説明

差動伝送モジュール

【課題】 高周波において、差動伝送路間のインピーダンスが低下せず、差動信号に影響を与えることがないインダクタを備えた差動伝送モジュールを提供する。
【解決手段】 差動伝送モジュール100は、基板1、差動伝送路2a、2b、インダクタ4を備え、インダクタ4は、コア5、コイル導体9、天板10を備え、コイル導体9は、コア5の巻芯部6に一定の方向に巻回され、一方の端部が第1電極8aに、途中部分が第3電極8cに、他方の端部が第2電極8bに接続され、第1電極8aが差動伝送路2aに接続され、第2電極8bが差動伝送路2bに接続され、第3電極8cが差動伝送路2a、2bに対してコモンモード信号の検出または注入をおこなうための端子となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1対の差動伝送路と、その差動伝送路に対してコモンモード信号の検出または注入をおこなうためのインダクタとを備えた差動伝送モジュールに関し、さらに詳しくは、コモンモード信号を検出あるいは注入する際の損失が小さく、かつ、高周波において、差動伝送路間のインピーダンスが低下せず、差動信号に影響を与えることがないインダクタを備えた差動伝送モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、差動伝送路間にインダクタを実装し、そのインダクタの中間点に設けられた端子から信号に含まれる不平衡成分(コモンモード信号)を抽出し、その不平衡成分を不平衡検出器で検出して、信号発生源にフィードバックをかけることにより、不平衡成分の少ない信号を発生させるようにした差動伝送モジュール(平衡伝送装置)が知られている。
【0003】
たとえば、特許文献1(特開2005−311408号公報)に、そのような差動伝送モジュールが開示されている。
【0004】
なお、インダクタの中間点に設けられた端子は、不平衡成分を検出して信号発生源にフィードバックをかけるだけではなく、差動伝送路にコモンモード信号を重畳(注入)するためや、電源電力を重畳(注入)するためにも使用することもできる。
【0005】
このような差動伝送モジュールにおいて、差動伝送路間に実装されるインダクタとしては、たとえば、図8に示すような公知のインダクタ300を2個用意し、両者を直列に接続し、その両端をそれぞれ差動伝送路に接続するとともに、2個のインダクタの接続点を中間点の端子として使用する方法が知られている。
【0006】
インダクタ300は、たとえば、磁性体からなるコア101および天板102と、コイル導体103とを備え、コア101の巻芯部104にコイル導体103が巻回され、その両端が、コア101の1対の鍔部105a、105bに形成された電極107a、107bに接続された構造からなる。天板102は、一方の端辺が、鍔部105aの電極107aが形成されていない端面に、他方の端辺が、鍔部105bの電極107bが形成されていない端面に、接着剤108により、それぞれ接合されている。
【0007】
ところで、このような差動伝送モジュールにおいては、次の2つの事項を満たすことが求められる。すなわち、まず、コモンモード信号を検出あるいは注入する際の損失が小さいことが求められる。また、差動伝送路に対して影響を与えないことが求められる。
【0008】
そして、コモンモード信号を検出あるいは注入する際の損失を小さくするためには、インダクタの中間点に設けられた端子と差動伝送路との間のコモンモードインピーダンスが可能な限り低いことが必要になる。一方、差動伝送路に影響を与えないためには、差動伝送路間においてインダクタが有するインピーダンスが、可能な限り高いことが必要になる。
【0009】
しかしながら、上述した、2個の独立したインダクタ300を直列に接続し、その両端をそれぞれ差動伝送路に接続するとともに、2個のインダクタ300の接続点を中間点の端子として使用する方法には、端子と各差動伝送路との間のコモンモードインピーダンスが高く、コモンモード信号に対する損失が大きいという問題や、直流電流を流すと重畳特性の悪化によって差動伝送線間のインピーダンスが低下し、差動伝送路に影響を与えるという問題があった。
【0010】
そこで、別の方法として、差動線路間に、インダクタとして、特許文献2(特開2003−168611号公報)に開示されるような、コモンモードチョークコイルを接続する方法がある。
【0011】
図9に、特許文献2に開示された、コモンモードチョークコイル400を示す。
【0012】
コモンモードチョークコイル400は、磁性体からなるコア201および天板202と、1対のコイル導体203a、203bとを備える。
【0013】
