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工業的生産に有用な微生物
説明

工業的生産に有用な微生物

【課題】
目的とする様々な有用物質の生産に汎用的に有効な、特定の遺伝子を不活性化または欠失させた微生物、該微生物を用いた有用物質の製造方法を提供する。
【解決手段】
本発明によれば、D-グルコースならびにD-フラクトース以外の糖の資化に係わる1以上の遺伝子を不活性化または欠失させた微生物、該微生物を用いた、タンパク質、アミノ酸、核酸、ビタミン、糖、有機酸、脂質あるいはそれらの類縁体等の有用物質の製造法を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業的生産に有用な微生物、該微生物を用いた有用物質の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
微生物を用いた有用物質の製造において、目的とする有用物質の代謝経路を強化したり、該有用物質あるいはその前駆体の分解系を破壊した微生物を用いることにより、該有用物質を生産性を向上させることができることは良く知られており、そのような微生物は多数育種されている。具体的な例として、プロリン分解酵素遺伝子putAを不活化した、グラム陰性細菌Serratia marcescensを用いたプロリン生産(非特許文献1参照)、大腸菌K−12株のプロリン分解酵素遺伝子putAを不活化した菌株を用いたヒドロキシプロリン生産(非特許文献2参照)等をあげることができる。
【0003】
しかしながら、このような方法は、特定の有用物質の生産にのみ有効な遺伝子の不活性化あるいは遺伝子除去であり、他の様々な有用物質の生産に汎用的に効果のある方法ではない。
現在までに、培養法による工業的製造おいて、遺伝子を不活性化あるいは欠失することにより、目的とする様々な有用物質の生産に汎用的に効果のある遺伝子は知られていない。
【非特許文献1】Appl. Environ. Microbiol., 49, 782-786 (1985)
【非特許文献2】Biosci. Biotech. Biochem., 64, 746-750 (2000)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、目的とする様々な有用物質の生産に汎用的に有効な、特定の遺伝子を不活性化あるいは欠失させた微生物、該微生物を用いた有用物質の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
タンパク質、アミノ酸、核酸、ビタミン、糖、有機酸、脂質あるいはそれらの類縁体等の有用物質の、微生物を利用した製造は、通常、該微生物の攪拌培養により行われる。その際使用される糖源は限られた種類である。従って、本発明者らは、微生物を利用した製造において、D−グルコースならびにD−フラクトース以外の糖の資化にかかわる遺伝子はこのような有用物質の製造には必ずしも必要ではないと考え、これら遺伝子を不活性化あるいは欠失させ、有用物質の生産効率を比較検討した。
【0006】
その結果、D−グルコースならびにD−フラクトース以外の糖の資化にかかわる遺伝子群から1以上の遺伝子を欠失または不活性化させることにより、好気的な条件下での有用物質の生産効率を向上させることができることを見出し本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は下記(1)〜(7)を提供するものである。
(1) D-グルコースならびにD-フラクトース以外の糖の資化にかかわる1以上の遺伝子を不活性化または欠失させた微生物。
(2) 糖の資化にかかわる遺伝子が、mtlA、mtlD、mtlR、cmtA、cmtB、gutM、gutQ、srlA、srlB、srlD、srlE、srlR、gldA、glpA、glpB、glpC、glpD、glpE、glpF、glpG、glpK、glpQ、glpR、glpT、glpX、gpsA、gpmA、gpmB、gatR、gatD、gatC、gatB、gatA、gatZ、gatY、kba、agaA、agaB、agaC、agaD、agaI、agaR、agaS、agaV、agaW、agaZ、lamB、malE、malF、malG、malK、malQ、malP、malS、malM、malT、malI、malX、malY、malZ、sfsA、melA、melB、melR、galE、galF、galK、galM、galP、galR、galT、galU、galS、mglA、mglB、mglC、lacI、lacZ、lacY、lacA、ebgR、ebgA、ebgC、bglA、bglB、bglF、bglG、bglJ、bglX、treA、treB、treC、treF、treR、otsA、otsB、manA、manX、manY、manZ、fucP、fucI、fucK、fucA、fucO、fucU、fucR、rhaP、rhaA、rhaB、rhaD、rhaR、rhaS、rhaT、araA、araB、araC、araD、araE、araF、araG、araH、araJ、xylE、xylA、xylB、xylF、xylG、xylH、xylR、lyx、rpe、kdgT、kdgK、exuT、exuR、edd、eda、zwf、uidA、uidB、uidR、uxaB、uxaA、uxaC、dgoT、dgoA、dgoK、dgoR、chbA、chbB、chbC、chbF、chbG、chbR、sgaH、sgaU、sgaA、sgaB、sgaE、sgaT、sgbE、sgbH、sgbU、sgcE、sgcA、sgcB、sgcC、sgcQ、sgcRおよびsgcXからなる遺伝子群およびそれらのホモログ遺伝子群より選ばれる遺伝子である、上記(1)の微生物。
