説明

工業用殺菌剤組成物

【課題】泡立ちが全く起こらない、アミン化合物を含んでなる工業用殺菌剤組成物を提供すること。
【解決手段】一般式R−O−(CH23−NH2(式中、Rは炭素数8〜18のアルキル基またはアルケニル基を示す)で表されるアミン化合物と、蓚酸および/またはn−オクタン酸から選ばれる酸とを含む水性乳化液を含んでなる工業用殺菌剤組成物が、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業用殺菌剤組成物に関する。さらに詳しくは、特定のアミン化合物と、蓚酸および/またはn−オクタン酸から選ばれる酸とを含む水性乳化液を含んでなる工業用殺菌剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、エマルジョン、塗料、パルプ排水その他の産業排水には、殺菌、殺カビ、殺藻などの目的で、またはこれらの対象体にバクテリア、カビ、藻などが繁殖することを防止する目的で、種々の殺菌剤・殺カビ剤が使用されている。しかしながら、これらの殺菌剤・殺カビ剤は、その毒性のために、人体への悪影響や、自然環境中へ排出された後、環境破壊の原因になるといった副作用を有する。特に環境破壊が大きな社会問題となっている現代にあっては、その深刻さは増加の一途をたどっている。たとえば、従来より使用されている5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾロン(Cl−MIT)に代表されるイソチアゾロン系化合物は、変異原性という重大な副作用がある。また、ブロノポール系化合物は、その作用がホルマリンの発生に依存していることから、シックハウスなどの原因になっている。また、シアノ系化合物は猛毒のシアンを発生する。さらに、上記以外の殺菌剤・殺カビ剤において、その化学的または物理的特性上、エマルジョン、塗料および産業排水などへの使用が好ましくないものがある。たとえば、ベンゾイソチアゾリン系化合物は、水に不溶であるため懸濁はするが粒子として乳化せず、安定な懸濁液を得ることが困難である。
【0003】
このような状況下、より環境負荷が少なく、水溶性または水への分散性の高い殺菌剤・殺カビ剤の創成が望まれていた。
【0004】
これら従来からある殺菌剤・殺カビ剤のなかで、アルコキシアルキルアミン化合物は有効な殺菌、殺カビ作用を呈し、かつ上記のような問題がない。たとえば、特許文献1には、アルコキシアルキルアミン化合物の3−(ドデシルオキシ)プロピルアミンを48重量%含有する混合物は微生物活性を有することが記載されており、また、特許文献2には、3−(ドデシルオキシ)プロピルアミンが海息付着生物に対して活性を有することが記載されている。
【0005】
このアルコキシアルキルアミン化合物は疎水性であるが、酸を添加することによりアミノ基をイオン化することで、透明な水溶液を得ることができる。しかしながら、このようにして得られたアルコキシアルキルアミン化合物の水溶液を、殺菌などを目的として対象体に添加混合すると著しく泡立つという現象を避けることができない。このような起泡性を有する工業用殺菌剤製剤は、起泡が著しいため施用する際に対象体に均一に拡散せず、製剤が意図する効果を発揮することができず、また、使用上極めて不都合であり、外観も好ましくなく、結果として、商品価値が著しく低下するという問題がある。
【0006】
【特許文献1】米国特許第3291683号明細書
【特許文献2】特公昭60−52727号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、殺菌などの対象体に添加混合したときに、泡立ちが全く起こらない工業用殺菌剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、アルコキシ(またはアルケニルオキシ)アルキルアミン化合物に特定の酸を添加混合し、これを水に分散させることによって、保存安定性に優れ、層分離を起こさない水性乳化液となることを見出し、また、この水性乳化液を殺菌などの対象体に添加混合したときに、泡立ちが全く起こらない工業用殺菌剤組成物を得ることができることを見出し、これらに基づきさらに研究した結果、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は下記の工業用殺菌剤組成物に関する。
【0010】
(1)一般式:
R−O−(CH23−NH2
(式中、Rは炭素数8〜18のアルキル基またはアルケニル基を示す)で表されるアミン化合物と、蓚酸および/またはn−オクタン酸から選ばれる酸とを含む水性乳化液を含んでなる工業用殺菌剤組成物。
【0011】
(2)酸が蓚酸である、上記(1)記載の工業用殺菌剤組成物。
【0012】
(3)酸がn−オクタン酸である、上記(1)記載の工業用殺菌剤組成物。
【0013】
