説明

工業用防腐・防汚組成物

【課題】幅広い工業用途に利用可能で、かつそれらの各用途において良好な抗菌活性を有する工業用防腐・防汚組成物を得ることを目的とする。
【解決手段】オキソリニック酸を除くキノロン系化合物またはその塩を含有する工業用防腐・防汚組成物である。さらにイソチアゾリン系化合物、ベンゾイソチアゾリン系化合物、ベンゾイミダゾール系化合物、ハロアセチレン系化合物、テトラヒドロチオフェンジオキシド系化合物およびこれらの塩よりなる群から選択される1種または2種以上の抗菌性化合物を併用することにより、抗菌スペクトルが広がり、かつ抗菌活性が相乗的に向上し、幅広い工業用途に利用することのできる工業用防腐・防汚組成物となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オキソリニック酸を除くキノロン系化合物またはその塩を含有する、工業用防腐・防汚組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
キノロン系化合物は、古くから抗菌薬として用いられてきた。キノロン系抗菌薬としては、ナリジクス酸、ピペミド酸等のオールドキノロン系抗菌薬、ノルフロキサシン等のニューキノロン系抗菌薬が知られている。オールドキノロン系抗菌薬は、主としてグラム陰性桿菌に抗菌活性を示し、ニューキノロン系抗菌薬では、抗菌スペクトルの拡大および抗菌活性の向上が図られている。
【0003】
上記キノロン系化合物のうち、工業用の防菌用途に応用されているものとしては、オキソリニック酸が知られている(特許文献1〜3)。しかし、抗菌薬として汎用される他のキノロン系化合物について、工業用の防腐・防汚への応用は知られていない。また、オキソリニック酸の抗菌活性の向上を図るため、酸化亜鉛と併用した抗菌剤組成物が開示され(特許文献4)、本出願人も、他の所定の抗菌性化合物と併用した工業用抗菌組成物について出願している(特願2009−18810)。一方、他のキノロン系化合物については、ラクトフェリン類の加水分解物または該加水分解物由来の抗菌性ペプチドと併用した抗菌剤が開示されている(特許文献5)。しかしながら、特に工業用途に応用可能な防腐・防汚組成物において、キノロン系抗菌薬の抗菌スペクトルの拡大および抗菌活性の向上を達成したという報告はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−176966号公報
【特許文献2】特開平9−208408号公報
【特許文献3】特開平9−249827号公報
【特許文献4】特開2002−284601号公報
【特許文献5】特開平11−92375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明においては、オキソリニック酸以外のキノロン系化合物についても、工業用の防腐・防汚への応用を可能とし、さらに該化合物を含有する工業用防腐・防汚組成物において、その抗菌スペクトルの拡大および抗菌活性の向上を図ることを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するべく鋭意検討した結果、本発明者らは、オキソリニック酸以外のキノロン系化合物について、枯草菌等、病原性を示さず、環境中に常在する細菌類に対しても抗菌活性を有することを見いだした。さらに、特定の抗菌性化合物と併用することにより、抗菌スペクトルが広がり、かつ抗菌活性の相乗的な向上が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明は、次の[1]〜[10]に関する。
[1]式(1)で示されるキノロン系化合物であって、オキソリニック酸を除く化合物、またはその塩を含有する、工業用防腐・防汚組成物。
【0008】
【化1】

【0009】
[式中、A環は置換されていてもよく、1個または2個の炭素原子が窒素原子に置換された複素環であってもよい6員の芳香族環を示し、RおよびRは同一または異なって、水素原子または置換されていてもよい炭化水素基を示す。また、RはA環の置換基とともに環を形成していてもよい。]
【0010】
[2]さらに、式(2)で示されるイソチアゾリン系化合物、式(3)で示されるベンゾイソチアゾリン系化合物、式(4)で示されるベンゾイミダゾール系化合物、式(5)で示されるハロアセチレン系化合物、式(6)で示されるテトラヒドロチオフェンジオキシド系化合物、およびこれらの塩よりなる群から選択される1種または2種以上を含有する、上記[1]に記載の工業用防腐・防汚組成物。
【0011】
【化2】

【0012】
[式中、Rは水素原子または置換されていてもよい炭化水素基を示し、RおよびRは同一または異なって、それぞれ水素原子、ハロゲン原子または置換されていてもよい炭化水素基を示す。]
【0013】
【化3】

【0014】
[式中、A環は置換されていてもよいベンゼン環を示し、Yは水素原子または置換されていてもよい炭化水素基を示す。]
【0015】
【化4】

【0016】
[式中、A環は置換されていてもよいベンゼン環を示し、Zは−NHCOOR(式中、Rは水素原子またはアルキル基を示す。)で示される基または置換されていてもよい5員または6員の含窒素複素環基を示す。]
【0017】
【化5】

【0018】
[式中、Xはハロゲン原子を示し、RおよびRは同一または異なって、それぞれ水素原子または置換されていてもよい炭化水素基を示し、mは0または1の整数を示す。]
【0019】
【化6】

【0020】
[式中、Y、Y、YおよびYは同一または異なって、それぞれ水素原子、ハロゲン原子または置換されていてもよい炭化水素基を示す。]
【0021】
[3]キノロン系化合物であって、オキソリニック酸を除く化合物が、式(7)および式(8)で示される化合物よりなる群から選択される1種または2種以上である、上記[1]または[2]に記載の工業用防腐・防汚組成物。
【0022】
【化7】

【0023】
[式中、RおよびRは同一または異なって、水素原子または置換されていてもよい炭化水素基を示し、Rは水素原子、ハロゲン原子またはアミノ基、R10は水素原子またはハロゲン原子、R11は置換されていてもよい炭化水素基または置換されていてもよい環状アミノ基を示す。]
【0024】
【化8】

【0025】
[式中、RおよびRは同一または異なって、水素原子または置換されていてもよい炭化水素基を示し、Rは水素原子、ハロゲン原子またはアミノ基、R10は水素原子またはハロゲン原子、R11は置換されていてもよい炭化水素基または置換されていてもよい環状アミノ基、R12は水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよいアルコキシ基または置換されていてもよい炭化水素基を示す。また、RはR12とともに環を形成していてもよい。]
【0026】
[4]キノロン系化合物であって、オキソリニック酸を除く化合物が、エノキサシン、トスフロキサシン、ノルフロキサシン、サラフロキサシン、ジフロキサシン、フレロキサシン、ロメフロキサシン、エンロフロキサシン、シプロフロキサシン、ガチフロキサシン、スパルフロキサシン、ダノフロキサシン、モキシフロキサシン、ガレノキサシン、シタフロキサシン、オルビフロキサシン、ナディフロキサシン、オフロキサシン、レボフロキサシン、パズフロキサシンおよびマルボフロキサシンよりなる群から選択される1種または2種以上である、上記[1]または[2]に記載の工業用防腐・防汚組成物。
[5]イソチアゾリン系化合物が、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4−クロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンおよび4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンよりなる群から選択される1種または2種以上である、上記[2]に記載の工業用防腐・防汚組成物。
[6]イソチアゾリン系化合物が、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンおよび2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンよりなる群から選択される1種または2種以上である、上記[2]に記載の工業用防腐・防汚組成物。
[7]ベンゾイソチアゾリン系化合物が、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンおよびN−n−ブチル−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンよりなる群から選択される1種または2種である、上記[2]に記載の工業用防腐・防汚組成物。
[8]ベンゾイミダゾール系化合物が、メチル 2−ベンゾイミダゾールカルバメート、エチル 2−ベンゾイミダゾールカルバメートおよび2−(4−チアゾリル)ベンゾイミダゾールよりなる群から選択される1種または2種以上である、上記[2]に記載の工業用防腐・防汚組成物。
[9]ハロアセチレン系化合物が、3−ヨード−2−プロピニル N−ブチルカルバメートである、上記[2]に記載の工業用防腐・防汚組成物。
[10]テトラヒドロチオフェンジオキシド系化合物が、3,3,4,4−テトラクロロテトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシドである、上記[2]に記載の工業用防腐・防汚組成物。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、オキソリニック酸以外のキノロン系化合物またはその塩を含有してなり、環境中に存在する種々の細菌に対して抗菌活性を有する工業用防腐・防汚組成物を得ることができる。また、特定の抗菌性化合物を併用することにより、抗菌スペクトルが拡大し、かつ抗菌活性が相乗的に向上するので、さらに様々な態様での使用が可能となり、幅広い工業用途に利用できる優れた工業用防腐・防汚組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明においては、オキソリニック酸以外のキノロン系化合物として、次の式(1)で示されるキノロン系化合物であって、オキソリニック酸を除く化合物が用いられる。
【0029】
【化9】

