説明

岩山椒葉青唐辛子香辛料とその製造方法

【課題】未成熟の青唐辛子と岩山椒の成熟した濃緑色の葉を原料とした香辛料によって、青唐辛子と岩山椒濃緑葉の双方の香りと辛味を生かした斬新な香辛料を実現する。
【解決手段】岩山椒の成熟した濃緑色の葉と未成熟の青唐辛子又は成熟した赤唐辛子をミキシングまたは磨り潰してペースト状に加工することによって、双方を均一に磨り潰し混合して初めて得られる独特の辛味と香りと彩りが斬新で、豊かな食生活が楽しめるし、香辛料の需要増大と生産農家の経営改善に寄与できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、未成熟の青唐辛子と岩山椒の成熟した濃緑色の葉を原料とした香辛料とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
与那国島では岩山椒は香り付けとして魚料理に使われ、豚の内臓の臭み取りにも茹でる際に利用されている。一方、本土の山椒は、実や若葉・新芽が使用される。岩山椒の実は葉に比べて少なく、芳香が高く、辛さも強い。
岩山椒(zanthoxy lum beecheyanam k koch )は、常緑低木で枝の節部や葉柄の基部に刺がある。海岸近くの岩場や断崖上などに生えている。
小笠原、奄美大島、沖縄群島、宮古群島、石垣島、西表島、与那国島に自生している。
本発明では、若葉や新芽ではなく、充分に成熟した濃緑色の葉を用いる。沖縄の紫外線を多く浴びた、夏期(6月〜9月まで)の岩山椒の濃緑色の葉は、新芽に比べて硬質という難点は有るものの、辛味が強く、香辛料の原料として最も適していることを発見した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4280800号
【特許文献2】特開2004−283056
【特許文献3】特開2001−258499
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のような、シークワァーサーの若葉の粉末と未成熟の濃緑色の唐辛子の粉末とを混ぜてなるシークワァーサー葉粉入り唐辛子粉末は、辛味成分は濃緑色唐辛子だけに頼るので、斬新な香辛料とは言えない。
特許文献2の記載は、香辛料と食用油脂を共に破砕してペースト状にした後に調理臭がつかない加熱条件で加熱殺菌するが、食用油脂を使用するので、カロリーが高過ぎるという問題がある。
特許文献3の記載は、黄唐辛子を使用し、黒白胡麻、麻の実、山椒、青海苔、密柑の皮が破砕された状態で混合されているが、、山椒の実を使用しているので、従来の香辛料と比べて斬新性に欠ける。
【0005】
本発明の技術的課題は、このような問題に着目し、与那国島などの南西諸島に自生している岩山椒の成熟した濃緑色の葉と未成熟の青唐辛子を併用することによって、従来全く見られない斬新な辛味と香りの香辛料を実現することを課題とする。
本発明は、未成熟の青唐辛子(又は成熟した赤唐辛子)と岩山椒の成熟した濃緑色の葉を主原料として、無添加かつ生の状態で加工し製品化することが可能で、それぞれの原料を混合して初めて得られる新規で斬新な辛味と香りと色合いが特徴である。
本発明によると、未成熟の青唐辛子(又は成熟した赤唐辛子)と、抗酸化効果の高い成熟した濃緑色の岩山椒葉とを併用することで、殺菌、保温、消化不良、アロマ効果により互いの効能が一層増す、という効果も奏する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1は、岩山椒の成熟した濃緑色の葉と未成熟の青唐辛子又は成熟した赤唐辛子をミキシングまたは磨り潰すことによってペースト状に加工してあることを特徴とする香辛料であり、岩山椒の成熟した濃緑色の葉と未成熟の青唐辛子又は成熟した赤唐辛子を混合してペースト状化してあるので、双方を均一に混合して初めて得られる独特の辛味と香りと彩りが斬新で、豊かな食生活が楽しめる。
【0007】
請求項2は、未成熟の青唐辛子又は成熟した赤唐辛子100gに対し、岩山椒の成熟した濃緑色の葉30〜50gを配合してあることを特徴とする請求1に記載のペースト状の香辛料であり、この範囲より岩山椒葉が多いと、岩山椒葉の香りが強過ぎて、青唐辛子や赤唐辛子の風味が殺されてしまい、この範囲より岩山椒葉が少ないと、折角併用した岩山椒葉の風味がもの足りない。
