説明

嵌入爪付金具

【課題】第一部材2に形成された長孔21aと、第二部材3に形成された取付孔31aにボルト41を挿通させて両部材を締結する際、両部材が長孔21aの長さ方向に相対的にずれるのを防止する。
【解決手段】長孔21aが形成された第一部材2と取付孔31aが形成された第二部材3を、ボルト41とナット42により締結する際、第一部材2と第二部材3が長孔21aの長手方向に相対的にずれるのを防止する金具であって、第一部材2上に当接し、ボルト41を挿通させる挿通孔11aが形成された座面部11と、座面部11のうち、長孔21aの長手方向に端部から長孔21a側に延び出して形成され、第一部材2と第二部材3を締結した際、長孔21aに嵌入する嵌入爪13とを備え、嵌入爪13の幅は、座面部11側から先端に向かって徐々に幅狭に形成され、座面11側の幅が長孔21aの短手方向の幅よりも大きく、先端部が長孔21aの短手方向の幅よりも小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一の部材に形成された長孔と、他の部材に形成された取付孔にボルト等を挿通させて両部材を締結した際、両部材が長孔の長さ方向に相対的にずれるのを防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の部材をボルトやナット等を用いて締結する際には、締結箇所の位置決めが必要となるため、各部材に、各部材を相対的にスライド等させるための構造が設けられる場合がある。このような場合においては、各部材を締結した後、当該スライド等の構造によって部材がずれるのを防止する必要があるところ、通常では、ボルトやナット等の締め付けによる摩擦力に頼っている。
【0003】
他方、屋根などの傾斜を有する場所や、屋外で風等の影響を受ける場所等では、傾斜や風等によって、互いに締結した部材同士が相対的にずれるのを防止する必要がある。
【0004】
この点、特許文献1では、太陽光発電パネル等を屋根上等に設置するための取付け枠桟用の固定装置であって、屋根部材側に固定される固定部材と、固定部材に対し屋根の流れ方向へ移動可能に組み付けられ、かつ上面に取付け枠桟を載置する可動部材と、可動部材に対し取付け枠桟の一部を係合固定する固止部材とを備え、固定部材には可動部材が当接され可動部材の流れ方向における下方端の位置を規制する規制部を設け、可動部材の一方側には取付け枠桟の一部と係合して固止する係合固止部を形成すると共に、係合固止部と対向する他方側には固止部材の締め付け固止用の取付け部を形成した装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−314898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1記載の装置では、各部材を固定した後、可動部材が一定の距離以上に動くのを規制する機構が設けられているに過ぎない。即ち、当該機構によって可動部材の動きを規制する時点で、既に可動部材は固定位置から動いてしまっており、このような状態に至っては、当該可動部材を元の固定位置に戻す必要が出てくる。
【0007】
このような問題は、各部材の締結位置での固定強度をあげることで解決される。
そこで、本発明は、一の部材に形成された長孔と、他の部材に形成された取付孔にボルト等を挿通させて両部材を締結する際、両部材が長孔の長さ方向に相対的にずれるのを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る嵌入爪付金具は、一定方向に一定の長さを有する長孔が形成された第一部材と、取付孔が形成された第二部材と、雄型凸部を備えた雄型締結具と、雌型凹部を備えた雌型締結具とにおいて、上記長孔と上記取付孔とに挿通させた上記雄型締結具の雄型凸部に上記雌型締結具の雌型凹部を締結させることで、上記第一部材と上記第二部材とを締結する際、上記第一部材上であって、上記雄型締結具と雌型締結具との間に取り付けられて、上記第一部材と上記第二部材とが上記長孔の長手方向に相対的にずれるのを防止する金具であって、上記第一部材上に当接し、上記雄型締結具の雄型凸部を挿通させる挿通孔が形成された座面部と、上記座面部のうち、上記長孔の長手方向の端部から、上記長孔側に延び出して形成され、上記第一部材と上記第二部材を上記雄型締結具及び上記雌型締結具で締結した際、上記長孔に嵌入する嵌入爪と、を備え、上記嵌入爪の幅は、上記座面部側から先端に向かって徐々に幅狭に形成され、上記座面側の幅が上記長孔の短手方向の幅よりも大きい幅となっており、先端部が上記長孔の短手方向の幅よりも小さい幅となっていることを特徴とする。
