説明

工作機械のアタッチメント

【課題】工作機械の主軸の駆動力を利用して工具取付部分の旋回が可能であり、しかも小型化を達成した工作機械のアタッチメントを提供する。
【解決手段】工作機械のアタッチメント1は、工作機械の主軸の回転駆動力を利用して主軸ユニット3を旋回させるために、スリーブ10を直線移動させる直線移動機構20、スリーブ10を第1回転軸8に対して着脱するスリーブ連結機構21、およびスリーブ10をアタッチメント本体4に対して着脱してスリーブ10に連結された主軸ユニット3の旋回を規制する旋回規制機構22を備えている。スリーブ10が主軸ユニット3側へ直線移動したときには、スリーブ連結機構21は、スリーブ10を第1回転軸8と一緒に回転できるように第1回転軸8に連結させ、旋回規制機構22は、スリーブ10とアタッチメント本体4との連結を解除して主軸ユニット3の旋回の規制を解除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械の主軸に取付け可能なメインユニットと、工具の装着が可能な主軸ユニットとを備え、主軸ユニットがメインユニットに対して旋回可能な工作機械のアタッチメントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、旋盤、フライス盤または複合加工機などの工作機械において、工作機械の主軸の延びる向きと異なる回転軸回りに工具を回転させる場合には、ユニバーサルアタッチメントが用いられる。ユニバーサルアタッチメントは、例えば、特許文献1に記載されているように、工作機械の主軸周辺のラムなどの送り台に取り付けられる本体部分と、当該本体部分に対して旋回可能に連結された工具取付部とを備えている。本体部分は、工作機械の主軸の回転駆動を受けて回転する水平回転軸を備えている。工具取付部は、本体部分の水平回転軸の回転駆動を受けて回転する工具取付軸を備えている。工具取付軸の端部には工具が取り付けられる。
【0003】
また、特許文献1記載のユニバーサルアタッチメントは、工具取付部を本体部分の水平回転軸を中心に割出し旋回駆動させるために、割り出し回転駆動装置を備えている。この割り出し回転駆動装置は、水平回転軸の内部を通る回動軸を介して工具取付部の割り出し旋回駆動を行う。
【0004】
さらに、このユニバーサルアタッチメントは、工具取付部を割り出し旋回後の位置で固定するための回動ロック装置を備えている。この回動ロック装置は、一対のカービックカップリングと、これら一対のカービックカップリングの噛合および解除を行うエアシリンダ装置とからなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−272889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1記載のようなユニバーサルアタッチメントの場合、工具取付部を割り出し旋回させるための専用の回転駆動装置を工作機械の主軸とは別に必要とするため、機構が複雑になるとともにアタッチメントの小型化が難しいという問題がある。
【0007】
また、割り出し旋回専用の回転駆動装置を省略した構成として、工作機械の主軸の駆動力を用いて、通常動作における工具取付軸の回転駆動だけでなく、工具取付部の割り出し旋回も行うことができるように、動力伝達経路が切り換え可能なアタッチメントが考えられる。
【0008】
そのようなアタッチメントの場合、工具取付軸を回転駆動するための動力伝達経路と工具取付部を割り出し旋回させるための動力伝達経路とを択一的に切り換える必要があるため、伝達経路を切り換える瞬間にはいずれの経路にならない中立状態にする必要がある。したがって、このような切り換え可能なアタッチメントでは、動力伝達を中立にするためのクラッチ機構が必要になり、機構が複雑になるとともにアタッチメントの小型化が困難になる。
【0009】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、工作機械の主軸の駆動力を利用して工具取付部分の旋回が可能であり、しかも小型化を達成した工作機械のアタッチメントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するためのものとして、本発明の工作機械のアタッチメントは、回転駆動する主軸および当該主軸の周辺に配置されたアタッチメント取付部分を有する工作機械に接続可能であり、前記主軸の回転駆動力を工具に伝達するアタッチメントにおいて、前記工作機械に接続可能なメインユニットと、当該メインユニットに対して相対的に旋回可能に連結された主軸ユニットとを備えており、前記メインユニットは、前記アタッチメント取付部分に固定可能な形状を有するアタッチメント本体と、前記アタッチメント本体に回転自在に支持され、前記主軸からの回転駆動力を受けて回転可能な第1回転軸と、前記第1回転軸に対して当該第1回転軸の軸方向へ相対的に移動可能でかつ相対的な回転が規制されるように、前記第1回転軸の端部に連結された第2回転軸と、前記第2回転軸を回転自在に支持する円筒状のスリーブとを備えており、前記スリーブは、第1回転軸の回転軸回りに回転自在でかつ前記軸方向へ移動できるように、前記アタッチメント本体に支持され、前記主軸ユニットは、前記スリーブの端部に連結された主軸ユニット本体と、当該主軸ユニット本体に回転自在に支持され、前記第2回転軸を介して前記回転駆動力を受けて回転可能であり、前記工具を取り付けることが可能な形状を有するアタッチメント主軸とを備えており、さらに、前記メインユニットは、前記スリーブを前記第1回転軸の軸線上に沿って往復直線移動させる直線移動機構と、前記スリーブを前記第1回転軸に対して着脱するスリーブ連結機構と、前記スリーブを前記アタッチメント本体に対して着脱することにより、当該スリーブに連結された前記主軸ユニットの旋回を規制する旋回規制機構と、を備えており、前記スリーブ連結機構は、前記直線移動機構が前記主軸ユニット本体を前記アタッチメント本体から離間させるように前記スリーブを前記第1回転軸の軸線上に沿って第1方向へ直線移動させたときに、前記スリーブを前記第1回転軸と一緒に回転できるように当該第1回転軸に連結させ、前記直線移動機構が前記スリーブを前記第1方向と反対の方向である第2方向へ直線移動させたときに、前記スリーブと前記第1回転軸との連結を解除し、前記旋回規制機構は、前記直線移動機構が前記スリーブを前記第1方向へ直線移動させたときには、前記スリーブと前記アタッチメント本体との連結を解除して前記主軸ユニットの旋回の規制を解除し、前記直線移動機構が前記スリーブを前記第2方向へ直線移動させたときには、前記スリーブを前記アタッチメント本体に連結して前記主軸ユニットの旋回を規制することを特徴とする。
【0011】
この構成では、工作機械の主軸からアタッチメント主軸への回転駆動力の伝達経路を維持した状態で、第1回転軸に着脱されるスリーブを介して、その回転駆動力を主軸ユニットの割り出し旋回に用いることができる。具体的には、メインユニットにおいて、工作機械の主軸の回転駆動力を受ける第1回転軸の端部には、第2回転軸が当該第1回転軸に対して軸方向に相対的に移動可能でかつ相対的に回転が規制されるように連結されている。そして、この第2回転軸は、主軸ユニットのアタッチメント主軸へ回転駆動力を伝達する。第2回転軸は、円筒状のスリーブに回転自在に支持されている。スリーブは、第1回転軸の回転軸回りに回転自在でかつ軸方向へ移動できるように、アタッチメント本体に支持されている。このスリーブの端部には、主軸ユニット本体が連結されている。このスリーブは、直線移動機構によって第1回転軸の軸線上に沿って往復直線移動させられることにより、スリーブ連結機構がスリーブと第1回転軸とを着脱させる。これにより、工作機械の主軸の回転駆動力をアタッチメント主軸への動力伝達を維持した状態で、第1回転軸からスリーブへ動力伝達して主軸ユニットの割り出し旋回に用いることができる。そのため、アタッチメント主軸への回転駆動力の伝達を一時的に切るためのクラッチ機構などが不要になり、アタッチメントの小型化を達成できる。
【0012】
この構成において、主軸ユニットの割り出し旋回を行うときには、直線移動機構によってスリーブを第1方向へ移動させてアタッチメント本体と主軸ユニット本体とを離間させるように遠ざければ、スリーブ連結機構がスリーブと第1回転軸とを連結させ、さらに、旋回規制機構がスリーブとアタッチメント本体との連結を解除して主軸ユニットの旋回の規制を解除する。これにより、工作機械の主軸の回転駆動力によって、スリーブを第1回転軸とともに回転させて、主軸ユニットを割り出し旋回させることが可能になる。
【0013】
主軸ユニットの割り出し旋回を終了したときには、直線移動機構によってスリーブを第2方向へ移動させてアタッチメント本体と主軸ユニット本体とを近づければ、スリーブ連結機構がスリーブと第1回転軸との連結を解除するとともに、旋回規制機構がスリーブとアタッチメント本体とを連結する。これにより、主軸ユニットの旋回を規制した状態で、工作機械の主軸の回転駆動力を第1回転軸および第2回転軸を介してアタッチメント主軸へ動力伝達させることができる。