(3) 微生物が、エンテロバクテリア科(Enterobacteriaceae)、クロストリジューム科(Clostridiaceae)、コリネバクテリウム科(Corynebacteriaceae)、シュードモナス科(Pseudomonadaceae)、キサントモナス科(Xanthomonasgroup)、バシラス科(Bacillaceae)、ミクロコッカス科(Micrococcaceae)およびノカルディア科(Nocardiaceae)からなる群より選ばれる科に属する微生物である、上記(1)または(2)の微生物。
(4) 微生物が、Klebsiella属、Erwinia属、Serratia属、Salmonella属、Escherichia属、Proteus属、Clostridium属、Corynebacterium属、Pseudomonas属、Xanthomonas属、Bacillus属、Arthrobacter属およびRhodococcus属からなる群より選ばれる属に属する微生物である、上記(1)〜(3)のいずれか1つに記載の微生物。
(5) 微生物が、Klebsiella aerogenesErwinia berbicolaErwinia amylovoraSerratia marcescensSerratia ficariaSerratia fonticolaSerratia liquefaciensEscherichia coliSalmonella typhimuriumProteus rettgeriCorynebacterium glutamicumCorynebacterium ammoniagenesCorynebacterium mycetoidesCorynebacterium variabilisClostridium butyricumPseudomonas putidaPseudomonas fluorescensPseudomonas aeruginosaPseudomonas dacunhaePseudomonas thazdinophilumXanthomonas ovyzaeBacillus subtilisBacillus licheniformisArthrobacter symplexArthrobacter obaeおよびRhodococcus erythropolisからなる群より選ばれる微生物である、上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の微生物。
(6) 上記(1)〜(5)のいずれか1つに記載の微生物を培地中で培養し、該培養物中に有用物質を生成、蓄積させ、該有用物質を採取することを特徴とする有用物質の製造法。
(7) 有用物質が、タンパク質、アミノ酸、核酸、ビタミン、糖、有機酸、脂質およびそれらの類縁体からなる群より選ばれる有用物質である、上記(6)の製造法。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、有用物質の生産に有用な微生物、該微生物を用いた効率的な有用物質の製造法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
I.本発明の微生物の造成
(1)造成のために用いることのできる微生物
本発明の微生物を造成するために用いることのできる微生物としては、産業上利用できる微生物であればいかなる微生物も用いることができる。
このような微生物として、エンテロバクテリア科(Enterobacteriaceae)、クロストリジューム科(Clostridiaceae)、コリネバクテリウム科(Corynebacteriaceae)、シュードモナス科(Pseudomonadaceae)、キサントモナス科(Xanthomonasgroup)、バシラス科(Bacillaceae)、ミクロコッカス科(Micrococcaceae)およびノカルディア科(Nocardiaceae)等に属する微生物をあげることができ、例えば、、Klebsiella属、Erwinia属、Serratia属、Salmonella属、Escherichia属、Proteus属、Clostridium属、Corynebacterium属、Pseudomonas属、Xanthomonas属、Bacillus属、Arthrobacter属およびRhodococcus属等に属する微生物をあげることができる。
【0009】
