川魚保護礁及びこれを用いた川魚保護礁群
【課題】製造コスト及び設置コストを低減しながら、河川の流速の緩和、移動又は転倒の防止を図ったコンクリート製の川魚保護礁を提供する。
【解決手段】内部空間112を有するコンクリートブロック11からなり、各外面111から前記内部空間112に貫通して川魚相当の大きさの進入孔12を設けてなる川魚保護礁1において、コンクリートブロック11は立方体外形で、内部空間112に連通せず、対向する正方形の外面111の一方から他方に貫通して川魚相当の大きさの流通孔13を設けてなり、各正方形の外面111に設けた進入孔12及び流通孔13を同一位置関係にし、どの正方形の外面111を底面としても同じ姿勢で設置できる川魚保護礁1である。
【解決手段】内部空間112を有するコンクリートブロック11からなり、各外面111から前記内部空間112に貫通して川魚相当の大きさの進入孔12を設けてなる川魚保護礁1において、コンクリートブロック11は立方体外形で、内部空間112に連通せず、対向する正方形の外面111の一方から他方に貫通して川魚相当の大きさの流通孔13を設けてなり、各正方形の外面111に設けた進入孔12及び流通孔13を同一位置関係にし、どの正方形の外面111を底面としても同じ姿勢で設置できる川魚保護礁1である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アユ等の川魚を保護するため、河川に沈設される川魚保護礁及びこれを用いた川魚保護礁群に関する。
【0002】
川魚保護礁が河川に「沈設」されるとは、川魚保護礁の全部が河川に完全に水没させる場合のみならず、川魚保護礁の一部が河川に水没させる場合を含む。
【背景技術】
【0003】
川魚保護礁は、海中に漁場を形成するための人工魚礁と異なり、川魚を外敵から保護する点に主眼がある。例えば特許文献1は、内部空間を有し、擬岩又は擬石模様とした外面から前記内部空間に貫通して川魚相当の大きさの進入孔を設けた合成樹脂製の川魚保護礁を提案している。ここで、「川魚相当の大きさ」とは、保護対象とした川魚の移動を許すが、この川魚より大きな動物等の移動を許さない大きさを意味する。この川魚保護礁は、外面を擬岩又は擬石模様とすることにより、河川の流速を緩和し、また全体を合成樹脂により構成することにより、河川の水流に押されて移動又は転倒したり、浸食されることを回避して、川魚保護礁が崩壊することを防ぐことができる。
【0004】
この特許文献1以前の川魚保護礁は、内部空間を有するコンクリートブロックからなり、各外面から前記内部空間に貫通して川魚相当の大きさの進入孔を設けた構成であった。このため、河川の水流は前記進入孔を通じて減速されずに流れていき、またコンクリート製であるため、河川の水流に押されて移動又は転倒したり、浸食されることにより崩壊する虞があった。上記特許文献1の川魚保護礁は、こうした旧来の川魚保護礁の課題を解決するものとして評価される。
【0005】
【特許文献1】特開平10-136829号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
まず、河川の流送を緩和するには、必ずしも川魚保護礁の外面を擬岩又は擬石模様にする必要はない。例えば、同種又は異種の川魚保護礁を複数設置して川魚保護礁群を構成すれば、それぞれが個別に河川の水流に抵抗し、前記川魚保護礁群全体として十分に河川の流速を緩和できる。しかし、多数の川魚保護礁を設置する場合、川魚保護礁相互の間隔を空けすぎると特許文献1に指摘された問題が発生するほか、川魚保護礁相互の空間が川魚の保護や生息水域の形成と無関係に形成され、川魚保護礁群を構成する意味がなくなる。また、逆に川魚保護礁相互の間隔を密にすると、今度は川魚保護礁相互の空間に澱みを形成してしまう問題が発生する。川魚保護礁群による川魚の保護や生息水域の形成を利用する観点から、多数の川魚保護礁相互は密であることが望ましいから、川魚保護礁を密に設置した場合の前期澱みの形成を防止する工夫が必要となる。
【0007】
次に、コンクリート製の川魚保護礁は通常重量物となるため、相対的に軽量となる合成樹脂製の川魚保護礁に比べれば、河川の水流によって移動又は転倒する虞は少ないと考えられるが、特許文献1に指摘されるように、河川の増水や水害時の激流によっては、重量物であるコンクリート製の川魚保護礁であっても移動又は転倒の虞が否定しきれない。コンクリート製の川魚保護礁は、少なくとも底面を平らにして載置安定性を向上させることができるので、このほか河川の増水や水害時の激流によっても移動又は転倒を防止できるようになると、およそ移動又は転倒の問題が解消される。
【0008】
確かに、コンクリート製の川魚保護礁は、河川の水流による浸食や、経年劣化による欠損の虞は否めないが、およそ川魚保護礁全体が崩壊すると考えられず、むしろ外面の適度な浸食は外面を複雑にし、特許文献1が好ましいとする擬岩又は擬石模様を自然に実現すると言えなくもない。それよりも、コンクリート製の川魚保護礁は、特許文献1の川魚保護礁に比べて、製造コストを抑えやすい利点があり、実用性の面から好ましいと言える。そこで、多数の川魚保護礁を設置することを前提として、製造コスト及び設置コストを低減しながら、河川の流速の緩和、移動又は転倒の防止を図ったコンクリート製の川魚保護礁を提供すべく、検討した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
