説明

岩盤試料透水試験方法

【課題】立方体岩盤試料を使い真三軸試験装置を用いた完全な三主応力条件下で透水試験を行って各種の計測を行うことができるようにする。
【解決手段】岩盤試料1の表面に当接する側に溝2aが形成された導水板2を複数の面に貼り付けた状態の立方体形状の岩盤試料1の全体を防水性と弾性とを有する被覆部材3によって被覆し、該被覆部材3によって被覆された岩盤試料1に、立方体形状の各面の被覆部材3に当接する加圧板11A,11Bによって三主応力を付加しながら、被覆部材3を貫通して備えられる注水用配管を介して透水方向の注水側の導水板2の溝2aに水を供給すると共に透水方向の排水側の導水板2に到達した水を溝2aによって収集して被覆部材3を貫通して備えられる排水用配管を介して排水して透水試験を行うようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、岩盤試料透水試験方法に関する。さらに詳述すると、本発明は、立方体岩盤試料を使った三主応力条件下での透水試験に適用して好適な岩盤試料透水試験方法に関する。
【0002】
なお、本発明においては、水平直交二方向(X軸方向,Y軸方向)及び垂直方向(Z軸方向)の三主応力を独立させて付加する条件下で行われる試験のことを真三軸試験といい、当該真三軸試験を行うことができる装置のことを真三軸試験装置という。また、これまでの三軸試験では一般的に立方体形状の岩盤試料が用いられているので本発明の説明においても岩盤試料の形状は立方体であることを前提とするが、本発明の適用範囲として直方体形状の岩盤試料を用いる場合を除外するものではない。
【背景技術】
【0003】
例えば大深度地下トンネルや放射性廃棄物処分施設などの地下岩盤中の構造物の設計においては、熱や地下水の移動、応力が作用する環境下での熱特性や透水特性や力学特性などの岩盤の物性の把握は重要である。
【0004】
岩盤試料の従来の透水試験法としては、例えば、図4に示すように、台座101上に設置された立方体形状の岩盤試料Sの上下及び側面二方向を加圧機構を介して加圧する大型岩盤試験装置において、台座101上に設置される岩盤試料Sの透水面を除いた面をゴムジャケット102で覆い、底面,側面及び上面に通水面108を形成した加圧プレート103,104,105で水密に囲うものがある(特許文献1)。なお、図4は岩盤試料Sの上下方向の透水性を試験する際の止水構造体の部品構成を示している。また、図中符号106は濾紙を,符号107はゴムジャケット102の上部周囲及び下部周囲を固定するフランジ押さえをそれぞれ表し、図中符号(1)〜(9)は各部品の組み立て手順を示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−349813号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の透水試験法では、透水方向の二面(図4に示す例では上面と下面)はゴムジャケット102で覆っていないため、透水方向に加圧して当該透水方向の寸法が縮むとゴムジャケット102が撓んで当該ゴムジャケット102の特に端部において止水効果がなくなってしまう。加えて、下面加圧プレート103と上面加圧プレート105とから圧がかかると、フランジ押さえ107と側面加圧プレート104のエッジとがぶつかるので実際には透水方向には圧をかけることが殆どできず、実質は押さえているだけであり、三主応力条件下での透水試験とは言い難い。少なくとも、透水方向の圧力を所望の程度に自由に設定することはできない。したがって、完全な三主応力条件下での透水試験を行うことができるとは言い難い。
【0007】
また、特許文献1の透水試験法では、岩盤試料Sの温度を制御することができないので、岩盤の熱特性を把握することができない。したがって、岩盤の物性の把握において十分なデータを提供することができないという問題がある。
【0008】
