説明

岩盤の掘削方法

【課題】振動及び騒音が少なく、効率良く岩盤を掘削できる掘削方法を提供すること。
【解決手段】ケーシング3を回転圧入機1によって回転圧入しながら、通常の地盤Gからその下部にある硬質の岩盤G2を掘削する岩盤の掘削方法であって、装置本体4と、この装置本体4に対し所要のチルト角度θに傾倒可能なブレーカ5とからなる破砕装置7を、クレーンにより吊持してケーシング3内に挿入し、破砕装置7のブレーカ5をケーシング3先端より突出させて、中立姿勢、及びチゼル11の振れ幅がケーシング3の半径以内乃至その半径を越える所要のチルト角度θに設定したチルト姿勢で打撃作用を行なわせることにより岩盤G2を荒掘削し、この荒掘削した岩盤G2にケーシングを回転圧入した後、破砕装置7に代えてケーシング3内に挿入したハンマーグラブによりケーシング3内部を掘削破砕し、掘削破砕屑を地上に排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通常の地盤の下部にある硬質の岩盤を掘削する岩盤の掘削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の岩盤の掘削方法として、特許公報等の具体的な公知文献を挙げることはできないが、従来では、先端に切削刃を備えたケーシングを回転圧入機によって回転圧入しながら岩盤を掘削してゆき、ある程度まで所要深さ掘削した後、チゼルハンマーを落下させて、ケーシング内にある岩盤を破砕し、この破砕屑をハンマーグラブによって排出するようにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の方法によれば、岩盤に対し、いきなりケーシングの回転圧入によって硬質の岩盤を掘削するから、そのケーシングによる掘削に時間がかかり、またチゼルハンマーを落下させてケーシング内部の岩盤を破砕するから、チゼルハンマーの衝撃によって大きな振動と騒音が発生すると共に、チゼルハンマーを落下させた際にケーシング先端の切削刃を破損してしまうことがある、という問題があった。
【0004】
本発明は、上記の事情に鑑み、振動及び騒音が少なく、効率良く岩盤を掘削できる掘削方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための手段を、後述する実施形態の参照符号を付して説明すると、請求項1に係る発明は、先端に切削刃3aを備えたケーシング3を回転圧入機1によって回転圧入しつつ、通常の地盤Gからその下部にある硬質の岩盤G2を掘削する岩盤の掘削方法であって、ケーシング3による岩盤G2の掘削に先立ち、装置本体4と、この装置本体4に対し所要のチルト角度θに傾倒可能なブレーカ5とからなる破砕装置7を、クレーンにより吊持してケーシング3内に挿入し、この破砕装置7のブレーカ5をケーシング3先端より突出させて、チゼル11が実質的にケーシング3の軸芯O沿いに位置する中立姿勢及びチゼル11の振れ幅がケーシング3の半径以内乃至その半径を越える所要のチルト角度θに設定したチルト姿勢で打撃作用を行なわせることにより岩盤G2を荒掘削し、この荒掘削した岩盤G2にケーシングを回転圧入した後、破砕装置7に代えてケーシング3内に挿入したハンマーグラブ23,29によりケーシング3内部を掘削破砕し、その掘削破砕屑22を地上に排出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
上記解決手段による発明の効果を、後述する実施形態の参照符号を付して説明すると、請求項1に係る発明によれば、ケーシング3による岩盤G2の掘削に先立って、装置本体4と、これに対し所要のチルト角度θに傾倒可能なブレーカ5とからなる破砕装置7を、クレーンにより吊持してケーシング3内に挿入し、この破砕装置7のブレーカ5をケーシング3先端より突出させて、チゼル11が実質的にケーシング3の軸芯O沿いに位置する中立姿勢及びチゼル11の振れ幅がケーシング3の半径以内乃至その半径を越える所要のチルト角度θに設定したチルト姿勢で打撃作用を行なわせて岩盤G2を荒掘削するから、岩盤G2に対するケーシング3の回転圧入が容易になると共に、ケーシング3先端の切削刃3aを破損することが少なく、しかしてこの荒掘削した岩盤G2にケーシングを回転圧入した後に、破砕装置7に代えてケーシング3内に挿入したハンマーグラブ23,29でケーシング3内部を掘削するから、ケーシング3内の岩盤を的確に破砕して、その掘削破砕屑22をそのまま有効に地上に排出することができる。