【0014】
また、前記旋回規制機構は、前記直線移動機構が前記スリーブを前記第1方向へ直線移動させる間において、前記スリーブ連結機構が前記スリーブと前記第1回転軸とを連結させていく途中では前記スリーブを前記アタッチメント本体に連結して前記主軸ユニットの旋回を規制した状態を維持し、前記スリーブと前記第1回転軸との連結が完了したときには前記スリーブを前記アタッチメント本体に対する連結を解除して前記主軸ユニットの旋回の規制を解除した状態にし、一方、前記直線移動機構が前記スリーブを前記第2方向へ直線移動させる間において、前記スリーブと前記第1回転軸との連結が解除する前に前記スリーブを前記アタッチメント本体に連結して前記主軸ユニットの旋回を規制するのが好ましい。
【0015】
この構成によれば、直線移動機構によってスリーブが第1方向へ直線移動している間は、スリーブと第1回転軸との連結が完了するまで、旋回規制機構がスリーブをアタッチメント本体に連結して主軸ユニットの旋回を規制した状態を維持するので、スリーブが第1回転軸およびアタッチメント本体のいずれにも連結されないで自由に回転できる状態になることがなく、スリーブに連結された主軸ユニットが割り出し旋回の動作前に旋回するおそれがない。一方、スリーブが第2方向へ直線移動している間は、スリーブと第1回転軸との連結が解除される前に旋回規制機構がスリーブをアタッチメント本体に連結して主軸ユニットの旋回を規制するので、この場合もスリーブが第1回転軸およびアタッチメント本体のいずれにも連結されないで自由に回転できる状態になることがなく、主軸ユニットが割り出し旋回の動作前に旋回するおそれがない。その結果、主軸ユニットの割り出し制御を正確に行うことができる。
【0016】
さらに、前記スリーブ連結機構の少なくとも一部は、前記スリーブの内周面よりも内側に配置されているのが好ましい。
【0017】
この構成によれば、前記スリーブ連結機構の少なくとも一部は、前記スリーブの内側の空間に配置されているので、スリーブ連結機構およびスリーブが占有する空間を小さくすることができ、アタッチメントをより小型化にすることが可能になる。
【0018】
また、前記スリーブ連結機構は、前記第1回転軸または前記スリーブのうちの一方に設けられ、前記1回転軸と平行に延びる突起と、前記第1回転軸または前記スリーブのうちの他方に設けられ、前記突起と連結可能な形状を有する凹部を有する受け部と、を備えているのが好ましい。
【0019】
この構成によれば、スリーブ連結機構が、第1回転軸の外側部分またはスリーブの内側部分のいずれかにそれぞれ設けられた第1回転軸に平行に延びる突起と凹部を有する受け部とからなる簡単な構造である。しかも、突起および凹部は、スリーブの内周面と第1回転軸の外周面との間に配置されているので、スリーブの内側の空間にコンパクトに配置することが可能である。また、直線移動機構によってスリーブを直線移動させるだけで、スリーブ連結機構の突起と凹部を連結させたり離間させることができるので、スリーブと第1回転軸との間の連結および切り離しを容易かつ確実に行うことができる。
【0020】
さらに、前記旋回規制機構は、前記第2方向に突出する複数の歯を有し、前記スリーブに固定された第1カービックカップリングと、前記第1方向に突出するとともに前記第1カービックカップリングの歯と噛み合うことが可能な複数の歯を有し、前記アタッチメント本体に固定された第2カービックカップリングと、を備えているのが好ましい。
【0021】
この構成によれば、旋回規制機構が、スリーブに固定された第1カービックカップリングと、アタッチメント本体に固定された第2カービックカップリングとを備えているので、これらのカービックカップリングの歯同士が噛み合うことにより、主軸ユニットの割り出しを高い精度で行うことができる。
【0022】
また、前記旋回規制機構は、前記第1方向に突出するとともに前記第1カービックカップリングの歯のうちの一部と噛み合うことが可能な歯を有し、前記アタッチメント本体に対して前記第1方向および前記第2方向に移動可能に取り付けられた第3カービックカップリングと、前記第3カービックカップリングに対して前記第1カービックカップリングの歯に向けて押圧する押圧力を与える押圧手段と、前記押圧手段からの押圧力を受ける前記第3カービックカップリングを、前記第1カービックカップリングの移動の途中まで追随させて所定の位置で追随を止めて停止させる停止手段と、をさらに備えており、しかも、前記旋回規制機構は、前記直線移動機構が前記スリーブを直線移動させる間に、前記第1カービックカップリングの歯が前記第2カービックカップリングの歯と前記第3カービックカップリングの歯の両方に噛み合う第1状態と、前記第1カービックカップリングの歯が前記第2カービックカップリングの歯から外れて前記第3カービックカップリングの歯のみと噛み合う第2状態と、前記第1カービックカップリングの歯が前記第2カービックカップリングの歯と前記第3カービックカップリングの歯の両方と噛み合わない第3状態との間を移行することが可能であるのが好ましい。
【0023】
この構成によれば、旋回規制機構は、アタッチメント本体側に第1方向および第2方向に移動自在な第3カービックカップリングをさらに備えているので、主軸ユニット本体に固定された第1カービックカップリングが第1方向へ移動して第2カービックカップリングとの噛み合いが外れた状態でも、第3カービックカップリングを押圧手段からの押圧力によって第1カービックカップリングに追随させて第1カービックカップリングと第3カービックカップリングを噛み合わせた状態を維持することが可能である。第1カービックカップリングが第1方向へさらに移動したときには、第3カービックカップリングは、所定の位置まで第1カービックカップリングを追随し、所定の位置に来たときに停止手段によってその位置で停止させられる。これにより、第1カービックカップリングと第3カービックカップリングとの噛み合いが外れて、主軸ユニットの旋回の規制が解除される。
【0024】
このため、スリーブを第1方向へ直線移動させて主軸ユニットの旋回の規制を解除させる途中において、第1カービックカップリングと第2カービックカップリングとが噛み合っていない状態で、かつ、スリーブ連結機構によるスリーブと第1回転軸との連結が完了していない不安定な状態になっても、第3カービックカップリングが第1カービックカップリングに追随して当該第1カービックカップリングと噛み合う第2状態になることにより、スリーブが第1回転軸およびアタッチメント本体のいずれにも連結されないで自由に回転できる状態になることがなく、スリーブに連結された主軸ユニットが割り出し旋回の動作前に旋回するおそれがない。
【0025】
しかも、第3カービックカップリングは、第1カービックカップリングの歯の一部に噛み合うことにより、主軸ユニットの旋回を規制することができるので、第3カービックカップリングを小型かつ簡単な構造にすることができ、アタッチメントをより小型化することが可能になる。
【0026】
また、前記スリーブ連結機構は、前記第1回転軸または前記スリーブのうちの一方に設けられ、前記1回転軸と平行に延びる突起と、前記第1回転軸または前記スリーブのうちの他方に設けられ、前記突起と連結可能な形状を有する凹部を有する受け部と、を有しており、前記第1状態のときには、前記突起の全部が前記凹部から離脱した位置にあり、前記第2状態のときには、前記突起の所定の第1長さ分が前記凹部に挿入された位置にあり、前記第3状態のときには、前記突起の前記第1長さ分より長い所定の第2長さ分が前記凹部に挿入された位置にあるのが好ましい。
【0027】
この構成によれば、第1カービックカップリングと第2カービックカップリングとが連結している第1状態では、突起の全部が凹部から離脱した位置にあるので、主軸ユニットの旋回を規制してアタッチメント主軸に接続される工具を回転させる通常動作の場合に、第1回転軸が高速で回転しても、突起が凹部側の受け部に干渉することを確実に防ぐことができる。
【0028】
また、中間段階として、第1カービックカップリングの歯が第2カービックカップリングの歯から外れて第3カービックカップリングの歯のみと噛み合う第2状態のときは、突起の一部である所定の第1長さ分が凹部に挿入された位置にあるので、突起の挿入をスムーズに行うことができる。
【0029】
さらに、第1カービックカップリングの歯が第2カービックカップリングの歯と第3カービックカップリングの歯の両方と噛み合わない位置になって主軸ユニットの旋回の規制が解除された第3状態のときは、突起が凹部に所定の第2長さ分まで完全に挿入された状態になる。これにより、第1回転軸からスリーブへ動力伝達して主軸ユニットの割り出し旋回をするときには、突起との凹部との嵌合により、第1回転軸からスリーブへの動力伝達を確実に行うことができる。その結果、第1回転軸およびスリーブの回転によって、主軸ユニットを確実に割り出し旋回させることができる。
【0030】
また、前記スリーブは、当該スリーブの外周面から外側へ突出する突出部分を有しており、前記第1カービックカップリングは、前記突出部分から前記第2方向へ離れて配置され、前記直線移動機構は、前記突出部分と前記第1カービックカップリングとの隙間に嵌り込むことが可能な形状を有し、かつ、前記スリーブを前記第1方向および前記第2方向へ直線移動させる可動部材を備えているのが好ましい。
