説明

工作機械及びトランスファ装置間の情報交換システム

【課題】 工作機械とトランスファ装置との間で情報交換を困難性を伴わずに実行することができ,トランスファ装置により工作機械を格別の努力を伴わずにアップグレード可能であり,工作機械のアップグレード時であってもトランスファ装置を可能な限り容易に起動可能とした情報交換システムを提案する。
【解決手段】 工作機械(1)の制御ユニット(3)が工作機械(1)による加工状況をモニタし,かつ,制御すると共に,工作機械(1)による加工状況に関する情報を工作機械のインターフェース(4)を介してトランスファ装置(11)に送信してトランスファ装置(11)を作動させる。トランスファ装置(11)は,そのインターフェース(14)を介して前記情報を受信し,同じくその制御ユニット(13)により前記情報を処理し,かつ,該情報に対して応答する。工作機械(1)のインターフェース(4)としては,プリンタインターフェースを使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,旋盤,フライス盤,放電加工機等の工作機械と,工作機械に未加工の,又は部分的に加工されたワークを供給し,かつ,工作機械から加工済みの製品を取り出すための,トランスファロボット等のトランスファ装置との間の情報交換システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
トランスファ装置は大量生産が不可能な場合,すなわち少量の製品を製造する場合に使用されるものである。そのような場合には,往々にして異なるワークを加工する必要があり,その加工のために特定の工具が要求されることがある。トランスファ装置はワーク及び/又は工具の交換を行うものであるが,その際にはトランスファ装置及び工作機械を特定の操作段階に関する限り同期するよう,互いに接続する必要がある。工作機械及びトランスファ装置には,それぞれの操作シーケンスを制御するための制御ユニットが設けられており,工作機械の制御ユニットは加工操作のシーケンスを制御するものである。工作機械及びトランスファ装置を高信頼度で正確に協働させるため,特定の制御ユニットにより情報及びデータの交換を司る必要がある。このような情報交換は,各種の方法で実行可能である。トランスファ装置はその制御ユニットを介して工作機械の制御ユニットに情報を伝達可能であり,又は,工作機械はトランスファ装置の制御ユニットに対して情報を伝達可能である。伝達された情報に基づき,工作機械及びトランスファ装置の同期化及びステップ的なクロッキングが実行される。しかしながら,工作機械及びトランスファ装置を制御するための上位システムを設けることも可能である。
【0003】
さて,いわゆる「マスター」として機能する工作機械が,当該工作機械により実行された加工ステップに応じてトランスファ装置に情報を伝達する状況について考察する。このような状況は往々にして生じるものである。と言うのは,既に実用に供されており,かつ,トランスファ装置を追加することによりアップグレードされた工作機械が多数存在するからである。
【0004】
工作機械の制御ユニットとトランスファ装置の制御ユニットとの間の情報交換及び通信は,通常は工作機械及びトランスファ装置の特定の引退フェースを介して行われる。工作機械の制御ユニットとトランスファ装置の制御ユニットとの間の通信を支障なく行うため,上記特定のインターフェースは互いに適合するものである必要がある。
【0005】
本発明に最も密接に関連する特開平4−307608号公報(特許文献1)は,工具及びワークをマガジンに収納した数値制御工作機械と,これに付随する制御ユニットとを開示している。工具及びワークは,同一構成の支持部材上に載置され,ハンドリング装置(トランスファ装置)により工作機械まで,又は工作機械から搬送される。工具及びワークは,工作機械における確定位置にクランプ可能とされている。支持部材には,工具及びワークを特定するためのデータや,工作機械による加工動作を制御するためのデータを保存した電子的記録媒体が設けられている。記録媒体に保存されたデータは,ハンドリング装置の一部を構成し,かつ,工作機械の制御ユニットに接続されるデータ処理ユニットによって読み取り可能とされている。工作機械とハンドリング装置との間の通信を行うため,一般的なインターフェースが設けられている。このインターフェースにより,搬送の完了後に制御ユニットが所要のワークの指定を呼び出すことが可能である。搬送の間,記録媒体に保存され,ワークの今後の加工に関するデータが制御ユニットに伝達される。
