説明

巡回警備記録システム

【課題】比較的低コストでありながら信頼性の高い巡回警備記録を容易且つ正確に記録及び作成することが可能な巡回警備記録システムを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る巡回警備記録システムによれば、比較的安価なRFID装置を巡回場所に設置することで巡回警備記録システムを低コストで提供することができる。また、巡回警備記録に必要な全ての巡回警備情報の取得を容易且つ短時間で行うことができるため、警備員の負担を軽減しながら正確な巡回警備記録を作成することができる。また、巡回警備情報、巡回警備記録、巡回警備報告書の改竄、偽造に対する防止手段を備えているため、極めて信頼性の高い巡回警備記録及び巡回警備報告書を作成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、警備員の巡回警備の記録を比較的低コストで容易且つ正確に記録及び作成することが可能な巡回警備記録システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ビルや工場、各種施設等では、防犯や火災、事故防止のために、予め定められた建物内外の巡回場所を、委託された警備会社の警備員が定期的に巡回し、異常の有無の確認等を行う巡回警備業務を行っている。そして、警備会社は通常、警備依頼者に対し、警備員による巡回警備が適切に行われていることを巡回警備記録や巡回警備報告書等の文書を提示して証明する。
【0003】
この巡回警備記録の作成方法として最も簡単なものは、警備依頼者側が管理するノートを巡回場所に固定し、巡回する警備員がこのノートに巡回時刻の記入とサインもしくは押印を行うものである。しかしながら、この方法では巡回時刻が警備員の自己申告となるため、巡回警備記録の信頼性に疑問が生じる可能性がある。
【0004】
この問題点に対しては、巡回警備記録に巡回時計装置を利用するという方法がある。この巡回時計装置は計時装置、印字装置、記録用紙、鍵シリンダー装置等を内蔵しており、巡回警備時に警備員が首等にかけて携帯する。そして、巡回場所に鎖で繋がれた固有の鍵を、巡回時計装置の鍵シリンダー装置に差し込むことによって巡回場所を特定し、特定した巡回場所と計時装置の時刻とを専用の記録用紙に印字して巡回警備記録とするものである。これにより、定められた巡回場所を警備員がいつ巡回したかを客観的に証明することが可能となる。しかしながら、巡回時計装置は装置自体が大きく警備員が携帯するには不向きであることに加え、最近の技術では巡回場所に固定された鍵のコピーが可能であり、巡回時計装置によって作成された巡回警備記録の信頼性も低下している。
【0005】
これらの問題点に対し、近年、電子的に記録が可能な小型の巡回時計装置もしくはこれに類する機能を備えた装置を用いる方法が多数考案されている。
【0006】
一例として、GPS機能を備えた携帯電話機を警備員に持たせ、このGPS機能を用いて巡回中の警備員の位置と時刻とを特定、記録する方法がある。しかしながら、GPS機能では建物の内部での位置を特定することができず屋外の巡回警備に限定されるという問題点がある。また、携帯電話機の維持管理費が高価であるという問題点がある。
【0007】
また、巡回場所を間接的に特定するQRコード(登録商標)やバーコード等の2次元コードを巡回場所に貼り付けて、警備員が携帯する携帯電話機等の携帯端末で読み取り、巡回場所と読み取り時の時刻とを記録する方法がある。この方法の例として下記[特許文献1]では、巡回場所に設置された表示器に日時情報も有するバーコードを表示して、このバーコードを読み取ることで巡回場所と巡回時刻とを記録する行動管理システムに関する発明が開示されている。しかしながら、特に夜間等では2次元コードの読み取り作業に時間が掛かる場合があり、常に緊急事態に備えていなければならない警備員にとって負担になるという問題点がある。また、貼り付けるタイプの2次元コードではこの2次元コード自体をコピーすることが可能であるため、この方法においても作成された巡回警備記録の信頼性に疑問が生じる可能性がある。
【0008】
