差圧鋳造装置
【課題】保持容器内における溶湯が輻射する熱の影響を受けにくく、溶湯面と距離センサとの距離を正確に測定することができ、この測定結果に基づいて差圧を制御し、仕上がりの良好な鋳物を製作する。
【解決手段】砂型を収納する収納容器30は、ストーク40の上端40aが貫通し、砂型を装着可能に上部が開口する本体31と、本体31の開口を閉塞可能な蓋体32とを有している。移動装置50は、蓋体32を、本体31の上方から退避する退避位置と、本体31の開口を閉塞する閉塞位置とに移動させるよう構成されている。そして、蓋体32を退避位置に移動して、次の砂型を収納容器30に収納する際、移動装置50と一体に移動する距離センサ60により、保持容器30内の溶湯面Mの距離Lを測定し、該測定結果に基づき、制御装置70が次の鋳造に際しての差圧を設定する。
【解決手段】砂型を収納する収納容器30は、ストーク40の上端40aが貫通し、砂型を装着可能に上部が開口する本体31と、本体31の開口を閉塞可能な蓋体32とを有している。移動装置50は、蓋体32を、本体31の上方から退避する退避位置と、本体31の開口を閉塞する閉塞位置とに移動させるよう構成されている。そして、蓋体32を退避位置に移動して、次の砂型を収納容器30に収納する際、移動装置50と一体に移動する距離センサ60により、保持容器30内の溶湯面Mの距離Lを測定し、該測定結果に基づき、制御装置70が次の鋳造に際しての差圧を設定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保持容器内と収納容器内とに差圧を生じさせることにより鋳造する差圧鋳造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、保持容器上方に鋳型が収納される収納容器を設置して保持容器及び収納容器を気密状態とし、保持容器内及び収納容器内の圧力を大気圧よりも昇圧し、保持容器内の圧力を収納容器内の圧力よりも高めて、その圧力差により鋳型に溶湯を充填する差圧鋳造装置が研究されている。
【0003】
従来、鋳型が収納される収納容器の下方に、溶湯を入れた保持容器を配置し、該保持容器内に圧縮気体を送風して、該保持容器内の溶湯をストークを通じて上方の鋳型に供給して鋳造する低圧鋳造法が知られている。
【0004】
該低圧鋳造法では、鋳型として金型が多く用いられ、同一形状の製品を大量に生産する方法として適しており、鋳型を収納する収納容器は大気に開放されており、保持容器内の溶湯量に拘らず、該保持容器内の圧力を略一定に保持すればよい。
【0005】
一方、上記差圧鋳造装置にあっては、保持容器内と収納容器内との差圧を高い精度で管理する必要があり、例えば、同一形状の鋳物を大量生産する場合、金型が用いられ、保持容器内の溶湯量は金型のキャビティの容積で予め溶湯の使用量がわかるため、適正な差圧を予測することができ、保持容器内の溶湯量を鋳造毎に測定しなくても適正な差圧制御が可能である。
【0006】
しかし、鋳物を多種少量生産する場合、鋳型を頻繁に入れ換える必要があり、鋳型のキャビティの容積は、各鋳型によってまちまちであり、鋳型を入れ換える度に溶湯使用量が変わるため、溶湯使用量を予測するのは困難である。従って、鋳物を多種少量生産する場合は、次の鋳造の前に、保持容器内の正確な溶湯面の高さを測定しなければならない。
【0007】
レース用エンジンのシリンダヘッド等の精度の為に鋳物を少量生産するときに上記差圧鋳造装置を用いる場合、鋳型として砂型を用いるのが一般的であるが、この場合、鋳造のロット毎に消費される溶湯使用量が変化し、保持容器内の圧力と収納容器内の圧力との差圧を適正にするために、保持容器内及び収納容器内の圧力の制御が重要となる。
【0008】
具体的に説明すると、保持容器内の圧力と収納容器内の圧力との差圧が低すぎると、砂型における湯回り不良が発生し、差圧が高すぎると、溶湯充填時の圧力によって砂型の崩壊や砂型表面への溶湯の差し込みが発生してしまい、鋳物の仕上がりが悪くなってしまうため、保持容器内の圧力と収納容器内の圧力との差圧を適正にする必要がある。
【0009】
なお、保持容器における溶湯量は鋳造する度に減少し、また、溶湯を保持容器に追加すれば溶湯量は増加するものであるが、適正な差圧は、保持容器における溶湯量(溶湯面の高さ)に応じて異なるものである。
【0010】
これに対し、保持容器内に例えば電極を有する接触式の溶湯面センサを設け、溶湯面を検知する差圧鋳造装置が知られている(特許文献1参照)。
【0011】
また、保持容器に形成した開口に耐熱ガラス等を設けて保持容器の外側にレーザによる非接触式の距離センサを配置して、耐熱ガラスを通じて溶湯面との距離を測定する差圧鋳造装置や、距離センサを保持容器内に配置した差圧鋳造装置が知られている(特許文献2,3参照)。
【0012】
【特許文献1】特開平11−156529号公報
【特許文献2】特開平7−136755号公報
【特許文献3】特開平8−318361号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、電極等の接触式の溶湯面センサを用いた差圧鋳造装置では、溶湯面センサが溶湯に接触する状態となるため、接触式の溶湯面センサによる高精度な測定を維持するには、頻繁にメンテナンスをしなければならず、メンテナンス性が低いものであった。また、高温の溶湯に溶湯面センサを接触させるので、溶湯面センサの寿命が短いものであった。
【0014】
また、非接触式の距離センサにより耐熱ガラスを介して溶湯面との距離を測定する差圧鋳造装置では、耐熱ガラスが曇って測定感度が低下したり、距離センサによるレーザ光等が耐熱ガラスで反射や散乱したりするので、正確に溶湯面を測定することが困難であった。
【0015】
また、保持容器内に非接触の距離センサを配置した差圧鋳造装置では、距離センサが常時溶湯の熱の輻射を直接受けるため、距離センサの寿命が著しく低下してしまうものであった。
【0016】
このような観点から、センサを用いるよりも、作業者によりゲージを用いて保持容器内の溶湯面の高さを目測する方が確実であったため、作業者が測定作業を行わなければならなかった。
【0017】
そこで本発明は、保持容器内における溶湯が輻射する熱の影響を受けにくく、溶湯面と距離センサとの距離を正確に測定することができ、この測定結果に基づいて差圧を制御し、仕上がりの良好な鋳物を得ることができる差圧鋳造装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は(例えば、図1〜図3参照)、溶湯を保持する保持容器(20)と、該保持容器の上方に配置され、鋳型(S)が収納される収納容器(30)と、前記保持容器(20)と前記収納容器(30)内の鋳型(S)とを連通するストーク(40)とを備え、前記保持容器(20)内の圧力が前記収納容器(30)内の圧力よりも高くなるように差圧を生じさせ、前記保持容器(20)に保持された溶湯を、前記ストーク(40)を通じて鋳型(S)に充填する差圧鋳造装置において、
前記収納容器(30)は、前記ストークの上端が貫通し、鋳型を装着可能に上部が開口する本体(31)と、前記本体の開口を閉塞可能な蓋体(32)と、を有し、
前記蓋体(32)を、前記本体(31)の上方から退避する退避位置と、前記本体の開口を閉塞する閉塞位置とに移動させる移動手段(50)と、
前記移動手段と一体に移動する部材(51c)に設けられ、前記ストーク(40)を通じて非接触で溶湯面(M)との距離(L)を測定する距離センサ(60)と、
前記保持容器(20)内と前記収納容器(30)内との差圧を制御する制御手段(70)と、を備え、
前記移動手段(50)により前記蓋体(32)を前記退避位置に移動して、次の鋳型(S)を前記収納容器(30)に収納する際、前記移動手段(50)と一体に移動する前記距離センサ(60)により前記保持容器(20)内の溶湯面(M)の距離(L)を測定し、該測定結果に基づき、前記制御手段(70)が次の鋳造に際しての前記差圧を設定してなる、ことを特徴とする差圧鋳造装置にある。
【0019】
また、上記差圧鋳造装置において、前記移動手段(50)は、前記蓋体(32)の上方に配置され、前記蓋体を前記本体(31)に対して昇降自在に支持する昇降機構(51)と、前記昇降機構(51)を水平方向に移動自在に支持するリンク機構(53)と、を有し、前記昇降機構(51)により前記蓋体(32)を持ち上げた状態で、前記昇降機構(51)を水平方向に移動させることで、前記蓋体(32)を前記退避位置に移動させ、
前記距離センサ(60)は、前記昇降機構(51)に水平方向に突出して取り付けられ、前記蓋体(32)の前記退避位置への移動の際に、前記昇降機構(51)と一体に水平方向に移動することにより、前記ストーク(40)から延びる直線上の位置に移動する、ことを特徴とするものである。
【0020】
また、上記差圧鋳造装置において(例えば、図5〜図8参照)、前記制御手段(70)は、前記距離センサ(60)による前記測定結果に基づいて、前記ストーク(40)の上端位置に溶湯が上昇するのに必要な第1の差圧(ΔPx)、及び鋳型(S)に溶湯を充填するのに必要な第2の差圧(ΔPy)を演算し、鋳型(S)に溶湯を充填するに先立って、前記差圧を、前記第1の差圧(ΔPx)に設定し、前記ストーク(40)の上端位置に溶湯が達したと判断した場合、前記差圧を、前記第2の差圧(ΔPy)に設定する、ことを特徴とするものである。
【0021】
また、上記差圧鋳造装置において、前記制御手段(70)は、鋳型(S)に溶湯を充填完了したと判断した場合、鋳型(S)内の溶湯を凝固させる際に、前記差圧を、前記第2の差圧(ΔPy)よりも大きい第3の差圧(ΔPz)に設定する、ことを特徴とするものである。
【0022】
また、上記差圧鋳造装置において、前記収納容器(30)に収納される鋳型は、砂型(S)である、ことを特徴とするものである。
【0023】
