量は40重量%、ブタジエン部のビニル結合含量は33重量%であった。ブロックスチレン量の分析値よりスチレンのブロックは存在していなかった。また、重量平均分子量は48.5万であった。
[マスターバッチの作製]
(MB−1)
外部より循環水による温度制御装置を付属した密閉混練機(内容量1.7リットル)を使用し、充填率65%、ローター回転数66/77rpmの条件で、最初に25部のシリカを混練機に投入し4分間混練した。次いで重合体75部及びステアリン酸0.15部を投入して4分間混練を続けた。排出後のゴム組成物の温度は170℃であった。冷却後、50℃に設定したオープンロールにて再度混練して重合体/シリカのマスターバッチを作製した。表1に配合処方を示す。
(MB−2、3、4、6)
外部より循環水による温度制御装置を付属した密閉混練機(内容量1.7リットル)を使用し、充填率65%、ローター回転数66/77rpmの条件で、最初に12.5部のシリカを混練機に投入し4分間混練した。次いで重合体75部及びステアリン酸0.15部を投入し3分間混練した後、更にシリカ12.5部を投入し3分間混練を続けた。排出後のゴム組成物の温度は170℃であった。冷却後、50℃に設定したオープンロールにて再度混練して重合体/シリカのマスターバッチを作製した。表1に配合処方を示す。
(MB−5)
外部より循環水による温度制御装置を付属した密閉混練機(内容量1.7リットル)を使用し、充填率65%、ローター回転数66/77rpmの条件で、シリカ25部及び重合体75部及びステアリン酸0.15部を投入して5分間混練を続けた。排出後のゴム組成物の温度は170℃であった。冷却後、50℃に設定したオープンロールにて再度混練して重合体/シリカのマスターバッチを作製した。表1に配合処方を示す。
[実施例1〜5]
外部より循環水による温度制御装置を付属した密閉混練機(内容量1.7リットル)を使用し、充填率65%、ローター回転数66/77rpmの条件で、表2に示す配合処方で各成分を一括して混練機に投入し混練することでゴム組成物を得た。排出後の温度は161℃であった。こうして得られたゴム組成物を70℃に設定したオープンロールにて硫黄、加硫促進剤を入れ混練した後、160℃で20分間加硫して試験片を作製した。表2に加硫物の物性を示す。本発明の変性重合体とシリカのマスターバッチを用いて作製したゴム組成物は、引き裂き強度と耐摩耗性に優れることがわかる。
[比較例1〜2]
実施例1と同様の方法により、表2に示す配合処方で各成分を一括して混練機に投入し混練することでゴム状重合体組成物を得た。排出後の温度は160℃であった。こうして得られたゴム組成物を70℃に設定したオープンロールにて硫黄、加硫促進剤を入れ混練した後、160℃で20分間加硫して試験片を作製した。表2に加硫物の物性を示す。
[実施例6〜12]
外部より循環水による温度制御装置を付属した密閉混練機(内容量1.7リットル)を使用し、充填率65%、ローター回転数66/77rpmの条件で、表3に示す配合処方で各成分を一括して混練機に投入し混練することでゴム組成物を得た。排出後の温度は160℃であった。こうして得られたゴム組成物を70℃に設定したオープンロールにて硫黄、加硫促進剤を入れ混練した後、160℃で20分間加硫して試験片を作製した。表3に加硫物の接着強度を示す。本発明の変性重合体とシリカのマスターバッチを用いて作製したゴム組成物は、接着性に優れることがわかる。
[比較例3〜4]
実施例6と同様の方法により、表3に示す配合処方で各成分を一括して混練機に投入し混練することでゴム組成物を得た。こうして得られたゴム組成物を70℃に設定したオープンロールにて硫黄、加硫促進剤を入れ混練した後、160℃で20分間加硫して試験片を作製した。