【0007】
特に、この方法に使用する破砕装置7のブレーカ5は、中立姿勢での打撃作用の他に、ゼル11の振れ幅がケーシング3の半径以内乃至その半径を越える所要のチルト角度θに設定した種々のチルト姿勢で打撃作用を行なわせるから、ケーシング3下方の岩盤G2をケーシング3で囲まれる範囲の内外に亘って有効に荒破砕することができ、それによって岩盤G2へのケーシング3の回転圧入をよりスムーズに行なわせることができると共に、その後のハンマーグラブ23,29による掘削破砕をより有効に行なわせることができる。また、この方法によれば、従来工法のように激しい騒音・振動の発生がなく、低騒音・低振動で岩盤の掘削を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る岩盤の掘削方法の実施形態を示すもので、(a) は回転圧入機の据え付け状態を示し、(b) は回転圧入機によってケーシングを通常の地盤中に回転圧入している状態を示す説明図である。
【図2】(a) は破砕装置をケーシング内に挿入した状態を示し、(b) は破砕装置のブレーカによって岩盤を掘削している状態を示す説明図である。
【図3】(a) は破砕装置に代えてケーシング内に挿入したハンマーグラブによりケーシング内部を掘削している状態を示し、(b) は他のタイプのハンマーグラブでケーシング内部を掘削している状態を説明図である。
【図4】(a) はブレーカの拡大詳細正面図、(b) は縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る岩盤の掘削方法の好適な実施の形態について、図面に基づいて説明する。
【0010】
図1の(a) は、回転圧入機1を図示しないクレーンで吊って所定位置に据え付けている状態を示し、(b) は先端に切削刃3aを備えたケーシング3を回転圧入機1によって回転圧入しながら通常の地盤G1を掘削している状態を示す。
【0011】
回転圧入機1は、一般的なオールケーシング工法に使用される全周回転圧入装置からなるもので、図1の(a) ,(b) に概略的に示すように、ベースフレームaの四隅に設けた昇降シリンダbに連結された昇降フレームcを備え、この昇降フレームcに、ケーシング3が挿通されるテーパ孔(図示省略)を有する回転フレーム(図示省略)が回転可能に支持されていて、昇降フレームcに連結されたチャックシリンダ(図示省略)によってケーシング3とテーパ孔との間に楔部材を挿入して、回転フレームとケーシング3とを締結するように構成され、しかしてケーシング3の建て込み時は、ケーシング3を回転フレームに把持した状態でこの回転フレームをモータ(図示省略)によって回転駆動させると共に、昇降シリンダbを下降させることにより、ケーシング3を回転させながら地盤G中に圧入するようになっている。尚、図1の(a) において、dは芯出しプレートを示す。
【0012】
ケーシング3先端の切削刃3aが、通常の地盤G1の下部にある硬質の地盤G2に当接すると、掘削抵抗が増大するから、その掘削抵抗が計測されて回転圧入機1によるケーシング3の回転圧入が停止され、そこで、図2の(a) に示すように、装置本体4と、この装置本体4に対し所要のチルト角度に傾倒可能なブレーカ5とからなる破砕装置7を、図示しないクレーンにより吊持してケーシング3内に挿入する。
【0013】
ここで、破砕装置7について説明すると、先ず破砕装置7の装置本体4は、図2の(a) ,(b) 及び図4の(a) ,(b) に示すように、ケーシング3の内径より小さな外径を有し、ケーシング3の内周面にスライド自在に支持案内される上下のスタビライザー4a,4bと両スタビライザー4a,4bをつなぐ連結部材4cとからなり、上部スタビライザー4aの上端中央部にはポスト16が立設され、このポスト16の上端部にクレーン吊持用の吊り具17が設けてあって、この吊り具17に、クレーンから垂下した吊り下げ用ワイヤー27が取り付けられる。
