説明

差動伝送回路、光送受信モジュール、及び情報処理装置

【課題】差動伝送線路が屈曲領域を有する場合にも、2つの差動信号に生じる遅延時間差が抑制されるとともに、高密度な実装を可能とする、差動伝送線路、並びに、それを用いた光送受信モジュール及び情報処理装置の提供。
【解決手段】本発明に係る差動伝送線路は、1対の伝送線導体と、1対の伝送線導体と対向する領域を含んで外方に広がる接地導体層とを備える、差動伝送線路であって、1対の伝送線導体は、第1の幅で互いに平行して第1の方向に延伸するとともに第1の一層上に形成される、第1の直線領域と、1対の伝送線導体の一方は第1の層上に形成され、他の一方は第2の層に形成され、1対の伝送線導体が立体的に交差するとともに、第1の直線領域の前方に配置される第1の交差領域と、を含み、第1の交差領域における1対の伝送導体の幅それぞれは、ともに前記第1の幅より小さい、ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、差動伝送線路、並びに、それを用いた光送受信モジュール及び情報処理装置に関し、特に、差動伝送線路によって伝送される伝送信号の品質向上に関する。
【背景技術】
【0002】
高速度のデジタル信号伝送には、伝送線路が用いられている。例えば、数百Mbps以上のデジタル信号伝送には、シングルエンド伝送ではなく、差動伝送を用いるのが一般的であり、差動伝送を行うための伝送線路が差動伝送線路である。差動伝送線路は、接地導体層と、接地導体層の上方に誘電体層を介して設けられストリップ状に延伸し同一層上に形成される1対の(2つ)の伝送線導体とで、形成される。差動伝送には、信号電圧の振幅を小さく出来、ノイズの影響を受けにくい等の利点がある反面、1対の伝送線導体の長さが異なると伝送される差動信号が劣化するという問題がある。1対の伝送線導体の長さが異なると、差動伝送線路を伝送する2つの差動信号に遅延時間差が生じるからである。それゆえ、1対の伝送線導体は、互いに平行して直線状に延伸し、1対の伝送線導体の長さが等しくなるよう、形成されるのが一般的である。しかし、プリント回路基板上に配置する素子との位置関係などにより、伝送線路を屈曲して配置する必要が生じる場合がある。
【0003】
図26は、従来技術に係る差動伝送線路の一例を示す平面図である。図26に示す差動伝送線路は、90度に屈曲する屈曲領域と、平行して延伸する直線領域とを有している。図26には、1対の伝送線導体として、Pデータ導体膜181と、Nデータ導体膜281とが、示されており、屈曲領域において外側を通るPデータ導体膜181の長さが、内側を通るNデータ導体膜281の長さより、長くなっており、差動伝送線路を伝送する2つの差動信号に遅延時間差が生じている。
【0004】
屈曲領域の存在により生じる、1対の伝送線導体の長さを補償する従来技術として、例えば、以下の2つがある。一つには、Pデータ導体膜181とNデータ導体膜281の形状を工夫することにより、2つの導体膜の長さを等しくし、等長配線とすることである。すなわち、屈曲領域によって、長さが短くなっているNデータ導体膜281を、他の領域で一部蛇行させる形状とすることにより、1対の伝送線導体の長さの差を軽減し、2つの差動信号に生じる遅延時間差を補償する。
【0005】
他の一つには、差動伝送線路の屈曲領域において、接地導体層に複数のスロットを設ける技術であり、特許文献1に記載されている。差動伝送線路の屈曲領域において、1対の伝送線路導体の下方に位置する接地導体層に、複数のスロットを設けることにより、長さが短くなっている伝送線導体に対応して接地導体層上に流れる高周波電流が、そのスロット形状により迂回するので、1対の伝送線導体の長さの差に起因して生じる2つの差動信号における遅延時間差を補償する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3954641号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
デバイスの小型化、低コスト化、高機能化などの要求により、近年、プリント回路基板には、さらなる高密度な実装が必要とされている。
【0008】
1対の伝送線導体の形状を工夫することにより等長配線にする手法は、差動伝送線路の断面形状を、多くの領域において同一とすることが出来るので、反射損失の抑制が容易である。しかし、伝送線導体に、一部蛇行させる形状を設けるため、この蛇行部分の領域を確保する必要があり、伝送線導体のパタン面積の増大を招き、プリント回路基板に、高密度な実装をすることを困難にする。
【0009】
これに対して、特許文献1に記載されている技術では、屈曲領域において遅延時間差を補償しているので、補償のための領域を伝送線導体に別途設ける必要がなく、伝送線導体のパタン面積の増大が抑制されている。しかし、接地導体層に複数のスロットが設けられているので、1対の伝送線導体と接地導体層の間に生じる電磁波の一部が、複数のスロットを通過して、接地導体層の反対側へ広がることとなる。これが、ノイズの原因となってしまう。このノイズを抑制するために、接地導体層の反対側に、スロットのない接地導体層をさらに追加するなどの対策が必要となり、プリント基板に、高密度な実装をすることを困難にする。また、スロットの有無によって、差動伝送線路の断面形状が異なるため、伝送線路の反射損失が増大し、反射損失を抑制する設計が複雑になり、設計及び製品検証に要する時間とコストが増大するという問題が生じる。
【0010】
本発明は、係る事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、差動伝送線路が屈曲領域を有する場合にも、2つの差動信号に生じる遅延時間差が抑制されるとともに、高密度な実装を可能とする、差動伝送線路、並びに、それを用いた光送受信モジュール及び情報処理装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)上記課題を解決するために、本発明に係る差動伝送線路は、接地導体層と、前記接地導体層の一方側に誘電体層を介してともに設けられる、1対の伝送線導体と、を備え、前記接地導体層は、前記1対の伝送線導体と対向する領域を含んで外方に広がるとともに、前記1対の伝送線導体と前記接地導体層で1対の伝送線路を形成する、差動伝送線路であって、前記1対の伝送線導体は、前記1対の伝送線導体がともに第1の幅で互いに平行して第1の方向に延伸するとともに第1の一層上に形成される、第1の直線領域と、前記1対の伝送線導体の一方は前記第1の層上に形成され、他の一方は前記第1の層と異なる第2の層に形成され、前記1対の伝送線導体が前記誘電体層を介して立体的に交差し、前記第1の直線領域の前方に配置される第1の交差領域と、を含み、前記第1の交差領域における前記1対の伝送導体の幅それぞれは、ともに前記第1の幅より小さい、ことを特徴とする。
【0012】
(2)上記(1)に記載の差動伝送線路であって、前記1対の伝送線導体の前記他の一方は、前記第1の直線領域と前記第1の交差領域との間に第1のバイアホールを備え、前記1対の伝送線導体の前記他の一方は、前記第1の直線領域より前記第1のバイアホールへ前記第1の層上を延伸し、前記第1の層から前記第2の層へ前記第1のバイアホールを貫通し、前記交差領域を貫いて前記第2の層上をさらに延伸し、前記1対の伝送線導体の少なくともいずれかは、前記第1の直線領域と前記第1の交差領域との間においてへ屈曲してもよい。
【0013】
(3)上記(2)に記載の差動伝送線路であって、前記1対の伝送線導体の前記他の一方は、前記第1の交差領域の前方に第2のバイアホールをさらに備え、前記1対の伝送線導体の前記他の一方は、前記第1の交差領域より前記第2のバイアホールへ前記第2の層上を延伸し、前記第2の層から前記第1の層へ前記第2のバイアホールを貫通し、さらに前方へ前記第1の層上を延伸し、前記1対の伝送線導体の少なくともいずれかは、前記第1の交差領域の前方において屈曲してもよい。
【0014】
(4)上記(3)に記載の差動伝送線路であって、前記1対の伝送線導体の片方のみが、前記第1の直線領域と前記第1の交差領域との間において、前記第1の方向から前記第1の方向とは異なる第2の方向へ屈曲し、前記1対の伝送線導体の他の片方のみが、前記第1の交差領域の前方において、前記第1の方向から前記第2の方向へ屈曲し、前記第1の直線領域において、前記片方の伝送線導体は、前記第1の方向から前記第2の方向への屈曲に対して、外側の伝送線導体であり、前記他の片方の伝送線導体は、内側の伝送線導体であってもよい。
【0015】
(5)上記(4)に記載の差動伝送線路であって、前記1対の伝送線導体は、前記1対の伝送線導体がともに第2の幅で互いに平行して前記第2の方向に延伸するとともに前記第1の層上に形成される、第2の直線領域を、前記第2のバイアホールの前方に、さらに含んでいてもよい。
【0016】
(6)上記(5)に記載の差動伝送線路であって、前記第2の幅は、前記第1の幅と等しくてもよい。
【0017】
(7)上記(3)に記載の差動伝送線路であって、前記接地導体層の上方からみて平面的に測定される伝送線導体の配線長を比較した場合に、前記1対の伝送線導体の前記一方の配線長は、前記他の一方の配線長より、前記第1及び前記第2のバイアホールの厚みに起因する遅延時間の増加分を補償するよう、長くなっていてもよい。
【0018】
(8)上記(7)に記載の差動伝送線路であって、前記1対の伝送線導体の前記一方は、前記第1及び前記第2のバイアホールの厚みに起因する遅延時間の増加分を補償するよう、迂回して延伸する部分を有していてもよい。
【0019】
(9)上記(3)に記載の差動伝送線路であって、前記1対の伝送線導体の前記一方は、第3及び第4のバイアホールをさらに備え、前記1対の伝送線導体の前記一方は、前記第1の層上を前方の前記第3のバイアホールへ延伸し、前記第1の層から前記第2の層へ前記第3のバイアホールを貫通し、さらに前記第2の層上を前方の前記第4のバイアホールへさらに延伸し、前記第2の層から前記第1の層へ前記第4のバイアホールを貫通し、さらに前方へ前記第1の層上をさらに延伸してもよい。
【0020】
(10)上記(5)に記載の差動伝送線路であって、前記1対の伝送線導体は、前記1対の伝送線導体の一方は前記第1の層上に形成され、他の一方は前記第2の層に形成され、前記1対の伝送線導体が前記誘電体層を介して立体的に交差する第2の交差領域を、前記第2の直線領域の前方に、前記1対の伝送線導体がともに第3の幅で互いに平行して前記第2の方向と異なる第3の方向に延伸するとともに、前記第1の層上に形成される、第3の直線領域を、前記第2の交差領域の前方に、さらに含み、前記第2の交差領域における前記1対の伝送線導体の前記他の一方は、前記第2の直線領域と前記第2の交差領域との間に第3のバイアホールを、前記第2の交差領域と前記第3の直線領域との間に第4のバイアホールを、さらに備え、前記第2の交差領域における前記1対の伝送線導体の前記他の一方は、前記第1の層上を前方の前記第3のバイアホールへ延伸し、前記第1の層から前記第2の層へ前記第3のバイアホールを貫通し、さらに前記第2の層上を前方の前記第4のバイアホールへさらに延伸し、前記第2の層から前記第1の層へ前記第4のバイアホールを貫通し、さらに前方の前記第3の直線領域へ前記第1の層上をさらに延伸し、前記第3の方向の前記第2の方向に対する方向変化の向きは、前記第2の方向の前記第1の方向に対する方向変化の向きと等しく、前記1対の伝送線導体の前記他の片方のみが、前記第2の直線領域と前記第2の交差領域との間において、前記第2の方向から前記第3の方向へ屈曲し、前記1対の伝送線導体の前記片方のみが、前記第2の交差領域と前記第3の直線領域との間において、前記第2の方向から前記第3の方向へ屈曲し、前記第2の交差領域における前記1対の伝送導体の幅それぞれは、ともに前記第3の幅より小さくてもよい。
【0021】
(11)上記(10)に記載の差動伝送線路であって、前記第1の交差領域における前記1対の伝送線導体の前記一方は、前記第2の交差領域における前記1対の伝送線導体の前記他の一方であってもよい。
【0022】
(12)上記(10)に記載の差動伝送線路であって、前記第2の幅及び前記第3の幅は、ともに前記第1の幅と等しくてもよい。
【0023】
(13)上記(2)に記載の差動伝送線路であって、前記1対の伝送線導体の前記一方は、前記第1の交差領域の前方に、第2のバイアホールを備え、前記1対の伝送線導体は、前記1対の伝送線導体がともに第2の幅で互いに平行して前記第1の方向とは異なる第2の方向に延伸するとともに、前記第2の層上に形成される、第2の直線領域を、前記第2のバイアホールの前方に、さらに含み、前記1対の伝送線導体の前記一方は、前記第1の直線領域から前記第1の交差領域を貫き前記第2のバイアホールへ延伸し、前記第1の層から前記第2の層へ前記第2のバイアホールを貫通し、前記第2の直線領域へ前記第2の層上をさらに延伸し、前記1対の伝送線導体の前記他の一方は、前記第1のバイアホールから前記第2の直線領域へ前記第2の層上をさらに延伸し、前記1対の伝送線導体の片方のみが、前記第1の直線領域と前記第1の交差領域との間において、前記第1の方向から前記第2の方向へ屈曲し、前記1対の伝送線導体の他の片方のみが、前記第1の交差領域と前記第2の直線領域との間において、前記第1の方向から前記第2の方向へ屈曲し、前記第1の直線領域において、前記片方の伝送線導体は、前記第1の方向から前記第2の方向への屈曲に対して、外側の伝送線導体であり、前記他の片方の伝送線導体は、内側の伝送線導体であってもよい。
【0024】
(14)上記(13)に記載の差動伝送線路であって、前記1対の伝送線導体は、前記1対の伝送線導体の一方は前記第1の層上に形成され、他の一方は前記第2の層に形成され、前記1対の伝送線導体が前記誘電体層を介して立体的に交差する第2の交差領域を、前記第2の直線領域の前方に、前記1対の伝送線導体がともに第3の幅で互いに平行して前記第2の方向と異なる第3の方向に延伸するとともに、前記第1の層上に形成される、第3の直線領域を、前記第2の交差領域の前方に、さらに含み、前記第2の交差領域における前記1対の伝送線導体の前記一方は、前記第2の直線領域と前記第2の交差領域との間に第3のバイアホールを、さらに備え、前記第2の交差領域における前記1対の伝送線導体の前記他の一方は、前記第2の交差領域と前記第3の直線領域との間に第4のバイアホールを、さらに備え、前記第2の交差領域における前記1対の伝送線導体の前記一方は、前記第2の層上を前方の前記第3のバイアホールへ延伸し、前記第2の層から前記第1の層へ前記第3のバイアホールを貫通し、前記第3の直線領域へ前記第1の層上をさらに延伸し、前記第2の交差領域における前記1対の伝送線導体の前記他の一方は、前記第2の層上を前方の前記第4のバイアホールへ延伸し、前記第2の層から前記第1の層へ前記第4のバイアホールを貫通し、前記第3の直線領域へ前記第1の層上をさらに延伸し、前記第3の方向の前記第2の方向に対する方向変化の向きは、前記第2の方向の前記第1の方向に対する方向変化の向きと等しく、前記1対の伝送線導体の前記片方のみが、前記第2の交差領域と前記第3の直線領域との間において、前記第2の方向から前記第3の方向へ屈曲し、さらに前方を前記第3の方向に延伸し、前記1対の伝送線導体の前記他の片方のみが、前記第2の直線領域と前記第2の交差領域との間において、前記第2の方向から前記第3の方向へ屈曲し、さらに前方を前記第3の方向に延伸し、前記第2の交差領域における前記1対の伝送導体の幅それぞれは、ともに前記第3の幅より小さくてもよい。
【0025】
(15)上記(1)に記載の差動伝送線路であって、前記第1の交差領域において、前記1対の伝送導体は、前記接地導体層の上方から見て、直交していてもよい。
【0026】
(16)上記(10)に記載の差動伝送線路であって、前記第2の交差領域において、前記1対の伝送導体は、前記接地導体層の上方から見て、直交していてもよい。
【0027】
(17)本発明に係る光送受信モジュールは、上記(1)乃至(16)のいずれかに記載の差動伝送線路、を備える光送受信モジュールであってもよい。
【0028】
(18)本発明に係る情報処理装置は、接地導体層と、前記接地導体層の上表面に設けられる誘電体層と、伝送方向に沿って順に並ぶとともに互いに電気的に接続される、第1導電膜、第2導電膜、及び第3導電膜、を有する第1伝送線路と、伝送方向に沿って順に並ぶとともに互いに電気的に接続される、第4導電膜、第5導電膜、及び第6導電膜、を有する第2伝送線路と、を備え、前記第1導電膜、前記第2導電膜、前記第3導電膜、前記第4導電膜、及び第6導電膜は、前記誘電体層の上表面に設けられ、前記第5導電膜は、前記誘電体層の内部でかつ前記接地導体層の上方に設けられ、前記第1導電膜と前記第4導電膜は、ともに第1の幅で互いに平行して第1の方向に延伸し、前記第3導電膜と前記第6導電膜は、ともに前記第1の幅で互いに平行して第2の方向に延伸し、前記第2導電膜と前記第5導電膜は、交差領域において立体的に交差するよう配置されるとともに、前記交差領域における前記第2導体膜の幅と前記第5導体膜の幅はともに前記第1の幅より小さく、前記第1及び前記第2伝送線路と、前記接地導体層と、で1対の差動伝送線路を形成する、ことを特徴としてもよい。