尚、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これは、発明の理解を容易にするための便宜的なものであり、特許請求の範囲の構成に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0024】
請求項1に係る本発明によると、鋳型を型開して鋳物を取り出すために蓋体を退避位置に移動させた際に、距離センサが移動手段と一体に溶湯面の距離を測定する位置に移動するので、次の鋳造に先立って溶湯面の距離を非接触で正確に測定することができ、作業者がゲージを用いて測定する必要がなくなり、距離測定を自動化することが可能となる。
【0025】
また、移動手段により収納容器の蓋体を退避位置に移動させるので、距離センサをストークを通じて溶湯面に対向させる際に、収納容器の蓋体が測定の邪魔になることはない。そして、収納容器の蓋体を、本体の上方から退避する退避位置に移動させることによって、ストークを通じて上昇する溶湯の熱が拡散しやすくなり、距離センサをストークを通じて溶湯面に対向させた際には、距離センサは熱の影響を受けにくくなる。そして、距離センサは距離の測定が必要なときにストークを通じて溶湯面に対向することとなるので、常時溶湯の熱に晒されることはなく、熱の影響を受けにくいので、距離センサの寿命を延ばすことができる。また、耐熱ガラス等を介して溶湯面と距離センサとの距離を測定する場合に比べ、直接溶湯面との距離を測定することができるので、耐熱ガラス等による反射や散乱がなくなり、距離を正確に測定することができる。
【0026】
また、制御手段では、距離センサにより測定した距離が正確であるので、保持容器内の圧力と収納容器内の圧力との差圧を正確に制御することができ、これによって、湯回り不良を抑制することができ、仕上がりの良好な鋳物を製作することができる。
【0027】
請求項2に係る本発明によると、蓋体の上方に配置される昇降機構に距離センサを取り付けたことにより、距離センサがストーク上端から十分に離隔した位置に配置されることとなるので、溶湯の熱の影響を更に受けにくくなる。そして、距離センサを昇降機構に取り付けるだけで、距離センサを溶湯面に対向する位置に移動させることができ、簡単な構造で精度よく溶湯面の距離を測定することが可能となる。
【0028】
請求項3に係る本発明によると、距離センサにより測定した距離が正確であるので、第1の差圧及び第2の差圧の演算結果の精度が向上する。また、鋳造の際に、まず第1の差圧となるように保持容器内の圧力と収納容器内の圧力との差圧が設定されるので、溶湯が鋳型の寸前で減速又は一旦停止し、溶湯が勢いよく鋳型に注入されることはない。そして、溶湯がストーク上端に到達した後、第2の差圧となるように、保持容器内の圧力及び収納容器内の圧力との差圧が制御されるので、安定して鋳型に溶湯を充填することができ、鋳型における湯回り不良を抑制することができ、仕上がりの良好な鋳物を製作することができる。
【0029】
請求項4に係る本発明によると、鋳物を凝固させる際に、押し湯効果が高まり、鋳造欠陥を減少させることができ、仕上がりの良好な鋳物を製作することができる。
【0030】
請求項5に係る本発明によると、鋳型が砂型であるので、差圧制御が安定することで砂型への溶湯の差し込みを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を用いて詳細に説明する。
【0032】
図1〜図3は、本実施の形態に係る差圧鋳造装置であって、一部断面とした概略構成を示す説明図である。
【0033】
図1において、差圧鋳造装置100は、基台10と、基台10に上端が支持され、溶湯を保持する保持容器20と、保持容器20の上方に配置され、砂型Sが収納される収納容器30と、保持容器20と収納容器30内に収納した砂型Sとを連通する上下方向に延びるストーク40とを備えている。溶湯は、例えばアルミニウム等の溶融金属である。
【0034】
収納容器30は、底部31A及び底部31Aから上方に立設する側壁部31Bを有し、上部が開口する有底の本体31と、天部32A及び天部32Aから下方に立設する側壁部32Bを有し、本体31の上部における開口を閉塞可能な蓋体32とを備えている。そして、蓋体32により本体31上部を閉塞する際には、本体31の側壁部31Bの上端に蓋体32の側壁部32Bの下端が圧接載置される。
【0035】
本体31の底部31Aには、貫通孔31aが形成されており、その貫通孔31aにストーク40の上端40aが貫通して固定されている。そして、本体31は、その底部31Aにおけるストーク40の上端40aに対応する位置に、砂型Sを装着可能としている。ストーク40は、その下端40bが保持容器20内の溶湯に浸かるように、保持容器20内に延びている。
【0036】
また、差圧鋳造装置100は、蓋体32を、本体31の上方から退避する退避位置と、本体31の開口を閉塞する閉塞位置とに移動させる移動手段としての移動装置50を備えている。蓋体32が閉塞位置に移動して本体31の開口を閉塞しているとき、保持容器20内及び収納容器30内は、密閉状態となり、蓋体32が退避位置に移動しているとき、本体31の上部が開口するので、砂型Sの取り外し及び設置が可能となる。
【0037】
移動装置50は、収納容器30の蓋体32の上方に配置され、蓋体32を、本体31に対して上下方向に昇降自在に支持する昇降機構51と、基台10に支持され、昇降機構51を水平方向に移動自在に支持するリンク機構53とを有している。
【0038】
昇降機構51は、各種駆動源を収納する箱体51aと、箱体51aの下方に配置され、上下方向に延びる4つ(複数)の油圧シリンダ51bとを有し、油圧シリンダ51bの一端が箱体51aの下面に固定され、他端が蓋体32の天部32Aに固定されている。そして、油圧シリンダ51bの伸縮動作により、蓋体32を上下方向に昇降させることができる(図2参照)。
【0039】
図1において、リンク機構53は、収納容器30及び昇降機構51を挟んで両側に配置される一対のリンク部54,54を有している。リンク部54は、第1のアーム55、第2のアーム56及びアーム55,56同士を連結する油圧シリンダ57を有している。各アーム55,56は、一端部が基台10に揺動可能に固定され、他端部が昇降機構51の箱体51aに揺動可能に固定される基部55a,56aを有しており、各アーム55,56の基部55a,56a同士が平行に配置されている。そして、第1のアーム55は、昇降機構51側の端部に、基部55aに対して垂直方向に第2のアーム56側に張り出す張出部55bを有しており、また、第2のアーム56は、基台10側の端部に、基部56aに対して垂直方向に第1のアーム55側に張り出す張出部56bを有している。そして、第1のアーム55の張出部55bに、油圧シリンダ57の一端が固定され、第2のアーム56の張出部56bに、油圧シリンダ57の他端が固定される。そして、油圧シリンダ57を伸縮させることにより、第1のアーム55及び第2のアーム56が平行状態を保ったまま、一体となって揺動し、昇降機構51を平行方向に移動させることができる(図3参照)。
【0040】
本実施の形態における差圧鋳造装置100は、レーザ光により対象物との距離を測定する非接触式の距離センサ60を備えている。この距離センサ60は、移動装置50と一体に移動する部材としての昇降機構51に突出して取り付けられている。具体的には、距離センサ60は、昇降機構51の箱体51aから突出する突出片51cに固定されている。
【0041】
また、差圧鋳造装置100は、保持容器20内の圧力と、収納容器30内の圧力とを制御し、保持容器20内と収納容器30内との差圧を制御する制御手段としての制御装置70を備えている。制御装置70には、距離センサ60が接続されており、制御装置70は、距離センサ60により測定された測定結果を取得可能に構成されている。また、本実施の形態における差圧鋳造装置100は、移動装置50を動作させる場合や鋳造を実行する場合に作業者が操作する操作部71を備えており、該操作部71が制御装置70に接続されている。つまり、制御装置70は、操作部71の設定に従い、移動装置50を含む差圧鋳造装置100全体を制御する。
【0042】
次に、差圧鋳造装置100において、前回鋳造に使用した砂型Sを取り出して次の鋳造に使用する砂型Sを設置する場合について説明する。
【0043】
図4は、差圧鋳造装置100による一連の動作を示すフローチャートである。
【0044】
図4において、まず、操作部71において、収納容器30の蓋体32が退避位置に移動するよう作業者により設定された場合、制御装置70は、収納容器30の蓋体32を退避位置に移動するように移動装置50を制御する(ステップS1)。具体的に説明すると、蓋体32を、閉塞位置から退避位置に移動させる際、まず、図2に示すように、昇降機構51により蓋体32を持ち上げ、この状態で、図3に示すように、リンク機構53により昇降機構51を水平方向に移動させる。これにより、収納容器30の蓋体32は、本体31の開口を閉塞する閉塞位置(図1)から、収納容器30の本体31の上方から退避する退避位置(図3)に移動する。このとき、距離センサ60は、図3に示すように、移動装置50の昇降機構51と一体に水平方向に移動することで、ストーク40から延びる直線上の位置(測定位置)に移動する。つまり、距離センサ60は、移動装置50により、ストーク40から延びる直線上の位置に位置決めされる。更に、距離センサ60は、昇降機構51に取り付けられているので、蓋体32を退避位置に移動させた際、ストーク40の上端40aとの距離が所定距離となるように位置決めされる。
【0045】
そして、蓋体32を上方に移動させた状態で水平方向に移動させることにより、前回の鋳造に使用した砂型Sが本体31上部から突出している場合には、リンク機構53により蓋体32を水平方向に移動させたときに、昇降機構51により蓋体32を上方に持ち上げた状態であるので、蓋体32が砂型Sに接触するのを回避することができる。また、蓋体32を水平方向へ移動させることにより、砂型Sの型開の際に砂型Sを取り出す作業、及び新たに砂型Sの設置作業が容易になる。なお、本実施の形態では、鋳型として砂型Sを使用しているので、1つの鋳物を製作する度に砂型Sを入れ換える必要がある。