【0031】
かかる構成によれば、直線移動機構は、スリーブを第1および第2方向へ直線移動させる可動部材を備えている。この可動部材が、スリーブの外周側に突出した突出部分と第1カービックカップリングとの隙間に嵌め込まれることよって、スリーブを第1方向または第2方向のいずれかに確実に直線移動させることが可能になる。
【0032】
また、前記直線移動機構は、前記スリーブに前記第2方向へ向かう付勢力を与える付勢手段をさらに備えているのが好ましい。
【0033】
かかる構成によれば、主軸ユニットの割り出し旋回を行わない通常状態のときには、スリーブは付勢手段からの付勢力を受けて第2方向へ常時付勢され、回転規制機構がスリーブをアタッチメント本体に連結した状態が維持される。そのため、外部からの動力の供給がなくても、スリーブおよびそれに連結された主軸ユニットがアタッチメント本体に所定の割り出し角度で固定された状態を維持することが可能である。
【0034】
さらに、前記主軸に同軸状に連結される駆動軸をさらに備えており、前記第1回転軸は、前記駆動軸に直交して配置されており、前記第1回転軸と前記駆動軸とは、ベベルギヤを介して連結されているのが好ましい。
【0035】
この構成によれば、第1回転軸と当該第1回転軸に直交する駆動軸とはベベルギヤを介して直接連結されているので、工作機械の主軸の回転駆動力は、駆動軸およびベベルギヤを介して第1回転軸に直接伝達することが可能であり、音も静かで伝達ロスも小さい。
【発明の効果】
【0036】
以上説明したように、本発明のアタッチメントによれば、工作機械の主軸の駆動力を利用して工具取付部分の割り出し旋回が可能であり、しかも、クラッチ機構などが不要であるので、アタッチメントの小型化を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態に係わる工作機械のアタッチメントの正面図である。
【図2】図1のアタッチメントの左側面図である。
【図3】図1のアタッチメントの縦断面図である。
【図4】図3のスリーブ連結機構の拡大断面図である。
【図5】図3の旋回規制機構の主要部を示す拡大斜視図である。
【図6】図3の旋回規制機構の主要部を示す拡大正面図である。
【図7】図6のVII−VII線断面図である。
【図8】図1のメインユニットにおける押え板およびその周辺部の拡大正面図である。
【図9】図8のIX−IX線断面図である。
【図10】図8のX−X線断面図である。
【図11】図3の押え板を装着する途中の状態を示す拡大斜視図である。
【図12】図3の旋回規制機構およびスリーブ連結機構が第1状態、すなわちアタッチメント主軸を回転駆動させて通常動作を行う状態のときの断面図である。
【図13】図3の旋回規制機構およびスリーブ連結機構が第2状態、すなわち旋回規制機構およびスリーブ連結機構のそれぞれの連結が中間段階のときの断面図である。
【図14】図3の旋回規制機構およびスリーブ連結機構が第3状態、すなわちスリーブおよび主軸ユニットを割り出し旋回させる動作を行う状態のときの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
つぎに、図面を参照しながら、本発明の工作機械のアタッチメントについてさらに詳細に説明する。
【0039】
(アタッチメントの全体構成)
図1〜3に示されるアタッチメント1は、回転駆動する主軸Mおよび主軸Mの周辺に配置されたクイルQを有する工作機械に接続され、主軸Mの回転駆動力を工具に伝達するユニバーサルアタッチメントである。ここで、クイルQは、主軸Mを回転自在に支持する。クイルQは、本発明のアタッチメント取付部分の概念に含まれるものであり、その下端部には、図示しないクランプ装置が設けられている。
【0040】
アタッチメント1は、工作機械に接続されるメインユニット2と、当該メインユニット2に対して相対的に旋回可能に連結された主軸ユニット3とを備えている。
【0041】
メインユニット2は、図3に示されるように、アタッチメント本体4と、駆動軸5と、第1回転軸8と、第2回転軸9と、円筒状のスリーブ10とを備えている。
【0042】
アタッチメント本体4は、クイルQに固定可能な形状を有する。具体的には、アタッチメント本体4の上端部は、クイルQの下端部のクランプ装置に対して着脱可能な形状を有している。アタッチメント本体4は、クランプ装置を介して、クイルQに対して相対的に回転できないように保持される。また、クランプ装置のクランプ力を緩めれば、アタッチメント本体4は、図示しない旋回機構によって主軸Mの回転軸SC回りに旋回することが可能である。
【0043】
駆動軸5は、アタッチメント本体4の内部の軸受4aによって工作機械の主軸Mの回転軸SCの方向に延びるように回転自在に支持されている。駆動軸5は、その上端部において、主軸Mの下端部に同軸状に連結するためのアダプタAとプルスタッドPを備えている。また、駆動軸5の下端外周部分には、ベベルギヤ6が同軸状に連結されている。
【0044】
第1回転軸8は、駆動軸5と直交して水平軸SAの方向に延びる軸であり、アタッチメント本体4の内部において、軸受4bによって水平軸SA回りに回転自在に支持されている。軸受4bは、スリーブ17の内周面に支持されている。スリーブ17は、アタッチメント本体4の内部に軸受18によって水平軸SA回りに回転自在に支持されている。第1回転軸8の胴部外周部分には、ベベルギヤ7が同軸状に連結されている。ベベルギヤ7は、駆動軸5のベベルギヤ6と噛み合うことにより、駆動軸5およびベベルギヤ6、7を介して主軸Mの回転駆動力を受けることが可能である。
【0045】
第2回転軸9は、第1回転軸8に対して当該第1回転軸8の軸方向へ相対的に移動可能でかつ相対的な回転が規制されるように、第1回転軸8の端部に連結されている。第1回転軸8と第2回転軸9とはスプライン結合されている。具体的には、図4に示されるように、第1回転軸8の端部から軸方向に延びるように形成された凹部8aの開口縁付近の内面には、スプライン溝8bが形成されている。第2回転軸9の端部9aは、若干細くなっており、そのくびれ部分の外周部分にはスプライン溝9bが形成されている。第2回転軸9の端部9aが第1回転軸8の端部の凹部8aに挿入され、凹部8aの内周面のスプライン溝8bとくびれ部分外周面のスプライン溝9bとが噛み合うことにより、第2回転軸9は、第1回転軸8に対して当該第1回転軸8の軸方向へ相対的に移動可能でかつ相対的な回転が規制される。
【0046】
図3に示されるように、第2回転軸9における第1回転軸8と反対側の端部の外周部分には、ベベルギヤ11が同軸状に連結されている。
【0047】
円筒状のスリーブ10は、軸受16を介して第2回転軸9を回転自在に支持する。スリーブ10は、第1回転軸8の回転軸である水平軸SA回りに回転自在でかつ水平軸SAの方向へ往復移動できるように、アタッチメント本体4の水平軸SAの方向に沿って形成された水平開口部4cの内壁によって支持されている。水平開口部4cは、主軸ユニット3に面している側の端部はアタッチメント本体4の外部に開放されている。
【0048】
スリーブ10における主軸ユニット3に近い方の端部には、当該スリーブ10の外周面から外側へ突出する円板状のつば部34が形成されている。スリーブ10の端部は、つば部34とともに主軸ユニット本体3に連結されている。スリーブ10の外周のつば部34の主軸ユニット本体13と反対側の面付近には、円筒状のハウジング33が取り付けられている。つば部34は、本発明の突出部分の概念に含まれるものである。
【0049】
主軸ユニット3は、主軸ユニット本体13と、アタッチメント主軸14とを備えている。
【0050】
主軸ユニット本体13は、水平軸SA回りに旋回できるように、上述のようにスリーブ10の端部に連結されている。
【0051】
アタッチメント主軸14は、主軸ユニット本体13内部において水平軸SAと直交する旋回軸SBに沿って延びるように軸受13aに回転自在に支持されている。また、アタッチメント主軸14の胴部外周部分には、ベベルギヤ15が同軸状に連結されている。ベベルギヤ15は、第2回転軸9のベベルギヤ11に常時噛み合っている。アタッチメント主軸14は、第2回転軸9およびベベルギヤ11、15を介して、主軸Mの回転駆動力を受けて回転することが可能である。また、アタッチメント主軸14の工具取付部分14aは、工具のアダプタおよびプルスタッドと連結できるような形状を有する。
【0052】
さらに、メインユニット2は、スリーブ10に関連する機構として、スリーブ10の直線移動のための直線移動機構20と、スリーブ10を第1回転軸8に着脱するスリーブ連結機構21と、スリーブ10をアタッチメント本体4に着脱する旋回規制機構22とを備えている。各機構20〜22については、以下の項目でさらに詳細に説明する。
【0053】
(直線移動機構20)
直線移動機構20は、スリーブ10を第1回転軸8の軸線上に沿って往復直線移動させる機構である。図3および図8〜10に示されるように、直線移動機構20は、シリンダ23と、ピストン24と、シリンダカバー51と、ピストン軸56と、スプリング57と、ボルト58と、押え板35と、リングプレート36とを備えている。
