説明

岩盤削孔装置および岩盤削孔方法

【課題】岩盤に下方に延在する孔を一部重複させつつ削孔する場合に好適な岩盤削孔装置および岩盤削孔方法を提供する。
【解決手段】案内ロッド20が既に削孔された第2の孔24Bに挿入された状態で、第2の孔24Bに隣接する既に削孔された第1の孔24Aに閉塞部材30を挿入することで、第1の孔24Aの全長にわたって第1の孔24Aと第2の孔24Bの連通部分を閉塞する。そして、第2の孔24Bに隣接する第3の孔24Cの削孔時の繰り粉が、案内ロッド20の外周と前記第2の孔24Bの内壁との環状隙間26を通って第1の孔24Aを含むスリット状の溝へ侵入することを閉塞部材30で阻止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無発破掘削に用いる岩盤削孔装置と岩盤削孔方法に関し、詳細には、トンネル掘削の際、岩盤に、下方に延在する多数の孔をそれらの一部を重複させつつ削孔してスリット状の溝を形成する場合に好適な岩盤削孔装置と岩盤削孔方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無発破掘削でトンネルを掘削する際、まず、図4に示すように、トンネルの断面外周に沿って、また、断面を区画する複数の領域に沿って、岩盤削孔装置により多数の孔が一部重複して連続削孔され、多数の孔の列によりスリット状の溝12が形成される。
次に、スリット状の溝12で囲まれた領域に、岩盤削孔装置により多数の割岩用孔14が削孔され、各割岩用孔14に割岩機を挿入して割岩用孔14を拡開させる。この時スリット状の溝12は、何も存在していない自由面として機能するため、スリット状の溝12で囲まれた領域の壁面は、多数の割岩用孔14が拡開することで崩され、このようにしてトンネルの掘削が行われていく。
【0003】
岩盤削孔装置は、先端に削孔ビットが取着された回転ロッドを有し、この回転ロッドにより削孔ビットを回転させて削孔するようにしており、その際に、孔内に水を供給しながら削孔を行い、切削された砕石や土砂などの繰り粉を削孔された孔の外部に排出するようにしている。
一方、スリット状の溝12を形成するには、孔の一部を重複させつつ削孔する必要があり、孔の一部が重複するように削孔ビットで削孔しようとすると、削孔ビッドは回転ロッドの先端に取着されていることから、抵抗が少ない既に削孔された孔側へ変位しようとする。
そこで、既に削孔された孔に挿入される案内ロッドを回転ロッドに隣接させて設け、削孔ビットを回転ロッドに当接させて削孔ビットの変位を抑制し、多数の孔をそれらの一部を重複させつつ掘削できるようにしている。
【0004】
本出願人は、このような案内ロッドの外周部を回転可能に構成し、削孔ビットによる掘削効率を格段と高めた岩盤削孔装置を提案している(特許文献1〜5)。
この岩盤削孔装置を用いた削孔工程を図5に示す。
図5において、回転ロッド16の先端に削孔ビット18が取着され、回転ロッド16と案内ロッド20は岩盤削孔装置の架台22の先端のブラケット22Aで支持されている。
まず、削孔ビット18により最初の孔である第1の孔24Aを削孔した後、図5(A)乃至(C)に示すように、第1の孔24Aに案内ロッド20を挿入する。そして、削孔ビット18により第1の孔24Aに一部重複する第2の孔24Bの掘削を行う。このとき、既に削孔された第1の孔24A側へ変位しようとする削孔ビッド18を、案内ロッド20の回転可能な外周部に当接させてその変位を抑制し、第1の孔24Aに平行させた第2の孔24Bを第1の孔24Aに一部重複させつつ削孔ビット18により連続状に削孔する。
図6は、このような削孔孔を多数掘削することによりスリット状の溝12を形成する場合の平面図を示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3477683号
【特許文献2】特許第3479754号
【特許文献3】特許第3496857号
【特許文献4】特許第3748288号