【0009】
ここで、雄型締結具とは例えばボルトやビスなどであり、ナットなどの雌型締結具と一対で用いられて、複数の部材を一体に締結する部品をいう。また、この雄型締結具が備える雄型凸部とは、雄ネジが螺刻された軸部などであり、ナットなどの雌型締結具に螺合あるいは嵌合等する部分をいう。
また、雌型締結具とは例えばナットなどであり、ボルトやビスなどの雄型締結具と一対で用いられて、複数の部材を一体に締結する部品をいう。また、この雌型締結具が備える雌型凹部とは、雌ネジが螺刻されたネジ孔などであり、ボルトやビスなどの雄型締結具に螺合あるいは嵌合等する部分をいう。
また、雄型締結具及び雌型締結具には、ボルトやナット等のいわゆる部品に限らず、雄型凸部ないしは雌型凹部を備えた締結面も含む。また、雌型凹部には、雌ネジが螺刻されていない平坦な取付面などに、タッピンネジ等の雄型締結具によってねじ切って形成されたネジ孔なども含む。
【0010】
また、上記嵌入爪は、上記座面部のうち、上記長孔の長手方向の両端部から、上記長孔側に延び出して形成されているものとしてもよい。
【0011】
また、 上記座面部のうち、上記長孔に面している端部には、上記長孔の短手方向に延び出し、上記第一部材と上記第二部材が締結された際に、上記第一部材上に当接する舌片部、をさらに備えるものとしてもよい。
【0012】
また、上記嵌入爪と上記座面部とのなす角が90度以上180度未満であるものとしてもよい。
【0013】
また、上記嵌入爪の先端部に、上記嵌入爪を上記長孔内へガイドするガイド部が設けられているものとしてもよい。
【0014】
また、上記嵌入爪の向きを示す目印が付されているものとしてもよい。
【0015】
嵌入爪の向きを示す目印とは例えば、色付け、矢印、模様などであり、舌片部や嵌入爪など、嵌入爪付金具の所定の箇所に付される。
【0016】
材質が少なくとも、上記第二部材と同等以上の硬度を有する金属からなるものとしてもよい。
【0017】
また、材質が、鉄又はステンレス鋼のいずれかよりなるものとしてもよい。
【0018】
また、上記嵌入爪付金具と上記雄型締結具とが一体化した嵌入爪付雄型金具であってもよい。
【0019】
また、上記嵌入爪付金具と上記雌型締結具とが一体化した嵌入爪付雌型金具であってもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、第一部材に形成された長孔と、第二部材に形成された取付孔にボルト等を挿通させて両部材を締結する際、嵌入爪付金具の嵌入爪が長孔に嵌入するため、両部材が長孔の長さ方向に相対的にずれるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る嵌入爪付金具を示した図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は底面図、(d)は側面図、(e)は斜視図である。
【図2】本実施形態に係る嵌入爪付金具を用いて、第一部材と第二部材とを締結する工程を示す図であり、(a)は部分透視斜視図、(b)はA−A’矢視図である。
【図3】本実施形態に係る嵌入爪付金具を用いて、第一部材と第二部材とを締結した状態を示す図であり、(a)は平面図、(b)はB−B’矢視図である。
【図4】本発明の第二の実施形態に係る嵌入爪付金具を示した図であり、(a)は嵌入爪に色を施したものの平面図、(b)は舌片部に色を施したものの平面図である。
【図5】本発明の第三の実施形態に係る嵌入爪付金具を示した図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は底面図、(d)は側面図、(e)は斜視図である。
【図6】本実施形態に係る嵌入爪付金具を用いて、第一部材と第二部材とを締結する工程を示す図であり、(a)は全体を示す部分透視斜視図、(b)は(a)の一部を拡大した部分透視斜視図である。
【図7】本発明の第四の実施形態に係る嵌入爪付雄型金具を示す斜視図である。
【図8】本実施形態に係る嵌入爪付雄型金具を用いて、第一部材と第二部材とを締結する工程を示す部分透視斜視図である。
【図9】本発明の第五の実施形態に係る嵌入爪付雌型金具を示す斜視図である。
