説明

山参又は人参を含む人参類の形成層由来の植物幹細胞株を有効成分として含む後天性免疫不全症の予防又は治療用組成物

本発明は山参又は人参を含む人参類(Panax ginseng)の形成層由来同質的な細胞株、その破砕物、その抽出物及びその培養物のうちいずれかの少なくとも一つを有効成分として含有する後天性免疫不全症(Acquired immunodeficiency syndrom, AIDS)の予防又は治療用組成物に関するものである。本発明による同質的な細胞株、その破砕物、その抽出物及びその培養物は、天然物由来組成物として既存の薬物治療剤の副作用を最小化するため人体に安全であり、かつ効果的にCD4+T細胞等のT細胞の数を増加させ、HIV(human immunodeficiency virus)の数を減少させ、免疫本能に伴う機会的感染、神経機能障害、新生物成長、究極的に死亡に至る危険を防止することから、後天性免疫不全症の予防、治療及び症状の緩和に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、山参(野生の人参)又は人参を含む人参類の形成層由来細胞株、その破砕物、その抽出物及びその培養物のうちいずれかの少なくとも一つを有効成分として含有する後天性免疫不全症の予防又は治療用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
1982年米国ロサンゼルスで後天性免疫不全症症候群(Acquired immunodeficiency syndrom, AIDS)患者が最初に発見されて以来、全世界的にAIDS患者数が増加しており、韓国内においても1985年に米国人AIDS患者が発見されて以来着実に増加しており、治療剤の開発等の対策が深刻に台頭している。
【0003】
ヒト免疫不全ウイルス(以下、HIVとする)は、主に人間のリンパ球を攻撃するウイルスであって外皮(envelope)で覆われており、遺伝物質であるRNAゲノム(genome)をDNAで逆転写させた後、宿主細胞のDNAに挿入させる特性を有していることからレトロウイルスと呼ばれたりもする。HIV構造は、最も内部に遺伝情報であるRNAと逆転写酵素(reverse transcriptase)が存在し、このRNAと逆転写酵素は外皮蛋白質により取り囲まれており、その外側にはgp120とgp41と呼ばれる糖蛋白質を含む脂質膜が保護膜を形成しており、gp120はウイルスがT細胞を認識して浸透するのに決定的な役割を果たすものと知られている。
【0004】
HIVは、CD4細胞膜蛋白質(CD4)がHIV-1ウイルスに対する細胞受容体の役割をするためにCD4+T細胞を標的とする。ウイルスの細胞への進入は細胞内CD4受容体分子と結合するgp120に依存するが、HIV感染はこのような細胞型の枯渇を誘導することにより免疫不能、機会的感染、神経機能障害、新生物の成長、究極的に死亡を引き起こす。
【0005】
急速なHIV感染者及びAIDS患者の増加により米国、フランス、カナダ、日本等、世界各国において治療剤の開発に拍車がかかってきており、今までに知られている抗HIV物質としては米国FDAの許可を得た2,3-azidothymidine(AZT)、dideoxyinosine(ddI)、dideoxycytidine(ddC)等があるが、これらも激しい副作用の発生と共に完全な治療効果を期待するのは非常に難しい実情であって、新たな薬剤の開発が非常に重要な課題として認識されて来た。
【0006】
また、別の治療剤としてHIVのプロテアーゼ阻害剤がある。プロテアーゼ阻害剤はHIVが外皮蛋白質と酵素がすべて付着しているgag蛋白質とgag-pol蛋白質のような前駆蛋白質形態にした後、自体内のプロテアーゼにより分解して外皮蛋白質とプロテアーゼ、逆転写酵素及びインテグラーゼ(integrase)等を製造し、この過程においてプロテアーゼを抑制するとウイルスの複製が中断されることに基づいて開発されたものである。蛋白質分解酵素抑制剤としてはサキナビル(saquinavir)、リトナビル(ritonavir)、インジナビル(indinavir)等が開発され、AIDS患者の治療剤として使用されている。ところが、これもまた糖尿病、溶血、出血、過脂肪血症、脂肪代謝障害等の副作用を有し、治療剤を長期間服用しなければならないために治療剤に対する耐性株が出現して、深刻な問題を引き起こしている。
【0007】
これに対し、本発明者らは、後天性免疫不全症(AIDS)の予防及び治療効果に優れた天然物由来の組成物を開発しようとして鋭意努力した結果、山参及び人参を含む人参類の形成層由来同質的な細胞株、その破砕物、その抽出物及びその培養物が後天性免疫不全症(AIDS)の予防及び治療に優れた効果を有するということを確認し、本発明を完成するようになった。
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、既存の後天性免疫不全症(AIDS)治療剤の副作用を最小化した後天性免疫不全症の予防及び治療活性を示す天然物由来の組成物を提供するところにある。
【0009】
上記のような目的を達成するために、本発明は人参類(Panax ginseng)の形成層から誘導され、次の特性を有する細胞株、その破砕物、その抽出物及びその培養物のうちいずれかの少なくとも一つを含有する後天性免疫不全症(Acquired immunodeficiency syndrom, AIDS)の予防又は治療用組成物を提供する:
(a)先天的未分化状態(innately undifferentiated)である。
【0010】
(b)同質的な細胞株(homogeneous cell line)である。
【0011】
(c)多数個の液胞(vacuole)を有する形態学的特徴を示す。
【0012】
本発明はまた、前記細胞株、その破砕物、その抽出物及びその培養物のうちいずれかの少なくとも一つを含有する後天性免疫不全症の予防又は改善用機能性食品を提供する。
【0013】
本発明はまた、前記細胞株、その破砕物、その抽出物及びその培養物のうちいずれかの少なくとも一つを含有するT細胞を増加させる免疫増進剤を提供する。
本発明はまた、前記細胞株、その破砕物、その抽出物及びその培養物のうちいずれかの少なくとも一つを含有する後天性免疫不全症の予防又は治療用の用途を提供する。
【0014】
本発明はまた、前記細胞株、その破砕物、その抽出物及びその培養物のうちいずれかの少なくとも一つを適用する段階を含む後天性免疫不全症の予防又は治療方法を提供する。
【0015】
本発明の他の特徴及び具現例は、以下の詳細な説明及び添付の特許請求の範囲からさらに明らかになるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明による細胞株の誘導過程(a)と、山参の形成層由来細胞株((b)A)及び人参の子葉由来カロス細胞株(生物資源センター、KCTC PC10224)を示す写真である。
【0017】
【図2】本発明による山参の形成層由来細胞株を投与する前、77日から投与後9日までCD4+T細胞数及びCD4+T細胞数/CD8+T細胞数の比率を示したグラフである。