【特許文献5】特許第3748291号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、例えば、都市近郊において立坑構築のため岩盤を鉛直に掘削する場合や、トンネル工事の途中から下方に向けてトンネル断面を掘削する場合には、上述の無発破掘削で用いる岩盤削孔方法では、スリット状の溝12も下方に向けて削孔しなければならない。
この削孔工程を図7(A)乃至(D)に示す。
図7(A)乃至(C)に示すように、削孔ビット18により第1の孔24Aを削孔し、この第1の孔24Aに案内ロッド20を挿入して第2の孔24Bを削孔するまでは、切削された砕石や土砂などの繰り粉は、切削時に注入される水により孔の外部に排出されるため問題は生じない。すなわち、削孔途中の第2の孔24Bは、案内ロッド20の外周と第2の孔24Bの内壁との間の環状隙間26に連通しており、また、案内ロッド20の外周部は削孔ビット18により回転されているものの、繰り粉は、案内ロッド20の外周部により環状隙間26を周回して元の第3の孔24Cに戻り、水により第3の孔24Cの外部に排出されるからである。
しかしながら、図7(D)に示すように、第2の孔24Bに案内ロッド20を挿入して第3の孔24Cを削孔する工程以降は、次の問題が生じる。
【0007】
すなわち、スリット状の溝12を形成するための第3の孔24Cを第2の孔24Bに一部重複させつつ下方に削孔する場合、削孔途中の第3の孔24Cは、案内ロッド20の外周と第2の孔24Bの内壁との間の環状隙間26に連通すると共に、環状隙間26を介して大きな空間となっている第1の孔24Aにも連通しており、しかも、第1の孔24Aは削孔途中の第3の孔24Cよりも深い。また、切削された砕石や土砂などの繰り粉は比重が大きい。
そのため、水を注入しながら第3の孔24Cを削孔すると、切削された砕石や土砂などの繰り粉は、回転する案内ロッド20の外周部により環状隙間26に導かれ、環状隙間26から第1の孔24Aに流入し、第1の孔24Aに堆積されていき、あるいはこの第1の孔24Aに接続するスリット状の溝12へ堆積されていき、このような繰り粉の堆積は、新たな孔の削孔毎に増え続ける。
そのため、スリット状の溝12で囲まれた領域に、多数の割岩用孔14を削孔し、各割岩用孔14に割岩機を挿入して各割岩用孔14を拡開させても、繰り粉がスリット状の溝12の底部に堆積していることから、スリット状の溝12は自由面として機能し難く、割岩機により壁面を崩しにくくなり、トンネルの掘削施工効率が低下する。
本発明は前記事情に鑑み案出されたものであって、本発明の目的は、岩盤に下方に延在する孔を一部重複させつつ削孔する場合に好適な岩盤削孔装置および岩盤削孔方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため本発明は、架台と、前記架台により回転可能かつその軸方向に移動可能に支持され先端に削孔ビットが取着された回転ロッドと、前記回転ロッドを回転駆動する回転駆動手段と、前記架台で支持され前記回転ロッドと隣接して平行に延在し前記削孔ビットにより既に削孔された孔に挿入され前記削孔ビットに接触可能で回転可能な外周部を有し前記削孔ビットに接触することで前記削孔ビットの変位を抑制し前記既に削孔された孔とその一部を重複させつつ孔を順次削孔させるための案内ロッドとを備えた岩盤削孔装置において、前記架台で支持され前記回転ロッドと反対に位置する前記案内ロッドの箇所に隣接して前記案内ロッドに沿って延在し、前記案内ロッドが既に削孔された第2の孔に挿入された状態で、前記第2の孔に隣接する既に削孔された第1の孔に挿入され、前記第1の孔と前記第2の孔の連通部分を閉塞する閉塞部材が設けられていることを特徴とする。
