説明

差動移動度分光計用のカーテンガスに調整剤を提供するための方法およびシステム

差動移動度分光計を含むシステムとともに、差動移動度分光計を含むシステムを操作する方法について記載される。本方法およびシステムは、a)イオンを差動移動度分光計に提供することと、b)差動移動度分光計の入口にドリフトガスを提供することと、c)調整剤液をドリフトガスに供給するために、計器を調節して、選択された体積流量を規定することと、d)調整剤液の実体積流量をドリフトガスに供給することとを伴い、実体積流量は、選択された体積流量からあるパーセント偏差内にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、差動移動度分光計に関連する方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
差動移動度分光計システムでは、ドリフトガスは、典型的には、差動移動度分光計の上流のガス源から供給される。本ドリフトガスは、差動移動度分光計を通して、ガス流を提供し得る。調整剤液は、ドリフトガスに添加され得る。調整剤は、イオンとともに異なる程度に群化し、それによって、これらのイオンの差動移動度をシフトさせることによって、選択性を提供する気相であり得る。調整剤の実施例として、イソプロピルアルコール等のアルコール、水、ならびに水素重水素交換剤を含み得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の第1の実施形態のある側面によると、a)イオン源からイオンを受け取るための差動移動度分光計と、b)差動移動度分光計を通って流動するドリフトガスを提供するためのドリフトガス供給部と、c)ドリフトガス供給部に調整剤液の実体積流量を供給するための調整剤供給部であって、選択された体積流量を設定するための計器を備え、選択された体積流量を変更するように調節可能であって、実体積流量は、選択された体積流量からあるパーセント偏差内である、調整剤供給部とを備えている、分光計システムが提供される。
【0004】
本発明の第2の実施形態のある側面によると、差動移動度分光計を含むシステムを操作する方法が提供される。本方法は、a)差動移動度分光計にイオンを提供することと、b)差動移動度分光計の入口にドリフトガスを提供することと、c)計器を調節し、ドリフトガスに調整剤液を供給するための選択された体積流量を規定することと、d)ドリフトガスに調整剤液の実体積流量を供給することであって、実体積流量は、選択された体積流量からあるパーセント偏差内である、こととを備えている。
【図面の簡単な説明】
【0005】
当業者は、以下に記載される図面が、例証目的にすぎないことを理解するであろう。図面は、出願人の教示の範囲をいかようにも制限することを意図するものではない。
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態のある側面による、カーテンガス供給部と、カーテンガスに調整剤液のある体積流量を提供するためのポンプとを含む、差動移動度分光計/質量分析計システムを例証する、概略図である。
【図2】図2は、本発明の第2の実施形態のある側面による、カーテンガス供給部と、カーテンガスに調整剤液のある体積流量を提供するためのポンプとを含む、差動移動度分光計を例証する、概略図である。
【図3】図3は、本発明の第3の実施形態のある側面による、ガス供給部と、ガスに調整剤液のある体積流量を提供するためのポンプとを含む、差動移動度分光計を例証する、概略図である。
【図4】図4は、カーテンガスに添加された調整剤の濃度上昇に伴う、3つの異なる化合物のCV走査を例証する。
【図5】図5は、2−プロパノールを通して発泡されるテマゼパムのCV走査を例証する。カーテンガス内に含まれる調整剤液の割合は、実質的に同一のままであるが、カーテンガス流全体は、ドリフトガスに導入される絶対量の調整剤液は、総カーテンガス流量の増加に伴って増加する。
【図6】図6は、調整剤液を通したカーテンガスの発泡を伴う、テマゼパムのCV走査を例証する。
【図7】図7は、実質的に固定量の2−プロパノールが、5時間にわたって、カーテンガス流内に分注される、テマゼパムのCV走査を例証する。
【図8】図8は、一連の枠として、調整剤液の異なる体積流量を伴う、6つの等比重化合物の移動度CV走査を例証する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
