説明

工作機械

【課題】比較的小さいタレットであっても従来に比してより多くの加工工具を取り付けることができる工作機械を提供する。
【解決手段】周方向に間隔をおいて複数の工具取付凹部36が設けられたタレット28を備え、これら工具取付凹部36の各々に、被加工物を加工するための加工工具がクランプ手段を用いて取り付けられる工作機械において、複数の工具取付凹部36の各々は、タレット28の回転中心0から放射状に設けられ、複数の工具取付凹部36の取付幅Wは、回転中心から延びる基準軸線Pを基準として、その片側幅w1がその他側幅w2よりも大きくなっており、工具取付凹部36の片側幅w1の部位に加工工具が取り付けられ、工具取付凹部の他側幅w2の部位にクランプ手段が取り付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の加工工具を装着するためのタレットを備えた工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
NC旋盤などの工作機械では、加工効率を高めるために、多数の加工工具(例えば、切削加工工具、穴あけ工具、ねじ切り工具など)の取付けが可能なタレットを備えたものが広く実用に供されている(例えば、特許文献1参照)。このような工作機械は、工作機械本体と、この工作機本体に回転自在に支持された主軸と、主軸に装着されたチャック手段と、主軸に対向して工作機械本体に支持されたタレット支持台と、タレット支持台に支持されたタレットとを備えている。タレットには、周方向に間隔をおいて複数の工具取付凹部が設けられ、これら複数の工具取付凹部に所要の加工工具がクランプ手段を用いて取り付けられる。
【0003】
従来のタレットは、例えば図6及び図7に示す構造を有し、またクランプ手段を用いた加工工具の取付は、例えば、図8に示すように行われる。図6及び図7において、このタレット102は略正八角形状であり、タレット支持台(図示せず)に回転自在に支持された回転軸(図示せず)に取り付けられ、この回転軸と一体的に所定方向に回動される。このタレット102には、周方向に実質上等間隔をおいて(45度の間隔をおいて)工具取付凹部106(106a〜106h)が設けられている。各工具取付凹部106(106a〜106h)は、回転中心O(回転軸104の軸中心)から放射状に配置され、所定の幅Wをもって直線状に延びている。
【0004】
従来のタレット102においては、図7に示すように、工具取付凹部106(106a〜106h)の各取付幅Wは、回転中心から径方向外方に延びる基準軸線Pを基準にその片側幅w1とその他側幅w2とが実質上等しくなるように構成され、これら片側幅w1及び他側幅w2は、各工具取付凹部106(106a〜106h)に取り付けられる加工工具108の大きさ(具体的には、加工工具108の工具ホルダ110の断面の大きさ)に対応している。例えば、□20の加工工具(工具ホルダ110の断面における一辺の大きさが20mmである工具)を用いるものでは、工具取付凹部106(106a〜106h)の片側幅w1及び他側幅w2が20mmに設定される。
【0005】
また、この加工工具108を工具取付凹部106(106a〜106h)に取り付けるためにクランプ手段112が用いられる。このクランプ手段112は、工具取付凹部106(106a〜106h)の底壁114に固定用ボルト115によって取り付けられる本体ブロック116を備えている。本体ブロック116には一対の取付ねじ118が螺着され、一対の取付ねじ118に固定用ナット120が螺着されている。加工工具108を固定する際には、一対の固定用ナット120が加工工具108側に移動するように回動され、かく回動することによって、一対の固定用ナット120が加工工具108の工具ホルダ110に作用し、このようにして加工工具108が、工具取付凹部106(106a〜106h)の片側壁(図8において上側壁)とクランプ手段112(具体的には、一対の固定用ナット120)との間にクランプ固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−38502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような工作機械には、次のような解決すべき問題がある。第1に、タレット102に関し、加工効率の向上を図るために、このタレット102により多くの加工工具108を装備する傾向にあるが、より多くの加工工具108を装備可能にするためには、タレット102の工具取付面数を増す必要がある。一方、主軸のチャック手段とタレット102との干渉をを防ぐために一定間隔が必要となり、タレット102の外径を大きくする必要があり、その結果、タレット102が大型化し、これに伴って工作機械本体も大型化する問題がある。更に説明すると、図7に示すように、各工具取付凹部106(106a〜106h)における片側幅w1と他側幅w2とが同じ大きさである故に、各工具取付凹部106(106a〜106h)の取付幅Wが大きくなり、図6に示すような大きさのタレット102においては、強度面などを考慮すると、周方向に実質上等間隔をおいて8つの工具取付凹部106(106〜106h)しか設けることができず、近年の工具取付けの要望に充分に対応することができない。
