説明

左旋性アムロジピン複合薬組成物

【課題】
左旋性アムロジピンが単独投薬の降圧過程においてナトリウム水の滞留を引き起こして浮腫を招く副作用と、クロルタリドンが単独投薬の時に低カリウム血症、高血糖症及び高尿酸症を引き起こしやすい副作用を改善できる左旋性アムロジピン複合薬組成物を提供する。
【解決手段】
本発明は、左旋性アムロジピン(Levamlodipine)または薬学上適用可能な塩基、及びクロルタリドンを含む左旋性アムロジピン複合薬組成物を開示する。本発明は高血圧の治療用に左旋性アムロジピンとクロルタリドンを併用投薬し、左旋性アムロジピンとクロルタリドンの間に良好な相乗降圧効果があり、かつ左旋性アムロジピンを単独投薬するときに引き起こすナトリウム水の滞留による浮腫の副作用を改善する。さらに、左旋性アムロジピンは体内のインスリン感度を増強でき、クロルタリドンの血糖値上昇を引き起こす副作用を抑えることができる。さらに、左旋性アムロジピンとクロルタリドンの薬物組成は、左旋性アムロジピンの降圧効果の出現が遅いという特徴を克服する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は製薬分野に属し、特に左旋性アムロジピン複合薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
高血圧は、体循環動脈の収縮期血圧(SBP)および(または)拡張期血圧(DBP)の上昇を特徴とする臨床的症候群であり、現在最も一般的な心血管疾患の一つである。最新の統計によると、現在中国の高血圧の発病率は11.68%に上昇し、特に高血圧に誘発された心臓、脳、腎臓などの標的臓器の障害は患者の寿命と生活の質に深刻な影響を与えている。
【0003】
アムロジピンは第三世代のジヒドロピリジン(Dihydropiridine )系カルシウムチャネル拮抗剤であり、長時間作用型ジヒドロピリジン系降圧薬品であり、化学名は3 - エチル-5 - メチル - 2 - (2 - エトキシメチルアンモニア)-4 - (2 - クロロフェニル)-1,4 - ジヒドロ - 6 - メチル-3,5 - ピリジンヒドロキシエステルである。当該化合物は左旋性と右旋の2種類の異性体があり、左旋体のカルシウム拮抗活性は右旋体の1000倍であり、ラセミ体の2倍であり、同時に副作用を著しく減少する。左旋性アムロジピンは心不全の高血圧を治療でき、心室肥大を逆転でき、心臓の拡張期弛緩機能を改善でき、腎機能を保護し、軽微の利尿効用を持ち、冠状動脈性心臓病、心筋梗塞と脳卒中を予防でき、さらに血圧昼夜リズムの異常を部分的に逆転でき、軽微な抗血小板、抗心筋虚血、抗不整脈の効用を持ち、インスリン感度の増加と一定の抗アテローム性動脈硬化症などの効用を有する。但し、アムロジピンは降圧過程において、効果の出現が比較的に遅く、さらに使用量が比較的に高い場合はナトリウム水の滞留を引き起こしやすく、四肢の浮腫を招くなどの副作用を有するため、相当の割合の患者はこのために投薬を停止せざるをえず、臨床上の応用には一定の制限がある。
【0004】
クロルタリドンはよく使われるサイアザイド系利尿薬であり、化学名は5 - (2,3 - ジヒドロ-1,4 - ヒドロキシ - 3 - アザ-1 - オキソ-1H-インデン異なる - イル)-2 - クロロベンゼンスルホニルである。その降圧メカニズムは利尿によってナトリウムを排泄し、血液容量を減少して心臓の血液出力量を低減するだけでなく、主に血管平滑筋のナトリウムイオン含有量を減らすことによって、細動脈平滑筋が加圧する物質の応答を減少させ、従って血管を拡張させて血圧を降下させる。クロルタリドンは、降圧効果の出現が比較的に速いという利点を有するが、長期間にわたって単独で使用すると、水と電解質の不均衡を引き起こして低カリウム血症につながり、インスリンの放出を阻害して高血糖症につながり、尿酸の腎尿細管排泄を妨害して高尿酸症を引き起こす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、現有技術において、左旋性アムロジピンが単独投薬の降圧過程においてナトリウム水の滞留を引き起こして浮腫を招く副作用と、クロルタリドンが単独投薬の時に低カリウム血症、高血糖症及び高尿酸症を引き起こしやすい副作用に照準を合わせ、左旋性アムロジピン複合薬組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の左旋性アムロジピン複合薬組成物は、左旋性アムロジピンまたはその薬学上適用可能な塩基、及びクロルタリドンを含む。