すなわち、岩盤の物性を把握するためには岩盤の透水特性と力学特性とを把握することが必要であり、これら特性の把握のためには立方体岩盤試料を使い真三軸試験装置を用いた完全な三主応力条件下で透水試験を行って各種の計測を行う必要があるところ、これらの試験要件を満たす試験方法・装置はない。また、岩盤の物性を十分に把握するためには岩盤の熱特性と透水特性と力学特性とを把握することが必要であり、これら特性の把握のためには立方体岩盤試料を使い真三軸試験装置を用いた完全な三主応力条件下で岩盤試料の温度を制御しつつ透水試験を行って各種の計測を行う必要があるところ、これらの試験要件を全て満たす試験方法・装置はない。
【0009】
そこで、本発明は、立方体岩盤試料を使って完全な三主応力条件下で透水試験を行って各種の計測を行うことができる岩盤試料透水試験方法を提供することを目的とする。さらに、本発明は、立方体岩盤試料を使って完全な三主応力条件下で岩盤試料の温度を制御しつつ透水試験を行って各種の計測を行うことができる岩盤試料透水試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するため、請求項1記載の岩盤試料透水試験方法は、岩盤試料の表面に当接する側に溝が形成された導水板を複数の面に貼り付けた状態の立方体形状の岩盤試料の全体を防水性と弾性とを有する被覆部材によって被覆し、該被覆部材によって被覆された岩盤試料に、立方体形状の各面の被覆部材に当接する加圧板によって三主応力を付加しながら、被覆部材を貫通して備えられる注水用配管を介して透水方向の注水側の導水板の溝に水を供給すると共に透水方向の排水側の導水板に到達した水を溝によって収集して被覆部材を貫通して備えられる排水用配管を介して排水して透水試験を行うようにしている。
【0011】
したがって、この岩盤試料透水試験方法によると、複数の面に導水板を貼り付けた状態の岩盤試料の全体を防水性と弾性とを有する被覆部材によって被覆して三軸試験を行うようにしているので、いずれの方向についても止水効果が確保され、透水方向についても所望の圧力(荷重)を付加させることができる。
【0012】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の岩盤試料透水試験方法において、被覆部材がシリコンラバーであるようにしている。この場合には、本発明における被覆部材として要求される防水性と弾性とが確実に確保される。
【0013】
また、請求項3記載の発明は、請求項1記載の岩盤試料透水試験方法において、三主応力を付加する加圧板内に加熱部を設け、該加熱部によって岩盤試料の温度制御を行うようにしている。この場合には、岩盤試料の温度を制御しつつ透水試験を行うことができる。
【0014】
また、請求項4記載の発明は、請求項3記載の岩盤試料透水試験方法において、加熱部がラバーヒーターであるようにしている。この場合には、加圧板内に収容し易い加熱部とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の岩盤試料透水試験方法によれば、いずれの方向についても止水効果が確保され、透水方向についても所望の圧力(荷重)を付加させて完全な三主応力条件下での透水試験を行うことができるので、岩盤の真の物性の把握に有用なデータを提供することができ、岩盤試料透水試験の有用性・信頼性の向上を図ることが可能になる。
【0016】
請求項2記載の岩盤試料透水試験方法によれば、さらに、岩盤試料の温度を制御しつつ透水試験を行うことができるので、岩盤の真の物性の十分な把握に有用なデータを提供することができ、岩盤試料透水試験の有用性・信頼性の向上を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の岩盤試料透水試験方法を説明する図である。(A)は本発明を実施する実施形態の三軸試験装置の垂直断面図である。(B)は本発明で用いられる試験体の垂直断面図である。
【図2】本発明の岩盤試料透水試験方法を実施する実施形態の三軸試験装置の水平断面図である。
【図3】本発明の岩盤試料透水試験方法で用いられる導水板の構造を示す図である。
【図4】従来の透水試験装置の部品構成と組み立て手順とを示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。
