説明

工程剥離紙およびその製造方法

【課題】表面光沢度が60°反射で60以上の賦型面を有し、耐熱性、剥離性に優れる工程剥離紙を提供する。
【解決手段】紙基材と、電離放射線硬化樹脂層と、熱硬化シリコーン層とがこの順に積層されることを特徴とする工程離型紙である。耐熱性、剥離性に優れるため、表面光沢度が60°反射で60以上の高光沢表面を有する合成皮革やメラミン化粧板の製造に好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工程剥離紙に関し、より詳細には、賦型面の表面光沢度が60°反射で60以上であり、耐熱性、耐溶剤性に優れ、高光沢の合成皮革やメラミン化粧板の製造に好適に使用できる、工程剥離紙に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、合成皮革として塩化ビニル系樹脂やポリウレタン樹脂を主原料としたものが広く使用されている。このような合成皮革は、離型紙を用いて製造されることが多い。例えば、ポリウレタンレザーを製造するには、離型紙上にペースト状のポリウレタン樹脂を塗布し、乾燥・固化した後に基布を貼合して離型紙から剥離する。離型紙に天然皮革と同様の絞り模様や他の凹凸を形成しておけば、得られる合成皮革の表面に良好な模様を付与することができる。同様の原理により、離型紙上にペースト状のポリウレタン樹脂を塗布して乾燥・固化した後、塩化ビニル発泡層を形成して基布と貼合し、離型紙から剥離してもよい。また、塩化ビニルレザーを製造する方法として、離型紙上に塩化ビニルゾルを塗布し、加熱・ゲル化した後、塩化ビニル発泡層を形成して基布と貼合し、離型紙から剥離する方法もある。
【0003】
このような合成皮革の製造に使用される離型紙は、一般に紙基材に樹脂からなる剥離層を塗工して調製される。離型紙は、その表面模様を転写して合成皮革に表面模様を形成させるものであり、賦型に適した表面状態を有する必要がある。その中でも、比較的ムラの少ない樹脂表面層を得る方法として、ポリプロピレンとポリエチレンとからなる樹脂組成物と、ポリプロピレンホモポリマーとを基材上に共押出しするラミネート方法が開示されている(特許文献1)。ポリプロピレンをラミネートした積層物は、ラミネート可能な温度で押出すために押出しムラが激しいが、これを改善するため低密度ポリエチレンを混合すると相溶性が悪いため光沢ムラや肌荒れが発生する。そこで、特定のメルトフローレートを有するポリプロピレンと特定構造のポリエチレンとからなる樹脂組成物と、特定のメルトフローレートのポリプロピレンホモポリマーとを基材上に共押出して、表面状態を改良することを特徴としたものである。上記特許文献1によれば、前記樹脂組成物とポリプロピレンホモポリマーとを共押出しして前記樹脂組成物を基材側とすることで、特定の樹脂組成物を使用するために押出しムラが解消され、ポリプロピレンホモポリマーを使用するために耐熱性及び光沢ムラや肌荒れのない優れた表面状態がもたらされるという。実施例では、押出しムラなどのラミネート性とともに表面状態を評価しており、表面光沢および平滑性に優れる積層物を得ている。
【0004】
また、裏面に布を基材として貼り合わせたポリウレタン系合成皮革を製造するには、離型紙にポリウレタン樹脂を塗布および乾燥し、次いで前記布基材を貼り合わせるためにポリウレタン層上にイソシアネート基を官能基とする成分を含有する第1液とポリオールからなる第2液とからなるポリウレタン系2液型接着剤を使用する。この2液型接着剤は、接着力が強く、ソファーなどの家具類や靴などの使用期間が長いものや使用の激しいものに多用されているが、上記工程において高い反応性を有するイソシアネート基が離型紙に移行し、工程用離型紙の剥離性が害され、生産性が低下する場合がある。このようなポリウレタン系2液型接着剤に対しても剥離が容易でかつ耐熱性に優れる離型紙として、紙と電離放射線硬化膜とからなるエンボス付き剥離紙がある(特許文献2)。該特許文献2では、前記硬化膜として、イソシアネート化合物と、(メタ)アクリロイル基を有していて且つイソシアネート化合物と反応し得る(メタ)アクリル化合物と、(メタ)アクリロイル基を有しておらず且つイソシアネート基と反応し得る化合物との反応生成物であって、軟化点が40℃以上の電離放射線硬化性組成物を含む電離放射線硬化性組成物を電離放射線により硬化させたものを使用している。実施例では、目止め層を設けた紙基材に、上記電離放射線硬化性組成物を2度コーティングして電離放射線硬化膜を形成し、エンボス賦型性、耐熱性および繰り返し剥離性に優れるエンボス付き剥離紙を製造している。
【0005】
また、被成形物を賦型するものとして、メラミンなどの熱硬化性樹脂化粧板のプレス加工に使用する賦型シートがある。このような賦型シートとして、基材フィルム(PETフィルム)にプライマー層を形成し、このプライマー層に電離放射線硬化性樹脂層からなる賦型面を形成し、前記基材フィルムの他の面に三次元架橋硬化樹脂からなるブリード成分を阻止するコーティング層を設けたことを特徴とする賦型シートがある(特許文献3)。熱硬化性樹脂化粧板のプレス加工は、通常、加熱温度100〜150℃、圧力5〜100Kg/cm2、加熱加圧時間5〜30分の高温高圧条件で行われるため、PET等を基材フィルムとする賦型シートでは、PET中のオリゴマーや可塑剤等の流動性の低分子成分がブリードし、プレスの金属板を汚し、かつ賦型シートの再利用ができないことに鑑みてなされたものである。上記構成によれば、ブリード成分を阻止するコーティング層が積層されるため、ブリードによる汚染を回避しうるという。
【特許文献1】特開平5−82806号公報
【特許文献2】特開2005−186516号公報
【特許文献3】特開平07−276569号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
離型紙を使用して製造される合成皮革は、その表面がつや消しされたマットタイプの他に、平滑性に優れ光沢のあるグロスタイプも用途や需要者の好みに併せて製造される。特に、高光沢表面を有する合成皮革やメラミン化粧板は、需要者の嗜好が高く、安定して製造しうることが望まれる。
【0007】
しかしながら、上記特許文献1記載のポリプロピレンをラミネートした積層物は、熱可塑性のポリプロピレンを使用するため耐熱性が十分でなく、繰返し使用回数が制限される。
【0008】
また、上記特許文献2記載の離型紙は、電離放射線硬化膜を有するため機械的強度に優れるが、上記電離放射線硬化性組成物を2層積層して電離放射線硬化膜を形成するものである。電離放射線硬化性組成物は極めて高価であるが、使用量を低減すれば樹脂層が薄くなるため、目的の賦型面を形成することが困難となる。したがって、安価な化合物を使用して工程離型紙を製造することができれば有利である。特に、離型紙は製造時に巻き取り工程を経るため、粘着性が少なく耐溶剤性に優れることが好ましい。
【0009】
また、工程離型紙は、メラミン化粧板などの表面に賦型する際にも使用される。具体的には、バック紙、メラミン樹脂を含浸したコア紙、メラミン樹脂含浸化粧紙、メラミン樹脂含浸オーバーレイ紙を順次重ね合わせ、前記オーバーレイ紙の上に工程離型紙を積層して高温、高圧条件でプレス加工してメラミン化粧板が製造される。このため、離型紙も耐熱性、耐圧性に優れる必要があるが、上記特許公報3記載の賦型シートは、ブリードを抑制しうる点で優れるが、基材フィルムがPETであるため、PETの溶融温度によって加熱温度や圧力の限度が設定される場合がある。
【0010】
また、工程離型紙は、被賦型物から容易に剥離できる必要がある。前記したメラミン化粧板の製造では、プレス加工によって、前記オーバーレイ紙及びメラミン樹脂含浸化粧紙から浸出したメラミン樹脂が硬化してメラミン樹脂層が形成されるため、工程離型紙はメラミン樹脂性に対する優れた剥離性を有する必要がある。特に、賦型面が高光沢である場合には高度な剥離性を確保するため、メラミン樹脂などに対する耐薬品性に優れる工程離型紙が望まれる。
【0011】
このような状況の下、本発明は、合成皮革製造工程において2液型接着剤を使用することができ、塩化ビニルレザーなどの融点が高い樹脂組成物からなる合成皮革も繰り返し製造することが可能で、耐熱性、機械的強度および賦型性に優れる離型紙を提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明は、高温、高圧条件が負荷されるメラミン化粧版などの表面に高光沢の賦型面を形成する際にも使用しうる、耐熱性、機械的強度、剥離性に優れる工程剥離紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、工程剥離紙の構成を詳細に検討した結果、(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体からなる電離放射線硬化性組成物を電離放射線により硬化させてなる電離放射線硬化樹脂層が耐溶剤性に優れ、タックフリーであり、当該(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体は安価に製造できるため、耐溶剤性、賦型性、離型性に優れる工程剥離紙を安価かつ簡便に製造できること、更に、紙基材にポリオレフィン系樹脂などの熱可塑性樹脂からなる層を中間層として積層すると、紙基材との接着性に優れると共にその熱可塑性のために高光沢の賦型性に優れグロスタイプの離型紙として好適であること、電離放射線硬化樹脂の上に熱硬化シリコーン層を積層すると、たとえポリウレタン系2液型接着剤などの反応性の強い接着剤を使用した場合やメラミン化粧板の製造時にも優れた剥離性を確保しうること、このような工程剥離紙は、合成皮革やメラミン化粧板の表面に高光沢表面を賦型する際の賦型シートとして極めて好適に使用しうることを見出し、本発明を完成させた。
【0014】
即ち、本発明は、紙基材と、電離放射線硬化樹脂層と、熱硬化シリコーン層とがこの順に積層され、賦型面の表面光沢度が60°反射で60以上であることを特徴とする工程離型紙を提供するものである。
【0015】
