説明

巨大磁気抵抗素子およびその作製方法

【課題】 より大きな磁気抵抗比を得ることができる巨大磁気抵抗素子およびその作製方法を提供する。
【解決手段】 第1の電極および第2の電極の間に、1nm以上、1μm以下の絶縁膜を形成する段階と、前記第1の電極および前記第2の電極の間に所定の電圧を印加する段階とを備え、前記第1の電極および前記第2の電極の少なくとも一方が、磁性体材料で形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巨大磁気抵抗素子およびその作製方法に関し、特に、高密度磁気記録、電流センサ、磁気センサ、バイオセンサに利用される巨大磁気抵抗素子およびその作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気抵抗素子として、トンネル磁気抵抗素子が知られている。トンネル磁気抵抗素子は、2つの強磁性金属層の間に、膜厚1〜2nmの絶縁膜をはさみこんだ構造をしている。この膜面に対して垂直に電圧をかけるとトンネル効果により絶縁膜に電流が流れる(例えば、特許文献1)。
【0003】
昨今では、トンネル磁気抵抗素子の絶縁膜に酸化マグネシウムを利用することにより、磁気抵抗比の増大が報告されている。例えば、2009年に、東北大学安藤康夫教授グループにより、1056%の磁気抵抗比を有するトンネル磁気抵抗素子が報告されている(例えば、非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−123463号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Lixian Jiang, Hiroshi Naganuma, Mikihiko Oogane, and Yasuo Ando, Large Tunnel Magnetoresistance of 1056% at Room Temperature in MgO Based Double Barrier Magnetic Tunnel Junction, Applied Physics express vol2, 社団法人 応用物理学会, 2009年7月17日, 83002−1〜3頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、トンネル現象の基礎的な原理を勘案すると、これ以上の磁気抵抗比を実現することは困難である。すなわち、特許文献1および非特許文献1に記載されているトンネル磁気抵抗素子の原理を利用して、より大きい磁気抵抗比を実現することは困難である。
【0007】
本発明は、斯かる事情に鑑み、より大きな磁気抵抗比を得ることができる巨大磁気抵抗素子およびその作製方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る巨大磁気抵抗素子の作製方法は、第1の電極および第2の電極の間に、1nm以上、1μm以下の絶縁膜を形成する段階と、前記第1の電極および前記第2の電極の間に所定の電圧を印加する段階とを備え、前記第1の電極および前記第2の電極の少なくとも一方が、磁性体材料で形成されている。
【0009】
斯かる構成によれば、少なくとも一方が磁性体材料で形成されている第1の電極および第2の電極が、絶縁膜を挟んで形成される。そして、所定の電圧が第1の電極および第2の電極に印加されることで、絶縁膜が絶縁破壊された状態の巨大磁気抵抗素子を得ることができる。ここで、磁性体材料の原子が、絶縁膜の絶縁破壊により形成されるナノ導通経路に拡散されると推測される。これにより、磁性体材料の原子およびナノ導通経路に拡散するそれぞれの原子間の関係から、磁気抵抗値が変化すると推測される。結果として、より大きな磁気抵抗比を得ることができる巨大磁気抵抗素子を作製できる。
【0010】
また、本発明に係る巨大磁気抵抗素子の作製方法において、前記第1の電極および前記第2の電極は、一方が磁性体材料で形成され、他方が半導体材料で形成されていてもよい。
【0011】
本発明に係る巨大磁気抵抗素子は、第1の電極と、第2の電極と、前記第1の電極および前記第2の電極の間に挟まれる絶縁膜とを備え、前記第1の電極および前記第2の電極の少なくとも一方が磁性体材料で形成され、前記絶縁膜の膜厚が1nm以上、1μm以下であり、素子抵抗が1Ω以上、1GΩ以下である。
【0012】
斯かる構成によれば、少なくとも一方が磁性体材料で形成されている第1の電極および第2の電極が、絶縁膜を挟んで形成されている。ここで、絶縁膜に絶縁破壊が起きている場合、磁性体材料の原子がナノ導通経路に拡散されていると推測される。これにより、磁性体材料の原子およびナノ導通経路に拡散されているそれぞれの原子間の関係から、磁気抵抗値が変化すると推測される。結果として、1Ω以上、1GΩ以下の素子抵抗を有する巨大磁気抵抗素子を得ることができる。すなわち、より大きな磁気抵抗比を得ることができる巨大磁気抵抗素子を具現化できる。
【0013】
また、本発明に係る巨大磁気抵抗素子において、前記第1の電極および前記第2の電極は、一方が磁性体材料で形成され、他方が半導体材料で形成されてもよい。
【発明の効果】
【0014】
以上の如く、本発明に係る巨大磁気抵抗素子およびその作製方法によれば、より大きな磁気抵抗比を得ることができるというすぐれた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る巨大磁気抵抗素子の側面図を示す。
【図2】同実施形態に係る印加される磁場を変化させることにより得られる巨大磁気抵抗素子の抵抗値の変化を示すグラフである。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る巨大磁気抵抗素子の側面図を示す。
【図4】本発明の第3の実施形態に係る巨大磁気抵抗素子の側面図を示す。
【図5】本発明の第4の実施形態に係る巨大磁気抵抗素子の側面図を示す。
【図6】本発明の第5の実施形態に係る巨大磁気抵抗素子の側面図を示す。
【図7】本発明の第6の実施形態に係る巨大磁気抵抗素子の概略図を示し、図7(a)は、本実施形態に係る巨大磁気抵抗素子の側面図を示し、図7(b)は、本実施形態に係る巨大磁気抵抗素子の平面図を示す。
【図8】本発明の第7の実施形態に係る巨大磁気抵抗素子の概略図を示し、図8(a)は、本実施形態に係る巨大磁気抵抗素子の側面図を示し、図8(b)は、本実施形態に係る巨大磁気抵抗素子の平面図を示す。
【図9】本発明の第8の実施形態に係る巨大磁気抵抗素子の概略図を示し、図9(a)は、本実施形態に係る巨大磁気抵抗素子の側面図を示し、図9(b)は、本実施形態に係る巨大磁気抵抗素子の平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る巨大磁気抵抗素子およびその作製方法における第1の実施形態について、図1および図2を参酌して説明する。
【0017】
(構成)
図1は、本実施形態に係る巨大磁気抵抗素子100の構成を示す側面図である。巨大磁気抵抗素子100は、板状に形成される第1の電極110と、第1の電極110に隣接して設けられる絶縁膜120と、絶縁膜120に隣接して設けられる第2の電極130とを備える。より詳しくは、巨大磁気抵抗素子100は、第1の電極110、絶縁膜120、および第2の電極130の積層構造となっている。
【0018】
第1の電極110は、半導体材料で形成されている。第1の電極110は、たとえば、p型半導体またはn型半導体で形成されている。より詳しくは、第1の電極110は、p型Si半導体またはn型Si半導体で形成されている。なお、本実施形態において、第1の電極110を、n型Si半導体として説明する。
【0019】
第1の電極110は、図1に示す絶縁膜120および第2の電極130の積層方向140において、所定の厚さを有する。また、第1の電極110は、積層方向140の一方の面で絶縁膜120と隣接する。第1の電極110は、絶縁膜120と隣接する面で平面となるように形成されている。
【0020】
絶縁膜120は、たとえば、二酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタン、酸化ニッケル、酸化コバルト、または酸化ハフニウムであるのが好ましい。本実施形態においては、絶縁膜120を二酸化ケイ素として説明する。
【0021】
絶縁膜120は、巨大磁気抵抗素子100の積層構造において、第1の電極110および第2の電極130の間に挟まれている。絶縁膜120は、図1に示す積層方向140において、2nm〜1μmの厚さを有する。また、絶縁膜120は、積層方向140における一方の面で第1の電極110と隣接する。そして、絶縁膜120は、積層方向140における他方の面で第2の電極130と隣接する。絶縁膜120は、第1の電極110と隣接する面および第2の電極130と隣接する面のそれぞれで、平面となるように形成されている。
【0022】
第2の電極130は、磁性体材料、特に強磁性体材料で形成されている。第2の電極130は、たとえば、ニッケル、コバルト、鉄、またはこれらのうち少なくとも1種類を含む合金で形成されているのが好ましい。本実施形態では、第2の電極130をニッケルとして説明する。
【0023】
第2の電極130は、図1に示す積層方向140において、所定の厚さを有する。また、第2の電極130は、積層方向140における一方の面で絶縁膜120と隣接する。第2の電極130は、絶縁膜120と隣接する面で平面となるように形成されている。
【0024】
(作用)
本実施形態に係る巨大磁気抵抗素子100の構成については以上の通りであり、次に本実施形態に係る巨大磁気抵抗素子100の作用について説明する。
【0025】
まず、巨大磁気抵抗素子100は、直流電源160と接続される。より詳しくは、第1の電極110は、直流電源160の正極と接続される。そして、第2の電極130は、直流電源160の負極と接続される。
【0026】
巨大磁気抵抗素子100が直流電源160と接続された後、直流電源160は、第1の電極110および第2の電極130の間に所定の電圧を印加する。所定の電圧として、直流電源160は、絶縁膜120の厚さに応じて、1MV〜1000MV/cmの電圧を印加するのが好ましい。所定の電圧の印加により、巨大磁気抵抗素子100は、絶縁破壊されている状態になる。すなわち、直流電源160が所定の電圧を印加することで、絶縁膜120は、ハードブレイクダウンに起因するナノ導通経路を有することになる。ここで、ナノ導通経路について、ハードブレイクダウンに起因して発生する二酸化ケイ素の格子欠陥により形成される、絶縁膜120の電子透過を可能にするナノサイズの径を有する導通経路と定義する。
