説明

工作機械のベッド構造

【課題】 加工時に発生する熱による変形を著しく抑えて高精度の加工を行うことができる工作機械のベッド構造を提供すること。
【解決手段】 主軸を備えた主軸ユニット4及びスライド台38を備えたスライド台ユニット6を支持するためのベッド本体2を備えた工作機械のベッド構造。ベッド本体2は、主軸ユニット4を支持する第1部分8と、スライド台ユニット6を支持する第2部分10と、これらを接続する中間部分12とから構成され、中間部分12が中間パイプフレーム構造14から構成されている。この中間パイプフレーム構造14には、ベッド本体2に発生する熱変形を補正するための熱変形補正手段が設けられる。また、ベッド本体2に発生する振動を抑えるための振動抑制手段が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NC旋盤などの工作機械のベッド構造に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械として代表的なNC旋盤においては、主軸部及び刃物台などを支持するベッド本体は、鋳物による鋳物構造か、板溶接による板金構造が一般的である。近年のNC旋盤などの分野においては、高速加工の要求に伴うスライド移動物の高速化のための剛性向上のために、また高精度加工の要求に伴う振動対策、熱変形対策などのために、ベッド本体の鋳物構造(又は板金構造)に補強用リブを設けたり、ベッド本体の板厚を厚くしたりし、ベッド本体が大型化、大重量化する傾向にある。
【0003】
一方、NC旋盤などの分野では、設置面積を小さくするなどのために小型化の要求も高まっており、高剛性を確保しながらベッド本体を小型化、軽量化するための条件を満足するには相反することとなり、これらの問題を全て解消することは難しい。
【0004】
そこで、このような問題を解消する一つの手段として、機械本体をフレーム構造とした工作機械が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この工作機械では、機械本体が八面体状のフレーム構造から構成され、このフレーム構造のベース部分にテーブルが設けられ、このテーブルに加工すべきワークピースが取り付けられる、また、フレーム構造には複数の伸縮可能なストラットが装着され、これらストラットにストラットサポートが支持され、このストラットサポートに切削工具などの加工工具が取り付けられる。
【0005】
【特許文献1】特開平6−190667号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した工作機械では、機械本体がフレーム構造であるので、軽量化などを達成することができるが、高精度加工の要求に伴う振動、熱変形などに対しては充分な対策が施されておらず、これらの対策についての更なる改良が望まれる。
【0007】
本発明の目的は、加工時に発生する熱による変形を著しく抑えて高精度の加工を行うことができる工作機械のベッド構造を提供することである。
本発明の他の目的は、加工時に発生する振動の影響を著しく少なくして高精度の加工を行うことができる工作機械のベッド構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に記載の工作機械のベッド構造は、所定方向に回動される主軸を備えた主軸ユニット及びスライド台を備えたスライド台ユニットを支持するためのベッド本体を備えた工作機械のベッド構造であって、
前記ベッド本体は、前記主軸ユニットを支持する第1部分と、前記スライド台ユニットを支持する第2部分と、前記第1部分及び第2部分を接続する中間部分とから構成され、少なくとも前記中間部分が中間パイプフレーム構造から構成され、前記中間パイプフレーム構造に関連して、前記ベッド本体に発生する熱変形を補正するための熱変形補正手段が設けられていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項2に記載の工作機械のベッド構造では、前記中間パイプフレーム構造は、4本の上連結パイプを4つの上連結部ブロックに矩形状に連結した上フレームと、4本の下連結パイプを4つの下連結ブロックに矩形状に連結した下フレームと、前記上フレームの各連結ブロックと前記下フレームの各連結ブロックを接続する4本の接続パイプとから構成され、少なくとも前記上フレームに前記熱変形補正手段が設けられていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項3に記載の工作機械のベッド構造では、前記中間パイプフレーム構造の前記上フレームの前記上連結パイプ、前記下フレームの前記下連結パイプ及び前記接続パイプは、液体が密封された中空パイプから構成され、前記上フレームにおける前記主軸ユニット及び前記スライド台ユニットに対向する一対の特定上連結パイプは軸方向中央部が更に密封されており、また前記熱変形補正手段は4つの加熱・冷却手段から構成されており、前記一対の特定上連結パイプの片側部及び他側部に対応して前記加熱・冷却手段が設けられていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項4に記載の工作機械のベッド構造は、所定方向に回動される主軸を備えた主軸ユニット及びスライド台を備えたスライド台ユニットを支持するためのベッド本体を備えた工作機械のベッド構造であって、
前記ベッド本体は、前記主軸ユニットを支持する第1部分と、前記スライド台ユニットを支持する第2部分と、前記第1部分及び第2部分を接続する中間部分とから構成され、少なくとも前記中間部分が中間パイプフレーム構造から構成され、前記中間パイプフレーム構造に関連して、前記ベッド本体に発生する振動を抑えるための振動抑制手段が設けられていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項5に記載の工作機械のベッド構造では、前記中間パイプフレーム構造は、4本の上連結パイプを4つの上連結部ブロックに矩形状に連結した上フレームと、4本の下連結パイプを4つの下連結ブロックに矩形状に連結した下フレームと、前記上フレームの各連結ブロックと前記下フレームの各連結ブロックを接続する4本の接続パイプとから構成され、少なくとも前記上フレームに前記振動抑制手段が設けられていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項6に記載の工作機械のベッド構造では、前記中間パイプフレーム構造の前記上フレームの前記上連結パイプ、前記下フレームの前記下連結パイプ及び前記接続パイプは、液体が密封された中空パイプから構成され、また前記振動抑制手段は4つの加振手段から構成され、2つの加振手段は前記上フレームにおける前記主軸ユニット及び前記スライド台ユニット方向に対向する一対の特定上連結パイプの一端部及び他端部