【0030】
[式中、A環は置換されていてもよく、1個または2個の炭素原子が窒素原子に置換された複素環であってもよい6員の芳香族環を示し、RおよびRは同一または異なって、水素原子または置換されていてもよい炭化水素基を示す。また、RはA環の置換基とともに環を形成していてもよい。]
【0031】
上記式(1)中、A環で示される「置換されていてもよく、1個または2個の炭素原子が窒素原子に置換された複素環であってもよい6員の芳香族環」のうち、前記複素環である6員の芳香族環としては、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン等が挙げられ、前記複素環ではない6員の芳香族環としては、ベンゼンが挙げられる。これらの中でも、ベンゼン、ピリジン、ピリミジンが好ましく、ベンゼンまたはピリジンが特に好ましい。
【0032】
環で示される「置換されていてもよく、1個または2個の炭素原子が窒素原子に置換された複素環であってもよい6員の芳香族環」の置換基としては、水酸基、ハロゲン原子、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよい炭化水素基、置換されていてもよいアミノ基等が挙げられる。
【0033】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられるが、フッ素原子または塩素原子が好ましい。
【0034】
「置換されていてもよいアルコキシ基」のアルコキシ基としては、炭素数1〜6のアルコキシ基が挙げられ、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、tert−ブトキシ等の炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましい。「置換されていてもよいアルコキシ基」の置換基としては、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子;炭素数1〜4のアルコキシ基;フェニル、ナフチル等、炭素数1〜14のアリール基などが挙げられる。
【0035】
「置換されていてもよい炭化水素基」の炭化水素基としては、炭素数1〜20の炭化水素基が好ましく、炭素数1〜14の炭化水素基がより好ましく、たとえば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基およびアラルキル基等が挙げられる。
【0036】
アルキル基としては、たとえば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、1−メチルブチル、1−エチルプロピル、1,1−ジメチルプロピル、n−ヘキシル、イソヘキシル、1−エチル−1−メチルプロピル、2−エチルブチル、n−ヘプチル、イソヘプチル、2,2−ジメチルペンチル、n−オクチル、イソオクチル、1−メチルヘプチル、1−エチルヘキシル、1−プロピルペンチル、1,1−ジメチルヘキシル、1−エチル−1−メチルペンチル、1,1−ジエチルブチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル等の炭素数1〜10のアルキル基、好ましくは炭素数1〜8のアルキル基が挙げられる。
【0037】
アルケニル基としては、たとえば、エテニル(ビニル)、1−プロペニル、2−プロペニル(アリル)、イソプロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、2−メチル−1−プロペニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、1−へキセニル、2−へキセニル、3−へキセニル、4−へキセニル、5−へキセニル等の炭素数2〜6のアルケニル基が挙げられる。
【0038】
アルキニル基としては、たとえば、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、3−ペンチニル、4−ペンチニル、1−へキシニル、2−へキシニル、3−へキシニル、4−へキシニル、5−へキシニル等の炭素数2〜6のアルキニル基が挙げられる。
【0039】
シクロアルキル基としては、たとえば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等の炭素数3〜8のシクロアルキル基が挙げられる。
【0040】
アリール基としては、たとえば、フェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントレニル等の炭素数6〜14のアリール基が挙げられる。
【0041】
アラルキル基としては、たとえば、ベンジル、フェニルエチル、ナフチルメチル等の炭素数7〜14のアラルキル基が挙げられる。
【0042】
上記の「置換されていてもよい炭化水素基」の置換基としては、水酸基;塩素、フッ素、臭素およびヨウ素のハロゲン原子;シアノ基;アミノ基;カルボキシル基;アセチル、プロパノイル、ブタノイル、ヘキサノイル等の炭素数1〜6のアシル基;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ等の炭素数1〜4のアルコキシ基;フェノキシ、ナフチルオキシ等の炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜10のアリールオキシ基;ベンジルオキシ、フェニルエチルオキシ等の炭素数7〜14のアラルキルオキシ基;メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、ブチルチオ等の炭素数1〜4のアルキルチオ基;フェニルチオ等の炭素数6〜20のアリールチオ基等が挙げられる。上記炭化水素基は前記置換基を2個以上有していてもよく、当該置換基は同一または異なっていてもよい。
【0043】
「置換されていてもよいアミノ基」のアミノ基には、ピロリジニル、ピペリジル、ピペラジニル、アザビシクロ[2.2.1]ヘプタニル、アザビシクロ[2.2.2]オクタニル、ジアザビシクロ[2.2.1]ヘプタニル、ジアザビシクロ[2.2.2]オクタニル、オクタヒドロピロロピリジニル、イソインドリニル、アザスピロ[2.4]ヘプタニル等の環状アミノ基も含まれる。「置換されていてもよいアミノ基」の置換基としては、水酸基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、アミノ基等が挙げられる。
【0044】
環は、2〜4個の置換基により置換されていることが好ましい。また、前記置換基としては、ハロゲン原子;アミノ基により置換された炭素数3〜6のシクロアルキル基;ピロリジニル、ピペリジル、ピペラジニル、ジアザビシクロ[2.2.1]ヘプタニル、オクタヒドロピロロピリジニル、イソインドリニル、アザスピロ[2.4]ヘプタニル等の環状アミノ基;水酸基、アミノ基または炭素数1〜6のアルキル基により置換された前記環状アミノ基;炭素数1〜4のアルコキシ基;ハロゲン原子により置換された前記アルコキシ基などが好ましい。
【0045】
上記式(1)中、RまたはRで示される「置換されていてもよい炭化水素基」としては、上記したA環の「置換されていてもよい炭化水素基」と同様の基が挙げられる。また、Rで示される基は、A環の8位の置換基とともに、環を形成するものであってもよい。かかる環としては、ヒドロピリジン環、ヒドロオキサジン環、ヒドロオキサジアジン環等が例示される。
【0046】
本発明において、オキソリニック酸以外のキノロン系化合物としては、式(7)および式(8)で示される化合物が好ましく用いられる。
【0047】
【化10】

【0048】
[式中、RおよびRは同一または異なって、水素原子または置換されていてもよい炭化水素基を示し、Rは水素原子、ハロゲン原子またはアミノ基、R10は水素原子またはハロゲン原子、R11は置換されていてもよい炭化水素基または置換されていてもよい環状アミノ基を示す。]
【0049】
【化11】

【0050】
[式中、RおよびRは同一または異なって、水素原子または置換されていてもよい炭化水素基を示し、Rは水素原子、ハロゲン原子またはアミノ基、R10は水素原子またはハロゲン原子、R11は置換されていてもよい炭化水素基または置換されていてもよい環状アミノ基、R12は水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよいアルコキシ基または置換されていてもよい炭化水素基を示す。また、RはR12とともに環を形成していてもよい。]
【0051】
上記式(7)で示される化合物は、ナフチリジン骨格を有する化合物である。
【0052】
上記式(7)および式(8)中、RまたはRで示される基については、上記と同義である。RまたはR10で示されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。また、R11で示される「置換されていてもよい炭化水素基」および「置換されていてもよい環状アミノ基」についても、上記と同様である。なお、上記式(7)および式(8)中、Rで示される基としては、エチル等の炭素数1〜4のアルキル基;2−フルオロエチル等のハロゲン化された炭素数1〜4のアルキル基;シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル等の炭素数3〜6のシクロアルキル基;フルオロシクロプロピル等のハロゲン化された炭素数3〜6のシクロアルキル基;フルオロフェニル、ジフルオロフェニル等のハロゲン化されたアリール基が好ましい。Rで示される基としては水素原子が好ましく、Rで示される基としては、水素原子、フッ素原子、アミノ基が好ましく、R10で示される基としては、水素原子またはフッ素原子が好ましい。R11で示される基としては、アミノシクロプロピル基;水酸基、アミノ基またはメチル、エチル等の炭素数1〜4のアルキル基により置換されたピロジニル、ピペリジル、ピペラジニル、ジアザビシクロ[2.2.1]ヘプチル、オクタヒドロピロロピリジニル、イソインドリニル、アザスピロ[2.4]ヘプタニルが好ましい。
【0053】
さらに、上記式(8)中、R12で示される「置換されていてもよいアルコキシ基」および「置換されていてもよい炭化水素基」についても、上記と同様である。上記式(8)中、R12で示される基としては、水素原子;フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;メチル等の炭素数1〜4のアルキル基;メトキシ等の炭素数1〜4のアルコキシ基;ジフルオロメトキシ等のハロゲン原子により置換された前記アルコキシ基が好ましい。また、上記式(8)において、Rで示される基はR12で示される基とともに環を形成していてもよく、かかる環としては、ヒドロピリジン環、ヒドロオキサジン環、ヒドロオキサジアジン環等が挙げられる。それゆえ、上記式(8)において、Rで示される基とR12で示される基とが環を形成してなるベンゾキノリジン骨格、ピリドベンゾオキサジン骨格またはピリドベンゾオキサジアジン骨格を有するものも、好ましい化合物として例示される。
【0054】
本発明においては、オキソリニック酸以外のキノロン系化合物として、上記式(7)および式(8)で示される化合物よりなる群から、1種または2種以上を選択して用いることができる。
【0055】
本発明においてより好ましく用いられるオキソリニック酸以外のキノロン系化合物としては、ナフチリジン骨格を有するエノキサシン、トスフロキサシン、キノリン骨格を有するノルフロキサシン、サラフロキサシン、ジフロキサシン、フレロキサシン、ロメフロキサシン、エンロフロキサシン、シプロフロキサシン、ガチフロキサシン、スパルフロキサシン、ダノフロキサシン、モキシフロキサシン、ガレノキサシン、シタフロキサシン、オルビフロキサシン、ベンゾキノリジン骨格を有するナディフロキサシン、ピリドベンゾオキサジン骨格を有するオフロキサシン、レボフロキサシン、パズフロキサシン、ピリドベンゾオキサジアジン骨格を有するマルボフロキサシン等が挙げられ、これらより1種または2種以上を選択して用いることができる。
【0056】
本発明においては、オキソリニック酸以外のキノロン系化合物は、製剤学的に可能な塩の形態で用いることもできる。当該塩としては、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸等の無機酸との塩;ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、フタル酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸との塩;ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属との塩;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属との塩;アンモニウム塩;トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、tert−ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N−ジベンジルエチレンジアミン等の有機アミンとの塩などが挙げられる。
【0057】
本発明に用いるオキソリニック酸以外のキノロン系化合物またはその塩は市販品を用いてもよく、あるいは公知技術に従って製造したものを用いてもよいが、市販品を用いるのが便利である。
【0058】
本発明の工業用防腐・防汚組成物では、上記のオキソリニック酸以外のキノロン系化合物またはその塩に加えて、イソチアゾリン系化合物、ベンゾイソチアゾリン系化合物、ハロアセチレン系化合物、ベンゾイミダゾール系化合物、テトラヒドロチオフェンジオキシド系化合物、およびこれらの塩よりなる群から選択される1種または2種以上の抗菌性化合物を併用してもよい。該抗菌性化合物を併用することにより、抗菌スペクトルが拡大し、かつ抗菌活性が相乗的に向上する。
【0059】
イソチアゾリン系化合物は、次の式(2)で示される。
【0060】
【化12】

