工業用二層織物
【課題】剛性、耐摩耗性のある下面側緯糸組織を用いることで網厚が薄く部分的な偏摩耗がない、ろ水性、繊維支持性等に優れた工業用織物を提供する。
【解決手段】下面側緯糸が連続する3本の下面側経糸の上側を通り、次いで残りの複数本の下面側経糸の下側を通り下面側緯糸ロングクリンプを形成する組織であり、且つ隣接配置する下面側緯糸は経糸3本分シフト、又は経糸4本分シフト、又は経糸5本分シフト、又は経糸1本分シフトし次いで4本分シフト、又は経糸3本分シフトし次いで4本分シフト、又は経糸2本分シフトし次いで5本分、または経糸1本分シフトし次いで6本分シフト、又は経糸1本分シフトし次いで4本分シフト次いで経糸5本分シフトし次いで4本分シフト、のいずれかの順にシフトパターンを繰り返して下面側層を形成し、下面側層の下面側緯糸ロングクリンプのクリンプ形状が矩形となる工業用二層織物である。
【解決手段】下面側緯糸が連続する3本の下面側経糸の上側を通り、次いで残りの複数本の下面側経糸の下側を通り下面側緯糸ロングクリンプを形成する組織であり、且つ隣接配置する下面側緯糸は経糸3本分シフト、又は経糸4本分シフト、又は経糸5本分シフト、又は経糸1本分シフトし次いで4本分シフト、又は経糸3本分シフトし次いで4本分シフト、又は経糸2本分シフトし次いで5本分、または経糸1本分シフトし次いで6本分シフト、又は経糸1本分シフトし次いで4本分シフト次いで経糸5本分シフトし次いで4本分シフト、のいずれかの順にシフトパターンを繰り返して下面側層を形成し、下面側層の下面側緯糸ロングクリンプのクリンプ形状が矩形となる工業用二層織物である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業用二層織物に関し、特に剛性、ろ水性、耐摩耗性、繊維支持性、歩留まりに優れ、長期間使用することのできる工業用二層織物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から工業用織物としては経糸、緯糸で製織した織物が広く使用されており、例えば抄紙用織物や搬送用ベルト、ろ布等その他にも多くの分野で使用されており、用途や使用環境に適した織物特性が要求されている。
中でも織物の網目を利用して原料の脱水等を行う製紙工程で使用される抄紙用織物における要求特性は特に厳しい。かかる織物の要求特性としては、支持される紙に対して織物のワイヤーマークが転写しにくい表面性に優れた織物、また原料に含まれる余分な水分を十分脱水するための脱水性、過酷な環境下においても好適に使用できる程度の剛性、耐摩耗性を持ち合わせたもの、そして良好な紙を製造するために必要な条件を長期間持続することのできる織物が要求されている。
その他にも繊維支持性、製紙の歩留まりの向上、寸法安定性、走行安定性等が要求されている。さらに近年では抄紙マシンが高速化しているため、それに伴い抄紙用織物への要求も一段と厳しいものとなっている。
【0003】
ここで、工業用織物の中でも最も要求が厳しい抄紙用織物について説明すれば、ほとんどの工業用織物の要求とその解決について理解できる。そこで、抄紙用織物を一例に挙げて以下に説明する。
抄紙用織物の上面側層は製紙原料の供給面となるため、緻密で繊維支持性、表面平滑性に優れたものが好ましい。一方、下面側層は特にマシンのロール接触面となるため耐摩耗性、剛性、そしてろ水性に優れたものが好ましい。上面側層は組織を乱すことなく一定のパターンが繰り返されたものが良いとされているのであるが、下面側層組織は未だ検討段階である。
実際に下面側層組織には様々なものがある。例えば特許文献1に示されている織物は、畝織組織の欠点であった下面側緯糸をロングクリンプとすることで、耐摩耗性を改善させるものである。畝織組織のように隣接する2本の経糸は同じ組織であるが、経糸が1本の下面側緯糸の下側、そして隣接する複数本の下面側緯糸の上側を通る組織であるため、下面側緯糸の浮きを長くすることができる。
【0004】
しかし、この織物は畝織組織に比べ織り合わせ箇所が減少するので剛性が低下し、また下面側緯糸のクリンプが長すぎて緯糸のガタツキが生じてしまい、緯糸の摩耗体積はあるものの使用寿命が大きく向上することはなかった。
さらに剛性を改善した織物が特許文献2に示されている。下面側経糸が右隣の経糸に、そして左隣の経糸に交互に寄り合ってジグザグに配置されているため剛性は改善されたが、クリンプの長さは長く緯糸のガタツキは解消されず、織物の厚みが増加する欠点が生じてしまった。
【0005】
そこで、剛性を確保しつつ適当な長さのクリンプとした織物が考えられた。特許文献3中における図9に示されているが、8シャフト組織において下面側緯糸を1本の下面側経糸の上側、次いで下側、次いで上側を通り、その後連続する5本の下面側経糸の下側を通る組織とした。かかる組織であれば織り込み部分が増えるため剛性に優れ、それに伴い緯糸のガタツキもなくなり、耐摩耗性にも優れた織物となる。
しかし、この下面側緯糸を経糸3本ずつシフトして形成される織物の下面側経糸は、1本の下面側緯糸の下側、次いで上側、次いで下側を通る組織となるため、下面側経糸が1本の下面側緯糸の上側を通る部分で下面側緯糸が裏面側に押し出されて、この部分だけが先行して摩耗し、その後摩耗切断により使用することができなくなる。すなわち、この織物は剛性に優れ、ガタツキのない組織とすることができたが、部分的な摩耗が生じて良好な耐摩耗性を得ることはできなかった。また、部分的突出により網厚が増加し、ろ水性、脱水性に影響を与えるため、好適に使用できなかった。
【0006】
このように、要求の厳しい抄紙用織物を満足させる織物は未だ開発されていなかった。
【特許文献1】特開2006−152462号公報
【特許文献2】特開2006−57217号公報
【特許文献3】特開2001−355191号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の工業用二層織物は、剛性、耐摩耗性のある下面側緯糸組織を用いることで、網厚が薄く、部分的な偏摩耗がない、剛性、ろ水性、繊維支持性等に優れた工業用織物を提供しようするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
「(1)上面側経糸と上面側緯糸によって製織された上面側層と、下面側経糸と下面側緯糸によって製織された下面側層からなり、上面側層と下面側層を接結糸で接結してなる工業用二層織物において、前記下面側緯糸は、連続する3本の下面側経糸の上側を通り、次いで残りの複数本の下面側経糸の下側を通り下面側緯糸ロングクリンプを形成する組織であり、且つ隣接配置する下面側緯糸は経糸3本分シフト、または経糸4本分シフト、または経糸5本分シフト、または経糸1本分シフトし次いで4本分シフト、または経糸3本分シフトし次いで4本分シフト、または経糸2本分シフトし次いで5本分、または経糸1本分シフトし次いで6本分シフト、または経糸1本分シフトし次いで4本分シフト次いで経糸5本分シフトし次いで4本分シフト、のいずれか一から選択される順にシフトパターンを繰り返して下面側層における完全組織を形成し、下面側層に形成される前記下面側緯糸ロングクリンプのクリンプ形状が矩形となることを特徴とした、工業用二層織物。
(2)前記下面側経糸が1本以上の下面側緯糸の下側、次いで複数本の下面側緯糸の上側を通って経糸方向の浮きを形成し、次いで1本以上の下面側緯糸の下側を通る組織を形成することを特徴とする、上記(1)に記載の工業用二層織物。
(3)前記経糸方向の浮きの長さを左右する下面側緯糸本数が、下面側緯糸ロングクリンプの長さを左右する経糸本数よりも少ないことを特徴とする、上記(2)に記載の工業用二層織物。
(4)上面側層と下面側層を接結する前記接結糸が、1本または2本組になった経糸接結糸、もしくは1本または2本組になった緯糸接結糸である、上記(1)乃至(3)のいずれか一に記載の工業用二層織物。」
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の工業用織物は、網厚が薄く、剛性、耐摩耗性に優れ、部分的な偏摩耗がなく、ろ水性、繊維支持性等に優れた織物とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、上面側経糸と上面側緯糸によって製織された上面側層と、下面側経糸と下面側緯糸によって製織された下面側層からなり、上面側層と下面側層を接結糸で接結してなる工業用二層織物において、下面側緯糸は連続する3本の下面側経糸の上側を通り、次いで残りの複数本の下面側経糸の下側を通りロングクリンプを形成する組織である。
さらに本発明は、織物の下面側層における下面側緯糸のクリンプ形状が矩形となる点に特徴を有する。かかる構造を形成するため、隣接配置する下面側緯糸は、以下の8種類のシフトパターンの中から選択される。
【0011】
1.経糸3本分シフトのみを繰り返すシフトパターン
2.経糸4本分シフトのみを繰り返すシフトパターン
3.経糸5本分シフトのみを繰り返すシフトパターン。
4.経糸1本分シフトし次いで4本分シフトを繰り返すシフトパターン
5.経糸3本分シフトし次いで4本分シフトを繰り返すシフトパターン
6.経糸2本分シフトし次いで5本分を繰り返すシフトパターン
7.経糸1本分シフトし次いで6本分シフトを繰り返すシフトパターン
8.経糸1本分シフトし次いで4本分シフト次いで経糸5本分シフトし次いで4本 分シフトを繰り返すシフトパターン
【0012】
また、本発明の発明者は、緯糸のガタツキはクリンプ長さだけに影響するものでないことを見出し、長いクリンプの緯糸であってもガタツキのない組織を創作した。このような構成によって、多シャフトの織物であっても同等の効果を得ることができる。
従来技術の中で剛性を確保しつつ耐摩耗性に優れた組織の1つとして、下面側層において下面側経糸が1本の下面側緯糸の下側、次いで上側、次いで下側を通る箇所および下面側緯糸が1本の下面側経糸の上側、次いで下側、次いで上側を通り、次いで残りの複数本の下面側経糸の下側を通りクリンプを形成する組織がある。この組織は、下面側に緯糸ロングクリンプを形成するため耐摩耗性に優れ、且つ経糸および緯糸共に織り込む力が強く働くことから、剛性は向上し、緯糸のガタツキも抑制され、網厚は薄くなるため良好であった。
【0013】
しかし、この組織の下面側経糸における、1本の下面側緯糸の下側、次いで上側、次いで下側を通る部分において、下面側経糸が下面側緯糸の下側を通っている部分では下面側緯糸を上側に持ち上げ、逆に下面側経糸が下面側緯糸の上側を通っている部分では下面側緯糸を下側に押し出すような力が生じている。このため、特に下面側経糸が3本の下面側緯糸の下側、上側、下側の順に通る箇所では、その織り合わせ部の下面側緯糸は両側では持ち上げられ、その影響で中央の下面側緯糸は下側に押し出される傾向にある。
そして押し出されたところが、下面側緯糸ロングクリンプの一部(特に中央部)長期間に渡って好適に使用出来る織物組織を発明したのである。
【0014】
従来技術においては、下面側緯糸は1本の下面側経糸の上側を通り、次いで1本の下面側経糸の下側を通り、次いで1本の下面側経糸の上側を通り、次いで残りの複数本の下面側経糸の下側を通る組織であり、且つ隣接配置する下面側緯糸は経糸5本分シフトして下面側層の完全組織を形成する例が知られている。これにより、下面側経糸は1本の下面側緯糸の下側、次いで上側、次いで下側を通り、次いで残りの複数本の下面側緯糸の上側を通る組織を形成する。
つまり、下面側緯糸は下面側層の下側(マシン接触面側)に下面側経糸の下側を通った本数分の緯糸ロングクリンプを形成しており、同時に下面側経糸は下面側層の上側(上面側層との接触面)に下面側緯糸の上側を通った本数分の経糸方向の浮きを形成する。そして、従来技術における組織では、下面側緯糸ロングクリンプ長さを左右する経糸本数と下面側経糸の浮きの長さを左右する緯糸本数が同じであり、これが緯糸のクリンプ形状に影響を与えるという問題点を本発明の発明者は種々の織物を比較検討した上で見出した。
【0015】
ここで、下面側緯糸クリンプとは、下面側緯糸が複数本の経糸(下面側経糸および経糸接結糸)の下側を通ることで下面側層の下側(マシン接触面側)に形成される緯糸の突出を指し、この突出を長く(ロングクリンプ)することで、緯糸の摩耗体積が増加するため、ワイヤーの耐摩耗性が向上するのである。下面側緯糸クリンプ長さを左右する経糸本数とは、下面側層の下側(マシン接触面側)に形成される緯糸の突出を形成する際に、下面側緯糸が通った経糸本数のことを示している。例えば、従来技術において10シャフト組織であれば、経糸7本分の緯糸ロングクリンプが形成されるので、下面側緯糸クリンプ長さを左右する経糸本数は7本となる。
下面側経糸の浮きとは、下面側経糸が下面側緯糸の上側を通ることで下面側層の上側(上面側層との接触面)に形成される経糸の突出を指し、この突出を短くすることで下面側緯糸の拘束力が増加するのである。経糸方向の浮きの長さを左右する下面側緯糸本数とは、下面側層の上側(上面側層との接触面)に形成される経糸の突出を形成する際に、下面側経糸が通った緯糸本数のことを示している。
【0016】
本発明の下面側緯糸は3本の下面側経糸の上側を通り、次いで残りの複数本の下面側経糸の下側を通りロングクリンプを形成する組織であり、隣接配置する下面側緯糸は経糸3本分シフト、または経糸4本分シフト、または経糸5本分シフト、または経糸1本分シフトし次いで4本分シフト、または経糸3本分シフトし次いで4本分シフト、または経糸2本分シフトし次いで5本分、または経糸1本分シフトし次いで6本分シフト、または経糸1本分シフトし次いで4本分シフト次いで経糸5本分シフトし次いで4本分シフトのいずれか一から選択される順にシフトパターンを繰り返して下面側層における完全組織を形成している。