具体的には、Klebsiella aerogenesErwinia berbicolaErwinia amylovoraSerratia marcescensSerratia ficariaSerratia fonticolaSerratia liquefaciensEscherichia coliSalmonella typhimuriumProteus rettgeriCorynebacterium glutamicum(俗称でBrevibacterium flavumBrevibacterium lactofermentumと呼ばれるものを含む)、Corynebacterium ammoniagenesCorynebacterium mycetoidesCorynebacterium variabilisClostridium butyricumPseudomonas putidaPseudomonas fluorescensPseudomonas aeruginosaPseudomonas dacunhaePseudomonas thazdinophilumXanthomonas ovyzaeBacillus subtilisBacillus licheniformisArthrobacter symplexArthrobacter obaeおよびRhodococcus erythropolis等をあげることができる。
【0010】
上記微生物は野生型の微生物であっても、産業上有用な改良を施された微生物であってもよい。
即ち、上記微生物の変異株、細胞融合株、形質導入株あるいは遺伝子組換え技術を用いて造成した組換え株のいずれであってもよい。工業的に既に利用されている上記微生物であれば、下記方法により、より有効な本発明の微生物を造成することができる。
(2)本発明の微生物の造成
(a)変異処理による方法
上記(1)記載の微生物を、常法に従って培養する。培養後、得られた培養液より遠心分離により菌体を取得する。該菌体を、適切な緩衝剤、例えば、0.05Mトリス−マレイン酸緩衝液(pH6.0)等で洗浄後、菌体濃度が10〜1010細胞/mlになるように同緩衝液に懸濁する。該懸濁液を用いて常法により変異処理を行う。常法として、例えば、該懸濁液にN−メチル−N−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(NTG)を終濃度が600mg/lになるように加え、室温で20分間保持して変異処理する方法をあげることができる。該変異処理懸濁液を完全培地に塗布し、15〜38℃で、1〜4日間培養する。培養後、生育し形成されたコロニーを、最少寒天培地2枚に塗布する。この時、1枚には単一炭素源としてD−グルコースを、もう1枚には単一炭素源として欠損あるいは破壊したい遺伝子が関係して代謝される糖を添加しておく。それぞれの寒天培地を15〜38℃で、1〜7日間培養する。D−グルコース添加では生育できるが、他の糖質を単一炭素源としては生育できない株を、目的の変異株として選択する。
(b)遺伝子組換えによる方法
微生物の染色体上の目的とする遺伝子を欠失あるいは不活性化させる方法として、Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)以下、モレキュラー・クローニング第2版と略す)に記載の方法、G. M. Churchらの方法〔Journal of Bacteriology, 179, 6228-6237 (1997)〕、B. L. Wannerらの方法〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 97, 6640 (2000)〕等の公知の方法を用いることができる。トランスポゾンを利用して染色体上の遺伝子を欠失させることもできる〔Gene, 27, 131-149 (1984)〕。
【0011】
また大腸菌においては、目的とする遺伝子を破壊するための直鎖DNA断片をin vitroで作成した後、エレクトロポレーションで菌体内に導入し、遺伝子置換によって目的遺伝子を破壊する方法も知られている〔Nucleic Acids Research, 27, 1296-1299 (1999)〕。
以下、G. M. Churchらの方法に関して詳述する。
【0012】
該方法においては、自殺遺伝子を組み込んだ温度感受性プラスミドを用いる。温度感受性プラスミドとしてはプラスミドの複製に必須のタンパク質が温度感受性になったもの等を利用でき、具体的にはpKO3、pKD20等をあげることができる。自殺遺伝子としては、枯草菌由来のsacB等をあげることができる。目的とする遺伝子領域の両末端1〜3kbp程度の領域と相同な二つのDNA断片を結合したDNAを、自殺遺伝子を組み込んだ温度感受性プラスミドに導入する。制限温度下で該プラスミドを微生物染色体上へ挿入する。得られた組換え株を自殺遺伝子が作用する条件下で培養し、生育してきた株を、該プラスミドが染色体上から脱落した株として取得する。例えば、自殺遺伝子としてsacBを利用した場合には、自殺遺伝子が作用する培養条件としては、シュークロースを含む培地で培養する条件をあげることができる。取得された株における染色体の構造解析を行い、目的の遺伝子領域が欠落した株を選抜する。染色体の構造解析は常法に従って行うことができ、例えば、該株の染色体を鋳型とし、破壊したい遺伝子領域周辺の配列をプライマーとして用い、PCRにて周辺領域の構造を解析する方法等をあげることができる。