検討の結果開発したものが、内部空間を有するコンクリートブロックからなり、各外面から前記内部空間に貫通して川魚相当の大きさの進入孔を設けてなる川魚保護礁において、コンクリートブロックは立方体外形で、内部空間に連通せず、対向する正方形の外面の一方から他方に貫通して川魚相当の大きさの流通孔を設けてなり、各正方形の外面に設けた進入孔及び流通孔を同一位置関係にし、どの正方形の外面を底面としても同じ姿勢で設置できる川魚保護礁である。環境親和性を高める観点から、コンクリートブロックは、骨材として貝殻又はその粉砕物を混入させ、前記貝殻又は粉砕物の一部を正方形の外面に露出させるとよい。骨材とする貝殻の種類は問わないが、食用に供され、大量に廃棄される牡蛎や帆立の貝殻が入手しやすく、適当である。
【0010】
本発明の川魚保護礁は、コンクリートブロックが立方体外形であること、内部空間に連通する進入孔以外に対向する面にわたって貫通する流通孔を設けたこと、そして各面に設けた進入孔及び流通孔を同一位置関係にしたことを特徴とする。ここで、「進入孔及び流通孔を同一位置関係にした」とは、各面を正面に捉えて見た場合、進入孔及び流通孔の位置関係が同じであることを意味する。これにより、本発明の川魚保護礁は、どの正方形の外面を底面としても、外観上同じ姿勢で設置できる。これは、万が一、川魚保護礁が転倒した場合でも、設置時と外観上同じ姿勢を維持できる利点をもたらす。ここで、「外観上同じ姿勢」とは、側面及び上面に表れる進入孔及び流通孔が常に同じ位置関係にあることを意味し、「進入孔及び流通孔を同一位置関係にした」ことによる帰結である。
【0011】
進入孔は、外部からコンクリートブロックの内部空間に川魚が進入する通路となる。これに対し、流通孔は、川魚保護礁の設置により塞がれる河川の水流を通過させる通路であり、川魚が川魚保護礁を挟んだ反対側へ移動するための通路である。これから、本発明の川魚保護礁は、コンクリートブロックが河川の水流を乱し、流通孔を通過する河川の水流と前記乱れた水流とを混合させ、総じて河川の水流の流速を緩和できる。
【0012】
進入孔は、外部からコンクリートブロックの内部空間に川魚が進入する通路であればよいので、蛇行したり、開口から内部空間に向けて拡大又は縮小してもよい。通常、進入孔は型抜きにより形成するが、例えば金属パイプ又は樹脂パイプを埋設して進入孔を形成してもよい。この進入孔は、対向する正方形の外面の一方から他方にわたって見通せる位置関係を設けることで、内部空間を介して河川の水流を通過させやすくなり、内部空間に澱みが発生することを抑制できるほか、上述した流通孔同様、進入孔を通過する水流を河川の水流の緩和に貢献させることができる。
【0013】
ここで、河川の水流の流れ込みを増やし、内部空間の澱みを防止する観点から、進入孔はできるだけ大きい方が好ましいと考えられる。しかし、川魚相当より大きな開口の進入孔は、川魚の外敵の進入をも許してしまう。そこで、進入孔は、川魚より大きい開口を有しながら、この開口を川魚相当の大きさに区画する格子を介在させるとよい。ここに言う「格子」は、進入口の開口に金属製又は合成樹脂製の棒材を一方向に並べたり、前記棒材を十字に組んで構成される。例えば、進入孔の開口が長さ方向又は幅方向のいずれかに長くなれば、長さ方向又は幅方向のいずれかに金属製又は合成樹脂製の棒材を川魚方向の大きさの間隔で並べて格子が構成される。また、進入孔の開口が長さ方向及び幅方向の両方に長くなれば、開口全体を金属製又は合成樹脂製の棒材で川魚方向の大きさの十字に区切って格子を構成される。
【0014】
流通孔も川魚が移動できる通路であればよいので、蛇行したり、開口から内部空間に向けて拡大又は縮小してもよい。通常、流通孔は型抜きにより形成するが、例えば金属パイプ又は樹脂パイプを埋設して流通孔を形成してもよい。また、上述の進入孔同様に、対向する正方形の外面の一方から他方にわたって見通せる位置関係を設けることで、河川の水流を通過させやすくなる。これにより、例えば多数の川魚保護礁を設置して川魚保護礁群を構成した際、川魚保護礁群全体が河川の水流を妨げるようになっても、河川の水流を通過させやすい流通孔によって、川魚保護礁相互の間に澱みが作られにくくなる。
【0015】
このほか、本発明では、川魚保護礁単独での移動又は転倒防止に限界があると考え、多数の川魚保護礁を設置し、相互の位置関係を規制することにより、川魚保護礁の移動又は転倒を防止することとした。すなわち、川魚保護礁のコンクリートブロックは、各正方形の外面に凹部を設け、各正方形の外面から突出しない範囲で連結用環を前記凹部に設け、例えば隣り合う川魚保護礁相互それぞれの連結用環を、ワイヤー又はチェーン等の連結索で結ぶことにより、前記連結索の範囲内で川魚保護礁相互の移動又は転倒を相互に防止できる。凹部は、連結用環が各外面より突出しないようにする。こうして、本発明の複数の川魚保護礁を、間隔を空けて複数設置することにより構成される川魚保護礁群は、全体として川魚の生息水域を構成する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の川魚保護礁は、コンクリートブロックが立方体外形であることにより、河川の流速を緩和したり、川魚保護礁の移動又は転倒を防止して載置安定性を高めている。河川の流速の緩和については、複数の川魚保護礁を設置して川魚保護礁群を構成することにより高めることができる。このとき、内部空間に連通せず、対向する正方形の外面の一方から他方に貫通して川魚相当の大きさの流通孔が、少なからず河川の水流を通過させるので例えば川魚保護礁群を構成する川魚保護礁相互に澱みが形成されることを防止できる。このように、本発明の川魚保護礁は、コンクリートブロックの外形状による河川の流速の緩和と、流通孔による河川の水流の通過とを調和させる点に特徴がある。