【0017】
これにより、下面側経糸は1本以上の下面側緯糸の下側、次いでその隣の1本以上の下面側緯糸の上側、次いでその隣の1本以上の下面側緯糸の下側を通り、次いで残りの下面側緯糸の上側を通る部分を有する組織を形成する。
この組織は従来技術と同等の組織である。しかし、本発明の組織は従来技術の織物と下面側緯糸の組織が異なっている。故に、下面側経糸が下面側緯糸を織り込む箇所が増加するため、下面側経糸の浮きの長さを左右する下面側緯糸本数が減少し、下面側層の上側に形成する経糸方向の浮きの長さは短くなる。つまり、下面側経糸の浮きの長さを左右する下面側緯糸本数が下面側緯糸ロングクリンプ長さを左右する経糸本数より少ないという関係が成り立つ。
この下面側経糸が形成する、経糸方向の浮きの長さが短くなることで、下面側経糸が下面側緯糸を拘束する力は高くなる。このため、従来技術の経糸方向の浮きが長い場合に比べ、本発明の下面側経糸が下面側緯糸を下側に押し出す力は増加するのである。
【0018】
従来技術と本発明の構造、特徴、効果の比較について、図1及び図2を参照して説明する。図1には従来技術における経糸断面図1A、緯糸断面図1Bを示し、図2には本発明に係る織物の経糸断面図2A、緯糸断面図2Bを示した。
図中のIは下層面側の上側(上層との接触面)、IIは下層面側の下側(マシン接触
面側)を示し、矢印は経糸が緯糸を押し出す力およびその方向を示している。
従来技術においては、下面側経糸が形成する、1本の下面側緯糸の下側、次いで上側、次いで下側を通る部分(A)において、織り合わせ部の下面側緯糸は両側では持ち上げられ、その影響で中央の下面側緯糸2は下側に(図の矢印の方向)押し出される傾向にある。その押し出される部分が下面側緯糸ロングクリンプの一部(A')のみ(特にクリンプ中央部)であった。クリンプの一部を突出させるクリンプ中央部にある下面側経糸以外の他の下面側経糸(B')には、下面側緯糸を押し出す程の十分な拘束力はないため、下面側緯糸ロングクリンプにかかる押し出す力がロングクリンプの一部に一極集中することによって、部分的突出(C)を生じさせていたのである。
【0019】
一方、本発明に係る織物においても下面側経糸が形成する、1本の下面側緯糸の下側、次いで上側、次いで下側を通る部分(D)において、下面側緯糸が下側に押し出される部分が下面側緯糸ロングクリンプの中央(D')に存在するが、図2においては、緯糸ロングクリンプ部の他の経糸(E')も全て緯糸2本分という短い浮きを形成する組織であるため、ロングクリンプ中央にある経糸と同様に、全ての下面側経糸が下面側緯糸を押し出し(図の矢印の方向)、従来技術のように一極集中ではなく全体的に緯糸を押し出す力が働く。
この作用によって、ロングクリンプ形状が部分的な突出の'くの字形'ではなく'矩形'(F)となり、偏摩耗を抑制することが出来るのである。ここで、ロングクリンプ形状の'くの字形'とは、経糸が緯糸を下面側方向へ押し出す力が緯糸ロングクリンプの一部(クリンプの中央であっても、それ以外でもよい)で一極集中することによって生じる部分的に突出した構造を示すものであり、偏摩耗し易い形状である。それに対し、'矩形'とは経糸が緯糸を下面側方向へ押し出す力が緯糸ロングクリンプの全体に働くことによってロングクリンプ全体が突出することいなる。摩耗体積が最も多くなる構造であり、耐摩耗性に優れたロングクリンプ形状となる。
【0020】
多シャフト組織及び下面側緯糸のシフトの仕方によっては、下面側経糸が下面側緯糸1本以上の下側、次いで下面側緯糸1乃至4本の上側、次いで1本以上の下面側緯糸の下側を通る組織となる場合がある。特に押し出される中央の下面側緯糸が1乃至4本であっても同じであり、ロングクリンプ部の全ての経糸が緯糸を押し出す力を有する。
【0021】
その他、本発明の組織では下面側緯糸が3本の下面側経糸の上側を通って下面側緯糸を強力に織り込むことで、剛性が向上し、ガタツキの発生や網厚の増大を抑制することができ、ろ水性の確保も容易にできる。
また、例えば8シャフト組織では、下面側緯糸は3本の下面側経糸によって強力に織り込まれるため、下面側に経糸5本分のロングクリンプ組織が形成され、摩耗体積が増大するため耐摩耗性も向上する。隣接配置する3本の経糸が同時に下面側緯糸を強固に織り込むことにより、ワイヤー剛性の向上、網厚を薄くでき、摩耗体積の増加、下面側緯糸のガタツキ抑制等に優れ、また下面側表面に経糸5本分の緯糸ロングクリンプが形成されるため耐摩耗性を向上させることができる。従来技術における問題点である緯糸の部分的な突出が抑止でき、先行摩耗による製品寿命の低下を防ぐことができる。
また、多シャフトの織物、例えば10シャフト組織では、下面側に経糸7本分のロングクリンプ組織が形成されるため、耐摩耗性に優れた組織となり、隣接配置する3本の経糸が同時に下面側緯糸を強力に織り込むため、網厚を薄くでき、剛性の向上、下面側緯糸のガタツキ抑制等に優れる。
【0022】
上面側層と下面側層を織り合わせて接結する糸としては、1本または2本組になった経糸接結糸、または緯糸接結糸がある。経糸接結糸の場合、上面側層と下面側層を各々形成する上面側経糸と下面側経糸からなる経糸の組以外に、経糸2本の経糸接結糸、1本の上面側経糸と1本の経糸接結糸、1本の下面側経糸と1本の経糸接結糸のいずれかの経糸接結の組を形成することによって接結しているが、上面側層と下面側層を各々形成する上面側経糸と下面側経糸の組以外に、経糸接結糸が単独で配置されてもよい。
また、緯糸接結糸の場合、上面側層と下面側層を各々形成する上面側緯糸と下面側緯糸間に、緯糸2本組の緯糸接結糸、1本の緯糸接結糸が配置されればよい。
【0023】
上面側織物組織に関しては特に限定はなく、平織、綾織り、崩し綾織り、サテン織り等その他織物組織とすればよく、これらによって得られた完全組織を上下左右に繋げて、斜め剛性、走行安定性、耐摩耗性に優れた組織を採用すればよい。複数種類の経糸完全組織で構成される上面側層完全組織であってもよい。また、上面側緯糸間に上面側緯糸よりも線径の小さい補助緯糸を配置しても構わない。
【0024】
本発明に使用される糸は用途によって選択すればよいが、例えば、モノフィラメントの他、マルチフィラメント、スパンヤーン、捲縮加工や嵩高加工等を施した一般的にテクスチャードヤーン、バルキーヤーン、ストレッチヤーンと称される加工糸、あるいはこれらをより合わせるなどして組み合わせた糸が使用できる。また、糸の断面形状も円形だけでなく四角形状や星型等の短形状の糸や楕円形状、中空等の糸が使用できる。また、糸の材質としても、自由に選択でき、ポリエステル、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロ、アラミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンナフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、綿、ウール、金属等が使用できる。もちろん、共重合体やこれらの材質に目的に応じてさまざまな物質をブレンドしたり含有させた糸を使用しても良い。
一般的に抄紙用ワイヤーを構成する糸には剛性があり、寸法安定性に優れるポリエステルモノフィラメントを用いるのが好ましい。また、耐摩耗性が要求される下面側緯糸にはポリエステルモノフィラメントとポリアミドモノフィラメントを交互に配置する等、交織して剛性を確保しつつ耐摩耗性を向上することもできる。
【0025】
織物構成糸の線径については特に限定はないが、緻密で平滑な織物表面とするためには上面側層を構成する上面側経糸、上面側緯糸は比較的線径の小さいものであることが好ましい。また、 マシンやロールの接触面となる下面側表面は剛性や耐摩耗性が必要とされるため、下面側緯糸、下面側経糸は比較的線径の大きい糸である方が好ましい。これらは用途や使用環境、上下緯糸本数の配置比率等を考慮して選択すればよい。
【実施例】
【0026】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。
(実施形態)
図1、図2は上記で説明したとおり、従来技術および本発明の、経糸と緯糸の押し込む力の関係を示した経糸断面図と緯糸ロングクリンプ形状について示した緯糸断面図である。
図3〜32は本発明に係る実施形態であって、意匠図、経糸に沿った断面図、緯糸に沿った断面図を示している。そして、図33は本発明と比較するための従来例の意匠図を示しており、図34は図33の経糸1、2、3に沿った断面図を示し、図35は緯糸3'に沿った断面図を示している。
意匠図とは織物組織の最小の繰り返し単位であって織物の完全組織に相当する。本発明に係る特許請求の範囲に記載されているものがこの完全組織に相当する。かかる完全組織が上下左右につながることによって製品が完成する。
【0027】
上記意匠図において、経糸はアラビア数字、例えば1、2、3・・・で示し、上下緯糸を織り合わせる経糸接結糸はBを付した数字、上面側経糸はuを付した数字、下面側経糸はdを付した数字で表した。意匠図上、同番号の経糸はそれぞれ組を形成していることを示し、例えば、上面側経糸uと経糸接結糸Bで経糸接結糸の組を形成しており、また上面側経糸uと下面側経糸dで上下経糸の組を形成している。
緯糸はダッシュを付したアラビア数字、例えば1'、2'、3'・・・で示し、上面側緯糸と下面側緯糸は上下に配置されているが、配置比率によっては上面側緯糸の下側に下面側緯糸が配置されない場合があるため、上面側緯糸はuを付した数字、下面側緯糸はdを付した数字で示し、例えば1'u、2'd等と示した。
【0028】
意匠図中、×印は上面側経糸uが上面側緯糸の上側に位置していることを示し、□印は下面側経糸dが下面側緯糸の下側に位置していることを示す。●印は経糸接結糸Bが上面側緯糸の上側に位置していることを示し、○印はその経糸接結糸が下面側緯糸の下側に位置していることを示す。そして、◆印も経糸接結糸Bが上面側緯糸の上側に位置していることを示し、◇印はその経糸接結糸が下面側緯糸の下側に位置していることを示す。そして、緯糸接結糸により上面側層と下面側層を接結する場合には、◎印は緯糸接結糸が上面側経糸の上側に位置していることを示し、○印はその緯糸接結糸が下面側経糸の下側に位置していることを示す。
上面経糸と下面側経糸、および上面側緯糸と下面側緯糸は上下に重なって配置されている。意匠図では糸が上下に正確に重なって配置されることになっているが、これは図面の都合上であって実際の織物ではずれて配置されても構わない。
【0029】
(実施形態1)
図3が本発明の実施形態1の完全組織を示す意匠図である。図4は図3の意匠図の経糸の組1、2、3に沿った断面図を示し、図5は図3の意匠図の緯糸3'に沿った断面図を示したものである。この織物は経糸接結の組2組、経糸の組6組によって完全組織が構成されており、経糸接結の組は1本の経糸接結糸と上面側経糸よりなる。
上面側層は経糸が1本の上面側緯糸の上側を通り、次いで1本の上面側緯糸の下側を通る平織組織であり、上面側緯糸と下面側緯糸の配置割合は2:1である。
図3の意匠図において、経糸3,7は経地糸接結糸、上面側経糸からなる接結経糸の組であり、経糸1,2,4,5,6,8は上面側経糸、下面側経糸からなる経糸の組である。下面側層を構成する下面側緯糸は、連続する3本の下面側経糸の上側を通り、次いで5本の下面側経糸の下側を通る組織であり、隣接する下面側緯糸を経糸5本分シフトすることで下面側層の完全組織が形成される。
【0030】
本発明の下面側緯糸は、連続する経糸3本で強固に織り込まれるため、ワイヤー剛性の向上、網厚を薄くでき、摩耗体積の増加、下面側緯糸のガタツキ抑制等に優れ、また下面側表面に経糸5本分の緯糸ロングクリンプが形成されるため耐摩耗性を向上させることができる。
そして、従来例と最も異なる点は、下面側緯糸が裏面側に部分的に突出することがないため、偏摩耗が生じることはないのである。
【0031】
図33〜図35に示してある従来例1と比較して説明する。従来例1の下面側緯糸3'dを例にとると、下面側緯糸3'dは1本の下面側経糸6dの上側、次いで下面側経糸7dの下側、次いで下面側経糸8dの上側を通り、連続する5本の経糸1d、2d、3d、4d、5dの下側を通る組織であり、且つ隣接する下面側緯糸を経糸5本分シフトして下面側層の完全組織を形成している。一方の下面側経糸についても同様に、下面側経糸3dは1本の下面側緯糸1'dの下側、次いで下面側緯糸3'dの上側、次いで下面側緯糸5'dの下側を通り、連続する5本の下面側緯糸7'd、9'd、11'd、13'd、15'dの上側を通る組織である。
【0032】
下面側経糸3dが形成する1本の下面側緯糸の下側、次いで上側、次いで下側を通る部分において、下面側経糸3dが1本の下面側緯糸1'dの下側を通る部分では、下面側緯糸1'dと織り合わされて下面側緯糸1'dを上側に持ち上げる力が働く。同様に、下面側緯糸5'dの下側を通る部分では下面側緯糸5'dと織り合わされて下面側緯糸5'dを上側に持ち上げる力が働く。そして、下面側緯糸3'dの上側を通る部分では下面側緯糸を下側に押し出すような力が働く。下面側緯糸3'dのロングクリンプの一部(ここでは中央部)だけが押し出されることによって、ロングクリンプは部分的に押し出される。