【0008】
このような問題を解消するためには、一つとして工具取付凹部106(106a〜106h)の取付幅Wを小さくすることが考えられるが、この取付幅Wを小さくすると、取り付けられる加工工具108の工具ホルダ110を小さくする必要があり、このことは,加工工具108の剛性が小さくなり、加工条件によって加工中にびびりが発生して被加工物122に所望の加工を施すことができなくなる。
【0009】
工具取付凹部106(106a〜106h)の取付幅Wを小さくすることなしに加工工具108の取付本数を多くするには、タレット102自体を大きくする必要があり、このように大きくした場合、タレット102の大型化に伴い、工作機械本体も大きくなる。
【0010】
第2に、クランプ手段112に関し、加工工具108の工具ホルダ110がクランプ手段112の一対の固定用ナット120により固定される構成である故に、工具ホルダ110をクランプ固定するために作用するのは一対の固定用ナット120となり、工具ホルダ110を長手方向に広範囲にわたって安定的にクランプして固定することができない。
【0011】
本発明の目的は、比較的小さいタレットであっても従来に比してより多くの加工工具を取り付けることができる工作機械を提供することである。
【0012】
また、本発明の他の目的は、加工工具の加工ホルダを安定的にクランプして確実に固定保持することができる工作機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の請求項1に記載の工作機械は、工作機械本体と、前記工作機本体に回転自在に支持された主軸と、前記主軸に装着され、加工すべき被加工物を保持するチャック手段と、前記工作機械本体に支持されたタレット支持台と、前記タレット支持台に支持されたタレットとを備え、前記タレットには、周方向に間隔をおいて複数の工具取付凹部が設けられ、前記複数の工具取付凹部の各々には、前記被加工物を加工するための加工工具がクランプ手段を用いて取り付けられ、前記複数の工具取付凹部のいずれかに取り付けられた前記加工工具が、前記チャック手段に保持された前記被加工物に対応する角度位置に位置付けられる工作機械において、
前記複数の工具取付凹部の各々は、前記タレットの回転中心から放射状に設けられ、前記複数の工具取付凹部のうちの少なくとも一部の取付幅は、前記回転中心から延びる基準軸線を基準として、その片側幅がその他側幅よりも大きくなっており、前記工具取付部位の前記片側幅の部位に前記加工工具が取り付けられ、前記工具取付部位の前記他側幅の部位に前記クランプ手段が取り付けられることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の請求項2に記載の工作機械では、前記複数の工具取付凹部は前記タレットの周方向に実質上等間隔をおいて配設され、前記複数の工具取付凹部の各々の取付幅は、前記回転中心から延びる前記基準軸線を基準として、その片側幅がその他側幅よりも大きくなっており、前記工具取付部位の前記片側幅の部位に前記加工工具が取り付けられ、前記工具取付部位の前記他側幅の部位に前記クランプ手段が取り付けられることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の請求項3に記載の工作機械では、前記複数の工具取付凹部の各々の前記片側幅の部位は、前記チャック手段に保持された前記被加工物の回動方向に見て下流側に位置し、それらの各々の他側幅の部位は、前記回動方向に見て上流側に位置することを特徴とする。
【0016】
また、本発明の請求項4に記載の工作機械は、工作機械本体と、前記工作機本体に回転自在に支持された主軸と、前記主軸に装着され、加工すべき被加工物を保持するチャック手段と、前記工作機械本体に支持されたタレット支持台と、前記タレット支持台に支持されたタレットとを備え、前記タレットには、周方向に間隔をおいて複数の工具取付凹部が設けられ、前記複数の工具取付凹部の各々には、前記被加工物を加工するための加工工具がクランプ手段を用いて取り付けられ、前記複数の工具取付凹部のいずれかに取り付けられた前記加工工具が、前記チャック手段に保持された前記被加工物に対応する角度位置に位置付けられる工作機械において、
