説明

差動制限装置の検査システムおよびその方法

【課題】差動制限装置の検査を簡単な構成で行うことができる差動制限装置の検査システムおよびその方法を提供する。
【解決手段】本発明は、ESC制御ユニット200を備える車両に適用される。LSD制御ユニット100は、リアデフRD内に設けられ、連結される左右の後輪間の差動制限力を可変的に制御する差動制限装置を制御する。ESC制御ユニット200は、車両の走行状態に応じて4つの車輪のそれぞれに独立して制動力を供給させる。駆動輪である後輪を所定速度で回転させている状態において、LSD制御ユニット100により差動制限装置をONまたはOFFし、ESC制御ユニット200により一方の車輪にブレーキを掛けて、両車輪の車輪速を車輪速センサRL1、RR1により計測する。検査機器300は、計測された両車輪の速度差に基づいて、差動制限装置の故障を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用の差動制限装置の検査システムおよびその検査方法に関し、特に、車両安定化制御装置またはアンチロックブレーキシステム装置の機能を利用した差動制限装置の検査システムおよびその検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、左右の車輪間に差動制限力を可変的に制御する車両用の差動制限装置の検査方法として、例えば、右後輪をジャッキアップし、その右後輪のスピンドルナットにトルクレンチを当て右回りに回転させてそのときのトルクを測定し、測定したトルクが基準値内にあるか否かにより、差動制限装置用クラッチの状態を検査する方法が知られている。
【0003】
この検査方法は、一般的な検査方法であり、差動制限トルクを電子制御する差動制限装置のうち、アクチュエータ(オイルポンプ)が車軸の回転によらずに作動可能な車両に対して適用することができる。しかしながら、オイルポンプが車軸の回転によって駆動する車両についてはこのような検査方法で差動制限装置の検査を行うことができない。
【0004】
差動装置の検査方法として、車両の走行状態において、差動ギヤを介した左右両車輪のタイヤの回転速度を左右で独立に計測し、それぞれの計測結果が均等でない場合には、回転速度の遅い方の軸受けまたは差動ギヤ周辺部に不具合があるものとする検査方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。さらに、別の差動制限装置の検査方法として、左右両車輪を駆動する差動ギヤに差動制限装置が組み込まれた車両の各車輪をローラに載せ、一方の車輪を載せたローラにこのローラの回転を規制する力を付与した状態で車両の加速操作を行い、一方のローラと他方のローラとの回転速度差および一方のローラに作用するトルクを計測し、計測された回転速度差で発生する差動制限トルクの基準値と計測されたトルクに基づいて差動制限装置により発生した差動制限トルクとを比較して、差動制限装置の良否を判定する差動制限装置の検査方法も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2002−340743号公報
【特許文献2】特開平6−288869号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示される検査方法では、簡略な設備(自動車用計測機器)により差動装置の検査を行うことができる。しかしながら、差動制限装置を搭載した車両において同様の検査を行う場合には、差動制限装置が正常に作動すれば左右両車輪のタイヤの回転速度に差が生じないため、差動装置の検査を行うことができないという問題がある。
【0006】
また、特許文献2に開示される検査方法では、一方のローラにそのローラの回転を規制する力を付与するための機構(ローラブレーキ等)を設ける必要があり、検査設備が大掛かりなものとなってしまい、例えば一般の修理工場に導入することは困難となり得るという問題がある。
【0007】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、各車輪の制動力を独立して制御することができる車両挙動安定化装置(ESC)またはアンチロックブレーキシステム(ABS)装置の機能を利用することにより、差動制限装置を作動させたときと作動させないときの差動制限装置の検査を簡単な構成で行うことができる差動制限装置の検査システムおよびその方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の差動制限装置の検査システムは、左右の車輪(WRL、WRR)間の差動制限力を可変的に制御する差動制限装置(LSD)と、作動油の液圧を受けて作動して車輪を制動するブレーキ装置(RLB、RRB等)と、車両の走行状態に応じて車輪のそれぞれに独立して制動力を制御可能なブレーキ制御装置(200)と、車輪のそれぞれの回転数を検出する回転数検出手段(RL1、RR1)とを備える車両の差動制限装置の検査システムであって、差動制限装置を作動させたとき、あるいは、該差動制限装置を作動させていないときに、差動制限装置の左右の車輪の一方にブレーキを行うようにブレーキ制御装置を介してブレーキ装置を作動させるブレーキ作動手段(300、200)と、ブレーキ作動手段により