【0054】
図9〜10に示されるように、シリンダ23は、リング状の枠体であり、その内部にシリンダ空間59を有している。シリンダ空間59には、リング状のピストン24が挿入されている。シリンダ空間59のうちピストン24の第2方向II側の空間部分59a(図12〜14参照)には、外部の油圧ポンプから油が圧送されるように図示しない油供給路に連通している。
【0055】
空間部分59a内部へ油が圧送されることによって、空間部分59a内部に油圧が生じる。その油圧によって、ピストン24を第1方向Iへ移動させることが可能である。なお、空間部分59aからの油漏れを防止するために、図10および図12に示されるように、ピストン24とシリンダ23との間にはOリング55が配置され、ピストン24とアタッチメント本体4との間にはOリング60が配置されている。
【0056】
図8〜10に示されるように、シリンダ23の主軸ユニット本体13側に隣接する位置には、リング状の枠体からなるシリンダカバー51が配置されている。シリンダカバー51の内部には、ピストン軸56およびスプリング57が収納されている。
【0057】
ピストン軸56は、リング状のピストン24の主軸ユニット本体13側の端面において、第1方向Iへ向けて延びるように、当該ピストン24の周方向にほぼ等間隔に固定されている。ピストン軸56の第2方向II側の端部には、フランジ部56aが形成されている。
【0058】
また、複数のピストン軸56は、シリンダカバー51に形成された複数の穴51aに各々挿入されている。ピストン軸56の先端部は、シリンダカバー51の端部を貫通し、シリンダカバー51の外側に配置されたリング状のリングプレート36にボルト58によって固定されている。
【0059】
リングプレート36には、図8に示される一対の押え板35がボルトなどで固定されている。
【0060】
本実施形態の押え板35は、図8および図11に示されるように、半円の円弧状を呈する一対の部材からなり、アタッチメント本体4の外部からリングプレート36にボルトなどで取り付けることができる。
【0061】
押え板35の内径は、図3および図10に示されるように、主軸ユニット3側に取り付けられたスリーブ10のつば部34の外径と、第1カービックカップリング29の外径よりも小さくなるように設定されている。第1カービックカップリング29は、ハウジング33を挟んでボルトB1(図9参照)スリーブ10に連結されている。押え板35の内径側端部35aは、スリーブ10のつば部34と第1カービックカップリング29との隙間に挟まれた状態に配置されている。押え板35は、つば部34と第1カービックカップリング29との隙間に嵌り込んでいるので、押え板35が第1方向Iおよび第2方向IIへ直線移動することにより、スリーブ10を第1カービックカップリング29とともに第1方向Iおよび第2方向IIへ直線移動させることが可能になる。押え板35は、本発明の可動部材の概念に含まれる。
【0062】
スプリング57は、図10に示されるように、スリーブ10に第2方向IIへ向かう付勢力を与える。スプリング57は、本発明の付勢手段の概念に含まれる。
【0063】
本実施形態のスプリング57は、シリンダカバー51の内壁51bとピストン軸56のフランジ部56aとの間に圧縮された状態で取り付けられている。したがって、スプリング57によって、ピストン軸56に対して第2方向IIに向かう付勢力を与えることができる。ピストン軸56に与えられた第2方向IIに向かう付勢力は、ボルト58、リングプレート36、押え板35を介して、図9および図10に示されるスリーブ10、ハウジング33および第1カービックカップリング29がボルトB1で連結されたアセンブリに与えられる。その結果、スプリング57による第2方向IIに向かう付勢力をスリーブ10へ与えることが可能である。
【0064】
(スリーブ連結機構21)
図3〜4に示されるように、スリーブ連結機構21は、スリーブ10を第1回転軸8に対して着脱する機構である。
【0065】
スリーブ連結機構21は、直線移動機構20が主軸ユニット本体13をアタッチメント本体4から離間させるようにスリーブ10を第1回転軸8の軸線上に沿って第1方向Iへ直線移動させたときに、スリーブ10を第1回転軸8と一緒に回転できるように当該第1回転軸8に連結させ、直線移動機構20がスリーブ10を第1方向Iと反対の方向である第2方向IIへ直線移動させたときに、スリーブ10と第1回転軸8との連結を解除する。
【0066】
本実施形態のスリーブ連結機構21は、プレート25と、ガイドピン26と、ピン穴28を有するブラケット27とを備えている。ガイドピン26およびピン穴28は、スリーブ10の内周面よりも内側に配置されている。
【0067】
プレート25は、中央に開口部25aを有する円板形状をしており、第1回転軸8の第2回転軸9側の端部に設けられている。プレート25は、スリーブ10の内部に配置されている。プレート25の中央の開口部25aには、第2回転軸9が貫通している。
【0068】
ガイドピン26は、円板状のプレート25の第2方向II側の面から突出した突起であり、第1回転軸8と平行に水平軸SAにそって第2方向IIへ延びるように、第1回転軸8の周囲に等間隔に複数本設けられている。ガイドピン26は、図4に示されるように、先端から長さDの分だけピン穴28に挿入することが可能である。ガイドピン26は、本発明の突起の概念に含まれる。
【0069】
なお、本発明の突起は、ガイドピン26に限定されるものではなく、凹凸嵌合が可能な凸部を構成することができればいかなる物でも採用され得る。例えば、第1回転軸8の外周面に一体形成された突起などを用いてもよい。
【0070】
ブラケット27は、スリーブ10の第1回転軸8側の端部に固定され、スリーブ10とともに回転することが可能である。ブラケット27は、スリーブ10の内周面よりも内側に延びてスリーブ10の内周面と第1回転軸8との間の隙間を閉じるリング状の部分27aを有する。このリング状の部分27aには、水平軸SAの方向に貫通するように複数のピン穴28が形成されている。ピン穴28は、スリーブ10が第1方向Iへ移動することにより、ガイドピン26と連結することが可能である。なお、ブラケット27は、本発明の受け部の概念に含まれるものである。また、ピン穴28は、本発明の凹部の概念に含まれるものである。
【0071】
なお、本発明の凹部を有する受け部は、突起と連結可能な形状であればよい。例えば、スリーブの内周面に板状または棒状の部分を一体形成した受け部を用いてもよい。その場合、その板状または棒状の部分に突起と連結可能な凹部が形成すればよい。
【0072】
また、本実施形態では、図3に示されるように、ブラケット27に対して水平軸SA方向において対向するように、ブラケット100がスリーブ17に固定されている。ブラケット27、ブラケット100およびスリーブ17は、主軸ユニット3の旋回動作とともに旋回することができる。また、ブラケット27およびブラケット100が旋回時にベベルギヤ6に干渉しないように旋回範囲を規制するために、スリーブ17に固定したブロック101がアタッチメント本体4に取り付けられた旋回ストッパ102に当接するようにしている。旋回ストッパ102は、ボルト103によってアタッチメント本体4に固定されている。
【0073】
なお、ガイドピン26の位置およびピン穴28の位置は、それぞれ工作機械の制御部等によって常時監視されているので、ガイドピン26をピン穴28へ挿入する動作が行われるときには、第1回転軸8を回転駆動させてあらかじめガイドピン26の位置とピン穴28の位置を合わせる動作が行われる。
【0074】
(旋回規制機構22)
旋回規制機構22は、スリーブ10をアタッチメント本体4に着脱することにより、当該スリーブ10に連結された主軸ユニット3の旋回を規制し、または規制を解除する。
【0075】
旋回規制機構22は、直線移動機構20がスリーブ10を第1方向Iへ直線移動させたときには、スリーブ10とアタッチメント本体4との連結を解除して主軸ユニット3の旋回の規制を解除し、直線移動機構20がスリーブ10を第2方向IIへ直線移動させたときには、スリーブ10をアタッチメント本体4に連結して主軸ユニット3の旋回を規制する。さらに詳しくは、本実施形態の旋回規制機構22は、直線移動機構20がスリーブ10を第1方向Iへ直線移動させる間において、スリーブ連結機構21がスリーブ10と第1回転軸8とを連結させていく途中ではスリーブ10をアタッチメント本体4に連結して主軸ユニット3の旋回を規制した状態を維持し、スリーブ10と第1回転軸8との連結が完了したときにはスリーブ10をアタッチメント本体4に対する連結を解除して主軸ユニット3の旋回の規制を解除した状態にし、一方、直線移動機構20がスリーブ10を第2方向IIへ直線移動させる間において、スリーブ10と第1回転軸8との連結が解除する前にスリーブ10をアタッチメント本体4に連結して主軸ユニット3の旋回を規制する。
【0076】
本実施形態の旋回規制機構22の具体的な構造は、以下の通りである。