また、本発明は、合成皮革の製造に使用される、合成皮革用工程剥離紙を提供するものである。
また、本発明は、メラミン化粧板の製造に使用される、メラミン化粧板用工程剥離紙を提供するものである。
【0016】
更に本発明は、表面光沢度が60°反射で60以上である紙基材に熱可塑性樹脂を積層し、ついで前記熱可塑性樹脂に表面処理を行い表面処理層を形成し、前記表面処理層上に電離放射線硬化性組成物および熱硬化性シリコーン組成物を積層して積層物を得て、この積層物に表面光沢度が60°反射で60以上の賦型処理を行い、ついで前記賦型処理した積層物に電離放射線硬化処理を行うことを特徴とする、上記工程剥離紙の製造方法を提供するものである。
【0017】
また、表面光沢度が75°反射で90以上であるキャストコート紙のキャストコート層に電離放射線硬化性組成物および熱硬化性シリコーン組成物を積層し、ついで前記積層物に電離放射線硬化処理を行うことを特徴とする、上記工程剥離紙の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の工程剥離紙は、表面光沢度が60°反射で60以上の賦型面を有するため、高光沢の合成皮革やメラミン化粧板の製造に好適に使用することができる。
本発明の工程剥離紙は、(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体からなる電離放射線硬化樹脂層を有するため、耐溶剤性、賦型性、離型性に優れ、複数回の再使用が可能であり、経済的である。
【0019】
また、工程剥離紙の賦型層が、熱可塑性樹脂層と電離放射線硬化樹脂層とによって構成されるため層の厚さを確保することができ、優れた高光沢を形成することができる。
更に、本発明の工程剥離紙によれば、2液ポリウレタンや塩化ビニルに対して安定した繰り返し剥離性能をもち、静電気放電による剥離不良を軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の第一は、紙基材と、電離放射線硬化樹脂層と、熱硬化シリコーン層とがこの順に積層され、賦型面の表面光沢度が60°反射で60以上であることを特徴とする工程離型紙であり、前記紙基材と、電離放射線硬化樹脂層との間に中間層が形成されていてもよい。本発明の好適な態様の一例を示す図1を参照しつつ、本発明を詳細に説明する。
【0021】
(1)工程剥離紙
本発明の工程剥離紙は、図1に示すように、熱硬化シリコーン層(10)と、電離放射線硬化樹脂層(20)と熱可塑性樹脂層(30)と紙基材(40)とをこの順に積層したものであり、熱硬化シリコーン層(10)を被賦型物に接触させることで所定形状に賦型することができる。図2(a)に示すように、前記紙基材(40)と、電離放射線硬化樹脂層(20)との間に中間層(30)が形成されていてもよい。中間層(30)は単層からなる場合のみならず、複数の層からなる多層構造であってもよく、多層構造には、熱可塑性樹脂層または目止め層の表面処理を行って形成した表面処理層を有していてもよく、表面処理層の形成によって、電離放射線硬化樹脂層(20)との接触性を向上させることができる。具体的には、図2(b)に示すように、本発明の工程剥離紙が、前記紙基材(40)と、電離放射線硬化樹脂層(20)との間に熱可塑性樹脂層からなる中間層(30)を有する場合において、熱可塑性樹脂層を2層以上で構成し、例えばポリプロピレン系樹脂からなる第一ポリオレフィン系樹脂層(30A”)と、ポリプロピレン系樹脂とポリエチレン系樹脂との組成物からなる第二ポリオレフィン系樹脂層(30A’)とし、紙基材(40)上に第二ポリオレフィン系樹脂層(30A’)、その上に第一ポリオレフィン系樹脂層(30A”)、コロナ処理などの表面処理層(33)、電離放射線硬化樹脂層(20)、熱硬化シリコーン(10)の順に積層される構成とすることができる。これにより、紙基材(40)と熱可塑性樹脂層(30)との接着性を向上させることができる。
【0022】
また図示しないが、本発明の工程剥離紙を構成する電離放射線硬化樹脂層(20)も単層でもよいが2層以上の多層であってもよい。例えば、電離放射線硬化樹脂層に無機顔料を含有する電離放射線硬化樹脂層(20A)と無機顔料を含有しない電離放射線硬化樹脂層(20B)とを積層させることができる。電離放射線硬化樹脂層(20A)を紙基材に積層させ、次いで電離放射線硬化樹脂層(20B)を積層させると中間層(30)を設けることなく目止め効果も確保することができる。
【0023】
本発明の工程剥離紙は、賦型面の表面光沢度が60°反射で60以上であることを特徴とする。なお、本願明細書において、表面光沢度は、JIS P8142に規定される60度、または75度鏡面光沢度の測定方法によるものとする。
【0024】
(2)紙基材
本発明で使用する紙基材は、少なくとも電離放射線硬化樹脂層(20)および熱硬化シリコーン層(10)を積層する工程に耐える強度を有し、合成皮革の塗工・形成時やメラミン化粧板の表面に表面光沢度が60°反射で60以上の光沢を賦型する際の離型紙としての耐熱性、耐薬品性などの性質を有することが必要である。クラフト紙、上質紙、片艶クラフト紙、純白ロール紙、グラシン紙、カップ原紙などの非塗工紙の他、天然パルプを用いない合成紙なども用いることができる。合成皮革やメラミン化粧板の加工適性のためには、耐久性、耐熱性に優れる点で天然パルプからなる紙を使用することが好ましい。
【0025】
本発明において、基材層として使用する紙としては、秤量15〜300g/m2、好ましくは100〜180g/m2である。この範囲であれば、高光沢の賦型が容易である。また、紙は、中性紙であることが好ましい。硫酸バンドなどを含む酸性紙は、合成皮革やメラミン化粧板の製造工程で繰り返し使用されると熱劣化が発生し、このため早期に再使用が困難となる場合がある。中性紙であれば、このような熱劣化を防止することができる。
【0026】
また、本発明で使用する紙は、サイズ剤として、中性ロジンやアルキルケテンダイマー、アルケニル無水コハク酸を使用してもよく、定着剤としてカチオン性のポリアクリルアミドやカチオン性デンプン等を使用してもよい。また、上記理由により硫酸バンドを使用しないことが最も好ましいが、硫酸バンドを使用してpH6〜9の中性領域で抄紙することも可能である。その他、必要に応じて上記のサイズ剤のほか、定着剤の他、製紙用各種填料、歩留向上剤、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、結合剤、分散剤、凝集剤、可塑剤、接着剤を適宜含有していてもよい。
【0027】
更に、本発明で使用する紙基材としては、例えば一般的な、微塗工印刷用紙、塗工印刷用紙、樹脂コート紙、加工原紙、剥離原紙、両面コート剥離原紙などの予め後記する目止め層や樹脂層が形成された市販品を使用することもできる。
【0028】
なお、本発明では、表面光沢度が75°反射で90以上の鏡面を前記塗工面に転写して得られるキャストコート紙などを紙基材として使用することもできる。
(3)電離放射線硬化樹脂層
本発明で使用する電離放射線硬化樹脂層は、(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体(I)からなる電離放射線硬化性組成物、または(メタ)アクリル酸エステル35〜80質量部、グリシジル(メタ)アクリル酸エステル20〜60質量部、他の(メタ)アクリル酸エステル0〜30質量部からなる共重合体に、(メタ)アクリル酸を10〜30質量部反応させてなる(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体(II)からなる電離放射線硬化性組成物を電離放射線により硬化させたものであり、当該(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体(I)は、重量平均分子量(Mw)が5,000〜200,000、より好ましくは15,000〜100,000、特に好ましくは15,000〜70,000である。また、(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体(I)の分散比(Mw/Mn)は1.0〜5.0、より好ましくは1.5〜4.0、特に好ましくは1.9〜3.5であり、ガラス転移点温度(Tg)は40〜150℃、より好ましくは65〜120℃、特に好ましくは65〜90℃である。なお、本発明において、重量平均分子量および数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法によりポリスチレン換算で求めた値である。工程剥離紙は、合成皮革やメラミン化粧板を製造する際に、極めて薄層の熱硬化シリコーン層と共に電離放射線硬化樹脂層が賦型面を形成する必要があり、一般に賦型は温度40〜150℃で実施される。本発明によれば、上記(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体からなる電離放射線硬化性組成物は、耐溶媒性に優れ、熱硬化シリコーン層と電離放射線硬化樹脂層とに表面光沢度が60°反射で60以上の賦型面を形成する際に、過度に軟化せず賦型性に優れ、しかも電離放射線硬化樹脂層形成時にタックフリーであるため原反の巻き取りが容易で、極めて操作性に優れることが判明した。
【0029】
このような(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体(I)としては、例えば(メタ)アクリレート系単量体単位(A)とエポキシ基含有(メタ)アクリレート系単量体単位(B)とを含むエポキシ基含有共重合体(C)に、(メタ)アクリル酸を反応させて得ることができる。
【0030】