【0029】
(19)本発明に係る情報処理装置は、上記(18)に記載の情報処理装置であって、前記第1及び前記第2伝送線路、前記接地導体層、並びに前記誘電体層を含むプリント回路基板と、前記プリント基板上に搭載され、差動クロック信号対を出力する差動クロック信号出力端子対を有する第1集積回路と、前記プリント基板上に搭載され、前記差動クロック信号対の一方を受信する入力端子を有する第2集積回路と、をさらに備え、前記第1及び前記第4導体膜は前記差動クロック信号出力端子対に接続され、前記第3又は前記第6導体膜のいずれか一方は前記入力端子に接続されてもよい。
【0030】
(20)本発明に係る情報処理装置は、上記(19)に記載の情報処理装置であって、終端抵抗と、前記終端抵抗と前記第2集積回路を含む領域を覆うシールド蓋と、をさらに備え、前記第3又は前記第6導体膜のいずれか一方は前記入力端子に接続され、前記第3又は前記第6導体膜の他方は前記終端抵抗に接続されてもよい。
【0031】
(21)本発明に係る情報処理装置は、上記(18)に記載の情報処理装置であって、前記第1及び前記第2伝送線路、前記接地導体層、並びに前記誘電体層を含むプリント回路基板と、前記プリント基板上に搭載され、差動クロック信号対を出力する差動クロック信号出力端子対を有する第1集積回路と、前記プリント基板上に搭載され、前記差動クロック信号対を受信する差動入力端子対を有する第2集積回路と、前記第2集積回路を含む領域を覆うシールド蓋と、をさらに備え、前記第1及び前記第4導体膜は前記差動クロック信号出力端子対に接続され、前記第3及び前記第6導体膜は前記差動入力端子対に接続されてもよい。
【0032】
(22)本発明に係る情報処理装置は、上記(18)に記載の情報処理装置であって、前記第1及び第2伝送線路、前記接地導体層、並びに前記誘電体層を含むプリント回路基板と、前記プリント基板上に搭載され、差動シリアルデータ信号対を出力する差動シリアルデータ信号出力端子対を有する第1集積回路と、前記プリント基板上に搭載され、前記差動シリアルデータ信号対が入力される入力端子対を有し、入力された前記差動シリアルデータ信号に基づき光変調信号を出力する光送信用素子モジュールと、をさらに備え、前記第1及び前記第4導体膜は前記差動シリアルデータ信号出力端子対に接続され、前記第3又は前記第6導体膜のいずれか一方は、前記入力端子対のいずれか一方に接続されてもよい。
【0033】
(23)本発明に係る情報処理装置は、上記(22)に記載の情報処理装置であって、前記光送信用素子モジュールは内部に電界吸収型変調器集積レーザ素子と、第1および第2終端抵抗とを、さらに備え、前記第3又は前記第6導体膜のいずれか一方は、前記電界吸収型集積レーザ素子の電界吸収型変調器部および前記第1終端抵抗に接続され、前記第3又は前記第6導体膜の他方は、前記電界吸収型集積レーザ素子のレーザダイオードおよび前記第2終端抵抗に接続されてもよい。
【発明の効果】
【0034】
本発明により、差動伝送線路が屈曲領域を有する場合にも、2つの差動信号に生じる遅延時間差が抑制されるとともに、高密度な実装を可能とする、差動伝送線路、並びに、それを用いた光送受信モジュール及び情報処理装置が、提供される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る光送受信モジュールのブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る光送受信モジュールのデータ伝送部の全体斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る差動伝送線路の屈曲領域付近を示す上面図である。
【図4】プリント回路基板の図3のIV−IV線における断面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る差動伝送線路の解析結果を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施形態の差動伝送線路の他の解析結果を示す図である。
【図7】理想伝送線路モデルを説明する図である。
【図8】理想伝送線路モデルの解析結果を示す図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る差動伝送線路の屈曲領域付近を示す上面図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る差動伝送線路の解析結果を示す図である。
【図11】本発明の第3の実施形態に係る差動伝送線路の屈曲領域付近を示す上面図である。
【図12】本発明の第3の実施形態に係る差動伝送線路の解析結果を示す図である。
【図13】本発明の第4の実施形態に係る光送受信モジュールのデータ伝送部の全体斜視図である。
【図14】本発明の第4の実施形態に係る差動伝送線路の2つの屈曲領域付近を示す上面図である。
【図15】本発明の第4の実施形態に係る差動伝送線路の解析結果を示す図である。
【図16】本発明の第5の実施形態に係る差動伝送線路の2つの屈曲領域付近を示す上面図である。
【図17】本発明の第5の実施形態に係る差動伝送線路の解析結果を示す図である。
【図18】本発明の第6の実施形態に係る差動伝送線路の2つの屈曲領域付近を示す上面図である。
【図19】本発明の第6の実施形態に係る差動伝送線路の解析結果を示す図である。
【図20】本発明の第7の実施形態に係る差動伝送線路の屈曲領域付近を示す上面図である。
【図21】本発明の第7の実施形態に係る差動伝送線路の解析結果を示す図である。
【図22】本発明の第7の実施形態に係る情報処理装置のRZ変調部の回路図である。
【図23】本発明の第7の実施形態に係る情報処理装置のRZ変調部の斜視図である。
【図24】本発明の第8の実施形態に係る情報処理装置のRZ変調部の回路図である。
【図25】本発明の第9の実施形態に係る情報処理装置の送信部の回路図である。
【図26】従来技術に係る差動伝送線路の一例を示す平面図である。
【図27】従来技術に係る差動伝送線路の他の一例を示す平面図である。
【図28】従来技術に係る差動伝送線路の他の一例を示す平面図である。
【図29】従来技術に係る伝送線路の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明に係る実施形態について、以下に、詳細な説明をする。ただし、以下に示す図は、あくまで、各実施形態の実施例を説明するものであって、図の大きさと本実施例記載の縮尺は必ずしも一致するものではない。
【0037】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る差動伝送線路及び光送受信モジュールについて説明する。
【0038】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る光送受信モジュール1のブロック図である。当該実施形態に係る光送受信モジュール1は、光送信用素子モジュール6と、光受信用素子モジュール5と、データ伝送部2と、制御部7を、備えている。また、光送受信モジュール1は、伝送装置本体13に接続されている。
【0039】
データ伝送部2は、送受信一体型CDR(Clock Data Recovery)集積回路3及び駆動集積回路4を備えている。送受信一体型CDR集積回路3は、送信機能と受信機能を統合した集積回路(IC)であり、端子間のアイソレーションを得るために、送受信一体型CDR集積回路3の4辺それぞれに、送信側差動出力端子3a、送信側差動入力端子3b、受信側差動出力端子3c、受信側差動入力端子3dが配置されている。
【0040】
送受信一体型CDR集積回路3の送信側差動出力端子3aと、駆動集積回路4の差動入力端子との間に、差動伝送線路8が配置され、送受信一体型CDR集積回路3から駆動集積回路4へ、差動伝送線路8上を差動信号が伝送される。同様に、駆動集積回路4と光送信用素子モジュール6との間に、送信側差動出力伝送線路27が配置される。
【0041】
送受信一体型CDR集積回路3の送信側差動入力端子3bと伝送装置本体13との間に送信側差動入力伝送線路9が、受信側差動出力端子3cと伝送装置本体13との間に受信側差動出力伝送線路10が、受信側差動入力端子3dと光受信用素子モジュール5との間に、受信側差動入力伝送線路11が、それぞれ配置される。
【0042】
シリアルデータである電気出力信号が、伝送装置本体13より送受信一体型CDR集積回路3へ、差動信号として送信側差動入力伝送線路9上を伝送される。送受信一体型CDR集積回路3が電気出力信号に波形整形などを加えた(CDR機能)後に、差動伝送線路8を介して、電気出力信号が、駆動集積回路4へ伝送される。駆動集積回路4が、電気出力信号を増幅して、送信側差動出力伝送線路27を介して、電気出力信号が光送信用素子モジュール6へ伝送される。そして、光送信用素子モジュール6が電気出力信号を光出力信号に変換し、光出力信号を光ファイバ(図示せず)に送信する。ここで、光送信用素子モジュール6は、例えば、マッハツェンダー(MZ)変調器とレーザ発振器を備え、レーザ発振器が発振する波長1.5μm帯のレーザ光をマッハツェンダー変調器が変調することにより、光出力信号に変換する発光素子モジュールである。
【0043】
同様に、光受信用素子モジュール5は、光ファイバ(図示せず)より入力される光入力信号を受光し、電気入力信号に変換し、電気入力信号が、受信側差動入力伝送線路11上を差動信号として、送受信一体型CDR集積回路3へ伝送される。そして、送受信一体型CDR集積回路3が電気入力信号に波形整形などを加えた(CDR機能)後に、電気入力信号が受信側差動出力伝送線路10上を伝送装置本体13へ伝送される。
【0044】
制御部7に、伝送装置本体13より、デジタル通信インターフェース15を介して、制御信号が入力され、入力される制御信号に基づき、制御部7は、制御信号線14を介して、光送信用素子モジュール6がレーザ光を発振するためのバイアス電流制御や、光出力信号に変調する信号の振幅制御などを行っている。また、光送信用素子モジュール6が、温度調節素子(図示せず)を備える場合は、温度制御等も行う。
【0045】
図2は、当該実施形態に係る光送受信モジュール1のデータ伝送部2の全体斜視図である。データ伝送部2は、光送受信モジュール1の電気信号(シリアルデータ)を伝送する電子回路であり、プリント回路基板16上に、前述の集積回路や差動伝送線路が配置されている。
【0046】
データ伝送部2の送信側差動出力伝送線路27の一端に、FPC(Flexible Printed Circuits)接続端子17が配置されており、電気出力信号は、FPC接続端子17を介して、光送信用素子モジュール6へ伝送される。また、差動伝送線路8の2本の伝送線それぞれに、DCカット容量31,32が備えられている。DCカット容量31,32は、例えば、容量値0.1μFの1005サイズの表面実装型キャパシタであるが、必要がない場合には削除してもよい。図2に示す通り、他の差動伝送線路にも、必要に応じて、DCカット容量が備えられている。なお、図2には、受信側差動出力伝送線路10は、簡略して表されており、実際の構造とは異なる。
【0047】
本発明の特徴は、差動伝送線路8の構造にある。光送受信モジュール1が、送受信一体型CDR集積回路3を備え、光入力信号と光出力信号が、送受信一体型CDR集積回路3をともに入出力する。そして、光受信用素子モジュール5と光送信用素子モジュール6を、光ファイバ側に並べて配置しようとすると、これら信号を伝送する複数の差動伝送線路のいずれかは屈曲して配置する必要が生じる。差動伝送線路8は屈曲領域を有しているが、伝送される2つの差動信号に通常生じてしまう遅延時間差が抑制されている構造となっている。
【0048】
図3は、当該実施形態に係る差動伝送線路8の屈曲領域付近を示す上面図である。図3は、図2に破線で示す領域IIIを拡大した上面図である。差動伝送線路8は、プリント回路基板16上に形成されており、図3には、差動伝送線路8の屈曲領域BTと、その両端にそれぞれ接している第1の直線領域SL1と第2の直線領域SL2とが示されている。
【0049】
差動伝送線路8は、接地導体層18と1対(2つ)の伝送線導体とで、1対(2つ)の伝送線路を形成している。ここで、1対の伝送線導体をそれぞれ、第1の伝送線導体と第2の伝送線導体とし、第1の伝送線導体と接地導体層18とで第1の伝送線路が、第2の伝送線導体と接地導体層18とで第2の伝送線路が、それぞれ形成されているとする。1対の伝送線路それぞれに、正側伝送信号(Pデータ)と負側伝送信号(Nデータ)が伝送し、負側伝送信号に対する正側伝送信号の電位差が信号レベルとなる。ここで、便宜上、第1の伝送線導体が正側伝送線信号を伝送するPデータ伝送線導体で、第2の伝送線導体が負側伝送信号を伝送するNデータ伝送線導体とするが、これに限定されないのは言うまでもない。
【0050】
接地導体層18は、特許文献1に記載されている接地導体層と異なり、屈曲領域BTにおいても、スリットは存在していない。すなわち、接地導体層18は、1対の伝送線導体と対向する領域を含み、該領域の外方に広がって形成されている。図3には、接地導体層18は、一面に広がる形状をしている場合が示されている。
【0051】
第1の伝送線導体は、図3において、第1上層Pデータ導体膜101として示されており、第2の伝送線導体は、図3において、第1上層Nデータ導体膜201と、第2上層Nデータ導体膜202と、第1下層Nデータ導体膜203と、第1のバイアホール204、及び第2のバイアホール205として示されている。図3に示す通り、1対の伝送線導体は、その形状によって、第1の直線領域SL1と、屈曲領域BTと、第2の直線領域SL2に分類している。第1の直線領域SL1では、1対の伝送線導体がともに第1の幅となる幅W0で互いに平行して、下側へ(第1の方向に)延伸している。第2の直線領域SL2では、1対の伝送線導体がともに第2の幅となる幅W0で互いに平行して、右側へ(第2の方向に)延伸している。屈曲領域BTは、第1の直線領域SL1と第2の直線領域にそれぞれ接している領域であり、1対の伝送線導体が誘電体層23(図示せず)を介して立体的に交差している交差領域CR(第1の交差領域)を含んでいる。交差領域CRにおいて、1対の伝送線導体は、接地導体層18の上方からみて直交している。
【0052】
なお、電気出力信号は、差動信号として、送受信一体型CDR集積回路3から駆動集積回路4へ、差動伝送線路8上を伝送しており、便宜上、電気出力信号の進行方向に沿って、進行方向側を前方と、進行方向逆向きを後方と呼ぶこととする。しかし、進行方向逆向きを前方と、進行方向を後方としても、本発明を説明することが出来るのは言うまでもない。すなわち、第1の直線領域SL1の前方に、交差領域CRが配置されており、交差領域CRの前方に、第2の直線領域SL2が配置されている。また、第1のバイアホール204は、第1の直線領域SL1と交差領域CRとの間に配置され、第2のバイアホール205は、交差領域CRの前方であり、交差領域CRと第2の直線領域SL2との間に配置されている。
【0053】
まず、第1の伝送線導体について説明する。第1の伝送線導体(第1上層Pデータ導体膜101)は、誘電体層23(図示せず)を介して、接地導体層18の上方に形成されている。ここで、第1上層Pデータ導体膜101が形成される層を、第1の層とする。第1の伝送線導体(第1上層Pデータ導体膜101)は、第1の直線領域SL1において、第1の幅となる幅W0で下側へ(第1の方向に)直線的に延伸し、さらに、屈曲領域BTへ直線的に延伸している。そして、屈曲領域BTであって交差領域CRの後方で、すなわち、第1の直線領域SL1と交差領域CRの間において、下側から右側へ(第1の方向から第2の方向へ)90度屈曲し、さらに幅W0で右側へ(第2の方向に)延伸している。ここで、第1上層Pデータ導体膜101と接地導体層18の間に生じる容量が、屈曲する箇所において増加することを抑制するために、90度屈曲する部分の角にはマイタ(Mitre)と呼ばれる切欠きが設けられている。さらに、屈曲領域BTにおいて、第1の伝送線導体(第1上層Pデータ導体膜101)の幅が、幅W0から幅W1に徐々に狭くなり、幅W1で右側へ交差領域CRを貫き直線的に延伸し、次に幅W1から幅W0に徐々に広くなる。そして、第1の伝送線導体(第1上層Pデータ導体膜101)は第2の直線領域SL2へ延伸し、第2の直線領域SL2を、第2の幅となる幅W0で右側へ(第2の方向に)直線的に延伸している。
