説明

岩盤内の水みち検出システム及び方法

【課題】 岩盤内の水みち、特に透水量が小さな水みちを精度よくかつ効率的に検出する。
【解決手段】本発明に係る岩盤内の水みち検出システム1は、ボーリング孔3の内部空間のうち、パッカー4,4で仕切られてなる計測空間5に拡がる地下水を該地下水より電気伝導度の低い清水で置換する液体置換手段としての清水槽9、送水ポンプ10及び揚水ポンプ13と、計測空間5に拡がる水を揚水することで岩盤2内の地下水を計測空間5に流入させる揚水手段と、岩盤2から計測空間5に流入した地下水の電気伝導度を揚水中又は揚水後に深さ方向に沿って計測する電気伝導度センサー16と、計測空間5の岩盤透水量を、電気伝導度センサー16で計測された電気伝導度で深さ方向に配分することにより、岩盤2の透水量分布を深さ方向に沿って算出するコンピュータ19とを備え、揚水手段は、液体置換手段を構成する揚水ポンプ13で兼用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として地下貯蔵施設、特に高レベル放射性廃棄物の貯蔵処分施設を岩盤内に構築する際に用いられる岩盤内の水みち検出システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大深度地下の利用形態の一つに例えば高レベル放射性廃棄物の貯蔵処分施設がある。かかる貯蔵処分施設は、放射能レベルによっては1,000mを越える深さの岩盤内に構築されることがあり、かかる施設を構築するにあたっては、岩盤内における透水性構造を把握することが必要不可欠となる。
【0003】
岩盤の透水性構造を原位置で把握する手段として、さまざまな種類の透水試験(水理試験)があり、ボーリング孔の本数によって多孔式と単孔式に大別されるが、比較的安価である単孔式透水試験としては、ルジオン試験、定圧注水試験、湧水圧試験(JFT)、スラグ試験、パルス試験等が知られている。
【0004】
これらのうち、ルジオン試験や定圧注水試験は、孔内の試験区間内に注水する際の注水圧力や注水量を計測し、湧水圧試験は、孔内の試験区間内においてトリップバルブ解放後に観測ロッド内に流入する地下水の量を水位上昇速度として計測し、スラグ試験やパルス試験は孔内水位を瞬間的に変動させた後、試験区間における水位や圧力の変化を計測することで、それぞれ岩盤の透水量を評価する。
【0005】
これらの透水試験においては、いずれもボーリング孔内をパッカーで区切ることで試験区間を形成するものであり、パッカーで区切られた試験区間全体について岩盤の透水量を定量的に把握するとともに、透水量係数あるいは透水係数として評価することができる。
【0006】
一方、岩盤の透水性構造を把握する手段として、上述した各種透水試験以外に電気伝導度検層(FEC検層)が知られている。
【0007】
電気伝導度検層は、ボーリング孔内を予め清水に置換して電気伝導度を低くしておくことにより、清水よりも本来的に電気伝導度が高い、あるいは予め電気伝導度を高くした地下水の流出を電気伝導度センサーで検出するものであり、深さ方向に沿った電気伝導度の分布を求めることで、ボーリング孔全体にわたる透水量の分布状況を把握することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−92353号公報
【特許文献2】特開2001−83261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、このような透水性構造の把握手段のうち、透水試験は、試験区間全体での透水量を定量的に評価することはできても、試験区間内に分布する個々の割れ目に対し、どの割れ目が水みちとなっているのか、あるいはそれらの水みちを流れる地下水の流量はどの程度なのかといった、割れ目ごとの透水量を明らかにすることはできない。
【0010】