【0046】
ここで、前回の鋳造に使用した砂型Sが収納容器30の本体31に収納されている場合は、作業者によって砂型Sの型開が行われて、鋳物が取り出され、砂型Sが取り出される(図4中、ステップS2)。或いは、砂型Sが取り出された後、型開が行われて鋳物が取り出される。
【0047】
このように、砂型Sを取り出した場合、図3に示すように、収納容器30の本体31内において、ストーク40の上端40aが外部に露出することとなる。そして、昇降機構51に取り付けられた距離センサ60は、ステップS1の動作により、ストーク40から延びる直線上の位置(測定位置)に移動しているので、砂型Sが取り外されたことでストーク40を通じて溶湯面Mに対向することとなる。これによって、距離センサ60は、該距離センサ60と溶湯面Mとの距離Lを測定することができる。
【0048】
そして、距離センサ60が保持容器20内の溶湯面Mに対向している状態で操作部71において距離を測定するよう設定がなされた場合、距離センサ60は、レーザ光を溶湯面Mに照射してその反射光を検知することにより、溶湯面Mとの距離Lを測定する(図4中、ステップS3)。
【0049】
このように、砂型Sを型開して鋳物を取り出すために蓋体32を退避位置に移動させた際に、距離センサ60が移動装置50と一体に測定位置に移動するので、次の鋳造に先立って溶湯面Mの距離Lを非接触で正確に測定することができ、作業者がゲージを用いて測定する必要がなくなり、距離測定を自動化することが可能となる。
【0050】
また、移動装置50により収納容器30の蓋体32を退避位置に移動させるので、距離センサ60をストーク40を通じて溶湯面Mに対向させる際に、収納容器30の蓋体32が測定の邪魔になることはない。そして、収納容器30の蓋体32を、本体31の上方から退避する退避位置に移動させることによって、ストーク40を通じて上昇する溶湯の熱が拡散しやすくなり、距離センサ60をストーク40を通じて溶湯面Mに対向させた際には、距離センサ60は熱の影響を受けにくくなる。特に、距離センサ60を、昇降機構51の箱体51aに突出する突出片51cに取り付けているので、距離センサ60がストーク40の上端40aから十分に離隔した位置となり、保持容器20内の溶湯の熱の影響を更に受けにくくなる。
【0051】
そして、距離センサ60は距離の測定が必要なときにストーク40を通じて溶湯面Mに対向することとなるので、常時溶湯の熱に晒されることはなく、熱の影響を受けにくいので、距離センサ60の寿命を延ばすことができる。また、耐熱ガラス等を介さずに直接溶湯面Mとの距離Lを測定することができるので、耐熱ガラス等を介して溶湯面と距離センサとの距離を測定する場合に比べ、距離Lを正確に測定することができる。
【0052】
そして、距離センサ60を昇降機構51に取り付けるだけで、距離センサ60を溶湯面Mに対向する位置に移動させることができ、簡単な構造で精度よく溶湯面Mの距離Lを測定することが可能となる。
【0053】
更に、距離センサ60は、移動装置50と一体に移動して定位置に位置決めされるので、測定結果のばらつきが少なくなり、溶湯面Mとの距離Lを正確に測定することが可能となる。
【0054】
距離センサ60により溶湯面Mとの距離Lが測定された後、次の鋳造に使用される砂型Sが収納容器30の本体31に設置され(ステップS4)、操作部71において、収納容器30の蓋体32が閉塞位置に移動するよう設定された場合、制御装置70は、収納容器30の蓋体32を閉塞位置に移動するように移動装置50を制御する(ステップS5)。具体的に説明すると、蓋体32を、退避位置から閉塞位置に移動させる際、まず、リンク機構53により図3の状態から図2の状態に水平方向に昇降機構51を移動させ、次に、昇降機構51により図2の状態から図1の状態に蓋体32を下降移動させる。このとき、距離センサ60は、保持容器20及び収納容器30の直上から退避している。
【0055】
次いで、操作部71において、鋳造を実行する設定がなされた場合、制御装置70は、測定した溶湯面Mとの距離L(つまり、溶湯面Mの高さ)に基づいて差圧を制御しながら鋳造処理を実行する(ステップS6)。
【0056】
そして、鋳造処理を終えたら、再びステップS1の手順に戻り、砂型S(鋳物)を取り出して、次の鋳造に使用される砂型Sを設置するに先立って、距離センサ60により溶湯面Mとの距離Lが測定される。このように、鋳物を製作する1ロットの度(砂型Sを入れ換える度)に溶湯面Mを測定することで、保持容器20内の溶湯量を把握することができ、次の鋳造において、保持容器20内の圧力と収納容器30内の圧力との差圧を正確に制御することができ、これによって、湯回り不良や砂型Sへの差し込みを抑制することができ、仕上がりの良好な鋳物を製作することができる。
【0057】
次に、ステップ6における鋳造処理について詳細に説明する。
【0058】
図5は、本実施の形態に係る差圧鋳造装置100の配管構成を示すブロック図であり、図6は、鋳造処理を示すフローチャートである。また、図7は、保持容器20及び収納容器30の圧力変化を示す図である。
【0059】
図5において、差圧鋳造装置100は、例えば空気、希ガス又は窒素ガス等の鋳造に適した高圧ガスを供給するガス供給装置80を備え、ガス供給装置80には、加圧弁(電磁弁)81を介して、収納容器30に接続される第1の給気管82及び保持容器20に接続される第2の給気管83が接続されている。そして、第1の給気管82には、第1の圧力調整手段としての第1の圧力調整弁84と、第1の給気弁(電磁弁)85とが配設され、第2給気管83には、第2の圧力調整手段としての第2の圧力調整弁86と、第2の給気弁(電磁弁)87とが配設されている。
【0060】
また、第1の給気管82における第1の給気弁85の二次側と、第2の給気管83における第2の給気弁87の二次側とが、連結管88で連結されており、該連結管88には、連結弁(電磁弁)89が配設されている。また、第1の給気管82における第1の給気弁85の二次側には、終端に第1の大気開放弁(電磁弁)90が接続された第1の大気開放管91が接続されており、第2の給気管83における第2の給気弁87の二次側には、終端に第2の大気開放弁(電磁弁)92が接続された第2の大気開放管93が接続されている。
【0061】
差圧鋳造装置100は、収納容器30内の圧力を検知する第1の圧力センサ94及び保持容器20内の圧力を検知する第2の圧力センサ95を備えている。
【0062】
この構成により、制御装置70は、各弁81,84,85,86,87,89,90,92を制御することにより、収納容器30内の圧力P1及び保持容器20内の圧力P2を制御している。なお、図4中、ステップS1〜S5においては、加圧弁81並びに第1及び第2の給気弁85,87を閉弁し、連結弁89並びに第1及び第2の大気開放弁90,92を開弁している状態である。
【0063】
図6において、まず制御装置70は、測定した距離Lに基づき、収納容器30内の圧力P1と保持容器20内の圧力P2との差圧であって、ストーク40の上端位置(溶湯面Mに対するストーク40の上端40aの高さh1)に溶湯が上昇するのに必要な第1の差圧ΔPx、砂型Sに溶湯を充填する(溶湯面Mに対する砂型SのキャビティSc内の上端の高さh2に溶湯が上昇する)のに必要な第2の差圧ΔPy、及び第2の差圧ΔPyよりも大きい第3の差圧ΔPzを演算する(ステップS11)。
【0064】
具体的に説明すると、まず、制御装置70は、測定した距離Lに基づき、高さh1及び高さh2を演算する。
【0065】
次に、必要な差圧ΔP(=P2−P1)は、溶湯の密度をρ、溶湯面Mに対する高さをh、砂型Sにおけるキャビティの断面積をS、保持容器20の断面積をA、重力加速度をgとすると、
ΔP=ρ×h×(1+S/A)×g・・・・・・式1
で表されるが、制御装置70は、式1を用いて、演算した高さh1及び高さh2に基づいて、差圧ΔPx及び差圧ΔPyを演算し、差圧ΔPyに基づいて差圧ΔPzを演算している。
【0066】
次に、制御装置70は、収納容器30内の圧力P1及び保持容器20内の圧力P2が大気圧よりも高い所定圧力(例えば、800kPa)Pにする制御を行う(ステップS12:図7中、昇圧期間T1)。
【0067】
具体的に説明すると、第1及び第2の大気開放弁90,92は、開弁状態であるので、まず、制御装置70は、第1及び第2の大気開放弁90,92を閉弁し、次いで、加圧弁81並びに第1及び第2の給気弁85,87を開弁すると共に、第1及び第2の圧力調整弁84,86を、各容器30,20の圧力が所定圧力Pとなるように調整する。このとき、連結弁89は、開弁状態であるので、両容器30,20は、同一の速度で所定圧力Pに昇圧する。このように、各容器30,20を所定圧力Pに昇圧することで、砂型Sにおける溶湯の凝固時に、水素ガス気泡の生成を防止し、水素ガス気泡に起因するピンホール等の鋳造欠陥を防止することができる。
【0068】
制御装置70は、第1及び第2の圧力センサ94,95により各容器30,20の圧力P1,P2を検知し、各圧力P1,P2が所定圧力Pに達した場合、収納容器30内と保持容器20内との差圧が、第1の差圧ΔPxとなるように、各圧力P1,P2を設定する(ステップS13:図7中、溶湯押上期間T2)。具体的に説明すると、制御装置70は、各圧力P1,P2が所定圧力Pに達した場合、連結弁89を閉弁し、第1の差圧ΔPxとなるように、保持容器20内の圧力P2を所定圧力Pよりも昇圧するよう、第2の圧力調整弁86を設定する。そして、このように第2の圧力調整弁86を設定することにより、保持容器20内の圧力P2は、徐々に昇圧し、収納容器30内と保持容器20内との差圧が、第1の差圧ΔPxとなる。このように差圧を第1の差圧ΔPxに設定することで、溶湯が砂型Sの寸前で減速又は一旦停止し、溶湯が勢いよく砂型Sに注入されることはない。