下面側緯糸3'dのロングクリンプ部にある他の経糸1d、2d、4d、5dは、連続する5本の下面側緯糸の上側を通っている。例えば、下面側経糸2dは、下面側緯糸11'dの下側を通り、連続する5本の下面側緯糸13'd、15'd、1'd、3'd、5'dの上側を通り、下面側緯糸7'dの下側を通る組織を形成している。下面側緯糸3'dのクリンプを挟んで下面側経糸2dの経糸方向の浮きが緯糸5本分と長いため下面側緯糸3'dを下側に押し出す程の十分な拘束力はない。そのため、下面側緯糸ロングクリンプの押し出す力が下面側経糸3dの箇所、つまりロングクリンプの中央に一極集中し、下面側緯糸には部分的な突出が生じ、クリンプ形状は 'くの字形'となるのである。これは、下面側緯糸3'd以外の全ての下面側緯糸で生じている。例えば、下面側緯糸1'dでは下面側経糸6dの部分のみ突出してしまうのである。
その結果、下面側緯糸の部分的に突出した箇所が先行摩耗してしまい、長時間好適に使用することが出来ず、さらには摩耗切断して使用できなくなってしまうのである。
【0033】
それに対して本実施形態1では、下面側緯糸3'dを例にとると、下面側緯糸3'は連続する3本の経糸6d、7B、8dの上側を通り、連続する5本の経糸1d、2d、3B、4d、5dの下側を通る組織であり、且つ隣接する下面側緯糸を経糸5本分シフトして下面側層の完全組織を形成している。一方の下面側経糸については、下面側緯糸との織り込む箇所が増加するため、下面側緯糸の上側を通る本数が減少し、下面側層の上側に形成する経糸方向の浮きの長さは短くなっている。下面側経糸1dは1本の下面側緯糸1'dの下側、次いで下面側緯糸3'd、5'dの上側、次いで下面側緯糸7'dの下側を通り、次いで下面側緯糸9'd、11'dの上側、次いで下面側緯糸13'dの下側を通り、次いで下面側緯糸15'dの上側を通る組織となり、この組織の中では経糸方向の浮きの長さは最長で下面側緯糸2本分である。これは、従来例1の経糸方向の浮きの長さが下面側緯糸5本分の組織に比べ短くなっている。この下面側経糸が形成する経糸方向の浮きの長さが短くなることで、下面側経糸が下面側緯糸を拘束する力は高くなる。このため、従来例の経糸方向の浮きが長い場合に比べ、本発明に係る織物の下面側経糸が下面側緯糸を押し出す力は増加するのである。
下面側経糸の浮きの長さを左右する下面側緯糸本数が下面側緯糸ロングクリンプ長さを左右する経糸本数より少ないという関係が成り立っている。
そして、この押し出す力を有する経糸組織を緯糸ロングクリンプ中央以外にも配置することで、下面側経糸が全体的に下面側緯糸を下側に押し出すので、緯糸ロングクリンプのクリンプ形状が矩形となり、偏摩耗を抑制することが出来るのである。
【0034】
本実施例1の下面側緯糸3'dを例にすると、下面側緯糸3'dは連続する3本の下面側経糸6d、7B、8dの上側を通り、連続する5本の経糸1d、2d、3B、4d、5dの下側を通る組織である。経糸3Bは下面側緯糸1'dの下側、次いで下面側緯糸3'dの上側、次いで下面側緯糸5'dの下側を通る組織を形成していることから、下面側緯糸3'dを下面側に押し出す力が働いているのが分かる。これにより、下面側緯糸3'dは突出することになるが、下面側緯糸3'dと織り合わせて緯糸ロングクリンプを形成する他の経糸1d、2d、4d、5dでも下面側緯糸3'dを下面側に押し出す力が働いているのが分かる。例えば、下面側経糸2dは、下面側緯糸1'dの下側を通り、次いで連続する2本の下面側緯糸3'd、5'dの上側、次いで下面側緯糸7'dの下側、次いで下面側緯糸9'dの上側、次いで下面側緯糸11'dの下側、次いで下面側緯糸13'd、15'dの上側を通る組織であり、その内の下面側緯糸1'dの下側を通り、次いで連続する2本の下面側緯糸3'd、5'dの上側、次いで下面側緯糸7'dの下側を通る箇所では、経糸方向の浮きの長さが下面側緯糸3'd、5'dの2本分であり、経糸方向の浮きの長さが短いため下面側に押し出す力を有する組織である。
【0035】
また、他の下面側経糸1d、4d、5dについても同様に下面側緯糸3'dを下面側に押し出す力が働いている。これにより、下面側緯糸3'dの緯糸ロングクリンプは一極集中で押し出されているのではなく全体的に下面側に押し出される。そのためクリンプ形状が局部的な突出の'くの字形'ではなく'矩形'となり、偏摩耗を抑制することが出来るのである。
このように、下面側緯糸ロングクリンプを形成しているため、耐摩耗性に良好で、且つロングクリンプにおいて下面側緯糸を全体的に押し出す力が働くので、クリンプ形状が矩形となり、偏摩耗を抑制することが出来る。
さらには、本発明に係る織物の下面側緯糸は、連続する経糸3本で強固に織り込まれるため、ワイヤー剛性の向上、網厚を薄くでき、摩耗体積の増加、下面側緯糸のガタツキ抑制等に優れた織物とすることができる。
【0036】
また、上面側組織は、上面側緯糸が1本の上面側経糸の上側を通った後、1本の上面側経糸の下側を通る平織組織であるため、剛性、表面平滑性、繊維支持性等に優れた織物となる。
よって、本実施形態1は剛性、耐摩耗性、表面平滑性、繊維支持性、ろ水性に優れ、緯糸のガタツキも少ない優れた織物である。
【0037】
(実施形態2)
図6は本発明に係る織物の実施形態2の完全組織を示す意匠図である。図7は図6の意匠図の経糸の組1、2、3に沿った断面図、図8は図6の意匠図の緯糸3'に沿った断面図を示したものである。この織物は経糸接結の組2組、経糸の組6組によって完全組織が構成されており、経糸接結の組は2本の経糸接結糸よりなる。
上面側層は経糸が1本の上面側緯糸の上側を通り、次いで1本の上面側緯糸の下側を通る平織組織であり、上面側緯糸と下面側緯糸の配置割合は2:1である。
図6の意匠図において、経糸3,7は2本の経糸接結糸からなる接結糸の組であり、経糸1,2,4,5,6,8は上面側経糸、下面側経糸からなる経糸の組である。下面側層を構成する下面側緯糸は、連続する3本の下面側経糸の上側を通り、次いで5本の下面側経糸の下側を通る組織であり、隣接配置する下面側緯糸を経糸1本分シフトし次いで4本分シフト次いで経糸5本分シフトし次いで4本分シフトすることで下面側層の完全組織が形成される。
下面側経糸は1本以上の下面側緯糸の下側、次いで1本または3本の下面側緯糸の上側を通って経糸方向の浮きを形成し、次いで1本以上の下面側緯糸の下側を通る組織を形成している。
【0038】
下面側経糸の浮きの長さを左右する下面側緯糸本数が下面側緯糸ロングクリンプ長さを左右する経糸本数より少ないという関係が成り立っている。そして、下面側経糸が下面側緯糸を拘束する力は高くなるため、下面側緯糸を下側に押し出す力は増加するのである。さらに押し出す力を有する経糸組織が緯糸ロングクリンプ全体に配置されるので、下面側経糸が全体的に下面側緯糸を下側に押し出し、緯糸ロングクリンプのクリンプ形状が矩形となり、偏摩耗を抑制することが出来るのである。
経糸5本分の緯糸ロングクリンプを有するため耐摩耗性に優れ、且つクリンプ形状が矩形となるため偏摩耗が抑制され、さらに下面側緯糸は連続する経糸3本で強固に織り込まれるため、ワイヤー剛性向上、ガタツキの抑制等に優れた織物であるといえる。
【0039】
(実施形態3)
図9は本発明に係る織物の実施形態3の完全組織を示す意匠図である。図10は図9の意匠図の経糸の組1、2、3に沿った断面図、図11は図9の意匠図の緯糸3'に沿った断面図を示したものである。この織物は経糸接結の組2組、経糸の組6組によって完全組織が構成されており、経糸接結の組は1本の経糸接結糸と1本の下面側経糸よりなる。
上面側層は経糸が1本の上面側緯糸の上側を通り、次いで3本の上面側緯糸の下側を通る1/3組織であり、それを変則的にシフトさせ、朱子織組織を形成している。上面側緯糸と下面側緯糸の配置割合は2:1である。
図9の意匠図において、経糸2,6は1本の経糸接結糸と1本の下面側経糸からなる接結糸の組であり、経糸1,3,4,5,7,8は上面側経糸、下面側経糸からなる経糸の組である。下面側層を構成する下面側緯糸は、連続する3本の下面側経糸の上側を通り、次いで5本の下面側経糸の下側を通る組織であり、隣接配置する下面側緯糸を経糸1本分シフトし次いで4本分シフトすることで下面側層の完全組織が形成される。下面側経糸は1本以上の下面側緯糸の下側、次いで2本または4本の下面側緯糸の上側を通って経糸方向の浮きを形成し、次いで1本以上の下面側緯糸の下側を通る組織を形成している。
【0040】
下面側経糸の浮きの長さを左右する下面側緯糸本数が下面側緯糸ロングクリンプ長さを左右する経糸本数より少ないという関係が成り立っている。そして、下面側経糸が下面側緯糸を拘束する力は高くなるため、下面側緯糸を下側に押し出す力は増加するのである。さらに押し出す力を有する経糸組織が緯糸ロングクリンプ全体に配置されるので、下面側経糸が全体的に下面側緯糸を下側に押し出し、緯糸ロングクリンプのクリンプ形状が矩形となり、偏摩耗を抑制することが出来るのである。
経糸5本分の緯糸ロングクリンプを有するため耐摩耗性に優れ、且つクリンプ形状が矩形となるため偏摩耗が抑制され、さらに下面側緯糸は連続する経糸3本で強固に織り込まれるため、ワイヤー剛性向上、ガタツキの抑制等に優れた織物であるといえる。
【0041】
(実施形態4)
図12は本発明に係る織物の実施形態4の完全組織を示す意匠図である。図13は図12の意匠図の経糸の組1、2、3に沿った断面図、図14は図12の意匠図の緯糸3'に沿った断面図を示したものである。この織物は経糸接結の組4組、経糸の組4組によって完全組織が構成されており、経糸接結の組は2本の経糸接結糸よりなる。
上面側層は経糸が1本の上面側緯糸の上側を通り、次いで1本の上面側緯糸の下側を通る平織組織であり、上面側緯糸と下面側緯糸の配置割合は1:1である。
図12の意匠図において、経糸2,4,6,8は2本の経糸接結糸からなる接結糸の組であり、経糸1,3,5,7は上面側経糸、下面側経糸からなる経糸の組である。下面側層を構成する下面側緯糸は、連続する3本の下面側経糸の上側を通り、次いで5本の下面側経糸の下側を通る組織であり、隣接配置する下面側緯糸を経糸3本分シフトし次いで4本分シフトすることで下面側層の完全組織が形成される。下面側経糸は1本以上の下面側緯糸の下側、次いで1本または2本または4本の下面側緯糸の上側を通って経糸方向の浮きを形成し、次いで1本以上の下面側緯糸の下側を通る組織を形成している。
【0042】
下面側経糸の浮きの長さを左右する下面側緯糸本数が下面側緯糸ロングクリンプ長さを左右する経糸本数より少ないという関係が成り立っている。そして、下面側経糸が下面側緯糸を拘束する力は高くなるため、下面側緯糸を下側に押し出す力は増加するのである。さらに押し出す力を有する経糸組織が緯糸ロングクリンプ全体に配置されるので、下面側経糸が全体的に下面側緯糸を下側に押し出し、緯糸ロングクリンプのクリンプ形状が矩形となり、偏摩耗を抑制することが出来るのである。
経糸5本分の緯糸ロングクリンプを有するため耐摩耗性に優れ、且つクリンプ形状が矩形となるため偏摩耗が抑制され、さらに下面側緯糸は連続する経糸3本で強固に織り込まれるため、ワイヤー剛性向上、ガタツキの抑制等に優れた織物であるといえる。
【0043】
(実施形態5)
図15は本発明に係る織物の実施形態5の完全組織を示す意匠図である。図16は図15の意匠図の経糸の組3、4、5に沿った断面図、図17は図15の意匠図の緯糸5'に沿った断面図を示したものである。この織物は経糸接結の組5組、経糸の組5組によって完全組織が構成されており、経糸接結の組は2本の経糸接結糸よりなる。
上面側層は経糸が1本の上面側緯糸の上側を通り、次いで1本の上面側緯糸の下側を通る平織組織であり、上面側緯糸と下面側緯糸の配置割合は2:1である。
図15の意匠図において、経糸2,4,6,8,10は2本の経糸接結糸からなる接結糸の組であり、経糸1,3,5,7,9は上面側経糸、下面側経糸からなる経糸の組であり、10シャフトの織物である。下面側層を構成する下面側緯糸は、連続する3本の下面側経糸の上側を通り、次いで7本の下面側経糸の下側を通る組織であり、隣接配置する下面側緯糸を経糸3本分シフトすることで下面側層の完全組織が形成される。下面側経糸は1本の下面側緯糸の下側、次いで2本または3本の下面側緯糸の上側を通って経糸方向の浮きを形成し、次いで1本の下面側緯糸の下側を通る組織を形成している。
【0044】
下面側経糸の浮きの長さを左右する下面側緯糸本数が下面側緯糸ロングクリンプ長さを左右する経糸本数より少ないという関係が成り立っている。そして、下面側経糸が下面側緯糸を拘束する力は高くなるため、下面側緯糸を下側に押し出す力は増加するのである。さらに押し出す力を有する経糸組織が緯糸ロングクリンプ全体に配置されるので、下面側経糸が全体的に下面側緯糸を下側に押し出し、緯糸ロングクリンプのクリンプ形状が矩形となり、偏摩耗を抑制することが出来るのである。
経糸7本分の緯糸ロングクリンプを有するため耐摩耗性に優れ、且つクリンプ形状が矩形となるため偏摩耗が抑制され、さらに下面側緯糸は連続する経糸3本で強固に織り込まれるため、ワイヤー剛性向上、ガタツキの抑制等に優れた織物であるといえる。
【0045】
(実施形態6)
図18は本発明に係る織物の実施形態6の完全組織を示す意匠図である。図19は図18の意匠図の経糸の組3、4、5に沿った断面図、図20は図18の意匠図の緯糸5'に沿った断面図を示したものである。この織物は経糸接結の組5組、経糸の組5組によって完全組織が構成されており、経糸接結の組は2本の経糸接結糸よりなる。
上面側層は経糸が1本の上面側緯糸の上側を通り、次いで1本の上面側緯糸の下側を通る平織組織であり、上面側緯糸と下面側緯糸の配置割合は1:1である。