【0061】
[式中、Rは水素原子または置換されていてもよい炭化水素基を示し、RおよびRは同一または異なって、それぞれ水素原子、ハロゲン原子または置換されていてもよい炭化水素基を示す。]
【0062】
式(2)中、Rで示される「置換されていてもよい炭化水素基」としては、A環の置換基について、上記した「置換されていてもよい炭化水素基」と同様のものが挙げられる。なお、前記置換基は同一または異なっていてもよく、1〜5個、好ましくは1〜3個が置換していてもよい。
【0063】
で示される「置換されていてもよい炭化水素基」としては、無置換の炭化水素基が好ましく、その中でもアルキル基またはシクロアルキル基が好ましい。当該アルキル基としては、炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル等の炭素数1〜4のアルキル基およびn−オクチル、イソオクチル、1−メチルヘプチル、1−エチルヘキシル、1−プロピルペンチル、1,1−ジメチルヘキシル、1−エチル−1−メチルペンチル、1,1−ジエチルブチル、2−エチルヘキシル等の炭素数8のアルキル基がより好ましく、メチル、エチル、n−ブチル、n−オクチルがさらに好ましい。シクロアルキル基としては、炭素数3〜8のシクロアルキル基が好ましく、シクロヘキシルがより好ましい。
【0064】
本発明において、上記式(2)中、Rで示される基としては、炭素数1〜8のアルキル基または炭素数3〜8のシクロアルキル基が好ましく、炭素数1〜8のアルキル基がより好ましく、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル等の炭素数1〜4のアルキル基、およびn−オクチル、イソオクチル、1−メチルヘプチル、1−エチルヘキシル、1−プロピルペンチル、1,1−ジメチルヘキシル、1−エチル−1−メチルペンチル、1,1−ジエチルブチル、2−エチルヘキシル等の炭素数8のアルキル基がさらに好ましく、メチル、エチル、n−ブチル、n−オクチルが特に好ましい。
【0065】
式(2)中、RまたはRで示されるハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素の各原子が挙げられ、これらの中でも塩素原子が好ましい。
【0066】
また、RまたはRで示される「置換されていてもよい炭化水素基」は、A環の置換基について上記した「置換されていてもよい炭化水素基」と同様であるが、無置換の炭化水素基が好ましく、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル等の炭素数1〜4のアルキル基が特に好ましい。
【0067】
本発明において、上記式(2)中、RおよびRで示される基としては、同一または異なって、それぞれ水素原子またはハロゲン原子が好ましく、水素原子または塩素原子がより好ましい。
【0068】
本発明において用い得るイソチアゾリン系化合物の具体例としては、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−エチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−エチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4−クロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4,5−ジクロロ−2−シクロヘキシル−4−イソチアゾリン−3−オン等が挙げられる。これらのうち、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4−クロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンおよび4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンが好ましく、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンおよび2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンが特に好ましい。
【0069】
本発明において、イソチアゾリン系化合物としては、上記の化合物よりなる群から1種または2種以上を選択して用いることができる。
【0070】
ベンゾイソチアゾリン系化合物は、次の式(3)で示される。
【0071】
【化13】

【0072】
[式中、A環は置換されていてもよいベンゼン環を示し、Yは水素原子または置換されていてもよい炭化水素基を示す。]
【0073】
式(3)中、A環で示される「置換されていてもよいベンゼン環」の置換基としては、水酸基;塩素、フッ素、臭素およびヨウ素のハロゲン原子;シアノ基;アミノ基;カルボキシル基;ブタノイル、オクタノイル、デカノイル等の炭素数1〜10のアシル基;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ等の炭素数1〜4のアルコキシ基;フェノキシ、ナフチルオキシ等の炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜10のアリールオキシ基;ベンジルオキシ、フェニルエチルオキシ等の炭素数7〜14のアラルキルオキシ基;メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、ブチルチオ等の炭素数1〜4のアルキルチオ基;フェニルチオ等の炭素数6〜20のアリールチオ基等を挙げることができるが、ハロゲン原子およびメチル、エチル、プロピル、ブチル等の炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。これらの置換基は同一または異なっていてもよく、ベンゼン環に1〜4個、好ましくは1個または2個置換されていてもよい。なお、A環で示される「置換されていてもよいベンゼン環」としては、無置換のベンゼン環が好ましい。
【0074】
式(3)中、Yで示される「置換されていてもよい炭化水素基」としては、上記したA環の置換基の一つとして示した「置換されていてもよい炭化水素基」と同様のものが挙げられるが、無置換の炭化水素基が好ましく、炭素数1〜8のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜4のアルキル基(特にn−ブチル)が特に好ましい。
【0075】
本発明において、式(3)中、Yで示される基としては、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基(特にn−ブチル)が特に好ましい。
【0076】
ベンゾイソチアゾリン系化合物の好適な具体例としては、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン、N−n−ブチル−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン等が挙げられる。
【0077】
本発明において、ベンゾイソチアゾリン系化合物としては、上記の化合物よりなる群から1種または2種以上を選択して用いることができる。
【0078】
ベンゾイミダゾール系化合物は、次の式(4)で示される。
【0079】
【化14】

【0080】
[式中、A環は置換されていてもよいベンゼン環を示し、Zは−NHCOOR(式中、Rは水素原子またはアルキル基を示す。)で示される基または置換されていてもよい5員または6員の含窒素複素環基を示す。]
【0081】
上記式(4)中、A環で示される「置換されていてもよいベンゼン環」に含まれ得る置換基としては、上記したA環の置換基と同様のものを挙げることができるが、ハロゲン原子、およびメチル、エチル、プロピル、ブチル等炭素数1〜4のアルキル基が好ましいものとして挙げられる。これらの置換基は同一または異なって、A環で示されるベンゼン環に1〜4個、好ましくは1個または2個含まれ得る。なお、A環で示される置換されていてもよいベンゼン環としては、置換されていないベンゼン環が好ましい。
【0082】
上記式(4)中、Zが示す−NHCOORで示される基において、Rで示されるアルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−へキシル、n−ヘプチルおよびn−オクチル等の炭素数1〜8のアルキル基が挙げられ、それらのうち、メチル、エチル、n−プロピル等の炭素数1〜3のアルキル基が特に好ましい。
【0083】
また式(4)中、Zで示される置換されていてもよい5員または6員の含窒素複素環基としては、1〜4個の窒素原子を環構成原子として含有するか、あるいは1〜2個の窒素原子に加えて酸素原子および硫黄原子から選ばれた1個のヘテロ原子を環構成原子として含有する5員または6員環の単環式複素環基や、この5員または6員の含窒素複素環にベンゼン環または5員環が縮合した縮合複素環基が挙げられる。5員または6員の含窒素単環式複素環基としては、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル等のピリジル基;2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル等のチアゾリル基;3−イソチアゾリル、4−イソチアゾリル、5−イソチアゾリル等のイソチアゾリル基;1−イミダゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、5−イミダゾリル等のイミダゾリル基;1−ピロリル、2−ピロリル、3−ピロリル等のピロリル基;2−ピロリニル、3−ピロリニル等のピロリニル基;フラザニル基;1−ピロリジニル、2−ピロリジニル、3−ピロリジニル等のピロリジニル基;2−イミダゾリジニル、4−イミダゾリジニル、5−イミダゾリジニル等のイミダゾリジニル基;1−ピラゾリジニル等のピラゾリジニル基;5−ピラゾリル等のピラゾリル基;2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、5−オキサゾリル等のオキサゾリル基;3−イソオキサゾリル、4−イソオキサゾリル、5−イソオキサゾリル等のイソオキサゾリル基;1H−テトラゾリル、2H−テトラゾリル等のテトラゾリル基;2−ピリミジニル、4−ピリミジニル、5−ピリミジニル等のピリミジニル基;3−ピリダジニル、4−ピリダジニル等のピリダジニル基;2−ピラジニル、3−ピラジニル等のピラジニル基;1,2−チアジン−3−イル、1,2−チアジン−4−イル、1,3−チアジン−2−イル、1,3−チアジン−4−イル、1,4−チアジン−2−イル、1,4−チアジン−3−イル等のチアジニル基;1−ピペラジニル、2−ピペラジニル、3−ピペラジニル等のピペラジニル基;1,2,3−チアジアジン−4−イル、1,2,3−チアジアジン−5−イル、1,2,3−チアジアジン−6−イル、1,2,4−チアジアジン−3−イル、1,3,4−チアジアジン−2−イル等のチアジアジニル基;1,3,4−オキサジアゾール−2−イル、1,2,4−オキサジアゾール−3−イル、1,2,4−オキサジアゾール−5−イル、1,2,3−オキサジアゾール−4−イル、1,2,3−オキサジアゾール−5−イル等のオキサジアゾリル基;1,2,3−チアジアゾール−4−イル、1,2,3−チアジアゾール−5−イル等のチアジアゾリル基;1,2,3−トリアゾール−4−イル、1,2,4−トリアゾール−3−イル等のトリアゾリル基;2−チオモルホリニル、3−チオモルホリニル、4−チオモルホリニル、5−チオモルホリニル、6−チオモルホリニル等のチオモルホリニル基;2−モルホリニル、3−モルホリニル、4−モルホリニル、5−モルホリニル、6−モルホリニル等のモルホリニル基;2−オキソイミダジニル等のオキソイミダジニル基;1,2,4−トリアジン−3,5−ジオン−1−イル、1,2,4−トリアジン−3,5−ジオン−2−イル、1,2,4−トリアジン−3,5−ジオン−4−イル等のジオキソトリアジニル基;1−ピペリジル、2−ピペリジル、3−ピペリジル、4−ピペリジル等のピペリジル基等が挙げられる。上記縮合複素環基としては、2−キノリル、3−キノリル、4−キノリル等のキノリル基;3−イソキノリル、4−イソキノリル等のイソキノリル基;2−インドリル、3−インドリル等のインドリル基;1H−イソインドール−3−イル等のイソインドリル基;8−キノリジニル等のキノリジニル基;1H−プリン−6−イル、3H−プリン−6−イル等のプリニル基;3−シンノリニル、5−シンノリニル等のシンノリニル基;3−インダゾリル等のインダゾリル基;2−プテリジニル等のプテリジニル基;4−フタラジニル等のフタラジニル基;2−キナゾリニル、4−キナゾリニル等のキナゾリニル基;2−キノキサリニル、3−キノキサリニル等のキノキサリニル基;2−インドリジニル等のインドリジニル基;2H−1,3−ベンゾオキサジン−2−イル等のベンゾオキサジニル基;2−フェノチアジニル、3−フェノチアジニル等のフェノチアジニル基;2−フェナジニル、3−フェナジニル等のフェナジニル基;2−フェノキサジニル、3−フェノキサジニル、4−フェノキサジニル等のフェノキサジニル基等が挙げられる。上記複素環基のうち、5員含窒素複素環基が好ましく、特にチアゾリル基が好ましい。
【0084】
上記複素環の置換基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル等の炭素数1〜4のアルキル基;メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ等の炭素数1〜4のアルコキシ基;フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子;水酸基;アミノ基;ニトロ基;メルカプト基などが挙げられる。
【0085】
Zで示される置換されていてもよい5または6員の含窒素複素環基としては、無置換の5または6員の含窒素複素環基が好ましく、無置換の5員の含窒素複素環基がより好ましく、チアゾリル基が特に好ましい。
【0086】
本発明において、式(4)中、Zで示される基としては、−NHCOOR(式中、Rは炭素数1〜8のアルキル基である。)で示される基または無置換の5員または6員の含窒素複素環基が好ましく、−NHCOOR(式中、Rは炭素数1〜3のアルキル基である)で示される基または無置換の5員の含窒素複素環基がより好ましく、−NHCOOR(式中、Rは炭素数1〜3のアルキル基である)で示される基またはチアゾリル基が特に好ましい。
【0087】
ベンゾイミダゾール系化合物の好適な具体例としては、メチル 2−ベンゾイミダゾールカルバメート、エチル 2−ベンゾイミダゾールカルバメート、2−(4−チアゾリル)ベンゾイミダゾール等が挙げられる。
【0088】
本発明において、ベンゾイミダゾール系化合物としては、上記の化合物よりなる群から1種または2種以上を選択して用いることができる。
【0089】
ハロアセチレン系化合物は、次の式(5)で示される。
【0090】
【化15】