本発明において(メタ)アクリレート系単量体単位(A)としては、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、2−(ジシクロペンタニルオキシ)エチルアクリレート、2−(ジシクロペンタニルオキシ)エチルメタクリレート、2−(ジシクロペンタニルオキシ)エチル−2'−(アクリロイルオキシ)エチルエーテル、2−(ジシクロペンタニルオキシ)エチル−2'−(メタクリロイルオキシ)エチルエーテル、2−{2−(ジシクロペンタニルオキシ)エチルオキシ}−1−{2'−(アクリロイルオキシ)エチルオキシ}エタン、2−{2−(ジシクロペンタニルオキシ)エチルオキシ}−1−{2'−(メタクリロイルオキシ)エチルオキシ}エタン、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルメタクリレート、2−(ジシクロペンテニルオキシ)エチルアクリレート、2−(ジシクロペンテニルオキシ)エチルメタクリレート、2−(ジシクロペンテニルオキシ)エチル−2'−(アクリロイルオキシ)エチルエーテル、2−(ジシクロペンテニルオキシ)エチル−2'−(メタクリロイルオキシ)エチルエーテル、2−{2−(ジシクロペンテニルオキシ)エチルオキシ}−1−{2'−(アクリロイルオキシ)エチルオキシ}エタン、2−{2−(ジシクロペンテニルオキシ)エチルオキシ}−1−{2'−(メタクリロイルオキシ)エチルオキシ}エタン、ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレートなどがある。これらの中でも、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、イソボルニルアクリレートなどを好適に使用することができる。
【0031】
また、エポキシ基含有(メタ)アクリレート系単量体単位(B)としては、グリシジルメタクリレート、メチルグリシジルメタクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、アジリジニル(メタ)アクリレートなどがある。
【0032】
上記(メタ)アクリレート系単量体単位(A)とエポキシ基含有(メタ)アクリレート系単量体単位(B)との配合比は、単量体単位の合計質量中に上記エポキシ基含有(メタ)アクリレート系単量体単位(B)を5〜95質量%となるように配合することである。5質量%を下回ると、十分な二重結合当量を確保することができず、(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体(I)の硬化後の耐溶剤性、耐擦過性が損なわれる場合がある。一方、95質量%を超えるとTgが低くなりすぎることによる未硬化膜のタック感が生じ、賦型性が損なわれる場合がある。
【0033】
また、本発明で使用する電離放射線硬化性組成物は、(メタ)アクリル酸エステル35〜80質量部、グリシジル(メタ)アクリル酸エステル20〜60質量部、他の(メタ)アクリル酸エステル0〜30質量部からなる共重合体に、(メタ)アクリル酸を10〜30質量部反応させてなる(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体(II)であってもよい。(メタ)アクリル酸エステルおよび他の(メタ)アクリル酸エステルは、上記(メタ)アクリレート系単量体単位(A)に該当し、グリシジル(メタ)アクリル酸エステルはエポキシ基含有(メタ)アクリレート系単量体単位(B)に該当する。したがって、他の(メタ)アクリル酸エステルは、上記(メタ)アクリレート系単量体単位(A)の中から適宜選択することができる。
【0034】
反応は、上記単量体単位をラジカル開始剤の存在下で共重合して得られる。ラジカル開始剤としては特に制限されるものではないが、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1′−アゾビス−(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、アゾビスメチルブチロニトリル、2,2′−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビスイソ酪酸ジメチル等のアゾ化合物;過酸化水素;ラウロイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、サクシニックアシッドパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエイト、m−トルオイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシマレイックアシッド、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、ジ−t−ブチル−ジパーオキシイソフタレート、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイドなどのパーオキサイド;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、塩素酸ソーダ等の過酸化物、あるいはこれら過酸化物と還元剤との組合せによるレドツクス系開始剤等一般的なラジカル開始剤を重合方法に合わせて適宜採択し得る。上記重合開始剤の使用量は、その種類や重合条件で異なるが、上記単量体100質量部に対して通常、0.1〜10質量部である。
【0035】
重合温度は、重合開始剤の種類によるが、通常40〜180℃、好ましくは50〜150℃、より好ましくは60〜130℃である。また、反応圧は、大気圧でもよく、加圧条件でもよく、通常0.15〜0.5MPaである。なお、重合時間は、3〜15時間である。
【0036】
上記のような単量体単位(A)、単量体単位(B)を溶液重合により重合する。溶液重合に使用しうる溶媒としては、n−ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素化合物;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素化合物;ベンゼン、トルエン、キシレン、クメンなどの芳香族炭化水素化合物;テトラヒドロフラン、ジ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル化合物などの有機溶媒、メタノール、エタノールなどのアルコール類、アセトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、エチルベンゼン、メチルエチルケトン、酢酸ブチル等の公知の溶剤が使用できる。中でも、メチルエチルケトン、メタノール、トルエン、エチルベンゼン、酢酸ブチル等を用いることが好ましい。このような溶媒は1種を用いても2種以上を併用してもよい。
【0037】
反応溶媒中の単量体濃度は10〜80質量%が好ましい。単量体濃度が10質量%より小さいと十分な反応速度が得られないことがあり、80質量%より高いと反応中にゲル化物が生じる恐れがある。
【0038】
十分な反応速度を得るために、本反応は触媒を用いて行うのが好ましい。触媒としては、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィンなどのホスフィン類、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミンなどのアミン類、ジメチルスルフィド、ジフェニルスルフィドなどのスルフィド類などを用いることができるが、反応速度の面からホスフィン類が好ましく、特にトリフェニルホスフィンが好ましい。
【0039】
これらの触媒の量はエポキシ基含有(メタ)アクリレート系単量体単位(B)に対して、通常、0.1〜10質量%である。触媒量がエポキシ基含有(メタ)アクリレート系単量体単位(B)に対して0.1質量%より少ない場合には十分な反応速度が得られないことがあり、10質量%より多く加えると生成した樹脂の諸物性に悪影響を及ぼす恐れがある。
【0040】
反応中のゲル化物の生成を防止するために、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、フェノチアジン、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−アセトアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−ベンゾオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルなどのN−オキシラジカル系化合物;ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2'−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,6−ジ−t−ブチル−N,N−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、4−t−ブチルカテコール、4,4'−チオ−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4'−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)などのフェノール系化合物;フェノチアジン、N,N'−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、フェニル−β−ナフチルアミン、N,N'−ジ−β−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N'−イソプロピル−p−フェニレンジアミンなどのアミン化合物;1,4−ジヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ジヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどのヒドロキシルアミン系化合物;ベンゾキノン、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンなどのキノン系化合物;塩化第一鉄、ジメチルジチオカルバミン酸銅などの銅化合物などが挙げられる。これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これらの重合禁止剤の量は反応液全体に対して1〜10000ppmであるのが好ましい。