に設けられ、残りの二つの加振手段は残りの対向する一対の上連結パイプの一端部及び他端部に設けられていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の請求項7に記載の工作機械のベッド構造では、前記中間パイプフレーム構造に関連して、更に、前記ベッド本体に発生する熱変形を補正するための熱変形補正手段が設けられていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の請求項8に記載の工作機械のベッド構造では、前記ベッド本体の前記第1部分は第1パイプフレーム構造から構成され、前記第1パイプフレーム構造は複数の連結ブロック及び複数の連結パイプを直方体状に連結することによって構成されることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の請求項9に記載の工作機械のベッド構造では、前記ベッド本体の前記第2部分は第2パイプフレーム構造から構成され、前記第2パイプフレーム構造は複数の連結ブロック及び複数の連結パイプを直方体状に連結することによって構成されることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の請求項10に記載の工作機械のベッド構造では、前記主軸ユニットは、前記ベッド本体の前記第1部分に取り付けられた主軸支持部と、前記主軸を回転自在に支持する主軸部とを備え、前記主軸部が第1スライド機構を介して前記主軸支持部に前記主軸の軸線方向である第1方向に移動自在に支持され、また前記スライド台ユニットは、前記ベッド本体の前記第2部分に取り付けられたスライド台支持部と、前記スライド台を備えたスライド台部とを備え、前記スライド台部が第2支持機構を介して前記スライド支持部に前記第1方向に対して実質上垂直な第2方向に移動自在に支持されていることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の請求項11に記載の工作機械のベッド構造は、所定方向に回動される主軸を備えた主軸ユニット及びスライド台を備えたスライド台ユニットを支持するためのベッド本体を備えた工作機械のベッド構造であって、
前記ベッド本体は、前記主軸ユニットを支持する第1部分と、前記スライド台ユニットを支持する第2部分とから構成され、少なくとも前記第2部分がパイプフレーム構造から構成され、前記パイプフレーム構造に関連して、前記ベッド本体に発生する熱変形を補正するための熱変形補正手段が設けられていることを特徴とする。
【0019】
更に、本発明の請求項12に記載の工作機械のベッド構造は、所定方向に回動される主軸を備えた主軸ユニット及びスライド台を備えたスライド台ユニットを支持するためのベッド本体を備えた工作機械のベッド構造であって、
前記ベッド本体は、前記主軸ユニットを支持する第1部分と、前記スライド台ユニットを支持する第2部分とから構成され、少なくとも前記第2部分がパイプフレーム構造から構成され、前記パイプフレーム構造に関連して、前記ベッド本体に発生する振動を抑えるための振動抑制手段が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の請求項1に記載の工作機械のベッド構造によれば、ベッド本体の第1部分と第2部分とを接続する中間パイプフレームに熱変形補正手段が設けられ、この熱変形補正手段がベッド本体に発生する熱変形を補正するので、第1部分に設けられる主軸ユニットと第2部分に設けられるスライド台ユニットとの相対的位置関係が補正され、熱変形を抑えて高精度の加工を行うことができる。工作機械とは、例えばNC旋盤であり、主軸ユニットはチャック手段を回転駆動するための主軸を備え、スライド台ユニットは加工工具(所謂、刃物)を取り付けるためのスライド台を備えている。
【0021】
また、本発明の請求項2に記載の工作機械のベッド構造によれば、中間パイプフレーム構造の少なくとも上フレームに熱変形補正手段が設けられているので、熱変形が発生した場合に第1部分及び第2部分の上部の相対的位置関係を補正することができ、比較的簡単な構成でもって熱変形を抑えて高精度の加工が加工となる。
【0022】
また、本発明の請求項3に記載の工作機械のベッド構造によれば、中間パイプフレーム構造の上フレームにおける特定上連結パイプの軸方向中央部が密封され、一対の特定上連結パイプの片側部及び他側部に対応して加熱・冷却手段が設けられているので、これら加熱・冷却手段をベッド本体の熱変形状態に応じて所要の通りに加熱又は冷却することによって、ベッド本体の熱変形を補正して熱の影響を抑えることができる。尚、加熱・冷却手段としては、例えば熱電変換素子を用いることができる。
【0023】
また、本発明の請求項4に記載の工作機械のベッド構造によれば、ベッド本体の第1部分と第2部分とを接続する中間パイプフレームに振動抑制手段が設けられ、この振動抑制手段がベッド本体に発生する振動を打ち消して抑制するように作用するので、第1部分に設けられる主軸ユニット及び第2部分に設けられるスライド台ユニットにおける振動の影響を抑えて高精度の加工を行うことができる。
【0024】
また、本発明の請求項5に記載の工作機械のベッド構造によれば、中間パイプフレーム構造の少なくとも上フレームに振動抑制手段が設けられているので、第1部分及び第2部分において加工時に発生する振動を抑えることができ、比較的簡単な構成でもって振動の影響を抑えて高精度の加工が加工となる。
【0025】
また、本発明の請求項6に記載の工作機械のベッド構造によれば、中間パイプフレーム構造の上フレームにおける一対の特定上連結パイプの一端部及び他端部と、この上フレームの残りの一対の上連結パイプとに、振動抑制手段としての加振手段が設けられているので、これら加振手段により中間パイプフレーム構造の上フレームに、発生する振動を打ち消すように振動を加えることによって、ベッド本体に作用する振動の影響を抑えることができる。一対の特定上連結パイプの一端部及び他端部に設けられた加振手段は、主軸ユニット及びスライド台ユニットの方向(例えば、第1方向)に対して垂直な方向(例えば、第2方向)に振動を加え、第2方向の振動を打ち消すように作用する。また残りの一対の連結パイプの一端部及び他端部に設けられた加振手段は、第1方向に振動を加え、第1方向の振動を打ち消すように作用する。尚、加振手段としては、例えば圧電素子を用いることができる。
【0026】
また、本発明の請求項7に記載の工作機械のベッド構造によれば、中間パイプフレーム構造に関連して、振動抑制手段に加えて熱変形補正手段が設けられているので、加工時に発生する振動及び熱の影響を抑えることができる。
【0027】