また、本発明の岩盤削孔方法は、既に削孔された下方に延在する孔に案内ロッドを挿入し、回転ロッドの先端に取着された削孔ビットにより前記案内ロッドの回転可能な外周部に接触させつつ、また、切削された繰り粉を水により孔の外部に排出しつつ、孔の一部が重複して下方に延在する孔を多数削孔して岩盤にスリット状の溝を形成する際に、前記案内ロッドが既に削孔された第2の孔に挿入された状態で、前記第2の孔に隣接する既に削孔された第1の孔に閉塞部材を挿入することで、前記第1の孔の全長にわたって前記第1の孔と前記第2の孔の連通部分を閉塞し、削孔時の繰り粉が、前記案内ロッドの外周と前記第2の孔の内壁との間の環状隙間を通って前記第1の孔を含むスリット状の溝へ侵入することを前記閉塞部材で阻止しつつ、前記第2の孔に隣接する第3の孔の削孔を行うようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の岩盤削孔装置および岩盤削孔方法によれば、第3の孔の削孔時、閉塞部材により第2の孔と第1の孔の連通部分は閉塞され、環状隙間と、大きな空間となっている第1の孔とは連通が遮断されている。
したがって、第3の孔の削孔時の繰り粉が、回転する案内ロッドの外周部により環状隙間に導かれ、環状隙間から第1の孔に流入して第1の孔に堆積されていく不具合を解消できる。
そのため、スリット状の溝で囲まれた領域に、多数の割岩用孔を削孔し、各割岩用孔に割岩機を挿入して各割岩用孔を拡開させれば、スリット状の溝は自由面として機能することから割岩機により壁面を崩すことができ、割岩機を用いた無発破掘削によりトンネルを鉛直に掘削する際の掘削効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】案内ロッドおよび閉塞部材を有する岩盤削孔装置により孔を鉛直に掘削する場合の説明図である。
【図2】案内ロッドおよび閉塞部材を有する岩盤削孔装置により孔を鉛直に掘削する状態を示す平面図である。
【図3】案内ロッドおよび閉塞部材を有する岩盤削孔装置により多数の孔を削孔してスリット状の溝を形成する状態を示す平面図である。
【図4】トンネルを水平方向に掘削する場合に壁面を崩す際の説明図である。
【図5】案内ロッドを有する岩盤削孔装置により孔を水平方向に掘削する場合の説明図である。
【図6】削孔ビットと案内ロッドを用いて多数の孔を削孔してスリット状の溝を形成する状態を示す平面図である。
【図7】案内ロッドを有する岩盤削孔装置により孔を鉛直に掘削する場合の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図3を参照して説明する。なお、従来の部材、箇所と同様な部材、箇所に同一の符号を付して説明する。
図1〜図3に示すように、岩盤削孔装置は、架台22と、先端に削孔ビット18が取着された回転ロッド16と、不図示の回転ロッド16の回転駆動手段および軸方向移動手段と、案内ロッド20と、閉塞部材30とを含んで構成されている。
本実施の形態では、削孔ビット18により、まず、第1の孔24Aが削孔され、次に、第1の孔24Aに案内ロッド20を挿入して第2の孔24Bが削孔され、次に、第1の孔24Aに閉塞部材30を挿入すると共に第2の孔24Bに案内ロッド20を挿入して第3の孔24Cが削孔される。
架台22は上下方向に延在しており、下端にブラケット22Aが取着されている。
回転ロッド16は上下方向に延在し、軸受、ブラケット22Aを介して架台22で回転可能かつその軸方向に移動可能に支持されている。
回転駆動手段および軸方向移動手段は架台22で支持され、削孔時、回転ロッド16を回転駆動しつつ下方に移動させる。
【0012】
案内ロッド20は、孔を一部重複させて連続削孔しスリット状の溝12を形成する際に削孔ビット18に接触することで、削孔ビット18が、抵抗が少ない既に削孔された孔側へ変位することを抑制するものである。
案内ロッド20は、削孔ビット18により既に削孔された孔に挿入可能で、この孔の底部に至る長さで形成されている。
案内ロッド20は、架台22で支持された内側部材と、この内側部材に回転可能に支持され架台22の下方の内側部材の全域を覆う筒状の外側部材とで構成され、回転ロッド16と平行して上下に延在している。外側部材は、案内ロッド20の回転可能な外周部を構成し、回転駆動された削孔ビット18が接触することで、外側部材は回転し、外側部材は鋼製である。
なお、図において符号32は、岩盤に当接することで架台22の姿勢を安定させる当接部材を示している。
【0013】