【0018】
【図3】臨床例14患者に対するHIV-1 RNA検出結果を提示する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
別途に定義されない限り、本明細書において使用された全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術分野において熟練の専門家によって通常理解されることと同一の意味を有する。一般的に、本明細書において使用されている命名法は、本技術分野において十分に知られており、通常使用されるものである。
【0020】
本発明の詳細な説明等で使用される主な用語の定義は次のとおりである。
【0021】
本願において“形成層(cambium)”とは、植物の幹と根が太くなるようにして植物が容積生長するようにする組織である。形成層は、細胞分裂が最も活発に起こる分裂組織であって、植物組織培養の切片体としての使用時、細胞の高速及び大量生産が可能であると報告されている(大韓民国登録特許第533120号)。
【0022】
本願において“破砕物”とは、細胞をdetergent等を利用した化学的方法又は物理的方法等で破砕して得た細胞溶解物を意味し、細胞株の“抽出物”とは、細胞を溶媒に溶かして分離した物質であって、蒸留又は蒸発を利用して濃縮され得る。さらに、本願において“培養物”とは培養された細胞株及び培養液を含む物質であって、このとき培養された細胞株は培養条件によって分化したり有用物質の生産能及び/又は分泌能が向上した細胞株を全て含む概念である。
【0023】
本願において“先天的な未分化状態(innately undifferentiated)”とは、脱分化過程を経て未分化状態で存在するのではなく、本来から分化前の状態を維持することをいう。
【0024】
本願において“T細胞”とは、胸腺由来の免疫において主な役割を果たすリンパ球であって、細胞表面にCD4抗原を発現するCD4+T細胞はヘルパーT細胞(helper T cell)といい、細胞表面にCD8抗原を発現するCD8+T細胞は細胞毒性T細胞(cytotoxic T cell)という。このうち、ヘルパーT細胞は、B細胞の抗体生成や細胞毒性T細胞の活性化を補助する。
【0025】
本発明は一観点において、本発明は人参類(Panax ginseng)の形成層由来同質的な細胞株、その破砕物、その抽出物及びその培養物のうちいずれかの少なくとも一つを有効成分として含有する後天性免疫不全症の予防又は治療用組成物に関するものである。本発明において、人参類(Panax ginseng)は、山参又は人参を含み(Lian M.L. et al., J. Plant Biology, 45: 201, 2002; Han J.Y. et al., J. Plant Biology, 49:26, 2006; Teng W.L. et al., Tissue and Organ Culture, 68:233, 2002)、このとき、本発明において前記山参又は人参は露地人参又は組織培養人参類(不定根及び不定根由来の細胞株)を含む。
【0026】
本発明による人参類の形成層由来細胞株は、(a)先天的未分化状態(innately undifferentiated)である、(b)同質的な細胞株(homogeneous cell line)である、及び(c)多数個の液胞(vacuole)を有する形態学的特徴を示すことを特徴とする。また、更に(a)懸濁培養の際に単細胞レベルで存在する、(b)人参類の形成層以外の組織由来細胞株に比して生物反応基においてせん断応力(shear stress)に対して低い敏感性を有する、及び(c)人参類の形成層以外の組織由来細胞株に比して生長速度が速く、安定的に培養されることを特徴とする。
【0027】
本明細書において、前記同質的な細胞株は、次の段階を含む分離方法により得られたものであることを特徴とし得る。
【0028】
(a) 人参類の形成層含有組織を得る段階。
【0029】
(b)前記得られた形成層含有組織をIAA(Indole-3-acetic acid)又はIBA(Indole-3-butyric acid)を含む培地で培養して形成層由来細胞株を誘導する段階、
このとき、前記培養の遂行中又は培養の前段階或いは後段階において前記形成層含有組織に浸透ストレスを加えることを特徴とする。
【0030】
(c)前記誘導された形成層由来細胞株を回収する段階。
【0031】
このとき、前記(b)段階において、前記浸透ストレスの工程は形成層特異的に細胞株を誘導するためのものであって、好ましくは前記IAA又はIBAを含む培地で培養する前に行って形成層以外の一般組織、即ち皮質(cortex)、師部(phloem)、木部(xylem)、髄(pith)では分裂能を失い、後にIAA又はIBAのように形成層分裂特異的ホルモンを処理して培養する場合に壊死するようにする。このとき、浸透剤は0.5〜2Mの含量で処理し、冷蔵又は常温にて16時間乃至24時間の間浸透ストレスを加えた後、処理した浸透ストレスを取り除くことが好ましいが、浸透剤の濃度、処理時間及び温度は植物体別、組織別の状態に応じて異なり得ることからこれに限定される訳ではない。また、前記(b)段階において、前記IAA又はIBAは0.1〜5mg/lの含量で含まれることが好ましい。
【0032】
また、前記(c)段階は、好ましくは誘導された形成層由来細胞株を2,4-D(2,4-dichlorophenoxyacetic acid)、ピクロラム(picloram)及びIBAのうちいずれかの少なくとも一つを含む培地で増殖させてから、形成層由来細胞株を回収することを特徴とする。このとき、前記2,4-D、ピクロラム及びIBAのうちいずれか一つは好ましくは1〜5mg/L、さらに好ましくは2mg/Lの含量で使用する。
【0033】
本発明で使用した培地は通常の植物組織培養のための培地であって、一例としてN6倍地、SH培地、MS培地、AA培地、LS培地、B5倍地、WPM培地、LP培地、White培地、GD培地、DKW培地、DCR培地等があるが、これに限定される訳ではない。
【0034】
本発明において、前記抽出物は蒸留水、低級アルコール、アセトン、DMSO(Dimethyl Sulfoxide)及びこれらの混合溶媒から構成された群より選ばれた溶媒を利用して抽出されたことを特徴とし得る。このとき、低級アルコールはメタノール、エタノール等、炭素数が1乃至5であるアルコールを意味する。
【0035】
一方、CD4+T細胞は、それらが体内でぶつかる抗原に反応して特異的に認知して増殖し、同時に別の免疫体系細胞を統制するリンフォカイン(lymphokine)として知られている各種蛋白質を放出する。また、CD4+T細胞によるシグナル(signaling)に従い、Bリンパ球細胞が抗原を認知して細胞間の体液に応じて運動する抗原性細菌及びウイルスを中和したり取り除くための特定の抗体を分泌する。同じように、CD4+T細胞からのシグナルに従い、CD8+T細胞(cytotoxic T cell)が活性化して細胞内の病原体に感染した細胞を殺す。これ以外に、CD4+T細胞は感染及び初期悪性腫瘍に対する反応に伴う、ナチュラルキラー細胞(natural killer cell)及び大食細胞として知られている免疫体系細胞の活性化を調節する。