また、RFID(Radio Frequency Identification)装置又はICカードを利用する方法もある。これは、巡回場所にRFID装置又はICカードの読み取り装置を固定し、警備員はRFID装置又はICカードを携帯して巡回警備を行う。そして、巡回場所の読み取り装置が警備員の携帯するRFID装置の発信信号を受信するか、警備員が巡回場所の読み取り装置にICカードを読み取らせると、読み取り装置と接続された管理コンピュータが自動的に巡回場所と巡回時刻とを記録するものである。この方法によれば、読み取り作業を比較的短時間で行えるため、読み取り作業に伴う警備員の負担を軽減することができる。また、巡回場所に固定された読み取り装置にRFID装置又はICカードを必ず近づけなければならないため、信頼性の高い巡回警備記録を作成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−147276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、巡回場所が多い場合、上記の方法では全ての巡回場所に高価な読み取り装置を設置しなければならず、全体的に高価なシステムになるという問題点がある。
【0011】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、比較的低コストでありながら信頼性の高い巡回警備記録を容易且つ正確に記録及び作成することが可能な巡回警備記録システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、
(1)1つ以上の巡回場所に固定され電源となる電池部14を内蔵するとともに巡回警備情報を発信するアクティブ方式のRFID装置10と、警備員が携帯し前記RFID装置10が発信する巡回警備情報を受信して記録する受信装置20と、当該受信装置20が記録した巡回警備情報に基づいて巡回警備記録を作成管理する管理ソフトウェアを備えたコンピュータ30と、前記受信装置20が記録した巡回警備情報を前記コンピュータ30に移動させるための情報移動手段40と、を有し、
前記受信装置20が巡回警備情報を受信すると、当該巡回警備情報を記録部28に記録するとともに、巡回警備情報を受信したことを警備員に報知し、さらに受信した巡回警備情報の一部又は全てを受信装置20の表示部21に表示することを特徴とする巡回警備記録システム50を提供することにより、上記課題を解決する。
(2)RFID装置10が発信する巡回警備情報は、巡回場所を間接的に表すRFID装置10固有のID情報と、RFID装置10が内蔵する計時部19が示す日時情報と、RFID装置10が内蔵する電池部14の残量情報と、を含むことを特徴とする上記(1)記載の巡回警備記録システム50を提供することにより、上記課題を解決する。
(3)RFID装置10aが、予め設定された一定時間間隔で巡回警備情報を発信することを特徴とする上記(1)又は(2)記載の巡回警備記録システム50を提供することにより、上記課題を解決する。
(4)RFID装置10bが発信釦11、11aを有するとともに当該発信釦11、11aが押下された場合に巡回警備情報を発信することを特徴とする上記(1)又は(2)記載の巡回警備記録システム50を提供することにより、上記課題を解決する。
(5)発信釦11aとRFID装置10bとが分離して設置されることを特徴とする上記(4)記載の巡回警備記録システム50を提供することにより、上記課題を解決する。
(6)受信装置20もしくは情報移動手段40が、当該受信装置20もしくは情報移動手段40を使用する警備員ID情報を有し、当該警備員ID情報を巡回警備情報と併せてコンピュータ30に移動することを特徴とする上記(1)乃至(5)のいずれかに記載の巡回警備記録システム50を提供することにより、上記課題を解決する。
(7)RFID装置10が巡回場所から取り外された場合、正常に機能しなくなるか、もしくは巡回警備情報に異常情報を付与することを特徴とする上記(1)乃至(6)のいずれかに記載の巡回警備記録システム50を提供することにより、上記課題を解決する。
(8)受信装置20が巡回警備情報を暗号化する暗号化手段を備えるとともに、管理ソフトウェアが暗号化した巡回警備情報を復号する復号手段を備え、情報移動手段40は暗号化した巡回警備情報を前記受信装置20からコンピュータ30に移動させ、管理ソフトウェアは暗号化した巡回警備情報を復号するとともに、復号した巡回警備情報に基づいて巡回警備記録と当該巡回警備記録に基づく巡回警備報告書を作成することを特徴とする上記(1)乃至(7)のいずれかに記載の巡回警備記録システム50を提供することにより、上記課題を解決する。
(9)管理ソフトウェアは巡回警備記録に対する直接入力もしくは編集を制限するとともに、巡回警備報告書に当該管理ソフトウェアが作成したことを証明する情報を付与することを特徴とする上記(1)乃至(8)のいずれかに記載の巡回警備記録システム50を提供することにより、上記課題を解決する。