【0091】
[式中、Xはハロゲン原子を示し、RおよびRは同一または異なって、それぞれ水素原子または置換されていてもよい炭化水素基を示し、mは0または1の整数を示す。]
【0092】
式(5)中、Xで示されるハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素の各原子が挙げられ、特にヨウ素原子が好ましい。
【0093】
式(5)中、RまたはRで示される「置換されていてもよい炭化水素基」としては、A環の置換基の一つとして上記した「置換されていてもよい炭化水素基」と同様のものが挙げられる。中でも無置換の炭化水素基が好ましく、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数3〜8のシクロアルキル基がより好ましく、炭素数1〜10のアルキル基がさらに好ましく、炭素数1〜4のアルキル基がさらにより好ましく、n−ブチルが特に好ましい。
【0094】
また、RおよびRの一方が置換されていてもよい炭化水素基であり、他方が水素原子であることが好ましく、RおよびRの一方が炭素数1〜10のアルキル基であり、他方が水素原子であることがより好ましく、RおよびRの一方が炭素数1〜4のアルキル基(特にn−ブチル)であり、他方が水素原子であることが特に好ましい。
【0095】
式(5)中、mは0または1の整数を示し、mが0のとき、ハロアセチレン系化合物は酸アミド誘導体となり、mが1のときは、ハロアセチレン系化合物はカルバメート誘導体となる。これらのうち、mが1であるハロアセチレン系化合物のカルバメート誘導体が好ましい。
【0096】
ハロアセチレン系化合物の具体例としては、mが0である場合のハロアセチレン系化合物の酸アミド誘導体として、3−クロロプロピオール酸アミド、N−メチル−3−クロロプロピオール酸アミド、N−エチル−3−クロロプロピオール酸アミド、N−プロピル−3−クロロプロピオール酸アミド、N−ブチル−3−クロロプロピオール酸アミド、N−ヘキシル−3−クロロプロピオール酸アミド、N−オクチル−3−クロロプロピオール酸アミド、N−シクロヘキシル−3−クロロプロピオール酸アミド等の(N−置換−)3−クロロプロピオール酸アミド;3−ブロモプロピオール酸アミド、N−メチル−3−ブロモプロピオール酸アミド、N−エチル−3−ブロモプロピオール酸アミド、N−プロピル−3−ブロモプロピオール酸アミド、N−ブチル−3−ブロモプロピオール酸アミド、N−ヘキシル−3−ブロモプロピオール酸アミド、N−オクチル−3−ブロモプロピオール酸アミド、N−シクロヘキシル−3−ブロモプロピオール酸アミド等の(N−置換−)3−ブロモプロピオール酸アミド;3−ヨードプロピオール酸アミド、N−メチル−3−ヨードプロピオール酸アミド、N−エチル−3−ヨードプロピオール酸アミド、N−プロピル−3−ヨードプロピオール酸アミド、N−ブチル−3−ヨードプロピオール酸アミド、N−ヘキシル−3−ヨードプロピオール酸アミド、N−オクチル−3−ヨードプロピオール酸アミド、N−シクロヘキシル−3−ヨードプロピオール酸アミド等の(N−置換−)3−ヨードプロピオール酸アミドなどが挙げられる。これらのうち、(N−置換−)3−ヨードプロピオール酸アミドが好ましく、N−ブチル−3−ヨードプロピオール酸アミドがより好ましい。
【0097】
また、mが1である場合のハロアセチレン系化合物のカルバメート誘導体として、3−ヨード−2−プロピニル N−メチルカルバメート、3−ヨード−2−プロピニル N−エチルカルバメート、3−ヨード−2−プロピニル N−プロピルカルバメート、3−ヨード−2−プロピニル N−ブチルカルバメート、3−ヨード−2−プロピニル N−ヘキシルカルバメート、3−ヨード−2−プロピニル N−オクチルカルバメート、3−ヨード−2−プロピニル N−シクロヘキシルカルバメート等の3−ヨード−2−プロピニル N−アルキルカルバメートなどが挙げられ、中でも3−ヨード−2−プロピニル N−ブチルカルバメートが好ましい。
【0098】
本発明において、ハロアセチレン系化合物としては、上記の化合物よりなる群から1種または2種以上を選択して用いることができる。
【0099】
テトラヒドロチオフェンジオキシド系化合物は、次の式(6)で示される。
【0100】
【化16】