【0041】
次いで、得られた共重合体(C)に(メタ)アクリル酸を反応させると(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体(I)、(II)を得ることができる。(メタ)アクリル酸、より好ましくはアクリル酸で変性することで(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体に二重結合を導入することができる。本発明で使用する(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体(I)は電離放射線硬化樹脂層をなすものであり、硬化によって耐溶媒性、耐熱性などを確保するため、二重結合当量が0.5〜4.5meq/gであることが好ましく、より好ましくは0.5〜4.0meq/g、特に好ましくは0.7〜3.6meq/gである。したがって、(メタ)アクリル酸は、二重結合当量が上記範囲となるように共重合体(C)と反応させるとよい。
【0042】
共重合体(C)と(メタ)アクリル酸との反応は、溶液中で3級アミン触媒、4級アンモニウム塩触媒、3級ホスフィン触媒、4級ホフフィン塩触媒、有機錫化合物触媒の存在下で行うことが好ましい。具体的には、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィンなどのホスフィン類、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミンなどのアミン類、ジメチルスルフィド、ジフェニルスルフィドなどのスルフィド類などを用いることができる。
【0043】
上記反応時間、反応温度は、選択した溶媒や反応圧力などによって異なるが、圧力が大気圧〜0.2MPaで、通常、温度50〜160℃、反応時間は3〜50時間である。
本発明の電離放射線硬化性組成物は、重量平均分子量(Mw)が5,000〜200,000であり、分散比(Mw/Mn)が1.0〜5.0であり、ガラス転移点温度(Tg)が40〜150℃の(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体(I)を含む。(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体(I)のTgが40℃より低いと、表面光沢度が60°反射で60以上の賦型面を形成する際に溶融し賦型性が不良となり、または未硬化の膜にタックが発生し、シートの巻き取りが損なわれる場合がある。一方、150℃を超えると、上記表面光沢度が60°反射で60以上の賦型面を形成する際に極端な高温をかける必要があり、また硬化後の可撓性が損なわれる場合がある。なお、本発明に規定するTgの測定は、後記する実施例に記載する方法で測定するものとする。また、150℃を超えると賦型が困難となる場合がある。なお、(メタ)アクリル酸エステル35〜80質量部、グリシジル(メタ)アクリル酸エステル20〜60質量部、他の(メタ)アクリル酸エステル0〜30質量部からなる共重合体に、(メタ)アクリル酸を10〜30質量部反応させてなる(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体(II)は、重量平均分子量(Mw)やTgの制限はないが、工程剥離紙として成型するには、ガラス転移温度が40〜150℃であることが好ましく、より好ましくは65〜120℃である。Tgは重量平均分子量(Mw)や二重結合当量と相関するため、上記ガラス転移温度を満たすように二重結合を含め、かつ重量平均分子量(Mw)を調製すればよい。好ましくは5,000〜200,000、より好ましくは15,000〜100,000、特に好ましくは15,000〜70,000である。5,000を下回ると、耐溶剤性や強靭性に劣る場合があり、一方、200,000を超えると樹脂粘度が高くなり、取り扱いが困難となる場合がある。また、ガラス転移点温度(Tg)は40〜150℃、より好ましくは65〜120℃、特に好ましくは65〜90℃である。この範囲であれば、(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体(II)を硬化させた後に、耐溶剤性、耐擦過性に優れ、かつ未硬化膜のタック感がなく、賦型性に優れるからである。
【0044】
本発明で用いられる電離放射線硬化性組成物は、上記(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体(I)、(II)のみからなるものであってもよい。組成物とは2種以上の物質が配合されたものであるが、(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体(I)の分散比から明らかなように、異なる分子量の(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体が含まれているため、本願では(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体のみからなる場合も電離放射線硬化性組成物と称する。一方、本発明で使用する電離放射線硬化性組成物には、更に無機顔料、光重合開始剤、その他を配合してもよい。無機顔料の配合により、工程剥離紙にマット感を付与することができる。このような無機顔料として、タルク、カオリン、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化亜鉛などが例示できる。無機顔料は、電離放射線硬化樹脂層に0.5〜50質量%、より好ましくは1〜10質量%となるように配合することが好ましい。電離放射線硬化樹脂層が2層以上の多層で構成される場合には、各層における無機顔料の配合量が上記範囲となる。
【0045】
電離放射線硬化性組成物に配合しうる光重合開始剤としては、2,2−ジメトキシ−2フェニルアセトフェノン、ベンゾインエチルエーテル、アセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン、p−クロロベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントンなどがある。光重合開始剤の配合量は、(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体100質量部に対して、1〜10質量部である。
【0046】
更に、該(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体の硬化特性を改質するために、電離放射線硬化性組成物に任意成分として他の樹脂、シリコーン化合物、反応性モノマー、他の光硬化性重合体などをその特性を害しない範囲で含有させてもよい。
【0047】
他の樹脂としては、メタクリル樹脂、塩素化ポリプロピレン、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタールなどがあり、反応性モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどがある。
【0048】
光硬化性重合体としては、多官能(メタ)アクリレートオリゴマーがある。配合量は、該(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体100質量部に対して30質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。多官能(メタ)アクリレートオリゴマーとは、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するもので、例えば、トリシクロデカンジメチロールジアクリレート、ビスフェノールFのエチレンオキサイド変性ジアクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド変性ジアクリレート、イソシアヌル酸のエチレンオキサイド変性ジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンのプロピレンオキサイド変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンのエチレンオキサイド変性トリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ウレタンアクリレートなどがある。これらは、2種以上を組み合わせて配合することもできる。
【0049】
この電離放射線硬化性組成物は、(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体100質量部に対して10〜1000質量部の溶剤で希釈して塗工してもよい。溶剤の希釈により塗工に適正な粘度、例えば、25℃において10〜3000mPa・秒の粘度を付与するとともに、これを乾燥する工程においてシリコーン化合物の適正な表面への移行を可能にする。
【0050】
溶媒としては、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等のエステル系溶媒、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート等のグリコールエーテルエステル系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、N−メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶媒などが用いられる。
【0051】
塗工方式としては、ダイレクトグラビアコート、リバースグラビアコート、グラビアオフセットコート、マイクログラビアコート、ダイレクトロールコート、リバースロールコート、カーテンコート、ナイフコート、エアナイフコート、バーコート、ダイコート、スプレーコートなどの公知の方法が用いられ、熱可塑性膜上に塗工後、温度90〜130℃で乾燥および加熱して、乾燥炉で溶剤を蒸発させて電離放射線硬化性組成物を熱硬化させる。この温度は、電離放射線硬化性組成物の軟化点より高く、かつ電離放射線硬化性組成物が溶融する温度より低い範囲である。