図18の意匠図において、経糸2,4,6,8,10は2本の経糸接結糸からなる接結糸の組であり、経糸1,3,5,7,9は上面側経糸、下面側経糸からなる経糸の組であり、10シャフトの織物である。下面側層を構成する下面側緯糸は、連続する3本の下面側経糸の上側を通り、次いで7本の下面側経糸の下側を通る組織であり、隣接配置する下面側緯糸を経糸3本分シフト次いで4本分シフトすることで下面側層の完全組織が形成される。下面側経糸は1本の下面側緯糸の下側、次いで2本または4本の下面側緯糸の上側を通って経糸方向の浮きを形成し、次いで1本の下面側緯糸の下側を通る組織を形成している。
【0046】
下面側経糸の浮きの長さを左右する下面側緯糸本数が下面側緯糸ロングクリンプ長さを左右する経糸本数より少ないという関係が成り立っている。そして、下面側経糸が下面側緯糸を拘束する力は高くなるため、下面側緯糸を下側に押し出す力は増加するのである。さらに押し出す力を有する経糸組織が緯糸ロングクリンプ全体に配置されるので、下面側経糸が全体的に下面側緯糸を下側に押し出し、緯糸ロングクリンプのクリンプ形状が矩形となり、偏摩耗を抑制することが出来るのである。
経糸7本分の緯糸ロングクリンプを有するため耐摩耗性に優れ、且つクリンプ形状が矩形となるため偏摩耗が抑制され、さらに下面側緯糸は連続する経糸3本で強固に織り込まれるため、ワイヤー剛性向上、ガタツキの抑制等に優れた織物であるといえる。
【0047】
(実施形態7)
図21は本発明に係る織物の実施形態7の完全組織を示す意匠図である。図22は図21の意匠図の経糸の組3、4、5に沿った断面図、図23は図21の意匠図の緯糸5'に沿った断面図を示したものである。この織物は経糸接結の組5組、経糸の組5組によって完全組織が構成されており、経糸接結の組は2本の経糸接結糸よりなる。
上面側層は経糸が1本の上面側緯糸の上側を通り、次いで1本の上面側緯糸の下側を通る平織組織であり、上面側緯糸と下面側緯糸の配置割合は1:1である。
図21の意匠図において、経糸2,4,6,8,10は2本の経糸接結糸からなる接結糸の組であり、経糸1,3,5,7,9は上面側経糸、下面側経糸からなる経糸の組であり、10シャフトの織物である。下面側層を構成する下面側緯糸は、連続する3本の下面側経糸の上側を通り、次いで7本の下面側経糸の下側を通る組織であり、隣接配置する下面側緯糸を経糸1本分シフト次いで6本分シフトすることで下面側層の完全組織が形成される。下面側経糸は1本以上の下面側緯糸の下側、次いで2本または4本の下面側緯糸の上側を通って経糸方向の浮きを形成し、次いで1本以上の下面側緯糸の下側を通る組織を形成している。
【0048】
下面側経糸の浮きの長さを左右する下面側緯糸本数が下面側緯糸ロングクリンプ長さを左右する経糸本数より少ないという関係が成り立っている。そして、下面側経糸が下面側緯糸を拘束する力は高くなるため、下面側緯糸を下側に押し出す力は増加するのである。さらに押し出す力を有する経糸組織が緯糸ロングクリンプ全体に配置されるので、下面側経糸が全体的に下面側緯糸を下側に押し出し、緯糸ロングクリンプのクリンプ形状が矩形となり、偏摩耗を抑制することが出来るのである。
経糸7本分の緯糸ロングクリンプを有するため耐摩耗性に優れ、且つクリンプ形状が矩形となるため偏摩耗が抑制され、さらに下面側緯糸は連続する経糸3本で強固に織り込まれるため、ワイヤー剛性向上、ガタツキの抑制等に優れた織物であるといえる。
【0049】
(実施形態8)
図24は本発明に係る織物の実施形態8の完全組織を示す意匠図である。図25は図24の意匠図の経糸の組4、5、6に沿った断面図、図26は図24の意匠図の緯糸7'に沿った断面図を示したものである。この織物は経糸接結の組4組、経糸の組8組によって完全組織が構成されており、経糸接結の組は2本の経地糸接結糸よりなる。
上面側層は経糸が1本の上面側緯糸の上側を通り、次いで3本の上面側緯糸の下側を通る1/3組織であり、それを変則的にシフトさせ、朱子織組織を形成している。上面側緯糸と下面側緯糸の配置割合は2:1である。
図24の意匠図において、経糸1,4,7,10は2本の経糸接結糸からなる接結糸の組であり、経糸2,3,5,6,8,9,11,12は上面側経糸、下面側経糸からなる経糸の組であり、12シャフトの織物である。下面側層を構成する下面側緯糸は、連続する3本の下面側経糸の上側を通り、次いで9本の下面側経糸の下側を通る組織であり、隣接配置する下面側緯糸を経糸3本分シフトすることで下面側層の完全組織が形成される。下面側経糸は1本の下面側緯糸の下側、次いで3本の下面側緯糸の上側を通って経糸方向の浮きを形成し、次いで1本の下面側緯糸の下側を通る組織を形成している。
【0050】
下面側経糸の浮きの長さを左右する下面側緯糸本数が下面側緯糸ロングクリンプ長さを左右する経糸本数より少ないという関係が成り立っている。そして、下面側経糸が下面側緯糸を拘束する力は高くなるため、下面側緯糸を下側に押し出す力は増加するのである。さらに押し出す力を有する経糸組織が緯糸ロングクリンプ全体に配置されるので、下面側経糸が全体的に下面側緯糸を下側に押し出し、緯糸ロングクリンプのクリンプ形状が矩形となり、偏摩耗を抑制することが出来るのである。
経糸9本分の緯糸ロングクリンプを有するため耐摩耗性に優れ、且つクリンプ形状が矩形となるため偏摩耗が抑制され、さらに下面側緯糸は連続する経糸3本で強固に織り込まれるため、ワイヤー剛性向上、ガタツキの抑制等に優れた織物であるといえる。
【0051】
(実施形態9)
図27は本発明に係る織物の実施形態8の完全組織を示す意匠図である。図28は図27の意匠図の経糸の組4、5、6に沿った断面図、図29は図27の意匠図の緯糸5'に沿った断面図を示したものである。この織物は経糸接結の組4組、経糸の組8組によって完全組織が構成されており、経糸接結の組は2本の経糸接結糸よりなる。
上面側層は経糸が1本の上面側緯糸の上側を通り、次いで3本の上面側緯糸の下側を通る1/3組織であり、それを変則的にシフトさせ、朱子織組織を形成している。上面側緯糸と下面側緯糸の配置割合は1:1である。
図27の意匠図において、経糸1,4,7,10は2本の経糸接結糸からなる接結糸の組であり、経糸2,3,5,6,8,9,11,12は上面側経糸、下面側経糸からなる経糸の組であり、12シャフトの織物である。下面側層を構成する下面側緯糸は、連続する3本の下面側経糸の上側を通り、次いで9本の下面側経糸の下側を通る組織であり、隣接配置する下面側緯糸を経糸2本分シフト次いで5本分シフトすることで下面側層の完全組織が形成される。下面側経糸は1本以上の下面側緯糸の下側、次いで2本または6本の下面側緯糸の上側を通って経糸方向の浮きを形成し、次いで1本以上の下面側緯糸の下側を通る組織を形成している。
【0052】
下面側経糸の浮きの長さを左右する下面側緯糸本数が下面側緯糸ロングクリンプ長さを左右する経糸本数より少ないという関係が成り立っている。そして、下面側経糸が下面側緯糸を拘束する力は高くなるため、下面側緯糸を下側に押し出す力は増加するのである。さらに押し出す力を有する経糸組織が緯糸ロングクリンプ全体に配置されるので、下面側経糸が全体的に下面側緯糸を下側に押し出し、緯糸ロングクリンプのクリンプ形状が矩形となり、偏摩耗を抑制することが出来るのである。
経糸9本分の緯糸ロングクリンプを有するため耐摩耗性に優れ、且つクリンプ形状が矩形となるため偏摩耗が抑制され、さらに下面側緯糸は連続する経糸3本で強固に織り込まれるため、ワイヤー剛性向上、ガタツキの抑制等に優れた織物であるといえる。
【0053】
(実施形態10)
図30は本発明に係る織物の実施形態10の完全組織を示す意匠図である。図31は図30の意匠図の経糸の組1、2、3に沿った断面図、図32は図30の意匠図の緯糸13'に沿った断面図を示したものである。前実施形態までは経糸接結糸により上下層を織り合わせているものであったが、この織物は2本組になった緯糸接結糸により織り合わされている。緯糸接結糸は組になって上面側表面に1本の緯糸として機能している。上面側層は緯糸接結糸の組が上面側緯糸2本毎に配置されており、経糸が1本の上面側緯糸、または1組の緯糸接結糸の上を通り、次いで1本の上面側緯糸または1本の緯糸接結糸の下を通る1/1組織からなる平織組織である。緯糸接結糸の下には下面側緯糸は配置されていない。
下面側層を構成する下面側緯糸は、連続する3本の下面側経糸の上側を通り、次いで5本の下面側経糸の下側を通る組織であり、隣接配置する下面側緯糸を経糸1本分シフト次いで4本分シフトすることで下面側層の完全組織が形成される。下面側経糸は1本以上の下面側緯糸の下側、次いで2本または4本の下面側緯糸の上側を通って経糸方向の浮きを形成し、次いで1本以上の下面側緯糸の下側を通る組織を形成している。
【0054】
下面側経糸の浮きの長さを左右する下面側緯糸本数が下面側緯糸ロングクリンプ長さを左右する経糸本数より少ないという関係が成り立っている。そして、下面側経糸が下面側緯糸を拘束する力は高くなるため、下面側緯糸を下側に押し出す力は増加するのである。さらに押し出す力を有する経糸組織が緯糸ロングクリンプ全体に配置されるので、下面側経糸が全体的に下面側緯糸を下側に押し出し、緯糸ロングクリンプのクリンプ形状が矩形となり、偏摩耗を抑制することが出来るのである。
経糸5本分の緯糸ロングクリンプを有するため耐摩耗性に優れ、且つクリンプ形状が矩形となるため偏摩耗が抑制され、さらに下面側緯糸は連続する経糸3本で強固に織り込まれるため、ワイヤー剛性向上、ガタツキの抑制等に優れた織物であるといえる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】従来技術の経糸断面図(1A)、緯糸断面図(1B)を示し、経糸と緯糸の織り合わせ部および緯糸ロングクリンプ形状を示したものである。
【図2】本発明に係る織物の経糸断面図(2A)、緯糸断面図(2B)を示し、経糸と緯糸の織り合わせ部および緯糸ロングクリンプ形状を示したものである。
【図3】本発明に係る実施形態1の工業用二層織物の意匠図である。
【図4】図3の意匠図の経糸の組1、2、3に沿った断面図である。
【図5】図3の意匠図の緯糸3'に沿った断面図である。
【図6】本発明に係る実施形態2の工業用二層織物の意匠図である。
【図7】図6の意匠図の経糸の組1、2、3に沿った断面図である。
【図8】図6の意匠図の緯糸3'に沿った断面図である。
【図9】本発明に係る実施形態3の工業用二層織物の意匠図である。
【図10】図9の意匠図の経糸の組1、2、3に沿った断面図である。
【図11】図9の意匠図の緯糸3'に沿った断面図である。
【図12】本発明に係る実施形態4の工業用二層織物の意匠図である。
【図13】図12の意匠図の経糸の組1、2、3に沿った断面図である。
【図14】図12の意匠図の緯糸3'に沿った断面図である。
【図15】本発明に係る実施形態5の工業用二層織物の意匠図である。
【図16】図15の意匠図の経糸の組3、4、5に沿った断面図である。
【図17】図15の意匠図の緯糸5'に沿った断面図である。
【図18】本発明に係る実施形態6の工業用二層織物の意匠図である。
【図19】図18の意匠図の経糸の組3、4、5に沿った断面図である。
【図20】図18の意匠図の緯糸5'に沿った断面図である。
【図21】本発明に係る実施形態7の工業用二層織物の意匠図である。
【図22】図21の意匠図の経糸の組3、4、5に沿った断面図である。
【図23】図21の意匠図の緯糸5'に沿った断面図である。
【図24】本発明に係る実施形態8の工業用二層織物の意匠図である。
【図25】図24の意匠図の経糸の組4、5、6に沿った断面図である。
【図26】図24の意匠図の緯糸7'に沿った断面図である。
【図27】本発明に係る実施形態9の工業用二層織物の意匠図である。
【図28】図27の意匠図の経糸の組4、5、6に沿った断面図である。
【図29】図27の意匠図の緯糸5'に沿った断面図である。
【図30】本発明に係る実施形態10の工業用二層織物の意匠図である。
【図31】図30の意匠図の経糸の組1、2、3に沿った断面図である。
【図32】図30の意匠図の緯糸13'に沿った断面図である。
【図33】従来例1に係る工業用二層織物の意匠図である。
【図34】図33の意匠図の経糸の組1、2、3に沿った断面図である。
【図35】図33の意匠図の緯糸3'に沿った断面図である。
【符号の説明】
【0056】
u 上面側経糸,上面側緯糸
d 下面側経糸,下面側緯糸
B 経糸接結糸,緯糸接結糸
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業用二層織物に関し、特に剛性、ろ水性、耐摩耗性、繊維支持性、歩留まりに優れ、長期間使用することのできる工業用二層織物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から工業用織物としては経糸、緯糸で製織した織物が広く使用されており、例えば抄紙用織物や搬送用ベルト、ろ布等その他にも多くの分野で使用されており、用途や使用環境に適した織物特性が要求されている。
中でも織物の網目を利用して原料の脱水等を行う製紙工程で使用される抄紙用織物における要求特性は特に厳しい。かかる織物の要求特性としては、支持される紙に対して織物のワイヤーマークが転写しにくい表面性に優れた織物、また原料に含まれる余分な水分を十分脱水するための脱水性、過酷な環境下においても好適に使用できる程度の剛性、耐摩耗性を持ち合わせたもの、そして良好な紙を製造するために必要な条件を長期間持続することのできる織物が要求されている。
その他にも繊維支持性、製紙の歩留まりの向上、寸法安定性、走行安定性等が要求されている。さらに近年では抄紙マシンが高速化しているため、それに伴い抄紙用織物への要求も一段と厳しいものとなっている。
【0003】
ここで、工業用織物の中でも最も要求が厳しい抄紙用織物について説明すれば、ほとんどの工業用織物の要求とその解決について理解できる。そこで、抄紙用織物を一例に挙げて以下に説明する。