【0017】
川魚保護礁の載置安定性については、立方体外形のコンクリートブロックの底面を川底に接面させることで実現される。このとき、本発明の川魚保護礁は、各正方形の外面に設けた進入孔及び流通孔を同一位置関係にし、どの正方形の外面を底面としても同じ姿勢で設置できるように構成しているため、設置に際して川底に設置させる底面を選択する必要がなく、設置作業を簡単にする。
【0018】
コンクリート製の川魚保護礁についての浸食や欠損は、近年のコンクリートではさほど問題にならず、仮に浸食又は欠損が見られても、それは外面を複雑にすることで、特許文献1が好ましいとする擬岩又は擬石模様を自然に実現する利点となる。加えて、本発明では、コンクリートに貝殻又はその粉砕物を混入していることにより、これら貝殻等が外面に露出し、川魚保護礁群が形成する川魚の生息水域に、貝殻等からの養分溶出が期待できる。このように、本発明は、製造コスト及び設置コストを低減しながら、河川の流速の緩和、移動又は転倒の防止を図ったコンクリート製の川魚保護礁を提供できるようにする効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図を参照しながら説明する。図1〜図6は本発明に基づく川魚保護礁1の一例を示す全体斜視図又は部分破断斜視図であり、図1は本例の全体斜視図、図2は図1中A−A破断斜視図、図3は図1中B−B破断斜視図、図4は図1中C−C破断斜視図、図5は図1中D−D破断斜視図、そして図6は図1中E−E破断斜視図である。図示は省略するが、コンクリートブロック11は貝殻又はその粉砕物を混入させてもよく、混入の割合は重量比で15%以下、好ましくは10%以下に抑えるとよい。
【0020】
本例の川魚保護礁1は、図1〜図4に見られるように、およそ1m四方の立方体外形であるコンクリートブロック11から構成される。内部空間112は、コンクリートブロック11と重心を同じくする50cm四方の立方体状の空間である。進入孔12は、川魚が余裕を持って通過できる内径10cmの円筒状で、前記内部空間112の四隅に向けて各外面111に4本ずつ設けている。流通孔13は、同じく内径10cmの円筒状で、内部空間112に連通せず、対向する正方形の外面111の一方から他方に2本ずつ貫通して設けている。各面の流通孔13は、互い違いに交錯するように配置している。このほか、各面は、一対の角部に凹部14を2個ずつ形成している。各凹部14は、図5に見られるように、コンクリートブロック11に両端を埋め込んだU字状の連結用環141を設けている。
【0021】
本例の川魚保護礁1は、各面に設けた進入孔12が各面の中心に対して点対称の位置関係に4本ずつ設けられ、また流通孔13は前記進入孔12を挟んだ点対称位置かつ各面の辺の中点に合わせて2本ずつ設けられ、更に連結用環141を設けた凹部14は前記進入孔12を挟んだ点対称位置かつ各面が有する一対の角部に合わせて2個ずつ設けられている。これにより、本例の川魚保護礁1は、図1を見れば明らかなように、各面に設けた進入孔12、流通孔13及び凹部14は同一位置になっており、例えばどの正方形の外面111を底面としても同じ姿勢で河川に設置できることが理解される。
【0022】
本例の川魚保護礁1を河川に設置した場合、図6に見られるように、底面となる外面111の進入孔12は川底に塞がれ、上面となる外面111の進入孔12及び側面となる外面111の進入孔12は内部空間112を河川に連通させ、内部空間112に河川の水流を引き込み、内部空間112を川魚の待避空間とする。また、流通孔13も水没しており、コンクリートブロック11を挟んだ河川の流水を前記流通孔13を介して通過させる。ここで、進入孔12及び流通孔13は、いずれも対向する外面111の一方から他方にわたって見通せる位置関係、すなわち直線状になっていることから、これら進入孔12及び流通孔13を通過する河川の流水は通過しやすくなっており、特に進入孔12が繋がる内部空間112の澱みの発生を防止できる。
【0023】
図7〜図12は本発明に基づく川魚保護礁2の別例を示す全体斜視図又は部分破断斜視図であり、図7は本例の全体斜視図、図8は図7中F−F破断斜視図、図9は図7中G−G破断斜視図、図10は図7中H−H破断斜視図、図11は図7中I−I破断斜視図、そして図12は図7中J−J破断斜視図である。図示は省略するが、コンクリートブロック21は貝殻又はその粉砕物を混入させてもよく、混入の割合は重量比で15%以下、好ましくは10%以下に抑えるとよい。
【0024】
本例の川魚保護礁2は、図7〜図10に見られるように、進入孔22を除いて、上記例示(図1〜図6参照、以下同じ)と同じ構成であり、各面の角部に形成した凹部24に、図11に見られるように、コンクリートブロック21に両端を埋め込んだ連結用環241を設けている点も同様である。本例の進入孔22は、上記例示の進入孔22を左右又は上下に結んだ幅10cm及び長さ40cmである長方形の開口を有する。すなわち、本例の進入孔22は、川魚相当よりも広いことから、川魚のみが通過でき、川魚の進入を防止できるように、開口を川魚相当の大きさに区画する格子221を設けている。格子221は、金属製の棒材を5cm間隔で並べて構成している。
【0025】
本例の川魚保護礁2は、各面に設けた進入孔22が各面の中心に対して点対称の位置関係に2本ずつ設けられ、また流通孔23は前記進入孔22を挟んだ点対称位置かつ各面の辺の中点に合わせて2本ずつ設けられ、更に連結用環241を設けた凹部24は前記進入孔22を挟んだ点対称位置かつ各面が有する一対の角部に合わせて2個ずつ設けられている。これにより、本例の川魚保護礁2は、図7を見れば明らかなように、各面に設けた進入孔22、流通孔23及び凹部24は同一位置になっており、例えばどの正方形の外面211を底面としても同じ姿勢で河川に設置できることが理解される。