【0036】
AIDSの免疫不全はこのようなCD4+T細胞の重要性を明確に説明するのであり、これらの細胞の欠損のために、AIDS患者から残留するCD4+T細胞の抗原に対する反応は減少するか又は無くなって必須的である免疫調節因子の異常生成が現われる。CD4+T細胞の減少した数及び減少した機能的容量のために、B細胞及び細胞毒性T細胞(CD8+T細胞)の成熟のために直接提供されるそれらの必須の役割を満たすことができないようになる。したがって、HIV(human immunodeficiency virus)に感染した患者をモニタリングするために、CD4+T細胞の数又はパーセントを測定する(Giorgi J.V. et al., Clin. Immunol. Newslett., 10:55, 1990)。
【0037】
これに対し、本発明の実施例では、山参の形成層由来同質的な細胞株を後天性免疫不全症(AIDS)と診断された患者に投与したところ、ヘルパーT細胞であるCD4+T細胞の数が増加することを確認した。これに関し、本発明による人参類の形成層由来同質的な細胞株がHIVウイルスにより減少した免疫性を増加させ、後天性免疫不全症(AIDS)に対する予防及び治療効果があるものと示された。
【0038】
また、本発明の他の実施例では、山参の形成層由来同質的な細胞株を後天性免疫不全症(AIDS)と診断された患者に投与してから、血漿中のHIVのRNA数値を測定した。その結果、本発明による同質的な細胞株の投与により、HIVのRNA数値が有意義に減少することが確認されたのであり、また、投与によりHIVウイルスが検出されなかった患者も確認することができた。このようなHIVの減少又は未検出は、本発明による同質的な細胞株のHIV増殖抑制乃至死滅効果を意味するだけでなく、AIDSの治療の証拠となる。特に、AIDS患者に対する本発明の同質的な細胞株の投与に因るHIVの未検出は、AIDS治療剤として注目に値する結果であって、AIDS完治の可能性を提示する結果である。
【0039】
したがって、本発明では前記同質的な細胞株の破砕物及び抽出物を含有する組成物が後天性免疫不全症の予防及び治療効果を示すことを提示する具体的な実施例がないとしても、前記において察し見たようにその細胞株が後天性免疫不全症の予防及び治療に活性を有することを確認したところ、本発明による同質的な細胞株破砕物又は抽出物を含有する組成物の場合にも後天性免疫不全症の予防及び治療効果を示し得るということは、当業界において通常の知識を有する者に自明であると言える。
【0040】
本発明による同質的な細胞株、その破砕物、その抽出物及びその培養物のうちいずれかの少なくとも一つを含有する後天性免疫不全症の予防又は治療用組成物、CD4+T細胞を増加させる免疫増進剤は、前記同質的な細胞株、その破砕物、その抽出物及びその培養物のうちいずれかの少なくとも一つをそれぞれ単独で含むか又は少なくとも一つの薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤を含んで薬学組成物として提供され得、前記同質的な細胞株、その破砕物、その抽出物及び培養物は疾患及びその重症の程度、患者の年齢、体重、健康状態、性別、投与経路及び治療期間等により適切かつ薬学的に有効な量で薬学組成物に含まれ得る。
【0041】
前記において“薬学的に許容される”とは生理学的に許容され、ヒトに投与される際に通常胃腸障害、めまいのようなアレルギー反応又はこれと類似した反応を引き起こさない組成物をいう。前記担体、賦形剤及び希釈剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルギネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、マグネシウムステアレート及び鉱物油が挙げられる。
【0042】
前記薬学組成物は充填剤、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤及び防腐剤等をさらに含み得る。また、本発明の薬学組成物は哺乳動物に投与された後、活性成分の迅速、持続又は遅い放出を提供することができるように当業界に公知にされている方法を使用して剤形化され得る。剤形は粉末、顆粒、錠剤、エマルション、シロップ、エアロゾル、軟質又は硬質ゼラチンカプセル、滅菌注射溶液、滅菌粉末の形態であり得る。
【0043】
本発明はまた別の観点において、前記人参類の形成層由来同質的な細胞株、その破砕物、その抽出物及びその培養物のうちいずれかの少なくとも一つを含む後天性免疫不全症の予防又は改善用の機能性食品に関するものである。
【0044】
本願において‘機能性食品’とは、一般の食品に本発明による同質的な細胞株、その破砕物、その抽出物及びその培養物を添加することにより、食品の機能性を向上させたことを意味する。
【0045】
実施例
以下、実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明することにする。これらの実施例は専ら本発明を例示するためのものであって、本発明の範囲がこれらの実施例により限定されるものと解釈されないことは、当業界において通常の知識を有する者にとって自明であるはずである。
【0046】
特に、下記実施例では山参の形成層由来同質的な細胞株の後天性免疫不全症(AIDS)の予防及び抑制効果を確認したが、その破砕物又はその抽出物、及びその細胞株を含有する培養物を使用しても同一の結果が得られるということは、当業界において通常の知識を有する者に自明な事実であるといえる。
【0047】
実施例1. 人参類の形成層由来同質的な細胞株の製造
1−1: 植物材料の準備
(1)図1の(a)のAは、本発明において使用した山参の典型的な姿を示す。山参を準備してから、山参の主根部を使用するために流水で外表面に付着している土やそれ以外の汚染物質を取り除き、液体洗剤を利用して主根の表面を洗浄した後、流水に放置した。きれいに洗浄した組織はクリーンベンチ内に準備された滅菌済みのフラスコに入れ、70%のエタノールで30秒乃至1分程度殺菌した。その後、滅菌水ですすいで、1%乃至1.5%の次亜塩素酸ナトリウム(sodium hypochlorite, Junsei, Japan)を利用して5分乃至15分程度で消毒液を処理した。このとき、消毒液が効果的に組織内に浸透するようにするために、TWEEN20(Polyoxyethylenesorbitan monolaurate, Junsei, Japan)を何滴か落として処理した。この過程が終われば、滅菌水で3回乃至5回程度すすいだ。その後に、殺菌処理した組織の褐変化を防止するために抗酸化剤が含まれたBIM(browning inhibition medium)に殺菌済みの主根を入れて30分乃至1時間ほど振盪培養を行い、滅菌済みの濾紙に入れて水気を取り除いた。
【0048】
使用されたBIMの組成及び使用濃度は、表1のとおりである。
【0049】
【表1】