コア201は、巻芯部204の両端に、1対の鍔部205a、205bが形成され、さらに、鍔部205aに1対の脚部206a、206bが形成され、鍔部205bに1対の脚部206c、206dが形成されている。ただし、図9においては、脚部206dは他の部材に隠れており、図示されていない。
【0014】
そして、脚部206aに電極207aが、脚部206bに電極207bが、脚部206cに電極207cが、脚部206dに電極207dが、それぞれ形成されている。ただし、図9においては、電極207dは他の部材に隠れており、図示されていない。
【0015】
そして、コア201の巻芯部204に、1対のコイル導体203aとコイル導体203bとが巻回され、コイル導体203aの一方の端部が電極207aに、他方の端部が電極207dに、コイル導体203bの一方の端部が電極207bに、他方の端部が電極207cに、それぞれ接続されている。なお、コイル導体203aとコイル導体203bとは、平行に並べられ、沿った状態で、巻芯部204に巻回されている。
【0016】
そして、天板202は、一方の端辺が、鍔部205aの電極207a、207bが形成されていない端面に、他方の端辺が、鍔部205bの電極207c、207dが形成されていない端面に、接着剤208により、それぞれ接合されている。
【0017】
特許文献2に開示されたコモンモードチョークコイル400を、特許文献1に開示された差動伝送モジュールに使用する場合には、電極207aを一方の差動伝送路に接続し、電極207cを他方の差動伝送路に接続し、残りの電極207bと電極207dとを中間点の端子として使用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2005−311408号公報
【特許文献2】特開2003−168611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
特許文献2に開示されたようなコモンモードチョークコイルを、特許文献1に開示されたような差動伝送モジュールに使用した場合、インダクタの中間点に設けられた端子と差動伝送路との間のコモンモードインピーダンスは十分に低くなっており、コモンモード信号に対する損失は小さくなっている。
【0020】
しかしながら、この方法においても、結合したコイル導体203aと203bとの線路間に発生する静電容量の影響で、特に高周波において、差動伝送路間のインピーダンスが低下してしまうという問題があった。すなわち、この方法によっても、差動伝送路に影響を与えずに、差動伝送路間にインダクタを接続するという要求は満たされなかった。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、上述した従来の問題を解決するするためになされたものであり、その手段として、本発明の差動伝送モジュールは、基板と、基板上に形成された1対の差動伝送路と、1対の差動伝送路間に実装された、1対の差動伝送路に対してコモンモード信号の検出または注入をおこなうためのインダクタとを備え、インダクタは、磁性体からなるコアおよび天板と、コアに巻回されたコイル導体とを備え、コアは、棒状の巻芯部と、巻芯部の両端に形成された第1鍔部および第2鍔部と、巻芯部の途中に形成された第3鍔部とを備え、第1鍔部には第1電極が、第2鍔部には第2電極が、第3鍔部には第3電極がそれぞれ形成され、コイル導体は、巻芯部に一定の方向に巻回され、一方の端部が第1電極に接続され、途中部分が第3電極に接続され、他方の端部が第2電極に接続され、第1電極から第3電極までの巻数と、第3電極から第2電極までの巻数とが等しく、天板は板状からなり、対向する一方の端辺が第1鍔部に接合され、他方の端辺が第2鍔部に接合され、第1電極が1対の差動伝送路の一方に接続され、第2電極が1対の差動伝送路の他方に接続され、第3電極が1対の差動伝送路に対してコモンモード信号の検出または注入をおこなうための端子となるようにした。
【0022】
なお、第3電極は、第3鍔部の端面全周にわたって形成されるようにしても良い。この場合には、第3鍔部の両側間での磁束の漏れが少なくなり、中間点に設けられた端子と差動伝送路との間のコモンモードインピーダンスは、さらに低くなっており、コモンモード信号に対する損失はより小さくなる。
【0023】
なお、インダクタは、1対の差動伝送路に対して、コモンモード信号の検出または注入をおこなうのではなく、電源電流の注入をおこなうものであっても良い。
【発明の効果】
【0024】