閉塞部材30は、削孔時に案内ロッド20が既に削孔された第2の孔24Bに挿入された状態で、第2の孔24Bに隣接する既に削孔された第1の孔24Aに挿入され、第1の孔24Aと第2の孔24Bの連通部分2402(図2および図3参照)を閉塞するものである。
閉塞部材30は、ブラケット22Aを介して架台22で支持されている。閉塞部材30は、回転ロッド16と反対に位置する案内ロッド20の箇所に隣接して設けられ、案内ロッド20に沿って延在し、案内ロッド20の全長に対応した長さを有している。
閉塞部材30は、鋼製であってもよく、あるいは、合成樹脂製であってもよく、あるいは、ゴム製であってもよく、要するに、第1の孔24Aと第2の孔24Bの連通部分2402を閉塞するものであればよく、閉塞部材30を構成する材料は特に限定されない。
また、閉塞部材30の断面形状は、第1の孔24Aと第2の孔24Bの連通部分2402を閉塞するものであればよく、特に限定されない。
【0014】
本実施の形態では、閉塞部材30は内側部材30Aと、この内側部材30Aを覆う外側部材30Bとで構成されている。
内側部材30Aは剛性を有する材料でロッド状に形成され、鋼製、または、合成樹脂製であり、架台22で支持されている。
外側部材30Bは、ゴムなどのような従来公知の様々な弾性変形可能な材料で形成されている。
本実施の形態では、閉塞部材30が削孔された孔に挿脱されることから、外側部材30Bを、Shore−A硬度が60〜80の硬質ゴム製とし、閉塞部材30の耐久性を高めるようにしている。
また、外側部材30Bは、その延在方向と直交する方向で切断した断面形状が、回転ロッド16、案内ロッド20、閉塞部材30が並べられた方向に対して直交する方向に長軸を有する楕円形としている。
【0015】
外側部材30Bは、既に削孔された第1の孔24Aに挿入された際にこの第1の孔24Aの底部に当接し、架台22のブラケット22Aと第1の孔24Aの底部とにより挟持されて第1の孔24Aの半径方向外側に拡がるように、架台22のブラケット22Aからの長さが、ブラケット22Aから第1の孔24Aの底部までの寸法よりも大きい寸法で形成されている。
また、内側部材30Aは、外側部材30Bが架台22と第1の孔24Aの底部で挟持された際に、外側部材30Bの長手方向と直交する方向への曲りを阻止する断面積および長さで形成され、例えば、架台22のブラケット22Aからの長さが、案内ロッド20の下端の近傍の箇所まで延在する寸法で形成されている。
【0016】
次に、岩盤削孔装置を用いて下方に鉛直にスリット状の溝12を形成する岩盤削孔方法について説明する。
例えば、都市近郊において立坑構築のため岩盤を鉛直に掘削する場合や、トンネル工事の途中から下方に向けてトンネル断面を掘削する場合、掘削すべきトンネルの断面外周に沿って、また、断面を区画する複数の領域に沿って、下方に向けた多数の孔を一部重複させて連続削孔し、多数の孔の列によりスリット状の溝12を形成する。
詳細に説明すると、スリット状の溝12を形成するに際して、まず、削孔ビット18の下端から水を注入しつつ、削孔ビット18により第1の孔24Aを削孔する。この場合には、切削された砕石や土砂などの繰り粉を水により第1の孔24Aの外部に排出しつつ、削孔を行う。
【0017】
次に、図7(A)〜(C)に示すように、既に削孔された第1の孔24Aに、第1の孔24Aの底部まで案内ロッド20を挿入し、削孔ビット18により、該削孔ビット18を案内ロッド20に接触させつつ、また、切削された砕石や土砂などの繰り粉を水により孔の外部に排出しつつ、既に削孔された第1の孔24Aと一部重複させた第2の孔24Bを削孔する。この場合には、案内ロッド20の外側部材30Bは削孔ビット18により回転されているので、繰り粉は外側部材30Bにより案内されて環状隙間26に導かれるが、環状隙間26を周回して元の第1の孔24Aに戻される。また、環状隙間26は閉塞されているので、第2の孔24Bの削孔後に、環状隙間26に残存する繰り粉の量は少ない。
【0018】