(4)アミン化合物のRが炭素数10〜18である上記(1)、(2)または(3)記載の工業用殺菌剤組成物。
【0014】
(5)アミン化合物が3−(ドデシルオキシ)プロピルアミンである、上記(4)記載の工業用殺菌剤組成物。
【0015】
(6)アミン化合物の添加量が1〜20重量%である、上記(1)、(2)、(3)、(4)または(5)記載の工業用殺菌剤組成物。
【0016】
(7)蓚酸および/またはn−オクタン酸を、アミン化合物に対して0.5〜2モル当量含む、上記(1)、(2)、(3)、(4)、(5)または(6)記載の工業用殺菌剤組成物。
【0017】
(8)工業用殺菌剤組成物が防腐剤である、上記(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)または(7)記載の工業用殺菌剤組成物。
【発明の効果】
【0018】
本発明の工業用殺菌剤組成物は、保存安定性に優れ、層分離を起こさない水性乳化液であり、この水性乳化液は、殺菌などを目的として対象体に添加混合したときに泡立ちが全く起こらないため、対象体に均一に拡散し、製剤が意図する効果を発揮することができる。また、使用上極めて不都合がなく、添加混合対象体の外観に影響を与えないため、商品価値が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明において、「殺菌」という用語は、バクテリア・細菌、カビ、藻、海草その他の海生植物および海生動物を殺滅すること、これらの付着や繁殖を防止ないし抑制すること、これらの付着や繁殖によって対象体が腐敗したり、その品質が低下したりすることを防止し、これらに加えて、産業排水などにおいては、バクテリアなどの繁殖による有毒物質の発生、悪臭を防止ないし抑制するなどの概念を含むものとして使用される。すなわち、殺菌剤、殺カビ剤、防菌剤、防カビ剤、防腐剤、防藻剤などの用語で示される概念が含まれる。
【0020】
本発明で用いられるアミン化合物は、一般式:
R−O−(CH23−NH2
で示されるものであり、式中、Rは炭素数8〜18のアルキル基またはアルケニル基を意味し、さらに好ましくは炭素数10〜18のアルキル基またはアルケニル基を示し、これらのアルキル基またはアルケニル基は直鎖状でも分岐状でもよい。
【0021】
炭素数8〜18の直鎖状または分岐状のアルキル基の具体例としては、たとえば、n−オクチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、ネオオクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、イソノニル基、sec−ノニル基、tert−ノニル基、ネオノニル基、n−デシル基、イソデシル基、sec−デシル基、tert−デシル基、ネオデシル基、n−ウンデシル基、イソウンデシル基、sec−ウンデシル基、tert−ウンデシル基、ネオウンデシル基、n−ドデシル基(ラウリル基)、イソドデシル基(ラウリル基)、sec−ドデシル基(ラウリル基)、tert−ドデシル基(ラウリル基)、ネオドデシル基(ラウリル基)、n−トリデシル基、イソトリデシル基、sec−トリデシル基、tert−トリデシル基、ネオトリデシル基、n−テトラデシル基(ミリスチル基)、イソテトラデシル基(ミリスチル基)、sec−テトラデシル基(ミリスチル基)、tert−テトラデシル基(ミリスチル基)、ネオテトラデシル基(ミリスチル基)、n−ペンタデシル基、イソペンタデシル基、sec−ペンタデシル基、tert−ペンタデシル基、ネオペンタデシル基、n−ヘキサデシル基(セチル基)、イソヘキサデシル基(セチル基)、sec−ヘキサデシル基(セチル基)、tert−ヘキサデシル基(セチル基)、ネオヘキサデシル基(セチル基)、n−ヘプタデシル基、イソヘプタデシル基、sec−ヘプタデシル基、tert−ヘプタデシル基、ネオヘプタデシル基、n−オクタデシル基(ステアリル基)、イソオクタデシル基(ステアリル基)、sec−オクタデシル基(ステアリル基)、tert−オクタデシル基(ステアリル基)、ネオオクタデシル基(ステアリル基)などがあげられる。
【0022】