抄紙用織物の上面側層は製紙原料の供給面となるため、緻密で繊維支持性、表面平滑性に優れたものが好ましい。一方、下面側層は特にマシンのロール接触面となるため耐摩耗性、剛性、そしてろ水性に優れたものが好ましい。上面側層は組織を乱すことなく一定のパターンが繰り返されたものが良いとされているのであるが、下面側層組織は未だ検討段階である。
実際に下面側層組織には様々なものがある。例えば特許文献1に示されている織物は、畝織組織の欠点であった下面側緯糸をロングクリンプとすることで、耐摩耗性を改善させるものである。畝織組織のように隣接する2本の経糸は同じ組織であるが、経糸が1本の下面側緯糸の下側、そして隣接する複数本の下面側緯糸の上側を通る組織であるため、下面側緯糸の浮きを長くすることができる。
【0004】
しかし、この織物は畝織組織に比べ織り合わせ箇所が減少するので剛性が低下し、また下面側緯糸のクリンプが長すぎて緯糸のガタツキが生じてしまい、緯糸の摩耗体積はあるものの使用寿命が大きく向上することはなかった。
さらに剛性を改善した織物が特許文献2に示されている。下面側経糸が右隣の経糸に、そして左隣の経糸に交互に寄り合ってジグザグに配置されているため剛性は改善されたが、クリンプの長さは長く緯糸のガタツキは解消されず、織物の厚みが増加する欠点が生じてしまった。
【0005】
そこで、剛性を確保しつつ適当な長さのクリンプとした織物が考えられた。特許文献3中における図9に示されているが、8シャフト組織において下面側緯糸を1本の下面側経糸の上側、次いで下側、次いで上側を通り、その後連続する5本の下面側経糸の下側を通る組織とした。かかる組織であれば織り込み部分が増えるため剛性に優れ、それに伴い緯糸のガタツキもなくなり、耐摩耗性にも優れた織物となる。
しかし、この下面側緯糸を経糸3本ずつシフトして形成される織物の下面側経糸は、1本の下面側緯糸の下側、次いで上側、次いで下側を通る組織となるため、下面側経糸が1本の下面側緯糸の上側を通る部分で下面側緯糸が裏面側に押し出されて、この部分だけが先行して摩耗し、その後摩耗切断により使用することができなくなる。すなわち、この織物は剛性に優れ、ガタツキのない組織とすることができたが、部分的な摩耗が生じて良好な耐摩耗性を得ることはできなかった。また、部分的突出により網厚が増加し、ろ水性、脱水性に影響を与えるため、好適に使用できなかった。
【0006】
このように、要求の厳しい抄紙用織物を満足させる織物は未だ開発されていなかった。
【特許文献1】特開2006−152462号公報
【特許文献2】特開2006−57217号公報
【特許文献3】特開2001−355191号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の工業用二層織物は、剛性、耐摩耗性のある下面側緯糸組織を用いることで、網厚が薄く、部分的な偏摩耗がない、剛性、ろ水性、繊維支持性等に優れた工業用織物を提供しようするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
「(1)上面側経糸と上面側緯糸によって製織された上面側層と、下面側経糸と下面側緯糸によって製織された下面側層からなり、上面側層と下面側層を接結糸で接結してなる工業用二層織物において、前記下面側緯糸は、連続する3本の下面側経糸の上側を通り、次いで残りの複数本の下面側経糸の下側を通り下面側緯糸ロングクリンプを形成する組織であり、且つ隣接配置する下面側緯糸は経糸3本分シフト、または経糸4本分シフト、または経糸5本分シフト、または経糸1本分シフトし次いで4本分シフト、または経糸3本分シフトし次いで4本分シフト、または経糸2本分シフトし次いで5本分、または経糸1本分シフトし次いで6本分シフト、または経糸1本分シフトし次いで4本分シフト次いで経糸5本分シフトし次いで4本分シフト、のいずれか一から選択される順にシフトパターンを繰り返して下面側層における完全組織を形成し、下面側層に形成される前記下面側緯糸ロングクリンプのクリンプ形状が矩形となることを特徴とした、工業用二層織物。
(2)前記下面側経糸が1本以上の下面側緯糸の下側、次いで複数本の下面側緯糸の上側を通って経糸方向の浮きを形成し、次いで1本以上の下面側緯糸の下側を通る組織を形成することを特徴とする、上記(1)に記載の工業用二層織物。
(3)前記経糸方向の浮きの長さを左右する下面側緯糸本数が、下面側緯糸ロングクリンプの長さを左右する経糸本数よりも少ないことを特徴とする、上記(2)に記載の工業用二層織物。
(4)上面側層と下面側層を接結する前記接結糸が、1本または2本組になった経糸接結糸、もしくは1本または2本組になった緯糸接結糸である、上記(1)乃至(3)のいずれか一に記載の工業用二層織物。」
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の工業用織物は、網厚が薄く、剛性、耐摩耗性に優れ、部分的な偏摩耗がなく、ろ水性、繊維支持性等に優れた織物とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、上面側経糸と上面側緯糸によって製織された上面側層と、下面側経糸と下面側緯糸によって製織された下面側層からなり、上面側層と下面側層を接結糸で接結してなる工業用二層織物において、下面側緯糸は連続する3本の下面側経糸の上側を通り、次いで残りの複数本の下面側経糸の下側を通りロングクリンプを形成する組織である。
さらに本発明は、織物の下面側層における下面側緯糸のクリンプ形状が矩形となる点に特徴を有する。かかる構造を形成するため、隣接配置する下面側緯糸は、以下の8種類のシフトパターンの中から選択される。
【0011】
1.経糸3本分シフトのみを繰り返すシフトパターン
2.経糸4本分シフトのみを繰り返すシフトパターン
3.経糸5本分シフトのみを繰り返すシフトパターン。
4.経糸1本分シフトし次いで4本分シフトを繰り返すシフトパターン
5.経糸3本分シフトし次いで4本分シフトを繰り返すシフトパターン
6.経糸2本分シフトし次いで5本分を繰り返すシフトパターン
7.経糸1本分シフトし次いで6本分シフトを繰り返すシフトパターン
8.経糸1本分シフトし次いで4本分シフト次いで経糸5本分シフトし次いで4本 分シフトを繰り返すシフトパターン
【0012】
また、本発明の発明者は、緯糸のガタツキはクリンプ長さだけに影響するものでないことを見出し、長いクリンプの緯糸であってもガタツキのない組織を創作した。このような構成によって、多シャフトの織物であっても同等の効果を得ることができる。
従来技術の中で剛性を確保しつつ耐摩耗性に優れた組織の1つとして、下面側層において下面側経糸が1本の下面側緯糸の下側、次いで上側、次いで下側を通る箇所および下面側緯糸が1本の下面側経糸の上側、次いで下側、次いで上側を通り、次いで残りの複数本の下面側経糸の下側を通りクリンプを形成する組織がある。この組織は、下面側に緯糸ロングクリンプを形成するため耐摩耗性に優れ、且つ経糸および緯糸共に織り込む力が強く働くことから、剛性は向上し、緯糸のガタツキも抑制され、網厚は薄くなるため良好であった。
【0013】
しかし、この組織の下面側経糸における、1本の下面側緯糸の下側、次いで上側、次いで下側を通る部分において、下面側経糸が下面側緯糸の下側を通っている部分では下面側緯糸を上側に持ち上げ、逆に下面側経糸が下面側緯糸の上側を通っている部分では下面側緯糸を下側に押し出すような力が生じている。このため、特に下面側経糸が3本の下面側緯糸の下側、上側、下側の順に通る箇所では、その織り合わせ部の下面側緯糸は両側では持ち上げられ、その影響で中央の下面側緯糸は下側に押し出される傾向にある。
そして押し出されたところが、下面側緯糸ロングクリンプの一部(特に中央部)長期間に渡って好適に使用出来る織物組織を発明したのである。
【0014】
従来技術においては、下面側緯糸は1本の下面側経糸の上側を通り、次いで1本の下面側経糸の下側を通り、次いで1本の下面側経糸の上側を通り、次いで残りの複数本の下面側経糸の下側を通る組織であり、且つ隣接配置する下面側緯糸は経糸5本分シフトして下面側層の完全組織を形成する例が知られている。これにより、下面側経糸は1本の下面側緯糸の下側、次いで上側、次いで下側を通り、次いで残りの複数本の下面側緯糸の上側を通る組織を形成する。
つまり、下面側緯糸は下面側層の下側(マシン接触面側)に下面側経糸の下側を通った本数分の緯糸ロングクリンプを形成しており、同時に下面側経糸は下面側層の上側(上面側層との接触面)に下面側緯糸の上側を通った本数分の経糸方向の浮きを形成する。そして、従来技術における組織では、下面側緯糸ロングクリンプ長さを左右する経糸本数と下面側経糸の浮きの長さを左右する緯糸本数が同じであり、これが緯糸のクリンプ形状に影響を与えるという問題点を本発明の発明者は種々の織物を比較検討した上で見出した。
【0015】
ここで、下面側緯糸クリンプとは、下面側緯糸が複数本の経糸(下面側経糸および経糸接結糸)の下側を通ることで下面側層の下側(マシン接触面側)に形成される緯糸の突出を指し、この突出を長く(ロングクリンプ)することで、緯糸の摩耗体積が増加するため、ワイヤーの耐摩耗性が向上するのである。下面側緯糸クリンプ長さを左右する経糸本数とは、下面側層の下側(マシン接触面側)に形成される緯糸の突出を形成する際に、下面側緯糸が通った経糸本数のことを示している。例えば、従来技術において10シャフト組織であれば、経糸7本分の緯糸ロングクリンプが形成されるので、下面側緯糸クリンプ長さを左右する経糸本数は7本となる。
下面側経糸の浮きとは、下面側経糸が下面側緯糸の上側を通ることで下面側層の上側(上面側層との接触面)に形成される経糸の突出を指し、この突出を短くすることで下面側緯糸の拘束力が増加するのである。経糸方向の浮きの長さを左右する下面側緯糸本数とは、下面側層の上側(上面側層との接触面)に形成される経糸の突出を形成する際に、下面側経糸が通った緯糸本数のことを示している。
【0016】
本発明の下面側緯糸は3本の下面側経糸の上側を通り、次いで残りの複数本の下面側経糸の下側を通りロングクリンプを形成する組織であり、隣接配置する下面側緯糸は経糸3本分シフト、または経糸4本分シフト、または経糸5本分シフト、または経糸1本分シフトし次いで4本分シフト、または経糸3本分シフトし次いで4本分シフト、または経糸2本分シフトし次いで5本分、または経糸1本分シフトし次いで6本分シフト、または経糸1本分シフトし次いで4本分シフト次いで経糸5本分シフトし次いで4本分シフトのいずれか一から選択される順にシフトパターンを繰り返して下面側層における完全組織を形成している。
【0017】
これにより、下面側経糸は1本以上の下面側緯糸の下側、次いでその隣の1本以上の下面側緯糸の上側、次いでその隣の1本以上の下面側緯糸の下側を通り、次いで残りの下面側緯糸の上側を通る部分を有する組織を形成する。
この組織は従来技術と同等の組織である。しかし、本発明の組織は従来技術の織物と下面側緯糸の組織が異なっている。故に、下面側経糸が下面側緯糸を織り込む箇所が増加するため、下面側経糸の浮きの長さを左右する下面側緯糸本数が減少し、下面側層の上側に形成する経糸方向の浮きの長さは短くなる。つまり、下面側経糸の浮きの長さを左右する下面側緯糸本数が下面側緯糸ロングクリンプ長さを左右する経糸本数より少ないという関係が成り立つ。
この下面側経糸が形成する、経糸方向の浮きの長さが短くなることで、下面側経糸が下面側緯糸を拘束する力は高くなる。このため、従来技術の経糸方向の浮きが長い場合に比べ、本発明の下面側経糸が下面側緯糸を下側に押し出す力は増加するのである。
【0018】
従来技術と本発明の構造、特徴、効果の比較について、図1及び図2を参照して説明する。図1には従来技術における経糸断面図1A、緯糸断面図1Bを示し、図2には本発明に係る織物の経糸断面図2A、緯糸断面図2Bを示した。
図中のIは下層面側の上側(上層との接触面)、IIは下層面側の下側(マシン接触
面側)を示し、矢印は経糸が緯糸を押し出す力およびその方向を示している。
従来技術においては、下面側経糸が形成する、1本の下面側緯糸の下側、次いで上側、次いで下側を通る部分(A)において、織り合わせ部の下面側緯糸は両側では持ち上げられ、その影響で中央の下面側緯糸2は下側に(図の矢印の方向)押し出される傾向にある。その押し出される部分が下面側緯糸ロングクリンプの一部(A')のみ(特にクリンプ中央部)であった。クリンプの一部を突出させるクリンプ中央部にある下面側経糸以外の他の下面側経糸(B')には、下面側緯糸を押し出す程の十分な拘束力はないため、下面側緯糸ロングクリンプにかかる押し出す力がロングクリンプの一部に一極集中することによって、部分的突出(C)を生じさせていたのである。
【0019】
一方、本発明に係る織物においても下面側経糸が形成する、1本の下面側緯糸の下側、次いで上側、次いで下側を通る部分(D)において、下面側緯糸が下側に押し出される部分が下面側緯糸ロングクリンプの中央(D')に存在するが、図2においては、緯糸ロングクリンプ部の他の経糸(E')も全て緯糸2本分という短い浮きを形成する組織であるため、ロングクリンプ中央にある経糸と同様に、全ての下面側経糸が下面側緯糸を押し出し(図の矢印の方向)、従来技術のように一極集中ではなく全体的に緯糸を押し出す力が働く。