【0014】
ブレーカ5は、図4の(a) ,(b) に示すように、油圧駆動部9を内蔵し、下部スタビライザー4bの下部にリンク部材8を介して連結された本体ケース10と、この本体ケース10の下方に突出し、油圧駆動部9により軸方向に加振されて、先端部に繰り返し打撃作用が発生するチゼル11とからなる。リンク部材8は、上部側の中央部が枢軸13により下部スタビライザー4bの下部に枢着されると共に、上部側の一端部が、下部スタビライザー4b側に設置されたチルト用油圧シリンダ14のピストンロッド14aにピン15で枢着され、そして下部側の両端部がブレーカ5の本体ケース10上端部にピン12,12で連結固定されている。
【0015】
このブレーカ5は、図4の(b) に示すように、チゼル11が実質的にケーシング3の軸芯O沿いに位置するチルト角度ゼロの中立姿勢(実線図示)と、この中立姿勢からのチゼル11の振り幅Vがケーシング3の半径以内乃至その半径を越える所要のチルト角度θに設定可能なチルト姿勢とに姿勢変更可能であって、中立姿勢あるいは所要のチルト角度に設定したチルト姿勢で油圧駆動部9によりチゼル11を軸方向に加振することによって、チゼル11に繰り返し打撃作用を発生させるようになっている。尚、図4の(b) には、チゼル11の振り幅Vがケーシング3の半径を越えた状態のみを仮想線で図示し、そのチゼル11の振り幅Vがケーシング3の半径以内でのチルト姿勢は図示していない。
【0016】
しかして、通常地盤G1の下部にある岩盤G2の掘削にあたっては、図2の(a) に示すように、ケーシング3をその下端の切削刃3が岩盤G2に接しないように若干引き上げた状態で、ケーシング3内に挿入した破砕装置7のブレーカ5をケーシング3下端から突出させて、このブレーカ5を、図2の(b) に実線で示すような中立姿勢、チゼル11の振れ幅がケーシング3の半径以内にある比較的小さいチルト角度のチルト姿勢、及びチゼル11の振れ幅がケーシング3の半径を越える比較的大きいチルト角度のチルト姿勢の種々の姿勢をとりながら、このブレーカ5に打撃作用を行なわせることにより、ケーシング3下方の岩盤G2を荒掘削してゆく。
【0017】
上記のようにして岩盤G2をブレーカ5で所要深さまで荒掘削したならば、ブレーカ5を中立姿勢に戻した後、ブレーカ5による岩盤G2の荒掘削箇所に、ケーシング3を回転圧入機1によって回転圧入する。この時、ケーシング3下方の岩盤G2はブレーカ5によって荒掘削されているから、そこにケーシング3を回転圧入しても、ケーシング3は荒掘削箇所の底部までスムーズに入り込んでいき、切削刃3aを破損するようなこともない。こうしてケーシング3を岩盤G2の荒掘削箇所に回転圧入して掘削した後、クレーンによって吊り下げ用ワイヤー27を介して破砕装置7を引き上げ、図3の(a) に示すように、この破砕装置7に代えて、ケーシング3内にハンマーグラブ23を挿入し、このハンマーグラブ23によりケーシング3の内部にある岩盤G2の荒掘削部分を的確に掘削破砕し、しかる後にその掘削破砕屑22を掴んで地上に排出する。
【0018】
図3の(a) に示すハンマーグラブ23は、スタビライザー24を有する筒状基枠25の下端部に複数個のシェル26を枢着し、筒状基枠25内に図示しないシェル開閉駆動用シリンダを装備し、シリンダの伸縮作動によってシェル26,26を開閉させるタイプのものであるが、図3の(b) には他のタイプのハンマーグラブ29を示す。このハンマーグラブ29は、クレーンから垂下されるワイヤー30によって吊支される基枠31の下部に開閉自在な一対のシェル32,32を装備してなるもので、ワイヤー30は、ハンマーグラブ29をケーシング3内に吊り込む手段と、シェル32,32を閉じる手段とを兼用していて、ハンマーグラブ29をケーシング3内に吊り込んだ状態でワイヤー30を適宜に巻き取ることにより、シェル32,32が閉じるようになっている。
【0019】