つぎに、図1に示すように、第2の孔24Bに一部重複させた第3の孔24Cを削孔するに際して、第2の孔24Bに、第2の孔24Bの全長にわたって案内ロッド20を挿入し、第1の孔24Aに、第1の孔24Aの全長にわたって閉塞部材30を挿入する。第1の孔24Aへ閉塞部材30を挿入することで、第1の孔24Aの全長にわたって第1の孔24Aと第2の孔24Bの連通部分2402は閉塞される。
そして、削孔ビット18により、該削孔ビット18を案内ロッド20に接触させつつ、また、切削された砕石や土砂などの繰り粉を水により孔の外部に排出しつつ、第2の孔24Bと一部重複させた第3の孔24Cを削孔する。
【0019】
この場合、削孔途中の第3の孔24Cは、案内ロッド20の外周と第2の孔24Bの内壁との間の環状隙間26に連通しているが、閉塞部材30により第2の孔24Bと第1の孔24Aの連通部分2402は閉塞され、環状隙間26と、大きな空間となっている第1の孔24Aとは連通が遮断されている。
したがって、案内ロッド20の外側部材30Bは削孔ビット18により回転されているので、繰り粉は外側部材30Bにより案内されて環状隙間26に導かれるが、環状隙間26を周回して元の第3の孔24Cに戻され、環状隙間26は閉塞されているので、第3の孔24Cの削孔後に、環状隙間26に残存する繰り粉の量は少ない。
そして、このような削孔作業が連続して行われ、図3に示すように、下方に鉛直に延在する多数の削孔孔24A、24B、24C、……からスリット状の溝12が水平方向に延在形成される。
【0020】
したがって、本実施の形態によれば、削孔時の繰り粉が、回転する案内ロッド20の外周部により環状隙間26に導かれ、環状隙間26から第1の孔24Aに流入して第1の孔24Aに堆積されていき、あるいはこの第1の孔24Aに接続するスリット状の溝12へ堆積されていく不具合を解消できる。
したがって、スリット状の溝12で囲まれた領域に、多数の割岩用孔14を削孔し、各割岩用孔14に割岩機を挿入して各割岩用孔14を拡開させれば、スリット状の溝12は自由面として機能することから割岩機により壁面を効率良く崩すことができ、割岩機を用いた無発破掘削による下方に向けてのトンネルの掘削施工効率を高める上で有利となる。
【0021】
また、本実施の形態では、外側部材30Bは弾性変形可能な材料で形成され、第1の孔24Aに挿入された際に、外側部材30Bは第1の孔24Aの半径方向外側に拡がる。
そのため、閉塞部材30による第2の孔24Bと第1の孔24Aの連通部分2402の閉塞をより確実に行なえ、削孔時の繰り粉のスリット状の溝12への堆積を防止する上で有利となり、スリット状の溝12を自由面として機能させ、スリット状の溝12で区画された領域を割岩機を用いて効率良く崩すことができ、無発破掘削による下方に向けてのトンネルの掘削施工効率を高める上でより有利となる。
また、本実施の形態では、外側部材30Bをその延在方向と直交する方向で切断した断面形状を楕円形としたので、閉塞部材30を第1の孔24Aに挿入した際に、第1の孔24Aと第2の孔24Bとの連通部分2402寄りの第1の孔24Aの壁面に外側部材30Bが接触する面積を大きく確保でき、第2の孔24Bと第1の孔24Aの連通部分2402の閉塞をより確実に行う上で有利となり、スリット状の溝12を自由面として機能させ、スリット状の溝12で区画された領域を割岩機を用いて効率良く崩すことができ、無発破掘削による下方に向けてのトンネルの掘削施工効率を高める上でより有利となる。
【0022】
また、外側部材30Bの輪郭は楕円形であり、第1の孔24Aの輪郭をなす円形よりも小さいため、閉塞部材30の第1の孔24Aへの挿脱を円滑に行え、トンネル掘削効率を高める上でも有利となる。
また、外側部材30Bを硬質ゴム製としたので、削孔された孔に挿脱される閉塞部材30の耐久性を高め、下方へのトンネル掘削施工に費やされるコストを削減する上でも有利となる。
【符号の説明】
【0023】
12……スリット状の溝
16……回転ロッド
18……削孔ビット
20……案内ロッド
22……架台
24A、24B、24C……第1、第2、第3の孔
26……環状隙間
30……閉塞部材