炭素数8〜18の直鎖状または分岐状のアルケニル基の具体例としては、たとえば、n−オクテニル基、イソオクテニル基、sec−オクテニル基、tert−オクテニル基、ネオオクテニル基、n−ノネニル基、イソノネニル基、sec−ノネニル基、tert−ノネニル基、ネオノネニル基、n−デセニル基、イソデセニル基、sec−デセニル基、tert−デセニル基、ネオデセニル基、n−ウンデセニル基、イソウンデセニル基、sec−ウンデセニル基、tert−ウンデセニル基、ネオウンデセニル基、n−ドデセニル基、イソドデセニル基、sec−ドデセニル基、tert−ドデセニル基、ネオドデセニル基、n−トリデセニル基、イソトリデセニル基、sec−トリデセニル基、tert−トリデセニル基、ネオトリデセニル基、n−テトラデセニル基、イソテトラデセニル基、sec−テトラデセニル基、tert−テトラデセニル基、ネオテトラデセニル基、n−ペンタデセニル基、イソペンタデセニル基、sec−ペンタデセニル基、tert−ペンタデセニル基、ネオペンタデセニル基、n−ヘキサデセニル基、イソヘキサデセニル基、sec−ヘキサデセニル基、tert−ヘキサデセニル基、ネオヘキサデセニル基、n−ヘプタデセニル基、イソヘプタデセニル基、sec−ヘプタデセニル基、tert−ヘプタデセニル基、ネオヘプタデセニル基、n−オクタデセニル基、イソオクタデセニル基、sec−オクタデセニル基、tert−オクタデセニル基、ネオオクタデセニル基、9−オクタデセニル基、リノイル基(cis−9,cis−12-オクタデカジエニル基)などがあげられる。
【0023】
これらアミン化合物の好ましい具体例としては、たとえば、3−(オクチルオキシ)プロピルアミン、3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン、3−(ドデシルオキシ)プロピルアミン、3−(オクタデシルオキシ)プロピルアミン、3−(オクタデセニルオキシ)プロピルアミン、3−(オクテニルオキシ)プロピルアミン、3−(ヘキサデシルオキシ)プロピルアミン、3−(リノイルオキシ)プロピルアミンなどがあげられる。なかでも、3−(ドデシルオキシ)プロピルアミンが最も好ましい。
【0024】
上記アミン化合物は公知化合物であり、公知の方法またはそれに準じた方法により製造することがでる。また、市販のものを購入して入手することもできる。
【0025】
本発明においては、このアミン化合物と共に、蓚酸またはn−オクタン酸が用いられる。これらは、目的に応じて併用してもよい。これら酸は遊離の状態で使用される。
【0026】
蓚酸またはn−オクタン酸は、アミン化合物に対して0.5〜2モル当量使用されるのが好ましく、さらに好ましくは、0.8〜1.2モル当量使用され、最も好ましくは、ほぼ当量が使用される。前記酸の使用量が0.5モル当量以上の方が、泡立ちの抑制、乳化液の安定性に優れる。また、前記酸の使用量が2モル当量を超えない方が、遊離の酸が共存することが少なく、乳化状態と泡立ち防止効果の均衡がより好適に維持されるため有利である。
【0027】
アミン化合物は、目的とする効果を十分に発揮し、経済的な無駄を防止する観点から、水性乳化液全体の1〜20重量%の範囲で用いられるのが好ましく、さらに好ましくは2〜15重量%の範囲で用いられ、最も好ましくは5〜15重量%の範囲で用いられる。
【0028】
本発明においては、常温、常圧下において、アミン化合物および酸を水に添加混合することにより、安定な水性乳化液を含んだ工業用殺菌剤組成物を得ることができる。
【0029】
本発明の水性乳化液を含んだ工業用殺菌剤組成物には、必要に応じて、必要量の添加剤、たとえば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、アルキルジフェニルアミン、N,N’−ジ−s−ブチル−p−フェニレンジアミンなどの酸化防止剤、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−n−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、サリチル酸フェニル、p−t−ブチルフェニルサリシレート、2−エチルヘキシル2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、2−エトキシ−2’−エチルシュウ酸ビスアニリド、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物などの紫外線吸収剤、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸とその塩などの増粘剤、PAP助剤(たとえば、イソプロピルリン酸)、ポリエチレン、脂肪酸金属塩、ワックス、パラフィン、シリコーンオイル、タルクなどの流動助剤、二酸化チタンなどの紫外線散乱剤、有機または無機顔料や染料などの着色剤、その他pH調整剤を添加してもよい。
【0030】
さらに、アミン化合物と共に他の殺菌剤、たとえば、イソチアゾロン系化合物、ニトロアルコール系化合物、ジチオール系化合物、チオフェン系化合物、ハロアセチレン系化合物、フタルイミド系化合物、ハロアルキルチオ系化合物、ピリチオン系化合物、フェニルウレア系化合物、トリアジン系化合物、グアニジン系化合物、トリアゾール系化合物、ベンズイミダゾール系化合物および四級アンモニウム塩系化合物を併用することもできる。なお、有効成分が一種のみ用いられている製剤がときとして単剤とよばれるのに対して、このような複数の有効成分を含む製剤は、ときとして配合製剤とよぶこともある。