【0013】
次に、B. L. Wannerらの方法に関して以下に詳述する。
薬剤耐性遺伝子に、目的とする遺伝子領域の両末端1〜3kbp程度の領域と相同なDNAを付加した直鎖DNAをPCR法で作製する。該DNAをλRed組換え系を利用し、微生物染色体上に相同組換えにより組み込む。目的とする遺伝子領域が薬剤耐性遺伝子で置き換わった株を、薬剤耐性株として選抜することができる。取得された株における染色体の構造解析を行い、目的の遺伝子領域が欠落した株であることを確認する。染色体の構造解析は上記方法に準じて行うことができる。
【0014】
目的とする遺伝子としては、D−グルコースあるいはD−フラクトース以外の糖の資化にかかわる遺伝子であれば、いずれの遺伝子でも良い。具体的には、mtlA、mtlD、mtlR、cmtA、cmtB、gutM、gutQ、srlA、srlB、srlD、srlE、srlR、gldA、glpA、glpB、glpC、glpD、glpE、glpF、glpG、glpK、glpQ、glpR、glpT、glpX、gpsA、gpmA、gpmB、gatR、gatD、gatC、gatB、gatA、gatZ、gatY、kba、agaA、agaB、agaC、agaD、agaI、agaR、agaS、agaV、agaW、agaZ、lamB、malE、malF、malG、malK、malQ、malP、malS、malM、malT、malI、malX、malY、malz、sfsA、melA、melB、melR、galE、galF、galK、galM、galP、galR、galT、galU、galS、mglA、mglB、mglC、lacI、lacZ、lacY、lacA、ebgR、ebgA、ebgC、bglA、bglB、bglF、bglG、bglJ、bglX、treA、treB、treC、treF、treR、otsA、otsB、manA、manX、manY、manZ、fucP、fucI、fucK、fucA、fucO、fucU、fucR、rhaP、rhaA、rhaB、rhaD、rhaR、rhaS、rhaT、araA、araB、araC、araD、araE、araF、araG、araH、araJ、xylE、xylA、xylB、xylF、xylG、xylH、xylR、lyx、rpe、kdgT、kdgK、exuT、exuR、edd、eda、zwf、uidA、uidB、uidR、uxaB、uxaA、uxaC、dgoT、dgoA、dgoK、dgoR、chbA、chbB、chbC、chbF、chbG、chbR、sgaH、sgaU、sgaA、sgaB、sgaE、sgaT、sgbE、sgbH、sgbU、sgcE、sgcA、sgcB、sgcC、sgcQ、sgcR、sgcX等、あるいはそれらのホモログ遺伝子(Escherichia coli and Salmonella, Cellular and Molecular Biology Volumu I and II, Second Edition, ASM 、あるいはhttp://genolist.pasteur.fr/Colibri/を参照)等をあげることができる。欠失または不活性化させる、D−グルコースあるいはD−フラクトース以外の糖の資化にかかわる遺伝子の数は1以上であればよい。
II.本発明の微生物を用いた有用物質の製造
上記Iで造成した本発明の微生物を用いる有用物質の生産は、通常の微生物の培養法を用いて行うことができる。
【0015】
該有用物質としては、タンパク質、アミノ酸、核酸、ビタミン、糖、有機酸、脂質またはそれらの類縁体等をあげることができる。
有用物質の生産に用いる培地としては、炭素源、窒素源、無機塩、その他使用する微生物の必要とする微量の栄養素を程よく含有するものならば、合成培地または天然培地いずれも使用可能である。
【0016】
炭素源としては、それぞれの微生物が資化し得るものであればよく、グルコース、フラクトース、スクロース、これらを含有する糖蜜、デンプンあるいはデンプン加水分解物等の炭水化物、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、エタノール、プロパノールなどのアルコール類が用いられる。
窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の各種無機酸や有機酸のアンモニウム塩、その他含窒素化合物、並びに、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスチープリカー、カゼイン加水分解物、大豆粕および大豆粕加水分解物、各種発酵菌体およびその消化物等が用いられる。
【0017】