【0069】
次に、制御装置70は、ストーク40の上端40aに溶湯が達したか否かを判断する(ステップS14)。具体的に説明すると、保持容器20内の圧力P2は、徐々に昇圧するので、保持容器20内の溶湯は、保持容器20内の圧力P2の上昇と共にストーク40を上昇する。そして、収納容器30内と保持容器20内との差圧が、第1の差圧ΔPxに達した場合は、ストーク40の上端40aに溶湯が達する。そして、制御装置70は、溶湯が安定するのに必要な時間だけ第1の差圧ΔPxを保持する。従って、本実施の形態では、制御装置70は、ステップS14において、収納容器30内と保持容器20内との差圧が第1の差圧ΔPxに達して、溶湯が安定するのに必要な時間が経過したか否かを判断する。
【0070】
制御装置70は、ストーク40の上端40aに溶湯が達した場合(ステップS14:Yes)、収納容器30内と保持容器20内との差圧が第2の差圧ΔPyとなるように設定し、砂型SのキャビティScに溶湯を充填する(ステップS15:図7中、溶湯充填期間T3)。
【0071】
具体的に説明すると、制御装置70は、差圧が第2の差圧ΔPyとなるように、収納容器30内の圧力P1を所定圧力Pから減圧するよう、第1の圧力調整弁84を設定する。そして、このように第1の圧力調整弁84を設定することにより、収納容器30内の圧力P1は、徐々に減圧し、収納容器30内と保持容器20内との差圧が、第2の差圧ΔPyとなる。
【0072】
このように、直接第2の差圧ΔPyに設定するのではなく、予め第1の差圧ΔPxに設定してから、第2の差圧ΔPyに設定するようにしたので、砂型SのキャビティScに溶湯が勢いよく噴き上がるのを抑制することができ、砂型Sが損傷するのを抑制することができ、仕上がりの良好な鋳物を製作することができる。
【0073】
また、収納容器30内の圧力P1を減圧するようにしたので、砂型Sに溶湯を充填する際に、溶湯を押し出す側の保持容器20内の圧力P2が変動しないので、溶湯の流れがスムーズであり、仕上がりの良好な鋳物を製作することができる。
【0074】
次に、制御装置70は、砂型SのキャビティScに溶湯を充填するのが完了したか否かを判断する(ステップS16)。本実施の形態では、収納容器30内と保持容器20内との差圧が第2の差圧ΔPyとなってから充填に必要な時間が経過したか否かを判断する。
【0075】
制御装置70は、砂型SのキャビティScに溶湯を充填するのが完了した場合(ステップS16:Yes)、収納容器30内と保持容器20内との差圧が第3の差圧ΔPzとなるように設定する(ステップS17:図7中、凝固期間T4)。具体的に説明すると、制御装置70は、差圧が第3の差圧ΔPzとなるように、収納容器30内の圧力P1を所定圧力Pに設定すると共に、保持容器20内の圧力P2を昇圧するよう、各圧力調整弁84,86を設定する。このように保持容器20内の圧力P2を昇圧して砂型Sに通じる溶湯に追い打ちの圧力をかけることにより、押し湯効果が高まり、鋳造欠陥が少なくなり、仕上がりの良好な鋳物を製作することができる。
【0076】
次に、制御装置70は、砂型S内の溶湯が凝固したか否かを判断する(ステップS18)。具体的に説明すると、制御装置70は、溶湯が凝固に必要な時間が経過したか否かを判断する。
【0077】
制御装置70は、砂型S内の溶湯が凝固したと判断した場合(ステップS18:Yes)、まず、連結弁89を開弁し、両容器30,20内の圧力が均衡してから、両容器30,20内の圧力を大気圧まで減圧する(ステップS19:図7中、減圧期間T5)。具体的に説明すると、加圧弁81並びに第1及び第2の給気弁85,87を閉弁し、その後、第1及び第2の大気開放弁90,92を開弁する。
【0078】
以上、本実施の形態によれば、距離センサ60により溶湯面Mとの距離Lを精度よく測定することができ、鋳造処理を実行する際に、測定結果に基づいて収納容器30内と保持容器20内との差圧を制御するようにしたので、制御動作が安定し、仕上がりの良好な鋳物を製作することができる。
【0079】
なお、上記実施の形態に基づいて本発明を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0080】
本実施の形態では、図6中、ステップS15において、収納容器30内と保持容器20内との差圧を第2の差圧ΔPyに設定する際に、収納容器30内の圧力を減圧するようにしたが、これに限るものではなく、図8に示すように、保持容器20内の圧力P2を昇圧して差圧を第2の差圧ΔPyに設定してもよい。
【0081】
また、本実施の形態では、距離センサが取り付けられる部材(移動装置と一体に移動する部材)が、昇降機構51の突出片51cである場合について説明したが、これに限定するものではなく、収納容器の蓋体或いは蓋体に固定される部材であってもよいし、リンク機構或いはリンク機構に固定される部材であってもよい。また、これらとは別に、移動装置と連動して移動する移動部材を備え、該移動部材に距離センサを設けてもよい。
【0082】
また、本実施の形態では、距離センサ60として、レーザ式の場合について説明したが、距離センサとして電波式の場合であってもよい。
【0083】
また、本実施の形態では、保持容器20が密閉状態となる場合について説明したが、これに限定するものではなく、保持容器を密閉状態で覆うチャンバを備える場合であってもよい。
【0084】
また、本実施の形態では、保持容器20及び収納容器30を大気圧よりも高い所定圧力Pに昇圧させる場合について説明したが、これに限定するものではなく、所定圧力Pに昇圧させることなく、鋳造処理を行う場合であってもよい。
【0085】
また、本実施の形態では、鋳型として砂型を用いた場合について説明したが、これに限定するものではなく、鋳型として金型を用いて少量多種の鋳物を生産する場合であってもよい。この場合も、鋳物を生産する度に距離Lが測定されることとなり、正確な差圧制御が可能となる。
【0086】
また、本実施の形態では、鋳型の取り外し及び設置を作業者が行う場合について説明したが、これに限定するものではなく、不図示のリフト装置で鋳型の取り外し及び設置を行って自動化を図ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本実施の形態に係る差圧鋳造装置であって、一部断面とした概略構成を示す説明図。
【図2】本実施の形態に係る差圧鋳造装置であって、一部断面とした概略構成を示す説明図。
【図3】本実施の形態に係る差圧鋳造装置であって、一部断面とした概略構成を示す説明図。
【図4】差圧鋳造装置による一連の動作を示すフローチャート。
【図5】本実施の形態に係る差圧鋳造装置の配管構成を示すブロック図。
【図6】鋳造処理を示すフローチャート。
【図7】保持容器及び収納容器の圧力変化を示す図。
【図8】保持容器及び収納容器の圧力変化の別の例を示す図。
【符号の説明】
【0088】
20 保持容器
30 収納容器
31 本体
31A 底部
32 蓋体
40 ストーク
40a 上端
50 移動装置(移動手段)
51 昇降機構
51c 突出片
53 リンク機構
60 距離センサ
70 制御装置(制御手段)
100 差圧鋳造装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、保持容器内と収納容器内とに差圧を生じさせることにより鋳造する差圧鋳造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、保持容器上方に鋳型が収納される収納容器を設置して保持容器及び収納容器を気密状態とし、保持容器内及び収納容器内の圧力を大気圧よりも昇圧し、保持容器内の圧力を収納容器内の圧力よりも高めて、その圧力差により鋳型に溶湯を充填する差圧鋳造装置が研究されている。
【0003】
従来、鋳型が収納される収納容器の下方に、溶湯を入れた保持容器を配置し、該保持容器内に圧縮気体を送風して、該保持容器内の溶湯をストークを通じて上方の鋳型に供給して鋳造する低圧鋳造法が知られている。
【0004】
該低圧鋳造法では、鋳型として金型が多く用いられ、同一形状の製品を大量に生産する方法として適しており、鋳型を収納する収納容器は大気に開放されており、保持容器内の溶湯量に拘らず、該保持容器内の圧力を略一定に保持すればよい。
【0005】
一方、上記差圧鋳造装置にあっては、保持容器内と収納容器内との差圧を高い精度で管理する必要があり、例えば、同一形状の鋳物を大量生産する場合、金型が用いられ、保持容器内の溶湯量は金型のキャビティの容積で予め溶湯の使用量がわかるため、適正な差圧を予測することができ、保持容器内の溶湯量を鋳造毎に測定しなくても適正な差圧制御が可能である。
【0006】
しかし、鋳物を多種少量生産する場合、鋳型を頻繁に入れ換える必要があり、鋳型のキャビティの容積は、各鋳型によってまちまちであり、鋳型を入れ換える度に溶湯使用量が変わるため、溶湯使用量を予測するのは困難である。従って、鋳物を多種少量生産する場合は、次の鋳造の前に、保持容器内の正確な溶湯面の高さを測定しなければならない。
【0007】
レース用エンジンのシリンダヘッド等の精度の為に鋳物を少量生産するときに上記差圧鋳造装置を用いる場合、鋳型として砂型を用いるのが一般的であるが、この場合、鋳造のロット毎に消費される溶湯使用量が変化し、保持容器内の圧力と収納容器内の圧力との差圧を適正にするために、保持容器内及び収納容器内の圧力の制御が重要となる。
【0008】
具体的に説明すると、保持容器内の圧力と収納容器内の圧力との差圧が低すぎると、砂型における湯回り不良が発生し、差圧が高すぎると、溶湯充填時の圧力によって砂型の崩壊や砂型表面への溶湯の差し込みが発生してしまい、鋳物の仕上がりが悪くなってしまうため、保持容器内の圧力と収納容器内の圧力との差圧を適正にする必要がある。
【0009】