【0031】
イソチアゾロン系化合物としては、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4−クロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4,5−トリメチレン−4−イソチアゾリン−3−オン、1,2−ベンツイソチアゾリン−3−オン、N−n−ブチル−1,2−ベンツイソチアゾリン−3−オンがあげられる。
【0032】
ニトロアルコール系化合物としては、たとえば、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,
3−ジオール、2,2−ジブロモ−2−ニトロ−1−エタノールなどがあげられる。
【0033】
ジチオール系化合物としては、たとえば、4,5−ジクロロ−1,2−ジチオール−3−オンがなどあげられる。
【0034】
チオフェン系化合物としては、たとえば、3,3,4−トリクロロテトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド、3,3,4,4−テトラクロロテトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシドなどがあげられる。
【0035】
ハロアセチレン系化合物としては、たとえば、N−ブチル−3−ヨードプロピオール酸アミド、3−ヨード−2−プロピニルブチルカルバメートなどがあげられる。
【0036】
フタルイミド系化合物としては、たとえば、N−1,1,2,2−テトラクロロエチルチオ−テトラヒドロフタルイミド(Captafol)、N−トリクロロメチルチオ−テトラヒドロフタルイミド(Captan)、N−ジクロロフルオロメチルチオフタルイミド(Fluorfolpet)、N−トリクロロメチルチオフタルイミド(Folpet)などがあげられる。
【0037】
ハロアルキルチオ系化合物としては、たとえば、N−ジメチルアミノスルホニル−N−トリル−ジクロロフルオロメタンスルファミド(Tolylfluanide)、N−ジメチルアミノスルホニル−N−フェニル−ジクロロフルオロメタンスルファミド(Dichlofluanide)などがあげられる。
【0038】
ピリチオン系化合物としては、たとえば、ナトリウムピリチオン、ジンクピリチオンなどがあげられる。
【0039】
フェニルウレア系化合物としては、たとえば、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチルウレアなどがあげられる。
【0040】
トリアジン系化合物としては、たとえば、2−メチルチオ−4−t−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−s−トリアジンなどがあげられる。
【0041】
グアニジン系化合物としては、たとえば、1,6−ジ−(4’−クロロフェニルジグアニド)−ヘキサン、ポリヘキサメチレンビグアニジン塩酸塩などがあげられる。
【0042】
トリアゾール系化合物としては、たとえば、α−[2−(4−クロロフェニル)エチル]−α−(1,1−ジメチルエチル)−1H−1,2,4−トリアゾール−1−エタノール(慣用名:テブコナゾール)、1−[[2−(2,4−ジクロロフェニル)−4−n−プロピル−1,3−ジオキソラン−2−イル]メチル]−1H−1,2,4−トリアゾール(慣用名:プロピコナゾール)、1−[[2−(2,4−ジクロロフェニル)−1,3−ジオキソラン−2−イル]メチル]−1H−1,2,4−トリアゾール(慣用名:アザコナゾール)、α−(4−クロロフェニル)−α−(1−シクロプロピルエチル)−1H−1,2,4−トリアゾール−1−エタノール(慣用名:シプロコナゾール)などがあげられる。
【0043】
ベンズイミダゾール系化合物としては、たとえば、メチル−2−ベンズイミダゾールカルバメート、エチル−2−ベンズイミダゾールカルバメート、2−(4−チアゾリル)ベンズイミダゾールなどがあげられる。
【0044】
四級アンモニウム塩系化合物としては、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、塩化ベンザルコニウム、ジ−n−デシル−ジメチルアンモニウムクロライド、1−ヘキサデシルピリジニウムクロライドなどがあげられる。
【0045】
本発明の水性乳化液を含んでなる工業用殺菌剤組成物は、たとえば、エマルジョン、塗料、パルプ廃液その他の産業廃液にあらかじめまたは使用時に、添加混合、塗付または撒布することにより、これら対象体がその流通過程、保存過程において品質劣化することが有効に防止され、品質劣化の進行を抑えたり原状に復帰させることができる。
【0046】
