説明

工業用殺菌剤

【課題】 細菌、かび、酵母、藻などに対して優れた防除効果を発現することのできる、工業用殺菌剤、およびその工業用殺菌剤を含有する塗料、インク、樹脂エマルション、金属加工油剤、湿し水を提供すること。
【解決手段】 下記一般式(1)で表される化合物と、イソチアゾリン系化合物および/またはニトロアルコール系化合物とを含有し、適用対象が、塗料、インク、樹脂エマルション、金属加工油剤および湿し水から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする工業用殺菌剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業用殺菌剤に関し、さらに詳しくは、適用対象が、塗料、インク、樹脂エマルション、金属加工油剤および湿し水である工業用殺菌剤、およびその工業用殺菌剤を含有する塗料、インク、樹脂エマルション、金属加工油剤および湿し水に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、各種の工業製品には、細菌、かび、酵母、藻などの有害な微生物が繁殖しやすく、生産性や品質の低下、悪臭の発生などの原因となっている。そのため、このような有害微生物の繁殖を防除するために、抗菌、防かび、防腐、防藻効果を発現する種々の工業用殺菌剤が広く使用されている。また、このような工業用殺菌剤として、近年、例えば、特許文献1〜8などにおいて、それらに記載されるビス四級アンモニウム塩化合物が、広い抗菌スペクトルを有し、優れた防除効果を発現することが報告されている。
【0003】
【特許文献1】特開平9−110692号公報
【特許文献2】特開平10−95773号公報
【特許文献3】特開平10−287566号公報
【特許文献4】特開2000−95763公報
【特許文献5】特開2000−136185公報
【特許文献6】特開2000−198879公報
【特許文献7】特開2000−159607公報
【特許文献8】特開2001−310191公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記したビス四級アンモニウム塩化合物を単独で使用しても、その防除効果が十分でない場合もあり、とりわけ、塗料、インク、樹脂エマルション、金属加工油剤、湿し水の分野において、十分な防除効果を発現し得る新規な工業用殺菌剤の開発が望まれている。
【0005】
従って、本発明の目的は、上記の分野において、細菌、かび、酵母、藻などに対して優れた防除効果を発現することのできる、工業用殺菌剤、およびその工業用殺菌剤を含有する塗料、インク、樹脂エマルション、金属加工油剤、湿し水を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明者らは、塗料、インク、樹脂エマルション、金属加工油剤、湿し水の分野において、優れた防除効果を発現し得る化合物について鋭意検討したところ、特定のビス四級アンモニウム塩化合物と、イソチアゾリン系化合物および/またはニトロアルコール系化合物とを併用することにより、塗料、インク、樹脂エマルション、金属加工油剤、湿し水の分野において、優れた防除効果を発現し得る知見を見い出し、さらに研究を進めた結果、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、上記目的は以下の本発明によって達成される。
1.下記一般式(1)で表される化合物と、イソチアゾリン系化合物および/またはニトロアルコール系化合物とを含有し、適用対象が、塗料、インク、樹脂エマルション、金属加工油剤および湿し水から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする工業用殺菌剤。

(但し、上記一般式において、R1およびR4は、炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐の同一または異なるアルキレン基であり、R2およびR5は、水素原子、同一または異なるハロゲン原子、低級アルキル基または低級アルコキシ基であり、R3は、炭素数2〜12の直鎖若しくは分岐のアルキレン基であり、R6は、炭素数1〜18の直鎖若しくは分岐のアルキル基であり、Zは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子若しくはOSO27基(R7は、低級アルキル基若しくは置換或いは無置換のフェニル基である)である。)
【0008】
2.前記一般式(1)において、R1およびR4は、ピリジン環の3または4位置に結合しているメチレン基であり、R2およびR5は、水素原子であり、R3は、テトラメチレン基であり、R6は、オクチル基、デシル基およびドデシル基から選ばれる基であり、Zは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子若しくはOSO27基(R7は、低級アルキル基若しくは置換或いは無置換のフェニル基である)である前記1に記載の工業用殺菌剤。
【0009】
3.前記一般式(1)で表される化合物は、下記式(1)〜(4)で表される少なくとも1種の化合物である前記1に記載の工業用殺菌剤。




【0010】
4.イソチアゾリン系化合物が、下記一般式(2)および/または下記一般式(3)で示される前記1〜3のいずれか1項に記載の工業用殺菌剤。

(一般式(2)中、R8は、置換基を有していてもよい炭化水素基または水素原子を、X1およびX2は、同一または相異なって、炭化水素基(X1およびX2が2価の炭化水素基で環形成されている場合を含む。)、ハロゲン原子または水素原子を示す。一般式(3)中、R9は、置換基を有していてもよい炭化水素基または水素原子を、A環は置換基を有していてもよいベンゼン環を示す。)
【0011】
5.ニトロアルコール系化合物が、下記一般式(4)で示される前記1〜4のいずれか1項に記載の工業用殺菌剤。

(式中、R10は、炭化水素基または水素原子を、R11は、ヒドロキシル基を有する炭化水素基、ハロゲン原子または水素原子を、X3は、ヒドロキシル基を有する炭化水素基またはハロゲン原子を示す。)
【0012】
6.一般式(2)および一般式(3)で示されるイソチアゾリン系化合物の式中、R8およびR9が、炭素数1〜8のアルキル基または水素原子であり、X1およびX2が、ともに水素原子、一方が水素原子で他方が塩素原子またはともに塩素原子である前記4に記載の工業用殺菌剤。
7.一般式(4)で示されるニトロアルコール系化合物の式中、R10が、炭素数1〜4のアルキル基または水素原子であり、R11が、ヒドロキシル基を有する炭素数1〜4のアルキル基、臭素原子または水素原子であり、X3が、ヒドロキシル基を有する炭素数1〜4のアルキル基、臭素原子または塩素原子である前記5に記載の工業用殺菌剤。
8.前記1〜7のいずれか1項に記載の工業用殺菌剤を含有することを特徴とする塗料、インク、樹脂エマルション、金属加工油剤または湿し水。
【発明の効果】
【0013】
本発明の工業用殺菌剤は、塗料、インク、樹脂エマルション、金属加工油剤、湿し水を適用対象として、細菌、かび、酵母、藻に対する優れた防除効果を発現することができる。そのため、本発明の工業用殺菌剤が含有される塗料、インク、樹脂エマルション、金属加工油剤、湿し水は、細菌、かび、酵母、藻の発生が防除され、長期にわたって良好な品質を保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に発明を実施するための最良の形態を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。本発明の工業用殺菌剤は、有効成分として、前記一般式(1)で表される化合物、イソチアゾリン系化合物および/またはニトロアルコール系化合物とを含有している。
【0015】
本発明に用いられる前記一般式(1)で表される化合物のなかで好ましい化合物は、前記一般式(1)において、R1およびR4が、ピリジン環の3または4位置に結合しているメチレン基であり、R2およびR5が、水素原子であり、R3が、テトラメチレン基であり、R6が、オクチル基、デシル基およびドデシル基から選ばれる基であり、Zが塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子若しくはOSO27基(R7は、低級アルキル基若しくは置換或いは無置換のフェニル基である)である化合物であり、特に好ましい化合物は前記式(1)〜(4)の化合物である。前記一般式(1)で表される化合物は、単独でも混合物としても使用できる。
【0016】
一般式(1)で表される化合物は、下記一般式(a)