【0050】
ここで、塩濃度は全体の1/4に該当する量のみを添加する。
【0051】
その後、前記材料を褐変することを防止するために抗酸化剤が含まれたCS solution (cutting sloution, 表2)が入った滅菌皿に入れ、外皮をうすく剥がして半分に分け、各部分において分裂能が完成した形成層部分が含まれるようにして縦×横×高さ=0.5〜0.7cm×0.5〜0.7cm×0.2〜0.5mmの大きさに切断した。図1の(a)のBは、山参の主根部で形成層が含まれるように前記大きさに切断して切片体を製造した姿である。
【0052】
【表2】

【0053】
(2)生物反応器(bioreactor)で保持中の100年経過した山参不定根を準備し、やはり表2のCS solutionが入った滅菌皿に入れ、やはり前記と同一の方法で形成層を含む切片体を得た。
【0054】
1−2: 山参主根部形成層を含む切片体への浸透剤の処理
実施例1−1で製造された切片体において、分化した組織、すなわち師部、木部、髄等は壊死させて分裂組織である形成層のみを生存させるために、浸透ストレスを処理した。前記形成層を含む切片体を濾紙が敷かれた全植込み培地(培地1、表3)にブロッティング(blotting)を行って1Mスクロース溶液(Duchefa, Netherland)が入ったフラスコに入れ、冷蔵状態で16〜24時間の間浸透ストレスを処理した後、0.05Mスクロース溶液(sucrose solution)で5分間、0.1Mスクロース溶液で5分間処理して高濃度のスクロースによる応力を解除した。その後、前記の浸透ストレスが解除された形成層を含む切片体を濾紙が敷かれた全植込み培地(培地1)に上げて水気を取り除いた。
【0055】
【表3】

【0056】
1−3: 山参の形成層を含む切片体における形成層起源の同質的な細胞株の誘導
形成層起源の分裂能を有する同質的な細胞株を誘導するために、前記実施例1−2で浸透ストレスを処理した切片体を細胞株誘導培地(培地2、表4)に植え付けた。植付けに使用された培地は、下記表4に収録されているとおりである。植え付けられた切片体は、22±1℃の暗条件で培養した。
【0057】
【表4】

【0058】
このとき、浸透処理をせずに直ちに同質的な細胞株誘導培地に植え付けた切片体では、表5に収録されているように植付け初期(2〜3日内)に素早く形成層の中心に黄色く反応を示し、時間が過ぎつつ切片体全体が黄色く変わる様相を示した。形成層中心の黄色い反応を示した切片体を形成層起源の分裂能を有する同質的な細胞株分離及び増殖最適培地(培地3)に継代をして継続的な同質的細胞株の誘導及び増殖を試みたが、褐変の様相が深化し、時間が経過しても褐変反応以外に何らの反応も示さなかった。
【0059】
これに対し、浸透処理をして解除した後に同質的な細胞株誘導培地に植え付けた切片体は、表5に記載されているように他の組織では細胞が誘導されず、形成層においてのみ特異的に同質的な細胞が誘導されることが観察された。すなわち、浸透処理をした後、解除をして植え付けた切片体においては、培養3〜7日の間に切片体の形成層部位が薄い黄色に変化し始めた。それから約7〜14日後、薄い黄色に変化した部位で丸い細胞株が誘導されることを観察した。このとき、露地山参の形成層を含む切片体及び山参不定根の形成層を含む切片体全てにおいて同一の結果が観察された。図1の(a)のCは、山参の形成層を含む切片体のうち形成層特異的分裂能を有する同質性細胞株が誘導された様子を示す。
【0060】
一方、浸透処理を行った切片体を形成層特異的分裂能を有する同質的な細胞株誘導培地でない通常の人参、山参等、人参類の培養において使用する2,4-Dを含む培地を使用した場合には培養7〜10日の間に切片体の全体部分が黄色に変化し始めて、これから約7〜14日後、全体切断面において細胞が誘導されることが観察された。
【0061】
【表5】

【0062】
1−4: 分離した山参の形成層由来同質的な細胞株の増殖
前記実施例1−3で誘導された形成層起源の分裂能を有する同質的な細胞株を利用して増殖に使用した。培地は下記<表6>に提示された基本塩(salt)組成を基にして表7に提示されているとおりに形成層起源の分裂能を有する同質的な細胞株の増殖最適培地を使用した。このとき、表7において2,4-Dは露地山参の形成層から誘導された同質的な細胞株の増殖に、IBAは山参不定根から誘導された同質的な細胞株の増殖に使用した。
【0063】
【表6】

【0064】
【表7】

【0065】
図1の(a)のCに示されているように、浸透ストレス処理と培地2を使用して形成層においてのみ特異的に同質的な細胞が誘導された後、表8に提示された培地3に継代したところ、形成層起源の分裂能を有する同質的な細胞が継続的に分裂・増殖して培養の約10〜20日後に形成層起源の分裂能を有する同質的な細胞株を分離することができた。このように分離した山参形成層由来同質的な細胞株を同一の培地で培養して、分裂能を有する同質的な細胞株を再び増殖させた。図1(a)のDは、分離した形成層特異的な同質的細胞株を表7に提示された培地3で増殖させた様子である。
【0066】
1−5: 分離した細胞株の特性観察
前記山参形成層由来同質的な細胞株を下記表8の液状培地が含まれたフラスコに入れて暗条件にて25±1℃で100rpmの回転撹拌器(shaker)で培養した。継代培養の周期は2週間に固定することにより培養細胞が常に対数成長期の状態で高い活力を維持することができるようにした。このとき、表8において2,4-Dは露地山参の形成層から誘導された同質的な細胞株の培養に、IBAは山参不定根から誘導された同質的な細胞株の培養に使用した。
【0067】
一方、人参の子葉由来のカルス(callus)も表8の培地4で培養して本発明による山参形成層由来同質的な細胞株と比較した。
【0068】
【表8】