【0054】
次に、第2の伝送線導体について説明する。第1上層Nデータ導体膜201と第2上層Nデータ導体膜202は、ともに、第1上層Pデータ導体膜101と同一層である第1の層上に形成されている。これに対して、第1下層Nデータ導体膜203は、これら上層導体膜より下方であって、接地導体層18の上方に形成されている。ここで、第1下層Nデータ導体膜203が形成される層を第2の層とすると、第2の層は、第1の層の下層となっているが、これに限定されることはなく、第2の層は第1の層の上層であってもよい。第1上層Nデータ導体膜201の端部と、第1下層Nデータ導体膜203の上側端部とは、平面的に重なっており、第1のバイアホール204によって、電気的に接続されている。同様に、第2上層Nデータ導体膜202の端部と、第1下層Nデータ導体膜203の下側端部とは、平面的に重なっており、第2のバイアホール205によって、電気的に接続されている。
【0055】
第2の伝送線導体(第1上層Nデータ導体膜201)は、第1の直線領域SL1において、第1の伝送線導体(第1上層Pデータ導体膜101)の右側を、第1上層Pデータ導体膜101に平行して、第1の幅となる幅W0で下側へ(第1の方向に)第1の層上を直線的に延伸し、さらに、屈曲領域BTへ第1の層上を延伸し、第1のバイアホール204に至っている。第1の直線領域SL1において、第1上層Pデータ導体膜101と第1上層Nデータ導体膜201との間隔は、幅S0である。すなわち、第1上層Pデータ導体膜101の右側縁から、第1上層Nデータ導体膜201の左側縁までの距離が、幅S0である。
【0056】
屈曲領域BTにおいて、第2の伝送線導体は、第1の層から第2の層へ第1のバイアホール204を貫通し、さらに、第2の伝送線導体(第1下層Nデータ導体膜203)は、第1のバイアホール204と第2のバイアホール205の間を、幅W2で交差領域CRを貫いて下側へ第2の層上を直線的に延伸している。さらに、第2の伝送線導体は、第2の層から第1の層へ第2のバイアホール205を貫通し、第2の伝送線導体(第2上層Nデータ導体膜202)は、第2のバイアホール205より、図中右下方向へ第1の層上を延伸し、さらに、右下方向から右側へ屈曲し、右側へ第2の直線領域SL2まで延伸している。ここで、屈曲領域BTであって交差領域CRの前方で、すなわち、交差領域CRと第2の直線領域SL2との間において、下側から右側へ(第1の方向から第2の方向へ)90度屈曲している。そして、さらに、第2の伝送線導体(第2上層Nデータ導体膜202)は、第2の直線領域SL2において、第1の伝送線導体(第1上層Pデータ導体膜101)の下側を、第1上層Pデータ導体膜101に平行して、第2の幅となる幅W0で右側へ(第2の方向に)第1の層上を直線的に延伸している。第2の直線領域SL2において、第1上層Pデータ導体膜101と第2上層Nデータ導体膜202との間隔は、幅S0である。
【0057】
当該実施形態に係る差動伝送線路8は、屈曲領域BTにおいて、下側から右側へ(第1の方向から第2の方向へ)90度屈曲している。ここで、下側から右側へ(第1の方向から第2の方向へ)屈曲の方向変化の向きは時計回りである。1対の伝送線導体のうち、第1の伝送線導体(片方の伝送線導体)は、屈曲の方向変化である時計回りに対して、第1の直線領域SL1において外側の伝送線導体(図中左側)であり、第2の直線領域SL2において内側の伝送線導体(図中上側)である。これに対して、第2の伝送線導体(他の片方の伝送線導体)は、第1の直線領域SL1において内側の伝送線導体(図中右側)であり、第2の直線領域SL2において外側の伝送線導体(図中下側)である。
【0058】
第1の伝送線導体(片方の伝送線導体)は、第1の直線領域SL1において外側の伝送線導体となっており、第1の伝送線導体のみが、第1の直線領域SL1と交差領域CRとの間において、下側から右側へ(第1の方向から第2の方向へ)屈曲している。このとき、第2の伝送線導体(他の片方の伝送線導体)は、第1の直線領域SL1から交差領域CRを貫いて第2のバイアホール205まで、下側へ(第1の方向に)直線的に延伸している。第1の伝送線導体は、さらに、右側へ(第2の方向に)交差領域CRを貫いて直線的に延伸し、交差領域CRにおいて第2の伝送線導体(第1下層Nデータ導体膜203)と立体交差し、さらに、右側へ(第2の方向に)直線的に延伸し、第2の直線領域SL2において、内側の伝送線導体となる。これに対して、第2の伝送線導体(他の片方の伝送線導体)は、第1の直線領域SL1において内側の伝送線導体となっており、交差領域CRにおいて、第1の伝送線導体(第1上層Pデータ導体膜101)と立体交差している。さらに、第2の伝送線導体(他の片方の伝送線導体)のみが、交差領域CRと第2の直線領域SL2との間において、下側から右側へ(第1の方向から第2の方向へ)屈曲している。このとき、第1の伝送線導体(片方の伝送線導体)は、交差領域CRを貫いて第2の直線領域SL2へ、右側(第2の方向に)直線的に延伸している。そして、第2の伝送線導体(他の片方の伝送線導体)は、第2の直線領域SL2において外側の伝送線導体となっている。
【0059】
一般に、差動伝送線路における反射損失を抑制するために、差動伝送線路の断面形状は、出来る限り多くの領域において同一とすることが望ましく、所望の配線長を有する差動伝送線路は、1対の伝送線導体が同じ幅で同一層上を直線的に延伸する直線領域がより長く、断面形状が直線領域と異なる屈曲領域がより短く、形成されているのが望ましい。よって、当該実施形態に係る差動伝送線路8は、屈曲領域BTにおいて、第1の伝送線導体のみが交差領域の後方で下側から右側へ(第1の方向から第2の方向へ)屈曲し、第2の伝送線導体のみが交差領域CRの前方で下側から右側へ(第1の方向から第2の方向へ)屈曲しているとしている。しかし、この例に限定される必要はなく、差動伝送線路の設計上の都合など必要に応じて、交差領域CRの後方で(又は前方で)、1対の伝送線導体がともに屈曲していてもよい。また、より高密度な実装の観点や、交差領域CRにおける差動信号の特性劣化の観点などより、接地導体層18の上方から見て、交差領域CRにおける第1の伝送線導体と第2の伝送線導体が平面的に交わる角度は、出来る限り大きく、例えば80度以上であるのが望ましく、第1の伝送線導体と第2の伝送線導体が平面的に直交するように、交差しているのがさらに望ましい。
【0060】
なお、ここでは、第1の直線領域SL1において外側の伝送線導体(片方の伝送線導体)である第1の伝送線導体が、交差領域CRにおいて、第1の層に形成される伝送線導体(一方の伝送線導体)としたが、これに限定されることはなく、交差領域CRにおいて、第2の伝送線導体が第1の層に形成されてもよい。
【0061】
第1の伝送線路と第2の伝送線路は、ともに所望の特性インピーダンスで延伸しているのが望ましく、それゆえ、直線領域においては、1対の伝送線導体は、等しい幅W0であるのが望ましい。ここでは、幅W0を0.39mmとしている。さらに、直線領域においては、第1の伝送線導体と、第2の伝送線導体の間隔も等しい幅S0で延伸しているのが望ましい。ここでは、幅S0を0.515mmとしている。
【0062】
第1の伝送線導体と、第2の伝送線導体は、交差領域CRにおいて、立体的に交差している。交差領域CRにおける第1の伝送線導体(第1上層Pデータ導体膜101)の幅W1は、第1の直線領域SL1における第1の伝送線導体(第1上層Pデータ導体膜101)の第1の幅となる幅W0より、小さいのが望ましく、ここでは、幅W1を0.11mmとしている。同様に、交差領域CRにおける第2の伝送線導体(第1下層Nデータ導体膜203)の幅W2は、第1の直線領域SL1における第2の伝送線導体(第1上層Nデータ導体膜201)の第1の幅となる幅W0より、小さいのが望ましく、ここでは、幅W2を0.11mmとしている。
【0063】
前述の通り、第1下層Nデータ導体膜203は、第1上層Nデータ導体膜201及び第2上層Nデータ導体膜202と、それぞれ、第1のバイアホール204及び第2のバイアホール205を介して、電気的に接続されている。ここで、第1のバイアホール204及び第2のバイアホール205は、レーザ加工による貫通穴を利用したレーザバイアホールであり、第1のバイアホール204及び第2のバイアホール205の直径はそれぞれ0.1mmとする。なお、他の加工によるバイアホールであってもよいのは言うまでもない。
【0064】
図4は、プリント回路基板16の図3のIV−IV線における断面図であり、プリント回路基板16の縦構造を示している。1対の伝送線導体は、接地導体層18の一方側(図4の上側)に誘電体層23を介してともに設けられている。図4には、第1の伝送線導体が、第1上層Pデータ導体膜101として、第2の伝送線導体が、交差領域CRにおいて第1の伝送線導体と立体的に交差している第1下層Nデータ導体膜203として、示されている。プリント回路基板16は、ビルドアップ工法などによる多層基板であり、1対の伝送線導体は、プリント回路基板16の図中上側の表面に設けられている。ここで、誘電体層23は、接地導体層18の上表面に設けられている。第1上層Pデータ導体膜101は誘電体層23の上表面に設けられ、第1下層Nデータ導体膜203は誘電体層23の内部でかつ接地導体層18の上方に設けられている。
【0065】
プリント回路基板16の接地導体層18の図中下側に、搭載部品を配置してもよい。複数の接地導体層19,20,21,22がさらに配置され、隣りあう接地導体層の間に、導体からなる配線を設けている。誘電体層23には、ガラス布基材とエポキシ樹脂からなる材料が用いられており、ここではその材料の比誘電率を3.6としている。また、プリント回路基板16の縦方向の寸法は、ここでは、接地導体層18から第1の層(第1上層Pデータ導体膜101、第1上層Nデータ導体膜201及び第2上層Nデータ導体膜202)までの間隔を0.279mmとし、接地導体層18から第2の層(第1下層Nデータ導体膜203)までの間隔を0.192mmとしている。各導体膜は、積層した銅箔をパタンニングして形成される。第1の層の厚さは、0.053mmとし、第2の層の厚さは、0.033mmとしている。
【0066】
保護膜24が、プリント回路基板16の両側の表面に配置されている。保護膜24はソルダーレジストと呼ばれる保護膜であるが、必要がない場合には削除してもよい。ここでは、保護膜24には、誘電率4.4の材料が用いられており、保護膜24の厚さは0.082mmである。
【0067】
以上、当該実施形態に係る差動伝送線路8の構成を説明した。本発明に係る差動伝送線路は、1対の伝送線導体が立体的に交差する第1の交差領域を含み、第1の交差領域における1対の伝送線導体の幅それぞれが第1の直線領域における1対の伝送線導体それぞれの幅である第1の幅より小さいことにより、差動伝送線路が屈曲領域を含む場合にも、2つの差動信号に生じる遅延時間差が抑制されている。ここでは、第1の交差領域において、第1の伝送線導体が第1の層上に形成される一方の伝送線導体と、第2の伝送線導体が第2の層上に形成される他の一方の伝送線導体としているが、これに限定されることはなく、第1の伝送線導体が第1の交差領域において第2の層上に形成されてもよい。
【0068】
第1の直線領域と第1の交差領域の間に第1のバイアホールが配置され、他の一方の伝送線導体は、第1の層から第2の層へ第1のバイアホールを貫通することにより、他の一方の伝送線導体は、第1の層に形成される第1の直線領域と第2の層に形成される第1の交差領域とを電気的に接続することが出来ている。屈曲領域であって第1の交差領域の後方で、すなわち、第1の直線領域と第1の交差領域の間において、1対の伝送線導体のうち、少なくとも第1の直線領域における外側の伝送線導体が屈曲していることにより、第1の交差領域で1対の伝導線導体が立体的に交差することが可能となる。
【0069】
さらに、屈曲領域であって第1の交差領域の前方に、すなわち、第1の交差領域と第2の直線領域の間に、第2のバイアホールが配置され、他の一方の伝送線導体は、第2の層から第1の層へ第2のバイアホールを貫通することにより、他の一方の伝送線導体は、第2の層に形成される第1の交差領域と第1の層に形成される第2の直線領域とを電気的に接続することが出来ている。屈曲領域であって第1の交差領域の前方で、すなわち、第1の交差領域と第2の直線領域の間において、1対の伝送線導体のうち、少なくとも第1の直線領域における内側の伝送線導体が屈曲していることにより、第1の交差領域の前方で、1対の伝送線導体が互いに平行して直線的に延伸することが出来る。
【0070】
さらに、第1の直線領域における外側の伝送線導体は、第1の直線領域より第1の方向に直線的に延伸し、第1の直線領域と第1の交差領域の間において第1の方向から第2の方向へ屈曲し、さらに第2の方向に直線的に延伸しているとなおよい。同様に、第1の直線領域における内側の伝送線導体は、第1の直線領域より第1の交差領域を貫いて、第1の方向に直線的に延伸し、第1の交差領域の前方で第1の方向から第2の方向へ屈曲し、さらに第2の方向に直線的に延伸しているとなおよい。これらにより、差動伝送線路を伝送する伝送信号の特性はさらに向上する。
【0071】
1対の伝送線導体は、第2のバイアホールの前方に、第2の直線領域をさらに含んでいることにより、屈曲領域で第1の方向から第2の方向へ屈曲した後、差動伝送線路は第2の方向に延伸することが出来ている。なお、差動伝送線路が、第1の直線領域と第2の直線領域とで等しい特性インピーダンスを有しているのが望ましく、第2の直線領域における1対の伝送線導体のそれぞれの幅である第2の幅は、第1の幅と等しいのが望ましい。
【0072】
一般に、差動伝送線路において、2つの差動信号に遅延時間差が生じている場合、差動信号の伝送中に差動モードから不要な同相モードへの変換が生じてしまう。同相モードへの変換量が比較的大きな場合、差動モードの帯域劣化やデータ依存性ジッタの発生より信号品位の劣化が生じることとなる。当該実施形態に係る差動伝送線路8は、屈曲領域BTを有しているにもかかわらず、送受信一体型CDR集積回路3から駆動集積回路4へ電気出力信号が伝送される際に生じる、差動モードから同相モードの変換が抑制できており、反射損失の抑制が可能となっている。さらに、接地導体層18はスロットを設ける必要がなく一面に広がる形状をしており、差動伝送線路における反射損失や差動伝送線路に起因するノイズが抑制される構造となっているとともに、高密度実装に適した差動伝送線路が実現されている。
【0073】
当該実施形態に係る光送信用素子モジュール6はマッハツェンダー(MZ)変調器を備える。マッハツェンダー変調器は、駆動する差動信号が差動モードのみであれば良好な特性が得られるが、同相モードがあると出力光の位相変動を生じ、光ファイバ伝送路の分散特性により伝送距離が長いほど光出力信号の品位の劣化が大きくなってしまう。しかし、本発明に係る差動伝送線路を用いることにより、差動モードから不要な同相モードへの変換が抑制され、光送信用素子モジュール6が送信する光出力信号の特性が向上する。
【0074】
なお、光ファイバ伝送用の光送受信モジュールは、近年のブロードバンドネットワークの普及とともに、高速化、小型・低コスト化が図られており、高速化に関しては現在ではビットレートが10Gbit/sのものが広く用いられるようになってきている。小型・低コスト化に関しては、旧世代の300pin MSA(Multi Source Agreement)規格から、XENPAK、X2、XFP、SFP+(各MSA規格)へと、ケース体積の縮小化・部品数の削減化が進んでいる。増幅用集積回路やCDR集積回路などシリアルデータ信号を扱う部品においては、送信側集積回路と受信側集積回路を1個の集積回路に統合することで小型・低コスト化を図ったものが登場してきている。それゆえ、当該実施形態に係る光送受信モジュール1は送受信一体型CDR集積回路3を備えており、前述の通り、送受信一体型CDR集積回路3に接続される複数の差動伝送線路のいずれかは屈曲して配置する必要が生じるところ、本発明に係る差動伝送線路を用いることにより、光送受信モジュール1の特性が向上している。
【0075】
以下、当該実施形態に係る差動伝送線路8の効果について説明する。ここで、図26に示す従来技術に係る屈曲領域を有する差動伝送線路の例を従来例1とする。まず、当該実施形態の比較例として、従来例1に係る差動伝送線路について説明する。
【0076】