【0007】
本発明は左旋性アムロジピンとクロルタリドンを併用し、治療過程における左旋性アムロジピンとクロルタリドンの投薬量を減少し、同じまたはより良い血圧降下の効果を達成すると同時に、さらに左旋性アムロジピンとクロルタリドンの低量投薬によって、左旋性アムロジピンが引き起こすナトリウム水の滞留による浮腫と、クロルタリドンが引き起こす低カリウム血症、高血糖症及び高尿酸症の副作用を低減する。さらに、左旋性アムロジピンは体内のインスリン感度を増強でき、クロルタリドンと併用投薬する時に、クロルタリドンが引き起こす高血糖症を抑えることができる。そのほか、クロルタリドンの利尿性能はさらに左旋性アムロジピンが引き起こすナトリウム水の滞留による浮腫の副作用を低減することができる。
【0008】
本発明において、前記左旋性アムロジピンと前記クロルタリドンの重量比が1:1〜10であり、1:5〜7.5がより好ましい。
【0009】
前記薬学上適用可能な塩基は、酢酸塩基、ベンゼンスルホン酸塩基、安息香酸塩基、クエン酸塩基、フマル酸塩基、グルコン酸塩基、塩酸塩基、乳酸塩基、マレイン酸塩基、リンゴ酸塩基、メシル酸塩基、硝酸塩基、リン酸塩基、コハク酸塩基、リン酸塩基及び酒石酸塩基からなる塩基群の中から選んだ一つまたは複数の塩基である。
【0010】
本発明の左旋性アムロジピン複合薬組成物は、製薬学上適用可能な補助材料をさらに含む。
【0011】
本発明の左旋性アムロジピン複合薬組成物において、左旋性アムロジピンの望ましい含有量が0.8〜4.0重量%であり、より望ましい含有量が2.0〜4.0重量%である。クロルタリドンの望ましい含有量が4.0〜40重量%であり、より望ましい含有量が10〜20重量%である。
【0012】
前記製薬学上適用可能な補助材料は、微結晶セルロース、前グラチン化でんぶん、乳糖、ヒドロキシメチルスターチナトリウム及びステアリン酸マグネシウムからなる物質群の中から選んだ一つまたは複数の物質である。
【0013】
本発明の左旋性アムロジピン複合薬組成物は、さらに製薬学上適用可能なシンナー、粘着剤、崩壊剤、潤滑剤、着色剤および/または調味剤を含むことができる。
【0014】
本発明の左旋性アムロジピン複合薬組成物は、例えば錠剤またはカプセル剤のような経口剤形に製造することができ、錠剤は糖衣、薄膜衣にコーディングしてもよいし、コーディングしなくてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の肯定的で進歩的な効果は以下の通りである:本発明は左旋性アムロジピンとクロルタリドンを併用投薬し、左旋性アムロジピンとクロルタリドンの間に良好な相乗降圧効果がある。同じまたはより良い血圧降下の効果を達成すると同時に、左旋性アムロジピンとクロルタリドンの投薬量を減少できる。それだけでなく、さらに少量の左旋性アムロジピンよって、左旋性アムロジピンが引き起こすナトリウム水の滞留による浮腫を低減でき、しかもクロルタリドンの利尿性能はさらに左旋性アムロジピンが引き起こすナトリウム水の滞留による浮腫の副作用を低減することができる。その他に、少量のクロルタリドンは、クロルタリドンが引き起こす低カリウム血症、高血糖症及び高尿酸症などの副作用を低減する。さらに、左旋性アムロジピンは体内のインスリン感度を増強でき、クロルタリドンと併用投薬の時に、クロルタリドンが引き起こす高血糖症を抑えることができる。クロルタリドンは降圧効果の出現が比較的に速いため、高リスクの高血圧患者に対して左旋性アムロジピンとクロルタリドンを併用投薬することは、アムロジピンの降圧効果の出現が遅いという特徴を克服できる。さらに、左旋性アムロジピンとクロルタリドンを併用投薬することは収縮期血圧の低下に著しく効果があるため、特に高齢患者の単純な収縮期高血圧の使用に適している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