なお、保持容器における溶湯量は鋳造する度に減少し、また、溶湯を保持容器に追加すれば溶湯量は増加するものであるが、適正な差圧は、保持容器における溶湯量(溶湯面の高さ)に応じて異なるものである。
【0010】
これに対し、保持容器内に例えば電極を有する接触式の溶湯面センサを設け、溶湯面を検知する差圧鋳造装置が知られている(特許文献1参照)。
【0011】
また、保持容器に形成した開口に耐熱ガラス等を設けて保持容器の外側にレーザによる非接触式の距離センサを配置して、耐熱ガラスを通じて溶湯面との距離を測定する差圧鋳造装置や、距離センサを保持容器内に配置した差圧鋳造装置が知られている(特許文献2,3参照)。
【0012】
【特許文献1】特開平11−156529号公報
【特許文献2】特開平7−136755号公報
【特許文献3】特開平8−318361号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、電極等の接触式の溶湯面センサを用いた差圧鋳造装置では、溶湯面センサが溶湯に接触する状態となるため、接触式の溶湯面センサによる高精度な測定を維持するには、頻繁にメンテナンスをしなければならず、メンテナンス性が低いものであった。また、高温の溶湯に溶湯面センサを接触させるので、溶湯面センサの寿命が短いものであった。
【0014】
また、非接触式の距離センサにより耐熱ガラスを介して溶湯面との距離を測定する差圧鋳造装置では、耐熱ガラスが曇って測定感度が低下したり、距離センサによるレーザ光等が耐熱ガラスで反射や散乱したりするので、正確に溶湯面を測定することが困難であった。
【0015】
また、保持容器内に非接触の距離センサを配置した差圧鋳造装置では、距離センサが常時溶湯の熱の輻射を直接受けるため、距離センサの寿命が著しく低下してしまうものであった。
【0016】
このような観点から、センサを用いるよりも、作業者によりゲージを用いて保持容器内の溶湯面の高さを目測する方が確実であったため、作業者が測定作業を行わなければならなかった。
【0017】
そこで本発明は、保持容器内における溶湯が輻射する熱の影響を受けにくく、溶湯面と距離センサとの距離を正確に測定することができ、この測定結果に基づいて差圧を制御し、仕上がりの良好な鋳物を得ることができる差圧鋳造装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は(例えば、図1〜図3参照)、溶湯を保持する保持容器(20)と、該保持容器の上方に配置され、鋳型(S)が収納される収納容器(30)と、前記保持容器(20)と前記収納容器(30)内の鋳型(S)とを連通するストーク(40)とを備え、前記保持容器(20)内の圧力が前記収納容器(30)内の圧力よりも高くなるように差圧を生じさせ、前記保持容器(20)に保持された溶湯を、前記ストーク(40)を通じて鋳型(S)に充填する差圧鋳造装置において、
前記収納容器(30)は、前記ストークの上端が貫通し、鋳型を装着可能に上部が開口する本体(31)と、前記本体の開口を閉塞可能な蓋体(32)と、を有し、
前記蓋体(32)を、前記本体(31)の上方から退避する退避位置と、前記本体の開口を閉塞する閉塞位置とに移動させる移動手段(50)と、
前記移動手段と一体に移動する部材(51c)に設けられ、前記ストーク(40)を通じて非接触で溶湯面(M)との距離(L)を測定する距離センサ(60)と、
前記保持容器(20)内と前記収納容器(30)内との差圧を制御する制御手段(70)と、を備え、
前記移動手段(50)により前記蓋体(32)を前記退避位置に移動して、次の鋳型(S)を前記収納容器(30)に収納する際、前記移動手段(50)と一体に移動する前記距離センサ(60)により前記保持容器(20)内の溶湯面(M)の距離(L)を測定し、該測定結果に基づき、前記制御手段(70)が次の鋳造に際しての前記差圧を設定してなる、ことを特徴とする差圧鋳造装置にある。
【0019】
また、上記差圧鋳造装置において、前記移動手段(50)は、前記蓋体(32)の上方に配置され、前記蓋体を前記本体(31)に対して昇降自在に支持する昇降機構(51)と、前記昇降機構(51)を水平方向に移動自在に支持するリンク機構(53)と、を有し、前記昇降機構(51)により前記蓋体(32)を持ち上げた状態で、前記昇降機構(51)を水平方向に移動させることで、前記蓋体(32)を前記退避位置に移動させ、
前記距離センサ(60)は、前記昇降機構(51)に水平方向に突出して取り付けられ、前記蓋体(32)の前記退避位置への移動の際に、前記昇降機構(51)と一体に水平方向に移動することにより、前記ストーク(40)から延びる直線上の位置に移動する、ことを特徴とするものである。
【0020】
また、上記差圧鋳造装置において(例えば、図5〜図8参照)、前記制御手段(70)は、前記距離センサ(60)による前記測定結果に基づいて、前記ストーク(40)の上端位置に溶湯が上昇するのに必要な第1の差圧(ΔPx)、及び鋳型(S)に溶湯を充填するのに必要な第2の差圧(ΔPy)を演算し、鋳型(S)に溶湯を充填するに先立って、前記差圧を、前記第1の差圧(ΔPx)に設定し、前記ストーク(40)の上端位置に溶湯が達したと判断した場合、前記差圧を、前記第2の差圧(ΔPy)に設定する、ことを特徴とするものである。
【0021】
また、上記差圧鋳造装置において、前記制御手段(70)は、鋳型(S)に溶湯を充填完了したと判断した場合、鋳型(S)内の溶湯を凝固させる際に、前記差圧を、前記第2の差圧(ΔPy)よりも大きい第3の差圧(ΔPz)に設定する、ことを特徴とするものである。
【0022】
また、上記差圧鋳造装置において、前記収納容器(30)に収納される鋳型は、砂型(S)である、ことを特徴とするものである。
【0023】
尚、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これは、発明の理解を容易にするための便宜的なものであり、特許請求の範囲の構成に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0024】
請求項1に係る本発明によると、鋳型を型開して鋳物を取り出すために蓋体を退避位置に移動させた際に、距離センサが移動手段と一体に溶湯面の距離を測定する位置に移動するので、次の鋳造に先立って溶湯面の距離を非接触で正確に測定することができ、作業者がゲージを用いて測定する必要がなくなり、距離測定を自動化することが可能となる。
【0025】
また、移動手段により収納容器の蓋体を退避位置に移動させるので、距離センサをストークを通じて溶湯面に対向させる際に、収納容器の蓋体が測定の邪魔になることはない。そして、収納容器の蓋体を、本体の上方から退避する退避位置に移動させることによって、ストークを通じて上昇する溶湯の熱が拡散しやすくなり、距離センサをストークを通じて溶湯面に対向させた際には、距離センサは熱の影響を受けにくくなる。そして、距離センサは距離の測定が必要なときにストークを通じて溶湯面に対向することとなるので、常時溶湯の熱に晒されることはなく、熱の影響を受けにくいので、距離センサの寿命を延ばすことができる。また、耐熱ガラス等を介して溶湯面と距離センサとの距離を測定する場合に比べ、直接溶湯面との距離を測定することができるので、耐熱ガラス等による反射や散乱がなくなり、距離を正確に測定することができる。
【0026】
また、制御手段では、距離センサにより測定した距離が正確であるので、保持容器内の圧力と収納容器内の圧力との差圧を正確に制御することができ、これによって、湯回り不良を抑制することができ、仕上がりの良好な鋳物を製作することができる。
【0027】
請求項2に係る本発明によると、蓋体の上方に配置される昇降機構に距離センサを取り付けたことにより、距離センサがストーク上端から十分に離隔した位置に配置されることとなるので、溶湯の熱の影響を更に受けにくくなる。そして、距離センサを昇降機構に取り付けるだけで、距離センサを溶湯面に対向する位置に移動させることができ、簡単な構造で精度よく溶湯面の距離を測定することが可能となる。
【0028】
請求項3に係る本発明によると、距離センサにより測定した距離が正確であるので、第1の差圧及び第2の差圧の演算結果の精度が向上する。また、鋳造の際に、まず第1の差圧となるように保持容器内の圧力と収納容器内の圧力との差圧が設定されるので、溶湯が鋳型の寸前で減速又は一旦停止し、溶湯が勢いよく鋳型に注入されることはない。そして、溶湯がストーク上端に到達した後、第2の差圧となるように、保持容器内の圧力及び収納容器内の圧力との差圧が制御されるので、安定して鋳型に溶湯を充填することができ、鋳型における湯回り不良を抑制することができ、仕上がりの良好な鋳物を製作することができる。
【0029】
請求項4に係る本発明によると、鋳物を凝固させる際に、押し湯効果が高まり、鋳造欠陥を減少させることができ、仕上がりの良好な鋳物を製作することができる。
【0030】
請求項5に係る本発明によると、鋳型が砂型であるので、差圧制御が安定することで砂型への溶湯の差し込みを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を用いて詳細に説明する。
【0032】
図1〜図3は、本実施の形態に係る差圧鋳造装置であって、一部断面とした概略構成を示す説明図である。
【0033】
図1において、差圧鋳造装置100は、基台10と、基台10に上端が支持され、溶湯を保持する保持容器20と、保持容器20の上方に配置され、砂型Sが収納される収納容器30と、保持容器20と収納容器30内に収納した砂型Sとを連通する上下方向に延びるストーク40とを備えている。溶湯は、例えばアルミニウム等の溶融金属である。
【0034】
収納容器30は、底部31A及び底部31Aから上方に立設する側壁部31Bを有し、上部が開口する有底の本体31と、天部32A及び天部32Aから下方に立設する側壁部32Bを有し、本体31の上部における開口を閉塞可能な蓋体32とを備えている。そして、蓋体32により本体31上部を閉塞する際には、本体31の側壁部31Bの上端に蓋体32の側壁部32Bの下端が圧接載置される。