一方の車輪にブレーキ装置が作動している状態において、回転数検出手段により検出された左右の車輪の回転数を比較する回転数比較手段(300)と、回転数比較手段の比較結果に基づいて、差動制限装置の故障を判定する故障判定手段(300)とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の差動制限装置の検査システムによれば、車両の走行状態に応じて各車輪に独立して制動力を制御可能なブレーキ制御装置を備える車両において、差動制限装置を作動させたとき、あるいは、差動制限装置を作動させていないときに、ブレーキ制御装置を介して差動制限装置に連結された左右の車輪の一方にブレーキを行い、一方の車輪にブレーキが掛かっている状態において、回転数検出手段により検出された左右の車輪の回転速度(回転数)を比較し、その比較結果に基づいて、差動制限装置の故障を判定するようにしたので、車輪をローラに載せて検査するような大掛かりな検査設備を必要とすることなく、差動制限装置の検査を簡単な構成で行うことができる。これにより、例えば一般の修理工場においても差動制限装置の検査を容易に行うことができ、検査に対する設備等について費用を低減することができる。
【0010】
本発明の差動制限装置の検査システムでは、故障判定手段は、差動制限装置を作動させたときに回転数比較手段により得られた左右の車輪の回転数の差が所定値(例えば、3km/h、速度の積分値が100)以上である場合、および差動制限装置を作動させていないときに回転数比較手段により得られた左右の車輪の回転数の差が所定値(例えば、3km/h、速度の積分値が20)以下である場合には、差動制限装置が故障していると判定すればよい。これにより、差動制限装置のON時とOFF時の検査を容易に行うことができる。
【0011】
本発明の差動制限装置の検査システムでは、差動制限装置は、複数の開閉弁(55、57)の開閉動作により油圧クラッチ(CD)の係合を制御する油圧制御装置を備え、当該検査システムは、故障判定手段により差動制限装置が故障していると判定されたとき、各開閉弁から出力された作動油の油圧に基づいて、複数の開閉弁または油圧クラッチのいずれが故障しているかを特定する故障特定手段(300、62、64)をさらに備えてもよい。これにより、差動制限装置のどの部分に故障が発生しているかを容易に特定することができるので、修理等の作業を的確に行うことができる。
【0012】
また、本発明の差動制限装置の検査方法は、左右の車輪間に差動制限力を可変的に制御する差動制限装置と、作動油の液圧を受けて作動して車輪を制動するブレーキ装置と、車両の走行状態に応じて車輪のそれぞれに独立して制動力を制御可能なブレーキ制御装置と、車輪のそれぞれの回転数を検出する回転数検出手段とを備える車両の差動制限装置の検査方法であって、差動制限装置を作動させ、あるいは該差動制限装置を作動させない工程と、差動制限装置の左右の車輪の一方にブレーキを行うようにブレーキ制御装置を介してブレーキ装置を作動させる工程と、一方の車輪にブレーキ装置が作動している状態において、回転数検出手段により検出された左右の車輪の回転数を比較する工程と、回転数の比較結果に基づいて、差動制限装置の故障を判定する工程とを有することを特徴とする。
【0013】
本発明の差動制限装置の検査方法では、差動制限装置を作動させたときに左右の車輪の回転数の差が所定値以上である場合、および差動制限装置を作動させていないときに左右の車輪の回転数の差が所定値以下である場合には、差動制限装置が故障していると判定すればよい。
【0014】
本発明の差動制限装置の検査方法では、差動制限装置は、複数の開閉弁の開閉動作により油圧クラッチの係合を制御する油圧制御装置を備え、差動制限装置が故障していると判定されたとき、各開閉弁から出力された作動油の油圧に基づいて、複数の開閉弁または油圧クラッチのいずれが故障しているかを特定する工程をさらに有していてもよい。
【0015】
なお、上記で括弧内に記した図面参照符号は、後述する実施形態における対応する構成要素を参考のために例示するものである。また、上記で括弧内に記した閾値も後述する実施形態に対応して例示したものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、車輪をローラに載せて検査するような大掛かりな検査設備を必要とすることなく、差動制限装置の検査を簡単な構成で行うことができる。これにより、例えば一般の修理工場においても差動制限装置の検査を容易に行うことができ、検査に対する設備等について費用を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して本発明の差動制限装置の検査システムおよびその検査方法の好適な実施形態を詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の差動制限装置の検査システムおよびその検査方法が適用されるフロントエンジン・リヤドライブ車両の全体構成を概略的に示す図である。図1に示すように、フロントエンジン・リヤドライブ車両は、従動輪の左右前輪WFL、WFRと、駆動輪の左右の後輪WRL、WRRと、エンジンEと、トランスミッションT/Mと、動力伝達装置であるリアデフRDとを備える。リアデフRDは、後述するように、差動装置D、差動制限装置およびトルク配分機構(駆動力可変制御機構)Aの機能を備えている。車体前部に搭載したエンジンEの後端には、トランスミッションT/Mが接続され、トランスミッションT/Mから後方に延びるプロペラシャフトPの後端に、リアデフRDとして差動装置Dおよびトルク配分機構Aが一体的に配置される。このリアデフRDに駆動輪の後輪WRL、WRRが接続される。