図1を参照すると、本発明の第1の実施形態のある側面による、差動移動度分光計/質量分析計システム200の概略図が例証されている。差動移動度分光計/質量分析計システム200は、差動移動度分光計202と、質量分析計の第1の真空レンズ要素204(以下、概して、質量分析計204として指定される)とを備えている。また、質量分析計204は、真空チャンバ227の下流に、質量分析器要素204aを備えている。イオンは、真空チャンバ227を通して輸送され得、質量分析器要素204aとして図式的に示される質量分析器に先立って、1つ以上の付加的差動排気式真空段階を通して輸送され得る。例えば、一実施形態では、三連四重極質量分析計が、3つの差動排気式真空段階を備え得、約2.3トルの圧力に維持される第1の段階と、約6ミリトルの圧力に維持される第2の段階と、約10−5トルの圧力に維持される第3の段階とを含む。第3の真空段階は、検出器と、間に設置される衝突セルを伴う2つの四重極質量分析器とを含み得る。記載されていないが、いくつかの他のイオン光学要素がシステム内に存在し得ることは、当業者には明白であろう。
【0007】
差動移動度分光計202は、プレート206と、プレート206の外側に沿って、電気絶縁体207とを備えている。プレート206は、差動移動度分光計の入口210から差動移動度分光計202の出口212へとドリフトする、ドリフトガス208を囲む。絶縁体207は、電極を支持し、それらを他の導電性要素から絶縁する。例えば、絶縁体は、セラミックまたはTeflonTMから加工され得る。差動移動度分光計202の出口212は、真空チャンバ227の入口229および質量分析計204内へと流入し得る、ドリフトガスを解放する。
【0008】
差動移動度分光計202は、カーテンプレートまたは境界部材219によって規定され、カーテンガス供給部220からカーテンガスを供給されている、カーテンチャンバ218内に含まれる。具体的には、カーテンガス供給部220からのカーテンガスは、流量コントローラ220bによって決定される流量で、カーテンガス導管220aを通って流動し得る。また、システム200は、T−接合点216に、カーテンガス導管220a内へと正確な量の調整剤液を圧送するためのLCポンプおよび調整剤供給部214を備えている。具体的には、LCポンプ214は、接合点216内への調整剤液の選択された体積流量を設定するように変更され得る、計器(図示せず)を備えている。次いで、計器のこの調節に基づいて、LCポンプ214は、接合点216およびカーテンガス導管220a内へと調整剤液の実体積流量を提供し、カーテンガスと混合させるように動作可能である。
【0009】
LCポンプ214が、噴射ポンプまたは調整剤液を分注するための他の正確に制御可能な分注デバイスと置換され得ることは、当業者には明白であろう。いかなる分注デバイスが使用される場合であっても、本デバイスは、実体積流量が、選択された体積流量の比較的に僅かなパーセント偏差内であるように、十分に正確であり得る。例えば、本パーセント偏差は、選択された体積流量の2%または選択された体積流量の0.2%程であり得る。この実体積流量および僅かなパーセント偏差は、所望に応じて、数時間または数日間維持され得る。同様に、本分注の間(1時間または数日程度であり得る)、パーセント偏差は、選択された体積流量の少なくとも2%、可能性として、0.2%未満に維持され得る。
【0010】
差動移動度分光計202は、カーテンプレートまたは境界部材219によって規定され、カーテンガス導管220aを介して、カーテンガス供給部220からカーテンガスを供給される、カーテンチャンバ218内に含まれる。カーテンガスが、カーテンガス導管220aによって、カーテンチャンバ内へと解放される場合、LCポンプ214からの正確に測定された量の調整剤液を含み得る。イオン222は、イオン源(図示せず)から提供され、カーテンチャンバ入口224を介して、カーテンチャンバ218内へと放出される。カーテンチャンバ218内のカーテンガスの圧力は、約760トルに維持され得る。本圧力は、カーテンガスチャンバ入口224からのカーテンガス流出226と、差動移動度分光計202内へのカーテンガス流入228の両方を提供し得、流入228は、差動移動度分光計202を通って、真空チャンバ227内へとイオン222を搬送する、ドリフトガス208となる。カーテンチャンバ218内のカーテンガスは、流量コントローラ220bおよびLCポンプ214を微制御することによって、調整剤液の正確な割合を含み得るため、ドリフトガス208もまた、調整剤の正確に決定された割合を含み得る。任意に、システム200は、カーテンチャンバの代わりに、またはそれに加えて、混合チャンバを備え得る。本混合チャンバは、差動移動度分光計の上流のカーテンガス導管220a内に設置され得る。そのような実施形態では、混合チャンバは、調整剤液とカーテンガスの混合を促進し得る。
【0011】