【0101】
[式中、Y、Y、YおよびYは同一または異なって、それぞれ水素原子、ハロゲン原子または置換されていてもよい炭化水素基を示す。]
【0102】
式(6)中、Y、Y、YまたはYで表されるハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素の各原子が挙げられ、特に塩素原子が好ましい。また、Y、Y、YまたはYで表される「置換されていてもよい炭化水素基」としては、A環の置換基の一つとして上記した「置換されていてもよい炭化水素基」と同様のものが挙げられ、中でもメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル等の炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。
【0103】
、Y、YおよびYとしては、Y、Y、YおよびYのすべてがハロゲン原子であるか、Y、YおよびYがハロゲン原子でかつYが水素原子であるか、YおよびYがハロゲン原子でかつYおよびYが水素原子であることが好ましく、Y、Y、YおよびYのすべてがハロゲン原子であることがより好ましく、Y、Y、YおよびYのすべてが塩素であることが特に好ましい。
【0104】
テトラヒドロチオフェンジオキシド系化合物の具体例としては、3,3,4,4−テトラクロロテトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド、3,3,4,4−テトラブロモテトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド、3,4−ジクロロテトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド、3,3,4−トリクロロテトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド、3,3,4−トリブロモテトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド等が挙げられ、これらのうち、3,3,4,4−テトラクロロテトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシドが特に好ましい。
【0105】
本発明において、テトラヒドロチオフェンジオキシド系化合物としては、上記の化合物よりなる群から1種または2種以上を選択して用いることができる。
【0106】
上記のイソチアゾリン系化合物、ベンゾイソチアゾリン系化合物、ベンゾイミダゾール系化合物、ハロアセチレン系化合物およびテトラヒドロチオフェンジオキシド系化合物は、塩基性化合物の場合は酸との塩として用いてもよく、また、酸性化合物の場合は塩基との塩として用いてもよい。
【0107】
酸との塩としては、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸等の無機酸との塩;ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、フタル酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸との塩が挙げられる。
【0108】
塩基との塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属との塩;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属との塩;アンモニウム塩;トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、tert−ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N−ジベンジルエチレンジアミン等の有機アミンとの塩などが挙げられる。
【0109】
イソチアゾリン系化合物、ベンゾイソチアゾリン系化合物、ベンゾイミダゾール系化合物、ハロアセチレン系化合物、テトラヒドロチオフェンジオキシド系化合物およびこれらの塩は市販品を用いてもよく、あるいは公知技術に従って製造したものを用いてもよいが、市販品を用いるのが便利である。
【0110】
本発明の工業用防腐・防汚組成物において、オキソリニック酸を除くキノロン系化合物またはその塩の含有量は、環境中に存在する一般的な細菌類に対して十分な抗菌活性を得るためには、0.1重量%〜40重量%が好ましく、1重量%〜40重量%がより好ましい。
【0111】
上記の抗菌性化合物を併用する場合、本発明の工業用防腐・防汚組成物に、より広範な抗菌スペクトルと十分な抗菌活性を付与するためには、オキソリニック酸を除くキノロン系化合物またはその塩と上記イソチアゾリン系化合物等の抗菌性化合物(2種以上の化合物を用いる場合は各化合物の合計量)の含有量比は、9:1〜1:9(重量比)とすることが好ましく、8:2〜2:8(重量比)とすることがより好ましい。また、剤形、適用対象や使用環境等にもよるが、オキソリニック酸を除くキノロン系化合物またはその塩の含有量としては、0.1重量%〜40重量%が好ましく、1重量%〜40重量%がより好ましい。上記イソチアゾリン系化合物等の抗菌性化合物の含有量(2種以上を用いる場合は各化合物の合計量)としては、0.1重量%〜40重量%が好ましく、1重量%〜40重量%がより好ましい。
【0112】
本発明の工業用防腐・防汚組成物は、溶剤に溶解させ、または界面活性剤もしくは溶解助剤等を用いて懸濁もしくは分散させて、液剤または懸濁剤もしくは分散剤として、あるいは界面活性剤により乳化して乳剤として提供することができる。その他、界面活性剤や固体担体を加えて、水和剤、フロアブル剤、粉剤等としても提供することができる。
【0113】
本発明において用い得る溶剤としては、水;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール等の低級アルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルカルビトール)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルカルビトール)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、プロピレンカーボネート等のケトン類;ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチルエーテル等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、γ−ブチロラクトン、アジピン酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、コハク酸ジメチル等のエステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルナフタレン、ジメチルナフタレン、イソプロピルナフタレン、ジイソプロピルナフタレン、エチルビフェニル、ジエチルビフェニル、ソルベントナフサ等の芳香族系溶剤;四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、N−メチルピロリドン等の極性有機溶剤などが挙げられる。これらの溶剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、これら溶剤の中では、水、低級アルコール類および多価アルコール類が好ましく用いられる。
【0114】
本発明において用い得る界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチエンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等の非イオン性界面活性剤;アルキル硫酸エステル塩、アルキル(アリール)スルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルリン酸エステル塩、リグニンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物等の陰イオン性界面活性剤などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0115】
本発明において用い得る溶解助剤としては、カプリン酸、アジピン酸等のカルボン酸類;アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル等のエステル類;オクチルドデカノール、オレイルアルコール等の高級アルコール類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアミン類などを挙げることができ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0116】
本発明において用い得る固体担体としては、カオリンクレー、アッタパルジャイトクレー、ベントナイト、モンモリロナイト、酸性白土、パイロフィライト、タルク、珪藻土、方解石等の鉱物質;トウモロコシ穂軸粉、クルミ殻粉等の天然有機物;尿素等の合成有機物;炭酸カルシウム、硫酸アンモニウム等の塩類;合成含水酸化珪素等の合成無機物の微粉末あるいは粒状物などを挙げることができる。
【0117】
本発明の工業用防腐・防汚組成物の調製は、5℃〜40℃にて行うことが好ましい。溶剤等への混合は、0.5時間〜5時間程度の処理により行うことが好ましい。界面活性剤、溶解助剤および固体担体は、組成物全量に対して、それぞれ0.1重量%〜10重量%、0.1重量%〜10重量%、および30重量%〜95重量%程度配合することができる。
【0118】
本発明に係る工業用防腐・防汚組成物には、組成物の抗菌活性、安定性、安全性等に影響を与えない範囲で、他の防菌防黴剤や防藻剤等の他、pH調整剤、酸化防止剤、光安定化剤、消泡剤等の、一般的に製剤化に際して用いられる添加剤を添加することができる。
【0119】
本発明の工業用防腐・防汚組成物は、細菌類に対して良好な抗菌活性を有する。前記細菌類としては、大腸菌、緑膿菌、セラチア菌、レジオネラ菌等のグラム陰性桿菌;セレウス菌、クロストリジウム属等のグラム陽性桿菌;ブランハメラ菌等のグラム陰性球菌;黄色ブドウ球菌等のグラム陽性球菌などの病原性細菌の他、枯草菌等、病原性を示さないが、環境中に常在する細菌が挙げられる。
【0120】
本発明の工業用防腐・防汚組成物において、上記の抗菌性化合物を併用した場合、オキソリニック酸を除くキノロン系化合物またはその塩を単独で使用する場合よりも抗菌スペクトルが広がり、細菌類のみならず、カビ類や酵母類に対しても幅広く良好な抗菌活性を有する。前記カビ類としては、ムコール(Mucor)属(ケカビ)、リゾプス(Rhizopus)属(クモノスカビ)等の接合菌類;アスペルギルス(Aspergillus)属(コウジカビ)、ペニシリウム(Penicillium)属(アオカビ)、クラドスポリウム(Cladosporium)属(クロカビ)、オーレオバシディウム(Aureobasidium)属、アルテルナリア(Alternaria)属(ススカビ)、アクレモニウム(Acremonium)属、フザリウム(Fusarium)属、グリオクラディウム(Gliocladium)属、トリコデルマ(Trichoderma)属等の不完全菌類;ケトミウム(Chaetomium)属、ユーロチウム(Eurotium)属、ニューロスポラ (Neurospora)属(アカパンカビ)等の子嚢菌類などが、酵母類としては、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)属、プロトミセス(Protomyces)属、タフリナ(Taphrina)属等の原生子嚢菌類;エンドミセス(Endomyces)属等の真正子嚢菌類;サッカロミセス(Saccharomyces)属等の半子嚢菌類;カンジダ(Candida)属等の子嚢菌酵母の不完全型;フィロバシディエラ(Filobasidiella)属等の異型担子菌類;ロドトルラ(Rhodotorula)属、トリコスポロン(Trichosporon)属、スポロボロミセス(Sporobolomyces)属等の担子菌酵母の不完全型;ロドスポリディウム(Rhodosporidium)属、スポリディオボルス(Sporidiobolus)属、キサントフィロミセス(Xanthophyllomyces)属等の担子菌酵母などが挙げられる。
【0121】
また、本発明の防腐・防汚組成物は、藍藻類(Cyanophyceae)、緑藻類(Chlorophyceae)、緑虫類(Euglenophyceae)、車軸藻類(Charophyceae)、黄金色藻類(Chrysophyceae)、黄緑藻類(Xanthophyceae)、珪藻類(Bacillariophyceae)等の微細藻類に対しても、幅広く良好な抑制作用を示し得るため、防藻効果も期待される。
【0122】
従って、本発明の工業用防腐・防汚組成物は、製紙パルプ工場、冷却水循環工程等の種々の産業用水や、塗工紙、紙用塗工液、塗料、接着剤、合成ゴムラテックス、印刷インキ、プラスチック製品、セメント混和剤、シーリング剤等の各種工業製品の有害微生物の防除の用途において有効に用いることができる。より具体的には、製紙パルプ工場や冷却水循環工程のスライムコントロール剤、紙製品、樹脂製品の防菌防黴剤、塗料、合成ゴムラテックス、樹脂、インキ、シリコーンシーリング剤等の防菌防黴剤などとして有用である。
【0123】
本発明の工業用防腐・防汚組成物は、適用対象、防除の対象となる微生物の種類(細菌類、カビ類、酵母類、藻類等)や防除期間に応じて、添加量を適宜選択すればよいが、たとえば、スライムコントロール剤として用いる場合には、製品1kgあたりに対し抗菌性成分の量として0.1mg〜500mg、好ましくは、0.5mg〜100mg、防腐剤として用いる場合には、製品1kgあたりに対し抗菌性成分の量として1mg〜5,000mg、好ましくは、10mg〜1,000mg、防黴・酵母剤または防藻剤として用いる場合には、製品1kgあたりに対し抗菌性成分の量として10mg〜50,000mg、好ましくは、100mg〜10,000mgとなるように添加すればよい。
【実施例】
【0124】
以下に本発明について実施例により詳細に説明する。
【0125】
[実施例1]
ノルフロキサシン(1−エチル−4−オキソ−6−フルオロ−7−ピペラジノ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸;和光純薬工業株式会社製)を、10重量%となるようにメチルカルビトールに添加して、室温にて30分間撹拌混合して調製し、白色の懸濁剤である工業用防腐・防汚組成物を得た。
【0126】
実施例1および後述する実施例2〜22、比較例1〜7について、以下に示す方法により、抗菌活性の評価を行った。すなわち、試験菌として、細菌類では枯草菌(Bacillus subtilis IFO3513)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus IFO12732)、大腸菌(Escherichia coli IFO3972)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa IFO3080)、セラチア菌(Serratia marcescens IFO3735)を、カビ類ではクロコウジカビ(Aspergillus niger IFO6341)、アオカビ(Penicillium citrinum IFO6352)、クラドスポリウム クラドスポリオイデス(Cladosporium cladosporioides IFO6348)、アウレオバシディウム プルランス(Aureobasidium pullulans IFO6353)、アルテルナリア属(Alternaria sp.)、ムコール スピネッセンス(Mucor spinescens IFO6071)、グリオクラディウム ビレンス(Gliocladium virens IFO6355)を、酵母類ではロドトルラ ルブラ(Rhodotorula rubra IFO0907)、サッカロミセス セレビジアエ(Saccharomyces cerevisiae IFO0209)を用い、細菌類の場合は、実施例および比較例の各工業用防腐・防汚組成物をそれぞれ添加したグルコースブイヨン寒天培地(pH6.0)に、ミクロプランタ(佐久間製作所製)を用いて接種用細菌懸濁液を接種し、33℃で18時間培養した。カビ類および酵母類の場合は、前記と同様に、実施例および比較例の工業用防腐・防汚組成物をそれぞれ添加したグルコースブイヨン寒天培地(pH6.0)に、カビ胞子懸濁液または接種用酵母懸濁液を接種し、33℃で18時間培養し、さらに、28℃で2日間培養した。培養後、各菌の生育を観察し、最小発育阻止濃度(MIC)(μg/mL)を求めた。実施例1に係る工業用防腐・防汚組成物についての結果を表1に示す。
【0127】
【表1】

【0128】
表1より明らかなように、実施例1の工業用防腐・防汚組成物は、枯草菌、大腸菌および緑膿菌に対して62.5μg/mL以下のMICを示し、良好な抗菌活性を有することが示された。特に、環境中に常在する非病原性細菌である枯草菌に対し、優れた抗菌活性を示した。
【0129】
[実施例2〜22]
本発明の実施例2〜22の工業用防腐・防汚組成物の組成を表2に、比較例1〜7の工業用防腐・防汚組成物の組成を表3に示す。なお、以下の実施例および比較例の組成物の調製に際しては、ノルフロキサシンは、上記と同じ和光純薬工業株式会社製を用いた。
【0130】
イソチアゾリン系化合物としては、「ZONEN−MT」(2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン50重量%含有、株式会社ケミクレア製)、「ケーソンLX1400」(2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンおよび5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの混合物14重量%含有、ロームアンドハース社製)、「ケーソン893T」(2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン99.5重量%含有、ロームアンドハース社製)を用いた。
【0131】
ベンゾイソチアゾリン系化合物としては、「BIT」(1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン80重量%含有、ダウケミカル社製)を用いた。
【0132】
ベンゾイミダゾール系化合物としては、「コートサイド」(メチル 2−ベンゾイミダゾールカルバメート塩酸塩10重量%含有、日本エンバイロケミカルズ株式会社製)を用いた。
【0133】
ハロアセチレン系化合物としては、「IPBC」(3−ヨード−2−プロピニル N−ブチルカルバメート99.4重量%含有、フォーカス社製)を用いた。
【0134】
テトラヒドロチオフェンジオキシド系化合物としては、スラカーブ(3,3,4,4−テトラクロロテトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド)の20重量%ジエチレングリコールモノメチルエーテル溶液(日本エンバイロケミカルズ株式会社製)を用いた。
【0135】
【表2】