【0027】
その後、巨大磁気抵抗素子100は、所定の方向から磁場印加を受ける環境に置かれる。より詳しくは、巨大磁気抵抗素子100は、積層方向140に直交する方向190、すなわち、図1に示す磁場方向150から可変の磁場印加を受ける環境に置かれる。そして、磁場を変化させると、巨大磁気抵抗素子100は、図2に示すグラフのような抵抗値を示す。なお、巨大磁気抵抗素子100の抵抗値の計測方法は、定電流電源162から巨大磁気抵抗素子100へ所定の電流を流し、電圧計164において電圧値の変化を計測するものである。
【0028】
図2は、印加される磁場を変化させることにより得られる巨大磁気抵抗素子100の抵抗値の変化を示すグラフである。ここで、簡便のために、磁場の磁場方向150への印加について、一方から他方への印加を負方向への印加とし、逆方向への印加を正方向への印加とする。
【0029】
印加される磁場が負方向から正方向へ順次変化する場合、巨大磁気抵抗素子100は、−1.6kOe(−1.6×79.577kA/m)の磁場になるまで低い抵抗値を示す。ここで、巨大磁気抵抗素子100は、素子抵抗として、たとえば、1Ω以上、25kΩ以下の抵抗値を示す。
【0030】
印加される磁場が−1.6kOe(−1.6×79.577kA/m)からさらに正方向に変化すると、巨大磁気抵抗素子100は、急激に高い抵抗値を示す。ここで、巨大磁気抵抗素子100は、素子抵抗として、たとえば、820kΩ以上、1GΩ以下の抵抗値を示す。
【0031】
そして、印加される磁場が3.1kOe(3.1×79.577kA/m)からさらに正方向に変化すると、巨大磁気抵抗素子100は、急激に低い抵抗値を示す。ここで、巨大磁気抵抗素子100は、素子抵抗として、たとえば、1Ω以上、25kΩ以下の抵抗値を示す。
【0032】
印加される磁場が正方向から負方向へ順次変化する場合、巨大磁気抵抗素子100は、1.6kOe(1.6×79.577kA/m)の磁場になるまで低い抵抗値を示す。ここで、巨大磁気抵抗素子100は、素子抵抗として、たとえば、1Ω以上、25kΩ以下の抵抗値を示す。
【0033】
印加される磁場が1.6kOe(1.6×79.577kA/m)からさらに負方向に変化すると、巨大磁気抵抗素子100は、急激に高い抵抗値を示す。ここで、巨大磁気抵抗素子100は、素子抵抗として、たとえば、820kΩ以上、1GΩ以下の抵抗値を示す。
【0034】
そして、印加される磁場が−3.1kOe(−3.1×79.577kA/m)からさらに負方向に変化すると、巨大磁気抵抗素子100は、急激に低い抵抗値を示す。ここで、巨大磁気抵抗素子100は、素子抵抗として、たとえば、1Ω以上、25kΩ以下の抵抗値を示す。
【0035】
ここで、発明者は、巨大磁気抵抗素子100について、図2のような磁気抵抗値の計測される理由を推測した。
【0036】
直流電源160は、巨大磁気抵抗素子100に、絶縁膜120の厚さに応じて1M〜1000MV/cmの電圧を印加することで、絶縁膜120の絶縁破壊を引き起こす。絶縁膜120は、絶縁破壊に起因するハードブレイクダウンにより、ナノ導通経路を有する構造となる。ここで、絶縁膜120に絶縁破壊が引き起こされる場合に、第2の電極130は、直流電源160の負極と接続されていることで、直流電源160から電子の供給を受ける。
【0037】
第2の電極130は、直流電源160から1M〜1000MV/cmという高い電圧を受けることで、高い電流密度を有する状態となる。第2の電極130は、ニッケルで構成されており、高い電流密度での電子流に起因するニッケル原子の移動により、ニッケル原子間にボイドを有する構造に変化すると推測される。すなわち、第2の電極130は、高い電流密度によるエレクトロマイグレーションの影響で、ニッケル原子間にボイドを有する構造に変化すると推測される。
【0038】
ここで、絶縁膜120のナノ導通経路は、ハードブレイクダウンによる格子欠陥を有する構造となっている。第2の電極130がニッケル原子間にボイドを有する構造に変化する場合、移動するニッケル原子は、ナノ導通経路に存在する格子欠陥に拡散すると推測される。すなわち、ナノ導通経路は、格子欠陥を有する二酸化ケイ素と格子欠陥に入り込むニッケル原子とを有する構造となっていると推測される。
【0039】
このようなナノ導通経路を有する巨大磁気抵抗素子100は、磁場方向150に変化する磁場の中に置かれる。印加される磁場の変化による巨大磁気抵抗素子100の磁気抵抗値の変化は、ナノ導通経路に拡散されているニッケル原子の影響により、次の3つの要因で発生すると推測される。
【0040】
1つ目の要因として、第2の電極130と、ナノ導通経路に拡散されているニッケル原子のそれぞれとの間における磁壁散乱が考えられる。この場合、第2の電極130のニッケル原子とナノ導通経路に拡散されているニッケル原子、またはナノ導通経路に拡散されているニッケル原子のそれぞれは、反強磁性体交換結合の状態にあると推測される。
【0041】
このような状態において、印加される磁場が磁場方向150の正負いずれの方向においても強い場合、第2の電極130のニッケル原子とナノ導通経路に拡散されているニッケル原子とは、平行に磁化されると推測される。これにより、磁場が強い場合に、第2の電極130から第1の電極110へと向かう電子は、磁壁で散乱されないと推測される。したがって、巨大磁気抵抗素子100は、低い磁気抵抗値を示すと推測される。
【0042】
逆に、印加される磁場が磁場方向150の正負いずれの方向においても弱い場合、第2の電極130のニッケル原子とナノ導通経路に拡散されているニッケル原子とは、反平行に磁化されると推測される。または、ナノ導通経路に拡散されているニッケル原子のそれぞれは、反平行に磁化されると推測される。これにより、磁場が弱い場合に、第2の電極130から第1の電極110へと向かう電子は、ナノ導通経路に拡散されているニッケル原子間、または第2の電極130のニッケル原子とナノ導通経路に拡散されているニッケル原子間で磁壁散乱されないと推測される。したがって、巨大磁気抵抗素子100は、高い磁気抵抗値を示すと推測される。
【0043】
2つ目の要因として、第2の電極130のニッケル原子およびナノ導通経路に拡散されているニッケル原子のそれぞれの磁歪が考えられる。絶縁膜120が絶縁破壊された直後において、ナノ導通経路は、巨大磁気抵抗素子100に印加された電圧に起因して、断線している状態にあると推測される。
【0044】
印加される磁場が磁場方向150の正負いずれの方向においても強い場合、第2の電極130のニッケル原子とナノ導通経路に拡散されているニッケル原子とは、磁歪を原因とする形状変化を起こすと推測される。第2の電極130のニッケル原子とナノ導通経路に拡散されているニッケル原子とは、形状変化を原因として導通すると推測される。したがって、巨大磁気抵抗素子100は、低い磁気抵抗値を示すと推測される。
【0045】
逆に、印加される磁場が磁場方向150の正負いずれの方向においても弱い場合、第2の電極130のニッケル原子とナノ導通経路に拡散されているニッケル原子とは、磁歪を原因とする形状変化を起こしていないと推測される。第2の電極130のニッケル原子とナノ導通経路に拡散されているニッケル原子とは、形状変化をしていないことによりナノギャップを形成して、断線すると推測される。したがって、巨大磁気抵抗素子100は、高い磁気抵抗値を示すと推測される。
【0046】
3つ目の要因として、第2の電極130のニッケル原子およびナノ導通経路に拡散されているニッケル原子のそれぞれの静磁気力が考えられる。絶縁膜120が絶縁破壊された直後において、ナノ導通経路は、巨大磁気抵抗素子100に印加された電圧に起因して、断線している状態にあると推測される。
【0047】
印加される磁場が磁場方向150の正負いずれの方向においても強い場合、第2の電極130のニッケル原子とナノ導通経路に拡散されているニッケル原子とは、静磁気力を原因とする現在の位置からの移動を起こすと推測される。第2の電極130のニッケル原子とナノ導通経路に拡散されているニッケル原子とは、現在の位置からの移動を原因として導通すると推測される。したがって、巨大磁気抵抗素子100は、低い磁気抵抗値を示すと推測される。
【0048】
逆に、印加される磁場が磁場方向150の正負いずれの方向においても弱い場合、第2の電極130のニッケル原子とナノ導通経路に拡散されているニッケル原子とは、静磁気力を原因とする現在の位置からの移動を起こしていないと推測される。第2の電極130のニッケル原子とナノ導通経路に拡散されているニッケル原子とは、位置の移動をしていないことにより、断線すると推測される。したがって、巨大磁気抵抗素子100は、高い磁気抵抗値を示すと推測される。
【0049】
以上より、本実施形態に係る巨大磁気抵抗素子100は、磁場方向を変化させることで、より大きな磁気抵抗比を具現化することができる。具体的には、巨大磁気抵抗素子100は、約3400%以上の磁気抵抗比を具現化することができる。
【0050】
(作製方法)
次に本実施形態に係る巨大磁気抵抗素子100の作製方法を説明する。
【0051】
第1の電極110を形成することを目的として、半導体材料であるSi(100)が用意される。Si(100)は、リン、ヒ素等のドープにより、n型Si半導体となる。n型Si半導体が形成されることにより、第1の電極110が形成される。そして、第1の電極110は、その積層方向140に、所定の厚さを有する。ここで、第1の電極110は、絶縁膜120を形成することを目的とする基板として利用される。
【0052】
絶縁膜120は、二酸化ケイ素であり、第1の電極110に隣接して形成される。絶縁膜120は、形成方法として、酸素を利用する反応性スパッタ、ケイ素の熱酸化、またはレーザーアブレーションを利用して形成される。そして、絶縁膜120は、その積層方向140に、2nm〜1μmの厚さを有するまで形成される。
【0053】
第2の電極130は、ニッケルであり、絶縁膜120に隣接して形成される。また、第2の電極130は、絶縁膜120を介して第1の電極110と対向する面を有するように形成される。第2の電極130は、形成方法として、たとえば、蒸着法、スパッタ、化学気相成長法(CVD)を利用して形成される。そして、第2の電極130は、その積層方向140に、所定の厚さを有するまで形成される。
【0054】