【0019】
本発明の差動制限装置の検査システムおよびその検査方法は、フロントエンジン・リヤドライブ車両、フロントエンジン・フロントドライブ車両、および4輪駆動(4WD)車両の前後輪のいずれか、あるいはその両方に適用され得るが、本実施形態では、一例として、本発明が図1に示すフロントエンジン・リヤドライブ車両に適用された場合を説明する。
【0020】
また、フロントエンジン・リヤドライブ車両は、後述する電子制御ユニットUの一部として、差動制限装置(LSD)制御ユニット100と、車両挙動安定化装置(ESC:Electrical Stability Control)制御ユニット200とを備える。LSD制御ユニット100とESC制御ユニット200とは相互にデータを送受信することができるように電気的に接続される。また、差動制限装置の検査時には、LSD制御ユニット100およびESC制御ユニット200は、各制御ユニットに検査のための指令を出力する検査機器300に電気的に接続される。
【0021】
LSD制御ユニット100は、本実施形態では、リアデフRD内の差動制限装置を制御するものである。この差動制限装置は、リアデフRDに連結される左右の後輪間の差動制限力を可変的に制御するものである。なお、差動制限装置の詳細については後述する。
【0022】
ESC制御ユニット200は、車両の走行状態に応じて4つの車輪WFL、WFR、WRL、WRRのそれぞれに独立して制動力を供給し、車両の横すべり等の挙動の乱れ(コーナリングフォースやスピンモーメントなど)を低減あるいは防止するための装置である。ESC制御ユニット200は、具体的には、車両への横G、車両の舵角、車速、各車輪の車輪速等に基づいて、車両の走行状態に応じて1または複数の車輪に独立して制動力を供給するものである。したがって、各車輪には、車輪速センサFL1、FR1、RL1、RR1が設置される。また、各車輪には、周知のように、ブレーキパッドと、このブレーキパッドを挟み込んで摩擦力によりブレーキパッドの回転力を下げるためのブレーキキャリパとが設けられる。なお、車輪速センサは、対応する車輪の回転数を計数(計測)し、計数した車輪の回転数に基づいて車輪速を計測するものである。
【0023】
検査機器300は、後述する差動制限装置のON/OFF時における検査処理を実行するための機器であり、例えば、ノートブック型のパーソナルコンピュータ等で構成される。以下に詳述する本発明の差動制限装置の検査システムおよびその方法では、検査機器300に格納される検査プログラムにより検査処理が実行されるものとする。検査機器300は、汎用のパーソナルコンピュータの他、例えば、この検査処理に専用のコンピュータなどであってもよい。
【0024】
図2は、図1に示すフロントエンジン・リヤドライブ車両の動力伝達系を示すスケルトン図である。図2に示すように、差動装置Dとトルク配分機構Aとは一体的に設けられている。差動装置Dには、トランスミッションT/Mから延びるプロペラシャフトPに接続された入力軸1に設けた入力ギヤ2に噛合する外歯ギヤ3から駆動力が伝達される。この差動装置Dはダブルピニオン式の遊星歯車機構により構成され、外歯ギヤ3と一体的に形成されたリングギヤ4と、このリングギヤ4の内部に同軸に配設されたサンギヤ5と、リングギヤ4に噛合するアウタプラネタリギヤ6およびサンギヤ5に噛合するインナプラネタリギヤ7を相互に噛合する状態で支持するプラネタリキャリヤ8とから構成される。差動装置Dでは、リングギヤ4が入力要素として機能するとともに、サンギヤ5およびプラネタリキャリヤ8が2つの出力要素として機能する。サンギヤ5は右出力軸9Rおよび右車軸を介して右後輪WRRに接続され、プラネタリキャリヤ8は左出力軸9Lおよび左車軸を介して左後輪WRLに接続される。
【0025】
トルク配分機構Aは、左右の後輪WRL、WRR間で駆動力(トルク)を配分するものであり、遊星歯車機構により構成される。トルク配分機構Aは、右出力軸9Rの外周に回転自在に支持されたキャリヤ部材11を備える。このキャリヤ部材11は、円周方向に90°間隔で配置された4本のピニオン軸12を備えており、各ピニオン軸12には、第1ピニオン13、第2ピニオン14および第3ピニオン15が一体に形成された3連ピニオン部材16が回転自在に支持される。
【0026】
右出力軸9Rの外周に回転自在に支持された第1サンギヤ17は、第1ピニオン13に噛合するとともに、差動装置Dのプラネタリキャリヤ8に連結される。右出力軸9Rの外周に固定された第2サンギヤ18は第2ピニオン14に噛合する。右出力軸9Rの外周に回転自在に支持された第3サンギヤ19は第3ピニオン15に噛合する。
【0027】