【特許文献1】特開平4−307608号公報
【0006】
特開平2−143306号公報(特許文献2)は,相互に接続された一群のNC工作機械を具えるNC工作機械システムを開示しており,この場合には加工プログラムが,システム内におけるNC工作機械の間で交換され,かつ,集合的に使用されている。データ交換用のインターフェース,例えばRS−232CインターフェースがNC工作機械に割り当てられ,外部装置と通信し,かつ,データ交換可能とされている。これらのインターフェースにより,プログラムのダウンロード要求が一台のNC工作機械から他のNC工作機械に伝達される。その結果,要求された加工プログラムが記録媒体から取り出され,かつ,選択されたNC工作機械に伝達される。この特許文献は,NC工作機械相互間での加工プログラムの交換に言及しているが,工具及び/又はワークの搬送には言及していない。
【特許文献2】特開平2−143306号公報
【0007】
ドイツ特許出願公開第4323950号公報(特許文献3)は,マニピュレータにより所定の経路に沿って移動される工具の運動及び/又はプロセスを制御するための方法及び装置を開示している。この場合,工具の運動及び/又はプロセスは関数発生器により同期制御され,かつ,移動経路に沿う供給運動に重ね合わされる。工具の運動及び/又はプロセスの関数は,大きさが同一又は少なくとも比例的な関数セクションに入力され,少なくとも部分的に保存される。初期化の後,関数セクションの反復的かつ周期的な演算が同期的に実行される。関数セクションが,少なくとも関数セクションの周期に亘って保存されるパラメータに基づいて演算される。すなわち,この特許文献は加工操作の間の工具の運動及び/又はプロセスの同期化に言及するものである。
【特許文献3】ドイツ特許出願公開第4323950号公報
【0008】
特表2001−527713号公報(特許文献4)は,安全指向型制御システムのプログラム法を開示しており,この場合には,入出力信号をリンクさせる安全指向型の制御ルールを,マクロ型ソフトウェアとして制御システムのステーションに保存するものである。プログラム装置によりインストラクションをステーションに伝達し,これにより入出力情報を割り当てるためのマクロに含まれるコマンドシーケンスを呼び出す。したがって,この特許文献は,一般的な制御ユニットに関連するマクロの使用方法に言及するものである。
【特許文献4】特表2001−527713号公報
【0009】
米国特許第6145020号明細書(特許文献5)は,マイクロ制御ユニットを開示するものである。この特許文献は,好適なインターフェースとしてプリンタインターフェース(シリアル型及びパラレル型;セントロニクス,RS−232及びCRS−449)を使用することにより,周辺機器(制御ユニット)をマイクロ制御ユニットに接続することを提案している。
【特許文献5】米国特許第6145020号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した特許文献に記載されている従来技術に鑑み,本発明において解決しようとする課題は,工作機械とトランスファ装置との間で情報交換を困難性を伴わずに実行することができ,トランスファ装置により工作機械を格別の努力を伴わずにアップグレード可能であり,工作機械のアップグレード時でもトランスファ装置を極力容易に起動可能とした情報交換システムを提案することである。
【0011】
この課題は,請求項1に記載した情報交換システムによって解決することが可能である。なお,請求項2〜13は,請求項1に係る発明の好適な実施形態を記載したものである。
【0012】
すなわち,本発明に係る情報交換システムは,工作機械と,該工作機械に対して未加工か,事前加工済みのワークを供給するための,又は該工作機械から加工を完了した製品を取り出すためのトランスファ装置との間で情報を交換するシステムである。工作機械は制御ユニット及びインターフェースを具え,制御ユニットが工作機械による加工状況をモニタし,かつ,制御すると共に,工作機械による加工状況に関する情報を前記インターフェースを介してトランスファ装置に送信してトランスファ装置を作動させるものである。また,トランスファ装置は,これに付随するインターフェースを介して前記情報を受信し,同じくこれに付随する制御ユニットにより前記情報を処理し,かつ,該情報に対して応答するものである。工作機械のインターフェースとしては,プリンタインターフェースを使用する。このようなプリンタ接続用のインターフェースは,プロトコル又はプロセスを印刷するために工作機械に一般的に設けられているものである。したがって,トランスファ装置の追加によって工作機械をアップグレードする場合,このインターフェースを使用することにより情報をトランスファ装置に供給し,これを作動させることができ,そのためにコストが増加することはない。