【0077】
図3および図5〜7に示される旋回規制機構22は、第1カービックカップリング29と、第2カービックカップリング30と、第3カービックカップリング31と、スプリング32と、ストッパ54とを備えている。
【0078】
第1カービックカップリング29は、図5〜7に示されるように、その中央に開口部29cを有するリング状の部材であり、第2方向IIに突出する複数の歯29aを有している。歯29aは、第1カービックカップリング29のリング状の本体部分の第2方向II側を向く面において全周にわたって並んで配置されている。歯29aの数は本発明ではとくに限定されるものではなく、任意の歯数を設定すればよく、例えば、全周360度を1度ずつ割り出す場合には360枚の歯29aが設けられる。第1カービックカップリング29の中央の開口部29cの周囲の部分には、複数の貫通孔29bが形成されている。第1カービックカップリング29の開口部29cには、スリーブ10および当該スリーブ10の外周側に装着された円筒状のハウジング33が挿入される。複数の貫通孔29bにボルトB1(図9参照)が挿入され、当該ボルトB1がハウジング33を貫通してスリーブのつば部34に形成されたネジ孔(図示せず)にねじ込まれることによって、第1カービックカップリング29はハウジング33とともにスリーブ10のつば部34に固定されている。第1カービックカップリング29は、つば部34との間にハウジング33が挟まれることによって、つば部34から第2方向IIへ離れた状態で配置されている。
【0079】
第2カービックカップリング30は、その中央に開口部30cを有するリング状の部材であり、第1方向Iに突出する複数の歯30aを有している。歯30aは、第2カービックカップリング30の第1方向I側を向く面に全周にわたって並んで配置されている。歯30aは、第1カービックカップリング29の歯29aと噛み合うことが可能な形状および歯数を有している。第2カービックカップリング30の中央の開口部30cの周囲の部分には、複数の貫通孔30bが形成されている。第2カービックカップリング30の開口部30cには、スリーブ10および当該スリーブ10の外周側に装着された円筒状のハウジング33が挿入される。複数の貫通孔30bにボルトB2(図9参照)が挿入され、当該ボルトB2がアタッチメント本体4に形成されたネジ孔(図示せず)にねじ込まれることによって、第2カービックカップリング30はアタッチメント本体4(図12参照)に固定される。
【0080】
第2カービックカップリング30の外径は、第1カービックカップリング29の外径よりも若干小さい。そのため、第1カービックカップリング29の歯29aのうち第2カービックカップリング30の外周からはみ出た部分は、第2方向II側に露出している。
【0081】
第3カービックカップリング31は、第1方向Iに突出するとともに第1カービックカップリング29の歯29aのうちの一部と噛み合うことが可能な歯31aを有している。
【0082】
第3カービックカップリング31の歯31aは、第1カービックカップリング29の歯29aのうち第2カービックカップリング30の外周からはみ出た部分に噛み合うことが可能である。
【0083】
第3カービックカップリング31は、アタッチメント本体4に対して第1方向Iおよび第2方向IIに移動可能に取り付けられている。第3カービックカップリング31には、水平軸SA方向に貫通する2つの貫通孔31bが形成されている。貫通孔31bには、図示されないガイドピンが挿入される。第3カービックカップリング31は貫通孔31bに挿入されたガイドピンによって、アタッチメント本体4に対して第1方向Iおよび第2方向IIに移動可能に取り付けられている。また、第3カービックカップリング31の2つの貫通孔31bの間には、スプリング挿入凹部31cが第2方向IIに開口するように形成されている。
【0084】
第3カービックカップリング31の歯数については、本発明はとくに限定するものではなく任意の歯数を設定すればよく、例えば、主軸ユニット3の旋回を抑えることができる程度の歯数があればよい。
【0085】
図3および図12に示されるように、スプリング32は、コイルスプリングなどからなる弾性部材であり、第3カービックカップリング31のスプリング挿入凹部31cに挿入され、スプリング挿入凹部31cの奥端とアタッチメント本体4側の部分52(図9および図12参照)との間で圧縮されている。これにより、スプリング32は、第3カービックカップリング31に対して、第1方向Iへ向かう押圧力、すなわち、第1カービックカップリング29の歯29aに向けて押圧する押圧力を常時与えることが可能である。スプリング32は、本発明の押圧手段の概念に含まれる。
【0086】
ストッパ54は、図9および図12に示されるように、第3カービックカップリング31の第1方向I側の面に突出して設けられている。ストッパ54は、第3カービックカップリング31が第1方向Iへ移動して所定の位置に到達したときに、アタッチメント本体4の内壁を構成する部分(例えば、図9に示されるシリンダカバー51の内壁51a)に当接する。これにより、ストッパ54は、スプリング32からの押圧力を受ける第3カービックカップリング31を第1カービックカップリング29の移動の途中まで追随することを許容し、第3カービックカップリング31が所定の位置に到達したときにシリンダカバー51の内壁51aなどに当接することにより、第3カービックカップリング31をその位置に停止させて第1カービックカップリング29に追随することが中止させる。ストッパ54は、本発明の停止手段の概念に含まれる。
【0087】
また、本実施形態の旋回規制機構22は、直線移動機構20がスリーブ10を直線移動させる間に、図12〜14に示されるように、第1〜第3カービックカップリング29〜31の噛み合い状態を3つの状態に移行することが可能である。すなわち、旋回規制機構22は、図12に示されるように第1カービックカップリング29の歯29aが第2カービックカップリング30の歯30aと第3カービックカップリング31の歯31aの両方に噛み合う第1状態と、図13に示されるように第1カービックカップリング29の歯29aが第2カービックカップリング30の歯30aから外れて第3カービックカップリング31の歯31aのみと噛み合う第2状態と、図14に示されるように第1カービックカップリング29の歯29aが第2カービックカップリング30の歯30aおよび第3カービックカップリング31の歯31aの両方とも噛み合わない第3状態との間を移行することが可能である。
【0088】
ここで、旋回規制機構22の第1〜3状態のときには、スリーブ連結機構21のガイドピン26とピン穴28の位置関係は以下のようになる。
【0089】
第1状態のときには、図12に示されるように、ガイドピン26の全部がピン穴28から離脱した位置にある。
【0090】
前記第2状態のときには、図13に示されるように、ガイドピン26の所定の第1長さ分t41がピン穴28に挿入された位置にある。
【0091】
第3状態のときには、図14に示されるように、ガイドピン26の第1長さ分t41より長い所定の第2長さ分t42がピン穴28に挿入された位置にある。
【0092】
スリーブ10が直線移動する途中の段階である第2状態のときには、旋回規制機構22では第1カービックカップリング29と第3カービックカップリング31とが噛み合っており、スリーブ連結機構21では、ガイドピン26とピン穴28が少し挿入された状態になっているので、主軸ユニット3の旋回は確実に規制される。
【0093】
(工具を回転駆動させる通常動作)
上記のように構成された本実施形態のアタッチメント1を用いて工具を回転駆動させる通常動作は、以下のようにして行われる。
【0094】
アタッチメント1は、工具を回転駆動させる通常動作を行う場合には、図3〜4および図12に示される第1状態になっている。この第1状態では、旋回規制機構22において、主軸ユニット3側の第1カービックカップリング29とメインユニット2側の第2カービックカップリング30との間が噛み合っているので(隙間t30=0mm)、主軸ユニット3は、メインユニット2に対して相対的に旋回することが規制されている。また、この第1状態では、第1カービックカップリング29とメインユニット2側の第3カービックカップリング31との間も噛み合っている。第1〜第3カービックカップリング29〜31の噛み合い部分の幅は、それぞれの歯の高さとほぼ同じであり、例えば、0.55mm程度である。
【0095】
また、図9および図12に示されるように、第3カービックカップリング31の直線移動を規制するストッパ54とシリンダカバー51の内壁51aとの間は、距離E(例えば、2mm程度)離れている。
【0096】
スリーブ連結機構21では、第1回転軸8側のガイドピン26とスリーブ10側のピン穴28との間は、所定の距離t40(例えば、1mm程度)だけ離れているので、第1回転軸8とスリーブ10とは連結が解除された状態になっている。
【0097】