前記クランプ手段は、両側部によって収容凹部を規定する本体ブロックと、前記収容凹部に対応する形状に形成された挿入ブロックとを備えており、
前記加工工具を取り付けるときには、前記挿入ブロックが前記本体ブロックの前記収容凹部に挿入されて前記本体ブロックの前記両側部が弾性変形され、これによって、前記加工工具が前記工具取付凹部に弾性的にクランプ保持されることを特徴とする。
【0017】
更に、本発明の請求項5に記載の工作機械では、前記本体ブロックの底部には雌ねじ孔が設けられ、前記挿入ブロックには貫通孔が設けられており、前記加工工具を取り付けるときには、取付ねじのねじ部が前記挿入ブロックの前記貫通孔を通して前記本体ブロックの前記雌ねじ孔に螺着され、前記取付ねじを締め付けることによって、前記挿入ブロックが挿入されて前記本体ブロックの前記両側部が両外側に向けて弾性変形されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の請求項1に記載の工作機械によれば、タレットに設けられた複数の工具取付凹部は、その回転中心から放射状に設けられ、複数の工具取付凹部のうちの少なくとも一部の取付幅は、回転中心から延びる基準軸線を基準として、その片側幅がその他側幅よりも大きくなっているので、従来の工具取付凹部の取付幅に比してこの取付幅を小さくすることができ、これによって、より多くの工具取付凹部を設けることが可能となる。加えて、工具取付凹部の片側幅の部位に加工工具(工具ホルダ)を取り付けるので、従来の工具取付凹部の取付幅に比してより大きな加工工具を取り付けることができ、これによって、加工工具の剛性を高めて加工中のびびりの発生などを抑えることができる。
【0019】
また、本発明の請求項2に記載の工作機械によれば、複数の工具取付凹部はタレットの周方向に実質上等間隔をおいて配設され、複数の工具取付凹部の各々の取付幅は、回転中心から延びる基準軸線を基準として、その片側幅がその他側幅よりも大きくなっているので、工具取付凹部の取付幅を従来に比して小さくしてより多くの工具取付凹部をタレットに設けることができる。また、各工具取付凹部における大きい片側幅の部位に加工工具(工具ホルダ)が取り付けられるので、従来における工具取付凹部の取付幅に比してより大きな加工工具を取り付けることができる。
【0020】
また、本発明の請求項3に記載の工作機械によれば、複数の工具取付凹部の各々の片側幅の部位は、チャック手段に保持された被加工物の回動方向に見て下流側に位置しているので、この片側幅の部位に取り付けられた加工工具により被加工物を加工するようになり、加工中のびびりの発生などを抑えて被加工物を所望の通りに加工することができる。
【0021】
また、本発明の請求項4に記載の工作機械によれば、タレットの工具取付凹部に加工工具(工具ホルダ)をクランプ保持するためのクランプ手段は、両側部によって収容凹部を規定する本体ブロックと、この収容凹部に対応する形状に形成された挿入ブロックとを備え、挿入ブロックが本体ブロックの収容凹部に挿入されるので、この挿入ブロックによって、本体ブロックの両側部が弾性変形され、これら両側部の弾性変形によって、加工工具が工具取付凹部に弾性的にクランプ保持され、かくして、加工工具を長手方向に広範囲にわたって安定的にクランプ保持することができる。
【0022】
また、本発明の請求項5に記載の工作機械によれば、加工工具をクランプ保持するときには、取付ねじのねじ部が挿入ブロックの貫通孔を通して本体ブロックの雌ねじ孔に螺着されるので、この取付ねじの締め付けによって、挿入ブロックが挿入されて本体ブロックの両側部が両外側に向けて弾性変形され、本体ブロックの両側部の弾性変形を利用して加工工具を工具取付凹部に確実にクランプ保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に従う工作機械の一例としてのNC旋盤の一実施形態を示す正面図。
【図2】図1のNC旋盤のタレットを示す斜視図。
【図3】図2のタレットの一つの工具取付凹部及びその近傍を示す部分正面図。
【図4】図3の工具取付凹部に加工工具を取り付けた状態を示す部分正面図。
【図5】図4におけるV−V線による断面図。
【図6】従来のNC旋盤におけるタレットを示す斜視図。