図1に例証されるように、質量分析計204の第1の真空レンズ要素204は、真空チャンバ227内に含まれ得、真空チャンバは、カーテンチャンバ218よりも遥かに低圧に維持され得る。本発明の実施形態のある側面によると、真空チャンバ227は、真空ポンプ230によって、2.3トルの圧力に維持され得る一方、カーテンチャンバ218および差動移動度分光計202の内部動作圧力は、上述のように、約760トルの圧力に維持され得る。
【0012】
任意に、接合点216およびカーテンチャンバ218の一方または両方が、カーテンガスと調整剤液の混合物を加熱し、カーテンガス内の調整剤液の割合をさらに制御するために、加熱器217を含み得る。
【0013】
図2を参照すると、本発明の第2の実施形態のある側面による、差動移動度分光計システム300の概略図が例証されている。明確にするために、図1のシステム200の要素に類似する図2のシステム300の要素は、100を加えた図1の同一参照番号を使用して指定される。簡潔にするために、図1の説明は、図2に関して繰り返されない。
【0014】
示されるように、図2の差動移動度分光計システム300は、図1のシステム200の一部に類似するが、図1の質量分析計および真空チャンバ要素を欠いている。故に、図2の差動移動度分光計300は、任意の数の異なる質量分析計要素の上流に搭載され得、または示されるように、単純に、差動移動度分光計302を通して、イオン322およびドリフトガス308を引き込む減圧領域の上流に搭載され得る。代替として、ファラデーカップまたは他のイオン流測定デバイス等、差動移動度分光計302の出口の下流に、検出器が存在し得る。
【0015】
差動移動度分光計302は、カーテンチャンバ318内に含まれる。カーテンチャンバ318は、図1と関連して上述のように、カーテンガス供給部320からカーテンガスを供給される。
【0016】
図3を参照すると、本発明の第3の実施形態のある側面による、差動移動度分光計システム400の概略図が例証されている。明確にするために、図2のシステム300に対応する要素に類似する図3のシステム400の要素は、100を加えた同一参照番号を使用して指定される。簡潔にするために、図1および2の説明は、図3に関して繰り返されない。
【0017】
図3の差動移動度分光計400は、システム400の差動移動度分光計402が、カーテンチャンバ内に含まれていないという点において、図2のシステム300よりも遥かにシンプルである。
【0018】
示されるように、担体またはドリフトガス供給部420は、担体ガス導管420aを介して、差動移動度分光計402に担体ガスを供給し得る。担体ガスは、流量コントローラ420bによって決定される流量で流動し得る。接合点416では、担体ガス導管420aは、調整剤液供給導管414cに連結される。調整剤液は、それ自体、調整剤供給部414aから調整剤液を引き込む、LCポンプ414bによって、担体ガス導管420a内へと圧送され得る。接合点416の下流では、調整剤液と混合された担体ガスは、入口410を介して、差動移動度分光計402内へと流入し、ドリフトガス408となり得る。イオン422は、側方入口421を介して、差動移動度分光計402内へと解放される。
【0019】
図4を参照すると、LCポンプ214によってカーテンガスに提供される特定の調整剤2−プロパノールの濃度変化に伴う、3つの異なる化合物のCV走査が例証されている。これらのデータに対して、カーテンチャンバ218への総カーテンガス流入は、7L/分と実質的に一定に維持された。3つの化合物は、クロバザム、ダイアナボル、およびテマゼパムである。
【0020】
これらの化合物のそれぞれの場合において、カーテンガス内の調整剤の濃度が、CVピーク位置に劇的影響を及ぼすことは明らかである。これは、調整剤液の割合が0L/分から1.4L/分に増加する場合、最も明白であって、ピークの劇的左方シフトをもたらす。ダイアナボルの場合、調整剤液の割合のその後の増加によって、ピークは、さらに左方にシフトするであろう。しかしながら、クロバザムおよびテマゼパムの場合、調整剤の割合のさらなる増加によって、一部のみではあるが、ピークは、右方、すなわち、トレース1のピークに引き返すようにシフトすると考えられる。
【0021】
より具体的には、クロバザムのグラフを参照すると、1として指定される第1のトレースは、遥か右方に示され、ピークは、約6ボルトである。トレース1は、調整剤がカーテン流内に含まれていない場合を表す。次いで、調整剤を含有するカーテン流の一部が、1.4L/分に増加すると、ピークは、急激に左方にシフトし、トレース2のピークは、約−20乃至−25ボルトに位置する。しかしながら、恐らく、幾分反直感的ではあるが、調整剤を含有するカーテン流の一部がさらに増加されるのに伴って、結果として得られるトレース3から10が、再び、次第に右方へシフトし、調整剤を含有する流量の一部が、2.1L/分から増加するのに伴って、これらのピークのそれぞれの電圧は、単調に上昇する。
【0022】