このように主軸ユニット3の回転が規制された第1状態になっているアタッチメント1において、アタッチメント主軸14を回転駆動させる場合、工作機械の主軸Mの回転させることにより、その主軸Mからの回転駆動力がアダプタAとプルスタッドPを介してアタッチメント本体4内の駆動軸5に伝達され、さらに、ベベルギヤ6とベベルギヤ7を介して、駆動軸5に直交する第1回転軸8に伝達される。
【0098】
さらに、第1回転軸8に伝達された回転駆動力は、第1回転軸8とスプライン結合している第2回転軸9に伝達され、さらに、ベベルギヤ11およびベベルギヤ15を介して、第2回転軸9に直交するアタッチメント主軸14に伝達される。これにより、アタッチメント主軸14に装着される工具(図示せず)は、工作機械の主軸Mからの回転駆動力を受けることにより、所定の回転数で回転してワークを加工することができる。
【0099】
(主軸ユニット3の割り出し旋回動作)
つぎに、主軸ユニット3を所望の割り出し角度に旋回させる場合には、アタッチメント1の制御部または工作機械の制御部に対して主軸ユニット3の旋回駆動指令を外部から与えることにより、図3および図12に示されるアタッチメント1の第1状態から、アタッチメント本体4の内部に設けられた直線移動機構20が作動し、シリンダ23内部のピストン24を主軸ユニット3に向けて第1方向Iへ移動させる。
【0100】
具体的には、直線移動機構20では、シリンダ空間59におけるピストン24の第2方向II側の空間部分59aに油が外部から圧送され、その油圧によって、ピストン24に対して、複数のスプリング57(図10参照)の反発力(すなわち、主軸ユニット3をメインユニット2へ向けて押し付ける方向のクランプ力)を超える押圧力が与えられる。これにより、ピストン24は、主軸ユニット3側の第1方向Iへ移動する。それとともに、ピストン24に取り付けられた複数のピストン軸56、リングプレート36および押え板35が第1方向Iへ移動する。押え板35が第1方向Iへ移動することにより、押え板35の内径側端部35aと当接しているスリーブ10が摺動するとともに、主軸ユニット本体13がアタッチメント本体4と離間する第1方向Iに移動して図13に示される第2状態、さらには図14に示される第3状態へと移行する。
【0101】
<第2状態への移行>
図13に示される第2状態では、主軸ユニット3側の第1カービックカップリング29とメインユニット2側の第2カービックカップリング30との噛み合いがはずれ、第1カービックカップリング29と第2カービックカップリング30との間は隙間t31(例えば、1.45mm)だけ離れる。このときも、第3カービックカップリング31は、スプリング32の押圧力によって第1カービックカップリング29の直線移動に追随し、第1カービックカップリング29に噛み合った状態を維持している(隙間t21=0mm)。そのため、第2状態において、第1カービックカップリング29に連結された主軸ユニット3の旋回は規制されている。この第3カービックカップリング31がストッパ54とシリンダカバー51の内壁51aとの距離E(例えば、2mm程度)の移動を完了したときには、ストッパ54がシリンダカバー51の内壁51aに当接する。これにより、第3カービックカップリング31は、第1カービックカップリング29に追随して第1方向Iへ移動するのを止めて停止する。
【0102】
一方、スリーブ連結機構21では、第1回転軸8側のガイドピン26は、スリーブ10側のピン穴28に所定の第1長さ分t41(例えば、1mm程度)だけ挿入されることにより、ガイドピン26とピン穴28の連結が部分的に行われる。
【0103】
<第3状態への移行>
図14に示されるように、ピストン24およびスリーブ10が第1方向Iへさらに移動して第3状態のようになると、第1カービックカップリング29と第2カービックカップリング30との隙間t32はさらに拡大する(例えば、3.45mm)。そして、第1カービックカップリング29と第3カービックカップリング31の噛み合いがはずれ、第1カービックカップリング29と第3カービックカップリング31との間は隙間t22(例えば、1.45mm)だけ離れる。
【0104】
したがって、この第3状態では、旋回規制機構22における第1カービックカップリング29と第2カービックカップリング30との間の噛み合い、および第1カービックカップリング29と第3カービックカップリング31との間の噛み合いはすべて解除されるので、主軸ユニット3の旋回の規制が解除される。
【0105】
一方、スリーブ連結機構21では、第1回転軸8側のガイドピン26は、スリーブ10側のピン穴28に第1長さ分t41よりもさらに長い第2長さ分t42(例えば、3mm程度)まで完全に挿入されることにより、ガイドピン26とピン穴28との連結が完了する。これにより、主軸ユニット3に連結されたスリーブ10は、ガイドピン26およびピン穴28を介してメインユニット2側の第1回転軸8からの回転駆動力が伝達される状態になる。
【0106】
<主軸ユニット3の旋回>
図14に示されるように、アタッチメント1が第3状態に移行した後、工作機械の主軸Mを低速で所定の角度だけ回転駆動させることにより、アタッチメント1では、主軸Mからの回転駆動力が、駆動軸5、第1回転軸8、ガイドピン26、ピン穴28を有するブラケット27およびスリーブ10を介して、主軸ユニット3に伝達される。その結果、主軸ユニット3を旋回駆動指令に対応する所望の旋回角度で割り出し旋回させることが可能である。
【0107】
<第1状態への復帰動作>
主軸ユニット3が指令通りの旋回角度まで旋回した後、ピストン24に与えていた油圧を解除することにより、図10に示されるスプリング57の復元力によって、ピストン24、ピストン軸56、リングプレート36および押え板35が第2方向IIへ移動する。これにより、押え板35が第2方向IIへ移動することにより、押え板35の内径側端部35aと当接している第1カービックカップリング29および当該第1カービックカップリング29にボルト結合されたスリーブ10が第2方向IIに移動する。それとともに、主軸ユニット本体13がアタッチメント本体4と近づく第2方向IIに移動する。これにより、アタッチメント1は、図14に示される第3状態から、図13に示される第2状態を経て、図12に示される第1状態へ復帰する。
【0108】
この復帰動作時の第2状態では、スリーブ10と第1回転軸8との連結が解除される第1状態になる前に、旋回規制機構22がスリーブ10をアタッチメント本体4に連結する。具体的には、旋回規制機構22の第1カービックカップリング29は、第2方向IIへ移動して図13に示される第2状態の位置まで戻ったとき、第2カービックカップリング30よりも第1方向I側へ突出した位置にある第3カービックカップリング31と噛み合うことにより、主軸ユニット3の旋回は規制される。このとき、スリーブ連結機構21では、第1回転軸8側のガイドピン26がスリーブ10側のピン穴28に第1長さ分t41だけ挿入された状態で、ガイドピン26とピン穴28の連結を部分的に維持している。
【0109】
押え板35がさらに第2方向IIへ移動したとき、第1カービックカップリング29がスプリング32の弾性力に抵抗して第3カービックカップリング31を押し戻しながら第1状態に復帰する。復帰後の第1状態では、旋回規制機構22は、第1カービックカップリング29が第2カービックカップリング30および第3カービックカップリング3の両方に噛み合っている。これにより、主軸ユニット3の旋回は規制され、主軸ユニット3は変更後の割り出し角度で保持される。第1カービックカップリング29は、スプリング57による復元力を押え板35を介して受けることによって、第2カービックカップリング30および第3カービックカップリング3に押圧されている。このとき、スリーブ連結機構21では、ガイドピン26とピン穴28との連結が完全に解除される。
【0110】
(本実施形態の特徴)
(1)
本実施形態のアタッチメント1では、メインユニット2において、工作機械の主軸Mの回転駆動力を受ける第1回転軸8の端部には、第2回転軸9が当該第1回転軸8に対して軸方向に相対的に移動可能でかつ相対的に回転が規制されるように連結されている。そして、この第2回転軸9は、円筒状のスリーブ10に連結され、ベベルギヤ11、15を介して主軸ユニット3のアタッチメント主軸14へ回転駆動力を伝達する。スリーブ10は、第1回転軸8の回転軸回りに回転自在でかつ軸方向へ移動できるように、アタッチメント本体4に支持されている。このスリーブ10の端部には、主軸ユニット本体13が連結されている。スリーブ10を直線移動機構20によって直線移動させることにより、スリーブ連結機構21がスリーブ10と第1回転軸8とを連結させる。これにより、工作機械の主軸Mの回転駆動力を、アタッチメント主軸14への伝達を維持した状態で、第1回転軸8からスリーブ10へ動力伝達して主軸ユニット3の割り出し旋回に用いることができる。そのため、アタッチメント主軸14への回転駆動力の伝達を一時的に切るためのクラッチ機構などが不要になり、アタッチメント1の小型化を達成できる。
【0111】