【0013】
このように,本発明によれば,工作機械の制御ユニットに設けられているプリンタ用のインターフェースを使用してインストラクションを「印字」し,かつ,発行する。既存のインターフェースののプログラミングは,ISOコードにより容易に実行可能である。トランスファ装置の端部において,対応する所定のプロトコルの作動を初期化する。このようなインターフェースは,搬送対象物のための位置の数に依存しないものとするのが有利である。インターフェースはシリアル型のプリンタインターフェース,特にRS−232/422インターフェース,又はパラレル型のプリンタインターフェース,特にセントロニクス型インターフェースで構成することが可能である。
【0014】
工作機械による加工状況に関する情報は,好適には,ワーク及び/又は工具の搬送インストラクションを含む。この搬送インストラクションは,好適には,ワーク及び/又は工具のためのマガジン位置情報及び位置決め位置情報や,トランスファ装置の旋回運動に関する情報を含む。このような情報は,工作機械におけるパーツ交換に必要とされるものである。
【0015】
本発明に係る情報交換システムは,特に,工作機械及びトランスファ装置を互いに同期させ,かつ,段階的にクロッキングを行わせるための同期装置を具える構成とするのが好適である。各同期装置は,好適には,工作機械及びトランスファ装置のディジタル入出力を有する。特に,同期装置は,送出された情報及び送出されたインストラクションに応じてハンドシェイクをフィードバックするためにも使用する。これは,プリンタインターフェースが一方向性インターフェースであるために必要とされるものである。プリンタインターフェースと同様,ディジタル入出力は工作機械に既に備わっており,制御ユニットからの信号を送出し,又は読み込むことを可能ならしめるものである。
【0016】
工作機械におけるプリンタインターフェースの初期化は,好適には,トランスファ装置への情報を発行するためのマクロのローディングにより達成される。トランスファ装置の制御ユニットは,情報の受信に際して,対応するプロトコルを起動させることにより応答する。上述したとおり,マクロのローディングは適切なISOコードのプログラミングにより,工作機械のオペレータが容易に実行し得るものである。
【0017】
特に,トランスファ装置は,工作機械のプリンタインターフェースからの交換要求を受信したときに,その制御ユニットによりワーク又は工具の交換を行う。
【0018】
さらに,工作機械は,そのディジタル出力に信号を送ることによってワーク及び/又は工具の交換可能性を表示する。この信号は,トランスファ装置のディジタル入力に送られ,かつ,工作機械において交換が不可能となったときにリセットされる。しかし,工作機械の制御ユニットが,プリンタインターフェースに対する交換要求の反復的な送信を周期的に実行する構成とすることも可能である。このような特性により,工作機械においてワーク又は工具の交換が不可能となったときに,交換要求信号が消去される。その結果,工作機械及びトランスファ装置の安全性を高めることが可能である。
【0019】
工作機械の制御ユニットは,好適には,プリンタインターフェースに対して交換要求をチェックサムと共に送信する。このチェックサムにより,送信された情報の完全性を担保することが可能である。
【0020】
好適には,工作機械側に,その制御ユニット,プリンタインターフェース及びディジタル入出力を有する制御ラックを具え,トランスファ装置側に,その制御ユニット,プリンタインターフェース及びディジタル入出力を有する制御ラックを具える構成とする。さらに,工作機械側の制御ラックと,トランスファ装置側の制御ラックとを単一ユニットとして構成し,該ユニットは工作機械及びトランスファ装置の一方に組付け,又は両者から独立させて配置する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下,本発明を図示の好適な実施形態に基づいて更に詳述する。