【0026】
本例の川魚保護礁2を河川に設置した場合、図12に見られるように、底面となる外面211の進入孔22は川底に塞がれ、上面となる外面211の進入孔22及び側面となる外面211の進入孔22は内部空間212を河川に連通させ、内部空間212に河川の水流を引き込み、内部空間212を川魚の待避空間とする。また、流通孔23も水没しており、コンクリートブロック21を挟んだ河川の流水を前記流通孔23を介して通過させる。ここで、進入孔22及び流通孔23は、いずれも対向する外面211の一方から他方にわたって見通せる位置関係、すなわち直線状になっていることから、これら進入孔22及び流通孔23を通過する河川の流水は通過しやすくなっており、特に本例の進入孔22は上記例示よりも大きいため、内部空間212への河川の水流が流れ込みやすくなっており、前記内部空間212の澱みの発生を防止しやすい。
【0027】
図13は、複数の川魚保護礁1,2を設置して構成される川魚保護礁群3を示す斜視図である。本発明の川魚保護礁1,2は、単体で使用するより、図13に見られるように、複数を設置して川魚保護礁群3を構成する。川魚保護礁群3を構成する各川魚保護礁1,2は、適当間隔を空けて個々に川底に設置し、相互の位置関係を拘束する目的で、それぞれの凹部14,24に設けた連結用環141,241をワイヤ又はチェーン等の連結索31により結んでいる。各川魚保護礁1,2はコンクリートブロック11,21からなるのでかなりの重量物となるが、更に川魚保護礁1,2相互を連結索31で相互に拘束することで、各川魚保護礁1,2の移動又は転倒を防止できる。
【0028】
適当間隔を空けて複数の川魚保護礁1,2を設置して構成される川魚保護礁群3は、各川魚保護礁1,2による河川の流速の緩和を受けて、川魚保護礁1,2相互の隙間に河川の水流が緩やかな川魚の生息水域を構成する。コンクリートブロック11,21に貝殻又はその粉砕物を混入すると、前記生息水域に対して各川魚保護礁1,2から貝殻の養分が溶出して、コンクリートブロック11,21の環境親和性を高め、良好な生息水域を構成できる。この場合、各川魚保護礁1,2に囲まれた内側は河川の水流が流れにくく、かえって澱みを発生させやすくなるが、本発明の川魚保護礁1,2は対向する外面111,211の一方から他方に貫通する流通孔13,23を設けていることからこの流通孔13,23を通じて流れ込む河川の水流により、前記澱みの発生を防止できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に基づく川魚保護礁の一例を示す全体斜視図である。
【図2】本発明に基づく川魚保護礁の一例を示す図1中A−A破断斜視図である。
【図3】本発明に基づく川魚保護礁の一例を示す図1中B−B破断斜視図である。
【図4】本発明に基づく川魚保護礁の一例を示す図1中C−C破断斜視図である。
【図5】本発明に基づく川魚保護礁の一例を示す図1中D−D破断斜視図である。
【図6】本発明に基づく川魚保護礁の一例を示す図1中E−E破断斜視図である。
【図7】本発明に基づく川魚保護礁の別例を示す全体斜視図である。
【図8】本発明に基づく川魚保護礁の別例を示す図7中F−F破断斜視図である。
【図9】本発明に基づく川魚保護礁の別例を示す図7中G−G破断斜視図である。
【図10】本発明に基づく川魚保護礁の別例を示す図7中H−H破断斜視図である。
【図11】本発明に基づく川魚保護礁の別例を示す図7中I−I破断斜視図である。
【図12】本発明に基づく川魚保護礁の別例を示す図7中J−J破断斜視図である。
【図13】複数の川魚保護礁を設置して構成される川魚保護礁群を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0030】
1 川魚保護礁
11 コンクリートブロック
111 外面
112 内部空間
12 進入孔
13 流通孔
14 凹部
141 連結用環
2 川魚保護礁
21 コンクリートブロック
211 外面
212 内部空間
22 進入孔
221 格子
23 流通孔
24 凹部
241 連結用環
3 川魚保護礁群
31 連結索
【技術分野】
【0001】
本発明は、アユ等の川魚を保護するため、河川に沈設される川魚保護礁及びこれを用いた川魚保護礁群に関する。
【0002】
川魚保護礁が河川に「沈設」されるとは、川魚保護礁の全部が河川に完全に水没させる場合のみならず、川魚保護礁の一部が河川に水没させる場合を含む。
【背景技術】
【0003】
川魚保護礁は、海中に漁場を形成するための人工魚礁と異なり、川魚を外敵から保護する点に主眼がある。例えば特許文献1は、内部空間を有し、擬岩又は擬石模様とした外面から前記内部空間に貫通して川魚相当の大きさの進入孔を設けた合成樹脂製の川魚保護礁を提案している。ここで、「川魚相当の大きさ」とは、保護対象とした川魚の移動を許すが、この川魚より大きな動物等の移動を許さない大きさを意味する。この川魚保護礁は、外面を擬岩又は擬石模様とすることにより、河川の流速を緩和し、また全体を合成樹脂により構成することにより、河川の水流に押されて移動又は転倒したり、浸食されることを回避して、川魚保護礁が崩壊することを防ぐことができる。
【0004】