すなわち、主軸ユニット3の割り出し旋回を行うときには、直線移動機構20によってスリーブ10を第1方向Iへ移動させてアタッチメント本体4と主軸ユニット本体13とを離間させるように遠ざければ、スリーブ連結機構21がスリーブ10と第1回転軸8とを連結させ、さらに、旋回規制機構22がスリーブ10とアタッチメント本体4との連結を解除して主軸ユニット3の旋回の規制を解除する。これにより、工作機械の主軸Mの回転駆動力によって、スリーブ10を第1回転軸8とともに回転させて、主軸ユニット3を割り出し旋回させることが可能になる。
【0112】
主軸ユニット3の割り出し旋回を終了したときには、直線移動機構20によってスリーブ10を第2方向IIへ移動させてアタッチメント本体4と主軸ユニット本体13とを近づければ、スリーブ連結機構21がスリーブ10と第1回転軸8との連結を解除するとともに、旋回規制機構22がスリーブ10とアタッチメント本体4とを連結する。これにより、主軸ユニット3の旋回を規制した状態で、工作機械の主軸Mの回転駆動力を第1回転軸8および第2回転軸9を介してアタッチメント主軸14へ動力伝達させることができる。
【0113】
(2)
本実施形態のアタッチメント1では、直線移動機構20によってスリーブ10が第1方向Iへ直線移動している間の第2状態では、スリーブ10と第1回転軸8との連結が完了する第3状態になるまで、旋回規制機構22がスリーブ10をアタッチメント本体4に連結して主軸ユニット3の旋回を規制した状態を維持するので、スリーブ10が第1回転軸8およびアタッチメント本体4のいずれにも連結されないで自由に回転できる状態になることがなく、スリーブ10に連結された主軸ユニット3が割り出し旋回の動作前に旋回するおそれがない。一方、スリーブ10が第2方向IIへ直線移動している間の第2状態においても、スリーブ10と第1回転軸8との連結が解除される第1状態になる前に旋回規制機構22がスリーブ10をアタッチメント本体4に連結するので、この場合もスリーブ10が第1回転軸8およびアタッチメント本体4のいずれにも連結されないで自由に回転できる状態になることがなく、主軸ユニット3が割り出し旋回の動作前に旋回するおそれがない。その結果、主軸ユニット3の割り出し制御を正確に行うことができる。
【0114】
(3)
本実施形態のアタッチメント1では、スリーブ連結機構21のガイドピン26およびブラケット27ピン穴28の部分がスリーブ10の内側の空間に配置されているので、スリーブ連結機構21およびスリーブ10が占有する空間を小さくすることができ、アタッチメントをより小型化にすることが可能になる。
【0115】
(4)
本実施形態のアタッチメント1では、スリーブ連結機構21が、第1回転軸8の外側部分またはスリーブ10の内側部分のいずれかにそれぞれ設けられた第1回転軸8に平行に延びるガイドピン26とピン穴28を有するブラケット27とからなる簡単な構造である。しかも、ガイドピン26およびピン穴28は、スリーブ10の内周面と第1回転軸8の外周面との間に配置されているので、スリーブ10の内側の空間にコンパクトに配置することが可能である。また、直線移動機構20によってスリーブ10を直線移動させるだけで、スリーブ連結機構21のガイドピン26とピン穴28を連結させたり離間させることができるので、スリーブ10と第1回転軸8との間の連結および切り離しを容易かつ確実に行うことができる。
【0116】
(5)
本実施形態のアタッチメント1では、旋回規制機構22が、スリーブ10に固定された第1カービックカップリング29と、アタッチメント本体4に固定された第2カービックカップリング30とを備えているので、これらのカービックカップリングの歯同士が噛み合うことにより、高い精度で主軸ユニット3の割り出しを行うことができる。
【0117】
とくに本実施形態の第1カービックカップリング29および第2カービックカップリング30として、スリーブ10の胴回りよりも大きい大型のカービックカップリングが採用されているので、多くの歯数を有することが可能であり、割り出し精度が高い。
【0118】
(6)
本実施形態のアタッチメント1では、旋回規制機構22は、アタッチメント本体4側に第1方向Iおよび第2方向IIに移動自在な第3カービックカップリング31をさらに備えているので、主軸ユニット本体13に固定された第1カービックカップリング29が第1方向Iへ移動して第2カービックカップリング30との噛み合いが外れた状態でも、第3カービックカップリング31をスプリング32からの押圧力によって第1カービックカップリング29に追随させて第1カービックカップリング29と第3カービックカップリング31を噛み合わせた状態を維持することが可能である。第1カービックカップリング29が第1方向Iへさらに移動したときには、第3カービックカップリング31は、所定の位置まで第1カービックカップリング29を追随し、所定の位置に来たときにストッパ54によってその位置で停止させられる。これにより、第1カービックカップリング29と第3カービックカップリング31との噛み合いが外れて、主軸ユニット3の旋回の規制が解除される。
【0119】
このため、スリーブ10を第1方向Iへ直線移動させて主軸ユニット3の旋回の規制を解除させる途中において、第1カービックカップリング29と第2カービックカップリング30とが噛み合っていない状態で、かつ、スリーブ連結機構21によるスリーブ10と第1回転軸8との連結が完了していない不安定な状態になっても、第3カービックカップリング31が第1カービックカップリング29に追随して当該第1カービックカップリング29と噛み合う第2状態になることにより、スリーブ10が第1回転軸8およびアタッチメント本体4のいずれにも連結されないで自由に回転できる状態になることがなく、スリーブ10に連結された主軸ユニット3が割り出し旋回の動作前に旋回するおそれがない。例えば、ガイドピン26とピン穴28との間にスキマがあっても、第2状態では、第3カービックカップリング31が第1カービックカップリング29と噛み合っているので、主軸ユニット3が旋回方向にぐらついて割り出し誤差が生じるなどのおそれがない。
【0120】
しかも、第3カービックカップリング31は、第1カービックカップリング29の歯29aのうち、第2カービックカップリング30の外周からはみ出ている部分に噛み合うことにより、主軸ユニット3の旋回を規制することができるので、第3カービックカップリング31を小型かつ簡単な構造にすることができ、アタッチメントをより小型化することが可能になる。
【0121】
(7)
本実施形態のアタッチメント1では、第1カービックカップリング29と第2カービックカップリング30とが連結している第1状態では、ガイドピン26の全部がピン穴28から離脱した位置にある。そのため、主軸ユニット3の旋回を規制してアタッチメント主軸14に接続される工具を回転させる通常動作の場合に、第1回転軸8が高速で回転しても、ガイドピン26がピン穴28側のブラケット27に干渉する問題を確実に防ぐことができる。
【0122】
また、中間段階として、第1カービックカップリング29の歯が第2カービックカップリング30の歯から外れて第3カービックカップリング31の歯のみと噛み合う第2状態のときは、ガイドピン26の一部である所定の第1長さ分t41が、ピン穴28に少し挿入された位置にあるので、ガイドピン26の挿入をスムーズに行うことができる。
【0123】
さらに、第1カービックカップリング29の歯29aが第2カービックカップリング30の歯30aと第3カービックカップリング31の歯31aの両方と噛み合わない位置になって主軸ユニット3の旋回の規制が解除された第3状態のときは、ピンがピン穴28に所定の第2長さ分t42まで完全に挿入された状態になる。これにより、第1回転軸8からスリーブ10へ動力伝達して主軸ユニット3の割り出し旋回をするときには、ピンとのピン穴28との嵌合により、第1回転軸8からスリーブ10への動力伝達を確実に行うことができる。その結果、第1回転軸8およびスリーブ10の回転によって、主軸ユニット3を確実に割り出し旋回させることができる。
【0124】
(8)
本実施形態のアタッチメント1では、直線移動機構20は、スリーブ10を第1方向Iおよび第2方向IIへ直線移動させる可動部材として押え板35を備えている。この押え板35の内径側端部35aがスリーブ10の外周側に突出した突出部分と第1カービックカップリングとの隙間に嵌め込まれることよって、スリーブ10を第1方向Iまたは第2方向IIのいずれかに確実に直線移動させることが可能になる。
【0125】
(9)
本実施形態のアタッチメント1では、主軸ユニット3の割り出し旋回を行わない通常状態のときには、スリーブ10はスプリング57からの付勢力を押え板35を介して受けることによって第2方向IIへ常時付勢される。このとき、旋回規制機構22の第1カービックカップリング29が第2カービックカップリング30および第3カービックカップリング31に噛み合った状態が維持され、スリーブ10をアタッチメント本体4に連結した状態が維持される。そのため、外部からの動力の供給がなくても、スリーブ10およびそれに連結された主軸ユニット3がアタッチメント本体4に所定の割り出し角度で固定された状態を維持することが可能である。
【0126】
(10)
