説明

差圧伝送器用設定器

【課題】タンク内の液種が変わった場合でも、作業者の負担を軽減しつつ高精度の液位計測を可能にする。
【解決手段】タンク内の液体の比重を入力する液位計測設定画面、及びタンクの低圧側圧力と高圧側圧力を導入する液体の比重を入力する圧力導入設定画面を表示部205に順次に表示し、この設定画面を介して入力された比重を用いて圧力範囲パラメータを算出する演算部203と、この演算された圧力範囲パラメータを差圧伝送器に通信する通信部とから設定器を構成することで、差圧伝送器への圧力範囲パラメータを通信によって容易に設定できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、差圧伝送器の設定器に係り、特に液位の計測に利用した場合における差圧伝送器用の設定器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
差圧伝送器は流量、圧力などの計測に使用される汎用性の高い工業計器である。また、安定性、高精度、高機能が図られており、現場計器として過酷な環境条件でも使用されることが多い。
【0003】
このような差圧伝送器の特徴を利用して、タンク内の液位を計測することも知られており、タンク内にセンサを入れる必要がなく、設置も簡単であることから普及が期待されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】(社)日本電気計測器工業会著 「差圧伝送器の正しい使い方」(第2版)第1章 差圧伝送器の概論 (2)液位測定(46頁〜) 日本工業出版株式会社
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、タンク内の液位を測定する場合、前記非特許文献1に記載されているように、液体の比重が一定であることが制約条件となり、比重が変化すると測定誤差を生じることになる。タンクは0%出力の液位の高さと、100%出力の液位の高さが予め設定されており、比重さらには温度が変化すると、前記0%出力の圧力及び前記100%出力の圧力を示すパラメータ(以下「圧力範囲パラメータ」と称す)が変化するからである。
【0006】
そこで、この圧力範囲パラメータは、差圧伝送器と通信ラインを介して接続される設定器から設定することも考えられるが、タンク内の液体が変わるごとに計算して入力する煩わしさが残り、作業者の負担が大きくなる。
【0007】
本発明は、このような従来技術に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、タンク内の液種が変わった場合等でも作業者の負担を軽減しつつ高精度の液位計測を行うことの出来る差圧伝送器用設定器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するための本発明の特徴は、少なくとも前記タンク内の液体の比重を入力する液位計測設定画面、及び前記低圧側圧力と高圧側圧力を導入する液体の比重を入力する圧力導入設定画面を表示する表示部と、前記設定画面に対応する比重を入力する入力部と、前記入力された比重を用いて前記圧力範囲パラメータを算出する演算部と、前記算出された圧力範囲パラメータを前記差圧伝送器に通信する通信部とから設定器を構成することで、差圧伝送器の圧力範囲パラメータを前記設定器で自動計算して通信により設定できるようにしたところにある。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、タンク内の液体が変わった場合等でも作業者はその比重を入力するだけで高精度に液位を計測することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施例に係る液位計測例の概略図。
【図2】本発明を適用する差圧伝送器の一構成ブロック図。
【図3】本発明の一実施例に係る設定器の構成ブロック図。
【図4】本発明の一実施例に係る設定器の圧力導入設定画面。
【図5】本発明の一実施例に係る設定器の計測設定画面。
【図6】本発明の一実施例に係る圧力範囲パラメータの処理フローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の態様について図を参照して説明する。尚、以下の実施例では前記特徴に加えて実用的な構成等を開示するが、それらの構成についてはその詳述する。
【0012】
図1は本発明の一実施例に係る液位計測例を説明するための概略図である。タンク101内には計測対象の液体が貯蔵されており、高圧側圧力導入口102と低圧側差圧導入口103の差圧を計測する差圧伝送器104が設けられている。図中の記号は、高圧側比重gH、高圧側圧力導入口高さhH、低圧側比重gL、低圧側圧力導入口高さhL、計測対象比重gS、0%出力高さh0、100%出力高さh100、0%出力圧力p0、100%出力圧力p100を意味するものである。
【0013】