【図10】本実施形態に係る嵌入爪付雌型金具を用いて、第一部材上と第二部材とを締結する工程を示す部分透視斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0022】
次に、本発明の実施形態について図を参照して説明する。
本発明の第一の実施形態に係る嵌入爪付金具1を図1から図3に示す。
この嵌入爪付金具1は、図1に示されるように、1枚の平板状の金属板を折曲してなり、座面部11、舌片部12、及び嵌入爪13から構成されている。
【0023】
座面部11は、図2及び図3に示されるように、第一部材2と第二部材3とが締結される際、第一部材2の基底部21上に、ボルト41とナット42によって挟み込まれる部分である。
この座面部11の中央には、ボルト41の軸部41bを挿通させるための挿通孔11aが形成されている。
【0024】
舌片部12は、座面部11の端部のうち、第一部材2と第二部材3とが締結される際、第一部材2の長孔21aの短手方向(長手方向と直交する向き)の端部から、座面部11及び第一部材2の基底部21と水平に延び出した部分である。
この舌片部12は、第一部材2と第二部材3とが、ボルト41とナット42によって締結された際、第一部材2の基底部21上に当接する。
【0025】
嵌入爪13は、座面部11の端部のうち、第一部材2と第二部材3とが締結される際、長孔21aの長手方向の両端部から、第一部材2ないしは第二部材3側に折曲して延び出した部分である。
図1(b)に示されるように、この嵌入爪13と座面部11とのなす角xは、少なくとも90度以上180度未満の鈍角を形成する。このような範囲の角度に形成することで、第一部材2と第二部材3を締結する際、嵌入爪13がひしゃげずに長孔21aへ嵌入して、安定的に締結できる。
また、この嵌入爪13の幅は、座面部11側から、先端に向かって徐々に幅狭に形成され、座面部11側は長孔21aの短手方向の幅よりも僅かに幅広に形成され、先端は長孔21aの短手方向の幅よりも僅かに幅狭に形成されている。
【0026】
以上の構成からなる嵌入爪付金具1は、少なくとも第一部材2を構成する材料と同等以上の硬度を有する金属であることが好ましく、例えば、第一部材2がアルミニウムよりなる場合には、嵌入爪付金具1は鉄やステンレス等で構成するとよい。これにより、嵌入爪13が長孔21aに嵌入する際、嵌入爪13の端部が、嵌入爪付金具1と同等以下の硬度しかない第一部材2の長孔21aの縁に食い込んで、締結された第一部材2と第二部材3とが長孔21aの長手方向に相対的にずれるのを防止することができる。
【0027】
続いて、嵌入爪付金具1を用いて締結する第一部材2及び第二部材3の一例を図2により説明する。
第一部材2は、アルミニウム等の矩形状の金属板を成形加工したものである。この第一部材2は、第二部材3の載置部31上に載置される基底部21と、この基底部21の幅方向の両端部から上方へ直角に折曲して延び出した支持部22と、基底部21と水平な矩形状からなり、支持部22により下方から支持された上面部23とから構成されている。
【0028】
基底部21には、第一部材2の長手方向に長尺な長孔21aが穿設されている。この長孔21aは、短手方向の幅がボルト4の軸部41bの直径よりも僅かに大きく、且つ、ボルト4の頭部41aの直径よりも小さく形成されている。また、この長孔21aの長手方向の両端部は、ボルト4の軸部41bの円周形状に合わせて円弧上に形成されている。
【0029】
第二部材3は、アルミニウム等の一枚の矩形状の金属板を折曲して形成、あるいは押し出し材で構成したものである。この第二部材3は、第一部材2を載置する矩形状の載置部31と、この載置部31の長さ方向の両端部から下方へ直角に折曲して延び出し、載置部31を支持する支持部32と、この支持部32の下端から外側へ直角に折曲し、載置部31と水平に延び出した基底部33とから構成されている。
【0030】
載置部31の中央付近には、ボルト4の軸部41bを挿通させるための取付孔31aが設けられている。この取付孔31aの直径は、ボルト41の頭部41aの直径よりも小さく、取付孔31aにボルト41を挿通させた際には、ボルト41の軸部41bのみが挿通し、ボルト41の頭部41aは載置部31に引っ掛かる。
また、基底部33の中央付近には、第二部材3を敷設面等に設置等するための取付孔33aが穿設されている。この取付孔33aにタッピンネジ等を挿通させた上、当該タッピンネジを敷設面にねじ込むことで、第二部材3を敷設面に設置することができる。