本実施形態のアタッチメント1では、第1回転軸8と当該第1回転軸8に直交する駆動軸5とはベベルギヤ6、7を介して直接連結されているので、工作機械の主軸Mの回転駆動力は、駆動軸5およびベベルギヤ6、7を介して第1回転軸8に直接伝達することが可能であり、音も静かで回転駆動力の伝達損失も少ない。
【0127】
(変形例)
上記実施形態では、工作機械のアタッチメント取付部分の一例として、円筒状の軸受け台であるクイルを例にあげて説明しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、工作機械において主軸Mの周辺に配置されたアタッチメントの取付可能な部分であればいかなる部分であってもよい。
【符号の説明】
【0128】
1 アタッチメント
2 メインユニット
3 主軸ユニット
4 アタッチメント本体
5 駆動軸
8 第1回転軸
9 第2回転軸
10 スリーブ
13 主軸ユニット本体
14 アタッチメント主軸
20 直線移動機構
21 スリーブ連結機構
22 旋回規制機構
26 ガイドピン(突起)
27 ブラケット(受け部)
28 ピン穴(凹部)
29 第1カービックカップリング
30 第2カービックカップリング
31 第3カービックカップリング
32 スプリング(押圧手段)
34 つば部(突出部分)
35 押え板(可動部材)
A アダプタ
P プルスタッド
Q クイル(アタッチメント取付部分)
SA 水平軸
SB 旋回軸
SC 垂直軸
54 ストッパ(停止手段)
57 スプリング(付勢手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動する主軸および当該主軸の周辺に配置されたアタッチメント取付部分を有する工作機械に接続可能であり、前記主軸の回転駆動力を工具に伝達するアタッチメントにおいて、
前記工作機械に接続可能なメインユニットと、当該メインユニットに対して相対的に旋回可能に連結された主軸ユニットとを備えており、
前記メインユニットは、
前記アタッチメント取付部分に固定可能な形状を有するアタッチメント本体と、
前記アタッチメント本体に回転自在に支持され、前記主軸からの回転駆動力を受けて回転可能な第1回転軸と、
前記第1回転軸に対して当該第1回転軸の軸方向へ相対的に移動可能でかつ相対的な回転が規制されるように、前記第1回転軸の端部に連結された第2回転軸と、
前記第2回転軸を回転自在に支持する円筒状のスリーブと
を備えており、
前記スリーブは、第1回転軸の回転軸回りに回転自在でかつ前記軸方向へ移動できるように、前記アタッチメント本体に支持され、
前記主軸ユニットは、前記スリーブの端部に連結された主軸ユニット本体と、当該主軸ユニット本体に回転自在に支持され、前記第2回転軸を介して前記回転駆動力を受けて回転可能であり、前記工具を取り付けることが可能な形状を有するアタッチメント主軸とを備えており、
さらに、前記メインユニットは、
前記スリーブを前記第1回転軸の軸線上に沿って往復直線移動させる直線移動機構と、
前記スリーブを前記第1回転軸に対して着脱するスリーブ連結機構と、
前記スリーブを前記アタッチメント本体に対して着脱することにより、当該スリーブに連結された前記主軸ユニットの旋回を規制する旋回規制機構と、
を備えており、
前記スリーブ連結機構は、前記直線移動機構が前記主軸ユニット本体を前記アタッチメント本体から離間させるように前記スリーブを前記第1回転軸の軸線上に沿って第1方向へ直線移動させたときに、前記スリーブを前記第1回転軸と一緒に回転できるように当該第1回転軸に連結させ、前記直線移動機構が前記スリーブを前記第1方向と反対の方向である第2方向へ直線移動させたときに、前記スリーブと前記第1回転軸との連結を解除し、
前記旋回規制機構は、前記直線移動機構が前記スリーブを前記第1方向へ直線移動させたときには、前記スリーブと前記アタッチメント本体との連結を解除して前記主軸ユニットの旋回の規制を解除し、前記直線移動機構が前記スリーブを前記第2方向へ直線移動させたときには、前記スリーブを前記アタッチメント本体に連結して前記主軸ユニットの旋回を規制する
ことを特徴とする工作機械のアタッチメント。
【請求項2】
前記旋回規制機構は、前記直線移動機構が前記スリーブを前記第1方向へ直線移動させる間において、前記スリーブ連結機構が前記スリーブと前記第1回転軸とを連結させていく途中では前記スリーブを前記アタッチメント本体に連結して前記主軸ユニットの旋回を規制した状態を維持し、前記スリーブと前記第1回転軸との連結が完了したときには前記スリーブを前記アタッチメント本体に対する連結を解除して前記主軸ユニットの旋回の規制を解除した状態にし、一方、前記直線移動機構が前記スリーブを前記第2方向へ直線移動させる間において、前記スリーブと前記第1回転軸との連結が解除する前に前記スリーブを前記アタッチメント本体に連結して前記主軸ユニットの旋回を規制する
請求項1に記載の工作機械のアタッチメント。
【請求項3】
前記スリーブ連結機構の少なくとも一部は、前記スリーブの内周面よりも内側に配置されている、
請求項1に記載の工作機械のアタッチメント。
【請求項4】
前記スリーブ連結機構は、
前記第1回転軸または前記スリーブのうちの一方に設けられ、前記1回転軸と平行に延びる突起と、
前記第1回転軸または前記スリーブのうちの他方に設けられ、前記突起と連結可能な形状を有する凹部を有する受け部と、
を備えている、
請求項3に記載の工作機械のアタッチメント。
【請求項5】
前記旋回規制機構は、
前記第2方向に突出する複数の歯を有し、前記スリーブに固定された第1カービックカップリングと、
前記第1方向に突出するとともに前記第1カービックカップリングの歯と噛み合うことが可能な複数の歯を有し、前記アタッチメント本体に固定された第2カービックカップリングと、
を備えている、
請求項1から4のいずれかに記載の工作機械のアタッチメント。
【請求項6】
前記旋回規制機構は、
前記第1方向に突出するとともに前記第1カービックカップリングの歯のうちの一部と噛み合うことが可能な歯を有し、前記アタッチメント本体に対して前記第1方向および前記第2方向に移動可能に取り付けられた第3カービックカップリングと、
前記第3カービックカップリングに対して前記第1カービックカップリングの歯に向けて押圧する押圧力を与える押圧手段と、
前記押圧手段からの押圧力を受ける前記第3カービックカップリングを、前記第1カービックカップリングの移動の途中まで追随させて所定の位置で追随を止めて停止させる停止手段と、
をさらに備えており、
しかも、前記旋回規制機構は、前記直線移動機構が前記スリーブを直線移動させる間に、
前記第1カービックカップリングの歯が前記第2カービックカップリングの歯と前記第3カービックカップリングの歯の両方に噛み合う第1状態と、
前記第1カービックカップリングの歯が前記第2カービックカップリングの歯から外れて前記第3カービックカップリングの歯のみと噛み合う第2状態と、
前記第1カービックカップリングの歯が前記第2カービックカップリングの歯と前記第3カービックカップリングの歯の両方と噛み合わない第3状態と
の間を移行することが可能である、
請求項5に記載の工作機械のアタッチメント。
【請求項7】
前記スリーブ連結機構は、
前記第1回転軸または前記スリーブのうちの一方に設けられ、前記1回転軸と平行に延びる突起と、
前記第1回転軸または前記スリーブのうちの他方に設けられ、前記突起と連結可能な形状を有する凹部を有する受け部と、
を有しており、
前記第1状態のときには、前記突起の全部が前記凹部から離脱した位置にあり、
前記第2状態のときには、前記突起の所定の第1長さ分が前記凹部に挿入された位置にあり、
前記第3状態のときには、前記突起の前記第1長さ分より長い所定の第2長さ分が前記凹部に挿入された位置にある、
請求項6に記載の工作機械のアタッチメント。
【請求項8】
前記スリーブは、当該スリーブの外周面から外側へ突出する突出部分を有しており、
前記第1カービックカップリングは、前記突出部分から前記第2方向へ離れて配置され、
前記直線移動機構は、前記突出部分と前記第1カービックカップリングとの隙間に嵌り込むことが可能な形状を有し、かつ、前記スリーブを前記第1方向および前記第2方向へ直線移動させる可動部材を備えている、
請求項5から7のいずれかに記載の工作機械のアタッチメント。
【請求項9】
前記直線移動機構は、前記スリーブに前記第2方向へ向かう付勢力を与える付勢手段をさらに備えている、
請求項1から8のいずれかに記載の工作機械のアタッチメント。
【請求項10】
前記主軸に同軸状に連結される駆動軸をさらに備えており、
前記第1回転軸は、前記駆動軸に直交して配置されており、
前記第1回転軸と前記駆動軸とは、ベベルギヤを介して連結されている、
請求項1から9のいずれかに記載の工作機械のアタッチメント。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−218073(P2012−218073A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82612(P2011−82612)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(000191180)新日本工機株式会社 (51)