また、電気伝導度検層については、ボーリング孔全体の透水量を深さ方向の電気伝導度分布で割り振ることで、深さ方向に沿った透水量の分布をおおまかに評価することはできるものの、ボーリング孔全体で見ると、透水量が大きな水みちと小さな水みちとで電気伝導度に数百倍の差が生じることがあり、それゆえ、透水量が小さな水みちについては、検出精度が大幅に低下するという問題を生じていた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、岩盤内の水みち、特に透水量が小さな水みちを精度よくかつ効率的に検出することが可能な岩盤内の水みち検出システム及び方法を提供することを目的とする。
【0012】
上記目的を達成するため、本発明に係る岩盤内の水みち検出システムは請求項1に記載したように、岩盤に削孔されたボーリング孔の内部空間のうち、パッカーで仕切られてなる計測空間に拡がる地下水を該地下水より電気伝導度の低い液体で置換する液体置換手段と、
前記計測空間に拡がる液体を揚水することで前記岩盤内の地下水を前記計測空間に流入させる揚水手段と、
前記岩盤から前記計測空間に流入した地下水の電気伝導度を前記揚水手段による揚水中又は揚水後に深さ方向に沿って計測する電気伝導度センサーと、
前記計測空間について透水試験で得られた前記岩盤の透水量を、前記電気伝導度センサーで計測された電気伝導度で深さ方向に配分することにより、前記岩盤の透水量分布を深さ方向に沿って算出する演算手段とを備えたものである。
【0013】
また、本発明に係る岩盤内の水みち検出システムは、前記パッカーが周囲に取り付けられ前記計測空間に拡がる地下水に接する領域に透水孔が形成された中空状の計測ロッドを備え、該透水孔を介して前記計測空間に連通する前記計測ロッドの内部空間に前記揚水手段を構成する揚水ポンプの流入側を連通させるとともに、前記電気伝導度センサーを前記計測空間又は前記計測ロッドの内部空間で昇降自在となるように設置したものである。
【0014】
また、本発明に係る岩盤内の水みち検出システムは、前記パッカーが周囲に取り付けられ前記計測空間に拡がる地下水に接する領域に透水孔が形成された中空状の計測ロッドを備え、該透水孔を介して前記計測空間に連通する前記計測ロッドの内部空間に前記揚水手段を構成する揚水ポンプの流入側を連通させるとともに、前記電気伝導度センサーを前記計測空間又は前記計測ロッドの内部空間に設置し、該電気伝導度センサーを、その材軸方向に列状に配置された多数の電極と、該電極のうち、隣り合う一対の電極を電位測定用電極として該電位測定用電極に接続される電圧計と、前記電位測定用電極の両側に位置する一対の電極を電流印加用電極として該電流印加用電極に接続される電源部と、前記電圧計及び前記電源部を前記電極に切替自在に電気接続する切換器とで構成したものである。
【0015】
また、本発明に係る岩盤内の水みち検出方法は請求項4に記載したように、岩盤に削孔されたボーリング孔の内部空間のうち、パッカーで仕切られてなる計測空間に拡がる地下水を該地下水より電気伝導度の低い液体で置換し、
前記計測空間に拡がる液体を揚水することで前記岩盤内の地下水を前記計測空間に流入させ、
該揚水工程とともに又はその後に前記岩盤から前記計測空間に流入した地下水の電気伝導度を深さ方向に沿って計測し、
前記計測空間について透水試験で得られた前記岩盤の透水量を、前記電気伝導度で深さ方向に配分することにより、深さ方向に沿った岩盤の透水量分布を算出するものである。
【0016】
また、本発明に係る岩盤内の水みち検出方法は、前記透水試験として定流量揚水試験又は回復試験を選択するとともに、該定流量揚水試験又は回復試験に必要な揚水工程を前記揚水工程と同時に行うものである。
【0017】
本発明に係る岩盤内の水みち検出システムを用いて岩盤内の水みちを検出するには、まず、岩盤に削孔されたボーリング孔の内部空間をパッカーで仕切り、該パッカーで仕切られた空間、パッカーを上下二段に設置した場合はそれらに挟まれた空間、単体で設置した場合は孔底までの空間をそれぞれ計測空間とする。
【0018】
次に、液体置換手段を用いて、計測空間の地下水を該地下水より電気伝導度の低い液体、例えば清水に置換する。