第3サンギヤ19は、右クラッチCRを介してトルク配分機構Aのハウジング20に連結することができ、右クラッチCRが締結されるとキャリヤ部材11の回転数が増速される。この場合、キャリヤ部材11の回転数が増速されることにより、その増速に応じて左後輪WRLの回転数は、右後輪WRRの回転数に対して増速される。また、キャリヤ部材11は、左クラッチCLを介してハウジング20に結合することもでき、左クラッチCLが締結されるとキャリヤ部材11の回転数が減速される。この場合、キャリヤ部材11の回転数が減速されることにより、その減速に応じて右後輪WRRの回転数は、左後輪WRLの回転数に対して増速される。
【0028】
差動制限クラッチCDは、トルク配分機構Aのキャリヤ部材11と第3サンギヤ19との間に配置される。差動制限クラッチCDを締結することによりキャリヤ部材11と第3サンギヤ19とを相対的に回転不能に一体化され、遊星歯車機構よりなるトルク配分機構Aがロックされる。
【0029】
なお、電子制御ユニット(ECU)Uは、エンジントルクTe、エンジン回転数Ne、車速Vおよび操舵角θ等を所定のプログラムに基づいて演算処理し、左クラッチCL、右クラッチCRおよび差動制限クラッチCDの作動を制御するものである。
【0030】
次に、図3を用いて、差動装置Dおよびトルク配分機構Aの構造を説明する。図3は、動力伝達系の構造を示す図である。
【0031】
図3に示すように、差動装置Dおよびトルク配分機構Aのハウジング20は、センターハウジング32と、左ハウジング33と、右ハウジング34と、フロントハウジング35とを結合して構成される。センターハウジング32の左半部および左ハウジング33の内部に差動装置Dが収納され、センターハウジング32の右半部および右ハウジング34の内部にトルク配分機構Aが収納される。ディファレンシャルケース36は、差動装置Dの外郭を構成する。トランスミッションT/Mの出力は、プロペラシャフトP(図1参照)から入力軸1を介して差動装置Dのディファレンシャルケース36に伝達される。
【0032】
また、トルク配分機構Aに作動油を供給するポンプユニット40は、ボルトでセンターハウジング32の隔壁32aの右側面に固定される。このポンプユニット40内には、トロコイド式のオイルポンプ41が収納される。このオイルポンプ41は、図4に示すように、アウターロータ42の内周にインナーロータ43を配置して構成され、インナーロータ43を駆動する回転軸がセンターハウジング32の隔壁32aの貫通孔を通して差動装置D側に延びている。ディファレンシャルケース36の回転は、駆動ギヤ、従動ギヤ、回転軸および駆動ピンを介してインナーロータ43に伝達され、インナーロータ43に噛合して回転するアウターロータ42との協働によってオイルポンプ41が作動する。
【0033】
次に、トルク配分機構Aのポンプユニット40内に設けられた油圧制御回路について説明する。図4は、動力伝達系の油圧制御回路図であり、差動制限時の油圧動作を示すものである。
【0034】
オイルポンプ41がオイルフィルタ44から汲み上げた作動油(オイル)は、レギュレータバルブ51でレギュレータ圧に調圧される。レギュレータ圧に調圧されたオイルは、リニアソレノイドバルブ55、左クラッチ用バルブ52のシフトソレノイドバルブ56、右クラッチ用バルブ54のシフトソレノイドバルブ58および差動制限クラッチ用バルブ53のシフトソレノイドバルブ57に供給される。リニアソレノイドバルブ55は、レギュレータ圧に調圧されたオイルをクラッチ圧に調圧し、左クラッチ用バルブ52、右クラッチ用バルブ54および差動制限クラッチ用バルブ53に供給する。また、レギュレータバルブ51で余ったオイルは、潤滑油として被潤滑部分(例えば右車軸9R等)の潤滑に用いられる。
【0035】
差動制限時には、図示のように、電子制御ユニットUからの指令でシフトソレノイドバルブ57がONすると、差動制限クラッチ用バルブ53にレギュレータ圧が作用して差動制限クラッチ用バルブ53が開弁する。これにより、クラッチ圧が差動制限クラッチCDの作動室に供給されて差動制限クラッチCDが締結する。
【0036】
なお、上述した左クラッチCL、右クラッチCRおよび差動制限クラッチCDの締結時に、左クラッチ圧力センサ61、右クラッチ圧力センサ63および差動制限クラッチ圧力スイッチ62は、左クラッチCL、右クラッチCRおよび差動制限クラッチCDに作用するクラッチ圧をそれぞれ検出し、検出したクラッチ圧を電子制御ユニットUに出力(フィードバック)している。また、リニアソレノイドクラッチ圧力センサ64は、リニアソレノイドバルブ55から出力されるクラッチ圧を常時検出し、検出したクラッチ圧を電子制御ユニットUに出力(フィードバック)している。
【0037】
次に、本発明の差動制限装置の検査システムにおいて実行される電子制御または機械式差動制限装置のON/OFF検査処理について説明する。図5は、本発明の差動制限装置の検査システムにおいて実行される電子制御差動制限装置(LSD)のOFF検査処理を示すフローチャートであり、図6は、本発明の差動制限装置の検査システムにおいて実行される電子制御または機械式差動制限装置(LSD)のON検査処理を示すフローチャートである。図7は、左右車輪の速度およびその速度差と、ブレーキとの関係を示す図である。
【0038】