この作用によって、ロングクリンプ形状が部分的な突出の'くの字形'ではなく'矩形'(F)となり、偏摩耗を抑制することが出来るのである。ここで、ロングクリンプ形状の'くの字形'とは、経糸が緯糸を下面側方向へ押し出す力が緯糸ロングクリンプの一部(クリンプの中央であっても、それ以外でもよい)で一極集中することによって生じる部分的に突出した構造を示すものであり、偏摩耗し易い形状である。それに対し、'矩形'とは経糸が緯糸を下面側方向へ押し出す力が緯糸ロングクリンプの全体に働くことによってロングクリンプ全体が突出することいなる。摩耗体積が最も多くなる構造であり、耐摩耗性に優れたロングクリンプ形状となる。
【0020】
多シャフト組織及び下面側緯糸のシフトの仕方によっては、下面側経糸が下面側緯糸1本以上の下側、次いで下面側緯糸1乃至4本の上側、次いで1本以上の下面側緯糸の下側を通る組織となる場合がある。特に押し出される中央の下面側緯糸が1乃至4本であっても同じであり、ロングクリンプ部の全ての経糸が緯糸を押し出す力を有する。
【0021】
その他、本発明の組織では下面側緯糸が3本の下面側経糸の上側を通って下面側緯糸を強力に織り込むことで、剛性が向上し、ガタツキの発生や網厚の増大を抑制することができ、ろ水性の確保も容易にできる。
また、例えば8シャフト組織では、下面側緯糸は3本の下面側経糸によって強力に織り込まれるため、下面側に経糸5本分のロングクリンプ組織が形成され、摩耗体積が増大するため耐摩耗性も向上する。隣接配置する3本の経糸が同時に下面側緯糸を強固に織り込むことにより、ワイヤー剛性の向上、網厚を薄くでき、摩耗体積の増加、下面側緯糸のガタツキ抑制等に優れ、また下面側表面に経糸5本分の緯糸ロングクリンプが形成されるため耐摩耗性を向上させることができる。従来技術における問題点である緯糸の部分的な突出が抑止でき、先行摩耗による製品寿命の低下を防ぐことができる。
また、多シャフトの織物、例えば10シャフト組織では、下面側に経糸7本分のロングクリンプ組織が形成されるため、耐摩耗性に優れた組織となり、隣接配置する3本の経糸が同時に下面側緯糸を強力に織り込むため、網厚を薄くでき、剛性の向上、下面側緯糸のガタツキ抑制等に優れる。
【0022】
上面側層と下面側層を織り合わせて接結する糸としては、1本または2本組になった経糸接結糸、または緯糸接結糸がある。経糸接結糸の場合、上面側層と下面側層を各々形成する上面側経糸と下面側経糸からなる経糸の組以外に、経糸2本の経糸接結糸、1本の上面側経糸と1本の経糸接結糸、1本の下面側経糸と1本の経糸接結糸のいずれかの経糸接結の組を形成することによって接結しているが、上面側層と下面側層を各々形成する上面側経糸と下面側経糸の組以外に、経糸接結糸が単独で配置されてもよい。
また、緯糸接結糸の場合、上面側層と下面側層を各々形成する上面側緯糸と下面側緯糸間に、緯糸2本組の緯糸接結糸、1本の緯糸接結糸が配置されればよい。
【0023】
上面側織物組織に関しては特に限定はなく、平織、綾織り、崩し綾織り、サテン織り等その他織物組織とすればよく、これらによって得られた完全組織を上下左右に繋げて、斜め剛性、走行安定性、耐摩耗性に優れた組織を採用すればよい。複数種類の経糸完全組織で構成される上面側層完全組織であってもよい。また、上面側緯糸間に上面側緯糸よりも線径の小さい補助緯糸を配置しても構わない。
【0024】
本発明に使用される糸は用途によって選択すればよいが、例えば、モノフィラメントの他、マルチフィラメント、スパンヤーン、捲縮加工や嵩高加工等を施した一般的にテクスチャードヤーン、バルキーヤーン、ストレッチヤーンと称される加工糸、あるいはこれらをより合わせるなどして組み合わせた糸が使用できる。また、糸の断面形状も円形だけでなく四角形状や星型等の短形状の糸や楕円形状、中空等の糸が使用できる。また、糸の材質としても、自由に選択でき、ポリエステル、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロ、アラミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンナフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、綿、ウール、金属等が使用できる。もちろん、共重合体やこれらの材質に目的に応じてさまざまな物質をブレンドしたり含有させた糸を使用しても良い。
一般的に抄紙用ワイヤーを構成する糸には剛性があり、寸法安定性に優れるポリエステルモノフィラメントを用いるのが好ましい。また、耐摩耗性が要求される下面側緯糸にはポリエステルモノフィラメントとポリアミドモノフィラメントを交互に配置する等、交織して剛性を確保しつつ耐摩耗性を向上することもできる。
【0025】
織物構成糸の線径については特に限定はないが、緻密で平滑な織物表面とするためには上面側層を構成する上面側経糸、上面側緯糸は比較的線径の小さいものであることが好ましい。また、 マシンやロールの接触面となる下面側表面は剛性や耐摩耗性が必要とされるため、下面側緯糸、下面側経糸は比較的線径の大きい糸である方が好ましい。これらは用途や使用環境、上下緯糸本数の配置比率等を考慮して選択すればよい。
【実施例】
【0026】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。
(実施形態)
図1、図2は上記で説明したとおり、従来技術および本発明の、経糸と緯糸の押し込む力の関係を示した経糸断面図と緯糸ロングクリンプ形状について示した緯糸断面図である。
図3〜32は本発明に係る実施形態であって、意匠図、経糸に沿った断面図、緯糸に沿った断面図を示している。そして、図33は本発明と比較するための従来例の意匠図を示しており、図34は図33の経糸1、2、3に沿った断面図を示し、図35は緯糸3'に沿った断面図を示している。
意匠図とは織物組織の最小の繰り返し単位であって織物の完全組織に相当する。本発明に係る特許請求の範囲に記載されているものがこの完全組織に相当する。かかる完全組織が上下左右につながることによって製品が完成する。
【0027】
上記意匠図において、経糸はアラビア数字、例えば1、2、3・・・で示し、上下緯糸を織り合わせる経糸接結糸はBを付した数字、上面側経糸はuを付した数字、下面側経糸はdを付した数字で表した。意匠図上、同番号の経糸はそれぞれ組を形成していることを示し、例えば、上面側経糸uと経糸接結糸Bで経糸接結糸の組を形成しており、また上面側経糸uと下面側経糸dで上下経糸の組を形成している。
緯糸はダッシュを付したアラビア数字、例えば1'、2'、3'・・・で示し、上面側緯糸と下面側緯糸は上下に配置されているが、配置比率によっては上面側緯糸の下側に下面側緯糸が配置されない場合があるため、上面側緯糸はuを付した数字、下面側緯糸はdを付した数字で示し、例えば1'u、2'd等と示した。
【0028】
意匠図中、×印は上面側経糸uが上面側緯糸の上側に位置していることを示し、□印は下面側経糸dが下面側緯糸の下側に位置していることを示す。●印は経糸接結糸Bが上面側緯糸の上側に位置していることを示し、○印はその経糸接結糸が下面側緯糸の下側に位置していることを示す。そして、◆印も経糸接結糸Bが上面側緯糸の上側に位置していることを示し、◇印はその経糸接結糸が下面側緯糸の下側に位置していることを示す。そして、緯糸接結糸により上面側層と下面側層を接結する場合には、◎印は緯糸接結糸が上面側経糸の上側に位置していることを示し、○印はその緯糸接結糸が下面側経糸の下側に位置していることを示す。
上面経糸と下面側経糸、および上面側緯糸と下面側緯糸は上下に重なって配置されている。意匠図では糸が上下に正確に重なって配置されることになっているが、これは図面の都合上であって実際の織物ではずれて配置されても構わない。
【0029】
(実施形態1)
図3が本発明の実施形態1の完全組織を示す意匠図である。図4は図3の意匠図の経糸の組1、2、3に沿った断面図を示し、図5は図3の意匠図の緯糸3'に沿った断面図を示したものである。この織物は経糸接結の組2組、経糸の組6組によって完全組織が構成されており、経糸接結の組は1本の経糸接結糸と上面側経糸よりなる。
上面側層は経糸が1本の上面側緯糸の上側を通り、次いで1本の上面側緯糸の下側を通る平織組織であり、上面側緯糸と下面側緯糸の配置割合は2:1である。
図3の意匠図において、経糸3,7は経地糸接結糸、上面側経糸からなる接結経糸の組であり、経糸1,2,4,5,6,8は上面側経糸、下面側経糸からなる経糸の組である。下面側層を構成する下面側緯糸は、連続する3本の下面側経糸の上側を通り、次いで5本の下面側経糸の下側を通る組織であり、隣接する下面側緯糸を経糸5本分シフトすることで下面側層の完全組織が形成される。
【0030】
本発明の下面側緯糸は、連続する経糸3本で強固に織り込まれるため、ワイヤー剛性の向上、網厚を薄くでき、摩耗体積の増加、下面側緯糸のガタツキ抑制等に優れ、また下面側表面に経糸5本分の緯糸ロングクリンプが形成されるため耐摩耗性を向上させることができる。
そして、従来例と最も異なる点は、下面側緯糸が裏面側に部分的に突出することがないため、偏摩耗が生じることはないのである。
【0031】
図33〜図35に示してある従来例1と比較して説明する。従来例1の下面側緯糸3'dを例にとると、下面側緯糸3'dは1本の下面側経糸6dの上側、次いで下面側経糸7dの下側、次いで下面側経糸8dの上側を通り、連続する5本の経糸1d、2d、3d、4d、5dの下側を通る組織であり、且つ隣接する下面側緯糸を経糸5本分シフトして下面側層の完全組織を形成している。一方の下面側経糸についても同様に、下面側経糸3dは1本の下面側緯糸1'dの下側、次いで下面側緯糸3'dの上側、次いで下面側緯糸5'dの下側を通り、連続する5本の下面側緯糸7'd、9'd、11'd、13'd、15'dの上側を通る組織である。
【0032】
下面側経糸3dが形成する1本の下面側緯糸の下側、次いで上側、次いで下側を通る部分において、下面側経糸3dが1本の下面側緯糸1'dの下側を通る部分では、下面側緯糸1'dと織り合わされて下面側緯糸1'dを上側に持ち上げる力が働く。同様に、下面側緯糸5'dの下側を通る部分では下面側緯糸5'dと織り合わされて下面側緯糸5'dを上側に持ち上げる力が働く。そして、下面側緯糸3'dの上側を通る部分では下面側緯糸を下側に押し出すような力が働く。下面側緯糸3'dのロングクリンプの一部(ここでは中央部)だけが押し出されることによって、ロングクリンプは部分的に押し出される。
下面側緯糸3'dのロングクリンプ部にある他の経糸1d、2d、4d、5dは、連続する5本の下面側緯糸の上側を通っている。例えば、下面側経糸2dは、下面側緯糸11'dの下側を通り、連続する5本の下面側緯糸13'd、15'd、1'd、3'd、5'dの上側を通り、下面側緯糸7'dの下側を通る組織を形成している。下面側緯糸3'dのクリンプを挟んで下面側経糸2dの経糸方向の浮きが緯糸5本分と長いため下面側緯糸3'dを下側に押し出す程の十分な拘束力はない。そのため、下面側緯糸ロングクリンプの押し出す力が下面側経糸3dの箇所、つまりロングクリンプの中央に一極集中し、下面側緯糸には部分的な突出が生じ、クリンプ形状は 'くの字形'となるのである。これは、下面側緯糸3'd以外の全ての下面側緯糸で生じている。例えば、下面側緯糸1'dでは下面側経糸6dの部分のみ突出してしまうのである。
その結果、下面側緯糸の部分的に突出した箇所が先行摩耗してしまい、長時間好適に使用することが出来ず、さらには摩耗切断して使用できなくなってしまうのである。
【0033】
それに対して本実施形態1では、下面側緯糸3'dを例にとると、下面側緯糸3'は連続する3本の経糸6d、7B、8dの上側を通り、連続する5本の経糸1d、2d、3B、4d、5dの下側を通る組織であり、且つ隣接する下面側緯糸を経糸5本分シフトして下面側層の完全組織を形成している。一方の下面側経糸については、下面側緯糸との織り込む箇所が増加するため、下面側緯糸の上側を通る本数が減少し、下面側層の上側に形成する経糸方向の浮きの長さは短くなっている。下面側経糸1dは1本の下面側緯糸1'dの下側、次いで下面側緯糸3'd、5'dの上側、次いで下面側緯糸7'dの下側を通り、次いで下面側緯糸9'd、11'dの上側、次いで下面側緯糸13'dの下側を通り、次いで下面側緯糸15'dの上側を通る組織となり、この組織の中では経糸方向の浮きの長さは最長で下面側緯糸2本分である。これは、従来例1の経糸方向の浮きの長さが下面側緯糸5本分の組織に比べ短くなっている。この下面側経糸が形成する経糸方向の浮きの長さが短くなることで、下面側経糸が下面側緯糸を拘束する力は高くなる。このため、従来例の経糸方向の浮きが長い場合に比べ、本発明に係る織物の下面側経糸が下面側緯糸を押し出す力は増加するのである。
下面側経糸の浮きの長さを左右する下面側緯糸本数が下面側緯糸ロングクリンプ長さを左右する経糸本数より少ないという関係が成り立っている。
そして、この押し出す力を有する経糸組織を緯糸ロングクリンプ中央以外にも配置することで、下面側経糸が全体的に下面側緯糸を下側に押し出すので、緯糸ロングクリンプのクリンプ形状が矩形となり、偏摩耗を抑制することが出来るのである。
【0034】
本実施例1の下面側緯糸3'dを例にすると、下面側緯糸3'dは連続する3本の下面側経糸6d、7B、8dの上側を通り、連続する5本の経糸1d、2d、3B、4d、5dの下側を通る組織である。経糸3Bは下面側緯糸1'dの下側、次いで下面側緯糸3'dの上側、次いで下面側緯糸5'dの下側を通る組織を形成していることから、下面側緯糸3'dを下面側に押し出す力が働いているのが分かる。これにより、下面側緯糸3'dは突出することになるが、下面側緯糸3'dと織り合わせて緯糸ロングクリンプを形成する他の経糸1d、2d、4d、5dでも下面側緯糸3'dを下面側に押し出す力が働いているのが分かる。例えば、下面側経糸2dは、下面側緯糸1'dの下側を通り、次いで連続する2本の下面側緯糸3'd、5'dの上側、次いで下面側緯糸7'dの下側、次いで下面側緯糸9'dの上側、次いで下面側緯糸11'dの下側、次いで下面側緯糸13'd、15'dの上側を通る組織であり、その内の下面側緯糸1'dの下側を通り、次いで連続する2本の下面側緯糸3'd、5'dの上側、次いで下面側緯糸7'dの下側を通る箇所では、経糸方向の浮きの長さが下面側緯糸3'd、5'dの2本分であり、経糸方向の浮きの長さが短いため下面側に押し出す力を有する組織である。