【0019】
図1から図3に、本発明の岩盤試料透水試験方法の実施形態の一例を示す。本発明の岩盤試料透水試験方法は、岩盤試料1の表面に当接する側に溝2aが形成された導水板2を複数の面に貼り付けた状態の立方体形状の岩盤試料1の全体を少なくとも防水性と弾性とを有する被覆部材3によって被覆し、該被覆部材3によって被覆された岩盤試料1に、立方体形状の各面の被覆部材3に当接する加圧板11A,11Bによって三主応力を付加しながら、被覆部材3を貫通して備えられる注水用配管を介して透水方向の注水側の導水板2の溝2aに水を供給すると共に透水方向の排水側の導水板2に到達した水を溝2aによって収集して被覆部材3を貫通して備えられる排水用配管を介して排水して透水試験を行うものである。
【0020】
岩盤試料1は、通常の三軸試験の場合と同様に立方体に成形される。そして、立方体形状の岩盤試料1の各面(即ち、六面)には、図1(B)に示すように、導水板2が貼り付けられる。なお、図1及び図2においては、部品構成を分かり易くすることを考慮し、導水板2及び被覆部材3の断面厚さを他の部材・部品との現実の相対的な関係よりも厚めに表示している。
【0021】
本実施形態では、岩盤試料1の各面と導水板2との間に、導水板2から供給される水を岩盤試料1の面全体に行き渡らせるためにステンレスメッシュ5が介在させられる。ただし、ステンレスメッシュ5は本発明の必須の構成要素ではなく、ステンレスメッシュ5を介在させないようにしても良い。
【0022】
導水板2の、本実施形態ではステンレスメッシュ5を介在させて岩盤試料1と当接する側の面には、図3に示すように、溝2aが形成される。溝2aは、本実施形態では網の目状に形成されているが、これに限られず、例えば複数本の平行線状でも良い。また、溝2aは導水板2の面全体に亘って形成されることが望ましい。
【0023】
導水板2は、岩盤試料1に対するものとしての応力が加えられても溝2aが潰れない程度の剛性を有する素材によって形成される。具体的には例えば、アルミニウムやステンレス鋼などによって形成される。
【0024】
なお、導水板2は例えば1〔mm〕程度の厚さに形成される。また、溝2aは例えば幅1〔mm〕程度,深さ0.5〔mm〕程度に形成される。また、溝2a相互の間隔は、岩盤試料1の大きさや透水性なども勘案して適宜設定される。
【0025】
導水板2には、さらに、岩盤試料1を透水させるための水を溝2aに供給するための、或いは、岩盤試料1を透水させた水を溝2aを経由させて回収して排水するためのものであり、端部に開口して注水・排水用配管(図示省略)が挿入されると共に溝2aのいずれかの部分と連通する配管差込部2bが設けられる。配管差込部2bには注水・排水用配管の先端部分が挿入され例えば接着剤などによって固定される。
【0026】
そして、各面に導水板2を貼り付けた状態の岩盤試料1の全体を、言い換えると、岩盤試料1全体を導水板2も含めて一緒に、少なくとも防水性と弾性とを有する被覆部材3によって隙間なく被覆する。また、岩盤試料1を加熱して岩盤試料1の温度を制御する場合には、被覆部材3は、防水性と弾性に加え、想定される温度に対する耐熱性を更に有することが必要である。
【0027】
なお、被覆部材3の弾性率(硬度)は、付加する主応力の大きさや想定される厚さなどを勘案して適当なものが適宜選択される。また、被覆部材3で全体を覆う際に、先端部分が導水板2の配管差込部2bに挿入されている注水・排水用配管や岩盤試料1の表面に貼り付けられたセンサ類のケーブルが被覆部材3内に余分に埋没しないようにしておく。
【0028】
本実施形態では、防水性と適度の弾性とに加えて一定の耐熱性を有する点で適当であるのでシリコンラバー3で隙間なく被覆する。シリコンラバー3による被覆は、例えば、岩盤試料1の各面に導水板2を貼り付けた状態で液状のシリコンラバー3を全体に塗布して固めることによって行う。なお、シリコンラバー3の厚さは例えば3〜4〔mm〕程度の厚さにされる。また、シリコンラバー3の厚さは、導水板2が存在する範囲では場所によって大きな差がないことが望ましい。