(10)管理ソフトウェアは巡回警備情報に含まれるID情報を、予め記録されている対応した巡回場所情報に変換し、巡回警備記録及び巡回警備報告書を作成することを特徴とする上記(1)乃至(9)のいずれかに記載の巡回警備記録システム50を提供することにより、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、信頼性の高い巡回警備記録を容易且つ正確に記録及び作成することが可能な巡回警備記録システムを比較的低コストで提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る巡回警備記録システムの概略構成を示す図である。
【図2】本発明に係る巡回警備記録システムのRFID装置及び受信装置のブロック図である。
【図3】本発明に係る巡回警備記録システムによる巡回警備報告書の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る巡回警備記録システムの実施の形態について図面に基づいて説明する。図1に示す本発明に係る巡回警備記録システム50は、1つ以上の巡回場所にそれぞれ固定され巡回警備情報を発信するアクティブ方式のRFID装置10と、警備員が携帯しRFID装置10が発信する巡回警備情報を受信して記録する受信装置20と、受信装置20が記録した巡回警備情報に基づいて巡回警備記録を作成管理する管理ソフトウェアを備えたコンピュータ30と、受信装置20が記録した巡回警備情報をコンピュータ30に移動させるための情報移動手段40と、を有している。尚、情報移動手段40としては、通信ケーブル等の有線通信手段や、USBメモリやSDカード(登録商標)等の可搬型半導体メモリ40aを用いることができる。また、受信装置20側に送信機を設けるとともにコンピュータ30側に受信機を設け、無線や赤外線を用いて巡回警備情報を移動させる無線通信手段40bを用いても良い。
【0016】
また、巡回警備記録システム50を構成する受信装置20は、RFID装置10から受信した巡回警備情報の一部又は全てを表示する表示部21と、巡回警備情報を受信したことを警備員に報知するためのスピーカ、ブザー等の報知部23とを備えている。
【0017】
また、巡回警備記録システム50のRFID装置10は、定期的に巡回警備情報を発信する第1の形態のRFID装置10aと、警備員が押下したときに巡回警備情報を発信する発信釦11、11aを備えた第2の形態のRFID装置10bと、がある。これらRFID装置10は、予め決められた巡回場所に1個、容易に取り外しが行えないように確実に固定される。
【0018】
また、RFID装置10には、巡回場所から故意又は事故等で外れた場合に正常に機能しなくなるか又は巡回警備情報にRFID装置10が取り外されたことを示す異常情報を付与する機能を備えることが好ましい。この構成によれば、仮にRFID装置10が巡回場所から取り外された場合、その情報が何らかの形で巡回警備記録に反映されるため、巡回警備の不備が即座に把握可能となり、この不備に対する対応を迅速に行うことができる。
【0019】
RFID装置10が外れた場合に正常に機能しなくなる手段に関しては、特に限定は無く周知の手段を用いることができる。例えば、RFID装置10を特殊工具を使用しないと取り外しができない防犯ネジで固定された特殊ケースに収納し、この特殊ケースが破壊された場合にはRFID装置10本体も壊れるような構造とするというものがある。また、RFID装置10が外れた場合に巡回警備情報に付与する異常情報としては、専用の防犯装置を設けこの防犯装置から発するものとしても良いが、巡回警備情報の一部、例えば後述するRFID装置10のID情報、日時情報、電池部14の残量情報、また外部情報入力部13を介してRFID装置10が取得する設備情報等、が取得できないもしくは本来ありえない異常値を出力することによって異常情報としても良い。特に、設備情報は後述するように点検対象設備3から外部情報入力部13を介して取得するものであるから、RFID装置10が外れた場合には基本的に設備情報が取得できなくなる。よって、本来取得されるべき設備情報が取得できない場合にこれを異常情報として認識するようにしても良い。
【0020】
次に、RFID装置10及び受信装置20の概略構成を図2のブロック図を用いて説明する。
【0021】