【0031】
なお、本例においては、第一部材2と第二部材3との締結にボルト41とナット42が用いられる。
ボルト41は、第二部材3の取付孔31aの直径よりも大きい直径を有する頭部41aと、外周面上に雄ネジが螺刻された軸部41bとから構成される。
また、ナット42は、その幅が第一部材2の長孔21aの短手方向の幅よりも大きく、中央部分には、内周面に雌ネジが螺刻されたネジ孔42aが形成されている。
【0032】
次に、この嵌入爪付金具1により、第一部材2と第二部材3とを締結する工程について説明する。
まず、図2に示されるように、第二部材3上に第一部材2を載置する。そして、第二部材3の取付孔31aに、ボルト41の軸部41bを下面側から挿通させ、この軸部41bをさらに第一部材2の長孔21aに挿通させる。この際、ボルト41の頭部41aは、その直径が取付孔31aの直径よりも大きいために、第二部材3の載置部31の下面に引っ掛かる。
【0033】
ここで、ボルト41の軸部41bは、第一部材2の長孔21aより上方に突出した状態となる。この状態で、ボルト41の軸部41bが長孔21a内を摺動するようにして、長孔31bの長手方向に第一部材2をスライドさせ、第一部材2と第二部材3とを締結する位置を決める。
【0034】
それから、長孔21aから突出したボルト41の軸部41bに対し、上方から嵌入爪付金具1の挿通孔11aを挿通させる。この際、嵌入爪13を長孔21aの長手方向に向けて挿通させ、嵌入爪13を長孔21aに嵌入させる。
【0035】
さらに、適宜ワッシャー43を介して、ナット42を取り付ける。ボルト41にナット42を螺合させ、きつく締めつけていくことで嵌入爪13を長孔21a内により深く嵌入させると、嵌入爪13の側端部が長孔21aの縁に徐々に食い込む。
こうして、嵌入爪付金具1の舌片部12が第一部材2の基底部21に当接するまでボルト41とナット42を締結させると、図3に示されるように、嵌入爪13の側端部が長孔21aの縁にしっかりと食い込んだ状態となる。
【0036】
以上の本実施形態によれば、嵌入爪13が長孔21aの縁に食い込むことで、第一部材2と第二部材3上とが、長孔21aの長手方向に相対的にずれることなく固定される。
【実施例2】
【0037】
次に、本発明の第二の実施形態に係る嵌入爪付金具5、6を図4に示す。本実施形態に係る嵌入爪付金具5、6は、嵌入爪53、63、ないしは舌片部52、62の向きを示す色づけがなされたものである。
なお、色付け以外の嵌入爪付金具5、6の構成は、第一の実施形態に係る嵌入爪付金具1と同様であり、嵌入爪付金具5、6を構成する座面部51、61、挿通孔51a、61a、舌片部52、62、嵌入爪53、63の形状は、第一の実施形態に係る嵌入爪付金具1を構成する座面部11、挿通孔11a、舌片部12、嵌入爪13の形状と同様である。
【0038】
図4(a)の例では、嵌入爪53に、座面部51や舌片部52と異なる色付けがなされている。この色付けによって施工者は、嵌入爪53の向きを外観から容易に把握することができ、間違うことなく嵌入爪53を長孔21aの長手方向に向けて長孔21a内に嵌入させる。
【0039】
また、図4(b)の例では、舌片部62に、座面部61や嵌入爪63と異なる色付けがなされている。この色付けによって施工者は、舌片部62の向きを外観から容易に把握することができ、間違うことなく舌片部62を長孔21aの短手方向に向けて長孔21a内に嵌入させる。
【0040】
なお、本例における色付けは、嵌入爪53、63や舌片部52、62の目印となるものであり、色の種類は特に限られないし、色の代わりに矢印や模様などを付してもよい。
【0041】
以上の本実施形態によれば、長孔21aに対する嵌入爪53、63ないしは舌片部52、62の向きを外観から容易に認識することができ、誤った向きに嵌入爪付金具1が取り付けられるのを防ぐことができる。
【実施例3】
【0042】
本発明の第三の実施形態に係る嵌入爪付金具7を図5及び図6に示す。
本実施形態に係る嵌入爪付金具7は、嵌入爪73を第一部材2の長孔21aに嵌入させる際に、嵌入爪73の向きを示すと共に、嵌入爪73が長孔21aに嵌入するのをガイドするガイド部74が形成されたものである。