で表されるピリジン化合物と、下記一般式(b)

で表されるジオール類とを、強塩基の存在下に反応させることにより、下記一般式(c)

で表されるピリジン化合物を製し、該化合物と下記一般式(d)

で表されるピリジン化合物とを強塩基の存在下に反応させることにより下記一般式(e)

で表されるピリジン化合物を製し、該化合物と下記一般式(f)

で表されるハロゲン化合物若しくはスルホン酸エステル化合物とを反応させることによって得られる。
(但し、上記一般式(a)〜(f)において、AおよびBは塩基の作用により脱離基として機能し、アルキルカチオンを生成し得る置換基であり、XおよびYは無機、若しくは有機のプロトン酸の対アニオンであり、mおよびnは0〜1であり、R1〜R7、Zは前記と同意義である。)
【0017】
本発明に用いられるイソチアゾリン系化合物は、例えば、前記一般式(2)および/または前記一般式(3)で示される。一般式(2)および一般式(3)の式中、R8およびR9で示される置換基を有していてもよい炭化水素基としては、置換基を有していない炭化水素基が好ましく、その中でも、アルキル基が好ましい。アルキル基としては、炭素数が1〜8のアルキル基、より好ましくは、メチル、エチル、プロピル、iso−プロピル、ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチルなどの炭素数1〜4のアルキル基およびn−オクチル、イソオクチル、2−エチルヘキシルなどの炭素数8のアルキル基が挙げられる。さらに好ましくは、メチル、n−ブチル、n−オクチルが挙げられる。また、R8およびR9の好ましい例としては、炭素数が1〜8のアルキル基および水素原子が挙げられる。
【0018】
一般式(2)で示されるイソチアゾリン系化合物において、X1およびX2で示される炭化水素基としては、好ましくは、アルキル基、より好ましくは、メチル、エチル、プロピル、iso−プロピル、ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチルなどの炭素数1〜4のアルキル基が挙げられる。
【0019】
また、X1およびX2は、2価の炭化水素基で環形成されていてもよく、このような2価の炭化水素基としては、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン(トリメチレン)、iso−プロピレン、ブチレン(テトラメチレン)、iso−ブチレン、sec−ブチレン、ペンチレン、iso−ペンチレン、sec−ペンチレン、ヘキシレン(ヘキサメチレン)などの炭素数1〜6の2価の炭化水素基が挙げられる。好ましくは、トリメチレンが挙げられる。
【0020】
また、X1およびX2で示されるハロゲン原子としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。好ましくは、塩素が挙げられる。X1およびX2の好ましい例としては、例えば、ハロゲン原子、水素原子が挙げられ、好ましい態様としては、例えば、X1およびX2がともに水素原子、X1およびX2のうち、いずれか一方が水素原子であって他方がハロゲン原子、X1およびX2がともにハロゲン原子である態様が挙げられる。また、トリメチレンで環形成されているものも、好ましい態様の1つである。
【0021】
一般式(3)で示されるイソチアゾリン系化合物において、A環で示されるベンゼン環の置換基としては、好ましくは、ハロゲン原子、アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、iso−プロピル、ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチルなどの炭素数1〜4のアルキル基など)が挙げられる。これらの置換基は、同一または相異なって1〜4個、好ましくは、1または2個置換していてもよい。A環で示される置換基を有していてもよいベンゼン環の好ましい態様としては、置換基を有していないベンゼン環が挙げられる。
【0022】
このようなイソチアゾリン系化合物は、以下に示す具体的な化合物に準じて公知の方法により製造することができ、その具体例としては、例えば、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−エチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−エチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4−クロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4,5−ジクロロ−2−シクロヘキシル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4,5−トリメチレン−4−イソチアゾリン−3−オン、1,2−ベンツイソチアゾリン−3−オン、N−n−ブチル−1,2−ベンツイソチアゾリン−3−オンなどが挙げられる。
【0023】
これらのうち、好ましくは、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4−クロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4,5−トリメチレン−4−イソチアゾリン−3−オン、1,2−ベンツイソチアゾリン−3−オン、N−n−ブチル−1,2−ベンツイソチアゾリン−3−オンが挙げられる。さらに好ましくは、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、1,2−ベンツイソチアゾリン−3−オンが挙げられる。これらイソチアゾリン系化合物は、単独または2種以上併用してもよい。
【0024】
本発明に用いられるニトロアルコール系化合物は、前記一般式(4)で示される。一般式(4)の式中、R10で示される炭化水素基としては、好ましくは、アルキル基、より好ましくは、メチル、エチル、プロピル、iso−プロピル、ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチルなどの炭素数1〜4のアルキル基が挙げられる。
【0025】
一般式(4)の式中、R11で示されるヒドロキシル基を有する炭化水素基の炭化水素基としては、好ましくは、アルキル基、より好ましくは、メチル、エチル、プロピル、iso−プロピル、ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチルなどの炭素数1〜4のアルキル基が挙げられる。また、ヒドロキシル基は、例えば、炭化水素基に、1〜3個置換していることが好ましく、その中でも、1個置換していることが好ましい。このようなヒドロキシル基を有する炭化水素基としては、好ましくは、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチルなどが挙げられ、好ましくは、ヒドロキシメチルが挙げられる。また、R11で示されるハロゲン原子としては、上記したX1およびX2で示されるハロゲン原子と同様のものが挙げられ、好ましくは、塩素および臭素が挙げられる。
【0026】
一般式(4)の式中、X3で示されるヒドロキシル基を有する炭化水素基としては、R11で示されるヒドロキシル基を有する炭化水素基と同様のものが挙げられる。好ましくは、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチルなどが挙げられ、より好ましくは、ヒドロキシメチルが挙げられる。また、X3で示されるハロゲン原子としては、R11で示されるハロゲン原子と同様のものが挙げられ、好ましくは、塩素および臭素が挙げられる。
【0027】
一般式(4)の好ましい態様としては、R10が、炭素数1〜4のアルキル基または水素原子であり、R11が、ヒドロキシル基を有する炭素数1〜4のアルキル基、臭素原子または水素原子であり、X3が、ヒドロキシル基を有する炭素数1〜4のアルキル基、臭素原子または塩素原子である態様が挙げられ、R10が、メチルまたは水素原子であり、R11が、ヒドロキシエチル、ヒドロキシメチル、臭素原子または水素原子であり、X3が、ヒドロキシメチル、臭素原子または塩素原子である態様が、さらに好ましい。
【0028】
このようなニトロアルコール系化合物は、以下に示す具体的な化合物に準じて公知の方法により製造することができ、その具体例としては、例えば、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、2−ブロモ−2−ニトロブタン−1,3−ジオール、3−ブロモ−3−ニトロペンタン−2,4−ジオール、2,2−ジブロモ−2−ニトロ−1−エタノール、2−ニトロ−1,3−プロパンジオール、トリス(ヒドロキシメチル)ニトロメタン、3,3−ジブロモ−3−ニトロ−2−プロパノール、2−クロロ−2−ニトロエタノール、2−クロロ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール、3−クロロ−3−ニトロ−2−プロパノールなどが挙げられる。これらのうち、好ましくは、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、2,2−ジブロモ−2−ニトロ−1−エタノールが挙げられる。これらニトロアルコール系化合物は、単独または2種以上併用してもよい。
【0029】
そして、本発明の工業用殺菌剤は、前記一般式(1)で表される化合物と、イソチアゾリン系化合物および/またはニトロアルコール系化合物とを配合することにより得ることができる。すなわち、本発明の工業用殺菌剤は、前記一般式(1)で表される化合物を必須成分として、イソチアゾリン系化合物およびニトロアルコール系化合物の少なくともいずれかを配合することにより得ることができる。例えば、前記一般式(1)で表される化合物およびイソチアゾリン系化合物の2成分を配合する態様、前記一般式(1)で表される化合物およびニトロアルコール系化合物の2成分を配合する態様、前記一般式(1)で表される化合物、イソチアゾリン系化合物およびニトロアルコール系化合物の3成分を配合する態様が挙げられる。なお、本発明の工業用殺菌剤は、前記一般式(1)で表される化合物と、イソチアゾリン系化合物および/またはニトロアルコール系化合物とを別の製剤として調製し、使用時に混合してもよい。
【0030】
また、前記一般式(1)で表される化合物と、イソチアゾリン系化合物および/またはニトロアルコール系化合物とを配合する割合は、例えば、前記一般式(1)で表される化合物100質量部に対して、イソチアゾリン系化合物およびニトロアルコール系化合物の合計量が、2〜5,000質量部、好ましくは、5〜2,000質量部である。また、イソチアゾリン系化合物およびニトロアルコール系化合物を配合する割合は、上記の配合割合の範囲において、例えば、前記一般式(1)で表される化合物100質量部に対して、イソチアゾリン系化合物が、2〜1,000質量部、好ましくは、5〜500質量部であり、ニトロアルコール系化合物が、10〜5,000質量部、好ましくは、50〜2,000質量部である。
【0031】
そして、このようにして配合される本発明の工業用殺菌剤は、後述する適用対象において、細菌、かび、酵母、藻の少なくとも1つに対して優れた防除効果を発現するため、これらの防除剤として好適に用いられる。また、本発明の工業用殺菌剤は、前記一般式(1)で表される化合物と、イソチアゾリン系化合物および/またはニトロアルコール系化合物とを予め配合して、製剤化したものを後述する適用対象に添加してもよく、また、前記一般式(1)で表される化合物と、イソチアゾリン系化合物および/またはニトロアルコール系化合物とを、後述する適用対象に、それぞれ個別に添加して、後述する適用対象において作用させてもよい。
【0032】
本発明の工業用殺菌剤を製剤化する場合には、特に限定されることなく、公知の方法を用いることができ、その目的および用途に応じて、例えば、液剤(水懸濁剤および油剤を含む。)、ペースト剤、粉剤、粒剤、マイクロカプセルなどの公知の種々の剤型に製剤化すればよい。また、包接化合物として調製してもよく、さらに、層状ケイ酸塩などのモンモリロナイト(スメクタイト類など)などに担持させ、或いは、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルクなどに吸着させることにより調製してもよい。
【0033】
これらのうち、例えば、液剤として製剤化する場合には、前記一般式(1)で表される化合物と、イソチアゾリン系化合物および/またはニトロアルコール系化合物とを、上記した配合割合で、適宜溶剤に溶解または分散すればよい。より具体的には、例えば、液剤100質量%中に、溶剤が1〜99.8質量%、前記一般式(1)で表される化合物が0.1〜95質量%となる割合でそれぞれ配合し、溶解または分散させればよい。用いられる溶剤としては、前記一般式(1)で表される化合物およびイソチアゾリン系化合物および/またはニトロアルコール系化合物とを溶解しまたは分散し得る溶剤であれば特に制限されない。
【0034】