そして、直流電源160は、第1の電極110と第2の電極130とに接続される。直流電源160は、その正極と第1の電極110とで接続され、その負極と第2の電極130とで接続される。直流電源160が第1の電極110と第2の電極130とに接続された後、直流電源160は、絶縁膜120の厚さに応じて、1M〜1000MV/cmの電圧を第1の電極110と第2の電極130との間に印加する。このような方法で、本実施例に係る巨大磁気抵抗素子100を作製することができる。
【0055】
以上より、本実施形態係る巨大磁気抵抗素子100の作製方法は、磁場方向を変化させることで、より大きな磁気抵抗比を具現化する巨大磁気抵抗素子100を作製することができる。具体的には、巨大磁気抵抗素子100の作製方法は、約3400%以上の磁気抵抗比を具現化する巨大磁気抵抗素子100を作製することができる。
【0056】
次に、本発明に係る巨大磁気抵抗素子およびその作製方法における第2の実施形態について、図3を参酌して実施例を説明する。
【0057】
(構成)
図3は、本実施形態に係る巨大磁気抵抗素子100の構成を示す側面図である。巨大磁気抵抗素子100は、第1の実施形態と同様に、板状に形成される第1の電極110と、第1の電極110に隣接して設けられる絶縁膜120と、絶縁膜120に隣接して設けられる第2の電極130とを備える。
【0058】
第1の電極110は、半導体材料で形成されている基板114と、金属材料で形成されている第1の金属層118とを有する。第1の電極110は、図3に示す絶縁膜120および第2の電極130の積層方向140において、基板114に第1の金属層118を積層して形成されている。
【0059】
基板114は、たとえば、p型半導体またはn型半導体で形成されている。より詳しくは、基板114は、p型Si半導体またはn型Si半導体で形成されている。なお、本実施形態において、基板114を、n型Si半導体として説明する。基板114は、積層方向140において、所定の厚さを有する。また、基板114は、積層方向140の一方の面で第1の金属層118と隣接する。基板114は、第1の金属層118と隣接する面で平面となるように形成されている。
【0060】
第1の金属層118は、たとえば、タンタルで形成されている。または、第1の金属層118は、磁性体材料であるニッケル、コバルト、鉄、またはこれらのうち少なくとも1つを含む合金で形成されている。なお、本実施形態において、第1の金属層118を、タンタルとして説明する。第1の金属層118は、積層方向140において、所定の厚さを有する。また、第1の金属層118は、積層方向140の一方の面で基板114と隣接する。そして、第1の金属層118は、積層方向140の他方の面で絶縁膜120と隣接する。第1の金属層118は、基板114と隣接する面および第1の金属層118と隣接する面のそれぞれで、平面となるように形成されている。
【0061】
ここで、第1の金属層118は、第1の実施形態のようなナノ導通経路へのニッケル原子の拡散に起因する、ニッケル原子とn型Si半導体とのショットキーバリアを防止することを目的として設けられる。また、第1の金属層118は、第2の金属層138のn型Si半導体への拡散を防止する拡散バリア層となることを目的として設けられる。
【0062】
絶縁膜120は、積層方向140の他方の面で磁性体層134と隣接する。絶縁膜120は、第1の金属層118と隣接する面および磁性体層134と隣接する面のそれぞれで、平面となるように形成されている。その他の絶縁膜120の構成は、第1の実施形態と同様であるので、ここでの説明を省略する。
【0063】
第2の電極130は、磁性体材料で形成されている磁性体層134と、金属材料で形成されている第2の金属層138を有する。第2の電極130は、積層方向140において、磁性体層134に第2の金属層138を積層して形成されている。
【0064】
磁性体層134は、たとえば、ニッケル、コバルト、鉄、またはこれらのうち少なくとも1つを含む合金で形成されている。なお、本実施形態において、磁性体層134を、ニッケルとして説明する。磁性体層134は、積層方向140において、所定の厚さを有する。また、磁性体層134は、積層方向140の一方の面で絶縁膜120と隣接する。そして、磁性体層134は、積層方向140の他方の面で第2の金属層138と隣接する。磁性体層134は、絶縁膜120と隣接する面および第2の金属層138と隣接する面のそれぞれで、平面となるように形成されている。
【0065】
第2の金属層138は、たとえば、金で形成されている。第2の金属層138は、積層方向140において、所定の厚さを有する。また、第2の金属層138は、積層方向140の一方の面で磁性体層134と隣接する。第2の金属層138は、磁性体層134と隣接する面で平面となるように形成されている。
【0066】
(作用)
本実施形態に係る巨大磁気抵抗素子100の構成については以上の通りであり、次に本実施形態に係る巨大磁気抵抗素子100の作用について説明する。
【0067】
まず、巨大磁気抵抗素子100は、直流電源160と接続される。より詳しくは、基板114は、直流電源160の正極と接続される。そして、第2の金属層138は、直流電源160の負極と接続される。
【0068】
巨大磁気抵抗素子100が直流電源160と接続された後、直流電源160は、基板114および第2の金属層138の間に所定の電圧を印加する。所定の電圧として、直流電源160は、絶縁膜120の厚さに応じて、1MV〜1000MV/cmの電圧を印加するのが好ましい。所定の電圧の印加により、巨大磁気抵抗素子100は、絶縁破壊されている状態になる。すなわち、直流電源160が所定の電圧を印加することで、絶縁膜120は、ハードブレイクダウンに起因するナノ導通経路を有することになる。ここで、ナノ導通経路について、ハードブレイクダウンに起因して発生する二酸化ケイ素の格子欠陥により形成される、絶縁膜120の電子透過を可能にするナノサイズの径を有する導通経路と定義する。
【0069】
その後、巨大磁気抵抗素子100は、所定の方向から磁場印加を受ける環境に置かれる。より詳しくは、巨大磁気抵抗素子100は、積層方向140に直交する方向190、すなわち、図3に示す磁場方向150から可変の磁場印加を受ける環境に置かれる。そして、磁場を変化させると、巨大磁気抵抗素子100は、第1の実施形態と同様の抵抗値を示す。なお、巨大磁気抵抗素子100の抵抗値の計測方法は、第1の実施形態と同様に、定電流電源162から巨大磁気抵抗素子100へ所定の電流を流し、電圧計164において電圧値の変化を計測するものである。
【0070】
ここで、発明者は、巨大磁気抵抗素子100について、第1の実施形態と同様の推測をした。その内容は、第1の実施形態において説明した内容と同一であるので、ここでは説明を省略する。
【0071】
以上より、本実施形態係る巨大磁気抵抗素子100は、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0072】
(作製方法)
次に本実施形態に係る巨大磁気抵抗素子100の作製方法を説明する。
【0073】
基板114を形成することを目的として、半導体材料であるSi(100)が用意される。Si(100)は、リン、ヒ素等のドープにより、n型Si半導体となる。n型Si半導体が形成されることにより、基板114が形成される。そして、基板114は、その積層方向140に、所定の厚さを有する。ここで、基板114は、第1の金属層118を形成することを目的として利用される。
【0074】
第1の金属層118は、タンタルであり、基板114に隣接して形成される。第1の金属層118は、形成方法として、たとえば、蒸着法、スパッタ、化学気相成長法(CVD)を利用して形成される。そして、第1の金属層118は、その積層方向140に、所定の厚さを有するまで形成される。
【0075】
絶縁膜120は、二酸化ケイ素であり、第1の金属層118に隣接して形成される。その形成方法および厚さは、第1の実施形態と同様であるので、ここでの説明を省略する。
【0076】
磁性体層134は、磁性体材料であるニッケルであり、絶縁膜120に隣接して形成される。また、磁性体層134は、絶縁膜120を介して第1の金属層118と対向する面を有するように形成される。磁性体層134は、形成方法として、たとえば、蒸着法、スパッタ、化学気相成長法(CVD)を利用して形成される。そして、磁性体層134は、その積層方向140に、所定の厚さを有するまで形成される。
【0077】
第2の金属層138は、金であり、磁性体層134に隣接して形成される。第2の金属層138は、形成方法として、たとえば、蒸着法、スパッタ、化学気相成長法(CVD)を利用して形成される。そして、第2の金属層138は、その積層方向140に、所定の厚さを有するまで形成される。
【0078】
そして、直流電源160は、基板114と第2の金属層138とに接続される。直流電源160は、その正極と基板114とで接続され、その負極と第2の金属層138とで接続される。直流電源160が基板114と第2の金属層138とに接続された後、直流電源160は、絶縁膜120の厚さに応じて、1M〜1000MV/cmの電圧を基板114と第2の金属層138との間に印加する。このような方法で、本実施例に係る巨大磁気抵抗素子100を作製することができる。
【0079】
以上より、本実施形態係る巨大磁気抵抗素子100の作製方法は、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0080】
次に、本発明に係る巨大磁気抵抗素子およびその作製方法における第3の実施形態について、図4を参酌して実施例を説明する。
【0081】
(構成)
図4は、本実施形態に係る巨大磁気抵抗素子100の構成を示す側面図である。巨大磁気抵抗素子100は、第1および第2の実施形態と同様に、板状に形成される第1の電極110と、第1の電極110に隣接して設けられる絶縁膜120と、絶縁膜120に隣接して設けられる第2の電極130とを備える。
【0082】
第1の電極110は、第2の実施形態と同様であるので、ここでの説明を省略する。
【0083】
絶縁膜120は、磁性体層134と隣接する面に1つの凹部128を有する。絶縁膜120のその他の構成は、第2の実施形態における絶縁膜120と同様であるので、ここでの説明を省略する。
【0084】
凹部128は、絶縁膜120の磁性体層134と隣接する面121から、積層方向140に対して傾斜する斜面122および斜面124と、斜面122および斜面124の交差する位置に設けられる底部126とを含む。
【0085】