従来例1に係る差動伝送線路は、当該実施形態と同様に、接地導体層18と1対の伝送線導体とで、1対の伝送線路を形成しており、第1の伝送線導体がPデータ導体膜181であり、第2の伝送線導体がNデータ導体膜281である。Pデータ導体膜181とNデータ導体膜281の寸法及び材質は、当該実施形態と同一であり、第1及び第2の伝送線導体の幅はそれぞれ幅W0であり、第1及び第2の伝送線導体の間隔は幅S0である。屈曲領域において、Pデータ導体膜181とNデータ導体膜281にそれぞれ、マイタを設け、反射損失が抑制されている。図26に示す従来例1に係る2つの伝送線導体の配置に要するパタン面積は、当該実施形態に係る2つの伝送導体に要するパタン面積と、実質的に同等である。しかし、前述の通り、第1の伝送線導体であるPデータ導体膜181の配線長が、第2の伝送線導体であるNデータ導体膜281の配線長より、2×(S0+W0)長くなっており、この物理長での差により、2つの差動信号に遅延時間差Δtdが生じている。各々の伝送線路における群速度をvgとすると、Δtdは、Δtd=2×(S0+W0)÷vgと表され、この式を(数式1)とする。
【0077】
群速度vgは、伝送線路の直線領域における断面形状より比較的容易に算出でき、従来例1に係る差動伝送線路では、vg=1.7×10m/sが得られる。(数式1)にS0=0.515mm及びW0=0.39mmを代入することにより、従来例1に係る差動伝送線路を伝送する2つの差動信号には、11psとなる遅延時間差Δtdが発生している。
【0078】
遅延時間差Δtdにより発生する差動モード−同相モード変換量Scd21が回路シミュレーションツールを用いた小信号解析により算出される。
【0079】
図7は、理想伝送線路モデルを説明する図である。理想伝送線路モデルでは、互いに平行して直線的に延伸する2つの伝送線を想定しており、2つの伝送線路はともに、特性インピーダンスが50Ωで、無損失の伝送線路としている。2本の伝送線の配線長には、差が存在しており、配線長の差により生じる遅延時間差がΔtdである。図7に示す2本の伝送線の両端に差動ポートを設けて小信号解析を行うことにより、これら2本の伝送線路からなる差動伝送線路モデルの伝送特性が求まる。
【0080】
図8は、理想伝送線路モデルの解析結果を示す図である。図8には、遅延時間差Δtdと、差動モード−同相モード変換量Scd21との関係が示されている。一般に、遅延時間差Δtdが増加するに伴い、また、周波数が増加するに伴い、Scd21は増加する。
従来例1に係る差動伝送線路では、遅延時間差Δtdが11psとなっており、これに起因して、Scd21は、周波数10GHzでは−9.5dB、波数20GHzでは−4dBとなっている。
【0081】
これに対して、当該実施形態に係る差動伝送線路8の効果について説明する。図5は、本発明の当該実施形態に係る差動伝送線路8の解析結果を示す図である。図5には、当該実施形態に係る差動伝送線路8の差動モード−同相モード変換量Scd21を三次元電磁界構造解析ツールにより解析した結果が示されており、Scd21の周波数依存性を表している。また、比較のため、図5には、従来例1に係る差動伝送線路についての解析結果も示されており、実線が当該実施形態の解析結果、破線が従来例1の解析結果を表している。
【0082】
図5に示す通り、当該実施形態に係る差動伝送線路8は、屈曲領域BTを有しているにもかかわらず、Scd21を、周波数10GHz以下の周波数領域では−30dB以下に、周波数20GHz以下の領域では−21dB以下に、抑制することが出来ている。また、下記の表1に示す通り、従来例1と比較して、不要モードである同相モードの発生が、周波数10GHzにおいては約20dB、周波数20GHzにおいては約17dB、低減されている。
【0083】
【表1】

【0084】
図6は、本発明の当該実施形態の差動伝送線路8の他の解析結果を示す図である。図6には、差動伝送線路8の交差領域CRにおける第1の伝送線導体(第1上層Pデータ導体膜101)の幅W1及び第2の伝送線導体(第1下層Nデータ導体膜203)の幅W2をパラメータとして、差動反射係数Sdd11の解析結果が示されている。ここでは、幅W1と幅W2は等しい値として、幅W1及び幅W2を0.39mmから0.01mmまでの範囲で変化させ、それぞれの幅W1(幅W2)におけるSdd11を解析的に求めている。なお、0.39mmは、直線領域における第1及び第2の伝送線導体の幅W0と等しい値である。
【0085】
図6に示す通り、幅W1(幅W2)が直線領域における幅W0より小さい場合、交差領域CRにおける特性インピーダンスの不連続の影響を低減することができているので、Sdd11が低減されている。図6に示す通り、幅W1及び幅W2が0.09mmのときに、周波数10GHz及び20GHzにおいて、ともに、Sdd11の低減が最も顕著になっている。また、当該実施形態に係る差動伝送線路8の幅W1及び幅W2はそれぞれ0.11mmであり、Sdd11の低減は顕著となっている。周波数10GHzで−33dB、周波数20GHzにおいて−26dBと、良好なSdd11が実現できている。また、幅W1や幅W2はこれら値に限定されることはなく、直線領域における幅W0より小さく設定すればよく、幅W1及び幅W2の値を調整パラメータとして、反射損失が抑制するように、容易に差動伝送線路8を設計することが出来る。
【0086】
なお、図3に示す差動伝送線路8の屈曲領域BTにおいて、第2上層Nデータ導体膜202は、第2のバイアホール205から、第2の直線領域SL2側に、右下方向へ直線的に延伸している。ここで、接地導体層18の上方からみて平面的に測定される伝送線導体の配線長を考える。第2上層Nデータ導体膜202が図3に示す形状をしていることにより、差動伝送線路8の1対の伝送線導体の配線長は、第1の(一方の)伝送線導体が、第2の(他の一方の)伝送線導体より長くなっている。これは、第2の伝送線導体は、第1のバイアホール204及び第2のバイアホール205を有しており、第2の伝送線導体の実効的な配線長が、第1のバイアホール204及び第2のバイアホール205の厚みにより、平面的な形状から測定される配線長より長くなっており、第2上層Nデータ導体膜202の形状は、このことを考慮したものである。すなわち、第1のバイアホール204及び第2のバイアホール205を電気出力信号が伝送される際に生じる遅延時間の増加分(バイアホールの厚みに起因する遅延時間の増加分)を、第2上層Nデータ導体膜202の形状により、パタン面積の増加を伴わずに補償出来ている。
【0087】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に係る光送受信モジュール1の基本的な構成は、第1の実施形態に係る光送受信モジュール1の構成と同じであるが、当該実施形態に係る差動伝送線路8の1対の伝送線導体の形状が、第1の実施形態と異なっている。
【0088】
図9は、当該実施形態に係る差動伝送線路8の屈曲領域付近を示す上面図である。図3に示す第1の実施形態に係る差動伝送線路8と同様に、1対の伝送線導体が示されている。第1の伝送線導体は、図9において、第1上層Pデータ導体膜102として示されており、第2の伝送線導体は、図9において、第1上層Nデータ導体膜201と、第2上層Nデータ導体膜206と、第1下層Nデータ導体膜203と、第1のバイアホール204、及び第2のバイアホール205として示されている。
【0089】
図9に示す第2上層Nデータ導体膜206の形状は、図3に示す第2上層Nデータ導体膜202の形状と異なる。図9に示す第2上層Nデータ導体膜206の90度屈曲する部分の形状は、図3に示す第1上層Pデータ導体膜101の90度屈曲する部分の形状と等しくなっており、第2上層Nデータ導体膜206は、90度屈曲する部分にマイタが設けられている。それゆえ、もしも第1の伝送線導体が図3に示す第1上層Pデータ導体膜101であるならば、第2の伝送線導体を伝送する差動信号に、第1のバイアホール204と第2のバイアホール205の厚みに起因する遅延時間の増加が生じてしまう。しかし、当該実施形態に係る第1の伝送線導体は、図9に示す第1上層Pデータ導体膜102の形状をしており、迂回して延伸する迂回領域DTを含んでいる。第1の伝送線導体の迂回領域DTが、図の左側に張り出して、第1の伝送線導体が迂回して延伸する部分を有していることにより、接地導体層18の上方からみて平面的に測定される伝送線導体の配線長は、第1の伝送線導体が第2の伝送線導体より長い。第1の伝送線導体の迂回領域DTにより、第1のバイアホール204と第2のバイアホール205の厚みに起因する遅延時間の増加分を補償することが出来ている。
【0090】
当該実施形態に係る差動伝送線路8は、迂回領域DTによりパタン面積の増加を伴うが、パタン面積の増加は、1対の伝送線導体が交差領域CRを有していない場合に、従来技術に係る差動伝送線路が屈曲領域に生じる遅延時間の増加分を補償するように、他の領域で一部蛇行させる形状とする際に生じるパタン面積の増加と比べて、格段に抑制されている。さらに、第1の実施形態に係る差動伝送線路8が、第2の伝送線導体(第2上層Nデータ導体膜202)の形状を工夫することにより、平面的に測定される伝送線導体の配線長を、第2の伝送線導体が第1の伝送線導体より短くなるようにしているが、第2の伝送線導体の形状により補償可能な遅延時間には限界がある。これに対して、当該実施形態に係る迂回領域DTの形状によって、平面的に測定される伝送線導体の配線長を、第1の伝送線導体が第2の伝送線導体より長くなるようにしているが、第1の伝送線導体の形状によって、より長い範囲の遅延時間の補償が可能であり、設計の自由度がより高まる。
【0091】
図10は、本発明の当該実施形態に係る差動伝送線路8の解析結果を示す図である。図10には、図5と同様に、当該実施形態に係る差動伝送線路8の差動モード−同相モード変換量Scd21の周波数依存性を表している。また、比較のため、図10には、図5と同様に、従来例1に係る差動伝送線路についての解析結果も示されており、実線が当該実施形態の解析結果、破線が従来例1の解析結果を表している。
【0092】
図10に示す通り、当該実施形態に係る差動伝送線路8は、屈曲領域を有しているにもかかわらず、Scd21を、周波数10GHz以下の周波数領域では−31dB以下に、周波数20GHz以下の領域では−21dB以下に、抑制することが出来ている。また、下記の表2に示す通り、従来例1と比較して、不要モードである同相モードの発生が、周波数10GHzにおいては約22dB、周波数20GHzにおいては約17dB、低減されている。
【0093】
【表2】

【0094】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態に係る光送受信モジュール1の基本的な構成は、第2の実施形態に係る光送受信モジュール1の構成と同じであるが、当該実施形態に係る差動伝送線路8の1対の伝送線導体の形状が、第2の実施形態と異なっている。
【0095】
図11は、当該実施形態に係る差動伝送線路8の屈曲領域付近を示す上面図である。図9に示す第2の実施形態に係る差動伝送線路8と同様に、1対の伝送線導体が示されている。図11に示す第2の伝送線導体は、図9に示す第2の伝送線導体と同じ構成となっている。これに対して、第1の伝送線導体は、図11において、第1上層Pデータ導体膜103、第2上層Pデータ導体膜104、第1下層Pデータ導体膜105、第3のバイアホール106、及び第4のバイアホール107として示されている。
【0096】
図11に示す第2上層Nデータ導体膜206は、図9に示す第2上層Nデータ導体膜206と同じ形状であり、90度屈曲する部分にマイタが設けられている。それゆえ、もしも第1の伝送線導体が図3に示す第1上層Pデータ導体膜101であるならば、第2の伝送線導体を伝送する差動信号に、第1のバイアホール204と第2のバイアホール205の厚みに起因する遅延時間の増加が生じてしまう。しかし、当該実施形態に係る第1の伝送線導体(一方の伝送線導体)は、第3のバイアホール106と第4のバイアホール107をさらに備え、第1の伝送線導体(第1上層Pデータ導体膜103)は第1の層上を第3のバイアホール106へ下側に延伸し、第1の伝送線導体は第1の層から第2の層へ第3のバイアホール106を貫通し、第1の伝送線導体(第1下層Pデータ導体膜105)は、第3のバイアホール106から第4のバイアホール107へ下側に延伸し、第1の伝送線導体は、第2の層から第1の層へ第4のバイアホール107を貫通し、第1の伝導線導体(第2上層Pデータ導体膜104)はさらに前方へ第1の層上を図11に示すようにさらに延伸している。すなわち、第2上層Pデータ導体膜104の形状は、図3に示す第1上層Pデータ導体膜101の屈曲領域BT及び第2の直線領域SL2の形状と、第2上層Pデータ導体膜104の第4のバイアホール107側の端部付近を除いて、一致している。
【0097】
当該実施形態に係る差動伝送線路において、1対の伝送線導体それぞれに、2つのバイアホールを配置したことにより、1対の伝送線導体それぞれに、2つのバイアホールの厚みに起因する遅延時間の増加が生じており、2つの差動信号に生じる遅延時間差が抑制されている。ここでは、第3のバイアホール106と第4のバイアホール107の距離は、第1のバイアホール204と第2のバイアホール205の距離と等しくしているが、これに限定される必要はない。また、ここでは、第1下層Pデータ導体膜105が、交差領域CRの後方に設けられているが、これに限定されることはなく、交差領域CRの前方に設けられてもよい。
【0098】
一般に、誘電体層23を形成するプロセスにおける作製誤差により、誘電体層23の層厚が変動することがあり得る。誘電体層23の層厚が変動すると、バイアホールの厚みもそれに応じて変動するので、バイアホールの厚みに起因する遅延時間も変動することとなる。遅延時間を伝送線導体の形状により補償する場合には、作製誤差による誘電体層23の層厚の変動に対応することは困難であるが、当該実施形態に係る差動伝送線路8において、第2の伝送線導体が有する2つのバイアホールに起因する遅延時間を、第1の伝送線導体が有する2つのバイアホールに起因する遅延時間を増加させることにより補償している。それゆえ、誘電体層23の層厚が変動しても、それに応じて、1対の伝送線導体それぞれが有するバイアホールの層厚も一律に変動し、作製誤差による誘電体層23の層厚の変動に対応して、遅延時間差を抑制することが出来ている。なお、第1下層Pデータ導体膜105は、第1の伝送線路が所望の特性インピーダンスとなる幅で形成される。ここで、第1下層Pデータ導体膜105の幅を0.29mmとしており、このとき、差動反射損失を軽減する点で好適である。
【0099】
図12は、本発明の当該実施形態に係る差動伝送線路8の解析結果を示す図である。図12には、図5と同様に、当該実施形態に係る差動伝送線路8の差動モード−同相モード変換量Scd21の周波数依存性を表している。また、比較のため、図12には、図5と同様に、従来例1に係る差動伝送線路についての解析結果も示されており、実線が当該実施形態の解析結果、破線が従来例1の解析結果を表している。
【0100】
図12に示す通り、当該実施形態に係る差動伝送線路8は、屈曲領域を有しているにもかかわらず、Scd21を、周波数10GHz以下の周波数領域では−32dB以下に、周波数20GHz以下の領域では−22dB以下に、抑制することが出来ている。また、下記の表3に示す通り、従来例1と比較して、不要モードである同相モードの発生が、周波数10GHzにおいては約23dB、周波数20GHzにおいては約17dB、低減されている。
【0101】
【表3】

【0102】
[第4の実施形態]
本発明の第4の実施形態に係る光送受信モジュール1の基本的な構成は、第1の実施形態に係る光送受信モジュール1の構成と同じであるが、当該実施形態に係る光送受信モジュール1は、SerDes(SERializer/DESerializer)集積回路25を備えており、さらに、差動伝送線路8の1対の伝送線導体の形状が、第1の実施形態とは異なっている。
【0103】
図13は、本発明の当該実施形態に係る光送受信モジュール1のデータ伝送部2の全体斜視図である。図3に示す送受信一体型CDR集積回路3と異なり、SerDes集積回路25の送信側差動入力端子と送信側差動出力端子が同じ辺に並んで設けられている。それゆえ、SerDes集積回路25の送信側差動入力端子に接続される送信側差動入力伝送線路9と、送信側差動出力端子に接続される差動伝送線路8とが、互いに平行してSerDes集積回路25に延伸している。それゆえ、光送信用素子モジュール6(図示せず)をSerDes集積回路25の送信側出力端子が設けられる辺とは反対側に設ける場合に、SerDes集積回路25と光送信用素子モジュール6とを、180度反転して延伸する伝送線路で接続する必要が生じる。それゆえ、当該実施形態に係る差動伝送線路8は、180度反転して延伸することにより、SerDes集積回路25の送信側差動出力端子と、駆動集積回路26の差動入力端子とを接続する伝送線路である。図13に示す通り、差動伝送線路8は、3つの直線領域と、2つの90度屈曲する屈曲領域とを、含んでいる。なお、差動伝送線路8に設けられるDCカット容量31,32は、図2に示すDCカット容量31,32と同様である。