このような溶剤としては、例えば、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノールなどのアルコール系溶剤、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコール系溶剤、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、プロピレンカーボネートなどのケトン系溶剤、例えば、ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチルエーテルなどのエーテル系溶剤、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、γ−ブチロラクトン、アジピン酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、コハク酸ジメチルなどのエステル系溶剤、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、N−メチルピロリドンなどの極性溶剤などが挙げられる。これらのうち、好ましくは、水、アルコール系溶剤、グリコール系溶剤、極性溶剤が挙げられる。これら溶剤は、単独または2種以上併用してもよい。
【0035】
また、本発明の工業用殺菌剤は、その目的および用途によって、公知の添加剤、例えば、他の防藻剤および/または防かび剤、界面活性剤、酸化防止剤、光安定剤などを添加してもよい。他の防藻剤および/または防かび剤としては、例えば、ジチオール系化合物、チオフェン系化合物、ハロアセチレン系化合物、フタルイミド系化合物、ハロアルキルチオ系化合物、ピリチオン系化合物、フェニルウレア系化合物、トリアジン系化合物、グアニジン系化合物、トリアゾール系化合物、ベンズイミダゾール系化合物、四級アンモニウム塩系化合物などが挙げられる。
【0036】
ジチオール系化合物としては、例えば、4,5−ジクロロ−1,2−ジチオール−3−オンなどが挙げられる。チオフェン系化合物としては、例えば、3,3,4−トリクロロテトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド、3,3,4,4−テトラクロロテトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシドなどが挙げられる。ハロアセチレン系化合物としては、例えば、N−ブチル−3−ヨードプロピオール酸アミド、3−ヨード−2−プロピニルブチルカーバメートなどが挙げられる。
【0037】
フタルイミド系化合物としては、例えば、N−1,1,2,2−テトラクロロエチルチオ−テトラヒドロフタルイミド(Captafol)、N−トリクロロメチルチオ−テトラヒドロフタルイミド(Captan)、N−ジクロロフルオロメチルチオフタルイミド(Fluorfolpet)、N−トリクロロメチルチオフタルイミド(Folpet)などが挙げられる。
【0038】
ハロアルキルチオ系化合物としては、例えば、N−ジメチルアミノスルホニル−N−トリル−ジクロロフルオロメタンスルファミド(Tolylfluanide)、N−ジメチルアミノスルホニル−N−フェニル−ジクロロフルオロメタンスルファミド(Dichlofluanide)などが挙げられる。ピリチオン系化合物としては、例えば、ナトリウムピリチオン、ジンクピリチオンなどが挙げられる。
【0039】
フェニルウレア系化合物としては、例えば、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチルウレアなどが挙げられる。トリアジン系化合物としては、例えば、2−メチルチオ−4−t−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−s−トリアジンなどが挙げられる。グアニジン系化合物としては、例えば、1,6−ジ−(4’−クロロフェニルジグアニド)−ヘキサン、ポリヘキサメチレンビグアニジン塩酸塩などが挙げられる。
【0040】
トリアゾール系化合物としては、例えば、α−[2−(4−クロロフェニル)エチル]−α−(1,1−ジメチルエチル)−1H−1,2,4−トリアゾール−1−エタノール(慣用名:テブコナゾール)、1−[[2−(2,4−ジクロロフェニル)−4−n−プロピル−1,3−ジオキソラン−2−イル]メチル]−1H−1,2,4−トリアゾール(慣用名:プロピコナゾール)、1−[[2−(2,4−ジクロロフェニル)−1,3−ジオキソラン−2−イル]メチル]−1H−1,2,4−トリアゾール(慣用名:アザコナゾール)、α−(4−クロロフェニル)−α−(1−シクロプロピルエチル)−1H−1,2,4−トリアゾール−1−エタノール(慣用名:シプロコナゾール)などが挙げられる。
【0041】
ベンズイミダゾール系化合物としては、例えば、メチル−2−ベンズイミダゾールカルバメート、エチル−2−ベンズイミダゾールカルバメート、2−(4−チアゾリル)ベンズイミダゾールなどが挙げられる。四級アンモニウム塩系化合物としては、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、塩化ベンザルコニウム、ジ−n−デシル−ジメチルアンモニウムクロライド、1−ヘキサデシルピリジニウムクロライドなどが挙げられる。
【0042】
また、他の防藻剤および/または防かび剤として、その他に、例えば、ジヨードメチル−p−トルイルスルホン、p−クロロフェニル−3−ヨードプロパルギルフォルマールなどの有機ヨウ素系化合物、例えば、テトラメチルチウラムジスルフィドなどのチオカーバメート系化合物、例えば、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリルなどのニトリル系化合物、例えば、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルフォニル)ピリジンなどのピジリン系化合物、例えば、2−(4−チオシアノメチルチオ)ベンゾチアゾールなどのベンゾチアゾール系化合物、例えば、3−ベンゾ[b]チエン−2−イル−5,6−ジヒドロ−1,4,2−オキサチアジン−4−オキサイドなどのオキサチアジン系化合物などが挙げられる。
【0043】
これらの他の防藻剤および/または防かび剤は、単独または2種以上併用してもよい。また、他の防藻剤および/または防かび剤の配合割合は、その剤型および目的ならびに用途によって適宜決定されるが、例えば、前記一般式(1)で表される化合物100質量部に対して、1〜9,000質量部、好ましくは、3〜8,000質量部である。
【0044】
また、界面活性剤としては、例えば、石鹸類、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両イオン界面活性剤、高分子界面活性剤など、公知の界面活性剤が挙げられ、好ましくは、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤が挙げられる。
【0045】
また、酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2’−メチレンビス[4−メチル−6−t−ブチルフェノール]などのフェノール系酸化防止剤、例えば、アルキルジフェニルアミン、N,N’−ジ−s−ブチル−p−フェニレンジアミンなどのアミン系酸化防止剤などが挙げられる。これら、界面活性剤および酸化防止剤は、例えば、液剤の場合には、液剤100質量部に対して0.1〜5質量部添加される。また、光安定剤としては、例えば、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケートなどのヒンダードアミン系光安定剤などが挙げられる。このような光安定剤は、例えば、液剤の場合には、液剤100質量部に対して0.1〜10質量部添加される。
【0046】
そして、このようにして得られる本発明の工業用殺菌剤は、塗料、インク、樹脂エマルション、金属加工油剤、湿し水を適用対象として、細菌、かび、酵母、藻に対する優れた防除効果を発現することができる。塗料としては、特に制限されず、例えば、油性塗料、酒精塗料、NAD塗料、電着塗料、粉体塗料、セルロース塗料、合成樹脂塗料、水性塗料、漆系塗料、ゴム系塗料などが挙げられる。好ましくは、合成樹脂塗料、水性塗料に適用される。
【0047】
合成樹脂塗料としては、例えば、フェノール樹脂塗料、フタル酸樹脂塗料(例えば、アルキド樹脂塗料など)、マレイン酸樹脂塗料、尿素樹脂塗料、メラミン樹脂塗料、ビニル樹脂塗料(例えば、酢酸ビニル樹脂塗料、塩化ビニル樹脂塗料、スチレン樹脂塗料、アクリル酸樹脂塗料、ポリビニルブチラール樹脂塗料など)、エポキシ樹脂塗料、シリコーン樹脂塗料、フラン樹脂塗料、ポリエステル樹脂塗料、ウレタン樹脂塗料、ニトロセルロース樹脂塗料、アミノ樹脂塗料、フッ素樹脂塗料などが挙げられる。
【0048】
水性塗料としては、例えば、水性ペイント、エマルション油ペイント、乳化重合塗料(例えば、酢酸ビニル樹脂乳化重合塗料、塩化ビニリデン塩化ビニル共重合体乳化重合塗料、アクリル酸樹脂乳化重合塗料、スチレン樹脂乳化重合塗料、合成ゴムラテックス塗料など)などが挙げられる。
【0049】
本発明の工業用殺菌剤を塗料に適用する場合には、例えば、塗料100質量部に対して、本発明の工業用殺菌剤を含む製剤として、例えば、0.05〜10質量部、好ましくは、0.1〜5質量部添加して混合すればよい。このようにして調製される塗料は、本発明の工業用殺菌剤が添加されるため、細菌、かび、酵母、藻の発生が防除され、長期にわたって良好な品質を保持することができる。また、このような塗料は、例えば、建築用途、製紙用途、自動車用途、船舶用途、重防食用途などに用いられる。
【0050】
インクとしては、油性インク、水性インクなど、特に制限されず、例えば、筆記用インク、印刷インク、複写インク、記標インク、特殊インク(例えば、不消インク、隠顕インクなど)などが挙げられる。好ましくは、これらのうちの水性インクに適用される。本発明の工業用殺菌剤をインクに適用する場合には、例えば、インク100質量部に対して、本発明の工業用殺菌剤を含む製剤として、例えば、0.05〜10質量部、好ましくは、0.1〜5質量部添加して混合すればよい。このようにして調製されるインクは、本発明の工業用殺菌剤が添加されるため、細菌、かび、酵母、藻の発生が防除され、長期にわたって良好な品質を保持することができる。
【0051】
樹脂エマルションとしては、特に制限されず、例えば、アクリル樹脂エマルション、ウレタン樹脂エマルション、酢酸ビニル樹脂エマルション、アクリル−スチレン樹脂エマルション、エチレン−酢酸ビニル樹脂エマルションなどが挙げられる。好ましくは、アクリル樹脂エマルション、酢酸ビニル樹脂エマルションに適用される。本発明の工業用殺菌剤を樹脂エマルションに適用する場合には、例えば、樹脂エマルション100質量部に対して、本発明の工業用殺菌剤を含む製剤として、例えば、0.05〜10質量部、好ましくは、0.1〜5質量部添加して混合すればよい。このようにして調製される樹脂エマルションは、本発明の工業用殺菌剤が添加されるため、細菌、かび、酵母、藻の発生が防除され、長期にわたって良好な品質を保持することができる。
【0052】
金属加工油剤は、金属材料の金属加工に用いられる油剤であって、不水溶性金属加工油剤、水溶性金属加工油剤など、特に制限されず、例えば、切削油剤、研削油剤、作動油剤などが挙げられる。好ましくは、水溶性金属加工油剤に適用される。本発明の工業用殺菌剤を金属加工油剤に適用する場合には、例えば、金属加工油剤100質量部に対して、本発明の工業用殺菌剤を含む製剤として、例えば、0.1〜20質量部、好ましくは、0.5〜10質量部添加して混合すればよい。このようにして調製される金属加工油剤は、本発明の工業用殺菌剤が添加されるため、細菌、かび、酵母、藻の発生が防除され、長期にわたって良好な品質を保持することができる。
【0053】
湿し水は、平版印刷おいて、非画像部への印刷インクの付着の防止、画像部の劣化防止、版画湿度の保持、非画像部と画像部との清浄などを目的として、版面を湿らせる水溶液であって、特に制限されず、例えば、広告、宣伝、カタログなどの用途としての商業用湿し水、新聞印刷用湿し水などが挙げられる。
【0054】
本発明の工業用殺菌剤を湿し水に適用する場合には、例えば、湿し水100質量部に対して、本発明の工業用殺菌剤を含む製剤として、例えば、0.1〜20質量部、好ましくは、0.5〜10質量部添加して混合すればよい。このようにして調製される湿し水は、本発明の工業用殺菌剤が添加されるため、細菌、かび、酵母、藻の発生が防除され、長期にわたって良好な品質を保持することができる。
【0055】
なお、本発明の工業用殺菌剤は、上記した他に、例えば、リグニンスルホン酸またはその塩(塩としては、ナトリウム、カリウムなどの1価の金属が挙げられる。)を含むセメント減水剤や、植物の延命剤などの用途としても、好適に用いることができる。また、本発明の工業用殺菌剤は、上記した適用対象において、pHが、3〜13、好ましくは、4〜12の範囲で用いることができる。さらには、例えば、SO22-、SO32-、HSO2-、HSO3-、S232-、好ましくは、SO32-、HSO3-、S232-などの還元剤の存在下においても、その効力を有効に発現することができる。なお、この場合の還元剤の濃度は、例えば、製品中1〜10,000ppmであることが好ましい。
【0056】
次に本発明で使用する前記一般式(1)で表される化合物の合成例を挙げる。合成例1(前記化合物(1)の合成)
[下記構造式で示される化合物(1−1)の合成]