本発明の水性乳化液を含んだ工業用殺菌剤組成物の対象体に対する添加量は、目的とする効果を十分に発揮し、経済的な無駄を防止する観点から、対象体中の有効性化合物(すなわち、本発明のアミン化合物)の含有量が、一般的には10〜10000ppm、好ましくは50〜5000ppm、さらに好ましくは100〜2000ppmとなるような範囲から選択される。
【実施例】
【0047】
つぎに本発明を実施例をあげて説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0048】
実施例1(オクタン酸含有殺菌剤組成物の調製)
水84.0gにn−オクタン酸6.0gを加え、攪拌しながら、さらに3−(ドデシルオキシ)プロピルアミン10.0gを加えて水性乳化液を得た。
【0049】
実施例2(蓚酸含有殺菌剤組成物の調製)
水86.4gに蓚酸3.6gを加え、攪拌しながら、さらに3−(ドデシルオキシ)プロピルアミン10.0gを加えて水性乳化液を得た。
【0050】
比較例1(酢酸含有殺菌剤組成物の調製)
水87.1gに酢酸2.4gを加え、攪拌しながら、さらに3−(ドデシルオキシ)プロピルアミン10.0gを加えて無色透明の水性組成物を得た。
【0051】
比較例2〜10(その他の酸含有殺菌剤組成物の調製)
比較例1の酢酸2.4gを、プロピオン酸3.0g(比較例2)、酪酸3.6g(比較例3)、吉草酸4.2g(比較例4)、デカン酸7.0g(比較例5)、ラウリン酸8.2g(比較例6)、リノール酸11.6g(比較例7)、マレイン酸4.8g(比較例8)、フタル酸6.8g(比較例9)およびクエン酸8.6g(比較例10)にそれぞれ変え、合計重量が100.0gになるように超過分または不足分を水で調整した以外は、すべて比較例1と同様の方法により水性組成物を得た。
【0052】
得られた酸含有殺菌剤組成物について以下の方法にて評価を行った。その結果を表1に示す。
【0053】
(1)殺菌剤組成物の外観
得られた水性組成物の外観を目視で評価した。
懸濁:白色懸濁状
透明:無色透明
層分離:水中で溶解または分散せず、層分離を生じた。
【0054】
(2)起泡性の評価法
各試料0.1gを秤量し、水10.0gが入った容量50mlの容器に試料を投入した後、20回の振とう混合を行った。混合後の起泡状態を容器内に発生した泡の高さ(液体表面から泡の最上部までの長さ)を測定することにより評価した。
○:容器内の泡の高さが5mm以下であった(静置により消沈)。
×:容器内の泡の高さが40mm以上であった(容器内に泡が充満し、静置後も消泡しない)。
【0055】
【表1】

*表1中、3−(ドデシルオキシ)プロピルアミンはDOPAと表記した。
**表1のオクタン酸は、n−オクタン酸である。
【0056】
表1から明らかなように、酸として蓚酸またはn−オクタン酸を用いた場合のみ、抑泡性に優れた水性乳化液が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の水性乳化液を含んでなる工業用殺菌剤組成物は、たとえば、エマルジョン、塗料などにあらかじめまたは使用時に、添加混合、塗付または撒布することにより、泡立ちを全く起こすことなく殺菌効果を発揮させることができ、しかも、これら対象体の品質劣化を有効に防止することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式:
R−O−(CH23−NH2
(式中、Rは炭素数8〜18のアルキル基またはアルケニル基を示す)で表されるアミン化合物と、蓚酸および/またはn−オクタン酸から選ばれる酸とを含む水性乳化液を含んでなる工業用殺菌剤組成物。
【請求項2】
酸が蓚酸である、請求項1記載の工業用殺菌剤組成物。
【請求項3】
酸がn−オクタン酸である、請求項1記載の工業用殺菌剤組成物。
【請求項4】
アミン化合物のRが炭素数10〜18である請求項1、2または3記載の工業用殺菌剤組成物。
【請求項5】
アミン化合物が3−(ドデシルオキシ)プロピルアミンである、請求項4記載の工業用殺菌剤組成物。
【請求項6】
アミン化合物の添加量が1〜20重量%である、請求項1、2、3、4または5記載の工業用殺菌剤組成物。
【請求項7】
蓚酸および/またはn−オクタン酸を、アミン化合物に対して0.5〜2モル当量含む、請求項1、2、3、4、5または6記載の工業用殺菌剤組成物。
【請求項8】
工業用殺菌剤組成物が防腐剤である、請求項1、2、3、4、5、6または7記載の工業用殺菌剤組成物。

【公開番号】特開2009−227647(P2009−227647A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−78711(P2008−78711)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(503140056)日本エンバイロケミカルズ株式会社 (95)
【Fターム(参考)】