説明

工業用Xレイ感光材料

【課題】迅速処理適性を有し、且つ高感度、高コントラストの工業用Xレイ感光材料を提供する。
【解決手段】透明支持体の両面にそれぞれ少なくとも1層のハロゲン化銀乳剤層を有するハロゲン化写真感光材料であって、該ハロゲン化銀乳剤層が平均粒子厚みが0.2μm未満で且つアスペクト比が8を超える平板状ハロゲン化銀粒子を含有し、粒子の内殻であって粒子体積の1%以上3%未満の粒子内殻にはIrもしくはRhを含有せず、粒子の外殻であって粒子体積の97%以上99%未満の粒子外殻に少なくともIrもしくはRhを含有することを特徴とする工業用Xレイ感光材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業用Xレイ感光材料に関するものであり、特に高感で高コントラストの工業用Xレイ感光材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
工業用Xレイ感光材料は、工業用部材の内部および表面欠陥を検出すべく、対象物にX線を照射して、その透過してきたX線の強弱を検出するために使用される感光材料である。この用途には、X線以外にも放射性同位体元素によるγ線、その他加速機による高エネルギー線や粒子線等が記録用線源として使用される。また、これらの感材による記録に際し、感材を鉛箔のような薄い金属箔に密着させて、前記放射線を照射することがよく行なわれるが、これは前記放射線の照射を受けた金属箔及び塗布したハロゲン化銀粒子自身もそのエネルギーを吸収して、2次電子線等を放出し、この2次線を利用して最終的に感材を感光させるものである。従って、これらはいずれも光以外の放射線等の照射による像記録である。放射線等の照射により形成された潜像は現像液によって現像し、黒化銀画像となる。工業用Xレイ感光材料は工業用部材のわずかな欠陥を抽出するために設計されたものであり、小さな欠陥を検出するために極めて高いコントラストが必要とされる。高いコントラストを実現するためには、塗布銀量を増やし、膜設計を軟膜にすることが工業用Xレイ感光材料の従来の手法であった。そのため、塗布銀量の多い工業用Xレイ感光材料製品はコストが銀によって左右されること、塗布銀量多く、軟膜性能のため現像処理時間が長く検査作業の効率が悪いこと、等の問題があった。従って、従来の技術では、塗布銀量を低減し、高感度及び高コントラストの性能を実現し、迅速処理適性を具備することは困難であった。
【0003】
ハロゲン化銀の感度を高める手段として、平板状ハロゲン化銀粒子を用いることが知られている。例えば、総粒子投影面積の50%以上が平均アスペクト比2以上の平板状ハロゲン化銀粒子を用いた工業用Xレイ感光材料は、同じ粒子容積を有する非平板状のハロゲン化銀粒子を用いた場合に比べて放射線写真感度が高く、銀量を増加させなくとも感度が高く得られることが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−106018号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、高感度で高コントラストの工業用Xレイ感光材料を提供することにある。特に、迅速処理適性を有し、且つ高感度、高コントラストの工業用Xレイ感光材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記課題は、本発明による下記の手段により解決された。
<1> 透明支持体の両面にそれぞれ少なくとも1層のハロゲン化銀乳剤層を有するハロゲン化写真感光材料であって、該ハロゲン化銀乳剤層が平均粒子厚みが0.2μm未満で且つアスペクト比が8を超える平板状ハロゲン化銀粒子を含有し、粒子の内殻であって粒子体積の1%以上3%未満の粒子内殻にはIrもしくはRhを含有せず、粒子の外殻であって粒子体積の97%以上99%未満の粒子外殻に少なくともIrもしくはRhを含有することを特徴とする工業用Xレイ感光材料。
<2> 前記粒子外殻が少なくともIrもしくはRhを、銀1モル当たり1×10−9モル%以上1×10−2モル%以下含有することを特徴とする<1>に記載の工業用Xレイ感光材料。
<3> 前記工業用Xレイ感光材料の片面当たりの水膨潤値が20μm未満である<1>又は<2>に記載の工業用Xレイ感光材料
<4> 前記工業用Xレイ感光材料の片面当たりの塗布銀量が5.5g/m未満である<1>〜<3>のいずれかに記載の工業用Xレイ感光材料。
<5> 前記工業用Xレイ感光材料の片面当たりの総ゼラチン塗布量と塗布銀量の質量比(総ゼラチン量/塗布銀量)が1.4〜1.8である<1>〜<4>のいずれかに記載の工業用Xレイ感光材料。
【0006】
写真感度を高めるために、よりアスペクト比の高いハロゲン化銀粒子を調製する手段がこれまで幾多研究され、これらの手段を用いることによって、アスペクト比の高い平板状粒子が比較的容易に調製することが可能となった。
しかしながら、アスペクト比の高いハロゲン化銀粒子は、高感度を与えるが、工業用Xレイ感光材料に導入する上で種々の問題を有する。
【0007】
第1に、アスペクト比の高いハロゲン化銀粒子では、工業用レントゲンフィルムとして要求される高いコントラストを得ることが困難であった。第2に、アスペクト比が高くなると圧力増感及びスリキズ耐性などが極度に悪化するために、工業用Xレイ感光材料のように欠陥検出手段としては不適であった。特許文献1には5〜25のアスペクト比のハロゲン化銀平板状粒子を用いた工業用Xレイ感光材料が開示されているが、このような技術課題とその解決手段については何ら開示もしくは示唆していない。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば高感で高コントラストの工業用Xレイ感光材料を提供できる。特に、少ない塗布銀量で十分な画像濃度を有する高感度、高コントラストの工業用Xレイ感光材料を提供することができる。さらに、本発明によれば、各種露光条件(X線による直接露光、又はPb箔からの2次電子線,蛍光スクリーンからの発光,Coなどの放射性同位元素からのガンマ線)に対しても高感度、高コントラストの画像が得られる工業用Xレイ感光材料を提供できる。
さらに、本発明では、軟膜にする必要がなく、膨潤値を低く設計でき、また低塗布銀量化が可能であることから、従来では不可能であった3分30秒未満での迅速現像処理が可能になること、それによって、処理ムラが無く面状に優れた画像を提供することができること、補充液量の半減化が可能になる等、現像処理工程が改善される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
1.工業用Xレイ感光材料
本発明の工業用Xレイ感光材料は、透明支持体の両面にそれぞれ少なくとも1層のハロゲン化銀乳剤層を有し、該ハロゲン化銀乳剤層が粒子内殻(粒子の内殻であって、粒子体積の5%未満に相当する殻部分)にはIrもしくはRhを含有せず、粒子外殻(粒子の外殻であって、粒子体積の95%以上に相当する殻部分)に少なくともIrもしくはRhを含有し、平均粒子厚みが0.2μm未満かつアスペクト比が8を超える平板状ハロゲン化銀粒子を含有する。
【0010】
好ましくは、粒子外殻のIrもしくはRhの含有量が、銀1モル当たり1×10−9モル%以上1×10−2モル%以下であり、より好ましくは、1×10−8モル%以上1×10−3モル%以下、さらに好ましくは1×10−7モル%以上1×10−4モル%以下である。
好ましくは、ハロゲン化銀乳剤層を含む片面の水膨潤値が20μm未満であり、より好ましくは、5μm以上20μm以下、さらに好ましくは、8μm以上15μm以下である。
好ましくは、片面当たりの塗布銀量が5.5g/m未満であり、より好ましくは、3.0g/m以上5.5g/m未満、更に好ましくは4.0g/m以上5.0g/m以下である。
好ましくは、片面当たりの総ゼラチン塗布量と塗布銀量の質量比(総ゼラチン量/塗布銀量)が1.40〜1.80であり、より好ましくは、1.50〜1.75、さらに好ましくは、1.55〜1.70である。
【0011】
本発明者らはアスペクト比が8を超える高アスペクト比の平板状ハロゲン化銀粒子を用いた工業用Xレイ感光材料の実用化を目指した中で、コントラストを高くすること、圧力増感及びスリキズ耐性など欠陥を改善することが大きな技術課題であることが判明し、それらの解決に鋭意努力した。
その結果、上記解決手段により解決できることを見出し本願の発明に至ったものである。
【0012】
本願における平板状ハロゲン化銀粒子の効果は、予想外に階調が硬調化し工業用Xレイ感光材料として好ましい高コントラストが得られることである。
本願におけるコントラスト(階調)は、下記により定義される。
(かぶり+透過光学濃度1.5)の濃度を得るために必要な放射線エネンルギーをE、(かぶり+透過光学濃度3.5)の濃度を得るために必要な放射線エネルギーEとしたとき、階調(G)=(3.5−1.5)/(logE−logE)である。
本願の工業用Xレイ感光材料として好ましい階調(G)は4.0以上である。より好ましくは、4.5以上である。
【0013】
<層構成>
本発明の工業用Xレイ感光材料は、両面にそれぞれハロゲン化銀乳剤層の他に保護層等の非感光性親水性コロイド層を有するのが好ましい。
本願によれば、少ない塗布銀量で十分は画像濃度を得ることができるので、ハロゲン化銀乳剤層の塗布銀量を低減し、さらにハロゲン化銀乳剤層及び非感光性親水性コロイド層を含めた総ゼラチン塗布量を低減し、薄層化することができる。塗布銀量は、好ましくは片面当たり3.0g/m以上5.5g/m未満、より好ましくは4.0g/m以上5.0g/m以下である。
本発明における全ゼラチンの塗布量は、片面当たり10g以下であり、5.0g/m以上9.0g/m以下が好ましく、より好ましくは、6.0g/m以上8.0g/m以下である。この場合に保護層のゼラチン塗布量は、1.0g/m以上2.0g/m以下が好ましい。
【0014】
<塗布膜の膨潤値>
本発明において、感光材料の膨潤値は、感光材料を21℃の蒸留水に3分間浸漬した後の膜厚値から、乾燥状態の膜厚値を引いた値を膨潤値として定義され、求めることができる。本発明における感光材料の膨潤値は、迅速処理性の観点から、20μm未満が好ましく、より好ましくは5μm以上20μm未満であり、更に好ましくは8μm以上15μm以下である。
【0015】
2.感光性ハロゲン化銀乳剤
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤について説明する。
1)ハロゲン組成
本発明のハロゲン化銀乳剤粒子は、塩化銀、塩臭化銀、塩沃化銀、塩沃臭化銀、臭化銀、沃臭化銀等のいずれのハロゲン化銀組成を有するものであってもよい。高感度が得られるという点では臭化銀、沃臭化銀であることが好ましい。
沃化銀含有量は、迅速現像処理適性の点から、ハロゲン化銀乳剤粒子に含まれる銀量に対して、2モル%以下が好ましく、0.05モル%以上0.45モル%以下が特に好ましい。
【0016】
2)粒子形状
本発明におけるハロゲン化銀乳剤粒子のアスペクト比は、1粒子の投影面積の円相当径をその粒子の厚みで割った値として定義される。
本発明に於ける平板状ハロゲン化銀粒子は、平均粒子厚みが0.2μm未満であり、平均アスペクト比が8以上の高アスペクト粒子である。好ましくは平均粒子厚みが0.03μm以上0.15μm以下、平均アスペクト比が9以上16以下である。
【0017】