DMF(ジメチルホルムアミド)75mlに1,4−ブタンジオール8.24g(91.43mmol)を加え、氷冷下カリウムtert−ブトキシド10.3g(91.79mmol)を添加し、室温で1.5時間撹拌した。このスラリー液に−8〜−3℃で3−クロロメチルピリジン塩酸塩1.0g(6.10mmol)およびカリウムtert−ブトキシド0.68g(6.06mmol)を交互に添加し、これを15回繰り返し、全量で3−クロロメチルピリジン塩酸塩15.0g(91.45mmol)およびカリウムtert−ブトキシド10.2g(90.9mmol)を添加した。
【0057】
添加終了後、反応混合物をHPLC(条件1)で分析すると、3−クロロメチルピリジンのピークが確認されたので、3−クロロメチルピリジンのピークが消失するまで、カリウムtert−ブトキシドを5℃以下で添加した。追加したカリウムtert−ブトキシドは1.13g(10.07mmol)であった。反応混合物を固液分離し、ケークをDMF30mlで洗浄、ろ洗液からDMFを減圧下に留去して油状の粗生成物(化合物(1−1))17.1gを得た。得られたオイルをHPLC(条件1)で分析すると、前記化合物(1−1)の面積%は76.0%であった。
【0058】
前記化合物(1−1)の粗生成物を水30mlに溶解し、トルエンで洗浄した。その後、水層に食塩6gを加え、ジクロロメタン20ml×2で抽出し、無水硫酸マグネシウムで脱水後、溶媒を留去し、油状の前記化合物(1−1)9.21g(収率(1,4−ブタンジオールより):57.2%)を得た。得られたオイルをHPLC(条件1)で分析すると、面積%は99.4%であった。(1H−NMR(CDCl3):δ1.67−1.75(4H,m,−(C22−)、δ2.35(1H,s,O)、δ3.52−3.56(2H,t,J=6.0Hz,C2)、δ3.64−3.68(2H,t,J=6.0Hz,C2)、δ4.52(2H,s,C2)、δ7.27−7.31(1H,m,arom)、δ7.66−7.70(1H,m,arom)、δ8.52−8.56(2H,m,arom ×2)、MS(APCl):m/z=182[M+H]+
【0059】
HPLC(条件1)
・カラム:Inertsil ODS-3(GL Sciences)4.6mmφ×250mm
・カラム温度:15℃付近の一定温度
・移動相:A−0.5%酢酸アンモニウム水溶液、B−アセトニトリル A:B=70:30(一定)
・流量:1.0ml/min
・検出器:UV254nm
・注入量:20μL
【0060】
[下記構造式で示される化合物(1−2)の合成]