【0022】
図1は本発明に係る情報交換システムのブロック線図である。この情報交換システムは,工作機械1と,トランスファ装置11とを有する。工作機械1は旋盤,フライス盤,放電加工機等で構成され,トランスファ装置11は工作機械1に対してワーク素材や工具を供給し,かつ,工作機械1から加工済みの製品を取り出すためのトランスファロボット等で構成される。本発明に係る情報交換システムは,工作機械1と,トランスファ装置11とを互いに協調させるものである。
【0023】
工作機械1と,トランスファ装置11との間の情報交換は,シーケンシャルインターフェースにより所定のシーケンスを実行することにより達成可能である。このようなインターフェースとしては,例えば,所定のプロトコルに従って作動するプロフィバス又はRS232/RS422インターフェースを使用することが可能である。シーケンシャルインターフェースを使用することの利点は,簡単で信頼性の高い接続が可能であり,パーツのローディング位置数に関する従属性がないことである。その反面,工作機械のソフトウェアを適合させる必要があり,これは多くの場合には工作機械のメーカによってのみ実行可能である。特に,既に使用に供されている工作機械の場合には,工作機械のソフトウェアを適合させることは容易でなく,不可能な場合もある。
【0024】
また,ディジタル出力に論理ビットパターンを生成し,これをトランスファ装置で使用して位置計算を行う場合がある。ビットパターンの生成は,ISOコードを使用する単純なプログラミングによりオペレータが容易に実行可能である。しかし,既存の工作機械においては十分なディジタル出力が利用可能でなく,既存の工作機械にディジタル出力を追加する必要がある場合がある。必要とされるディジタル出力の数は,トランスファ装置において,伝達された信号を記憶する記憶エリアの大きさに依存する。
【0025】
以下においては,例示として,工作機械とトランスファ装置との間における情報交換を行うための,本発明に係る情報交換システムの簡単な実施例について説明する。
【0026】
図1に示すとおり,工作機械1は,制御ユニット3,シリアル又はパラレル型プリンタインターフェース4及びディジタル入出力5を有する制御ラック2を具え,トランスファ装置11は,制御ユニット13,プリンタインターフェース4に対応するシリアル又はパラレル型インターフェース14及びディジタル入出力15を有する制御ラック12を具える。現実問題としては,工作機械1及びトランスファ装置11に共用の単一ユニット2,12として設け,このユニットを工作機械1及びトランスファ装置11の一方に組付け,又は両者1,11から独立させて配置する。しかし,図1では制御ラック2,12を別々に設けた例を示すことにより,特定の制御ユニット3,13,インターフェース4,14及びディジタル入出力5,15(通常は24V)が, それぞれ特定の工作機械1及びトランスファ装置11に割り当てられることを明確化している。
【0027】
更に,特定の情報又はデータa,bが,インターフェース4及び14の間,並びにディジタル入出力5及び15の間で交換されることも,図示のとおりである。
【0028】
情報aは,工作機械1のプリンタインターフェース4からトランスファ装置11のインターフェース14に向けて一方向的に流れる。この情報aは,プリンタインターフェース4に由来するものであるためにプリンタインストラクションを含み,例えば工作機械のワーク又は工具の交換を求めるものである。この情報は,トランスファ装置11を作動させるための交換要求情報として,トランスファ装置11のインターフェース14を介してトランスファ装置11の制御ユニット13により受信され,トランスファ装置11の制御ユニット13を起動させて異なる操作段階を実行するためのプロトコルを起動させるものである。これについては,図2を参照してより詳細に後述する。
【0029】
他方,情報bは,工作機械1のディジタル入出力5とトランスファ装置11のディジタル入出力15との間で双方向的に流れる。この情報bは,図2を参照してより詳細に後述するように,工作機械1とトランスファ装置11とを互いに協調させるものである。
【0030】
図2は,図1に示した本発明に係るシステムの動作を説明するためのフローチャートである。このフローチャートは,工作機械1側の動作と,トランスファ装置11側の動作とを説明するための二部分に区分されている。