【0052】
電離放射線硬化樹脂層の厚さは、1〜50μmであることが好ましく、より好ましくは3〜20μmである。1μmより薄いと微細な賦型性の転写が悪くなり、一方、50μmを超えると樹脂の硬化性が悪くなる場合がある。前記したように、電離放射線硬化樹脂層が2層以上の多層で構成される場合には、全層の厚さを上記範囲とする。
【0053】
なお、上記熱硬化した電離放射線硬化性組成物は、表面光沢度が60°反射で60以上の賦型面を形成した後に、熱硬化シリコーン層側から紫外線あるいは電子線を照射することで電離放射線硬化させることができる。紫外線の光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、タングステンランプなどが用いられる。電子線の照射方式としては、スキャンニング方式、カーテンビーム方式、ブロードビーム方式などが用いられ、電子線の加速電圧は、50〜300kVが適当である。
【0054】
(4)熱硬化シリコーン層
本発明で用いる熱硬化シリコーン層は、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサンおよび白金系硬化触媒からなる熱硬化性シリコーン組成物を熱硬化して形成したものである。
【0055】
アルケニル基含有オルガノポリシロキサンの一例としては下記の如き化合物が挙げられる。
【0056】
【化1】

(上記式中におけるRは主としてメチル基であるが、その他のアルキル基またはフェニル基等のアリール基或はそれらの組み合わせで有り、l+m+nは1以上の整数であり、各シロキサン単位はランダムに配置されていてもよい。X、YおよびZのうち少なくとも1個はビニル基、アリル(−CH2−CH=CH2)基または(メタ)アクリロイル基等に付加重合性基であり、R1〜R3は単結合或はアルキレン基である。)
以上のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンの分子量は特に限定されないが、一般的には3,500〜20,000の範囲が好適である。これらのアルケニル基含有オルガノポリシロキサンは市場から入手でき本発明で容易に使用することができる。
【0057】
本発明で使用するオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、上記一般式において−R1−X、−R2−Z、および−R3−Yのうち少なくとも1個が水素原子であるものであり、他の置換基、シロキサン単位の配列、分子量等については前記一般式と同様である。これらのアルケニル基含有オルガノポリシロキサンは市場から入手でき本発明で容易に使用することができる。
【0058】
アルケニル基含有オルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとの使用割合は、両者の有する反応性基のモル比で決まり、前者と後者の比が4:1〜1:4、特に1:1〜1:3の範囲が好ましく、この範囲を外れると離型性の低下、塗膜強度の低下、未反応の反応性基による保存性の劣化等の点で満足した性能が得られない。
【0059】
本発明では、更に白金系硬化触媒を使用する。該触媒は前記アルケニル基含有オルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサン100質量部当たり約5〜200質量部程度が好ましい使用量である。
【0060】
上記のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンおよび白金系硬化触媒からなる熱硬化性シリコーン組成物は、常温でも反応が進行し、塗工液中での反応の進行は離型性低下の原因となり、また、塗工液の保存性や取り扱い性に問題が生じる。本発明ではこの様な問題を解消する為に、常温では熱硬化性シリコーン組成物に対して反応抑制効果を有し、加熱処理時にはその抑制効果が解消する反応抑制剤を使用してもよい。具体的には、本発明で使用する反応抑制剤は、溶媒の溶液の状態では、上記の熱硬化性シリコーン組成物に対する硬化触媒の作用を抑制し、加熱された状態や溶剤が揮散した状態、即ち加熱または乾燥状態では上記硬化触媒の作用を抑制せず、むしろ促進する材料である。この様な硬化抑制剤としては、例えば、アセチレンアルコールのシリル化物等が挙げられる。これらの反応抑制剤は市場から入手して使用することができる。かかる反応抑制剤は前記熱硬化性シリコーン組成物100質量部当たり約5〜100質量部の割合で使用することが好ましい。
【0061】
このような熱硬化性シリコーン組成物としては、市販品を使用してもよく、例えば、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとの混合物からなる付加重合型シリコーン材料の主剤(信越化学工業株式会社製、KS−3603)に白金系硬化触媒からなる硬化剤(信越化学工業株式会社製、CAT−PL−50T)を混合して調製することができる。
【0062】
上記熱硬化性シリコーン組成物は、常温では固体状態であるが、加工時には加熱により液体状態に変化する材料である。
本発明の熱硬化性シリコーン組成物は、表面光沢度が60°反射で60以上である賦型面を固定すると共に、強度等の充分な皮膜物性を得るために硬化性を必要とする。
【0063】
本発明の熱硬化性シリコーン層の形成方法自体は、前記熱硬化性シリコーン組成物の塗布、乾燥加熱、熟成等染料受容層の形成と同様でよく、形成される前記熱硬化シリコーン層の厚みは0.01〜20μmの範囲が好ましい。
【0064】
(5)熱可塑性樹脂層
本発明では電離放射線硬化樹脂層との間に中間層が形成されていてもよい。中間層は、耐熱性、賦型性、剥離性、耐溶剤性、目止め効果を確保するために配設されるものであり、熱可塑性樹脂層または目止め層である。
【0065】
本発明において熱可塑性樹脂層を構成する熱可塑性樹脂は、被賦型物の種類や製造条件に応じて適宜選択することができる。例えば、アクリル系樹脂の他、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン系樹脂、その他、シリコーン系樹脂、アミノアルキッドを含むアルキッド系樹脂などが例示される。この中でも、ポリプロピレン系樹脂を使用することが好ましい。耐熱性に優れるからである。本発明で使用するポリプロピレン系樹脂は、工程剥離紙としての耐熱性を損なわない限り、プロピレン単独重合体に限らず、プロピレンを主体とし、このプロピレンと例えば、エチレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン、4−ポリメチルペンテン−1などのα−オレフィンとの共重合体であってもよい。
【0066】
また、塩化ビニル系樹脂など、温度180℃を超える熱処理工程を経て合成皮革が製造され、または高温・高圧条件で製造されるメラミン化粧板などの製造の場合には、ポリメチルペンテン系樹脂を使用することが好ましい。たとえば、塩化ビニル系樹脂から合成皮革を製造する際、塩化ビニル系樹脂を発泡して積層する場合があり、この際の乾燥温度は180〜210℃になる。したがって、このような高温に対する耐熱性が要求され、より融点の高いポリメチルペンテン系樹脂が好適に使用される。本発明で使用するポリメチルペンテン系樹脂としては、4−メチル−1−ペンテンを主成分とするTPXなどのポリマーであり、4−メチル−1−ペンテンの単独重合体の他、4−メチル−1−ペンテンと他のα−オレフィン、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−テトラデセン、1−オクタデセン等の炭素数2〜20のα−オレフィンとの共重合体であってもよい。例えば、4−メチル−1−ペンテンを97〜98質量%、α−オレフィンを2〜3質量%の範囲で含有する4−メチル−1−ペンテンを主体とした共重合体であって、示差走査型熱量計(DSC法)で測定した融点が236〜238℃、ASTM D1238に準じて荷重=2.16kg、温度=260℃の条件で測定したメルトフローレート(MFR)が160〜200g/10分の範囲にある樹脂などを好適に使用することができる。塩化ビニル系樹脂を合成皮革製造原料とする場合の製造工程での熱処理温度やメラミン化粧板の製造における加温条件に対して耐熱性に優れ、かつこれらに表面光沢度が60°反射で60以上の光沢を賦型した後の剥離も容易である。
【0067】
本発明において、熱可塑性樹脂層(30)は、単層に限定されず、前記する図2(b)に示すように、ポリプロピレン系樹脂およびポリメチルペンテン系樹脂から選ばれる第一ポリオレフィン系樹脂層(30A”)と、前記第一ポリオレフィン系樹脂層を構成する樹脂とポリエチレン系樹脂との組成物からなる第二ポリオレフィン系樹脂層(30A’)とを含む、多層であってもよい。なお、多層は2層に限定されず、3層またはそれ以上であってもよい。
【0068】
第二ポリオレフィン系樹脂を構成する前記第一ポリオレフィン系樹脂層を構成する樹脂とポリエチレン系樹脂との組成物において、ポリエチレン系樹脂の配合量は、5〜80質量%、より好ましくは10〜50質量%である。ポリエチレンはポリプロピレン系樹脂やポリメチルペンテン系樹脂などよりも融点が低いが、上記範囲であれば、第一ポリオレフィン系樹脂層(30A”)と紙基材(40)とを好適に接着することができ、かつ合成皮革の製造やメラミン化粧板の製造にたる耐熱性を確保することができるからである。
【0069】
この際、使用するポリエチレン系樹脂としては特に制限はなく、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンのいずれでもよい。ただし、密度によって融点が相違するため、好ましくは融点が90〜130℃、より好ましくは110〜120℃のものである。この範囲であれば、工程剥離紙としての耐熱性を確保することができる。
【0070】