斜面122および斜面124は、絶縁膜120の磁性体層134と隣接する面121から、絶縁膜120の第1の金属層118と隣接する面に向けて傾斜している。斜面122および斜面124は、共に、絶縁膜120内で交差する程度に、絶縁膜120の磁性体層134と隣接する面121から傾斜している。
【0086】
底部126は、絶縁膜120内に設けられる。底部126は、斜面122および斜面124の交差する点に位置する。底部126は、斜面122および斜面124の交差により、鋭角に形成されている。なお、底部126は、絶縁膜120内に設けられるのであれば、鈍角に形成されていてもよい。
【0087】
第2の電極130は、磁性体材料で形成されている磁性体層134と、金属材料で形成されている第2の金属層138を有する。第2の電極130は、積層方向140において、磁性体層134に第2の金属層138を積層して形成されている。
【0088】
磁性体層134は、絶縁膜120と隣接する面において、凹部128の形状に合わせて突出する1つの凸部136を含む。凸部136は、磁性体層134の絶縁膜120と隣接する面171から、積層方向140に対して傾斜する斜面172および斜面174と、斜面172および斜面174の交差する位置に設けられる先突部176とを含む。凸部136は、磁性体層134を形成する場合に、凹部128に入り込むことで形成される。磁性体層134のその他の構成は、第2の実施形態と同様であるので、ここでの説明を省略する。
【0089】
斜面172および斜面174は、磁性体層134の絶縁膜120と隣接する面171から、絶縁膜120の第1の金属層118と隣接する面に向けて傾斜している。斜面172および斜面174は、共に、絶縁膜120内で交差する程度に、磁性体層134の絶縁膜120と隣接する面171から傾斜している。斜面172は、斜面122と隣接して形成され、斜面174は、斜面124と隣接して形成される。
【0090】
先突部176は、磁性体層134から突出して設けられる。先突部176は、斜面172および斜面174の交差する点に位置する。先突部176は、斜面172および斜面174の交差により、鋭角に形成されている。なお、先突部176は、絶縁膜120内に設けられるのであれば、鈍角に形成されていてもよい。先突部176は、底部126と隣接して形成される。
【0091】
第2の金属層138の構成は、第2の実施形態の構成と同様であるので、ここでの説明を省略する。
【0092】
(作用)
本実施形態に係る巨大磁気抵抗素子100の構成については以上の通りであり、次に本実施形態に係る巨大磁気抵抗素子100の作用について説明する。
【0093】
巨大磁気抵抗素子100は、第2の実施形態と同様にして、絶縁破壊されている状態になる。絶縁破壊は、第1の金属層118と、第1の金属層118により近い底部126との間で積極的に起こると推測される。
【0094】
その後、巨大磁気抵抗素子100は、所定の方向から磁場印加を受ける環境に置かれる。より詳しくは、巨大磁気抵抗素子100は、積層方向140に直交する方向190、すなわち、図1に示す磁場方向150から可変の磁場印加を受ける環境に置かれる。そして、磁場を変化させると、巨大磁気抵抗素子100は、第1の実施形態と同様の抵抗値を示す。なお、巨大磁気抵抗素子100の抵抗値の計測方法は、第1の実施形態と同様に、定電流電源162から巨大磁気抵抗素子100へ所定の電流を流し、電圧計164において電圧値の変化を計測するものである。
【0095】
ここで、発明者は、巨大磁気抵抗素子100について、第1の実施形態と同様の推測をした。その内容は、第1の実施形態において説明した内容と同一であるので、ここでは説明を省略する。
【0096】
以上より、本実施形態係る巨大磁気抵抗素子100は、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0097】
(作製方法)
次に本実施形態に係る巨大磁気抵抗素子100の作製方法を説明する。
【0098】
基板114、第1の金属層118、および絶縁膜120の形成段階は、第2の実施形態と同様であるので、ここでの説明を省略する。
【0099】
絶縁膜120は、磁性体層134に隣接する面から、絶縁膜120の[111]面に対して異方性エッチングされる。絶縁膜120が[111]面に対して異方性エッチングされることで、凹部128は、絶縁膜120の磁性体層134と隣接する面121に形成される。凹部128は、絶縁膜120の磁性体層134と隣接する面121から、積層方向140に対して傾斜して形成される斜面122および斜面124と、斜面122および斜面124の交差する位置に形成される底部126とで形成される。斜面122および斜面124は、共に、絶縁膜120内で交差する程度に、絶縁膜120の磁性体層134と隣接する面121から傾斜して形成される。
【0100】
底部126は、斜面122および斜面122の交差する点に位置されることで、絶縁膜120内に形成される。底部126は、斜面122および斜面124の交差により、鋭角に形成される。なお、底部126は、絶縁膜120内に形成されるのであれば、鈍角に形成されていてもよい。
【0101】
磁性体層134は、絶縁膜120と隣接して形成される。これにより、磁性体層134の凸部136は、凹部128に入りこんで形成される。すなわち、斜面122に隣接する斜面172と、斜面124と隣接する斜面174と、底部126に隣接する先突部176とが形成されることで、凸部136は形成される。そして、凸部136は、磁性体層134の絶縁膜120と隣接する面171から、突出する形状で形成される。磁性体層134の形成方法および厚さについては第2の実施形態と同様であるので、ここでの説明を省略する。
【0102】
磁性体層134の形成方法、第2の金属層138の形成段階、および直流電源160による電圧の印加段階は、第2の実施形態と同様であるので、ここでの説明を省略する。
【0103】
以上より、本実施形態係る巨大磁気抵抗素子100の作製方法は、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0104】
次に、本発明に係る巨大磁気抵抗素子およびその作製方法における第4の実施形態について、図5を参酌して実施例を説明する。
【0105】
(構成)
図5は、本実施形態に係る巨大磁気抵抗素子100の構成を示す側面図である。巨大磁気抵抗素子100は、第3の実施形態に対して、複数の凹部128および複数の凸部136を有している。その他の点は、第3の実施形態と同様であるので、ここでの説明を省略する。
【0106】
(作用)
本実施形態に係る巨大磁気抵抗素子100の構成については以上の通りであり、次に本実施形態に係る巨大磁気抵抗素子100の作用について説明する。
【0107】
巨大磁気抵抗素子100は、第3の実施形態と同様に、絶縁破壊されている状態になる。絶縁破壊は、第1の金属層118と、第1の金属層118により近い複数の底部126との間で積極的に起こると推測される。
【0108】
その後、巨大磁気抵抗素子100は、所定の方向から磁場印加を受ける環境に置かれる。より詳しくは、巨大磁気抵抗素子100は、積層方向140に直交する方向190、すなわち、図5に示す磁場方向150から可変の磁場印加を受ける環境に置かれる。そして、磁場を変化させると、巨大磁気抵抗素子100は、第1の実施形態と同様の抵抗値を示す。なお、巨大磁気抵抗素子100の抵抗値の計測方法は、第1の実施形態と同様に、定電流電源162から巨大磁気抵抗素子100へ所定の電流を流し、電圧計164において電圧値の変化を計測するものである。
【0109】
ここで、発明者は、巨大磁気抵抗素子100について、第1の実施形態と同様の推測をした。その内容は、第1の実施形態において説明した内容と同一であるので、ここでは説明を省略する。
【0110】
以上より、本実施形態係る巨大磁気抵抗素子100は、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0111】
(作製方法)
次に本実施形態に係る巨大磁気抵抗素子100の作製方法を説明する。
【0112】
基板114、第1の金属層118、および絶縁膜120の形成段階は、第2の実施形態と同様であるので、ここでの説明を省略する。
【0113】
絶縁膜120は、磁性体層134に隣接する面から、絶縁膜120の[111]面に対して異方性エッチングされる。絶縁膜120が[111]面に対して異方性エッチングされることで、複数の凹部128は、絶縁膜120の磁性体層134と隣接する面121に形成される。凹部128については、第3の実施形態と同様であるので、ここでの説明を省略する。
【0114】
磁性体層134は、絶縁膜120と隣接して形成される。これにより、磁性体層134の複数の凸部136は、凹部128に入りこんで形成される。それぞれの凸部136の形成方法は、第3の実施形態と同様であるのでここでの説明を省略する。また、磁性体層134の形成方法および厚さについては第2の実施形態と同様であるので、ここでの説明を省略する。
【0115】
第2の金属層138の形成段階、および直流電源160による電圧の印加段階は、第3の実施形態と同様であるので、ここでの説明を省略する。
【0116】
以上より、本実施形態係る巨大磁気抵抗素子100の作製方法は、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0117】
次に、本発明に係る巨大磁気抵抗素子およびその作製方法における第5の実施形態について、図6を参酌して実施例を説明する。
【0118】
(構成)
図6は、本実施形態に係る巨大磁気抵抗素子100の構成を示す側面図である。巨大磁気抵抗素子100は、第3の実施形態における凸部136に変わり、第1の金属層118から絶縁膜120の積層方向140に突出する凸部119を有する点で、第3の実施形態における巨大磁気抵抗素子100と異なっている。また、巨大磁気抵抗素子100は、第3の実施形態における凹部128に変わり、絶縁膜120の第1の金属層118と隣接する方向に傾斜する凹部180を有する点で、第3の実施形態における巨大磁気抵抗素子100と異なっている。その他の巨大磁気抵抗素子100の構成は、第3の実施形態と同様であるので、ここでの説明を省略する。
【0119】
凸部119は、第1の金属層118の絶縁膜120と隣接する面112から、積層方向140に対して傾斜する斜面115および斜面116と、斜面115および斜面116の交差する位置に設けられる先端部117とを含む。斜面115および斜面116は、共に、絶縁膜120内で交差する程度に、第1の金属層118の絶縁膜120と隣接する面から傾斜している。
【0120】