この特許文献1以前の川魚保護礁は、内部空間を有するコンクリートブロックからなり、各外面から前記内部空間に貫通して川魚相当の大きさの進入孔を設けた構成であった。このため、河川の水流は前記進入孔を通じて減速されずに流れていき、またコンクリート製であるため、河川の水流に押されて移動又は転倒したり、浸食されることにより崩壊する虞があった。上記特許文献1の川魚保護礁は、こうした旧来の川魚保護礁の課題を解決するものとして評価される。
【0005】
【特許文献1】特開平10-136829号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
まず、河川の流送を緩和するには、必ずしも川魚保護礁の外面を擬岩又は擬石模様にする必要はない。例えば、同種又は異種の川魚保護礁を複数設置して川魚保護礁群を構成すれば、それぞれが個別に河川の水流に抵抗し、前記川魚保護礁群全体として十分に河川の流速を緩和できる。しかし、多数の川魚保護礁を設置する場合、川魚保護礁相互の間隔を空けすぎると特許文献1に指摘された問題が発生するほか、川魚保護礁相互の空間が川魚の保護や生息水域の形成と無関係に形成され、川魚保護礁群を構成する意味がなくなる。また、逆に川魚保護礁相互の間隔を密にすると、今度は川魚保護礁相互の空間に澱みを形成してしまう問題が発生する。川魚保護礁群による川魚の保護や生息水域の形成を利用する観点から、多数の川魚保護礁相互は密であることが望ましいから、川魚保護礁を密に設置した場合の前期澱みの形成を防止する工夫が必要となる。
【0007】
次に、コンクリート製の川魚保護礁は通常重量物となるため、相対的に軽量となる合成樹脂製の川魚保護礁に比べれば、河川の水流によって移動又は転倒する虞は少ないと考えられるが、特許文献1に指摘されるように、河川の増水や水害時の激流によっては、重量物であるコンクリート製の川魚保護礁であっても移動又は転倒の虞が否定しきれない。コンクリート製の川魚保護礁は、少なくとも底面を平らにして載置安定性を向上させることができるので、このほか河川の増水や水害時の激流によっても移動又は転倒を防止できるようになると、およそ移動又は転倒の問題が解消される。
【0008】
確かに、コンクリート製の川魚保護礁は、河川の水流による浸食や、経年劣化による欠損の虞は否めないが、およそ川魚保護礁全体が崩壊すると考えられず、むしろ外面の適度な浸食は外面を複雑にし、特許文献1が好ましいとする擬岩又は擬石模様を自然に実現すると言えなくもない。それよりも、コンクリート製の川魚保護礁は、特許文献1の川魚保護礁に比べて、製造コストを抑えやすい利点があり、実用性の面から好ましいと言える。そこで、多数の川魚保護礁を設置することを前提として、製造コスト及び設置コストを低減しながら、河川の流速の緩和、移動又は転倒の防止を図ったコンクリート製の川魚保護礁を提供すべく、検討した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
検討の結果開発したものが、内部空間を有するコンクリートブロックからなり、各外面から前記内部空間に貫通して川魚相当の大きさの進入孔を設けてなる川魚保護礁において、コンクリートブロックは立方体外形で、内部空間に連通せず、対向する正方形の外面の一方から他方に貫通して川魚相当の大きさの流通孔を設けてなり、各正方形の外面に設けた進入孔及び流通孔を同一位置関係にし、どの正方形の外面を底面としても同じ姿勢で設置できる川魚保護礁である。環境親和性を高める観点から、コンクリートブロックは、骨材として貝殻又はその粉砕物を混入させ、前記貝殻又は粉砕物の一部を正方形の外面に露出させるとよい。骨材とする貝殻の種類は問わないが、食用に供され、大量に廃棄される牡蛎や帆立の貝殻が入手しやすく、適当である。
【0010】
本発明の川魚保護礁は、コンクリートブロックが立方体外形であること、内部空間に連通する進入孔以外に対向する面にわたって貫通する流通孔を設けたこと、そして各面に設けた進入孔及び流通孔を同一位置関係にしたことを特徴とする。ここで、「進入孔及び流通孔を同一位置関係にした」とは、各面を正面に捉えて見た場合、進入孔及び流通孔の位置関係が同じであることを意味する。これにより、本発明の川魚保護礁は、どの正方形の外面を底面としても、外観上同じ姿勢で設置できる。これは、万が一、川魚保護礁が転倒した場合でも、設置時と外観上同じ姿勢を維持できる利点をもたらす。ここで、「外観上同じ姿勢」とは、側面及び上面に表れる進入孔及び流通孔が常に同じ位置関係にあることを意味し、「進入孔及び流通孔を同一位置関係にした」ことによる帰結である。
【0011】
進入孔は、外部からコンクリートブロックの内部空間に川魚が進入する通路となる。これに対し、流通孔は、川魚保護礁の設置により塞がれる河川の水流を通過させる通路であり、川魚が川魚保護礁を挟んだ反対側へ移動するための通路である。これから、本発明の川魚保護礁は、コンクリートブロックが河川の水流を乱し、流通孔を通過する河川の水流と前記乱れた水流とを混合させ、総じて河川の水流の流速を緩和できる。
【0012】
進入孔は、外部からコンクリートブロックの内部空間に川魚が進入する通路であればよいので、蛇行したり、開口から内部空間に向けて拡大又は縮小してもよい。通常、進入孔は型抜きにより形成するが、例えば金属パイプ又は樹脂パイプを埋設して進入孔を形成してもよい。この進入孔は、対向する正方形の外面の一方から他方にわたって見通せる位置関係を設けることで、内部空間を介して河川の水流を通過させやすくなり、内部空間に澱みが発生することを抑制できるほか、上述した流通孔同様、進入孔を通過する水流を河川の水流の緩和に貢献させることができる。
【0013】