ダイアナボルの場合では、状況は異なる。具体的には、調整剤液がカーテン流内に含まれていないことを表すトレース1は、遥か右方にあり、ピークは、10ボルトを若干下回る。調整剤を含有する流量の一部が、1.4L/分に増加すると、ピークは、急激に左方にシフトし、トレース2のピークは、−10ボルトを若干下回る。調整剤を含有する流量の一部がさらに増加するのに伴って、ピークは、さらに左方にシフトし、トレース7から10のピークはすべて、−20ボルトを下回る。
【0023】
テマゼパムの場合、状況はより複雑である。同様に、調整剤がカーテン流に添加されていない状況を表すトレース1は、10ボルトを若干上回るピークを有する。次いで、調整剤を含有する流量の一部が、1.4L/分に増加すると、ピークは、トレース2へと急激に左方にシフトし、約−25ボルト乃至−22ボルトのピークを有する。1.4L/分から2.8L/分への調整剤を含有する流量の一部のさらなる増加によって、結果として得られるトレースのピークは、さらに左方にシフトし、トレース4のピークは、約−30ボルトとなる。しかしながら、2.8L/分から4.9L/分の調整剤を含有する流量の一部の増加によって、結果として得られるトレースのピークの位置は、実質的に不変のままである。4.9L/分から7.0L/分の調整剤を含有する流量の一部のさらなる増加によって、トレース8から10によって示されるように、これらのトレースの結果として得られるピークは、徐々に右方にシフトし得、7.0L/分含有調整剤を表すトレース10のピークは、この時点では、−30ボルトを上回る。
【0024】
カーテンガスへの調整剤導入量の制御は、再現可能な移動度ピーク位置を達成するために、非常に重要であり得る。本論点は、恐らく、驚くべきことに、カーテンガス内の調整剤液の割合に基づいて、ピーク位置が大幅にシフトし得る様子を示す、図4の全グラフによって支持される。CV走査が、数時間または数日間、継続し得ることを考慮すると、カーテンガスに添加される調整剤液の割合に大幅な非制御変動が存在する場合、数時間または数日間測定される、この選択された時間間隔にわたって、着目化合物のCV位置に極めて大幅なドリフトが存在し得る。これは、定量的分析の場合、CVは、起動開始時に調整され、その間、初期最適条件(すなわち、初期ピーク)に固定され得るため、非常に問題となり得る。CV位置におけるドリフトが十分である場合、実測定信号は、シフトピーク高が初期ピーク高と実質的に同一であるにもかかわらず、大幅に減少し得る。
【0025】
図5を参照すると、カーテンガス流全体が、2−プロパノール(調整剤液)を通して発泡される、テマゼパムのCV走査が例証されている。この場合、カーテンガス内に含まれる調整剤液の割合は、実質的に同一のままである。しかしながら、総カーテンガス流量は、ドリフトガスに導入される調整剤液の質量を変動させるように変化する。同様に、テマゼパムの観察されたCVは、調整剤の割合が一定のままであるにもかかわらず、総カーテンガス流量に伴って、そしてその結果、総調整剤流量に伴って変動する。
【0026】
より具体的には、示されるように、2L/分のカーテンガス流量を表す第1のトレースは、約−31ボルト時にピークを有する。次いで、カーテンガス流量が増加し、調整剤液の結果として得られる量が増加するのに伴って、トレースは、25L/分のカーテンガス流量(および対応するより大量の調整剤液)を表すトレース8が、約−35乃至−34ボルト時にピークを有するまで、左方に移行する。トレース2−7は、それぞれ、5L/分、8L/分、11L/分、14L/分、17L/分、および20L/分のカーテンガス流量を表す。差動移動度分離は、4300ボルトで生じた(全例に印加された)。
【0027】
図6を参照すると、カーテンチャンバへの導入に先立って、液体調整剤を通して、カーテンガスの発泡を伴う、約6時間にわたって測定されたテマゼパムのCV走査が例証されている。図6に例証されるように、発泡結果の変動は、6時間にわたって、本化合物の本CV位置に大幅なドリフトを生じさせ得る。定量的分析の場合、CVは、起動開始時に調整され、その間、初期最適条件(図6では、約−28.4ボルトと考えられる)に固定され得るため、これは、問題となり得る。特に、6時間時点のデータの場合、−28.4ボルトのCVは、測定信号を2倍超減少させるであろうため、図6に示されるCV位置のドリフトは、容認不可となり得る。図6に例証されるCV最適条件の全広がりを考慮すると(特に、Aとして指定される3時間の時点のトレースおよび指定Bとして指定される6時間の時点のトレース)、約2.3ボルトの範囲のCVの広がりで信号に10倍の減少が存在し得る。
【0028】