先端部117は、絶縁膜120内に設けられる。先端部117は、斜面115および斜面116の交差する点に位置する。先端部117は、斜面115および斜面116の交差により、鋭角に形成されている。なお、先端部117は、絶縁膜120内に設けられるのであれば、鈍角に形成されていてもよい。
【0121】
凹部180は、絶縁膜120の第1の金属層118と隣接する面123から、積層方向140に対して傾斜する斜面182および斜面184と、斜面182および斜面184の交差する位置に設けられる底部186とを含む。
【0122】
斜面182および斜面184は、絶縁膜120の第1の金属層118と隣接する面123から、絶縁膜120の磁性体層134と隣接する面に向けて傾斜している。斜面182および斜面184は、共に、絶縁膜120内で交差する程度に、絶縁膜120の第1の金属層118と隣接する面123から傾斜している。
【0123】
底部186は、絶縁膜120内に設けられる。底部186は、斜面182および斜面184の交差する点に位置する。底部186は、斜面182および斜面184の交差により、鋭角に形成されている。なお、底部186は、絶縁膜120内に設けられるのであれば、鈍角に形成されていてもよい。
【0124】
絶縁膜120は、第1の金属層118と隣接して形成される。これにより、第1の金属層118の凸部119は、絶縁膜120の凹部180に入るように形成される。
【0125】
(作用)
本実施形態に係る巨大磁気抵抗素子100の構成については以上の通りであり、次に本実施形態に係る巨大磁気抵抗素子100の作用について説明する。
【0126】
巨大磁気抵抗素子100において、絶縁膜120は、第3の実施形態と同様に、絶縁破壊されている状態になる。絶縁破壊は、磁性体層134と、磁性体層134により近い先端部117との間で積極的に起こると推測される。
【0127】
その後、巨大磁気抵抗素子100は、所定の方向から磁場印加を受ける環境に置かれる。より詳しくは、巨大磁気抵抗素子100は、積層方向140に直交する方向190、すなわち、図6に示す磁場方向150から可変の磁場印加を受ける環境に置かれる。そして、磁場を変化させると、巨大磁気抵抗素子100は、第1の実施形態と同様の抵抗値を示す。なお、巨大磁気抵抗素子100の抵抗値の計測方法は、第1の実施形態と同様に、定電流電源162から巨大磁気抵抗素子100へ所定の電流を流し、電圧計164において電圧値の変化を計測するものである。
【0128】
ここで、発明者は、巨大磁気抵抗素子100について、第1の実施形態と同様の推測をした。その内容は、第1の実施形態において説明した内容と同一であるので、ここでは説明を省略する。
【0129】
以上より、本実施形態係る巨大磁気抵抗素子100は、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0130】
(作製方法)
次に本実施形態に係る巨大磁気抵抗素子100の作製方法を説明する。
【0131】
基板114の形成段階は、第2の実施形態と同様であるので、ここでの説明を省略する。
【0132】
第1の金属層118は、凸部119を形成可能な程度の厚さで形成される。その形成方法は第4の実施形態と同様であるので、ここでの説明を省略する。第1の金属層118は、基板114に隣接して形成された後に、フォトマスクを利用してエッチングされる。第1の金属層118がエッチングされることで、凸部119が形成される。凸部119は、第1の金属層118の絶縁膜120と隣接する面112から、積層方向140に対して傾斜して形成される斜面115および斜面116と、斜面115および斜面116の交差する位置に形成される先端部117とで形成される。斜面115および斜面116は、共に、絶縁膜120内で交差する程度に、第1の金属層118の絶縁膜120と隣接する面112から傾斜して形成される。
【0133】
先端部117は、斜面115および斜面116の交差により、鋭角に形成される。なお、先端部117は、鈍角に形成されていてもよい。
【0134】
絶縁膜120は、第1の金属層118に隣接して形成される。これにより、絶縁膜120は、凹部180に入る凸部119を有する形状に形成される。すなわち、斜面182は、斜面115と隣接して形成される。斜面184は、斜面116と隣接して形成される。底部186は、先端部117と隣接して形成される。
【0135】
絶縁膜120の形成方法、磁性体層134の形成段階、第2の金属層138の形成段階、および直流電源160による電圧の印加段階は、第2の実施形態と同様であるので、ここでの説明を省略する。
【0136】
以上より、本実施形態係る巨大磁気抵抗素子100の作製方法は、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0137】
次に、本発明に係る巨大磁気抵抗素子およびその作製方法における第6の実施形態について、図7を参酌して実施例を説明する。
【0138】
(構成)
図7は、本実施形態に係る巨大磁気抵抗素子100の構成を示す概略図であり、図7(a)は、本実施形態に係る巨大磁気抵抗素子100の側面図であり、図7(b)は、本実施形態に係る巨大磁気抵抗素子100の平面図である。
【0139】
巨大磁気抵抗素子100は、板状に形成される基板210と、基板210に隣接して設けられる絶縁層220と、絶縁層220に隣接して設けられる第1の電極110と、絶縁層220および第1の電極110に隣接して設けられる絶縁膜120と、絶縁層220および絶縁膜120に隣接して設けられる第2の電極130とを備える。
【0140】
基板210は、半導体材料で形成されている。基板210は、たとえば、Si(100)で形成されている。基板210は、図7(a)に示す基板210および絶縁層220の積層方向140において、所定の厚さを有する。また、基板210は、積層方向140の一方の面で絶縁層220と隣接する。基板210は、絶縁層220と隣接する面で平面となるように形成されている。
【0141】
絶縁層220は、たとえば、第1の実施形態における絶縁膜120と同様の材料で形成されていてよい。本実施形態においては、絶縁層220を二酸化ケイ素として説明する。
【0142】
絶縁層220は、積層方向140において、所定の厚さを有する。また、絶縁層220は、積層方向140における一方の面で基板210と隣接する。そして、絶縁層220は、積層方向140における他方の面で第1の電極110、絶縁膜120、および第2の電極130と隣接する。絶縁層220は、基板210と隣接する面と、第1の電極110、絶縁膜120、および第2の電極130と隣接する面のそれぞれで、平面となるように形成されている。
【0143】
第1の電極110は、積層方向140における絶縁層220の他方の面に隣接する第1の金属層118である。第1の電極110は、たとえば、金で形成されており、積層方向140において所定の厚さを有する。第1の電極110は、積層方向140における絶縁層220の他方の面内の一部に隣接して形成されている。第1の電極110は、絶縁層220と隣接する面で、平面となるように形成されている。
【0144】
第1の金属層118は、積層方向140に直交する方向190において第1の金属層118から突出する凸部113を有する。第1の金属層118は、積層方向140において、所定の厚さを有する。第1の金属層118は、積層方向140において、絶縁層220の端縁の一部に隣接して形成される。第1の金属層118は、積層方向140における絶縁層220の他方の面の面積に対して、より狭い面積で絶縁層220と隣接する。すなわち、第1の金属層118は、積層方向140において、絶縁層220の他方の面と対向する面で、絶縁層220の他方の面よりも狭い面積を有している。
【0145】
凸部113は、積層方向140において、第1の金属層118と同様の厚さを有する。凸部113は、積層方向140に直交する方向190において、第1の金属層118よりも狭い所定の幅で突出している。凸部113は、積層方向140における絶縁層220の他方の面の一部に隣接して形成される。また、凸部113は、積層方向140に直交する方向190において、第1の金属層118から延伸される先で、絶縁膜120と隣接する。凸部113は、絶縁膜120と隣接する面で平面となるように形成されている。
【0146】
凸部113は、積層方向140に直交する方向190において、第2の電極130に向かって突出する。本実施形態では、凸部113は、第1の金属層118から、面内中央225に向けて突出している。
【0147】
絶縁膜120は、第1の実施形態と同様の材料であってよい。絶縁膜120は、積層方向140において、第1の電極110と同様の厚さを有する。絶縁膜120は、積層方向140における絶縁層220の他方の面内の一部に隣接している。また、絶縁膜120は、積層方向140に直交する方向190において、凸部113と隣接している。より詳しくは、絶縁膜120は、第1の金属層118から突出する凸部113の延伸方向と隣接する。そして、絶縁膜120は、凸部113と同様の幅を有している。このようにして、絶縁膜120は、第1の電極110および第2の電極130の間に形成されている。絶縁膜120は、第1の電極110および第2の電極130の間で、積層方向140と直交する方向190において、2nm〜1μmの厚さを有する。
【0148】
第2の電極130は、絶縁層220の他方の面に積層される第2の金属層138と、第2の金属層138に隣接する磁性体層134とを有する。第2の電極130は、積層方向140において、第1の電極110および絶縁膜120と同様の厚さを有する。第2の電極130は、積層方向140における絶縁層220の他方の面内の一部に隣接して形成されている。第2の電極130は、絶縁層220と隣接する面で、平面となるように形成されている。
【0149】
第2の金属層138は、たとえば、金で形成されている。第2の金属層138は、積層方向140に直交する方向190において第2の金属層138から突出する凸部139を有する。第2の金属層138は、積層方向140において、絶縁層220の端縁の一部に隣接して形成される。第2の金属層138は、積層方向140における絶縁層220の他方の面の面積に対して、より狭い面積で絶縁層220と隣接する。すなわち、第2の金属層138は、積層方向140において、絶縁層220の他方の面と対向する面で、絶縁層220の他方の面よりも狭い面積を有している。
【0150】