ここで、河川の水流の流れ込みを増やし、内部空間の澱みを防止する観点から、進入孔はできるだけ大きい方が好ましいと考えられる。しかし、川魚相当より大きな開口の進入孔は、川魚の外敵の進入をも許してしまう。そこで、進入孔は、川魚より大きい開口を有しながら、この開口を川魚相当の大きさに区画する格子を介在させるとよい。ここに言う「格子」は、進入口の開口に金属製又は合成樹脂製の棒材を一方向に並べたり、前記棒材を十字に組んで構成される。例えば、進入孔の開口が長さ方向又は幅方向のいずれかに長くなれば、長さ方向又は幅方向のいずれかに金属製又は合成樹脂製の棒材を川魚方向の大きさの間隔で並べて格子が構成される。また、進入孔の開口が長さ方向及び幅方向の両方に長くなれば、開口全体を金属製又は合成樹脂製の棒材で川魚方向の大きさの十字に区切って格子を構成される。
【0014】
流通孔も川魚が移動できる通路であればよいので、蛇行したり、開口から内部空間に向けて拡大又は縮小してもよい。通常、流通孔は型抜きにより形成するが、例えば金属パイプ又は樹脂パイプを埋設して流通孔を形成してもよい。また、上述の進入孔同様に、対向する正方形の外面の一方から他方にわたって見通せる位置関係を設けることで、河川の水流を通過させやすくなる。これにより、例えば多数の川魚保護礁を設置して川魚保護礁群を構成した際、川魚保護礁群全体が河川の水流を妨げるようになっても、河川の水流を通過させやすい流通孔によって、川魚保護礁相互の間に澱みが作られにくくなる。
【0015】
このほか、本発明では、川魚保護礁単独での移動又は転倒防止に限界があると考え、多数の川魚保護礁を設置し、相互の位置関係を規制することにより、川魚保護礁の移動又は転倒を防止することとした。すなわち、川魚保護礁のコンクリートブロックは、各正方形の外面に凹部を設け、各正方形の外面から突出しない範囲で連結用環を前記凹部に設け、例えば隣り合う川魚保護礁相互それぞれの連結用環を、ワイヤー又はチェーン等の連結索で結ぶことにより、前記連結索の範囲内で川魚保護礁相互の移動又は転倒を相互に防止できる。凹部は、連結用環が各外面より突出しないようにする。こうして、本発明の複数の川魚保護礁を、間隔を空けて複数設置することにより構成される川魚保護礁群は、全体として川魚の生息水域を構成する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の川魚保護礁は、コンクリートブロックが立方体外形であることにより、河川の流速を緩和したり、川魚保護礁の移動又は転倒を防止して載置安定性を高めている。河川の流速の緩和については、複数の川魚保護礁を設置して川魚保護礁群を構成することにより高めることができる。このとき、内部空間に連通せず、対向する正方形の外面の一方から他方に貫通して川魚相当の大きさの流通孔が、少なからず河川の水流を通過させるので例えば川魚保護礁群を構成する川魚保護礁相互に澱みが形成されることを防止できる。このように、本発明の川魚保護礁は、コンクリートブロックの外形状による河川の流速の緩和と、流通孔による河川の水流の通過とを調和させる点に特徴がある。
【0017】
川魚保護礁の載置安定性については、立方体外形のコンクリートブロックの底面を川底に接面させることで実現される。このとき、本発明の川魚保護礁は、各正方形の外面に設けた進入孔及び流通孔を同一位置関係にし、どの正方形の外面を底面としても同じ姿勢で設置できるように構成しているため、設置に際して川底に設置させる底面を選択する必要がなく、設置作業を簡単にする。
【0018】
コンクリート製の川魚保護礁についての浸食や欠損は、近年のコンクリートではさほど問題にならず、仮に浸食又は欠損が見られても、それは外面を複雑にすることで、特許文献1が好ましいとする擬岩又は擬石模様を自然に実現する利点となる。加えて、本発明では、コンクリートに貝殻又はその粉砕物を混入していることにより、これら貝殻等が外面に露出し、川魚保護礁群が形成する川魚の生息水域に、貝殻等からの養分溶出が期待できる。このように、本発明は、製造コスト及び設置コストを低減しながら、河川の流速の緩和、移動又は転倒の防止を図ったコンクリート製の川魚保護礁を提供できるようにする効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図を参照しながら説明する。図1〜図6は本発明に基づく川魚保護礁1の一例を示す全体斜視図又は部分破断斜視図であり、図1は本例の全体斜視図、図2は図1中A−A破断斜視図、図3は図1中B−B破断斜視図、図4は図1中C−C破断斜視図、図5は図1中D−D破断斜視図、そして図6は図1中E−E破断斜視図である。図示は省略するが、コンクリートブロック11は貝殻又はその粉砕物を混入させてもよく、混入の割合は重量比で15%以下、好ましくは10%以下に抑えるとよい。
【0020】
本例の川魚保護礁1は、図1〜図4に見られるように、およそ1m四方の立方体外形であるコンクリートブロック11から構成される。内部空間112は、コンクリートブロック11と重心を同じくする50cm四方の立方体状の空間である。進入孔12は、川魚が余裕を持って通過できる内径10cmの円筒状で、前記内部空間112の四隅に向けて各外面111に4本ずつ設けている。流通孔13は、同じく内径10cmの円筒状で、内部空間112に連通せず、対向する正方形の外面111の一方から他方に2本ずつ貫通して設けている。各面の流通孔13は、互い違いに交錯するように配置している。このほか、各面は、一対の角部に凹部14を2個ずつ形成している。各凹部14は、図5に見られるように、コンクリートブロック11に両端を埋め込んだU字状の連結用環141を設けている。
【0021】