【0035】
また、他の下面側経糸1d、4d、5dについても同様に下面側緯糸3'dを下面側に押し出す力が働いている。これにより、下面側緯糸3'dの緯糸ロングクリンプは一極集中で押し出されているのではなく全体的に下面側に押し出される。そのためクリンプ形状が局部的な突出の'くの字形'ではなく'矩形'となり、偏摩耗を抑制することが出来るのである。
このように、下面側緯糸ロングクリンプを形成しているため、耐摩耗性に良好で、且つロングクリンプにおいて下面側緯糸を全体的に押し出す力が働くので、クリンプ形状が矩形となり、偏摩耗を抑制することが出来る。
さらには、本発明に係る織物の下面側緯糸は、連続する経糸3本で強固に織り込まれるため、ワイヤー剛性の向上、網厚を薄くでき、摩耗体積の増加、下面側緯糸のガタツキ抑制等に優れた織物とすることができる。
【0036】
また、上面側組織は、上面側緯糸が1本の上面側経糸の上側を通った後、1本の上面側経糸の下側を通る平織組織であるため、剛性、表面平滑性、繊維支持性等に優れた織物となる。
よって、本実施形態1は剛性、耐摩耗性、表面平滑性、繊維支持性、ろ水性に優れ、緯糸のガタツキも少ない優れた織物である。
【0037】
(実施形態2)
図6は本発明に係る織物の実施形態2の完全組織を示す意匠図である。図7は図6の意匠図の経糸の組1、2、3に沿った断面図、図8は図6の意匠図の緯糸3'に沿った断面図を示したものである。この織物は経糸接結の組2組、経糸の組6組によって完全組織が構成されており、経糸接結の組は2本の経糸接結糸よりなる。
上面側層は経糸が1本の上面側緯糸の上側を通り、次いで1本の上面側緯糸の下側を通る平織組織であり、上面側緯糸と下面側緯糸の配置割合は2:1である。
図6の意匠図において、経糸3,7は2本の経糸接結糸からなる接結糸の組であり、経糸1,2,4,5,6,8は上面側経糸、下面側経糸からなる経糸の組である。下面側層を構成する下面側緯糸は、連続する3本の下面側経糸の上側を通り、次いで5本の下面側経糸の下側を通る組織であり、隣接配置する下面側緯糸を経糸1本分シフトし次いで4本分シフト次いで経糸5本分シフトし次いで4本分シフトすることで下面側層の完全組織が形成される。
下面側経糸は1本以上の下面側緯糸の下側、次いで1本または3本の下面側緯糸の上側を通って経糸方向の浮きを形成し、次いで1本以上の下面側緯糸の下側を通る組織を形成している。
【0038】
下面側経糸の浮きの長さを左右する下面側緯糸本数が下面側緯糸ロングクリンプ長さを左右する経糸本数より少ないという関係が成り立っている。そして、下面側経糸が下面側緯糸を拘束する力は高くなるため、下面側緯糸を下側に押し出す力は増加するのである。さらに押し出す力を有する経糸組織が緯糸ロングクリンプ全体に配置されるので、下面側経糸が全体的に下面側緯糸を下側に押し出し、緯糸ロングクリンプのクリンプ形状が矩形となり、偏摩耗を抑制することが出来るのである。
経糸5本分の緯糸ロングクリンプを有するため耐摩耗性に優れ、且つクリンプ形状が矩形となるため偏摩耗が抑制され、さらに下面側緯糸は連続する経糸3本で強固に織り込まれるため、ワイヤー剛性向上、ガタツキの抑制等に優れた織物であるといえる。
【0039】
(実施形態3)
図9は本発明に係る織物の実施形態3の完全組織を示す意匠図である。図10は図9の意匠図の経糸の組1、2、3に沿った断面図、図11は図9の意匠図の緯糸3'に沿った断面図を示したものである。この織物は経糸接結の組2組、経糸の組6組によって完全組織が構成されており、経糸接結の組は1本の経糸接結糸と1本の下面側経糸よりなる。
上面側層は経糸が1本の上面側緯糸の上側を通り、次いで3本の上面側緯糸の下側を通る1/3組織であり、それを変則的にシフトさせ、朱子織組織を形成している。上面側緯糸と下面側緯糸の配置割合は2:1である。
図9の意匠図において、経糸2,6は1本の経糸接結糸と1本の下面側経糸からなる接結糸の組であり、経糸1,3,4,5,7,8は上面側経糸、下面側経糸からなる経糸の組である。下面側層を構成する下面側緯糸は、連続する3本の下面側経糸の上側を通り、次いで5本の下面側経糸の下側を通る組織であり、隣接配置する下面側緯糸を経糸1本分シフトし次いで4本分シフトすることで下面側層の完全組織が形成される。下面側経糸は1本以上の下面側緯糸の下側、次いで2本または4本の下面側緯糸の上側を通って経糸方向の浮きを形成し、次いで1本以上の下面側緯糸の下側を通る組織を形成している。
【0040】
下面側経糸の浮きの長さを左右する下面側緯糸本数が下面側緯糸ロングクリンプ長さを左右する経糸本数より少ないという関係が成り立っている。そして、下面側経糸が下面側緯糸を拘束する力は高くなるため、下面側緯糸を下側に押し出す力は増加するのである。さらに押し出す力を有する経糸組織が緯糸ロングクリンプ全体に配置されるので、下面側経糸が全体的に下面側緯糸を下側に押し出し、緯糸ロングクリンプのクリンプ形状が矩形となり、偏摩耗を抑制することが出来るのである。
経糸5本分の緯糸ロングクリンプを有するため耐摩耗性に優れ、且つクリンプ形状が矩形となるため偏摩耗が抑制され、さらに下面側緯糸は連続する経糸3本で強固に織り込まれるため、ワイヤー剛性向上、ガタツキの抑制等に優れた織物であるといえる。
【0041】
(実施形態4)
図12は本発明に係る織物の実施形態4の完全組織を示す意匠図である。図13は図12の意匠図の経糸の組1、2、3に沿った断面図、図14は図12の意匠図の緯糸3'に沿った断面図を示したものである。この織物は経糸接結の組4組、経糸の組4組によって完全組織が構成されており、経糸接結の組は2本の経糸接結糸よりなる。
上面側層は経糸が1本の上面側緯糸の上側を通り、次いで1本の上面側緯糸の下側を通る平織組織であり、上面側緯糸と下面側緯糸の配置割合は1:1である。
図12の意匠図において、経糸2,4,6,8は2本の経糸接結糸からなる接結糸の組であり、経糸1,3,5,7は上面側経糸、下面側経糸からなる経糸の組である。下面側層を構成する下面側緯糸は、連続する3本の下面側経糸の上側を通り、次いで5本の下面側経糸の下側を通る組織であり、隣接配置する下面側緯糸を経糸3本分シフトし次いで4本分シフトすることで下面側層の完全組織が形成される。下面側経糸は1本以上の下面側緯糸の下側、次いで1本または2本または4本の下面側緯糸の上側を通って経糸方向の浮きを形成し、次いで1本以上の下面側緯糸の下側を通る組織を形成している。
【0042】
下面側経糸の浮きの長さを左右する下面側緯糸本数が下面側緯糸ロングクリンプ長さを左右する経糸本数より少ないという関係が成り立っている。そして、下面側経糸が下面側緯糸を拘束する力は高くなるため、下面側緯糸を下側に押し出す力は増加するのである。さらに押し出す力を有する経糸組織が緯糸ロングクリンプ全体に配置されるので、下面側経糸が全体的に下面側緯糸を下側に押し出し、緯糸ロングクリンプのクリンプ形状が矩形となり、偏摩耗を抑制することが出来るのである。
経糸5本分の緯糸ロングクリンプを有するため耐摩耗性に優れ、且つクリンプ形状が矩形となるため偏摩耗が抑制され、さらに下面側緯糸は連続する経糸3本で強固に織り込まれるため、ワイヤー剛性向上、ガタツキの抑制等に優れた織物であるといえる。
【0043】
(実施形態5)
図15は本発明に係る織物の実施形態5の完全組織を示す意匠図である。図16は図15の意匠図の経糸の組3、4、5に沿った断面図、図17は図15の意匠図の緯糸5'に沿った断面図を示したものである。この織物は経糸接結の組5組、経糸の組5組によって完全組織が構成されており、経糸接結の組は2本の経糸接結糸よりなる。
上面側層は経糸が1本の上面側緯糸の上側を通り、次いで1本の上面側緯糸の下側を通る平織組織であり、上面側緯糸と下面側緯糸の配置割合は2:1である。
図15の意匠図において、経糸2,4,6,8,10は2本の経糸接結糸からなる接結糸の組であり、経糸1,3,5,7,9は上面側経糸、下面側経糸からなる経糸の組であり、10シャフトの織物である。下面側層を構成する下面側緯糸は、連続する3本の下面側経糸の上側を通り、次いで7本の下面側経糸の下側を通る組織であり、隣接配置する下面側緯糸を経糸3本分シフトすることで下面側層の完全組織が形成される。下面側経糸は1本の下面側緯糸の下側、次いで2本または3本の下面側緯糸の上側を通って経糸方向の浮きを形成し、次いで1本の下面側緯糸の下側を通る組織を形成している。
【0044】
下面側経糸の浮きの長さを左右する下面側緯糸本数が下面側緯糸ロングクリンプ長さを左右する経糸本数より少ないという関係が成り立っている。そして、下面側経糸が下面側緯糸を拘束する力は高くなるため、下面側緯糸を下側に押し出す力は増加するのである。さらに押し出す力を有する経糸組織が緯糸ロングクリンプ全体に配置されるので、下面側経糸が全体的に下面側緯糸を下側に押し出し、緯糸ロングクリンプのクリンプ形状が矩形となり、偏摩耗を抑制することが出来るのである。
経糸7本分の緯糸ロングクリンプを有するため耐摩耗性に優れ、且つクリンプ形状が矩形となるため偏摩耗が抑制され、さらに下面側緯糸は連続する経糸3本で強固に織り込まれるため、ワイヤー剛性向上、ガタツキの抑制等に優れた織物であるといえる。
【0045】
(実施形態6)
図18は本発明に係る織物の実施形態6の完全組織を示す意匠図である。図19は図18の意匠図の経糸の組3、4、5に沿った断面図、図20は図18の意匠図の緯糸5'に沿った断面図を示したものである。この織物は経糸接結の組5組、経糸の組5組によって完全組織が構成されており、経糸接結の組は2本の経糸接結糸よりなる。
上面側層は経糸が1本の上面側緯糸の上側を通り、次いで1本の上面側緯糸の下側を通る平織組織であり、上面側緯糸と下面側緯糸の配置割合は1:1である。
図18の意匠図において、経糸2,4,6,8,10は2本の経糸接結糸からなる接結糸の組であり、経糸1,3,5,7,9は上面側経糸、下面側経糸からなる経糸の組であり、10シャフトの織物である。下面側層を構成する下面側緯糸は、連続する3本の下面側経糸の上側を通り、次いで7本の下面側経糸の下側を通る組織であり、隣接配置する下面側緯糸を経糸3本分シフト次いで4本分シフトすることで下面側層の完全組織が形成される。下面側経糸は1本の下面側緯糸の下側、次いで2本または4本の下面側緯糸の上側を通って経糸方向の浮きを形成し、次いで1本の下面側緯糸の下側を通る組織を形成している。
【0046】
下面側経糸の浮きの長さを左右する下面側緯糸本数が下面側緯糸ロングクリンプ長さを左右する経糸本数より少ないという関係が成り立っている。そして、下面側経糸が下面側緯糸を拘束する力は高くなるため、下面側緯糸を下側に押し出す力は増加するのである。さらに押し出す力を有する経糸組織が緯糸ロングクリンプ全体に配置されるので、下面側経糸が全体的に下面側緯糸を下側に押し出し、緯糸ロングクリンプのクリンプ形状が矩形となり、偏摩耗を抑制することが出来るのである。
経糸7本分の緯糸ロングクリンプを有するため耐摩耗性に優れ、且つクリンプ形状が矩形となるため偏摩耗が抑制され、さらに下面側緯糸は連続する経糸3本で強固に織り込まれるため、ワイヤー剛性向上、ガタツキの抑制等に優れた織物であるといえる。
【0047】
(実施形態7)
図21は本発明に係る織物の実施形態7の完全組織を示す意匠図である。図22は図21の意匠図の経糸の組3、4、5に沿った断面図、図23は図21の意匠図の緯糸5'に沿った断面図を示したものである。この織物は経糸接結の組5組、経糸の組5組によって完全組織が構成されており、経糸接結の組は2本の経糸接結糸よりなる。
上面側層は経糸が1本の上面側緯糸の上側を通り、次いで1本の上面側緯糸の下側を通る平織組織であり、上面側緯糸と下面側緯糸の配置割合は1:1である。
図21の意匠図において、経糸2,4,6,8,10は2本の経糸接結糸からなる接結糸の組であり、経糸1,3,5,7,9は上面側経糸、下面側経糸からなる経糸の組であり、10シャフトの織物である。下面側層を構成する下面側緯糸は、連続する3本の下面側経糸の上側を通り、次いで7本の下面側経糸の下側を通る組織であり、隣接配置する下面側緯糸を経糸1本分シフト次いで6本分シフトすることで下面側層の完全組織が形成される。下面側経糸は1本以上の下面側緯糸の下側、次いで2本または4本の下面側緯糸の上側を通って経糸方向の浮きを形成し、次いで1本以上の下面側緯糸の下側を通る組織を形成している。
【0048】
下面側経糸の浮きの長さを左右する下面側緯糸本数が下面側緯糸ロングクリンプ長さを左右する経糸本数より少ないという関係が成り立っている。そして、下面側経糸が下面側緯糸を拘束する力は高くなるため、下面側緯糸を下側に押し出す力は増加するのである。さらに押し出す力を有する経糸組織が緯糸ロングクリンプ全体に配置されるので、下面側経糸が全体的に下面側緯糸を下側に押し出し、緯糸ロングクリンプのクリンプ形状が矩形となり、偏摩耗を抑制することが出来るのである。
経糸7本分の緯糸ロングクリンプを有するため耐摩耗性に優れ、且つクリンプ形状が矩形となるため偏摩耗が抑制され、さらに下面側緯糸は連続する経糸3本で強固に織り込まれるため、ワイヤー剛性向上、ガタツキの抑制等に優れた織物であるといえる。