また、本発明の請求項8に記載の工作機械のベッド構造によれば、前記ベッド本体の第1部分が第1パイプフレーム構造から構成されているので、この第1部分の軽量化を図ることができる。また、例えば第1パイプフレーム構造に熱変形補正手段を設けることによって、この第1パイプフレーム構造における熱変形を補正することができ、また振動抑制手段を設けることによって、第1パイプフレーム構造における振動を抑制することができる。
【0028】
また、本発明の請求項9に記載の工作機械のベッド構造によれば、ベッド本体の第2部分が第2パイプフレーム構造から構成されているので、この第2部分の軽量化を図ることができる。また、例えば第2パイプフレーム構造に熱変形補正手段を設けることによって、この第2パイプフレーム構造における熱変形を補正することができ、また振動抑制手段を設けることによって、第2パイプフレーム構造における振動を抑制することができる。
【0029】
また、本発明の請求項10に記載のベッド構造によれば、ベッド本体の第1部分に主軸支持部が取り付けられ、この主軸支持部に第1スライド機構を介して第1方向に移動自在に主軸部が支持され、またその第2部分にスライド支持部が取り付けられ、このスライド支持部に第2スライド支持機構を介して第2方向に移動自在にスライド台部が支持され、このような構成は、例えばNC旋盤に好都合に適用することができる。
【0030】
また、本発明の請求項11に記載の工作機械のベッド構造によれば、ベッド本体は主軸ユニットを支持する第1部分とスライド台ユニットを支持する第2部分とから構成され、この第2部分を構成するパイプフレーム構造に熱変形補正手段が設けられているので、ベッド本体に発生する熱変形を熱変形補正手段によって補正することができる。
【0031】
更に、本発明の請求項12に記載の工作機械のベッド構造によれば、ベッド本体は主軸ユニットを支持する第1部分とスライド台ユニットを支持する第2部分とから構成され、この第2部分を構成するパイプフレーム構造に振動抑制手段が設けられているので、この振動抑制手段がベッド本体に発生する振動を打ち消すように働き、振動による影響を抑えて高精度の加工を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、添付図面を参照して、本発明に従う工作機械のベッド構造の実施形態について説明する。図1は、本発明に従うベッド構造の一実施形態を備えた工作機械としての一例のNC旋盤を簡略的に示す斜視図であり、図2は、図1のベッド構造におけるベッド本体の中間パイプフレーム構造を簡略的に示す斜視図であり、図3は、図2の中間パイプフレーム構造の上フレームを示す斜視図であり、図4は、図1のNC旋盤における主軸及び刃物と中間パイプフレーム構造との関係を示す簡略説明図であり、図5(a)〜(d)は、中間パイプフレーム構造の熱変形の態様を説明するための簡略説明図である。
【0033】
図1において、図示のNC旋盤は、工場の床面などに設置されるベッド本体2と、ベッド本体2の片側部(図1において左部)に取り付けられた主軸ユニット4と、このベッド本体2の他側部(図1において右部)に取り付けられたスライド台ユニット6を備えている。ベッド本体2は、主軸ユニット4が取り付けられた第1部分8と、スライド台ユニット6が取り付けられた第2部分10と、第1部分8と第2部分10との間に設けられた中間部分12とから構成され、この形態では、第1及び第2部分8,10がブロック状に形成され、中間部分12が中間パイプフレーム構造14から構成されている。この中間パイプフレーム構造14については、後に詳細に説明する。
【0034】
主軸ユニット4は、ベッド本体2の第1部分8の上面に取り付けられた主軸支持部16と、主軸(図示せず)を備えた主軸部18とを備えている。主軸支持部16の前後方向(図1において左下から右上の方向)中央部には凹部20が設けられ、この凹部20を設けることによって、主軸支持部16の前側部22及び後側部24は上方に突出している。主軸部18は、主軸支持部16の凹部20にその下部が収容されるように配置され、第1スライド機構26を介して主軸支持部16に移動自在に支持されている。この形態では、主軸支持部26の前側部22及び後側部24の上端部に前案内部材28及び後案内部材30が設けられ、また主軸部18の前側部及び後側部には、図1において左上から右下の方向である第1方向(即ち、主軸ユニット4からスライド台ユニット6に向かう方向)に間隔をおいて一対のブロック32が設けられ(図1において、主軸部18の前側部に設けたもののみを示す)、かかるブロック32が前案内部材28及び後案内部材30に移動自在に装着されており、従って、主軸部18は上記第1方向に、即ちスライド台ユニット6に近接及び離隔する方向に移動自在に主軸支持部16に支持され、第1駆動源(図示せず)によって駆動される。
【0035】
主軸部18には主軸(図示せず)が回転自在に支持され、この主軸にはチャック手段34が装着され、加工すべき被加工物がチャック手段34に着脱自在に取り付けられる。また、この主軸には電動モータの如き駆動源(図示せず)が駆動連結され、この駆動源の作用によって、主軸(これと一体にチャック手段34及び被加工物)が所定方向に回転駆動される。
【0036】
また、スライド台ユニット6は、ベッド本体2の第2部分10の上面に取り付けられたスライド台支持部36と、スライド台38を備えたスライド台部40とを備えている。スライド台支持部36は支持本体部41とこの支持本体部41の両側に配設された細長い一対の支持ブロック42,44から構成され、かかる支持ブロック42,44が上記第1方向(図1において左上から右下の方向)に間隔をおいて配置されるように、スライド台支持部36が第2部分10に取り付けられている。スライド台部40は、第2スライド機構46を介してスライド台支持部36に移動自在に支持されている。この形態では、一対の支持ブロック42,44には案内部材48,50が設けられ、またスライド台部40の両側部には、図1において左下から右上の方向である第2方向(即ち、上記第1方向に対して垂直な第2方向)に間隔をおいて一対のブロック52が設けられ(図1において、スライド台部40の右側の側部に設けたもののみを示す)、かかるブロック52が案内部材48,50に移動自在に装着されており、従って、スライド台部40は上記第2方向に移動自在にスライド台支持部36に支持され、電動モータの如き第2駆動源54によって駆動される。
【0037】
スライド台部40のスライド台38は、刃物台として機能し、このスライド台38に加工工具が取り付けられる。