さらに、米酢15〜30cc、食塩15〜30g、25〜60度の泡盛15〜25ccを添加すると、唐辛子の持つエグミや生臭さ、岩山椒葉の独特の苦味も軟らかくなり、まろやかな口当たりとなる。
【0008】
請求項3は、少なくとも、岩山椒の成熟した濃緑色の葉の粉末と、未成熟の青唐辛子又は成熟した赤唐辛子の粉末と、食塩とを混合してあることを特徴とする粉末状の香辛料であり、岩山椒の成熟した濃緑色の葉と未成熟の青唐辛子又は成熟した赤唐辛子とを粉末化してあるので、双方を混合して初めて得られる斬新な辛味と香りと彩りが、粉末状の香辛料として利用したとき、豊かな食生活の向上に寄与できる。
【0009】
請求項4は、岩山椒の成熟した濃緑色の葉と未成熟の青唐辛子又は成熟した赤唐辛子とを一緒に、又は他のドレッシング原料と一緒にミキシング又は磨り潰すことによって、香辛料として混合してなることを特徴とするドレッシングである。
このように、未成熟の青唐辛子又は成熟した赤唐辛子と岩山椒の成熟した濃緑色の葉をミキシング又は磨り潰して混合することによって、又は他のドレッシング原料と一緒にミキシング又は磨り潰すことによって、香辛料として混合すると、各種ドレッシングに独特の辛味と香りをつけて、商品価値を高めることができる。すなわち、岩山椒の成熟した濃緑色葉と未成熟の青唐辛子又は成熟した赤唐辛子とをミキシングして初めて得られる斬新な独特の辛味と香りを、ドレッシングを使用する場合にも醸成して、豊かな食生活の向上に寄与できる。
以上のように、請求項1〜4の発明によると、未成熟の青唐辛子と成熟した濃緑色の岩山椒葉とのミキシングにより、深い濃緑色の製品となって食欲をそそり、成熟した赤唐辛子と成熟した濃緑色の岩山椒葉とのブレンドによって、両者の混ざった斬新な彩りが楽しめる。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載のように、岩山椒の成熟した濃緑色の葉と未成熟の青唐辛子又は成熟した赤唐辛子を混合してペースト状化してあるので、双方を均一に混合して初めて得られる独特の辛味と香りと彩りが斬新で、豊かな食生活が楽しめる。
【0011】
請求項2のように、未成熟の青唐辛子又は成熟した赤唐辛子100gに対し、岩山椒の濃緑色葉が30〜50gより多いと、岩山椒葉の香りが強過ぎて、青唐辛子や赤唐辛子の風味が殺されてしまい、この範囲より岩山椒葉が少ないと、折角併用した岩山椒葉の風味がもの足りなくなる。
【0012】
請求項3のように、岩山椒の成熟した濃緑色の葉と未成熟の青唐辛子又は成熟した赤唐辛子とを粉末化してあるので、双方を混合して初めて得られる斬新な辛味と香りと彩りが、粉末状の香辛料として利用したとき、豊かな食生活の向上に寄与できる。
【0013】
請求項4のように、未成熟の青唐辛子又は成熟した赤唐辛子と岩山椒の成熟した濃緑色の葉とを一緒に、又は他のドレッシング原料と一緒にミキシング又は磨り潰すことによって、香辛料として混合すると、各種ドレッシングに独特の辛味と香りをつけて、商品価値を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】ペースト状香辛料を製造する方法を工程順に示すフローチャートである。
【図2】粉末香辛料を製造する方法を工程順に示すフローチャートである。
【図3】本発明の香辛料を用いたドレッシングの製法を工程順に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に本発明による岩山椒葉青唐辛子香辛料とその製造方法が実際上どのように具体化されるか実施形態を詳述する。図1は本発明の第1実施形態によってペースト状の香辛料を製造する方法を工程順に示すフローチャートである。
まず、新鮮な緑色の製品を実現したい場合は、ステップS1に示すように、主原料として、未成熟の青唐辛子を使用するが、新鮮な緑色にこだわらない、あるいは消費者の好みや消費動向によって、通常の赤く塾した赤唐辛子を使用することもできる。未成熟の青唐辛子であっても、成熟した赤唐辛子と外形がほぼ同等になると、辛味は赤唐辛子よりも強いほどである。