本発明でハロゲン化銀乳剤粒子は、平行な2つの双晶面を有する2重双晶粒子であってもよい。また、{111}面を主平面とする平板状粒子であっても、{100}面を主平面とする平板状粒子であってもよい。
【0018】
3)重金属ドープ
本発明におけるハロゲン化銀乳剤粒子は、粒子内殻(粒子の内殻であって、粒子体積の5%未満に相当する殻部分)にはIrもしくはRhを含有せず、粒子外殻(粒子の外殻であって、粒子体積の95%以上に相当する殻部分)に少なくともIrもしくはRhを含有する。好ましくは、粒子外殻のIrもしくはRhの含有量が、銀1モル当たり1×10−9モル%以上1×10−2モル%以下であり、より好ましくは、1×10−8モル%以上1×10−3モル%以下、さらに好ましくは1×10−7モル%以上1×10−4モル%以下である。
【0019】
本発明に於ける粒子外殻のIrもしくはRhの含有量が、1×10−9モル%未満では、本発明の硬調効果が得られず、また、1×10−2モル%を超えると、高感度が得られなくなるために好ましくない。
【0020】
本発明に於いては、粒子外殻にIrとRhを混合して含有しても良い。その場合の含有量の範囲は、IrとRhを合計した含有量が上記範囲にあることが好ましい。
【0021】
本発明に於いて、粒子内殻にはIrもしくはRhを含有しない。本発明において、「含有しない」とは、含有することによって、コントラストに影響しないことを意味するものであり、コントラストに影響しない程度の少量を含有することを排除するものではない。例えば、該少量の範囲は、銀を基準として、1×10−9モル%未満である。
本発明に於ける粒子内のIrもしくはRhの分布は、飛行時間型二次イオン質量分析(TOF−SIMS)、エッチングX線光電子分光分析(XPS/ESCA)などの方法によって測定することができる。
【0022】
また、本発明におけるハロゲン化銀乳剤粒子は、ハロゲン化銀粒子形成または物理熟成の過程において、IrやRh以外の重金属を添加し、ハロゲン化銀にドープしても良い。例えば、カドミウム塩、亜鉛塩、鉛塩、タリウム塩、鉄塩またはそれらの錯塩などを共存させても良い。
【0023】
4)製造方法
平板状ハロゲン化銀粒子の製法としては、当業界で知られた方法を適宜、組み合わせて用いることができる。
また、平行な双晶面を有し、{111}面を主平面とする平板状粒子は、特開昭58−127927号、特開昭58−113927号、特開昭58−113928号に記載された方法等を参照すれば容易に調製できる。
また、pBr1.3以下の比較的低pBr値の雰囲気中で平板状粒子が質量で40%以上存在する種晶を形成し、同程度のpBr値に保ちつつ銀およびハロゲン溶液を同時に添加しつつ種晶を成長させることにより得ることもできる。
この粒子成長過程において、新たな結晶核が発生しないように銀およびハロゲン溶液を添加することが望ましい。
平板状ハロゲン化銀粒子の大きさは、温度調節、溶剤の種類や量の選択、粒子成長時に用いる銀塩、およびハロゲン化物の添加量、添加速度等をコントロールすることにより調製できる。
【0024】
さらに本発明において、平板状ハロゲン化銀粒子の中でも単分散六角平板状粒子はとりわけ有用な粒子である。
単分散六角平板状粒子の構造および製造方法の詳細は特開昭63−151618号に記載されているとおりである。
【0025】
本発明において好ましいハロゲン化銀乳剤について、結晶構造は一様なものでもよいが、内部と外部が異質なハロゲン組成からなるものでもよく、層状構造をなしていてもよい。また、粒子形成中に還元増感銀核を含んでいることが好ましい。
【0026】
本発明において、英国特許第635841号、米国特許第3622318号に記載されているような、いわゆるハロゲン変換型(コンバージョン型)の粒子は特に有効に利用しうるものである。ハロゲン変換量は銀量に対し0.05モル%〜0.45モル%が好ましく、特に0.1モル%〜0.3モル%がより好ましい。
【0027】
沃臭化銀乳剤においては、内部および表面の少なくとも一方に高ヨード層を有する構造の粒子が特に好ましい。
また本発明において好ましい平板状ハロゲン化銀粒子の表面を高ヨード型にコンバージョンすることにより、より高感度なハロゲン化銀乳剤を得ることができる。
【0028】
上記方法でハロゲン変換を行う際に、ハロゲン化銀溶剤を存在させる方法は特に有効である。好ましい溶剤としては、チオエーテル化合物、チオシアン酸塩、4置換チオ尿素が挙げられる。中でもチオエーテル化合物とチオシアン酸塩は特に有効であり、チオシアン酸塩はハロゲン化銀1モル当たり0.5g〜5g、チオエーテルは0.2g〜3gの使用が好ましい。
【0029】
本発明のハロゲン化銀粒子の成長方法としては、これまで知られているあらゆる方法を用いることができる。すなわち、反応容器に効率の良い攪拌のもとに銀塩水溶液およびハロゲン塩水溶液を添加する。具体的方法としては、P.Glafkides著,Chemie et Phisique Photographique(Paul Montel社刊,1967年)、G.F.Duffin著,Photographic Emulsion Chemistry(The Focal Press刊,1966年)、V.L.Zelikman et al著,Making and Coating Photographic Emulsion(The Focal Press刊,1964年)などに記載された方法を用いて調製することができる。すなわち、酸性法、中性法、アンモニア法等のいずれでもよく、また可溶性銀塩と可溶性ハロゲン塩を反応させる形式としては、片側混合法、同時混合法、それらの組合せなどのいずれを用いてもよい。
【0030】
同時混合法の一つの形式として、ハロゲン化銀が生成される液相中のpAgを一定に保つ方法、すなわち、いわゆるコントロールド・ダブルジェット法を用いることもできる。
また、英国特許1535016号明細書、特公昭48−36890号、同52−16364号各公報等に記載されているような、硝酸銀やハロゲン化アルカリ水溶液の添加速度を粒子成長速度に応じて変化させる方法や、米国特許4242445号明細書、特開昭55−158124号公報等に記載されているような水溶液濃度を変化させる方法を用いて臨界過飽和度を越えない範囲において速く成長させることも好ましい。
【0031】
平板粒子の成長は、ハロゲン化銀微粒子存在下に物理熟成(微粒子が溶解し、基板粒子が成長する)により結晶成長させることも好ましく行われる。
【0032】
微粒子乳剤添加法では0.15μm径以下、好ましくは0.1μm径以下、より好ましくは0.06μm〜0.006μm径のAgX微粒子乳剤を添加し、オストワルド熟成により平板状粒子を成長させる。微粒子乳剤は連続的に添加することもできるし、継続的に添加することもできる。微粒子乳剤は反応容器の近傍に設けた混合器でAgNO溶液とX−塩溶液を供給して連続的に調製し、ただちに反応容器に連続的に添加することもできるし、予め別の容器でバッチ式に調製した後に連続的もしくは継続的に添加することもできる。
このような微粒子乳剤は液状で添加することもできるし、乾燥した粉末として添加することもできる。また乾燥粉末を添加直前に水と混合し、液状化して添加することもできる。添加した微粒子は20分以内に消失する態様で添加することが好ましく、10秒〜10分がより好ましい。消失時間が長くなると、微粒子間で熟成が生じ、粒子サイズが大きくなるために好ましくない。従って一度に全量を添加しない方が好ましい。このような微粒子は多重双晶粒子を実質的に含まないことが好ましい。ここで多重双晶粒子とは、1粒子あたり、双晶面を2枚以上有する粒子を指す。実質的に含まないとは、多重双晶粒子数比率が5%以下、好ましくは1%以下、より好ましくは0.1%以下を指す。更には1重双晶粒子をも実質的に含まないことが好ましい。更にはらせん転位を実質的に含まないことが好ましい。ここで実質的に含まないとは前記規定に従う。
【0033】
平板状ハロゲン化銀粒子の核形成の工程においては、米国特許第4,713,320号および同第4,942,120号に記載のメチオニン含量の少ないゼラチンを用いること、米国特許第4,914,014号に記載の高pBrで核形成を行うこと、特開平2−222940号に記載の短時間で核形成を行うことは本発明において用いる粒子の核形成工程においてきわめて有効である。特にメチオニン含率が好ましくは0μモル/g〜50μモル/g、より好ましくは0μモル/g〜40μモル/gのゼラチンを好ましく用いることができる。このようなゼラチンが熟成、成長時に用いられた場合、直径サイズ分布が揃ったより薄い平板状粒子が形成され、好ましい。
本発明において特に好ましくは20℃から40℃の温度で低分子量の酸化処理ゼラチンの存在下で攪拌下、硝酸銀水溶液とハロゲン水溶液と低分子量の酸化処理ゼラチンを一分以内に添加することである。この時、系のpBrは2以上が好ましくpHは7以下が好ましい。硝酸銀水溶液の濃度は0.6モル/L以下の濃度が好ましい。ゼラチンは分子量が通常のものより小さいものが好ましく10000から50000が特に好ましい。
アミノ基がフタル化またはコハク化またはトリメリット化に90%以上修飾されたゼラチンおよび少なくとも一方にメチオニン含量を低下させた酸化処理ゼラチンは特に好ましく用いられる。
【0034】
さらに、熟成工程においては、米国特許第5,254,453号記載の低濃度のベースの存在下でおこなうこと、米国特許第5,013,641号記載の高いpHでおこなうことが可能である。また、米国特許第5,147,771号,同第5,147,772号、同第5,147,773号、同第5,171,659号、同第5,210,013号ならびに同第5,252,453号に記載のポリアルキレンオキサイド化合物を熟成工程もしくは後の成長工程で添加することが可能である。
本発明において熟成工程は好ましくは60℃以上80℃以下の温度で行われる。核形成直後または熟成途中にpBrは2以下に下げることが好ましい。また核形成直後から熟成終了時までに追加のゼラチンが好ましくは添加される。特に好ましいゼラチンはアミノ基が95%以上コハク化またはトリメリット化に修飾されたものである。
【0035】
微粒子添加による成長時のpHは、2.0以上が必要であるが6以上10以下が好ましい。さらに好ましくはpH6以上9以下である。
【0036】
また、pClは1.0以上が必要であるが、1.6以上が好ましい。さらに好ましくは1.8以上3.0以下が好ましい。
【0037】
5)転位線
本発明の平板状粒子は、転位線を有するハロゲン化銀粒子を用いることが好ましい。
平板状粒子の転位線は、例えばJ.F.Hamilton,Phot.Sci.Eng.,11,57(1967)や、T.Shiozawa,J.Soc.Phot.Sci.Japan,35,213(1972)に記載の低温での透過型電子顕微鏡を用いた直接的な方法により観察することができる。すなわち乳剤から粒子に転位が発生するほどの圧力をかけないよう注意して取り出したハロゲン化銀粒子を電子顕微鏡観察用のメッシュにのせ、電子線による損傷(プリントアウト等)を防ぐように試料を冷却した状態で透過法により観察を行う。この時粒子の厚みが厚い程、電子線が透過しにくくなるので高圧型(0.25μの厚さの粒子に対し200kV以上)の電子顕微鏡を用いた方がより鮮明に観察することができる。このような方法により得られた粒子の写真より、主平面に対し垂直方向から見た場合の各粒子についての転位の位置および数を求めることができる。
【0038】
6)化学増感
