説明

岩盤または地盤の表面を保護する方法

例えばトンネル掘削などにより新しく露出された岩盤または地盤の表面であって、大気への露出によってもろくなる傾向を有する該表面は、該表面のための少なくとも1種の凝固性物質および凝固剤を該表面上で混合するプロセスを用いて、該表面上にフィルムを形成することにより保護することができる。好ましい凝固性物質は水性ポリマー分散物であり、好ましくは一定程度のゴム状弾性を有するもの、および、さらにアニオン性に安定化されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、岩盤保護の方法に関する。
ある種のそうでなければ堅い岩盤は、大気に露出されるとその特性を大きく変える可能性がある。例えば、チョーク泥灰土(chalk marl)は塊では堅く堅固であるが、かかる岩盤を通してトンネルを掘り、そのトンネルが大気に露出されると、岩盤は乾燥し、および/または大気中の酸素の襲撃を受けて、もろくなって砕けるまでになる。この傾向は、時には不可欠である強制換気によってさらに強められる。従って、かかる岩盤を貫通したトンネルは、永久的な被覆加工がなされる前に重大な損傷を受ける危険性があり、その損傷を回復するにはかなりの時間と努力(およびコスト)が必要となる。さらに、かかる状況はかかる被覆加工を必要なものとし、そのためトンネル掘削にさらに費用が付加される。
【0002】
このようなトンネルの表面には、特定の物質を適用することにより、非常に効果的な一時的保護を与え得ることが今見出された。従って本発明は、大気への露出によってもろくなる傾向を有する、岩盤または地盤の新しく露出された表面を、該表面のための少なくとも1種の凝固性物質(coagulable material)およびその凝固剤(coagulating agent)を該表面上で混合するプロセスを用いて、該表面上にフィルムを形成することにより保護する方法を提供する。
【0003】
「凝固性」物質とは、液体形態で製造でき、次に凝集して密着性のフィルムを形成することができる、任意の物質を意味する。かかる物質は、有機または無機物質であってよい。無機の例は「水ガラス」であり、ケイ酸ナトリウムの1種である。有機の種類には多くの可能性があり、例えばビチューメン乳濁液である。
【0004】
しかし、本発明の目的のための最良の物質は水性ポリマー分散物であり、一般に「乳濁液」、「ラテックス(latices)」または「ラテックス(latexes)」と呼ばれるものである。かかる物質は当分野で非常によく知られており、多数が市場で入手可能である。それらは一般に、凝集することにより密着性のフィルムを形成するポリマー粒子の水性分散物からなり、しばしば、いわゆる「乳濁液」または「ラテックス」塗料の成分として用いられている。かかるポリマー全てが本発明の目的に対して適しているわけではなく、有用な試験は、それらがいわゆる「浸漬物(dipped goods)」を形成するのに適するかどうかを見ることである。これは、最初に凝集剤に、続いて水性コーティング分散物に浸されることによって被覆される物である。かかる塗布(application)において密着性のフィルムを提供する任意のポリマー分散物は、本発明において用いるのに好適である。
【0005】
かかる分散物のポリマーは、通常(しかし常にではない)熱可塑性である。本発明の目的のために、ポリマーがある程度のゴム状弾性を有するのが好ましい。これは、かかる特性を付与することが知られているモノマーを用いることにより実現可能であり、例えば、十分低いガラス遷移温度を有する少なくとも1種のモノマーを十分な割合で用いて、ポリマーがそれが用いられる周囲温度より低いガラス遷移温度を有するようにすることである。典型的な例は、ブタジエンなどの「ゴム状」モノマーである。
【0006】
粒子は一般的には、0.2〜10μmサイズである。分散物は常に安定化され、この安定化はアニオン的、カチオン的または非イオン的に実施することができる。これらは全て凝集を引き起こすことができ、本発明の操作において用いることができる。しかし、分散物がイオン性である場合に凝集はより容易に引き起こされるため、かかる分散物が好ましく、アニオン性分散物が特に好ましい。
【0007】
関与するポリマーがエラストマーまたはゴム状の性質であることは、特に好ましい。これは、ポリマーが、トンネル環境の周囲温度より低いガラス遷移温度を有する必要があることを意味する。特に好ましいポリマーは、ブタジエン、イソプレンおよびクロロプレンなどの「ゴム状」モノマーに由来するモノマー単位を高い割合で含むポリマーである。
本発明で用いるのに好適な水性ポリマー分散物の代表的な例は、ポリクロロプレンラテックスおよびスチレン−ブタジエンコポリマーラテックスを含む。
【0008】