先ず、RFID装置10の構成に関する説明を行う。図2(a)に示すRFID装置10は、所定の制御プログラムが内蔵されRFID装置10の各部の動作を有機的に制御するRFID制御部12と、RFID装置10の各部に電力を供給する電池等の電池部14と、受信装置20に対し巡回警備情報を送信するための無線通信部16と、RFID装置10固有のID情報等を記憶するメモリ部18と、日付及び時刻をカウントする計時部19と、電池部14の電力の残存量を取得する電池計測部17とを有している。また、第2の形態のRFID装置10bでは、これらの構成に加え発信釦11、11aを備えている。さらに、RFID装置10は点検対象設備3からの設備情報を取得する外部情報入力部13を有しても良い。尚、点検対象設備3から取得する設備情報に関しては特に限定は無く、点検対象設備3の種類、構成、警備依頼者の意向等によって異なる。また、1つの点検対象設備3から種類の異なる複数の設備情報を取得するようにしても良い。取得する設備情報の例としては、例えば点検対象設備3がブースや部屋、建物の一定区画等の場合には、その場所の温度、湿度、気圧、照度等であり、点検対象設備3が炉や乾燥設備等の場合には設備の温度、動作状態等であり、点検対象設備3が機械製造設備等の場合には振動、騒音、加速度、動作状態等である。尚、設備情報は点検対象設備3の制御部から取得しても良いし、点検対象設備3に専用のセンサを設置して取得しても良い。
【0022】
次に、受信装置20の構成に関する説明を行う。図2(b)に示す受信装置20は、所定の制御プログラムが内蔵され受信装置20の各部の動作を有機的に制御する受信装置制御部22と、受信装置20の各部に電力を供給する受信装置電池部24と、RFID装置10からの巡回警備情報を受信するための受信装置無線通信部26と、受信した巡回警備情報を記録する記録部28と、情報移動手段40を接続するための情報移動手段接続部42と、日付及び時刻をカウントする受信装置計時部29と、前述の表示部21及び報知部23と、を有している。尚、RFID装置10側の計時部19と、受信装置20側の受信装置計時部29とは、いずれか一方が有していれば良い。また、RFID装置10側と受信装置20側の双方に設けても良い。この場合、受信装置20側の比較的正確な日時情報をRFID装置10に送信して、計時部19の時刻の修正を行うようにしても良い。
【0023】
また、受信装置20の記録部28は、情報移動手段40がそれ自体記録可能な可搬型半導体メモリ40aである場合には、情報移動手段40が記録部28を兼ねても良い。この構成によれば、受信装置20の更なる小型化、軽量化、低コスト化を図ることができる。また、後述する受信装置20の警備員間の共用を行うことができる。
【0024】
次に、巡回警備記録システム50の動作を説明する。先ず、電池部14はRFID装置10の各部に電力を供給する。計時部19は現在の日付と現在時刻とをカウントしその日時情報をRFID制御部12に出力する。また、電池計測部17は例えば電池部14の電圧を測定し電池部14の消耗度を表す残量情報としてRFID制御部12に出力する。また、外部情報入力部13は点検対象設備3からの設備情報を取得してRFID制御部12に出力する。尚、設備情報はメモリ部18に一旦記録するようにしても良い。
【0025】
次に、第1の形態のRFID装置10aの場合、RFID制御部12は予め設定された一定時間間隔(例えば10秒毎)で、巡回警備情報を無線通信部16から外部に発信する。また、発信釦11を備えた第2の形態のRFID装置10bの場合、警備員が発信釦11を押下した時に巡回警備情報を発信する。よって、第2の形態のRFID装置10bは、第1の形態のRFID装置10aと比較して電池部14の消耗が少なく電池部14の長寿命化を図ることができる。尚、RFID装置10bの場合、図1に示すように、発信釦11aをRFID装置10bの本体から分離して設置することができる。この構成によれば、RFID装置10b本体の設置箇所を隠蔽することができるため、RFID装置10bに対する取り外しをより防止することができる。
【0026】
RFID装置10が発信する巡回警備情報は、計時部19から取得した巡回警備情報発信時の日付及び時間を示す日時情報、電池計測部17から取得した電池部14の残量情報、外部情報入力部13から取得した点検対象設備3の設備情報等に加え、メモリ部18が記憶するRFID装置10固有のID情報を含んでいる。尚、このID情報はRFID装置10固有のものであるから、ID情報と巡回場所との対応を把握することで、このID情報により間接的に巡回場所を特定することができる。
【0027】