次いで、図1とともに図2を参照して、ベッド本体2の中間部分12、即ち中間パイプフレーム構造14について説明すると、図示の中間パイプフレーム構造14は、上下方向に間隔をおいて配設された上フレーム62及び下フレーム64を備え、上フレーム62及び下フレーム64が複数の接続パイプ66により接続されている。上フレーム62及び下フレーム64は実質上同一の構成であり、上フレーム62(又は下フレーム64)について説明すると、図示の上フレーム62(又は下フレーム64)は、4本の上連結パイプ68(又は下連結パイプ70)及び4つの上連結ブロック72(又は下連結ブロック74)から構成されている。各上連結ブロック72(又は下連結ブロック74)は略立方体状に形成され、その各面(即ち、立方体状の各面)には連結凹部76(又は78)が設けられている。上フレーム62(又は下フレーム64)においては、各上連結パイプ68(又は下連結パイプ70)の両端部が対応する上連結ブロック72(又は下連結ブロック74)の連結凹部76(又は78)に挿入され、4本の上連結パイプ68(又は下連結パイプ70)を上連結ブロック72(又は下連結ブロック74)に挿入連結することによって、矩形状の上フレーム62(又は下フレーム64)が形成される。尚、連絡ブロック72,74は略直方体状、球状などの適宜の形状でよい。
【0038】
上フレーム62の上連結パイプ68、下フレーム64の下連結パイプ70及び接続パイプ66は、例えばオイルなどの液体が充填密封された中空パイプであるのが好ましく、このようなパイプを用いることによって、各パイプの剛性を高めることができるとともに、後述する熱変形の補正をも容易に行うことが可能となる。各接続パイプ66の一端部は上フレーム62の対応する上連結ブロック72の連結凹部76に挿入連結され、その他端部が下フレーム64の対応する下連結ブロック74に挿入連結され、このようにして図1及び図2に示す中間パイプフレーム構造14が構成される。
【0039】
この実施形態では、ブロック本体2の第1部分4と第2部分6との間に上述した中間パイプフレーム構造14が介在されることに関連して、主軸ユニット4の一端部(即ち、スライド台ユニット6側の端部)が中間パイプフレーム構造14の上フレーム62の一対の上連結ブロック72(ブロック本体2の第1部分8に固定された上連結ブロック)に載置固定され、またスライド台ユニット6の一側端部(即ち、主軸ユニット4側の側端部であって、この実施形態においては、支持ブロック44)がこの上フレーム62の残りの一対の上連結ブロック72(ブロック本体2の第2部分10に固定された上連結ブロック)に載置固定され、このように構成することによって、後述する熱変形の補正を容易に行うことが可能となる。
【0040】
この形態では、中間パイプフレーム構造14に関連して、ベッド本体2の熱変形を補正するための熱変形補正手段82が設けられている。図3をも参照して、図示の熱変形補正手段82は4つの加熱・冷却手段、即ち第1〜第4加熱・冷却手段84,86,88,90から構成され、この形態では上フレーム62に関連してこれら第1〜第4加熱・冷却手段84〜90が設けられている。尚、熱変形の補正の理解を容易にするために、図3に示すように、上フレーム62の上連結パイプ68を第1〜第4上連結パイプ68A〜68Dとして以下の説明する。
【0041】
上フレーム62の上記第1方向に対応する一対の上連結パイプ68A,68C(主軸ユニット4が固定された一対の上連結ブロック72間に連結された上連結パイプ68A及びスライド台ユニット6が固定された一対の上連結ブロック72間に連結された上連結パイプ68C)は、軸方向中央部が密封部材92,94によって密封され、一方の上連結パイプ68Aにおいては、密封部材92によって第1部位68Aa(片側部位)と第2部位68Ab(他側部位)に仕切られ、主軸ユニット4の一端部はこの密封部材92にも載置固定され、また他方の上連結パイプ68Cにおいては、密封部材94によって第1部位68Ca(片側部位)と第2部位68Cb(他側部位)とに仕切られ、スライド台ユニット6の一側部はこの密封部材94にも載置固定されている。
【0042】
第1〜第4加熱・冷却手段84,86,88,90は、例えば熱電変換素子から構成することができ、この熱電変換素子として例えばペルチェ素子が用いられる。この実施形態では、第1及び第2加熱・冷却手段84,86は上連結パイプ68Aの第1及び第2部位68Aa,68Abの中間周面に設けられ、また第3及び第4加熱・冷却手段88,90は上連結パイプ68Cの第1及び第2部位68Ca,68Cbの中間周面に設けられる。
【0043】
このような熱変形補正手段82を備えたNC旋盤では、次の通りにしてベッド本体2の熱変形を補正する。NC旋盤のベッド本体2に熱変形が発生しないときには、ベッド本体2の中間パイプフレーム構造14においても変形が生じてなく、中間パイプフレーム構造14の上フレーム62は、図4に示すようにきれいな矩形状となっている。このとき、主軸ユニット4とスライド台ユニット6とは所定の位置関係に保たれ、主軸部18のチャック手段34に保持された被加工物92と、スライド台部40のスライド台38(刃物台)に取り付けられた加工工具94とは、所定の位置関係に保たれ、このような状態で加工工具94により被加工物92を切削加工すると、任意の断面にける被加工物の直径は一定となり、被加工物を円筒状に切削加工することができる。
【0044】
一方、加工時に発生する熱によって上連結パイプ68Cの第1部位68Ca側が相対的に温度が高く、その第2部位68Cb側が相対的に温度が低くなると、ベッド本体2が熱変形し、中間パイプフレーム構造14は図5(a)に実線で示すように熱変形するようになる。また、上連結パイプ68Cの第1部位68Ca側が相対的に温度が低く、その第2部位68Cb側が相対的に温度が高いと、ベッド本体2の熱変形によって中間パイプフレーム構造14は図5(b)に実線で示すように熱変形するようになる。更に、上連結パイプ68Aの第1部位68Aa側が相対的に温度が高く、その第2部位68Ab側が相対的に温度が低いと、ベッド本体2の熱変形によって中間パイプフレーム構造14は図5(c)に実線で示すように熱変形し、また上連結パイプ68Aの第1部位68Aa側が相対的に温度が低く、その第2部位68Ab側が相対的に温度が高いと、ベッド本体2の熱変形によって中間パイプフレーム構造14は図5(d)に実線で示すように熱変形するようになる。これらの熱変形した状態において加工を行うと、被加工物92の直径は連続的に変化してテーパ状となり、所望の通りに加工できなくなる。
【0045】
例えば、図5(a)で示すように変形したときには、第3加熱・冷却手段88により冷却して上連結パイプ68Cの第1部位68Caの温度を低下させるとともに、第4加熱・冷却手段90により加熱して上連結パイプ68Cの第2部位68Cbの温度を上昇させるようにすればよく、かく温度制御することにより、上連結パイプ68Cの第1部位68Caが幾分収縮し、その第2部位68Cbが幾分伸長し、これによって、上連結パイプ68Cが元の状態に戻り、上フレーム62が図5(a)に二点鎖線で示すようにきれいな矩形状に戻り、被加工物92に対する高精度の切削加工を行うことができる。
【0046】