本発明のハロゲン化銀粒子は化学増感を施すのが好ましい。化学増感としては、硫黄増感、セレン増感、テルル増感といったカルコゲン増感、金増感、還元増感を用いることができる。好ましくは、カルコゲン増感と金増感を組み合わせて用いることができる。
【0039】
硫黄増感においては、不安定硫黄化合物を用い、P.Grafkides著,Chimie et Physique Photographique(Paul Momtel社刊,1987年,第5版)、Research Disclosure誌,307巻,307105号などに記載されている不安定硫黄化合物を用いることができる。具体的には、チオ硫酸塩(例えば、ハイポ)、チオ尿素類(例えば、ジフェニルチオ尿素、トリエチルチオ尿素、N−エチル−N’−(4−メチル−2−チアゾリル)チオ尿素、カルボキシメチルトリメチルチオ尿素)、チオアミド類(例えば、チオアセトアミド)、ローダニン類(例えば、ジエチルローダニン、5−ベンジリデン−N−エチル−ローダニン)、フォスフィンスルフィド類(例えば、トリメチルフォスフィンスルフィド)、チオヒダントイン類、4−オキソ−オキサゾリジン−2−チオン類、ジスルフィド類またはポリスルフィド類(例えば、ジモルフォリンジスルフィド、シスチン、レンチオニン)、メルカプト化合物(例えば、システィン)、ポリチオン酸塩、元素状硫黄などの公知の硫黄化合物および活性ゼラチンなども用いることができる。
【0040】
セレン増感においては、不安定セレン化合物を用い、特公昭43−13489号、同44−15748号、特開平4−25832号、同4−109240号各公報、特開平4−271341号、同5−40324号各明細書に記載されている不安定セレン化合物を用いることができる。具体的には、コロイド状金属セレン、セレノ尿素類(例えば、N,N−ジメチルセレノ尿素、トリフルオルメチルカルボニル−トリメチルセレノ尿素、アセチル−トリメチルセレノ尿素)、セレノアミド類(例えば、セレノアセトアミド、N,N−ジエチルフェニルセレノアミド)、フォスフィンセレニド類(例えば、トリフェニルフォスフィンセレニド、ペンタフルオロフェニルトリフェニルフォスフィンセレニド)、セレノフォスフェート類(例えば、トリ−p−トリルセレノフォスフェート、トリ−n−ブチルセレノフォスフェート)、セレノケトン類(例えば、セレノベンゾフェノン)、イソセレノシアネート類、セレノカルボン酸類、セレノエステル類、ジアシルセレニド類などを用いればよい。また更に、特公昭46−4553号、同52−34492号各公報に記載の非不安定セレン化合物、例えば亜セレン酸、セレノシアン化カリウム、セレナゾール類、セレニド類なども用いることもできる。
【0041】
テルル増感においては不安定テルル化合物を用い、カナダ特許800958号、英国特許第1,295,462号、同1,396,696号の各明細書、特開平4−204640号、同4−271341号、同4−333043号、同5−303157号各明細書に記載されている不安定テルル化合物を用いることができる。具体的には、テルロ尿素類(例えば、テトラメチルテルロ尿素、N,N’−ジメチルエチレンテルロ尿素、N,N’−ジフェニルエチレンテルロ尿素)、フォスフィンテルリド類(例えば、ブチル−ジイソプロピルフォスフィンテルリド、トリブチルフォスフィンテルリド、トリブトキシフォスフィンテルリド、エトキシ−ジフェニルフォスフィンテルリド)、ジアシル(ジ)テルリド類(例えば、ビス(ジフェニルカルバモイル)ジテルリド、ビス(N−フェニル−N−メチルカルバモイル)ジテルリド、ビス(N−フェニル−N−メチルカルバモイル)テルリド、ビス(N−フェニル−N−ベンジルカルバモイル)テルリド、ビス(エトキシカルボニル)テルリド)、イソテルロシアナート類、テルロアミド類、テルロヒドラジド類、テルロエステル類(例えば、ブチルヘキシルテルロエステル)、テルロケトン類(例えば、テルロアセトフェノン)、コロイド状テルル、(ジ)テルリド類、その他のテルル化合物(ポタシウムテルリド、テルロペンタチオネートナトリウム塩)などを用いればよい。
【0042】
金増感については、前述のP.Grafkides著,Chimie et Physique Photographique(Paul Momtel社刊,1987年,第5版)、Research Disclosure誌 307巻307105号などに記載されている金塩を用いることができる。具体的には、塩化金酸、カリウムクロロオーレート、カリウムオーリチオシアネート、硫化金、金セレナイドにくわえて米国特許第2,642,361号、同5,049,484号、同5,049,485号明細書などに記載の金化合物も用いることができる。また、白金、パラジウム、イリジウムなどの貴金属塩を加えてもよい。
【0043】
本発明で用いられるカルコゲン増感剤の使用量は、使用するハロゲン化銀粒子、化学増感条件などにより変わるが、ハロゲン化銀1モル当り10−8モル〜10−2モル、好ましくは、10−7モル〜5×10−3モル程度を用いる。
【0044】
本発明で用いられる金増感剤および貴金属増感剤の使用量は、ハロゲン化銀1モル当り10−7モル〜10−2モル程度を用いる。本発明における化学増感の条件に特に制限はないが、pAgとしては6〜11が好ましく、より好ましくは7〜10であり、pHとしては4〜10が好ましく、温度としては40℃〜95℃が、さらには45℃〜85℃が好ましい。
【0045】
還元増感については、前述のP.Grafkides著,Chimie et Physique Photographique(Paul Momtel社刊,1987年,第5版)、Research Disclosure誌,307巻,307105号などに記載されている公知の還元性化合物を用いることができる。具体的には、アミノイミノメタンスルフィン酸(別名、二酸化チオ尿素)、ボラン化合物(例えば、ジメチルアミンボラン)、ヒドラジン化合物(例えば、ヒドラジン、p−トリルヒドラジン)、ポリアミン化合物(例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン)、塩化第1スズ、シラン化合物、レダクトン類(例えば、アスコルビン酸)、亜硫酸塩、アルデヒド化合物、水素ガスなどを用いればよい。また高pHや銀イオン過剰(いわゆる銀熟成)の雰囲気で還元増感を施してもよい。
【0046】
本発明のハロゲン化銀乳剤は、化学増感工程において粒子の表面もしくはその一部がハロゲン変換されていてもよい。ハロゲン変換を施す方法としては、臭化カリウム、臭化ナトリウム等の水溶性臭化物塩、沃化カリウム等の水溶性沃化物塩等を単独もしくは組み合わせて用いることができ、それらを固体のまま、または水溶液、またはゼラチン分散物として添加することができる。また臭化銀、沃臭化銀、沃化銀のハロゲン化銀微粒子を添加することも好ましく用いられ、それらは単独もしくは組み合わせて用いることもできる。
微粒子で添加する場合の微粒子の平均球相当径は0.1μm以下のものが好ましく、0.05μm以下のものがより好ましい。また微粒子は、反応容器の近傍に設けた混合機で硝酸銀水溶液と任意の組成のハロゲン化アルカリ水溶液を供給して連続的に調整し、ただちに反応容器に添加することもできるし、予め別の容器でバッチ式に調整した後に添加することもできる。またハロゲン化銀微粒子には必要によりイリジウム、ロジウム、白金等の重金属のイオンまたは化合物を含ませることも可能である。
【0047】
本発明の乳剤調製時、例えば粒子形成時、脱塩工程、化学増感時、塗布前に金属イオンの塩を存在させることは目的に応じて好ましい。粒子にドープする場合には粒子形成時、粒子表面の修飾あるいは化学増感剤として用いる時は粒子形成後、化学増感終了前に添加することが好ましい。粒子全体にドープする場合と粒子のコアー部のみ、あるいはシェル部のみ、あるいはエピタキシャル部分にのみ、あるいは基盤粒子にのみドープする方法も選べる。Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Sc、Y、LaCr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ru、Rh、Pd、Re、Os、Ir、Pt、Au、Cd、Hg、Tl、In、Sn、Pb、又はBiなどを用いることができる。これらの金属はアンモニウム塩、酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、燐酸塩、水酸塩あるいは6配位錯塩、4配位錯塩など粒子形成時に溶解させることができる塩の形であれば添加できる。例えばCdBr、CdCl、Cd(NO、Pb(NO、Pb(CHCOO)、K〔Fe(CN)〕、(NH〔Fe(CN)〕、KIrCl、(NHRhCl、およびKRu(CN)などが挙げられる。配位化合物のリガンドとしてハロ、アコ、シアノ、シアネート、チオシアネート、ニトロシル、チオニトロシル、オキソ、又はカルボニルの中から選ぶことができる。
これらは金属化合物を1種類のみ用いてもよいが2種あるいは3種以上を組み合せて用いてよい。
【0048】
米国特許第3,772,031号に記載されているようなカルコゲン化合物を乳剤調製中に添加する方法も有用な場合がある。S、Se、又はTe以外にもシアン塩、チオシアン塩、セレノシアン酸、炭酸塩、リン酸塩、又は酢酸塩を存在させてもよい。
【0049】
いわゆる化学増感助剤の存在下に化学増感することもできる。有用な化学増感助剤には、アザインデン、アザピリダジン、アザピリミジンのような、化学増感の過程でかぶりを抑制し、且つ感度を増大するものとして知られた化合物が用いられる。化学増感助剤改質剤の例は、米国特許第2,131,038号、同3,411,914号、同3,554,757号、特開昭58−126526号および前述ダフィン著,「写真乳剤化学」,138頁〜143頁に記載されている。
【0050】
7)酸化剤処理
本発明の乳剤の製造工程中に銀に対する酸化剤を用いることが好ましい。銀に対する酸化剤とは、金属銀に作用して銀イオンに変換させる作用を有する化合物をいう。特にハロゲン化銀粒子の形成過程および化学増感過程において副生するきわめて微小な銀粒子を、銀イオンに変換させる化合物が有効である。ここで生成する銀イオンは、ハロゲン化銀、硫化銀、セレン化銀等の水に難溶の銀塩を形成してもよく、また、硝酸銀等の水に易溶の銀塩を形成してもよい。銀に対する酸化剤は、無機物であっても、有機物であってもよい。無機の酸化剤としては、オゾン、過酸化水素およびその付加物(例えば、NaBO・H・3HO、2NaCO・3H、Na・2H、2NaSO・H・2HO)、ペルオキシ酸塩(例えばK、K、K)、ペルオキシ錯体化合物(例えば、K〔Ti(O)C〕・3HO、4KSO・Ti(O)OH・SO・2HO、Na〔VO(O)(C・6HO〕、過マンガン酸塩(例えば、KMnO)、クロム酸塩(例えば、KCr)などの酸素酸塩、沃素や臭素などのハロゲン元素、過ハロゲン酸塩(例えば過沃素酸カリウム)高原子価の金属の塩(例えば、ヘキサシアノ第二鉄酸カリウム)およびチオスルフォン酸塩などがある。
【0051】
また、有機の酸化剤としては、p−キノンなどのキノン類、過酢酸や過安息香酸などの有機過酸化物、活性ハロゲンを放出する化合物(例えば、N−ブロムサクシイミド、クロラミンT、クロラミンB)が例として挙げられる。
前述の還元増感と銀に対する酸化剤を併用するのは好ましい態様である。
【0052】
8)分光増感