本例の川魚保護礁1は、各面に設けた進入孔12が各面の中心に対して点対称の位置関係に4本ずつ設けられ、また流通孔13は前記進入孔12を挟んだ点対称位置かつ各面の辺の中点に合わせて2本ずつ設けられ、更に連結用環141を設けた凹部14は前記進入孔12を挟んだ点対称位置かつ各面が有する一対の角部に合わせて2個ずつ設けられている。これにより、本例の川魚保護礁1は、図1を見れば明らかなように、各面に設けた進入孔12、流通孔13及び凹部14は同一位置になっており、例えばどの正方形の外面111を底面としても同じ姿勢で河川に設置できることが理解される。
【0022】
本例の川魚保護礁1を河川に設置した場合、図6に見られるように、底面となる外面111の進入孔12は川底に塞がれ、上面となる外面111の進入孔12及び側面となる外面111の進入孔12は内部空間112を河川に連通させ、内部空間112に河川の水流を引き込み、内部空間112を川魚の待避空間とする。また、流通孔13も水没しており、コンクリートブロック11を挟んだ河川の流水を前記流通孔13を介して通過させる。ここで、進入孔12及び流通孔13は、いずれも対向する外面111の一方から他方にわたって見通せる位置関係、すなわち直線状になっていることから、これら進入孔12及び流通孔13を通過する河川の流水は通過しやすくなっており、特に進入孔12が繋がる内部空間112の澱みの発生を防止できる。
【0023】
図7〜図12は本発明に基づく川魚保護礁2の別例を示す全体斜視図又は部分破断斜視図であり、図7は本例の全体斜視図、図8は図7中F−F破断斜視図、図9は図7中G−G破断斜視図、図10は図7中H−H破断斜視図、図11は図7中I−I破断斜視図、そして図12は図7中J−J破断斜視図である。図示は省略するが、コンクリートブロック21は貝殻又はその粉砕物を混入させてもよく、混入の割合は重量比で15%以下、好ましくは10%以下に抑えるとよい。
【0024】
本例の川魚保護礁2は、図7〜図10に見られるように、進入孔22を除いて、上記例示(図1〜図6参照、以下同じ)と同じ構成であり、各面の角部に形成した凹部24に、図11に見られるように、コンクリートブロック21に両端を埋め込んだ連結用環241を設けている点も同様である。本例の進入孔22は、上記例示の進入孔22を左右又は上下に結んだ幅10cm及び長さ40cmである長方形の開口を有する。すなわち、本例の進入孔22は、川魚相当よりも広いことから、川魚のみが通過でき、川魚の進入を防止できるように、開口を川魚相当の大きさに区画する格子221を設けている。格子221は、金属製の棒材を5cm間隔で並べて構成している。
【0025】
本例の川魚保護礁2は、各面に設けた進入孔22が各面の中心に対して点対称の位置関係に2本ずつ設けられ、また流通孔23は前記進入孔22を挟んだ点対称位置かつ各面の辺の中点に合わせて2本ずつ設けられ、更に連結用環241を設けた凹部24は前記進入孔22を挟んだ点対称位置かつ各面が有する一対の角部に合わせて2個ずつ設けられている。これにより、本例の川魚保護礁2は、図7を見れば明らかなように、各面に設けた進入孔22、流通孔23及び凹部24は同一位置になっており、例えばどの正方形の外面211を底面としても同じ姿勢で河川に設置できることが理解される。
【0026】
本例の川魚保護礁2を河川に設置した場合、図12に見られるように、底面となる外面211の進入孔22は川底に塞がれ、上面となる外面211の進入孔22及び側面となる外面211の進入孔22は内部空間212を河川に連通させ、内部空間212に河川の水流を引き込み、内部空間212を川魚の待避空間とする。また、流通孔23も水没しており、コンクリートブロック21を挟んだ河川の流水を前記流通孔23を介して通過させる。ここで、進入孔22及び流通孔23は、いずれも対向する外面211の一方から他方にわたって見通せる位置関係、すなわち直線状になっていることから、これら進入孔22及び流通孔23を通過する河川の流水は通過しやすくなっており、特に本例の進入孔22は上記例示よりも大きいため、内部空間212への河川の水流が流れ込みやすくなっており、前記内部空間212の澱みの発生を防止しやすい。
【0027】
図13は、複数の川魚保護礁1,2を設置して構成される川魚保護礁群3を示す斜視図である。本発明の川魚保護礁1,2は、単体で使用するより、図13に見られるように、複数を設置して川魚保護礁群3を構成する。川魚保護礁群3を構成する各川魚保護礁1,2は、適当間隔を空けて個々に川底に設置し、相互の位置関係を拘束する目的で、それぞれの凹部14,24に設けた連結用環141,241をワイヤ又はチェーン等の連結索31により結んでいる。各川魚保護礁1,2はコンクリートブロック11,21からなるのでかなりの重量物となるが、更に川魚保護礁1,2相互を連結索31で相互に拘束することで、各川魚保護礁1,2の移動又は転倒を防止できる。
【0028】
適当間隔を空けて複数の川魚保護礁1,2を設置して構成される川魚保護礁群3は、各川魚保護礁1,2による河川の流速の緩和を受けて、川魚保護礁1,2相互の隙間に河川の水流が緩やかな川魚の生息水域を構成する。コンクリートブロック11,21に貝殻又はその粉砕物を混入すると、前記生息水域に対して各川魚保護礁1,2から貝殻の養分が溶出して、コンクリートブロック11,21の環境親和性を高め、良好な生息水域を構成できる。この場合、各川魚保護礁1,2に囲まれた内側は河川の水流が流れにくく、かえって澱みを発生させやすくなるが、本発明の川魚保護礁1,2は対向する外面111,211の一方から他方に貫通する流通孔13,23を設けていることからこの流通孔13,23を通じて流れ込む河川の水流により、前記澱みの発生を防止できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に基づく川魚保護礁の一例を示す全体斜視図である。