また、例えば、図5(b)で示すように変形したときには、第3加熱・冷却手段88により加熱して上連結パイプ68Cの第1部位68Caを幾分させるとともに、第4加熱・冷却手段90により冷却して上連結パイプ68Cの第2部位68Cbを幾分収縮させればよく、例えば図5(c)で示すように変形したときには、第1加熱・冷却手段84により冷却して上連結パイプ68Aの第1部位68Aaを幾分収縮させるとともに、第2加熱・冷却手段86により加熱して上連結パイプ68Aの第2部位68Abを幾分伸長させればよく、更に、例えば図5(d)で示すように変形したときには、第1加熱・冷却手段84により加熱して上連結パイプ68Aの第1部位68Aaを幾分伸長させるとともに、第2加熱・冷却手段86により冷却して上連結パイプ68Aの第2部位68Abを幾分収縮させればよく、このように温度制御することによって、上述した同様に、上フレーム62が元の状態に戻り、被加工物92に対して高精度の加工を行うことができる。
【0047】
このような上連結パイプ68Aの第1部位68Aa及び第2部位68Ab並びに上連結パイプ68Cの第1部位68Ca及び第2部位68Cbの加熱、冷却の制御、即ち第1〜第4加熱・冷却手段84〜90による温度制御は、例えばこれらの部位の熱変形量を測定し、測定した熱変形量に基づいて行うことができ、或いはこれらの部位の温度を検知し、検知した温度に基づいて行うことができる。
【0048】
尚、上述した実施形態では、中間パイプフレーム構造14の上フレーム62に関連して熱変形補正手段82を設けているが、この上フレーム62に加えて下フレーム64に、上述したと同様の熱変形補正手段を設けるようにしてもよい。
【0049】
次に、図6〜図10を参照して、本発明に従う工作機械のベッド構造の第2の実施形態について説明する。図6は、第2の実施形態のベッド構造における中間パイプフレーム構造の上フレームを示す斜視図であり、図7(a)及び(b)は、図6の上フレームの第2方向の振動による変形を示す図であり、図8(a)はベッド本体に加わる第2方向の振動による上フレームの変位及び振動抑制手段による上フレームの変位を示す図であり、図8(b)は、振動抑制手段の加振後の上フレームの変位を示す図であり、図9(a)及び(b)は、図6の上フレームの第1方向の振動による変形を示す図であり、図10(a)はベッド本体に加わる第1方向の振動による上フレームの変位及び振動抑制手段による上フレームの変位を示す図であり、図10(b)は、振動抑制手段による加振後の上フレームの変位を示す図である。尚、この第2の実施形態において、上述した第1の実施形態と実質上同一の部材には同一の参照番号を付し、その説明を省略する。
【0050】
この第2の実施形態のベッド構造においては、ベッド本体の中間パイプフレーム構造に関連して振動抑制手段102が設けられ、振動抑制手段102は4つの加振手段、即ち第1〜第4加振手段104,106,108,110から構成され、この形態では上フレーム62に関連してこれら第1〜第4加振手段104〜110が設けられている。
【0051】
第1〜第4加振手段104,106,108,110は、例えば圧電素子から構成することができ、この実施形態では、第1加振手段104が上連結パイプ68Aの第2部位68Ab側の端部に取り付けられ、第2加振手段106が上連結パイプ68Cの第1部位68Ca側の端部に取り付けられ、これら第1及び第2加振手段104,106は、第2方向(図6において左下から右上の方向)の振動を抑制するように作用する。尚、第1加振手段104を上連結パイプ68Aの第1部位68Aa側の端部に取り付け、第2加振手段106を上連結パイプ68Cの第2部位68Cb側の端部に取り付けるようにしてもよい。
【0052】
また、第3加振手段108は上連結パイプ68Bの主軸ユニット側の端部に取り付けられ、第4加振手段110は上連結パイプ68Dのスライド台ユニット側の端部に取り付けられ、これら第3及び第4加振手段108,110は、第1方向(図6において左上から右下の方向)の振動を抑制するように作用する。尚、第3加振手段108を上連結パイプ68Bのスライド台ユニット側の端部に取り付け、第4加振手段110を上連結パイプ68Dの主軸ユニット側の端部に取り付けるようにしてもよい。この第2の実施形態におけるその他の構成は、上述した第1の実施形態と実質上同一である。
【0053】
このような振動抑制手段102を備えたNC旋盤では、次の通りにしてベッド本体に作用する振動を抑える。NC旋盤のベッド本体2に振動が作用しないときには、ベッド本体の中間パイプフレーム構造においても振動による変位が発生せず、中間パイプフレーム構造の上フレーム62は、図4に示すようにきれいな矩形状となっており、従って、上述したと同様に、被加工物2を高精度の円筒形状に切削加工することができる。
【0054】
一方、第2方向の振動がベッド本体に作用すると、その中間パイプフレーム構造の上フレーム62は、図7(a)及び(b)で示すように変位し、図8(a)に実線で示すように振動変位する。このような場合、図8(a)に破線で示す振動を第1及び第2加振手段104、106により付与すればよく、このような振動を付与することによって、第1及び第2加振手段104,106による加振力が上フレーム62に作用する第2方向の振動を打ち消すように働き、これによって上フレーム62の振動変位が抑えられて図7(a)及び(b)に二点鎖線で示す状態に保持され、このような加振力を付与することによって、被加工物に対する所望の高精度な切削加工を行うことができる。
【0055】
また、第1方向の振動がベッド本体に作用すると、その中間パイプフレーム構造の上フレーム62は、図9(a)及び(b)で示すように変位し、図10(a)に実線で示すように振動変位する。このような場合、図10(a)に破線で示す振動を第3及び第4加振手段108、110により付与すればよく、このような振動を付与することによって、第3及び第4加振手段108,110による加振力が上フレーム62に作用する第1方向の振動を打ち消すように働き、これによって上フレーム62の振動変位が抑えられて図9(a)及び(b)に二点鎖線で示す状態に保持され、このようにしても被加工物に対する高精度の切削加工を行うことができる。
【0056】
第1〜第4加振手段104〜110による加振制御については、例えば中間パイプフレーム構造の上フレーム62に第1方向の振動を検知する第1振動検知センサと第2方向の振動を検知する第2振動検知センサを設け、第1振動センサにより検知した振動を打ち消すように第3及び第4加振手段108,110の加振制御が行われ、第2振動センサにより検知した振動を打ち消すように第1及び第2加振手段104及び106の加振制御が行われる。
【0057】
この第2の実施形態においては、上フレーム62の上連結パイプ68A,68Cとして密封部材92,94によって軸方向中央部が密封されたものを用いているが、このように振動抑制手段102を設ける場合、必ずしも密封部材92,94により密封されたものを用いる必要はなく、上連結パイプ68B,68Dと同様の構成のものを用いるようにしてもよい。