本発明のハロゲン化銀写真感光材料は分光増感されていることが好ましい。分光増感に使用できる分光増感色素としては、例えばシアニン色素、メロシアニン色素、複合シアニン色素、複合メロシアニン色素、ホロポーラーシアニン色素、ヘミシアニン色素、スチリル色素およびヘミオキソノール色素等が挙げられる。特に有用な分光増感色素は、シアニン色素、メロシアニン色素および複合メロシアニン色素に属する色素である。これらの色素類には、塩基性複素環核として、シアニン色素類に通常利用される核のいずれをも適用できる。すなわち、ピロリン核、オキサゾリン核、チアゾリン核、セレナゾリン核、ピロール核、オキサゾール核、チアゾール核、セレナゾール核、イミダゾール核、テトラゾール核、ピリジン核、テルラゾール核等;これらの核に脂環式炭化水素環が縮合した核;および、これらの核に芳香族炭化水素環が縮合した核、すなわち、インドレニン核、ベンズインドレニン核、インドール核、ベンズオキサゾール核、ナフトオキサゾール核、ベンズイミダゾール核、ナフトイミダゾール核、ベンゾチアゾール核、ナフトチアゾール核、ベンゾセレナゾール核、ナフトセレナゾール核、キノリン核、ベンゾテルアゾール核等が適用できる。これらの複素環核は炭素原子上に置換されてもよい。
【0053】
メロシアニン色素または複合メロシアニン色素には、ケトメチレン構造を有する核として、通常メロシアニン色素に利用される核のいずれをも適用できる。特に有用な核として、ピラゾリン−5−オン核、チオヒダントイン核、2−チオオキサゾリジン−2,4−ジオン核、チアゾリジン−2,4−ジオン核、ローダニン核、チオバルビツール酸核、2−チオセレナゾリジン−2,4−ジオン核等の5員、6員の複素環核等を適用することができる。
【0054】
分光増感色素の添加時期としては特に制限は無く、粒子形成工程から塗布直前まで任意の時期に添加することができる。具体的には、ハロゲン化銀粒子形成時に添加する方法、ハロゲン化銀乳剤脱塩工程で添加する方法、ハロゲン化銀乳剤化学熟成(化学増感)工程直前に添加する方法、ハロゲン化銀乳剤化学熟成時、ハロゲン化銀乳剤化学熟成後、塗布液調製時に添加する方法などがあるが、好ましくは、前記した金増感剤、カルコゲン増感剤の添加以前、すなわちこれらの化合物による化学増感前に添加する。また、分光増感色素を25℃以上55℃未満の温度で添加したのち添加温度より昇温して化学熟成を行うことで各ハロゲン化粒子に均一につけることも可能である。
【0055】
本発明に用いる分光増感色素を本発明のハロゲン化銀乳剤中に含有させるには、それらを直接乳剤中に分散してもよいし、あるいは水、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、メチルセロソルブ、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、3−メトキシ−1−プロパノール、3−メトキシ−1−ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、N,N−ジメチルホルムアミド等の溶媒単独もしくは混合溶媒に溶解して乳剤に添加してもよい。また、米国特許第3,469,987号明細書等に記載のように、色素を揮発性の有機溶剤に溶解し、この溶液を水または親水性コロイド中に分散し、この分散物を乳剤中へ添加する方法、特公昭46−24185号等に記載のように、水不溶性色素を溶解することなしに水溶性溶剤中に分散させ、この分散物を乳剤中へ添加する方法、特公昭44−23389号、特公昭44−27555号、特公昭57−22091号等に記載されているように、色素を酸に溶解し、この溶液を乳剤中へ添加したり、酸または塩基を共存させて水溶液とし乳剤中へ添加する方法、米国特許第3,822,135号、米国特許第4,006,025号明細書等に記載のように、界面活性剤を共存させて水溶液あるいはコロイド分散物としたものを乳剤中へ添加する方法、特開昭53−102733号、特開昭58−105141号に記載のように、親水性コロイド中に色素を直接分散させ、その分散物を乳剤中へ添加する方法、特開昭51−74624号に記載のように、レッドシフトさせる化合物を用いて色素を溶解し、この溶液を乳剤中へ添加する方法等を用いることもできる。また、溶解に超音波を使用することもできる。
【0056】
分光増感色素の組合せは、特に強色増感の目的でしばしば用いられる。その代表例は、米国特許第2,688,545号、同2,977,229号、同3,397,060号、同3,522,052号、同3,527,641号、同3,617,293号、同3,628,964号、同3,666,480号、同3,672,898号、同3,679,428号、同3,703,377号、同3,769,301号、同3,614,609号、同3,837,862号、同4,026,707号、英国特許第1,344,281号、同1,507,803号の各明細書、特公昭43−4936号、同53−12375号、特開昭52−110618号、同52−109925号の各公報等に記載されている。
【0057】
さらにまた、これらの増感色素は、それ自身分光増感作用を示さない色素、あるいは可視光を実質的に吸収しない物質であって増感色素と組合せることによって分光増感の著しい増加を示す、いわゆる強色増感剤と称せられて知られている如何なる化合物と組み合せて用いてもよい。強色増感剤の代表例としては、特開昭59−142541号公報等に記載のビスピリジニウム塩化合物、特公昭59−18691号公報等に記載のスチルベン誘導体、特公昭49−46932号公報等に教示されている臭化カリウム、ヨウ化カリウム等の水溶性臭化物、水溶性ヨウ化物、米国特許第3,743,510号明細書等に記載の芳香族化合物とホルムアルデヒドとの縮合物、カドミウム塩類、アザインデン化合物等が挙げられる。分光増感色素は化学熟成後、または化学熟成前に乳剤に添加される。本発明のハロゲン化銀粒子に対しては、分光増感色素は化学熟成中または化学熟成以前(例えば、粒子形成時、物理熟成時)に添加されることが、最も好ましい。
【0058】
また、固体微粒子分散法としては、還元剤の粉末を水等の適当な溶媒中にボールミル、コロイドミル、振動ボールミル、サンドミル、ジェットミル、ローラーミルあるいは超音波によって分散し、固体分散物を作製する方法が挙げられる。尚、その際に保護コロイド(例えば、ポリビニルアルコール)、界面活性剤(例えばトリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム(3つのイソプロピル基の置換位置が異なるものの混合物)などのアニオン性界面活性剤)を用いてもよい。上記ミル類では分散媒体としてジルコニア等のビーズが使われるのが普通であり、これらのビーズから溶出するZr等が分散物中に混入することがある。分散条件にもよるが通常は1ppm以上1000ppm以下の範囲である。
感材中のZrの含有量が銀1g当たり0.5mg以下であれば実用上差し支えない。
水分散物には防腐剤(例えばベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩)を含有させることが好ましい。
【0059】
3.写真用添加剤
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤には、感光材料の製造工程、保存中あるいは写真処理中のかぶりを防止し、あるいは写真性能を安定化させる目的で、種々の化合物を含有させることができる。すなわち、チアゾール類、例えばベンゾチアゾリウム塩、ニトロイミダゾール類、ニトロベンズイミダゾール類、クロロベンズイミダゾール類、ブロモベンズイミダゾール類、メルカプトチアゾール類、メルカプトベンゾチアゾール類、メルカプトベンズイミダゾール類、メルカプトチアジアゾール類、アミノトリアゾール類、ベンゾトリアゾール類、ニトロベンゾトリアゾール類、メルカプトテトラゾール類(特に、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール)など;メルカプトピリミジン類;メルカプトトリアジン類;例えばオキサドリンチオンのようなチオケト化合物;アザインデン類、例えばトリアザインデン類、テトラアザインデン類(特に、4−ヒドロキシ−6−メチル(1,3,3a,7)テトラアザインデン)、ペンタアザインデン類などのようなかぶり防止剤または安定剤として知られた、多くの化合物を加えることができる。たとえば米国特許第3,954,474号、同3,982,947号、特公昭52−28660号に記載されたものを用いることができる。好ましい化合物の一つに特開昭63−212932号に記載された化合物がある。かぶり防止剤および安定剤は粒子形成前、粒子形成中、粒子形成後、脱塩工程、脱塩後の分散時、化学増感前、化学増感中、化学増感後、塗布前のいろいろな時期に目的に応じて添加することができる。
【0060】
本発明において化学増感終了前に核酸または、その分解生成物を共存させて化学増感することも好ましい。核酸またはその分解生成物については特開昭62−67541号記載のものを用いることができる。
本発明に用いられる核酸としては、デオキシリボ核酸(DNA)およびリボ核酸(RNA)を包含し、また、核酸分解物としては分解途中のものやアデニン、グアニン、ウラシル、シトシンおよびチミン等の単体が挙げられる。特にアデニンが好ましい核酸分解生成物として挙げられる。これらは単独であるいは組み合わせて用いることができる。この場合核酸と核酸分解生成物とを組み合わせて用いても良いことはもちろんである。この核酸またはその分解生成物の添加量は核酸分解生成物の種類により異なるが、ハロゲン化銀1モル当たり20mg以上、好ましくは100mg〜1gの範囲である。これらの核酸あるいは核酸分解生成物は、前述のように単独でもあるいは2種類以上組み合わせて用いる場合の添加量の合計は前述の量で十分である。
【0061】
4.その他の構成成分
本発明のハロゲン化銀写真感光材料は、感光性ハロゲン化銀乳剤層の他に、クロスオーバーカット層、および表面保護層などの非感光性層を有してもよい。非感光性層には前述の含フッ素化合物や非フッ素系化合物などの界面活性剤の他に、染料、コロイダルシリカ、ポリマーラテックス、マット剤などを含んでもよい。
1)クロスオーバーカット層
本発明の感光材料には、画像を鮮明にする目的で、必要に応じてクロスオーバー光カット層を感光性乳剤層と支持体の間に設けることができる。クロスオーバーカット層は、両面にハロゲン化銀乳剤層を有する医療用X線写真感光材料に特有の層であり、一方の面からの光が支持体を通して他方の面のハロゲン化銀乳剤層に影響して画質を劣化させる問題を解決する手段である。クロスオーバーカット層は、本願の非感光性親水コロイド層を兼ねることができる。クロスオーバー光カット層には、感光波長域に応じた染料を添加する。染料は、現像処理後に有害な吸収を残さないものであればどのようなものでも使用できる。
特に、染料を固体微粒子分散状態で添加するのが好ましい。染料を固体微粒子分散状態で添加する方法は、特開平2−264936号、特開平3−210553号、特開平3−210554号、特開平3−238447号、特開平4−14038号、特開平4−14039号、特開平4−125635号、特開平4−338747号、特開平6−27589号等に記載されている。使用できる染料は、例えば、特開平4−211542号記載の一般式(I)〜(VII)の染料、化合物例I−1〜I−37、II−1〜II−6、III−1〜III−36、IV−1〜IV−16、V−1〜V−6、VI−1〜VI−13、VII−1〜VII−5。特開平8−73767号記載の一般式(1)の染料、化合物例1〜6。特開平8−87091号記載の一般式(VIII)〜(XII)の染料、化合物例VIII−1〜VIII−5、IX−1〜IX−10、X−1〜X−21、XI−1〜XI−6、XII−1〜XII−7。