【0069】
先ず、細胞の凝集程度(biological microscope CX31, Olympus, Japan)を調べてみたとき、表9のように本発明による2,4-Dを処理した露地山参の形成層由来細胞株は、懸濁培養の場合95%以上の単細胞レベルで存在することが観察されたのであり、本発明によるIBAを処理した不定根の形成層由来細胞株もやはり60%以上が単細胞レベルで存在することが観察され、本発明による細胞株は、懸濁培養時に単細胞レベルで存在する特徴があることが確認された。また、図1(b)のAに示されているように、2,4-Dを処理した露地山参の形成層由来細胞株及びIBAを処理した不定根の形成層由来細胞株はいずれも多数個の小さな液胞(vacuole)を有する形態学的特徴を観察することができたのであり、未分化状態であることが確認された。ところが、これに対し、人参子葉由来のカルス(callus, 生物資源センター, KCTC PC10224)を観察したところ、図1(b)のBに示されているように、多数個の小さな液胞が観察されずに一つの大きな液胞が観察されたものと示された。
【0070】
【表9】

【0071】
一方、大量培養の可能性を調べるために、3Lの内容積を有する空気浮揚式生物反応器(airlift bioreactor, ソンウォンサイテック社, 韓国)にて人参の子葉(cotyledon)由来のカルスと本発明による山参の形成層由来の同質性細胞を培養した。培地は表8の液体培地を子葉したのであり、暗条件にて25±1℃で一定に保持した。
【0072】
その結果、表10に示されているように、人参の子葉(cotyledon)由来培養物の倍加時間(doubling time)はフラスコでは21日であるのに対し、反応器(reactor)では28日と長くなった。これは、反応器内での生長環の生成と培養中の植物培養体の凝集性と細胞壁が強固であってせん断に対する敏感性により細胞の生存率(cell viability)が急激に減少したことが原因であるものと判断された。
【0073】
一方、本発明による2,4-Dを処理した露地山参の形成層由来細胞培養物の倍加時間は3〜4日に、IBAを処理した山参不定根の形成層由来細胞培養物の倍加時間は5〜6日に、いずれもフラスコと反応器の間に差異がないか、むしろ短縮された。形成層由来同質的な細胞培養物は、生物反応器内の生長環の面積を非常に小さく形成し、培養器に簡単な刺激を与えて培地を動かしてやると内壁のリング(ring)が簡単に解消された。また、凝集が小さく、サイズが小さくて数多くの液胞(vacuole)を有しており、せん断に対する敏感性が弱く細胞の生存率(cell viability)の減少をもたらさないものと示された。すなわち、本発明による形成層由来同質的な細胞株は大量培養のための生物反応器において撹拌作用によるせん断応力に対して低い敏感性を有するため、生物反応器内で急速大量生長が可能であることを確認した。したがって、本発明による形成層由来同質的な細胞株が形成層以外の組織由来細胞株に比してせん断応力に対して5〜9倍の低い敏感性を有することが分かった。
【0074】
【表10】

【0075】
一方、異質的な細胞株である人参子葉(cotyledon)由来カルス(生物資源センター、KCTC PC10224)と形成層由来同質的な細胞株に対して凍結保存を行った。懸濁培養物は培養6日から8日になったものを使用し、凍結保存剤は0.5M glycerol(DUCHEFA, The Netherlands)と0.5M DMSO(DUCHEFA, The Netherlands)と1M スクロース(DUCHEFA, The Netherlands)が含まれた培地であり、5mlの cryovial(Duran, USA)に移した。凍結保存剤に処理される細胞接種量は200mg/mlである。凍結保存剤処理された懸濁細胞は、30分間冷凍庫に保持してからdeep freezerに3時間保管後、液体窒素に浸漬して冷凍させた。
【0076】
その後、解氷のために液体窒素に20分以上保持された培養細胞を取り出し、40℃の恒温水槽に入れて1〜2分間解凍した。細胞の再生長のために、細胞懸濁液に無菌状態の漏斗及び濾紙を使用した。濾過された細胞は、フィルターペーパーが含まれた固形生長培地上に適用させ、30分間室温にて安定化させた後、再び新鮮な固形生長培地に再び移された。
【0077】
その結果、人参子葉由来の異質的な細胞株は再生長をしないのに対し、形成層由来同質的な細胞株は4週間後に再生長を始めて増殖する様相を見せ、増殖率上において凍結保存前後の差を示さなかった。
【0078】
実施例2:山参の形成層由来同質的な細胞株の乾燥及び抽出物の製造
実施例1の山参不定根の形成層由来同質的な細胞株から次のように乾燥及び抽出した。
【0079】
(1)乾燥細胞株の製造
(i)培養液を取り除いた細胞株を凍結乾燥又は熱風乾燥した。
【0080】
(ii)前記乾燥した細胞株は、粉砕機を利用し粉砕して得た。
【0081】
(2)蒸留水抽出物の製造
(i)培養液を取り除いた細胞株及び熱風乾燥、凍結乾燥細胞株500gに5000mlの蒸留水を加えて50℃で6時間撹拌させながら抽出して得た。
【0082】
(ii)前記溶解後、3,000gで10分間遠心分離させ、上層液を取ることにより蒸留水可溶性物質を得た。
【0083】
(iii)前記で得た蒸留水可溶性物質を、回転真空濃縮機を利用して減圧濃縮した。
【0084】
(3)エタノール抽出物の製造
(i)培養液を取り除いた細胞株及び熱風乾燥、凍結乾燥細胞株500gに5000mlのエタノールを加えて50℃で6時間撹拌させながら抽出して得た。
【0085】
(ii)前記溶解後、3,000gで10分間遠心分離させ、上層液を取ることによりエタノール可溶性物質を得た。
【0086】
(iii)前記で得たエタノール可溶性物質を、回転真空濃縮機を利用して減圧濃縮した。
【0087】
実験例1:人参類の形成層由来同質的な細胞株の後天性免疫不全症の予防及び治療効果の確認(1)-CD4+T細胞数/CD8+T細胞数の比の測定
本発明による人参類の形成層由来同質的な細胞株の後天性免疫不全症の予防及び治療効果を確認するために、HIV(human immunodeficiency virus)陽性反応を示すAIDS患者(76年生まれ、男、2006年8月にAIDS感染者と診断される)に対して前記実施例2の(1)で製造された乾燥細胞株の粉砕物をパウダー形態で投与した。服用は一日に3回(朝、昼及び夕方)1gずつ水に溶かした形態で9日(投与開始:2008年8月19日)間、経口投与した。投薬中、他のAIDS治療剤の服用はなかったのであり、投与による副作用はないものと示された。
【0088】
投与9日後に患者から採血した後、各サンプルをCD4抗原に対するフィコエリトリン結合抗体(phycoerythrin-conjugated antibodies)とCD8抗原に対する蛍光イソチオシアネート結合抗体(fluoresein isothiocyanate-conjugated antibodis)で培養(Simultest reagent; Becton dichknson, San Jose, CA)した。すなわち、CD4+及びCD8+T細胞は、前記の方法のとおりに染色した後、FACScan flow cytometer (Becton-Dickinson)で製造社が提示した説明書の測定方法により測定した。上記で得られた細胞数に基づいて、CD4+T細胞数/CD8+T細胞数の比を計算した。
【0089】
【表11】