本発明の差動伝送モジュールは、上述した構成としたため、差動伝送路間にインダクタが実装されているにもかかわらず、高周波において、差動伝送路間のインピーダンスの低下が抑えられており、差動信号に与える影響が小さい。また、中間の端子と差動伝送路との間のコモンモードインピーダンスは十分に低くなっており、コモンモード信号に対する損失が小さくなっている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1実施形態にかかる差動伝送モジュール100を示す斜視図である。
【図2】差動伝送モジュール100に使用したインダクタ4を示す正面図である。
【図3】差動伝送モジュール100に使用したインダクタ4を示す底面図である。
【図4】第2実施形態にかかる差動伝送モジュール200を示す斜視図である。
【図5】図5(A)は、実験例においてインピーダンスの測定をおこなったポート1とポート2との位置を示した回路図である。図5(B)は、実験例においてインピーダンスの測定をおこなったポート3とポート4との位置を示した回路図である。
【図6】実施例、比較例1、比較例2ににつき、図5(A)に示したポート1とポート2との間のインピーダンスを示したグラフである。
【図7】実施例、比較例1、比較例2ににつき、図5(B)に示したポート3とポート4との間のインピーダンスを示したグラフである。
【図8】従来のインダクタ300を示す斜視図である。
【図9】従来のコモンモードチョークコイル400を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面とともに、本発明を実施するための形態について説明する。
[第1実施形態]
図1に、本発明の第1実施形態にかかる差動伝送モジュール100を示す。また、図2および図3に、差動伝送モジュール100に使用したインダクタ4を示す。ただし、図1は差動伝送モジュール100の斜視図、図2はインダクタ4の正面図、図3はインダクタ4の底面図である。
【0027】
本実施形態にかかる差動伝送モジュール100は、基板1を備える。基板1は、たとえば、プリント回路基板からなる。なお、図1においては、基板1の左右部分の図示を省略して示している。
【0028】
基板1の表面には、1対の差動伝送路2a、2bが形成されている。また、差動伝送路2aの途中にはランド電極3aが、差動伝送路2bの途中にはランド電極3bがそれぞれ形成され、さらに、ランド電極3aと3bとの間には、独立したランド電極3cが形成されている。なお、ランド電極3cは、コモンモード信号検出部または注入部(図示せず)に接続されている。差動伝送路2a、2bおよびランド電極3a、3b、3cは、それぞれ、たとえば、銅箔からなる。
【0029】
そして、ランド電極3a、3b、3cを使って、差動伝送路2a、2b間に、インダクタ4が実装されている。
【0030】
インダクタ4は、フェライトなどの磁性体からなるコア5を備える。
【0031】
コア5は、角柱状(棒状)の巻芯部6と、巻芯部6の両端に形成された第1鍔部7a、第2鍔部7bと、巻芯部6の途中に形成された第3鍔部7cとを備える。第1鍔部7a、第2鍔部7bは、たとえば、矩形の板状からなり、その中央部分が巻芯部6の端部と繋がっている。第3鍔部7cは、たとえば、第1鍔部7a、第2鍔部7bよりも一回り小さな矩形の板状からなり、巻芯部6の途中において、巻芯部6と繋がっている。
【0032】
そして、第1鍔部7aに第1電極8a、第2鍔部7bに第2電極8b、第3鍔部7cに第3電極8cがそれぞれ形成されている。第1電極8a、第2電極8b、第3電極8cは、第1鍔部7a、第2鍔部7b、第3鍔部7cのそれぞれの1つの端面を中心にして、その端面に繋がる周囲の4つの面に跨って形成されている。なお、図1〜図3においては、わかりやすくするために、第1電極8a、第2電極8b、第3電極8cを着色して示している。
【0033】
そして、コア5の巻芯部6に、コイル導体9が、一定の方向に巻回されている。コイル導体9には、たとえば、絶縁被覆が施された銅線などが用いられる。そして、コイル導体9は、接続部分の絶縁被覆を剥離した上で、一方の端部が第1電極8aに、途中が第3電極8cに、他方の端部が第2電極8bに、それぞれ接続されている。なお、コイル導体9の、第1電極8aから第3電極8cまでの巻数と、第3電極8cから第2電極8bまでの巻数は等しくなっている。
【0034】
また、インダクタ4は、フェライトなどの磁性体からなる天板10を備える。そして、天板10の一方の端辺が、第1鍔部7aの第1電極8aが形成されていない端面に、他方の端辺が、第2鍔部7bの第2電極8bが形成されていない端面に、接着剤(図示せず)などにより、それぞれ接合されている。
【0035】
このような構造からなるインダクタ4は、第1電極8aがランド電極3aに、第2電極8bがランド電極3bに、第3電極8cがランド電極3cに、それぞれ、はんだ(図示せず)などにより接合されて、基板1に実装されている。