凸部139は、積層方向140に直交する方向190において、第2の金属層138よりも狭い所定の幅で突出している。より詳しくは、凸部139は、凸部113と同様の幅を有する。凸部139は、積層方向140における絶縁層220の他方の面の一部に隣接して形成される。また、凸部139は、積層方向140に直交する方向190において、第2の金属層138から延伸される先で、磁性体層134と隣接する。凸部139は、磁性体層134と隣接する面で平面となるように形成されている。
【0151】
凸部139は、積層方向140に直交する方向190において、第1の電極110に向かって突出する。より詳しくは、凸部139は、積層方向140に直交する方向190において、凸部113に向かって突出する。本実施形態では、凸部139は、第2の金属層138から、面内中央225に向けて突出している。
【0152】
磁性体層134は、第1の実施形態と同様の材料で形成されていてよい。本実施形態において、磁性体層134を、ニッケルとして説明する。磁性体層134は、積層方向140における絶縁層220の他方の面内の一部に隣接する。そして、磁性体層134は、積層方向140と直交する方向190で、絶縁膜120および凸部139と隣接する。磁性体層134は、凸部113、絶縁膜120、および凸部139と同様の幅を有する。磁性体層134は、絶縁膜120および凸部139と隣接する面のそれぞれで平面となるように形成されている。
【0153】
(作用)
本実施形態に係る巨大磁気抵抗素子100の構成については以上の通りであり、次に本実施形態に係る巨大磁気抵抗素子100の作用について説明する。
【0154】
まず、巨大磁気抵抗素子100は、直流電源160と接続される。より詳しくは、第1の金属層118は、直流電源160の正極と接続される。そして、第2の金属層138は、直流電源160の負極と接続される。
【0155】
巨大磁気抵抗素子100が直流電源160と接続された後、直流電源160は、第1の金属層118および第2の金属層138の間に所定の電圧を印加する。第1の金属層118および第2の金属層138の間への電圧の印加、および絶縁膜120の絶縁破壊については、第1の実施形態と同様であるので、ここでの説明を省略する。
【0156】
その後、巨大磁気抵抗素子100は、所定の方向から磁場印加を受ける環境に置かれる。より詳しくは、巨大磁気抵抗素子100は、積層方向140に直交する方向190、すなわち、図7(a)に示す磁場方向150から可変の磁場印加を受ける環境に置かれる。ここで、磁場方向150は、積層方向140と同一の方向である。そして、磁場を変化させると、巨大磁気抵抗素子100は、第1の実施形態と同様の抵抗値を示す。なお、巨大磁気抵抗素子100の抵抗値の計測方法は、第1の実施形態と同様に、定電流電源162から巨大磁気抵抗素子100へ所定の電流を流し、電圧計164において電圧値の変化を計測するものである。
【0157】
ここで、発明者は、巨大磁気抵抗素子100について、第1の実施形態と同様の推測をした。その内容は、第1の実施形態において説明した内容と同一であるので、ここでは説明を省略する。
【0158】
以上より、本実施形態係る巨大磁気抵抗素子100は、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0159】
(作製方法)
次に本実施形態に係る巨大磁気抵抗素子100の作製方法を説明する。
【0160】
まず、基板210として、半導体材料であるSi(100)が用意される。ここで、基板210は、絶縁層220を形成することを目的として利用される。
【0161】
絶縁層220の形成段階は、第1の実施形態における絶縁膜120の形成段階と同様であるので、ここでの説明を省略する。
【0162】
第1の金属層118は、金であり、絶縁層220の積層方向140に隣接して形成される。まず、金層が、絶縁層220の積層方向140における他方の面に隣接して形成される。金層の絶縁層220への形成方法は、第2の実施形態における第1の金属層118の形成方法と同様であるので、ここでの説明を省略する。金層が所定の厚さを有するまで形成された後、第1の金属層118は、積層方向140における絶縁層220の他方の面の端縁に隣接する位置に、エッチングにより形成される。また、同時に、凸部113は、第1の金属層118から、積層方向140における絶縁層220の他方の面の中央方向225に向かって突出する位置に、エッチングにより形成される。
【0163】
絶縁膜120は、二酸化ケイ素であり、積層方向140において、絶縁層220に隣接して形成される。まず、二酸化ケイ素層が、絶縁層220の積層方向140における他方の面に隣接して形成される。二酸化ケイ素層の絶縁層220への形成は、第1の実施形態における絶縁膜120と同様の形成方法で形成されるので、ここでの説明を省略する。そして、二酸化ケイ素層が所定の厚さを有するまで形成された後、絶縁膜120は、凸部113の第1の金属層118から延伸される方向に隣接する位置に、エッチングにより形成される。絶縁膜120は、凸部113の第1の金属層118から延伸される方向に2nm〜1μmの長さを有するように形成される。
【0164】
磁性体層134は、ニッケルであり、絶縁膜120に隣接して形成される。また、磁性体層134は、絶縁膜120を介して凸部113と対向する面を有するように形成される。まず、ニッケル層が、積層方向140における絶縁層220の他方の面に隣接して形成される。ニッケル層の絶縁層220への形成方法は、第2の実施形態と同様であるので、ここでの説明を省略する。ニッケル層が絶縁層220の積層方向140に所定の厚さを有するまで形成された後、磁性体層134は、絶縁膜120に隣接する位置で、絶縁膜120と同じ幅となるまでエッチングされて形成される。
【0165】
第2の金属層138は、金であり、磁性体層134に隣接して形成される。まず、金層が、積層方向140における絶縁層220の他方の面に隣接して形成される。金層の絶縁層220への形成方法は、第2の実施形態における第2の金属層138の形成方法と同様であるので、ここでの説明を省略する。金層が所定の厚さを有するまで形成された後、第2の金属層138は、積層方向140における絶縁層220の他方の面内において、第1の金属層118の隣接する端縁に対して、対向する方向にある端縁と隣接する位置に、エッチングにより形成される。また、同時に、凸部139は、磁性体層134と隣接する位置に、エッチングにより形成される。
【0166】
なお、第1の金属層118、凸部113、第2の金属層138、および凸部139は、第1の金属層118を形成する段階で同時に形成しても良い。また、第1の金属層118を形成する段階、絶縁膜120を形成する段階、磁性体層134を形成する段階、および第2の金属層138を形成する段階のそれぞれは、いずれの順序で形成してもよい。
【0167】
そして、直流電源160は、第1の金属層118と第2の金属層138とに接続される。直流電源160は、その正極と第1の金属層118とで接続され、その負極と第2の金属層138とで接続される。直流電源160が第1の金属層118と第2の金属層138とに接続された後、直流電源160は、絶縁膜120の厚さに応じて、1M〜1000MV/cmの電圧を第1の金属層118と第2の金属層138との間に印加する。このような方法で、本実施例に係る巨大磁気抵抗素子100を作製することができる。
【0168】
以上より、本実施形態係る巨大磁気抵抗素子100の作製方法は、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0169】
次に、本発明に係る巨大磁気抵抗素子およびその作製方法における第7の実施形態について、図8を参酌して実施例を説明する。
【0170】
(構成)
図8は、本実施形態に係る巨大磁気抵抗素子100の構成を示す概略図であり、図8(a)は、本実施形態に係る巨大磁気抵抗素子100の側面図であり、図8(b)は、本実施形態に係る巨大磁気抵抗素子100の平面図である。
【0171】
巨大磁気抵抗素子100は、板状に形成される基板210と、基板210に隣接して設けられる絶縁層220と、絶縁層220に隣接して設けられる第1の電極110および第2の電極130と、第1の電極110および第2の電極130に隣接して設けられる絶縁膜120とを備える。
【0172】
基板210および絶縁層220の構成は、第6の実施形態と同様であるので、ここでの説明を省略する。
【0173】
第1の電極110は、絶縁層220に隣接して設けられる第1の金属層118と、図8に示す基板210および絶縁層220の積層方向140において、第1の金属層118と隣接して設けられる第1のワイヤ部310とを有する。
【0174】
第1の金属層118の構成は、凸部113を含まないこと以外は、第6の実施形態と同様であるので、ここでの説明を省略する。
【0175】
第1のワイヤ部310は、たとえば、金で形成されている。第1のワイヤ部310は、円柱状に形成され、図8(a)に示す基板210および絶縁層220の積層方向140における第1の金属層118の面に、径方向を隣接して配置される。第1のワイヤ部310は、10nm〜100nmの径を有する。第1のワイヤ部310の長手方向は、積層方向140に直交する方向190であり、第1の金属層118から第2の電極130に向かう方向に配置される。第1のワイヤ部310は、積層方向140に直交する方向190における一方の面で絶縁膜120と隣接している。第1のワイヤ部310は、絶縁膜120と隣接する面で、平面に形成されている。
【0176】
第2の電極130は、絶縁層220に隣接して設けられる第2の金属層138と、積層方向140において、第2の金属層138と隣接して設けられる第2のワイヤ部320と、第2のワイヤ部320に隣接して設けられる磁性体層134とを有する。
【0177】
第2の金属層138の構成は、凸部139を含まないこと以外は、第6の実施形態と同様であるので、ここでの説明を省略する。
【0178】
第2のワイヤ部320は、たとえば、金で形成されている。第2のワイヤ部320は、円柱状に形成され、第2の金属層138の積層方向140における面に、径方向を隣接して配置される。第2のワイヤ320部は、第1のワイヤ部310と同様の径を有する。第2のワイヤ部320の長手方向は、積層方向140に直交する方向190であり、第2の金属層138から第1の金属層118に向かう方向に配置される。第2のワイヤ部320は、積層方向140に直交する方向190における一方の面で磁性体層134と隣接している。第2のワイヤ部320は、絶縁膜120と隣接する面で、平面に形成されている。
【0179】