【0058】
第1の実施形態では、加工時の熱による影響を抑えるために中間パイプフレーム構造14に熱変形補正手段82を設け、また第2の実施形態では、加工時の振動による影響を抑えるために中間パイプフレーム構造に振動抑制手段102を設けているが、一つのベッド本体の中間パイプフレーム構造に図11に示すように熱変形防止手段及び振動抑制手段の双方を設けるようにしてもよい。
【0059】
工作機械の一例としてのNC旋盤のベッド構造の第3の実施形態を示す図11において、この第3の実施形態では、第2の実施形態と同様に振動抑制手段102が設けられている。即ち、第1加振手段104が上連結パイプ68Aの第2部位68Ab側の端部に取り付けられ、第2加振手段106が上連結パイプ68Cの第1部位68Ca側の端部に取り付けられ、第3加振手段108が上連結パイプ68Bの主軸ユニット側の端部に取り付けられ、また第4加振手段110が上連結パイプ68Dのスライド台ユニット側の端部に取り付けられており、従って、上述したと同様にしてベッド本体に作用する振動を抑えることができる。
【0060】
この形態では、この振動抑制手段102に加えて、更に、熱変形補正手段112が設けられている。この熱変形補正手段112も4つの加熱・冷却手段、即ち第1〜第4加熱・冷却手段114,116,118,120から構成され、第1及び第2加熱・冷却手段114,116が上連結パイプ68Aの第1及び第2部位68Aa,68Abの中間周面に設けられ、また第3及び第4加熱・冷却手段118,120は上連結パイプ68Cの第1及び第2部位68Ca,68Cbの中間周面に設けられており、このように第1〜第4加熱・冷却手段114〜120を設けることによっても、上連結パイプ68A,68Cの第1部位68Aa,68Ca及び第2部位68Ab,68Cbを所要の通りに加熱、冷却制御を行うことができ、従って、上述したと同様にしてベッド本体の熱変形を補正することができる。
【0061】
図12は、第4の実施形態のベッド構造を備えたNC旋盤を簡略的に示す斜視図である。図12において、この第4の実施形態においては、ベッド本体202の第1部分204及び第2部分206が、これらの間の中間部分208の中間パイプフレーム構造210と同様に、パイプフレーム構造から構成されている。第1部分204は、複数の連結ブロック212及び複数の連結パイプ214(接続パイプを含む)を直方体状に連結することによって構成される第1パイプフレーム構造216から構成され、この形態では、中間パイプフレーム構造210を第1方向に二つ並べて連結したような構造となっている。この第1パイプフレーム構造216は中間パイプフレーム構造210の片側に連結され、かかる第1パイプフレーム構造216の上面に主軸ユニット4が取り付けられる。
【0062】
また、第2部分206は、複数の連結ブロック217及び複数の連結パイプ218(接続パイプを含む)を直方体状に連結することによって構成される第2パイプフレーム構造220から構成され、この形態では、中間パイプフレーム構造210と略同様な構造となっている。この第2パイプフレーム構造220は中間パイプフレーム構造210の他側に連結され、かかる第2パイプフレーム構造220の上面にスライド台ユニット6が取り付けられる。
【0063】
この実施形態では、ベッド本体202の全体(即ち、第1部分204、第2部分206及び中間部分208)がパイプフレーム構造から構成されているので、ベッド本体の軽量化を図ることができる。また、このベッド本体202の中間パイプフレーム構造210に上述した熱変形補正手段を設けることによって、ベッド本体202に発生する熱変形を補正して熱による影響を少なくすることができ、またその中間パイプフレーム構造210に上述した振動抑制手段を設けることによって、ベッド本体202に作用する振動を抑えて振動による影響を少なくすることができる。
【0064】
この第4の実施形態では、ベッド本体202の第1部分204が第1パイプフレーム構造216であるので、この第1パイプフレーム構造216に関連して、熱変形補正手段及び/又は振動抑制手段を適宜設けるようにしてもよく、このように設けることによって、第1パイプフレーム構造216における熱及び/又は振動の影響を抑えることができる。また、ベッド本体202の第2部分206が第2パイプフレーム構造220であるので、この第2パイプフレーム構造220に関連して、熱変形補正手段及び/又は振動抑制手段を適宜設けるようにしてもよく、このように設けることによって、第2パイプフレーム構造2220における熱及び/又は振動の影響を抑えることができる。
【0065】
図13は、第5の実施形態のベッド構造を備えたNC旋盤を簡略的に示す斜視図であり、図13以降においては、主軸ユニット及びスライド台ユニットを模式的にブロック状に示している。
【0066】
図13において、この第5の実施形態においては、NC旋盤のベッド本体302の第1部分304がブロック状に構成され、第2部分306及び中間部分308がパイプフレーム構造に構成されている。即ち、第2部分306が第2パイプフレーム構造310に構成され、中間部分308が中間パイプフレーム構造312に構成されている。この第2パイプフレーム構造310及び中間パイプフレーム構造312は、第4の実施形態における第2パイプフレーム構造220及び中間パイプフレーム構造210と実質上同一の構成でよく、この第5の実施形態におけるその他の構成は、図12の第4の実施形態と実質上同一でよい。
【0067】
このようなベッド本体302を備えたNC旋盤においても、図示していないが、ベッド本体302の中間パイプフレーム構造312に上述した熱変形補正手段(及び/又は振動抑制手段)を設けることによって、ベッド本体302に発生する熱変形を補正して熱による影響を少なくすることができる(及び/又はベッド本体302に作用する振動を抑えて振動による影響を少なくすることができる)。また、第2パイプフレーム構造310に関連して、熱変形補正手段及び/又は振動抑制手段を適宜設けるようにしてもよい。
【0068】
図14は、第6の実施形態のベッド構造を備えたNC旋盤を簡略的に示す斜視図である。図14において、この第6の実施形態においては、図12の第4の実施形態と同様に、ベッド本体402の第1部分404が第1パイプフレーム構造406から構成され、その第2部分408が第2パイプフレーム構造410から構成されているが、これらの間の中間部分(中間パイプフレーム構造)は省略されている。そして、このことに関連して、主軸ユニット4は第1パイプフレーム構造406の上面に取り付けられ、スライド台ユニット6は第2パイプフレーム構造410の外側面に取り付けられている。この第6の実施形態のその他の構成は、上述した第4の実施形態と略同様である。
【0069】