無機塩としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウム等が用いられる。
培養は、振盪培養または深部通気攪拌培養などの好気的条件下で行う。培養温度は15〜40℃がよく、培養時間は、通常16時間〜7日間である。培養中pHは、3.0〜9.0に保持する。pHの調整は、無機あるいは有機の酸、アルカリ溶液、尿素、炭酸カルシウム、アンモニアなどを用いて行う。
【0018】
また培養中必要に応じて、アンピシリンやテトラサイクリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
造成に用いた微生物が、誘導性のプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物である場合には、培養するときには、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、lacプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)等を、trpプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはインドールアクリル酸(IAA)等を培地に添加してもよい。
【0019】
有用物質が菌体外に生成、蓄積される場合には、培養終了後、培養液から菌体などの沈殿物を除去し、イオン交換処理法、濃縮法、塩析法などを併用することにより、培養液から目的とする該有用物質を単離、精製することができる。
有用物質が菌体内に生成、蓄積される場合には、培養終了後、培養液から菌体を回収した後、機械的あるいは化学的方法等の適切な方法で破砕する。該菌体破砕液から、イオン交換処理法、濃縮法、塩析法などを併用することにより、該菌体破砕液から目的とする該有用物質を単離、精製することができる。
【実施例】
【0020】
K−12系統大腸菌MG1655株(親株)の、キシロースおよびアミロースの分解に関与する、染色体上に連続して存在する遺伝子群(xylA、xylB、xylF、xylG、xylH、xylRおよびmalS)の両末端に隣接する約2kbpの領域と相同な二つのDNA断片を結合したものを、自殺遺伝子であるsacBを有する温度感受性プラスミドpKO3に導入する。G. H. Churchらの方法〔Journal of Bacteriology, 179,6228−6237(1997)〕に準じて、該プラスミドをK−12系統大腸菌MG1655株の染色体上に導入し、組換え株を取得する。該組換え株をシュークロースを含む培地で培養し、生育してきた株を、プラスミド領域が染色体より脱離した組換え株として取得する。PCR法により組換え株染色体の構造を確認することにより、取得された組換え株の中から、プラスミドが脱離するさいに目的の遺伝子群(xylA、xylB、xylF、xylG、xylH、xylRおよびmalS)が欠落した菌株(欠損株1)を選抜した。〔遺伝型が[rpsL、polA12、Δ(yiaH−avtA)::Km]であるOCL−11株は、都立大学理学部加藤潤一教授より入手可能〕。
【0021】
また、同様に、トレハロースの糖質分解資化に関与する遺伝子群(treFおよびkdgK)を欠損している菌株(欠損株2)〔遺伝型が[rpsL、polA12、Δ(yhiW−yhjK)::Km]であるOCL−14株は、都立大学理学部加藤潤一教授より入手可能〕、グルクロン酸関連糖の資化に関与する遺伝子群(uxaAC、exuTR)を欠損している菌株(欠損株3)〔遺伝型が[rpsL、polA12、Δ(fadH−exuR)::Km]であるOCL−33株は、都立大学理学部加藤潤一教授より入手可能〕およびグリセロールなどの糖関連物質分解資化に関与する遺伝子群(glpA、glpB、glpC、glpQおよびglpT)を欠損している菌株(欠損株4)〔遺伝型が[rpsL、polA12、Δ(yfaE−pmrD)::Km]であるOCL−68株は、都立大学理学部加藤潤一教授より入手可能〕を取得した。
【0022】
完全培地(Difco社製のAntibioticmedium3にジアミノピメリン酸を終濃度50μg/mlで添加したもの)8mlを用い、親株および欠損株をそれぞれ30℃で終夜、液体培養した。得られた培養液をそれぞれ完全培地8mlに1%植菌し、30℃で培養を行い、経時的にサンプリングした。
取得したサンプルを、660nmの吸光度の値が0.03〜0.3程度になるように希釈した後、分光光度計を用いて、濁度を測定した。
【0023】
また、培養23時間目における菌体由来のタンパク質量を下記方法により測定した。
サンプル200μlを16,000×gにて6分間遠心分離した後、注意深く上清を捨てた。得られた菌体(沈殿画分)に1mlの生理食塩水を加え、該菌体を攪拌洗浄した。洗浄後、16,000×gで5分間遠心分離し、上清を注意深く捨てた。さらに16,000×gで4分間遠心分離し、上清を注意深く捨て、壁面等に付着していた洗浄液を取り除き、洗浄菌体を取得した。該洗浄菌体は−30℃で保存することが可能であったため、まとめてタンパク量を測定する場合には凍結保存した洗浄菌体を用いた。該洗浄菌体または凍結保存菌体を融解させた菌体に、200μlの1%SDS溶液を添加し、該菌体を懸濁した後、100℃で5分間加熱することで菌を溶解した。得られた溶解液を、1%SDSを用いて段階的に希釈した。該希釈液中のタンパク量を、バイオラッド社製のDCプロテインアッセイキット1を用い、キット添付の指示書に従って測定し、培養液1mlあたりの菌体内タンパク量を算出した。