一方、受信装置20の受信装置電池部24は各部に電力を供給する。また、受信装置無線通信部26は受信待機状態にある。そして、RFID装置10aの場合には、受信装置20を携帯した警備員がRFID装置10の電波到達範囲内(例えば半径1m以内)に入ると、RFID装置10aにより一定時間間隔で発信される巡回警備情報を受信装置無線通信部26が受信する。また、第2の形態のRFID装置10bでは、警備員が発信釦11を押下したことで発信する巡回警備情報を受信装置無線通信部26が受信する。受信装置制御部22は受信装置無線通信部26が受信した巡回警備情報を記録部28に記録するとともに、報知部23に所定の音声を出力させ、警備員に巡回警備情報を受信したことを報知する。さらに、受信装置制御部22は表示部21に受信した巡回警備情報の一部又は全てを一定時間(例えば10秒程度)表示する。これにより、警備員は確実に巡回警備情報を受信したことを確認することができる。また、巡回警備情報に異常が認められた場合、しかるべき対応を迅速に行うことができる。尚、受信装置20の表示部21は通常状態において、現在時刻とこの受信装置20を使用する警備員の警備員ID情報等を表示するようにしても良い。
【0028】
次に、警備員は次の巡回場所に移動して巡回場所の警備を行った後、同様の巡回警備情報の取得作業を行う。そして、警備員は予め設定された複数の巡回場所の警備を行い、その都度、巡回警備情報の取得作業を行う。これにより、受信装置20の記録部28には各巡回場所に設置されているRFID装置10からの巡回警備情報が順次記録蓄積されていく。
【0029】
所定の巡回場所を巡回警備した警備員は警備室1等に戻って、受信装置20に記録された複数の巡回警備情報を管理ソフトウェアがインストールされているコンピュータ30に情報移動手段40を用いて移動する。
【0030】
尚、受信装置20の記録部28には、この受信装置20を使用する警備員の警備員ID情報が記録されている。そして、巡回警備情報のコンピュータ30への情報移動時にはこの警備員ID情報も併せて移動する。これにより、移動した巡回警備情報にはこの巡回警備を行った警備員の情報が付与される。
【0031】
この警備員ID情報は情報移動手段40が記録部28を兼ねていない場合、受信装置20の記録部28に記録される。このため、警備員は警備員固有の(警備員ID情報が記録された)受信装置20を用いて巡回警備を行い、基本的に受信装置20の共用は行わない。
【0032】
また、記録部28を可搬型半導体メモリ40a等の情報移動手段40が兼ねる場合には、警備員ID情報は情報移動手段40に記録される。そして、警備員は警備員固有の(警備員ID情報が記録された)情報移動手段40を受信装置20に挿入して巡回警備を行う。よって、比較的高価な受信装置20を複数の警備員間で共用することが可能となり、巡回警備記録システム50の設備コストを更に低減できる。
【0033】
尚、記録部28に複数の警備員ID情報を記録しておきパスワード等で使用する警備員を特定するようにすれば、情報移動手段40が可搬型半導体メモリ40aでなくとも受信装置20の共用が可能となる。
【0034】
コンピュータ30の管理ソフトウェアに取り込まれた巡回警備情報は、所定のデータ領域に記録されるとともに、管理ソフトウェアにより設定された書式で巡回警備記録としてコンピュータ30のモニタ等に表示される。また、コンピュータ30に接続されたプリンタ等の印刷手段5により、所定の書式の巡回警備報告書として印刷することが可能となる。尚、管理ソフトウェアにRFID装置10のID情報とその巡回場所情報とを対応させたデータを記録させておき、情報移動手段40から取得したID情報と対応する巡回場所情報(名称)を管理ソフトウェアが選択して順次変換した上で巡回警備記録を作成するようにしても良い。この構成によれば、単なる数字の羅列であるID情報が巡回場所情報(名称)に変換されて巡回警備記録が作成されるため、より理解し易い巡回警備記録を作成することができる。
【0035】
尚、情報移動手段40として特に可搬型半導体メモリ40a等を用いる場合、情報移動手段40に不正にアクセスするなどして、情報移動手段40に記録された巡回警備情報が改竄される虞がある。よってこれを防止する手段として以下のような構成を備えることが好ましい。先ず、受信装置20側の受信装置制御部22が暗号化手段を備え、受信した巡回警備情報を暗号化した後に記録部28に記録する。そして、暗号化されたままコンピュータ30に巡回警備情報を移動する。コンピュータ30の管理ソフトウェアは、前記暗号化手段と対応する復号手段を備えており、管理ソフトウェアはこの復号手段により復号された巡回警備情報に基づいて巡回警備記録及び巡回警備報告書を作成する。この構成によれば、巡回警備情報は暗号化されて記録されるため、巡回警備情報のコンピュータ30への移動前の改竄を防止することが可能となる。よって、より信頼性の高い巡回警備記録及び巡回警備報告書を作成することができる。