主原料として、青唐辛子(又は赤唐辛子)に加えて、岩山椒の成熟した濃緑色の葉を併用する。前記のように、新芽や若芽では、色の面でも、辛味や抗酸化力の面でも、6〜9月頃の成熟した深緑の葉に劣る。
【0016】
次いで、ステップS5のペースト化工程に移行してもよいが、ステップS2のように、90〜95℃で15〜30秒間加熱処理して殺菌するのがよい。次に、ステップS3のように、冷水又は氷水に漬け込んで、あら熱を取ってから、ステップS4のようにミキサー又はすり鉢に入れて、ステップS5のように、ミキシングし又は磨り潰す。
ただし、販売品として消費者に好まれるように、ステップS4において、副原料として、食塩と米酢と泡盛を加えてから、ステップS5でミキシングしてペースト状にする。このとき、充分にミキシングして完全にペースト化するのでなく、岩山椒の濃緑色の葉が粒状に少々残る程度にペースト化すると、口の中で粒状の葉をかむことによって香りと辛さが引き立ち、岩山椒の葉の食感を楽しみ、製品中の葉の緑色も楽しめる。
【0017】
ペースト化工程が終わると、ステップS6のように、ペースト状の製品の完成であり、ビンや合成樹脂製などの容器に充填して密封する。
ステップS1における主原料である青唐辛子(又は赤唐辛子)と、岩山椒の成熟した濃緑色の葉は、別々に加熱処理し、別々にあら熱を取ってから、ミキシング工程で一緒にしてもよいが、最初から一緒に加熱したり、あら熱を取ったり、ミキシングしてもよい。
このように、青唐辛子(又は赤唐辛子)と岩山椒の成熟した濃緑色の葉とを一緒にミキシングしたり磨り潰して、両者の果肉や葉肉の成分を露出させて混合することによって、両者成分の混合のみによって醸成される、これまでに経験したことの無い独特の辛味と香りが実現できる。
【0018】
ステップS1で用いる主原料の分量は、青唐辛子(又は赤唐辛子)に対し、岩山椒の成熟した濃緑色の葉が半分以下程度が適している。正確には、唐辛子の分量に対し、その30〜50%程度である。
未成熟の青唐辛子(又は成熟した赤唐辛子)100gに対し、岩山椒の成熟した濃緑色の葉を30〜50gとした場合、副原料は、米酢15〜30g、泡盛25〜60度を15〜25CC、食塩15〜30gの範囲が適している。
これらの上限を越えると、それぞれの副原料の味覚が強過ぎ、下限より少ないとそれぞれの副原料の味覚が足りないからである。
【0019】
また、ペースト状製品にした場合、岩山椒の成熟した濃緑色の葉は、芳香も高く、辛さも極めて増している。これに比べて、若葉や新芽、実は濃緑色を出すことができず、独特の辛味も醸成できず、利用価値が低い。
すなわち、完熟前の未成熟の青唐辛子と岩山椒の成熟した濃緑色の葉を一緒に磨り潰すことで、より深い濃緑色になる。このことにより、新鮮な濃緑色に加えて、未成熟の青唐辛子と岩山椒の成熟した濃緑色の葉とを一緒に磨り潰して初めて醸成される、日本人好みの独特の味覚と香りを楽しむことができ、これまでの香辛料としては見られない斬新な香辛料を実現できる。
副材料として、前記のような適量の泡盛・酢・食塩を加えることにより、唐辛子のエグミも取れ、柔らかなまろやかさを出すことができる。しかも、泡盛、酢、食塩を入れることによって、微生物や雑菌の減少が可能となり、防腐効果も得られる。なお、ステップS2の熱処理によって雑菌が取り除かれ、ステップS3の冷却処理により深い緑色の鮮やかさが保たれる。
【0020】
以上のように、本発明のペースト状の香辛料は、刺激を与え楽しむことができるほか、唐辛子の辛味成分であるカプサイシンによる新陳代謝や毛細血管の血流の増進を実現でき、結果的に肥満予防や保温効果も得られる。
岩山椒の成熟した濃緑色の葉は抗酸化効果が高く、岩山椒の持つ辛味成分、芳香は抗菌作用、アロマテラピー効果もあって、疲れを取り、緊張をほぐす効果も考えられる。両方の持つ成分が現代社会における生活習慣病、食生活の改善、運動不足が問題になっている中で、血流の改善によって、高血圧・高脂血・糖尿病・肥満などの予防、改善に寄与でき、高い購買力が期待できる。
従って、健康維持の上からも、製品の持っている性質・味・効能から、日常生活の食品の一部として推奨できる、無添加の香辛料の実現である。
【0021】
以上のようなペースト状の香辛料の応用として、粉末製品も実現できる。図2は、本発明による粉末香辛料を製造する方法を工程順に示すフローチャートである。主原料として、未成熟の青唐辛子(又は成熟した赤唐辛子)と、岩山椒の成熟した濃緑色の葉を使用する。