【0019】
液体置換手段は例えば、清水槽と、該清水槽に流入側が連通接続され流出側が計測空間に連通接続された送水ポンプと、流入側が計測空間に連通接続された揚水ポンプとで構成することができる。
【0020】
次に、計測空間の液体あるいは地下水を揚水手段で揚水することで、岩盤内の地下水を計測空間に流入させる。
【0021】
揚水手段は、揚水ポンプをその流入側が計測空間に連通されるように配置して構成することが可能であり、場合によっては液体置換手段の揚水ポンプと兼用するようにしてもよい。
【0022】
次に、揚水工程とともに又は揚水後に、岩盤から計測空間に流入した地下水の電気伝導度を電気伝導度センサーで深さ方向に沿って計測する。
【0023】
次に、計測空間について透水試験で得られた岩盤の透水量を、電気伝導度センサーで計測された電気伝導度で深さ方向に配分する。
【0024】
透水試験は、従来公知の透水試験から選択可能であり、従来の透水試験から例えば定流量揚水試験を選択した場合においては、計測空間の地下水を揚水ポンプを用いて一定の揚水量で揚水しながら、該揚水中における計測空間の水圧の変化(水位の変化)を水圧計(水位計)で計測することにより、回復試験を選択した場合においては、計測空間の地下水を揚水ポンプで揚水し、その後の水圧(水位)の回復状況を水圧計(水位計)で計測することにより、それぞれ岩盤から計測空間への透水量を調べることができる。
【0025】
なお、透水試験は、本発明とは関係なく別途行えばよいが、本発明と同時並行で進めることも可能であり、例えば定流量揚水試験や回復試験を透水試験として選択した場合、それを実施するための揚水ポンプを、本発明の揚水手段を構成する揚水ポンプと兼用することで、透水試験に必要な揚水作業と、電気伝導度を計測するために必要な揚水作業とを同時に行い、作業に要する時間を短縮するとともに、作業に必要な設備機器の規模を小さくすることが可能となる。
【0026】
このように透水試験で別途得られた岩盤の透水量を、電気伝導度センサーで得られた電気伝導度分布で深さ方向に配分するが、上述のようにして得られた電気伝導度分布は、その計測範囲が計測空間に限定されているため、ボーリング孔全体で計測する場合よりもばらつきの程度が小さい、すなわち分散値が小さくなる。
【0027】
そのため、上述の手順で得られた電気伝導度分布で計測空間全体の岩盤の透水量を深さ方向に配分したとき、配分後の岩盤の透水量、いうなれば深さ方向に沿った岩盤の透水量分布は、透水量が小さな割れ目に対しても十分な精度で求められることとなり、かくして、従来であれば検出が難しかった透水量が小さな水みちについても、高い精度でかつ効率よく検出することが可能となる。
【0028】
電気伝導度分布を用いた岩盤透水量の深さ方向への配分は、岩盤の透水量を電気伝導度分布で比例配分することを基本とするが、場合によっては、電気伝導度計測における揚水条件や計測条件に応じた重み付けを適宜行うようにしてもかまわない。
【0029】
岩盤から計測空間に流入した地下水の電気伝導度を計測するにあたっては、深さ方向に沿った電気伝導度分布が取得できる限り、計測場所自体が計測空間に限定されるものではなく、例えば計測空間に拡がる地下水を、ボーリング孔に建て込まれる計測ロッドの内部空間にいったん取り込み、その地下水を計測するようにしてもかまわない。
【0030】
これに関連して、計測空間の地下水の電気伝導度を深さ方向に沿って計測する具体的構成は任意であり、例えば、前記パッカーが周囲に取り付けられ前記計測空間に拡がる地下水に接する領域に透水孔が形成された中空状の計測ロッドを備え、該透水孔を介して前記計測空間に連通する前記計測ロッドの内部空間に前記揚水手段を構成する揚水ポンプの流入側を連通させるとともに、前記電気伝導度センサーを前記計測空間又は前記計測ロッドの内部空間で昇降自在となるように設置する構成が考えられる。
【0031】