磁性体層134は、第1の実施形態と同様の材料で形成されていてよい。本実施形態では、磁性体層134をニッケルで説明する。磁性体層134は、円柱状であり、積層方向140と直交する方向190において、一方の面で絶縁膜120と隣接している。また、磁性体層134は、積層方向140と直交する方向190において、他方の面で第2のワイヤ部320と隣接している。磁性体層134は、第1のワイヤ部310および第2のワイヤ部320と同様の径を有する。磁性体層134は、第1のワイヤ部310および第2のワイヤ部320の間で、積層方向140に直交する方向190において、所定の厚さを有する。
【0180】
絶縁膜120は、第1の実施形態と同様の材料であってよい。本実施形態では、絶縁膜120を、二酸化ケイ素で説明する。絶縁膜120は、筒状であり、積層方向140と直交する方向190において、一方の面で第1のワイヤ部310と隣接しており、他方の面で磁性体層134と隣接している。絶縁膜120は、第1の電極110および第2の電極130の間で、積層方向140に直交する方向190に、2nm〜1μmの厚さを有する。絶縁膜120は、第1のワイヤ部310および磁性体層134と隣接する面のそれぞれで、平面に形成されている。
【0181】
(作用)
本実施形態に係る巨大磁気抵抗素子100の構成については以上の通りであり、次に本実施形態に係る巨大磁気抵抗素子100の作用について説明する。
【0182】
まず、巨大磁気抵抗素子100は、直流電源160と接続される。より詳しくは、第1の電極110は、直流電源160の正極と接続される。そして、第2の電極130は、直流電源160の負極と接続される。
【0183】
巨大磁気抵抗素子100が直流電源160と接続された後、直流電源160は、第1の電極110および第2の電極130の間に所定の電圧を印加する。第1の電極110および第2の電極130の間への電圧の印加、および絶縁膜120の絶縁破壊については、第1の実施形態と同様であるので、ここでの説明を省略する。
【0184】
その後、巨大磁気抵抗素子100は、所定の方向から磁場印加を受ける環境に置かれる。より詳しくは、巨大磁気抵抗素子100は、積層方向140に直交する方向190、すなわち、図8(a)に示す磁場方向150から可変の磁場印加を受ける環境に置かれる。そして、磁場を変化させると、巨大磁気抵抗素子100は、第1の実施形態と同様の抵抗値を示す。なお、巨大磁気抵抗素子100の抵抗値の計測方法は、第1の実施形態と同様に、定電流電源162から巨大磁気抵抗素子100へ所定の電流を流し、電圧計164において電圧値の変化を計測するものである。
【0185】
ここで、発明者は、巨大磁気抵抗素子100について、第1の実施形態と同様の推測をした。その内容は、第1の実施形態において説明した内容と同一であるので、ここでは説明を省略する。
【0186】
以上より、本実施形態係る巨大磁気抵抗素子100は、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0187】
(作製方法)
次に本実施形態に係る巨大磁気抵抗素子100の作製方法を説明する。
【0188】
まず、基板210として、半導体材料であるSi(100)が用意される。ここで、基板210は、絶縁層220を形成することを目的として利用される。
【0189】
絶縁層220の形成段階は、第1の実施形態における絶縁膜120の形成段階と同様であるので、ここでの説明を省略する。
【0190】
第1の電極110および第2の電極130の形成は、凸部113および凸部139の形成を除いて第6の実施形態と同様であるので、ここでの説明を省略する。
【0191】
第1のワイヤ部310、絶縁膜120、磁性体層134、および第2のワイヤ部320は、別途形成された後、積層方向140において、第1の金属層118および第2の金属層138の露出している面に配置される。第1のワイヤ部310、絶縁膜120、磁性体層134、および第2のワイヤ部320は、多孔質の皮膜をテンプレートにして形成される。多孔質の皮膜は、陽極酸化アルミナ、メゾポーラスシリカ、またはプロコポリマなどでよい。第1のワイヤ部310、絶縁膜120、磁性体層134、および第2のワイヤ部320は、多孔質の皮膜の孔中に、それぞれを形成する材料を電気メッキすることで形成される。
【0192】
まず、第1のワイヤ部310の材料となる金が、多孔質の皮膜の孔中にメッキされる。次に、絶縁膜120の材料となる二酸化ケイ素が、多孔質の皮膜の孔中にメッキされる。次に、磁性体層134の材料となるニッケルが、多孔質の皮膜の孔中にメッキされる。そして、第2のワイヤ部320の材料となる金が、多孔質の皮膜の孔中にメッキされる。
【0193】
第1のワイヤ部310、絶縁膜120、磁性体層134、および第2のワイヤ部320が多孔質の皮膜の中に形成された後、第1のワイヤ部310、絶縁膜120、磁性体層134、および第2のワイヤ部320は、多孔質の皮膜を除去することで得られる。その後、第1のワイヤ部310、絶縁膜120、磁性体層134、および第2のワイヤ部320は、エタノール、またはイオン交換水などの絶縁性のある溶液に分散される。そして、絶縁性のある溶液が第1の金属層118および第2の金属層138の間に滴下される。第1の金属層118および第2の金属層138間に高周波の電場(数k〜1kHz)が印加されることで、第1のワイヤ部310、絶縁膜120、磁性体層134、および第2のワイヤ部320は、第1の金属層118および第2の金属層138の間に捕らえられて、捕らえられた位置に配置される。すなわち、第1のワイヤ部310、絶縁膜120、磁性体層134、および第2のワイヤ部320は、積層方向140において、第1のワイヤ部310の径方向と第1の金属層118とを隣接して配置される。また、第2のワイヤ部320は、積層方向140において、第2のワイヤ部320の径方向と第2の金属層138とを隣接して配置される。
【0194】
そして、直流電源160は、第1の電極110と第2の電極130とに接続される。直流電源160は、その正極と第1の電極110とで接続され、その負極と第2の電極130とで接続される。直流電源160が第1の電極110と第2の電極130とに接続された後、直流電源160は、絶縁膜120の厚さに応じて、1M〜1000MV/cmの電圧を第1の電極110と第2の電極130との間に印加する。このような方法で、本実施例に係る巨大磁気抵抗素子100を作製することができる。
【0195】
以上より、本実施形態係る巨大磁気抵抗素子100の作製方法は、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0196】
次に、本発明に係る巨大磁気抵抗素子およびその作製方法における第8の実施形態について、図9を参酌して実施例を説明する。
【0197】
(構成)
図9は、本実施形態に係る巨大磁気抵抗素子100の構成を示す概略図であり、図9(a)は、本実施形態に係る巨大磁気抵抗素子100の側面図であり、図9(b)は、本実施形態に係る巨大磁気抵抗素子100の平面図である。
【0198】
巨大磁気抵抗素子100は、板状に形成される基板210と、基板210に隣接して設けられる絶縁層220と、絶縁層220に隣接して設けられる第1の電極110と、絶縁層220および第1の電極110に隣接して設けられる絶縁膜120と、絶縁膜120に隣接して設けられる第2の電極130とを備える。
【0199】
基板210、絶縁層220、および第1の電極110の構成は、第6の実施形態と同様であるので、ここでの説明を省略する。
【0200】
絶縁膜120は、第1の実施形態と同様の材料であってよい。本実施形態において、絶縁膜120を、二酸化ケイ素として説明する。絶縁膜120は、積層方向140における一方の面で、絶縁層220の他方の面内の一部に隣接している。また、絶縁膜120は、積層方向140における一方の面で、凸部113の一部と隣接している。そして、絶縁膜120は、積層方向140における他方の面で、第2の電極130と隣接している。すなわち、絶縁膜120は、積層方向140において、第1の電極110および第2の電極130の間に形成されている。絶縁膜120は、第1の電極110および第2の電極130の間で、2nm〜1μmの厚さを有する。絶縁膜120は、絶縁層220と隣接する面、凸部113と隣接する面、および第2の電極130と隣接する面のそれぞれで、平面となるように形成されている。
【0201】
第2の電極130は、磁性体材料で形成されている磁性体層134と、金属材料で形成されている第2の金属層138とを有する。第2の電極130は、積層方向140において、磁性体層134に第2の金属層138の一部を積層して形成されている。
【0202】
磁性体層134は、第1の実施形態と同様の材料で形成されていてよい。本実施形態において、磁性体層134を、ニッケルとして説明する。磁性体層134は、積層方向140において、所定の厚さを有する。より詳しくは、磁性体層134は、積層方向140において磁性体層134よりも薄い厚さを有する。磁性体層134は、積層方向140における一方の面で、絶縁層120の他方の面内の一部に隣接している。そして、磁性体層134は、積層方向140における他方の面で、第2の金属層138の一部に隣接する。磁性体層134は、絶縁膜120と隣接する一方の面および第2の電極130と隣接する他方の面のそれぞれで、平面となるように形成されている。磁性体層134は、積層方向140において、凸部113と重なる位置に形成されている。
【0203】
第2の金属層138は、積層方向140に直交する方向190において、絶縁層220の中心方向225に突出する凸部139を含む。第2の金属層138は、第1の実施形態と同様の材料で形成されていてよい。本実施形態において、第2の金属層138を、金として説明する。第2の金属層138は、積層方向140における一方の面で絶縁膜120に隣接している。そして、第2の金属層138は、積層方向140において、凸部139で磁性体層134の他方の面と隣接している。
【0204】
第2の金属層138は、積層方向140において、絶縁膜120と隣接する面内で、絶縁膜120の端縁の位置に形成されている。より詳しくは、第2の金属層138は、積層方向140において、磁性体層134と重なる位置のみで第1の金属層118と立体的に交差可能な位置であって、絶縁膜120の他方の面における端縁の位置に形成されている。第2の金属層138は、絶縁膜120と隣接する面で平面となるように形成されている。第2の金属層138の絶縁膜120と隣接する一方の面は、絶縁膜120の第2の金属層138と隣接する他方の面よりも狭い面積を有するように形成されている。
【0205】