【0024】
結果を第1表に示した。
親株に比べ、いずれの欠損株もより高い濁度を示していることより、いずれの欠損株も親株より生育の向上していることが示された。またこれら欠損株は、親株に比べ、有為に培地体積あたりの菌体タンパク量も増大していた。
以上の結果から、大腸菌を用いたタンパク質の生産において、D−グルコースとD−フラクトース以外の糖の資化に関わる遺伝子を不活性化することにより得られた大腸菌を用いることにより、タンパク質の生産効率を有為に向上させることができることがわかった。
【0025】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリセロールの資化にかかわる1以上の遺伝子を不活性化または欠失させた微生物。
【請求項2】
グリセロールの資化にかかわる遺伝子が、glpA、glpB、glpC、glpQおよびglpTからなる遺伝子群およびそれらのホモログ遺伝子群より選ばれる遺伝子である、請求項1記載の微生物。
【請求項3】
微生物が、エンテロバクテリア科(Enterobacteriaceae)、クロストリジューム科(Clostridiaceae)、コリネバクテリウム科(Corynebacteriaceae)、シュードモナス科(Pseudomonadaceae)、キサントモナス科(Xanthomonasgroup)、バシラス科(Bacillaceae)、ミクロコッカス科(Micrococcaceae)およびノカルディア科(Nocardiaceae)からなる群より選ばれる科に属する微生物である、請求項1または2記載の微生物。
【請求項4】
微生物が、Klebsiella属、Erwinia属、Serratia属、Salmonella属、Escherichia属、Proteus属、Clostridium属、Corynebacterium属、Pseudomonas属、Xanthomonas属、Bacillus属、Arthrobacter属およびRhodococcus属からなる群より選ばれる属に属する微生物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の微生物。
【請求項5】
微生物が、Klebsiella aerogenesErwinia berbicolaErwinia amylovoraSerratia marcescensSerratia ficariaSerratia fonticolaSerratia liquefaciensEscherichia coliSalmonella typhimuriumProteus rettgeriCorynebacterium glutamicumCorynebacterium ammoniagenesCorynebacterium mycetoidesCorynebacterium variabilisClostridium butyricumPseudomonas putidaPseudomonas fluorescensPseudomonas aeruginosaPseudomonas dacunhaePseudomonas thazdinophilumXanthomonas ovyzaeBacillus subtilisBacillus licheniformisArthrobacter symplexArthrobacter obaeおよびRhodococcus erythropolisからなる群より選ばれる微生物である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の微生物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の微生物を培地中で培養し、該培養物中に有用物質を生成、蓄積させ、該有用物質を採取することを特徴とする有用物質の製造法。
【請求項7】
有用物質が、タンパク質、アミノ酸、核酸、ビタミン、糖、有機酸、脂質およびそれらの類縁体からなる群より選ばれる有用物質である、請求項6記載の製造法。

【公開番号】特開2007−312794(P2007−312794A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−231067(P2007−231067)
【出願日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【分割の表示】特願2003−503778(P2003−503778)の分割
【原出願日】平成14年5月29日(2002.5.29)
【出願人】(000001029)協和醗酵工業株式会社 (276)
【Fターム(参考)】