【0036】
尚、暗号化の手法に関しては特に限定は無く、周知の暗号化手法を用いることができる。例えば、暗号化、複合化のための共通の秘密キーを受信装置20側と管理ソフトウェア側とに予め記録しておき、この秘密キーを用いて暗号化、複合化を行う方法や、受信装置20の受信装置制御部22が乱数に基づく暗号化キーを作成し、この暗号化キーを管理ソフトウェアに移動して、暗号化、複合化を行う方法、等が挙げられる。
【0037】
これらの方法によりコンピュータ30への移動前の巡回警備情報の改竄は防止することが可能となったが、コンピュータ30から直接、巡回警備情報、巡回警備記録への入力や編集が可能な場合、コンピュータ30上で巡回警備記録等の改竄が可能となる。よって、管理ソフトウェア上における直接入力手段を隠蔽したり、パスワードを要求するなどして、巡回警備記録に対する直接入力もしくは編集を制限するようにすることが好ましい。この構成によれば、コンピュータ30上における巡回警備情報、巡回警備記録への改竄も防止することが可能となる。
【0038】
さらに、巡回警備記録を文書化して巡回警備報告書として提出する場合には、この巡回警備報告書自体が偽造される可能性がある。よって、管理ソフトウェアにより作成された巡回警備報告書には、偽造された巡回警備報告書と区別するための、委託された警備会社の正規の管理ソフトウェアが作成したことを証明する情報を付与することが好ましい。この正規の管理ソフトウェアが作成したことを証明する情報の例としては、管理ソフトウェア固有のイラスト図や印影などを巡回警備報告書に印刷する方法や、管理ソフトウェアが巡回警備報告書を作成する都度、乱数を発生させ、この乱数を印刷する方法等がある。また、コピー機等による巡回警備報告書の偽造を防止するために、上記の乱数で背景印刷を行ったり、コピーすると文字が浮かび上がるなどの特殊印刷が施された用紙に巡回警備報告書を印刷する等の方法を併用しても良い。また、コンピュータ30を警備依頼者側の管理下に置き、コンピュータ30上の巡回警備記録を直接警備依頼者側が確認するようにしても良い。尚、巡回警備報告書の偽造防止技術は上記の例に限らず周知の偽造防止技術を用いることができる。
【0039】
ここで、巡回警備記録システム50によって作成された巡回警備報告書の例を図3に示す。図3に示す巡回警備報告書の“巡回警備対象”の項は例えばコンピュータ30の管理ソフトウェアに予め設定されているものである。巡回警備報告書の“乱数No.”の項はこの巡回警備報告書が正規の管理ソフトウェアによって作成されたことを示す情報である。巡回警備報告書の“巡回年月”の項は巡回警備情報の日時情報に含まれる巡回警備情報取得時の日付から取得されたものである。巡回警備報告書の“担当警備員”の項は受信装置20もしくは情報移動手段40に記録された警備員ID情報から取得されたものである。巡回警備報告書の“時刻”の項は巡回警備情報の日時情報に含まれる巡回警備情報取得時の時刻から取得されたものである。巡回警備報告書の“巡回場所”及び“設備”の項は、管理ソフトウェアが巡回警備情報のID情報に基づき対応する巡回場所情報に変換して取得したものである。巡回警備報告書の“設備出力”の項は巡回警備情報の設備情報から取得されたものである。巡回警備報告書の“電池電圧”の項は巡回警備情報の残量情報から取得されたものである。このように、巡回警備記録システム50によれば、どの警備員が、何時、どの巡回場所を巡回し、設備の点検項目があればその数値はいくつであるかが記載された、極めて有用な巡回警備報告書を正確且つ容易に作成することが可能になる。
【0040】
以上のように、本発明に係る巡回警備記録システム50によれば、比較的安価なRFID装置10を巡回場所に設置することで巡回警備記録システムを低コストで提供することができる。また、巡回警備記録に必要な全ての巡回警備情報の取得を容易且つ短時間で自動的行うことができるため、警備員に対する負担を軽減しながら正確な巡回警備記録を作成することができる。また、本発明に係る巡回警備記録システム50は、巡回警備情報、巡回警備記録、巡回警備報告書の改竄、偽造に対する防止手段を備えているため、極めて信頼性の高い巡回警備記録及び巡回警備報告書を作成することができる。よって、本発明に係る巡回警備記録システム50によれば、警備員に対する負担を軽減しながら、巡回警備に対する高い信頼感と満足感とを警備依頼者に与えることができる。
【0041】