【0090】
その結果、前記表11及び図2に示されているように、投与後CD4+T細胞の数がμl当り616細胞数と測定され、参考値を基準として見たとき正常値に達することが確認された。すなわち、本発明による山参の形成層由来同質的な細胞株の投与によってCD4+T細胞の数が増加したものと示された。
【0091】
また、CD8+T細胞数の場合も投与前μl当り384細胞数と非常に少なく測定されたが、投与後、正常範囲内に観察された。したがって、本発明による形成層由来同質的な細胞株の投与によりCD8+T細胞の数も増加したものと確認された。
【0092】
一方、CD4+T細胞数/CD8+T細胞数の比は、投与直前よりも投与後1に近い様相に観察された。通常、正常人においてCD4+T細胞数/CD8+T細胞数の比率は1程度であるが、AIDS患者の場合CD4+T細胞の数が絶対的に減少し、CD8+T細胞の場合はAIDS初期には免疫過活性化が進み、CD8+T細胞数が増加する様相を見せてから漸次減少する様相に現われる。したがって、AIDS初期にはCD4+T細胞数/CD8+T細胞数の比率が減少する傾向を示してから、この比率が変わる様相に現われる。
【0093】
前記実験結果では、投与直前のCD4+T細胞数/CD8+T細胞数が投与後にむしろ減少したが、これは投与前のCD8細胞数も急減することによるものであって、投与後の結果はCD4+T細胞数とCD8+T細胞数が正常範囲内に増加したものと示されたところ、全般的にHIVに対する免疫性は増加したものと確認された。
【0094】
したがって、本発明による山参の形成層由来同質的な細胞株は、HIVにより減少した免疫性を増加させ、後天性免疫不全症(AIDS)に対する予防及び治療効果があるものと確認された。
【0095】
実験例2:人参類の形成層由来同質的な細胞株の後天性免疫不全症の予防及び治療効果の確認(2)- CD4+T細胞数値の測定
本発明による人参類の形成層由来同質的な細胞株の後天性免疫不全症の予防及び治療効果を確認するために、更にHIV陽性反応を示すAIDS患者らに対して前記実施例2の(1)で製造された凍結乾燥細胞株の粉砕物をパウダー形態で投与した。服用は、一日に3回(朝、昼及び夕方)1gずつ水に溶解した形態で経口投与した。投薬中、他のAIDS治療剤の服用はなかったのであり、投与に因る副作用はないものと示された。
【0096】
投与期間は患者別に異なり、投与後、患者から2〜3mLの血液を採血して各サンプルにBD MultiTESTTM 試薬(CD3 蛍光イソチオシアネート抗体(FITC)、CD8 フィコエリトリン抗体(PE)、CD45ペリジニンクロロフィル蛋白質抗体(PerCP)、CD4 allophycocyanin 抗体(APC); Becton-Dickinson, Britain)を加えて各蛍光ラベル化された抗体が血球表面抗原に結合するようにした後、Facs cd4 machine(BD, Britain)で製造社が提示した説明書の測定方法によりCD4の数値を測定した。
【0097】
測定した結果及び各患者別の投与期間は次のとおりである。
【0098】
【表12】

【0099】
臨床例2の患者の場合、投与前にAIDSに因る激しい症状はなかったが、投与前3ヶ月間、咳、頭痛、下痢、高血圧、赤い斑点が確認されたものの、投与後にこのような症状が減少したのであり、投与前にCD4+T細胞の数値が180であって非常に低かったが、投与後正常範囲である500に高くなったことが確認された。
【0100】
AIDSの免疫不全は、CD4+T細胞の欠損のためにAIDS患者から残留するCD4+T細胞の抗原に対する反応は減少するか又はなくなって必須の免疫調節因子の異常生成が現われるものであって、CD4+T細胞の数又はパーセントを測定して治療経過を確認したところ、このようなCD4+T細胞の増加は本発明による同質的な細胞株がAIDSを治療する効果があることを示す。
【0101】
【表13】

【0102】
臨床例3の患者の場合、AIDSと診断された後、ARV(anti-retro virus)治療剤を服用した経験がない患者において服用後短時間の間数値が260から316に増加したことが確認されたのであり、このようなCD4+T細胞の増加は、本発明による同質的な細胞株がAIDSを治療する効果があることを示す。
【0103】
【表14】

【0104】
臨床例4の患者の場合、CD4+T細胞の数値が投与前の282から320に増加したものと確認されたのであり、このようなCD4+T細胞の増加は本発明による同質的な細胞株がAIDSを治療する効果があることを示す。
【0105】
【表15】

【0106】
臨床例5の患者の場合、CD4+T細胞の数値が投与前の443から559に継続的に増加したものと確認されたのであり、このようなCD4+T細胞の増加は本発明による同質的な細胞株がAIDSを治療する効果があることを示す。
【0107】
【表16】

【0108】
臨床例6の患者の場合、CD4+T細胞の数値が投与前の484から613に継続的に増加したものと確認されたのであり、このようなCD4+T細胞の増加は本発明による同質的な細胞株がAIDSを治療する効果があることを示す。
【0109】
【表17】