【図2】本発明に基づく川魚保護礁の一例を示す図1中A−A破断斜視図である。
【図3】本発明に基づく川魚保護礁の一例を示す図1中B−B破断斜視図である。
【図4】本発明に基づく川魚保護礁の一例を示す図1中C−C破断斜視図である。
【図5】本発明に基づく川魚保護礁の一例を示す図1中D−D破断斜視図である。
【図6】本発明に基づく川魚保護礁の一例を示す図1中E−E破断斜視図である。
【図7】本発明に基づく川魚保護礁の別例を示す全体斜視図である。
【図8】本発明に基づく川魚保護礁の別例を示す図7中F−F破断斜視図である。
【図9】本発明に基づく川魚保護礁の別例を示す図7中G−G破断斜視図である。
【図10】本発明に基づく川魚保護礁の別例を示す図7中H−H破断斜視図である。
【図11】本発明に基づく川魚保護礁の別例を示す図7中I−I破断斜視図である。
【図12】本発明に基づく川魚保護礁の別例を示す図7中J−J破断斜視図である。
【図13】複数の川魚保護礁を設置して構成される川魚保護礁群を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0030】
1 川魚保護礁
11 コンクリートブロック
111 外面
112 内部空間
12 進入孔
13 流通孔
14 凹部
141 連結用環
2 川魚保護礁
21 コンクリートブロック
211 外面
212 内部空間
22 進入孔
221 格子
23 流通孔
24 凹部
241 連結用環
3 川魚保護礁群
31 連結索
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間を有するコンクリートブロックからなり、各外面から前記内部空間に貫通して川魚相当の大きさの進入孔を設けてなる川魚保護礁において、
コンクリートブロックは立方体外形で、内部空間に連通せず、対向する正方形の外面の一方から他方に貫通して川魚相当の大きさの流通孔を設けてなり、各正方形の外面に設けた進入孔及び流通孔を同一位置関係にし、どの正方形の外面を底面としても同じ姿勢で設置できることを特徴とする川魚保護礁。
【請求項2】
コンクリートブロックは、骨材として貝殻又はその粉砕物を混入させ、前記貝殻又は粉砕物の一部を正方形の外面に露出させた請求項1記載の川魚保護礁。
【請求項3】
進入孔は、対向する正方形の外面の一方から他方にわたって見通せる位置関係を設けた請求項1又は2いずれか記載の川魚保護礁。
【請求項4】
進入孔は、川魚より大きい開口を有し、この開口を川魚相当の大きさに区画する格子を介在させた請求項1〜3いずれか記載の川魚保護礁。
【請求項5】
流通孔は、対向する正方形の外面の一方から他方にわたって見通せる位置関係を設けた請求項1〜4いずれか記載の川魚保護礁。
【請求項6】
コンクリートブロックは、各正方形の外面に凹部を設け、各正方形の外面から突出しない範囲で連結用環を前記凹部に設けた請求項1〜5いずれか記載の川魚保護礁。
【請求項7】
請求項1〜6いずれか記載の複数の川魚保護礁を、間隔を空けて複数設置することにより構成する川魚保護礁群。
【請求項1】
内部空間を有するコンクリートブロックからなり、各外面から前記内部空間に貫通して川魚相当の大きさの進入孔を設けてなる川魚保護礁において、
コンクリートブロックは立方体外形で、内部空間に連通せず、対向する正方形の外面の一方から他方に貫通して川魚相当の大きさの流通孔を設けてなり、各正方形の外面に設けた進入孔及び流通孔を同一位置関係にし、どの正方形の外面を底面としても同じ姿勢で設置できることを特徴とする川魚保護礁。
【請求項2】
コンクリートブロックは、骨材として貝殻又はその粉砕物を混入させ、前記貝殻又は粉砕物の一部を正方形の外面に露出させた請求項1記載の川魚保護礁。
【請求項3】
進入孔は、対向する正方形の外面の一方から他方にわたって見通せる位置関係を設けた請求項1又は2いずれか記載の川魚保護礁。
【請求項4】
進入孔は、川魚より大きい開口を有し、この開口を川魚相当の大きさに区画する格子を介在させた請求項1〜3いずれか記載の川魚保護礁。
【請求項5】
流通孔は、対向する正方形の外面の一方から他方にわたって見通せる位置関係を設けた請求項1〜4いずれか記載の川魚保護礁。
【請求項6】
コンクリートブロックは、各正方形の外面に凹部を設け、各正方形の外面から突出しない範囲で連結用環を前記凹部に設けた請求項1〜5いずれか記載の川魚保護礁。
【請求項7】
請求項1〜6いずれか記載の複数の川魚保護礁を、間隔を空けて複数設置することにより構成する川魚保護礁群。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−129917(P2007−129917A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−323821(P2005−323821)
【出願日】平成17年11月8日(2005.11.8)
【出願人】(592060307)海洋建設株式会社 (6)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月8日(2005.11.8)
【出願人】(592060307)海洋建設株式会社 (6)
【Fターム(参考)】
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