本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
本出願は、2003年10月29日出願の日本特許出願(特願2003−369255)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
本発明の履物用ゴム組成物は、優れた引き裂き強度と耐摩耗性を有し、更に靴の材料であるナイロン、レザー、EVAとの接着性に極めて優れる。本発明の組成物は、これらの特徴を生かして各種シューズのソール材として極めて有効な材料である。また、各種形状の成型品に加工でき、自動車部品(自動車内装材料、自動車外装材料)、食品包装容器などの各種容器、家電用品、医療機器部品、工業部品、玩具等に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(1)ゴム状重合体:100重量部;及び
成分(2)共役ジエン系重合体又は共役ジエン系単量体とビニル芳香族炭化水素からなる共重合体又はそれらの水添物に官能基含有原子団が少なくとも1個結合している変性重合体から選ばれる少なくとも1種の変性重合体100重量部に無機充填剤5〜300重量部を混練して得られるマスターバッチ:1〜150重量部
を含む履物用ゴム組成物。
【請求項2】
成分(2)が無機充填剤5〜300重量部の全量を予め混練機に投入して混練し、次いで変性重合体を加えて混練して得られるマスターバッチである請求項1に記載の履物用ゴム組成物。
【請求項3】
成分(2)が無機充填剤5〜300重量部を2回以上分割して混練機に投入して順次混練して得られるマスターバッチである請求項1に記載の履物用ゴム組成物。
【請求項4】
成分(2)が無機充填剤の20〜80重量%を予め混練機に投入して混練し、次いで変性重合体を加え混練し、更に当該無機充填剤の残量を加えて混練したマスターバッチである請求項1に記載の履物用ゴム組成物。
【請求項5】
成分(3)として、更に無機充填剤を0.1〜150重量部含む請求項1に記載の履物用ゴム組成物。
【請求項6】
変性重合体の官能基含有原子団が、水酸基、エポキシ基、アミノ基、イミノ基、シラノール基、アルコキシシラン基から選ばれる官能基を少なくとも1個有する原子団である請求項1に記載の履物用ゴム組成物。
【請求項7】
変性重合体が、下記式(1)〜(14)から選ばれる原子団が少なくとも1個結合している変性重合体である請求項1に記載の履物用ゴム組成物。

(上記式(1)〜(14)において、 Nは窒素原子、Siは珪素原子、Oは酸素原子、Cは炭素原子、Hは水素原子を表し、R,Rは各々独立に水素原子又は炭素数1〜24の炭化水素基を表し、且つ、該炭化水素基は、所望により、各々独立に、水酸基、エポキシ基、アミノ基、炭素数1〜24の炭化水素基を有するイミノ基、シラノール基及び炭素数1〜24のアルコキシシラン基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有してもよく、各Rは各々独立に炭素数1〜48の2価の炭化水素基を表し、且つ、所望により、各々独立に、水酸基、エポキシ基、アミノ基、炭素数1〜24の炭化水素基を有するイミノ基、シラノール基及び炭素数1〜24のアルコキシシラン基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有してもよく、各Rは各々独立に水素原子又は炭素数1〜24の炭化水素基を表す。)
【請求項8】
成分(2)が、当該変性重合体と無機充填剤の混練の際に、更に当該変性重合体に結合している官能基と反応性を有する化合物(4)を当該変性重合体100重量部に対して0.01〜20重量部添加して得られたマスターバッチである請求項1に記載の履物用ゴム組成物。
【請求項9】
成分(2)が、当該変性重合体と無機充填剤の混練物に、更に当該変性重合体に結合している官能基と反応性を有する化合物(4)を当該変性重合体100重量部に対して0.01〜20重量部混練して得られたマスターバッチである請求項1に記載の履物用ゴム組成物。
【請求項10】
成分(2)に使用する変性重合体が、当該変性重合体に結合している官能基と反応性を有する化合物(4)を当該変性重合体に結合していろ官能基1当量あたり0.3〜10モルを用いて反応させた変性重合体である請求項1に記載の履物用ゴム組成物。
【請求項11】
化合物(4)がカルボキシル基、酸無水物基、イソシアネート基、エポキシ基、シラノール基、アルコキシシラン基から選ばれる官能基を有する化合物である請求項8または9に記載の履物用ゴム組成物。
【請求項12】
成分(1)ゴム状重合体:100重量部;及び
成分(2)共役ジエン系重合体又は共役ジエン系単量体とビニル芳香族炭化水素からなる共重合体又はそれらの水添物に官能基含有原子団が少なくとも1個結合している変性重合体から選ばれる少なくとも1種の変性重合体100重量部に無機充填剤5〜300重量部を混練して得られるマスターバッチ:1〜150重量部
を混練する工程を含む履物用ゴム組成物の製造方法。
【請求項13】
成分(2)が無機充填剤5〜300重量部の全量を混練機に投入して混練し、次いで変性重合体を加えて混練して得られるマスターバッチである請求項12に記載の履物用ゴム組成物の製造方法。
【請求項14】
成分(2)が無機充填剤5〜300重量部を2回以上分割して混練機に投入して順次混練して得られるマスターバッチである請求項12に記載の履物用ゴム組成物の製造方法。
【請求項15】
無機充填剤5〜300重量部の全量を混練機に投入して混練し、次いで変性重合体を加えて混練する請求項1に記載のマスターバッチの製造方法。
【請求項16】
無機充填剤の20〜80重量%を予め混練機に投入して混練し、次いで変性重合体を加え混練し、更に当該無機充填剤の残量を加えて混練する請求項1に記載のマスターバッチの製造方法。

【国際公開番号】WO2005/040267
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【発行日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−515070(P2005−515070)
【国際出願番号】PCT/JP2004/016465
【国際出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】