DMF25mlに前記化合物(1−1)5.0g(27.59mmol)を加え、氷冷下カリウムtert−ブトキシド3.1g(27.63mmol)を添加した。このスラリーに5〜6℃で3−クロロメチルピリジン塩酸塩0.5g(3.05mmol)およびカリウムtert−ブトキシド0.34g(3.03mmol)を交互に添加し、これを9回繰り返し、全量で3−クロロメチルピリジン塩酸塩4.5g(27.43mmol)およびカリウムtert−ブトキシド3.06g(27.27mmol)を添加した。添加終了後、反応混合物をHPLC(条件1)で分析すると、3−クロロメチルピリジンおよび前記化合物(1−1)のピークが確認されたので、3−クロロメチルピリジンのピークおよび前記化合物(1−1)のピークが消失するまで、カリウムtert−ブトキシドを5℃以下で添加した。追加したカリウムtert−ブトキシドは0.62g(5.53mmol)であった。
【0061】
反応混合物を固液分離し、ケークをDMF30mlで洗浄、ろ洗液からDMFを減圧下に留去した。この濃縮残液にジクロロメタン20mlを添加し、溶解液を飽和食塩水で洗浄後、溶媒を留去し、油状物5.8gを得た。この粗生成物0.5gについてシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム−メタノール)で精製を行い、油状の前記化合物(1−2)0.3gを得た。(1H−NMR:δ1.70−1.74(4H,m,−(C22−)、δ3.50−3.54(4H,m,C2×2)、δ4.51(4H,s,C2×2)、δ7.25−7.29(2H,dd,J=4.9Hz,7.9Hz,arom×2)、δ7.65−7.69(2H,dt,J=1.7Hz,7.9Hz,arom×2)、δ8.52−8.57(4H,dd,J=1.7Hz,4.9Hz,arom×4)、MS(APCl):m/z=273[M+H]+
【0062】
[化合物(1)の合成]