【0036】
かかる構造からなる本実施形態の差動伝送モジュール100は、たとえば、次の方法によって製造される。
【0037】
まず、基板1上に、差動伝送路2a、2bおよびランド電極3a、3b、3cを形成する。具体的には、たとえば、基板1を用意し、その表面の全面に銅箔を貼着し、銅箔をエッチングして、所望の形状からなる差動伝送路2a、2bおよびランド電極3a、3b、3cを形成する。
【0038】
また、これと並行して、コア5および天板10を作成する。具体的には、コア5、天板10は、たとえば、フェライトなどの磁性粉を所定の形状からなる金型に充填し、加圧して成型することにより作成する。このとき、加圧に加えて、加熱するようにしても良い。また、成型後に焼成するようにしても良い。
【0039】
次に、コア5の第1鍔部7a、第2鍔部7b、第3鍔部7cに、それぞれ、第1電極8a、第2電極8b、第3電極8cを形成する。具体的には、第1電極8a、第2電極8b、第3電極8cは、たとえば、第1鍔部7a、第2鍔部7b、第3鍔部7cの、それぞれ1つの端面、およびそれらの端面に繋がる周囲の4つの面に跨って銀ペーストを塗布し、焼付けることにより形成する。
【0040】
次に、コア5の巻芯部6に、たとえば、巻線機を用いて、コイル導体9を巻回する。
【0041】
次に、コイル導体9の一方の端部を第1電極8aに接続し、途中を第3電極8cに接続し、他方の端部を第2電極8bに接続する。具体的には、たとえば、コイル導体9の接続部分を絶縁被覆剥離剤に浸漬し、絶縁被覆を剥離したうえで、熱圧着して、それぞれの接続をおこなう。なお、図3においては、コイル導体9の、第1電極8a、第2電極8b、第3電極8cに対して熱圧着した部分を、他の部分よりも太く示している。
【0042】
このように、本実施形態においては、差動伝送モジュールに使用するインダクタを1本のコイル導体を使用して作成しているので、生産性に優れている。
【0043】
次に、コア5に天板10を接合して、インダクタ4を完成させる。
【0044】
そして、完成したインダクタ4を基板1に実装することにより、第1実施形態にかかる差動伝送モジュール100を完成させる。具体的には、インダクタ4の第1電極8aをランド電極3aに、第2電極8bをランド電極3bに、第3電極8cをランド電極3cに、それぞれ、リフローはんだなどの方法により接合する。
【0045】
以上、本発明の第1実施形態にかかる差動伝送モジュール100の構造、およびその製造方法の一例について説明した。しかしながら、本発明が上述した内容に限定されることはなく、発明の趣旨に沿って、種々の変更をなすことができる。
【0046】
たとえば、上述した実施形態では、基板1の表面に、差動伝送路2a、2bおよびランド電極3a、3b、3cのみを形成しているが、さらに他の回路を形成し、別の機能を付加させても良い。また、コア5の形状や、コイル導体9の巻数なども任意であり、上述した内容には限定されない。
[第2実施形態]
図4に、本発明の第2実施形態にかかる差動伝送モジュール200を示す。
【0047】
上述した第1実施形態にかかる差動伝送モジュール100では、インダクタ4のコア5の第3鍔部7cの、1つの端面、およびその端面に繋がる周囲の4つの面の一部にのみ、第3電極8cを形成したが、第2実施形態にかかる差動伝送モジュール200においては、第3鍔部7cの4つの端面全周にわたって、第3電極18cを形成するようにした。なお、差動伝送モジュール200の他の部分は、差動伝送モジュール100と同様の構造とした。
【0048】
第2実施形態にかかる差動伝送モジュール200では、第3鍔部の両側間での磁束の漏れが、第1実施形態にかかる差動伝送モジュール100よりも少なくなっており、中間点に設けられた端子と差動伝送路との間のコモンモードインピーダンスは、さらに低くなっており、コモンモード信号に対する損失はより小さくなっている。
【実験例】
【0049】
本発明の有効性を確認するために、次の実験をおこなった。
【0050】
まず、本発明にかかる実施例として、上述した第1実施形態にかかる差動伝送モジュール100を用意した。また、比較例1として、図8に示した従来のインダクタ300を2個用いて、差動伝送モジュール100と同様の差動伝送モジュールを構成した。また、比較例2として、図9に示した従来のコモンモードチョークコイル400を用いて、差動伝送モジュール100と同様の差動伝送モジュールを構成した。
【0051】
そして、実施例、比較例1、比較例2について、図5(A)に示すように、ポート1とポート2との間、すなわち差動伝送路2aと差動伝送路2bとの間の周波数−インピーダンス特性を測定した。差動伝送路2aと差動伝送路2bとの間のインピーダンスは、高いほど差動伝送路に与える影響が少ないため好ましい。測定結果を、図6に示す。