凝固剤は、水性分散物を凝固させることのできる任意の物質であってよく、当業者はかかる目的に有用な物質の種類を容易に認識し、適した物質を選択する。従って、アニオン安定化分散物の場合、ポリカチオン種を用いることができる。最も一般的(および安価)には、これらは金属カチオンであって、少なくとも2価であり、例えばカルシウム、マグネシウムおよび鉄である。凝固剤として有用である代表的な物質は、かかるカチオンの水性の塩、例えば、硝酸カルシウム、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウムおよび硫酸鉄である。
【0009】
カチオン安定化分散物の場合、ポリアニオン種の水溶性塩を凝固剤として用いることができる。好適なポリアニオン種はリン酸塩、硫酸塩およびホウ酸塩を含み、かかる化合物の代表的な例は、硫酸アルミニウム、リン酸ナトリウムおよびカリウム、ならびにホウ酸ナトリウムおよびカリウムを含む。
これらの方法の変法においては、カチオン性分散物をアニオン性分散物に対する凝固剤として用いる、またはその逆を用いることも可能である。
【0010】
凝固性物質と凝固剤との間の接触により直ちに凝固が起こるため、これは、これら2種類の物質が、それらが適用される表面においてのみ混合されなければならないことを意味する。これは、両者を同時に表面にスプレーすることにより容易に実施できる。これは任意の便利な方法によって、例えば2つのスプレーガン、またはより便利には、2つのノズルを有する1つのスプレーガンによって行うことができる。適切な計量は当分野の範囲であり、任意の状況に対して容易に適用することができる。
【0011】
乾燥すると(例えば、強制換気に露出された場合)砕けやすい、岩盤または地盤の新しく露出された基質に凝固性物質および凝固剤が適用された場合、フィルムが直ちに形成され始め、水が放出される。物質は必要なだけ厚くスプレーして特定の亀裂または穴を被覆することができ、水の蒸発または酸化を効果的に防ぎ、それによって基質が砕けるのを防ぐ。
以下の例を参照して本発明をさらに説明する。
【0012】
用いた水性分散物は、「Synthomer」28W20(「Synthomer」は登録商標)、すなわち市場で入手可能な60重量%固体のアニオン安定化スチレン−ブタジエンラテックスであり、凝固剤は硝酸カルシウムの6(重量)%の水溶液である。分散物は、ポンプ(「Everspray(登録商標)」2000型を使用)を用いて、Binks Model 43 PLツインノズルスプレーガンのノズルの1つへ供給される。ノズルA63/443型を用いる。
【0013】
凝固剤は、「Everspray」1000型ポンプを用いて、ツインノズルスプレーガンの他のノズルへ供給され、ノズル90/421型を用いる。両ノズルは、両ノズルから約15〜20cmの被覆面積にパターンを形成し、またスプレーする表面が両ノズルから30〜40cmであるように調節する。分散物および凝固剤それぞれの供給速度は、2kg/分および0.3kg/分である。
【0014】
強制換気が必要なトンネルの、トンネル掘削機の後方に新しく露出されたチョーク泥灰土の表面に、2つの成分をスプレーする。連続した密着性の堅いゴム状フィルムが形成される。特定の要請のある場所においてより厚い層が必要な場合は、その地点で単純にスプレーを多くすることにより対処する。強制換気が適用されても岩盤の乾燥または酸化は起こらず、スプレーされた表面は堅いままで影響を受けない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気への露出によってもろくなる傾向を有する新しく露出された岩盤または地盤の表面を保護する方法であって、該表面のための少なくとも1種の凝固性物質およびその凝固剤を該表面上で混合するプロセスを用いて、該表面上にフィルムを形成する前記方法。
【請求項2】
凝固性物質が、水性ポリマー分散物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ポリマーが、一定程度のゴム状弾性を有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
分散物が、イオン的に安定化されている、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
カチオン安定化分散物をアニオン安定化分散物のための凝固剤として用いる、またはその逆を用いる、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。

【公表番号】特表2006−519947(P2006−519947A)
【公表日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−504477(P2006−504477)
【出願日】平成16年2月26日(2004.2.26)
【国際出願番号】PCT/EP2004/001926
【国際公開番号】WO2004/079162
【国際公開日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(503343336)コンストラクション リサーチ アンド テクノロジー ゲーエムベーハー (139)
【Fターム(参考)】