【0104】
図14は、本発明の当該実施形態に係る差動伝送線路8の2つの屈曲領域付近を示す上面図である。第1の伝送線導体は、図14において、第1の層上に形成される第1上層Pデータ導体膜108として示されており、第2の伝送線導体は、図14において、第1上層Nデータ導体膜201、第2上層Nデータ導体膜207、第3上層Nデータ導体膜208、第1下層Nデータ導体膜203、第2下層Nデータ導体膜209、第1のバイアホール204、第2のバイアホール205、第3のバイアホール210、及び第4のバイアホール211として示されている。なお、図13に示す通り、差動伝送線路8に、2つのDCカット容量31,32が設けられるが、説明を簡単にするために、図14にはDCカット容量31,32は示されていない。
【0105】
図14に示す通り、差動伝送線路8は、伝送信号の進行方向に沿って、順に、第1の直線領域、第1の屈曲領域、第2の直線領域、第2の屈曲領域、及び第3の直線領域に分類される。図3と同様に、第1の屈曲領域は第1の交差領域を、第2の屈曲領域は第2の交差領域を、それぞれ含んでおり、第1の交差領域及び第2の交差領域それぞれにおいて、1対の伝送線導体は、立体的に交差しており、接地導体層18の上方から見て直交している。
【0106】
第2の交差領域は、第1の交差領域と同様に、1対の伝送線導体が誘電体層23(図示せず)を介して立体的に交差している。第2の交差領域では、第1の伝送線導体(一方の伝送線導体)が右側へ(第2の方向に)第1の層上を直線的に延伸し、第2の伝送線導体(他の一方の伝送線導体)が上側へ(第3の方向に)第2の層上を直線的に延伸し、立体的に交差している。また、第3の直線領域では、1対の伝送線導体がともに第3の幅となる幅W0で互いに平行して、上側へ(第3の方向に)延伸している。
【0107】
図14の左側に示す差動伝送線路8の第1の屈曲領域の構造は、図3に示す屈曲領域BTの構造と同じである。さらに、図14の右側に示す差動伝送線路8の第2の屈曲領域の構造は、図14の左側に示す第1の屈曲領域と、図の中心線(縦線)に対して線対称(鏡像反転)となる構造をしている。すなわち、第1の幅と第2の幅と第3の幅はともに等しく、それぞれの伝送線路が所望の特性インピーダンスが得られるよう、幅W0=0.39mmとなっている。また、各直線領域における1対の伝送線導体の間隔はともに等しく、幅S0=0.515mmとなっている。
【0108】
第2の屈曲領域における1対の伝送線導体は以下の通りである。第2の伝送線導体(他の一方の伝送線導体)は、第2の直線領域と第2の交差領域との間に第3のバイアホール210を、第2の交差領域と第3の直線領域との間に第4のバイアホール211を有している。第2の伝送線導体(第2下層Nデータ導体膜207)は、第2の直線領域から第3のバイアホール210へ第1の層上を延伸し、第2の伝送線導体は、第1の層から第2の層へ第3のバイアホール210を貫通し、第2の伝送線導体(第2下層Nデータ導体膜209)は、第3のバイアホール210と第4のバイアホール211の間を、第2の交差領域を貫いて上側へ第2の層上を延伸している。さらに第2の伝送線導体は、第2の層から第1の層へ第4のバイアホール211を貫通し、第2の伝送線導体(第3上層Nデータ導体膜208)は、第4のバイアホール211より、上側へ第1の層上を延伸している。
【0109】
当該実施形態に係る差動伝送線路8は、第1の屈曲領域において、下側から右側へ(第1の方向から第2の方向へ)90度屈曲し、第2の屈曲領域において、右側から上側へ(第2の方向から第3の方向へ)90度屈曲している。そして、右側から上側へ(第2の方向から第3の方向へ)屈曲の方向変化の向きは、下側から右側へ(第1の方向から第2の方向へ)屈曲の方向変化の向きと等しく、ともに時計回りである。1対の伝送線導体のうち、第1の伝送線導体(片方の伝送線導体)は、第1の直線領域において時計回りに対して外側の伝送線導体(図中左側)であり、第2の直線領域において内側の伝送線導体(図中上側)であり、第3の直線領域において外側の伝送線導体(図中右側)である。これに対して、第2の伝送線導体(他の片方の伝送線導体)は、第1の直線領域において内側の伝送線導体(図中右側)であり、第2の直線領域において外側の伝送線導体(図中下側)であり、第3の直線領域において内側の伝送線導体(図中左側)である。
【0110】
第2の伝送線導体(他の片方の伝送線導体)は、第2の直線領域と第2の交差領域との間において、右側から上側へ(第2の方向から第3の方向へ)屈曲し、さらに、前方を上側へ(第3の方向に)直線的に延伸している。このとき、第1の伝送線導体(片方の伝送線導体)は、第2の直線領域から第2の交差領域を貫いて、右側へ(第2の方向に)直線的に延伸している。そして、第1の伝送線導体(第1上層Pデータ導体膜108)は、第2の交差領域において、第2の伝送線導体(第2下層Nデータ導体膜209)と立体交差する。第1の伝送線導体(片方の伝送線導体)は、第2の交差領域と第3の直線領域の間において、右側から上側へ(第2の方向から第3の方向へ)屈曲し、さらに、上側へ(第3の方向に)直線的に延伸している。このとき、第2の伝送線導体(他の片方の伝送線導体)は、第2の交差領域を貫いて第3の直線領域へ、上側(第3の方向に)直線的に延伸している。
【0111】
第1の実施形態において説明した通り、第1の交差領域において、第1の伝送線導体の幅W1と、第2の伝送線導体の幅W2とは、ともに、第1の幅であるW0より小さいのが望ましく、同様に、第2の交差領域において、第1の伝送線導体の幅W1と、第2の伝送線導体の幅W2とは、ともに、第1の幅であるW0より小さいのが望ましい。ここでは、第1の実施形態と同様に、2つの交差領域それぞれにおいて、第1の伝送線導体の幅W1と、第2の伝送線導体の幅W2は、ともに0.11mmとしている。また、第1の実施形態と同様に、各バイアホールの直径は0.1mmとしている。プリント回路基板16の断面方向の構成及び寸法は、図4に示す第1の実施形態と同様である。
【0112】
なお、ここでは、第1の交差領域と第2の交差領域において、ともに、第1の伝送線導体が第1の層に形成され、第2の伝送線導体が第2の層に形成されているが、これに限定されることはない。たとえば、第1の交差領域と第2の交差領域において、ともに、第2の伝送線導体が第1の層に形成されていてもよい。
【0113】
当該実施形態に係る差動伝送線路8は、SerDes集積回路25と駆動集積回路26とを180度反転して接続しており、差動伝送線路8は、2つの屈曲領域を有しているにもかかわらず、電気出力信号が伝送される際に生じる、差動モードから同相モードの変換が抑制できており、反射損失の抑制が可能となっており、本発明の効果はさらに高まっている。また、差動伝送線路における反射損失や差動伝送線路に起因するノイズがさらに抑制される構造となっているとともに、さらなる高密度実装に適した差動伝送線路が実現されており、本発明の効果はさらに高まっている。
【0114】
以下、当該実施形態に係る差動伝送線路8の効果について説明する。図27は、従来技術に係る差動伝送線路の他の一例を示す平面図である。図27に示す従来技術に係る2つの屈曲領域を有する差動伝送線路を、当該実施形態の比較例とし、従来例2とする。
【0115】
図27の左側に示す従来例2に係る差動伝送線路の屈曲領域の構造は、図26に示す差動伝送線路の構造と同じであり、図27の右側に示す差動伝送線路の屈曲領域の構造は、図27の左側に示す屈曲領域と、図の中心線(縦線)に対して線対称(鏡像反転)となる構造をしている。ここで、第1の伝送線導体がPデータ導体膜182であり、第2の伝送線導体がNデータ導体膜282である。Pデータ導体膜181とNデータ導体膜281の寸法及び材質は、図26に示す差動伝送線路と同一であり、第1及び第2の伝送線導体の幅はそれぞれ幅W0であり、第1及び第2の伝送線導体の間隔は幅S0である。図27に示す従来例2に係る2つの伝送線導体の配置に要するパタン面積は、当該実施形態に係る2つの伝送導体に要するパタン面積と、実質的に同等である。しかし、前述の通り、第1の伝送線導体であるPデータ導体膜182の配線長が、第2の伝送線導体であるNデータ導体膜282の配線長より、4×(S0+W0)長くなっており、この物理長での差により、2つの差動信号に遅延時間差Δtdが生じている。各々の伝送線路における群速度はvgを用いて、Δtdは、Δtd=4×(S0+W0)÷vgと表され、この式を(数式2)とする。
【0116】
従来例2に係る差動伝送線路では、vg=1.7×10m/sが得られる。(数式2)にS0=0.515mm及びW0=0.39mmを代入することにより、従来例2に係る差動伝送線路を伝送する2つの差動信号には、22psとなる遅延時間差Δtdが発生している。
【0117】
これに対して、当該実施形態に係る差動伝送線路8の効果について説明する。図15は、本発明の当該実施形態に係る差動伝送線路8の解析結果を示す図である。図15には、図5と同様に、当該実施形態に係る差動伝送線路8の差動モード−同相モード変換量Scd21の周波数依存性を表している。また、比較のため、図15には、従来例2に係る差動伝送線路についての解析結果も示されており、実線が当該実施形態の解析結果、破線が従来例2の解析結果を表している。
【0118】
図15に示す通り、当該実施形態に係る差動伝送線路8は、2つの屈曲領域を有しているにもかかわらず、Scd21を、周波数10GHz以下の周波数領域では−29dB以下に、周波数20GHz以下の領域では−25dB以下に、抑制することが出来ている。また、下記の表4に示す通り、従来例2と比較して、不要モードである同相モードの発生が、周波数10GHzにおいては約24dB、周波数20GHzにおいては約24dB、低減されている。
【0119】
【表4】

【0120】
当該実施形態に係る差動伝送線路8において、第1の実施形態と同様に、第2上層Nデータ導体膜207は、第2のバイアホール205から第2の直線領域側に右下方向へ直線的に延伸し、第2の直線領域から第3のバイアホール210に右上方向へ直線的に延伸している。第2上層Nデータ導体膜207が図14に示す形状をしていることにより、差動伝送線路8の1対の伝送線導体それぞれの平面的な形状から測定される配線長は、第1の伝送線導体が、第2の伝送線導体より長くなっている。これは、第2の伝送線導体が、4つのバイアホールを有しており、第2の伝送線導体の実効的な配線長が平面的な形状から測定される配線長より長くなっているからである。これにより、4つのバイアホールの厚みに起因する遅延時間の増加分を、第2上層Nデータ導体膜207の形状により、パタン面積の増加を伴わずに補償出来ている。
【0121】
[第5の実施形態]
本発明の第5の実施形態に係る光送受信モジュール1の基本的な構成は、第4の実施形態に係る光送受信モジュール1の構成と同じであるが、当該実施形態に係る差動伝送線路8の1対の伝送線導体の形状が、第4の実施形態と異なっている。
【0122】
図16は、当該実施形態に係る差動伝送線路8の2つの屈曲領域付近を示す上面図である。第1の伝送線導体は、図16において、第1上層Pデータ導体膜109、第2上層Pデータ導体膜110、第1下層Pデータ導体膜111、第3のバイアホール112、及び第4のバイアホール113として示されている。第2の伝送線導体は、図16において、第1上層Nデータ導体膜201、第2上層Nデータ導体膜212、第1下層Nデータ導体膜203、第1のバイアホール204、及び第2のバイアホール205として示されている。
【0123】
図16に示す通り、差動伝送線路8は、伝送信号の進行方向に沿って、順に、第1の直線領域、第1の屈曲領域、第2の直線領域、第2の屈曲領域、及び第3の直線領域に分類される。図14と同様に、第1の屈曲領域は第1の交差領域を、第2の屈曲領域は第2の交差領域を、それぞれ含んでいる。
【0124】
当該実施形態に係る差動伝送線路8は、第4の実施形態に係る差動伝送線路8と比較して、第2上層Nデータ導体膜212の屈曲する部分の形状と、第2の交差領域の構造とが主に異なっている。
【0125】
当該実施形態に係る差動伝送線路8では、第1の交差領域においては、図14に示す第4の実施形態に係る差動伝送線路8と同様に、第1の伝送線導体が第1の層に形成され、第2の伝送線導体が第2の層に形成されているが、第2の交差領域においては、第4の実施形態とは異なり、第2の伝送線導体が第1の層に形成され、第1の伝送線導体が第2の形成されている。
【0126】
第1の屈曲領域においては、第2の伝送線導体に第1のバイアホール204と第2のバイアホール205が、第2の屈曲領域においては、第1の伝送線導体に第3のバイアホール112と第4のバイアホール113が、それぞれ設けられることにより、1対の伝送線導体が、それぞれ2つのバイアホールを有している。それゆえ、第3の実施形態と同様に、第2の伝送電線導体が有する2つのバイアホールに起因する遅延時間を、第1の伝送線導体が有する2つのバイアホールに起因する遅延時間を増加させることにより補償している。それゆえ、誘電体層23の層厚が変動しても、遅延時間差を抑制することが出来ている。
【0127】
また、バイアホールの厚みに起因する遅延時間差が抑制されていることにより、屈曲領域における1対の伝送線導体の形状の設計に自由度が高まっている。また、1対の伝送線導体の平面形状に特別な工夫をすることなしに、1対の伝送線導体それぞれの屈曲する部分の形状を等しくすることにより、1対の伝送線路に生じる遅延時間差が抑制される。
【0128】
図16には、第1の屈曲領域において、第1の伝送線導体が第1の交差領域の後方で屈曲する部分の形状と、第2の伝送線導体が第1の交差領域の前方で屈曲する部分の形状とは、ともに、図3に示す第1上層Pデータ導体膜101の90度屈曲する部分の形状と等しくなっている。同様に、第2の屈曲領域において、第2の伝送線導体が第1の交差領域の後方で屈曲する部分の形状と、第1の伝送線導体が第2の交差領域の前方で屈曲する部分の形状とは、ともに、図3に示す第1上層Pデータ導体膜101の90度屈曲する部分を縦線に対して線対称(鏡像反転)とする形状と等しくなっている。
【0129】
なお、ここでは、第1の交差領域において、第1の伝送線導体が第1の層に形成され、第2の交差領域において、第2の伝送線導体が第1の層に形成されているが、これに限定されることはなく、第1の交差領域において、第2の伝送線導体が第1の層に形成され、第2の交差領域において、第1の伝送線導体が第1の層に形成されていてもよい。また、ここで、互いに線対称となる形状も等しい形状であるとすると、1対の伝送線導体それぞれは、2つの屈曲領域それぞれで、屈曲する部分が等しい形状をしているが、これに限定されることはない。2つの屈曲領域において、第1の伝送線導体が屈曲する部分がそれぞれ異なる形状をしていても、第1の屈曲領域において、第2の伝送線導体が屈曲する形状が、第1の伝送線導体の屈曲する部分の一方の形状と等しく、第2の屈曲領域において、第2の伝送線導体が屈曲する形状が、第1の伝送線導体の屈曲する部分の他の一方の形状と等しければ、遅延時間差は抑制される構造となっている。
【0130】
図17は、本発明の当該実施形態に係る差動伝送線路8の解析結果を示す図である。図17には、図15と同様に、当該実施形態に係る差動伝送線路8の差動モード−同相モード変換量Scd21の周波数依存性を表している。また、比較のため、図17には、図15と同様に、従来例2に係る差動伝送線路についての解析結果も示されており、実線が当該実施形態の解析結果、破線が従来例2の解析結果を表している。
【0131】
図17に示す通り、当該実施形態に係る差動伝送線路8は、屈曲領域を有しているにもかかわらず、Scd21を、周波数10GHz以下の周波数領域では−47dB以下に、周波数20GHz以下の領域では−38dB以下に、抑制することが出来ている。また、下記の表5に示す通り、従来例2と比較して、不要モードである同相モードの発生が、周波数10GHzにおいては約42dB、周波数20GHzにおいては約37dB、低減されている。
【0132】
【表5】

【0133】
[第6の実施形態]
本発明の第6の実施形態に係る光送受信モジュール1の基本的な構成は、第4の実施形態に係る光送受信モジュール1の構成と同じであるが、当該実施形態に係る差動伝送線路8の1対の伝送線導体の形状が、第4の実施形態と異なっている。
【0134】