【0035】
本体31の底部31Aには、貫通孔31aが形成されており、その貫通孔31aにストーク40の上端40aが貫通して固定されている。そして、本体31は、その底部31Aにおけるストーク40の上端40aに対応する位置に、砂型Sを装着可能としている。ストーク40は、その下端40bが保持容器20内の溶湯に浸かるように、保持容器20内に延びている。
【0036】
また、差圧鋳造装置100は、蓋体32を、本体31の上方から退避する退避位置と、本体31の開口を閉塞する閉塞位置とに移動させる移動手段としての移動装置50を備えている。蓋体32が閉塞位置に移動して本体31の開口を閉塞しているとき、保持容器20内及び収納容器30内は、密閉状態となり、蓋体32が退避位置に移動しているとき、本体31の上部が開口するので、砂型Sの取り外し及び設置が可能となる。
【0037】
移動装置50は、収納容器30の蓋体32の上方に配置され、蓋体32を、本体31に対して上下方向に昇降自在に支持する昇降機構51と、基台10に支持され、昇降機構51を水平方向に移動自在に支持するリンク機構53とを有している。
【0038】
昇降機構51は、各種駆動源を収納する箱体51aと、箱体51aの下方に配置され、上下方向に延びる4つ(複数)の油圧シリンダ51bとを有し、油圧シリンダ51bの一端が箱体51aの下面に固定され、他端が蓋体32の天部32Aに固定されている。そして、油圧シリンダ51bの伸縮動作により、蓋体32を上下方向に昇降させることができる(図2参照)。
【0039】
図1において、リンク機構53は、収納容器30及び昇降機構51を挟んで両側に配置される一対のリンク部54,54を有している。リンク部54は、第1のアーム55、第2のアーム56及びアーム55,56同士を連結する油圧シリンダ57を有している。各アーム55,56は、一端部が基台10に揺動可能に固定され、他端部が昇降機構51の箱体51aに揺動可能に固定される基部55a,56aを有しており、各アーム55,56の基部55a,56a同士が平行に配置されている。そして、第1のアーム55は、昇降機構51側の端部に、基部55aに対して垂直方向に第2のアーム56側に張り出す張出部55bを有しており、また、第2のアーム56は、基台10側の端部に、基部56aに対して垂直方向に第1のアーム55側に張り出す張出部56bを有している。そして、第1のアーム55の張出部55bに、油圧シリンダ57の一端が固定され、第2のアーム56の張出部56bに、油圧シリンダ57の他端が固定される。そして、油圧シリンダ57を伸縮させることにより、第1のアーム55及び第2のアーム56が平行状態を保ったまま、一体となって揺動し、昇降機構51を平行方向に移動させることができる(図3参照)。
【0040】
本実施の形態における差圧鋳造装置100は、レーザ光により対象物との距離を測定する非接触式の距離センサ60を備えている。この距離センサ60は、移動装置50と一体に移動する部材としての昇降機構51に突出して取り付けられている。具体的には、距離センサ60は、昇降機構51の箱体51aから突出する突出片51cに固定されている。
【0041】
また、差圧鋳造装置100は、保持容器20内の圧力と、収納容器30内の圧力とを制御し、保持容器20内と収納容器30内との差圧を制御する制御手段としての制御装置70を備えている。制御装置70には、距離センサ60が接続されており、制御装置70は、距離センサ60により測定された測定結果を取得可能に構成されている。また、本実施の形態における差圧鋳造装置100は、移動装置50を動作させる場合や鋳造を実行する場合に作業者が操作する操作部71を備えており、該操作部71が制御装置70に接続されている。つまり、制御装置70は、操作部71の設定に従い、移動装置50を含む差圧鋳造装置100全体を制御する。
【0042】
次に、差圧鋳造装置100において、前回鋳造に使用した砂型Sを取り出して次の鋳造に使用する砂型Sを設置する場合について説明する。
【0043】
図4は、差圧鋳造装置100による一連の動作を示すフローチャートである。
【0044】
図4において、まず、操作部71において、収納容器30の蓋体32が退避位置に移動するよう作業者により設定された場合、制御装置70は、収納容器30の蓋体32を退避位置に移動するように移動装置50を制御する(ステップS1)。具体的に説明すると、蓋体32を、閉塞位置から退避位置に移動させる際、まず、図2に示すように、昇降機構51により蓋体32を持ち上げ、この状態で、図3に示すように、リンク機構53により昇降機構51を水平方向に移動させる。これにより、収納容器30の蓋体32は、本体31の開口を閉塞する閉塞位置(図1)から、収納容器30の本体31の上方から退避する退避位置(図3)に移動する。このとき、距離センサ60は、図3に示すように、移動装置50の昇降機構51と一体に水平方向に移動することで、ストーク40から延びる直線上の位置(測定位置)に移動する。つまり、距離センサ60は、移動装置50により、ストーク40から延びる直線上の位置に位置決めされる。更に、距離センサ60は、昇降機構51に取り付けられているので、蓋体32を退避位置に移動させた際、ストーク40の上端40aとの距離が所定距離となるように位置決めされる。
【0045】
そして、蓋体32を上方に移動させた状態で水平方向に移動させることにより、前回の鋳造に使用した砂型Sが本体31上部から突出している場合には、リンク機構53により蓋体32を水平方向に移動させたときに、昇降機構51により蓋体32を上方に持ち上げた状態であるので、蓋体32が砂型Sに接触するのを回避することができる。また、蓋体32を水平方向へ移動させることにより、砂型Sの型開の際に砂型Sを取り出す作業、及び新たに砂型Sの設置作業が容易になる。なお、本実施の形態では、鋳型として砂型Sを使用しているので、1つの鋳物を製作する度に砂型Sを入れ換える必要がある。
【0046】
ここで、前回の鋳造に使用した砂型Sが収納容器30の本体31に収納されている場合は、作業者によって砂型Sの型開が行われて、鋳物が取り出され、砂型Sが取り出される(図4中、ステップS2)。或いは、砂型Sが取り出された後、型開が行われて鋳物が取り出される。
【0047】
このように、砂型Sを取り出した場合、図3に示すように、収納容器30の本体31内において、ストーク40の上端40aが外部に露出することとなる。そして、昇降機構51に取り付けられた距離センサ60は、ステップS1の動作により、ストーク40から延びる直線上の位置(測定位置)に移動しているので、砂型Sが取り外されたことでストーク40を通じて溶湯面Mに対向することとなる。これによって、距離センサ60は、該距離センサ60と溶湯面Mとの距離Lを測定することができる。
【0048】
そして、距離センサ60が保持容器20内の溶湯面Mに対向している状態で操作部71において距離を測定するよう設定がなされた場合、距離センサ60は、レーザ光を溶湯面Mに照射してその反射光を検知することにより、溶湯面Mとの距離Lを測定する(図4中、ステップS3)。
【0049】
このように、砂型Sを型開して鋳物を取り出すために蓋体32を退避位置に移動させた際に、距離センサ60が移動装置50と一体に測定位置に移動するので、次の鋳造に先立って溶湯面Mの距離Lを非接触で正確に測定することができ、作業者がゲージを用いて測定する必要がなくなり、距離測定を自動化することが可能となる。
【0050】
また、移動装置50により収納容器30の蓋体32を退避位置に移動させるので、距離センサ60をストーク40を通じて溶湯面Mに対向させる際に、収納容器30の蓋体32が測定の邪魔になることはない。そして、収納容器30の蓋体32を、本体31の上方から退避する退避位置に移動させることによって、ストーク40を通じて上昇する溶湯の熱が拡散しやすくなり、距離センサ60をストーク40を通じて溶湯面Mに対向させた際には、距離センサ60は熱の影響を受けにくくなる。特に、距離センサ60を、昇降機構51の箱体51aに突出する突出片51cに取り付けているので、距離センサ60がストーク40の上端40aから十分に離隔した位置となり、保持容器20内の溶湯の熱の影響を更に受けにくくなる。
【0051】
そして、距離センサ60は距離の測定が必要なときにストーク40を通じて溶湯面Mに対向することとなるので、常時溶湯の熱に晒されることはなく、熱の影響を受けにくいので、距離センサ60の寿命を延ばすことができる。また、耐熱ガラス等を介さずに直接溶湯面Mとの距離Lを測定することができるので、耐熱ガラス等を介して溶湯面と距離センサとの距離を測定する場合に比べ、距離Lを正確に測定することができる。
【0052】
そして、距離センサ60を昇降機構51に取り付けるだけで、距離センサ60を溶湯面Mに対向する位置に移動させることができ、簡単な構造で精度よく溶湯面Mの距離Lを測定することが可能となる。
【0053】
更に、距離センサ60は、移動装置50と一体に移動して定位置に位置決めされるので、測定結果のばらつきが少なくなり、溶湯面Mとの距離Lを正確に測定することが可能となる。
【0054】
距離センサ60により溶湯面Mとの距離Lが測定された後、次の鋳造に使用される砂型Sが収納容器30の本体31に設置され(ステップS4)、操作部71において、収納容器30の蓋体32が閉塞位置に移動するよう設定された場合、制御装置70は、収納容器30の蓋体32を閉塞位置に移動するように移動装置50を制御する(ステップS5)。具体的に説明すると、蓋体32を、退避位置から閉塞位置に移動させる際、まず、リンク機構53により図3の状態から図2の状態に水平方向に昇降機構51を移動させ、次に、昇降機構51により図2の状態から図1の状態に蓋体32を下降移動させる。このとき、距離センサ60は、保持容器20及び収納容器30の直上から退避している。