【0031】
先ず,ステップS1において,工作機械1及びトランスファ装置11を具えるシステムを起動する。これにより,オペレータは工作機械1の制御ユニット3に対して特別のマクロ,通常はISOコードのローディングを行う。これにより制御ユニット3が,例えばワークの加工完了後に,プリンタインターフェース4を制御して「プリント要求」,すなわちワークの交換要求情報を送信させることが可能である。そして,「プリント要求」及び情報aがトランスファ装置11のインターフェース14に送信される。言うまでもなく,「プリント要求」の送信は,加工すべきワークを工作機械1に対してセットするために,ワークの加工前に行わせることも可能である。
【0032】
更に,ステップS1の間,工作機械1及びトランスファ装置11の接続,より具体的にはインターフェース4,14相互間及びディジタル入出力5,15相互間の接続が確立される。トランスファ装置11側において,これはステップS2で示され,同ステップはトランスファ装置11の待機状態に対応する。トランスファ装置11側において,ステップS3では,システムの接続が確立されたか否かをチェックする。さらに,ステップS3では,第2実施例について後述するように,工作機械1がワーク交換及び/又は工具交換の準備が整っているか否かをチェックすることも可能である。このチェック結果がNOである場合,ステップS2の待機状態にリセットする。チェック結果がYESであれば,プログラムシーケンスはステップS6に移行する。
【0033】
工作機械1側でステップS1が完了すると,システムは,工作機械1がトランスファ装置11によってローディング可能な準備状態となり,工作機械1側でシーケンスがステップS4に移行する。このステップS4において,工作機械1側でワーク及び/又は工具の交換が必要とされる場合には,その交換を要求するサブプログラムが工作機械1の制御ユニット3により始動する。かかる要求は,工作機械1の制御ユニット3により決定されるものである。上述したサブプログラムが始動すると,メインプログラムがサブプログラムに対して各種のパラメータを送信する。そのパラメータを例示すれば,マガジン内におけるワーク又は工具について位置情報,どこにワーク又は工具をセットするかについての位置決め位置情報,トランスファ装置により行われるトランスファ運動についての記述情報等である。サブプログラムが起動するため,工作機械1側においてシーケンスがステップS5に移行し,シリアル又はパラレルプリンタインターフェース4が,トランスファ装置11のシリアル又はパラレルインターフェース14に対して上述したように「プリント要求」を送信する。その後,工作機械1側においてシーケンスがステップS9に移行し,このステップでは制御ユニットが,「プリント要求」の送信によって要求されるワーク交換又は工具交換の受信確認待機状態にある。
【0034】
これと同時に,トランスファ装置11側では,ステップS6において,「プリント要求」がインターフェース14によって受信されたか否か,及び「プリント要求」が有効であるか否かをチェックする。「プリント要求」の有効性は,例えば,「プリント要求」をチェックサムと共に送信することによってチェック可能である。ステップS6におけるチェック結果がNOであれば,トランスファ装置11側におけるシーケンスが,ステップS2の待機状態にリセットされる。しかし,ステップS6におけるチェック結果がYESであれば,トランスファ装置11側におけるシーケンスがステップS7に移行し,このステップS7では,ステップS3においてサブプログラムに送信されたパラメータに基づいて「プリント要求」により開始されたワーク又は工具の交換が行われる。
【0035】
ステップS7の後,トランスファ装置11側におけるシーケンスがステップS8に移行し,このステップS8では,工作機械1においてワーク及び/又は工具の交換が行われたことの確認が行われる。この確認は,トランスファ装置11のディジタル出力15から工作機械1のディジタル入力5に信号を送信することにより実行される。その理由は,工作機械1のプリンタインターフェース4が,工作機械1からトランスファ装置11に向けてのみ信号を送信するからである。
【0036】