【図7】図6のタレットの一つの工具取付凹部及びその近傍を示す部分正面図。
【図8】図7の工具取付凹部に加工工具を取り付けた状態を示す部分正面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して、本発明に従う工作機械の一例としてのNC旋盤の一実施形態について説明する。図1において、図示の実施形態のNC旋盤は、工作機械本体としての旋盤本体2を備え、この旋盤本体2が工場などの床面に設置される。この旋盤本体2の一端部(図1において左端部)には第1主軸部4が設けられ、この第1主軸部4内に第1主軸(図示せず)が回転自在に支持され、かかる第1主軸に第1チャック手段6が装着され、この第1チャック手段6に加工すべき被加工物8(図4参照)が着脱自在に装着される。第1主軸は、第1駆動源(例えば、電動モータ)(図示せず)によって所定方向に回動され、この第1主軸と一体的に第1チャック手段6及びこれに保持された被加工物8が回動される。
【0025】
この形態では、旋盤本体2の他端部(図1において右端部)には第2主軸部10が設けられ、この第2主軸部10内に第2主軸(図示せず)が回転自在に支持され、かかる第2主軸に第2チャック手段12が装着され、この第1チャック手段12に加工すべき被加工物8(図4参照)が着脱自在に装着される。第2主軸は、第2駆動源(例えば、電動モータ)(図示せず)によって所定方向に回動され、この第2主軸と一体的に第1チャック手段12及びこれに保持された被加工物8が回動される。
【0026】
第1主軸部4と第2主軸部10との間に、即ち旋盤本体2の横方向中間部に往復テーブル14が横方向(即ち、Z軸方向)に往復動自在に支持されている。旋盤本体2には横方向(Z軸方向)に延びる第1案内支持機構16が設けられ、往復テーブル14はこの第1案内支持機構16に往復動自在に支持されている。この第1案内支持機構16に関連して第3駆動源(例えば、電動モータ)(図示せず)が設けられ、第3駆動源が所定方向(又は所定方向と反対方向)に回動されると、往復テーブル14が図1において左方(又は右方)の矢印18(又は矢印20)で示す方向に移動される。
【0027】
この往復テーブル14には、更に、タレットテーブル22が前後方向(即ち、X軸方向)に往復移動自在に支持されている。往復テーブル14の上端部には前後方向(X軸方向)に延びる第2案内支持機構24が設けられ、タレットテーブル22はこの第2案内支持機構24に往復動自在に支持されている。この第2案内支持機構22に関連して第4駆動源(例えば、電動モータ)(図示せず)が設けられ、第4駆動源が所定方向(又は所定方向と反対方向)に回動されると、タレットテーブル22は図1において紙面に対して手前側(又は背面側)の前方(又は後方)に移動される。
【0028】
タレットテーブル22の片側部(図1において左側部)には、第1チャック手段6に対向して第1タレット台26が取り付けられ、かかる第1タレット台26に第1タレット28が回動自在に支持されている。また、タレットテーブル22の他側部(図1において右側部)には、第2チャック手段12に対向して第2タレット台30が取り付けられ、この第2タレット台30に第2タレット32が回転自在に支持されている。
【0029】
この実施形態では、第1及び第2タレット28,32に関連する構造は実質上同一であり、以下、図1〜図3を参照して第1タレット28(第2タレット32)について説明する。第1タレット台26(第2タレット台30)には回転軸(図示せず)が回転自在に支持され、この回転軸に第1タレット28(第2タレット32)の中央部が取り付けられ、第1タレット28(第2タレット32)は、この回転軸と一体的に回動される。この回転軸に関連して第5駆動源(例えば電動モータ)(図示せず)が設けられ、第5駆動源は回転軸を後述するように所要の通りに回動し、この回転軸と一体的に第1タレット28(第2タレット32)が後述するように回動される。
【0030】
次に、図1とともに図2及び図3を参照して、第1タレット28(第2タレット32)について説明すると、第1タレット28(第2タレット32)は、略正12角形状であり、各辺に対応して工具取り付け凹部36(36a〜36l)が設けられている。これら工具取り付け凹部36(36a〜36l)は、第1タレット28(第2タレット32)の周方向に実質上等間隔(具体的には、30度の間隔)をおいて配設され、第1タレット28(第2タレット32)の回転中心O(即ち、回転軸の回転中心)から放射状に直線状に延びている。
【0031】