なお、ガイド部74が形成された嵌入爪73以外の嵌入爪付金具7の構成は、第一の実施形態に係る嵌入爪付金具1と同様であり、嵌入爪付金具7を構成する座面部71、挿通孔71a、舌片部72、嵌入爪73の形状は、第一の実施形態に係る嵌入爪付金具1を構成する座面部11、挿通孔11a、舌片部12、嵌入爪13の形状と同様である。
【0043】
ガイド部74は、嵌入爪73の先端部から真っ直ぐに延び出して形成されている。このガイド部74は、幅が嵌入爪73の先端の幅と同一、即ち、嵌入爪73が嵌入する長孔21aの短手方向の幅よりも僅かに狭く形成されている。
図6(b)に示されるように、施工者が嵌入爪73を長孔21aに嵌入させる際、ガイド部74によるガイドに従って嵌入させる。それから第一の実施形態におけるのと同様に、ボルト41にナット42を螺合させることにより、嵌入爪73の側縁部が長孔21aの縁に食い込み、第二部材3上に第一部材2が固定される。
【0044】
本実施形態によれば、嵌入爪73を長孔21aに嵌入させる際、ガイド部74からスムーズに嵌入させることができる。また、ガイド部74によって、外観から容易に嵌入爪73の向きを把握することができ、嵌入爪付金具7を間違った向きに取り付けるのを防ぐことができる。
【実施例4】
【0045】
本発明の第四の実施形態に係る嵌入爪付雄型金具8を図7及び図8に示す。
本実施形態に係る嵌入爪付雄型金具8は、ボルト等の雄型締結具と、第一の実施形態に係る嵌入爪付金具1とが一体となったものである。
この嵌入爪付雄型金具8は、図7に示されるように、座面部81、舌片部82、嵌入爪83、及び軸部84とから構成される。
なお、軸部84以外の嵌入爪付雄型金具8の構成は、第一の実施形態と同様であり、嵌入爪付雄型金具8を構成する座面部81、舌片部82、及び嵌入爪83の形状は、第一の実施形態に係る嵌入爪付金具1を構成する座面部11、舌片部12、及び嵌入爪13の形状と同様である。
【0046】
軸部84は、座面部81の下面から、長孔21a側に向かって突出した棒状体であり、外周面には雄ネジが螺刻されている。
【0047】
次に、嵌入爪付雄型金具8を用いて第一部材2と第二部材3とを締結する工程を、図8により説明する。
まず、第二部材3上に第一部材2を載置する。それから、第一部材2の長孔21aに、上方から軸部84を挿通させ、さらにそのまま、第二部材3の取付孔31aに挿通させる。
この際、嵌入爪83を長孔21aの長手方向に嵌入させる。
【0048】
それから、第二部材3の取付孔31aから載置部31の下面へ突出した軸部84にナット42を螺合させる。
嵌入爪83が長孔21aに嵌入した状態を保ちながら、ナット42をしっかりと締め付け、嵌入爪83を長孔21aの縁に食い込ませる。
これにより、少ない部品点数で、第一部材2と第二部材3とを締結することができる。
【実施例5】
【0049】
本発明の第五の実施形態に係る嵌入爪付雌型金具9を図9に示す。
本実施形態に係る嵌入爪付雌型金具9は、ナット等の雌型締結具と、第一の実施形態に係る嵌入爪付金具1とが一体となったものである。
この嵌入爪付雄型金具9は、座面部91、舌片部92、嵌入爪93、及び突出部94とから構成される。
なお、突出部94以外の嵌入爪付雄型金具9の構成は、第一の実施形態に係る嵌入爪付金具1と同様であり、嵌入爪付雌型金具9を構成する座面部91、舌片部92、及び嵌入爪93の形状は、第一の実施形態に係る嵌入爪付金具1を構成する座面部11、舌片部12、及び嵌入爪13の形状と同様である。
【0050】
突出部94は、座面部91から上方に突出してなる。
この突出部94の中央部分には、座面部91を貫いて、内周面に雌ネジが螺刻されたネジ孔94aが形成されている。
【0051】
次に、嵌入爪付雌型金具9を用いて第一部材2と第二部材3とを締結する工程を、図10により説明する。
まず、第二部材3上に第一部材1を載置する。それから、第一部材2の長孔21aに、上方から嵌入爪付雌型金具9をあてがう。この際、嵌入爪93を長孔21aの長手方向に嵌入させる。
【0052】
それから、第二部材3の載置部31の下面から、取付孔31a及び長孔21aにボルト41bの軸部を挿通させ、さらにそのままネジ孔94aに螺合させる。
嵌入爪93が長孔21aに嵌入した状態を保ちながら、ボルト41をしっかりと締め付け、嵌入爪93を長孔21aの縁に食い込ませる。
これにより、第四の実施形態と同様、少ない部品点数で第一部材2と第二部材3とを締結することができる。
【0053】