以上、図2の(a) ,(b) 及び図3の(a) ,(b) によって説明した上述の工程によって、岩盤G2の掘削を終了するが、岩盤G2の掘削長さによっては、上述の工程を繰り返し行なえばよい。
【0020】
そして、所定深さの岩盤掘削が終了すれば、最終的に使用するハンマーグラブ23又は29をケーシング3内から引き上げた後、ケーシング3を回転圧入機1によって岩盤G2及び地盤G1から引き上げ、回転圧入機1から引抜き除去し、最後にクレーンにより回転圧入機1も撤去して施工を終了する。
【0021】
上述した実施形態の説明から分かるように、この発明に係る岩盤の掘削方法によれば、ケーシング3による岩盤G2の掘削に先立ち、装置本体4と、この装置本体4に対し所要のチルト角度θに傾倒可能なブレーカ5とからなる破砕装置7を、クレーンにより吊持してケーシング3内に挿入し、この破砕装置7のブレーカ5をケーシング3先端より突出させて、チゼル11が実質的にケーシング3の軸芯O沿いに位置する中立姿勢、及びチゼル11の振れ幅がケーシング3の半径以内乃至その半径を越える所要のチルト角度θに設定したチルト姿勢で打撃作用を行なわせることによって岩盤G2を荒掘削するから、岩盤G2に対するケーシング3の回転圧入を容易に行なうことができると共に、ケーシング3先端の切削刃3aを破損を極力少なくすることができ、しかしてこの荒掘削した岩盤G2にケーシングを回転圧入して掘削した後に、破砕装置7に代えてケーシング3内に挿入したハンマーグラブ23,29でケーシング3内部を掘削するから、ケーシング3内の岩盤を的確に破砕でき、その掘削破砕屑22をそのまま有効に地上に排出することができる。
【0022】
特に、この方法に使用する破砕装置7のブレーカ5は、中立姿勢での打撃作用の他に、ゼル11の振れ幅がケーシング3の半径以内乃至その半径を越える所要のチルト角度θに設定した種々のチルト姿勢で打撃作用を行なわせるから、ケーシング3下方の岩盤G2をケーシング3で囲まれる範囲の内外に亘って有効に荒破砕することができ、それによってケーシング3の回転圧入をよりスムーズに行なわせることができると共に、その後のハンマーグラブ23,29による掘削破砕をより効果的に行なわせることができる。
【0023】
そして、この発明の掘削方法によれば、従来工法のように激しい騒音及び振動の発生がなく、低騒音及び低振動での岩盤の掘削を実施することができる。
【符号の説明】
【0024】
1 回転圧入機
3 ケーシング
3a 切削刃
4 装置本体
5 ブレーカ
7 破砕装置
10 本体ケース
11 チゼル
G1 通常の地盤
G2 岩盤
23,29 ハンマーグラブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に切削刃を備えたケーシングを回転圧入機によって回転圧入しつつ、通常の地盤からその下部にある硬質の岩盤を掘削する岩盤の掘削方法であって、ケーシングによる岩盤の掘削に先立ち、装置本体と、この装置本体に対し所要のチルト角度に傾倒可能なブレーカとからなる破砕装置を、クレーンにより吊持してケーシング内に挿入し、この破砕装置のブレーカをケーシング先端より突出させて、チゼルが実質的にケーシングの軸芯沿いに位置する中立姿勢及びチゼルの振れ幅がケーシングの半径以内乃至その半径を越える所要のチルト角度に設定したチルト姿勢で打撃作用を行なわせることにより岩盤を荒掘削し、この荒掘削した岩盤にケーシングを回転圧入した後、破砕装置に代えてケーシング内に挿入したハンマーグラブによりケーシング内部を掘削破砕し、その掘削破砕屑を地上に排出することを特徴とする岩盤の掘削方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−19251(P2013−19251A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155817(P2011−155817)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(390016458)三和機工株式会社 (19)
【Fターム(参考)】