第1タレット28(第2タレット32)の各工具取付凹部36(36a〜36l)は、図3に示すように構成されている。各工具取付凹部36(36a〜36l)の各取付幅Wは、回転中心から径方向外方に延びる基準軸線Pを基準にその片側幅w1がその他側幅w2よりも大きくなっており、この片側幅w1は、各工具取付凹部36(36a〜36l)に取り付けられる加工工具38(図4参照)の大きさ(具体的には、加工工具38の工具ホルダ40の断面の大きさ)に対応している。例えば、□20の加工工具38(工具ホルダ40の断面における一辺の大きさが20mmである工具)を用いるものでは、工具取付凹部36(36a〜36l)の片側幅w1が20mmに設定され、このような大きさに設定することによって、この片側幅W1の部位に、□20の加工工具38を後述するように取り付けることができる。
【0032】
このように各工具取付凹部36(36a〜36l)の片側幅w1を例えば20mmに設定した場合、その他側幅w2はそれより小さく設定され、例えば16mmに設定される。このようにした場合、この他側幅w2の部位に、□16の加工工具38(工具ホルダ40の断面における一辺の大きさが16mmである加工工具)を取り付けることができる。尚、各工具取付凹部36(36a〜36l)の他側幅w2の部位に加工工具38を取り付けない場合、この他側幅w2は、14mmなどの後述のクランプ手段の大きさを考慮した適宜の大きさに設定することができる。
【0033】
各工具取付凹部36(36a〜36l)を上述したように構成した場合、次の通りの特徴が得られる。従来においては、上述したように、各工具取付凹部における片側幅w1と他側幅w2とは実質上等しい大きさであり、それ故に、例えば□20の加工工具を取り付ける場合、その片側幅w1及び他側幅w2は20mmとなり、各工具取付凹部の取付幅Wは40mmとなり、タレットの外径が300mmであるときには、加工時の負荷などを考慮したときに、タレットに設けることができる工具取付凹部は8つであった(図6及び図7参照)。
【0034】
これに対して、本実施形態のものでは、例えば□20の加工工具38を取り付ける場合、各工具取付凹部36(36a〜36l)における片側幅w1は20mmとなるが、このときその他側幅w2は例えば16mmに設定することができ、このような場合、各工具取付凹部36(36a〜38l)の取付幅Wは36mmとなる。各工具取付凹部36(36a〜36l)の取付幅Wがこのような場合、タレットの外径が従来と同じ300mmであるときには、加工時の負荷などを考慮したとしても、第1タレット28(第2タレット32)に工具取付凹部36(36a〜36l)を12個設けることができ(図2及び図3参照)、従来と同じ加工工具38を用いる場合であってもその取付個数を多くすることができ、その結果、NC旋盤の加工効率を高めることができる。
【0035】
これら工具取付凹部36(36a〜36l)における片側幅w1の部位は、図4に示すように、旋盤本体2側の第1チャック手段6(第2チャック手段12)に保持された被加工物8の回転方向(一点鎖線の矢印40で示す方向)に見て下流側に位置するようにし(これに伴い、その他側幅w2の部位は、この回転方向に見て上流側に位置するようになる)、このように構成することによって、被加工物8の加工は、この片側幅w1の部位に取り付けられた大きい加工工具38によって加工(例えば、切削加工)され、加工工具38の剛性を高めて加工中のびびりなどの発生を抑えることができる。
【0036】
このような構成の第1タレット28(第2タレット32)においては、加工工具8をクランプ保持するためのクランプ手段42は、各工具取付凹部36(36a〜36l)の他側幅w2の部位に取り付けられる。図4及び図5において、図示のクランプ手段42は、各工具取付凹部36(36a〜36l)の他側幅w2の部位に取り付けられる断面矩形状の細長い本体ブロック44を備え、この本体ブロック44には収容凹部46が設けられ、この収容凹部46は本体ブロック44の一端から他端まで直線状に延びている。図示の形態では、収容凹部46は、底部に向けて幅が漸減する台形状に形成され、本体ブロック44の両側部の内面を底部に向けて内側に傾斜する傾斜面48a,48bとすることによって両側部間に規定される。
【0037】
この本体ブロック44は、例えば、第1タレット28(第2タレット32)の各工具取付凹部36(36a〜36l)における他側幅w2の部位に配設され、本体ブロック44の両側部の弾性変形を利用して後述する如くして加工工具38(工具ホルダ40)とともに工具取付凹部36(36a〜36l)に取り付けられる。
【0038】