このような第6の実施形態においては、図示していないが、ベッド本体402の第2パイプフレーム構造410に、好ましくはその上フレーム412に上述したと同様にして熱変形補正手段(及び/又は振動抑制手段)が設けられ、このように熱変形補正手段(及び/又は振動抑制手段)を設けることによって、ベッド本体402に発生する熱変形を補正して熱による影響を少なくすることができる(及び/又はベッド本体402に作用する振動を抑えて振動による影響を少なくすることができる)。尚、上述したように、第1パイプフレーム構造406に関連して熱変形補正手段(及び/又は振動抑制手段)を設けるようにしてもよい。
【0070】
図15は、第7の実施形態のベッド構造を備えたNC旋盤を簡略的に示す斜視図である。図15において、この第7の実施形態においては、図14の第6の実施形態と同様に、ベッド本体502の第1部分504が第1パイプフレーム構造506から構成され、その第2部分508が第2パイプフレーム構造510から構成され、これらの間の中間部分(中間パイプフレーム構造)は省略されている。
【0071】
この第7の実施形態では、第1パイプフレーム構造506は高さ方向に細長く、第2パイプフレーム構造510が上下方向に3段に積み重ねられて連結されたような構成になっており、主軸ユニット4は第1パイプフレーム構造506の第2部分508側の側面に取り付けられ、スライド台ユニット6は第2パイプフレーム構造510の外側面に取り付けられている。この第7の実施形態のその他の構成は、上述した第4の実施形態と略同様である。
【0072】
この第7の実施形態においても、図示していないが、ベッド本体502の第2パイプフレーム構造510に、好ましくはその上フレーム512に上述したと同様にして熱変形補正手段(及び/又は振動抑制手段)が設けられ、このように熱変形補正手段(及び/又は振動抑制手段)を設けることによって、ベッド本体502に発生する熱変形を補正して熱による影響を少なくすることができる(及び/又はベッド本体502に作用する振動を抑えて振動による影響を少なくすることができる)。尚、第1パイプフレーム構造506に関連して熱変形補正手段(及び/又は振動抑制手段)を設けるようにしてもよい。
【0073】
図16は、第8の実施形態のベッド構造を備えたNC旋盤を簡略的に示す斜視図である。図16において、この第8の実施形態においては、図14の第6の実施形態と同様に、ベッド本体602の第1部分604が第1パイプフレーム構造606から構成され、その第2部分608が第2パイプフレーム構造610から構成され、これらの間の中間部分(中間パイプフレーム構造)は省略されている。
【0074】
この第8の実施形態では、第1パイプフレーム構造606は、第2パイプフレーム構造610が第1方向に二つ連結され、且つこれら連結されたものが上下方向に2段に積み重ねられて連結されたような構成になっており、主軸ユニット4は第1パイプフレーム構造606の上段部位612内に挿入されて取り付けられ、スライド台ユニット6は第2パイプフレーム構造610の外側面に取り付けられている。この第8の実施形態のその他の構成は、上述した第4の実施形態と略同様である。
【0075】
この第8の実施形態においても、図示していないが、ベッド本体602の第2パイプフレーム構造610に、好ましくはその上フレーム614に上述したと同様にして熱変形補正手段(及び/又は振動抑制手段)が設けられ、このように熱変形補正手段(及び/又は振動抑制手段)を設けることによって、ベッド本体602に発生する熱変形を補正して熱による影響を少なくすることができる(及び/又はベッド本体602に作用する振動を抑えて振動による影響を少なくすることができる)。尚、第1パイプフレーム構造606に関連して熱変形補正手段(及び/又は振動抑制手段)を設けるようにしてもよい。
【0076】
以上、本発明に従う工作機械のベッド構造の各種実施形態について説明した、本発明はこれら実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形乃至修正が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明に従うベッド構造の一実施形態を備えた工作機械としての一例のNC旋盤を簡略的に示す斜視図。
【図2】図1のベッド構造におけるベッド本体の中間パイプフレーム構造を簡略的に示す斜視図。
【図3】図2の中間パイプフレーム構造の上フレームを示す斜視図。
【図4】図1のNC旋盤における主軸及び刃物と中間パイプフレーム構造との関係を示す簡略説明図。
【図5】図5(a)〜(d)は、中間パイプフレーム構造の熱変形の態様を説明するための簡略説明図。
【図6】第2の実施形態のベッド構造における中間パイプフレーム構造の上フレームを示す斜視図。
【図7】図7(a)及び(b)は、図6の上フレームの第2方向の振動による変形を示す図。
【図8】図8(a)はベッド本体に加わる第2方向の振動による上フレームの変位及び振動抑制手段による上フレームの変位を示す図、また図8(b)は、振動抑制手段の加振後の上フレームの変位を示す図。
【図9】図9(a)及び(b)は、図6の上フレームの第1方向の振動による変形を示す図。
【図10】図10(a)はベッド本体に加わる第1方向の振動による上フレームの変位及び振動抑制手段による上フレームの変位を示す図、また図10(b)は、振動抑制手段による加振後の上フレームの変位を示す図。
【図11】NC旋盤のベッド構造の第3の実施形態を示す図。
【図12】第4の実施形態のベッド構造を備えたNC旋盤を簡略的に示す斜視図。
【図13】第5の実施形態のベッド構造を備えたNC旋盤を簡略的に示す斜視図。
【図14】第6の実施形態のベッド構造を備えたNC旋盤を簡略的に示す斜視図。
【図15】第7の実施形態のベッド構造を備えたNC旋盤を簡略的に示す斜視図。
【図16】第8の実施形態のベッド構造を備えたNC旋盤を簡略的に示す斜視図。
【符号の説明】
【0078】
2,202,302,402,502,602 ベッド本体
4 主軸ユニット
6 スライド台ユニット
8,204,304,404,504,604 第1部分
10,206,306,408,508,608 第2部分
12,208,308 中間部分
14,210,312 中間パイプフレーム構造
16 主軸支持部
18 主軸部
36 スライド支持部
40 スライド台部
62 上フレーム
64 下フレーム
68 上連結パイプ
72 上連結ブロック
82 熱変形補正手段
84,86,88,90,114,116,118,120 加熱・冷却手段
102 振動抑制手段
104,1206,108,110 加振手段
216,406,506,606 第1パイプフレーム構造
220,310,410,510,610 第2パイプフレーム構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に回動される主軸を備えた主軸ユニット及びスライド台を備えたスライド台ユニットを支持するためのベッド本体を備えた工作機械のベッド構造であって、