なお、以上の本実施形態に係る嵌入爪付金具1、5、6、7、嵌入爪付雄型金具8、ないし嵌入爪付雌型金具9において、座面部11、51、61、71、81、91から長孔21aに向かって、長孔21aの短手方向の幅よりも僅かに大きい幅から僅かに小さい幅へ徐々に幅狭に形成された嵌入爪13、53、63、73、83、93は、直線的に幅狭となるように構成されているが、これに限らず、曲線的ないしは円弧状に幅狭となるように構成することもできる。
【符号の説明】
【0054】
1 嵌入爪付金具
11 座面部
11a 挿通孔
12 舌片部
13 嵌入爪
2 第一部材
21 基底部
21a 長孔
22 支持部
23 上面部
3 第二部材
31 載置部
31a 取付孔
32 支持部
33 基底部
41 ボルト
41a 頭部
41b 軸部
42 ナット
42a ネジ孔
43 ワッシャー
5 嵌入爪付金具
51 座面部
51a 挿通孔
52 舌片部
53 嵌入爪
6 嵌入爪付金具
61 座面部
61a 挿通孔
62 舌片部
63 嵌入爪
7 嵌入爪付金具
71 座面部
71a 挿通孔
72 舌片部
73 嵌入爪
74 ガイド部
8 嵌入爪付雄型金具
81 座面部
82 舌片部
83 嵌入爪
84 軸部
9 嵌入爪付雌型金具
91 座面部
92 舌片部
93 嵌入爪
94 突出部
94a ネジ孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定方向に一定の長さを有する長孔が形成された第一部材と、取付孔が形成された第二部材と、雄型凸部を備えた雄型締結具と、雌型凹部を備えた雌型締結具とにおいて、
上記長孔と上記取付孔とに挿通させた上記雄型締結具の雄型凸部に上記雌型締結具の雌型凹部を締結させることで、上記第一部材と上記第二部材とを締結する際、上記第一部材上であって、上記雄型締結具と雌型締結具との間に取り付けられて、上記第一部材と上記第二部材とが上記長孔の長手方向に相対的にずれるのを防止する金具であって、
上記第一部材上に当接し、上記雄型締結具の雄型凸部を挿通させる挿通孔が形成された座面部と、
上記座面部のうち、上記長孔の長手方向の端部から、上記長孔側に延び出して形成され、上記第一部材と上記第二部材を上記雄型締結具及び上記雌型締結具で締結した際、上記長孔に嵌入する嵌入爪と、を備え、
上記嵌入爪の幅は、上記座面部側から先端に向かって徐々に幅狭に形成され、上記座面側の幅が上記長孔の短手方向の幅よりも大きい幅となっており、先端部が上記長孔の短手方向の幅よりも小さい幅となっている、
ことを特徴とする嵌入爪付金具。
【請求項2】
上記嵌入爪は、上記座面部のうち、上記長孔の長手方向の両端部から、上記長孔側に延び出して形成されている、
請求項1記載の嵌入爪付金具。
【請求項3】
上記座面部のうち、上記長孔に面している端部には、上記長孔の短手方向に延び出し、上記第一部材と上記第二部材が締結された際に、上記第一部材上に当接する舌片部、をさらに備える、
請求項1又は2記載の嵌入爪付金具。
【請求項4】
上記嵌入爪と上記座面部とのなす角が90度以上180度未満である、
請求項1乃至3いずれかの項に記載の嵌入爪付金具。
【請求項5】
上記嵌入爪の先端部に、上記嵌入爪を上記長孔内へガイドするガイド部が設けられている、
請求項1乃至4いずれかの項に記載の嵌入爪付金具。
【請求項6】
上記嵌入爪の向きを示す目印が付されている、
請求項1乃至5いずれかの項に記載の嵌入爪付金具。
【請求項7】
材質が少なくとも、上記第二部材と同等以上の硬度を有する金属からなる、
請求項1乃至6いずれかの項に記載の嵌入爪付金具。
【請求項8】
材質が、鉄又はステンレス鋼のいずれかよりなる、
請求項1乃至7いずれかの項に記載の嵌入爪付金具。
【請求項9】
請求項1乃至8いずれかの項に記載の嵌入爪付金具と上記雄型締結具とが一体化した、
嵌入爪付雄型金具。
【請求項10】
請求項1乃至8いずれかの項に記載の嵌入爪付金具と上記雌型締結具とが一体化した、
嵌入爪付雌型金具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−208654(P2011−208654A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73991(P2010−73991)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000186913)昭和シェル石油株式会社 (322)
【Fターム(参考)】