前記化合物(1−2)5.0g(18.36mmol)にオクチルブロマイド35.5g(183.8mmol)を加え、70〜80℃で20時間反応を行った。反応混合物をHPLC(条件2)で分析すると、前記化合物(1−2)のピークは消失していた。反応混合物より上層のオクチルブロマイド層を分離し、下層油状物をアセトニトリル−酢酸エチル=1:3(v/v)混液に注加した。混合物を冷却し、析出結晶を0℃でろ過、減圧乾燥を行い、灰白色結晶9.7g(粗収率(前記化合物(1−2)より):85%)を得た。
【0063】
得られた結晶2gについてアセトニトリル−酢酸エチル=1:3(v/v)混液で再結晶を行い、微灰白色結晶の化合物(1)1.6gを得た。(融点:52〜53℃、1H−NMR(d6−DMSO):δ0.82−0.89(6H,t,J=5.3Hz,C3×2)、δ1.25−1.34(20H,m,−(C25−×2)、δ1.77−1.80(4H,m,−(C22−×2)、δ2.04−2.09(4H,t,J=7.0Hz,C2×2)、δ3.70−3.72(4H,t,J=5.9Hz,C2×2)、δ4.67−4.71(4H,t,J=7.0Hz,C2×2)、δ4.84(4H,s,C2×2)、δ8.11−8.15(2H,dd,J=6.0Hz,8.0Hz,arom×2)、δ8.56−8.59(2H,d,J=8.0Hz,arom×2)、δ8.69−8.92(4H,dd,J=6.0Hz,13.1Hz,arom×4)、MS(ESI):m/z=579[M−Br]+)。
【0064】
HPLC(条件2)
・カラム:Inertsil ODS-3(GL Sciences)4.6mmφ×250mm
・カラム温度:15℃付近の一定温度
・移動相:A−0.5%酢酸アンモニウム水溶液、B−アセトニトリル A:70%(12min保持)→(10min)→A:50%(14min保持)→A:70%
・流量:1.0ml/min
・検出器:UV254nm
・注入量:20μL
【0065】
合成例2(前記化合物(2)の合成)
[下記構造式で示される化合物(2−1)の合成:3−クロロメチルピリジン塩酸塩から4−クロロメチルピリジン塩酸塩に代え、反応条件を以下の通りにした他は合成例1と同様]

DMF75mlに1,4−ブタンジオール8.24g(91.43mmol)を加え、氷冷下カリウムtert−ブトキシド10.3g(91.79mmol)を添加し、室温で1時間撹拌した。このスラリーに−10〜−5℃で4−クロロメチルピリジン塩酸塩1.5g(9.14mmol)、カリウムtert−ブトキシド1.03g(9.18mmol)を交互に添加し、これを10回繰り返した。
【0066】
添加終了後、反応混合物をHPLC(条件1)で分析すると、4−クロロメチルピリジンのピークが確認されたので、4−クロロメチルピリジンのピークが消失するまでカリウムtert−ブトキシドを10℃以下で添加した。追加したカリウムtert−ブトキシドは1.03g(9.18mmol)であった。反応混合物を固液分離し、ケークをDMF20mlで洗浄、ろ洗液からDMFを減圧下に留去し油状の粗生成物17.0gを得た。得られたオイルをHPLC(条件1)で分析すると、前記化合物(2−1)の面積%は63.0%であった。
【0067】
粗生成物を水30mlに溶解し、トルエンで洗浄した。その後、水層に食塩6gを加え、ジクロロメタン20ml×2で抽出し、無水硫酸マグネシウムで脱水後、溶媒を留去し、油状の前記化合物(2−1)9.21g(収率(1,4−ブタンジオールより):57.2%)を得た。得られたオイルをHPLC(条件1)で分析すると、面積%は99.4%であった。(1H−NMR(CDCl3):δ1.65−1.80(4H,m,−(C22−)、δ2.4(1H,s,O)、δ3.54−3.58(2H,t,J=5.9Hz,C2)、δ3.66−3.70(2H,t,J=5.9Hz,C2)、δ4.53(2H,s,C2)、δ7.24−7.26(2H,dd,J=1.5Hz,4.5Hz,arom×2)、δ8.55−8.57(2H,dd,J=1.5Hz,4.5Hz,arom×2)、MS(APCl):m/z=182[M+H]+
【0068】
[下記構造式で示される化合物(2−2)の合成:3−クロロメチルピリジン塩酸塩から4−クロロメチルピリジン塩酸塩に代え、反応条件を以下の通りにした他は合成例1と同様]

DMF49mlに1,4−ブタンジオール2.7g(30.0mmol)を加え、氷冷下カリウムtert−ブトキシド3.4g(30.0mmol)を添加し、室温で1時間撹拌した。このスラリーに−5〜−3℃で4−クロロメチルピリジン塩酸塩0.98g(6mmol)、カリウムtert−ブトキシド0.68g(6mmol)を交互に添加し、これを5回繰り返した。これ以降の添加は、−5〜−2℃で4−クロロメチルピリジン塩酸塩0.98g(6mmol)、カリウムtert−ブトキシド1.36g(12mmol)を交互に添加し、これを5回繰り返し、全量で4−クロロメチルピリジン塩酸塩9.8g(60mmol)、カリウムtert−ブトキシド10.2g(90mmol)を添加した。
【0069】
添加終了後、反応混合物をHPLC(条件1)で分析すると、4−クロロメチルピリジンおよび前記化合物(2−1)のピークが確認されたので、4−クロロメチルピリジンのピークおよび前記化合物(2−1)のピークが消失するまで、4−クロロメチルピリジン塩酸塩とカリウムtert−ブトキシドを10℃以下で添加した。追加した4−クロロメチルピリジン塩酸塩は2.0g(12mmol)、カリウムtert−ブトキシドは2.6g(24mmol)であった。反応混合物を固液分離し、ケークをDMF20mlで洗浄、ろ洗液からDMFを減圧下に留去した。
【0070】
この濃縮残液に酢酸エチル50mlを添加し、溶解液を水で洗浄後、溶媒を留去し、黄色結晶の前記化合物(2−2)を得た。該化合物の結晶をHPLC(条件1)で分析すると、前記化合物(2−2)の面積%は70.5%であった。得られた粗生成物5g(18mmol)をイソプロピルアルコール23.3gで再結晶を行い、白色結晶の前記化合物(2−2)2.7gを得た。(融点:98.6〜100.2℃、1H−NMR(CDCl3):δ1.75−1.79(4H,m,−(C22−)、δ3.53−3.57(4H,m,C2×2)、δ4.52(4H,s,C2×2)、δ7.23−7.27(4H,dd,J=0.8Hz,6.0Hz,arom×4)、δ8.55−8.57(4H,dd,J=1.6Hz,6.0Hz,arom×4)、MS(APCl):m/z=273[M+H]+
【0071】
[下記構造式の化合物(2)の合成:前記化合物(2−2)を4−クロロメチルピリジン塩酸塩から誘導したものに代え、反応条件を以下の通りにした他は合成例1と同様]

前記化合物(2−2)2.0g(7.34mmol)にオクチルブロマイド21.3g(110.3mmol)を加え、70〜80℃で53時間反応を行った。反応混合物をHPLC(条件2)で分析すると、前記化合物(2−2)のピークは消失していた。反応混合物からオクチルブロマイドを減圧下で留去し、油状の前記化合物(2)5.2g(粗収率:107.7%)を得た。得られたオイルをHPLC(条件2)で分析すると、化合物(2)のピークの面積%は81.3%であった。
【0072】
合成例3(前記化合物(3)の合成)