【0029】
そして、立方体形状の各面に導水板2を貼り付けた状態で被覆部材3によって全体を隙間なく被覆した岩盤試料1に対して三主応力を付加する。このとき、全面(言い換えると三方向)の止水条件が確保されているので、三方向の載荷を所望の程度に自由に設定して透水試験を行うことができる。すなわち、完全な三主応力条件下での岩盤試料1の透水試験を行うことができる。なお、以下の説明では、岩盤試料1と当該岩盤試料1に貼り付けられた導水板2とを被覆部材3によって全体を隙間なく被覆して成形されるものを試験体4ともいう。
【0030】
本実施形態では、上述のように成形された試験体4の透水試験を行う装置として図1及び図2に示す三軸試験装置10を用いる。なお、図1及び図2においては、部品構成を分かり易くすることを考慮し、各部品を結合するボルト・螺子の図示を省略している。また、図1(A)では、図中の一点鎖線(符号I)の左側(符号IA)と右側(符号IB)とで、装置10の異なる位置の縦断面を示している(符号IA側:中央位置よりも側面寄りの位置の縦断面,符号IB側:中央位置の縦断面)。
【0031】
三軸試験装置10は、試験体4の側面のそれぞれに当接して独立に応力を付加する合計四つの水平方向加圧板11Aと、試験体4の下面に当接して応力を付加する垂直方向加圧板11Bと、水平方向加圧板11Aをピストンと見立てて当該加圧板11Aの水平方向往復運動のガイドとして働く合計四つの水平方向シリンダ12とを有する。すなわち、各水平方向加圧板11Aは各水平方向シリンダ12に摺動可能に収容されガイドされて水平方向に往復運動可能に構成される。
【0032】
また、試験体4の上面に対しては、当該上面に当接する上面固定板14が設けられる。
【0033】
本実施形態では、各水平方向加圧板11Aには試験体4と反対側の面(即ち、外側の面)から突出するようにガイドピン13Aが取り付けられる。本実施形態では、矩形の水平方向加圧板11Aの各角部寄りの位置に合計四本のガイドピン13Aが取り付けられる。また、各水平方向シリンダ12内側には水平方向加圧板11Aと対向する面にガイドピン13Aの突出部分を摺動可能に収容しガイドするガイドホール13Bが設けられる。これにより、水平方向加圧板11Aが往復運動する際に傾斜してしまうことが防止されて試験体4の側面全体に均等に応力が付加されるようになる。
【0034】
そして、三軸試験装置10は、水平断面矩形であって当該装置10の四面の側壁を構成して四つの水平方向シリンダ12を固定保持する枠体15と、当該枠体15の上端に取り付けられて装置10の天板を構成して上面固定板14を固定保持する矩形の上板16と、枠体15の下端に取り付けられて装置10の底板を構成する矩形の下板17とを更に有する。なお、水平方向シリンダ12は螺子によって枠体15に取り付けられると共に上面固定板14は螺子によって上板16に取り付けられる。
【0035】
そして、これら枠体15と上板16と下板17とが組み合わせられて試験体4,水平方向加圧板11A及び水平方向シリンダ12,垂直方向加圧板11B,上面固定板14を囲って三軸試験装置10全体として直方体形状に形成される。なお本実施形態の三軸試験装置10は下板17の下面に取り付けられる設置用脚21を有する。
【0036】
ここで、本発明では、透水試験方法の目的などに合わせて、岩盤試料1の表面に例えばひずみゲージ等のセンサ類を適宜貼り付けるようにしても良い。そして、センサ類を貼り付ける場合には、当該センサ類のケーブルは被覆部材3を貫通させ、また、当該ケーブルを三軸試験装置10から取り出すための通路(貫通孔)を例えば枠体15に設けるようにしても良い。具体的には例えば、枠体15の上端面に溝を設けて上板16の下面との間にケーブル取出し用通路を形成するようにしても良い。
【0037】
下板17の上面(即ち、垂直方向加圧板11Bと対向する面)には垂直方向加圧板11Bをピストンと見立てて当該加圧板11Bの垂直方向往復運動のガイド(言い換えると、シリンダ)として働く凹部17aが形成される。すなわち、垂直方向加圧板11Bは下板の凹部17aに摺動可能に収容されガイドされて垂直方向に往復運動可能に構成される。