まず、図5のフローチャートを用いて電子制御差動制限装置のOFF検査処理を説明する。本検査処理を実行するに際し、フローチャートでは示していないが、検査対象となる車両をリフトに載せてリフトアップした状態にする。なお、駆動輪である後輪が地面から浮いた状態になれば本検査処理を実行することができるので、リフト装置が設けられていない整備工場等では駆動輪側をジャッキアップして本検査処理を実行してもよい。
【0039】
まず、この車両の差動制限装置が電子制御差動制限装置であるか否かを判断する(ステップS101)。差動制限装置が電子制御差動制限装置ではないと判断した場合には、当該差動制限装置が機械式、ヴィスカス式等の機械式差動制限装置であり、OFF状態とすることができないため、そのまま本検査処理を終了する。一方、差動制限装置が電子制御差動制限装置であると判断した場合には、ステップS102に移行し、以下のような検査処理を行う。
【0040】
車両がリフトアップされ、駆動輪である後輪を地面から浮いた状態にすると、車両のエンジンEをONし(ステップS102)、シフトレバーを操作してドライブDのポジションに移動させ、これによりギヤを所定段(ここでは、1速段)に設定する(ステップS103)。リアデフRDの油圧制御回路(図4参照)が十分に暖機されると、ステップS104において、各車輪の車輪速センサやブレーキキャリパを駆動するアクチュエータが正常に動作するか否かを判断する。具体的には、ESC制御ユニット200により、駆動輪の各車輪の車輪速を計測し、電子制御ユニットUの指令と比較するとともに、各車輪にブレーキを掛け、ESC制御ユニット200の指令に応じてその車輪の車輪速が低下すること等を確認する。そして、いずれかの装置に異常があり、正常に動作することができないと判断した場合には、検査機器300は警告を出力し(ステップS105)、この電子制御差動制限装置のOFF検査処理を強制終了する。この場合、異常が発生している装置を別途検査・確認し、必要な処置を施して正常動作が可能となった後、本検査処理を再度実行すればよい。
【0041】
ステップS104においていずれの装置にも異常がなく、正常に動作すると判断した場合には、LSD制御ユニット100により差動制限装置をOFFさせ(ステップS106)、ESC制御ユニット200により予め決めておいた片側の車輪のブレーキを掛ける(ステップS107)。そして、車輪速センサRL1、RR1により駆動輪の左右の各車輪WRL、WRRの回転数を計数(計測)する(ステップS108)。
【0042】
ここで、具体的には、左右の後輪の回転は、40km/h相当になるように、オペレータ(作業者)がアクセルを操作して、本検査処理を実行する。また、ブレーキを掛ける車輪に対しては、ブレーキ圧の最大値を一瞬掛けることにより、その車輪の車輪速を例えば3km/h程度減速させている。車輪速の差そのものが小さいため、実際にはその車輪速差を積分して距離(回転数の関数)に換算して、以降の判定処理を実行している。
【0043】
次いで、ステップS108において計数された左右両車輪の車輪速に速度差があるか否かを判断する(ステップS109)。本実施形態では、上記のように一方の車輪にブレーキを掛けて減速させる速度そのものが小さいため、この判定の閾値としては、速度差3km/hに相当する積分値の差を例えば100とし、この値以上であるか否かに基づいて、両車輪に速度差があるか否かを判断している。
【0044】
そして、両車輪に速度差があると判断した場合には、差動制限装置が作動していないこととなり、この電子制御差動制限装置のOFF検査処理をOK(問題なし)と判定して(ステップS110)、本処理を終了する。一方、両車輪に速度差がないと判断した場合には、本来差動制限装置が作動していないにもかかわらず、一方の車輪のみにブレーキを掛けても速度差が生じないことになるため、この電子制御差動制限装置のOFF検査処理をNG(問題あり:例えば、電子制御差動制限装置において、正常に差動制限装置をOFFできていない等)と判定し(ステップS111)、検査機器300は警告を出力し(ステップS112)、この電子制御差動制限装置のOFF検査処理を終了する。
【0045】
ここで、図5のフローチャートでは示していないが、ステップS111において電子制御差動制限装置のOFF検査処理がNGと判定された場合には、図4に示す差動制限クラッチ圧力スイッチ62およびリニアソレノイドクラッチ圧力センサ64において検出された各圧力に基づいて、油圧制御回路内のいずれに問題があるかを決定することができる。すなわち、差動制限装置がOFFであるにもかかわらず、差動制限クラッチ圧力スイッチ62の検出圧力がクラッチ圧になっていた場合には、差動制限クラッチCD用のシフトソレノイドバルブ57に問題がある(シフトソレノイドバルブ57が開弁している)と判断することができる。また、差動制限クラッチ圧力スイッチ62の検出圧力がクラッチ圧になっていない場合には、差動制限クラッチCDに作動油が供給されていないにも関わらずクラッチが締結していることになるため、差動制限クラッチCDそのものに問題がある(例えば、差動制限クラッチCDが締結した状態で固着している等)と判断することができる。
【0046】
次に、図6のフローチャートを用いて電子制御または機械式差動制限装置のON検査処理を説明する。図5に示す電子制御差動制限装置のOFF検査処理と同様に、リフト装置により検査対象となる車両をリフトアップした状態において、本処理は実行される。
【0047】