【0049】
(実施形態8)
図24は本発明に係る織物の実施形態8の完全組織を示す意匠図である。図25は図24の意匠図の経糸の組4、5、6に沿った断面図、図26は図24の意匠図の緯糸7'に沿った断面図を示したものである。この織物は経糸接結の組4組、経糸の組8組によって完全組織が構成されており、経糸接結の組は2本の経地糸接結糸よりなる。
上面側層は経糸が1本の上面側緯糸の上側を通り、次いで3本の上面側緯糸の下側を通る1/3組織であり、それを変則的にシフトさせ、朱子織組織を形成している。上面側緯糸と下面側緯糸の配置割合は2:1である。
図24の意匠図において、経糸1,4,7,10は2本の経糸接結糸からなる接結糸の組であり、経糸2,3,5,6,8,9,11,12は上面側経糸、下面側経糸からなる経糸の組であり、12シャフトの織物である。下面側層を構成する下面側緯糸は、連続する3本の下面側経糸の上側を通り、次いで9本の下面側経糸の下側を通る組織であり、隣接配置する下面側緯糸を経糸3本分シフトすることで下面側層の完全組織が形成される。下面側経糸は1本の下面側緯糸の下側、次いで3本の下面側緯糸の上側を通って経糸方向の浮きを形成し、次いで1本の下面側緯糸の下側を通る組織を形成している。
【0050】
下面側経糸の浮きの長さを左右する下面側緯糸本数が下面側緯糸ロングクリンプ長さを左右する経糸本数より少ないという関係が成り立っている。そして、下面側経糸が下面側緯糸を拘束する力は高くなるため、下面側緯糸を下側に押し出す力は増加するのである。さらに押し出す力を有する経糸組織が緯糸ロングクリンプ全体に配置されるので、下面側経糸が全体的に下面側緯糸を下側に押し出し、緯糸ロングクリンプのクリンプ形状が矩形となり、偏摩耗を抑制することが出来るのである。
経糸9本分の緯糸ロングクリンプを有するため耐摩耗性に優れ、且つクリンプ形状が矩形となるため偏摩耗が抑制され、さらに下面側緯糸は連続する経糸3本で強固に織り込まれるため、ワイヤー剛性向上、ガタツキの抑制等に優れた織物であるといえる。
【0051】
(実施形態9)
図27は本発明に係る織物の実施形態8の完全組織を示す意匠図である。図28は図27の意匠図の経糸の組4、5、6に沿った断面図、図29は図27の意匠図の緯糸5'に沿った断面図を示したものである。この織物は経糸接結の組4組、経糸の組8組によって完全組織が構成されており、経糸接結の組は2本の経糸接結糸よりなる。
上面側層は経糸が1本の上面側緯糸の上側を通り、次いで3本の上面側緯糸の下側を通る1/3組織であり、それを変則的にシフトさせ、朱子織組織を形成している。上面側緯糸と下面側緯糸の配置割合は1:1である。
図27の意匠図において、経糸1,4,7,10は2本の経糸接結糸からなる接結糸の組であり、経糸2,3,5,6,8,9,11,12は上面側経糸、下面側経糸からなる経糸の組であり、12シャフトの織物である。下面側層を構成する下面側緯糸は、連続する3本の下面側経糸の上側を通り、次いで9本の下面側経糸の下側を通る組織であり、隣接配置する下面側緯糸を経糸2本分シフト次いで5本分シフトすることで下面側層の完全組織が形成される。下面側経糸は1本以上の下面側緯糸の下側、次いで2本または6本の下面側緯糸の上側を通って経糸方向の浮きを形成し、次いで1本以上の下面側緯糸の下側を通る組織を形成している。
【0052】
下面側経糸の浮きの長さを左右する下面側緯糸本数が下面側緯糸ロングクリンプ長さを左右する経糸本数より少ないという関係が成り立っている。そして、下面側経糸が下面側緯糸を拘束する力は高くなるため、下面側緯糸を下側に押し出す力は増加するのである。さらに押し出す力を有する経糸組織が緯糸ロングクリンプ全体に配置されるので、下面側経糸が全体的に下面側緯糸を下側に押し出し、緯糸ロングクリンプのクリンプ形状が矩形となり、偏摩耗を抑制することが出来るのである。
経糸9本分の緯糸ロングクリンプを有するため耐摩耗性に優れ、且つクリンプ形状が矩形となるため偏摩耗が抑制され、さらに下面側緯糸は連続する経糸3本で強固に織り込まれるため、ワイヤー剛性向上、ガタツキの抑制等に優れた織物であるといえる。
【0053】
(実施形態10)
図30は本発明に係る織物の実施形態10の完全組織を示す意匠図である。図31は図30の意匠図の経糸の組1、2、3に沿った断面図、図32は図30の意匠図の緯糸13'に沿った断面図を示したものである。前実施形態までは経糸接結糸により上下層を織り合わせているものであったが、この織物は2本組になった緯糸接結糸により織り合わされている。緯糸接結糸は組になって上面側表面に1本の緯糸として機能している。上面側層は緯糸接結糸の組が上面側緯糸2本毎に配置されており、経糸が1本の上面側緯糸、または1組の緯糸接結糸の上を通り、次いで1本の上面側緯糸または1本の緯糸接結糸の下を通る1/1組織からなる平織組織である。緯糸接結糸の下には下面側緯糸は配置されていない。
下面側層を構成する下面側緯糸は、連続する3本の下面側経糸の上側を通り、次いで5本の下面側経糸の下側を通る組織であり、隣接配置する下面側緯糸を経糸1本分シフト次いで4本分シフトすることで下面側層の完全組織が形成される。下面側経糸は1本以上の下面側緯糸の下側、次いで2本または4本の下面側緯糸の上側を通って経糸方向の浮きを形成し、次いで1本以上の下面側緯糸の下側を通る組織を形成している。
【0054】
下面側経糸の浮きの長さを左右する下面側緯糸本数が下面側緯糸ロングクリンプ長さを左右する経糸本数より少ないという関係が成り立っている。そして、下面側経糸が下面側緯糸を拘束する力は高くなるため、下面側緯糸を下側に押し出す力は増加するのである。さらに押し出す力を有する経糸組織が緯糸ロングクリンプ全体に配置されるので、下面側経糸が全体的に下面側緯糸を下側に押し出し、緯糸ロングクリンプのクリンプ形状が矩形となり、偏摩耗を抑制することが出来るのである。
経糸5本分の緯糸ロングクリンプを有するため耐摩耗性に優れ、且つクリンプ形状が矩形となるため偏摩耗が抑制され、さらに下面側緯糸は連続する経糸3本で強固に織り込まれるため、ワイヤー剛性向上、ガタツキの抑制等に優れた織物であるといえる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】従来技術の経糸断面図(1A)、緯糸断面図(1B)を示し、経糸と緯糸の織り合わせ部および緯糸ロングクリンプ形状を示したものである。
【図2】本発明に係る織物の経糸断面図(2A)、緯糸断面図(2B)を示し、経糸と緯糸の織り合わせ部および緯糸ロングクリンプ形状を示したものである。
【図3】本発明に係る実施形態1の工業用二層織物の意匠図である。
【図4】図3の意匠図の経糸の組1、2、3に沿った断面図である。
【図5】図3の意匠図の緯糸3'に沿った断面図である。
【図6】本発明に係る実施形態2の工業用二層織物の意匠図である。
【図7】図6の意匠図の経糸の組1、2、3に沿った断面図である。
【図8】図6の意匠図の緯糸3'に沿った断面図である。
【図9】本発明に係る実施形態3の工業用二層織物の意匠図である。
【図10】図9の意匠図の経糸の組1、2、3に沿った断面図である。
【図11】図9の意匠図の緯糸3'に沿った断面図である。
【図12】本発明に係る実施形態4の工業用二層織物の意匠図である。
【図13】図12の意匠図の経糸の組1、2、3に沿った断面図である。
【図14】図12の意匠図の緯糸3'に沿った断面図である。
【図15】本発明に係る実施形態5の工業用二層織物の意匠図である。
【図16】図15の意匠図の経糸の組3、4、5に沿った断面図である。
【図17】図15の意匠図の緯糸5'に沿った断面図である。
【図18】本発明に係る実施形態6の工業用二層織物の意匠図である。
【図19】図18の意匠図の経糸の組3、4、5に沿った断面図である。
【図20】図18の意匠図の緯糸5'に沿った断面図である。
【図21】本発明に係る実施形態7の工業用二層織物の意匠図である。
【図22】図21の意匠図の経糸の組3、4、5に沿った断面図である。
【図23】図21の意匠図の緯糸5'に沿った断面図である。
【図24】本発明に係る実施形態8の工業用二層織物の意匠図である。
【図25】図24の意匠図の経糸の組4、5、6に沿った断面図である。
【図26】図24の意匠図の緯糸7'に沿った断面図である。
【図27】本発明に係る実施形態9の工業用二層織物の意匠図である。
【図28】図27の意匠図の経糸の組4、5、6に沿った断面図である。
【図29】図27の意匠図の緯糸5'に沿った断面図である。
【図30】本発明に係る実施形態10の工業用二層織物の意匠図である。
【図31】図30の意匠図の経糸の組1、2、3に沿った断面図である。
【図32】図30の意匠図の緯糸13'に沿った断面図である。
【図33】従来例1に係る工業用二層織物の意匠図である。
【図34】図33の意匠図の経糸の組1、2、3に沿った断面図である。
【図35】図33の意匠図の緯糸3'に沿った断面図である。
【符号の説明】
【0056】
u 上面側経糸,上面側緯糸
d 下面側経糸,下面側緯糸
B 経糸接結糸,緯糸接結糸
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面側経糸と上面側緯糸によって製織された上面側層と、下面側経糸と下面側緯糸によって製織された下面側層からなり、上面側層と下面側層を接結糸で接結してなる工業用二層織物において、
前記下面側緯糸は、連続する3本の下面側経糸の上側を通り、次いで残りの複数本の下面側経糸の下側を通り下面側緯糸ロングクリンプを形成する組織であり、且つ隣接配置する下面側緯糸は経糸3本分シフト、または経糸4本分シフト、または経糸5本分シフト、または経糸1本分シフトし次いで4本分シフト、または経糸3本分シフトし次いで4本分シフト、または経糸2本分シフトし次いで5本分、または経糸1本分シフトし次いで6本分シフト、または経糸1本分シフトし次いで4本分シフト次いで経糸5本分シフトし次いで4本分シフト、のいずれか一から選択される順にシフトパターンを繰り返して下面側層における完全組織を形成し、下面側層に形成される前記下面側緯糸ロングクリンプのクリンプ形状が矩形となることを特徴とした、工業用二層織物。
【請求項2】
前記下面側経糸が1本以上の下面側緯糸の下側、次いで複数本の下面側緯糸の上側を通って経糸方向の浮きを形成し、次いで1本以上の下面側緯糸の下側を通る組織を形成することを特徴とする、請求項1に記載の工業用二層織物。
【請求項3】
前記経糸方向の浮きの長さを左右する下面側緯糸本数が、下面側緯糸ロングクリンプの長さを左右する経糸本数よりも少ないことを特徴とする、請求項2に記載の工業用二層織物。
【請求項4】
上面側層と下面側層を接結する前記接結糸が、1本または2本組になった経糸接結糸、もしくは1本または2本組になった緯糸接結糸である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の工業用二層織物。
【請求項1】
上面側経糸と上面側緯糸によって製織された上面側層と、下面側経糸と下面側緯糸によって製織された下面側層からなり、上面側層と下面側層を接結糸で接結してなる工業用二層織物において、
前記下面側緯糸は、連続する3本の下面側経糸の上側を通り、次いで残りの複数本の下面側経糸の下側を通り下面側緯糸ロングクリンプを形成する組織であり、且つ隣接配置する下面側緯糸は経糸3本分シフト、または経糸4本分シフト、または経糸5本分シフト、または経糸1本分シフトし次いで4本分シフト、または経糸3本分シフトし次いで4本分シフト、または経糸2本分シフトし次いで5本分、または経糸1本分シフトし次いで6本分シフト、または経糸1本分シフトし次いで4本分シフト次いで経糸5本分シフトし次いで4本分シフト、のいずれか一から選択される順にシフトパターンを繰り返して下面側層における完全組織を形成し、下面側層に形成される前記下面側緯糸ロングクリンプのクリンプ形状が矩形となることを特徴とした、工業用二層織物。
【請求項2】
前記下面側経糸が1本以上の下面側緯糸の下側、次いで複数本の下面側緯糸の上側を通って経糸方向の浮きを形成し、次いで1本以上の下面側緯糸の下側を通る組織を形成することを特徴とする、請求項1に記載の工業用二層織物。
【請求項3】
前記経糸方向の浮きの長さを左右する下面側緯糸本数が、下面側緯糸ロングクリンプの長さを左右する経糸本数よりも少ないことを特徴とする、請求項2に記載の工業用二層織物。
【請求項4】
上面側層と下面側層を接結する前記接結糸が、1本または2本組になった経糸接結糸、もしくは1本または2本組になった緯糸接結糸である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の工業用二層織物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【公開番号】特開2010−126862(P2010−126862A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−305742(P2008−305742)
【出願日】平成20年11月29日(2008.11.29)
【出願人】(000229818)日本フイルコン株式会社 (58)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月29日(2008.11.29)
【出願人】(000229818)日本フイルコン株式会社 (58)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]