【0062】
これらの他に、公知の染料を媒染剤に吸着させる方法、公知の染料をオイルに溶解し油滴状に乳化分散する方法、特開平3−5748号記載の染料を無機物表面に吸着させる方法、特開平2−298939号記載の染料をポリマーに吸着させる方法等も利用することができる。クロスオーバー光カット層の、感光材料への添加方法は、各明細書に記載されているものが利用できる。
【0063】
2)染料
本発明の感光材料には、感光材料の位置検出の目的で、染料を添加してもよい。染料は、検出用センサーの感度極大波長に応じた吸収スペクトルを有することが望ましく、現像処理後に有害な吸収を残さないものであればどのようなものでも使用できる。好ましくは、700nm〜1400nmに吸収極大を有する染料またはその微粒子分散物が使用される。
例えば、
(1)処理時に脱色し得る水溶性染料としては、特開平3−211542号記載の一般式(I)〜(IV)のシアニン染料、ピリリウム染料およびアミニウム染料、化合物例I−1〜I〜6、II−1〜II−4、III−1〜III−4、IV−1〜IV−5、
【0064】
(2)処理時に脱色し得る固体微粒子分散状染料としては、特開平3−138640号記載の一般式(I)〜(IV)のシアニン染料、ピリリウム染料およびアミニウム染料、化合物例I−1〜I〜28、II−1〜II−10、III−1〜III−6、IV−1〜IV−7、
【0065】
(3)処理時に脱色しない染料としては、特願平6−227983号記載の一般式(I)ないし一般式(II)のカルボキシル基を有するトリカルボシアニン染料、化合物例1〜33、特願平6−279297号記載の一般式(I)ないし一般式(II)のカルボキシル基を有するテトラカルボシアン染料、化合物例1〜19、特願平7−208569号記載の一般式(1)〜一般式(3)の酸基を有しないシアニン染料、化合物例1〜63、特開平8−333519号記載の一般式[1]のレーキ型シアニン染料、化合物例No.1〜No.37、等が挙げられる。
【0066】
これらの他に、特開昭62−299959号記載のピリリウム染料、特開昭63−131135号記載の光散乱粒子、特開平1−266536号記載のシアニン染料、特開平2−282244号記載のオキソノール染料の固体微粒子分散物、特開平3−136038号記載のホロポーラ型シアニン染料、特開平7−253639号記載のポリマー型シアニン染料、特開平7−113072号記載のスズドープ酸化インジウム(ITO)粉末、特開平9−5913号記載のYb3+化合物も利用することができる。
【0067】
感光材料の位置検出を目的とする染料を添加する層は特に制限がなく、ハロゲン化銀乳剤層、本発明の非感光性親水性コロイド層、表面保護層などに添加することができ、それぞれ添加方法は、各明細書に記載されているものが利用できる。
【0068】
本発明の感光材料には、銀画像の色調を改良する目的で、特開2004−094083の一般式(I)で示される化合物を用いてもよい。それ以外に染料を添加してもよい。染料は、ピラゾロアゾール染料、アントラキノン染料、アゾ染料、アゾメチン染料、オキソノール染料、カルボシアニン染料、スチリル染料、トリフェニルメタン染料、インドアニリン染料およびインドフェノール染料などの中から、所定の吸収極大波長を有するものが選択される。中でも特開平5−34858号記載の一般式(I)のアントラキノン染料、特開平4−247449号記載の一般式(I)および特開平4−296845号記載の一般式(I)のアゾメチン染料、特開平5−43809号記載の一般式(I)に含まれるインドアニリン染料および特開平5−341441号記載のアゾ染料が有用である。
【0069】
アントラキノン染料として具体的に、特開平5−341441号記載の化合物1〜9、特開平5−165147号記載の化合物3−6〜3−18および3−23〜3−38を使用することができる。アゾメチン染料として具体的に、特開平5−341441号記載の化合物17〜46を使用することができる。インドアニリン染料として具体的に、特開平5−289227号記載の化合物11〜19、特開平5−341441号記載の化合物47および特開平5−165147号記載の化合物2−10〜2−11を使用することができる。アゾ染料として具体的に、特開平5−341441号記載の化合物10〜16を使用することができる。
【0070】
銀画像の色調改良の目的とする染料の、感光材料への添加方法は、各明細書に記載されているものが利用できる。
【0071】
3)コロイダルシリカ
本発明のハロゲン化銀感光材料においては、コロイド状シリカを含有することができる。コロイド状シリカとは平均粒径が1nm〜1000nm、好ましくは5nm〜500nm、さらに好ましくは5nm〜100nmでありその主成分は二酸化珪素からなり、少量成分としてアルミナ、あるいはアルギン酸ナトリウムなどを含んでいてもよい。
コロイド状シリカの具体例としては、日産化学(株)(日本、東京)の商品名でスノーテックス20、スノーテックス30、スノーテックスC、スノーテックスO等が挙げられる。
コロイド状シリカを含有する層は、表面保護層、中間層、ハロゲン化銀乳剤層、アンチハレーション層、下塗り層、フィルター層、バッキング層など任意の親水性コロイド層でもよいが、特に耐圧力性を目的とする場合においては、表面保護層、またはハロゲン化銀乳剤層に含有することが好ましい。
コロイド状シリカの含有量としては、含有される親水性コロイド層の親水性コロイド質量に対して1質量%〜200質量%が好ましく、特に10質量%〜100質量%が最も好ましい。
またコロイド状シリカを含有する層において、必要に応じて可塑性のポリマーラテックスを併用して含有することが好ましい。
【0072】
4)ポリマーラテックス
本発明のハロゲン化銀写真感光材料は、水に対して難溶性のモノマーを重合してなるポリマーラテックスを含有してよい。
【0073】
こうしたモノマーとしては、例えば特開平7−230135号の2頁2段目5行目〜17行目記載のアクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、ジビニルベンゼン等を用いることができる。
【0074】
このようなポリマーラテックスは上記モノマーを他のモノマーと共重合してもよく、このときのモノマーとしては、例えば特開平7−230135号の2頁2段目32行目〜4頁1段目35行目記載のモノマーを用いることができ、それらの内、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、ビニルエステル類、スチレン類、又はオレフィン類が好ましく用いられる。
前記ポリマーラテックスの例としては、例えば特開平7−230135号のLx−1〜Lx−21が挙げられる。
【0075】
5)マット剤
本発明のハロゲン化銀写真感光材料は、特開平6−194779号の実施例1に記載のNo.1〜No.8のマット剤を好ましく用いることができる。また、特開平6−138572号の段落0023に記載の好ましい化合物例1〜9を好ましく用いることができる。
【0076】
これらのマット剤のサイズなどに関しては、特開平6−194779号の段落0049に記載のサイズや使用量で好ましく用いることができる。また2種類以上の粒子サイズのマット剤を混ぜて使うことができる。マット剤の粒子サイズ分布については、目的に応じその変動係数が、3%〜30%の単分散粒子をも用いたり、30%以上の多分散粒子を用いたりできる。
【0077】
7)塗布乾燥工程
一般にハロゲン化銀写真感光材料は、ゼラチンのような親水性コロイドをバインダーとする水性塗布液を支持体上に塗布した後、−10℃〜20℃の乾球温度の低温空気中で冷却凝固させて、次いで、温度を高めて乾燥される。塗布直後のゼラチンと水分の質量比は3000%前後が普通である。
この塗布液には、通常親水性コロイドバインダー、ハロゲン化銀粒子、界面活性剤、ポリマーラテックスのような可塑剤、ゼラチン硬化剤、染料、増感色素、マット剤等種々の添加剤が含まれている。
本発明においては、親水性コロイド層塗布液を塗布後乾燥する際、ハロゲン化銀乳剤層を有する側の塗布層全層のバインダー乾量に基づいて100%以下の水分量になるまで、湿球温度が20℃以下、好ましくは19℃〜10℃で乾燥することが好ましい。
親水性コロイド層が2層以上同時に塗布し、乾燥される場合には(すなわち乾燥対象となる塗布層が2層以上の場合には)、水分量は、全層の水分の和を、バインダー乾量は、全層のバインダー乾量(乾燥質量)の和を表わす。
湿球温度とは、湿り空気の平衡状態での水滴の温度で、空気の湿度が小さいほど低い。乾燥工程の恒率乾燥期間においては、乾燥風の湿球温度が塗布試料の表面温度にほぼ等しい。
【0078】
また、塗布、乾燥後ロール状に巻き取る時の環境条件は、絶対湿度が1.4質量%以下、好ましくは1.3質量%〜0.6質量%で、巻き取られることが好ましい。本発明において、塗布、乾燥後ロール状に巻き取ったハロゲン化銀写真感光材料の製品加工は、絶対湿度が1.4質量%以下、好ましくは1.3質量%〜0.6質量%の環境下で、加工されるのが好ましい。
絶対湿度(wt%)とは、湿り空気の状態を表し、湿り空気中の水蒸気量(kg)と湿り空気中の乾き空気の質量(kg)の比を百分率で表したものである。
8)加工、包装
ハロゲン化銀写真感光材料を防湿性のある包装体内に入れ、包装体内の絶対湿度が1.4質量%以下、好ましくは1.1質量%〜0.6質量%になる様に、その口をヒートシール等の方法で密封し、感光材料が、上記絶対湿度で平衡になっていることをいう。
【0079】
更に、加工終了後、絶対湿度1.4質量%以下の環境下でシーズニングしてから、同一環境下で包装体内にヒートシール密封するのは特に好ましい。
【0080】
9)その他の添加剤
本発明のハロゲン化銀写真乳剤およびハロゲン化銀写真感光材料に用いられる各種添加剤に関しては特に制限はなく、例えば特開平2−68539号公報の以下の該当箇所に記載のものを用いることができる。
【0081】
(1)ハロゲン化銀乳剤とその製法
特開平2−68539号公報第8頁右下欄下から6行目から同第10頁右上欄12行目。
(2)化学増感方法
同第10頁右上欄13号目から同左下欄16行目。
(3)かぶり防止剤・安定剤
同第10頁左下欄17行目から同第11頁左上欄7行目および同第3頁左下欄2行目から同第4頁左下欄
(4)分光増感色素
同第4頁右下欄4行目から同第8頁右下欄。
(5)界面活性剤・帯電防剤
同第11頁左上欄14行目から同第12頁左上欄9行目
(6)マット剤・滑り剤
同第12頁左上欄10行目から同右上欄10行目。
可塑剤
同第14頁左下欄10行目から同右下欄1行目。
(7)親水性コロイド
同第12頁右上欄11行目から同左下欄16行目。
(8)硬膜剤
同第12頁左下欄17行目から同第13頁右上欄6行目。
(9)支持体
同第13頁右上欄7行目から20行目。
(10)染料・媒染剤
同第13頁右下欄1行目から同第14頁左下欄9行目。
【0082】
5.画像露光