車両がリフトアップされ、駆動輪である後輪を地面から浮いた状態にすると、車両のエンジンEをONし(ステップS201)、シフトレバーを操作してドライブDのポジションに移動させ、これによりギヤを所定段(ここでは、1速段)に設定する(ステップS202)。リアデフRDの油圧制御回路(図4参照)が十分に暖機されると、電子制御差動制限装置のOFF検査処理の場合と同様に、ステップS203において、各車輪の車輪速センサやブレーキキャリパを駆動するアクチュエータが正常に動作するか否かを判断する。いずれかの装置に異常があり、正常に動作することができないと判断した場合には、検査機器300は警告を出力し(ステップS204)、この電子制御または機械式差動制限装置のON検査処理を強制終了する。この場合、異常が発生している装置を別途検査・確認し、必要な処置を施して正常動作が可能となった後、本検査処理を再度実行すればよい。
【0048】
ステップS203においていずれの装置にも異常がなく、正常に動作すると判断した場合には、差動制限装置が電子制御差動制限装置であるか否かを判断する(ステップS205)。電子制御差動制限装置ではないと判断した場合には、ステップS207に移行する。一方、電子制御差動制限装置であると判断した場合には、LSD制御ユニット100により差動制限装置をONさせ(ステップS206)、ESC制御ユニット200により予め決めておいた片側の車輪のブレーキを掛ける(ステップS207)。そして、車輪速センサRL1、RR1により駆動輪の左右の各車輪WRL、WRRの回転数を計数(計測)する(ステップS208)。
【0049】
ここで、具体的には、左右の後輪の回転は、40km/h相当になるように、オペレータ(作業者)がアクセルを操作して、本検査処理を実行する。また、ブレーキを掛ける車輪に対しては、ブレーキ圧の最大値を一瞬掛けることにより、その車輪の車輪速を例えば3km/h程度減速させている。車輪速の差そのものが小さいため、実際にはその車輪速差を積分して距離(回転数の関数)に換算して、以降の判定処理を実行している。
【0050】
次いで、ステップS209において、左右両車輪の車輪速に速度差があるか否かを判断する。本実施形態では、上記のように一方の車輪にブレーキを掛けて減速させる速度そのものが小さいため、この判定の閾値としては、速度差3km/hに相当する積分値の差を例えば20とし、この値以下であるか否かに基づいて、両車輪に速度差があるか否かを判断している。
【0051】
そして、両車輪に速度差があると判断した場合には、差動制限装置のON指令があるにもかかわらず差動制限装置が作動していないこととなり、電子制御または機械式差動制限装置のON検査処理をNG(問題あり)と判定し(ステップS210)、検査機器300は警告を出力し(ステップS211)、この電子制御または機械式差動制限装置のON検査処理を終了する。一方、両車輪に速度差がないと判断した場合には、差動制限装置が正常に作動していることとなり、電子制御または機械式差動制限装置のON検査処理をOK(問題なし)と判定し(ステップS212)、この電子制御または機械式差動制限装置のON検査処理を終了する。
【0052】
ここで、図6のフローチャートでは示していないが、ステップS209において電子制御または機械式差動制限装置のON検査処理がNGと判定された場合には、図4に示す差動制限クラッチ圧力スイッチ62およびリニアソレノイドクラッチ圧力センサ64において検出された各圧力に基づいて、油圧制御回路内のいずれに問題があるかを決定することができる。すなわち、差動制限クラッチ圧力スイッチ62およびリニアソレノイドクラッチ圧力センサ64の検出圧力がクラッチ圧になっていない場合には、リニアソレノイドバルブ55に問題がある(リニアソレノイドバルブ55においてクラッチ圧に調圧できていない)と判断することができる。また、リニアソレノイドクラッチ圧力センサ64の検出圧力がクラッチ圧になっているが、差動制限クラッチ圧力スイッチ62の検出圧力がクラッチ圧になっていない場合には、差動制限クラッチCD用のシフトソレノイドバルブ57に問題がある(シフトソレノイドバルブ57が開弁していない)と判断することができる。さらに、差動制限クラッチ圧力スイッチ62およびリニアソレノイドクラッチ圧力センサ64の検出圧力がクラッチ圧になっている場合には、差動制限クラッチCDそのものに問題がある(例えば、差動制限クラッチCDが開放した状態で固着している等)と判断することができる。
【0053】
なお、リアデフRDの油圧制御回路の各油路に圧力センサ(油圧スイッチ)がない差動制限装置の検査システムの場合には、上記のような詳細な故障の判断をすることができないが、少なくともリニアソレノイドバルブ55、差動制限クラッチCD用のシフトソレノイドバルブ57および差動制限クラッチCDのいずれかに問題がある(いずれかが故障している)ものと判断することができる。
【0054】
次に、図7を参照して、左右2つの車輪を車輪1、車輪2とし、車輪2側にブレーキを掛けた場合における各車輪1、2の速度およびその速度差の関係を説明する。図7(a)は、差動制限装置の効果がない場合における関係を示し、図7(b)は、差動制限装置の効果がある場合の関係を示す。
【0055】