トランスファ装置11側ではステップS8の後にシーケンスがステップS2の待機状態に戻され,他方,工作機械1側ではワーク及び/又は工具の交換が行われたことがトランスファ装置11によって確認されたか否かをステップS9においてチェックする。チェック結果がNOであれば,後述する第1実施例の場合には工作機械1側でシーケンスがステップS4に戻されて「プリント要求」を送信し,第2実施例の場合にはシーケンスを停止させて結果がYESとなるまで待機させる。チェック結果がYESであれば,工作機械1側においてシーケンスがステップS10に移行し,工作機械1により行われる加工pうろグラムを始動させる。すなわち,サブプログラムが中止され,メインプログラムが再開される。
【0037】
本発明の第1実施例及び第2実施例につき,ワーク及び/又は工具の交換のための準備が工作機械1において整っていない場合を想定する。この場合,システムの作動信頼性について関連するものであるが,交換が強制的に行われないよう,所要の措置を講じる必要がある。そのために,「プリント要求」及び交換要求をそれぞれキャンセルする必要がある。その手法として,次の二通りの方法を例示する。
【0038】
第1実施例では,「プリント要求」を周期的に反復する。すなわち,上述したとおり,ワーク及び/又は工具の交換の確認を待機するステップS9において,チェック結果がNOである場合がこれに該当する。
【0039】
第2実施例では,例えばステップS4においてサブプログラムを呼び出した後,工作機械1におけるディジタル出力5に対して,交換の準備が整ったことを示す信号を送信することが可能である。その信号はトランスファ装置11のディジタル入力15に伝達され,ステップS3について前述したとおりトランスファ装置11の制御ユニット13によって認識される。この信号は制御ユニット13により一時的に記憶され,又は蓄積される。この場合,ワーク及び/又は工具の交換の確認の受領のみをステップS8で待機する。すなわち,ステップS6の反復的実行は回避されるものである。しかし,ワーク及び/又は工具交換の確認をステップS8において受領(YES)した後,工作機械1のディジタル出力5において交換準備が整ったことを示す信号をリセットする必要がある。
【0040】
以上,ワーク及び/又は工具の一回の交換について本発明に係る情報交換システムのシーケンスを説明した。本発明によれば,加工プログラムによりワークが最終的に加工されたときに,サブプログラムを始動させて交換を行うことが可能である。すなわち,メインプログラム(加工プログラム)とサブプログラムとを交互に実行するものである。
【0041】
上述したところから明らかなとおり,本発明によれば,トランスファ装置と共に工作機械を容易にアップグレードすることができ,工作機械を大幅に改修することなくトランスファ装置及び工作機械を互いに協調作動させることが可能である。トランスファ装置を起動するために「交換要求」を工作機械からトランスファ装置に伝達するためには,マクロのローディングを行うだけでよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係る情報交換システムを示すブロック線図である。
【図2】図1のシステムの動作を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0043】
1 工作機械
2,12 制御ラック
3,13 制御ユニット
4,14 インターフェース
5,15 ディジタル入出力
11 トランスファ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械(1)と,該工作機械(1)に対して未加工か,事前加工済みのワークを供給するための,又は該工作機械(1)から加工を完了した製品を取り出すためのトランスファ装置(11)との間で情報を交換するための情報交換システムであって,
工作機械(1)が制御ユニット(3)及びインターフェース(4)を具え,
制御ユニット(3)が工作機械(1)による加工状況をモニタし,かつ,制御すると共に,工作機械(1)による加工状況に関する情報を前記インターフェース(4)を介してトランスファ装置(11)に送信してトランスファ装置(11)を作動させ,
トランスファ装置(11)は,これに付随するインターフェース(14)を介して前記情報を受信し,同じくこれに付随する制御ユニット(13)により前記情報を処理し,かつ,該情報に対して応答し,
プリンタインターフェースを工作機械(1)のインターフェース(4)として使用すること,
を特徴とする情報交換システム。
【請求項2】