また、前記パッカーが周囲に取り付けられ前記計測空間に拡がる地下水に接する領域に透水孔が形成された中空状の計測ロッドを備え、該透水孔を介して前記計測空間に連通する前記計測ロッドの内部空間に前記揚水手段を構成する揚水ポンプの流入側を連通させるとともに、前記電気伝導度センサーを前記計測空間又は前記計測ロッドの内部空間に設置し、該電気伝導度センサーを、その材軸方向に列状に配置された多数の電極と、該電極のうち、隣り合う一対の電極を電位測定用電極として該電位測定用電極に接続される電圧計と、前記電位測定用電極の両側に位置する一対の電極を電流印加用電極として該電流印加用電極に接続される電源部と、前記電圧計及び前記電源部を前記電極に切替自在に電気接続する切換器とで構成することが考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本実施形態に係る岩盤内の水みち検出システムの概略図。
【図2】電気伝導度分布を示したグラフ。
【図3】変形例に係る岩盤内の水みち検出システムの概略図。
【図4】変形例に係る電気伝導度センサーを示したブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明に係る岩盤内の水みち検出システム及び方法の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。なお、従来技術と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0034】
図1は、本実施形態に係る岩盤内の水みち検出システムを示した概略図である。同図に示すように、本実施形態に係る岩盤内の水みち検出システム1は、岩盤2に削孔されたボーリング孔3に中空状の計測ロッド6を建て込んで配置するとともに、該計測ロッドの外周にパッカー4,4を上下二段に配置し、かかるパッカーを膨張させてボーリング孔3の孔壁面に当接させることにより、ボーリング孔3の内部空間を仕切り、パッカー4,4に挟まれた空間を計測空間5として他の内部空間と遮断してある。
【0035】
計測ロッド6のうち、パッカー4,4で挟まれた領域、すなわち計測空間5に拡がる地下水と接する領域には多数の透水孔8を形成してあり、該透水孔を介して計測空間5に拡がる地下水をロッド内部空間7に流入させることができるようになっている。
【0036】
本実施形態に係る岩盤内の水みち検出システム1は、清水槽9及び該清水槽に連通接続された送水ポンプ10を地上に設置するとともに、注入管11をその吐出側が計測空間5に連通されるように計測ロッド6のロッド内部空間7に挿通配置し、該注入管の基端側をバルブ12を介して送水ポンプ10の送水側に接続してあり、バルブ12を開いた状態で送水ポンプ10を駆動することにより、清水槽9内の清水を計測空間5内に送り込むことができるようになっている。
【0037】
また、本実施形態に係る岩盤内の水みち検出システム1は、計測ロッド6のロッド内部空間7に連通するように計測ロッド6内に揚水管15を立ち上げるとともに、その上方に揚水ポンプ13を設置し、該揚水ポンプの流入側に揚水管15の先端をバルブ14を介して接続してあり、バルブ14を開いた状態で揚水ポンプ13を駆動することにより、計測空間5に拡がる地下水を地上に揚水することができるようになっている。
【0038】
ここで、清水槽9に貯留された清水は、岩盤2内の地下水よりも電気伝導度の低い液体として使用されるとともに、清水槽9、送水ポンプ10及び揚水ポンプ13は、かかる清水で計測空間5に拡がる地下水を置換する液体置換手段として機能する。
【0039】
一方、本実施形態に係る岩盤内の水みち検出システム1は、電気伝導度センサー16をロッド内部空間7で昇降自在となるように計測ロッド6に設置してあり、透水孔8を介して流入してきた計測空間5の地下水の電気伝導度を計測できるようになっている。
【0040】