【0110】
臨床例7の患者の場合、投与に因り慢性の咳、貧血等、通常のAIDSに伴う症状が解消される効果が確認されたのであり、CD4の数値が690から1073に顕しく増加したことが確認された。
【0111】
前記測定結果を総合すると、本発明による人参類の形成層由来同質的な細胞株はCD4+T細胞数を増加させるものと確認された。AIDSの免疫不全がCD4+T細胞の欠損のためであってAIDS患者から残留するCD4+T細胞の抗原に対する反応は減少するか又はなくなって必須の免疫調節因子の異常生成が現われることを考慮したとき、本発明による山参の形成層由来細胞株は、後天性免疫不全症(AIDS)に対する予防及び治療効果があるものと確認された。
【0112】
実験例3:人参類の形成層由来同質的な細胞株の後天性免疫不全症の予防及び治療効果の確認(3)- HIVのRNA数値の測定
本発明による人参類の形成層由来同質的な細胞株の後天性免疫不全症の予防及び治療効果を確認するために、HIVのRNA測定のためのRT-PCRの遂行が可能なHIV陽性反応を示すAIDS患者に対してさらにHIVウイルスRNA数値を測定した。
【0113】
実験例3と同様に、各AIDS患者に対して前記実施例2の(1)で製造された凍結乾燥細胞株の粉砕物をパウダー形態で、服用は一日に3回(朝、昼及び夕方)1gずつ水に溶かした形態で経口投与した。投薬中、他のAIDS治療剤の服用はなかったのであり、投与に因る副作用はないものと示された。
【0114】
投与期間は患者毎に異なり、投与後、患者から血液を採血してから、これより血漿(plasma)を得てRoChe社(スイス)のCOBASR AmpliPrep/COBASR TaqManR HIV-1 Test, version 2.0[v2.0]を利用して製造社の指針に従って定量的なRT-PCRを行った。このとき、HIV-1 RNAの定量は同一会社のCOBASR TaqManR Analyzer又はCOBASR TaqManR 48 Analyzerを利用して測定した。一方、一部の患者に対してはCD4+T細胞の数も併せて測定したのであり、これは実験例2と同一の方法で測定した。
【0115】
測定結果及び各患者別投与期間は次のとおりである。
【0116】
【表18】

【0117】
臨床例8の患者の場合、AIDSと診断を受けた後ARV治療剤を服用した経験がない患者において血漿中HIV-1 RNA数値を測定したところ、最初のテストにおいて投与前6,252のデータに比して3,574に数値が急減することが確認された。
【0118】
このようなHIVウイルスの著しい減少は、本発明による同質的な細胞株がHIVウイルスを増殖抑制乃至死滅させる効果を有することを意味するだけでなく、AIDSの治療又は予防用組成物として有効に使用することができることを示す証拠となる。
【0119】
【表19】

【0120】
臨床例9の患者の場合、最初のテストの結果では小幅の増加しか示さなかったが、以後、2回目の測定結果における血漿の内HIV-1 RNA数値が投与前1,508のデータに比して751に数値が急減することが確認された。
【0121】
このようなHIVウイルスの顕著な減少は、本発明による細胞株がHIVウイルスを増殖抑制乃至死滅させる効果を有することを意味するだけでなく、AIDSの治療又は予防用組成物として有効に使用することができることを示す証拠となる。
【0122】
【表20】

【0123】
臨床例10の患者の場合、投与前の血漿の内HIV-1 RNA数値が18,232と非常に高かったが、以後、継続的な投与によって漸次減少して1,875に急減したことが確認された。
【0124】
このようなHIVウイルスの著しい減少は、本発明による細胞株がHIVウイルスを増殖抑制乃至死滅させる効果を有することを意味するだけでなく、AIDSの治療又は予防用組成物として有効に使用することができることを示す証拠となる。
【0125】
【表21】

【0126】
臨床例11の患者の場合、CD4数値の増加とHIV-1 RNAの減少のいずれも確認することができたのであり、よって、本発明による細胞株がAIDSの治療又は予防用組成物として有効に使用され得ることが分かった。
【0127】
【表22】

【0128】
臨床例12の患者の場合、CD4数値の増加とHIV-1 RNAの減少のいずれも確認することができたのであり、よって、本発明による細胞株がAIDSの治療又は予防用組成物として有効に使用され得ることが分かった。
【0129】
【表23】

【0130】
臨床例13の患者の場合、初期投与期間中にはCD4の数値のみを測定した上で数値が漸次増加することを確認したのであり、以後、2回にわたってHIV-1 RNA数値を測定した上で投与に応じて減少することを確認した。このような実験結果は、本発明による細胞株がAIDSの治療又は予防用組成物として有効に使用され得ることを提示する。
【0131】
【表24】