上記熱可塑性樹脂層は、前記ポリオレフィン系樹脂または組成物樹脂を、ロールコート、グラビアコート、押出しコート、ナイフコート、ミヤバーコート、ディップコートなどで紙基材に積層することで調製することができる。
【0071】
熱可塑性樹脂(30A)の厚さは、3〜40μmであることが好ましく、より好ましくは5〜20μmである。3μmより薄いと合成皮革やメラミン化粧板製造後の剥離性が低下する場合があり、一方、40μmを超えると離型紙のカールが大きくなる場合がある。
【0072】
なお、熱可塑性樹脂層(30A)が多層である場合、例えば、第一ポリオレフィン系樹脂層(30A”)と第二ポリオレフィン系樹脂層(30A’)などを含む場合は、共押出しなどに紙基材に積層してもよい。
【0073】
本発明では、熱可塑性樹脂層(30A)が表面処理層(33)を有するものであってもよい。このような表面処理によって電離放射線硬化樹脂層との密着性を向上させることができる。このような表面処理としては、フレーム処理、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガス若しくは窒素ガス等を用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理、化学薬品等を用いて処理する酸化処理、その他等の前処理などがある。また、予め、プライマーコート剤、アンダーコート剤、アンカーコート剤、接着剤、あるいは、蒸着アンカーコート剤等を任意に塗布し、表面処理することもできる。なお、前記コート剤としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリエチレンあるいはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂あるいはその共重合体ないし変性樹脂、セルロース系樹脂、その他等をビヒクルの主成分とする樹脂組成物を使用することができる。
【0074】
このような表面処理の中でも、特に、コロナ処理やプラズマ処理を行うことが好適である。コロナ処理を行うと一般に剥離強度が向上するため、例えば得られた工程剥離紙を使用してポリウレタン合成皮革を製造する際に、工程剥離紙が破断する場合があるが、本発明では特定組成の電離放射線硬化性組成物によって電離放射線硬化樹脂層を構成するため、剥離強度を向上させることなく、かつ繰り返し剥離性を確保することができる。
【0075】
(6)目止め層
本発明の中間層として目止め層を形成することができる。目止め層は、例えば造膜性を有する樹脂に対して無機顔料を0.5〜50質量%含有したものを使用することができる。
【0076】
造膜性を有する樹脂としては、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、セルロース誘導体、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、アミノアルキッド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、合成ラテックス、天然ゴム、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン系重合体、アクリロニトリル−ブタジエン系重合体、メチルメタアクリレート−ブタジエン系重合体、2−ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン系重合体、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、ポリスチレン、ポリウレタン、アクリレート系重合体、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル共重合体、酢ビ−エチレン系共重合体、アクリレート−スチレン系重合体、ポリエチレン、塩化ビニル系重合体、塩化ビニリデン系重合体、エポキシ含有樹脂などを好適に使用することができる。これらは、2種以上を混合して使用してもよい。
【0077】
無機顔料としては、タルク、カオリン、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化亜鉛などがあり、前記造膜性を有する樹脂に対して、0.5〜70質量%を配合する。0.5質量%を下回ると目止め効果が低減する場合があり、一方、70質量%を超えると賦型性を阻害する場合がある。この目止め層は、好ましくは0.5〜20g/m2で十分である。目止め材料の塗工は、前記した熱可塑性樹脂層と同様の方法で行うことができる。目止め材料のコーティングは、固形分100質量部に対して通常10〜1000質量部の溶剤で希釈して塗工される。溶剤の希釈により塗工に適正な粘度、例えば25℃において10〜3000mPa・秒の粘度を付与することができる。
【0078】
(7)工程剥離紙の製造方法
本発明の工程剥離紙は、紙基材上に電離放射線硬化樹脂層および熱硬化シリコーン層が積層された積層物を電離放射線により硬化させたものであり、表面に表面光沢度が60°反射で60以上の賦型面を形成するものであればその製造方法に制限はない。
【0079】
例えば、表面光沢度が75°反射で90以上であるキャストコート紙のキャストコート層に電離放射線硬化性組成物および熱硬化性シリコーン組成物を積層し、ついで前記積層物に電離放射線硬化処理を行い製造することができる(図3参照)。キャストコート紙のキャストコート層は、75°反射で90以上の表面光沢度を有し、このキャストコート層に電離放射線硬化性組成物および熱硬化性シリコーン組成物を積層して巻き取ると前記キャストコート層の表面光沢度に依存して、賦型面が60°反射で60以上の表面光沢度を有する工程剥離紙を製造することができる。
【0080】
また、所定の紙基材に電離放射線硬化性樹脂組成物層および熱硬化性シリコーン組成物層を積層して積層物を得て、この積層物に表面光沢度が60°反射で60以上の賦型面を形成し、ついで電離放射線硬化処理を行い製造することもできる。この際、積層物が更に中間層として熱可塑性樹脂層を積層する場合には、紙基材に熱可塑性樹脂層を積層し、ついで熱可塑性樹脂層に表面処理を行い、前記表面処理層上に電離放射線硬化性樹脂組成物層および熱硬化性シリコーン組成物層を積層して積層物を得ることが好ましい。例えば、前記積層物が、図2(b)に示す、紙基材(40)、第二ポリオレフィン系樹脂層(30A’)、第一ポリオレフィン系樹脂層(30A”)、第一ポリオレフィン系樹脂層(30A”)上の表面処理層(33)、電離放射線硬化樹脂層(20)、および熱硬化シリコーン層(10)とからなる場合には、図4に示すように、押出機A(70)に、第二ポリオレフィン系樹脂層を構成する樹脂組成物(2)と、押出機B(70’)に第一ポリオレフィン系樹脂層を構成する樹脂(1)とを仕込み、Tダイ(75)を介してこれらを紙基材(40)上に共押出ししてバックアップロール(60)と冷却ロール(50)とで積層および接着する。次いで、第一ポリオレフィン系樹脂層(30A”)上に、例えば、コロナ処理などを行い表面処理層(33)を形成する。なお、押出機A(70)や押出機B(70’)の加熱温度は、使用する樹脂の融点やメルトフローレート、配合するマット剤の種類や配合量などに応じて適宜選択すればよい。次いで、紙基材や上記表面処理層上に電離放射線硬化性組成物を塗工し、乾燥および熱硬化して電離放射線性組成物膜を熱硬化させる。次いで、熱硬化した電離放射線性組成物膜上に熱硬化性シリコーン組成物を塗工し、加熱乾燥して熱硬化シリコーン膜を形成する。これにより賦型加工前積層物を製造することができる。ついで、この賦型加工前積層物に、表面光沢度が60°反射で60以上の賦型処理を行い、特定の高光沢面を形成し、工程剥離紙とすることができる。例えば、表面光沢度が60°反射で60以上の賦型面を有する賦型ロールとこの賦型ロールの表面光沢度が60°反射で60以上の面を受けるペーパーロールまたは金属ロールとを対向して備える賦型加工機、あるいは前記賦型ロールとこの賦型ロールの表面光沢度が60°反射で60以上の表面をもつ金属ロールとを対向して備える賦型加工機に、上記賦型加工前積層物を流し、加熱された賦型ロールによって圧力をかけて、賦型加工前積層物に表面光沢度が60°反射で60以上の賦型面を形成することができる。なお、賦型ロールを使用せず、平賦型板を用いて平プレスで表面光沢度が60°反射で60以上の賦型面を形成してもよい。
【0081】
本発明において電離放射線硬化処理としては、熱硬化シリコーン膜の側から紫外線あるいは電子線を照射し、熱硬化電離放射線性組成物膜を硬化させ電離放射線硬化樹脂層とする。紫外線の光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、タングステンランプなどが用いられる。電子線の照射方式としては、スキャンニング方式、カーテンビーム方式、ブロードビーム方式などが用いられ、電子線の加速電圧は、50〜300kVが適当である。
【0082】
なお、本発明の工程剥離紙の前記賦型前の厚さは、30〜500μmであることが好ましく、より好ましくは100〜300μmである。厚さが30μmを下回ると賦型性が低下したり、製造工程で巻き取りの際に切断しやすくなるなどのライン適性が低下する場合がある。一方、500μmを超えると、工程剥離紙の幅カールが大きくなり、加工性が低下する場合がある。
【0083】
(8)合成皮革の製造方法
本発明の合成皮革用工程剥離紙を用いて、従来の離型紙を使用すると同様にして合成皮革を製造することができる。
【0084】