そして、主原料を加熱処理して、冷水や氷水であら熱を取るステップS3までは、図1のペースト製品の製造工程と全く同じである。粉末製品の場合は、ステップS4で乾燥させてから、ミルやすり鉢によって破砕ないし粉砕して、粉末化する。
次いで、ステップS5において、副原料として食塩を添加し混合すると、ステップS6のように、粉末状の香辛料の完成である。
粉末製品の場合も、未成熟の青唐辛子(又は成熟した赤唐辛子)と、岩山椒の成熟した濃緑色の葉とを別々に乾燥させ粉末化してから、粉末状態で混合することもできる。
なお、粉末製品の場合は、ステップS2の加熱処理とステップS3のあら熱取りの工程を省き、主原料を清浄に前処理して、直ちに乾燥させてもよい。
【0022】
図3のように、ステップS1からステップS6の工程を経ることによって、本発明による香辛料を用いたドレッシングを製造することも可能である。すなわち、香辛料として、未成熟の青唐辛子又は成熟した赤唐辛子と岩山椒の成熟した濃緑色の葉をミキシング又は磨り潰して混合する。
この場合、未成熟の青唐辛子又は成熟した赤唐辛子と、岩山椒の成熟した濃緑色の葉と、ドレッシングの原料であるたまねぎやニンジン等とを一緒にミキシング又は磨り潰してもよいが、未成熟の青唐辛子又は成熟した赤唐辛子と岩山椒の成熟した濃緑色の葉をミキシング又は磨り潰して岩山椒葉唐辛子香辛料を別に用意すれば、ドレッシング原料のたまねぎやニンジン等とは別々にミキシング又は磨り潰すこともできる。
そのほかは、通常の各種ドレッシングの製法と同じで、ステップS4のように、オリーブオイルやワインビネガー、黒糖、泡盛酒粕(又はもろみ酢原液)、砂糖などの調味料を混合する。もちろん、ノンオイルドレッシングも可能である。
このように、未成熟の青唐辛子又は成熟した赤唐辛子と岩山椒の成熟した濃緑色の葉をミキシング又は磨り潰して混合することによって、各種ドレッシングに独特の辛味と香りをつけて、商品価値を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
以上のように、本発明によると、未成熟の青唐辛子と岩山椒の成熟した濃緑色の葉を一緒にミキシング又は磨り潰すことによって、未成熟の青唐辛子の辛味と香りに成熟した濃緑色の岩山椒葉の辛味と香りがミックスされ、香辛料として独特の辛味と香りを醸成でき、かつ鮮やかな緑色が食欲をそそる深緑色のペースト製品となるので、日本人の食文化かより豊になると共に原料の生産農家の経営改善にも寄与できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
岩山椒の成熟した濃緑色の葉と未成熟の青唐辛子又は成熟した赤唐辛子をミキシングまたは磨り潰すことによってペースト状に加工してあることを特徴とする香辛料。
【請求項2】
少なくとも、未成熟の青唐辛子又は成熟した赤唐辛子100gに対し、岩山椒の成熟した濃緑色の葉30〜50gを配合してあることを特徴とする請求1に記載のペースト状の香辛料。
【請求項3】
少なくとも、岩山椒の成熟した濃緑色の葉の粉末と、未成熟の青唐辛子又は成熟した赤唐辛子の粉末と、食塩とを混合してあることを特徴とする香辛料。
【請求項4】
岩山椒の成熟した濃緑色の葉と未成熟の青唐辛子又は成熟した赤唐辛子とを一緒に、又は他のドレッシング原料と一緒にミキシング又は磨り潰すことによって、香辛料として混合してなることを特徴とするドレッシング。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−167116(P2011−167116A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33211(P2010−33211)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【特許番号】特許第4572263号(P4572263)
【特許公報発行日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(510045070)
【Fターム(参考)】