【0132】
臨床例14の患者の場合、図3に示されているように約2ヶ月の投与後にHIV-1RNAが未検出と確認された(臨床例14の患者の場合、キアゲン(QIAGEN)社(ドイツ)のartusRHIV-1 RG RT-PCR キットを利用して製造社の指針に従ってRotor-Gene Real-Time分析を行った)。AIDS 患者に対する本発明による同質的な細胞株の投与に因るHIV未検出は、AIDS治療剤として注目に値する結果であって、AIDS完治の可能性を提示する結果である。
【0133】
前記測定結果を総合してみると、患者別の個人差に因り減少幅は異なり得るが、すべて本発明による細胞株の投与によりHIVのRNAの数値が減少することが確認できた。このようなHIVウイルスの減少又は未検出は、本発明による細胞株のHIVウイルス増殖抑制乃至死滅効果を意味するだけでなく、AIDSの治療及び予防の証拠となる。
【0134】
製造例1:薬学製剤の製造例
製剤例1.錠剤の製造
実施例2で製造された細胞株抽出物100mgをトウモロコシ澱粉100mg、乳糖100mg及びステアリン酸マグネシウム2mgを混合して通常の錠剤の製造方法により製造した。
【0135】
製剤例2. カプセル剤の製造
実施例2で製造された細胞株抽出物500mgを軟質ゼラチンカプセルに充填してカプセル剤を製造する。
【0136】
製剤例3. シロップ剤の製造
実施例1で製造された細胞株1g、異性化糖10g、マンニトール5g、適量の精製水の含量で通常の液製剤の製造方法により100mlのシロップ剤を製造した。
【0137】
製剤例4. 注射剤の製造
実施例2で製造された細胞株抽出物200mgをポリオキシエチレン水素化カストロオイルを含有する生理食塩水200mgに加熱溶解させて混合抽出物を0.1%の濃度で含有する注射剤を製造した。
【0138】
製造例2:機能性食品の製造-機能性飲料の製造
製造例1.
実施例1で製造した細胞株200mgを96mlの水に溶解させた後、補助剤としてビタミンC 500mg、矯味剤としてクエン酸、オリゴ糖をそれぞれ1g加え、保存剤としてナトリウムベンゾエート0.05gを加えた後、精製水を加えて全量を100mlにして機能性飲料を製造した。
【0139】
製造例2.
実施例2で製造した細胞株抽出物200mgを96mlの水に溶解させた後、補助剤としてビタミンC 500mg、矯味剤としてクエン酸、オリゴ糖をそれぞれ1g加え、保存剤としてナトリウムベンゾエート0.05gを加えた後、精製水を加えて全量を100mlにして機能性飲料を製造した。
【産業上の利用可能性】
【0140】
以上で説明したように、本発明による同質的な細胞株、その破砕物、その抽出物及びその培養物は天然物由来の組成物であって、既存の薬物治療剤の副作用を最小化して人体に安全でありながらかつ効果的にCD4+T細胞等のT細胞の数を増加させ、HIV(human immunodeficiency virus)の数を減少させ、免疫本能に伴う機会的感染、神経機能障害、新生物成長、究極的に死亡に至る危険を防止することから、後天性免疫不全症の予防、治療及び症状の緩和に有用である。
【0141】
以上より、本発明の内容における特定の部分を詳細に記述したところ、当業界の通常の知識を有する者にとって、このような具体的な記述は単に好ましい実施様態であるだけであり、これにより本発明の範囲が制限される訳でない点は明らかであるはずである。したがって、本発明の実質的な範囲は添付の請求項とそれらの等価物により定義されるといえる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人参類(Panax ginseng)の形成層から誘導され、次の特性を有する細胞株、その破砕物、その抽出物及びその培養物のうちいずれかの少なくとも一つを含有する後天性免疫不全症(Acquired immunodeficiency syndrom, AIDS)の予防又は治療用組成物。
(a) 先天的未分化状態(innately undifferentiated)であり、
(b) 同質的な細胞株(homogeneous cell line)であり、及び
(c) 多数個の液胞(vacuole)を有する形態学的特徴を示す
【請求項2】
前記細胞株は、次の特性をさらに有することを特徴とする請求項1の後天性免疫不全症(Acquired immunodeficiency syndrom, AIDS)の予防又は治療用組成物。
(a)懸濁培養時、単細胞レベルで存在し、
(b)人参類の形成層以外の組織由来細胞株に比して、生物反応器においてせん断応力(shear stress)に対して低い敏感性を有し、及び
(c)人参類の形成層以外の組織由来細胞株に比して生長速度が速く、安定して培養される
【請求項3】
前記細胞株は次の段階を含む分離方法によって得られたものであることを特徴とする請求項1の後天性免疫不全症(Acquired immunodeficiency syndrom, AIDS)の予防又は治療用組成物。
(a)人参類の形成層含有組織を得る段階、
(b)前記得られた形成層含有組織をIAA(Indole-3-acetic acid)又はIBA(Indole-3-butyric acid)を含む培地で培養して形成層由来細胞株を誘導する段階、
このとき、前記培養の遂行中又は培養の前段階又は後段階において前記形成層含有組織に浸透ストレスを加えることを特徴とし、及び
(c)前記誘導された形成層由来細胞株を回収する段階
【請求項4】
前記(c)段階は、誘導された形成層由来細胞株を2,4-D(2,4-dichlorophenoxyacetic acid)、ピクロラム(picloram)及びIBAのうちいずれかの少なくとも一つを含む培地で増殖させてから、形成層由来細胞株を回収することを特徴とする請求項3の後天性免疫不全症の予防又は治療用組成物。
【請求項5】
前記抽出物は蒸留水、低級アルコール、アセトン、DMSO(Dimethyl Sulfoxide)及びこれらの混合溶媒から構成された群より選ばれた溶媒を利用して抽出されたものであることを特徴とする請求項1の後天性免疫不全症の予防又は治療用組成物。
【請求項6】
人参類の形成層から誘導され、次の特性を有する細胞株、その破砕物、その抽出物及びその培養物のうちいずれかの少なくとも一つを含有する後天性免疫不全症の予防又は改善用機能性食品。
(a) 先天的未分化状態(innately undifferentiated)であり、
(b) 同質的な細胞株(homogeneous cell line)であり、及び
(c) 多数個の液胞(vacuole)を有する形態学的特徴を示す
【請求項7】
前記細胞株は、次の特性をさらに有することを特徴とする請求項6の後天性免疫不全症の予防又は改善用機能性食品。
(a)懸濁培養時、単細胞レベルで存在し、
(b)人参類の形成層以外の組織由来細胞株に比して、生物反応器においてせん断応力(shear stress)に対して低い敏感性を有し、及び
(c)人参類の形成層以外の組織由来細胞株に比して生長速度が速く、安定して培養される
【請求項8】
前記細胞株は、次の段階を含む分離方法によって得られたものであることを特徴とする請求項6の後天性免疫不全症の予防又は改善用機能性食品。
(a)人参類の形成層含有組織を得る段階、
(b)前記得られた形成層含有組織をIAA(Indole-3-acetic acid)又はIBA(Indole-3-butyric acid)を含む培地で培養して形成層由来細胞株を誘導する段階、
このとき、前記培養の遂行中、或いは培養の前段階又は後段階において前記形成層含有組織に浸透ストレスを加えることを特徴とし、及び
(c)前記誘導された形成層由来細胞株を回収する段階
【請求項9】
前記(c)段階は、誘導された形成層由来細胞株を2,4-D(2,4-dichlorophenoxyacetic acid)、ピクロラム(picloram)及びIBAのうちいずれかの少なくとも一つを含む培地で増殖させてから、形成層由来細胞株を回収することを特徴とする請求項8の後天性免疫不全症の予防又は改善用機能性食品。
【請求項10】
人参類の形成層から誘導され、次の特性を有する細胞株、その破砕物、その抽出物及びその培養物のうちいずれかの少なくとも一つを含有するT細胞を増加させる免疫増進剤。
(a)先天的未分化状態(innately undifferentiated)であり、
(b)同質的な細胞株(homogeneous cell line)であり、及び
(c)多数個の液胞(vacuole)を有する形態学的特徴を示す
【請求項11】
前記細胞株は、次の段階を含む分離方法によって得られたものであることを特徴とする請求項10のT細胞を増加させる免疫増進剤。
(a)人参類の形成層含有組織を得る段階、
(b)前記得られた形成層含有組織をIAA(Indole-3-acetic acid)又はIBA(Indole-3-butyric acid)を含む培地で培養して形成層由来細胞株を誘導する段階、
このとき、前記培養の遂行中、或いは培養の前段階又は後段階において前記形成層含有組織に浸透ストレスを加えることを特徴とし、及び
(c)前記誘導された形成層由来細胞株を回収する段階
【請求項12】
前記(c)段階は、誘導された形成層由来細胞株を2,4-D(2,4-dichlorophenoxyacetic acid)、ピクロラム(picloram)及びIBAのうちいずれかの少なくとも一つを含む培地で増殖させてから、形成層由来細胞株を回収することを特徴とするT細胞を増加させる請求項11の免疫増進剤。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−504121(P2012−504121A)
【公表日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−528955(P2011−528955)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【国際出願番号】PCT/KR2009/005618
【国際公開番号】WO2010/038991
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(510077978)株式会社ウンファ (11)
【Fターム(参考)】