なお、上述した揚水ポンプ13は、電気伝導度を計測する際に計測空間5に拡がる清水あるいは地下水を地上に揚水するための揚水手段としても機能するとともに、後述する透水試験として回復試験を行う際、揚水管15に連通接続された間隙水圧計17及び揚水ポンプ13の吐出側に設けられた流量計18とともに、岩盤の透水量を計測する手段としても機能する。
【0041】
ここで、電気伝導度センサー16は、通信ケーブル20を介して地上に設置されたコンピュータ19に電気接続してあり、該コンピュータは、電気伝導度センサー16を制御するとともに、該電気伝導度センサーで得られた計測データを岩盤透水量データとともに演算処理する演算手段として機能する。
【0042】
電気伝導度センサー16は、その両端にワイヤー22,22をそれぞれ接続するとともに、各ワイヤー22,22をロッド内部空間7の上下に設置されたリール21,21でそれぞれ巻き取り、又は巻き出すようになっており、リール21,21を連動して駆動制御することにより、電気伝導度センサー16を所望の速度で昇降させることができるように構成してある。
【0043】
計測空間5の全長(深さ範囲)は、検出対象となる水みちの透水量に応じて適宜設定すればよい。例えば計測空間5の全長を短くすれば、透水量が大きい水みちが該計測空間に含まれる可能性が低くなって該計測空間内での透水量のばらつきの程度が小さくなるため、透水量が小さい水みちであってもこれらを精度よく検出することができる。
【0044】
本実施形態に係る岩盤内の水みち検出システム1を用いて岩盤2の水みちを検出するには、まず、岩盤2に削孔されたボーリング孔3に計測ロッド6を建て込むとともに、該計測ロッドに取り付けられたパッカー4,4を膨張させることにより、ボーリング孔3の内部空間をパッカー4,4で仕切って計測空間5を形成する。
【0045】
次に、バルブ12を開いた状態で送水ポンプ10を駆動することで清水槽9内の清水を注入管11を介して計測空間5に送り込みながら、バルブ14を開いた状態で揚水ポンプ13を駆動することにより、計測空間5内の地下水を該地下水より電気伝導度の低い清水に置換する。
【0046】
次に、バルブ12を閉じ、バルブ14を開いた状態で揚水ポンプ13を駆動することにより、岩盤2内の地下水を計測空間5に流入させるとともに、該計測空間の水をロッド内部空間7に流入させる。
【0047】
かかる揚水中、又は揚水直後に電気伝導度センサー16を適宜昇降させながら、ロッド内部空間7に流れ込んだ水の電気伝導度を計測する。
【0048】
このようにすると、岩盤2に存在している割れ目のうち、水みちとなっている割れ目からは、その透水性に応じた量の地下水が計測空間5、さらにはロッド内部空間7へと流れ込むとともに、その地下水は、電気伝導度が周囲の清水と異なるため、電気伝導度センサー16を昇降させながら電気伝導度を計測することにより、地下水の流出箇所やその流出量を推定することができる。
【0049】
このようにして計測された電気伝導度は、計測空間5にわたる電気伝導度分布としてコンピュータ19に保存しておく。
【0050】
図2は、電気伝導度センサー16で得られるであろう電気伝導度分布の一例を示したグラフである。同図の場合、計測空間5の全長が35mであり、その上端を基準とした相対深さを縦軸に、電気伝導度を横軸にとってあり、相対深さが3m、11m、16m、25m、27mで電気伝導度が大きくなっていること、特に16mの深さ位置で電気伝導度が大きくなっていることがわかる。
【0051】
かかる結果から、計測空間5内では、5ヶ所の水みちが存在するとともに、相対深さが16mで比較的透水性が大きな水みちが存在し、3m、11mの2ヶ所で比較的透水性が小さな水みちが存在すると推定することができる。
【0052】
一方、計測空間5について、透水試験として揚水試験の一種である回復試験を行っておく。かかる回復試験を行うには、バルブ12を閉じ、バルブ14を開いた状態で揚水ポンプ13を駆動することにより、計測空間5に拡がる地下水を揚水するとともに、その揚水量を流量計18で計測し、次いで、揚水ポンプ13を停止するとともにバルブ14を閉じ、その後の閉鎖系における圧力変化を間隙水圧計17で計測する。