まず、工程剥離紙の熱硬化シリコーン層上に合成皮革用の樹脂組成物を塗布する。熱硬化シリコーン層上に塗布された樹脂層には、上記工程剥離紙の賦型面に形成された表面光沢度が60°反射で60以上の光沢面が形成されているため、これに対応した高光沢が前記樹脂組成物に転写される。その後、これに基布(例えば、織布、不織布等)を貼り合わせ、樹脂層を乾燥し冷却した後、離型紙を剥離することで合成皮革を得ることができる。上記の合成皮革用の樹脂組成物には、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル等の樹脂を用いることができる。ポリウレタンを用いる場合は、樹脂組成物の固形分を20〜50質量%程度とすることが好ましい。また、ポリ塩化ビニルを用いる場合は、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジラウリル等の可塑剤、発泡剤、安定剤等と混合し分散させた樹脂組成物を使用することが好ましい。この樹脂組成物の塗布方法としては、ナイフコート、ロールコート、グラビアコート等の従来公知の塗布方法を挙げることができる。このような本発明の工程剥離紙を用いた合成皮革の製造では、高温下で行なわれる塩化ビニル系レザー製造の場合においても、紙基材と熱可塑性樹脂層との間における剥離が防止され、耐熱性に優れ、かつ機械的強度の高い電離放射線硬化樹脂層の存在および剥離性に優れる熱硬化シリコーン層の存在により繰り返し安定生産が可能となる。
【0085】
(9)メラミン化粧板の製造
本発明のメラミン化粧板用工程剥離紙を用いて、従来の賦型シートと同様にしてメラミン化粧板を製造することができる。
【0086】
先ず、図5に示すように、バック紙(310)の上に、メラミン樹脂を含浸したコア紙(320)を4枚重ね、その上にメラミン樹脂含浸化粧紙(330)、メラミン樹脂含浸オーバーレイ紙(340)を順次重ね合わせる。前記オーバーレイ紙(340)の上に本発明の工程剥離紙(100)を表面光沢度が60°反射で60以上の賦型面を有する熱硬化シリコーン面(10)を前記オーバーレイ紙(340)に接触させするように重ね合わせる。これを2枚の鏡面加工金属板(400A、400B)の間に挟み、プレスにて、温度常温〜180℃、圧力70〜120kg/cm2 、加熱時間10分間〜2時間の条件で、加熱加圧して積層板を調製する。なお、加熱加圧条件は、異なる温度、圧力でのプレスを複数回行ってもよい。いずれにしても、プレス加工により前記積層板の表面には、オーバーレイ紙(340)及びメラミン樹脂含浸化粧紙(330)からメラミン樹脂が浸出し、これが硬化してメラミン樹脂層を形成する。このメラミン樹脂層の表面には、工程剥離紙(100)によって表面光沢度が60°反射で60以上の光沢の賦型面が形成されている。プレス加工後に、室温まで冷却後にプレス機から取り出し、工程剥離紙(100)を剥離すれば、表面に前記光沢の賦型面を有するメラミン化粧板(300)を得ることができる。なお、メラミン化粧板(100)は、前記積層板の材料を2〜20段積層し、多段プレスして製造することもできる。例えば、図6に示すように、前記積層板の材料を対抗して2段重ねてプレスして製造することもできる。本発明では、このような多段プレスにも好適に使用することができる。
【0087】
なお、メラミン化粧板の製造方法として、上記コア紙に代えて合板やハードボードを使用し、10〜40kg/cm2 の低圧で調製しうる低圧メラミン化粧板があり、このような低圧メラミン化粧板にも好適に使用することができる。
【0088】
このような本発明の工程剥離紙は耐熱性、耐溶剤性、剥離性に優れるため、メラミン化粧板の製造条件である高温下でも、紙基材と熱可塑性樹脂層との間における剥離が防止され、かつ機械的強度の高い電離放射線硬化樹脂層の存在および剥離性に優れる熱硬化シリコーン層の存在により繰り返し安定生産が可能となる。
【実施例】
【0089】
次に、具体的な実施例を示して本発明を更に詳細に説明する。
(合成例1)
撹拌機、滴下ロート、還流冷却器、窒素ガス導入管及び温度計を備えたガラスフラスコに、モノマーとしてメチルメタクリレートを30g、グリシジルメタクリレート70gと、溶剤としてメチルエチルケトン90gを入れて80℃に加熱した後、ここに重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.0gをメチルエチルケトン12gに溶解した溶液を3時間かけて滴下し、更に80℃で3時間重合させ、エポキシ基を有する共重合体A1のメチルエチルケトン溶液(固形分50.1%)を得た。続いて、80℃を保ったまま、乾燥空気を吹き込みながらハイドロキノンモノメチルエーテル0.05g、トリフェニルホスフィン1.0g、アクリル酸25g、メチルエチルケトン25gを加え、そのまま35時間反応させ、(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体のメチルエチルケトン溶液(固形分50.6%、Mn=11000、Mw=21000)を得た。該共重合体のガラス転移温度は、62℃であり、二重結合量は3.6であった。結果を表1に示す。
【0090】
(合成例2〜13)
表1、表2に示す原料に変更する以外は合成例1と同様に重合及び反応を行い、(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体のメチルエチルケトン溶液(固形分50.8%)を得た。該共重合体の重量平均分子量、数平均分子量、ガラス転移温度、二重結合量を表1、表2に示す。なお、合成例8のみ、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)の使用量を2.6gに変更して、重量平均分子量を変化させた。
【0091】
なお、表中の略号は以下である。
IBX:イソボルニルメタクリレート、
MMA:メチルメタクリレート、
BMA:ブチルメタクリレート、
IBMA:イソブチルメタクリレート、
GMA:グリシジルメタクリレート、
AA:アクリル酸、
Mn:数平均分子量、
Mw:重量平均分子量、
また、測定条件は以下の通りである。
【0092】
測定条件
(1)(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)は、以下の条件で測定した。
【0093】
(i) カラム ; 「TSK-GEL MULTIPORE HXL-M ×4」(東ソー社製)
(ii) カラム温度; 40℃
(iii)溶離液 ; テトラヒドロフラン(THF)
(iv) 検出器 ; RI
(v) 検出器温度; 40℃
(vi) 標準物質 ; ポリスチレン
(2)二重結合当量は、組成比から換算した。
【0094】
(3)Tgは、下記式にしたがって樹脂の設計Tg(ガラス転移温度)を算出した。なお、Tg1、Tg2...で示される単一重合体のガラス転移温度はポリマーハンドブックに記載の値を採用した。
【0095】
【数1】

(式中、1,2・・nは、構成するモノマー種類、Tgn:nモノマー単一重合体のガラス転移温度(K)、wn:構成中のnモノマー単位の重量比、Tg:ガラス転移温度(K)を示す。)
(合成例14)
アルケニル基含有オルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとの混合物からなる付加重合型シリコーン材料の主剤(信越化学工業株式会社製、KS−3603)100質量部と白金系硬化触媒からなる硬化剤(信越化学工業株式会社製、CAT−PL−50T)0.1質量部、希釈溶剤としてトルエンを固形分濃度が10質量%となるように添加して、熱硬化性シリコーン組成物を調製した。
【0096】
(実験例1)
合成例1の(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体100質量部につき光重合開始剤(チバスペシャリティーケミカルズ社製、イルガキュア184)を3質量部、希釈溶剤としてメチルエチルケトンを固形分濃度が30質量%となるように添加し電離放射線硬化性組成物を作製した。
【0097】
基材となる紙にはキャストコート紙(キャストコート層10〜40μm、75°反射の光沢度が90以上)のキャストコート層の上に上記電離放射線硬化性組成物をグラビアコーターで4g/m2コーティングし、続いて合成例14で調製した熱硬化シリコーン電離放射線硬化性組成物を乾燥時における塗工量が0.1g/m2となるようにコーティングし、120℃で1分間加熱、蒸発乾燥、熱硬化させて熱硬化シリコーン膜を形成した。
【0098】
ついで出力120W/cmの高圧水銀灯を用い、600mj/cm2の紫外線照射を行い、前記電離放射線硬化性組成物膜を硬化させ、工程剥離紙を得た。この工程剥離紙の繰り返し剥離性を表5に示す。この剥離工程紙の賦型面の表面光沢度は、60°反射で60以上であった。
【0099】
なお、繰り返し剥離性は、表3に示す組成のエステル系ポリウレタン樹脂組成物を調製し、実験例で得た離型紙に乾燥厚み20μmになるようにナイフコーターにて塗布し、160℃で1分間熱風乾燥してポリウレタン表皮層を形成し、このポリウレタン表皮層上に接着剤層として表4に示す二液硬化型ポリエステル系ポリウレタン接着剤を乾燥厚みが40μmとなるようにナイフコーターで塗布し、基布を貼り合わせ、この貼り合わせ物を120℃で5分間熱風乾燥し、更に40℃、24時間熟成して接着剤を反応固化させた後、離型紙とポリウレタン表皮層との剥離強度(15mm巾)を剥離速度300mm/min、剥離角度90°で測定する方法で評価した。
【0100】
(実験例2〜10)
合成例1の(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体に代えて、合成例2〜9、および合成例13の(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体を使用した以外は実験例1と同様に操作して工程剥離紙を作成し、実験例1と同様にして繰返し使用に対する剥離性を測定した。結果を表5に示す。
【0101】
(比較例1)
合成例1の(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体に代えて、シリコーン含有アルキド樹脂をメラミン硬化させたものを使用した以外は実験例1と同様に操作して工程剥離紙を作成し、実験例1と同様にして繰返し使用に対する剥離性を測定した。結果を表5に示す。
【0102】
(実験例11)