図2は本発明を適用する差圧伝送器の一例であり、図1の差圧伝送器104のブロック図である。図に示すように、大きく区分すると差圧を電気信号に変換する受圧部104aと、受圧部104aの信号を処理して伝送信号に変換する伝送部104bの二つから構成されている。
【0014】
受圧部104aには、圧力を電気信号に変換する半導体複合センサ1が内蔵されており、差圧、静圧及び温度センサ等からなっている。これらは、一般にはプロセスの圧力を一旦ダイアフラムで受け、これで生じた変位を直接もしくは受圧部内の封入液を介してセンサに伝えられ、電気信号として出力する。
【0015】
伝送部104bは、A/D変換部2、演算部3、出力部4、表示部5、通信部6、及び記憶部7などから構成される。A/D変換部2は、受圧部104aで検出されて変換された電気信号をデジタル値に変換する。
【0016】
演算部3は、A/D変換部2で変換されたデジタル値を圧力値に変換するする共に、通信部6を介して設定された圧力範囲パラメータを記憶部7に記憶させ、この記憶部7に記憶されている圧力範囲パラメータ等に基づいて演算し、出力部4及び表示部5に出力する。この出力部4は演算部3の出力を4〜20mAなどの伝送信号に変換し、伝送線に計測した液位を等出力する。通信部6は4〜20mAの伝送線を介して設定器(例えばコミュニケータ)と信号のやり取りを行う。
【0017】
次に、本実施例の特徴をなす設定器について説明する。図3のブロック図に示すように、記憶部201、演算部203、通信部204、表示部205、入力部206から構成され、記憶部201には例えば比重データ202等を記憶させておく。この比重データ202は複数の温度点におけるデータであり、任意の温度における比重gは補間により算出する必要がある。
【0018】
ここで、上記補間方法の一例について説明する。入力部206から入力され、記憶部201に記憶されている比重データは表1のとおりである。
【0019】
【表1】

【0020】
まず、比重データから、任意の温度Tの小さい最近値である温度を検索する。例えばT2≦T<T3の場合はT2となる。また、T<T1の場合はT1、T≧T5の場合はT4となる。
【0021】
検索した最近値と次の温度、およびその比重データを直線近似して任意の温度における比重データを求める。例えば、T2≦T<T3の場合は、
g=(g3−g2)/(T3−T2)×(T−T2)+g2
本実施例では、5つのデータについて示しているが、さらに多くのデータを使用すること、そして4つのデータを使用して直線近似するのが好ましいが、このほか2次曲線近似など他の補間方法も考えられる。
【0022】
次に、図4〜図6を用いて、本実施例の特徴をなす圧力範囲パラメータの設定手法について説明する。
【0023】
図4は、図3の設定器の表示部に表示される圧力導入設定画面を示す。液種選択部401、温度入力部402、比重入力部403、高さ入力部404とで構成される。図5は、同じく前記設定器の表示部に表示される計測設定画面を示す。液種選択部501、温度入力部502、比重入力部503、0%高さ入力部504、100%高さ入力部505、0%圧力表示部506、100%圧力表示部507とで構成される。
【0024】
図6は、設定器の演算部203で実行され、圧力範囲パラメータを算出するフローチャートを示す。図において、演算部203は通信部204を介して差圧伝送器104と通信し、差圧伝送器104の種類情報を取得する(ステップ601)。
【0025】
次に、対象となる差圧伝送器104が置換器付差圧伝送器(リモート・シール・ダイアフラム形差圧伝送器)かどうかを判別し(ステップ602)、置換器付の場合はさらに通信部204を介して差圧伝送器104と通信して封入液情報を取得する(ステップ603)。
【0026】
演算部203は、高圧側の圧力導入設定を取得するために、圧力導入設定画面(図4)を表示部205に表示する(ステップ604)。前記置換器付の場合は液種選択部401の初期表示値を封入液種とする。入力部206を介して液種選択部401、および温度入力部402の変化を検出した場合は、前述したとおり比重を求めて比重入力部403に表示する。
【0027】
演算部203は、入力部206を介して比重入力部403に設定されたパラメータを高圧側比重gH、高さ入力部404に設定されたパラメータを高圧側圧力導入口高さhHとして記憶部201に保持する(ステップ605)。
【0028】
以上述べた高圧側の圧力導入設定の取得方法と同様に、圧力導入設定入力画面(図4)を再度表示し(ステップ606)、比重入力部403に設定されたパラメータを低圧側比重gL、高さ入力部に設定されたパラメータを低圧側圧力導入口高さhLとして取得し記憶部21に保持する(ステップ607)。このようにして本実施例では、同じ圧力導入設定入力画面(図4)を切り替えて表示することで、高圧側圧力導入及び低圧側圧力導入のパラメータ設定等を夫々可能にして入力操作の簡便化を図っている。
【0029】