本発明の工業用Xレイ感光材料は、対象物にX線を照射して、その透過してきたX線の強弱を検出するために使用される感光材料である。露光のための線源には、X線以外にもCo等の放射性同位体元素によるγ線、その他加速機による高エネルギー線や粒子線等が使用される。通常、これらの放射線をハロゲン化銀感光材料に直接照射するか、あるいは金属箔に照射して2次電子線等を放出させ、この2次線を利用して最終的に感材を感光させる。従って、これらはいずれも光以外の放射線等の照射による像記録である。これらの感材による記録に際し、感材を鉛箔のような薄い金属箔に密着させて、前記放射線を照射することがよく行なわれる。
【0083】
本発明の写真感光材料は、鉛箔金属増感紙を用いて画像露光する以外に、蛍光スクリーンとして例えば下記の蛍光体を含有する蛍光増感紙を用いて、X線撮影を行うことができる。
【0084】
(ブルー発光蛍光体)
S:Tb、LaOBr:Tb、BaFCl:Eu
(グリーン発光蛍光体)
GdS:Tb、LaOS:Tb
【0085】
UV発光蛍光体としては、M’相YTaO単独あるいはGd、Bi、Pb、Ce、Se、Al、Rb、Ca、Cr、Cd、Nbなどを添加した化合物、LaOBrにGd、Tm、GdおよびTm、GdおよびCe、Tbを添加した化合物、HfZrの酸化物単独あるいはGe、Tiアルカリ金属などを添加した化合物、Y単独あるいはGd、Euを添加した化合物、YSにGdを添加した化合物、各種蛍光体の母体にGd、Tl、Ceを付活剤として用いた化合物などがある。特に好ましい化合物としては、M’相YTaO単独あるいはGd,Srを添加した化合物、LaOBrにGd、Tm、GdおよびTmを添加した化合物、HfZrの酸化物あるいはGe、Tiアルカリ金属などを添加した化合物である。
【0086】
蛍光体の粒径は1μm以上20μm以下がよいが、求められる感度や製造上の問題から変更できる。塗布量は、400g/m以上2000g/m以下が好ましいが、求められる感度や画質に応じて一概にはいえない。また一枚の増感紙で支持体の近傍から表面に向かって粒子サイズ分布を付けてもかまわない。この場合一般的には表面の粒子を大きくすることが知られている。蛍光体の空間充填率は40%以上、好ましくは60%以上である。
【0087】
感光材料の両面に蛍光体層を配して撮影する場合、X線入射側とその反対側の蛍光体塗布量は変えることができる。一般にX線入射側の増感紙による遮蔽のため、特に高感度システムを必要とする場合、X線入射側の増感紙の塗布量を小さくすることが知られている。
【0088】
本発明に用いられるスクリーンに使用する支持体は、紙、金属板、ポリマーシートなどが挙げられるが、一般的にはポリエチレンテレフタレートなどのフレキシブルなシートが用いられる。支持体には、必要に応じて、反射剤や光吸収剤が添加されていても表面に別の層として設けられていてもよい。
【0089】
また、必要に応じて、支持体表面に微少に凹凸を付けたり、蛍光体層との密着力増加のための粘着層や、導電層を下塗りとして設けることができる。反射剤としては、酸化亜鉛、酸化チタン、硫酸バリウムなどが挙げられるが、蛍光体の発光波長が短いことから、酸化チタン、硫酸バリウムが好ましい。反射剤は、支持体中あるいは支持体と蛍光体層の間だけでなく、蛍光体層中に存在せしめても良い。蛍光体層中に存在させる場合、支持体近傍に偏在させることは好ましい。
【0090】
本発明のスクリーンで用いられる結合剤としては、ゼラチンなどの蛋白質、デキストラン、コーンスターチなどのポリサッカライド、アラビアゴムなど天然高分子物質;ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリアルキルアクリレート、塩化ビニリデン、ニトロセルロース、フッ素含有ポリマー、ポリエステルなどの合成高分子物質、またこれらの混合物やコポリマーが挙げられる。好ましい結合剤としては、基本的な性能としては、蛍光体からの発光に対して透過率が高いことが挙げられる。この点において、ゼラチン、コーンスターチ、アクリル系ポリマー、フッ素を含むオレフィンポリマーやフッ素を含むオレフィンをコポリマー成分として含有するポリマー、スチレン/アクリルニトリルコポリマーなどが挙げられる。これらの結合剤は、架橋剤によって架橋されるような官能器を有していてもよい。また、求められる画質性能によって、結合剤中に蛍光体からの発光に対する吸収剤を添加させたり、透過率の低い結合剤を用いてもよい。吸収剤としては、顔料や染料、紫外線吸収化合物があげられる。蛍光体と結合剤の比率は、一般的に体積比において1:5ないし50:1、好ましくは1:1ないし5:1である。蛍光体と結合剤の比率は、均一であっても厚さ方向に不均一であってもよい。
【0091】
蛍光体層は、通常、蛍光体を結合剤溶液中に分散させた塗布液を用い、塗布法により形成される。塗布液の溶剤としては、水あるいはアルコール、塩素含有炭化水素、ケトン、エステル、エーテル芳香族化合物などの有機溶剤、およびこれらの混合物が挙げられる。
塗布液中には、蛍光体粒子のフタル酸、ステアリン酸、カプロン酸、界面活性剤などの分散安定剤や、燐酸エステル、フタル酸エステル、グリコール酸エステル、ポリエステル、ポリエチレングリコールなどの可塑剤を添加してもよい。
【0092】
本発明に用いられるスクリーンには蛍光体層上に保護層を設けることができる。保護層は、蛍光体層上に塗布する方法、別途保護層膜を作製しラミネートする方法が一般的に用いられる。塗布法においては、蛍光体層と同時に塗布してもよいし、蛍光体層を塗布乾燥させた後塗設してもよい。保護層は、蛍光体層の結合剤と同じ物質でもよいし、異種の物質でもよい。保護層に用いられる物質としては、蛍光体層の結合剤に挙げた物質のほか、セルロース誘導体、ポリ塩化ビニル、メラミン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。好ましい物質としては、ゼラチン、コーンスターチ、アクリル系ポリマー、フッ素を含むオレフィンポリマーやフッ素を含むオレフィンをコポリマー成分として含有するポリマー、スチレン/アクリルニトリルコポリマーなどが挙げられる。保護層の厚みは、一般に1μm以上20μm以下で、2μm以上10μm以下が好ましく、2μm以上6μm以下がさらに好ましい。
本発明の保護層の表面にエンボス加工を施すことは好ましい。また保護層中にマット剤を存在せしめてもよいし、求める画像によって発光に対し光散乱性を有している物質、例えば酸化チタンなどを存在させてもよい。
【0093】
本発明に用いられるスクリーンの保護層中には、表面の滑り性を付与してもよい。好ましい滑り剤としては、ポリシロキサン骨格含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基含有オリゴマーが挙げられる。
【0094】
本発明の保護層に導電性を付与してもよい。導電性付与剤としては、白色および透明な無機導電性物質や有機帯電防止剤が挙げられる。好ましい無機導電性物質としては、ZnO粉末や、ウィスカ、SnO、ITOなどが挙げられる。
【0095】
6.現像、および定着等の処理システム
1)現像
本発明の現像処理の方法としては、米国特許第5498511号、特開平7−16832号、特開平8−54712号、特開平9−329875号、特開平10−26815号に記載の方法を参考にすることができる。
【0096】
本発明の感光材料を処理する現像液には、ハイドロキノンやアスコルビン酸あるいはエリソルビン酸(アスコルビン酸のジアステレオマー)およびそれらの少なくとも一方に誘導体を用いることが好ましい。本発明に用いるアスコルビン酸およびそれらの少なくとも一方に誘導体としては米国特許第2688549号、特公昭36−17599号、特開平3−249756号、特開平4−270343号等に記載されている。
【0097】
具体的には米国特許第2688549号の第1ページ第1カラムの22行目から第1ページ第2カラムの33行目までに記載の化合物、特公昭36−17599号の第1ページ左カラム21行目から26行目に記載の化合物、特開平3−249756号第4ページに記載の化合物I−1からI−8およびII−1からII−4、特開平4−270343号第4ページ第5カラム40行目から50行目に記載されている化合物を用いることができる。
【0098】
これらのうち、アスコルビン酸あるいはエリスルビン酸(アスコルビン酸のジアステレオマー)およびこれらのリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩が好ましい。
現像主薬は通常0.01モル/L〜0.8モル/Lの量で用いられるのが好ましく、0.1モル/L〜0.4モル/Lの量で用いるのが特に好ましい。
【0099】
本発明において、現像主薬とともに超加成性を示す補助現像主薬を併用することが望ましい。超加成性を示す補助現像主薬としては、1−フェニル−3−ピラゾリドン類補助現像主薬がある。1−フェニル−3−ピラゾリドン類補助現像主薬としては、1−フェニル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4,4−ジメチル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4−メチル−4−ヒドロキシメチル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4,4−ジヒドロキシメチル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−5−メチル−3−ピラゾリドン、1−p−アミノフェニル−4,4−ジメチル−3−ピラゾリドン、1−p−トリル−4,4−ジメチル−3−ピラゾリドン、又は1−p−トリル−4−メチル−4−ヒドロキシメチル−3−ピラゾリドンなどがある。これらのうち1−フェニル−4−メチル−4−ヒドロキシメチル−3−ピラゾリドンが好ましい。
本発明において、現像主薬とともに1−フェニル−3−ピラゾリドン類補助現像主薬を組み合わせて使用する場合には0.001モル/L〜0.1モル/Lの量で用いられるのが好ましく、特に後者を0.005モル/L〜0.05モル/Lの量で用いるのが好ましい。
【0100】
また、超加成性を示す補助現像主薬としてはp−アミノフェノール類補助現像主薬がある。p−アミノフェノール類補助現像主薬としては、N−メチル−p−アミノフェノール、N−(β−ヒドロキシエチル)−p−アミノフェノール、N−(4−ヒドロキシフェニル)−グリシン、2−メチル−p−アミノフェノール、p−ベンジルアミノフェノール等があるが、なかでもN−メチル−p−アミノフェノールが好ましい。
本発明において、現像主薬とともにp−アミノフェノール類補助現像主薬を組み合わせて使用する場合には、0.001モル/L〜0.1モル/Lの量で用いられるのが好ましく、特にp−アミノフェノール類補助現像主薬を0.005モル/L〜0.05モル/Lの量で用いるのが好ましい。
【0101】
現像液に添加するかぶり防止剤としては、アゾール化合物(例えばベンゾチアゾリウム類、ベンゾイミダゾリウム類、イミダゾール類、ベンゾイミダゾール類、ニトロインダゾール類、トリアゾール類、ベンゾトリアゾール類、テトラゾール類、トリアジン類等)、メルカプト化合物(例えばメルカプトチアゾール類、メルカプトベンゾチアゾール類、メルカプトイミダゾール類、メルカプトベンゾイミダゾール類、メルカプトベンゾオキサゾール類、メルカプトチアゾール類、メルカプトオキサジアゾール類、メルカプトテトラゾール類、メルカプトピリミジン類、メルカプトトリアジン類等)などが挙げられる。