前記化合物(1−2)5.0g(18.36mmol)にデシルブロマイド40.6g(183.8mmol)を加え、70〜80℃で20時間反応を行った。
【0073】
反応混合物をHPLC(条件3)で分析すると、前記化合物(1−2)のピークは消失していた。反応混合物より上層のデシルブロマイド層を分離し、下層油状物をアセトニトリル−酢酸エチル=1:3(v/v)混液に注加した。混合物を冷却し、析出結晶を0℃でろ過、減圧乾燥を行い、灰白色結晶11.6g(粗収率(前記化合物(1−2)より):88.5%)を得た。該化合物の結晶をHPLC(条件1)で分析すると、前記化合物(3)の面積%は98.4%であった。融点およびNMR分析値は以下の通りであった。
(融点:76.8〜79.2℃、1H−NMR(CD3OD):δ0.9(6H、t、C3×2)、δ1.29〜1.40(28H、m、(C27×2)、δ1.77〜1.84(4H、m、C2×2)、δ2.00〜2.05(4H、t、C2×2)、δ3.69〜3.70(4H、t、C2×2)、δ4.64〜4.68(4H、t、C2×2)、δ4.77(4H、s、C2×2)、δ8.07〜8.11(2H、dd、J=、arom×2)、δ8.55〜8.57(2H、d、arom×2)、δ8.93〜8.94(2H、d、arom×2)、δ9.02(2H、s、arom×2)
【0074】
HPLC(条件3)
・カラム:Inertsil ODS-3(GL Sciences)4.6mmφ×250mm
・カラム温度:15℃付近の一定温度
・移動相:A−0.5%酢酸アンモニウム水溶液、B−アセトニトリル A:60%(5min保持)→(10min)→A:30%(30min保持)→A:60%
・流量:1.0ml/min
・検出器:UV254nm
・注入量:10μL
【0075】
合成例4(前記化合物(4)の合成)
合成例3におけるデシルブロマイドに代えて当モル量のドデシルブロマイドを用いた以外は合成例3と同様にして下記構造式で表される化合物(4)13.0g(粗収率:91.5%)を得た。得られた化合物(4)をHPLC(条件4)で分析すると、化合物(4)のピークの面積%は97.5%であった。また、融点およびNMR分析値は以下の通りであった。

【0076】
(融点:90.0〜91.4℃、1H−NMR(CD3OD):δ0.89(6H、t、C3×2)、δ1.26〜1.39(36H、m、(C29×2)、δ1.79〜1.82(4H、m、C2×2)、δ1.84〜2.05(4H、m、C2×2)、δ3.67〜3.70(4H、t、C2×2)、δ4.65〜4.68(4H、t、C2×2)、δ4.77(4H、s、C2×2)、δ8.07〜8.11(2H、dd、arom×2)、δ8.55〜8.57(2H、d、arom×2)、δ8.93〜8.94(2H、d、arom×2)、δ9.02(2H、s、arom×2)
【0077】
HPLC(条件4)
・カラム:CAPCELL PAK C18 SG120(資生堂)4.6mmφ×250mm
・カラム温度:15℃付近の一定温度
・移動相:A−0.1Mリン酸二水素カリウム(0.05%燐酸)水溶液、B−80%アセトニトリル水溶液 A:B=30:70
・流量:1.0ml/min
・検出器:UV254nm
・注入量:20μL
【実施例】
【0078】
以下に実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。なお、以下の実施例および比較例に用いる有効成分の略号を下記に示す。
MIT:2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン
BIT:1,2−ベンツイソチアゾリン−3−オン
MITs:2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン6質量%と、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(以下略号をCL−MITとする。)20質量%との混合物
OIT:2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン
BNPD:2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール
DBNE:2,2−ジブロモ−2−ニトロ−1−エタノール
【0079】
(1)実施例および比較例の調製
実施例1
前記化合物(1)30g、コーデック50C(MIT:50質量%、ロームアンドハース社製)6gを、プロピレングリコール64gに加え、室温で撹拌して溶解することにより、100gの工業用殺菌剤を得た。
実施例2
前記化合物(2)28g、プロクセルプレスペーストD(BIT:80質量%、アビシア社製)4.0gを、プロピレングリコール68gに加え、室温で撹拌して溶解することにより、100gの工業用殺菌剤を得た。
【0080】
実施例3
前記化合物(3)3g、ケーソンLX SF25(MITs:26質量%、ロームアンドハース社製)11.5gを、プロピレングリコール85.5gに加え、室温で撹拌して溶解することにより、100gの工業用殺菌剤を得た。
実施例4
前記化合物(4)30g、ゾーネン0/100(OIT:100質量%、ケミクレア社製)3.0gを、プロピレングリコール67.0gに加え、室温で撹拌して溶解することにより、100gの工業用殺菌剤を得た。
【0081】
実施例5
前記化合物(1)1.5g、マイヤサイドAS(BNPD:99質量%、長瀬産業社製)20.2gを、プロピレングリコール78.3gに加え、室温で撹拌して溶解することにより、100gの工業用殺菌剤を得た。
実施例6
前記化合物(2)1.5g、ジブニロールA−75(DBNE:75質量%、ケイアイ化成社製)20gを、プロピレングリコール78.5gに加え、室温で撹拌して溶解することにより、100gの工業用殺菌剤を得た。
【0082】
比較例1
前記化合物(1)60gを、プロピレングリコール40gに加え、室温で撹拌して溶解することにより、100gの工業用殺菌剤を得た。
比較例2
前記化合物(2)6.1gを、プロピレングリコール93.9gに加え、室温で撹拌して溶解することにより、100gの工業用殺菌剤を得た。
【0083】
比較例3
コーデック50C(MIT:50質量%、ロームアンドハース社製)12gを、プロピレングリコール88gに加え、室温で撹拌して溶解することにより、100gの工業用殺菌剤を得た。
比較例4
プロクセルプレスペーストD(BIT:80質量%、アビシア社製)7.5gを、メチルカルビトール92.5gに加え、室温で撹拌して溶解することにより、100gの工業用殺菌剤を得た。
【0084】
比較例5
ケーソンLX SF25(MITs:26質量%、ロームアンドハース社製)23.1gを、プロピレングリコール76.9gに加え、室温で撹拌して溶解することにより、100gの工業用殺菌剤を得た。
比較例6
ゾーネン0/100(OIT:100質量%、ケミクレア社製)6gを、プロピレングリコール94gに加え、室温で撹拌して溶解することにより、100gの工業用殺菌剤を得た。
【0085】
比較例7
マイヤサイドAS(BNPD:99質量%、長瀬産業社製)21.7gを、プロピレングリコール78.3gに加え、室温で撹拌して溶解することにより、100gの工業用殺菌剤を得た。
比較例8
ジブニロールA−75(DBNE:75質量%、ケイアイ化成社製)22gを、プロピレングリコール78gに加え、室温で撹拌して溶解することにより、100gの工業用殺菌剤を得た。
比較例9
前記化合物(3)21.7gを、ジメチルスルホキシド78.3gに加え、室温で撹拌して溶解することにより、100gの工業用殺菌剤を得た。
【0086】
(2)効果試験
1)塗料
ビニデラ300(アクリル系塗料、関西ペイント社製)に対して、表1に示す各実施例および各比較例を、0.1質量%の割合となるように添加して、塗料を調製した。次いで、この塗料100gに対して塗料腐敗種2gを添加して、33℃の恒温槽で1ヶ月放置後、細菌およびかびの生菌数を測定した。初期および1ヶ月放置後の菌数を表1に示す。
【0087】