【0038】
なお、枠体15と上板16と下板17とは試験体4に応力を付加する際の反力に抗する支持筐体としての機能を発揮するものであり、枠体15と下板17とがボルト・螺子によって強固に連結され固定されると共に、その状態で試験体4を収容した後に枠体15と上板16とがボルト・螺子によって強固に連結され固定される。
【0039】
各水平方向加圧板11Aの水平方向の往復運動は、枠体15の各面(言い換えると、各側壁)を水平方向に貫通する貫通孔15a及び水平方向シリンダ12の試験体4の側面と対向する面を水平方向に貫通する貫通孔12aを介しての増圧機(図示省略)による水などの流体の注入と排出とによって制御される。そして、増圧機の前記流体の注入圧力を調整することによって水平方向加圧板11Aによって試験体4に付加される応力の大きさが制御される。なお、貫通孔15aは枠体15の四面の側壁の各々に設けられ(本実施形態では一面に二つずつ)、四つの水平方向加圧板11Aは各々が独立に制御され、試験体4の各側面に付加される応力の大きさは独立に制御される。
【0040】
また、垂直方向加圧板11Bの垂直方向の往復運動は、下板17を垂直方向に貫通する貫通孔17bを介しての増圧機(図示省略)による水などの流体の注入と排出とによって制御される。そして、増圧機の前記流体の注入圧力を調整することによって垂直方向加圧板11Bによって試験体4に付加される圧力の大きさが制御される。
【0041】
本発明の三軸試験装置10は、枠体15及び水平方向シリンダ12を水平方向に貫通すると共に水平方向加圧板11Aに差し込まれて当該水平方向加圧板11Aに固定され且つ枠体15及び水平方向シリンダ12に対して摺動可能に備えられる管20aと、下板17を垂直方向に貫通すると共に垂直方向加圧板11Bに差し込まれて当該垂直方向加圧板11Bに固定され且つ下板17に対して摺動可能に備えられる管20bと、三軸試験装置10の外側に取り付けられて各管20a,20bの変位量を計測するギャップセンサ(図示省略)とを有する。そして、当該ギャップセンサによって各管20a,20bの変位量として各水平方向加圧板11A,垂直方向加圧板11Bの変位量が計測される。これにより、試験体4に付加される圧力は増圧機によって制御されると共に各加圧板11A,11Bの変位量が計測されるので、岩盤試料1にかかる正確な応力が把握可能になる。
【0042】
また、三軸試験装置10は、上板16に対して固定されると共に先端面が試験体4の上面に当接する圧力センサ18とギャップセンサ19とを備える。そして、これら圧力センサ18とギャップセンサ19とによって試験体4の上面における(言い換えると、上面にかけられている)圧力と試験体4上面の変位とが直接計測される。
【0043】
上述の構成により、本実施形態の三軸試験装置10によれば、各水平方向加圧板11A及び垂直方向加圧板11Bによって試験体4中の岩盤試料1に水平直交二方向(X軸方向,Y軸方向)及び垂直方向(Z軸方向)の三主応力を独立させて付加することができ、真三軸試験を行うことができる。
【0044】
本実施形態の三軸試験装置10は、さらに、試験中の岩盤試料1の温度を制御するための加熱部20を有する。本実施形態では、加熱部20として、具体的には、各水平方向加圧板11Aの内部及び垂直方向加圧板11Bの内部及び上面固定板14と上板16との間のそれぞれにラバーヒーターを有する。
【0045】
本実施形態では、水平方向加圧板11A及び垂直方向加圧板11Bは板面の方向に二分割されていると共に一方に凹部が形成され、当該凹部にラバーヒーター20が格納される。また、上面固定板14の上板16との当接側に凹部が形成され、当該凹部にラバーヒーター20が格納される。
【0046】
なお、前述の管20aは水平方向加圧板11Aに差し込まれてラバーヒーター20の格納空間に達しており、また、前述の管20bは垂直方向加圧板11Bに差し込まれてラバーヒーター20の格納空間に達している。そして、各ラバーヒーター20の電源線は、これら管20a,20b、或いは、上板16を垂直方向に貫通する貫通孔16aのいずれかを経由して三軸試験装置10の外部に引き出されて外部の電源装置(図示省略)に接続される。そして、当該外部の電源装置の操作によってラバーヒーター20の温度が制御される。