実験例1で得た工程剥離紙の賦型面に、静電気処理としてコロナ処理(7kw)を行った。ついで、得られた工程剥離紙から3つの試験片を作成し、3検体について剥離強度を評価し、そのうちの1検体についてさらに繰返し使用に対する剥離性を測定した。3検体の剥離強度を表6に示す。なお、剥離強度は、表3に示す組成のエステル系ポリウレタン樹脂組成物を調製し、実験例11で得た工程離型紙に乾燥厚み20μmになるようにナイフコーターにて塗布し、120℃で1分間熱風乾燥してポリウレタン表皮層を形成し、このポリウレタン表皮層上に接着剤層として表4に示す二液硬化型ポリエステル系ポリウレタン接着剤を乾燥厚みが40μmとなるようにナイフコーターで塗布し、基布を貼り合わせ、この貼り合わせ物を120℃で5分間熱風乾燥し、更に40℃、24時間熟成して接着剤を反応固化させた後、離型紙とポリウレタン表皮層との剥離強度(15mm巾)を剥離速度300mm/min、剥離角度90°で測定する方法で評価した。
【0103】
(比較例2)
比較例1で得た工程剥離紙の賦型面に、実験例11と同様にコロナ処理を行い、得られた工程剥離紙から2検体を作成し、実験例11と同様にして剥離強度を評価した。結果を表6に示す。
【0104】
【表1】

【0105】
【表2】

【0106】
【表3】

【0107】
【表4】

【0108】
【表5】

【0109】
【表6】

(実験例12)
実験例1で得た工程剥離紙を使用して、図5に示すようにバック紙(310)(中性紙;坪量130g/m2)の上に、メラミン樹脂を含浸したコア紙(320)を4枚重ね、その上にメラミン樹脂含浸化粧紙(330)、メラミン樹脂含浸オーバーレイ紙(340)を順次重ね合わせ、次いでその上に上記工程剥離紙(100)を表面光沢度が60°反射で60以上の賦型面を有する熱硬化シリコーン面(10)をオーバーレイ紙(340)に接触させて重ね合わせた。これを2枚の鏡面加工金属板(400A、400B)の間に挟み、100kg/cm2の圧力で、常温から150℃まで5分かけて昇温し、150℃で7分、150℃から7分かけて常温に降温した。プレス加工により、オーバーレイ紙(340)及びメラミン樹脂含浸化粧紙(330)から浸出したメラミン樹脂が硬化してメラミン樹脂層を形成し、このメラミン樹脂層には工程剥離紙(100)による表面光沢度が60°反射で60以上の高光沢表面が形成された。
【0110】
(結果)
合成例12の(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体は、Tgが35℃であり、過度の軟化が生じ、工程剥離紙を製造することができなかった。
【0111】
実験例7、8に示すように、合成例7と合成例8の(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体は、組成、Tg、二重結合当量が同じであるが、重量平均分子量および数平均分子量が異なるものである。重量平均分子量を39000から18000に低減した場合でも、実験例7、実験例8に示すように、共に工程剥離紙として有効に使用することができた。
【0112】
表5の結果から、実験例1〜10の剥離紙は、繰り返し使用による剥離試験を5回行った場合でも、いずれも剥離強度が54gf/15mm巾以下で安定しており、剥離紙として有効に使用することができた。特に、実験例10に示すように、Tgが122℃の特定の(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体でも、繰り返し使用による剥離試験を5回行った場合に、剥離紙として有効に使用することができた。一方、比較例1は繰り返し剥離性で剥離強度が上昇した。
【0113】
表6の結果から、比較例2に示す従来品と実験例11の工程剥離紙とを比較すると、比較例2では1検体は265gf/15mm巾であり、2検体目は破断するという結果であったが、実験例11では3検体がそれぞれ33gf/15mm巾、53gf/15mm巾、47gf/15mm巾であった。比較例2と実験例11とは、ともに静電気の影響を観るために工程剥離紙の賦型面にコロナ処理を行たものであるが、比較例2ではコロナ処理によって剥離強度が増加すなわち剥離性が低下し、これによって工程剥離紙が破断したが、実験例11で示す本願発明の工程剥離紙は、コロナ処理を行っても剥離強度が変化しなかった。このことは、本発明の工程剥離紙は、静電気があっても高い剥離性を維持しうることを示すものである。しかも、表5に示すように繰り返し剥離が可能であることが判明した。
【0114】
実験例12に示すように、本発明の工程剥離紙は、メラミン化粧板の製造など、高温高圧条件が負荷される製造工程でも、十分にメラミン化粧板の表面にエンボスを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】図1は、紙基材と、電離放射線硬化樹脂層と、熱硬化シリコーン層とが積層された、本発明の工程剥離紙の積層構成を説明する図である。
【図2】(a)は、紙基材と、電離放射線硬化樹脂層との間に、更に目止め層が形成された工程剥離紙の積層構成を説明する図であり、(b)は、目止め層が熱可塑性樹脂層であって、かつ第一ポリオレフィン系樹脂層(30’)と第二ポリオレフィン系樹脂層(30”)と表面処理層(33)とを有する本発明の工程剥離紙の積層構成を説明する図である。
【図3】本発明の工程剥離紙の製造工程を示す図である。
【図4】本発明で使用する賦型前積層物を製造する工程の一部を示す図である。
【図5】メラミン化粧板の製造工程を説明する図である。
【図6】多段プレスでメラミン化粧板の製造工程を説明する図である。
【符号の説明】
【0116】
1・・・ポリプロピレン系樹脂、
2・・・ポリプロピレン系樹脂とポリエチレン系樹脂との組成物樹脂、
10・・・熱硬化シリコーン層、
20・・・電離放射線硬化樹脂層、
30・・・目止め層、
30A’・・・第一ポリオレフィン系樹脂層、
30A”・・・第二ポリオレフィン系樹脂層、
33・・・表面処理層、
40・・・紙基材、
100・・・工程剥離紙、
300・・・メラミン化粧板、
400A,400B・・・鏡面加工金属板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材と、電離放射線硬化樹脂層と、熱硬化シリコーン層とがこの順に積層され、賦型面の表面光沢度が60°反射で60以上であることを特徴とする工程離型紙。
【請求項2】
前記電離放射線硬化樹脂層は、
重量平均分子量(Mw)が5,000〜200,000であり、分散比(Mw/Mn)が1.0〜5.0であり、ガラス転移点温度(Tg)が40〜150℃である(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体(I)からなる電離放射線硬化性組成物を電離放射線により硬化させたものである、請求項1記載の工程剥離紙。
【請求項3】
前記(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体(I)は、(メタ)アクリレート系単量体単位(A)とエポキシ基含有(メタ)アクリレート系単量体単位(B)とを含むエポキシ基含有共重合体(C)に、(メタ)アクリル酸を反応させてなる共重合体である、請求項2記載の工程剥離紙。
【請求項4】
前記アクリル系共重合体は、二重結合当量が0.5〜4.5meq/gである請求項3記載の工程剥離紙。
【請求項5】
前記電離放射線硬化樹脂層は、
(メタ)アクリル酸エステル35〜80質量部、グリシジル(メタ)アクリル酸エステル20〜60質量部、他の(メタ)アクリル酸エステル0〜30質量部からなる共重合体に、(メタ)アクリル酸を10〜30質量部反応させてなる(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体(II)からなる電離放射線硬化性組成物を電離放射線により硬化させたものである、請求項1記載の工程剥離紙。
【請求項6】
前記電離放射線硬化樹脂層は、無機顔料を0.5〜50質量%の範囲で含有するものである、請求項1〜5のいずれかに記載の工程剥離紙。
【請求項7】
前記紙基材と、電離放射線硬化樹脂層との間に中間層が形成されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の工程剥離紙。
【請求項8】
前記中間層は、熱可塑性樹脂からなる、請求項7記載の工程剥離紙。
【請求項9】
前記熱硬化シリコーン層は、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサンおよび白金系硬化触媒からなる熱硬化性シリコーン組成物を熱硬化して形成したものである、請求項1〜8のいずれかに記載の工程剥離紙。
【請求項10】
合成皮革の製造に使用される、請求項1〜9のいずれかに記載の合成皮革用工程剥離紙。
【請求項11】
メラミン化粧板の製造に使用される、請求項1〜9のいずれかに記載のメラミン化粧板用工程剥離紙。
【請求項12】
表面光沢度が60°反射で60以上である紙基材に熱可塑性樹脂を積層し、ついで前記熱可塑性樹脂に表面処理を行い表面処理層を形成し、前記表面処理層上に電離放射線硬化性組成物および熱硬化性シリコーン組成物を積層して積層物を得て、この積層物に表面光沢度が60°反射で60以上の賦型処理を行い、ついで前記賦型処理した積層物に電離放射線硬化処理を行うことを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の工程剥離紙の製造方法。
【請求項13】
表面光沢度が75°反射で90以上であるキャストコート紙のキャストコート層に電離放射線硬化性組成物および熱硬化性シリコーン組成物を積層し、ついで前記積層物に電離放射線硬化処理を行うことを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の工程剥離紙の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−228413(P2010−228413A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81067(P2009−81067)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】