図18は、当該実施形態に係る差動伝送線路8の2つの屈曲領域付近を示す上面図である。第1の伝送線導体は、図18において、第1上層Pデータ導体膜115、第2上層Pデータ導体膜116、第1下層Pデータ導体膜117、第1のバイアホール118、及び第4のバイアホール119として示されている。第2の伝送線導体は、第1上層Nデータ導体膜215、第2上層Nデータ導体膜216、第1下層Nデータ導体膜217、第2のバイアホール218、及び第3のバイアホール219として示されている。
【0135】
図18に示す通り、差動伝送線路8は、伝送信号の進行方向に沿って、順に、第1の直線領域、第1の屈曲領域、第2の直線領域、第2の屈曲領域、及び第3の直線領域に分類される。図14と同様に、第1の屈曲領域は第1の交差領域を、第2の屈曲領域は第2の交差領域を、それぞれ含んでおり、第1の交差領域及び第2の交差領域それぞれにおいて、1対の伝送線導体は、立体的に交差しており、接地導体層18の上方から見て直交している。
【0136】
今までに説明したいずれの実施形態に係る差動伝送線路8でも、第1の交差領域の後方及び前方にそれぞれ配置される第1の直線領域及び第2の直線領域において、1対の伝送線導体はともに第1の層となる同層上に形成されているが、これに限定されることはない。当該実施形態に係る差動伝送線路8では、第2の直線領域において、1対の伝送線導体はともに第1の層とは異なる層である第2の層上に形成されている。
【0137】
まず、当該実施形態に係る差動伝送線路8の図18の左側に示す構造について説明する。第1の伝送線導体(他の一方の伝送線導体)には、第1の直線領域と第1の交差領域の間に、第1のバイアホール118が配置されており、第2の伝送線導体(一方の伝送線導体)には、第1の交差領域の前方であり、第1の交差領域と第2の直線領域との間に、第2のバイアホール218が配置されている。
【0138】
第1の伝送線導体(第1上層Pデータ導体膜115)は、第1の直線領域より第1のバイアホール118へ第1の層上を延伸し、第1の伝送線導体は、第1の層から第2の層へ第1のバイアホール118を貫通し、第1の伝送線導体(第1下層Pデータ導体膜117)は、第1の交差領域を貫いて第2の層上を第2の直線領域へ延伸している。これに対して、第2の伝送線導体(第1上層Nデータ導体膜215)は、第1の直線領域より第1の交差領域を貫いて第2のバイアホール218へ第1の層上を延伸し、第2の伝送線導体は、第1の層から第2の層へ第2のバイアホール218を貫通し、第2の伝送線導体(217)は第2のバイアホール218から第2の直線領域へ第2の層上を延伸している。
【0139】
第1の伝送線導体(片方の伝送線導体)は、下側から右側へ(第1の方向から第2の方向へ)屈曲の方向変化に対して、第1の直線領域において外側の伝送線導体であり、第2の伝送線導体(他の片方の伝送線導体)は、内側の伝送線導体である。第1の伝送線導体は、第1の直線領域と第1の交差領域との間において、下側から右側へ(第1の方向から第2の方向へ)屈曲し、さらに、前方を第1の交差領域を貫いて第2の直線領域まで右側へ(第2の方向に)直線的に延伸している。これに対して、第2の伝送線導体は、第1の直線領域から第1の交差領域を貫いて前方を下側へ(第1の方向に)直線的に延伸し、第1の交差領域と第2の直線領域の間において、下側から右側へ(第1の方向から第2の方向へ)屈曲し、さらに、前方を第2の直線領域まで右側へ(第2の方向に)直線的に延伸している。
【0140】
当該実施形態に係る差動伝送線路8では、第1の屈曲領域において、1対の伝送線導体がそれぞれ1つのバイアホールを有しており、第5の実施形態に係る差動伝送線路8と同様に、バイアホールの厚みに起因する遅延時間差が抑制される構造となっている。それゆえ、屈曲領域における1対の伝送線導体の形状の設計に自由度が高まっている。また、1対の伝送線導体の平面形状に特別な工夫をすることなしに、1対の伝送線導体それぞれの屈曲する部分の形状を等しくすることにより、1対の伝送線路に生じる遅延時間差が抑制される。図18には、第1の屈曲領域において、第1の伝送線導体が第1の交差領域の後方で屈曲する部分の形状と、第2の伝送線導体が第1の交差領域の前方で屈曲する部分の形状とは、ともに、図3に示す第1上層Pデータ導体膜101の90度屈曲する部分の形状と等しくなっている。
【0141】
なお、1対の伝送線導体は、第1の直線領域においてともに第1の層に形成されているのに対して、第2の直線領域においてともに、第1の層より下方の第2の層に形成されている。それゆえ、1対の伝送線路が、第1の直線領域における所望のインピーダンス特性と等しいインピーダンス特性を第2の直線領域において得るために、第2の直線領域における1対の伝送線導体それぞれの幅である第2の幅を好適なものにするとよい。第2の層と接地導体層18との距離は、第1の層と接地導体層18との距離より短くなっており、差動反射損失を軽減する観点で最適な第2の幅は、第1の幅であるW0(0.39mm)より小さいのが望ましく、幅W3(0.29mm)となっている。
【0142】
次に、当該実施形態に係る差動伝送線路8の図18の右側に示す構造について説明する。第2の伝送線導体(一方の伝送線導体)には、第2の直線領域と第2の交差領域の間に、第3のバイアホール219が配置されており、第1の伝送線導体(他の一方の伝送線導体)には、第2の交差領域の前方であり、第2の交差領域と第3の直線領域との間に、第4のバイアホール119が配置されている。
【0143】
第2の伝送線導体(第1下層Nデータ導体膜217)は、第2の直線領域より第3のバイアホール219へ第2の層上を延伸し、第2の伝送線導体は、第2の層から第1の層へ第3のバイアホール219を貫通し、第2の伝送線導体(第2上層Nデータ導体膜216)は、第2の交差領域を貫いて第1の層上を第3の直線領域へ延伸している。これに対して、第1の伝送線導体(第1下層Pデータ導体膜117)は、第2の直線領域より第2の交差領域を貫いて第4のバイアホール119へ第2の層上を延伸し、第1の伝送線導体は、第2の層から第1の層へ第4のバイアホール119を貫通し、第1の伝送線導体(第2上層Pデータ導体膜116)は第4のバイアホール119から第3の直線領域へ第1の層上を延伸している。
【0144】
第2の伝送線導体(他の片方の伝送線導体)は、第2の直線領域と第2の交差領域との間において、右側から上側へ(第2の方向から第3の方向へ)屈曲し、さらに、前方を第2の交差領域を貫いて第3の直線領域まで上側へ(第3の方向に)直線的に延伸している。これに対して、第1の伝送線導体(片方の伝送線導体)は、第2の直線領域から第2の交差領域を貫いて前方を右側へ(第2の方向に)直線的に延伸し、第2の交差領域と第3の直線領域の間において、右側から上側へ(第2の方向から第3の方向へ)屈曲し、さらに、前方を第3の直線領域まで上側へ(第3の方向に)直線的に延伸している。
【0145】
当該実施形態に係る差動伝送線路8では、第2の屈曲領域においても、1対の伝送線導体がそれぞれ1つのバイアホールを有しており、第1の屈曲領域と同様に、バイアホールの厚みに起因する遅延時間差が抑制される構造となっている。それゆえ、屈曲領域における1対の伝送線導体の形状の設計に自由度が高まっている。また、1対の伝送線導体の平面形状に特別な工夫をすることなしに、1対の伝送線導体それぞれの屈曲する部分の形状を等しくすることにより、1対の伝送線路に生じる遅延時間差が抑制される。図18には、第2の屈曲領域において、第2の伝送線導体が第2の交差領域の後方で屈曲する部分の形状と、第1の伝送線導体が第2の交差領域の前方で屈曲する部分の形状とは、ともに、図3に示す第1上層Pデータ導体膜101の90度屈曲する部分を縦線に対して線対称(鏡像反転)とする形状と等しくなっている。さらに、第5の実施形態に係る差動伝送線路8と同様に、2つの屈曲領域において、第1の伝送線導体が屈曲する部分がそれぞれ異なる形状をしていても、第1の屈曲領域において、第2の伝送線導体が屈曲する形状が、第1の伝送線導体の屈曲する部分の一方の形状と等しく、第2の屈曲領域において、第2の伝送線導体が屈曲する形状が、第1の伝送線導体の屈曲する部分の他の一方の形状と等しければ、遅延時間差は抑制される構造となっている。
【0146】
なお、ここでは、第1の交差領域と第2の交差領域において、ともに、第1の伝送線導体を第1の層に形成される伝送線導体(一方の伝送線導体)とし、第2の伝送線導体を第2の層に形成される伝送線導体(他の一方の伝送線導体)としたが、これに限定されることはない。いずれの交差領域において、第2の伝送線導体が第1の層に形成されてもよいし、一方の交差領域において第1の伝送線導体が第1の層に形成され、他の一方の交差領域において第2の伝送線導体が第1の層に形成されてもよい。
【0147】
図19は、本発明の当該実施形態に係る差動伝送線路8の解析結果を示す図である。図19には、図15と同様に、当該実施形態に係る差動伝送線路8の差動モード−同相モード変換量Scd21の周波数依存性を表している。また、比較のため、図19には、図15と同様に、従来例2に係る差動伝送線路についての解析結果も示されており、実線が当該実施形態の解析結果、破線が従来例2の解析結果を表している。
【0148】
図19に示す通り、当該実施形態に係る差動伝送線路8は、屈曲領域を有しているにもかかわらず、Scd21を、周波数10GHz以下の周波数領域では−30dB以下に、周波数20GHz以下の領域では−25dB以下に、抑制することが出来ている。また、下記の表6に示す通り、従来例2と比較して、不要モードである同相モードの発生が、周波数10GHzにおいては約26dB、周波数20GHzにおいては約24dB、低減されている。
【0149】
【表6】

【0150】
以上、本発明に係る差動伝送線路を備える光送受信モジュールについて説明した。また、第1乃至第3の実施形態においては、送受信一体型CDR集積回路3と駆動集積回路4との間に設けられる差動伝送線路8について、第4乃至第6の実施形態においては、SerDes集積回路25と駆動集積回路26との差動伝送線路8について説明したが、これに限定される必要がないのは言うまでもない。図3又は図13に示すいずれの差動伝送線路であっても、屈曲領域を設ける必要がある場合に、本発明を適用することが出来る。また、さらに、光送受信モジュールに備えられる差動伝送線路に限定される必要もなく、他の装置に備えられる差動伝送線路であっても、屈曲領域を設ける必要がある場合に、本発明を適用することが出来る。
【0151】
[第7の実施形態]
本発明の第7の実施形態に係る情報処理装置を図20乃至図23を用いて説明する。図20は、本発明の当該実施形態に係る差動伝送線路の屈曲領域付近を示す上面図である。図21は、当該実施形態に係る差動伝送線路の解析結果を示す図である。図22は、当該実施形態に係る情報処理装置のRZ変調部の回路図である。図23は、当該実施形態に係る情報処理装置のRZ変調部の斜視図である。
【0152】
当該実施形態に係る情報処理装置は、ビットレート44.6Gbit/sで動作するRZ−DQPSK(Return to Zero Differential Quadrature Phase Shift Keying)方式の光送受信機であり、図20に示す差動伝送線路を周波数22.3GHzの高速クロック信号の配線として用いたものである。
【0153】
まず、図20を用いて当該実施形態に係る差動伝送線路の構成を説明する。図20に示す差動伝送線路は、図3に示す差動伝送線路8と、1対の伝送線導体の形状が異なっている。図20において、第1の伝送線導体(第1伝送線路)は、第1上層Pデータ導体膜121と、第2上層Pデータ導体膜122と、第1下層Pデータ導体膜123と、第3のバイアホール124、及び第4のバイアホール125として示されている。第2の伝送線導体(第2伝送線路)は、第1上層Nデータ導体膜221と、第2上層Nデータ導体膜222と、第1下層Nデータ導体膜223と、第1のバイアホール204と、及び第2のバイアホール205として示されている。差動伝送線路は、図3と同様に、伝送信号の進行方向に沿って、順に、第1の直線領域と、屈曲領域(90度曲げ部分)と、第2の直線領域と、に分類され、屈曲領域は交差領域を含んでいる。
【0154】
第1の直線領域では、第1上層Pデータ導体膜121と第1上層Nデータ導体膜221とが、ともに第1の幅となる幅W0で互いに平行して下側へ(第1の方向に)延伸しており、第1上層Pデータ導体膜121及び第1上層Nデータ導体膜221のかかる部分を、それぞれ、第1導電膜及び第4導電膜とする。交差領域では、第1上層Pデータ導体膜121と第1下層Nデータ導体膜223とが立体的に交差しており、交差領域における第1上層Pデータ導体膜121の幅W1と、第1下層Nデータ導体膜223の幅W2は、ともに第1の幅となる幅W0より小さい。第1上層Pデータ導体膜121及び第1下層Nデータ導体膜223のかかる部分を、それぞれ、第2導電膜及び第5導電膜とする。第2の直線領域では、第2上層Pデータ導体膜122と第2上層Nデータ導体膜222とが、ともに第2の幅となる幅W0で互いに平行して右側へ(第2の方向に)延伸している。なお、ここで、第1の幅と第2の幅は等しい。第2上層Pデータ導体膜122及び第2上層Nデータ導体膜222のかかる部分を、それぞれ、第3導電膜及び第6導電膜とする。よって、第1の伝送線導体(第1伝送線路)では、第1導電膜、第2導電膜、及び第3導電膜が伝送方向に沿って順に並ぶとともに、互いに電気的に接続されている。同様に、第2の伝送線導体(第2伝送線路)では、第4導電膜、第5導電膜、及び第6導電膜が伝送方向に沿って順に並ぶとともに、互いに電気的に接続されている。
【0155】
なお、差動伝送線路において、伝送信号の進行方向は、順方向及び逆方向のいずれの方向であってもよく、伝送信号の進行方向が上記方向と逆方向の場合について、以下に説明する。この場合、第2上層Pデータ導体膜122及び第2上層Nデータ導体膜222の直線領域にある部分を、それぞれ、第1導電膜及び第4導電膜とし、第1上層Pデータ導体膜121及び第1上層Nデータ導体膜221の直線領域にある部分を、それぞれ、第3導体膜及び第6導体膜とすればよい。この場合、第1導体膜と第4導体膜とが、互いに平行して左側へ(第1の方向に)延伸し、第3導体膜と第6導体膜とが、互いに平行して上側へ(第2の方向に)に延伸している。
【0156】
図20に示す差動伝送線路は、図3に示す差動伝送線路8と、寸法が異なっている。第1及び第2の直線領域における一対の伝送線導体の幅W0を共に0.2mmとし、第1の伝送線導体と第2の伝送線導体の間隔である幅S0を0.2mmとしている。また、交差領域における第1の伝送線導体(第1上層Pデータ導体膜121)の幅W1は0.1mmとし、幅W0より小さく設定している。同様に、交差領域における第2の伝送線導体(第1下層Nデータ導体膜223)の幅W2は0.1mmとし、幅W0より小さく設定している。また、第1下層Pデータ導体膜123の配線幅は0.1mmである。これらの値は、差動反射損失を軽減する点で好適である。
【0157】
次に、図21を用いて、図20の差動伝送線路の解析結果を説明する。以下は、一例として差動伝送線路の線路長を14mmとした場合の特性であり、3次元電磁界構造解析ツールにより解析した結果である。図21における曲線は、図の上側から順に、差動通過特性(Sdd21)、差動反射係数(Sdd11)、差動モード−同相モード変換量(Scd21)の周波数依存性を表している。図21に示す通り、当該実施形態に係る差動伝送線路は、屈曲領域を有しているにもかかわらず、周波数25GHz以下の周波数領域においてScd21を、−21dB以下に、抑制することができている。また、Sdd11は−22dB以下、Sdd21は−1.1dB以上と良好な値を示している。
【0158】
下記の表7に示す通り、当該実施形態に係る差動伝送線路において、周波数22.3GHzにおける差動モード−同相モード変換量Scd21の値と、差動伝送線路に周波数22.3GHz、振幅2Vの差動信号を入力した場合の遠方電磁界から算出した距離3mにおける不要電磁波の最大電界強度(Max E field at 3m)の値とを、従来例と比較したものである。従来例1(図26)と比較して、不要モードである同相モードの発生が約23dB、不要電磁波の最大電界強度が約13dBそれぞれ低減されている。
【0159】