【0053】
かかる回復試験で得られた計測結果から計測空間5全体の岩盤透水量を算出し、これをコンピュータ19に保存する。
【0054】
次に、回復試験で得られた計測空間5全体の岩盤透水量を、電気伝導度センサー16で得られた電気伝導度分布を用いて深さ方向に比例配分し、各割れ目ごとの透水量を絶対量として把握する。
【0055】
比例配分の仕方としては、上述の例でいくと、計5ヶ所の水みちに対するそれぞれの電気伝導度(イオン濃度)の総和に対する個々の電気伝導度(イオン濃度)をそれぞれ算出し、その比率を全体の岩盤透水量に乗ずればよい。
【0056】
以上説明したように、本実施形態に係る岩盤内の水みち検出システム1及び方法によれば、上述のようにして得られた電気伝導度分布は、その計測範囲が計測空間5内に限定されているため、ボーリング孔3全体で計測する場合よりもばらつきの程度が小さい、すなわち分散値が小さくなる。
【0057】
そのため、上述の手順で得られた電気伝導度分布で計測空間5全体の岩盤の透水量を深さ方向に配分したとき、配分後の岩盤の透水量、いうなれば深さ方向に沿った岩盤の透水量分布は、透水量が小さな割れ目に対しても十分な精度で求められることとなり、かくして、従来であれば検出が難しかった透水量が小さな水みちについても、高い精度でかつ効率よく検出することが可能となる。
【0058】
本実施形態では、説明の便宜上、透水試験としての回復試験を、電気伝導度計測とは別工程で行うようにしたが、これに代えて、回復試験に必要な揚水作業と、電気伝導度を計測するために必要な揚水作業とを同時に行うようにしてもよい。
【0059】
かかる構成によれば、作業に要する時間を短縮するとともに、作業に必要な設備機器の規模を小さくすることも可能となる。
【0060】
また、本実施形態では、電気伝導度センサー16をロッド内部空間7に設置するようにしたが、ボーリング孔3の孔壁面からの水平距離が大きいために岩盤2から流出する地下水を正確に検出できない懸念がある場合には、電気伝導度センサー16を計測ロッド6の外周面側に配置してもかまわない。
【0061】
図3は、パッカー4,4が設置された計測ロッド6の環状鍔部31,31の間に電気伝導度センサー16を設置した例を示したものであり、かかる変形例においても上述した実施形態と同様、電気伝導度センサー16の両端にワイヤー22,22の一端をそれぞれ接続するとともに、各ワイヤー22,22の他端を環状鍔部31,31の上段下面と下段上面にそれぞれ設置されたリール21,21でそれぞれ巻き取り、又は巻き出すように構成すればよい。
【0062】
また、本実施形態では、電気伝導度センサーとして、昇降自在に構成されてなる電気伝導度センサー16を採用したが、かかる構成に代えて、図4に示す電気伝導度センサー41を用いることができる。
【0063】
同図に示した電気伝導度センサー41は、その材軸方向に列状に配置された10個の電極42a〜42jと、該電極のうち、隣り合う一対の電極を電位測定用電極として該電位測定用電極に接続される電圧計44と、電位測定用電極の両側に位置する一対の電極を電流印加用電極として該電流印加用電極に接続される電源部45と、電圧計44及び電源部45を電極42a〜42jに切替自在に電気接続する切換器43とから構成してある。
【0064】
かかる構成においては、電極42a〜42jをそれらの配置方向(列方向)が深さ方向となるように、計測ロッド6の外周面又は内周面に取り付けておく。
【0065】
そして、例えば同図(b)に示すように、互いに隣り合う電極42d及び電極42eに電圧計44が接続され、その両側に位置する電極42c及び電極42fに電源部45が接続されるように切換器43を操作し、かかる状態で電気伝導度を計測した後、同図(c)に示すように、互いに隣り合う電極42e及び電極42fに電圧計44が接続され、その両側に位置する電極42d及び電極42gに電源部45が接続されるように切換器43を操作し、かかる状態で電気伝導度を計測するという手順を列方向に沿って繰り返すことにより、計測空間5に拡がる地下水に対して、深さ方向に沿った電気伝導度の計測を行うことが可能となる。