尚、上記の巡回警備記録システム50は一例であるから、本発明は本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0042】
10、10a、10b RFID装置
11、11a 発信釦
14 電池部
19 計時部
20 受信装置
21 表示部
28 記録部
30 コンピュータ
40 情報移動手段
50 巡回警備記録システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の巡回場所に固定され電源となる電池部を内蔵するとともに巡回警備情報を発信するアクティブ方式のRFID装置と、
警備員が携帯し前記RFID装置が発信する巡回警備情報を受信して記録する受信装置と、
当該受信装置が記録した巡回警備情報に基づいて巡回警備記録を作成管理する管理ソフトウェアを備えたコンピュータと、
前記受信装置が記録した巡回警備情報を前記コンピュータに移動させるための情報移動手段と、を有し、
前記受信装置が巡回警備情報を受信すると、当該巡回警備情報を記録部に記録するとともに、巡回警備情報を受信したことを警備員に報知し、さらに受信した巡回警備情報の一部又は全てを受信装置の表示部に表示することを特徴とする巡回警備記録システム。
【請求項2】
RFID装置が発信する巡回警備情報は、巡回場所を間接的に表すRFID装置固有のID情報と、RFID装置が内蔵する計時部が示す日時情報と、RFID装置が内蔵する電池部の残量情報と、を含むことを特徴とする請求項1記載の巡回警備記録システム。
【請求項3】
RFID装置が、予め設定された一定時間間隔で巡回警備情報を発信することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の巡回警備記録システム。
【請求項4】
RFID装置が発信釦を有するとともに当該発信釦が押下された場合に巡回警備情報を発信することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の巡回警備記録システム。
【請求項5】
発信釦とRFID装置とが分離して設置されることを特徴とする請求項4記載の巡回警備記録システム。
【請求項6】
受信装置もしくは情報移動手段が、当該受信装置もしくは情報移動手段を使用する警備員ID情報を有し、当該警備員ID情報を巡回警備情報と併せてコンピュータに移動することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の巡回警備記録システム。
【請求項7】
RFID装置が巡回場所から取り外された場合、正常に機能しなくなるか、もしくは巡回警備情報に異常情報を付与することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の巡回警備記録システム。
【請求項8】
受信装置が巡回警備情報を暗号化する暗号化手段を備えるとともに、
管理ソフトウェアが暗号化した巡回警備情報を復号する復号手段を備え、
情報移動手段は暗号化した巡回警備情報を前記受信装置からコンピュータに移動させ、
管理ソフトウェアは暗号化した巡回警備情報を復号するとともに、復号した巡回警備情報に基づいて巡回警備記録と当該巡回警備記録に基づく巡回警備報告書を作成することを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の巡回警備記録システム。
【請求項9】
管理ソフトウェアは巡回警備記録に対する直接入力もしくは編集を制限するとともに、巡回警備報告書に当該管理ソフトウェアが作成したことを証明する情報を付与することを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の巡回警備記録システム。
【請求項10】
管理ソフトウェアは巡回警備情報に含まれるID情報を、予め記録されている対応した巡回場所情報に変換し、巡回警備記録及び巡回警備報告書を作成することを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の巡回警備記録システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−34439(P2011−34439A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−181653(P2009−181653)
【出願日】平成21年8月4日(2009.8.4)
【出願人】(592142636)群馬綜合ガードシステム株式会社 (2)
【Fターム(参考)】