図7を参照すると、5時間にわたって測定されたテマゼパムのCV走査が例証されている。この場合、50μL/分の2−プロパノールが、5時間、約7.7L/分のカーテンガス流中へ分注された。図7から分かるように、テマゼパムのCV再現性は、発泡とともに観察されたものよりも遥かに優れており、約0.8ボルトの全広がりを実証した。この場合、CVドリフトによるテマゼパムの信号の減少は、これらの実験の過程にわたって、10%未満であった。上述に基づいて、差動移動度分光計システムのために、ドリフトガス流中へ調整剤液を正確かつ精密に分注することは、調整剤存在下の定量的分析を支援し得ると考えられる。これらの結果は、再現性を向上させるために、加熱することによって、さらに改善され得る。
【0029】
図8を参照すると、一連の枠において6つの等比重化合物(m/z316)の移動度CV走査が例証されている。具体的には、図8は、選択性が、調整剤流量を使用して調整され得る方法を例証する。6つの等比重化合物のトレースは、1.ブロマゼパム、2.クロナゼパム、3.オクスフェンダゾール、4.クロルプロチキセン、5.フルシラゾール、6.パマキンのように番号付与される。一番下の枠(枠A)は、4200ボルトの印加および11.9L/分の総カーテンガス流量によるDMS分離を示す(調整剤は添加されていない)。残りの枠(枠BからH)は、カーテンガス中への2−プロパノール調整剤の体積流量が増加するのに伴って、選択性に及ぼす影響を示す。調整剤液の体積流量の増加は、より大きな範囲のCVにわたって、ピークを広げることによって、ピーク容量を増加させる傾向にある。しかしながら、6つの等比重化合物に対して示される最良の全体的分離は、実際は、より高い設定時ではなく、調整剤流量が1mL/分の時、枠Fで達成される。例えば、それぞれ、クロルプロチキセンおよびフルシラゾールを表す、枠Fのピーク4および5は、調整剤流量が2mL/分の時の枠Gのトレース4および5のピークより容易に区別され得る。それぞれ、クロナゼパムおよびオクスフェンダゾールを表す、トレース2および3は、枠Fのものより、100μL/分の調整剤流量を表す枠C、および2mL/分の調整剤流量を表す枠Gにおいてより容易に区別可能である。しかしながら、これらの枠の両方では、ピーク4および5を区別することは遥かに困難である一方、枠Fでは、重複する底部分を排除するために十分なピーク高を選択することによって、依然として、ピーク2および3を区別することが可能である。
【0030】
故に、枠AからHに例証される種類のデータを使用して、添加される調整剤液の量を微制御することによって、選択性は向上され得る。すなわち、徐々に大量の調整剤液が添加され、選択性に及ぼす影響が観察され得ることによって、付加的量の調整剤液の添加によって、選択性が減退し始めると、調整剤液のさらなる増加が停止され得る。
【0031】
本発明の異なる実施形態の他の変形例および修正例も可能である。例えば、上述のアプローチが、平面および円筒形の電場非対称波形イオン移動度分光計(FAIMS)デバイスの両方に適用され得ることは、当業者には明白であろう。あらゆるそのような修正例または変形例は、本明細書に添付の請求項によって定義される本発明の実施形態の側面の領分および範囲内であると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分光計システムであって、
イオン源からイオンを受け取るための差動移動度分光計と、
該差動移動度分光計を通って流動するドリフトガスを提供するためのドリフトガス供給部と、
該ドリフトガス供給部に調整剤液の実体積流量を供給するための調整剤供給部であって、選択された体積流量を設定するための計器を備え、該選択された体積流量を変更するように調節可能であり、該実体積流量は、該選択された体積流量からあるパーセント偏差内である、調整剤供給部と
を備えている、システム。
【請求項2】
前記パーセント偏差は、前記選択された体積流量の±0.2%内である、請求項1に記載の分光計システム。
【請求項3】
前記パーセント偏差は、前記選択された体積流量の±2%内である、請求項1に記載の分光計システム。
【請求項4】
前記調整剤供給部は、前記ドリフトガス供給部に前記調整剤液の実体積流量を供給するためのポンプを備えている、請求項1に記載の分光計システム。
【請求項5】
前記ドリフトガス供給部は、カーテンガスを提供するためのカーテンガス供給部であって、前記分光計システムは、前記差動移動度分光計の入口に前記ドリフトガスとなる該カーテンガスのうちの少なくとも一部を向けるための境界部材をさらに備えている、請求項1に記載の分光計システム。
【請求項6】
前記調整剤を添加されたカーテンガスを受け取るためのカーテンチャンバをさらに備え、該カーテンチャンバは、前記差動移動度分光計を囲むカーテン壁を備え、前記境界部材は、該カーテン壁の一部である、請求項5に記載の分光計システム。
【請求項7】
前記ドリフトガス供給部は、ドリフトガス導管を備え、