【0055】
次いで、操作部71において、鋳造を実行する設定がなされた場合、制御装置70は、測定した溶湯面Mとの距離L(つまり、溶湯面Mの高さ)に基づいて差圧を制御しながら鋳造処理を実行する(ステップS6)。
【0056】
そして、鋳造処理を終えたら、再びステップS1の手順に戻り、砂型S(鋳物)を取り出して、次の鋳造に使用される砂型Sを設置するに先立って、距離センサ60により溶湯面Mとの距離Lが測定される。このように、鋳物を製作する1ロットの度(砂型Sを入れ換える度)に溶湯面Mを測定することで、保持容器20内の溶湯量を把握することができ、次の鋳造において、保持容器20内の圧力と収納容器30内の圧力との差圧を正確に制御することができ、これによって、湯回り不良や砂型Sへの差し込みを抑制することができ、仕上がりの良好な鋳物を製作することができる。
【0057】
次に、ステップ6における鋳造処理について詳細に説明する。
【0058】
図5は、本実施の形態に係る差圧鋳造装置100の配管構成を示すブロック図であり、図6は、鋳造処理を示すフローチャートである。また、図7は、保持容器20及び収納容器30の圧力変化を示す図である。
【0059】
図5において、差圧鋳造装置100は、例えば空気、希ガス又は窒素ガス等の鋳造に適した高圧ガスを供給するガス供給装置80を備え、ガス供給装置80には、加圧弁(電磁弁)81を介して、収納容器30に接続される第1の給気管82及び保持容器20に接続される第2の給気管83が接続されている。そして、第1の給気管82には、第1の圧力調整手段としての第1の圧力調整弁84と、第1の給気弁(電磁弁)85とが配設され、第2給気管83には、第2の圧力調整手段としての第2の圧力調整弁86と、第2の給気弁(電磁弁)87とが配設されている。
【0060】
また、第1の給気管82における第1の給気弁85の二次側と、第2の給気管83における第2の給気弁87の二次側とが、連結管88で連結されており、該連結管88には、連結弁(電磁弁)89が配設されている。また、第1の給気管82における第1の給気弁85の二次側には、終端に第1の大気開放弁(電磁弁)90が接続された第1の大気開放管91が接続されており、第2の給気管83における第2の給気弁87の二次側には、終端に第2の大気開放弁(電磁弁)92が接続された第2の大気開放管93が接続されている。
【0061】
差圧鋳造装置100は、収納容器30内の圧力を検知する第1の圧力センサ94及び保持容器20内の圧力を検知する第2の圧力センサ95を備えている。
【0062】
この構成により、制御装置70は、各弁81,84,85,86,87,89,90,92を制御することにより、収納容器30内の圧力P1及び保持容器20内の圧力P2を制御している。なお、図4中、ステップS1〜S5においては、加圧弁81並びに第1及び第2の給気弁85,87を閉弁し、連結弁89並びに第1及び第2の大気開放弁90,92を開弁している状態である。
【0063】
図6において、まず制御装置70は、測定した距離Lに基づき、収納容器30内の圧力P1と保持容器20内の圧力P2との差圧であって、ストーク40の上端位置(溶湯面Mに対するストーク40の上端40aの高さh1)に溶湯が上昇するのに必要な第1の差圧ΔPx、砂型Sに溶湯を充填する(溶湯面Mに対する砂型SのキャビティSc内の上端の高さh2に溶湯が上昇する)のに必要な第2の差圧ΔPy、及び第2の差圧ΔPyよりも大きい第3の差圧ΔPzを演算する(ステップS11)。
【0064】
具体的に説明すると、まず、制御装置70は、測定した距離Lに基づき、高さh1及び高さh2を演算する。
【0065】
次に、必要な差圧ΔP(=P2−P1)は、溶湯の密度をρ、溶湯面Mに対する高さをh、砂型Sにおけるキャビティの断面積をS、保持容器20の断面積をA、重力加速度をgとすると、
ΔP=ρ×h×(1+S/A)×g・・・・・・式1
で表されるが、制御装置70は、式1を用いて、演算した高さh1及び高さh2に基づいて、差圧ΔPx及び差圧ΔPyを演算し、差圧ΔPyに基づいて差圧ΔPzを演算している。
【0066】
次に、制御装置70は、収納容器30内の圧力P1及び保持容器20内の圧力P2が大気圧よりも高い所定圧力(例えば、800kPa)Pにする制御を行う(ステップS12:図7中、昇圧期間T1)。
【0067】
具体的に説明すると、第1及び第2の大気開放弁90,92は、開弁状態であるので、まず、制御装置70は、第1及び第2の大気開放弁90,92を閉弁し、次いで、加圧弁81並びに第1及び第2の給気弁85,87を開弁すると共に、第1及び第2の圧力調整弁84,86を、各容器30,20の圧力が所定圧力Pとなるように調整する。このとき、連結弁89は、開弁状態であるので、両容器30,20は、同一の速度で所定圧力Pに昇圧する。このように、各容器30,20を所定圧力Pに昇圧することで、砂型Sにおける溶湯の凝固時に、水素ガス気泡の生成を防止し、水素ガス気泡に起因するピンホール等の鋳造欠陥を防止することができる。
【0068】
制御装置70は、第1及び第2の圧力センサ94,95により各容器30,20の圧力P1,P2を検知し、各圧力P1,P2が所定圧力Pに達した場合、収納容器30内と保持容器20内との差圧が、第1の差圧ΔPxとなるように、各圧力P1,P2を設定する(ステップS13:図7中、溶湯押上期間T2)。具体的に説明すると、制御装置70は、各圧力P1,P2が所定圧力Pに達した場合、連結弁89を閉弁し、第1の差圧ΔPxとなるように、保持容器20内の圧力P2を所定圧力Pよりも昇圧するよう、第2の圧力調整弁86を設定する。そして、このように第2の圧力調整弁86を設定することにより、保持容器20内の圧力P2は、徐々に昇圧し、収納容器30内と保持容器20内との差圧が、第1の差圧ΔPxとなる。このように差圧を第1の差圧ΔPxに設定することで、溶湯が砂型Sの寸前で減速又は一旦停止し、溶湯が勢いよく砂型Sに注入されることはない。
【0069】
次に、制御装置70は、ストーク40の上端40aに溶湯が達したか否かを判断する(ステップS14)。具体的に説明すると、保持容器20内の圧力P2は、徐々に昇圧するので、保持容器20内の溶湯は、保持容器20内の圧力P2の上昇と共にストーク40を上昇する。そして、収納容器30内と保持容器20内との差圧が、第1の差圧ΔPxに達した場合は、ストーク40の上端40aに溶湯が達する。そして、制御装置70は、溶湯が安定するのに必要な時間だけ第1の差圧ΔPxを保持する。従って、本実施の形態では、制御装置70は、ステップS14において、収納容器30内と保持容器20内との差圧が第1の差圧ΔPxに達して、溶湯が安定するのに必要な時間が経過したか否かを判断する。
【0070】
制御装置70は、ストーク40の上端40aに溶湯が達した場合(ステップS14:Yes)、収納容器30内と保持容器20内との差圧が第2の差圧ΔPyとなるように設定し、砂型SのキャビティScに溶湯を充填する(ステップS15:図7中、溶湯充填期間T3)。
【0071】
具体的に説明すると、制御装置70は、差圧が第2の差圧ΔPyとなるように、収納容器30内の圧力P1を所定圧力Pから減圧するよう、第1の圧力調整弁84を設定する。そして、このように第1の圧力調整弁84を設定することにより、収納容器30内の圧力P1は、徐々に減圧し、収納容器30内と保持容器20内との差圧が、第2の差圧ΔPyとなる。
【0072】
このように、直接第2の差圧ΔPyに設定するのではなく、予め第1の差圧ΔPxに設定してから、第2の差圧ΔPyに設定するようにしたので、砂型SのキャビティScに溶湯が勢いよく噴き上がるのを抑制することができ、砂型Sが損傷するのを抑制することができ、仕上がりの良好な鋳物を製作することができる。
【0073】
また、収納容器30内の圧力P1を減圧するようにしたので、砂型Sに溶湯を充填する際に、溶湯を押し出す側の保持容器20内の圧力P2が変動しないので、溶湯の流れがスムーズであり、仕上がりの良好な鋳物を製作することができる。
【0074】
次に、制御装置70は、砂型SのキャビティScに溶湯を充填するのが完了したか否かを判断する(ステップS16)。本実施の形態では、収納容器30内と保持容器20内との差圧が第2の差圧ΔPyとなってから充填に必要な時間が経過したか否かを判断する。
【0075】
制御装置70は、砂型SのキャビティScに溶湯を充填するのが完了した場合(ステップS16:Yes)、収納容器30内と保持容器20内との差圧が第3の差圧ΔPzとなるように設定する(ステップS17:図7中、凝固期間T4)。具体的に説明すると、制御装置70は、差圧が第3の差圧ΔPzとなるように、収納容器30内の圧力P1を所定圧力Pに設定すると共に、保持容器20内の圧力P2を昇圧するよう、各圧力調整弁84,86を設定する。このように保持容器20内の圧力P2を昇圧して砂型Sに通じる溶湯に追い打ちの圧力をかけることにより、押し湯効果が高まり、鋳造欠陥が少なくなり、仕上がりの良好な鋳物を製作することができる。
【0076】
次に、制御装置70は、砂型S内の溶湯が凝固したか否かを判断する(ステップS18)。具体的に説明すると、制御装置70は、溶湯が凝固に必要な時間が経過したか否かを判断する。
【0077】
制御装置70は、砂型S内の溶湯が凝固したと判断した場合(ステップS18:Yes)、まず、連結弁89を開弁し、両容器30,20内の圧力が均衡してから、両容器30,20内の圧力を大気圧まで減圧する(ステップS19:図7中、減圧期間T5)。具体的に説明すると、加圧弁81並びに第1及び第2の給気弁85,87を閉弁し、その後、第1及び第2の大気開放弁90,92を開弁する。
【0078】
以上、本実施の形態によれば、距離センサ60により溶湯面Mとの距離Lを精度よく測定することができ、鋳造処理を実行する際に、測定結果に基づいて収納容器30内と保持容器20内との差圧を制御するようにしたので、制御動作が安定し、仕上がりの良好な鋳物を製作することができる。