この本体ブロック44の収容凹部46には、挿入ブロック50が挿入装着される。挿入ブロック50の長手方向の長さは本体ブロック44と実質上等しい長さであり、その挿入先端側の断面形状は、本体ブロック44の収容凹部46の形状に対応した台形状に形成されている。この形態では、本体ブロック44には、その長手方向に間隔をおいて一対の雌ねじ孔52(図5において一つのみ示す)が設けられ、このことに対応して、挿入ブロック50には貫通孔54が設けられている。
【0039】
加工工具8を取り付けるときには、クランプ手段42の本体ブロック44を第1タレット28(第2タレット32)の工具取付凹部36(36a〜36l)における他側幅w2の部位に配設し、かく配設した本体ブロック44の片側部側の空間(即ち、工具取付凹部36(36a〜36l)における片側幅w1の部位)に加工工具38の工具ホルダ40を挿入する。
【0040】
そして、このような状態にて、本体ブロック44の収容空間に挿入ブロック50を挿入し、その後、取付ねじ56のねじ部58を挿入ブロック50の貫通孔54を通して本体ブロック44の雌ねじ孔52に螺着し、この取付ねじ56を締付け方向に回動させて加工工具38を工具取付凹部36(36a〜36l)にクランプ保持する。取付ねじ56を締付け方向に回動すると、挿入ブロック50が本体ブロック44の収容凹部46に食い込むように作用してその両側部が両外側に向けて幾分弾性変形され、かかる弾性変形によって、工具ホルダ40が工具取付凹部36(36a〜36l)の壁面60(即ち、その片側幅w1の部位を規定する壁面)(図5参照)に押圧され、工具ホルダ40は、クランプ手段42とともに工具取付凹部36(36a〜36l)の壁面60,62間に弾性的にクランプ保持されて固定される。
【0041】
このクランプ保持状態においては、本体ブロック44の側部が全長にわたって加工工具38の工具ホルダ40に弾性的に作用するので、本体ブロック40の作用範囲が広く、この工具ホルダ40を安定的に確実にクランプ保持することができる。
【0042】
この第1タレット28(第2タレット32)は、図4に示すように、工具取付凹部36(36a〜36l)に取り付けられた加工工具38のいずれかが、旋盤本体2側の第1チャック手段6(第2チャック手段12)に保持された被加工物8に対応する角度位置に位置付けられ、このような角度位置においては、工具ホルダ40の先端部に設けられた加工刃部62(例えば、切削刃部)が、対応する工具取付凹部36(36a〜36l)の基準軸線Pと一致するとともに、第1チャック手段6(第2チャック手段12)に保持された被加工物8の中心(即ち、第1主軸(第2主軸)の回転中心)と一致し、このような位置関係に保つことによって、被加工物8を所要の通りに加工することができる。
【0043】
以上、本発明に従う工作機械の一例としてのNC旋盤に適用して説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形乃至修正が可能である。
【0044】
例えば、上述した実施形態では、主軸部及びタレットを二つ備える形態のものに適用して説明したが、主軸部及びタレットを一つ又は三つ以上備えるものにも同様に適用することができる。
【0045】
また、例えば、上述した実施形態では、第1タレット(第2タレット)の工具取付凹部の全てについて、その片側幅w1をその他側幅w2よりも大きくしているが、これら工具取付凹部の少なくとも一部をこのように構成することによって、上述した所望の効果を達成することができる。
【0046】
また、例えば、上述した実施形態では、図4において被加工物が加工中に時計方向(一点鎖線の矢印40で示す方向)に回転される場合ついて説明したが、被加工物が加工中に反時計方向に回転される場合、上述とは反対に、第1タレット(第2タレット)の工具取付凹部の片側幅w1が図4にて下側となり、この片側幅w1の部位に加工工具38が取り付けられ、この工具取付凹部の他側幅w2が図4にて上側となり、この他側幅w2の部位にクランプ手段42が取り付けられる。
【0047】
また、例えば上述した実施形態では、工具取付凹部はタレットと一体化して設けているが、このような形態に限定されず、工具取付凹部がタレットと別個に形成され、このタレットから取り外しできる形態のものにも同様に適用することができる。
【0048】
また、例えば、上述した実施形態では、タレットの各工具取付凹部における片側幅w1を20mm、その他側幅w2を16mmとしているが、他のサイズの加工工具(工具ホルダ)にも適用することができ、取り付ける加工工具の大きさに対応して、各工具取付凹部における片側幅w1を32mm、その他側幅w2を25mmに、又はその片側幅w1を25mm、その他側幅w2を20mmに、或いはその片側幅w1を20mm、その他側幅w2を12mmなどにすることができる。