【0052】
また、実施例、比較例1、比較例2について、図5(B)に示すように、ポート3とポート4との間、すなわち、差動伝送路2aと差動伝送路2bとを短絡させた部分と、インダクタの中間点に設けられた端子との間の、周波数−インピーダンス特性を測定した。この値は、コモンモード信号の出力部分のインピーダンスに相当するため、値が低いほどコモンモード信号に与える影響が少なく好ましい。測定結果を、図7に示す。
【0053】
図6から分かるように。ポート1とポート2との間のインピーダンスは、80MHz以下では、実施例、比較例1、比較例2は同等レベルであるが、80MHz以上では、比較例1の値が最も低くなり、さらに200MHz以上では、比較例2の値が下がり、実施例の値が最も高くなる。この結果より、200MHz以上の差動信号に対して最も影響を与えないのは、本発明の実施例にかかる差動伝送モジュール100であることが分かる。
【0054】
また、図7から分かるように、ポート3とポート4との間のインピーダンスは、300〜400MHzの範囲を除いては、比較例1が最も高く、100MHz以下では、実施例と比較例2とが近い値となっている。
【0055】
以上から、200MHz以上の差動信号に対して、最も影響を与えないのは本発明の実施例にかかる差動伝送モジュール100であることが分かる。また、コモンモード信号に与える影響が最も大きいのは比較例1であり、100MHz以下の信号に対しては、実施例と比較例2との与える影響は同程度であるといえる。
【0056】
したがって、差動信号の周波数が200MHz以上であり、かつコモンモード信号の周波数が100MHz以下である回路系に対しては、本発明の実施例にかかる差動伝送モジュール100の与える影響が最も小さいと言える。
【0057】
また、本実験例では測定をおこなっていないが、コモンモード信号の代わりに電源電流を重畳(注入)する場合においても、本発明の実施例にかかる差動伝送モジュール100では、比較例2と同様に、電源電流で発生する磁束が打ち消される。したがって、電源電流が比較的大きい場合においても、コア5、天板10の磁性体材料が磁気飽和を起こしにくく、差動信号に与える影響が少ないという利点がある。
【符号の説明】
【0058】
1:基板
2a、2b:差動伝送路
3a、3b、3c:ランド電極
4:インダクタ
5:コア
6:巻芯部
7a:第1鍔部
7b:第2鍔部
7c:第3鍔部
8a:第1電極
8b、18b:第2電極
8c:第3電極
9:コイル導体
10:天板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成された1対の差動伝送路と、
前記1対の差動伝送路間に実装された、前記1対の差動伝送路に対してコモンモード信号の検出または注入をおこなうためのインダクタとを備えた差動伝送モジュールであって、
前記インダクタは、磁性体からなるコアおよび天板と、前記コアに巻回されたコイル導体とを備え、
前記コアは、棒状の巻芯部と、前記巻芯部の両端に形成された第1鍔部および第2鍔部と、前記巻芯部の途中に形成された第3鍔部とを備え、
前記第1鍔部には第1電極が、前記第2鍔部には第2電極が、前記第3鍔部には第3電極がそれぞれ形成され、
前記コイル導体は、前記巻芯部に一定の方向に巻回され、一方の端部が前記第1電極に接続され、途中部分が前記第3電極に接続され、他方の端部が前記第2電極に接続され、前記第1電極から前記第3電極までの巻数と、前記第3電極から前記第2電極までの巻数とが等しく、
前記天板は板状からなり、対向する一方の端辺が前記第1鍔部に接合され、他方の端辺が前記第2鍔部に接合され、
前記第1電極が前記1対の差動伝送路の一方に接続され、前記第2電極が前記1対の差動伝送路の他方に接続され、第3電極が前記1対の差動伝送路に対してコモンモード信号の検出または注入をおこなうための端子とされている差動伝送モジュール。
【請求項2】
前記第3電極が、前記第3鍔部の端面全周にわたって形成されている、請求項1に記載された差動伝送モジュール。
【請求項3】
前記インダクタが、前記コモンモード信号の検出または注入に代えて、電源電流の注入をおこなう、請求項1または2に記載された差動伝送モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−70252(P2013−70252A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207532(P2011−207532)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】