凸部139は、積層方向140において、第2の金属層138よりも薄い厚さを有する。凸部139は、積層方向140において、磁性体層134の厚さと合わせて、第2の金属層138と同様の厚さを有するように形成される。凸部139は、積層方向140に直交する方向190において、第1の金属層118よりも狭い所定の幅で突出している。凸部139は、積層方向140における一方の面で、磁性体層134の他方の面に隣接している。また、凸部139は、積層方向140において、凸部113、絶縁膜120、および磁性体層134と立体的に交差するように形成されている。より詳しくは、凸部139は、積層方向140において、面内中央225で、凸部113、絶縁膜120、および磁性体層134と立体的に交差するように形成されている。凸部139は、磁性体層134と隣接する面で、平面となるように形成されている。
【0206】
(作用)
本実施形態に係る巨大磁気抵抗素子100の構成については以上の通りであり、次に本実施形態に係る巨大磁気抵抗素子100の作用について説明する。
【0207】
まず、巨大磁気抵抗素子100は、直流電源160と接続される。より詳しくは、第1の金属層118は、直流電源160の正極と接続される。そして、第2の金属層138は、直流電源160の負極と接続される。
【0208】
巨大磁気抵抗素子100が直流電源160と接続された後、直流電源160は、第1の金属層118および第2の金属層138の間に所定の電圧を印加する。第1の金属層118および第2の金属層138の間への電圧の印加、および絶縁膜120の絶縁破壊については、第1の実施形態と同様であるので、ここでの説明を省略する。
【0209】
その後、巨大磁気抵抗素子100は、所定の方向から磁場印加を受ける環境に置かれる。より詳しくは、巨大磁気抵抗素子100は、積層方向140に直交する方向190、すなわち、図9(a)に示す磁場方向150から可変の磁場印加を受ける環境に置かれる。そして、磁場を変化させると、巨大磁気抵抗素子100は、第1の実施形態と同様の抵抗値を示す。なお、巨大磁気抵抗素子100の抵抗値の計測方法は、第1の実施形態と同様に、定電流電源162から巨大磁気抵抗素子100へ所定の電流を流し、電圧計164において電圧値の変化を計測するものである。
【0210】
ここで、発明者は、巨大磁気抵抗素子100について、第1の実施形態と同様の推測をした。その内容は、第1の実施形態において説明した内容と同一であるので、ここでは説明を省略する。
【0211】
以上より、本実施形態係る巨大磁気抵抗素子100は、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0212】
(作製方法)
次に本実施形態に係る巨大磁気抵抗素子100の作製方法を説明する。
【0213】
まず、基板210として、半導体材料であるSi(100)が用意される。ここで、基板210は、絶縁層220を形成することを目的として利用される。
【0214】
絶縁層220の形成段階は、第1の実施形態における絶縁膜120の形成段階と同様であるので、ここでの説明を省略する。
【0215】
第1の金属層118は、金であり、積層方向140において、絶縁層220に隣接して形成される。まず、金層が、絶縁層220の積層方向140における他方の面に隣接して形成される。金層の絶縁層220への形成方法は、第2の実施形態における第1の金属層118の形成方法と同様であるので、ここでの説明を省略する。金層が所定の厚さを有するまで形成された後、第1の金属層118は、積層方向140における、絶縁層220の他方の面の端縁に隣接する位置に、エッチングにより形成される。また、同時に、凸部113は、第1の金属層118から、絶縁層220の積層方向140における他方の面の面内中央225に向かって突出する位置に、エッチングにより形成される。
【0216】
絶縁膜120は、二酸化ケイ素であり、積層方向140において、凸部113および絶縁層220に隣接して形成される。まず、二酸化ケイ素層が、積層方向140における、第1の電極110および絶縁層220の他方の面に隣接して形成される。二酸化ケイ素層の絶縁層220への形成は、第1の実施形態における絶縁膜120と同様の形成方法で形成されるので、ここでの説明を省略する。そして、二酸化ケイ素層が所定の厚さを有するまで形成された後、絶縁膜120は、積層方向140において、凸部113の一部および絶縁膜120の一部に隣接する位置に、エッチングにより形成される。絶縁膜120は、積層方向140において凸部113と隣接する面から2nm〜1μmの厚さを有するように形成される。
【0217】
磁性体層134は、ニッケルであり、絶縁膜120に隣接して形成される。また、磁性体層134は、積層方向140において、凸部113と立体的に重なる位置に形成される。まず、ニッケル層が、積層方向140において、絶縁層220の他方の面に隣接して形成される。ニッケル層の絶縁層220への形成方法は、第2の実施形態と同様であるので、ここでの説明を省略する。ニッケル層が絶縁層220の積層方向140に所定の厚さを有するまで形成された後、磁性体層134は、積層方向140において、絶縁膜120と隣接しており、かつ凸部113と重なる位置に、エッチングにより形成される。
【0218】
第2の金属層138は、金であり、積層方向140において、絶縁膜120および磁性体層134に隣接して形成される。まず、金層が、絶縁層220の積層方向140における他方の面に隣接して形成される。金層の絶縁層220への形成方法は、第2の実施形態における第2の金属層138の形成方法と同様であるので、ここでの説明を省略する。金層が所定の厚さを有するまで形成された後、第2の金属層138は、積層方向140において、絶縁膜120と隣接する面内で、絶縁膜120の端縁の位置に、エッチングにより形成される。より詳しくは、第2の金属層138は、積層方向140における、絶縁層220の他方の面内において、磁性体層134と重なる位置のみで第1の金属層118と立体的に交差可能な位置であって、絶縁膜120の他方の面における端縁の位置に、エッチングにより形成される。また、同時に、凸部139は、磁性体層134と隣接する位置に、エッチングにより形成される。
【0219】
そして、直流電源160は、第1の金属層118と第2の金属層138とに接続される。直流電源160は、その正極と第1の金属層118とで接続され、その負極と第2の金属層138とで接続される。直流電源160が第1の金属層118と第2の金属層138とに接続された後、直流電源160は、絶縁膜120の厚さに応じて、1M〜1000MV/cmの電圧を第1の金属層118と第2の金属層138との間に印加する。このような方法で、本実施例に係る巨大磁気抵抗素子100を作製することができる。
【0220】
以上より、本実施形態係る巨大磁気抵抗素子100の作製方法は、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0221】
なお、本発明に係る巨大磁気抵抗素子およびその作製方法は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。また、上記した複数の実施形態の構成や方法等を任意に採用して組み合わせてもよく(1つの実施形態に係る構成や方法等を他の実施形態に係る構成や方法等に適用してもよく)、さらに、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0222】
例えば、本発明に係る絶縁膜120おいて酸化マグネシウムを利用する場合、酸化マグネシウムは、2nm以上、1μm以下の厚さを有していてよい。また、本発明に係る絶縁膜120において酸化アルミニウムを利用する場合、酸化アルミニウムは、1nm以上、0.5μm以下の厚さを有していてよい。そして、本発明に係る絶縁膜120は、106Ωcm以上の抵抗率を有することが好ましい。
【0223】
また、本発明に係る第1の電極110および第2の電極130は、いずれも磁性体材料で形成されていてもよい。
【0224】
また、第1の電極110、絶縁膜120、および第2の電極130は、その作製順序はどのような順序であってもよい。たとえば、第2の電極を形成した後に絶縁膜120を形成し、その後、第1の電極110を形成してもよい。
【符号の説明】
【0225】
100 巨大磁気抵抗素子
110 第1の電極
113、119、136、139 凸部
114、210 基板
115、116、122、124、172、174、182、184 斜面
117、176 先端部
118 第1の金属層
120 絶縁膜
126、186 底部
128、180 凹部
130 第2の電極
134 磁性体層
138 第2の金属層
160 直流電源
162 定電流電源
164 電圧計
220 絶縁層
300 ナノワイヤ
310 第1のワイヤ部
320 第2のワイヤ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極および第2の電極の間に、1nm以上、1μm以下の絶縁膜を形成する段階と、
前記第1の電極および前記第2の電極の間に所定の電圧を印加する段階と
を備え、
前記第1の電極および前記第2の電極の少なくとも一方が、磁性体材料で形成されていることを特徴とする巨大磁気抵抗素子の作製方法。
【請求項2】
前記第1の電極および前記第2の電極は、一方が磁性体材料で形成され、他方が半導体材料で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の巨大磁気抵抗素子の作製方法。
【請求項3】
第1の電極と、第2の電極と、前記第1の電極および前記第2の電極の間に挟まれる絶縁膜とを備え、
前記第1の電極および前記第2の電極の少なくとも一方が磁性体材料で形成され、
前記絶縁膜の膜厚が1nm以上、1μm以下であり、素子抵抗が1Ω以上、1GΩ以下であることを特徴とする巨大磁気抵抗素子。
【請求項4】
前記第1の電極および前記第2の電極は、一方が磁性体材料で形成され、他方が半導体材料で形成されることを特徴とする請求項3に記載の巨大磁気抵抗素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−104611(P2012−104611A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−251196(P2010−251196)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【出願人】(399030060)学校法人 関西大学 (208)
【Fターム(参考)】