請求項1記載の情報交換システムであって,工作機械(1)のインターフェース(4)として使用するプリンタインターフェースが,シリアルプリンタインターフェース又はパラレルプリンタインターフェースであることを特徴とする情報交換システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の情報交換システムであって,工作機械(1)による加工状況に関する情報が,ワーク及び/又は工具の交換要求情報であることを特徴とする情報交換システム。
【請求項4】
請求項3記載の情報交換システムであって,前記交換要求情報が,マガジン位置番号,ワーク及び/又は工具の位置決め位置情報,及び/又はトランスファ装置(11)の旋回操作情報であることを特徴とする情報交換システム。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の情報交換システムであって,工作機械(1)及びトランスファ装置(11)を互いに同期させ,かつ,段階的にクロッキングを行わせるための同期手段(5,15)を具えることを特徴とする情報交換システム。
【請求項6】
請求項5記載の情報交換システムであって,各同期手段(5,15)が工作機械(1)及びトランスファ装置(11)のディジタル入出力を具えることを特徴とする情報交換システム。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一項に記載の情報交換システムであって,工作機械(1)のプリンタインターフェース(4)を,トランスファ装置(11)に情報を送信するためのマクロのローディングにより初期化し,トランスガ装置(11)の制御ユニット(13)を,前記情報を受信したときに,対応するプロトコルを起動させることにより応答させることを特徴とする情報交換システム。
【請求項8】
請求項7記載の情報交換システムであって,トランスファ装置(11)は,工作機械(1)のプリンタインターフェース(4)から交換要求を受信したときに,その制御ユニット(13)によりワーク又は工具の交換を,前記プロトコルに従って実行することを特徴とする情報交換システム。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか一項に記載の情報交換システムであって,工作機械(1)は,そのディジタル出力(5)に信号を送ることによってワーク及び/又は工具の交換可能性を表示し,該信号は,トランスファ装置(11)のディジタル入力(15)に送られ,かつ,工作機械(1)において交換が不可能となったときにリセットされることを特徴とする情報交換システム。
【請求項10】
請求項1〜7の何れか一項に記載の情報交換システムであって,工作機械(1)の制御ユニット(3)は,プリンタインターフェース(4)に対する交換要求の反復的な送信を周期的に実行することを特徴とする情報交換システム。
【請求項11】
請求項1〜10の何れか一項に記載の情報交換システムであって,工作機械(1)の制御ユニット(3)は,プリンタインターフェース(4)に対して交換要求をチェックサムと共に送信することを特徴とする情報交換システム。
【請求項12】
請求項1〜11の何れか一項に記載の情報交換システムであって,工作機械(1)側に,前記制御ユニット(3),プリンタインターフェース(4)及びディジタル入出力(5)を有する制御ラック(2)を具え,トランスファ装置(11)側に,前記制御ユニット(13),プリンタインターフェース(14)及びディジタル入出力(15)を有する制御ラック(12)を具えることを特徴とする情報交換システム。
【請求項13】
請求項12記載の情報交換システムであって,工作機械(1)側の制御ラック(2)と,トランスファ装置(11)側の制御ラック(12)とを単一ユニットとして構成し,該ユニットは工作機械(1)及びトランスファ装置(11)の一方に組付け,又は両者(1,11)から独立させて配置したことを特徴とする情報交換システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−23704(P2008−23704A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−187475(P2007−187475)
【出願日】平成19年7月18日(2007.7.18)
【出願人】(502454802)エロワ アーゲー (8)
【氏名又は名称原語表記】EROWA AG
【Fターム(参考)】