30A……内側部材
30B……外側部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架台と、
前記架台により回転可能かつその軸方向に移動可能に支持され先端に削孔ビットが取着された回転ロッドと、
前記回転ロッドを回転駆動する回転駆動手段と、
前記架台で支持され前記回転ロッドと隣接して平行に延在し前記削孔ビットにより既に削孔された孔に挿入され前記削孔ビットに接触可能で回転可能な外周部を有し前記削孔ビットに接触することで前記削孔ビットの変位を抑制し前記既に削孔された孔とその一部を重複させつつ孔を順次削孔させるための案内ロッドと、
を備えた岩盤削孔装置において、
前記架台で支持され前記回転ロッドと反対に位置する前記案内ロッドの箇所に隣接して前記案内ロッドに沿って延在し、前記案内ロッドが既に削孔された第2の孔に挿入された状態で、前記第2の孔に隣接する既に削孔された第1の孔に挿入され、前記第1の孔と前記第2の孔の連通部分を閉塞する閉塞部材が設けられている、
ことを特徴とする岩盤削孔装置。
【請求項2】
前記閉塞部材は、剛性を有する材料で形成され前記架台で支持された内側部材と、弾性変形可能な材料で形成され前記内側部材を覆う外側部材とで構成され、
前記外側部材は、前記既に削孔された第1の孔に挿入された際にこの第1の孔の底部に当接し前記架台と前記第1の孔の底部で挟持されて前記第1の孔の半径方向外側に拡がるように、前記架台から前記第1の孔の底部までの寸法よりも大きい寸法で形成され、
前記内側部材は、前記外側部材が前記架台と前記第1の孔の底部で挟持された際に、前記外側部材の長手方向と直交する方向への曲りを阻止する断面積および長さで形成されている、
ことを特徴とする請求項1記載の岩盤削孔装置。
【請求項3】
前記外側部材はその延在方向と直交する方向で切断した断面形状が、前記回転ロッド、前記案内ロッド、前記閉塞部材が並べられた方向に対して直交する方向に長軸を有する楕円形を呈している、
ことを特徴とする請求項1または2記載の岩盤削孔装置。
【請求項4】
前記外側部材は、Shore−A硬度が60〜80の硬質ゴムで形成されている、
ことを特徴とする請求項1乃至3に何れか1項記載の岩盤削孔装置。
【請求項5】
既に削孔された下方に延在する孔に案内ロッドを挿入し、回転ロッドの先端に取着された削孔ビットにより前記案内ロッドの回転可能な外周部に接触させつつ、また、切削された繰り粉を水により孔の外部に排出しつつ、孔の一部が重複して下方に延在する孔を多数削孔して岩盤にスリット状の溝を形成する際に、
前記案内ロッドが既に削孔された第2の孔に挿入された状態で、前記第2の孔に隣接する既に削孔された第1の孔に閉塞部材を挿入することで、前記第1の孔の全長にわたって前記第1の孔と前記第2の孔の連通部分を閉塞し、
削孔時の繰り粉が、前記案内ロッドの外周と前記第2の孔の内壁との間の環状隙間を通って前記第1の孔を含むスリット状の溝へ侵入することを前記閉塞部材で阻止しつつ、前記第2の孔に隣接する第3の孔の削孔を行うようにした、
ことを特徴とする岩盤削孔方法。
【請求項6】
前記回転ロッド、前記案内ロッド、前記閉塞部材を支持する架台を設け、
前記閉塞部材を、剛性を有する材料で形成され前記架台で支持された内側部材と、弾性変形可能な材料で形成され前記内側部材を覆う外側部材とで構成しておき、
前記閉塞部材が前記第1の孔に挿入された際に、前記外側部材を、前記架台と前記第1の孔の底部で挟持させて前記第1の孔の半径方向外側に拡げる、
ことを特徴とする請求項5記載の岩盤削孔方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−167427(P2012−167427A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26712(P2011−26712)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(302060926)株式会社フジタ (285)
【Fターム(参考)】