次に演算部203は、図5に示す計測設定画面を表示部204に表示する(ステップ608)。入力部206を介して液種選択部501、および温度入力部502の変化を検出した場合は、前述したとおり比重を求めて比重入力部503に表示する。
【0030】
演算部203は、入力部206を介して比重入力部503に設定されたパラメータを計測対象比重gS、0%高さ入力部504に設定されたパラメータを0%出力高さh0、100%高さ入力部に設定されたパラメータを100%出力高さh100としてデータを取得する(ステップ609)。記憶部201に保持されているgH、hH、gL、hLから0%出力圧力p0、100%出力圧力p100を次の式から求め(ステップ610)、0%圧力表示部506および100%圧力表示部507に表示する(ステップ611)。
【0031】
p0=gH×hH+gS×(h0−hH)−gL×hL
p100=P0+gS×(h100−h0)−gL×hL
演算部23は、以上のようにして求めた圧力範囲パラメータp0、p100を、通信部24を介して伝送器104に送信する。
【0032】
以上のように、本実施例によれば設定器の表示部205に切り替えて表示される図4及び図5の画面の指示に沿って比重等を入力することで、液位を計測する差圧伝送器に対する圧力範囲パラメータを簡単に設定することができ、作業者の手を煩わすことなく信頼性の高い液位計測をおこなうことができる。
【符号の説明】
【0033】
101・・・タンク
102・・・高圧側圧力導入口
103・・・低圧側圧力導入口
104・・・差圧伝送器
gH・・・高圧側比重
hH・・・高圧側圧力導入口高さ
gL・・・低圧側比重
hL・・・低圧側圧力導入口高さ
gS・・・計測対象比重
h0・・・0%出力高さ
h100・・・100%出力高さ
p0・・・0%出力圧力
p100・・・100%出力圧力
401・・・液種選択部
402・・・温度入力部
403・・・比重入力部
404・・・高さ入力部
501・・・液種選択部
502・・・温度入力部
503・・・比重入力部
504・・・0%高さ入力部
505・・・100%高さ入力部
506・・・0%圧力表示部
507・・・100%圧力表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンクの低圧側圧力と高圧側圧力を導入して前記タンク内の液位を計測する差圧伝送器と通信し、前記タンク内の液位計測に用いる圧力範囲パラメータを前記差圧伝送器に送信する差圧伝送器用設定器であって、少なくとも前記タンク内の液体の比重を入力する液位計測設定画面、及び前記低圧側圧力と高圧側圧力を導入する液体の比重を入力する圧力導入設定画面を表示する表示部と、少なくとも前記設定画面に対応する比重を入力する入力部と、少なくとも前記入力された比重を用いて前記圧力範囲パラメータを算出する演算部と、前記算出された圧力範囲パラメータを前記差圧伝送器に通信する通信部と、を備えることを特徴とする差圧伝送器用設定器。
【請求項2】
請求項1において、前記タンクは0%出力の高さと100%出力の高さが予め設定されており、前記圧力範囲パラメータは、前記0%出力の圧力及び前記100%出力の圧力を示すパラメータからなることを特徴とする差圧伝送器用設定器。
【請求項3】
請求項1記載の差圧伝送器用設定器において、前記入力部から入力される前記タンク内の液体の複数の温度点における比重を記憶する記憶部を備え、前記演算部は、前記タンク内の液体の任意の温度における比重を前記記憶部に記憶された値から補間演算して求め、この補間演算された比重を用いて前記圧力範囲パラメータを算出するように構成することを特徴とする差圧伝送器用設定器。
【請求項4】
請求項1記載の差圧伝送器用設定器において、前記表示部は、前記液位計測設定画面と前記圧力導入設定画面とを切り替えて表示し、かつ、前記圧力導入設定画面は前記低圧側圧力と前記高圧側圧力とで切り替えて表示することを特徴とする差圧伝送器用設定器。
【請求項5】
請求項1記載の差圧伝送器用設定器において、前記圧力導入設定画面は、前記タンク内圧力を前記差圧伝送器に導入する液種、液種の温度、及び導入するタンク高さを入力可能とすることを特徴とする差圧伝送器用設定器。
【請求項6】
請求項1記載の差圧伝送器用設定器において、前記液位計測設定画面は、前記タンク内の液種、温度、0%出力の高さ、及び100%出力の高さを入力可能とすることを特徴とする差圧伝送器用設定器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−242187(P2011−242187A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112784(P2010−112784)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【出願人】(000233549)株式会社日立ハイテクコントロールシステムズ (130)
【Fターム(参考)】