特にベンゾトリアゾール類としては、5−メチルベンゾトリアゾール、5−ブロムベンゾトリアゾール、5−クロルベンゾトリアゾール、5−ブチルベンゾトリアゾール、ベンゾトリアゾール等がある。ニトロインダゾール類としては、5−ニトロインダゾール、6−ニトロインダゾール、4−ニトロインダゾール、7−ニトロインダゾール、3−シアノ−5−ニトロインダゾール等を用いることができる。
【0102】
本発明において、現像液に銀汚れ防止剤として、特公昭56−46585号、特公昭62−4702号、特公昭62−4703号、米国特許第4252215号、米国特許第3318701号、特開昭58−203439号、特開昭62−56959号、特開昭62−178247号、特開平1−200249号、特開平5−503179号、特開平5−53257号に記載の化合物を用いることができる。
【0103】
2)定着
本発明において、定着液として公知の種々の液を用いることができる。例えば良く知られているチオ硫酸塩を含む水溶液であり、pHは3.8以上、好ましくは4.2〜6.2である。定着剤としては、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸アンモニウム、などがある。定着剤の濃度は適宜変えることができ、また、定着液には硬膜剤として作用する水溶性アルミニウム塩を含んでも良く、それらには、例えば塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、カリ明礬などがある。定着液には、酒石酸、クエン酸、グルコン酸、あるいはそれらの誘導体を単独あるいは2種以上併用して用いることができる。これらの化合物は定着液1L当たり0.005モル以上添加するのが好ましく、特に0.01モル/L〜0.03モル/L添加するのが有効である。定着液には、所望により保恒剤として亜硫酸塩や重亜硫酸塩を使用液1L当たり10g以上、好ましくは50g以上、pH緩衝剤として酢酸や硼酸を使用液1L当たり0.2モル以上、より好ましくは0.5モル以上含むのが良い。また、pH調整剤(例えば、硫酸)、硬水軟化能のあるキレート剤や特開昭62−78551号に記載の化合物を含むことができる。
【0104】
定着促進剤としては、特公昭45−35754号、特開昭58−122535号、同58−122536号記載のチオ尿素誘導体、分子内に三重結合を有したアルコール、米国特許第4126459号記載のチオエーテル、またはアニオンをフリー化するシクロデキストランエーテル体、クラウンエーテル類、ジアザシクロウンデセンやジ(ヒドロキシエチル)ブタミン等が挙げられる。特開平7−5654号、同6−273898号に記載のメソイオン系化合物を含むことができる。
【0105】
3)水洗、および安定化
水洗浴または安定化浴には、防黴手段を施すのが好ましい。防黴手段としては、特開昭60−263939号に記された紫外線照射法、同60−263940号に記された磁場を用いる方法、同61−131632号に記されたイオン交換樹脂を用いて純粋にする方法、同61−115154号、同62−153952号、特開昭62−220951号、同62−209532号に記載の防菌剤を用いる方法を併用することができる。
【0106】
さらにはL.F.West,「Water Quality Criteria」,Photo.Sci. & Eng.,Vol.9(1965)、M.W.Beach,「Microbiological Growth in Motion−picture Processing」,SMTPE Journal Vol.85(1976)、R.D.Deegan,「Photo Processing Wash Water Biocides」,J.Imaging Tech.,Vol.10,No.6(1984)および特開昭57−8542号、同57−58143号、同58−105145号、同57−132146号、同58−18631号、同57−97530号、同57−157244号、特開平6−118583号、同8−248589号等に記載されている防菌剤、防黴剤、界面活性剤等を併用することができる。
【0107】
さらに、水洗浴または安定化浴には、R.T.Kreinman著,J.Image.Tech.,10(6),242頁(1984)に記載されたイソチアゾリン系化合物、Research Disclosure,第205巻,No.20526(1981年5月号)に掲載されたイソチアゾリン系化合物、同第228巻,No.22845(1983年4月号)に記載されたイソチアゾリン系化合物、特開昭62−209532号に記載された化合物等を防菌剤(Microbiocide)として併用することもできる。
その他、「防菌防黴の化学」堀口博著,三井出版(昭和57)、「防菌防黴技術ハンドブック」,本防菌防黴学会,博報堂(昭和61)に記載されているような化合物を含んでもよい。
【0108】
さらに、水洗または安定化浴に防黴手段を施した水を処理に応じて補充することによって生じる水洗または安定化浴からのオーバーフローの一部または全部は特開昭60−235133号に記載されているようにその前処理工程である定着能を有する処理液の希釈に利用することもできる。
【0109】
4)処理システム
通常、工業用Xレイ感光材料は、現像槽に搬入されて乾燥工程を終了するまでの全処理時間(Dry to Dry)は11分以下、さらには5分以下で処理される。例えば、全処理時間が5分以下の場合、現像は30℃〜40℃で15秒〜75秒、定着は15秒〜75秒、水洗は0℃〜40℃で15秒〜75秒、乾燥は15℃〜75℃で1秒〜30秒行うことが好ましい。
本発明の工業用Xレイ感光材料は迅速処理が可能であり、全処理時間(Dry to Dry)3分30秒以下で処理することができる。3分30秒の場合、現像は30℃〜40℃で15秒〜75秒、定着は15秒〜75秒、水洗は0℃〜40℃で15秒〜75秒、乾燥は15℃〜75℃で15秒〜30秒行うことが好ましい。
【0110】
また補充量は、従来、各々感材1m当たり現像液は3.5mL〜650mL、定着液3.5mL〜650mL、水洗水は30mL〜650mLであるが、本願の工業用Xレイ感光材料を用いた場合、これを半減することができる。
【0111】
このような処理の詳細については、前出の特開平9−329875号等の記載を参照することができる。
【0112】
本発明の処理システムにおいては、現像槽から定着槽、定着槽から水洗槽への感材により持ち出される液の持ち出し量は、4切り1枚当たり0.2mL以上4mL以下が好ましく、0.2mL以上2.4mL以下が好ましく、さらに好ましくは0.4mL以上2.0mL以下が好ましい。
水洗槽が、多段である場合は、水洗槽から水洗槽への持ち出し量は、4切り1枚当たり、0.2mL以上4mL以下が好ましく、0.2mL以上2.4mL以下がより好ましい。さらに好ましくは0.21mL以上1.6mL以下が好ましい。
水洗槽から乾燥ゾーンに入る際の水洗水の持ち出し量は、感材4切り1枚当たり、0.2mL以上4mL以下が好ましく、より好ましくは3mL以下であり、さらに好ましくは2.5mL以下である。
【0113】
(用途)
本発明の工業用Xレイ感光材料は、ガラス、紙、木もしくは金属部品のような構成部品における欠陥を試験および分析するための非破壊的検査法に用いられる。この非破壊的検査法は、溶接欠陥または航空機構成部品、核反応器もしくはパイプラインにおける材料組織の欠陥を検出可能にするので、航空学、核工業または石油工業において広く使用されている。
【実施例】
【0114】
以下に実施例を示し、本発明を説明する。
実施例1
1.ハロゲン化銀乳剤の調製
(ハロゲン化銀乳剤A1の調製)
<内殻(核)の調製>
KBr0.8g、平均分子量20000のゼラチン1.1gを含む水溶液1178mLを35℃に保ち撹拌した。AgNO(2.6g)水溶液とKBr(1.7g)水溶液をダブルジェット法で135秒間に渡り添加した。AgNO溶液の濃度は0.2mol/Lの溶液を用いた。その後30分かけて68℃に昇温し、平均分子量100000のコハク化ゼラチン13gを添加した。
昇温後、AgNO(3.1g)水溶液とKBr(2.4g)水溶液をダブルジェット法で1339秒間に渡り添加した。AgNO溶液の濃度は0.2mol/Lの溶液を用いた。
【0115】
<外殻(平板形状部)の調製>
AgNO(232g)水溶液とKBr水溶液をpAg8.0に保ちながらコントロールダブルジェット法で流量加速しながら45分間に渡って添加した。平均分子量100000のゼラチンを加えた後、常法に従って脱塩した。その後、平均分子量100000のゼラチンを加えて分散し、40℃でpH5.8、pAg8.0に調整し、乳剤を調製した。
【0116】
この乳剤は乳剤1kg当たり、Agを0.73モル、ゼラチンを104g含有し、ハロゲン化銀乳剤粒子は、平均円相当直径1.17μm、円相当直径の変動係数25%、平均厚み0.13μm、アスペクト比9.0の平板粒子であった。粒子形状の測定は、この粒子のレプリカの透過型電子顕微鏡写真像を観察することで行った。
【0117】
(ハロゲン化銀乳剤A2の調製)
<内殻(核)の調製>
KBr0.8g、平均分子量20000のゼラチン1.1gを含む水溶液1178mLを35℃に保ち撹拌した。AgNO(2.6g)水溶液とKBr(1.7g)水溶液をダブルジェット法で135秒間に渡り添加した。AgNO溶液の濃度は0.2mol/Lの溶液を用いた。その後30分かけて68℃に昇温し、平均分子量100000のコハク化ゼラチン13gを添加した。
昇温後、AgNO(3.1g)水溶液とKBr(2.4g)水溶液をダブルジェット法で1339秒間に渡り添加した。AgNO溶液の濃度は0.2mol/Lの溶液を用いた。
【0118】
<外殻(平板形状部)の調製>
AgNO3(232g)水溶液とヘキサクロロイリジウム(III)酸カリウム(銀1モル当たり1.7×10−5モルのイリジウムに相当する量)を含むKBr水溶液をpAg8・0に保ちながらコントロールダブルジェット法で流量加速しながら45分間に渡って添加した。平均分子量100000のゼラチンを加えた後、常法に従って脱塩した。その後、平均分子量100000のゼラチンを加えて分散し、40℃でpH5.8、pAg8.0に調整し、乳剤を調製した。
【0119】
この乳剤は乳剤1kg当たり、Agを0.73モル、ゼラチンを104g含有し、ハロゲン化銀乳剤粒子は、平均円相当直径1.17μm、円相当直径の変動係数25%、平均厚み0.13μm、アスペクト比9.0の平板粒子であった。2.4容積%に相当する内部殻にはイリジウムを含有せず、97.6容積%に相当する外部殻にイリジウムを含有する。粒子形状の測定は、この粒子のレプリカの透過型電子顕微鏡写真像を観察することで行った。
【0120】
(化学増感)
以上のように調製したそれぞれの乳剤を攪拌しながら52℃に保った状態で化学増感を施した。まず、下記のベンゼンチオスルホン酸ナトリウムをハロゲン化銀1モル当たり7.5×10−5モル添加し、次に直径0.03μmのAgI微粒子を全銀量に対して0.15モル%添加した。次にチオシアン酸カリウムをハロゲン化銀1モル当たり6.5×10−4モル相当を添加し、さらに塩化カルシウムを添加した。その後、下記増感色素1の溶液をハロゲン化銀1モル当り5×10−4モル相当添加した。
【0121】
引き続き塩化金酸をハロゲン化銀1モル当たり3.4×10−5モル相当およびチオシアン酸カリウムをハロゲン化銀1モル当たり6.5×10−4モル相当添加した後、チオ硫酸ナトリウムをハロゲン化銀1モル当たり2.6×10−5モル相当とセレン化合物−1をハロゲン化銀1モル当たり4.1×10−6モル相当加えた。100分後に35℃に冷却して乳剤の化学増感を終了した。