【符号の説明】
【0049】
2 旋盤本体(工作機械本体)
4,10 主軸部
6,12 チャック手段
8 被加工物
22 タレットテーブル
26,30 タレット台
28,32 タレット
36,36a〜36l 工具取付凹部
38 加工工具
40 工具ホルダ
42 クランプ手段
44 本体ブロック
46 収容凹部
50 挿入ブロック














【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械本体と、前記工作機本体に回転自在に支持された主軸と、前記主軸に装着され、加工すべき被加工物を保持するチャック手段と、前記工作機械本体に支持されたタレット支持台と、前記タレット支持台に支持されたタレットとを備え、前記タレットには、周方向に間隔をおいて複数の工具取付凹部が設けられ、前記複数の工具取付凹部の各々には、前記被加工物を加工するための加工工具がクランプ手段を用いて取り付けられ、前記複数の工具取付凹部のいずれかに取り付けられた前記加工工具が、前記チャック手段に保持された前記被加工物に対応する角度位置に位置付けられる工作機械において、
前記複数の工具取付凹部の各々は、前記タレットの回転中心から放射状に設けられ、前記複数の工具取付凹部のうちの少なくとも一部の取付幅は、前記回転中心から延びる基準軸線を基準として、その片側幅がその他側幅よりも大きくなっており、前記工具取付部位の前記片側幅の部位に前記加工工具が取り付けられ、前記工具取付部位の前記他側幅の部位に前記クランプ手段が取り付けられることを特徴とする工作機械。
【請求項2】
前記複数の工具取付凹部は、前記タレットの周方向に実質上等間隔をおいて配設され、前記複数の工具取付凹部の各々の取付幅は、前記回転中心から延びる前記基準軸線を基準として、その片側幅がその他側幅よりも大きくなっており、前記工具取付部位の前記片側幅の部位に前記加工工具が取り付けられ、前記工具取付部位の前記他側幅の部位に前記クランプ手段が取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記複数の工具取付凹部の各々の前記片側幅の部位は、前記チャック手段に保持された前記被加工物の回動方向に見て下流側に位置し、それらの各々の他側幅の部位は、前記回動方向に見て上流側に位置することを特徴とする請求項2に記載の工作機械。
【請求項4】
工作機械本体と、前記工作機本体に回転自在に支持された主軸と、前記主軸に装着され、加工すべき被加工物を保持するチャック手段と、前記工作機械本体に支持されたタレット支持台と、前記タレット支持台に支持されたタレットとを備え、前記タレットには、周方向に間隔をおいて複数の工具取付凹部が設けられ、前記複数の工具取付凹部の各々には、前記被加工物を加工するための加工工具がクランプ手段を用いて取り付けられ、前記複数の工具取付凹部のいずれかに取り付けられた前記加工工具が、前記チャック手段に保持された前記被加工物に対応する角度位置に位置付けられる工作機械において、
前記クランプ手段は、両側部によって収容凹部を規定する本体ブロックと、前記収容凹部に対応する形状に形成された挿入ブロックとを備えており、
前記加工工具を取り付けるときには、前記挿入ブロックが前記本体ブロックの前記収容凹部に挿入されて前記本体ブロックの前記両側部が弾性変形され、これによって、前記加工工具が前記工具取付凹部に弾性的にクランプ保持されることを特徴とする工作機械。
【請求項5】
前記本体ブロックの底部には雌ねじ孔が設けられ、前記挿入ブロックには貫通孔が設けられており、前記加工工具を取り付けるときには、取付ねじのねじ部が前記挿入ブロックの前記貫通孔を通して前記本体ブロックの前記雌ねじ孔に螺着され、前記取付ねじを締め付けることによって、前記挿入ブロックが挿入されて前記本体ブロックの前記両側部が両外側に向けて弾性変形されることを特徴とする請求項4に記載の工作機械。








【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−91295(P2012−91295A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−241497(P2010−241497)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(591014835)高松機械工業株式会社 (15)
【Fターム(参考)】