図28は、従来技術に係る差動伝送線路の他の一例を示す平面図である。図28に示す従来技術に係る差動伝送線路を、当該実施形態の比較例として、従来例3とする。従来例3に係る差動伝送線路では、図28に示すNデータ導体膜283に蛇行させる部分を設けることにより、90°曲げ部分(屈曲領域)によって生じる遅延時間差を補償して、1対の差動伝送線路を等長配線にする手法を用いている。従来例3に係る差動伝送線路では、Scd21を−30dB以下と良好にできるものの、不要電磁波の最大電界強度は99dB(μV/m)と従来例1とほぼ同等である。当該実施形態に係る差動伝送線路は、従来例3と比較して、不要電磁波の最大電界強度が約14dB低減する効果がある。また、図29は、従来技術に係る伝送線路の一例を示す平面図である。図29に示す従来技術に係る伝送線路を、当該実施形態の比較例として、従来例4とする。従来例4に係る伝送線路は、90°曲げ部分(屈曲領域)を設けたシングルエンド伝送線路であり、入力信号振幅は1Vとしている。従来例4に係る伝送線路では、不要電磁波の最大電界強度は99dB(μV/m)と従来例1とほぼ同等である。当該実施形態に係る差動伝送線路は、従来例4と比較して、不要電磁波の最大電界強度が約14dB低減する効果がある。ここで、従来例4に係る伝送線路は、従来例1に係る差動伝送線路からNデータ導体膜281を削除し、Pデータ導体膜181のみとした構造の伝送線路である。
【0160】
【表7】

【0161】
次に、図22を用いて、当該実施形態に係るRZ変調部の回路構成を説明する。プリント回路基板16の同一面上に、マルチプレクサ集積回路303、高周波電力増幅器集積回路304、シールド蓋305、DCカット容量311、終端抵抗312を配置する。マルチプレクサ集積回路303はクロック生成機能を持ち、クロック差動出力端子303aを有する。クロック差動出力端子303aより出力される信号は動作周波数22.3GHzのクロック信号とする。マルチプレクサ集積回路303のクロック差動出力端子303aには、図20に示す90°の曲げ部分(屈曲領域BT)を持つ差動伝送線路の一端のペアを接続し、高周波電力増幅器集積回路304の入力端子にはその差動伝送線路の他端の一方を接続する。差動伝送線路の他端の別の一方はDCカット容量311を介して終端抵抗312に接続し、高周波的に反射が生じないように終端をする。DCカット容量311としては例えば容量値0.1μFの表面実装型容量を用いる。終端抵抗312としては表面実装型抵抗を用いる。その抵抗値は50Ωとするのが好適であるが、E系列の抵抗値である51Ωとしてもよい。クロック差動出力端子303aから出力されるクロック信号は高周波電力増幅器集積回路304により増幅され、高周波電力増幅器集積回路304の出力端子から同軸コネクタ308、同軸ケーブル310、同軸コネクタ309を介してパルスカーバー光変調器モジュール306の内部に配置したLN強度変調器307に入力される。これによりパルスカーバー光変調器モジュール306は、DQPSK光信号をRZ−DQPSK光信号に変調する動作を得る。
【0162】
パルスカーバー光変調器モジュール306のパッケージは金属製であり、例えばステンレスからなる。金属パッケージはLN強度変調器307を覆い、接地電位に接続する。同軸コネクタ308,309および同軸ケーブル310は外部導体で覆われ、外部導体は接地電位に接続する。高周波電力増幅器集積回路304の出力端子から出力されるクロック信号は周波数22.3GHzにおける信号強度が非常に大きいものの、上記構成とすることにより優れたシールド効果が得られ、外部に放射される不要電磁波を十分に抑圧することができる。
【0163】
シールド蓋305は金属からなり、例えば板金を加工して形成する。シールド蓋305は高周波電力増幅器集積回路304、DCカット容量311、終端抵抗312を含む領域の上部を覆うように配置する。またシールド蓋305の下部領域には接地導体層18を配置し、複数のバイアホール等を介して接地導体層18をシールド蓋305に電気的に接続する。クロック差動出力端子303aから出力されるクロック信号は、シールド蓋305の内部に入った後、高周波電力増幅器集積回路304およびDCカット容量311、終端抵抗312に配分されるが、上記構成によりシールド蓋305と接地導体層18とで十分なシールド効果が得られ、この領域から外部に放射される不要電磁波は十分に抑圧することができる。
【0164】
さらに、クロック差動出力端子303aからシールド蓋305までの領域は、図20に示す90°の曲げ部分(屈曲領域BT)を持つ差動伝送線路を配置したことにより、表7に示す通り、差動伝送路から空間に放射される不要電磁波を低減することができる。
【0165】
図23は、当該実施形態に係る情報処理装置のRZ変調部の斜視図である。RZ−DQPSK方式の光送受信機は、装置内にパルスカーバー光変調器モジュール306、DQPSK光変調モジュール(図示せず)、DQPSK光復調器モジュール等(図示せず)、比較的形状の大きな光学部品を内蔵する必要から、電子部品の配置が狭い領域に制限される。また、マルチプレクサ集積回路303は多数の差動入力端子やIチャネル、Qチャネルの高速デジタル信号の差動出力端子を有するため、マルチプレクサ集積回路303の配置自体にも自由度が少なく、差動出力端子を直線に配置することが困難な場合が多い。当該実施形態では、90°の曲げ部分(屈曲領域BT)を持つ差動伝送線路を用いたことにより、RZ変調部の電子部品配置を図23に示すようにコンパクトな配置が実現でき、高密度実装に好適である。
【0166】
当該実施形態において、クロック差動出力端子303aから出力されるクロック信号のクロック周波数は22.3GHzとしたが、その周波数は、光送受信機が動作するビットレートに応じて変えてもよく、例えば動作ビットレートを43.0Gbit/s、クロック周波数を21.5GHzとしてもよい。また、高周波電力増幅器集積回路304はドライバ集積回路であってもよい。また、シールド蓋305は板金加工により形成するとしたが、これを光送受信機の金属ケースといったい形成した構造体でシールド蓋305を構成してもよい。
【0167】
差動伝送線路を搭載する情報処理装置には、差動伝送線路より放射される不要電磁波が問題となる。高速度のデジタル信号伝送装置では、許容される不要電磁波の強度を満たすべく、装置の筐体設計を行う必要がある。特に不要電磁波の周波数が10GHzを超える場合、プリント回路基板から放射される不要電磁波の強さに応じて、筐体構造部品を金属で構成してその間隙を極めて小さくしてプリント回路基板を覆う、あるいは筐体の内部に電波吸収材料を配置することで装置からの外部に漏れる不要電磁波の強度を法規で定められた限度値以下に抑える必要がある。例えば米国ではFCC Part 15 Subpart B規格に定められた限度値53.9dB(μV/m)(Class B規格、距離3m、周波数範囲1GHz〜40GHzの場合)以下を満足する必要がある。プリント回路基板からの不要な電磁放射が増大した場合、筐体構造部品の作製に寸法精度の高い加工手段を用いることになり、筐体構造部品のコスト増加が問題となる。あるいは比較的高価な電波吸収材料の体積を増加させることになり、それに伴うコスト増加が問題となる。
【0168】
例えば図28に示す従来技術に係る差動伝送線路のように、1対の伝送線路の形状を工夫することにより等長配線にする手法では、一部蛇行させる形状を設けるため、この蛇行部分が不要な電磁界の広がりを生じ、不要電磁波が増大してしまう。これに対して、特許文献1に記載されている技術では、接地導体層に設けた複数のスロットが不要な電磁界の広がりを生じ、不要電磁波が増大してしまう。しかし、当該実施形態に係る情報処理装置では、差動伝送線路に蛇行させる形状を用いることなく、また、接地導体層に複数のスロットを設けることなく、1対の差動伝送線路を伝送する差動信号の遅延時間差が抑制されており、さらに、不要電磁波が抑制されることとなる。これにより、情報処理装置のプリント回路基板上に形成した差動伝送線路において、コスト増大を抑制しつつ、差動伝送線路が曲げ領域を含んだ場合にも曲げ領域における不要電磁波が抑制される情報処理装置を実現することが出来る。
【0169】
以上、当該実施形態に係る情報処理装置について説明した。これらは、情報処理装置として、光送受信機、例えば300pin MSA規格に準拠した光送受信トランシーバモジュールなどを想定した記述であるが、光送受信機をモジュール化せずに装置内に送信回路と受信回路を実装した光伝送装置などであってもよい。その場合光伝送装置を覆う筐体に電磁漏洩に対する強固なシールド機能を持たせる必要がなくなり、装置コストを低減することができる。
【0170】
[第8の実施形態]
本発明の第8の実施形態に係る情報処理装置を図24を用いて説明する。図24は、本発明の当該実施形態に係る情報処理装置のRZ変調部の回路図であり、第7の実施形態に係るRZ変調部との違いは、入力端子が単一の高周波電力増幅器集積回路304に替えて、差動入力端子314aを有する高周波電力増幅器集積回路314を配置している点にある。
【0171】
マルチプレクサ集積回路303のクロック差動出力端子303aには、図20に示す90°の曲げ部分(屈曲領域BT)を持つ差動伝送線路の一端のペアを接続し、高周波電力増幅器集積回路314の差動入力端子314aにはその差動伝送線路の他端のペアを接続する。
【0172】
当該実施形態によれば、使用する高周波電力増幅器集積回路の電力利得が等しい場合、クロック差動出力端子303aより出力されるクロック信号の22.3GHzにおける電力を1/2に低減することができ、差動伝送路から空間に放射される不要電磁波を第7の実施形態に比べ3dB低減する効果が得られる。
【0173】
[第9の実施形態]
本発明の第9の実施形態に係る情報処理装置を図25を用いて説明する。図25は、本発明の当該実施形態に係る情報処理装置の送信部の回路図であり、以下に、その回路構成を説明する。
【0174】
プリント回路基板16の上に、送受信一体型CDR集積回路3、DCカット容量320,321、変調器バイアス電圧供給回路330、レーザ電流供給回路331、及びFPC接続端子17を配置する。送受信一体型CDR集積回路3は、レーザドライバ機能を持ち、送信側差動出力端子3aを有する。送信側差動出力端子3aより出力される信号はビットレート11.1Gbit/sの二値のシリアルデータ信号とする。送受信一体型CDR集積回路3の送信側差動出力端子3aには、図20に示す90°の曲げ部分(屈曲領域BT)を持つ差動伝送線路の一端のペアを接続し、FPC接続端子17にはその差動伝送線路の他端のペアを接続する。FPC接続端子17にはFPC332を接続する。FPC332上には差動伝送線路を直線的に形成し、プリント回路基板16上の差動伝送線路を延伸して光送信用素子モジュール6の入力端子6a,6bにそれぞれ接続する。光送信用素子モジュール6は金属製のパッケージ内にEA型変調器集積レーザチップ333、デカップリング容量336、第1の終端抵抗337、第2の終端抵抗338、チョークコイル322、及びボンディングワイヤ325、326を内包している。EA型変調器集積レーザチップ333は化合物半導体チップからなり、その一表面にレーザダイオード334とEA型変調器335とを集積したものである。レーザダイオード334から出力される連続光をEA型変調器335により変調し、EA型変調器335に入力される電気信号を光信号に変換する働きを持つ。
【0175】
入力端子6aからの配線はボンディングワイヤ325,326を介してEA型変調器335および第1の終端抵抗337に接続する。入力端子6bからの配線は第2の終端抵抗338、チョークコイル322を介してレーザダイオード334に接続する。第2の終端抵抗338とチョークコイル322の間にはデカップリング容量336を接続し、接地電位にシャントする。
【0176】
DCカット容量320,321としては例えば容量値0.1μFの表面実装型容量を用いる。また、デカップリング容量336としては例えば容量値0.1μFの平行平板型容量を用いる。第1の終端抵抗337、第2の終端抵抗338としてはセラミック基板上に形成した厚膜印刷抵抗を用いる。その抵抗値は50Ωとするのが好適である。ボンディングワイヤ325,326が成す直列インダクタンスは0.1〜1.2nHの範囲が好適である。チョークコイル322に替えて、フェライトビースであってもよい。
【0177】
理想的な二値のシリアルデータ信号(クロスポイント50%)を差動伝送路に入力した場合には、十分にランダムな信号では周波数領域においてスペクトルが十分に拡散し、特定の周波数に電力のピークは生じない。よって通常は不要電磁波の発生源とはなりにくい。しかし、EA型変調器は電気−光変換特性において非常に強い非線形性を有するため、EA型変調器を駆動する場合にはレーザドライバの出力信号のクロスポイントを50%からずらすことが必要である。我々の検討によれば、EA型変調器の光出力波形品位を良好にするためには、レーザドライバの出力信号のクロスポイントを通常60%〜75%にすることが必要であった。そのため、送信側差動出力端子3aより出力される信号にはビットレートに応じた周波数において電力のピークが生じ、不要電磁波の発生源となった。ビットレートが11.1Gbit/sの場合、基本波11.1GHzとその高調波(22.2GHz,33.3GHz,・・・)に電力のピークが生じ、ドライバの帯域にもよるが、通常は基本波11.1GHzと二次高調波22.2GHzのピークが支配的である。
【0178】
光送信用素子モジュール6のパッケージは金属製であり、EA型変調器集積レーザチップ333、デカップリング容量336、第1の終端抵抗337、第2の終端抵抗338、チョークコイル322、ボンディングワイヤ325、326を覆い、接地電位に接続する。上記構成とすることにより優れたシールド効果が得られ、外部に放射される不要電磁波を十分に抑圧することができる。
【0179】
さらに、送信側差動出力端子3aから入力端子6a,6bまでの領域に配置される差動伝送回路を、図20に示す90°の曲げ部分(屈曲領域BT)を持つ差動伝送線路と、FPC332上に配置される差動伝送線路とで構成することにより、表7に示す通り、差動伝送路から空間に放射される不要電磁波を低減することができる。
【0180】
当該実施形態において、第1の終端抵抗337の一端は接地電極に接続するものとしたが、これを第1の終端抵抗337と接地電極との間にデカップリング容量を直列に挿入したものとしてもよい。この構成にすることにより、変調器バイアス電圧供給回路330からの供給される直流電流が第1の終端抵抗337を流れることを阻止でき、消費電力の低減および光送信用素子モジュール6の内部での発熱量を低減することができる。
【0181】
また、当該実施形態において、第2の終端抵抗338の一端はチョークコイル322とデカップリング容量336から構成されるローパスフィルターを介してレーザダイオード334に接続するものとしたが、これを第2の終端抵抗338の一端を接地電極に接続するものとし、さらにレーザ電流供給回路331とレーザダイオード334を別の経路から供給するものとしてもよい。この構成にすることによりレーザ電流供給回路331からの供給される直流電流が第2の終端抵抗338を流れることを回避でき、消費電力の低減および光送信用素子モジュール6の内部での発熱量を低減することができる。
【0182】
以上、本発明に係る差動伝送線路を備える情報処理装置について説明した。第7乃至第9の実施形態に係る情報処理装置では、図20に示す差動伝送線路を用いることとしたが、これに限定される必要がないことは言うまでもない。図3、図9、図11などに示す差動伝送線路はもちろんのこと、本発明が適用される他の差動伝送線路であってもよい。また、本発明の思想はこれに限定される必要がないのは言うまでもない。本発明は高速差動伝送線路を備えた情報処理装置全般に適用することができる。例えば、パソコン内部で用いられているボード間を接続しているPCI EXPRESSや、低電圧駆動として広く利用されているLVDS(Low Voltage Differential Signaling)への適用が考えられる。
【符号の説明】
【0183】