【0122】
2.塗布試料の作製
2−1.支持体の調製
二軸延伸された厚さ175μmの青色染色(1,4−ビス(2,6−ジエチルアニリノアントラキノンを含有する)ポリエチレンテレフタレート支持体上に、コロナ放電を行い、下記の主成分を含む各塗布液を第1下塗り層、第2下塗り層の順にワイヤーバーコーターにより支持体の両側に塗布した。
【0123】
・第1下塗り層(支持体側)
支持体の片側1m当たりの塗布液量を4.9mLとした。各添加素材の支持体の片側1m当たりの塗布量は以下のとおりである。
・スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(固形分として) 0.31g
・2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジンナトリウム 8mg
乾燥温度 190℃
【0124】
・第2下塗り層
支持体の片側1m当たりの塗布液量を7.9mLとした。各添加素材の支持体の片側1m当たりの塗布量は以下のとおりである。
・ゼラチン 80mg
・C1225O(CHCHO)10H 1.8mg
・防腐剤(ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩) 0.27mg
・ポリメチルメタクリレートの平均粒径2.5μmのマット剤 2.5mg
乾燥温度 185℃
【0125】
2−2.塗布試料1〜3の作製
前述のように準備した下塗り塗布された支持体の両面に支持体側から下記のハロゲン化銀乳剤層、表面保護層の構成になるように同時押し出し塗布法により塗布した。試料番号とその内容を表1に示した。
【0126】
(ハロゲン化銀乳剤層塗布液)
各々ハロゲン化銀乳剤に以下の塗布量となるように各添加剤を添加した。片面1m当たりの素材塗布量にて記した。
ハロゲン化銀乳剤(種類は表1に示す)(塗布銀量) 4.7g/m
ゼラチン 6.4g/m
1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール化合物 5.0mg/m
添加剤−1 68.4mg/m
添加剤−2 1.6mg/m
添加剤−3 5.32mg/m
添加剤−4 5.1mg/m
染料−1(青味付け染料) 3.5mg/m
染料−2 0.41g/m
硬膜剤−1(1,2−ビス(ビニルスルホニルアセトアミド)エタン)(表1に記載)
【0127】
(表面保護層塗布液)
各成分が片面当たり下記の塗布量となるように表面保護層塗布液を調製し塗布した。NaOHでpH6.0に調整した。
ゼラチン 1.4g/m
ポリアクリル酸ナトリウム(平均分子量40万) 60mg/m
アクリル酸ブチル/メタクリル酸(6/4質量比)コポリマー 66.9mg/m
塗布助剤−1 15.8mg/m
塗布助剤−2 29.5mg/m
塗布助剤−3 7.7mg/m
塗布助剤−4 1.4mg/m
塗布助剤−5 3.6mg/m
添加剤−5 2.4mg/m
マット剤−1(個数平均粒径3.8μm) 54.2mg/m
プロキセル 1.1mg/m
【0128】
(塗布材料の膨潤率の測定)
まず、測定する写真材料を40℃、相対湿度60%の条件下7日間経時した。次に、この感材を21℃の蒸留水に3分間浸漬した後の膜厚値を測定し、乾燥状態の膜厚値を引いた値を膜厚値とした。
【0129】
3.写真性能の評価
これらの写真材料について次の方法で各項目の評価を行った。
<X線写真感度および階調>
各塗布材料を鉛箔増感紙とともにカセッテに入れ、X線照射時間が1秒、1.6秒、2.5秒、・・・と100.2倍ずつ長くなる時間でX線照射を段階状に行った。
露光済みの試料を自動自現機FIP4000(富士フイルム(株)製)により、下記組成の現像液と定着液を用いて、現像処理を行った。現像条件は下記の通りで、Dry to Dryが5分で行った。
Dev:35℃、60秒/定着:40℃、40秒/水洗:40秒/安定化:30秒
【0130】
得られた試料の光学濃度からlog(X線照射時間)対光学濃度の関係で表される特性曲線を得た。その光学濃度が(かぶり+1.5)の濃度となる点のX線照射時間(E)とその光学濃度が(かぶり+3.5)の濃度となる点のX線照射時間(E)を求め、その値から相対感度と階調(G)を求めた。
階調(G)=(3.5−1.5)/(logE−logE
【0131】
同様に、直接X線露光、蛍光スクリーン(蛍光体:タングステン酸カルシウム)露光、Co放射性同位元素を線源とする露光を行って、同様に相対感度と階調(G)を求めた。
【0132】
<迅速処理適性>
鉛箔増感紙を用いて露光済み塗布試料を上記自動自現機を改造して搬送速度を早め、Dry to Dry 3分30秒処理とする処理を行った。得られた試料の光学濃度を測定して、同様に相対感度と階調(G)を求めた。現像条件は下記の通りであった。
Dev:30℃、60秒/定着:30℃、60秒/水洗:60秒/安定化:30秒
【0133】
<現像剤溶液>
ハイドロキノン 20g
1−フェニル−3−ピラゾリジノン 0.8g
臭化カリウム 10g
沃化カリウム 0.1g
フェニルメルカプトテトラゾール 0.03g
チオシアン酸カリウム 2.5g
ポリグリコール(分子量400) 10mL
水性亜硫酸カリウム(655g/l) 150mL
水性炭酸カリウム(765g/l) 40mL
水性水酸化カリウム(755g/l) 10.4mL
Trilon B(BASFからのNa4EDTA の商品名)4mL
Turpinal 2NZ(HENKELからの1−ヒドロキシ−エチル
ジホスホン酸ジナトリウムの商品名) 1g
pH 10.85
水 1L
【0134】
<定着溶液>
チオ硫酸ナトリウム 200g
メタ重亜硫酸カリウム 25g
pH 4.9〜5.2
水 1L
【0135】
得られた結果を表1に示した。
表1の結果より、本発明による塗布試料はコントラストが高く、工業用Xレイ感光材料として好ましい硬調性を示した。特に、Co露光に対するコントラストが工業用Xレイ感光材料として極めて好ましい硬調性を示し、従来の感材では得られなかった高コントラストが達成された。さらに、本発明の塗布試料は、3分30秒処理でも十分高い画像濃度と、高コントラスト、ムラの無い優れた面状の画像が得られた。一方、比較試料1は、迅速処理するとコントラストが低下した。比較試料2は迅速処理すると現像定着とも不完全で、十分に画像濃度が得られず、未定着のハロゲン化銀が残留し、ヘイズが高く、画像としての評価に値しなかった。
従来、工業用感材は硬調性を確保するために、多くの塗布銀量を必要とし、さらに膜を軟膜にすることでより硬調な設計とすることが必須とされていた。本発明では、Irドープされた平板粒子を使用することで、低塗布銀量、尚且つ硬膜設計で硬調な性能が達成でき、さらに従来では不可能であった3分30秒処理に対する適性も両立させた。
【0136】
さらに、本発明の塗布試料を上記3分30秒処理条件で連続して処理した時、現像液及び定着液の補充量は、それぞれ5分処理時の約1/2の補充量で安定な性能を得ることができた。
【0137】
【表1】

【0138】
実施例2
1.ハロゲン化銀乳剤A3の調製
実施例1のハロゲン化銀乳剤A2の調製に於いて、ヘキサクロロイリジウム(III)酸カリウムの代わりに、Rh化合有物(ヘキサクロロロジウム(III)アンモニウム)を銀1モル当たり1.7×10−5モル添加した以外は、ハロゲン化銀乳剤A2の調製と全く同様にしてハロゲン化銀乳剤A3を調製し、同様に化学増感した。
2.塗布試料4の作製と性能評価
得られたハロゲン化銀乳剤A3を用いて。実施例1の塗布試料3と同様に塗布試料を作製した。膨潤厚みは12μmであった。実施例1と同様に性能を評価した結果、実施例1と同様に本発明の試料は優れた性能を示した。
【0139】
実施例3
1.ハロゲン化銀乳剤A4の調製
実施例1のハロゲン化銀乳剤A2の調製に於いて、内殻(核)の調製工程で、銀1モル当たりヘキサクロロイリジウム(III)酸カリウムを1.7×10−5モル添加した以外は、ハロゲン化銀乳剤A2の調製と全く同様にしてハロゲン化銀乳剤A4を調製し、同様に化学増感した。
即ち、ハロゲン化銀乳剤A4は内殻にも外殻と同様にイリジウムを含有する比較のハロゲン化銀乳剤である。
【0140】
2.ハロゲン化銀乳剤A5〜A7の調製
実施例1のハロゲン化銀乳剤A2の調製に於いて、内殻と外殻の比率を変更して、ハロゲン化銀乳剤A5(本発明)、及び6(比較)を調製した。内殻と外殻の比率は、実施例1に於ける内殻の調製に示された処方、及び外殻の調製に示された処方に従ってそれぞれの調製総量を変更することによって目的の比率になるように調製し、同様に化学増感した。
ハロゲン化銀乳剤A5:内殻2.4容量%、外殻97.6容量%
ハロゲン化銀乳剤A6:内殻4容量%、外殻96容量%
【0141】
3.塗布試料10〜12の作製
得られたハロゲン化銀乳剤A4〜A6を用いて、実施例1の塗布試料3と同様にして塗布試料10〜12を作製した。
4.性能評価
いずれの試料も膨潤厚みは12μmであった。
実施例1と同様に性能を評価した結果を表2に示した。
本発明の試料11は実施例1の試料3と同様に優れた性能をしめした。
一方、比較の試料10は、本発明に対し15%低感であった。また、比較の試料13は、本発明に対し25%低感であった。
【0142】
【表2】

【0143】
以下に実施例に用いた化合物の構造を示す。
【0144】
【化1】

【0145】
【化2】

【0146】
【化3】

【0147】
【化4】

【0148】
【化5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明支持体の両面にそれぞれ少なくとも1層のハロゲン化銀乳剤層を有するハロゲン化写真感光材料であって、該ハロゲン化銀乳剤層が平均粒子厚みが0.2μm未満で且つアスペクト比が8を超える平板状ハロゲン化銀粒子を含有し、粒子の内殻であって粒子体積の1%以上3%未満の粒子内殻にはIrもしくはRhを含有せず、粒子の外殻であって粒子体積の97%以上99%未満の粒子外殻に少なくともIrもしくはRhを含有することを特徴とする工業用Xレイ感光材料。
【請求項2】
前記粒子外殻が少なくともIrもしくはRhを、銀1モル当たり、1×10−9モル%以上1×10−2モル%以下含有することを特徴とする請求項1に記載の工業用Xレイ感光材料。
【請求項3】
前記工業用Xレイ感光材料の片面当たりの水膨潤値が20μm未満である請求項1又は請求項2に記載の工業用Xレイ感光材料。
【請求項4】
前記工業用Xレイ感光材料の片面当たりの塗布銀量が5.5g/m未満である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の工業用Xレイ感光材料。
【請求項5】
前記工業用Xレイ感光材料の片面当たりの総ゼラチン塗布量と塗布銀量の質量比(総ゼラチン量/塗布銀量)が1.4〜1.8である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の工業用Xレイ感光材料。

【公開番号】特開2010−19923(P2010−19923A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−178258(P2008−178258)
【出願日】平成20年7月8日(2008.7.8)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】