降圧効果実施例1
1.1 実験材料 左旋性ベシル酸アムロジピン(市販中、施慧??)、クロルタリドン(常州市新力医薬化工有限公司より購入)、他の試薬はすべてSigma社から購入した。自然発症性高血圧(血圧が200 mmHgより高い)の雄Wistarラット(復旦大学上海医学院実験動物部より購入)、体重120〜150g。
0.5%のカルボキシメチルセルロース(CMC)を使って左旋性ベシル酸アムロジピンとクロルタリドンとの懸濁液を製造し、強制経口投与濃度の10倍に従って貯蔵溶液を作り、4℃の冷蔵庫で光を避けて保存して使用に備え、使用する直前に0.5%CMCで希釈する。
【0017】
1.2 実験方法
強制経口投与の臨床方法にしたがって各組8匹のラットに強制経口投薬し、投薬用量は1mL/kgであり、比較組に等体積の0.5%のCMCを投与した。
血圧の測定方法:MedLab?- MS60X型ラット尾動脈非侵襲血圧測定システムを使用してラットの血圧を測定した。ラットの尾の根元部分を加熱ランプ(100W)の下で5〜10分間置き、局部血管が十分拡張するのを待ってから、尾を加圧尾ソケットに通して、尾固定器の固定ノブを適度に締め、ラットの尾部の腹側の中央を尾動脈非侵襲血圧測定分析システムの脈拍センサーに密着させ、同時にシステムの脈拍波形を観測し、安定した脈拍が出現したときに血圧の測定を開始する。動物が安静したあとに尾ソケットに空気を入れて加圧し、脈拍波形が徐々に減少してなくなることを観測でき、そのあと脈拍が完全に回復するまでに空気を抜き、"現在のデータ分析"をクリックして、測定結果を得る。測定は三回繰り返し、平均値を取る
【0018】
血圧の測定時間:各組の動物はすべて午前中に基礎血圧を測定し、基礎血圧を測定してから30分あとに試薬を強制経口投薬し、投薬2時間後、6時間後、12時間後及び24時間後における薬物の血圧に対する影響をそれぞれ観察する。
【0019】
実験設計:既知の臨床経験によって、左旋性ベシル酸アムロジピンの効果発生用量は3.465 mg / kg(左旋性アムロジピン2.5mg/kgを含む)であり、クロルタリドンの効果発生用量は12.5mg/kgである。最適な比率を決定するために、直交計画法の方法を採用する。左旋性ベシル酸アムロジピンの用量はそれぞれ1.386mg/kg(左旋性アムロジピン1.0mg/kgを含む)、3.465mg/kg(左旋性アムロジピン2.5mg/kgを含む)、10.395mg/kg(左旋性アムロジピン7.5mg/kgを含む)に設定し、クロルタリドンの用量はそれぞれ5.0mg/kg、10.0mg/kg 、25.0mg/kgに設定した。設計表は表1の通りである。

【0020】
前記9種類の配分比率の複合製剤をそれぞれ9組のラットに強制経口投薬し、血圧を測定した。実験結果は表2の通りである。

表2から、投薬6時間後に、各組の血圧降下の幅はすべて20 mmHgを超え、各薬物の配分比率がともに有効であることを示した。投薬24時間後に、L1C5の降下幅は20mmHg未満であり、この組合せの薬物の効果は24時間維持できないことを示した。さらに、L7.5C5、L7.5C10、L7.5C25、L2.5C25などの組は血圧の降下幅が60mmHgを超えており、降下幅が大きすぎるため、一般患者に適しない。故に、より望ましい配分比率は左旋性アムロジピンが2.5〜5.0mgであり、クロルタリドンが12.5〜25.0 mgである。
【0021】
臨床応用実施例1
先天性高血圧患者(収縮期血圧≧160 mmHg)を選び、各組を30人の3つの組に分け、左旋性アムロジピン組に5.0mg/dの左旋性アムロジピンを投薬し、クロルタリドン組に25.0mg/ dのクロルタリドンを投薬し、併用投薬組に2.5mg/ dの左旋性アムロジピンと12.5mg/ dのクロルタリドンを投薬する。8週間治療し、収縮期血圧の降下幅、浮腫の発生率、低カリウム血症の発生率などを観察した。結果は表3の通りである。
【0022】