【0047】
加熱部20を備えることにより、本実施形態の三軸試験装置10によれば、岩盤試料1の温度を制御しながら透水試験を行うことができる。
【0048】
また、岩盤試料1の温度分布を把握する場合には、岩盤試料1の表面の複数箇所に熱電対等の温度計測センサを貼り付ける。そして、当該温度計測センサのケーブルは、前述のひずみゲージ等のセンサ類のケーブルを三軸試験装置10から取り出すためのケーブル取出し用通路を介して装置10の外側に取り出すようにする。
【0049】
以上のように構成された本発明の岩盤試料透水試験方法によれば、いずれの方向についても止水効果が確保され、透水方向についても所望の圧力(荷重)を付加させて完全な三主応力条件下での透水試験を行うことができるので、岩盤の真の物性の把握に有用なデータを提供することができ、岩盤試料透水試験の有用性・信頼性の向上を図ることが可能になる。また、岩盤試料の温度を制御しつつ透水試験を行うことができるので、岩盤の真の物性の十分な把握に有用なデータを提供することができ、岩盤試料透水試験の有用性・信頼性の向上を図ることが可能になる。
【0050】
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、本実施形態では、三軸試験装置10が加熱部20を備えるようにしているが、本発明においては加熱部20は必須の構成ではない。例えば、岩盤の透水特性と力学特性とを把握するために完全な三主応力条件下で透水試験を行う場合、言い換えると、岩盤の熱特性の把握は不要であって岩盤試料1の温度の制御は不要である場合には加熱部20を有しない三軸試験装置10を用いるようにしても良い。
【0051】
また、本実施形態では、加熱部20としてラバーヒーターを用いるようにしているが、本発明の加熱部20としては各加圧板11A,11Bや上面固定板14に熱を供給可能なものであればどのようなものでも良い。すなわち、ヒーターであればラバーヒーターには限られないし、或いは、各加圧板11A,11Bや上面固定板14内に流路を形成して当該流路に温度調整された流体を流動させるようにしても良い。
【0052】
また、本実施形態では、岩盤試料1の各面(即ち、六面)に導水板2を貼り付けるようにしているが、導水板2は試験対象の透水方向に基づいて岩盤試料1の注水側の面と排水側の面との二面のみに貼り付けるようにしても良い。
【符号の説明】
【0053】
1 岩盤試料
2 導水板
2a 溝
3 被覆部材
11A 水平方向加圧板
11B 垂直方向加圧板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
岩盤試料の表面に当接する側に溝が形成された導水板を複数の面に貼り付けた状態の立方体形状の前記岩盤試料の全体を防水性と弾性とを有する被覆部材によって被覆し、該被覆部材によって被覆された前記岩盤試料に、立方体形状の各面の前記被覆部材に当接する加圧板によって三主応力を付加しながら、前記被覆部材を貫通して備えられる注水用配管を介して透水方向の注水側の前記導水板の溝に水を供給すると共に前記透水方向の排水側の前記導水板に到達した水を前記溝によって収集して前記被覆部材を貫通して備えられる排水用配管を介して排水して透水試験を行うことを特徴とする岩盤試料透水試験方法。
【請求項2】
前記被覆部材がシリコンラバーであることを特徴とする請求項1記載の岩盤試料透水試験方法。
【請求項3】
前記三主応力を付加する前記加圧板内に加熱部を設け、該加熱部によって前記岩盤試料の温度制御を行うことを特徴とする請求項1記載の岩盤試料透水試験方法。
【請求項4】
前記加熱部がラバーヒーターであることを特徴とする請求項3記載の岩盤試料透水試験方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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