図7(a)に示すように、左右両車輪1、2が所定の回転速度で回転している状態において、車輪2に一瞬ブレーキを掛けると、車輪2の速度だけが所定の速度(本実施形態では、例えば3km/h)だけ低下する。これにより、車輪1と車輪2の速度差は一定の値発生することになる。差動制限装置をOFFしている状態において、このように変化した場合には、差動制限装置に故障等の問題がなく、検査結果を良好(OK)と判定することができる。しかしながら、差動制限装置をONしている状態においてこのように変化した場合には、上記図6のフローチャートにて説明したように、差動制限装置に不具合があることになる。
【0056】
また、図7(b)に示すように、左右両車輪1、2が所定の回転速度で回転している状態において、車輪2に一瞬ブレーキを掛けて車輪2の速度が低下すると、差動制限装置が作動して、車輪1の速度も多少の遅れをもって同期して低下する。そして、最終的には車輪1と車輪2の速度差は0となる。差動制限装置をONしている状態において、このように変化した場合には、差動制限装置に故障等の問題がなく、検査結果を良好(OK)と判定することができる。しかしながら、差動制限装置をOFFしている状態においてこのように変化した場合には、上記図5のフローチャートにて説明したように、差動制限装置に不具合があることになる。
【0057】
以上のように、本発明の差動制限装置の検査システムおよび検査方法によれば、エンジンEがONしている状態において、差動制限装置を作動させたとき、あるいは、差動制限装置を作動させていないときに、ESC制御ユニット200を介して差動制限装置を含むリアデフRDに連結された左右の車輪の一方にブレーキを行い、一方の車輪にブレーキが掛かっている状態において、車輪速センサにより検出された左右の車輪の回転速度(回転数)を比較し、その比較結果に基づいて、差動制限装置の故障を判定するようにしたので、車輪をローラに載せて検査するような大掛かりな検査設備を必要とすることなく、差動制限装置の検査を簡単な構成で行うことができる。これにより、例えば一般の修理工場においても差動制限装置の検査を容易に行うことができ、検査に対する設備等について費用を低減することができる。また、本実施形態のように、車軸が回転するとオイルポンプ41が回転する構成の場合、車軸の回転状態(すなわち、エンジンEのON状態)で差動制限装置の作動検査を行うことができるので、差動制限装置の形式によらず当該検査を行うことができるだけでなく、他の検査項目と同時進行で当該検査を行うことができるため、複数の検査を行う場合には検査全体の所要時間を短縮することができる。
【0058】
以上、本発明の差動制限装置の検査システムおよびその方法の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明したが、本発明は、これらの構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲、明細書および図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお、直接明細書および図面に記載のない形状・構造・機能を有するものであっても、本発明の作用・効果を奏する以上、本発明の技術的思想の範囲内である。すなわち、動力伝達装置あるいは故障検知装置を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0059】
上述の実施形態では、車両の走行状態に応じて車両の各車輪に独立して制動力を制御可能なブレーキ制御装置として車両挙動安定化装置(ESC)制御ユニット200を用いて説明したが、本発明はこの構成に限らず、例えば、アンチロックブレーキシステム(ABS)装置を用いて差動制限装置の検査を行うことができる。特に、ABS装置のみを搭載した車両において本発明の差動制限装置の検査方法を実施する場合には、図5および図6のフローチャートにおいて、ステップS107またはS207の工程の代わりに、すべての車輪(あるいは、駆動輪である両後輪)にブレーキを掛ける工程と、ABS装置の制御により駆動輪の左右後輪の一方に掛かるブレーキ油圧を抜いてブレーキを抑制する工程とを実行すればよい。
【0060】
また、上述の実施形態では、特に電子制御差動制限装置の検査システムおよびその検査方法について説明したが、図6のフローチャートを用いた説明でも言及したように、機械式の差動制限装置においても差動制限装置のON検査処理を実施することができる。すなわち、本発明は機械式差動制限装置を備える車両にも適用することができる。なお、図5のフローチャートを用いた説明で言及したが、機械式差動制限装置は、電子制御差動制限装置における差動制限装置ONの状態しか取ることができないため、機械式差動制限装置を備える車両では、差動制限装置のOFF検査処理を行うことはない。
【0061】
上述の実施形態では、差動制限装置の油圧制御回路内のオイルポンプ41が車軸の回転に同期して作動するものを用いて説明したが、例えば電動ポンプにより油圧制御回路が作動する車両であっても、本発明を適用して差動制限装置の検査を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の差動制限装置の検査システムおよびその検査方法が適用されるフロントエンジン・リヤドライブ車両の全体構成を概略的に示す図である。