1 光送受信モジュール、2 データ伝送部、3 送受信一体型CDR集積回路、3a 送信側差動出力端子、3b 送信側差動入力端子、3c 受信側差動出力端子、3d 受信側差動入力端子、4 駆動集積回路、5 光受信用素子モジュール、6 光送信用素子モジュール、7 制御部、8 差動伝送線路、9 送信側差動入力伝送線路、10 受信側差動出力伝送線路、11 受信側差動入力伝送線路、13 伝送装置本体、14 制御信号線、15 デジタル通信インターフェース、16 プリント回路基板、17 FPC接続端子、18,19,20,21,22 接地導体層、23 誘電体層、24 保護膜、25 SerDes集積回路、26 駆動集積回路、27 送信側差動出力伝送線路、31,32 DCカット容量、101,102,103 第1上層Pデータ導体膜、104 第2上層Pデータ導体膜、105 第1下層Pデータ導体膜、106 第3のバイアホール、107 第4のバイアホール、108,109 第1上層Pデータ導体膜、110 第2上層Pデータ導体膜、111 第1下層Pデータ導体膜、112 第3のバイアホール、113 第4のバイアホール、115 第1上層Pデータ導体膜、116 第2上層Pデータ導体膜、117 第1下層Pデータ導体膜、118 第1のバイアホール、119 第4のバイアホール、121 第1上層Pデータ導体膜、122 第2上層Pデータ導体膜、123 第1下層Pデータ導体膜、124 第3のバイアホール、125 第4のバイアホール、181,182 Pデータ導体膜、201 第1上層Nデータ導体膜、202 第2上層Nデータ導体膜、203 第1下層Nデータ導体膜、204 第1のバイアホール、205 第2のバイアホール、206,207 第2上層Nデータ導体膜、208 第3上層Nデータ導体膜、209 第2下層Nデータ導体膜、210 第3のバイアホール、211 第4のバイアホール、212 第2上層Nデータ導体膜、215 第1上層Nデータ導体膜、216 第2上層Nデータ導体膜、217 第1下層Nデータ導体膜、218 第2のバイアホール、219 第3のバイアホール、221 第1上層Nデータ導体膜、222 第2上層Nデータ導体膜、223 第1下層Nデータ導体膜、281,282, 283 Nデータ導体膜、303 マルチプレクサ集積回路、303a クロック差動出力端子、304 高周波電力増幅器集積回路、305 シールド蓋、306 パルスカーバー光変調器モジュール、307 LN強度変調器、308,309 同軸コネクタ、310 同軸ケーブル、311 DCカット容量、312 終端抵抗、314 高周波電力増幅器集積回路、314a 差動入力端子、320,321 DCカット容量、322 チョークコイル、325,326 ボンディングワイヤ、330 変調器バイアス電圧供給回路、331 レーザ電流供給回路、332 FPC、333 EA型変調器集積レーザチップ、334 レーザダイオード、335 EA型変調器、336 デカップリング容量、337 第1の終端抵抗、338 第2の終端抵抗、BT 屈曲領域、CR 交差領域、DT 迂回領域、SL1 第1の直線領域,SL2 第2の直線領域。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
接地導体層と、
前記接地導体層の一方側に誘電体層を介してともに設けられる、1対の伝送線導体と、
を備え、
前記接地導体層は、前記1対の伝送線導体と対向する領域を含んで外方に広がるとともに、前記1対の伝送線導体と前記接地導体層で1対の伝送線路を形成する、差動伝送線路であって、
前記1対の伝送線導体は、
前記1対の伝送線導体がともに第1の幅で互いに平行して第1の方向に延伸するとともに第1の一層上に形成される、第1の直線領域と、
前記1対の伝送線導体の一方は前記第1の層上に形成され、他の一方は前記第1の層と異なる第2の層に形成され、前記1対の伝送線導体が前記誘電体層を介して立体的に交差し、前記第1の直線領域の前方に配置される第1の交差領域と、
を含み、
前記第1の交差領域における前記1対の伝送導体の幅それぞれは、ともに前記第1の幅より小さい、
ことを特徴とする、差動伝送線路。
【請求項2】
請求項1に記載の差動伝送線路であって、
前記1対の伝送線導体の前記他の一方は、前記第1の直線領域と前記第1の交差領域との間に第1のバイアホールを備え、
前記1対の伝送線導体の前記他の一方は、前記第1の直線領域より前記第1のバイアホールへ前記第1の層上を延伸し、前記第1の層から前記第2の層へ前記第1のバイアホールを貫通し、前記交差領域を貫いて前記第2の層上をさらに延伸し、
前記1対の伝送線導体の少なくともいずれかは、前記第1の直線領域と前記第1の交差領域との間においてへ屈曲する、
ことを特徴とする、差動伝送線路。
【請求項3】
請求項2に記載の差動伝送線路であって、
前記1対の伝送線導体の前記他の一方は、前記第1の交差領域の前方に第2のバイアホールをさらに備え、
前記1対の伝送線導体の前記他の一方は、前記第1の交差領域より前記第2のバイアホールへ前記第2の層上を延伸し、前記第2の層から前記第1の層へ前記第2のバイアホールを貫通し、さらに前方へ前記第1の層上を延伸し、
前記1対の伝送線導体の少なくともいずれかは、前記第1の交差領域の前方において屈曲する、
ことを特徴とする、差動伝送線路。
【請求項4】
請求項3に記載の差動伝送線路であって、
前記1対の伝送線導体の片方のみが、前記第1の直線領域と前記第1の交差領域との間において、前記第1の方向から前記第1の方向とは異なる第2の方向へ屈曲し、
前記1対の伝送線導体の他の片方のみが、前記第1の交差領域の前方において、前記第1の方向から前記第2の方向へ屈曲し、
前記第1の直線領域において、前記片方の伝送線導体は、前記第1の方向から前記第2の方向への屈曲に対して、外側の伝送線導体であり、前記他の片方の伝送線導体は、内側の伝送線導体である、
ことを特徴とする、差動伝送線路。
【請求項5】
請求項4に記載の差動伝送線路であって、
前記1対の伝送線導体は、
前記1対の伝送線導体がともに第2の幅で互いに平行して前記第2の方向に延伸するとともに前記第1の層上に形成される、第2の直線領域を、前記第2のバイアホールの前方に、さらに含む、
ことを特徴とする、差動伝送線路。
【請求項6】
請求項5に記載の差動伝送線路であって、
前記第2の幅は、前記第1の幅と等しい、
ことを特徴とする、差動伝送線路。
【請求項7】
請求項3に記載の差動伝送線路であって、
前記接地導体層の上方からみて平面的に測定される伝送線導体の配線長を比較した場合に、前記1対の伝送線導体の前記一方の配線長は、前記他の一方の配線長より、前記第1及び前記第2のバイアホールの厚みに起因する遅延時間の増加分を補償するよう、長くなっている、
ことを特徴とする、差動伝送線路。
【請求項8】
請求項7に記載の差動伝送線路であって、
前記1対の伝送線導体の前記一方は、前記第1及び前記第2のバイアホールの厚みに起因する遅延時間の増加分を補償するよう、迂回して延伸する部分を有している、
ことを特徴とする、差動伝送線路。
【請求項9】
請求項3に記載の差動伝送線路であって、
前記1対の伝送線導体の前記一方は、第3及び第4のバイアホールをさらに備え、
前記1対の伝送線導体の前記一方は、前記第1の層上を前方の前記第3のバイアホールへ延伸し、前記第1の層から前記第2の層へ前記第3のバイアホールを貫通し、さらに前記第2の層上を前方の前記第4のバイアホールへさらに延伸し、前記第2の層から前記第1の層へ前記第4のバイアホールを貫通し、さらに前方へ前記第1の層上をさらに延伸する、
ことを特徴とする、差動伝送線路。
【請求項10】
請求項5に記載の差動伝送線路であって、
前記1対の伝送線導体は、
前記1対の伝送線導体の一方は前記第1の層上に形成され、他の一方は前記第2の層に形成され、前記1対の伝送線導体が前記誘電体層を介して立体的に交差する第2の交差領域を、前記第2の直線領域の前方に、
前記1対の伝送線導体がともに第3の幅で互いに平行して前記第2の方向と異なる第3の方向に延伸するとともに、前記第1の層上に形成される、第3の直線領域を、前記第2の交差領域の前方に、
さらに含み、
前記第2の交差領域における前記1対の伝送線導体の前記他の一方は、前記第2の直線領域と前記第2の交差領域との間に第3のバイアホールを、前記第2の交差領域と前記第3の直線領域との間に第4のバイアホールを、さらに備え、
前記第2の交差領域における前記1対の伝送線導体の前記他の一方は、前記第1の層上を前方の前記第3のバイアホールへ延伸し、前記第1の層から前記第2の層へ前記第3のバイアホールを貫通し、さらに前記第2の層上を前方の前記第4のバイアホールへさらに延伸し、前記第2の層から前記第1の層へ前記第4のバイアホールを貫通し、さらに前方の前記第3の直線領域へ前記第1の層上をさらに延伸し、
前記第3の方向の前記第2の方向に対する方向変化の向きは、前記第2の方向の前記第1の方向に対する方向変化の向きと等しく、
前記1対の伝送線導体の前記他の片方のみが、前記第2の直線領域と前記第2の交差領域との間において、前記第2の方向から前記第3の方向へ屈曲し、
前記1対の伝送線導体の前記片方のみが、前記第2の交差領域と前記第3の直線領域との間において、前記第2の方向から前記第3の方向へ屈曲し、
前記第2の交差領域における前記1対の伝送導体の幅それぞれは、ともに前記第3の幅より小さい、
ことを特徴とする、差動伝送線路。
【請求項11】
請求項10に記載の差動伝送線路であって、
前記第1の交差領域における前記1対の伝送線導体の前記一方は、前記第2の交差領域における前記1対の伝送線導体の前記他の一方である、
ことを特徴とする、差動伝送線路。
【請求項12】
請求項10に記載の差動伝送線路であって、
前記第2の幅及び前記第3の幅は、ともに前記第1の幅と等しい、
ことを特徴とする、差動伝送線路。
【請求項13】
請求項2に記載の差動伝送線路であって、
前記1対の伝送線導体の前記一方は、前記第1の交差領域の前方に、第2のバイアホールを備え、
前記1対の伝送線導体は、前記1対の伝送線導体がともに第2の幅で互いに平行して前記第1の方向とは異なる第2の方向に延伸するとともに、前記第2の層上に形成される、第2の直線領域を、前記第2のバイアホールの前方に、さらに含み、
前記1対の伝送線導体の前記一方は、前記第1の直線領域から前記第1の交差領域を貫き前記第2のバイアホールへ延伸し、前記第1の層から前記第2の層へ前記第2のバイアホールを貫通し、前記第2の直線領域へ前記第2の層上をさらに延伸し、
前記1対の伝送線導体の前記他の一方は、前記第1のバイアホールから前記第2の直線領域へ前記第2の層上をさらに延伸し、
前記1対の伝送線導体の片方のみが、前記第1の直線領域と前記第1の交差領域との間において、前記第1の方向から前記第2の方向へ屈曲し、
前記1対の伝送線導体の他の片方のみが、前記第1の交差領域と前記第2の直線領域との間において、前記第1の方向から前記第2の方向へ屈曲し、
前記第1の直線領域において、前記片方の伝送線導体は、前記第1の方向から前記第2の方向への屈曲に対して、外側の伝送線導体であり、前記他の片方の伝送線導体は、内側の伝送線導体である、
ことを特徴とする、差動伝送線路。
【請求項14】
請求項13に記載の差動伝送線路であって、
前記1対の伝送線導体は、
前記1対の伝送線導体の一方は前記第1の層上に形成され、他の一方は前記第2の層に形成され、前記1対の伝送線導体が前記誘電体層を介して立体的に交差する第2の交差領域を、前記第2の直線領域の前方に、
前記1対の伝送線導体がともに第3の幅で互いに平行して前記第2の方向と異なる第3の方向に延伸するとともに、前記第1の層上に形成される、第3の直線領域を、前記第2の交差領域の前方に、さらに含み、
前記第2の交差領域における前記1対の伝送線導体の前記一方は、前記第2の直線領域と前記第2の交差領域との間に第3のバイアホールを、さらに備え、
前記第2の交差領域における前記1対の伝送線導体の前記他の一方は、前記第2の交差領域と前記第3の直線領域との間に第4のバイアホールを、さらに備え、
前記第2の交差領域における前記1対の伝送線導体の前記一方は、前記第2の層上を前方の前記第3のバイアホールへ延伸し、前記第2の層から前記第1の層へ前記第3のバイアホールを貫通し、前記第3の直線領域へ前記第1の層上をさらに延伸し、
前記第2の交差領域における前記1対の伝送線導体の前記他の一方は、前記第2の層上を前方の前記第4のバイアホールへ延伸し、前記第2の層から前記第1の層へ前記第4のバイアホールを貫通し、前記第3の直線領域へ前記第1の層上をさらに延伸し、
前記第3の方向の前記第2の方向に対する方向変化の向きは、前記第2の方向の前記第1の方向に対する方向変化の向きと等しく、
前記1対の伝送線導体の前記片方のみが、前記第2の交差領域と前記第3の直線領域との間において、前記第2の方向から前記第3の方向へ屈曲し、さらに前方を前記第3の方向に延伸し、
前記1対の伝送線導体の前記他の片方のみが、前記第2の直線領域と前記第2の交差領域との間において、前記第2の方向から前記第3の方向へ屈曲し、さらに前方を前記第3の方向に延伸し、
前記第2の交差領域における前記1対の伝送導体の幅それぞれは、ともに前記第3の幅より小さい、
ことを特徴とする、差動伝送線路。
【請求項15】
請求項1に記載の差動伝送線路であって、
前記第1の交差領域において、前記1対の伝送導体は、前記接地導体層の上方から見て、直交している、
ことを特徴とする、差動伝送線路。
【請求項16】
請求項10に記載の差動伝送線路であって、
前記第2の交差領域において、前記1対の伝送導体は、前記接地導体層の上方から見て、直交している、
ことを特徴とする、差動伝送線路。
【請求項17】
請求項1乃至請求項16のいずれかに記載の差動伝送線路、を備える光送受信モジュール。
【請求項18】
接地導体層と、
前記接地導体層の上表面に設けられる誘電体層と、
伝送方向に沿って順に並ぶとともに互いに電気的に接続される、第1導電膜、第2導電膜、及び第3導電膜、を有する第1伝送線路と、
伝送方向に沿って順に並ぶとともに互いに電気的に接続される、第4導電膜、第5導電膜、及び第6導電膜、を有する第2伝送線路と、を備え、
前記第1導電膜、前記第2導電膜、前記第3導電膜、前記第4導電膜、及び第6導電膜は、前記誘電体層の上表面に設けられ、
前記第5導電膜は、前記誘電体層の内部でかつ前記接地導体層の上方に設けられ、
前記第1導電膜と前記第4導電膜は、ともに第1の幅で互いに平行して第1の方向に延伸し、
前記第3導電膜と前記第6導電膜は、ともに前記第1の幅で互いに平行して第2の方向に延伸し、
前記第2導電膜と前記第5導電膜は、交差領域において立体的に交差するよう配置されるとともに、前記交差領域における前記第2導体膜の幅と前記第5導体膜の幅はともに前記第1の幅より小さく、
前記第1及び前記第2伝送線路と、前記接地導体層と、で1対の差動伝送線路を形成する、
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項19】
請求項18に記載の情報処理装置であって、
前記第1及び前記第2伝送線路、前記接地導体層、並びに前記誘電体層を含むプリント回路基板と、
前記プリント基板上に搭載され、差動クロック信号対を出力する差動クロック信号出力端子対を有する第1集積回路と、
前記プリント基板上に搭載され、前記差動クロック信号対の一方を受信する入力端子を有する第2集積回路と、をさらに備え、
前記第1及び前記第4導体膜は前記差動クロック信号出力端子対に接続され、
前記第3又は前記第6導体膜のいずれか一方は前記入力端子に接続される、
ことを特徴とする、情報処理装置。
【請求項20】
請求項19に記載の情報処理装置であって、
終端抵抗と、
前記終端抵抗と前記第2集積回路を含む領域を覆うシールド蓋と、をさらに備え、
前記第3又は前記第6導体膜のいずれか一方は前記入力端子に接続され、
前記第3又は前記第6導体膜の他方は前記終端抵抗に接続される、
ことを特徴とする、情報処理装置。
【請求項21】
請求項18に記載の情報処理装置であって、
前記第1及び前記第2伝送線路、前記接地導体層、並びに前記誘電体層を含むプリント回路基板と、
前記プリント基板上に搭載され、差動クロック信号対を出力する差動クロック信号出力端子対を有する第1集積回路と、
前記プリント基板上に搭載され、前記差動クロック信号対を受信する差動入力端子対を有する第2集積回路と、
前記第2集積回路を含む領域を覆うシールド蓋と、をさらに備え、
前記第1及び前記第4導体膜は前記差動クロック信号出力端子対に接続され、
前記第3及び前記第6導体膜は前記差動入力端子対に接続される、
ことを特徴とする、情報処理装置。
【請求項22】
請求項18に記載の情報処理装置であって、
前記第1及び第2伝送線路、前記接地導体層、並びに前記誘電体層を含むプリント回路基板と、
前記プリント基板上に搭載され、差動シリアルデータ信号対を出力する差動シリアルデータ信号出力端子対を有する第1集積回路と、
前記プリント基板上に搭載され、前記差動シリアルデータ信号対が入力される入力端子対を有し、入力された前記差動シリアルデータ信号に基づき光変調信号を出力する光送信用素子モジュールと、をさらに備え、
前記第1及び前記第4導体膜は前記差動シリアルデータ信号出力端子対に接続され、
前記第3又は前記第6導体膜のいずれか一方は、前記入力端子対のいずれか一方に接続される、
ことを特徴とする、情報処理装置。
【請求項23】
請求項22に記載の情報処理装置であって、
前記光送信用素子モジュールは内部に電界吸収型変調器集積レーザ素子と、第1および第2終端抵抗とを、さらに備え、
前記第3又は前記第6導体膜のいずれか一方は、前記電界吸収型集積レーザ素子の電界吸収型変調器部および前記第1終端抵抗に接続され、
前記第3又は前記第6導体膜の他方は、前記電界吸収型集積レーザ素子のレーザダイオードおよび前記第2終端抵抗に接続される、
ことを特徴とする、情報処理装置。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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