【0136】
【表3】

【0137】
実施例および比較例の工業用防腐・防汚組成物は、表2および表3に示す組成に従い、各抗菌性化合物をメチルカルビトールに添加して、室温にて30分間撹拌混合して調製し、白色の懸濁剤または溶液剤として得た。
【0138】
ノルフロキサシンと上記所定の抗菌性化合物を併用する場合(実施例2〜22)の抗菌活性の評価は、ノルフロキサシン、イソチアゾリン系化合物、ベンゾイソチアゾリン系化合物、ベンゾイミダゾール系化合物、ハロアセチレン系化合物およびテトラヒドロチオフェンジオキシド系化合物をそれぞれ単独で用いた場合(実施例1および比較例1〜7)のMIC値から、前記各実施例の防腐・防汚組成物について次式によりMICの理論値を算出し、実際に測定したMIC値をそれらと比較することにより行った。MICの実測値がその理論値よりも小さくなる場合、すなわち「実測値/理論値」が1より小さくなる場合には、上記の各成分を単独で用いた場合の代数和より抗菌活性が増強されているといえるため、相乗効果が認められると評価した。
【0139】
MICの理論値=C×x/100+C×y/100
;ノルフロキサシンを単独で用いた場合(実施例1)のMIC値
;イソチアゾリン系化合物、ベンゾイソチアゾリン系化合物、ベンゾイミダゾール系化合物、ハロアセチレン系化合物およびテトラヒドロチオフェンジオキシド系化合物をそれぞれ単独で用いた場合(比較例1〜7)のMIC値
x;抗菌性成分中においてノルフロキサシンの占める割合(重量%)
y;抗菌性成分中において、イソチアゾリン系化合物、ベンゾイソチアゾリン系化合物、ベンゾイミダゾール系化合物、ハロアセチレン系化合物またはテトラヒドロチオフェンジオキシド系化合物の占める割合(重量%)
【0140】
抗菌活性の評価結果を表4〜表10に示した。各表中の「100/0」、「75/25」、「50/50」、「25/75」および「0/100」は、ノルフロキサシンと、イソチアゾリン系化合物、ベンゾイソチアゾリン系化合物、ベンゾイミダゾール系化合物、ハロアセチレン系化合物またはテトラヒドロチオフェンジオキシド系化合物との配合重量比を示す。また、以下の各表には、ノルフロキサシンおよび前記の各抗菌性化合物について、前記重量比で用いた場合に、少なくとも一以上の重量比において1000μg/mL未満のMIC値の得られた試験菌のみを示した。
【0141】
【表4】

【0142】
上記表4は、ノルフロキサシンと、イソチアゾリン系化合物として、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンを100:0、75:25、50:50、25:75の重量比で含有する工業用防腐・防汚組成物(実施例1〜4)についての評価結果を示す。実施例2〜4の工業用防腐・防汚組成物は、実施例1の組成物と同様に細菌類に対して有効な抗菌活性を示した。そして、枯草菌に対しては、全組成物についてMICの実測値/理論値が1より小さく、ノルフロキサシンおよび2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンをそれぞれ単独で使用した場合(実施例1および比較例1)と比べ、抗菌活性の相乗的な向上が認められた。また、黄色ブドウ球菌に対しては実施例3の組成物、大腸菌に対しては実施例2の組成物、セラチア菌に対しては実施例4の組成物において抗菌活性の相乗的な向上が見られた。なお、緑膿菌に対しては、いずれの組成物においても、抗菌活性の相乗的な向上は見られなかった。
【0143】
【表5】

【0144】
上記表5は、ノルフロキサシンと、イソチアゾリン系化合物として、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンおよび5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの混合物を100:0、75:25、50:50、25:75の重量比で含有する工業用防腐・防汚組成物(実施例1、5〜7)についての評価結果を示す。実施例5〜7の組成物について、実施例1の組成物がさほど良好な抗菌活性を示さなかったセラチア菌、カビ類および酵母類に対し、抗菌活性が認められた。また、実施例5の組成物について大腸菌および緑膿菌、実施例6の組成物について枯草菌および緑膿菌、実施例7の組成物について緑膿菌に対する場合を除き、MICの実測値/理論値が1より小さく、ノルフロキサシンおよび2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン・5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン混合物をそれぞれ単独で使用した場合(実施例1および比較例2)と比べ、試験した各細菌、カビおよび酵母に対して、抗菌活性の相乗的な向上が認められた。
【0145】
【表6】

【0146】
上記表6は、ノルフロキサシンと、イソチアゾリン系化合物として、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンを100:0、75:25、50:50、25:75の重量比で含有する工業用防腐・防汚組成物(実施例1、8〜10)についての評価結果を示す。実施例8〜10の組成物は、セラチア菌には有効な抗菌活性を示さなかったが、実施例1の組成物が無効であったカビ類および酵母類に対して、有効な抗菌活性を示した。また、実施例9および10の組成物について枯草菌、実施例8〜10の全組成物について黄色ブドウ球菌に対する場合を除き、MICの実測値/理論値が1より小さく、ノルフロキサシンおよび2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンをそれぞれ単独で使用した場合(実施例1および比較例3)と比べ、抗菌活性の相乗的な向上が認められた。
【0147】
【表7】

【0148】
上記表7は、ノルフロキサシンと、ベンゾイソチアゾリン系化合物として、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンを100:0、75:25、50:50、25:75の重量比で含有する工業用防腐・防汚組成物(実施例1、11〜13)についての評価結果を示す。実施例11〜13の組成物は、ムコール スピネッセンスおよびグリオクラディウム ビレンスを除くカビ類ならびに酵母類に対しても、抗菌活性を示した。ただし、大腸菌および緑膿菌に対しては、抗菌活性の相乗的な向上は見られなかった。しかし、その他の試験菌に対しては、実施例11の組成物について黄色ブドウ球菌、クロコウジカビ、アオカビ、アルテルナリア属、ロドトルラ ルブラ、サッカロミセス セレビジアエ、実施例12の組成物についてロドトルラ ルブラ、実施例13の組成物について黄色ブドウ球菌およびクロコウジカビに対する場合を除き、MICの実測値/理論値が1より小さく、ノルフロキサシンおよび1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンをそれぞれ単独で使用した場合(実施例1および比較例4)と比べ、抗菌活性の相乗的な向上が認められた。
【0149】
【表8】

【0150】
上記表8は、ノルフロキサシンと、ベンゾイミダゾール系化合物として、メチル 2−ベンゾイミダゾールカルバメート塩酸塩を100:0、75:25、50:50、25:75の重量比で含有する工業用防腐・防汚組成物(実施例1、14〜16)についての評価結果を示す。実施例14〜16の組成物は、黄色ブドウ球菌、セラチア菌以外の細菌類、アルテルナリア属、ムコール スピネッセンス以外のカビ類、およびロドトルラ ルブラに対して抗菌活性を示した。また、抗菌活性を示した試験菌に対しては、MICの実測値/理論値が1より小さく、ノルフロキサシンおよびメチル 2−ベンゾイミダゾールカルバメート塩酸塩をそれぞれ単独で使用した場合(実施例1および比較例5)と比べ、抗菌活性の相乗的な向上が認められた。
【0151】
【表9】

【0152】
上記表9は、ノルフロキサシンと、ハロアセチレン系化合物として、3−ヨード−2−プロピニル N−ブチルカルバメートを100:0、75:25、50:50、25:75の重量比で含有する工業用防腐・防汚組成物(実施例1、17〜19)についての評価結果を示す。実施例17〜19の組成物は、黄色ブドウ球菌およびセラチア菌以外の細菌類、カビ類ならびに酵母類に対して抗菌活性を示した。また、抗菌活性を示した試験菌に対しては、MICの実測値/理論値が1より小さく、ノルフロキサシンおよび3−ヨード−2−プロピニル N−ブチルカルバメートをそれぞれ単独で使用した場合(実施例1および比較例6)と比べ、抗菌活性の相乗的な向上が認められた。
【0153】
【表10】

【0154】
上記表10は、ノルフロキサシンと、テトラヒドロチオフェンジオキシド系化合物として、スラカーブ(3,3,4,4−テトラクロロテトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド)を100:0、75:25、50:50、25:75の重量比で含有する工業用防腐・防汚組成物(実施例1、20〜22)についての評価結果を示す。実施例20〜22の組成物は、試験した全菌類に対し抗菌活性を示した。また、実施例20の組成物について枯草菌、大腸菌および緑膿菌、実施例21、22の組成物について大腸菌および緑膿菌に対する場合を除き、MICの実測値/理論値が1よりも小さく、ノルフロキサシンおよびスラカーブをそれぞれ単独で使用した場合(実施例1および比較例7)と比べ、抗菌活性の相乗的な向上が認められた。
【0155】
[実施例23]
オフロキサシン標準品(rac−9−フルオロ−2,3−ジヒドロ−3α−メチル−10−(4−メチル−1−ピペラジニル)−7−オキソ−7H−ピリド[1,2,3−de]−1,4−ベンゾオキサジン−6−カルボン酸;和光純薬工業株式会社製)を、10重量%となるようにメチルカルビトールに添加して、室温にて30分間撹拌混合して調製し、白色の懸濁剤である工業用防腐・防汚組成物を得た。
【0156】
[実施例24〜44]
上記表2において、ノルフロキサシンをオフロキサシンに代替して同様に調製し、実施例24〜44の工業用防腐・防汚組成物とした。なお、オフロキサシンとしては、上記と同じ和光純薬工業株式会社製の標準品を用いた。
【0157】
実施例23〜44の工業用防腐・防汚組成物について、上記と同様に抗菌活性の評価を行った。また、上記比較例1〜7の工業用防腐・防汚組成物についても、同時に抗菌活性を評価した。実施例24〜44の工業用防腐・防汚組成物については、上記と同様に、オフロキサシンと他の抗菌性化合物を併用することにより、抗菌活性の相乗的な向上がみられるかどうかについても評価した。
【0158】
実施例23についてのMIC測定結果を表11に示した。
【0159】
【表11】