【0066】
ここで、上述の切換器43は、電圧計44と電源部45が接続される電極対を次々に切り替えていく構成とすることで、電気伝導度センサー自体を昇降させるのと同様の機能を得ることができるようになっているが、切替速度を早くすることで、実質的に同時計測も可能である。
【符号の説明】
【0067】
1 岩盤内の水みち検出システム
2 岩盤
3 ボーリング孔
4 パッカー
5 計測空間
6 計測ロッド
7 ロッド内部空間(計測ロッドの内部空間)
8 透水孔
9 清水槽(液体置換手段)
10 送水ポンプ(液体置換手段)
13 揚水ポンプ(液体置換手段、揚水手段)
16,41 電気伝導度センサー
19 コンピュータ(演算手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
岩盤に削孔されたボーリング孔の内部空間のうち、パッカーで仕切られてなる計測空間に拡がる地下水を該地下水より電気伝導度の低い液体で置換する液体置換手段と、
前記計測空間に拡がる液体を揚水することで前記岩盤内の地下水を前記計測空間に流入させる揚水手段と、
前記岩盤から前記計測空間に流入した地下水の電気伝導度を前記揚水手段による揚水中又は揚水後に深さ方向に沿って計測する電気伝導度センサーと、
前記計測空間について透水試験で得られた前記岩盤の透水量を、前記電気伝導度センサーで計測された電気伝導度で深さ方向に配分することにより、前記岩盤の透水量分布を深さ方向に沿って算出する演算手段とを備えたことを特徴とする岩盤内の水みち検出システム。
【請求項2】
前記パッカーが周囲に取り付けられ前記計測空間に拡がる地下水に接する領域に透水孔が形成された中空状の計測ロッドを備え、該透水孔を介して前記計測空間に連通する前記計測ロッドの内部空間に前記揚水手段を構成する揚水ポンプの流入側を連通させるとともに、前記電気伝導度センサーを前記計測空間又は前記計測ロッドの内部空間で昇降自在となるように設置した請求項1記載の岩盤内の水みち検出システム。
【請求項3】
前記パッカーが周囲に取り付けられ前記計測空間に拡がる地下水に接する領域に透水孔が形成された中空状の計測ロッドを備え、該透水孔を介して前記計測空間に連通する前記計測ロッドの内部空間に前記揚水手段を構成する揚水ポンプの流入側を連通させるとともに、前記電気伝導度センサーを前記計測空間又は前記計測ロッドの内部空間に設置し、該電気伝導度センサーを、その材軸方向に列状に配置された多数の電極と、該電極のうち、隣り合う一対の電極を電位測定用電極として該電位測定用電極に接続される電圧計と、前記電位測定用電極の両側に位置する一対の電極を電流印加用電極として該電流印加用電極に接続される電源部と、前記電圧計及び前記電源部を前記電極に切替自在に電気接続する切換器とで構成した請求項1記載の岩盤内の水みち検出システム。
【請求項4】
岩盤に削孔されたボーリング孔の内部空間のうち、パッカーで仕切られてなる計測空間に拡がる地下水を該地下水より電気伝導度の低い液体で置換し、
前記計測空間に拡がる液体を揚水することで前記岩盤内の地下水を前記計測空間に流入させ、
該揚水工程とともに又はその後に前記岩盤から前記計測空間に流入した地下水の電気伝導度を深さ方向に沿って計測し、
前記計測空間について透水試験で得られた前記岩盤の透水量を、前記電気伝導度で深さ方向に配分することにより、深さ方向に沿った岩盤の透水量分布を算出することを特徴とする岩盤内の水みち検出方法。
【請求項5】
前記透水試験として定流量揚水試験又は回復試験を選択するとともに、該定流量揚水試験又は回復試験に必要な揚水工程を前記揚水工程と同時に行う請求項4記載の岩盤内の水みち検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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