表3から分かるように、併用投薬組の収縮期血圧の降下幅が最も大きく、その薬剤用量は左旋性アムロジピン組の半分とクロルタリドン組の半分であり、対してその収縮期血圧の降下幅はアムロジピン組とクロルタリドン組と比べると顕著に高かった(P<0.05)。これは、併用投薬は相乗効果を有し、降圧効果がより良いことを示している。さらに、併用投薬組の浮腫の発生率、低カリウム血症の発生率はそれぞれアムロジピン組とクロルタリドン組より顕著に低く(P<0.05)、併用投薬が2種類の薬物間の不良反応発生率を低減することを示した。さらに実験過程において、併用投薬組の効果出現時間がアムロジピン組より顕著に短く、クロルタリドン組より少し長いことを発見した。
【0023】
製剤実施例1〜6
表4は、1000錠の左旋性アムロジピンとクロルタリドンの複合錠剤を製造した時の配分比率表である。

製造工程:左旋性アムロジピン、クロルタリドン、微結晶セルロース、前グラチン化でんぶん、乳糖、ヒドロキシメチルスターチナトリウムを乳鉢に入れて、均一に粉砕混合し、20メッシュふるいを通して、適切な量の95%エタノールを加えて軟材に製造し、さらに20メッシュふるいを通して粒子にして、40℃で通風乾燥し、乾燥した粒子を16メッシュのふるいで整え、ステアリン酸マグネシウムを加え、均一に混合したあとプレスして錠剤を得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左旋性アムロジピン(Levamlodipine)または薬学上適用可能な塩基、及びクロルタリドンを含むことを特徴とする左旋性アムロジピン複合薬組成物。
【請求項2】
前記左旋性アムロジピンと前記クロルタリドンの重量比が1:1〜10であることを特徴とする請求項1に記載の左旋性アムロジピン複合薬組成物。
【請求項3】
前記左旋性アムロジピンと前記クロルタリドンの重量比が1:5〜7.5であることを特徴とする請求項2に記載の左旋性アムロジピン複合薬組成物。
【請求項4】
前記薬学上適用可能な塩基は、酢酸塩基、ベンゼンスルホン酸塩基、安息香酸塩基、クエン酸塩基、フマル酸塩基、グルコン酸塩基、塩酸塩基、乳酸塩基、マレイン酸塩基、リンゴ酸塩基、メシル酸塩基、硝酸塩基、リン酸塩基、コハク酸塩基、リン酸塩基及び酒石酸塩基からなる塩基群の中から選んだ一つまたは複数の塩基であることを特徴とする請求項1に記載の左旋性アムロジピン複合薬組成物。
【請求項5】
製薬学上適用可能な補助材料をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の左旋性アムロジピン複合薬組成物。
【請求項6】
左旋性アムロジピンの含有量が0.8〜4.0重量%であり、クロルタリドンの含有量が4.0〜40重量%であることを特徴とする請求項5に記載の左旋性アムロジピン複合薬組成物。
【請求項7】
左旋性アムロジピンの含有量が2.0〜4.0重量%であり、クロルタリドンの含有量が10〜20重量%であることを特徴とする請求項6に記載の左旋性アムロジピン複合薬組成物。
【請求項8】
前記製薬学上適用可能な補助材料は、微結晶セルロース、前グラチン化でんぶん、乳糖、ヒドロキシメチルスターチナトリウム及びステアリン酸マグネシウムからなる物質群の中から選んだ一つまたは複数の物質であることを特徴とする請求項5に記載の左旋性アムロジピン複合薬組成物。
【請求項9】
前記薬物組成物は、さらに製薬学上適用可能なシンナー、粘着剤、崩壊剤、潤滑剤、着色剤および/または調味剤を含むことを特徴とする請求項5に記載の左旋性アムロジピン複合薬組成物。
【請求項10】
前記薬物組成物は、錠剤またはカプセル剤であることを特徴とする請求項5に記載の左旋性アムロジピン複合薬組成物。

【公表番号】特表2012−522024(P2012−522024A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502443(P2012−502443)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際出願番号】PCT/CN2010/074004
【国際公開番号】WO2011/106951
【国際公開日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(511049185)シーフイダー ファーマシューティカルズ グループ(ジリン)リミテッド (3)
【Fターム(参考)】