【0160】
表11より明らかなように、オフロキサシンを含有する実施例23の工業用防腐・防汚組成物は、枯草菌、黄色ブドウ球菌、大腸菌および緑膿菌に対して62.5μg/mL以下、セラチア菌に対して、125μg/mLのMICを示し、細菌類に対して良好な抗菌活性を有することが示された。特に、環境中に常在する非病原性細菌である枯草菌に対し、優れた抗菌活性を示した。
【0161】
オフロキサシンと、他の抗菌性化合物とを併用する実施例24〜44について、抗菌活性の評価結果を表12〜18に示した。各表中の「100/0」、「75/25」、「50/50」、「25/75」および「0/100」は、オフロキサシンと、イソチアゾリン系化合物、ベンゾイソチアゾリン系化合物、ベンゾイミダゾール系化合物、ハロアセチレン系化合物またはテトラヒドロチオフェンジオキシド系化合物との配合重量比を示す。また、以下の各表には、オフロキサシンおよび前記の各抗菌性化合物について、前記重量比で用いた場合に、少なくとも一以上の重量比において1000μg/mL未満のMIC値の得られた試験菌のみを示した。
【0162】
【表12】

【0163】
上記表12は、オフロキサシンと、イソチアゾリン系化合物である2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンを100:0、75:25、50:50、25:75の重量比で含有する工業用防腐・防汚組成物(実施例23〜26)についての評価結果を示す。実施例24〜26の工業用防腐・防汚組成物は、実施例23の組成物と同様に細菌類に対して良好な抗菌活性を示した。そして、セラチア菌に対する場合を除いて、全組成物についてMICの実測値/理論値が1より小さく、オフロキサシンおよび2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンをそれぞれ単独で使用した場合(実施例23および比較例1)と比べ、抗菌活性の相乗的な向上が認められた。
【0164】
【表13】

【0165】
上記表13は、オフロキサシンと、イソチアゾリン系化合物の2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、および5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの混合物を100:0、75:25、50:50、25:75の重量比で含有する工業用防腐・防汚組成物(実施例23、27〜29)についての評価結果を示す。実施例27〜29の組成物について、実施例23の組成物が有効な抗菌活性を示さなかったカビ類および酵母類に対し、良好な抗菌活性が認められた。また、実施例27〜29の組成物について黄色ブドウ球菌および大腸菌、実施例27および28の組成物について緑膿菌に対する場合を除き、MICの実測値/理論値が1より小さく、オフロキサシンおよび2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン・5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン混合物をそれぞれ単独で使用した場合(実施例23および比較例2)と比べ、試験した各細菌、カビおよび酵母に対して、抗菌活性の相乗的な向上が認められた。
【0166】
【表14】

【0167】
上記表14は、オフロキサシンと、イソチアゾリン系化合物である2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンを100:0、75:25、50:50、25:75の重量比で含有する工業用防腐・防汚組成物(実施例23、30〜32)についての評価結果を示す。実施例31、32の組成物がセラチア菌に対し有効な抗菌活性を示さなかったことを除き、試験した細菌類、カビ類および酵母類に対して、有効な抗菌活性が認められた。また、有効な抗菌活性が認められた場合には、MICの実測値/理論値が1より小さく、オフロキサシンおよび2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンをそれぞれ単独で使用した場合(実施例23および比較例3)と比べ、抗菌活性の相乗的な向上が認められた。
【0168】
【表15】

【0169】
上記表15は、オフロキサシンと、ベンゾイソチアゾリン系化合物である1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンを100:0、75:25、50:50、25:75の重量比で含有する工業用防腐・防汚組成物(実施例23、33〜35)についての評価結果を示す。クロコウジカビ、アオカビ、オーレオバシディウム プルランス、アルテルナリア属、ムコール スピネッセンスおよびロドトルラ ルブラに対して実施例33の組成物、グリオクラディウム ビレンスに対して実施例33〜35の組成物が有効な抗菌活性を示さなかった他は、有効な抗菌活性が認められた。また、有効な抗菌活性の見られた場合のうち、実施例33〜35の組成物について黄色ブドウ球菌および緑膿菌、実施例35についてムコール スピネセンスに対する場合を除き、MICの実測値/理論値が1より小さく、オフロキサシンおよび1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンをそれぞれ単独で使用した場合(実施例23および比較例4)と比べ、抗菌活性の相乗的な向上が認められた。
【0170】
【表16】

【0171】
上記表16は、オフロキサシンと、ベンゾイミダゾール系化合物であるメチル 2−ベンゾイミダゾールカルバメート塩酸塩を100:0、75:25、50:50、25:75の重量比で含有する工業用防腐・防汚組成物(実施例23、36〜38)についての評価結果を示す。実施例36〜38の組成物について、アルテルナリア属、ムコール スピネッセンスおよびサッカロミセス セレビジアエ、実施例38の組成物についてセラチア菌に対して有効な抗菌活性が見られなかった他は、試験した細菌類、カビ類および酵母に対して抗菌活性が認められた。また、抗菌活性を示した試験菌に対しては、MICの実測値/理論値が1より小さく、オフロキサシンおよびメチル 2−ベンゾイミダゾールカルバメート塩酸塩をそれぞれ単独で使用した場合(実施例23および比較例5)と比べ、抗菌活性の相乗的な向上が認められた。
【0172】
【表17】

【0173】
上記表17は、オフロキサシンと、ハロアセチレン系化合物である3−ヨード−2−プロピニル N−ブチルカルバメートを100:0、75:25、50:50、25:75の重量比で含有する工業用防腐・防汚組成物(実施例23、39〜41)についての評価結果を示す。実施例41の組成物がセラチア菌に対して有効な抗菌活性を示さなかった他は、試験した細菌類、カビ類および酵母類に対して抗菌活性を示した。また、抗菌活性を示した試験菌に対しては、MICの実測値/理論値が1より小さく、オフロキサシンおよび3−ヨード−2−プロピニル N−ブチルカルバメートをそれぞれ単独で使用した場合(実施例23および比較例6)と比べ、抗菌活性の相乗的な向上が認められた。
【0174】
【表18】

【0175】
上記表18は、オフロキサシンと、テトラヒドロチオフェンジオキシド系化合物であるスラカーブ(3,3,4,4−テトラクロロテトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド)を、100:0、75:25、50:50、25:75の重量比で含有する工業用防腐・防汚組成物(実施例23、42〜44)についての評価結果を示す。実施例42〜44の組成物は、試験した全菌類に対し抗菌活性を示した。また、大腸菌、緑膿菌およびセラチア菌に対する場合を除き、MICの実測値/理論値が1よりも小さく、オフロキサシンおよびスラカーブをそれぞれ単独で使用した場合(実施例23および比較例7)と比べ、抗菌活性の相乗的な向上が認められた。
【0176】
[実施例45]
ジフロキサシン標準品(1−(4−フルオロフェニル)−4−オキソ−6−フルオロ−7−(4−メチルピペラジノ)−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸;和光純薬工業株式会社製)を、10重量%となるようにメチルカルビトールに添加して、室温にて30分間撹拌混合して調製し、白色の懸濁剤である工業用防腐・防汚組成物を得た。
【0177】
[実施例46〜66]
上記表2において、ノルフロキサシンをジフロキサシンに代替して同様に調製し、実施例46〜66の工業用防腐・防汚組成物とした。なお、ジフロキサシンとしては、上記と同じ和光純薬工業株式会社製の標準品を用いた。
【0178】
実施例45〜66の工業用防腐・防汚組成物について、上記と同様に抗菌活性の評価を行った。また、上記比較例1〜7の工業用防腐・防汚組成物についても、同時に抗菌活性を評価した。実施例46〜66の工業用防腐・防汚組成物については、上記と同様に、ジフロキサシンと他の抗菌性化合物を併用することにより、抗菌活性の相乗的な向上がみられるかどうかについても評価した。
【0179】
実施例45についてのMIC測定結果を表19に示した。
【0180】
【表19】

【0181】
表19より明らかなように、ジフロキサシンを含有する実施例45の工業用防腐・防汚組成物は、枯草菌、黄色ブドウ球菌、大腸菌および緑膿菌に対して62.5μg/mL以下、セラチア菌に対して、250μg/mLのMICを示し、細菌類に対して良好な抗菌活性を有することが示された。特に、環境中に常在する非病原性細菌である枯草菌に対し、優れた抗菌活性を示した。
【0182】
ジフロキサシンと、他の抗菌性化合物とを併用する実施例46〜66について、抗菌活性の評価結果を表20〜26に示した。各表中の「100/0」、「75/25」、「50/50」、「25/75」および「0/100」は、ジフロキサシンと、イソチアゾリン系化合物、ベンゾイソチアゾリン系化合物、ベンゾイミダゾール系化合物、ハロアセチレン系化合物またはテトラヒドロチオフェンジオキシド系化合物との配合重量比を示す。また、以下の各表には、ジフロキサシンおよび前記の各抗菌性化合物について、前記重量比で用いた場合に、少なくとも一以上の重量比において1000μg/mL未満のMIC値の得られた試験菌のみを示した。
【0183】
【表20】

【0184】
上記表20は、ジフロキサシンと、イソチアゾリン系化合物である2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンを100:0、75:25、50:50、25:75の重量比で含有する工業用防腐・防汚組成物(実施例45〜48)についての評価結果を示す。実施例46〜48の工業用防腐・防汚組成物は、実施例45の組成物と同様に細菌類に対して良好な抗菌活性を示した。そして、セラチア菌に対する場合を除いてMICの実測値/理論値が1より小さく、ジフロキサシンおよび2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンをそれぞれ単独で使用した場合(実施例45および比較例1)と比べ、抗菌活性の相乗的な向上が認められた。
【0185】
【表21】

【0186】
上記表21は、ジフロキサシンと、イソチアゾリン系化合物の2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、および5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの混合物を100:0、75:25、50:50、25:75の重量比で含有する工業用防腐・防汚組成物(実施例45、49〜51)についての評価結果を示す。実施例49〜51の組成物について、実施例45の組成物が有効な抗菌活性を示さなかったカビ類および酵母類に対し、良好な抗菌活性が認められた。また、実施例50および51の組成物について黄色ブドウ球菌、実施例51の組成物について大腸菌に対する場合を除き、MICの実測値/理論値が1より小さく、ジフロキサシンおよび2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン・5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン混合物をそれぞれ単独で使用した場合(実施例45および比較例2)と比べ、試験した各細菌、カビおよび酵母に対して、抗菌活性の相乗的な向上が認められた。
【0187】
【表22】