【0079】
なお、上記実施の形態に基づいて本発明を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0080】
本実施の形態では、図6中、ステップS15において、収納容器30内と保持容器20内との差圧を第2の差圧ΔPyに設定する際に、収納容器30内の圧力を減圧するようにしたが、これに限るものではなく、図8に示すように、保持容器20内の圧力P2を昇圧して差圧を第2の差圧ΔPyに設定してもよい。
【0081】
また、本実施の形態では、距離センサが取り付けられる部材(移動装置と一体に移動する部材)が、昇降機構51の突出片51cである場合について説明したが、これに限定するものではなく、収納容器の蓋体或いは蓋体に固定される部材であってもよいし、リンク機構或いはリンク機構に固定される部材であってもよい。また、これらとは別に、移動装置と連動して移動する移動部材を備え、該移動部材に距離センサを設けてもよい。
【0082】
また、本実施の形態では、距離センサ60として、レーザ式の場合について説明したが、距離センサとして電波式の場合であってもよい。
【0083】
また、本実施の形態では、保持容器20が密閉状態となる場合について説明したが、これに限定するものではなく、保持容器を密閉状態で覆うチャンバを備える場合であってもよい。
【0084】
また、本実施の形態では、保持容器20及び収納容器30を大気圧よりも高い所定圧力Pに昇圧させる場合について説明したが、これに限定するものではなく、所定圧力Pに昇圧させることなく、鋳造処理を行う場合であってもよい。
【0085】
また、本実施の形態では、鋳型として砂型を用いた場合について説明したが、これに限定するものではなく、鋳型として金型を用いて少量多種の鋳物を生産する場合であってもよい。この場合も、鋳物を生産する度に距離Lが測定されることとなり、正確な差圧制御が可能となる。
【0086】
また、本実施の形態では、鋳型の取り外し及び設置を作業者が行う場合について説明したが、これに限定するものではなく、不図示のリフト装置で鋳型の取り外し及び設置を行って自動化を図ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本実施の形態に係る差圧鋳造装置であって、一部断面とした概略構成を示す説明図。
【図2】本実施の形態に係る差圧鋳造装置であって、一部断面とした概略構成を示す説明図。
【図3】本実施の形態に係る差圧鋳造装置であって、一部断面とした概略構成を示す説明図。
【図4】差圧鋳造装置による一連の動作を示すフローチャート。
【図5】本実施の形態に係る差圧鋳造装置の配管構成を示すブロック図。
【図6】鋳造処理を示すフローチャート。
【図7】保持容器及び収納容器の圧力変化を示す図。
【図8】保持容器及び収納容器の圧力変化の別の例を示す図。
【符号の説明】
【0088】
20 保持容器
30 収納容器
31 本体
31A 底部
32 蓋体
40 ストーク
40a 上端
50 移動装置(移動手段)
51 昇降機構
51c 突出片
53 リンク機構
60 距離センサ
70 制御装置(制御手段)
100 差圧鋳造装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶湯を保持する保持容器と、該保持容器の上方に配置され、鋳型が収納される収納容器と、前記保持容器と前記収納容器内の鋳型とを連通するストークとを備え、前記保持容器内の圧力が前記収納容器内の圧力よりも高くなるように差圧を生じさせ、前記保持容器に保持された溶湯を、前記ストークを通じて鋳型に充填する差圧鋳造装置において、
前記収納容器は、前記ストークの上端が貫通し、鋳型を装着可能に上部が開口する本体と、前記本体の開口を閉塞可能な蓋体と、を有し、
前記蓋体を、前記本体の上方から退避する退避位置と、前記本体の開口を閉塞する閉塞位置とに移動させる移動手段と、
前記移動手段と一体に移動する部材に設けられ、前記ストークを通じて非接触で溶湯面との距離を測定する距離センサと、
前記保持容器内と前記収納容器内との差圧を制御する制御手段と、を備え、
前記移動手段により前記蓋体を前記退避位置に移動して、次の鋳型を前記収納容器に収納する際、前記移動手段と一体に移動する前記距離センサにより前記保持容器内の溶湯面の距離を測定し、該測定結果に基づき、前記制御手段が次の鋳造に際しての前記差圧を設定してなる、
ことを特徴とする差圧鋳造装置。
【請求項2】
前記移動手段は、前記蓋体の上方に配置され、前記蓋体を前記本体に対して昇降自在に支持する昇降機構と、前記昇降機構を水平方向に移動自在に支持するリンク機構と、を有し、前記昇降機構により前記蓋体を持ち上げた状態で、前記昇降機構を水平方向に移動させることで、前記蓋体を前記退避位置に移動させ、
前記距離センサは、前記昇降機構に水平方向に突出して取り付けられ、前記蓋体の前記退避位置への移動の際に、前記昇降機構と一体に水平方向に移動することにより、前記ストークから延びる直線上の位置に移動する、
ことを特徴とする請求項1に記載の差圧鋳造装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記距離センサによる前記測定結果に基づいて、前記ストークの上端位置に溶湯が上昇するのに必要な第1の差圧、及び鋳型に溶湯を充填するのに必要な第2の差圧を演算し、鋳型に溶湯を充填するに先立って、前記差圧を、前記第1の差圧に設定し、前記ストークの上端位置に溶湯が達したと判断した場合、前記差圧を、前記第2の差圧に設定する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の差圧鋳造装置。
【請求項4】
前記制御手段は、鋳型に溶湯を充填完了したと判断した場合、鋳型内の溶湯を凝固させる際に、前記差圧を、前記第2の差圧よりも大きい第3の差圧に設定する、
ことを特徴とする請求項3に記載の差圧鋳造装置。
【請求項5】
前記収納容器に収納される鋳型は、砂型である、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の差圧鋳造装置。
【請求項1】
溶湯を保持する保持容器と、該保持容器の上方に配置され、鋳型が収納される収納容器と、前記保持容器と前記収納容器内の鋳型とを連通するストークとを備え、前記保持容器内の圧力が前記収納容器内の圧力よりも高くなるように差圧を生じさせ、前記保持容器に保持された溶湯を、前記ストークを通じて鋳型に充填する差圧鋳造装置において、
前記収納容器は、前記ストークの上端が貫通し、鋳型を装着可能に上部が開口する本体と、前記本体の開口を閉塞可能な蓋体と、を有し、
前記蓋体を、前記本体の上方から退避する退避位置と、前記本体の開口を閉塞する閉塞位置とに移動させる移動手段と、
前記移動手段と一体に移動する部材に設けられ、前記ストークを通じて非接触で溶湯面との距離を測定する距離センサと、
前記保持容器内と前記収納容器内との差圧を制御する制御手段と、を備え、
前記移動手段により前記蓋体を前記退避位置に移動して、次の鋳型を前記収納容器に収納する際、前記移動手段と一体に移動する前記距離センサにより前記保持容器内の溶湯面の距離を測定し、該測定結果に基づき、前記制御手段が次の鋳造に際しての前記差圧を設定してなる、
ことを特徴とする差圧鋳造装置。
【請求項2】
前記移動手段は、前記蓋体の上方に配置され、前記蓋体を前記本体に対して昇降自在に支持する昇降機構と、前記昇降機構を水平方向に移動自在に支持するリンク機構と、を有し、前記昇降機構により前記蓋体を持ち上げた状態で、前記昇降機構を水平方向に移動させることで、前記蓋体を前記退避位置に移動させ、
前記距離センサは、前記昇降機構に水平方向に突出して取り付けられ、前記蓋体の前記退避位置への移動の際に、前記昇降機構と一体に水平方向に移動することにより、前記ストークから延びる直線上の位置に移動する、
ことを特徴とする請求項1に記載の差圧鋳造装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記距離センサによる前記測定結果に基づいて、前記ストークの上端位置に溶湯が上昇するのに必要な第1の差圧、及び鋳型に溶湯を充填するのに必要な第2の差圧を演算し、鋳型に溶湯を充填するに先立って、前記差圧を、前記第1の差圧に設定し、前記ストークの上端位置に溶湯が達したと判断した場合、前記差圧を、前記第2の差圧に設定する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の差圧鋳造装置。
【請求項4】
前記制御手段は、鋳型に溶湯を充填完了したと判断した場合、鋳型内の溶湯を凝固させる際に、前記差圧を、前記第2の差圧よりも大きい第3の差圧に設定する、
ことを特徴とする請求項3に記載の差圧鋳造装置。
【請求項5】
前記収納容器に収納される鋳型は、砂型である、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の差圧鋳造装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2009−255133(P2009−255133A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−107704(P2008−107704)
【出願日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(508118533)谷田合金株式会社 (2)
【出願人】(591040236)石川県 (70)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(508118533)谷田合金株式会社 (2)
【出願人】(591040236)石川県 (70)
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