前記ベッド本体は、前記主軸ユニットを支持する第1部分と、前記スライド台ユニットを支持する第2部分と、前記第1部分及び第2部分を接続する中間部分とから構成され、少なくとも前記中間部分が中間パイプフレーム構造から構成され、前記中間パイプフレーム構造に関連して、前記ベッド本体に発生する熱変形を補正するための熱変形補正手段が設けられていることを特徴とする工作機械のベッド構造。
【請求項2】
前記中間パイプフレーム構造は、4本の上連結パイプを4つの上連結部ブロックに矩形状に連結した上フレームと、4本の下連結パイプを4つの下連結ブロックに矩形状に連結した下フレームと、前記上フレームの各連結ブロックと前記下フレームの各連結ブロックを接続する4本の接続パイプとから構成され、少なくとも前記上フレームに前記熱変形補正手段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の工作機械のベッド構造。
【請求項3】
前記中間パイプフレーム構造の前記上フレームの前記上連結パイプ、前記下フレームの前記下連結パイプ及び前記接続パイプは、液体が密封された中空パイプから構成され、前記上フレームにおける前記主軸ユニット及び前記スライド台ユニットに対向する一対の特定上連結パイプは軸方向中央部が更に密封されており、また前記熱変形補正手段は4つの加熱・冷却手段から構成されており、前記一対の特定上連結パイプの片側部及び他側部に対応して前記加熱・冷却手段が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の工作機械のベッド構造。
【請求項4】
所定方向に回動される主軸を備えた主軸ユニット及びスライド台を備えたスライド台ユニットを支持するためのベッド本体を備えた工作機械のベッド構造であって、
前記ベッド本体は、前記主軸ユニットを支持する第1部分と、前記スライド台ユニットを支持する第2部分と、前記第1部分及び第2部分を接続する中間部分とから構成され、少なくとも前記中間部分が中間パイプフレーム構造から構成され、前記中間パイプフレーム構造に関連して、前記ベッド本体に発生する振動を抑えるための振動抑制手段が設けられていることを特徴とする工作機械のベッド構造。
【請求項5】
前記中間パイプフレーム構造は、4本の上連結パイプを4つの上連結部ブロックに矩形状に連結した上フレームと、4本の下連結パイプを4つの下連結ブロックに矩形状に連結した下フレームと、前記上フレームの各連結ブロックと前記下フレームの各連結ブロックを接続する4本の接続パイプとから構成され、少なくとも前記上フレームに前記振動抑制手段が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の工作機械のベッド構造。
【請求項6】
前記中間パイプフレーム構造の前記上フレームの前記上連結パイプ、前記下フレームの前記下連結パイプ及び前記接続パイプは、液体が密封された中空パイプから構成され、また前記振動抑制手段は4つの加振手段から構成され、2つの加振手段は前記前記上フレームにおける前記主軸ユニット及び前記スライド台ユニット方向に対向する一対の特定上連結パイプの一端部及び他端部に設けられ、残りの二つの加振手段は残りの対向する一対の上連結パイプの一端部及び他端部に設けられていることを特徴とする請求項5に記載の工作機械のベッド構造。
【請求項7】
前記中間パイプフレーム構造に関連して、更に、前記ベッド本体に発生する熱変形を補正するための熱変形補正手段が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の工作機械のベッド構造。
【請求項8】
前記ベッド本体の前記第1部分は第1パイプフレーム構造から構成され、前記第1パイプフレーム構造は複数の連結ブロック及び複数の連結パイプを直方体状に連結することによって構成されることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の工作機械のベッド構造。
【請求項9】
前記ベッド本体の前記第2部分は第2パイプフレーム構造から構成され、前記第2パイプフレーム構造は複数の連結ブロック及び複数の連結パイプを直方体状に連結することによって構成されることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の工作機械のベッド構造。
【請求項10】
前記主軸ユニットは、前記ベッド本体の前記第1部分に取り付けられた主軸支持部と、前記主軸を回転自在に支持する主軸部とを備え、前記主軸部が第1スライド機構を介して前記主軸支持部に前記主軸の軸線方向である第1方向に移動自在に支持され、また前記スライド台ユニットは、前記ベッド本体の前記第2部分に取り付けられたスライド台支持部と、前記スライド台を備えたスライド台部とを備え、前記スライド台部が第2支持機構を介して前記スライド支持部に前記第1方向に対して実質上垂直な第2方向に移動自在に支持されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の工作機械のベッド構造。
【請求項11】
所定方向に回動される主軸を備えた主軸ユニット及びスライド台を備えたスライド台ユニットを支持するためのベッド本体を備えた工作機械のベッド構造であって、
前記ベッド本体は、前記主軸ユニットを支持する第1部分と、前記スライド台ユニットを支持する第2部分とから構成され、少なくとも前記第2部分がパイプフレーム構造から構成され、前記パイプフレーム構造に関連して、前記ベッド本体に発生する熱変形を補正するための熱変形補正手段が設けられていることを特徴とする工作機械のベッド構造。
【請求項12】
所定方向に回動される主軸を備えた主軸ユニット及びスライド台を備えたスライド台ユニットを支持するためのベッド本体を備えた工作機械のベッド構造であって、
前記ベッド本体は、前記主軸ユニットを支持する第1部分と、前記スライド台ユニットを支持する第2部分とから構成され、少なくとも前記第2部分がパイプフレーム構造から構成され、前記パイプフレーム構造に関連して、前記ベッド本体に発生する振動を抑えるための振動抑制手段が設けられていることを特徴とする工作機械のベッド構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−296312(P2008−296312A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−143489(P2007−143489)
【出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【出願人】(304036743)国立大学法人宇都宮大学 (209)
【出願人】(591014835)高松機械工業株式会社 (15)
【Fターム(参考)】