【0188】
上記表22は、ジフロキサシンと、イソチアゾリン系化合物である2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンを100:0、75:25、50:50、25:75の重量比で含有する工業用防腐・防汚組成物(実施例45、52〜54)についての評価結果を示す。実施例53の組成物がセラチア菌、実施例54の組成物が大腸菌およびセラチア菌に対し有効な抗菌活性を示さなかったが、その他は、試験した細菌類、カビ類および酵母類に対して、有効な抗菌活性が認められた。また、有効な抗菌活性が認められた場合には、MICの実測値/理論値が1より小さく、ジフロキサシンおよび2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンをそれぞれ単独で使用した場合(実施例45および比較例3)と比べ、抗菌活性の相乗的な向上が認められた。
【0189】
【表23】

【0190】
上記表23は、ジフロキサシンと、ベンゾイソチアゾリン系化合物である1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンを100:0、75:25、50:50、25:75の重量比で含有する工業用防腐・防汚組成物(実施例45、55〜57)についての評価結果を示す。クロコウジカビ、アルテルナリア属、ムコール スピネッセンス、グリオクラディウム ビレンスおよびロドトルラ ルブラに対して実施例55の組成物、グリオクラディウム ビレンスに対して実施例56の組成物が有効な抗菌活性を示さなかった他は、有効な抗菌活性が認められた。また、有効な抗菌活性の見られた場合のうち、実施例55の組成物について大腸菌およびセラチア菌、実施例55〜57の組成物について緑膿菌に対する場合を除き、MICの実測値/理論値が1より小さく、ジフロキサシンおよび1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンをそれぞれ単独で使用した場合(実施例45および比較例4)と比べ、抗菌活性の相乗的な向上が認められた。
【0191】
【表24】

【0192】
上記表24は、ジフロキサシンと、ベンゾイミダゾール系化合物であるメチル 2−ベンゾイミダゾールカルバメート塩酸塩を100:0、75:25、50:50、25:75の重量比で含有する工業用防腐・防汚組成物(実施例45、58〜60)についての評価結果を示す。実施例58〜60の組成物について、アルテルナリア属、ムコール スピネッセンスおよびサッカロミセス セレビジアエ、実施例60の組成物についてセラチア菌に対して有効な抗菌活性が見られなかった。しかし、試験した他の細菌類、カビ類および酵母に対しては抗菌活性が認められ、MICの実測値/理論値が1より小さく、ジフロキサシンおよびメチル 2−ベンゾイミダゾールカルバメート塩酸塩をそれぞれ単独で使用した場合(実施例45および比較例5)と比べ、抗菌活性の相乗的な向上が認められた。
【0193】
【表25】

【0194】
上記表25は、ジフロキサシンと、ハロアセチレン系化合物である3−ヨード−2−プロピニル N−ブチルカルバメートを100:0、75:25、50:50、25:75の重量比で含有する工業用防腐・防汚組成物(実施例45、61〜63)についての評価結果を示す。実施例63の組成物が大腸菌、緑膿菌およびセラチア菌に対して有効な抗菌活性を示さなかった他は、試験した細菌類、カビ類および酵母類に対して抗菌活性を示した。また、抗菌活性を示した試験菌に対しては、実施例61の組成物についてセラチア菌に対する場合を除き、MICの実測値/理論値が1より小さく、ジフロキサシンおよび3−ヨード−2−プロピニル N−ブチルカルバメートをそれぞれ単独で使用した場合(実施例45および比較例6)と比べ、抗菌活性の相乗的な向上が認められた。
【0195】
【表26】

【0196】
上記表26は、ジフロキサシンと、テトラヒドロチオフェンジオキシド系化合物であるスラカーブ(3,3,4,4−テトラクロロテトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド)を、100:0、75:25、50:50、25:75の重量比で含有する工業用防腐・防汚組成物(実施例45、64〜66)についての評価結果を示す。実施例64〜66の組成物は、試験した全菌類に対し抗菌活性を示した。また、実施例65の組成物について大腸菌および緑膿菌、実施例64および66の組成物についてセラチア菌に対する場合を除き、MICの実測値/理論値が1よりも小さく、ジフロキサシンおよびスラカーブをそれぞれ単独で使用した場合(実施例45および比較例7)と比べ、抗菌活性の相乗的な向上が認められた。
【0197】
上述したように、本発明の実施例の防腐・防汚組成物においては、キノロン系化合物であるノルフロキサシン、オフロキサシンおよびジフロキサシンが、枯草菌等の環境中に常在する非病原性細菌に対しても、抗菌活性を有することが認められた。また所定の抗菌性化合物を併用することにより、抗菌活性が相乗的に上昇し、細菌類並びにカビおよび酵母の真菌類に対し、幅広く抗菌活性の相乗的な向上が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0198】
本発明によれば、産業用水や各種工業用品の有害微生物の防除等、幅広い工業用途に利用可能で、かつそれらの各用途において抗菌活性が相乗的に向上した工業用防腐・防汚組成物を提供することができる。
【0199】
本出願は、わが国で出願された特願2010−99228を基礎とするものであり、その内容は本明細書に全て包含されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で示されるキノロン系化合物であって、オキソリニック酸を除く化合物、またはその塩を含有する、工業用防腐・防汚組成物。
【化1】

[式中、A環は置換されていてもよく、1個または2個の炭素原子が窒素原子に置換された複素環であってもよい6員の芳香族環を示し、RおよびRは同一または異なって、水素原子または置換されていてもよい炭化水素基を示す。また、RはA環の置換基とともに環を形成していてもよい。]
【請求項2】
さらに、式(2)で示されるイソチアゾリン系化合物、式(3)で示されるベンゾイソチアゾリン系化合物、式(4)で示されるベンゾイミダゾール系化合物、式(5)で示されるハロアセチレン系化合物、式(6)で示されるテトラヒドロチオフェンジオキシド系化合物、およびこれらの塩よりなる群から選択される1種または2種以上を含有する、請求項1に記載の工業用防腐・防汚組成物。
【化2】

[式中、Rは水素原子または置換されていてもよい炭化水素基を示し、RおよびRは同一または異なって、それぞれ水素原子、ハロゲン原子または置換されていてもよい炭化水素基を示す。]
【化3】

[式中、A環は置換されていてもよいベンゼン環を示し、Yは水素原子または置換されていてもよい炭化水素基を示す。]
【化4】

[式中、A環は置換されていてもよいベンゼン環を示し、Zは−NHCOOR(式中、Rは水素原子またはアルキル基を示す。)で示される基または置換されていてもよい5員または6員の含窒素複素環基を示す。]
【化5】

[式中、Xはハロゲン原子を示し、RおよびRは同一または異なって、それぞれ水素原子または置換されていてもよい炭化水素基を示し、mは0または1の整数を示す。]
【化6】

[式中、Y、Y、YおよびYは同一または異なって、それぞれ水素原子、ハロゲン原子または置換されていてもよい炭化水素基を示す。]
【請求項3】
キノロン系化合物であって、オキソリニック酸を除く化合物が、式(7)および式(8)で示される化合物よりなる群から選択される1種または2種以上である、請求項1または2に記載の工業用防腐・防汚組成物。
【化7】

[式中、RおよびRは同一または異なって、水素原子または置換されていてもよい炭化水素基を示し、Rは水素原子、ハロゲン原子またはアミノ基、R10は水素原子またはハロゲン原子、R11は置換されていてもよい炭化水素基または置換されていてもよい環状アミノ基を示す。]
【化8】

[式中、RおよびRは同一または異なって、水素原子または置換されていてもよい炭化水素基を示し、Rは水素原子、ハロゲン原子またはアミノ基、R10は水素原子またはハロゲン原子、R11は置換されていてもよい炭化水素基または置換されていてもよい環状アミノ基、R12は水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよいアルコキシ基または置換されていてもよい炭化水素基を示す。また、RはR12とともに環を形成していてもよい。]
【請求項4】
キノロン系化合物であって、オキソリニック酸を除く化合物が、エノキサシン、トスフロキサシン、ノルフロキサシン、サラフロキサシン、ジフロキサシン、フレロキサシン、ロメフロキサシン、エンロフロキサシン、シプロフロキサシン、ガチフロキサシン、スパルフロキサシン、ダノフロキサシン、モキシフロキサシン、ガレノキサシン、シタフロキサシン、オルビフロキサシン、ナディフロキサシン、オフロキサシン、レボフロキサシン、パズフロキサシンおよびマルボフロキサシンよりなる群から選択される1種または2種以上である、請求項1または2に記載の工業用防腐・防汚組成物。
【請求項5】
イソチアゾリン系化合物が、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4−クロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンおよび4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンよりなる群から選択される1種または2種以上である、請求項2に記載の工業用防腐・防汚組成物。
【請求項6】
イソチアゾリン系化合物が、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンおよび2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンよりなる群から選択される1種または2種以上である、請求項2に記載の工業用防腐・防汚組成物。
【請求項7】
ベンゾイソチアゾリン系化合物が、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンおよびN−n−ブチル−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンよりなる群から選択される1種または2種である、請求項2に記載の工業用防腐・防汚組成物。
【請求項8】
ベンゾイミダゾール系化合物が、メチル 2−ベンゾイミダゾールカルバメート、エチル 2−ベンゾイミダゾールカルバメートおよび2−(4−チアゾリル)ベンゾイミダゾールよりなる群から選択される1種または2種以上である、請求項2に記載の工業用防腐・防汚組成物。
【請求項9】
ハロアセチレン系化合物が、3−ヨード−2−プロピニル N−ブチルカルバメートである、請求項2に記載の工業用防腐・防汚組成物。
【請求項10】
テトラヒドロチオフェンジオキシド系化合物が、3,3,4,4−テトラクロロテトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシドである、請求項2に記載の工業用防腐・防汚組成物。

【公開番号】特開2011−241204(P2011−241204A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86847(P2011−86847)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(503140056)日本エンバイロケミカルズ株式会社 (95)
【Fターム(参考)】