【図2】図1に示すフロントエンジン・リヤドライブ車両の動力伝達系を示すスケルトン図である。
【図3】動力伝達系の構造を示す図である。
【図4】動力伝達系の油圧制御回路図(差動制限時)である。
【図5】本発明の差動制限装置の検査システムにおいて実行される電子制御差動制限装置のOFF検査処理を示すフローチャートである。
【図6】本発明の差動制限装置の検査システムにおいて実行される電子制御または機械式差動制限装置のON検査処理を示すフローチャートである。
【図7】左右車輪の速度およびその速度差と、ブレーキとの関係を示す図である。
【符号の説明】
【0063】
40 ポンプユニット
41 オイルポンプ
51 レギュレータバルブ
52 左クラッチ用バルブ
53 差動制限クラッチ用バルブ
54 右クラッチ用バルブ
55 リニアソレノイドバルブ
56、57、58 シフトソレノイドバルブ
61 左クラッチ圧力センサ
62 差動制限クラッチ圧力スイッチ
63 右クラッチ圧力センサ
64 リニアソレノイドクラッチ圧力センサ
100 LSD制御ユニット
200 ESC制御ユニット
300 検査機器
A トルク配分機構
CD 差動制限クラッチ
CL 左クラッチ
CR 右クラッチ
D 差動装置
E エンジン
RD リアデフ
FL1、FR1、RL1、RR1 車輪速センサ
T/M トランスミッション
U 電子制御ユニット
WRL 左後輪
WRR 右後輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の車輪間の差動制限力を可変的に制御する差動制限装置と、作動油の液圧を受けて作動して前記車輪を制動するブレーキ装置と、車両の走行状態に応じて前記車輪のそれぞれに独立して制動力を制御可能なブレーキ制御装置と、前記車輪のそれぞれの回転数を検出する回転数検出手段とを備える車両の差動制限装置の検査システムであって、
前記差動制限装置を作動させたとき、あるいは、該差動制限装置を作動させていないときに、前記差動制限装置の左右の車輪の一方にブレーキを行うように前記ブレーキ制御装置を介して前記ブレーキ装置を作動させるブレーキ作動手段と、
前記ブレーキ作動手段により前記一方の車輪に前記ブレーキ装置が作動している状態において、前記回転数検出手段により検出された前記左右の車輪の回転数を比較する回転数比較手段と、
前記回転数比較手段の比較結果に基づいて、前記差動制限装置の故障を判定する故障判定手段と
を備えることを特徴とする差動制限装置の検査システム。
【請求項2】
前記故障判定手段は、前記差動制限装置を作動させたときに前記回転数比較手段により得られた前記左右の車輪の回転数の差が所定値以上である場合、および前記差動制限装置を作動させていないときに前記回転数比較手段により得られた前記左右の車輪の回転数の差が所定値以下である場合には、前記差動制限装置が故障していると判定することを特徴とする請求項1に記載の差動制限装置の検査システム。
【請求項3】
前記差動制限装置は、複数の開閉弁の開閉動作により油圧クラッチの係合を制御する油圧制御装置を備え、
前記故障判定手段により前記差動制限装置が故障していると判定されたとき、前記各開閉弁から出力された作動油の油圧に基づいて、前記複数の開閉弁または前記油圧クラッチのいずれが故障しているかを特定する故障特定手段をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の差動制限装置の検査システム。
【請求項4】
左右の車輪間に差動制限力を可変的に制御する差動制限装置と、作動油の液圧を受けて作動して前記車輪を制動するブレーキ装置と、車両の走行状態に応じて前記車輪のそれぞれに独立して制動力を制御可能なブレーキ制御装置と、前記車輪のそれぞれの回転数を検出する回転数検出手段とを備える車両の差動制限装置の検査方法であって、
前記差動制限装置を作動させ、あるいは該差動制限装置を作動させない工程と、
前記差動制限装置の左右の車輪の一方にブレーキを行うように前記ブレーキ制御装置を介して前記ブレーキ装置を作動させる工程と、
前記一方の車輪に前記ブレーキ装置が作動している状態において、前記回転数検出手段により検出された前記左右の車輪の回転数を比較する工程と、
前記回転数の比較結果に基づいて、前記差動制限装置の故障を判定する工程と
を有することを特徴とする差動制限装置の検査方法。
【請求項5】
前記差動制限装置を作動させたときに前記左右の車輪の回転数の差が所定値以上である場合、および前記差動制限装置を作動させていないときに前記左右の車輪の回転数の差が所定値以下である場合には、前記差動制限装置が故障していると判定することを特徴とする請求項4に記載の差動制限装置の検査方法。
【請求項6】
前記差動制限装置は、複数の開閉弁の開閉動作により油圧クラッチの係合を制御する油圧制御装置を備え、
前記差動制限装置が故障していると判定されたとき、前記各開閉弁から出力された作動油の油圧に基づいて、前記複数の開閉弁または前記油圧クラッチのいずれが故障しているかを特定する工程をさらに有することを特徴とする請求項5に記載の差動制限装置の検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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