【0088】
2)インク
藍インク(サカタインクス社製)に対して、表2に示す各実施例および各比較例を、0.2質量%の割合となるように添加して、インクを調製した。次いで、このインク100gに対してインク腐敗種(サカタインクス供試品)2gを添加して、33℃の恒温槽で2ヶ月放置後、細菌の生菌数を測定した。なお、2ヶ月放置している間には、毎週、インク腐敗種2gを添加した。初期および2ヶ月放置後の菌数を表2に示す。
【0089】

【0090】
3)樹脂エマルション
A−50(アクリル樹脂エマルション、ガンツ化成社製)に対して、表3に示す各実施例および各比較例を、0.1質量%の割合となるように添加して、樹脂エマルションを調製した。次いで、この樹脂エマルション100gに対して樹脂エマルション腐敗種(ガンツ化成供試品)2gを添加して、33℃の恒温槽で1ヶ月放置後、細菌およびかびの生菌数を測定した。初期および1ヶ月放置後の菌数を表3に示す。
【0091】

【0092】
4)金属加工油剤
切削油剤(ソリューションタイプ、日本クエーカー社製)に対して、表4に示す各実施例および各比較例を、4.0質量%の割合となるように添加して、金属加工油剤を調製した。次いで、300mL三角フラスコに、減菌水100mL、とうもろこし粉5g、鋳鉄切屑3g、潤滑油1mLおよび調製した金属加工油剤3mLを加え、これを培地として、金属加工油剤腐敗液(バチルス・ズブチリス(IFO3531)、大腸菌(IFO3044)、シュードモナスアウレギノーサ(IFO3080)、セラチアマルセッセンス(IFO3735)および黄色ブドウ球菌(IFO3061)から調製)1mLを添加して、30℃の恒温槽で振盪培養し、1ヶ月放置後、細菌の生菌数を測定した。なお、1ヶ月振盪培養している間には、週に2回、金属加工油剤腐敗液1mLを添加した。初期および1ヶ月放置後の菌数を表4に示す。
【0093】

【0094】
5)湿し水
広告用湿し水(ニチナン商事社製)に対して、表5に示す各実施例および各比較例を、3.0質量%の割合となるように添加して、湿し水を調製した。次いで、この湿し水を、水で50倍希釈した後、湿し水腐敗液(バチルス・ズブチリス(IFO3531)、大腸菌(IFO3044)、シュードモナスアウレギノーサ(IFO3080)、セラチアマルセッセンス(IFO3735)および黄色ブドウ球菌(IFO3061)から調製)2gを添加して、30℃の恒温槽で振盪培養し、1ヶ月放置後、細菌の生菌数を測定した。なお、1ヶ月振盪培養している間には、週に1回、湿し水腐敗液2gを添加した。初期および1ヶ月放置後の菌数を表5に示す。
【0095】

【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の工業用殺菌剤は、塗料、インク、樹脂エマルション、金属加工油剤、湿し水を適用対象として、細菌、かび、酵母、藻に対する優れた防除効果を発現することができる。そのため、本発明の工業用殺菌剤が含有される塗料、インク、樹脂エマルション、金属加工油剤、湿し水は、細菌、かび、酵母、藻の発生が防除され、長期にわたって良好な品質を保持することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物と、イソチアゾリン系化合物および/またはニトロアルコール系化合物とを含有し、適用対象が、塗料、インク、樹脂エマルション、金属加工油剤および湿し水から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする工業用殺菌剤。

(但し、上記一般式において、R1およびR4は、炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐の同一または異なるアルキレン基であり、R2およびR5は、水素原子、同一または異なるハロゲン原子、低級アルキル基または低級アルコキシ基であり、R3は、炭素数2〜12の直鎖若しくは分岐のアルキレン基であり、R6は、炭素数1〜18の直鎖若しくは分岐のアルキル基であり、Zは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子若しくはOSO27基(R7は、低級アルキル基若しくは置換或いは無置換のフェニル基である)である。)
【請求項2】
前記一般式(1)において、R1およびR4は、ピリジン環の3または4位置に結合しているメチレン基であり、R2およびR5は、水素原子であり、R3は、テトラメチレン基であり、R6は、オクチル基、デシル基およびドデシル基から選ばれる基であり、Zは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子若しくはOSO27基(R7は、低級アルキル基若しくは置換或いは無置換のフェニル基である)である請求項1に記載の工業用殺菌剤。
【請求項3】
前記一般式(1)で表される化合物は、下記式(1)〜(4)で表される少なくとも1種の化合物である請求項1に記載の工業用殺菌剤。




【請求項4】
イソチアゾリン系化合物が、下記一般式(2)および/または下記一般式(3)で示される請求項1〜3のいずれか1項に記載の工業用殺菌剤。

(一般式(2)中、R8は、置換基を有していてもよい炭化水素基または水素原子を、X1およびX2は、同一または相異なって、炭化水素基(X1およびX2が2価の炭化水素基で環形成されている場合を含む。)、ハロゲン原子または水素原子を示す。一般式(3)中、R9は、置換基を有していてもよい炭化水素基または水素原子を、A環は置換基を有していてもよいベンゼン環を示す。)
【請求項5】
ニトロアルコール系化合物が、下記一般式(4)で示される請求項1〜4のいずれか1項に記載の工業用殺菌剤。

(式中、R10は、炭化水素基または水素原子を、R11は、ヒドロキシル基を有する炭化水素基、ハロゲン原子または水素原子を、X3は、ヒドロキシル基を有する炭化水素基またはハロゲン原子を示す。)
【請求項6】
一般式(2)および一般式(3)で示されるイソチアゾリン系化合物の式中、R8およびR9が、炭素数1〜8のアルキル基または水素原子であり、X1およびX2が、ともに水素原子、一方が水素原子で他方が塩素原子またはともに塩素原子である請求項4に記載の工業用殺菌剤。
【請求項7】
一般式(4)で示されるニトロアルコール系化合物の式中、R10が、炭素数1〜4のアルキル基または水素原子であり、R11が、ヒドロキシル基を有する炭素数1〜4のアルキル基、臭素原子または水素原子であり、X3が、ヒドロキシル基を有する炭素数1〜4のアルキル基、臭素原子または塩素原子である請求項5に記載の工業用殺菌剤。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の工業用殺菌剤を含有することを特徴とする塗料、インク、樹脂エマルション、金属加工油剤または湿し水。

【公開番号】特開2006−22014(P2006−22014A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−199008(P2004−199008)
【出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【出願人】(501046958)
【出願人】(595137941)タマ化学工業株式会社 (30)
【Fターム(参考)】