前記調整剤供給部は、調整剤導管を備え、
前記システムは、該調整剤導管を該ドリフトガス導管に統合するための接合部をさらに備え、ポンプが、該接合部の上流の該調整剤導管内に設置され、該ドリフトガス導管に前記調整剤液の実体積流量を提供する、
請求項3に記載の分光計システム。
【請求項8】
前記接合部を加熱するための加熱器をさらに備えている、請求項7に記載の分光計システム。
【請求項9】
前記差動移動度分光計からイオンを受け取るために、該差動移動度分光計と流体連通する質量分析計をさらに備えている、請求項1に記載の分光計システム。
【請求項10】
前記質量分析計によって受け取られるイオンを検出するための検出器をさらに備えている、請求項9に記載の分光計システム。
【請求項11】
前記差動移動度分光計は、直線および湾曲電極のうちの1つを備えている、請求項1に記載の分光計システム。
【請求項12】
前記チャンバを加熱するための加熱器をさらに備えている、請求項5に記載の分光計システム。
【請求項13】
差動移動度分光計を含むシステムを操作する方法であって、
a)該差動移動度分光計にイオンを提供することと、
b)該差動移動度分光計の入口にドリフトガスを提供することと、
c)計器を調節し、該ドリフトガスに調整剤液を供給するための選択された体積流量を規定することと、
d)該ドリフトガスに該調整剤液の実体積流量を供給することであって、該実体積流量は、該選択された体積流量からあるパーセント偏差内である、ことと
を含む、方法。
【請求項14】
d)は、選択された時間間隔にわたって、前記実流量を提供することを含み、前記パーセント偏差は、該選択された時間間隔にわたって、前記選択された体積流量の±0.2%内である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
d)は、選択された時間間隔にわたって、前記実流量を提供することを含み、前記パーセント偏差は、該選択された時間間隔にわたって、前記選択された体積流量の±2%内である、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
d)は、前記ドリフトガスに前記調整剤液の実体積流量を圧送することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
d)前記差動移動度分光計からイオンを透過させることと、
e)前記差動移動度分光計から透過されたイオンを検出することと
をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記調整剤および前記ドリフトガスを加熱することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
g)前記ドリフトガスへの前記調整剤の規定された体積流量を決定し、イオンの選択された分離度を提供することをさらに含み、
c)は、前記選択された体積流量を設定し、該規定された体積流量と等しくすることを含む、
請求項17に記載の方法。
【請求項20】
g)は、
複数の時間間隔にわたって、前記ドリフトガスに添加される調整剤の実体積流量を調節することであって、該複数の時間間隔の間、複数の異なる調整剤の体積流量が該ドリフトガスに提供され、該複数の時間間隔の各時間間隔の間、異なる量の調整剤が提供される、ことと、
各時間間隔の間および各異なる量の調整剤に対して、イオンを検出し、関連付けられた選択度を決定することによって、複数の選択度を決定することと、
該複数の選択度および該複数の異なる体積流量に基づいて、前記選択された体積流量を選択することと
を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記選択された時間間隔は、少なくとも1時間である、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
前記選択された時間間隔は、少なくとも1時間である、請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−522362(P2011−522362A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−510789(P2011−510789)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【国際出願番号】PCT/CA2009/000727
【国際公開番号】WO2009/143616
【国際公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(510075457)ディーエイチ テクノロジーズ デベロップメント プライベート リミテッド (35)
【Fターム(参考)】